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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】レンガ採取方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 23/02 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
E04G23/02 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020075617
(22)【出願日】2020-04-21
(65)【公開番号】P2021173000
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山野 敬史
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 徹
(72)【発明者】
【氏名】永目 正
(72)【発明者】
【氏名】松原 道彦
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-0739840(KR,B1)
【文献】特開2008-285820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 23/16,23/02
C10B 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンガを積上げて構成した建物の壁体から前記レンガを活かし取りするレンガ採取方法であり
前記壁体を構成する前記レンガの一部を撤去し、
前記レンガが撤去されたスペースと横方向に隣接するレンガを、前記スペースから、かつ、横方向から斫り取る、
レンガ採取方法。
【請求項2】
横方向に隣接する前記レンガが撤去されて拡張された前記スペースと上下方向に隣接するレンガを、前記スペースから、かつ、上下方向から斫り取る、
請求項1に記載のレンガ採取方法。
【請求項3】
前記レンガの目地に表側から切り込みを入れて、前記レンガを斫り取る、
請求項1又は請求項2に記載のレンガ採取方法。
【請求項4】
前記横方向に隣接するレンガの底面に横方向から工具を進入させて、前記横方向に隣接するレンガを斫り取る、請求項1~3の何れか1項に記載のレンガ採取方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンガ採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、コークス炉炭化室壁レンガの補修方法が示されている。この補修方法においては、補修個所のレンガを破壊、除去した部分に、別途制作した抱きレンガを嵌め込んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-231885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1のコークス炉炭化室壁レンガの補修方法では、補修個所に新たな抱きレンガを嵌め込むため、補修個所が目立つ。歴史的価値の高い建造物や、頻繁に人が往来する場所に立つ建造物のレンガを補修する場合、補修個所を目立たなくすることが好ましい。
【0005】
レンガの補修個所を目立たなくするためには、補修個所のレンガと近い時代に作成されたレンガを用いる方法等がある。この方法においては、既存建造物等からレンガを採取する際に、損傷するレンガの数を可能な限り減らす、すなわち歩留まりよく活かし取りすることが好ましい。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、構造物からレンガを採取する際に、歩留まりよく活かし取りできるレンガ採取方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1のレンガ採取方法は、レンガを積上げて構成した建物の壁体から前記レンガを活かし取りするレンガ採取方法であり、前記壁体を構成する前記レンガの一部を撤去し、前記レンガが撤去されたスペースと横方向に隣接するレンガを、前記スペースから、かつ、横方向から斫り取る。
【0008】
請求項1のレンガ採取方法では、構造物の躯体の表面に配置されたレンガの一部を撤去してスペースを形成する。そして、このスペースと横方向に隣接するレンガは、横方向から斫り取られる。これにより、躯体の表面からレンガを斫り取る場合と比較して、レンガを活かし取りし易い。すなわち、再利用可能な状態でレンガを撤去し易い。したがって、歩留まりよくレンガを活かし取りできる。
【0009】
請求項2のレンガ採取方法は、請求項1に記載のレンガ採取方法において、横方向に隣接する前記レンガが撤去されて拡張された前記スペースと上下方向に隣接するレンガを、前記スペースから、かつ、上下方向から斫り取る。
【0010】
請求項2のレンガ採取方法では、横方向に隣接したレンガが撤去されて拡張されたスペースから、このスペースと上下方向に隣接するレンガが斫り取られる。このため、スペースを拡張しないで上下方向に隣接するレンガを斫り取る場合と比較して、作業が容易である。これにより、歩留まりよくレンガを活かし取りできる。
【0011】
請求項3のレンガ採取方法は、請求項1又は請求項2に記載のレンガ採取方法において、前記レンガの目地に表側から切り込みを入れて、前記レンガを斫り取る。
【0012】
請求項3のレンガ採取方法では、レンガの目地に表側から切り込みを入れたうえで、レンガが斫り取られる。このためレンガを斫り取りやすい。これにより、歩留まりよくレンガを活かし取りできる。
