(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】異方性材料特性によって製造される構成要素における配向最適化
(51)【国際特許分類】
G06F 30/10 20200101AFI20240405BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20240405BHJP
【FI】
G06F30/10
G06F30/20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020081454
(22)【出願日】2020-05-01
【審査請求日】2023-04-25
(32)【優先日】2019-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100180194
【氏名又は名称】利根 勇基
(72)【発明者】
【氏名】野村 壮史
(72)【発明者】
【氏名】川本 敦史
(72)【発明者】
【氏名】岩野 佳洋
【審査官】合田 幸裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-226871(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0001657(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0164050(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106845021(CN,A)
【文献】野村壮史 ほか,異方性材料における配向とトポロジーの同時最適化,シミュレーション,日本,小宮山印刷工業株式会社,2016年12月15日,第35巻, 第4号,pages 19-25
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/10
G06F 30/20
IEEE Xplore
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置の関数として異方性材料の配向を最適化することにより、前記異方性材料を含む構成要素を設計する方法であって、
第一配向テンソルを含む数理的設計変数を初期化することと、
前記第一配向テンソルを物理的設計変数の第二配向テンソルに写像することと、
前記物理的設計変数を使用して、前記異方性材料が前記第二配向テンソルに従って配向されているときに前記構成要素の性能をシミュレートすることによって、最適化される量を表す目的関数Fの値を計算することと、
前記数理的設計変数を反復的に調整して前記目的関数Fの値を最適化することと、
を備え、
前記写像することは、前記第一配向テンソルが第一制約を満たすかどうかに関係なく、前記第二配向テンソルが前記第一制約を実質的に満たすことを確実なものとし、前記第一制約は、前記数理的設計変数に直接に適用されることなく、前記数理的設計変数から前記物理的設計変数への前記写像を通じて前記目的関数Fの値の最適化に間接的に課される、方法。
【請求項2】
前記異方性材料は、材料特性が第一方向で一意の値を有する一軸材料であり、別の二次元で等方性であり、
前記第一配向テンソルの前記第二配向テンソルへの前記写像は、前記第二配向テンソルが前記一軸材料の前記第一方向に対応する方向ベクトルの自己二項積であることを含み、
前記第一制約は、前記方向ベクトルのl
2ノルムの上限値を与える、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一配向テンソルの前記第二配向テンソルへの前記写像は、
前記写像することが、前記第二配向テンソルが第二制約を実質的に満たすことを確実なものとし、
前記第一制約が前記第二配向テンソルの対角要素についての制約であり、
前記第二制約が前記第二配向テンソルの非対角要素についての制約であること、
を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記構成要素は、荷重を支持する剛性機械構造体であり、前記異方性材料は、繊維複合材料であり、
前記目的関数Fの値を計算することは、前記荷重の適用に対する前記構成要素の応答をシミュレートすることをさらに含み、前記目的関数Fは前記構成要素の剛性またはコンプライアンスを表し、
前記数理的設計変数を反復的に調整することは、前記繊維複合材料中の繊維の配向を表す前記第二配向テンソルを決定する前記第一配向テンソルを前記数理的設計変数が含むことを備える、
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記数理的設計変数を反復的に調整することは、前記数理的設計変数が前記構成要素のトポロジーを表す材料分布変数を含むことをさらに備える、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記数理的設計変数を反復的に調整することは、前記材料分布変数及び前記第一配向テンソルが前記目的関数Fの値を最適化するために同時に調整されることをさらに備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記数理的設計変数を反復的に調整することは、
前記数理的設計変数への変更のそれぞれの組み合わせについて前記目的関数Fの値の感度を分析することと、
前記目的関数Fの値が高感度であると推定される前記数理的設計変数への変更の組み合わせについて前記数理的設計変数を反復的に更新することと、
をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記数理的設計変数を反復的に調整することは、非線形計画法、逐次二次計画法、逐次線形計画法、凸線形化法、移動漸近アルゴリズム法、拡張ラグランジュ法、または主双対法を使用して実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記目的関数Fの値を計算することは、前記構成要素の物理的性能をシミュレートすることが構造力学問題、電磁気学問題、熱伝達問題、熱構造問題、及び磁気熱流体問題のうちの1つについて偏微分方程式を数値的にシミュレートすることによって実行されることをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第一配向テンソルを前記物理的設計変数の前記第二配向テンソルに写像することは、
六面体アイソパラメトリック形状関数が前記数理的設計変数の空間内の六面体形状を前記物理的設計変数の空間内の四面体形状に写像する第一射影を実行すること、
をさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記第一配向テンソルを前記物理的設計変数の前記第二配向テンソルに写像することは、前記第二配向テンソルの非対角要素について第二射影を実行することをさらに備え、
各非対角要素は、前記各非対角要素に対応する前記第二配向テンソルのそれぞれの対角要素の幾何平均に基づく、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第二射影を実行することは、変更されたヘビサイド関数、または微分可能ランプ関数を前記第一配向テンソルの非対角要素に適用することをさらに備える、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第一配向テンソルを前記物理的設計変数の前記第二配向テンソルに写像することは、自然座標系の領域内に第一射影を実行することをさらに備える、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記数理的設計変数を反復的に調整することは、前記材料分布変数及び前記第一配向テンソルが前記目的関数Fの値を最適化するために逐次調整されることをさらに備える、請求項5に記載の方法。
【請求項15】
前記目的関数Fの値を計算することは、前記第二配向テンソルを使用して前記異方性材料の異方性特性を計算することを備え、前記異方性特性は、ヤング率、導電率、熱伝導率、透磁率、誘電率、圧電性、強誘電性、焦電性、引張強度、せん断強度、摩耗率、及び熱膨
張のうちの1つである、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記目的関数Fの値を計算することは、前記第二配向テンソルを使用して前記異方性材料である一軸固体の弾性を計算することを備え、前記弾性が横等方性である弾性テンソルC
uを使用して表され、前記目的関数Fが耐荷重部材の剛性/コンプライアンスを表す、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記数理的設計変数を反復的に調整することは、前記物理的設計変数を反復的に調整して前記目的関数Fの値を最適化することによって、前記物理的設計変数について直接に最適化が実行される場合と比較して、より少ない制約で実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
構成要素を含む異方性材料の配向を選択する方法であって、
前記構成要素と関連する幾何学的領域の第一設計値の1つ以上の設計制約を定義することと、
前記1つ以上の設計制約が実質的に満たされるように、第二設計値を前記第一設計値上に写像するアイソパラメトリック形状関数を適用することと、
前記1つ以上の設計制約を直接考慮せずに前記第二設計値を使用してトポロジー最適化を実行することと、
を備え、
前記第一設計値は前記異方性材料の配向に対応し、前記1つ以上の設計制約は、前記第二設計値を前記第一設計値に写像するために適用される前記アイソパラメトリック形状関数を介して間接的に考慮される、方法。
【請求項19】
前記1つ以上の設計制約を定義することは、前記1つ以上の設計制約が方向ベクトルのユークリッド長を規格化する非線形制約を含むことを備える、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記1つ以上の設計制約を定義することは、前記第一設計値の設計が、前記異方性材料の配向に対応する規格化された方向ベクトルを表すことを備え、前記規格化された方向ベクトルは前記構成要素内の位置の関数として変化する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
位置の関数として異方性材料の配向を最適化することにより、前記異方性材料を含む構成要素を設計する回路を備える装置であって、
前記回路は、
第一配向テンソルを含む数理的設計変数を初期化し、
前記第一配向テンソルを物理的設計変数の第二配向テンソルに写像し、
前記物理的設計変数を使用して、前記異方性材料が前記第二配向テンソルに従って配向されているときに前記構成要素の性能をシミュレートすることによって、最適化される量を表す目的関数Fの値を計算し、
前記数理的設計変数を反復的に調整して前記目的関数Fの値を最適化するように構成され、
前記写像することは、前記第一配向テンソルが第一制約を満たすかどうかに関係なく、前記第二配向テンソルが前記第一制約を実質的に満たすことを確実なものとし、前記第一制約は、前記数理的設計変数に直接に適用されることなく、前記数理的設計変数から前記物理的設計変数への前記写像を通じて前記目的関数Fの値の最適化に間接的に課される、装置。
【請求項22】
