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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】ヒータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/10 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
H05B3/10 A
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020085822
(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公開番号】P2021180143
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000230249
【氏名又は名称】日本メクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青山 隼輔
(72)【発明者】
【氏名】我妻 和之
【審査官】土屋 正志
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-310709(JP,A)
【文献】特開2001-250660(JP,A)
【文献】特開2004-355882(JP,A)
【文献】実開平06-064392(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルムの表面に金属箔を備える素材に対してエッチングを行うことで、前記金属箔の一部によって、通電により発熱するヒータ回路部と、前記ヒータ回路部に通電する通電部とを形成するエッチング工程と、
前記エッチング工程後に、前記金属箔の表面を覆うカバーフィルムを設けるラミネート工程と、
前記ラミネート工程後に、前記ヒータ回路部に直列に接続される抵抗体と、前記通電部に電気的接続が可能な状態で設けられるコネクタと、をリフローはんだ付けにより設けるリフロー工程を有することを特徴とするフレキシブルプリント配線板を用いたヒータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板を用いたヒータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のフロントガラスなどを加熱するためにフィルム状のヒータが用いられている。近年、先進運転支援システム(ADAS)の開発が進んでおり、検知用のカメラのレンズやフロントガラスの曇り止めのために、フィルム状のヒータの必要性が増している。また、カメラの小型化も進んでおり、ヒータを小型化する必要も生じている。これに伴い、ヒータに使用する配線の細線化を進める必要が生じており、配線の寸法公差による加熱温度のバラツキを許容範囲に収めるのが困難になってきている。
【0003】
また、従来例に係るフィルム状のヒータにおいては、製造工程数が多いなどの問題もある。以下、従来例に係るフィルム状のヒータ及びその製造方法について、図10及び図11を参照して説明する。図10及び図11は従来例に係るフィルム状のヒータの製造工程図である。
【0004】
まず、通電により発熱する材料を用いて、ヒータ線510が形成される(図10(a)参照)。ヒータ線510の材料としては、ニッケル-クロム合金、SUS、アルミニウム、白金、鉄、ニッケル等の合金や純金属が採用される。次に、ヒータ線510の両面にそれぞれ第1絶縁フィルム521,第2絶縁フィルム522が設けられる。第1絶縁フィルム521と第2絶縁フィルム522は、ヒータ線510を挟み込んだ状態で、これらの間に設けられる粘着剤層523により貼り合わされる(図10(b)参照)。なお、図10(a)においてはヒータ線510の平面図を示し、図10(b)においては、ヒータを製造する過程の中間製品を模式的断面図にて示している。
【0005】
次に、第1絶縁フィルム521の表面側に、ヒータ線510と電気的接続が可能な状態で、電子部品530が取り付けられる(図11(a)参照)。図示の例では、電子部品530が一つのみ取り付けられた場合を示しているが、電子部品は複数取り付けられる場合もある。なお、電子部品530の一例として、温度ヒューズを挙げることができる。その後、リベット法やはんだ付けなどの各種手法によりワイヤーハーネス540がヒータ線510に電気的接続が可能な状態で取り付けられる(図11(b)参照)。そして、ワイヤーハーネス540の端部に電気的接続が可能な状態で、クリンプピン(不図示)を介してコネクタ550が取り付けられる。このコネクタ550は、ヒータ線510に通電を行うための電源や温度制御を行うための制御装置を備える装置に接続される。以上の製造工程により、ヒータ500が得られる。なお、図11(a)(b)においては、ヒータを製造する過程の中間製品の平面図を示し、図11(c)は完成品であるヒータ500の平面図を示している。以上の製造工程により得られるヒータ500の場合、電子部品530を取り付ける工程とは別に、ワイヤーハーネス540を取付ける工程とコネクタ550を取り付ける工程が必要であり、製造工程数が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5038921号公報