請求項4のレンガ採取方法は、請求項1~3の何れか1項に記載のレンガ採取方法において前記横方向に隣接するレンガの底面に横方向から工具を進入させて、前記横方向に隣接するレンガを斫り取る。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、構造物からレンガを採取する際に、歩留まりよく活かし取りできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(A)は本発明の実施形態に係るレンガ採取方法が適用される壁体を部分的に示した斜視図であり、(B)は壁体を構成するレンガを示した斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るレンガ採取方法が適用される壁体を分解して示した斜視図である。
図3】(A)は本発明の実施形態に係るレンガ採取方法におけるレンガの採取順序の一例を示す立面図であり、(B)は別の一例を示す立面図である。
図4】(A)は本発明の実施形態に係るレンガ採取方法において、最初に撤去するレンガの周囲の目地に切り込みを入れた状態を示す立面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図である。
図5】(A)は本発明の実施形態に係るレンガ採取方法において、最初に撤去するレンガに格子状の切り込みを入れて小片を形成した状態を示す立面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図である。
図6】(A)は本発明の実施形態に係るレンガ採取方法において、最初に撤去するレンガから小片を破砕した状態を示す立面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図である。
図7】(A)は本発明の実施形態に係るレンガ採取方法において、最初に撤去するレンガ及びその周囲の目地に、再度切り込みを入れて小片を形成した状態を示す立面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図である。
図8】(A)は本発明の実施形態に係るレンガ採取方法において、レンガを撤去した部分にスペースが形成された状態を示す立面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図である。
図9】(A)は本発明の実施形態に係るレンガ採取方法において、レンガを撤去して形成されたスペースから2つめのレンガを撤去している状態を示す立面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図である。
図10】(A)は本発明の実施形態に係るレンガ採取方法において、2つめのレンガを撤去することにより、レンガを撤去して形成されたスペースが拡張された状態を示す立面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図である。
図11】(A)は本発明の実施形態に係るレンガ採取方法において、レンガを撤去して拡張されたスペースから2層目のレンガを撤去している状態を示す立面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図である。
図12】(A)は本発明の実施形態に係るレンガ採取方法において、レンガを撤去して拡張されたスペースから2層目における2個目のレンガを撤去している状態を示す立面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図である。
図13】(A)は本発明の実施形態に係るレンガ採取方法において、レンガを撤去して拡張されたスペースから3層目のレンガを撤去している状態を示す立面図であり、(B)は(A)のB-B線断面図である。
図14】(A)は本発明の実施形態に係るレンガ採取方法が適用される壁体をイギリス積みとした変形例を示す斜視図であり、(B)はフランス積みとした変形例を示す斜視図であり、(C)は長手積みとした変形例を示す斜視図である。
図15】本発明の実施形態に係るレンガ採取方法によって採取されたレンガによって補修される壁体において、長手面が露出したレンガが破損している状態を示す立面図である。
図16】(A)は本発明の実施形態に係るレンガ補修方法が適用される壁体の、長手面が露出したレンガを示す断面図であり、(B)は破損したレンガを撤去した状態を示す断面図であり、(C)は破損したレンガを撤去して形成されたスペースへ採取したレンガを挿入している状態を示す断面図であり、(D)は破損したレンガを撤去して形成されたスペースに採取したレンガを挿入した状態を示す断面図である。
図17】本発明の実施形態に係るレンガ採取方法によって採取されたレンガによって補修される壁体において、小口面が露出したレンガが破損している状態を示す立面図である。
図18】(A)は本発明の実施形態に係るレンガ補修方法が適用される壁体の、小口面が露出したレンガを示す断面図であり、(B)は破損したレンガを撤去した状態を示す断面図であり、(C)は破損したレンガを撤去して形成されたスペースへ採取したレンガを挿入している状態を示す断面図であり、(D)は破損したレンガを撤去して形成されたスペースに採取したレンガを挿入した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本実施形態に係るレンガ採取方法及びレンガ補修方法について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0016】