前記回路によって決定された前記異方性材料の最適化された配向を有する構成要素を製造するように構成された製造ツールをさらに備える、請求項21に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に説明される実施形態は、一般に、異方性材料特性を有する機械的構成要素の構成の材料最適化に関する。材料最適化は、座標射影を介して異方性材料特性にテンソル制約を実施することで、制約付き最適化を実行する数値方法に明示的に表現される制約の数を減少させることによって加速される。例えば、異方性弾性テンソルを有する繊維複合材料を、材料の配向及び分布に関して最適化して、所与の荷重分布に対する構成要素の機械的コンプライアンス(例えば、最大化された剛性)を最小化することができる。この最適化は、モータビークルの重量の削減、燃料消費の削減、及び性能の向上に役立つことができる。
【0002】
関連技術の説明
本明細書に提供される背景の説明は、本開示の文脈を一般的に提示することを目的とする。現在名前を挙げられた発明者らの著作物だけではなく、この背景セクションで説明されている限り、出願時に本来であれば先行技術とみなすことができない説明の態様は、本開示に対する先行技術として明示的にも、黙示的にも認められない。
【0003】
自動車などのモバイルマシンを軽量化することは、エネルギー消費を削減して環境を保護するために重要であることができる。重量を減らすと、性能が向上し、自動車をより手頃な価格にする。複合材料は、自動車及び他の機械駆動式車両の重量を減らすことができる1つの技術である。特に、一方向繊維強化複合材料などの異方性複合材料は、等方性複合材料と比較して、剛性対質量比が優れているため、大きな可能性を有している。
【0004】
異方性複合材料を構造部品中で効率的に機能させるために、応力配向及び材料配向は、構造体内の各点で適切にアライメントを取る必要がある。したがって、結果として得られる構造体は、軸が構造体内の点間で空間的に変わる複合材料から作製される必要がある。
【0005】
可変軸複合材料(VAC)は、配向が構造体内の点間で空間的に変わるように製造される材料である。したがって、VACは、構造体内の点間でアライメントを取る応力配向及び材料配向を有するように設計されることができる。VACの実現は、構造の設計と製造の両方における課題を伴う。既存の設計方法は、VACにおける材料配向の空間変化を一般的に最適化するには不十分である。例えば、等方性材料に適用されるときに、うまく機能するトポロジー設計方法は、異方性材料を設計するために拡張されるときに失敗する傾向がある。さらに、既存の方法は、計算効率のよい方式で配向を組み込むことができない。
【0006】
従来の方法は、計算効率が低い、及び/または計算上問題がある。例えば、オイラー角を使用して実行される連続繊維角度最適化は、非一意性及びジンバルロックの問題の影響を受けやすい。さらに、自由材料最適化は、テンソル要素を制御変数として使用した結果、テンソル不変量を実施するために、制御変数に課される多数の非線形制約に起因する計算非効率性をもたらす。
【0007】
したがって、VAC構造体を設計するための改善された方法が望まれている。
【発明の概要】
【0008】
本開示の1つの目的は、異方性材料特性の配向を制御することができる、繊維複合材料などの異方性材料を含む構成要素を最適に設計する、さらに計算効率がよくロバストな方法を提供することである。
【0009】
そのためにとりわけ、本開示は、異方性材料の配向を位置の関数として最適化することにより、異方性材料を含む構成要素を設計する方法を提供する。この方法は、(i)数理的設計変数を初期化し、数理的設計変数が第一配向テンソルを含むこと、(ii)第一配向テンソルを物理的設計変数の第二配向テンソルに写像し、この写像は第一配向テンソルが第一制約を満たすかどうかに関係なく、第二配向テンソルが第一制約を実質的に満たすことを確実なものとすること、(iii)物理的設計変数を使用して、異方性材料が第二配向テンソルに従って配向されるときに構成要素の性能をシミュレートすることによって、最適化される量を表す目的関数Fの値を計算すること、及び(iv)数理的設計変数を反復的に調整して目的関数Fの値を最適化し、第一制約が、数理的設計変数に直接適用されるのではなく、数理的設計変数から物理的設計変数への写像を通じて目的関数Fの値の最適化に間接的に課されることを備える。
【0010】
制約が第一配向テンソルに直接課されるのではなく、第一配向テンソルから第二配向テンソルへの写像によって実施されるため、明示的に制約を考慮せずに数理的設計変数に最適化を実行することができる。したがって、最適化ステップは、計算効率の高い非線形計画アルゴリズム(例えば、逐次二次計画法(SQP)及び移動漸近アルゴリズム(MMA)法)を使用して実行されることができるように単純化される。
【0011】
ある特定の非限定的な実施形態では、第一制約は、方向ベクトルの自己二項積の第二配向テンソル特性に課される。例えば、方向ベクトルを1に規格化することができ、第二配向テンソルの跡を1以下であるように制約することができる。さらに、制約は、非対角要素が対応する対角要素の幾何平均である大きさ(すなわち、
【数1】
)を有するように実質的に制約される(すなわち、制約値の30%以内)ことであることができる。
【0012】
制約が数理的設計変数に直接適用されず、数理的設計変数を調整して目的関数を最適化するときに明示的に考慮されないが、目的関数が物理的設計変数を使用して計算されるため、これらの制約は、数理的設計変数によって最適化探索を間接的に導く。したがって、これらの制約は、目的関数が物理的設計変数を使用して計算されるので目的関数の値に黙示的であり、制約は、数理的設計変数から物理的設計変数への写像を通じて物理的設計変数に課される。数理的設計変数の領域で実行される最適化探索は、目的関数の値に基づき感度分析及び最適化探索が実行されるため、制約によって間接的に導かれる。しかしながら、実行される最適化探索は、制約を直接考慮せず、最適化探索の数値プロセスを大幅に単純化する。
【0013】
例えば、以下に提供される非限定的な実施例では、数理的設計変数q11、q22、及びq33は、1以下の大きさを有する線形制約(すなわち、ベクトル(q11、q22、q33)が単位立方体内にあるような、|qii|≦1)によってそれぞれ別々に制約されるが、これらの制約は、最適化ステップ中に数値的に実装するのは容易である。ただし、物理的設計変数に課されるテンソル不変量I1及びI2に関連する制約は、非線形であるため、最適化ステップで実施するのは困難である。したがって、これらの制約は、設計ステップ中に実施されるのではなく、数理的設計変数から物理的設計変数への変換/写像を通して実施される。自由材料最適化などの以前の方法では、数理的設計変数と物理的設計変数との間で機能の分離がなかった。むしろ、以前の方法では、設計変数のみがあり、これらの設計変数は、最適化ステップ、及び目的関数の計算の両方に使用された/機能した。したがって、以前の方法では、最適化ステップは、テンソル不変量I1及びI2に関連する非線形制約の対象となり、最適化ステップ中のこれらの非線形制約は、最適化問題を計算集約型にした。設計変数の関数を数理的設計変数及び物理的設計変数に分離して分割することにより、最適化ステップは、最適化ステップ中に直接考慮されなければならない制約の数を減らすことで単純化されるが、目的関数が物理的設計変数を使用して計算されるという事実は、最適化が制約と一致して実行される(すなわち、最適化ステップがテンソル不変量I1及びI2に関連する非線形制約によって間接的に導かれる)ことを確保する。
【0014】
上述の本発明の一般的な説明、及び以下の詳細な説明がどちらも例示であり、請求された本発明を限定しないことを理解されたい。
【0015】
本開示のより完全な理解は、添付の図面に関連して考慮されるとき、以下の詳細な説明を参照することによって与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】一実施態様による、構成要素内の異方性材料の配向(及びトポロジー)を最適化するための方法の流れ図を示す。
【
図1B】一実施態様による、数理的設計変数を物理的設計変数に写像するプロセスの流れ図を示す。
【
図1C】一実施態様による、目的関数の値を計算するためのプロセスの流れ図を示す。
【
図2A】一実施態様による、第一制約射影演算を示す。
【
図2B】一実施態様による、第二制約射影演算を示す。
【
図3A】
図3Aは、一実施態様による、面内荷重中心の短い片持ち梁の設計領域及び境界条件の斜視図を示す。
【
図3B】
図3Bは、一実施態様による、面内荷重中心の短い片持ち梁の設計領域及び境界条件の正面図を示す。
【
図4A】
図4Aは、ZYXオイラー角について(0°、0°、0°)の設計領域配向に対して面内荷重中心の短い片持ち梁を示す。
【
図4C】
図4Cは、
図4Aに対応する配向及びトポロジーに対する第一テンソル不変量I
1のプロットを示す。
【
図4D】
図4Dは、
図4Aに対応する配向及びトポロジーに対する第二テンソル不変量I
2のプロットを示す。
【
図4E】
図4Eは、
図4Aに対応する配向及びトポロジーに対する第三テンソル不変量I
3のプロットを示す。
【
図5A】
図5Aは、ZYXオイラー角について(0°、90°、0°)の設計領域配向に対して面内荷重中心の短い片持ち梁を示す。
【
図6A】
図6Aは、ZYXオイラー角について(90°、0°、0°)の設計領域配向に対して面内荷重中心の短い片持ち梁を示す。
【
図7A】
図7Aは、ZYXオイラー角について(0°、0°、30°)の設計領域配向に対して面内荷重中心の短い片持ち梁を示す。
【
図7C】
図7Cは、
図7Aに対応する配向及びトポロジーに対する第一テンソル不変量I
1のプロットを示す。
【
図7D】
図7Dは、
図7Aに対応する配向及びトポロジーに対する第二テンソル不変量I
2のプロットを示す。
【
図8A】
図8Aは、ZYXオイラー角について(0°、90°、30°)の設計領域配向に対して面内荷重中心の短い片持ち梁を示す。
【
図9A】
図9Aは、ZYXオイラー角について(30°、0°、0°)の設計領域配向に対して面内荷重中心の短い片持ち梁を示す。
【
図9C】
図9Cは、
図9Aに対応する配向及びトポロジーに対する第一テンソル不変量I
1のプロットを示す。
【
図9D】
図9Dは、
図9Aに対応する配向及びトポロジーに対する第二テンソル不変量I
2のプロットを示す。
【
図10A】
図10Aは、ZYXオイラー角について(0°、30°、90°)の設計領域配向に対して面内荷重中心の短い片持ち梁を示す。
【
図11A】
図11Aは、ZYXオイラー角について(43°、12°、24°)の設計領域配向に対して面内荷重中心の短い片持ち梁を示す。
【
図12】一実施態様による、面内多荷重の4点曲げ梁の設計領域及び境界条件の斜視図を示す。
【
図13A】
図13Aは、面内多荷重の4点曲げ梁の多荷重同時最適化についての設計領域配向を示す。
【
図14A】
図14Aは、面内多荷重の4点曲げ梁の多荷重逐次最適化についての設計領域配向を示す。
【
図15A】
図15Aは、面内多荷重の4点曲げ梁の単荷重同時最適化についての設計領域配向を示す。
【
図16A】
図16Aは、面内多荷重の4点曲げ梁の単荷重逐次最適化についての設計領域配向を示す。
【
図17】一実施態様による、構成要素内の異方性材料の配向を最適化する方法100を実行する計算装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
