(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】非破壊検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/04 20180101AFI20240405BHJP
G01N 23/18 20180101ALI20240405BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20240405BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
G01N23/04
G01N23/18
H01M10/04 Z
H01M10/48 A
(21)【出願番号】P 2020071870
(22)【出願日】2020-04-13
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】391017540
【氏名又は名称】東芝ITコントロールシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】篠原 正治
(72)【発明者】
【氏名】森田 知実
(72)【発明者】
【氏名】染谷 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】相島 道秋
(72)【発明者】
【氏名】広田 統也
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-004074(JP,A)
【文献】特開2012-237729(JP,A)
【文献】特開2010-102901(JP,A)
【文献】特開平06-031461(JP,A)
【文献】特開2000-090958(JP,A)
【文献】特開2004-156975(JP,A)
【文献】特開2011-039014(JP,A)
【文献】特開2012-164620(JP,A)
【文献】特開2016-109654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00 - G01N 23/2276
H01M 10/00 - H01M 10/04
H01M 10/06 - H01M 10/34
H04L 12/00 - H04L 12/22
H04L 12/50 - H04L 12/66
H04L 45/00 - H04L 49/9057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部または下部にタブが格納された被検査物を搬送する搬送装置と、
前記被検査物に放射線ビームを照射する放射線発生器と、
前記搬送装置を挟んで前記放射線発生器に対向して設けられた放射線検出器と、
前記放射線発生器及び前記放射線検出器の手前に設けられ、前記被検査物を撮像して前記被検査物の撮像画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部が生成した撮像画像に基づいて前記タブの位置を検出する位置検出部と、
前記タブの位置に基づいて、前記放射線発生器の撮像タイミングまたは前記放射線発生器に撮像させた画像の選択を制御する制御部と、
を備え
、
前記制御部は、前記放射線発生器に前記タブの位置を避けて前記放射線ビームを照射させる撮像タイミング決定部を備える非破壊検査装置。
【請求項2】
上部または下部にタブが格納された被検査物を搬送する搬送装置と、
前記被検査物に放射線ビームを照射する放射線発生器と、
前記搬送装置を挟んで前記放射線発生器に対向して設けられた放射線検出器と、
前記放射線発生器及び前記放射線検出器の手前に設けられ、前記被検査物を撮像して前記被検査物の撮像画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部が生成した撮像画像に基づいて前記タブの位置を検出する位置検出部と、
前記タブの位置に基づいて、前記放射線発生器の撮像タイミングまたは前記放射線発生器に撮像させた画像の選択を制御する制御部と、
を備え
、
