(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】液体保温構造、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 81/38 20060101AFI20240405BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20240405BHJP
B32B 27/42 20060101ALI20240405BHJP
A47J 41/00 20060101ALI20240405BHJP
F16L 59/02 20060101ALN20240405BHJP
【FI】
B65D81/38 J
B32B5/18
B32B27/42 102
A47J41/00 301Z
F16L59/02
(21)【出願番号】P 2020111443
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2022-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】堀本 正也
【審査官】吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-282743(JP,A)
【文献】登録実用新案第3203263(JP,U)
【文献】特開2018-015977(JP,A)
【文献】特開平09-140608(JP,A)
【文献】特開平07-071694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/38
B32B 5/18
B32B 27/42
A47J 41/00
F16L 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高温の液体を保持して保温する液体保温構造であって、
気泡を含む板状の発泡材料の表面にポリウレア樹脂が塗布されて成るポリウレア樹脂層を有する成型断熱部材にて、少なくとも液槽の蓋部が構成され
、
板状の前記発泡材料の厚み方向に沿って形成される板側面には、硬化後の前記発泡材料よりも強度が高い金属から成る補強枠体が固設されており、
前記ポリウレア樹脂層は、前記板側面に前記補強枠体が固設された状態の前記発泡材料の外側に形成され、
前記ポリウレア樹脂層は、前記発泡材料及び前記補強枠体の表面に所定の厚みで塗布される第1塗布層と、当該第1塗布層の外表面に形成され且つ層が厚い厚層部位と当該厚層部位より薄い薄層部位とが存在する第2塗布層とから構成されている液体保温構造。
【請求項2】
前記蓋部は、平面視で長手方向に沿って延びる長方形状であり、
当該長手方向に沿って延びる分割部位に沿って分離可能な第1蓋部と第2蓋部とから構成され、
前記第1蓋部の前記分割部位に沿う前記板側面と、前記第2蓋部の前記分割部位に沿う前記板側面とには、前記補強枠体としての分割部位補強枠体が固設される請求項
1に記載の液体保温構造。
【請求項3】
高温の液体を保持して保温する
べく、気泡を含む板状の発泡材料の表面にポリウレア樹脂が塗布されて成るポリウレア樹脂層を有する成型断熱部材にて、少なくとも液槽の蓋部が構成され、板状の前記発泡材料の厚み方向に沿って形成される板側面には、硬化後の前記発泡材料よりも強度が高い金属から成る補強枠体が固設されており、前記ポリウレア樹脂層は、前記板側面に前記補強枠体が固設された状態の前記発泡材料の外側に形成される液体保温構造の製造方法であって、
前記発泡材料
及び前記補強枠体の表面に対し、
前記ポリウレア樹脂を所定の厚みで塗布する第1塗布層を塗布する第1塗布工程と、当該第1塗布層の外表面に対し層が厚い厚層部位と当該厚層部位より薄い薄層部位とが存在する第2塗布層を塗布する第2塗布工程とを、記載の順に実行する製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液槽の内部に保持される高温の液体を保温する液体保温構造、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、保温対象物を外囲して保温する恒温保温容器を、ポリスチレンを発泡させ硬化させた材料としての発泡材料(所謂、発泡スチロール)を用いて作成したものが知られている(特許文献1を参照)。当該恒温保温容器は、発泡材料に含まれる気体による断熱効果により、容器の内部と外部との断熱を行う形態で、容器の内部を保温するものである。