炭素繊維のような複合材料の開発、及び三次元(3D)印刷の開発などの材料における進歩により、異方性特性の材料分布及び配向を最適化して所望のタスクを達成することができる、改善された機械構成要素の開発に魅力的な展望がもたらされる。例えば、機械構成要素は、構成要素を作る材料の配向及びトポロジー/分布の適切な設計を通して、より硬い及び/またはより軽いように設計されることができる。ただし、自由材料最適化(FMO)についての以前の方法は、設計変数上の制約が多数の非線形制約として表現されるため、計算が厄介である。例えば、FMO問題がデカルト座標系または他の空間座標系(例えば、球形または円筒形)に離散化されている場合、テンソル不変量は、多数の点ごとの制約として表現される。FMO問題が数値的に実装されている場合、配向テンソルの元は、結果として得られるテンソルが半正定値であるという制約が適用される自由に変化する値であることを考慮する。これは、構造体全体内の各点に二次制約を含む。結果として、最適化問題は、膨大な数の非線形制約を含む。膨大な数の非線形制約の結果として、数値実装は、大規模な非線形半正定値計画(SDP)ソルバーの準備などの特別な作業を必要とする。
【0018】
対照的に、本明細書に説明される方法は、FMO問題を新しい座標系に写像して、材料特性から生じる非線形制約を解除する。すなわち、物理的設計変数は、これらの制約を満たすが、最適化探索の更新で使用される数理的設計変数は、これらの制約が適用されない。例えば、本明細書に記載される方法は、多変量射影(例えば、アイソパラメトリック形状関数)を使用して、空間座標を非線形制約が解除されている第二座標系に写像することにより上記の課題を回避する。すなわち、写像は、最適化問題に追加の制約として課される明示的な制約を必要とせずに、テンソル不変量が(実質的に)満たされていることを確保する。
【0019】
したがって、本明細書に記載される方法は、計算効率が高く、異方性複合材料のトポロジー及び配向分布の両方を同時に設計することができるトポロジー最適化を可能にする。トポロジー最適化は、最大の性能のために材料分布(すなわち、所与の設計領域における密度)を最適化する、確立された構造最適化フレームワークである。以前の方法は等方性材料から作られる構造体を設計するのに成功しているが、不均質に分布した異方性複合材料から作られる構造体について効率的な方法は、達成しがたかった。以前の方法とは対照的に、本明細書に記載される方法は、トポロジーに加えて、配向を処理するためにトポロジー最適化を拡張する。
【0020】
例えば、本明細書に記載される方法は、物理的設計変数を使用して、配向テンソルの考えに基づき配向をモデル化する。すべてのテンソル構成要素は、補間について既存の材料テンソルを使用することによって、物理的な実現可能性を維持しながら、自由材料最適化(FMO)手法と同様の方法で更新される。テンソル表現の利点は、本明細書に記載される方法が三次元回転に由来する複雑さがないことである。さらに、この方法は、点ごとの制約なしで、多変量射影によってテンソル不変量が一定に保たれるため、計算効率の高い非線形計画アルゴリズム(例えば、逐次二次計画(SQP)法及び移動漸近アルゴリズム(MMA)法)とうまく機能する。本明細書に記載される方法は、最新のトポロジー最適化手法によって使用されることができる。したがって、方法を図示するために本明細書に使用される剛性問題に適用されるときに、本明細書に記載される方法は、多荷重問題を解決するのに十分に汎用性及び自由度が高い。方法の説明として、単荷重及び多荷重の剛性最大化問題を非限定的な実施例として提供し、密度及び繊維配向の同時最適化を図示する、特定の最適化例の数値結果を提供する。
【0021】
上記で論じられたように、本明細書に記載される方法は、トポロジー及び材料配向の同時最適化のためのトポロジー最適化方法を提供する。この方法は、密度場設計変数及び勾配ベースの非線形計画アルゴリズムによるトポロジー最適化によって使用されることができる。さらに、配向設計変数はテンソル場として定式化される。この配向テンソルは、一方向テンソル、すなわち、配向ベクトルの自己二項積であり、これは、一点で単一方向を表す配向テンソルの縮小バージョンに相当する。テンソルベースの表現を使用することで、この方法は、回転ベースのアプローチでは通常回避することが難しい特異点の問題がなくなり、各テンソル値と材料特性との間の一意の対応が自然に確保される。関連方法は、設計変数の元が物理的に意味のある値(例えば、正定値違反物理学ではないため、物理学ではないという結果)、適切なテンソルから逸脱しないことを確保するために使用される、点ごとの多変量線形及び非線形制約を解決する複雑さを被る可能性がある。この複雑さを回避するために、本明細書に記載される方法は、多変量関数射影を使用する。例えば、配向テンソルは、テンソルの跡が1であるという制約を受ける。この制約は、六面体形状関数を使用して、物理的な空間座標系を立方体領域から四面体領域に射影することで表されることができる。
【0022】
本明細書に記載される方法は、耐荷重用途のために硬く、軽量な構成要素を設計する非限定的な実施例を使用して示される。特に、非限定的な実施例は、一方向繊維複合材料を使用して機械構造体を設計するために示される。しかしながら、この方法はこの実施例に限定されない。本明細書の本開示に基づき、当業者は、必要以上の実験なしで、電磁、熱伝達、熱構造、及び磁気熱流体の問題を含む他の異方性設計最適化に最適化方法を適用することができる。したがって、本明細書に説明される方法は、以下で論じられる例示的な構造力学の実施例に限定されない。むしろ、具体的な実施例は、限定としてではなく、明確さを改善するために使用される。一般に、この方法は、異方性材料についての位置の関数としての配向を調整して、目的関数によって表される構成要素の態様を最適化する、あらゆる最適化問題に適用されることができる。この最適化は、二次元最適化または三次元最適化のいずれかであることができる。そして、この最適化は、MMA、SQP、勾配ベースの方法、遺伝的アルゴリズム、シミュレーテッドアニーリングアルゴリズムなどのような非線形計画ソルバーを使用して実行されることができる。
【0023】
ここで図面を参照して、同様の参照番号は、いくつかの図全体を通して同一の、または対応する部分を示し、
図1Aは、構成要素の配向(及びいくつかの実施態様では分布)を最適化する方法100の流れ図を示す。本明細書では、一軸材料(繊維複合材料)から作られた機械構造体を設計する例示的な実施例を提供する。
【0024】
ステップ110では、最適化に使用されるさまざまな値を初期化する。設計される構成要素について、初期化された値は、構成要素内の材料の分布と、この材料の異方性特性の配向とを含むことができる。本明細書では、耐荷重構成要素の剛性を最適化する非限定的な構造力学の実施例を使用して、構成要素設計方法100を説明する。ステップ110からの出力は、数理的設計変数115を含むことができる。
【0025】
構造力学の実施例では、数理的設計変数115は、要素qijを有する配向テンソルを含むことができる。
【0026】
ステップ120では、最適化問題を単純化するために、数理的設計変数を物理的設計変数に写像する。本明細書に記載される方法とは対照的に、自由材料最適化(FMO)についての関連方法は、最適化ステップ及び物理シミュレーションステップの両方に単一セットの設計変数を使用するが、本明細書に記載される方法は、最適化ステップ(すなわち、方法100のステップ160)について数理的設計変数115、及び物理シミュレーションステップ(すなわち、方法100のステップ130)について物理的設計変数125を使用する。物理的設計変数125のように、単一セットの設計変数は、テンソル不変量(例えば、以下で論じられるテンソル不変量I1、I2、及びI3)に対応する制約を受ける。これらの制約は、設計変数の物理的な意味から生じる。例えば、設計変数が単位方向ベクトルの自己二項積である配向テンソルを表すとき、配向テンソルの跡は、単位方向ベクトルのl2ノルム(すなわち、ユークリッド長)であり、これは、方向ベクトルが単位方向ベクトルであるため、定義により1である。異方性材料についての異方性テンソル(例えば、弾性テンソルCs)を配向テンソルに基づき計算するため、配向テンソルは、物理的な有意性を有する。例えば、繊維複合材料は、一方向に一意の弾性値を示し、他の二次元で等方性であることを意味する、一軸である。関連方法では、物理シミュレーションステップに加えて、数理最適化ステップに同じ設計変数を使用するときに、数理最適化ステップは、設計変数の物理的意味から生じる物理的制約を受ける。
【0027】
対照的に、本明細書に記載される方法は、数理最適化及び物理シミュレーションステップに異なる設計変数を使用することにより、最適化ステップから制約を解除する。数理的設計変数115から物理的設計変数125への写像により、制約が実質的に満たされることを確実なものとするため、数理最適化は、これらの制約を明示的に受けないが、それでも制約は、物理シミュレーションステップに実施される。
【0028】
本明細書において、制約に適用されるときの「実質的に満たされる」という句は、制約が所定の閾値以内で満たされる(例えば、テンソル不変量I2の値は所望の値の30%以内である)ことを意味する。多くの場合、最適化は、制約のうちの1つ以上が正確に満たされるのではなく実質的に満たされるに過ぎない場合でも、意味のある結果を提供する。制約を実施することに関するこの緩和は、ステップ120における写像を数値的によりよく挙動させる(例えば、写像を微分可能にする)ことにより、方法100のパフォーマンスを改善することができる。
【0029】
したがって、物理的設計変数125がテンソル不変量を規定するさまざまな制約を実質的に満たすことを確実なものとしながら、ステップ120での写像により、ステップ160において、制約を明示的に考慮せずに、数理的設計変数115を更新する/調整することが可能である。したがって、最適化ステップ中に制約を明示的に課すことなく最適化を実行することができることにより、最適化ステップ中に制約を考慮することによって被る計算の複雑さを排除する。
【0030】
ステップ130では、物理的設計変数125を使用して目的関数についての値を計算する。
【0031】
ステップ140では、構成要素の構成が最適な構成に十分に収束したかどうかを判定する照会を実行する。収束は、いくつかの所定の収束基準に基づいて決定されることができる。収束基準が満たされないときに、方法100は、ステップ140からステップ150に進むことによって最適化ループを繰り返す。
【0032】
ステップ150では、感度分析を実行して、最適化探索における次のステップを推定する。例えば、感度分析は、探索空間内の目的関数の勾配(及びいくつかの実施態様では2階微分)を推定することを備えることができる。すなわち、目的関数は、勾配の大きさが最大になる方向における変化に最も感度が高い。
【0033】
ステップ160では、数理的設計変数115をステップ150で実行された感度分析に基づき更新する。例えば、ステップ150から推定された勾配を使用して、更新ステップについてのサイズ及び方向を、最適化探索の次の反復のために決定することができる。
【0034】
ここで、例示的で非限定的な実施態様に従って、方法100のステップのより詳細な説明を提供する。一般に、方法100の多くの変形形態は可能であり、これらの多くの変形形態は本明細書で論じられる企図された最適化方法内にある。
図1Aに示されるステップが最適化方法の趣旨から逸脱することなく実行されることができる順に変形形態がある。さらに、
図1Aに示される個々のステップが最適化方法の趣旨から逸脱することなく実行されることができる変形形態がある。本明細書に記載される非限定的な実施態様は、方法を例示するために提供されており、最適化方法をステップの特定の順序に限定しない。そして本明細書に記載される非限定的な実施態様は、最適化方法を、ステップが本明細書に開示される例示的な方法にも限定しない。例えば、ステップ160では、勾配降下法を使用して数理的設計変数115を更新することを説明することができるが、この例示的な実施例は、シミュレーテッドアニーリング、または遺伝的アルゴリズム、またはそれらの組み合わせを使用して数理的設計変数115を最適化するような代替物を妨げない。さらに、方法100は、構造力学を最適化する非限定的な実施例を使用して示されるが、方法100は、他の異方性材料最適化問題に適用可能である。方法100が構成要素の剛性を最適化する実施例を使用して示されるが、この非限定的で例示的な実施例は、例えば、弾性ではなく構成要素の圧電または磁気特性が最適化される、他の用途から方法100を排除しない。
