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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】表示装置及び表示装置の駆動方法
(51)【国際特許分類】
   G09G 3/3233 20160101AFI20240405BHJP
   G09G 3/20 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
G09G3/3233
G09G3/20 641P
G09G3/20 642A
G09G3/20 642Z
G09G3/20 670J
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020129650
(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公開番号】P2022026269
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】523290528
【氏名又は名称】JDI Design and Development 合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100189430
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100190805
【弁理士】
【氏名又は名称】傍島 正朗
(72)【発明者】
【氏名】岩内 栄二
【審査官】武田 悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-109939(JP,A)
【文献】特開2012-73362(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0347971(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/00 - 3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ発光素子を有する複数の画素が、行列状に配置された表示画面を有する表示装置であって、
映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値を、前記発光素子の初期の発光輝度から前記発光素子の劣化後の発光輝度への輝度低下を補うように補正する補正回路を備え、
前記補正回路は、
前記入力階調値を、対応する目標輝度値に変換する輝度変換部と、
前記発光素子の劣化度合いを表す指標である効率残存率であって前記発光素子の発光効率の残存率を示す効率残存率を用いて、前記発光素子の輝度値が前記目標輝度値となるように前記入力階調値を補正した出力階調値を算出するとともに、前記出力階調値に対応する前記発光素子の初期の発光輝度である補正後輝度値を算出する補正演算部と、
前記補正後輝度値から算出される前記発光素子に対するストレス量を、前記発光素子に基準電流を流したときのストレス量を示す第1ストレス量に換算し、換算した前記第1ストレス量から得た第2ストレス量であって前記映像信号から得られたフレームレートに応じて前記第1ストレス量が変換された第2ストレス量を累積した累積ストレス量を用いて、前記効率残存率を更新する累積ストレス演算部と、
前記映像信号から得られる前記フレームレートを取得し、取得した前記フレームレートに応じた変換係数を、前記第1ストレス量に乗算することで、前記第1ストレス量を前記第2ストレス量に変換するストレス量変換部とを有する、
表示装置。
【請求項2】
前記補正後輝度値から算出されるストレス量は、前記発光素子を前記補正後輝度値で発光させたときに前記発光素子に流れる第1電流におけるストレス量であり、
前記第1電流におけるストレス量は、前記発光素子に前記第1電流が流れた時間であり、
前記基準電流におけるストレス量は、前記発光素子に前記基準電流が流れた時間であり、
前記累積ストレス演算部は、
前記発光素子に前記第1電流が流れた時間を、前記発光素子に前記基準電流が流れた時間に換算することにより、前記補正後輝度値から算出されるストレス量を、前記第1ストレス量に換算し、
前記第2ストレス量である前記発光素子に前記基準電流が流れた時間であって前記フレームレートに応じた時間を累積した累積時間を算出することで、前記累積ストレス量を算出する、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記効率残存率は、前記発光素子の初期の発光輝度に対する、前記発光素子の劣化後の発光輝度の割合で表され、
前記累積ストレス演算部は、前記発光素子の輝度と前記発光素子に前記基準電流が流れる累積時間との関係を用いて、前記累積ストレス量として算出した前記累積時間から、新たな効率残存率を演算し、前記効率残存率とすることで、前記効率残存率を更新する、
請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記ストレス量変換部は、
複数のフレームレートと、前記複数のフレームレートそれぞれに関連付けられた変換係数とを予め記憶したルックアップテーブルと、
前記映像信号から得られるフレームレートを取得して、前記ルックアップテーブルから、取得した前記フレームレートに対応する変換係数を選択し、前記第1ストレス量に乗算することで、前記第1ストレス量を前記第2ストレス量に変換するフレームレート変換部とを備える、
請求項1~3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記ストレス量変換部は、
フレームレートを分母とした比で表される算出式であって前記変換係数を算出するための算出式を記憶する記憶部と、
前記映像信号から得られるフレームレートを取得して、取得した前記フレームレートを前記算出式に適用することで前記フレームレートに応じた変換係数を得て、前記第1ストレス量に乗算することで、前記第1ストレス量を前記第2ストレス量に変換する変換係数演算部とを備える、
請求項1~3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
それぞれ発光素子を有する複数の画素が、行列状に配置された表示画面を有する表示装置の駆動方法であって、
映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値を、前記発光素子の初期の発光輝度から前記発光素子の劣化後の発光輝度への輝度低下を補うように補正する補正ステップを含み、
前記補正ステップでは、
前記入力階調値を、対応する目標輝度値に変換する輝度変換ステップと、
前記発光素子の劣化度合いを表す指標である効率残存率であって前記発光素子の発光効率の残存率を示す効率残存率を用いて、前記発光素子の輝度値が前記目標輝度値となるように前記入力階調値を補正した出力階調値を算出するとともに、前記出力階調値に対応する前記発光素子の初期の発光輝度である正後輝度値を算出する補正演算ステップと、
前記補正後輝度値から算出される前記発光素子に対するストレス量を、前記発光素子に基準電流を流したときのストレス量を示す第1ストレス量に換算し、換算した前記第1ストレス量から得た第2ストレス量であって前記映像信号から得られるフレームレートに応じて前記第1ストレス量が変換された第2ストレス量を累積することで、前記効率残存率を更新する累積ストレス演算ステップと、
