(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】ロータの製造方法及びロータ
(51)【国際特許分類】
H02K 15/03 20060101AFI20240405BHJP
H02K 1/276 20220101ALI20240405BHJP
【FI】
H02K15/03 Z
H02K1/276
(21)【出願番号】P 2020125746
(22)【出願日】2020-07-22
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田所 拓
(72)【発明者】
【氏名】亀田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】依田 悠
【審査官】若林 治男
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/179547(WO,A1)
【文献】特開2018-161001(JP,A)
【文献】特開2014-093917(JP,A)
【文献】特開2012-039746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/03
H02K 1/276
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料を用いて形成されていると共に回転軸方向に貫通する磁石挿入孔を有するロータコアと、
前記磁石挿入孔内に配置される永久磁石と、
熱可塑性樹脂を用いて形成され、前記磁石挿入孔内において前記永久磁石と前記ロータコアとの間に介在する介在部材と、
を有するロータの製造方法に適用され、
前記介在部材を前記磁石挿入孔内に挿入する介在部材挿入工程と、
前記磁石挿入孔内に挿入された前記介在部材を加熱して軟化させた状態で、前記永久磁石を前記磁石挿入孔内に挿入する加熱挿入工程と、
を有
し、
前記加熱挿入工程において、
熱源部を前記磁石挿入孔内に挿入して前記介在部材を加熱するロータの製造方法。
【請求項2】
前記加熱挿入工程において、
前記永久磁石を前記磁石挿入孔に向けて押圧する押圧部と前記熱源部との間で前記永久磁石を挟んだ状態で、前記永久磁石を前記磁石挿入孔内に挿入する請求項
1に記載のロータの製造方法。
【請求項3】
前記介在部材挿入工程において、前記介在部材を前記磁石挿入孔の内周面における前記ロータコアの回転径方向外側又は内側の面に沿って配置させる請求項1
又は請求項
2に記載のロータの製造方法。
【請求項4】
少なくとも前記永久磁石側の面に凹凸が形成された前記介在部材を用い、
前記加熱挿入工程において、前記永久磁石によって前記介在部材において前記凹凸が形成された面を変形させながら前記永久磁石を前記磁石挿入孔内に挿入する請求項1~請求項
3のいずれか1項に記載のロータの製造方法。
【請求項5】
前記磁石挿入孔の貫通方向に沿って凸部と凹部とが交互に形成された前記介在部材を用い、
前記加熱挿入工程において、前記永久磁石によって前記凸部を変形させると共に変形させた前記凸部を前記凹部内へ移動させながら前記永久磁石を前記磁石挿入孔内に挿入する請求項
4に記載のロータの製造方法。
【請求項6】
前記凸部の体積が前記凹部内の容積よりも大きな体積に設定された前記介在部材を用いて前記加熱挿入工程を行う請求項
5に記載のロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータの製造方法及びロータに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、永久磁石がロータコアに形成された磁石挿入孔に挿入される構成のロータが開示されている。この文献に記載されたロータの製造工程では、先ず、接着剤塗付工程において、接着剤を磁石挿入孔の内壁に塗付する。次に、磁石挿入工程において、永久磁石を磁石挿入孔に挿入する。次に、接着剤加熱硬化工程において、ロータコアを所定の温度で所定時間加熱して、接着剤を硬化させる。これらの工程を経ることによって、永久磁石が磁石挿入孔の内壁に接着剤を介して固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載されたロータの製造方法では、接着剤を塗布する工程から塗布された接着剤を加熱して硬化させるまでの時間を短縮することが難しく、製造コストを低減することが難しい。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、製造コストを低減することができるロータの製造方法及びロータを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のロータの製造方法は、磁性材料を用いて形成されていると共に回転軸方向に貫通する磁石挿入孔を有するロータコアと、前記磁石挿入孔内に配置される永久磁石と、熱可塑性樹脂を用いて形成され、前記磁石挿入孔内において前記永久磁石と前記ロータコアとの間に介在する介在部材と、を有するロータの製造方法に適用され、前記介在部材を前記磁石挿入孔内に挿入する介在部材挿入工程と、前記磁石挿入孔内に挿入された前記介在部材を加熱して軟化させた状態で、前記永久磁石を前記磁石挿入孔内に挿入する加熱挿入工程と、を有し、前記加熱挿入工程において、熱源部を前記磁石挿入孔内に挿入して前記介在部材を加熱する。