他の保温機能を発揮するものとして、袋状容器を構成する基材の内面又は外面にアルミニウム等の金属膜を形成したものが知られている(特許文献2を参照)。当該特許文献2に開示の技術では、アルミニウムによる輻射熱の反射により、袋状容器の内部を保温するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5812779号公報
【文献】特開2017-36087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、工場等で工業製品を製造する製造業では、省エネルギー性の観点から、排熱を用いた発電や、製造過程での排熱の再利用等が積極的に行われている。
このような省エネ性を向上する流れの中で、製造過程で用いる液体のうち、比較的高温の液体を、工場の休止時等において保温する技術が求められている。例えば、液体保温槽に高温の液体を保持する場合、当該液体保温槽に対して、特許文献1に開示の技術のような発泡材料を用いて作成された蓋部を載置して、大気への放熱を抑制することが考えられる。しかしながら、液体が高温の場合、発泡材料としての発泡スチロールは、硬化後に熱が加えられることで変形する場合があり、蓋部の変形により液体保温槽と蓋部との間に隙間が生じるときには、放熱ロスを十分に抑制できないという問題があった。
一方、特許文献2に開示の如く、輻射熱を反射する材料としてのアルミニウムを用いて蓋部を作成する場合、アルミニウム自体が蒸発した液体との接触により昇温し、当該アルミニウムから大気へ放熱するという問題があった。また、アルミニウム自体が昇温して高温となるため、例えば蓋部を素手などで人為的に移動させる場合に、把持がし難くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的高い断熱性能を維持しながらも、高い形状維持機能をも有する液体保温構造、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための液体保温構造は、高温の液体を保持して保温する液体保温構造であって、その特徴構成は、
気泡を含む板状の発泡材料の表面にポリウレア樹脂が塗布されて成るポリウレア樹脂層を有する成型断熱部材にて、少なくとも液槽の蓋部が構成され、
板状の前記発泡材料の厚み方向に沿って形成される板側面には、硬化後の前記発泡材料よりも強度が高い金属から成る補強枠体が固設されており、
前記ポリウレア樹脂層は、前記板側面に前記補強枠体が固設された状態の前記発泡材料の外側に形成され、
前記ポリウレア樹脂層は、前記発泡材料及び前記補強枠体の表面に所定の厚みで塗布される第1塗布層と、当該第1塗布層の外表面に形成され且つ層が厚い厚層部位と当該厚層部位より薄い薄層部位とが存在する第2塗布層とから構成されている点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、高温の液体の液体保温構造を構成する蓋部を、気泡を含む板状の発泡材料の表面にポリウレア樹脂が塗布されて成るポリウレア樹脂層を有する成型断熱部材にて構成することで、発泡材料の表面が、硬化後に高い強度を示すポリウレア樹脂により被覆されるから、昇温による発泡材料の変形を抑制できる。結果、成型断熱部材の初期の形状を維持することができ、形状変形による液槽と蓋部との間における隙間の発生を抑制でき、放熱ロスを低減できる。
更に、当該ポリウレア樹脂は、従来技術に示したアルミニウム等に比べ熱伝導度が小さいため、当該ポリウレア樹脂を伝達媒体として、高温の液体から大気等への放熱を十分に抑制することができる。また、成型断熱部材の基材としての発泡材料が、内部に気泡を含む断熱構造を有しているから、比較的高い断熱性も期待できる。
更に、上記特徴構成によれば、板状の発泡材料の板側面には、硬化後の発泡材料よりも強度が高い金属から成る補強枠体が固設されているから、発泡材料の熱による変形をより一層良好に抑制できる。
一般的に、金属は熱伝導度が高く、それ自体を通して熱が外部へ放熱する虞があるが、上記特徴構成によれば、比較的熱伝導度の低いポリウレア樹脂により、金属としての補強枠体の外部を被覆するから、当該金属を介する大気への放熱が効果的に抑制できる。
更に、上記特徴構成によれば、発泡材料の表面には、層が厚い厚層部位と当該厚層部位よりも薄い薄層部位とが存在する第2塗布層が形成されているから、例えば、厚層部位と薄層部位とを斑(エンボス状)に形成することにより、発泡材料の表面にポリウレア樹脂が塗布された蓋部を移動させる際に、その表面を把持する場合の表面摩擦力を向上させて、把持する際の力を低減できる。