【0035】
ステップ110では、最適化に使用されるさまざまな値を初期化する。例えば、最適な構成要素構成の初期推測値(すなわち、機械構造体における材料のトポロジー/分布、及び材料の配向)を設定する。最適な構成要素構成は、最適化される目的関数を介して表される1セットの最適化基準(例えば、構成要素のコンプライアンスを最小化する)に基づく。ある特定の実施態様では、最適化探索についての開始点(すなわち、初期推測値)は、収束率を決定するために、そして探索が局所的最小値ではなく大域的最小値に収束するかどうかを決定するために重要であることができる。さらに、勾配ベースの方法を含む、いくつかの最適化方法は、以前の反復からの値を使用して、感度分析を実行し、探索における次のステップについて最良の方向及びサイズに関して方法100に知らせる。ループの各反復(すなわち、反復探索経路中のステップ)は、最適な構成に関する新しい推測値を提供し、探索経路沿いのそれぞれのステップについての目的関数の計算によって提供されるフィードバック(すなわち、最適な構成に関する以前の推測値)は、最適化の現在の反復が現在の推測値をより洗練させ、最終的に最適な構成に収束させることを可能にする。本明細書では、最適化される構成要素の「構成」は、この構成要素を作る異方性材料の配向(及び一部の実施態様では、分布/トポロジー)を指す。
【0036】
例えば、勾配降下法では、次の推測値は、勾配の局所推定値に基づく。ある特定の実施態様では、随伴変数/状態法を使用して、数理的設計変数における変化への目的関数の感度/勾配を推定することができる。最適化探索についての探索空間は、構成要素の可能な構成の領域である(例えば、構成は機械構造体における材料のトポロジー/分布及び配向である)。
【0037】
上記で論じられるように、数理的設計変数115及び物理的設計変数125を別々に有する利点がある。プロセス120では、数理的設計変数115を物理的設計変数125に写像する。このようにして、数理的設計変数115は、物理系のテンソル不変量に対応する制約を明示的に考慮することなく最適化されることができる。むしろ、これらの制約は、物理的設計変数125上への射影/写像によって実施される。次にステップ130では、物理的設計変数125を使用して、構成要素の物理シミュレーションを実行し、構成要素の現在の構成についての目的関数の値を計算する。
【0038】
したがって、テンソル不変量に対応する制約が数理的設計変数115に明示的に課されなくても、最適化は、これらの制約によって黙示的に導かれる。
【0039】
したがって、ステップ120における写像、及びステップ150における感度分析の組み合わせにより、最適化ルーチンは、テンソル不変量と一致する方向の感度が最も高いため、これらの方向沿いに数理的設計変数115を更新するように導かれる。したがって、数理的設計変数115がテンソル不変量によって明示的に制約されていなくても、最適化は、感度分析を通じてテンソル不変量によって黙示的に導かれる。目的関数が物理的設計変数を使用して計算されるため、テンソル不変量の制約は、最適化探索を間接的に導く。したがって、これらの制約は、目的関数が物理的設計変数を使用して計算されるので目的関数の値に黙示的であり、制約は、数理的設計変数から物理的設計変数への写像を通じて物理的設計変数に課される。数理的設計変数の領域で実行される最適化探索は、目的関数の値に基づき感度分析及び最適化探索が実行されるため、制約によって間接的に導かれる。しかしながら、実行される最適化探索は、制約を直接考慮せずに、最適化探索の数値プロセスを大幅に単純化する。
【0040】
その結果、ステップ120における写像、及びステップ150における感度分析の組み合わせにより、最適化ルーチンは、テンソル不変量と一致する方向沿いの数理的設計変数115を更新するように導かれる。したがって、数理的設計変数115がテンソル不変量によって明示的に制約されていなくても、最適化は、感度分析を通じてテンソル不変量によって黙示的に導かれる。
【0041】
ステップ160におけるテンソル不変量の明示的な制約がないことにより、数値/計算の実施態様及び複雑さを大幅に単純化した結果、削減された計算の複雑さ及び時間をもたらす。
【0042】
本明細書に記載される方法とは対照的に、自由材料最適化(FMO)についての関連方法は、
図1aに示されるような別個の2セットの設計変数(すなわち、数理最適化ステップについての数理的設計変数115、及び物理シミュレーションステップについての物理的設計変数125)を使用するのではなく、数理最適化ステップ(例えば、ステップ160)及び物理シミュレーションステップ(例えば、プロセス130)の両方についての単一のセットの設計変数を概して使用する。プロセス130及びステップ160の両方に単一のセットの設計変数を使用するときに、テンソル不変量を実施するためにステップ160において多数の非線形制約を使用する必要がある。この多数の非線形制約を数値的に実装することにより、有意な計算上の複雑さをもたらす。
【0043】
図1Bは、数理的設計変数115から物理的設計変数125への写像の非限定的な一実施例の流れ図を示す。この実施例では、写像は、2つのステップを含む。
【0044】
ステップ122では、第一射影を実行して、I
1と称される、第一テンソル不変量を実施する。例えば、第一射影は、第一座標セットから第二座標セットへの座標変換を介して実行されることができる。以下で論じられる非限定的な実施例では、六面体形状関数を使用して座標変換を実行し、第一座標ξ、η、及びζを第二座標x、y、及びzに写像する。
図2Aは、第一射影を示す。
【0045】
ステップ122では、第二射影を実行して、I
2と称される、第二テンソル不変量を実施する。例えば、第二射影は、式を介して変更されたランプ関数
【数2】
を使用して実行されることができる。
【数3】
式中、q
ijは数理的設計変数115であり、a
ijは物理的設計変数125であり、追加の詳細は以下に提供される。
図2Bは、第二射影を示す。
【0046】
方法100のプロセス130では、物理的設計変数125を使用して目的関数の値を計算する。
図1Cは、目的関数を計算する非限定的な一実施例の流れ図を示す。
【0047】
ステップ132では、位置の関数としての異方性材料特性の配向を物理的設計変数125から決定する。例えば、以下に論じられるように、配向テンソルa2を使用して、固体弾性テンソルCsを定義することができる。
【0048】
ステップ134では、ステップ132で決定された異方性材料特性の空間的に変化する配向を使用して物理シミュレーションを実行する。これは、構成要素のコンプライアンス/剛性が最適化される、構造力学からの非限定的な一実施例を使用して、本明細書に示される。この最適化問題について、物理シミュレーションは、ステップ132で計算された固体弾性テンソルCsに基づく有限要素解析(FEA)を使用して実行されることができる。
【0049】
ステップ136では、ステップ134における物理シミュレーションの結果を使用して、目的関数を計算する。例えば、FEAメッシュの格子点間のコンプライアンス値を積分して、耐荷重構成要素のコンプライアンス/剛性を決定することができる。目的関数の値138は、この計算の結果である。
【0050】
図1Aに戻り、ステップ150では、感度分析を実行することができる。例えば、これは、探索空間(すなわち、構成要素のすべての可能な構成の空間、そこで構成は材料の配向及び/または分布/トポロジーを含む)の関数として目的関数についての勾配(及び一部の実施態様では2階微分)を推定することを備えることができる。感度分析(例えば、勾配)は、現在の反復の構成要素の構成について計算される目的関数の値138に基づく。
【0051】
ステップ160では、感度分析の結果を使用して、数理的設計変数115を更新する。すなわち、ステップ160は、反復最適化探索の軌道に沿った次のステップを決定する。例えば、勾配に沿った最適なステップサイズを使用して、外挿された最小値に近づけることができ、より小さいステップサイズを使用して、最小値を超えるリスクを最小限にすることができる。特定の最適化問題と、収束率、安定性、ロバスト性などの間のトレードオフとに応じて、さまざまな探索方法を使用することができる。
【0052】
方法100のステップ140では、探索が最適な構成に収束したかどうかを判定するクエリを実行する。このクエリは、1つ以上の収束基準が満たされない場合に否定的結果を返すことができる。例えば、収束基準は、最大反復回数、及び/またはそれぞれの反復間の差異が所定の閾値未満に減少するかどうかを備えることができる。以下に論じられる一実施例では、10回の反復ごとに1回だけ収束にクエリを行った後に、目的関数についての現在の値を目的関数の10回前の反復と比較して収束を決定する。
【0053】
構成要素の構成が最適構成に収束したと判定されるときに、方法100は完了する。そうでない場合、ステップ150、160、120及び130を含むループは、収束基準が満たされなくなるまで繰り返される。
【0054】
図1Aにおける実施態様を使用して、さまざまな設計変数を最適化することができる。本明細書では、これらの設計変数は、最適化される構成要素の異方性材料の配向を少なくとも含む。さらに、設計変数は、構成要素内のこの材料の空間分布/トポロジーを含むことができる。これらの2つの異なるタイプの設計変数(すなわち、配向及び分布)は、同時に、または逐次のいずれかに最適化されることができる。
【0055】
2つ以上の異なるタイプの設計変数の同時最適化への方法100の拡張は単純である。数理的設計変数115及び物理的設計変数125は、ステップ120における変換が1サブセットの設計変数(例えば、配向)にのみ影響する場合でも、異なるタイプの設計変数のすべてを含むことができる。
【0056】
2つ以上の異なるタイプの設計変数の逐次最適化への方法100の拡張も単純である。例えば、方法100は、第一タイプの設計変数を最適化することを対象とする内部ループを含むように、そして第二タイプの設計変数を最適化することを対象とする外部ループを含むように拡張されることができる。あるいは、方法100は、第一タイプの設計変数を最適化することと、第二タイプの設計変数を最適化することとの間でトグルするように拡張されることができる。例えば、方法100のステップ120~160のループは、反復間の増分変化が所定の閾値を下回るまで、配向を最適化するために反復的に繰り返すことにトグルすることができる。次に、方法100のステップ120~160のループは、反復間の増分変化が別の所定の閾値を下回るまで、分布を最適化するために反復的に繰り返すことにトグルすることができ、そのとき、それが配向を最適化することにトグルして戻り、そして全体的な構成(例えば、配向及び分布の組み合わせ)が最適な構成に十分に収束するまで、そのようにすることができる。
【0057】
本明細書に記載される方法の利点は、それらが関連方法を越える改善を提供する方法に照らして、よりよく理解されることができる。上記に論じられるように、構造部品について異方性複合材料によって提示される改善を実現するために、応力配向及び材料配向は、構造体内の各点で適切にアライメントを取る必要がある。これは、繊維軸が構造体内の点間で空間的に変わる繊維複合材料、すなわち、可変軸複合材料(VAC)から作られる構造体を使用して達成されることができる。
【0058】