【0007】
請求項1に記載のロータの製造方法によれば、先ず、介在部材を磁石挿入孔内に挿入する(介在部材挿入工程)。次に、磁石挿入孔内に挿入された介在部材を加熱して軟化させた状態で、永久磁石を磁石挿入孔内に挿入する(加熱挿入工程)。そして、永久磁石を磁石挿入孔内に挿入した後に、介在部材が冷却されて硬化されることで、永久磁石がロータコアに固定される。この製造方法では、永久磁石が熱硬化性の接着剤を用いてロータコアに固定される構成と比べて、永久磁石をロータコアに固定するために必要な時間を短縮することができる。その結果、製造コストを低減することができる。
【0009】
請求項1に記載のロータの製造方法によれば、加熱挿入工程において、熱源部を磁石挿入孔内に挿入する。これにより、介在部材と熱源部とを近接させることができ、介在部材を容易に加熱することができる。
【0010】
請求項2に記載のロータの製造方法は、請求項1に記載のロータの製造方法において、前記加熱挿入工程において、前記永久磁石を前記磁石挿入孔に向けて押圧する押圧部と前記熱源部との間で前記永久磁石を挟んだ状態で、前記永久磁石を前記磁石挿入孔内に挿入する。
【0011】
請求項2に記載のロータの製造方法によれば、加熱挿入工程において、押圧部と熱源部との間で永久磁石を挟んだ状態で永久磁石を磁石挿入孔内に挿入する。これにより、永久磁石の磁石挿入孔内への挿入時の姿勢を安定させることができる。また、介在部材の座屈を防止しながら永久磁石を磁石挿入孔内へ挿入することができる。
【0012】
請求項3に記載のロータの製造方法は、請求項1又は請求項2に記載のロータの製造方法において、前記介在部材挿入工程において、前記介在部材を前記磁石挿入孔の内周面における前記ロータコアの回転径方向外側又は内側の面に沿って配置させる。
【0013】
請求項3に記載のロータの製造方法によれば、介在部材挿入工程において、磁石挿入孔の内周面におけるロータコアの回転径方向外側又は内側の面に沿って介在部材を配置させる。また、介在部材を加熱して軟化させた状態で、永久磁石を磁石挿入孔内に挿入する。これにより、介在部材を永久磁石と磁石挿入孔との間により隙間なく介在させることができる。その結果、ロータコアの回転径方向外側又は内側の面を保護することができる。
【0014】
請求項4に記載のロータの製造方法は、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のロータの製造方法において、少なくとも前記永久磁石側の面に凹凸が形成された前記介在部材を用い、前記加熱挿入工程において、前記永久磁石によって前記介在部材において前記凹凸が形成された面を変形させながら前記永久磁石を前記磁石挿入孔内に挿入する。
【0015】
請求項4に記載のロータの製造方法によれば、永久磁石によって介在部材において凹凸が形成された面を変形させながら永久磁石を磁石挿入孔内に挿入する。これにより、凹凸が形成されていない介在部材を用いた場合と比べて、永久磁石を磁石挿入孔内に挿入する際の抵抗を低減することができる。
【0016】
請求項5に記載のロータの製造方法は、請求項4に記載のロータの製造方法において、前記磁石挿入孔の貫通方向に沿って凸部と凹部とが交互に形成された前記介在部材を用い、前記加熱挿入工程において、前記永久磁石によって前記凸部を変形させると共に変形させた前記凸部を前記凹部内へ移動させながら前記永久磁石を前記磁石挿入孔内に挿入する。
【0017】
請求項5に記載のロータの製造方法によれば、永久磁石の磁石挿入孔内への挿入時に、介在部材に形成された凸部が当該介在部材に形成された凹部内に配置される。これにより、永久磁石の磁石挿入孔内への挿入完了時に、永久磁石と磁石挿入孔の内周面との間に介在している介在部材内に空孔が生じることを抑制することができる。
【0018】
請求項6に記載のロータの製造方法は、請求項5に記載のロータの製造方法において、前記凸部の体積が前記凹部内の容積よりも大きな体積に設定された前記介在部材を用いて前記加熱挿入工程を行う。
【0019】