更に、ポリウレア樹脂層として、例えば、厚層部位と薄層部位とが斑に存在する第2塗布層のみを形成する場合、発泡材料の表面がポリウレア樹脂に覆われていない部位が生じる可能性があるが、上記特徴構成によれば、第2塗布層の内側(発泡材料と第2塗布層との間、又は補強枠体と第2塗布層との間)に所定の厚みで塗布される第1塗布層が形成されているから、発泡材料の表面の全体を確実にポリウレア樹脂で覆うことができ、発泡材料の全体の強度を良好に補強できる。
以上より、比較的高い断熱性能を維持しながらも、高い形状維持機能をも有する液体保温構造を実現できる。
【0010】
液体保温構造の更なる特徴構成は、
前記蓋部は、平面視で長手方向に沿って延びる長方形状であり、
当該長手方向に沿って延びる分割部位に沿って分離可能な第1蓋部と第2蓋部とから構成され、
前記第1蓋部の前記分割部位に沿う前記板側面と、前記第2蓋部の前記分割部位に沿う前記板側面とには、前記補強枠体としての分割部位補強枠体が固設される点にある。
【0011】
発泡材料は、熱が加えられた場合に熱変形(反り)が発生するのであるが、当該熱変形は、長手方向に沿う熱変形が、短手方向に沿う熱変形よりも大きい。
上記特徴構成によれば、蓋部が、長手方向に沿って延びる分割部位に沿って分離可能な第1蓋部と第2蓋部とから構成され、第1蓋部の分割部位に沿う板側面と第2蓋部の分割部位に沿う板側面とには分割部位補強枠体が固設されるから、当該分割部位補強枠体により長手方向に沿う強度が補強され、長手方向に沿う熱変形(反り)を、より一層良好に抑制できる。
また、金属から成る補強枠体及びポリウレア樹脂を含んで成る蓋部は、比較的重量が大きくなるが、上記特徴構成によれば、蓋部を第1蓋部と第2蓋部とに分割可能に構成されているから、蓋部を移動させる場合に、第1蓋部と第2蓋部とを個別に移動でき、移動の際の人的負荷を低減できる。
【0013】
上記特徴構成によれば、発泡材料の表面には、層が厚い厚層部位と当該厚層部位よりも薄い薄層部位とが存在する第2塗布層が形成されているから、例えば、厚層部位と薄層部位とを斑(エンボス状)に形成することにより、発泡材料の表面にポリウレア樹脂が塗布された蓋部を移動させる際に、その表面を把持する場合の表面摩擦力を向上させて、把持する際の力を低減できる。
更に、ポリウレア樹脂層として、例えば、厚層部位と薄層部位とが斑に存在する第2塗布層のみを形成する場合、発泡材料の表面がポリウレア樹脂に覆われていない部位が生じる可能性があるが、上記特徴構成によれば、第2塗布層の内側(発泡材料と第2塗布層との間)に所定の厚みで塗布される第1塗布層が形成されているから、発泡材料の表面の全体を確実にポリウレア樹脂で覆うことができ、発泡材料の全体の強度を良好に補強できる。
【0014】
上記目的を達成するための液体保温構造の製造方法は、高温の液体を保持して保温するべく、気泡を含む板状の発泡材料の表面にポリウレア樹脂が塗布されて成るポリウレア樹脂層を有する成型断熱部材にて、少なくとも液槽の蓋部が構成され、板状の前記発泡材料の厚み方向に沿って形成される板側面には、硬化後の前記発泡材料よりも強度が高い金属から成る補強枠体が固設されており、前記ポリウレア樹脂層は、前記板側面に前記補強枠体が固設された状態の前記発泡材料の外側に形成される液体保温構造の製造方法であって、その特徴構成は、
前記発泡材料及び前記補強枠体の表面に対し、前記ポリウレア樹脂を所定の厚みで塗布する第1塗布層を塗布する第1塗布工程と、当該第1塗布層の外表面に対し層が厚い厚層部位と当該厚層部位より薄い薄層部位とが存在する第2塗布層を塗布する第2塗布工程とを、記載の順に実行する点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、高温の液槽の液体保護構造を構成する蓋部を、気泡を含む発泡材料を板状に加工した表面に、ポリウレア樹脂を塗布して蓋部を構成することで、発泡材料の表面が、硬化後に高い強度を示すポリウレア樹脂により被覆されるから、昇温による発泡材料の変形を抑制することができる。結果、成型断熱部材の初期の形状を維持することができ、形状変形により液槽と蓋部との間に隙間ができることを防止でき、放熱ロスを低減できる。
更に、当該ポリウレア樹脂は、従来技術に示したアルミニウム等に比べ熱伝導度が小さいため、当該ポリウレア樹脂を伝達媒体として、高温の液体から大気等への放熱を十分に抑制することができる。