前記映像信号から得られるフレームレートを取得し、取得した前記フレームレートに応じた変換係数を、前記第1ストレス量に乗算することで、前記第1ストレス量を前記第2ストレス量に変換するストレス量変換ステップとを含む、
駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表示装置及び表示装置の駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL(Electro Luminescence)素子などの自発光素子では、自発光素子を構成する発光層が発光量、発光時間及び温度に応じて劣化することが知られている。
【0003】
発光層の劣化による輝度の低下が生じた場合、例えば残像または色あせなどの焼き付きが発生したり、ディスプレイに表示される画像に色ずれが発生したり、ディスプレイの一部の輝度が低下したりして、ディスプレイに表示ムラが発生することがある。
【0004】
このような問題を解決するために、映像信号を補正することで、表示ムラを低減する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-109939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術では、映像信号の入力駆動周波数すなわちフレームレートが変化する場合は考慮されていない。このため、ディスプレイに表示される映像のフレームレートが変化する場合には、映像信号を補正しても補正誤差が生じてしまい、ディスプレイに表示ムラが発生するおそれが生じる。
【0007】
本開示は、上述の事情を鑑みてなされたもので、フレームレートが変化する場合でも、表示ムラを低減することができる表示装置及び表示装置の駆動方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る表示装置は、それぞれ発光素子を有する複数の画素が、行列状に配置された表示画面を有する表示装置であって、映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値を補正する補正回路を備え、前記補正回路は、前記入力階調値を、対応する目標輝度値に変換する輝度変換部と、前記発光素子の劣化度合いを表す指標である効率残存率であって前記発光素子の発光効率の残存率を示す効率残存率を用いて、前記目標輝度値から、前記入力階調値を補正した出力階調値を算出するとともに、前記出力階調値から、前記目標輝度値を補正した補正後輝度値を算出する補正演算部と、前記補正後輝度値から算出される前記発光素子に対するストレス量を、前記発光素子に基準電流を流したときのストレス量を示す第1ストレス量に換算し、換算した前記第1ストレス量から得た第2ストレス量であって前記映像信号から得られたフレームレートに応じて前記第1ストレス量が変換された第2ストレス量を累積した累積ストレス量を用いて、前記効率残存率を更新する累積ストレス演算部と、前記映像信号から得られる前記フレームレートを取得し、取得した前記フレームレートに応じた変換係数を、前記第1ストレス量に乗算することで、前記第1ストレス量を前記第2ストレス量に変換するストレス量変換部とを有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、フレームレートが変化する場合でも、表示ムラを低減することができる表示装置及び表示装置の駆動方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態に係る表示装置の構成を示す概略図である。
図2図2は、実施の形態に係る画素の構成を示す回路図である。
図3図3は、実施の形態に係る補正回路の構成の一例を示すブロック図である。
図4図4は、実施の形態に係る入力階調値を目標輝度値に変換する方法を説明するための図である。
図5A図5Aは、実施の形態に係る目標輝度値から補正後階調値を算出する方法を説明するための図である。
図5B図5Bは、実施の形態に係る補正後階調値から補正後輝度値を算出する方法を説明するための図である。
図6図6は、ストレス経過時間と発光素子の劣化度合いとの関係を示す図である。
図7A図7Aは、実施の形態に係る補正後輝度値で発光素子に発光させる場合に流れる第1電流値を算出する方法を説明するための図である。
図7B図7Bは、実施の形態に係る発光素子に第1電流を流したときのストレス量を発光素子に基準電流を流したときのストレス量に換算する方法を説明するための図である。
図7C図7Cは、実施の形態に係る発光素子に基準電流を累積時間流したときの輝度の劣化度合いから効率残存率を算出する方法を説明するための図である。
図8図8は、実施の形態に係る表示装置1の駆動方法の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、実施の形態の実施例1に係る補正回路の構成の例を示すブロック図である。
図10A図10Aは、実施の形態の実施例1に係るルックアップテーブルの一例を示す図である。
図10B図10Bは、実施の形態の実施例1に係るルックアップテーブルの一例を示す図である。
図11図11は、実施の形態の実施例1に係る補正回路の構成の別の例を示すブロック図である。
図12図12は、垂直同期信号からフレームレート情報を検出する方法を説明するための図である。
図13図13は、実施の形態の実施例2に係る補正回路の構成の例を示すブロック図である。
図14図14は、実施の形態の実施例2に係る補正回路の構成の別の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の一態様に係る表示装置は、それぞれ発光素子を有する複数の画素が、行列状に配置された表示画面を有する表示装置であって、映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値を補正する補正回路を備え、前記補正回路は、前記入力階調値を、対応する目標輝度値に変換する輝度変換部と、前記発光素子の劣化度合いを表す指標である効率残存率であって前記発光素子の発光効率の残存率を示す効率残存率を用いて、前記目標輝度値から、前記入力階調値を補正した出力階調値を算出するとともに、前記出力階調値から、前記目標輝度値を補正した補正後輝度値を算出する補正演算部と、前記補正後輝度値から算出される前記発光素子に対するストレス量を、前記発光素子に基準電流を流したときのストレス量を示す第1ストレス量に換算し、換算した前記第1ストレス量から得た第2ストレス量であって前記映像信号から得られたフレームレートに応じて前記第1ストレス量が変換された第2ストレス量を累積した累積ストレス量を用いて、前記効率残存率を更新する累積ストレス演算部と、前記映像信号から得られる前記フレームレートを取得し、取得した前記フレームレートに応じた変換係数を、前記第1ストレス量に乗算することで、前記第1ストレス量を前記第2ストレス量に変換するストレス量変換部とを有する。
【0012】
この構成によれば、フレームレートが変化する場合でも、表示ムラを低減することができる。より具体的には、フレームレートが変化する場合でも、変化したフレームレートに適したストレス量を算出することができるので、累積ストレス量を正確に演算できる。このため、効率残存率を用いて発光素子の劣化度合いを正確に予測できるので、発光素子の劣化度合いを考慮して補正した入力階調値すなわち出力階調値を算出することができる。これにより、各発光素子の劣化度合いによらず、各発光素子を一様な発光輝度に補正することができるので、表示ムラを低減することができる。