請求項6に記載のロータの製造方法によれば、凸部の体積が凹部内の容積よりも大きな体積に設定された介在部材を用いる。これにより、永久磁石の磁石挿入孔内への挿入完了時に、永久磁石と磁石挿入孔の内周面との間に介在している介在部材内に空孔が生じることをより一層抑制することができる。
【0020】
ロータは、磁性材料を用いて形成されていると共に回転軸方向に貫通する磁石挿入孔を有するロータコアと、前記磁石挿入孔内に配置された永久磁石と、熱可塑性樹脂を用いて形成され、前記磁石挿入孔内に配置され、前記永久磁石と前記ロータコアとの間に介在している介在部材と、を備え、前記介在部材の前記ロータコアの回転軸方向一方側の端部における前記永久磁石側の面が、前記永久磁石とは反対側へ傾斜している。
【0021】
上記のロータによれば、以下の製造方法を経ることにより製造できる。先ず、介在部材を磁石挿入孔内に挿入する(介在部材挿入工程)。次に、磁石挿入孔内に挿入された介在部材を加熱して軟化させた状態で、永久磁石を磁石挿入孔内に挿入する(加熱挿入工程)。ここで、加熱挿入工程において、磁石挿入孔内に挿入された介在部材を集中的に加熱することで、ロータコア全体を加熱した場合と比べて、製造時に必要な熱エネルギを低減することができる。ここで、介在部材のロータコアの回転軸方向一方側の端部における永久磁石側の面が、前記永久磁石とは反対側へ傾斜している。これにより、永久磁石を磁石挿入孔内に挿入する際に、永久磁石が介在部材のロータコアの回転軸方向一方側の端部に引っ掛かることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るロータの製造方法及びロータは、製造時に必要な熱エネルギを低減することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1実施形態のモータを模式的に示す側断面図である。
【
図2】ロータを構成するロータコア、永久磁石及び樹脂シートを示す斜視図である。
【
図3】ロータの製造工程の一部の工程で用いられる製造装置を示す側断面図である。
【
図4】ロータコアが支持される前の状態の支持ベースを示す側断面図である。
【
図5】ロータコアが支持された状態の支持ベースを示す側断面図である。
【
図6】熱源部がロータコアの磁石挿入孔内に挿入された状態を示す側断面図である。
【
図7】樹脂シートがロータコアの磁石挿入孔内に挿入された状態を示す側断面図である。
【
図8】磁石挿入ガイドがロータコア上にセットされた状態を示す側断面図である。
【
図9】永久磁石が磁石挿入ガイドにセットされた状態を示す側断面図である。
【
図10】加熱挿入工程の開始時の状態を示す側断面図である。
【
図11】加熱挿入工程の終了時の状態を示す側断面図である。
【
図12】他の形態の樹脂シートを示す斜視図である。
【
図13】
図12に示された樹脂シートの一部を拡大して示す拡大斜視図である。
【
図14】
図12に示された樹脂シートを用いて形成された第2実施形態のモータを模式的に示す
図1に対応する側断面図である。
【
図15】第3実施形態のモータを模式的に示す
図1に対応する側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(モータ10の構成)
図1及び
図2を用いて、第1実施形態のモータ10について説明する。なお、図中に適宜示す矢印Z方向、矢印R方向及び矢印C方向は、モータ10の一部を構成するロータ14の回転軸方向一方側、回転径方向外側及び回転周方向一方側をそれぞれ示すものとする。また、単に軸方向、径方向、周方向を示す場合は、特に断りのない限り、ロータ14の回転軸方向、回転径方向、回転周方向を示すものとする。
【0025】
図1に示されるように、本実施形態のモータ10は、環状に形成されたステータ12と、ステータの径方向内側において回転可能に支持されたロータ14と、を備えている。
【0026】
ステータ12は、一例として、ステータコアと、ステータコアの所定の部分に導電性の巻線が巻回されることによって形成された複数のコイルと、を含んで構成されている。そして、複数のコイルへの通電が切り替えられて、ステータ12のまわりに回転磁界が生じることで、後述するロータ14が回転するようになっている。
【0027】
図1及び
図2に示されるように、ロータ14は、回転軸16に固定されたロータコア18と、ロータコア18内に配置された状態で当該ロータコア18に固定された複数の永久磁石20と、ロータコア18と複数の永久磁石20との間にそれぞれ介在する介在部材としての複数の樹脂シート22と、を備えている。
【0028】
ロータコア18は、磁性材料を用いて厚肉の筒状に形成されている。一例として、ロータコア18は、所定の形状に形成された鋼鈑が軸方向に積層されて一体化されること等により形成されている。
