IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノン株式会社の特許一覧

特許7466403制御装置、リソグラフィー装置、制御方法および物品製造方法
<>
  • 特許-制御装置、リソグラフィー装置、制御方法および物品製造方法 図1
  • 特許-制御装置、リソグラフィー装置、制御方法および物品製造方法 図2
  • 特許-制御装置、リソグラフィー装置、制御方法および物品製造方法 図3
  • 特許-制御装置、リソグラフィー装置、制御方法および物品製造方法 図4
  • 特許-制御装置、リソグラフィー装置、制御方法および物品製造方法 図5
  • 特許-制御装置、リソグラフィー装置、制御方法および物品製造方法 図6
  • 特許-制御装置、リソグラフィー装置、制御方法および物品製造方法 図7
  • 特許-制御装置、リソグラフィー装置、制御方法および物品製造方法 図8
  • 特許-制御装置、リソグラフィー装置、制御方法および物品製造方法 図9
  • 特許-制御装置、リソグラフィー装置、制御方法および物品製造方法 図10
  • 特許-制御装置、リソグラフィー装置、制御方法および物品製造方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】制御装置、リソグラフィー装置、制御方法および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 13/02 20060101AFI20240405BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240405BHJP
   G06N 3/02 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
G05B13/02 L
G03F7/20 521
G03F7/20 501
G06N3/02
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020131923
(22)【出願日】2020-08-03
(65)【公開番号】P2022028489
(43)【公開日】2022-02-16
【審査請求日】2023-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森國 雄一朗
【審査官】仁木 学
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-86397(JP,A)
【文献】特開2019-71405(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146007(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/005547(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/177905(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 13/02
G03F 7/20
G06N 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原版のパターンを基板に転写する処理を行うリソグラフィー装置に含まれる制御対象を制御するための制御信号を生成する制御装置であって、
複数のニューラルネットワークと、
前記複数のニューラルネットワークのうち前記制御信号を生成するために使用されるニューラルネットワークを選択する選択器と、
を備え
前記選択器は、前記基板と前記原版との位置合わせのための計測シーケンスのための計測制御パターンの実行において使用するために前記複数のニューラルネットワークのうちの第1ニューラルネットワークを選択し、前記原版のパターンが前記基板に転写されるように前記基板を露光する露光シーケンスのための露光制御パターンの実行において使用するために前記複数のニューラルネットワークのうちの、前記第1ニューラルネットワークとは異なる第2ニューラルネットワークを選択する、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記第1ニューラルネットワークは前記計測制御パターンの少なくとも一部の実行において使用され、前記第2ニューラルネットワークは前記露光制御パターンの少なくとも一部の実行において使用されるように前記選択器によって選択される、
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
制御対象を制御するための制御信号を生成する制御装置であって、
複数のニューラルネットワークと、
前記複数のニューラルネットワークのうち前記制御信号を生成するために使用されるニューラルネットワークを選択する選択器と、
を備え、