また、上記特徴構成によれば、発泡材料の表面には、層が厚い厚層部位と当該厚層部位より薄い薄層部位とが存在する第2塗布層が形成されているから、例えば、厚層部位と薄層部位とを斑(エンボス状)に形成することにより、発泡材料の表面にポリウレア樹脂が塗布された蓋部を移動させる際に、その表面を把持する場合の表面摩擦力を向上させて、把持する際の力を低減できる。
尚、ポリウレア樹脂による層として、例えば、厚層部位と薄層部位とが斑に存在する第2塗布層のみを形成する場合、発泡材料の表面がポリウレア樹脂に覆われていない部位が生じる可能性があるが、上記特徴構成によれば、第2塗布層の内側(発泡材料と第2塗布層との間、又は補強枠体と第2塗布層との間)に所定の厚みで塗布される第1塗布層が形成されているから、発泡材料の表面の全体を確実にポリウレア樹脂で覆うことができ、発泡材料の全体の強度を良好に補強できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る蓋部を含む液体保温構造を示す斜視図である。
【
図3】本発明に係る蓋部を用いた場合の保温効果を示すグラフ図である。
【
図4】従来技術に係る蓋部を用いた場合の保温効果を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る液体保温構造100及びその製造方法では、比較的高い断熱性能を維持しながらも、高い形状維持機能をも有するものである。
以下、
図1~4を用いて、当該液体保温構造100及びその製造方法について説明する。
【0018】
当該実施形態に係る高温の液体51を保持して保温する液体保温構造100は、
図1、2に示すように、平面視で長方形状であり且つ有底箱状の液槽50と、当該液槽50の上部を閉止する蓋部Fとから構成さており、液槽50には、平面視で角部の近傍に、保温対象としての液体51を流入する流入管L1と液体を外部へ送出する流出管L2とが配設されている。
ここで、保温対象としている液体51は、リン酸塩液等の種々の液体が考えられ、温度域としては、40℃以上80℃以下程度の温度域のものを対象としている。
【0019】
蓋部Fは、所定の厚みを有するものであり、気泡を含む板状の発泡材料H(例えば、ポリスチレンを発泡させ硬化させた材料としての発泡スチロール、ウレタン結合を有する重合体中にガスを細かく分散させ発泡状又は多孔質形状に成形された発泡ポリウレタン)の表面に、ポリウレア樹脂が塗布されて成るポリウレア樹脂層Pを有する成型断熱部材にて構成されている。このように、ポリウレア樹脂を塗布することにより成型断熱部材の強度及び防水性能を高くすることができる。
更に、蓋部Fは、強度の更なる向上を図るべく、板状の前記発泡材料Hの厚み方向に沿って形成される板側面には、硬化後の前記発泡材料Hよりも強度が高いSUS(金属の一例)から成る補強枠体Wが接着剤により接着される形態で固設されており、ポリウレア樹脂層Pは、板側面に補強枠体Wが固設された状態の発泡材料Hの外側に形成される。
【0020】
より詳細には、蓋部Fは、平面視で長手方向に沿って延びる長方形状であり、当該長手方向に沿って延びる分割部位に沿って分離可能な第1蓋部F1と第2蓋部F2とから構成され、第1蓋部F1の分割部位に沿う板側面には、第1蓋部F1の補強枠体W1としての分割部位補強枠体W1aが固設されており、第2蓋部F2の分割部位に沿う板側面には、第2蓋部F2の補強枠体W2としての分割部位補強枠体W2aが固設されている。
因みに、第1蓋部F1及び第2蓋部F2には、平面視において、その角部が切り欠かれたた切欠部K1、K2が設けられており、液槽50に蓋部Fが載置されている状態で、第1蓋部F1の第1切欠部K1には流入管L1が位置し、第2蓋部F2の第2切欠部K2には流出管L2が位置する形態で、配設される。
【0021】
ポリウレア樹脂層Pは、
図2に示すように、発泡材料Hの表面に対し、所定の厚みで塗布する第1塗布層P1を塗布(当該実施形態ではスプレー)する第1塗布工程と、当該第1塗布層P1の外表面に対し層が厚い厚層部位EB1と当該厚層部位EB1より薄い薄層部位EB2とが斑に存在する第2塗布層P2を塗布(当該実施形態ではスプレー)する第2塗布工程とを記載の順に実行することで形成される。
当該構成により、発泡材料Hとしての発泡スチロールの板表面(表面と裏面とを含む)と板側面の補強枠体Wの外面、即ち、その外側の全面を所定の厚みで塗布される第1塗布層P1にてコーティングされるから、その外周面の全体が、強度の高いポリウレア樹脂層Pにて一定以上の強度が担保される。