【0013】
また、前記補正後輝度値から算出されるストレス量は、前記発光素子を前記補正後輝度値で発光させたときに前記発光素子に流れる第1電流におけるストレス量であり、前記第1電流におけるストレス量は、前記発光素子に前記第1電流が流れた時間であり、前記基準電流におけるストレス量は、前記発光素子に前記基準電流が流れた時間であり、前記累積ストレス演算部は、前記発光素子に前記第1電流が流れた時間を、前記発光素子に前記基準電流が流れた時間に換算することにより、前記補正後輝度値から算出されるストレス量を、前記第1ストレス量に換算し、前記第2ストレス量である前記発光素子に前記基準電流が流れた時間であって前記フレームレートに応じた時間を累積した累積時間を算出することで、前記累積ストレス量を算出してもよい。
【0014】
この構成によれば、ストレス量を、発光素子に基準電流が流れる時間で評価するので、フレームレートが変化する場合でも、変化したフレームレートに適したストレス量を算出することができ、累積ストレス量を正確に演算できる。
【0015】
また、前記効率残存率は、前記発光素子の初期の発光輝度に対する、前記発光素子の劣化後の発光輝度の割合で表され、前記累積ストレス演算部は、前記発光素子の輝度と前記発光素子に前記基準電流が流れる累積時間との関係を用いて、前記累積ストレス量として算出した前記累積時間から、新たな効率残存率を演算し、前記効率残存率とすることで、前記効率残存率を更新してもよい。
【0016】
また、前記ストレス量変換部は、複数のフレームレートと、前記複数のフレームレートそれぞれに関連付けられた変換係数とを予め記憶したルックアップテーブルと、前記映像信号から得られるフレームレートを取得して、前記ルックアップテーブルから、取得した前記フレームレートに対応する変換係数を選択し、前記第1ストレス量に乗算することで、前記第1ストレス量を前記第2ストレス量に変換するフレームレート変換部とを備えてもよい。
【0017】
また、前記ストレス量変換部は、フレームレートを分母とした比で表される算出式であって前記変換係数を算出するための算出式を記憶する記憶部と、前記映像信号から得られるフレームレートを取得して、取得した前記フレームレートを前記算出式に適用することで前記フレームレートに応じた変換係数を得て、前記第1ストレス量に乗算することで、前記第1ストレス量を前記第2ストレス量に変換する変換係数演算部とを備えてもよい。
【0018】
また、本開示の一態様に係る表示装置の駆動方法は、それぞれ発光素子を有する複数の画素が、行列状に配置された表示画面を有する表示装置の駆動方法であって、映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値を補正する補正ステップを含み、前記補正ステップでは、前記入力階調値を、対応する目標輝度値に変換する輝度変換ステップと、前記発光素子の劣化度合いを表す指標である効率残存率であって前記発光素子の発光効率の残存率を示す効率残存率を用いて、前記目標輝度値から、前記入力階調値を補正した出力階調値を算出するとともに、前記出力階調値から、前記目標輝度値を補正した補正後輝度値を算出する補正演算ステップと、前記補正後輝度値から算出される前記発光素子に対するストレス量を、前記発光素子に基準電流を流したときのストレス量を示す第1ストレス量に換算し、換算した前記第1ストレス量から得た第2ストレス量であって前記映像信号から得られるフレームレートに応じて前記第1ストレス量が変換された第2ストレス量を累積することで、前記効率残存率を更新する累積ストレス演算ステップと、前記映像信号から得られるフレームレートを取得し、取得した前記フレームレートに応じた変換係数を、前記第1ストレス量に乗算することで、前記第1ストレス量を前記第2ストレス量に変換するストレス量変換ステップとを含む。
【0019】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0020】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0021】
(実施の形態)
[表示装置の構成]
本開示に係る表示装置1は、それぞれ発光素子を有する複数の画素が、行列状に配置された表示画面を有する表示装置である。
【0022】
以下、本実施の形態に係る表示装置1の構成について説明する。
【0023】
図1は、本実施の形態に係る表示装置1の構成を示す概略図である。
【0024】
本実施の形態では、表示装置1は、図1に示すように、表示画面3と、ゲートドライバ回路4と、ソースドライバ回路5と、補正回路10とを備えている。
【0025】
<表示画面3>
表示画面3は、外部から表示装置1に入力された映像信号に基づいて映像を表示する。ここで、映像信号は、輝度信号、垂直同期信号及び水平同期信号を少なくとも含む。映像信号は、フレームレート情報をさらに含んでいてもよい。なお、本実施の形態では、輝度信号は、表示画面3を構成する各画素のサブピクセル毎の輝度を階調値で示している。以下、輝度信号により示される階調値を入力階調値と称する。
【0026】
また、表示画面3は、図1に示すように、行列状に配置された複数の画素2を有し、行状の走査線7と、列状のデータ線8とが配線されている。
【0027】
<画素2>
図2は、本実施の形態に係る画素2の構成を示す回路図である。
【0028】
複数の画素2のそれぞれは、走査線7及びデータ線8に電気的に接続されている。より具体的には、複数の画素2のそれぞれは、図1に示すように、走査線7とデータ線8とが交差する位置に配置される。また、複数の画素2は、例えばN行M列に配置される。N、Mは、正の整数であり、表示画面3のサイズ及び解像度により異なる。
【0029】
本実施の形態では、画素2には、図2に示すように、参照電源線Vrefと、ELアノード電源線Vtftと、ELカソード電源線Velと、初期化電源線Viniと、参照電圧制御線refと、初期化制御線iniと、イネーブル線enbとが配線されている。ここで、ELアノード電源線Vtftは、発光素子20に印加するアノード電圧を供給する。ELカソード電源線Velは、発光素子20に印加するカソード電圧を供給する。なお、ELカソード電源線Velは、接地されてもよい。初期化電源線Viniは、容量素子22を初期化するときの初期化電圧を供給する。
【0030】
また、画素2は、図2に示すように、発光素子20と、容量素子22と、駆動用トランジスタ24aと、スイッチ用トランジスタ24b~24eとを備える。
【0031】
発光素子20は、カソードがELカソード電源線Velに接続されており、アノードが駆動用トランジスタ24aのソースに接続されている。発光素子20は、駆動用トランジスタ24aから供給される、映像信号(輝度信号)の信号電圧に対応した電流が流れることにより、当該信号電圧に応じた輝度で発光する。本実施の形態では、映像信号の信号電圧に対応する電流は、補正回路10により補正された映像信号の信号電圧に対応する電流である。詳細は後述するが、補正回路10により補正された映像信号の信号電圧に対応する電流は、映像信号に含まれる輝度信号が示す輝度の階調値であって補正回路10により補正された階調値(出力階調値)に対応する電流である。
【0032】
発光素子20は、例えばOLED(Organic Light Emitting Diode)などの有機EL素子である。なお、発光素子20は、有機EL素子に限らず、無機EL素子またはQLEDなどの自発光素子でもよいし、電流駆動で制御する素子であれば自発光素子でなくてもよい。
【0033】