前記制御対象の加速度プロファイルは、複数の時間区間を含み、前記複数の時間区間は、加速度が正の範囲で増加するジャーク区間、前記加速度が正の一定値を維持する等加速度区間、前記加速度が正の範囲で低下するジャーク区間、前記加速度がゼロを維持する等速度区間、前記加速度が負の範囲で前記加速度の絶対値が増加するジャーク区間、前記加速度が負の一定値を維持する等加速度区間、前記加速度が負の範囲で前記加速度の絶対値が減少するジャーク区間を含み、
前記選択器は、前記複数の時間区間のうち現在の時間区間に応じて前記複数のニューラルネットワークから前記使用されるニューラルネットワークを選択する、
ことを特徴とす制御装置。
【請求項4】
前記選択器は、上位装置から提供される情報に基づいて前記使用されるニューラルネットワークを選択する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御対象の状態を示す状態信号と目標値との差分を計算する減算器と、前記差分に基づいて操作量を計算する補償器と、加算器とを更に備え、
前記差分が前記使用されるニューラルネットワークに供給され、前記使用されるニューラルネットワークの出力と前記操作量とが前記加算器によって加算され前記制御信号が生成される、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
前記制御対象の位置を制御するように構成される、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
制御対象の温度を制御するように構成される、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
原版のパターンを基板に転写する処理を行うリソグラフィー装置であって、
前記処理のために動作する動作部と、
前記動作部を制御するための制御信号を生成する制御部と、を備え、
前記制御部は、
複数のニューラルネットワークと、
前記複数のニューラルネットワークのうち前記制御信号を生成するために使用されるニューラルネットワークを選択する選択器と、
を含み、
前記選択器は、前記基板と前記原版との位置合わせのための計測シーケンスのための計測制御パターンの実行において使用するために前記複数のニューラルネットワークのうちの第1ニューラルネットワークを選択し、前記原版のパターンが前記基板に転写されるように前記基板を露光する露光シーケンスのための露光制御パターンの実行において使用するために前記複数のニューラルネットワークのうちの、前記第1ニューラルネットワークとは異なる第2ニューラルネットワークを選択する、
ことを特徴とするリソグラフィー装置。
【請求項9】
前記複数のニューラルネットワークの各々は、前記動作部を制御する複数の制御パターンの少なくとも1つの制御パターンの少なくとも一部の実行において使用されるように前記選択器によって選択される、
ことを特徴とする請求項に記載のリソグラフィー装置。
【請求項10】
前記動作部は、前記基板に前記原版のパターンが転写されるように前記原版および前記基板を走査する走査機構を含み、
前記露光シーケンスは前記走査機構によって前記基板および前記原版を走査しながら前記基板を露光する、
ことを特徴とする請求項8又は9に記載のリソグラフィー装置。
【請求項11】
原版のパターンを基板に転写する処理を行うリソグラフィー装置であって、
前記処理のために動作する動作部と、
前記動作部を制御するための制御信号を生成する制御部と、を備え、
前記制御部は、
複数のニューラルネットワークと、
前記複数のニューラルネットワークのうち前記制御信号を生成するために使用されるニューラルネットワークを選択する選択器と、
を含み、
前記動作部の加速度プロファイルは、複数の時間区間を含み、前記複数の時間区間は、加速度が正の範囲で増加するジャーク区間、前記加速度が一定値を維持する等加速度区間、前記加速度が正の範囲で低下するジャーク区間、前記加速度がゼロを維持する等速度区間、前記加速度が負の範囲で前記加速度の絶対値が増加するジャーク区間、前記加速度が一定値を維持する等加速度区間、前記加速度が負の範囲で前記加速度の絶対値が減少するジャーク区間を含み、
前記選択器は、前記複数の時間区間のうち現在の時間区間に応じて前記複数のニューラルネットワークから前記使用されるニューラルネットワークを選択する、
ことを特徴とすリソグラフィー装置。
【請求項12】
前記動作部の状態を検出するセンサと、目標値と前記センサの出力との差分を計算する減算器と、前記差分に基づいて操作量を計算する補償器と、加算器とを更に備え、
前記差分が前記使用されるニューラルネットワークに供給され、前記使用されるニューラルネットワークの出力と前記操作量とが前記加算器によって加算され前記制御信号が生成される、
ことを特徴とする請求項8乃至11のいずれか1項に記載のリソグラフィー装置。
【請求項13】
請求項8乃至12のいずれか1項に記載のリソグラフィー装置によって基板に原版のパターンを転写する転写工程と、
前記転写工程を経た前記基板を処理する処理工程と、を含み、
前記処理工程を経た前記基板から物品を得ることを特徴とする物品製造方法。
【請求項14】
原版のパターンを基板に転写する処理を行うリソグラフィー装置に含まれる制御対象を制御する制御方法であって、
複数のニューラルネットワークのうち前記制御対象を制御するための制御信号を生成するために使用されるニューラルネットワークを選択する選択工程と、