【文献】実開平5-64624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、製造工程数を削減することのできるフレキシブルプリント配線板を用いたヒータの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0011】
また、本発明のフレキシブルプリント配線板を用いたヒータの製造方法は、
ベースフィルムの表面に金属箔を備える素材に対してエッチングを行うことで、前記金属箔の一部によって、通電により発熱するヒータ回路部と、前記ヒータ回路部に通電する通電部とを形成するエッチング工程と、
前記エッチング工程後に、前記金属箔の表面を覆うカバーフィルムを設けるラミネート工程と、
前記ラミネート工程後に、前記ヒータ回路部に直列に接続される抵抗体と、前記通電部に電気的接続が可能な状態で設けられるコネクタと、をリフローはんだ付けにより設けるリフロー工程を有することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、エッチング工程によって、ヒータ回路部と通電部が形成されるため、製造工程数を少なくすることができる。また、リフロー工程において、抵抗体の取り付けと、コネクタの取り付けとを行うことができるため、製造工程数をより一層削減することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、製造工程数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は本発明の実施例に係るヒータと比較例に係るヒータの回路図である。
図2図2は本発明の実施例に係るヒータと比較例に係るヒータにおける経過時間に対する電圧値の変化を示すグラフである。
図3図3は本発明の実施例に係るヒータと比較例に係るヒータにおける経過時間に対する電流値の変化を示すグラフである。
図4図4は本発明の実施例に係るヒータと比較例に係るヒータにおける経過時間に対する温度の変化を示すグラフである。
図5図5は本発明の実施例に係るフレキシブルプリント配線板を用いたヒータの製造工程図である。
図6図6は本発明の実施例に係るフレキシブルプリント配線板を用いたヒータの製造工程図である。
図7図7は本発明の実施例に係るフレキシブルプリント配線板を用いたヒータの製造工程図である。
図8図8は本発明の実施例に係るフレキシブルプリント配線板を用いたヒータの製造工程図である。
図9図9は本発明の実施例に係るフレキシブルプリント配線板を用いたヒータの製造工程図である。
図10図10は従来例に係るフィルム状のヒータの製造工程図である。
図11図11は従来例に係るフィルム状のヒータの製造工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0016】
(実施例)
図1図9を参照して、本発明の実施例に係るフレキシブルプリント配線板を用いたヒータ及びその製造方法について説明する。なお、本実施例に係るヒータ10は、検知用のカメラのレンズやフロントガラスを加熱するために好適に用いることができる。また、本実施例に係るヒータ10は、自動車を構成する各種部材を加熱するためだけでなく、自動車以外の各種装置にも適用可能である。本実施例に係るヒータ10は、柔軟性を有しており、様々な方向に撓ませることができるため、湾曲した部分に対しても、湾曲面に沿うように貼り付けた状態で利用することが可能である。
【0017】
<ヒータ>
図1を参照して、本実施例に係るフレキシブルプリント配線板を用いたヒータの概略構成を説明する。図1(a)は本実施例に係るフレキシブルプリント配線板を用いたヒータが電源に接続された状態を簡略的に示す回路図である。図1(b)は比較例に係るフレキシブルプリント配線板を用いたヒータが電源に接続された状態を簡略的に示す回路図である。
【0018】
本実施例に係るヒータ10は、通電により発熱するヒータ回路部121と、ヒータ回路部121に直列に接続される抵抗体(本実施例においては、チップ抵抗310)とを備えている。このように構成されるヒータ10に対して電源400から電圧(定電圧)が印加され、ヒータ回路部121が発熱する。図1(b)に示す比較例に係るヒータ10Xにおいても、通電により発熱するヒータ回路部121を備えている。この比較例に係るヒータ10Xにおいては、抵抗体が設けられていない点のみが本実施例の場合と異なっている。このように構成される比較例に係るヒータ10Xにおいても、電源400から電圧(定電圧)が印加され、ヒータ回路部121が発熱する。
【0019】
(本実施例に係るヒータの優れた点)