VACを使用した部品の製造は、自動繊維配置(AFP)、テーラード繊維配置(TFP)、または連続繊維印刷(CFP)などのロボットベースの機構によって空間的に変化する材料配向を制御することにより達成されることができる。一般に、これらのテクノロジーは、接空間において配向制御によって、連続繊維束を表面(例えば、平面または曲面)上に堆積させる。したがって、これらのテクノロジーのいくつかは、三次元シート形成と組み合わせて直接に、または間接的に、部分的な三次元配向制御を提供することができる。したがって、適切な設計を考慮すると、三次元配向が制御されたVAC構造体の製造は、上記の製造技術を使用して実現可能である。本明細書に記載される方法は、最適なVAC構造設計を生成するために計算効率の高いアプローチを提供する。しかしながら、以下に記載される関連方法は、それぞれ1つ以上の態様で不十分である。
【0059】
第一関連方法では、弾性テンソルの各項の分布を設計変数として使用して、自由材料最適化(FMO)を実行し、構造及び材料の分布の表現の最大限の自由度を同時に提示する。理論的に、この方法は、テンソル自体を直接操作するという利点により、最適な材料構成を導出することができる。一方では、この方法は、回転の概念と、三次元空間での角度処理などに起因する複雑さとを有利に回避する。一方では、この方法は、2つの主な課題を被る。
【0060】
第一課題は、工学的適用性である。一般に、軽量化のための構造最適化は、コスト評価に構造体の重量を使用するが、FMOでは、コスト評価は、第一テンソル不変量に一般に基づき、工学的な基準で解釈することは困難である。さらに、FMOでは、材料の表現に最大限の自由度を許容することにより、そのような材料特性を現在の製造方法によって実現することは困難である。
【0061】
第二課題は、数値実装に関する。材料特性テンソルの元として1セットの自由に変化する値を作成するために、結果として得られるテンソルは、半正定値である必要がある。これは、構造全体の各点に二次制約を含み、結果として、最適化問題は、膨大な数の非線形制約を含む。通常の非線形計画法は、このような多数の非線形制約に対処することができない。したがって、第一関連方法の数値実装は、大規模な非線形半正定値計画(SDP)ソルバーの準備などの特別な作業を必要とする。
【0062】
第二関連方法では、離散的材料最適化(DMO)は、第一関連方法と比較して向上した工学的適用性を提示する。配向分布問題を材料選択問題に変換することによってDMOを実行する、実用的な工学的解決策を提供する。DMOは、離散的な1セットの可能な配向角度を準備し、対応する材料オプションを提供し、マルチマテリアルのレイアウト問題を解決する。この考えは、大規模な複合材料の構造体を設計するために実用的であり、そこで設計される構造体のサイズは複合材料のパネル単位のサイズよりもはるかに大きい。ただし、第二関連方法は、配向表現の自由度を犠牲にするので、VAC設計には適していない。
【0063】
これら2つの関連方法とは対照的に、本明細書に記載される方法は、第一関連方法によって提示される多数の非線形制約の計算上の複雑さなしで、連続配向分布を空間的に変えることによって、任意の形状及びトポロジーを有する構造体を設計する、計算効率の高いアプローチを提供する。
【0064】
いくつかの態様では、本明細書に記載される方法は、米国特許第9,576,088号、及びT.Nomura et al.、「General topology optimization method with continuous and discrete orientation design using isoparametric projection」、International Journal for Numerical Methods in Engineering vol.101,p.571(2015)に記載されている単位方向ベクトル場アプローチの拡張として理解されることができ、これらの両方は、その全体が参照により本明細書に援用されている。
【0065】
本明細書に記載される方法は、一般的なトポロジー最適化形式に適用されることができるため、傾斜機能構造体の問題、及び異方性パネルの組み合わせ問題を含む、広範囲の工学的状況に適用可能である。
【0066】
FMOと同様に、本明細書に記載される方法は、方向ベクトルを単位ベクトルに保つために、各点に二次制約を有する。しかしながら、FMOとは異なり、本明細書に記載される方法は、ベクトル関数(例えば、アイソパラメトリック形状関数)が非線形制約を解除する射影ベースのアプローチを使用して、これらの質量非線形制約を実施する。その結果、最適化問題は、MMA及びSQPなどの一般的な非線形計画ソルバーによって解決されることができる。
【0067】
さらに、本明細書に記載される方法は、上記の単位方向ベクトル場アプローチの拡張であり、三次元問題を解決することができる。方向ベクトルを使用する代替に、本明細書に記載される方法は、FMOの前述の2つの課題を回避しながら、FMOの考えを配向テンソルとともに組み込むことによって導入される、テンソル表現を使用する。テンソル表現は、配向設計に有意な利点を提供する。二次元の場合と比較して、三次元空間における回転の数学的処理は、複雑化を引き起こす場合がある。ただし、テンソル表現は、これらの複雑化を自然に解決する。
【0068】
FMOにおける2つの課題は、単位方向ベクトル場アプローチによって自然に解決される。工学的適用性に関して、個別の密度設計変数を使用することにより、このフレームワーク内で自然に重量を最適化することができる。さらに、材料補間は、材料テンソルに基づき生成される。したがって、材料テンソルが実現可能な材料特性に基づく場合、材料補間も実現可能である。例えば、材料テンソルは、測定されたテンソル、またはマイクロメカニックスモデルもしくは均質化法によって導出されたテンソルであることができる。
【0069】
数値実装に関して、本明細書に記載される方法は、単位方向ベクトル場アプローチについての改善も表す。ここで、これらの方法は、ベクトル関数射影ベースの非線形制約処理をテンソル表現に拡張するため、標準の非線形数理計画ソルバーを使用して最適化問題を解決することができる。
【0070】
上記の改善のさまざまな実施態様を以下でさらに詳細に説明する。
【0071】
ある特定の実施態様では、本明細書に記載される方法は、ヘルムホルツフィルタリング及びヘビサイド射影による密度及び勾配ベースのトポロジー最適化を使用する。さらに、テンソル場を使用して、配向設計変数を定式化することができる。例えば、ここで考慮される非限定的な一実施例では、配向は、局所的に変化する軸方向分布である。すなわち、指定された一軸方向だけが異なる材料特性を有し、この軸に垂直な他のすべての方向における材料特性が等方性である(すなわち、横方向に等方性の材料)と想定される。したがって、主軸自体の配向のみが重要であり、この軸を中心とした回転を無視することができる。配向設計変数は、それぞれの点での配向の分布を表すことができる、配向テンソルを使用して定義される。
【0072】
ある特定の実施態様では、固定設計領域Dを仮定し、Dの内側の、設計される対象領域Ω
dを示す次の特性関数を定義する。
【数4】
ここで、χ(x)は、陰関数φ、及びヘビサイド関数によって定義され、ヘビサイド関数は、次のようになる。
【数5】
関数空間の正則化のために、ある特定の実施態様は、次のヘルムホルツフィルタを使用することができる。
【数6】
式中、r
φはフィルタ半径であり、
【数7】
はフィルタリングされた場である。正則化されたヘビサイド関数を導入して、χ(x)を材料密度場ρ(x)に緩和する。
【数8】
式中、
【数9】
は次のような正則化されたヘビサイド関数である。
【数10】
式中、hは0から1の間の遷移帯域幅を制御するパラメータである。
【0073】
構成テンソル、例えば、構造問題についての弾性テンソルは、ρを使用して空隙と固体状態との間で補間される。
Cρ=Cν+ρp(Cs-Cν)) 式(2a)
式中、Cρ、Cν、Csはそれぞれ補間されたテンソル、空隙テンソル、及び固体テンソルであり、pは密度ペナルティパラメータである。以下の考察では、Csは異方性に拡張され、そこで配向は配向設計変数によって制御される。
【0074】
材料の配向は、配向テンソルを使用してモデル化される。他の三次元の角度表現と比較して配向テンソルを使用する利点は、実際にはさまざまな問題につながる可能性がある、回転の概念がないことから生じる。例えば、オイラー角表現は、特異点問題またはDOF削減問題(例えば、ジンバルロック)による根本的に不利な点を有する。四元数は、特異点問題を解決する場合があるが、四元数を使用することは、軸配向問題の場合では方向ベクトルを使用することに等しく、πというあいまいさは、依然として残る。すなわち、同じ材料特性は、互いに対向する方向を示す2つの値で表されることができ、これらの値が同じ材料特性を示すために近接して現れる場合、設計変数の分布にスプリアス間隙を生じ、これは、配向場が環状配置を特徴とする場合に発生する可能性が高い。これらの課題は、配向表現機能を半球領域に制限することで回避されることができる。ただし、配向表現を半球領域に制限することにより、特別なルールを導入せずに設計値が切断面を横断するのを制限する結果として、この球の対称面付近で最適値を見つける際に重大な副産物を生じる可能性がある。この特別なルールは、すべての実数値の変数が連続的であるという実数勾配ベースの数理計画法のほとんどにおいて基本的な前提に違反することによって、別の副産物を生じる場合がある。
【0075】
一方、配向テンソルを使用して材料配向を表現することにより、回転を回避する。テンソル値と結果として得られる材料特性との間の一意の対応による材料特性の補間に、このテンソルを直接使用した結果、このアプローチによって前述の問題のすべてを回避する。
【0076】
配向テンソルは、単一配向についての単位方向ベクトルの自己二項積を使用して一点での配向分布を記述し、配向テンソルは、各方向についての確率を重み関数として使用して、すべての角度について荷重積分を行う。この問題では各点が単一配向、すなわち、一方向の配向を有すると仮定されていることから、単一の自己二項積テンソルは、材料配向を表現するのに十分である。
【0077】
単位方向ベクトルpを次のように書く。
【数11】
式中、-1≦p
i≦1、及びp。これに基づき、a
2という次数2の一方向テンソルを、次のように、pという自己二項積として単純に定義することができる。
【数12】
式中、
【数13】
は二項積/テンソル積の演算子である。明らかに、a
2は対称であり、δ
ij-1≦a
ij≦1であり、そこでδ
ijはクロネッカーのデルタであるため、対角要素a
iiは常に正である。
【0078】
同様に、次数4の一方向テンソルを、方向ベクトル、または次数2の配向テンソルのいずれかによって次のように定義することができる。
【数14】
次数4の一方向テンソルを次数2のテンソルから導出することができるため、次数2の一方向テンソルは、一点での一方向配向を記述するのに十分である。
【0079】
トポロジー表現と同様に、数理的設計変数を、L∞関数空間上に定義する。一方向テンソルが対称であることから、上三角要素のみを設計変数として使用し、それらをヘルムホルツのフィルタリングによって、H1関数空間上に射影する。
【0080】
ここで、配向設計変数q
2を、次のように定義する。
【数15】
式中、q
ijは(i,j)={(1,1),(1,2),(1,3),(2,2),2,3),(3,3)}について範囲δ
ij-1≦q
ij≦1を有する独立設計変数であり、ヘルムホルツのフィルタリングを次のようにそれぞれに適用する。
【数16】
式中、r
qは配向設計についてのフィルタ半径である。次に、フィルタリングされた配向設計変数