前記選択工程で選択された前記ニューラルネットワークにより生成された制御信号を用いて前記制御対象を制御する制御工程と、を有し、
前記選択工程は、前記基板と前記原版との位置合わせのための計測シーケンスのための計測制御パターンの実行において使用するために前記複数のニューラルネットワークのうちの第1ニューラルネットワークを選択し、前記原版のパターンが前記基板に転写されるように前記基板を露光する露光シーケンスのための露光制御パターンの実行において使用するために前記複数のニューラルネットワークのうちの、前記第1ニューラルネットワークとは異なる第2ニューラルネットワークを選択する、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項15】
原版のパターンを基板に転写する処理を行うリソグラフィー装置に含まれる制御対象を制御する制御方法であって、
複数のニューラルネットワークのうち前記制御対象を制御するための制御信号を生成するために使用されるニューラルネットワークを選択する選択工程と、
前記選択工程で選択された前記ニューラルネットワークにより生成された制御信号を用いて前記制御対象を制御する制御工程と、を有し、
前記制御対象の加速度プロファイルは、複数の時間区間を含み、前記複数の時間区間は、加速度が正の範囲で増加するジャーク区間、前記加速度が正の一定値を維持する等加速度区間、前記加速度が正の範囲で低下するジャーク区間、前記加速度がゼロを維持する等速度区間、前記加速度が負の範囲で前記加速度の絶対値が増加するジャーク区間、前記加速度が負の一定値を維持する等加速度区間、前記加速度が負の範囲で前記加速度の絶対値が減少するジャーク区間を含み、
前記選択工程は、前記複数の時間区間のうち現在の時間区間に応じて前記複数のニューラルネットワークから前記使用されるニューラルネットワークを選択する、
ことを特徴とする制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、リソグラフィー装置、制御方法および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
制御対象の物理量を制御する制御装置では、PID制御のような古典制御器、現代制御理論に基づく制御器、ニューラルネットワークを使った制御器が使われうる。また、ニューラルネットワークを含まない制御器と、ニューラルネットワークを含む制御器とを併用した制御器が用いられることもある。特許文献1の制御装置では、PID制御器とニューラルネットワークを用いた制御器とを併用することで、制御精度の向上が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-71405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のニューラルネットワークを用いた制御装置では、演算処理に長時間を要するために、制御のための演算が所定時間内に終わらず、制御のリアルタイム性が損なわれる可能性がある。
【0005】
本発明は、制御のための演算に要する時間を短縮するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの側面は、原版のパターンを基板に転写する処理を行うリソグラフィー装置に含まれる制御対象を制御するための制御信号を生成する制御装置に係り、前記制御装置は、複数のニューラルネットワークと、前記複数のニューラルネットワークのうち前記制御信号を生成するために使用されるニューラルネットワークを選択する選択器と、を備え、前記選択器は、前記基板と前記原版との位置合わせのための計測シーケンスのための計測制御パターンの実行において使用するために前記複数のニューラルネットワークのうちの第1ニューラルネットワークを選択し、前記原版のパターンが前記基板に転写されるように前記基板を露光する露光シーケンスのための露光制御パターンの実行において使用するために前記複数のニューラルネットワークのうちの、前記第1ニューラルネットワークとは異なる第2ニューラルネットワークを選択する
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、制御のための演算に要する時間を短縮するために有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態の処理システムの構成を示す図。
図2】処理装置の構成例を示す図。
図3】処理装置の1つの構成例を示すブロック線図。
図4】処理装置の他の構成例を示すブロック線図。
図5】処理システムにおける学習シーケンスを例示する図。
図6】ステージの速度プロファイルおよび加速度プロファイルを例示する図。
図7】処理システムを走査露光装置(リソグラフィー装置)に適用した例を示す図。
図8】走査露光装置の露光シーケンスを例示する図。
図9】温度制御器の構成例を示す図。
図10】温度制御器の1つの構成例を示すブロック線図。
図11】温度制御器の他の構成例を示すブロック線図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