図2に示されるように、ロータコア18の径方向内側の中心部には、回転軸16(
図1参照)が圧入等により固定される回転軸挿入孔24が形成されている。また、ロータコア18の径方向外側の部分には、複数の永久磁石20がそれぞれ挿入される複数の磁石挿入孔26が形成されている。複数の磁石挿入孔26は、ロータコア18を軸方向に貫通している。なお、本実施形態では、16個の永久磁石20がそれぞれ挿入される16個の磁石挿入孔26がロータコア18に形成されている。ここで、
図2においては、1個の永久磁石20のみを図示しており、他の15個の永久磁石20の図示を省略している。これと同様に、
図2においては、1個の樹脂シート22のみを図示しており、他の15個の樹脂シート22の図示を省略している。
【0029】
複数の磁石挿入孔26は、軸方向から見て長手方向への寸法がA1とされていると共に短手方向への寸法がA2に設定された矩形状に形成されている。1個目の磁石挿入孔26は、軸方向から見て周方向一方側へ向かうにつれて径方向外側へ傾斜している。1個目の磁石挿入孔26に対して周方向一方側に配置された2個目の磁石挿入孔26は、軸方向から見て周方向一方側へ向かうにつれて径方向内側へ傾斜している。2個目の磁石挿入孔26に対して周方向一方側に配置された3個目の磁石挿入孔26は、軸方向から見て周方向一方側へ向かうにつれて径方向外側へ傾斜している。3個目の磁石挿入孔26に対して周方向一方側に配置された4個目の磁石挿入孔26は、軸方向から見て周方向一方側へ向かうにつれて径方向内側へ傾斜している。なお、5個目の磁石挿入孔26~8個目の磁石挿入孔26、9個目の磁石挿入孔26~12個目の磁石挿入孔26、13個目の磁石挿入孔26~16個目の磁石挿入孔26についても、1個目の磁石挿入孔26~4個目の磁石挿入孔26と同様の関係で、軸方向から見て傾斜している。
【0030】
永久磁石20は、幅寸法がB1、厚み寸法がB2、長さ寸法がB3にそれぞれ設定された角柱状に形成されている。永久磁石20の幅寸法B1は、磁石挿入孔26の寸法A1に対して若干小さな寸法に設定されている。また、永久磁石20の厚み寸法B2は、磁石挿入孔26の寸法A2に対して小さな寸法に設定されている。さらに、永久磁石20の長さ寸法B3は、ロータコア18の軸方向への寸法A3とほぼ同じ寸法に設定されている。
【0031】
樹脂シート22は、熱可塑性樹脂を用いて形成されている。詳述すると、樹脂シート22は、幅寸法がC1、厚み寸法がC2、長さ寸法がC3にそれぞれ設定されたシート状に形成されている。なお、樹脂シート22の各寸法C1、C2、C3は、後述する介在部材挿入工程を経る前の状態の寸法である。樹脂シート22の幅寸法C1は、磁石挿入孔26の寸法A1に対して若干小さな寸法かつ永久磁石20の幅寸法B1とほぼ同じ寸法に設定されている。また、樹脂シート22の厚み寸法C2は、磁石挿入孔26の寸法A2に対して小さな寸法に設定されていると共に永久磁石20の厚み寸法B2よりも小さな寸法に設定されている。ここで、樹脂シート22の厚み寸法C2と永久磁石20の厚み寸法B2とを足し合わせた寸法は、磁石挿入孔26の寸法A2に対して若干大きな寸法に設定されている。さらに、樹脂シート22の長さ寸法C3は、ロータコア18の軸方向への寸法A3及び永久磁石20の長さ寸法B3とほぼ同じ寸法に設定されている。
【0032】
図1に示されるように、樹脂シート22が磁石挿入孔26の内周面における径方向外側の面26Aに沿って配置されていると共に永久磁石20が磁石挿入孔26の内周面における径方向内側の面26Bに沿って配置された状態で、樹脂シート22及び永久磁石20が磁石挿入孔26内に配置されている。
【0033】
(ロータ14の製造方法)
次に、ロータ14の製造方法の一部の工程である永久磁石20をロータコア18に固定する工程について説明する。
【0034】
図3には、永久磁石20をロータコア18に固定する際に用いられる製造装置28が示されている。この図に示されるように、製造装置28は、ロータコア18が支持される支持ベース30と、複数の永久磁石20のロータコア18に対する位置決め等を行う磁石挿入ガイド32と、を備えている。また、製造装置28は、通電されることによって発熱して複数の樹脂シート22をそれぞれ加熱する複数の熱源部34と、複数の永久磁石20をロータコア18に形成された複数の磁石挿入孔26内に向けてそれぞれ押圧する複数の押圧部36と、を備えている。
【0035】