【数17】
を、一方向テンソル上に次の関数によって射影する。
【数18】
これは、1でのカットオフによって(-1,0)から(1,1)の勾配を有するランプ関数の微分可能なバージョンであるため、δ
ij-1≦a
ij≦1を維持する。その後、a
2の代わりに上記の式を式
【数19】
に用いることによって、a
4という次数4の一方向テンソルを得る。
【0081】
数理的設計変数115は、配向設計変数q2を含む。そして、物理的設計変数125は、配向テンソルa2を含む。写像を(実質的に)実施することを意味するテンソル不変量を導入した後の、配向設計変数q2から配向テンソルa2の間の写像を以下に論じる。
【0082】
ここで、固体弾性テンソルC
sを横等方性テンソルに展開し、その法線軸は一方向テンソルa
2及びa
4の主軸である。弾性テンソルの対称性(すなわち、C
ijkl=C
jikl=C
ijlk=C
klij)を考慮することにより、a
4及びa
2の両方を用いて、C
sを次のように補間することができる。
C
s(a
4,a
2)=B
1a
ijkl+B
2(a
ijδ
kl+a
klδ
ij)+B
3(a
ikδ
jl+a
ilδ
jk+a
jlδ
ik)+・・・B
4(δ
ijδ
kl)+B
5(δ
ikδ
ji+δ
ilδ
jk) 式(2b)
係数B
1、B
2、・・・、B
5は、次のように定義される。
B
1=C
1111+C
2222-2C
1122-4C
1212
B
2=C
1122-C
2233
B
3=C
1212+(C
2233-C
2222)/2
B
4=C
2233
B
5=(C
2222-C
2233)/2
式中、C
ijklはx方向に法線軸を有する所与の横等方性(一方向)弾性テンソルC
uの要素である。すなわち、
【数20】
【0083】
1セットの値をテンソルの構成要素にするためには、いくつかの条件を満たす必要がある。テンソル不変量を使用して、射影された配向テンソルaijの次数2における6つの独立した値のすべてを制約する、この定式化におけるこれらの条件を定義する。
【0084】
第一制約は、第一テンソル不変量I
1を満たすことである。一方向テンソルa
ijが単位方向ベクトルの自己二項積であることから、値は、常に1である必要がある。したがって、この制約を次のように書くことができる。
I
1=tr(a
2)=a
11+a
22+a
33=1
この等式条件は緩和され、不等式条件は次のとおりである。
a
11+a
22+a
33≦1
したがって、この制約は次のように定義される。
g
I1=a
11+a
22+a
33-1≦0
第二制約は、第二テンソル不変量I
2にある。
【数21】
式中、右辺の演算子の|・|は行列式である。I
2の値は常にゼロに等しい。また、恒等式の観点から
【数22】
以下の関係が確認されている。
【数23】
これらは、I
2=0の十分条件である。したがって、これらの条件は、第二不変量についての制約として使用される。これにより、各式に含まれる変数の数が減り、これらを簡潔に次のように書く。
【数24】
したがって、この制約は次のように定義される。
【数25】
上記を考慮すると、第三不変量もゼロである必要がある。すなわち、
I
3=det(a
2)=0
その結果、第二テンソル不変量I
2についての前の条件が満たされるときに、上記の第三テンソル不変量I
3も満たされる。
【0085】
ここでは、構造力学を最適化するために最適化問題の非限定的な一例を提供する。この実施例では、物理的な問題は、構成要素が線形弾性のつりあい状態にあるときにコンプライアンスを最小化することである。この物理的な問題は次のように定式化される。
【数26】
【数27】
フィルタリング式(1a)及び1(b)
支配方程式(3)
材料補間(2a)及び2(b)、
式中、
【数28】
は目的関数であり、
【数29】
及び
【数30】
はそれぞれφについての上限値及び下限値であり、uは材料特性が密度ρプラス配向テンソルa
4及びa
2と関連する支配方程式によって得られる状態変数であり、
【数31】
は構造体の体積であり、
【数32】
は構造体の体積についての上限値である。
【0086】
支配方程式は、次のような弾性つりあい式である。
【数33】
そして、構成則を次のように記述する。
σ=C(ρ,a4,a2)・ε
式中、
【数34】
【0087】
I1についての第一テンソル不変量の制約は点ごとの線形制約であり、I2についての第二テンソル不変量の制約は二次制約である。これらの点ごとの線形制約及び二次制約は、各点に複数の変数を含む。
【0088】
本明細書に記載される方法とは対照的に、これらの制約を組み込む数値解法は、上記のような、非線形数理計画法を使用して数値によって実装される関連方法にとって課題となる可能性がある。この課題は、点ごとに解かれる制約の数の結果である。ただし、本明細書に記載される方法について、これらの制約は、点ごとに対処されるのとは対照的に、多変量関数の射影によって実施される。
【0089】
さらに、本明細書に記載される方法は、方法を説明するために上記で使用される構造力学問題以外の他の物理問題にも適用可能である。この方法を適用することができるこれらの他の物理問題は、電磁、熱伝達、熱構造、及び磁気熱流体の問題を含む。例えば、所与の入力(すなわち、荷重)に対する繊維複合材料の力学的応答は、一軸テンソル(例えば、弾性テンソル)によって支配される。同様に、他の物理系(例えば、電磁、熱伝達、熱構造、及び磁気熱流体の問題)では、所与の入力に対する物理系の応答も、一軸テンソル(例えば、圧電テンソル、焦電テンソル、強誘電テンソル、強磁性テンソル、誘電率テンソル、透磁率テンソル、熱伝導率または導電率テンソルなど)によって支配されることができる。したがって、構造力学からの非限定的な一実施例を使用して示される、本明細書に記載される方法は、他の物理系に適用されることができる。例えば、例示的な実施例が配向テンソルa2を使用して固体弾性テンソルCsを計算した後に固体弾性テンソルを使用して支配する偏微分方程式(PDE)を数値シミュレートする方法と同様に、この方法も使用して他の物理系の物理テンソルを計算することができ、次いで、それらの物理テンソルを使用してそれらの物理系について支配する偏微分方程式(PDE)を数値シミュレートすることによって他の物理系の物理のシミュレーションを実行することができる。
【0090】
本明細書に記載される方法の利点は、次に関連方法と比較することによってよりよく理解されることができる。ここで、本明細書に記載される方法を2つの関連方法と比較する。
【0091】
上記にも記述される第一関連方法は、離散化後に設計点ごとにすべての制約をリストアップし、リストアップされた制約を用いて数理計画問題を解くことによって実行される。これは、最も精度が高く、可能性のある、最もわかりやすいアプローチであり、自由材料最適化(FMO)に使用される。ただし、この力まかせアプローチは、制約付き最適化についてのほとんどの数理計画アルゴリズムに不利益をもたらす多数の非線形制約を含む。
【0092】
別の関連方法は、集約された制約を使用する。すなわち、点ごとの制約ではなく、点ごとの制約関数を体積にわたり積分して、この制約を体積積分値に課す。したがって、多くの制約が少数(または単一)の制約に統合される。このアプローチは、積分体積ごとの制約条件の各タイプごとに1つの制約のみを必要とすることができる(例えば、積分体積は領域全体であることができる)。このアプローチは、上記の制約で有効である場合があり、点ごとの応力制約などのさらに複雑な制約でも有効である場合がある。ただし、集約された制約を使用することにより、局所値と領域全体における平均値との間の不一致が原因で、やや精度の低い結果をもたらす。
【0093】
本明細書に記載される方法に適用される戦略は、制約を射影に変換することである。このアプローチは、制約関数が明示的であり、比較的単純である場合に有効である。一般に、例えば、射影定義(例えば、ヘビサイド射影)を拡張することによって、または離散化前に連続レジームにおいて新しい射影を追加することによって、制約を射影に変換することができる。制約から射影へのアプローチが制約を点ごとに実施することを保つため、このアプローチは、上記の集約アプローチで遭遇する局所平均値の不一致問題を受けない。また、制約から射影へのアプローチは、第一関連方法において急増する多数の制約を回避する。したがって、それは、標準トポロジー最適化フレームワークを使用して、材料補間関数を変更することによって実装されることができる。その結果、それは、等方性最適化方法に比べて、追加の計算コストを実質的に追加しない。本明細書に示される非限定的な実施例では、制約から射影へのアプローチは、(i)三次元シェル問題、(ii)組み合わせ問題、及び(iii)テンソル不変量制約に適用される。
【0094】
図1Bに示されるように、テンソル不変量は、数理的設計変数115q
ijと、物理的設計変数125a
ijとの間に1つ以上の写像(例えば、射影)を使用して実施されることができる。これらの写像は、物理的設計変数125a
ijが制約に従い、数理的設計変数115q
ijがテンソル不変量に対応する制約を明示的に考慮せずに更新されることができることを確保する。
図1Bに示される非限定的な実施態様では、2つの別々の写像/射影を使用して、第一テンソル不変量制約I
1、及び第二テンソル不変量制約I
2に対処する。
【0095】
第一テンソル不変量制約I
1は、配向テンソルa
iiの対角要素にのみ関連する。ボックス制約と組み合わせて、これは四面体領域を次のように定義する。
0≦a
11≦1
0≦a
22≦1
0≦a
33≦1
a
11+a
22+a
33≦1。
ここでは、8個の節点の線形六面体アイソパラメトリック形状関数Nを使用して、第一テンソル不変量制約I
1に対処する。8個の節点の線形六面体アイソパラメトリック形状関数Nを非限定的な一例として使用する。この形状関数によってヘビサイド射影関数を対角要素について次のように拡張する。
【数35】
Nは、頂点情報を含む形状関数である。すなわち、
【数36】
式中、ξ、η、及びζは自然座標系における座標成分であり、v
iは実座標系におけるi番目の要素頂点の位置である。そして、
N
1=(1-ξ)(1-η)(1-ζ)/8
N
2=(1+ξ)(1-η)(1-ζ)/8
N
3=(1+ξ)(1+η)(1-ζ)/8
N
4=(1-ξ)(1+η)(1-ζ)/8
N
5=(1-ξ)(1-η)(1+ζ)/8
N
6=(1+ξ)(1-η)(1+ζ)/8
N
7=(1+ξ)(1+η)(1+ζ)/8
N
8=(1-ξ)(1+η)(1+ζ)/8
四面体形状を有する要素を含むことにより、射影された値は、四面体領域にあるように制約される。I
1制約についての四面体形状は、次のように定義される。
0≦x≦1
0≦y≦1
0≦z≦1
x+y+z≦1
この領域は、次の頂点集合v
iを与えることにより、六面体要素によって形成されることができる。
v
1=(0 , 0 , 0)
v
2=(1 , 0 , 0)
v
3=(1/2 , 1/2 , 0)
v
4=(0 , 1 , 0)
v
5=(0 , 0 , 1)
v
6=(1/2 , 0 , 1/2)
v
7=(1/3 , 1/3 , 1/3)
v
8=(0 , 1/2 , 1/2)
結果として、
【数37】
を四面体境界にa
iiとして射影し、元の制約を
図2Aに示されるように保持する。
図2Aは、I
1制約を射影に変換するために六面体形状関数を使用して多変量関数射影を示す。I
1制約の写像/射影は、入力として数理的設計変数115の対角要素q
iiを有し、出力として物理的設計変数125の対角要素a
iiを有する。
【0096】