駆動用トランジスタ24aは、ゲートが容量素子22の一方の電極等に接続され、ドレインがスイッチ用トランジスタ24eのソースに接続され、ソースが発光素子20のアノードに接続されている。図2では、さらにソースが容量素子22の他方の電極等に接続されている。駆動用トランジスタ24aは、ゲート-ソース間に印加された信号電圧を、当該信号電圧に対応した電流(ドレイン-ソース間の電流と称する。)に変換する。そして、駆動用トランジスタ24aは、オン状態となることで、ドレイン-ソース間の電流を発光素子20に印加(供給)することで発光素子20を発光させる。駆動用トランジスタ24aは、例えば、n型の薄膜トランジスタ(n型TFT)で構成される。
【0034】
スイッチ用トランジスタ24eは、ゲートがイネーブル線enbに接続され、ソース及びドレインの一方がELアノード電源線Vtftに接続され、ソース及びドレインの他方が駆動用トランジスタ24aのドレインに接続されている。スイッチ用トランジスタ24eは、イネーブル線enbから供給される消光信号に応じてオン状態またはオフ状態となる。スイッチ用トランジスタ24eは、オン状態となることで駆動用トランジスタ24aをELアノード電源線Vtftに接続し、駆動用トランジスタ24aのドレイン-ソース間の電流を発光素子20に供給させる。スイッチ用トランジスタ24eは、例えば、n型の薄膜トランジスタ(n型TFT)で構成される。
【0035】
スイッチ用トランジスタ24bは、ゲートが走査線7に接続され、ソース及びドレインの一方がデータ線8に接続され、ソース及びドレインの他方が容量素子22の一方の電極に接続されている。スイッチ用トランジスタ24bは、走査線7から供給される制御信号に応じてオン状態またはオフ状態となる。スイッチ用トランジスタ24bは、オン状態となることで、データ線8から供給される映像信号の信号電圧を容量素子22の電極に印加し、当該信号電圧に応じた電荷を容量素子22に蓄積させる。スイッチ用トランジスタ24eは、例えば、n型の薄膜トランジスタ(n型TFT)で構成される。
【0036】
スイッチ用トランジスタ24dは、ゲートが参照電圧制御線refに接続され、ソース及びドレインの一方が参照電源線Vrefに接続され、ソース及びドレインの他方が容量素子22の一方の電極等に接続されている。スイッチ用トランジスタ24dは、参照電圧制御線refから供給される制御信号に応じてオン状態またはオフ状態となる。スイッチ用トランジスタ24dは、オン状態となることで、容量素子22の電極を参照電源線Vrefが供給する電圧に設定する。スイッチ用トランジスタ24dは、例えば、n型の薄膜トランジスタ(n型TFT)で構成される。
【0037】
スイッチ用トランジスタ24cは、ゲートが初期化制御線iniに接続され、ソース及びドレインの一方が駆動用トランジスタ24aのソースに接続され、ソース及びドレインの他方が初期化電源線Viniに接続されている。スイッチ用トランジスタ24cは、初期化制御線iniから供給される制御信号に応じてオン状態またはオフ状態となる。スイッチ用トランジスタ24cは、駆動用トランジスタ24aがオン状態であり、スイッチ用トランジスタ24eがオフ状態にあってELアノード電源線Vtftとの接続が遮断されている中で、オン状態となることで、発光素子20のアノードを初期化電源線Viniが供給する初期化電圧(基準電圧)に設定する。スイッチ用トランジスタ24cは、例えば、n型の薄膜トランジスタ(n型TFT)で構成される。
【0038】
容量素子22は、一方の電極が、駆動用トランジスタ24aのゲート及びスイッチ用トランジスタ24bのソース及びスイッチ用トランジスタ24dのソースに接続され、他方の電極が駆動用トランジスタ24aのソースに接続されたコンデンサである。容量素子22は、データ線8から供給された信号電圧に対応した電荷を蓄積する。容量素子22は、例えば、スイッチ用トランジスタ24b及びスイッチ用トランジスタ24dがオフ状態となった後に、駆動用トランジスタ24aのゲート-ソース間の電圧を安定的に保持する。このように、容量素子22は、スイッチ用トランジスタ24b及びスイッチ用トランジスタ24dがオフ状態のときに、蓄積された電荷による信号電位に応じて、駆動用トランジスタ24aのゲート・ソース間に電圧を印加する。
【0039】
これら構成により、発光素子20に電流を安定して流すことができる。
【0040】
なお、画素2の構成は、図2に示した構成に限らず、他の構成であってもよい。少なくとも画素2としての機能を果たすことができる最小の構成として、発光素子20と、容量素子22と、駆動用トランジスタ24aと、スイッチ用トランジスタ24bとを備えていればよい。
【0041】
走査線7は、複数の画素2の行ごとに配されている。走査線7の一端は、画素2に接続され、走査線7の他端は、ゲートドライバ回路4に接続されている。図2に示す例では、走査線7は、画素2に配置されたスイッチ用トランジスタ24bのゲートに接続されている。
【0042】
データ線8は、複数の画素2の列ごとに配されている。データ線8の一端は、画素2に接続され、データ線8の他端は、ソースドライバ回路5に接続されている。図2に示す例では、データ線8は、スイッチ用トランジスタ24bのソースまたはドレインに接続されている。
【0043】
<ゲートドライバ回路4>
ゲートドライバ回路4には、走査線7が接続されており、走査線7に制御信号を出力することで、画素2が有する各トランジスタのオン及びオフを制御する。図2に示す例では、ゲートドライバ回路4は、走査線7を介して画素2に配置されたスイッチ用トランジスタ24bのゲートに、走査信号を供給する。
【0044】
<ソースドライバ回路5>
ソースドライバ回路5には、データ線8が接続されており、補正回路10により補正された映像信号を、データ線8に出力することで、当該映像信号を各画素2に供給する。ソースドライバ回路5は、データ線8を通して、画素2の各々に対して映像信号により示される輝度を表現した出力階調値を電流値または電圧値の形で書き込む。図2に示す例では、ソースドライバ回路5は、データ線8を介して、画素2に配置されたスイッチ用トランジスタ24bのソース又はドレインに入力された映像信号に対応した電圧を供給する。
【0045】
<補正回路10>
補正回路10は、外部より入力される映像信号を補正してソースドライバ回路5に出力する。より具体的には、補正回路10は、映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値を補正し、出力階調値を出力する。これにより、出力階調値が、映像信号に含まれる輝度信号により示される階調として、ソースドライバ回路5に出力される。
【0046】
換言すると、補正回路10は、発光素子20に狙った輝度すなわち目標輝度値で発光するように、映像信号に含まれる輝度信号により示される輝度の階調値(入力階調値)の補正を行うための回路である。なお、目標輝度値は、劣化していない初期の発光素子20において、入力階調値に対応する発光輝度値に該当する。このため、発光素子20が劣化した場合、映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値に対応する電流値を供給して発光素子20を発光させても、目標輝度値を達成することができない。そこで、補正回路10は、映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値を、目標輝度値を達成できるように補正する。これにより、補正された入力階調値(出力階調値)に対応する電流を供給された発光素子20は、狙った輝度すなわち目標輝度値を達成することができる。