<レンガ採取の目的>
図1(A)には、レンガBを積み上げて形成された壁体10の出隅部(X方向に沿う壁部10XとY方向に沿う壁部10Yとの交差点)が示されている。壁体10は、一例として、レンガBの長手面BA(長辺に沿う端面)のみが露出する層と、小口面BB(短辺に沿う端面)のみが露出する層とが、表面に交互に配置される積み方(所謂オランダ積み)で積まれて形成されている。
【0017】
壁体10は、躯体の一例である。また、壁体10は、構造物の一例としての建物の一部を構成している躯体である。
【0018】
レンガBは、再利用することを目的として壁体10から採取される。本実施形態においては、壁体10の表面からレンガBの一部を斫り取り、壁体10の表面以外の部分は残置する。なお、レンガBの一部又は全部を、再利用可能な状態で壁体10から撤去することを、本明細書では「活かし取り」または「採取」と称す。
【0019】
このようなレンガの採取方法は、レンガを積み上げて形成された壁体の一部が損傷した場合に、当該壁体のレンガを入れ替える目的で用いられる。一例として、建物における目立つ場所の壁体が損傷した場合に、同じ建物における目立たない場所の壁体10から、レンガBを採集する。そして、損傷部分のレンガを、採取されたレンガBと入れ替える。
【0020】
ここで、「目立つ場所」とは、「不特定多数の人に視認され易い場所」のことであり、例えば所定期間における人の往来が所定数以上の場所、建物への来訪者が利用する場所、又は、屋外空間に面した場所、の少なくとも何れかである。
【0021】
また、「目立たない場所」とは、「不特定多数の人に視認され難い場所」のことであり、例えば所定期間における人の往来が所定数未満の場所、建物の所有者またはテナントのみが利用する場所、又は、屋内空間に面した場所、の少なくとも何れかである。
【0022】
「所定期間における人の往来が所定数以上の場所」とは、一例として、1日における人の往来が500人以上の場所である。この人数は、1か月又は1週間の延べ往来者数を割り戻した平均値とすることができる。または、特定の日(例えば土曜日、日曜日、祝祭日)における人数とすることができる。なお、500人との数値は、適宜設定できる。例えば50人でもよいし5000人でもよい。
【0023】
「建物への来訪者」とは、例えば商業施設の顧客や、公共施設の利用者など、当該建物に商品や役務を得る目的で訪れる人である。
【0024】
<レンガ及び壁体の構成>
図1(B)に示すように、レンガBは、長辺方向の寸法W1が、短辺方向の寸法W2のおよそ2倍とされている(W1≒2×W2)。レンガBを積み重ねて形成された壁体10は、厚みDが、レンガBの長辺方向の寸法W1のおよそ1.5倍とされている(D≒W1×1.5≒W2×3)。
【0025】
図2に示すように、壁体10は、レンガBを組み合わせて形成された層10A~10Gが、下から順に積層されて構成されている。なお、壁体10におけるレンガBの積層数は特に限定されるものではない。すなわち、層10Aより下方、及び層10Gより上方に任意の数の層を積層できる。
【0026】
X方向に沿う壁部10Xにおいて、層10A、10C、10E、10GではレンガBの小口面BBが露出している。一方、層10B、10D、10FではレンガBの長手面BAが露出している。
【0027】
一方、Y方向に沿う壁部10Yにおいて、層10A、10C、10E、10GではレンガBの長手面BAが露出している。一方、層10B、10D、10FではレンガBの小口面BBが露出している。
【0028】
<レンガ採取方法の概要>
以下の説明におけるレンガBの採取方法は、壁体10における壁部10Xの表面のレンガBを採取する方法である。このうち、層10B、10D、10Fにおいては、長手面BAが露出したレンガBそれぞれの「全体」を歩留まりよく採取する。一方、層10A、10C、10E、10Gにおいては、小口面BBが露出したレンガBそれぞれの「約半分」(一点鎖線で示した部分より表面側の部分)を歩留まりよく採取する。
【0029】
(レンガ採取順序)
図3(A)には、壁体10を構成するレンガBのうち、壁体10から撤去されるレンガB1~B37が示されている。レンガB1はレンガB2より先に撤去され、レンガB2はレンガB3より先に撤去されるレンガBである。すなわち、これらの符号における数字は、壁体10から撤去される順番を示しているものである。
【0030】
なお、図3(A)においては、図示を簡略化するため、レンガB1~B37の引き出し線を省略している。これらの符号は、その符号が記載された場所にあるレンガBを示すものとする。レンガBの符号及び引き出し線については、後述する図3(B)についても同様である。
【0031】
なお、本明細書において「撤去」とは「活かし取り(採取)」を含む概念である。「活かし取り(採取)」は、上述した通り、レンガBの一部又は全部を、再利用可能な状態で壁体10から撤去することを示している。「撤去」は再利用が可能か不可能かに関わらず、レンガBの一部又は全部を壁体10から取り除くことを示している。
【0032】
図3(A)に示す例では、まず層10DにおけるレンガBを、左側から順に複数撤去する(レンガB1~B5)。
【0033】
次に、層10Dと下方向に隣接する層10CにおけるレンガBを、左側から順に複数撤去する。このとき撤去する各レンガBは、壁体10の表面に露出している辺のうち、上側の辺の全てが、層10DからレンガB(レンガB1~B5)が撤去されて形成されたスペースと隣接するレンガとすることが好ましい(レンガB6~B13)。
【0034】