図1には、一実施形態の処理システムPSの構成が示されている。処理システムPSは、例えば、処理装置1と、処理装置1を制御する制御サーバ(上位装置)2と、処理装置1に含まれるニューラルネットワークのパラメータ値を決定する学習を実行する学習サーバ(学習装置)3とを備えうる。処理装置1は、例えば、製造装置、検査装置、監視装置等のように、処理対象物に対する処理を実行する装置である。処理の概念には、処理対象物を加工すること、検査すること、監視すること、観察することなどが含まれうる。
【0011】
処理装置1は、制御対象を含み、強化学習によってパラメータ値が決定されるニューラルネットワークを使って該制御対象を制御しうる。制御サーバ2は、処理装置1に制御指令(例えば、駆動指令)を送り、処理装置1から制御結果(例えば、駆動結果)を受け取るように構成されうる。制御サーバ2および学習サーバ3は、例えば、プログラムが組み込まれた汎用コンピュータ、又は、これらの全部または一部の組み合わせによって構成されうる。
【0012】
学習サーバ3は、処理装置1に組み込まれたニューラルネットワークの複数のパラメータ値を決定する強化学習を行いうる。具体的には、学習サーバ3は、制御サーバ2を介して、処理装置1に制御指令を送り、処理装置1から制御結果を受け取りうる。そして、学習サーバ3は、該制御結果に基づいて報酬を計算し、該報酬に基づいて該ニューラルネットワークの該複数のパラメータ値を更新しうる。
【0013】
制御サーバ2の全部または一部の機能は、学習サーバ3に組み込まれてもよい。制御サーバ2の全部または一部の機能は、処理装置1に組み込まれてもよい。処理装置1、制御サーバ2および学習サーバ3は、物理的に一体化されて構成されてもよいし、物理的に別体をなすように構成されてもよい。処理装置1は、その全体が制御サーバ2によって制御されてもよいし、制御サーバ2によって制御される構成要素の他に、制御サーバ2によって制御されない構成要素を含んでもよい。ニューラルネットワークのパラメータ値の更新に関わる演算コストが高い場合、制御サーバ2と学習サーバ3とを分離することが有利であるかもしれない。複数の制御対象が存在する場合には、1つの制御サーバ2と、複数の学習サーバ3とが設けられてもよい。
【0014】
図2には、処理装置1の構成が例示されている。処理装置1は、制御対象であるステージ(保持部)STを含むステージ機構5と、ステージSTの位置あるいは状態を検出するセンサ6と、ステージ機構5を駆動するドライバ7と、ドライバ7に指令値を与え、センサ6からの出力を受け取る制御装置8とを含みうる。ステージSTは、位置決め対象物を保持しうる。ステージSTは、不図示のガイドによってガイドされうる。ステージ機構5は、ステージSTを移動させるアクチュエータACを含みうる。ドライバ7は、アクチュエータACを駆動する。より具体的には、ドライバ7は、例えば、制御装置8から与えられる指令値に応じた電流(電気的エネルギー)をアクチュエータACに供給しうる。アクチュエータACは、ドライバ7から供給される電流に応じた力(機械的エネルギー)でステージSTを移動させうる。制御装置8は、強化学習によってパラメータ値が決定されるニューラルネットワークを使って制御対象であるステージSTの位置あるいは状態を制御しうる。
【0015】
図3には、図2に例示された処理装置1の1つの構成例を示すブロック線図が示されている。処理装置1は、ステージ機構5と、ステージSTの位置あるいは状態を検出するセンサ6と、ステージ機構5を駆動するドライバ7と、制御偏差に基づいてドライバ7に操作量(制御信号)を与え、センサ6からの出力を受け取る制御装置8とを含みうる。制御装置8は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Arrayの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)、又は、プログラムが組み込まれた汎用コンピュータ、又は、これらの全部または一部の組み合わせによって構成される。
【0016】
制御装置8は、制御対象であるステージ機構5(ステージST)を制御するための制御信号を生成する。制御装置8は、複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cと、複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cのうち制御信号を生成するために使用されるニューラルネットワークを選択する選択器87と、を備えうる。選択器87は、選択情報に基づいて、複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cのうち制御信号を生成するために使用されるニューラルネットワークを選択しうる。選択されたニューラルネットワークは、補償器として機能し、入力された情報(制御偏差)に基づいて操作量を生成しうる。選択情報は、制御装置8において生成されてもよいし、他の装置(例えば、上位装置)から提供されてよい。ここで、複数の制御パターンから選択される制御パターンに応じて、複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cのうち使用されるニューラルネットワークが選択されるように、選択情報が生成されうる。複数の制御パターンは、相互に区別可能な制御パターンでありうる。制御パターンは、例えば、目標値列(目標値の時系列データ)を含みうる。