【0047】
以下、補正回路10の構成について説明する。
【0048】
[補正回路10の構成]
図3は、本実施の形態に係る補正回路10の構成の一例を示すブロック図である。
【0049】
補正回路10は、輝度変換部11と、補正演算部12と、累積ストレス演算部13と、ストレス量変換部14とを備える。補正回路10は、プロセッサがメモリを用いて所定のプログラムを実行することで実現され得る。以下、各構成要素について説明する。
【0050】
<輝度変換部11>
輝度変換部11は、入力階調値を、対応する目標輝度値に変換する。本実施の形態では、輝度変換部11は、表示装置1の外部より入力される映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値を、対応する目標輝度値に変換する。
【0051】
これを図4を用いて説明する。
【0052】
図4は、本実施の形態に係る入力階調値を目標輝度値に変換する方法を説明するための図である。図4には、初期の発光素子20における階調値と、輝度値との関係を表す階調輝度特性が示されている。
【0053】
輝度変換部11は、図4の階調輝度特性に表される関係を用いて、表示装置1の外部より入力される映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値を、対応する目標輝度値に変換することができる。
【0054】
<補正演算部12>
補正演算部12は、発光素子20の劣化度合いを表す指標である効率残存率であって発光素子20の発光効率の残存率を示す効率残存率を用いて、目標輝度値から、入力階調値を補正した出力階調値を算出するとともに、算出した出力階調値から、目標輝度値を補正した補正後輝度値を算出する。ここで、効率残存率は、発光素子20の初期の発光輝度に対する、発光素子20の劣化後の発光輝度の割合で表される。
【0055】
本実施の形態では、補正演算部12は、累積ストレス演算部13から得た効率残存率を用いて、輝度変換部11より出力された目標輝度値から、出力階調値を算出する。ここで、出力階調値は、表示装置1の外部より入力される映像信号に含まれる輝度信号に示される入力階調値が補正された補正後階調値である。補正演算部12は、算出した出力階調値を出力する。これにより、補正演算部12は、算出した出力階調値を、映像信号に含まれる輝度信号により示される階調として、ソースドライバ回路5に出力することができる。
【0056】
また、補正演算部12は、算出した出力階調値から、目標輝度値を補正した補正後輝度値を算出する。補正演算部12は、算出した目標輝度値を累積ストレス演算部13に出力する。
【0057】
以下、図5A及び図5Bを用いて出力階調値及び補正後輝度値の算出方法について説明する。
【0058】
図5Aは、本実施の形態に係る目標輝度値から補正後階調値を算出する方法を説明するための図である。図5Bは、本実施の形態に係る補正後階調値から補正後輝度値を算出する方法を説明するための図である。図5A及び図5Bには、発光素子20の初期と劣化後とにおける階調値と輝度値との関係を表す階調輝度特性が示されている。劣化後における階調輝度特性は、初期における階調輝度特性に、効率残存率Rtを乗じることで得ることができる。
【0059】
補正演算部12は、図5Aの劣化後における階調輝度特性に表される関係を用いて、輝度変換部11より出力された目標輝度値に対応する階調値を、映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値を補正した補正後階調値として算出することができる。そして、補正演算部12は、算出した補正後階調値を、出力階調値として出力する。これにより、表示装置1の外部より入力される映像信号に含まれる輝度信号に示される入力階調値が出力階調値に補正されて、ソースドライバ回路5に入力されることになる。
【0060】
また、補正演算部12は、図5Bの劣化後における階調輝度特性に表される関係を用いて、算出した補正後階調値に対応する輝度値を、輝度変換部11より出力された目標輝度値を補正した補正後輝度値として算出することができる。そして、補正演算部12は、算出した補正後輝度値を、累積ストレス演算部13に出力する。
【0061】
<累積ストレス演算部13>
累積ストレス演算部13は、補正後輝度値から算出される発光素子20に対するストレス量を、発光素子20に基準電流を流したときのストレス量を示す第1ストレス量に換算し、換算した第1ストレス量から得た第2ストレス量を累積した累積ストレス量を用いて、効率残存率を更新する。ここで、第2ストレス量は、ストレス量変換部14において、映像信号から得られるフレームレートに応じて第1ストレス量が変換されたものであり、第1ストレス量をフレームレートに適したストレス量に変換されたものである。
【0062】
また、補正後輝度値から算出されるストレス量は、発光素子20を補正後輝度値で発光させたときに発光素子20に流れる第1電流におけるストレス量であり、発光素子20に第1電流が流れた時間である。同様に、基準電流におけるストレス量は、発光素子20に基準電流が流れた時間である。
【0063】
このため、より詳細には、累積ストレス演算部13は、発光素子20に第1電流が流れた時間を発光素子20に基準電流が流れた時間に換算することにより、補正後輝度値から算出されたストレス量を、第1ストレス量に換算できる。また、累積ストレス演算部13は、第2ストレス量である発光素子20に基準電流が流れた時間を累積した累積時間を算出することで、累積ストレス量を算出することができる。
【0064】
また、累積ストレス演算部13は、発光素子20の輝度と発光素子20に基準電流が流れる累積時間との関係を用いて、累積ストレス量として算出した累積時間から、新たな効率残存率を演算して、効率残存率とすることで、効率残存率を更新することができる。
【0065】
図6は、ストレス経過時間と発光素子の劣化度合いとの関係を示す図である。
【0066】
有機EL素子などの自発光素子では、上述したように、自発光素子を構成する発光層が発光量、発光時間及び温度に応じて劣化することが知られている。図6には、発光素子に印加される電流をストレスとして、発光素子に一定の電流を印加し続けた場合の経過時間における劣化度合いが示されている。ストレスAとストレスBとは、発光素子に印加される電流が異なっており、ストレスA>ストレスBすなわち(ストレスAとして印加される電流)>(ストレスBとして印加される電流)である。
【0067】
図6に示されるように、発光素子にストレスがかかると、時間の経過とともに、劣化が進行するのがわかる。また、発光素子にストレスAがかかる場合の方が、発光素子にストレスBがかかる場合よりも劣化が進行しているのがわかる。つまり、図6の点線囲いで示されるように、経過時間が同一であっても、ストレスにより劣化の度合が異なり、より大きなストレスの方が劣化が進行することがわかる。
【0068】
なお、発光素子20に供給される電流の大きさは、映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値によって異なるため、つまり一定でないため、経過時間と発光素子20の劣化度合いとの関係を簡単に表すことは難しい。
【0069】
そこで、本実施の形態では、発光素子20に対するストレス量による劣化の度合いを、発光素子20にある一定の電流(つまり基準電流)を供給したときの時間の累積時間(経過時間)による劣化の度合いで評価する。このように、発光素子20に印加(供給)される様々な電流(第1電流)の時間を発光素子20に基準電流が流れる時間に換算することで、ストレス量を算出できるので、換算した時間を累積した累積時間を算出することで、累積ストレス量を算出できる。