次に、層10Cと下方向に隣接する層10BにおけるレンガBを、左側から順に複数撤去する。このとき撤去するレンガBは、壁体10の表面に露出している辺のうち、上側の辺の全てが、層10CからレンガB(レンガB6~B13)が撤去されて拡張されたスペースと隣接するレンガとすることが好ましい(レンガB14~B16)。
【0035】
次に、層10Bと下方向に隣接する層10AにおけるレンガBを、左側から順に複数撤去する。このとき撤去するレンガBは、壁体10の表面に露出している辺のうち、上側の辺の全てが、層10BからレンガB(レンガB14~B16)が撤去されて拡張されたスペースと隣接するレンガとすることが好ましい(レンガB17~B21)。
【0036】
次に、層10Dと上方向に隣接する層10EにおけるレンガBを、左側から順に複数撤去する。このとき撤去する各レンガBは、壁体10の表面に露出している辺のうち、下側の辺の全てが、層10DからレンガB(レンガB1~B5)が撤去されて拡張されたスペースと隣接するレンガとすることが好ましい(レンガB22~B29)。
【0037】
次に、層10Eと上方向に隣接する層10FにおけるレンガBを、左側から順に複数撤去する。このとき撤去するレンガBは、壁体10の表面に露出している辺のうち、下側の辺の全てが、層10EからレンガB(レンガB22~B29)が撤去されて拡張されたスペースと隣接するレンガとすることが好ましい(レンガB30~B32)。
【0038】
次に、層10Fと上方向に隣接する層10GにおけるレンガBを、左側から順に複数撤去する。このとき撤去するレンガBは、壁体10の表面に露出している辺のうち、下側の辺の全てが、層10FからレンガB(レンガB30~B32)が撤去されて拡張されたスペースと隣接するレンガとすることが好ましい(レンガB33~B37)。
【0039】
(レンガ採取順序のバリエーション)
なお、これらのレンガB1~B37は、各層において左側(左端)から順に撤去したが、右側(右端)から順に撤去してもよい。あるいは左端又は右端以外のレンガBから撤去してもよい。但し、各層において連続して撤去される2つのレンガBは、互いに横方向に隣接しているものとする。
【0040】
また、図3(A)に示す例においては、層10DのレンガBを撤去した後、層10Dより下方向の層10C、10B、10AのレンガBに加えて、層10Dより上方向の層10E、10F、10GのレンガBを撤去しているが、実施形態はこれに限らない。例えば層10Dより下方向及び上方向の何れかのみのレンガBを撤去してもよい。
【0041】
さらに、最初にレンガBを撤去する層は、層10Dに限らず、任意の層を選択することができる。そして、最初にレンガBを撤去する層がどの層かに関わらず、当該層におけるレンガBの撤去数は、任意の数を選択することができる。
【0042】
例えば図3(B)に示す例では、最初にレンガBを撤去する層は層10Fであり、この層10Fから、3つのレンガB(レンガB1~B3)を撤去している。次に、層10Fと下方向に隣接する層10Eから4つのレンガB(レンガB4~B7)を撤去している。次に、層10Eと下方向に隣接する層10Dから、1つのレンガB(レンガB8)を撤去している。
【0043】
レンガの撤去数は、レンガの必要数に応じて適宜決定される。すなわち、本実施形態においては、補修する壁体の損傷範囲の広さに応じて、適宜決定される。例えば補修範囲が広ければ撤去数を大きくする。この場合、最初にレンガBを撤去する層における撤去数を多くすることが好ましい。
【0044】
また、レンガBの撤去数は、レンガBの歩留まりに応じて適宜決定される。「歩留まり」とは、撤去したレンガBに対して、再利用可能なレンガBの数(活かし取りできたレンガBの数)の割合のことである。この割合が高ければ高いほど、歩留まりがよい。
【0045】
レンガBの歩留まりは、レンガBの質、レンガB同士を固定するモルタルの質、壁体10が完成してからの経過日数及び壁体10の立地条件等によって影響を受けるが、レンガの採取方法によっても影響を受ける。本実施形態のレンガ採取方法は、レンガの採取方法によって影響を受ける歩留まりをよくすることを目的とするものである。
【0046】
<レンガ採取の具体的な方法>
壁体10からレンガBを採取する具体的な方法について、図4(A)、(B)~図13(A)、(B)を用いて説明する。
【0047】
壁体10からレンガBを採取する際は、最初に撤去するレンガB1を破砕して撤去する。そして、2つ目以降に撤去するレンガBについて、できるだけ多くのレンガBを再生可能に採取する。
【0048】
(最初のレンガ撤去方法)
レンガB1を撤去するには、まず、図4(A)、(B)に示すように、レンガB1と、レンガB1の周囲のレンガBとの間の目地にディスクグラインダー、電動カッターや電動ドリル等(以下、「電動カッター等」と称す)で切り込みV1を入れる。すなわち、目地に充填されたモルタルを、電動カッター等で削り取る。なお、図4(A)、(B)~図13(A)、(B)において説明する各レンガB1、B2…は、図3(A)におけるレンガB1、B2、…に対応するものとする。
【0049】
次に、図5(A)、(B)に示すように、レンガB1の表面にディスクグラインダー等で格子状の切り込みV2を入れる。これにより、レンガB1は複数の小片Pに分割される。切り込みV1、V2は、これらの深さが、例えばレンガB1の短辺方向の寸法W2の深さの半分と同程度となるように形成される。
【0050】
そして、この小片Pを、ノミ及びハンマー等を用いて破砕する。これにより、図6(A)、(B)に示すように、レンガB1の表面部分が撤去され、撤去された部分にスペースV3が形成される。スペースV3は、壁体10の表面に形成された凹部である。