前記制御部は、前記放射線発生器に撮像させた前記被検査物の複数の画像のうち、前記タブが含まれていない画像を選択する画像選択部を備える非破壊検査装置。
【請求項3】
前記被検査物は、前記タブの位置を示すマークを備え、
前記画像生成部は、前記マークの位置を撮像する撮像部である、
請求項1
又は2に記載の非破壊検査装置。
【請求項4】
前記放射線発生器及び前記放射線検出器は2組設けられ、
一方の組は前記被検査物の上部を撮像し、
他方の組は前記被検査物の下部を撮像し、
前記画像生成部は、前記一方の組または前記他方の組の手前に設けられる、
請求項1乃至
3のいずれかに記載の非破壊検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、非破壊検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
X線で代表される放射線を被検査物に照射し、被検査物を透過することで減弱した放射線の二次元分布を検出して画像化することで、被検査物の非破壊検査を行う非破壊検査装置が知られている。被検査物は、例えば円筒型のリチウムイオン電池であり、その内部は正極板と負極板とを円筒状に幾重にも巻回した構造となっている。
【0003】
正極板の幅は負極板の幅よりも短く、正極板の端部が負極板の端部からはみ出さないように両者は巻回されている。正極板の端部が負極板の端部よりはみ出していると、はみ出した正極板にリチウムが析出してショートし、発火するおそれがある。また、正極板の端部が負極板の端部からはみ出していない場合であっても、振動などによってはみ出さないように両者の端部間は所定の間隔に維持されることが望ましい。そのため、電池の内部において、正極板の端部が負極板の端部からはみ出していないか否か、両者の端部間は所定の間隔であるか否かを検査する必要がある。この検査は、電池の下部に放射線を照射し、断面視で交互に並ぶ正極板と負極板を撮像することにより行われる。
【0004】
正極板と負極板は円筒状に幾重にも巻回されているため、断面視においては略左右対称となっている。そのため、放射線の照射は、電池の下部において左右方向の一方側で行われる。特に、イヤホンのフルワイヤレス化などに伴い需要が高まりつつあるボタン型のリチウムイオン電池は、フルワイヤレスイヤホン本体に内蔵されるような小型のものであるため、判定対象の撮像画像には高い解像度が要求される。このような小型のリチウム電池は、その下部全体を撮像すると十分な解像度を得られず判定が困難となるため、この点でも放射線の照射は左右方向の一方側で行うことが一般的である。
【0005】
また、電池の撮像は下部だけでなく上部でも行うことがより好ましい。正極板の幅と負極板の幅が決まっていれば、下部における両極板の端部間の間隔から、上部における両極板の端部間の間隔も分かる。しかしながら、例えば誤差などまで考慮するのであれば、上下両方撮像することにより更なる品質向上を見込むことが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、最外周に巻回されている負極板からはタブと呼ばれる金属製のリードが伸びている。タブは、電池を断面視した場合において、巻回された負極板の一方の側面から電池下部へと伸び、L字に屈折して電池の中心部近くにまで伸びている。タブも放射線を吸収するため、タブが正極板及び負極板の端部に重なった状態で撮像されると、上述の検査を妨げる要因となる。すなわち、
図1に示すように、電池のタブが存在する下部右側画像では、タブの透視画像によって正極板及び負極板の端部が隠れることにより、正極板の端部が負極板の端部からはみ出していないか否か、両者の端部間は所定の間隔であるか否かを正確に判定することが困難となるおそれがあった。
【0008】
本実施形態は、上記課題を解決すべく、タブの位置に依らず正確な判定を行うことのできる非破壊検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態の非破壊検査装置は、次のような構成を備える。
(1)上部または下部にタブが格納された被検査物を搬送する搬送装置。
(2)前記被検査物に放射線ビームを照射する放射線発生器。