更に、第1塗布層P1の外側には、厚層部位EB1と薄層部位EB2とから成るエンボス状の第2塗布層P2が形成されている、即ち、厚層部位EB1と薄層部位EB2とが斑に形成され厚さが不均一となっているから、当該蓋部Fを把持して移動させる際に、蓋部Fの表面での摩擦抵抗を大きくでき、滑り難くできる。
【0022】
図2に示すように、発泡材料Hは、蓋部Fの重さを抑えつつ所定の保温性能を発揮する観点から、その厚みLαを30mm以上50mm以下程度に設定されており、ポリウレア樹脂層Pとしての第1塗布層P1は、蓋部Fの重さを抑えつつ所定の強度を維持する観点から、1mm以上2mm以下程度に設定されており、ポリウレア樹脂層Pとしての第2塗布層P2は、蓋部Fの重さを抑えつつ表面の摩擦抵抗を一定以上にする観点から、0.5mm以上1mm以下程度に設定されている。
【0023】
尚、当該実施形態では、液槽50は、蓋部Fと同様に、気泡を含む発泡材料H(例えば、ポリスチレンを発泡させ硬化させた材料としての発泡スチロール)を有底箱状に加工した表面にポリウレア樹脂を塗布して成るポリウレア樹脂層Pを有する成型断熱部材から構成している。ただし、金属から成る補強枠体Wは設けないものとする。
【0024】
次に、当該実施形態に係る液体保温構造100の保温性能を示す試験結果を、
図3、4のグラフ図に基づいて説明する。
図3は、本発明に係る液体保温構造100を用いた場合の試験結果であり、
図4は、従来技術に係るアルミニウムを主材料とする蓋部を用いた場合の試験結果である。
両者は、共通の液槽50に対して共通の液体(水)が貯留されている状態で試験を行った結果を示している。本発明に係る液体保温構造100に係る試験では、発泡材料Hの厚みLαを50mmとし、ポリウレア樹脂層Pの第1塗布層P1の厚みLβを1mmとし、第2塗布層P2の厚み(厚層部位(Lγ):1mm、薄層部位:0.5mm)とした。従来技術に係るアルミニウムを主材料とする蓋部は、アルミニウムの厚みを5mmとした。
夫々のグラフ図は、液体が80℃(
図3、4で(a))、60℃(
図3、4で(b))、50℃(
図3、4で(c))で貯留されている状態における液体温度の経時変化を示している。
【0025】
試験結果から、液体の温度が、80℃、60℃、50℃の何れの場合においても、当該実施形態に係る液体保温構造100を用いた場合のほうが、従来技術に係るアルミニウムを主材料とする蓋部を用いた場合に比べて、高い保温性能を発揮できていることがわかる。
【0026】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態において、液槽50は、蓋部Fと同様に、ポリスチレンを発泡させ硬化させた材料としての発泡材料(例えば、発泡スチロール)を液槽形状に加工した表面に、ポリウレア樹脂層Pを塗布して成る成型断熱部材から構成する例を示した。
しかしながら、当該液槽50は、液体を保持する強度を有すると共に保温効果を有する材料であれば、どのようなものから構成しても構わない。
例えば、SUS304のような材料を好適に用いることができる。
【0027】
(2)上記実施形態において、補強枠体WはSUSから構成される例を示したが、経済性の観点から、鉄等の他の金属を採用しても構わない。
上記実施形態に係る成型断熱部材では、補強枠体Wの材料として鉄を採用する場合であっても、その外部に防水性能のあるポリウレア樹脂層Pが形成されるため、錆等の発生を効果的に防止できる。
【0028】
(3)蓋部Fは、2つである必要はなく、3つ以上の複数であっても構わない。蓋部Fが3つ以上の複数であっても、夫々の蓋部Fが、補強枠体Wを有する構成としても構わない。
【0030】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の比較的高い断熱性能を維持しながらも、高い形状維持機能をも有する液体保温構造、及びその製造方法として、有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0032】
50 :液槽
51 :液体
100 :液体保温構造
EB1 :厚層部位
EB2 :薄層部位
F :蓋部
F1 :第1蓋部
F2 :第2蓋部
H :発泡材料
P :ポリウレア樹脂層
P1 :第1塗布層
P2 :第2塗布層
W :補強枠体
W1 :分割部位補強枠体