【0051】
次に、図7(A)、(B)に示すように、残ったレンガB1と周囲のレンガBとの間の目地に、ディスクグラインダー等で切り込みV4を入れる。また、残ったレンガB1の表面にディスクグラインダー等で格子状の切り込みV5を入れる。これにより、残ったレンガB1も、複数の小片Pに分割される。切り込みV4、V5は、これらの深さ(壁体10の表面からの深さ)が、例えばレンガB1の短辺方向の寸法W2の深さと同程度以上となるように形成することが好ましい。
【0052】
そして、この小片Pを、ノミ及びハンマー等を用いて破砕する。これにより、図8(A)、(B)に示すように、レンガB1の全てが撤去され、スペースV6が形成される。スペースV6は、壁体10の表面に形成された凹部である。
【0053】
なお、小片Pを破砕する際に、レンガB1の裏面に付着しているモルタルを除去することが好ましい。同様に、レンガB1の側面(露出した表面と交わる面)に付着していたモルタルを周囲のレンガBから除去することが好ましい。
【0054】
本実施形態においては、レンガB1を撤去するために、切り込みV1(図5参照)と切り込みV4(図7参照)とを2回に分けて形成し、切り込みV2(図5参照)と切り込みV5(図7参照)とを2回に分けて形成している。このため、レンガB1は2回に分けて小片Pに分割されて破砕される(図6図8参照)。これにより、1回あたりの切り込み深さを浅くして、小片Pを破砕し易くしている。
【0055】
なお、これらの切り込みは、レンガB1の短辺方向の寸法W2に応じて、3回以上に分けて形成してもよいし、1回で形成してもよい。
【0056】
(2個目以降のレンガ撤去方法)
最初に撤去したレンガB1に次いで、2個目のレンガB(図9(A)、(B)に示すレンガB2)を撤去する。レンガB2は、レンガB1が撤去されて形成されたスペースV6と横方向に隣接するレンガBである。
【0057】
レンガB2を撤去するには、まず、レンガB2と、レンガB2の上下の層に配置されたレンガBとの間の目地に、ディスクグラインダー等で切り込みV7を入れる。切り込みV7は、層10Dにおいて、レンガBを撤去する予定の部分に亘って形成することが好ましい。例えば切り込みV7は、図3においてレンガB2が配置された部分からレンガB5が配置された部分に亘って形成する。
【0058】
また、レンガB2と、レンガB2と横方向に隣接するレンガB(レンガB3)と、の間の目地にディスクグラインダー等で切り込みV8を入れる。切り込みV7、V8は、深さがレンガBの短辺方向の寸法W2の深さと同程度以上となるように形成することが好ましい。
【0059】
次に、図9(A)に示すように、レンガB1が撤去されて形成されたスペースV6から、かつ、横方向から、ノミ等の工具をレンガB2の底面(壁体10の表面に露出した面と反対側の面)に進入させて、レンガB2を斫り取る。
【0060】
レンガB2は、切り込みV7、V8によって周囲のレンガBと分離されている。また、スペースV6を形成したことにより、レンガB2の底面に、横方向から(図9(A)における紙面左方向から、また、図9(B)における紙面手前方向から)工具を進入させることができる。このため、図10(B)に示すように、レンガB2を破損させずに撤去し易い。すなわち、レンガB2を、再利用可能な状態で撤去(活かし取り)し易い。
【0061】
レンガB1、B2と同じ層10Dの各レンガ(図3におけるレンガB3、B4、B5)は、レンガB2と同様に斫り取られる。このように、レンガB2、B3、B4、B5を撤去することにより、図10(A)に示すように、レンガB1が撤去されて形成されたスペースV6が、横方向に拡張される。
【0062】
(2層目のレンガ撤去方法)
1層目(層10D)のレンガBを撤去した後、2層目のレンガBを撤去する。この層は、最初にレンガを撤去した層と上下方向に隣接する層である。本実施形態においては、図3を用いて説明したように、層10Dと下方向に隣接する層10CのレンガBを撤去する。
【0063】
層10Cにおいては、層10DのレンガBを撤去することで形成されたスペースV6と隣接するレンガBのうち、どのレンガBを最初に撤去してもよい。層10Cにおける最初のレンガB6を撤去するには、まず、レンガB6と、レンガB6の下の層に配置されたレンガBとの間の目地にディスクグラインダー等で切り込みV9を入れる。
【0064】
切り込みV9は、層10Cにおいて、レンガBを撤去する予定の部分に亘って形成することが好ましい。例えば、図3においてレンガB6が配置された部分からレンガB13が配置された部分に亘って形成する。
【0065】
また、層10Cにおいて、互いに横方向に隣接する各レンガB同士の間に切り込みV10を入れる。切り込みV9、V10は、深さがレンガBの短辺方向の寸法W2の深さと同程度以上となるように形成することが好ましい。
【0066】
次に、図11(A)に示すように、スペースV6から、かつ、上方向から、ノミ等の工具をレンガB6に押し当て、レンガB6を打割る。これによりレンガB6が斫り取られる。
【0067】
レンガB6は、切り込みV9、V10によって周囲のレンガBと分離されている。また、スペースV6を形成したことにより、レンガB6の側面(壁体10の表面に露出した面と交わる面)に、上方向から(図11(A)、(B)における紙面上方向から)工具を押し当てることができる。このため、図12(B)に示すように、レンガB6の「一部」を破損させずに撤去し易い。すなわち、レンガB6の一部を、再利用可能な状態で撤去(活かし取り)し易い。
【0068】