(3)前記搬送装置を挟んで前記放射線発生器に対向して設けられた放射線検出器。
(4)前記放射線発生器及び前記放射線検出器の手前に設けられ、前記被検査物を撮像して前記被検査物の撮像画像を生成する画像生成部。
(5)前記画像生成部が生成した撮像画像に基づいて前記タブの位置を検出する位置検出部。
(6)前記タブの位置に基づいて、前記放射線発生器の撮像タイミングまたは前記放射線発生器に撮像させた画像の選択を制御する制御部。
(7)前記制御部は、前記放射線発生器に前記タブの位置を避けて前記放射線ビームを照射させる撮像タイミング決定部を備える。
【0010】
実施形態の非破壊検査装置は、次のような構成を備える。
(1)上部または下部にタブが格納された被検査物を搬送する搬送装置。
(2)前記被検査物に放射線ビームを照射する放射線発生器。
(3)前記搬送装置を挟んで前記放射線発生器に対向して設けられた放射線検出器。
(4)前記放射線発生器及び前記放射線検出器の手前に設けられ、前記被検査物を撮像して前記被検査物の撮像画像を生成する画像生成部。
(5)前記画像生成部が生成した撮像画像に基づいて前記タブの位置を検出する位置検出部。
(6)前記タブの位置に基づいて、前記放射線発生器の撮像タイミングまたは前記放射線発生器に撮像させた画像の選択を制御する制御部。
(7)前記制御部は、前記放射線発生器に撮像させた前記被検査物の複数の画像のうち、前記タブが含まれていない画像を選択する画像選択部を備える。
【0011】
実施形態の非破壊検査装置は、更に次のような構成を備えてもよい。
(1)前記被検査物は、前記タブの位置を示すマークを備え、前記画像生成部は、前記マークの位置を撮像する撮像部である。
【0012】
(2)前記放射線発生器及び前記放射線検出器は2組設けられ、一方の組は前記被検査物の上部を撮像し、他方の組は前記被検査物の下部を撮像し、前記画像生成部は、前記一方の組または前記他方の組の手前に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る被検査物の透視断面図である。
【
図2】実施形態に係る被検査物を示す斜視図である。
【
図3】実施形態に係る非破壊検査装置を示す平面図である。
【
図4】実施形態に係る制御を示す機能ブロック図である。
【
図5】実施形態に係る非破壊検査装置の動作を示すフローチャートである。
【
図6】実施形態に係る撮像部による撮像画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[1.実施形態]
[1-1.実施形態の構成]
以下、実施形態に係る被検査物及び非破壊検査装置について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態は、一つの被検査物について、まず、被検査物の上部の左側及び右側を撮像し、次に、タブを避けて被検査物の下部の片側を撮像することにより、正極板の端部が負極板の端部からはみ出していないか否か、両者の端部間は所定の間隔であるか否かを検査するものである。
【0015】
[被検査物]
被検査物Wは、内部に巻回構造を備える円筒型のものであれば特に限定されないが、本実施形態の被検査物Wは、ケース内部に正極板Pと負極板Nとを円筒状に幾重にも巻回した構造を有する円筒型のリチウムイオン電池である。正極板Pは、幅方向において負極板Nよりも短く、負極板Nからはみ出さないように巻回されている。より好ましくは、両者の端部間が所定の間隔に維持されるように巻回されている。なお、所定の間隔は、値であっても良いし、数値範囲であっても良い。また、
図1の透視断面図に示すように、巻回構造の最外周に巻回されている負極板NにはタブTと呼ばれるリードが接続され、本実施形態では最外周の負極板Nの側面から電池の下部に向けて伸び、L字に屈折して電池の中心部近くにまで伸びている。なお、詳細な説明は省き
図1にも示さないが、正極板Pと負極板Nの間には樹脂などからなるセパレータが存在している。
【0016】