【0017】
制御装置8は、目標値(例えば、目標位置)とステージ機構5(ステージST)の状態(例えば、位置)を示す状態信号との差分(すなわち、制御偏差)を計算する減算器86を備えうる。選択器87は、デマルチプレクサ87aおよびマルチプレクサ87bを含みうる。デマルチプレクサ87aは、複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cのうち選択情報によって指定されるニューラルネットワークに対して制御偏差を供給しうる。マルチプレクサ87bは、複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cのうち選択情報によって指定されるニューラルネットワークによって生成された信号を出力しうる。なお、図3では、3つのニューラルネットワーク85a、85b、85cが例示されているが、ニューラルネットワークの個数は任意である。複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cのそれぞれの層数およびニューロン数は任意である。複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cのパラメータ値は、強化学習によって決定されうる。
【0018】
複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cの各々は、制御対象を制御する制御パターンのうち対応する1つの制御パターンの実行において使用されるように選択器87によって選択されうる。あるいは、複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cの各々は、制御対象を制御する複数の制御パターンの少なくとも1つの制御パターンの少なくとも一部の実行において使用されるように選択器87によって選択されうる。
【0019】
図4には、図2に例示された処理装置1の他の構成例を示すブロック線図が示されている。図4に示された構成例は、図3に示された構成例に対して主補償器81および加算器82が追加された構成を有する。主補償器81は、例えば、P要素(比例要素)、I要素(積分要素)、D要素(微分要素)を含む補償器(例えば、PID補償器)でありうるが、これに限定されるものではない。減算器86は、目標値(例えば、目標位置)とステージ機構5(ステージST)の状態(例えば、位置)を示す状態信号との差分を計算し、その差分を選択器87によって選択されたニューラルネットワークに供給するとともに主補償器81に供給する。加算器82は、主補償器81によって生成された第1操作量と、選択器87によって選択されたニューラルネットワークによって生成された第2操作量とを加算し、制御信号を生成しうる。該制御信号は、ドライバ7に供給されうる。
【0020】
図5には、処理システムPSにおける学習シーケンスが例示されている。この学習シーケンスは、学習サーバ3によって制御される。工程S501では、学習サーバ3は、複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cの学習のために使用される複数の制御パターンのうちの1つの制御パターンを選択する。工程S502~S505は、繰り返して実行されるループであり、このループにおいて最初に実行される工程S502では、学習サーバ3は、学習を実行する対象のニューラルネットワークのパラメータ値を初期化する。また、このループにおいて2回目以降に実行される工程S502では、学習サーバ3は、ニューラルネットワークのパラメータ値を変更する。ニューラルネットワークのパラメータ値の初期化および変更は、学習サーバ3が制御サーバ2を介して処理装置1にパラメータ値を送ることによってなされうる。
【0021】
工程S503では、学習サーバ3は、制御サーバ2を介して、処理装置1に制御パターンおよび制御指令を送り、処理装置1を動作させる。具体的には、学習サーバ3は、制御パターンを含む制御情報を制御サーバ2に送り、制御サーバ2は、該制御パターンを含む制御指令を処理装置1に送りうる。処理装置1は、該制御パターンに従って制御対象であるステージ(保持部)STを含むステージ機構5を動作させうる。処理装置1は、この動作を監視し、制御結果を保存しうる。該制御結果は、ステージ機構5の動作において発生するデータであり、例えば、減算器86によって計算される制御偏差を示すデータを含みうる。この制御結果は、制御サーバ2を介して処理装置1から学習サーバ3に送られうる。
【0022】