なお、「レンガB6の一部を破損させずに撤去」とは、レンガB6において、少なくとも壁体10の表面に露出した面が含まれる部分を、破損させずに撤去することを示す。このように、本実施形態におけるレンガ採取方法は、必ずしもレンガBの「全体」を再利用可能な状態で撤去する方法だけでなく、レンガBの「一部」すなわち必要な部分のみを再利用可能な状態で撤去する方法も含む。
【0069】
次に、2層目(層10C)において最初に撤去したレンガB6に次いで、2個目のレンガB(図12(A)、(B)に示すレンガB7)を撤去する。レンガB7は、レンガB6が撤去されて拡張されたスペースV6と上方向及び横方向に隣接するレンガBである。
【0070】
レンガB7を撤去するためには、図12(A)に示すように、スペースV6から、かつ、上方向から、ノミ等の工具をレンガB7に押し当て、レンガB7を打割る。または、スペースV6から、かつ、横方向から、ノミ等の工具をレンガB7に押し当て、レンガB7を打割ってもよい。これによりレンガB7が斫り取られる。
【0071】
レンガB6、B7と同じ層10Cの各レンガ(図3におけるレンガB8~B13)は、レンガB7と同様に撤去される。このように、2層目(層10C)において2個目以降に撤去されるレンガB(レンガB7~レンガB13)は、スペースV6と横方向及び上方向に隣接しているため、撤去が容易である。
【0072】
(3層目のレンガ撤去方法)
2層目(層10C)のレンガを撤去した後、3層目のレンガBを撤去する。この層は、層10D又は層10Cと上下方向に隣接する層である。本実施形態においては、図3を用いて説明したように、層10Cと下方向に隣接する層10BのレンガBを撤去する。
【0073】
層10Bにおいても、層10D、層10CのレンガBを撤去することで形成されたスペースV6と隣接するレンガBのうち、どのレンガBを最初に撤去してもよい。層10Bにおける最初のレンガB14を撤去するには、図13(A)、(B)に示すように、まず、レンガB14と、レンガB14の下の層に配置されたレンガBとの間の目地にディスクグラインダー等で切り込みV11を入れる。
【0074】
切り込みV11は、層10Bにおいて、レンガBを撤去する予定の部分に亘って形成することが好ましい。例えば、図3においてレンガB14が配置された部分からレンガB16が配置された部分に亘って形成する。
【0075】
また、層10Bにおいて互いに横方向に隣接する各レンガB同士の間に、切り込みV12を入れる。切り込みV11、V12は、深さがレンガBの短辺方向の寸法W2の深さと同程度以上となるように形成することが好ましい。
【0076】
次に、図13(A)に示すように、スペースV6から、かつ、上方向から、ノミ等の工具をレンガB14の底面に進入させて、レンガB14を斫り取る。
【0077】
次に、レンガB14と横方向に隣接するレンガB15を撤去するためには、スペースV6から、かつ、上方向から、ノミ等の工具をレンガB15の底面に進入させて、レンガB15を斫り取る。または、スペースV6から、かつ、横方向から、ノミ等の工具をレンガB15の底面に進入させて、レンガB15を斫り取ってもよい。
【0078】
(その他の層のレンガ撤去方法)
4層目以降の層におけるレンガBの撤去方法については、2層目又は3層目におけるレンガBの撤去方法と同様であり説明を省略する。層10Dの上方に配置された層、すなわち、スペースV6と下方向に隣接する各レンガBについては、スペースV6から、かつ、下方向から、ノミ等の工具をレンガBの底面に進入させて、レンガBを斫り取ることができる。又は、ノミ等の工具をレンガB6に押し当て、レンガBを打割って斫り取る。
【0079】
<レンガの洗浄>
上記の方法で採取したレンガBは、補修個所のレンガと入れ替える前に、洗浄される。この洗浄とは、例えば、レンガBに付着したモルタルを除去することを指す。
【0080】
モルタルを除去するために、一例として、モルタルが付着したレンガBを、酸溶液に浸漬する。モルタルには水酸化カルシウム(Ca(OH))又は炭酸カルシウム(CaCO)が含まれている。水酸化カルシウムのカルシウム成分は、中和反応によって酸溶液中に溶解する。また、炭酸カルシウムのカルシウム成分は、弱酸の遊離反応によって酸溶液中に溶解する。
【0081】
酸溶液の酸の種類としては、モルタルの少なくとも一部の成分と反応してモルタルを溶解させることが可能なものを適宜選択することができる。例えば、塩酸、硝酸、硫酸、クエン酸、ヨウ化水素酸、過塩素酸、臭化水素酸、塩素酸、臭素酸、ヨウ素酸、過臭素酸、メタ過ヨウ素酸、過マンガン酸、チオシアン酸、王水、リンゴ酸、乳酸、グリコール酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フタル酸、酢酸、ギ酸、酒石酸、安息香酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸等を選択することができる。
【0082】
なお、レンガBに付着したモルタルは全て除去してもよいし、一部のみを除去してもよい。モルタルを一部除去するだけでも、レンガBとの接触面を脆弱化させることができるため、残ったモルタルを手作業(ハンマー等による打撃)で剥離し易くすることができる。
【0083】
レンガBに付着したモルタルを除去した後、レンガBに付着した酸溶液の残留塩を除去する。残留塩を除去するためには、レンガBを流水にさらしながらブラシ等で擦る。または、レンガBを水に浸漬する。
【0084】
また、モルタルを除去するために、別の一例として、モルタルが付着したレンガBを、加熱する。モルタルに含まれる水酸化カルシウム及び炭酸カルシウムは、加熱によって酸化カルシウムとなって収縮する。このことによりモルタルに微細な亀裂が入ってモルタルが脆弱化する。なお、このときの加熱温度は、レンガBの焼成温度より低い温度とすることが好ましい。加熱と酸溶液への浸漬は、併用してもよい。