図2の斜視図に示すように、被検査物Wは、その上面にマークMを備えている。本実施形態のマークMは、例えば概略矩形状の白いシールであって、被検査物W上面の外周部分に、かつ被検査物W内部においてタブTがL字に屈折している位置の上方に貼られている。すなわち、マークMの直下にはタブTが収納されており、マークMはタブTの位置を示している。このようなマークMは、被検査物Wの製造工程、例えば正極板Pと負極板Nからなる巻回構造をケース内部に封入する工程において貼り付けられる。
【0017】
[非破壊検査装置]
非破壊検査装置100は、被検査物Wに放射線を照射し、被検査物Wを透過した放射線を検出する。この検出結果に基づき、非破壊検査装置100は、被検査物Wの透視画像を生成する。
図3に示すように、非破壊検査装置100は、被検査物Wがその上面に保持された円柱状のホルダーHを搬送する搬送機構1、被検査物Wの透視画像を撮像する放射線発生器2と放射線検出器3、被検査物Wを上方から撮像する撮像部4、放射線を遮蔽する遮蔽箱5を備える。さらに、非破壊検査装置100は、搬送機構1、放射線発生器2と放射線検出器3、撮像部4の動作や向きを制御する制御部9を備える(
図4参照)。
【0018】
搬送機構1は、被検査物Wが載置されたホルダーHを搬送する機構である。搬送機構1は、被検査物Wの検査用搬送路を構成する回転搬送装置11と、回転搬送装置11の搬入側に設けられた搬入装置12と、回転搬送装置11の搬出側に設けられた搬出装置13と、を備える。搬入装置12、搬出装置13は、それぞれ移載機構121、131を備える。
【0019】
搬入装置12、搬出装置13は、例えばチェーンコンベアやベルトコンベアである。搬入装置12は、移載装置121を介して、被検査物Wが載置されたホルダーHを回転搬送装置11へと搬入する。すなわち、移載装置121は、搬入装置12と回転搬送装置11の間に設けられる。搬出装置13は、移載装置131を介して、回転搬送装置11において非破壊検査を終えた被検査物Wが載置されたホルダーHを回転搬送装置11から搬出する。すなわち、移載装置131は、搬出装置13と回転搬送装置11の間に設けられる。
【0020】
移載装置121、131は、ほぼ同様の構成であり、例えばホルダーHを保持可能な保持機構を備えるホイールを含んでなる。すなわち、移載装置121は、その外周に沿って等間隔に複数の凹部を備え、図示しないモータにより水平方向に回転する装置である。凹部には図示しない保持機構が設けられ、この保持機構により凹部でホルダーHを保持または解放することが出来る。移載装置121は、水平方向に回転しながらホルダーHの保持または解放を順次行うことにより、次々にホルダーHを搬入装置12から回転搬送装置11へと移載する。同様に、移載装置131は、その外周に沿って等間隔に複数の凹部を備え、図示しないモータにより水平方向に回転する装置である。凹部には図示しない保持機構が設けられ、この保持機構により凹部でホルダーHを保持または解放することが出来る。移載装置131は、水平方向に回転しながらホルダーHの保持または解放を順次行うことにより、次々にホルダーHを回転搬送装置11から搬出装置13へと移載する。なお、保持機構は、例えば真空または磁力による吸着機構や機械によるクランプ機構により実現されるが、本実施形態では真空または磁力による吸着機構を採用している。
【0021】
回転搬送装置11は、円盤状のテーブル111と、このテーブル111と略同心円にテーブル111上に立設されるリング状の保持部112とを備える。テーブル111には図示しないモータが設けられ、テーブル111は、保持部112と共に水平方向に回転することが出来る。保持部112には、その外周に沿って等間隔に複数の凹部113が設けられている。凹部113には図示しない保持機構が設けられ、この保持機構により凹部113でホルダーHを保持または解放することが出来る。すなわち、回転搬送装置11は、移載装置121により搬入装置12から搬入されたホルダーHを、テーブル111上で順次搬送することが出来る。なお、保持機構は、例えば真空または磁力による吸着機構や機械によるクランプ機構により実現されるが、本実施形態では真空または磁力による吸着機構を採用している。
【0022】