【0070】
図7Aは、本実施の形態に係る補正後輝度値で発光素子20に発光させる場合に流れる第1電流値を算出する方法を説明するための図である。図7Aには、初期の発光素子20において流れる電流値と輝度値との関係を表す曲線が示されている。
【0071】
累積ストレス演算部13は、図7Aの曲線で示される初期の発光素子20において流れる電流値と輝度値との関係を用いて、補正演算部12より出力された補正後輝度値から、当該補正後輝度値で発光素子20に発光させる場合に流れる第1電流を算出する。
【0072】
図7Bは、本実施の形態に係る発光素子20に第1電流を流したときのストレス量を発光素子20に基準電流を流したときのストレス量に換算する方法を説明するための図である。図7Bに示される曲線は、発光素子20にストレスとして基準電流と第1電流とを流したときにおける、経過時間と発光素子20の輝度の劣化度合いとの関係を示している。なお、図7Bでは、ストレスが全くかかっていない初期の発光素子20の輝度の劣化度合いが1に正規化されている。また、図7Bに示される2つの曲線のそれぞれは、フレームレートが一定である場合の経過時間と発光素子20の輝度の劣化度合いとの関係とを示しており、予め用意されている。
【0073】
累積ストレス演算部13は、算出した第1電流が発光素子20に印加される場合のストレス量と等価なストレス量となるように、第1電流が流れた時間を発光素子20に基準電流が流れた時間に換算する。より詳細には、累積ストレス演算部13は、図7Bに示される曲線を用いて、算出した第1電流が発光素子20に時間T1だけ印加されたときの輝度の劣化度合いと等価な輝度の劣化度合いとなるように、第1電流が流れた時間T1を基準電流が流れた時間T2に換算する。つまり、図7Bに示されるように、発光素子20に第1電流を流した時間T1であるストレスI1における時間T1は、発光素子20に基準電流を流した時間T2であるストレスIrefにおける時間T2に換算できる。このようにして、累積ストレス演算部13は、補正後輝度値から算出されるストレス量を、第1ストレス量に換算できる。
【0074】
図7Cは、本実施の形態に係る発光素子20に基準電流を累積時間流したときの輝度の劣化度合いから効率残存率を算出する方法を説明するための図である。図7Cに示される曲線は、フレームレートが一定である場合に、発光素子20にストレスとして基準電流を流したときにおける、経過時間(累積時間)と発光素子20の輝度の劣化度合いとの関係を示している。
【0075】
累積ストレス演算部13は、換算した時間T2をストレス量変換部14に出力し、ストレス量変換部14から、換算した時間T2がさらにフレームレートに応じて変換された時間T3を取得する。累積ストレス演算部13は、取得した時間T3を、以前に取得して累積していた時間ΣT3にさらに加えることで、取得した時間T3の累積時間ΣT3を算出する。そして、累積ストレス演算部13は、図7Cに示される曲線を用いて、累積時間ΣT3から、効率残存率Rtを演算する。
【0076】
図7Cに示される曲線では、累積時間ΣT3が0である場合の発光輝度は劣化していないため、初期の発光素子20の発光輝度に相当する。このため、累積時間ΣT3における発光素子20の発光輝度は、発光素子20の初期の発光輝度に対する、発光素子20の劣化後の発光輝度の割合で表すことができる。つまり、累積ストレス演算部13は、図7Cに示される曲線を用いて、累積時間ΣT3から、効率残存率Rtを演算することができる。なお、図7Cでは、初期の発光素子20における劣化していない発光輝度は1に正規化されている。
【0077】
<ストレス量変換部14>
ストレス量変換部14は、映像信号から得られるフレームレートを取得し、取得したフレームレートに応じた変換係数を、第1ストレス量に乗算することで、第1ストレス量を第2ストレス量に変換する。つまり、ストレス量変換部14は、累積ストレス演算部13が算出した第1ストレス量を、取得したフレームレートに適した第2ストレス量に変換する。
【0078】
本実施の形態では、ストレス量変換部14は、補正後輝度値で発光素子20に発光させるときに表示画面3で表示される画面(映像信号)のフレームレートを取得する。また、発光素子20に対するストレス量は、発光素子20に印加される電流が流れる時間であるとして取り扱う。このため、ストレス量変換部14は、累積ストレス演算部13により算出された第1ストレス量である時間T2を、取得したフレームレートに適した時間T3に変換する。
【0079】
ところで、近年では、表示画面3に表示する映像の内容次第でフレームレートが変化するようになっている。また、第1ストレス量である時間T2は、フレームレートが一定であるとしたときに、累積ストレス演算部13により算出されたストレス量である。
【0080】
したがって、フレームレートが変化する場合、第1ストレス量である時間T2は、一定のフレームレートから変化した分だけ誤差を含むことになる。このため、ストレス量変換部14は、累積ストレス演算部13により算出された第1ストレス量である時間T2を、一定のフレームレートから変化した分を考慮した時間つまり変化したフレームレートに適した時間となるように、変換する。本実施の形態では、ストレス量変換部14は、フレームレートに応じた変換係数を、累積ストレス演算部13により算出された第1ストレス量である時間T2に乗算することで、時間T2を変化したフレームレートに適した時間T3に変換する。
【0081】
[表示装置1の駆動方法]
次に、以上のように構成された表示装置1の駆動方法について説明する。
【0082】
図8は、本実施の形態に係る表示装置1の駆動方法の一例を示すフローチャートである。図8には、表示装置1を構成する補正回路10の処理が表示装置1の駆動方法の一例として示されている。
【0083】
まず、補正回路10は、表示装置1の外部より入力される映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値を、対応する目標輝度値に変換する(S10)。
【0084】
次に、補正回路10は、効率残存率を用いて、ステップS10で変換された目標輝度値から、入力階調値を補正した出力階調値を算出するとともに、出力階調値から、目標輝度値を補正した補正後輝度値を算出する(S11)。この効率残存率は、1つ前の処理などで累積ストレス演算部13により算出されたものである。
【0085】
次に、補正回路10は、ステップS11で算出された補正後輝度値から算出される発光素子20に対するストレス量を、基準電流における第1ストレス量に換算し、換算した第1ストレス量から得た第2ストレス量を累積した累積ストレス量を用いて、効率残存率を更新する(S12)。ここで、基準電流における第1ストレス量は、発光素子20に基準電流を流したときのストレス量であり、本実施の形態では発光素子20に基準電流が流れる時間で評価している。なお、第2ストレス量は、次のステップS13において映像信号から得られるフレームレートに適するように第1ストレス量が変換されたものである。
【0086】
そして、ステップS12を行う際、補正回路10は、映像信号から得られるフレームレートを取得し、取得したフレームレートに応じた変換係数を、第1ストレス量に乗算することで、第1ストレス量を当該フレームレートに適する第2ストレス量に変換する(S13)。
【0087】
[効果等]