支持ベース30は、軸方向を厚み方向とする円板状に形成されたベース本体38と、ベース本体38の径方向内側の中心部から軸方向一方側へ向けて突出する支軸部40と、を備えている。この支軸部40は、ロータコア18の回転軸挿入孔24の内径よりも若干小さな外径に設定された円柱状に形成されている。また、支軸部40の軸方向への寸法は、ロータコア18の軸方向への寸法A3よりも大きな寸法に設定されている。なお、支軸部40の軸方向一方側の端部は、軸方向一方側へ向かうにつれて次第に窄まった形状となっている。また、ベース本体38の径方向外側の部分には、複数の熱源部34がそれぞれ通過する複数の熱源部通過孔42が形成されている。なお、複数の熱源部通過孔42の数は、ロータコア18に形成された複数の磁石挿入孔26の数と対応している。また、複数の熱源部通過孔42の位置は、支持ベース30に支持されたロータコア18の複数の磁石挿入孔26の位置とそれぞれ対応している。また、ベース本体38の軸方向一方側の面でかつ熱源部通過孔42の縁に対して径方向外側の部分は、樹脂シート22の軸方向他方側の端が当接する樹脂シート当接面44となっている。
【0036】
磁石挿入ガイド32は、厚肉の円筒状に形成されたガイドベース46と、ガイドベース46の径方向外側の部分に支持された複数のガイド本体48と、を備えている。ガイドベース46の径方向の中心部には、支持ベース30の支軸部40が挿入される支軸部挿入孔50が形成されている。この支軸部挿入孔50の内径は、支持ベース30の支軸部40の外径よりも若干大きな内径に設定されている。複数のガイド本体48は、ガイドベース46に係止されるフランジ部52が軸方向一方側の端部に形成された筒状に形成されている。また、複数のガイド本体48の数は、複数の永久磁石20の数と対応している。そして、複数の永久磁石20が、複数のガイド本体48内にそれぞれ配置されることで、複数の永久磁石20のロータコア18に対する周方向及び径方向への位置決めがなされるようになっている。
【0037】
複数の熱源部34は、一例として銅等の熱伝導率の高い材料を用いて角柱状に形成されている。複数の熱源部34の内部には、熱線がそれぞれ埋設されている。そして、熱線に通電されることで、複数の熱源部34が発熱するようになっている。なお、複数の熱源部34の数は、ロータコア18に形成された複数の磁石挿入孔26の数と対応している。ここで、複数の熱源部34は、軸方向へ移動可能とされた図示しない熱源部支持部材に支持されている、これにより、複数の熱源部34は、軸方向一方側及び他方側へ互いに同じ量だけ移動するようになっている。
【0038】
複数の押圧部36は、一例として鋼材を用いて角柱状に形成されている。なお、複数の押圧部36の数は、複数の永久磁石20の数と対応している。ここで、複数の押圧部36は、軸方向へ移動可能とされた図示しない押圧部支持部材に支持されている、これにより、複数の押圧部36は、軸方向一方側及び他方側へ互いに同じ量だけ移動するようになっている。
【0039】
以上説明した製造装置28を用いて、以下の手順で複数の永久磁石20がロータコア18に固定される。
【0040】
図4及び
図5に示されるように、先ず、ロータコア18を支持ベース30にセットする(ロータコアセット工程)。すなわち、支持ベース30の支軸部40をロータコア18に形成された回転軸挿入孔24に挿入させた状態で、ロータコア18の軸方向他方側の端面をベース本体38の軸方向一方側の端面に当接させる。ここで、ロータコア18を支持ベース30にセットした状態では、ロータコア18に形成された複数の磁石挿入孔26とベース本体38に形成された複数の熱源部通過孔42とが連通している。
【0041】
次に、
図6に示されるように、複数の熱源部34を軸方向一方側へ移動させる。これにより、複数の熱源部34が、ベース本体38に形成された複数の熱源部通過孔42を通過して、ロータコア18に形成された複数の磁石挿入孔26内に配置される(熱源部移動工程)。ここで、複数の熱源部34は、ロータコア18に形成された複数の磁石挿入孔26内における径方向内側の面に沿って配置される。これにより、複数の熱源部34と複数の磁石挿入孔26内における径方向外側の面との間には、それぞれ隙間が形成される。
【0042】
次に、
図7に示されるように、複数の樹脂シート22を複数の熱源部34と複数の磁石挿入孔26内における径方向外側の面との間にそれぞれ形成された隙間へそれぞれ挿入する(介在部材挿入工程)。ここで、介在部材挿入工程の完了時においては、複数の樹脂シート22の軸方向他方側の端が、樹脂シート当接面44にそれぞれ当接している。なお、介在部材挿入工程を経た後に熱源部移動工程を行うような工程順序としてもよい。
【0043】
次に、
図8に示されるように、磁石挿入ガイド32をセットする(磁石挿入ガイドセット工程)。すなわち、支持ベース30の支軸部40をガイドベース46に形成された支軸部挿入孔50に挿入させた状態で、ガイドベース46の軸方向他方側の端面をロータコア18の軸方向一方側の端面に当接させる。ここで、磁石挿入ガイド32をセットした状態では、ロータコア18に形成された複数の磁石挿入孔26と磁石挿入ガイド32の複数のガイド本体48とが連通している。