リング状の保持部112の内側には、2つの放射線発生器2が背中合わせに設けられる。放射線発生器2は、その前を順次搬送される被検査物Wに向けて放射線ビームを照射する。放射線ビームは、焦点を頂点として角錐形状に拡大する放射線の束である。放射線は、例えばX線である。この放射線発生器2は、例えばX線管である。
【0023】
放射線検出器3は、それぞれの放射線発生器2の焦点と対向して配置される。すなわち、2組の放射線発生器2と放射線検出器3は、それぞれリング状の保持部112を挟んで対向している。放射線検出器3は、放射線の透過経路に応じて減弱した放射線強度の二次元分布を検出し、当該放射線強度に比例した透過データを出力する。この放射線検出器3は、例えばイメージインテンシファイア(I.I.)とカメラ、又はフラットパネルディテクタ(FPD)により構成される。
【0024】
2組の放射線発生器2と放射線検出器3は、非検査物Wを撮像する高さが互いに異なり、搬入装置12側の組は非検査物Wの上部を、搬出装置13側の組は被検査物Wの下部を、それぞれ撮像可能な高さに位置している。また、搬入装置12側の放射線発生器2と放射線検出器3をそれぞれ放射線発生器2aと放射線検出器3aとし、搬出装置13側の放射線発生器2と放射線検出器3をそれぞれ放射線発生器2bと放射線検出器3bとする。2組の放射線発生器2と放射線検出器3は、いずれも被検査物Wの上部または下部の片側を撮像できるように設定されている。
【0025】
放射線検出器3は、判定部31、記憶部32を備える(
図4参照)。判定部31は、例えばCPUであり、記憶部32は、例えばHDDまたはSSDといったストレージである。判定部31は、放射線検出器3が撮像した画像を、記憶部32に予め記憶されている所定の基準と照らし合わせることにより、被検査物Wの良否を判定し、その判定結果を制御部9へと出力する。被検査物Wの良否は、例えば正極板Pが負極板Nよりはみ出していないか否かによって判定される。また、はみ出していない場合であっても、さらに正極板Pの端部と負極板Nの端部との間隔が所定の間隔であるか否かによって二重に判定してもよい。すなわち、記憶部32に予め記憶されている所定の基準とは、正極板Pが負極板Nからはみ出していないこと、正極板Pの端部と負極板Nの端部との間隔が所定の間隔であること、またはその両方である。
【0026】
撮像部4は、被検査物Wを上方から撮像するカメラである。撮像部4としては、赤外線(IR)カメラ、CCDカメラ、CMOSカメラを用いることができる。撮像部4は、回転搬送装置11の上方、且つ平面視で放射線発生器2bと放射線検出器3bの手前に設けられる。手前とは、被検査物Wの搬送方向における手前を指す。すなわち、撮像部4は、放射線発生器2bと放射線検出器3bによる撮像の前に、被検査物Wを撮像する。
【0027】
また、撮像部4をその機能から捉えて説明するのであれば、撮像部4は、被検査物Wの上面に貼り付けられたマークMの位置を含めた撮像画像を生成する画像生成部である。この撮像画像から、制御部9はマークMの位置に対応するタブTの位置を検出することが出来る。
【0028】
遮蔽箱5は、搬送装置1の一部と、放射線発生器2と、放射線検出器3と、撮像部4とを囲い、放射線を遮蔽する。遮蔽箱5は、鉛などの放射線を遮蔽する材料を含み構成されている。遮蔽箱5は、例えば直方体形状である。遮蔽箱5には、被検査物Wが保持されたホルダーHを内部に搬入する搬入口51、遮蔽箱5内部の被検査物Wを遮蔽箱5外部に搬出する搬出口52が設けられ、搬入口51は搬入装置12の途上に、搬出口52は搬出装置13の途上に、それぞれ設けられている。
【0029】
図4に示すように、制御部9は、被検査物Wを搬送及び検査するために、搬送機構1、放射線発生器2、放射線検出器3、撮像部4の動作や向きを制御する。例えば、放射線検出器3の判定部31から出力された判定結果に基づいて搬送機構1を制御することが出来る。制御部9は、所謂コンピュータであり、HDDまたはSSDといったストレージ、RAM、CPU及びドライバ回路で構成される。ストレージには、例えば各構成を制御するためのプログラムやデータが記憶されている。RAMには、プログラムが展開され、またデータが一時的に記憶される。CPUはプログラムを処理し、この処理結果に従ってドライバ回路は各構成に電力を供給する。