第二写像は、物理的設計変数125の非対角要素aijが少なくともほぼ、第二テンソル不変量I2の定数を満たすことを確保する。数値的に良好に挙動する(例えば、写像関数が微分可能である)第二写像について、第二テンソル不変量I2を、正確に実施するのではなく、近似的にのみ実施する。第二テンソル不変量のこの近似的な実施で十分である。
【0097】
第二テンソル不変量I
2の定数を保つために、第二射影を導入する。第二テンソル制約I
2を次のように変換することができる。
【数38】
非対角項についてこの射影は、第二テンソル制約I
2を正確に実施するが、最適化が数値的に実装されている場合、ヘビサイド関数H
1/2は複雑さをもたらす場合がある。したがって、数値実装は、第二テンソル制約I
2を緩和することによって改善されることができ、非対角項についてのこの式は、次のようにa
2についての式を拡張することによって緩和を伴う射影に変換されることができる。
【数39】
この式を使用して材料特性の補間のために、フィルタリングされた非対角テンソル設計変数を一方向テンソルの非対角要素に射影する。
【0098】
ここで、平滑化されたランプ関数
【数40】
の非限定的な一実施例に関するさらなる詳細を提供する。平滑化されたランプ関数
【数41】
を配向テンソル設計変数
【数42】
の射影に使用する。非限定的な実施例では、これらの式に使用される関数は、-1で開始し1で停止する勾配を有するランプ関数に基づき、値1は次のように定義される。
【数43】
上記の関数を微分可能にするために、2つの不連続なヒンジ部品(x=-1,1)は、次の連結関数によって変更される。
【数44】
上記の関数を両方のヒンジ部品に挿入することにより、C
2連続性を有するRの微分可能なバージョンは、次のように得られる。
【数45】
【数46】
についてのhの値は、0.1に設定される。この関数と、この方法に使用されることができる他の平滑化された階段関数とのプロットを
図2Bに示す。
【0099】
構造力学最適化の非限定的な実施例では、最適化問題は、目的関数の値を計算するためにステップ130において、有限要素解析を含むネストされたスタイルに定式化される。より一般的には、ステップ134は、対処されている物理問題に適用されることができる任意の数値偏微分方程式(PDE)解法を使用して実行されることができる(例えば、FEAアプローチに加えて、有限差分方程式アプローチ、モーメント法アプローチ、または他のPDEシミュレーションアプローチを使用することができる)。収束基準がまだ満たされていない場合、構成要素の現在の構成を使用して、目的関数の感度を探索空間のさまざまな方向における変化に対して計算する(例えば、勾配、及び一部の実施態様では二階導関数を使用して感度を決定することができる)ことにより、最適化を実行する数理計画アルゴリズムによって設計変数を更新する情報を取得する。例えば、市販のソフトウェアパッケージComsol 5.2(商標)を使用して実行されるシミュレーション(すなわち、有限要素解析)を用いて、以下に提供される数値結果を生成し、Comsol 5.2(商標)についての最適化モジュールを使用して、最適化ステップを実行する。最適化のために、標準の非線形数理計画法を使用することができ、漸近線を移動させる大域的収束法(GCMMA)を使用して、以下に提供される例示的な結果を生成する。
【0100】
この例示的な実施例では、収束を10回の反復ごとに監視する。この基準は次のとおりである。
(f
k-10-f
k)/f
k<ε
式中、f
k-10及びf
kはそれぞれ10回の反復前の、現在の反復の、目的関数値であり、εは収束閾値である。最適化の最後に、緩和されたヘビサイド関数の開始及び遷移帯域幅hにおける構成テンソルC
ρに対する、式(2a)におけるペナルティパラメータpについてのいくつかの数値例に継続スキームを適用する。ペナルティパラメータpは、1で開始し、10回の反復ごとに1ずつ、3まで増加する。遷移帯域幅hは、1で開始し、最初の収束後に収束のために1/3ずつ、1/3まで減少する。
【表1】
【0101】
図3A及び3Bは、平面構造体における短い片持ち梁問題がテンソルベースの最適化方法を説明するために使用される第一実施例を示す。設計領域は、単純な平面の矩形形状であり、面内荷重中心の片持ち梁問題が考慮される。設計領域が薄い平らな形状ではあるが、それは、角度依存性を観察するためにさまざまな角度設定によって三次元空間に置かれる有限の厚さを有する三次元構造体である。
図3Aは、設計領域及び境界条件を示す。薄い矩形のボックスは、三次元デカルト座標系に位置している。ボックスのサイズは、0.050の厚さを有する、x方向及びy方向に対してそれぞれ2×1である。ハッチングされた平面上に灰色の面として示される、原点側においてより短い面は、固定境界条件下にあり、力は、反対側の面の中心において-y方向に荷重される。対称境界条件は、変形を平面内にあるように制約するために表面の中間上に適用される。
【0102】
図4A~4Eは、ZYXオイラー角についての回転角が(0°、0°、0°)である場合の数値シミュレーションについての結果を示す。
図4Aは、実座標系内での片持ち梁の配置を示す。
図4Bは、一軸材料の最適化されたトポロジー/分布及び配向を示す。
図4C~4Eは、位置の関数として、それぞれI
1、I
2、及びI
3テンソル不変量についての値を示す。第一テンソル不変量I
1は、1以下の値を有する必要があり、
図4Cに示されるように、その値を有する。第二テンソル不変量I
2は、ゼロの値を有する必要があり、
図4Dに示されるように、これは、配向が変化する接合部の近くを除き、大部分はゼロの値を有する。第二射影/写像が第二テンソル不変量I
2を実質的に実施するが、第二テンソル不変量I
2を正確に実施することなく、数値的に良好に挙動した(例えば、微分可能な)射影を使用することを想起する。ここでは、これは、片持ち梁について最適化された構成を達成するのに十分良い。テンソル不変量は、実際に、それがその理想値の30%(例えば、I
2<0.3)以内に保たれるときに実質的に実施される。第三テンソル不変量I
3は、ゼロの値を有する必要があり、
図4Eに示されるように、その値を基本的に有する。これらの結果は、本明細書では事例(a)と称される。
【0103】
図5A及び5Bは、ZYXオイラー角についての回転角が(0°、90°、0°)である場合の数値シミュレーションについての結果を示す。
図5Aは、実座標系に片持ち梁を示し、
図5Bは、最適化されたトポロジー/分布及び配向を示す。これらの結果は、本明細書では事例(b)と称される。
【0104】
図6A及び6Bは、ZYXオイラー角についての回転角が(90°、0°、0°)である場合の数値シミュレーションについての結果を示す。
図6Aは、実座標系に片持ち梁を示し、
図6Bは、最適化されたトポロジー/分布及び配向を示す。これらの結果は、本明細書では事例(c)と称される。
【0105】
図7A及び7Bは、ZYXオイラー角についての回転角が(0°、0°、30°)である場合の数値シミュレーションについての結果を示す。
図7Aは、実座標系に片持ち梁を示し、
図7Bは、最適化されたトポロジー/分布及び配向を示す。
図7C及び7Dは、それぞれI
1及びI
2についての値を示す。これらの結果は、本明細書では事例(d)と称される。
【0106】
図8A及び8Bは、ZYXオイラー角についての回転角が(0°、90°、30°)である場合の数値シミュレーションについての結果を示す。
図8Aは、実座標系に片持ち梁を示し、
図8Bは、最適化されたトポロジー/分布及び配向を示す。これらの結果は、本明細書では事例(e)と称される。
【0107】
図9A及び9Bは、ZYXオイラー角についての回転角が(30°、0°、0°)である場合の数値シミュレーションについての結果を示す。
図9Aは、実座標系に片持ち梁を示し、
図9Bは、最適化されたトポロジー/分布及び配向を示す。
図9C及び9Dは、それぞれI
1及びI
2についての値を示す。これらの結果は、本明細書では事例(f)と称される。
【0108】
図10A及び10Bは、ZYXオイラー角についての回転角が(0°、30°、90°)である場合の数値シミュレーションについての結果を示す。
図10Aは、実座標系に片持ち梁を示し、
図10Bは、最適化されたトポロジー/分布及び配向を示す。これらの結果は、本明細書では事例(g)と称される。
【0109】
図11A及び11Bは、ZYXオイラー角についての回転角が(43°、12°、24°)である場合の数値シミュレーションについての結果を示す。
図11Aは、実座標系に片持ち梁を示し、
図11Bは、最適化されたトポロジー/分布及び配向を示す。
図11C及び11Dは、それぞれI
1及びI
2についての値を示す。これらの結果は、本明細書では事例(h)と称される。
【0110】
事例(a)から(h)は、実座標系における片持ち梁についてのさまざまな設計領域の配向を示し、本明細書に記載される方法が実座標系における設計領域の配向の角度依存性に対してロバストであることを実証する。これらの数値シミュレーションでは、体積分率の上限値は、0.25である。事例(a)から(h)についての回転角は、ZYXオイラー角において、それぞれ(0°、0°、0°)、(0°、90°、0°)、(90°、0°、0°)、(0°、0°、30°)、(0°、90°、30°)、(30°、0°、0°)、(0°、30°、90°)、及び(43°、12°、24°)である。
【0111】
すべての事例でトポロジー及び目的値に有意差は見られないため、この方法は基本的に配向に依存していない。ただし、さまざまな回転角の事例について実現される解では、小さな差異が見られる場合がある。わずかな非対称を示す事例(h)を除き、すべての結果は、平面で対称な形状を示す。この方法が3つのデカルト軸を同等に処理することから、極軸またはオイラー角ベースの方法とは異なり、事例(a)、(b)、及び(c)は、トポロジー及び配向の両方の分布に同じ結果を示す。事例(d)及び(e)は、デカルト軸を中心とした面外回転(事例(a)及び(b)からの)を含み、事例(F)及び(g)は、面内回転(事例(a)及び(b)からの)を含む。事例(d)及び(e)は、回転なしの事例(すなわち、事例(a)及び(b))とほぼ同じ結果を示すが、後者の事例(e)及び(f)は、構造体の中央交差部分において配向にわずかな差異を示す。この差異は、第一テンソル不変量制約に対して四面体制約領域が定義される構造面内対称軸及びデカルト座標軸のミスアライメントが原因であると理解されることができる。この差異にもかかわらず、構造面内対称性は、どちらの事例でも保持される。事例(d)及び(f)がそれぞれ事例(e)及び(g)に等しいことから、各組は、同じ結果を示すことに留意する。事例(h)は、複数の面外回転を含むため、他の事例と比較してより多くの差異を示す。この事例では、トポロジー自体は、わずかな非対称のひずみを示す。また、このひずみは、多変量関数の射影の副産物とみなされることができる。この副産物は、今後の作業で減少する。
【0112】
次に、テンソル不変量制約を示す図を検討する。すべての事例について、I1は、1未満であり、所与の不等式制約を満たす。さらに、ほとんどの領域は、正確に1であり、I1についての最初の等式制約を満たす。
【0113】
同様に、I2は、構造体の接合部を除き、ほとんどの領域についてゼロであり、所与の制約を満たす。第三制約I3は、すべての領域でほぼゼロを示す。
【0114】
観察されるように、位置の関数として配向が最も急速に変化している構造部材の接合点に不一致が現れる。これは、ヘルムホルツフィルタリングによって実施される連続分布の仮定と、各テンソル要素の実際の最適分布との間に不一致がある場合があることを示唆する。接合点での不一致が大きくなりすぎる場合は、ステップ124での射影を調整して、第二テンソル不変量I2をより正確に実施することができる。したがって、ステップ124における射影を同調させ、第二テンソル不変量I2が実質的に満たされることを確保することができる。例えば、これらの図は、I2が0.3未満の値に保たれていることを示す。したがって、それは、ゼロの所望の値の30%以内であり、制約は、実質的に満たされる。