【0044】
次に、
図9に示されるように、複数の永久磁石20を複数のガイド本体48内に軸方向一方側からそれぞれ挿入する。複数の永久磁石20の複数のガイド本体48内への挿入が完了した状態では、複数の永久磁石20の軸方向他方側の端が複数の熱源部34の軸方向一方側の端にそれぞれ当接している。
【0045】
次に、
図10に示されるように、複数の押圧部36を軸方向他方側へ移動させることにより、複数の押圧部36の軸方向他方側の端を複数の永久磁石20の軸方向一方側の端に当接させる。そして、後述するように複数の永久磁石20を軸方向他方側へ向けて移動させる前に、複数の熱源部34への通電を行い、複数の熱源部34を発熱させて、複数の熱源部34と径方向にそれぞれ対向する複数の樹脂シート22を加熱して可塑化させておく。そして、
図11に示されるように、複数の押圧部36を軸方向他方側へさらに移動させることにより、複数の永久磁石20を軸方向他方側へ向けて移動させて、複数の永久磁石20をロータコア18に形成された複数の磁石挿入孔26にそれぞれ軸方向一方側から挿入する(加熱挿入工程)。ここで、複数の押圧部36を軸方向他方側へ移動させることにより、複数の熱源部34が複数の永久磁石20を介して軸方向他方側へ押圧されて、複数の熱源部34が軸方向他方側へ移動するようになっている。これにより、複数の永久磁石20が、複数の押圧部36と複数の熱源部34との間に挟まれた状態で軸方向他方側へ移動するようになっている。
【0046】
そして、複数の永久磁石20が複数の磁石挿入孔26内にそれぞれ挿入された状態で、複数の樹脂シート22が冷却されると、複数の樹脂シート22が硬化する。これにより、複数の永久磁石20とロータコア18とが複数の樹脂シート22を介して溶着された状態となる。その結果、複数の永久磁石20がロータコア18に固定される。なお、複数の永久磁石20を複数の磁石挿入孔26内にそれぞれ挿入する前に、複数の永久磁石20を予め加熱しておくと良い。複数の永久磁石20を予め加熱しておくことで、複数の樹脂シート22の可塑化状態が容易に保たれる。
【0047】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0048】
以上説明したように、本実施形態では、
図10及び
図11に示されるように、加熱挿入工程において、磁石挿入孔26内に挿入された樹脂シート22を集中的に加熱する。これにより、ロータコア18の全体を加熱した場合と比べて、製造時に必要な熱エネルギを低減することができる。特に、本実施形態では、加熱挿入工程において、熱源部34を磁石挿入孔26内に挿入している。これにより、樹脂シート22と熱源部34とを近接させることができ、樹脂シート22を容易に加熱して可塑化させることができる。また、樹脂シート22と熱源部34とを近接させることができることによっても、製造時に必要な熱エネルギを低減することが可能となっている。なお、熱源部34は、その全体を均一な温度にしてもよいし樹脂シート22側の温度を高くしてもよい。熱源部34において樹脂シート22側の温度を高くした場合においては、永久磁石20との接触により温度の下がり易い樹脂シート22を集中的に加熱して可塑化させることができる。その結果、永久磁石20を磁石挿入孔26内へスムーズに挿入することができる。
【0049】
また、永久磁石20を磁石挿入孔26内に挿入した後に、樹脂シート22が冷却されて硬化されることで、永久磁石20がロータコア18に固定される。この製造方法では、永久磁石20が熱硬化性の接着剤を用いてロータコア18に固定される構成と比べて、永久磁石20をロータコア18に固定するために必要な時間を短縮することができる。その結果、製造コストを低減することができる。
【0050】
また、本実施形態では、複数の永久磁石20が、複数の押圧部36と複数の熱源部34との間に挟まれた状態で複数の磁石挿入孔26内にそれぞれ挿入される。これにより、複数の永久磁石20の複数の磁石挿入孔26内への挿入時の姿勢を安定させることができる。また、樹脂シート22の座屈を防止しながら永久磁石20を磁石挿入孔26内へ挿入することができる。
【0051】
さらに、本実施形態では、介在部材挿入工程において、磁石挿入孔26の内周面における回転径方向外側の面に沿って樹脂シート22を配置させる。また、樹脂シート22を加熱して軟化させた状態で、永久磁石20を磁石挿入孔26内に挿入することで、樹脂シート22を永久磁石と磁石挿入孔との間により隙間なく介在させることができる。これにより、ロータコアの回転に伴う応力が高まり易い磁石挿入孔の内周面における回転径方向外側の面を保護することができる。