一般的に、各種製品においては、素材や製造工程などの様々な影響によって、各部の寸法にはバラツキが生じる。従って、各部の寸法には、狙いの設計値に対して寸法公差が設定されている。背景技術で説明したような合金で構成されるヒータ線を用いたヒータの場合には、比較的寸法が大きく、寸法公差が加熱温度に与える影響は少ない。これに対して、フレキシブルプリント配線板を用いたヒータの場合、配線は銅箔などの金属箔により構
成されるため、ヒータ回路部121を構成する配線の細線化が可能になる一方で、細線化を図ると寸法公差が加熱温度に与える影響は大きくなる。そこで、本実施例に係るヒータ10においては、上記の通り、抵抗体(チップ抵抗310)をヒータ回路部121に直列に接続する構成を採用している。これにより、ヒータ回路部121を構成する配線の寸法公差による加熱温度のバラツキを抑制することができる。以下、加熱温度のバラツキを抑制することができる理由について説明する。
【0020】
電源400の電圧をE[V]、ヒータ回路部121の抵抗値をR1[Ω]、抵抗体(チップ抵抗310)の抵抗値をR2[Ω]とすると、ヒータ回路部121に印加される電圧(分圧)V1と、抵抗体に印加される電圧(分圧)V2は、
V1=(R1÷(R1+R2))×E[V]
V2=(R2÷(R1+R2))×E[V]
となる。
【0021】
ここで、ヒータ回路部121を構成する配線の寸法が寸法公差内において基準値よりも細い場合には、ヒータ回路部121の抵抗値R1が基準値の場合よりも高い分だけ、ヒータ回路部121に印加される電圧値V1も高くなる。これにより、配線の寸法が基準値よりも細いことによる電流値の減少を抑制することができる。これに対し、ヒータ回路部121を構成する配線の寸法が寸法公差内において基準値よりも太い場合には、ヒータ回路部121の抵抗値R1が基準値の場合よりも低い分だけ、ヒータ回路部121に印加される電圧値V1も低くなる。これにより、配線の寸法が基準値よりも太いことによる電流値の増大を抑制することができる。従って、ヒータ回路部121を構成する配線の寸法公差による加熱温度のバラツキを抑制することができる。
【0022】
この点について、特に、図2図4を参照して、より詳細に説明する。図2はヒータに電圧を印加してからの経過時間に対するヒータ回路部における電圧値の変化を示すグラフであり、同図(a)は本実施例に係るヒータの場合を示し、同図(b)は上記の比較例の場合を示している。図3はヒータに電圧を印加してからの経過時間に対するヒータ回路部における電流値の変化を示すグラフであり、同図(a)は本実施例に係るヒータの場合を示し、同図(b)は上記の比較例の場合を示している。図4はヒータに電圧を印加してからの経過時間に対するヒータ回路部における温度の変化を示すグラフであり、同図(a)は本実施例に係るヒータの場合を示し、同図(b)は上記の比較例の場合を示している。
【0023】
図2(a)中のグラフLvmaはヒータ回路部121における配線の寸法が基準値の場合を示し、グラフLvtaは当該配線の寸法が寸法公差内で最も細い場合を示し、グラフLvhaは当該配線の寸法が寸法公差内で最も太い場合を示している。図2(b)中のグラフLvmbはヒータ回路部121における配線の寸法が基準値の場合を示し、グラフLvtbは当該配線の寸法が寸法公差内で最も細い場合を示し、グラフLvhbは当該配線の寸法が寸法公差内で最も太い場合を示している。
【0024】
比較例のように、抵抗体が設けられていない場合には、電源400による電圧がヒータ回路部121に直接印加されるため、配線の寸法に拘わらず、同一の電圧が印加される。これに対して、本実施例に係るヒータ10の場合には、抵抗体が設けられることにより、ヒータ回路部121における配線が細いほど、ヒータ回路部121に印加される電圧は大きくなる。
【0025】
図3(a)中のグラフLimaはヒータ回路部121における配線の寸法が基準値の場合を示し、グラフLitaは当該配線の寸法が寸法公差内で最も細い場合を示し、グラフLihaは当該配線の寸法が寸法公差内で最も太い場合を示している。図3(b)中のグラフLimbはヒータ回路部121における配線の寸法が基準値の場合を示し、グラフL
itbは当該配線の寸法が寸法公差内で最も細い場合を示し、グラフLihbは当該配線の寸法が寸法公差内で最も太い場合を示している。
【0026】
比較例の場合には、上記の通り、ヒータ回路部121に印加される電圧は、配線の寸法に拘わらず同一の電圧が印加されるため、配線が太いほど抵抗値が小さくなり、電流量は大きくなる。そして、配線の太さが異なることによる電流値のバラツキも大きくなる。また、通電により発熱することで、温度が高くなるにつれて抵抗値が高くなるため、通電開始から所定時間の間、電流値が徐々に低くなった後に電流値は一定となる。比較例においては、配線が太い場合、電流値の変化が顕著になる。これに対して、本実施例に係るヒータ10の場合においても、配線が太いほど、電流値は大きくなるものの、印加される電圧は配線が細いほど大きくなるため、配線の太さが異なることによる電流値のバラツキは小さくなる。また、通電初期における電流値の変化も抑制することができる。