【0030】
制御部9は、撮像部4が撮像した被検査物Wの画像に基づいて、放射線発生器2が放射線ビームを照射するタイミング、すなわち放射線発生器2の撮像タイミングを決定する。より詳細には、制御部9は、位置検出部91と、撮像タイミング決定部92と、を備える。位置検出部91は、被検査物Wの上面に貼り付けられたマークMの位置を判別してタブTの位置を検出する。撮像タイミング決定部92は、位置検出部91が検出したタブTの位置に基づいて、放射線発生器2の撮像タイミングを決定する。これにより、放射線発生器2は、マークMの位置の直下に格納されているタブTを避けるように被検査物Wを撮像することが出来る。
【0031】
[1-2.実施形態の作用]
本実施形態の被検査物Wの搬送及び検査手順について、
図5のフローチャートを中心に図面を参照しつつ説明する。
【0032】
(1)搬入・搬送工程
前提として、搬入装置12の搬送経路には、被検査物Wが載置されたホルダーHが移載装置121の手前まで並べられている。制御部9による制御により、搬送機構1が駆動されると、ホルダーHは搬入装置12から回転搬送装置11へと順次移載される(ステップS01)。より詳細には、まず、移載装置121の凹部が搬入装置12上を搬送されるホルダーHを吸着保持する。次に、このホルダーHを回転搬送装置11の保持部112の凹部113が吸着保持し、一方、移載装置121はこのホルダーHを解放する。これにより、ホルダーHは、移載装置121から回転搬送装置11へと受け渡され、保持部112と共に回転するテーブル111上を凹部113に保持された状態で搬送される(ステップS02)。
【0033】
(2)上部撮像工程
テーブル111上を搬送されるホルダーH上に載置された被検査物Wは、搬入装置12側に設けられた放射線発生器2aと放射線検出器3aにより、その上部が撮像される。より詳細には、上部の左側と右側のいずれかが撮像される。被検査物Wの上部にはタブTが存在しないため、タブTの存在に配慮せず撮像することが出来る。放射線検出器3aの判定部31は、この撮像画像に基づいて被検査物Wの良否を判定し、その判定結果を制御部9へと出力する(ステップS03)。被検査物Wの良否は、例えば正極板Pが負極板Nよりはみ出していないか否かによって判定される。また、はみ出していない場合であっても、さらに正極板Pの端部と負極板Nの端部との間隔が、記憶部32に記憶されている所定の間隔であるか否かによって二重に判定してもよい。ここで正極板Pが負極板Nよりもはみ出した不良品であると見做された被検査物Wは、後段の撮像部4による撮像、及び搬出装置13側に設けられた放射線発生器2bと放射線検出器3bによる撮像を行わずに、回転搬送装置11から搬出されてもよい。より詳細には、不良品と見做された被検査物Wは、その判定結果を判定部31から受信した制御部9が移載装置131を制御することにより、図示しない回収コンベアに移載され、この回収コンベアの先に設けられた回収箱に回収されてもよい。
【0034】
(3)下部撮像工程
ステップS03における非破壊検査を経た被検査物Wは、回転搬送装置11のテーブル111上をさらに搬送され、撮像部4の直下において当該撮像部4に撮像される(ステップS04)。撮像部4は、この撮像画像を制御部9へと送信し、制御部9の位置検出部91は、この撮像画像におけるマークMの位置を判別し、タブTの位置を検出する(ステップS05)。撮像タイミング決定部92は、このタブTの位置に基づいて、放射線発生器2bが放射線ビームを照射するタイミングを決定し、当該タイミングで放射線発生器2bに放射線ビームを照射させ、被検査物Wを撮像させる(ステップS06)。換言すると、放射線発生機2bは、撮像部4の撮像画像に基づいて、被検査物W下部の左右のいずれを撮像するかを決定する。以下では、撮像部4の撮像画像の例を示しつつこの決定について詳細に説明する。
【0035】
[マークMが左側にある場合]
図6(a)に示すように、撮像部4の撮像画像においてマークMが左側、すなわち搬送方向の反対方向側にある場合、放射線発生器2bから見るとタブTは被検査物Wの左側に格納されているので、撮像タイミング決定部92は撮像タイミングを早め、放射線発生器2bに被検査物Wの下部右側を撮像させる。被検査物Wの下部右側にはタブTは存在しないので、撮像画像は検査に適したものとなる。