工程S505では、学習サーバ3は、処理装置1から送られてきた制御結果に基づいて、所定の計算式に従って報酬を計算しうる。該計算式は、例えば、評価期間における制御偏差が小さいほど、報酬の値が大きくなるように設定されうる。工程S505では、学習サーバ3は、学習を終了するかどうかを判断し、終了する場合には工程S507に進み、終了しない場合には工程S503に戻る。学習を終了するかどうかは、例えば、学習回数(S502~S505を実行した回数)が規定値に達したかどうかで判断することができる。この場合、学習回数が規定値に達した場合には学習を終了し、そうでなければ学習が続行されうる。工程S503に戻る場合、工程S503では、報酬が大きくなるように所定のアルゴリズムに従ってニューラルネットワークのパラメータ値を変更しうる。
【0023】
工程S507では、学習サーバ3は、工程S502~S505の繰り返しにおいて計算された報酬のうち最大の報酬が得られたときのパラメータ値を学習済のパラメータ値として決定し、学習の実行対象のニューラルネットワークのパラメータ値として保存する。これは、例えば、学習を実行する対象のニューラルネットワークがニューラルネットワーク85aであれば、ニューラルネットワーク85aのパラメータ値が設定されることを意味する。
【0024】
工程S508では、学習サーバ3は、次の制御パターン(次に学習を行うべきニューラルネットワーク)があるかどうかを判断し、次の制御パターンがある場合には、工程S501に戻る。この場合、当該次の制御パターンについて、工程S501~S507が実行される。
【0025】
ニューラルネットワークを用いた制御装置における演算に要する時間は、ニューラルネットワークの規模(層数およびニューロン数)に依存する。制御装置8は、ドライバ7に対して所定時間間隔で指令値(例えば、電流指令値)を提供する必要があり、ニューラルネットワークの規模が大きいと所定時間で指令値の演算が終わらない可能性がある。そこで、本実施形態では、複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cの各々を小規模ニューラルネットワークで構成し、選択情報に基づいて複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cから使用すべきニューラルネットワークが選択される。制御装置8が単一のニューラルネットワークしか有しない場合、その単一のニューラルネットワークであらゆる制御パターンに対応する必要があるので、その規模が大きくなり、また、学習に長時間を要しうる。一方、複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cから制御パターンに応じたニューラルネットワークを選択して使用する場合、各ニューラルネットワークを小規模にすることができる。これにり、各ニューラルネットワークによる演算時間を短縮することができ、また、学習に要する時間を短縮することができる。
【0026】
図6には、ステージSTの速度プロファイルおよび加速度プロファイルが例示されている。速度プロファイルは、位置プロファイル(目標位置の時系列データ)を微分したものであり、加速度プロファイルは、位置プロファイルを2回微分したものである。位置プロファイル、速度プロファイルおよび加速度プロファイルは、駆動プロファイルあるいは制御プロファイルとしても理解されうる。
【0027】
の例では、駆動プロファイルは、複数の時間区間、具体的には、区間501~区間508を含む。区間501は、制御対象が等加速度に達するまで、制御対象の加速度が正の範囲で増加するジャーク区間である。区間502は、制御対象の加速度が正の一定値(等加速度)を維持する等加速度区間である。区間503は、制御対象が等速度に達するまで、制御対象の加速度が正の範囲で低下するジャーク区間である。区間504は、制御対象が等速度で移動、即ち制御対象の加速度がゼロを維持する等速度区間である。区間505は、制御対象が負の等加速度に達するまで、制御対象の加速度が負の範囲で該加速度の絶対値が増加するジャーク区間である。区間506は、制御対象の加速度が負の一定値(等加速度)を維持する等加速度区間である。区間507は、制御対象が停止するまで、制御対象の加速度が負の範囲で該加速度の絶対値が減少するジャーク区間である。区間508は、制御対象が停止している静止区間である。選択器87は、複数の時間区間のうち現在の時間区間に応じて複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cから制御に使用されるニューラルネットワークを選択しうる。該現在の時間区間を示す情報は、例えば、選択情報として選択器87に与えられうる。
【0028】
一例において、区間501の開始から区間502の終了までを第1制御パターン、区間503開始から区間505の終了までを第2制御パターン、区間506の開始から区間508の終了までを第3制御パターンとして定義することができる。この例では、第1制御パターン、第2制御パターン、第3制御パターンに対してそれぞれニューラルネットワーク85a、85b、85cが割り当てられうる。他の例において、上記のように加速度で分類された複数の時間区間の少なくとも1つを含む期間に対してオフセットを加算することによって制御パターンが定義されてもよい。例えば、区間501の開始から区間502の終了時の10msec後までを第1制御パターン、区間502の終了時の10msec後から区間508の終了までを第2制御パターンとして定義することができる。