【0115】
次に、本明細書に記載される方法を図示する、多荷重面内4点曲げ梁問題についての数値シミュレーション結果を提供する。多荷重面内4点曲げ梁問題についてのこれらの結果は、トポロジー及び配向の逐次最適化についての結果を、配向に加えてトポロジーの同時最適化についての結果と図示し、比較する。さらに、単荷重セットアップ及び多荷重セットアップの両方についての結果を提供する。前の実施例と同様に、トポロジー最適化問題は、三次元空間において有限の厚さを有する平面矩形設計領域で解決される。
【0116】
図12は、問題の設定の概略図を示す。設計領域は、メッシュ要素の長さの2倍である、0.050の厚さを有する4×1の矩形である。底面上に、左角部は、固定され、
図12のハッチングされた平面上に灰色のボックスとして示され、右角部は、ローラー拘束下にあり、ローラー記号を有する灰色のボックスとして示され、そこで±y方向における変位は拘束される。上面上に、2つの荷重領域は、側面の長さの3分の1ごとに位置し、矢印付きの2つの灰色のボックスとして示され、そこで同じ量の力(0.1)は各領域上の-y方向に荷重される。
【0117】
それに加えて、どちらの問題も2つの異なる手順で解決される。1つは、トポロジー密度設計変数を最初に解き、その後、密度分布を変更せずに配向設計変数を解く逐次最適化である。もう1つの手順は、トポロジー及び配向設計変数を同時に解く同時最適化である。体積分率の上限値は、すべての事例において30%に設定される。
【0118】
この問題は、単一の解析では2つの荷重点がアクティブになる単荷重問題と、個々の荷重事例の解析のそれぞれでは各荷重点がアクティブになる多荷重問題との両方として解決される。さらに、単荷重問題及び多荷重問題は、逐次最適化及び同時最適化によってそれぞれ解決される。逐次最適化では、トポロジー密度設計変数を最初に最適化し、その後、密度分布を変更せずに配向設計変数を最適化する。同時最適化では、トポロジー及び配向設計変数を同時に最適化する。体積分率の上限値は、すべての事例において30%に設定される。
【0119】
図13Bは、多荷重、同時最適化についてトポロジー及び配向の結果を示し、
図13Aは、実座標系における梁の配置を示す。これは、本明細書では事例(j)と称される。
図14Bは、多荷重、逐次最適化についてトポロジー及び配向の結果を示し、
図14Aは、実座標系における梁の配置を示す。これは、本明細書では事例(k)と称される。
図15Bは、単荷重、同時最適化についてトポロジー及び配向の結果を示し、
図15Aは、実座標系における梁の配置を示す。これは、本明細書では事例(l)と称される。
図16Bは、単荷重、逐次最適化についてトポロジー及び配向の結果を示し、
図16Aは、実座標系における梁の配置を示す。これは、本明細書では事例(m)と称される。
【0120】
図13A、14A、15A、及び16Aは、それぞれ事例(j)、(k)、(l)、及び(m)についての三次元空間に得られたトポロジーを示す。
図13B、14B、15B、及び16Bは、それぞれ事例(j)、(k)、(l)、及び(m)についての対称面上のトポロジー及び配向の二次元プロットを示す。事例(j)、(k)、(l)、及び(m)は、それぞれ単荷重逐次最適化、単荷重同時最適化、多荷重逐次最適化、及び多荷重同時最適化によって取得される。単荷重事例及び多荷重事例を比較することにより、トポロジーへの影響を観察する。すなわち、単荷重事例は、正方形の不安定なフレームをもたらし、多荷重事例は、2つの荷重点より下の構造体の中心に三角形の安定したフレームをもたらす。それに加えて、逐次最適化及び同時最適化は、単荷重事例及び多荷重事例の両方に異なるトポロジーをもたらす。事例(j)及び(k)について目的関数の値は、それぞれ6.26及び6.10であり、そして事例(l)及び(m)について目的関数の値は、4.63及び4.41である。したがって、逐次最適化と比較した同時最適化の改善は、単荷重事例において約3%であり、多荷重事例において約5%である。
【0121】
上記の例示的な数値例は、方法100のいくつかの非限定的な実施態様を実証し、配向を最適化して目的関数を最小化(または最大化)するためのこの方法のいくつかの利点を実証する。配向テンソルについてのテンソル不変量が数理的設計変数から物理的設計変数への写像を通じて実施されるため、数理的設計変数を使用して実行される最適化方法は、制約式を介してテンソル不変量を実施する負担を負わせない。したがって、非線形制約を解除することにより、MMA及びSQPなどの効率的な非線形計画ソルバーを使用して最適化問題を解決することができる。
【0122】
座標系に関して、数理的設計変数及び物理的設計変数は、それぞれ位置の関数である配向テンソルqij及びaijを含む。さらに、数理的設計変数及び物理的設計変数は、位置の関数でもあり、構成要素のトポロジーを特徴付ける、材料の密度ρを含むことができる。構成要素の物理的応答が物理的設計変数を使用してシミュレートされる場合、追加の座標系を導入して、座標系の偏微分方程式(PDE)(すなわち、荷重などの物理的な入力への異方性材料の応答)を数値的にシミュレートすることができる。例えば、有限要素法(FEM)では、FEMメッシュを実座標系上に生成することができる。この実座標系は、デカルト系、円筒系、球面系などであることができる。FEMメッシュは、実座標系における頂点及び辺によって定義される要素(例えば、六面体要素または四面体要素)の配置であることができる。要素ごとに自然座標系を導入することもできる。例えば、各六面体要素は、形状関数を介して実座標系から単位立方体に写像されることができる。一般に、自然座標系は、範囲がゼロから拡張するように規格化される座標系、または範囲がマイナス1からプラス1に拡張するように定義される座標系であることができる。多くの場合、自然座標系は、六面体要素にはデカルト座標系を使用し、四面体要素にはバー中心座標系を使用する。
【0123】
形状関数は、FEM内に使用される座標変換操作を実行する。各要素は、自然座標系を使用して定式化される。各メッシュ要素は、実座標系上に定義されるそれぞれの形状関数によって変換される。形状関数は、自然座標系を実座標系に変換する。各メッシュ要素は、実座標系上でのその節点の位置に従い指示されるそれぞれの形状関数を有する。形状関数は、自然座標系上で座標値を取り、実座標系上に座標値を出力する。この形状関数を使用して、実座標系と自然座標系との間に物理的設計変数の配向テンソルaijからの配向を写像することができる。すなわち、FEMに使用される形状関数は、物理的設計変数上への数理的設計変数の写像とは別で独立した写像である。例えば、形状関数の写像は、第一及び第二テンソル不変量を一般に課さないが、物理的設計変数上への数理的設計変数の写像は、第一及び第二テンソル不変量を実施する。
【0124】
次に、方法100のさまざまなステップを実行するコンピューティングデバイス1700にハードウェア記述を提供する。
図17において、計算装置1700は、上述のプロセスを実行するCPU1701を含む。プロセスデータ及び命令をメモリ1702に格納してもよい。これらのプロセス及び命令を、ハードドライブ(HDD)もしくはポータブル記憶媒体などの記憶媒体ディスク1704に格納してもよい、またはリモートに格納してもよい。さらに、特許を請求する進歩事項は、本発明のプロセスの命令が格納されるコンピュータ可読媒体の形態によって制限されない。例えば、命令は、CD、DVD、フラッシュメモリ、RAM、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、ハードディスク、またはサーバもしくはコンピュータなどの計算装置1700が通信する任意の他の情報処理デバイスに格納されてもよい。
【0125】
さらに、特許を請求する進歩事項は、CPU1701及びオペレーティングシステム技術と共に実行するユーティリティアプリケーション、バックグラウンドデーモン、もしくはオペレーティングシステムの構成要素、またはこれらの組み合わせとして提供されてもよい。
【0126】
CPU1701は、例えば、Intel of AmericaからのXeonまたはコアプロセッサであってもよい、または当業者によって認識される他のプロセッサタイプであってもよい。あるいは、当業者が認識するように、CPU1701は、FPGA、ASIC、PLD上に、または個別の論理回路を使用して実装されてもよい。さらに、CPU1701は、上記の本発明のプロセスの命令を実行するように並列して協働する複数のプロセッサとして実装されてもよい。
【0127】
図17における計算装置1700は、ネットワーク1780とインタフェースするためのネットワークコントローラ1706をも含む。理解されることができるように、ネットワーク1780は、インターネットなどのパブリックネットワーク、またはLANもしくはWANネットワークなどのプライベートネットワーク、またはそれらの任意の組み合わせであることができ、PSTNまたはISDNサブネットワークも含むことができる。また、ネットワーク1780は、イーサネット(登録商標)ネットワークなどの有線であってもよい、またはセルラーネットワークなどの無線であってもよい。ワイヤレスネットワークは、WiFi、Bluetooth(登録商標)、またはいずれかの他のワイヤレス通信形式であってもよい。
【0128】
計算装置1700は、液晶ディスプレイ(LCD)モニタまたは有機発光ダイオード(OLED)スクリーンなどのディスプレイ1710とインタフェースするためのディスプレイコントローラ1708をさらに含む。汎用I/Oインタフェース1712は、ディスプレイ1710上の、またはディスプレイ1710から分離した、キーボード及び/またはマウス1714、及びタッチスクリーンパネル1716とインタフェースする。汎用I/Oインタフェースは、さまざまなセンサ1716及びアクチュエータ1718にも接続する。例えば、センサ1716及びアクチュエータ1718は、自動繊維配置(ATP)、テーラード繊維配置(TFP)、または連続繊維印刷(CFP)を実行するロボット機構であることができる。
【0129】
CreativeからSound Blaster Zサウンドカードなどのサウンドコントローラ1720も計算装置1700に提供され、スピーカー/マイクロホン1722とインタフェースすることにより、音及び/または音楽を提供する。
【0130】
汎用ストレージコントローラ1724は、記憶媒体ディスク1704を通信バス1726と接続し、この通信バスは、計算装置1700のコンポーネントのすべてを相互接続するために、PCI express(PCI-e)、Hypertransport(HT)、ISA、EISA、VESA、PCI、ACG、または同様のものであってもよい。ディスプレイ1710、キーボード及び/またはマウス1714、ならびにディスプレイコントローラ1708、ストレージコントローラ1724、ネットワークコントローラ1706、サウンドコントローラ1720、及び汎用I/Oインタフェース1712の一般的な特徴及び機能の説明は、これらの特徴が既知であるので、簡潔にするために本明細書では省略されている。
【0131】
ある特定の実施態様が説明されているが、これらの実施態様は例としてのみ提示され、本開示の教示を限定することが意図されない。実際のところ、本明細書中に記載される新規の方法、装置及びシステムは、さまざまな他の形式で具現化されてもよく、さらに、本明細書に記載される方法、装置及びシステムの形式のさまざまな省略、置換及び変更は、本開示の趣旨から逸脱することなく行われてもよい。