【0052】
なお、以上説明した例では、複数の永久磁石20が、複数の押圧部36と複数の熱源部34との間に挟まれた状態で軸方向他方側へ移動するようにした例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、複数の熱源部34が軸方向他方側へ移動した後に複数の押圧部36が軸方向他方側へ移動して、複数の永久磁石20が軸方向他方側に移動するようにしてもよい。
【0053】
また、以上説明した例では、熱源部34を磁石挿入孔26内に挿入した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ロータコア18の外側かつ当該ロータコア18と近接する位置から樹脂シート22を集中的に加熱するようにしてもよい。
【0054】
また、以上説明した例では、磁石挿入孔26の内周面における回転径方向外側の面に沿って樹脂シート22を配置させた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、磁石挿入孔26の内周面における回転径方向内側の面に沿って樹脂シート22を配置させてもよい。また、磁石挿入孔26の内周面の全面に沿って樹脂シート22を配置させてもよい。
【0055】
また、以上説明した例では、1つの磁石挿入孔26に1つの永久磁石20を挿入した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、1つの磁石挿入孔26に複数の永久磁石20を重ねた状態で挿入してもよい。
【0056】
(第2実施形態)
図12~
図14を用いて、第2実施形態のモータ54について説明する。なお、第2実施形態のモータ54において前述の第1実施形態のモータ10と対応する部材及び部分には、第1実施形態のモータ10と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0057】
図12~
図14に示されるように、本実施形態のモータ54は、一方側の面に凹凸が形成された樹脂シート22を用いて製造されていることを除いては、第1実施形態のモータ10と同様の構成となっている。
【0058】
図12及び
図13に示されるように、樹脂シート22は、径方向に沿って切断した断面が矩形状断面とされた薄肉シート状の基板部56と、基板部56から当該基板部56の厚み方向一方側へ向けて突出する複数の凸部58と、備えている。
【0059】
基板部56は、幅寸法がC1、長さ寸法がC3にそれぞれ設定された薄肉シート状に形成されている。
【0060】
凸部58は、軸方向他方側の面58Aが基板部56の幅方向を長手方向とする矩形状の底面とされていると共に軸方向一方側へ向かうにつれて窄まる四角錐状に形成されている。この凸部58の基板部56からの突出量Hは、当該凸部58の軸方向一方側の端58Bでゼロとなっている。また、凸部58の基板部56からの突出量Hは、当該凸部58の軸方向他方側の端58Cで最大となっている。また、凸部58の基板部56からの突出量Hは、当該凸部58の軸方向一方側の端58Bから軸方向他方側の端58Cへ向かうにつれて一次関数的に増加している。これにより、凸部58の突出方向側の面58Dが、軸方向他方側へ向かうにつれて基板部56の厚み方向一方側へ傾斜している傾斜面となっている。凸部58における基板部56の幅方向への寸法Wは、当該凸部58の軸方向一方側の端58Bでゼロとなっている。また、凸部58における基板部56の幅方向への寸法Wは、当該凸部58の軸方向他方側の端58Cで最大となっている。凸部58における基板部56の幅方向への寸法Wは、当該凸部58の軸方向一方側の端58Bから軸方向他方側の端58Cへ向かうにつれて一次関数的に増加している。
【0061】
また、本実施形態では、複数の凸部58が、基板部56上において規則的に配列されている。最も軸方向一方側に配置された1列目の複数の凸部58は、基板部56の軸方向の同じ位置において基板部56の幅方向に並んで配置されている。また、1列目の複数の凸部58に対して軸方向他方側に配置された2列目の複数の凸部58は、基板部56の軸方向の同じ位置において基板部56の幅方向に並んで配置されている。また、2列目の複数の凸部58は、1列目の複数の凸部58に対して、基板部56の幅方向にオフセットして配置されている。これにより、2列目の複数の凸部58における軸方向一方側の端58Bが、1列目の複数の凸部58において基板部56の幅方向に隣り合う一対の凸部58の間にそれぞれ位置している。さらに、2列目の複数の凸部58に対して軸方向他方側に配置された3列目の複数の凸部58は、基板部56の軸方向の同じ位置において基板部56の幅方向に並んで配置されている。また、3列目の複数の凸部58は、2列目の複数の凸部58に対して、基板部56の幅方向にオフセットして配置されている。これにより、3列目の複数の凸部58における軸方向一方側の端58Bが、2列目の複数の凸部58において基板部56の幅方向に隣り合う一対の凸部58の間にそれぞれ位置している。なお、4列目以降の複数の凸部58についても1列目~3列目の複数の凸部58と同様の関係で並んで配列されている。