【0029】
複数の制御パターンが重複する期間を含まない場合、学習サーバ3は、複数の制御パターンにそれぞれ対応する複数のニューラルネットワークの学習を並行して実施してもよい。
【0030】
以下、図7を参照しながら上記の処理システムPSを走査露光装置500に適用した例を説明する。走査露光装置500は、スリット部材によって整形されたスリット光により基板14を走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の露光装置である。走査露光装置500は、照明光学系23、原版ステージ機構12、投影光学系13、基板ステージ機構15、第1位置計測部17、第2位置計測部18、基板マーク計測部21、基板搬送部22、温度制御器25、ドライバRD、SDおよび制御部24を含みうる。
【0031】
制御部24は、照明光学系23、原版ステージ機構12、投影光学系13、基板ステージ機構15、第1位置計測部17、第2位置計測部18、基板マーク計測部21、基板搬送部22、温度制御器25を制御しうる。制御部24は、原版11のパターンを基板14に転写する処理を制御する。照明光学系23、原版ステージ機構12、投影光学系13、基板ステージ機構15、基板搬送部22、および/または、温度制御器25は、原版11のパターンを基板14に転写する処理のために動作する動作部である。制御部24は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Arrayの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)、又は、プログラムが組み込まれた汎用コンピュータ、又は、これらの全部または一部の組み合わせによって構成される。制御部24は、図2図3に記載された処理装置1における制御装置8に相当しうる。ドライバRD、SDは、図2図3に記載された処理装置1におけるドライバ7に相当しうる。
【0032】
原版ステージ機構12および基板ステージ機構15は、基板14に原版11のパターンが転写されるように原版11および基板14を走査する走査機構を構成しうる。原版ステージ機構12は、原版11を保持する原版ステージRSTと、原版ステージRSTを駆動する第1アクチュエータRACとを含みうる。第1アクチュエータRACは、第1ドライバRDによって駆動される。基板ステージ機構15は、基板14を保持する基板ステージWSTと、基板ステージWSTを駆動する第2アクチュエータWACとを含みうる。第2アクチュエータWACは、第2ドライバSDによって駆動される。照明光学系23は、原版11を照明する。照明光学系23は、マスクキングブレードなどの遮光部材により、光源(不図示)から射出された光を、例えばX方向に長い帯状または円弧状の形状を有するスリット光に整形し、そのスリット光で原版11の一部を照明する。原版11および基板14は、原版ステージRSTおよび基板ステージWSTによってそれぞれ保持されており、投影光学系13を介して光学的にほぼ共役な位置(投影光学系13の物体面および像面)にそれぞれ配置される。
【0033】
投影光学系13は、所定の投影倍率(例えば、1倍、1/2倍又は1/4倍)を有し、原版11のパターンをスリット光により基板14上に投影する。原版11のパターンが投影された基板14上の領域(スリット光が照射される領域)は、照射領域と呼ばれうる。原版ステージRSTおよび基板ステージWSTは、投影光学系13の光軸方向(Z方向)に直交する方向(Y方向)に移動可能に構成されている。原版ステージRSTおよび基板ステージWSTは、互いに同期しながら、投影光学系13の投影倍率に応じた速度比で相対的に走査される。これにより、照射領域に対して基板14がY方向に走査され、原版11に形成されたパターンが基板14のショット領域に転写される。そして、このような走査露光を、基板ステージWSTを移動させながら、基板14の複数のショット領域の各々について順次に行うことにより、1枚の基板14における露光処理が完了する。
【0034】
第1位置計測部17は、例えばレーザ干渉計を含み、原版ステージRSTの位置を計測する。レーザ干渉計は、例えば、レーザ光を原版ステージRSTに設けられた反射板(不図示)に向けて照射し、反射板で反射されたレーザ光と基準面で反射されたレーザ光との干渉によって原版ステージRSTの変位(基準位置からの変位)を検出する。第1位置計測部17は、当該変位に基づいて原版ステージRSTの現在位置を取得することができる。ここで、第1位置計測部17は、レーザ干渉計以外に位置計測器、例えば、エンコーダによって原版ステージRSTの位置を計測してもよい。
【0035】
第2位置計測部18は、例えばレーザ干渉計を含み、基板ステージWSTの位置を計測する。レーザ干渉計は、例えば、レーザ光を基板ステージWSTに設けられた反射板(不図示)に向けて照射し、反射板で反射されたレーザ光と基準面で反射されたレーザ光との干渉によって基板ステージWSTの変位(基準位置からの変位)を検出する。第2位置計測部18は、当該変位に基づいて基板ステージWSTの現在位置を取得することができる。ここで、第2位置計測部18は、レーザ干渉計以外に位置計測器、例えば、エンコーダによって基板ステージWSTの位置を計測してもよい。