【0036】
[マークMが右側にある場合]
図6(b)に示すように、撮像部4の撮像画像においてマークMが右側、すなわち搬送方向側にある場合、放射線発生器2bから見るとタブTは被検査物Wの右側に格納されているので、撮像タイミング決定部92は撮像タイミングを遅らせ、放射線発生器2bに被検査物Wの下部左側を撮像させる。被検査物Wの下部左側にはタブTは存在しないので、撮像画像は検査に適したものとなる。
【0037】
[マークMが上側または下側にある場合]
図6(c)に示すように、撮像部4の撮像画像においてマークMが上側または下側、すなわち搬送方向と垂直な方向側にある場合、放射線発生器2bから見るとタブTは被検査物Wの中央付近に格納されているので、撮像タイミング決定部92は撮像タイミングを早めて放射線発生器2bに被検査物Wの下部右側を撮像させてもよいし、撮像タイミングを遅らせて放射線発生器2bに被検査物Wの下部左側を撮像させてもよい。被検査物Wの下部左側にも下部右側にもタブTは存在しないので、下部左側と右側のいずれを撮像したとしても、撮像画像は検査に適したものとなる。
【0038】
[マークMがない場合]
撮像部4の撮像画像にマークMが映っていない場合には、マークMの逸失、被検査物Wが誤って上下反転してホルダーHに載置されているなどといったことが考えられる。このような場合は、撮像画像を受信した制御部9が非破壊検査装置100の稼働を停止し、マークMが映っていない被検査物Wを回転搬送装置11から取り除いても良いし、制御部9が移載装置131を制御することにより、マーク不良品として図示しない回収コンベアに移載し、この回収コンベアの先に設けられた回収箱に回収しても良い。
【0039】
(4)判定工程
ステップS06の後、放射線検出器3bの判定部31は、撮像画像に基づいて被検査物Wの良否を判定し、その判定結果を制御部9へと出力する(ステップS07)。被検査物Wの良否は、例えば正極板Pが負極板Nよりはみ出していないか否かによって判定される。また、はみ出していない場合であっても、さらに正極板Pの端部と負極板Nの端部との間隔が、記憶部32に記憶されている所定の間隔であるか否かによって二重に判定してもよい。ここで不良品と見做された被検査物Wは、その判定結果を判定部31から受信した制御部9が移載装置131を制御することにより、図示しない回収コンベアに移載され、この回収コンベアの先に設けられた回収箱に回収されてもよい。
【0040】
(5)搬出工程
最後に、検査を終えた被検査物WのホルダーHは、回転搬送装置11から搬出装置13へと順次移載される(ステップS08)。より詳細には、まず、移載装置131の凹部がテーブル111上を搬送されるホルダーHを吸着保持する。一方で、回転搬送装置11の保持部112の凹部113がこのホルダーHを解放する。これにより、移載装置131はこのホルダーHを吸着保持したまま水平方向に回転を続け、搬出装置13上で解放する。
【0041】
以上、ステップS01~S08により、ホルダーHに載置された被検査物Wが順次搬送及び検査される。
【0042】
[1-3.実施形態の効果]
(1)本実施形態では、回転搬送装置11の上方、且つ放射線発生器2bと放射線検出器3bの手前に撮像部4が設けられ、撮像部4の撮像画像におけるマークMの位置に基づいて、放射線発生器2bの撮像タイミングが決定される。マークMはタブTの位置に対応しているので、放射線発生器2bは、被検査物W内部に格納されているタブTを避けて撮像することができる。その結果、放射線検出器3bによる撮像画像を判定部31が判定する際に、タブTの透視画像に起因する判定不良のおそれが低減される。
【0043】
また、撮像部4の撮像画像にマークMが映っていない場合には、マークMの逸失、被検査物Wが誤って上下反転してホルダーHに載置されているなどといったことが考えられる。いずれにせよ、撮像部4の撮像画像におけるマークMの有無により、この被検査物Wを不良品として判定することができる。
【0044】