【0027】
図4(a)中のグラフLtmaはヒータ回路部121における配線の寸法が基準値の場合を示し、グラフLttaは当該配線の寸法が寸法公差内で最も細い場合を示し、グラフLthaは当該配線の寸法が寸法公差内で最も太い場合を示している。図4(b)中のグラフLtmbはヒータ回路部121における配線の寸法が基準値の場合を示し、グラフLttbは当該配線の寸法が寸法公差内で最も細い場合を示し、グラフLthbは当該配線の寸法が寸法公差内で最も太い場合を示している。
【0028】
比較例の場合には、配線の寸法に拘わらずヒータ回路部121に印加される電圧が同一で、かつ、配線が太いほど電流量が大きくなるため、配線の寸法公差によるヒータ回路部121の温度のバラツキは大きくなる。これに対して、本実施例に係るヒータ10の場合には、配線が細いほど、ヒータ回路部121に印加される電圧は大きくなり、かつ電流量が小さくなり、配線が太いほど、ヒータ回路部121に印加される電圧は小さくなり、かつ電流量が大きくなる。これにより、図4(a)に示すように、配線の寸法公差による温度のバラツキを小さくすることができる。以上のように、本実施例に係るヒータ10によれば、ヒータ回路部121を構成する配線の寸法公差による加熱温度のバラツキを抑制することができる。また、本実施例に係るヒータ10の場合には、配線の太さに応じて印加電圧が異なるように制御されるため、ヒータ回路部121の温度が高くなることによる抵抗値の上昇に伴う加熱温度の低下を抑制することができる。
【0029】
<本実施例に係るフレキシブルプリント配線板を用いたヒータの製造方法>
フレキシブルプリント配線板を用いたヒータの製造方法について、図5図9を参照して、製造工程の順に説明する。
【0030】
<<素材>>
図5は本実施例に係るヒータ10を製造するために用いる素材100を示している。図5(a)は素材100の一部を示す平面図であり、同図(b)は素材100の模式的断面図(図1中のAA断面図)である。
【0031】
この素材100は、一般的に銅張積層板と呼ばれており、市販されている。この素材100は、ベースフィルム110の表面に金属箔120が備えられた構成である。ベースフィルム110は、絶縁性の柔軟性を有する樹脂材料(例えば、ポリイミドやポリエチレンナフタレート)により構成されている。また、金属箔120は銅箔により構成されている。このように構成される素材100は、柔軟性を有しており、様々な方向に撓ませることができる。
【0032】
<<エッチング工程>>
フォトリソグラフィなどの手法を用いて、素材100の片面に対して、ヒータ回路部1
21、及び通電部122,123を形成するためのレジストパターン(マスクとなる部分)が形成される。その後、エッチングが行われることで、不要な銅箔が除去されて、ヒータ回路部121、及び通電部122,123が形成される。すなわち、金属箔120の一部によって、ヒータ回路部121、及び通電部122,123が形成される。なお、これらヒータ回路部121、及び通電部122,123はエッチングによりほぼ同時に形成される。図6はエッチング工程が行われた後の第1中間製品100Xが示されている。図6(a)は第1中間製品100Xの平面図であり、同図(b)は第1中間製品100Xの断面図(同図(a)中のBB断面図)である。
【0033】
本実施例においては、ヒータ回路部121におけるヒータ線は、その線幅が一定となるように設けられている。また、ヒータ回路部121においては、ヒータ線が等間隔で蛇行する領域が少なくとも1列設けられるように構成されている(図6(a)参照)。なお、本実施例においては、蛇行領域が4列設けられている。ただし、ヒータ回路部121のパターンについては、図示の例に限定されることはないことは言うまでもない。なお、レジストパターンを形成するための手法については、フォトリソグラフィに限らず、各種公知技術を採用することができる。
【0034】
<<ラミネート工程>>
エッチング工程後に、金属箔120(ヒータ回路部121、及び通電部122,123)の表面を覆うカバーフィルム211が設けられる。カバーフィルム211は、粘着剤層212によって、ヒータ回路部121、及び通電部122,123を挟み込むようにベースフィルム110に貼り合わされる。カバーフィルム211についても、ベースフィルム110と同様に、絶縁性の柔軟性を有する樹脂材料により構成される。なお、カバーフィルム211には、開口部211a,211bが設けられている。
【0035】
図7はラミネート工程が行われた後の第2中間製品200が示されている。図7(a)は第2中間製品200の平面図であり、同図(b)は第2中間製品200の断面図(同図(a)中のCC断面図)である。カバーフィルム211を設けるためのラミネート方法については、各種公知技術を採用すればよいので、その説明は省略する。なお、第2中間製品200がフレキシブルプリント配線板に相当する。
【0036】