【0062】
1列目の複数の凸部58と2列目の複数の凸部58との間には、複数の凹部60が形成されている。凹部60は、1列目の1個の凸部58と、2列目において基板部56の幅方向に隣り合う2個の凸部58との間に形成されている。また、2列目の複数の凸部58と3列目の複数の凸部58との間には、複数の凹部60が形成されている。凹部60は、2列目の1個の凸部58と、3列目において基板部56の幅方向に隣り合う2個の凸部58との間に形成されている。なお、4列目以降においても1列目~3列目と同様の複数の凹部60が形成されている。これにより、凸部58と凹部60とが軸方向に並んで配列されている。この凹部60は、基板部56に軸方向一方側が開放されていると共に基板部56の軸方向から見て縁部が軸方向他方側へ向けて窄まる逆三角形状となっている。ここで、本実施形態では、凸部58の体積が凹部60内の容積よりも大きな体積に設定されている。一例として、本実施形態では、凸部58の体積が、凹部60内の容積の2倍程度の体積に設定されている。
【0063】
以上説明した本実施形態のモータ54では、
図10及び
図11に示された加熱挿入工程において、永久磁石20によって樹脂シート22において複数の凸部58及び複数の凹部60が形成された面を変形させながら永久磁石20を磁石挿入孔26内に挿入する。これにより、複数の凸部58及び複数の凹部60が形成されていない樹脂シート22を用いた場合と比べて、永久磁石20を磁石挿入孔26内に挿入する際に樹脂シート22が座屈することを抑制することができる。また、複数の凸部58及び複数の凹部60が形成されていない樹脂シート22を用いた場合と比べて、永久磁石20を磁石挿入孔26内に挿入する際の抵抗を低減することができる。
【0064】
また、本実施形態のモータ54では、永久磁石20の磁石挿入孔26内への挿入時に、樹脂シート22に形成された凸部58が当該樹脂シート22に形成された凹部60内に配置される。これにより、永久磁石20の磁石挿入孔26内への挿入完了時に、永久磁石20と磁石挿入孔26の内周面との間に介在している樹脂シート22内に空孔が生じることを抑制することができる。特に、本実施形態では、凸部58の体積が凹部60内の容積よりも大きな体積に設定されている。これにより、永久磁石20の磁石挿入孔26内への挿入完了時に、永久磁石20と磁石挿入孔26の内周面との間に介在している樹脂シート22内に空孔が生じることをより一層抑制することができる。
【0065】
さらに、本実施形態のモータ54では、樹脂シート22の軸方向一方側の端部における永久磁石20側の面が永久磁石20とは反対側へ傾斜している。詳述すると、1列目の複数の凸部58の突出方向側の面58Dが、軸方向他方側へ向かうにつれて基板部56の厚み方向一方側へ傾斜している傾斜面となっている。これにより、永久磁石20を磁石挿入孔26内に挿入する際に、永久磁石20が樹脂シート22の軸方向一方側の端部に引っ掛かることを抑制することができる。
【0066】
なお、以上説明した第2実施形態では、前述の構成の複数の凸部58及び複数の凹部60を有する樹脂シート22を用いた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、基板部56上に不規則な凹凸が形成された樹脂シート22を用いた構成としてもよい。
【0067】
また、以上説明した第1実施形態のモータ10及び第2実施形態のモータ54では、永久磁石20をロータコア18に固定するために本発明の製造方法を適用した。しかしながら、この製造方法は、
図15に示されたモータ62のように、永久磁石20がステータ12のステータコア64に固定される構成にも適用することができる。なお、
図15に示されたモータ62において前述のモータ10、54と対応する部材及び部分には、モータ10、54と対応する部材及び部分と同じ符号を付している。
【0068】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0069】
14 ロータ
18 ロータコア
20 永久磁石
22 樹脂シート(介在部材)
26 磁石挿入孔
26A 磁石挿入孔の内周面におけるロータコアの回転径方向外側の面
34 熱源部
36 押圧部
58 凸部
60 凹部