(2)本実施形態では、被検査物W下部を撮像する前に上部を撮像し、被検査物Wの良否を判定する。これにより、下部だけでなく上部でも正極板Pが負極板Nからはみ出していないか否か、両者の端部間が所定の間隔であるか否かを検査することができるので、被検査物Wの品質を向上させることができる。
【0045】
[2.他の実施形態]
本明細書においては、本発明に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0046】
(1)上記実施形態では、制御部9の撮像タイミング決定部92によりタブTの位置を避けるように放射線発生器2bに放射線ビームを照射させた。しかしながら、制御部9は、被検査物Wの左右両側に1回ずつ計2回放射線発生器2bに放射線ビームを照射させ、この2回の照射のうち、タブTの位置を避けるような照射により撮像した画像を選択し、この選択した画像を判定部31が判定するという態様でも良い。この場合、制御部9は、撮像タイミング決定部92の代わりに画像選択部を備える。
【0047】
(2)上記実施形態では、撮像部4が撮像した被検査物Wの上面に貼り付けられたマークMの位置から、制御部9の位置検出部91がマークMの位置に対応するタブTの位置を検出した。しかしながら、例えば撮像部4の代わりに放射線発生器と放射線検出器の組を設けて被検査物Wを撮像し、この撮像画像から制御部9の位置検出部91がタブTの位置を検出するようにしてもよい。この場合、画像生成部は、撮像部4ではなく、当該撮像部4の代わりに設けられる放射線発生器と放射線検出器の組である。なお、この場合の放射線発生器と放射線検出器による撮像画像は、上記実施形態の放射線発生器2と放射線検出器3とによる撮像画像と異なり、被検査物W全体を捉えたものである。
【0048】
(3)上記実施形態では、タブTが被検査物Wの下部に格納されているものとして検査を行ったが、上部に格納されているものとして検査を行ってもよい。この場合、タブTが伸びてL字に屈折している側が被検査物Wの上部またはマークMが貼り付けられる上面であり、反対側が下部である。また、撮像部4は、放射線発生器2aと放射線検出器3aの手前に設けられる。
【0049】
(4)上記実施形態では、2組の放射線発生器2と放射線検出器3により被検査物Wの上部及び下部を撮像したが、1組の放射線発生器2と放射線検出器3により上部または下部の一方であってタブTが存在する方だけを撮像しても良い。
【0050】
(5)上記実施形態では、マークMは被検査物Wの上面に貼り付けられるものとしたが、これに限られない。例えば側面であっても、タブTの位置を示していればよい。この場合、撮像部4はマークMを撮像できる位置に設けられる。また、マークMは貼り付けられるものに限らず、例えば塗料や被検査物Wの表面に彫り込まれた印であってもよい。
【0051】
(6)上記実施形態では、判定部31と記憶部32とを放射線検出器3が備えることとしたが、これらの構成及び作用効果を制御部9が担ってもよい。すなわち、放射線検出器3は、撮像画像を制御部9へと送信し、制御部9において撮像画像の判定が行われてもよい。
【0052】
(7)上記実施形態では、不良品と見做された被検査物Wを移載装置131により回収コンベアに載せて回収箱に回収させてもよいものとしたが、移載装置131から搬入装置12へと延びる図示しない再投入コンベアに載せて搬入装置12に再投入し、さらに回転搬送装置11に移載して再検査を行ってもよい。
【0053】
(8)上記実施形態の被検査物Wを搬送する搬送装置1は、回転搬送装置11の代わりに直線状のコンベアを含んで構成されてもよい。
【0054】
(9)上記実施形態の被検査物WはホルダーHに載置された状態で搬送されたが、ホルダーHを介さずに直接搬送されても良い。
【符号の説明】
【0055】
100…非破壊検査装置
1…搬送装置
11…回転搬送装置
111…テーブル
112…保持部
113…凹部
12…搬入装置
121…移載装置
13…搬出装置
131…移載装置
2…放射線発生器
3…放射線検出器
4…撮像部
5…遮蔽箱
51…搬入口
52…搬出口
9…制御部
91…位置検出部
92…撮像タイミング決定部
H…ホルダー
M…マーク
N…負極板
P…正極板
T…タブ
W…被検査物