【0085】
<レンガの入れ替え>
(長手面が露出したレンガの入れ替え)
上記の方法で採取(活かし取り)及び洗浄されたレンガBを、破損したレンガと入れ替える。図15には、レンガCを積み上げて形成された壁体20が示されている。壁体20においては、レンガC1が破損している。レンガC1は、図1(B)に示すレンガBと同形状であり、壁体20の表面に、長手面が露出して配置されている。このレンガC1を撤去して、撤去した場所に、レンガBを挿入する。
【0086】
まず、図16(A)に示す破損したレンガC1を、図16(B)に示すように撤去する。撤去方法は、任意の方法を採用できるが、上述したレンガB1の撤去方法を採用することもできる。この際、レンガC1と周囲のレンガCとの間に充填されていたモルタルも斫り取って撤去する。これにより、スペースV13を形成する。
【0087】
レンガC1及びモルタルを撤去した後、撤去して露出した面を水で湿らせる。そして図16(C)に示すように、露出した面のうち、水平面(上向きの面)に敷モルタルM1を塗る。そして、採取されたレンガB(一例として図9(A)、(B)、図10(A)、(B)に示す方法で撤去されたレンガB2)の鉛直面(壁体20の表面に露出しない面)に、付けモルタルM2を塗る。
【0088】
次にレンガB2をスペースV13へ挿入し、図16(D)に示すように、差し目地モルタルM3によって目地を充填する。これにより、壁体20及び壁体20のレンガが補修される。
【0089】
(小口面が露出したレンガの入れ替え)
図17には、壁体20の破損したレンガC2が示されている。レンガC2は、レンガC1と同様、図1(B)に示すレンガBと同形状であるが、壁体20の表面に、小口面が露出して配置されている。このレンガC2の一部を撤去して、撤去した場所に、レンガBを挿入する。
【0090】
まず、図18(A)に示す破損したレンガC2を、図18(B)に示すように撤去する。撤去方法は、任意の方法を採用できるが、上述したレンガB1の撤去方法を採用することもできる。この際、レンガC2と周囲のレンガCとの間に充填されていたモルタルも斫り取って撤去する。これにより、スペースV14を形成する。
【0091】
なお、この際、レンガC2は全て撤去せず、一部(壁体20の表面に露出した部分)のみを撤去すればよい。具体的には、スペースV14の深さが、一例として図12(A)、(B)に示す方法で撤去されたレンガB6の全体を挿入できる深さとなるように、レンガC2を撤去する。
【0092】
レンガC2及びモルタルを撤去した後、撤去して露出した面を水で湿らせる。そして図18(C)に示すように、露出した面のうち、水平面(上向きの面)に敷モルタルM1を塗る。そして、採取されたレンガB(一例としてレンガB6)の鉛直面(壁体20の表面に露出しない面)に、付けモルタルM2を塗る。
【0093】
次にレンガB6をスペースV14へ挿入し、図18(D)に示すように、差し目地モルタルM3によって目地を充填する。これにより、壁体20及び壁体20のレンガが補修される。
【0094】
<作用及び効果>
本実施形態に係るレンガ採取方法では、図8(A)に示すように、躯体としての壁体10の表面に配置されたレンガBの一部(レンガB1、図4(A)参照)を撤去してスペースV6を形成する。
【0095】
そして、このスペースV6と横方向に隣接するレンガB2は、図9(A)に示すように、横方向から斫り取られる。これにより、躯体の表面からレンガBを斫り取る場合と比較して、レンガBを活かし取りし易い。すなわち、再利用可能な状態でレンガBを撤去し易い。したがって、歩留まりよくレンガBを活かし取りできる。
【0096】
また、本実施形態に係るレンガ採取方法では、図11(A)に示すように、横方向に隣接したレンガB(例えば図3におけるレンガB1~B5)が撤去されて拡張されたスペースV6から、このスペースV6と上下方向に隣接するレンガB(例えば図3におけるレンガB6~B13)が斫り取られる。
【0097】
このため、スペースV6を拡張しないで上下方向に隣接するレンガBを斫り取る場合と比較して、作業が容易である。これにより、歩留まりよくレンガBを活かし取りできる。
【0098】
また、本実施形態に係るレンガ採取方法では、図9(A)、図11(A)、図13(A)に示すように、レンガBの目地に表側から切り込み(切り込みV7~V12を形成)を入れたうえで、レンガBが斫り取られる。このためレンガBを斫り取りやすい。これにより、歩留まりよくレンガBを活かし取りできる。
【0099】
また、本実施形態に係るレンガ補修方法では、建物の一部(壁体10)に配置されたレンガBを活かし取りし、建物の他部(壁体20)の損傷したレンガCを、活かし取りされたレンガBと入れ替える。すなわち、レンガCが同じ建物のレンガBによって補修される。同じ建物のレンガは色や風合いが類似する。これにより、補修個所を目立たなくすることができる。
【0100】
また、本実施形態に係るレンガ補修方法では、所定期間における人の往来が所定数未満の場所、建物の所有者またはテナントのみが利用する場所、又は、屋内空間に面した場所、の少なくとも何れかから、レンガBが活かし取りされる。
【0101】
所定期間における人の往来が所定数未満の場所は、人の往来が少ない場所である。また、建物の所有者またはテナントのみが利用する場所は、不特定多数の人が利用しない場所である。さらに、屋内空間に面した場所は、建物の外観に現れない場所である。これにより、レンガBを活かし取りした跡が不特定多数の人に視認される機会を抑制できる。