以上、本実施の形態に係る表示装置によれば、フレームレートが変化する場合でも、表示ムラを低減することができる。より具体的には、フレームレートが変化する場合でも、変化したフレームレートに適したストレス量を算出することができるので、累積ストレス量を正確に演算できる。このため、効率残存率を用いて発光素子20の劣化度合いを正確に予測できるので、発光素子20の劣化度合いを考慮して補正した入力階調値すなわち出力階調値を算出することができる。これにより、各発光素子20の劣化度合いによらず、各発光素子20を一様な発光輝度に補正することができるので、表示ムラを低減することができる。
【0088】
また、本実施の形態に係る表示装置によれば、ストレス量を、発光素子20に基準電流が流れる時間で評価するので、フレームレートが変化する場合でも、変化したフレームレートに適したストレス量を算出することができ、累積ストレス量を正確に演算できる。
【0089】
以下、実施例1及び実施例2を挙げて、本実施の形態に係る補正回路10を構成するストレス量変換部14の具体的態様について説明する。
【0090】
(実施例1)
まず、実施例1では、ストレス量変換部14が、予め用意されたルックアップテーブル(LUT:look-up table)を用いて、取得したフレームレートに応じた変換係数を選択する場合について説明する。
【0091】
[実施例1に係る補正回路10等の構成]
図9は、本実施の形態の実施例1に係る補正回路10の構成の例を示すブロック図である。図9では、映像信号にフレームレート情報が含まれている場合の構成が示されており、映像信号検出部30がさらに含まれている。なお、図3と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0092】
[映像信号検出部30]
映像信号検出部30は、映像信号を取得し、取得した映像信号からフレームレート情報を抽出して、ストレス量変換部14に出力する。また、映像信号検出部30は、取得した映像信号に含まれる輝度信号により示される入力階調値を輝度変換部11に出力する。
【0093】
[ストレス量変換部14]
ストレス量変換部14は、映像信号から得られるフレームレートを取得し、取得したフレームレートに応じた変換係数を、第1ストレス量に乗算することで、第1ストレス量を第2ストレス量に変換する。本実施例では、ストレス量変換部14は、図9に示すように、LUT141と、フレームレート変換部142とを備える。
【0094】
<LUT141>
LUT141は、各種フレームレートに対応したルックアップテーブルであり、複数のフレームレートと、当該複数のフレームレートそれぞれに関連付けられた変換係数とを予め記憶している。
【0095】
図10A及び図10Bは、本実施の形態の実施例1に係るルックアップテーブルの一例を示す図である。図10A及び図10Bでは、フレームレートが、20FPS(Frames Per Second)、30FPS、40FPS、48FPS、50FPS、60FPS、120FPS、196FPS及び240FPSであるときの変換係数の一例が示されている。
【0096】
図10Aでは、第1ストレス量を示す時間T2が1秒を基準として算出される場合の変換係数の値の一例が示されている。図10Bでは、第1ストレス量を示す時間T2が例えば60FPSを基準として算出される場合の変換係数の値の一例が示されている。
【0097】
<フレームレート変換部142>
フレームレート変換部142は、映像信号から得られるフレームレートを取得して、ルックアップテーブルから、取得したフレームレートに対応する変換係数を選択する。より具体的には、フレームレート変換部142は、映像信号検出部30からフレームレート情報を取得することで、映像信号から得られるフレームレートを取得する。フレームレート変換部142は、取得したフレームレートに対応する変換係数を、LUT141から選択する。
【0098】
また、フレームレート変換部142は、選択した変換係数を、第1ストレス量に乗算することで、第1ストレス量を第2ストレス量に変換する。
【0099】
なお、図9に示す例では、目標輝度値がLtで示されており、補正後輝度値がL′tで示されており、フレームレート変換部142がLUT141から選択した変換係数がαで示されている。この場合、フレームレート変換部142は、選択した変換係数αを、第1ストレス量である時間T2に乗算することで、第1ストレス量である時間T2を、取得したフレームレートに適した第2ストレス量である時間αT2すなわち時間T3に変換する。
【0100】
[効果等]
以上、本変形例に係る表示装置1によれば、ルックアップテーブルを用いて、変化するフレームレートに適した基準電流におけるストレス量(第2ストレス量)を、正確に演算できる。これにより、本変形例に係る表示装置1は、フレームレートが変化する場合でも、変化するフレームレートに適した基準電流における第2ストレス量を用いて、累積ストレス量を正確に演算できる。このため、本変形例に係る表示装置1は、発光素子の劣化度合いを効率残存率で正確に予測できるので、発光素子の劣化度合いを考慮して補正した入力階調値すなわち出力階調値を算出することができる。これにより、各発光素子の劣化度合いによらず、各発光素子を一様な発光輝度に補正することができ、表示ムラを低減することができる。
【0101】
また、本変形例では、ルックアップテーブルを用いることにより、小さな回路規模で本変形例に係る表示装置1を実現できる。
【0102】
なお、上記では、映像信号にフレームレート情報が含まれている場合を例に挙げて説明したが、これに限らない。映像信号にフレームレート情報が含まれていない場合にも同様に表示ムラを低減することができる。これについて図11を用いて説明する。
【0103】
図11は、本実施の形態の実施例1に係る補正回路10の構成の別の例を示すブロック図である。なお、図3及び図9と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。図12は、垂直同期信号からフレームレート情報を検出する方法を説明するための図である。
【0104】
図11では、映像信号にフレームレート情報が含まれていない場合の構成が示されている。図11に示す構成は、図9に示す構成と比較してフレームレート検出部31が追加され、映像信号検出部30Aの構成が異なる。
【0105】
映像信号検出部30Aは、映像信号を取得し、取得した映像信号を輝度信号と垂直同期信号とに分割する。映像信号検出部30Aは、垂直同期信号をストレス量変換部14に出力し、輝度信号により示される入力階調値を輝度変換部11に出力する。
【0106】
フレームレート検出部31は、映像信号からフレームレート情報を検出する。フレームレート検出部31は、検出したフレームレート情報を、ストレス量変換部14に出力する。
【0107】
より具体的には、フレームレート検出部31は、図12に示すように、映像信号検出部30Aから入力された1秒間の垂直同期信号の数をカウントすることで、フレームレート数(FPS)を検出する。フレームレート検出部31は、検出したフレームレート数をフレームレート情報として、フレームレート変換部142に出力する。なお、フレームレート検出部31は、映像信号検出部30Aから入力される垂直同期信号のフレームレートが頻繁に変化する場合、数秒間の平均値をフレームレート情報とすればよい。これにより誤差を軽減できる。また、フレームレート検出部31は、映像信号検出部30Aから入力される垂直同期信号のフレームレートが変化する場合でも、例えば数分以上変わらなければ誤差は無視できる。
【0108】