<<リフロー工程(実装工程)>>
ラミネート工程後に、第2中間製品200であるフレキシブルプリント配線板に対して、チップ抵抗310及びコネクタ320が実装される。まず、開口部211a,211bを介して、金属箔120(通電部122,123に相当)が露出された部分に対して、金メッキ処理や水溶性プリフラックス処理などの表面処理が行われる。その後、リフロー炉内で、はんだ付けが行われることにより、各種部品の実装がなされる。つまり、本実施例においては、リフローはんだ付けによって、チップ抵抗310は開口部211aを介して通電部122に接続され、コネクタ320は開口部211bを介して通電部122,123に接続(電気的接続可能な状態で接続)される。そのため、一つの工程で、チップ抵抗310の取り付けと、コネクタ320の取り付けをほぼ同時に行うことができる。図8はリフロー工程が行われた後の中間製品200が示されている。図8は当該中間製品の平面図である。なお、本実施例では、リフロー工程において、チップ抵抗310とコネクタ320を実装させる場合を例にして示したが、他の電子部品を同時に実装させることもできる。例えば、ヒータ回路部121に、表面実装タイプの温度ヒューズを実装することができる。
【0037】
<<カット工程>>
リフロー工程後に、外形を打ち抜くようにカットすることで、図9に示すように、完成品であるヒータ10が得られる。なお、一つの素材100から複数のヒータ10を製造す
ることができる。図9(a)は完成品であるヒータ10の平面図であり、同図(b)は同図(a)中のDD断面図であり、同図(c)は同図(a)中のEE断面図である。図1を参照して、ヒータの概略構成を既に説明したが、以下、ヒータ10の構成について、より詳細に説明する。
【0038】
本実施例に係るヒータ10は、加熱対象部を加熱するための加熱部250と、電気配線部260と、チップ抵抗310と、電気配線部260の端部に設けられるコネクタ320とから構成される。コネクタ320は、ヒータ回路部121に通電を行うための電源400に接続されるために設けられている。なお、電源400については、各種制御を行うための装置に備えられるのが一般的である。
【0039】
次に、ヒータ10における加熱部250及び電気配線部260の内部構成について説明する。本実施例に係るヒータ10は、ベースフィルム110と、ベースフィルム110の一方の面に設けられるヒータ回路部121、及び通電部122,123とを備えている(図6等も参照)。ヒータ回路部121は、コネクタ320に接続された電源400から通電部122,123により通電されることによって発熱するように構成されている。
【0040】
なお、上記の加熱部250は、ヒータ回路部121が設けられている領域部分に相当する。また、上記の電気配線部260は、通電部122,123が設けられている領域部分に相当する。
【0041】
このように、本実施例に係るヒータ10においては、ベースフィルム110の表面に備えられた金属箔120によって、通電により発熱するヒータ回路部121が形成される。また、本実施例に係るヒータ10においては、ヒータ回路部121に直列に接続される抵抗体としてのチップ抵抗310が備えられる。
【0042】
<本実施例に係るフレキシブルプリント配線板を用いたヒータの製造方法の優れた点>
本実施例に係るフレキシブルプリント配線板を用いたヒータ10及びその製造方法によれば、エッチング工程によって、ヒータ回路部121と通電部122,123が形成されるため、製造工程数を少なくすることができる。従って、従来のようにワイヤーハーネスを取り付ける工程が不要となり、部品点数を減らすと共に、製造工程数を少なくすることができる。また、リフロー工程において、チップ抵抗310の取り付けと、コネクタ320の取り付けとを行うことができるため、製造工程数をより一層削減することができる。
【0043】
(その他)
上記実施例においては、ベースフィルム110の片面側にのみ金属箔120が備えられるフレキシブルプリント配線板を用いたヒータの場合を説明した。しかしながら、本発明においては、ベースフィルムの両面に金属箔を備えるフレキシブルプリント配線板にも適用可能である。この場合には、両面にヒータ回路部を設けることもできるし、片面にのみヒータ回路部を設けて他方の面は別の機能を持たせることもできる。また、上記実施例においては、抵抗体としてチップ抵抗の場合を示した。しかしながら本発明における抵抗体は、チップ抵抗に限らず、アキシャルタイプの抵抗器など、各種の抵抗器を採用し得る。
【符号の説明】
【0044】
10 ヒータ
100 素材
100X 第1中間製品
110 ベースフィルム
120 金属箔
121 ヒータ回路部
122,123 通電部
200 第2中間製品
211 カバーフィルム
211a,211b 開口部
212 粘着剤層
250 加熱部
260 電気配線部
310 チップ抵抗
320 コネクタ
400 電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11