【0102】
また、本実施形態に係るレンガ補修方法では、所定期間における人の往来が所定数以上の場所、建物への来訪者が利用する場所、又は、屋外空間に面した場所、の少なくとも何れかに配置され損傷したレンガCが補修される。
【0103】
所定期間における人の往来が所定数以上の場所は、人の往来が多い場所である。また、建物への来訪者が利用する場所は、不特定多数の人が利用する場所である。さらに、屋外空間に面した場所は、建物の外観に現れる場所である。これにより、レンガの補修箇所が不特定多数の人に視認される。しかしながら、補修個所が目立たないため、建物の意匠性が損なわれることを抑制できる。
【0104】
<その他の実施形態>
上記実施形態において、レンガBが採取される壁体10は、図1(A)、(B)に示すように、壁体の表面に、レンガBの長手面BAのみが露出する層と小口面BBのみが露出する層とが、交互に配置されるオランダ積みの壁体とされているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0105】
例えば本実施形態のレンガ採取方法は、図14(A)に示すように、出隅部の処理がオランダ積みとは異なるイギリス積みの壁体12からレンガBを採集する場合にも適用できる。又は、図14(B)に示すように、1つの層にレンガBの長手面BA及び小口面BBの双方が露出するフランス積みの壁体14からレンガBを採集する場合にも適用できる。
【0106】
さらに、図14(C)に示すように、表面にレンガBの長手面BAのみが露出する長手積みの壁体16からレンガBを採集する場合にも適用できる。長手積みの壁体16では、レンガBを打割らずに撤去できる。図14(A)~(C)の構成は、レンガCが補修される壁体20にも適用できる。
【0107】
またさらに、レンガBを採取する壁体は、必ずしもレンガBを積層して形成する必要はない。例えば鉄筋コンクリート等で形成され、表面にレンガBを貼り付けて形成された壁体としてもよい。またさらに、レンガBを採取する躯体は必ずしも壁体である必要はなく、柱、梁、開口部の三方枠等としてもよい。レンガCが補修される壁体についても同様である。
【0108】
なお、図1(A)、図14(A)~(C)に示した例においては、各壁体10、12、14、16の厚みDが、レンガBの長辺方向の寸法W1のおよそ1.5倍とされているが、本発明の実施形態はこれに限らない。これらの壁体の厚みは、レンガBの長辺方向の寸法W1の1.5倍より大きくてもよいし、1.5倍未満でもよい。
【0109】
例えばレンガBが、壁体の厚み方向に沿って長辺方向に2つと、短辺方向に1つ並べられていれば、当該壁体は、レンガBの長辺方向の寸法W1のおよそ2.5倍の厚みを備えたものとなる。このように、上記実施形態におけるレンガ採取方法が適用される壁体においては、レンガBの組積方法及び壁体の厚みは何ら限定されるものではない。
【0110】
また、上記実施形態においては、最初に撤去するレンガB1の表面に格子状の切り込みV2を入れ、小片Pに分割して破砕しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えばこの切り込みV2を省略し、目地の切り込みV1にノミを挿入することでレンガB1を撤去してもよい。レンガB1を撤去する方法は、レンガB1の強度棟に応じて適宜選択できる。
【0111】
また、上記実施形態においては、最初にレンガBを撤去した層(層10D)に続いて、上下に隣接する層(層10C等)のレンガBを撤去しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。必要が数のレンガを活かし取りすることができれば、1層のレンガBのみを撤去するものとしてもよい。
【0112】
また、上記実施形態においては、所定期間における人の往来が所定数未満の場所、建物の所有者またはテナントのみが利用する場所、又は、屋内空間に面した場所、の少なくとも何れかからレンガBを活かし取りしているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
すなわち、これらの条件を満たさない場所からレンガBを活かし取りしてもよい。建物の用途や建物の保有者の意思によって、適宜決定することができる。
【0113】
同様に、上記実施形態においては、所定期間における人の往来が所定数以上の場所、建物への来訪者が利用する場所、又は、屋外空間に面した場所、の少なくとも何れかのレンガCを、活かし取りしたレンガBと入れ替えているが、本発明の実施形態はこれに限らない。これも建物の用途や建物の保有者の意思によって、適宜決定することができる。
【0114】
また、上記実施形態において、レンガBが採取される壁体10とレンガCが補修される壁体20とは同一の建物とされているが、本発明の実施形態はこれに限らない。すなわち、これらは別の建物でもよい。
【0115】
具体的には、本実施形態のレンガ採取方法は、異なる建物のレンガを補修する目的で用いてもよい。例えばレンガを補修する必要がある建物において、別の場所からレンガを撤去できない場合は、他の建物からレンガを活かし取りしてもよい。この場合、活かし取りするレンガは、補修するレンガと近い時代に作成されたレンガとすることが好ましい。また、補修するレンガと近接する地域で作成されたレンガとすることが好ましい。
【符号の説明】
【0116】
10 壁体(躯体)
B レンガ
V6 スペース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図18