フレームレート変換部142は、フレームレート検出部31が映像信号から検出したフレームレート情報を取得することで、映像信号から得られるフレームレートを取得する。その他については上述した通りであるので、以降の説明を省略する。
【0109】
(実施例2)
次に、実施例2では、ストレス量変換部14が、予め用意された算出式に、取得したフレームレートを適用することで、取得したフレームレートに応じた変換係数を得る場合について説明する。
【0110】
[実施例2に係る補正回路10等の構成]
図13は、本実施の形態の実施例2に係る補正回路10の構成の例を示すブロック図である。なお、図3及び図9と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。図13では、映像信号にフレームレート情報が含まれている場合の構成が示されている。図13に示す補正回路10は、図9に示す補正回路10と比較してストレス量変換部14Aの構成が異なる。
【0111】
[ストレス量変換部14A]
ストレス量変換部14Aは、映像信号から得られるフレームレートを取得し、取得したフレームレートに応じた変換係数を、第1ストレス量に乗算することで、第1ストレス量を第2ストレス量に変換する。本実施例では、ストレス量変換部14Aは、図13に示すように、記憶部143と、変換係数演算部144とを備える。
【0112】
<記憶部143>
記憶部143は、フレームレートを分母とした比で表される算出式であって変換係数を算出するための算出式を記憶する。
【0113】
ここで、算出式について説明する。変換係数をαとし、映像信号のフレームレートをFR1とすると、算出式は、下記の式1または式2で表すことができる。
【0114】
変換係数α=1/FR1 ・・・(式1)
【0115】
変換係数α=60/FR1 ・・・(式2)
【0116】
なお、第1ストレス量を示す時間T2が1秒を基準として算出される場合、式1が用いられる。一方、第1ストレス量を示す時間T2が例えば60FPSを基準として算出される場合、式2が用いられる。
【0117】
<変換係数演算部144>
変換係数演算部144は、映像信号から得られるフレームレートを取得して、取得したフレームレートを算出式に適用することで、フレームレートに応じた変換係数を得る。より具体的には、変換係数演算部144は、映像信号検出部30からフレームレート情報を取得することで、映像信号から得られるフレームレートを取得する。変換係数演算部144は、取得したフレームレートを、記憶部143に記憶されている算出式に適用することで、フレームレートに応じた変換係数を得ることができる。
【0118】
また、変換係数演算部144は、算出式から得た変換係数を、第1ストレス量に乗算することで、第1ストレス量を第2ストレス量に変換する。
【0119】
なお、図13に示す例でも、目標輝度値がLtで示されており、補正後輝度値がL′tで示されており、変換係数演算部144が算出式により得られる変換係数がαと示されている。この場合、変換係数演算部144は、算出式から得た変換係数αを、第1ストレス量である時間T2に乗算することで、第1ストレス量である時間T2を、取得したフレームレートに適した第2ストレス量である時間αT2すなわち時間T3に変換する。
【0120】
[効果等]
以上、本変形例に係る表示装置1によれば、予め記憶された算出式を用いて、変化するフレームレートに適した基準電流におけるストレス量(第2ストレス量)を、正確に演算できる。これにより、本変形例に係る表示装置1は、フレームレートが変化する場合でも、変化するフレームレートに適した基準電流における第2ストレス量を用いて、累積ストレス量を正確に演算できる。このため、本変形例に係る表示装置1は、発光素子の劣化度合いを効率残存率で正確に予測できるので、発光素子の劣化度合いを考慮して補正した入力階調値すなわち出力階調値を算出することができる。これにより、各発光素子の劣化度合いによらず、各発光素子を一様な発光輝度に補正することができ、表示ムラを低減することができる。
【0121】
また、本変形例では、予め記憶された算出式を用いることにより、対応できるフレームレートが離散的でなくなり対応できるフレームレートの制限がなくなるので、フレームレートの変化にシームレスに対応できる本変形例に係る表示装置1を実現できる。
【0122】
なお、上記では、映像信号にフレームレート情報が含まれている場合を例に挙げて説明したが、これに限らない。映像信号にフレームレート情報が含まれていない場合にも同様に表示ムラを低減することができる。これについて図14を用いて説明する。
【0123】
図14は、本実施の形態の実施例2に係る補正回路10の構成の別の例を示すブロック図である。なお、図3図9及び図13と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0124】
図11では、映像信号にフレームレート情報が含まれていない場合の構成が示されている。図14に示す構成は、図13に示す構成と比較してフレームレート検出部31が追加され、映像信号検出部30Aの構成が異なる。
【0125】
なお、映像信号検出部30Aは、実施例1で図11を用いて説明した通りであるので、ここでの説明を省略する。フレームレート検出部31は、実施例1と異なる点を中心に説明する。
【0126】
フレームレート検出部31は、映像信号からフレームレート情報を検出する。フレームレート検出部31は、検出したフレームレート情報を、ストレス量変換部14Aに出力する。
【0127】
フレームレート検出部31は、図12を用いて説明したように、映像信号検出部30Aから入力された1秒間の垂直同期信号の数をカウントすることで、フレームレート数(FPS)を検出する。フレームレート検出部31は、検出したフレームレート数をフレームレート情報として、変換係数演算部144に出力する。
【0128】
変換係数演算部144は、フレームレート検出部31が映像信号から検出したフレームレート情報を取得することで、映像信号から得られるフレームレートを取得する。その他については上述した通りであるので、以降の説明を省略する。
【0129】
以上、実施の形態及び実施例に係る表示装置1について説明したが、表示装置1は、上述した実施の形態に限定されるものではない。
【0130】
例えば、上述した補正回路10に、例えばゲイン演算部を設け、累積ストレス演算部で得られた効率残存率が小さい場合には、効率残存率をゲイン演算部で算出されたゲインにより増幅させてもよい。
【0131】
また、本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本開示は、表示装置及び表示装置の駆動方法に利用でき、特に、自発光素子を有し大画面及び高解像度が要望される薄型テレビ及びパーソナルコンピュータのディスプレイなどの技術分野における表示装置及び表示装置の駆動方法に利用できる。
【符号の説明】
【0133】
1 表示装置
2 画素
3 表示画面
4 ゲートドライバ回路
5 ソースドライバ回路
7 走査線
8 データ線
10 補正回路
11 輝度変換部
12 補正演算部
13 累積ストレス演算部
14、14A ストレス量変換部
20 発光素子
22 容量素子
24a 駆動用トランジスタ
24b、24c、24d、24e スイッチ用トランジスタ
30、30A 映像信号検出部
31 フレームレート検出部
141 LUT
142 フレームレート変換部
143 記憶部
144 変換係数演算部
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14