【0036】
基板マーク計測部21は、例えば、光学系および撮像素子を含み、基板14に設けられたマークの位置を検出しうる。基板搬送部22は、基板14を基板ステージWSTに供給したり、基板ステージWSTから回収したりする。温度制御器25は、走査露光装置500の不図示のチャンバの中の温度および湿度を一定に保つ。
【0037】
図8には、走査露光装置500の露光シーケンスが例示されている。工程S701(基板ロードシーケンス)では、制御部24は、基板14を基板ステージWSTにロード(搬送)するように基板搬送部22を制御する。具体的には、工程S702(計測シーケンス)では、制御部24は、基板14と原版11との位置合わせのための計測を実行する。具体的には、工程S702では、制御部24は、基板14のマークが基板マーク計測部21の視野に入るように基板ステージ機構15を制御し、基板14のマークの位置が検出されるように基板マーク計測部21を制御しうる。このような動作は、基板14の複数のマークのそれぞれについて実行されうる。工程S703(露光シーケンス)では、制御部24は、基板14の複数のショット領域のそれぞれに対して原版11のパターンが転写されるように基板ステージ機構15、原版ステージ機構12、照明光学系23等を制御する。工程S704(基板アンロードシーケンス)では、制御部24は、基板ステージWST上の基板14をアンロード(搬送)するように基板搬送部22を制御する。
【0038】
ここで、処理システムPSを走査露光装置500における基板ステージ機構15の制御に適用した例を説明する。図2における制御装置8、ドライバ7、センサ6、アクチュエータACは、それぞれ、制御部24、ドライバSD、第2位置計測部18、アクチュエータWACに対応する。制御部24は、図3又は図4に例示される制御装置8のように、複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cを有しうる。制御部24は、制御パターンに応じて複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cから選択されるニューラルネットワークを使用して基板ステージ機構15の基板ステージWSTを制御しうる。
【0039】
複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cから制御に使用されるニューラルネットワークを選択するために使用される複数の制御パターンの各々は、図6を参照して例示的に説明したように、複数の時間区間に基づいて定義されうる。このように、複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cの各々は、複数の時間区間に基づいて定義される制御パターンの実行において選択されうる。
【0040】
複数の制御パターンは、工程S701のための制御パターン、工程S702のための制御パターン、工程S703のための制御パターン、工程S704のための制御パターンを含んでもよい。工程S701のための制御パターンは、ロード制御パターンと呼ばれうる。工程S702のための制御パターンは、計測制御パターンと呼ばれうる。工程S703のための制御パターンは、露光制御パターンと呼ばれうる。工程S704のための制御パターンは、アンロード制御パターンと呼ばれうる。例えば、工程S701をニューラルネットワーク85aで制御し、工程S702をニューラルネットワーク85bで制御し、工程S703をニューラルネットワーク85cで制御することができる。
【0041】
あるいは、1つのシーケンスの全部または一部の期間における制御を1つの制御パターンとし、これに1つのニューラルネットワークを割り当ててもよい。例えば、ニューラルネットワーク85aを計測シーケンスにおける区間506から区間508に適用することができる。また、ニューラルネットワーク85bを露光シーケンスにおける区間502と区間504とに適用することができる。
【0042】
計測シーケンスでは、基板ステージWSTの停止直後における制御偏差を低減する必要がある。これは、図の区間508(停止区間)において基板14のマークの位置を基板マーク計測部21で計測するためである。そこで、計測シーケンスにおいて1つのニューラルネットワークを使用する区間として、減速中の区間506の開始から区間508の終了までの区間を割り当てることができる。ここで、区間505で励起される振動成分は区間506で励起される振動成分よりも小さい。よって、計測シーケンスにおいて1つのニューラルネットワークを使用する区間の開始を区間506の開始とすることが効果的である。
【0043】
一方、露光シーケンスでは、基板ステージWSTの等速中の偏差を低減する必要がある。これは、図6の等速中の区間504(等速区間)おいて基板14を露光するためである。そこで、露光シーケンスにおいて1つのニューラルネットワークを使用する区間として、加速中の区間502の開始から区間504の終了までの区間を割り当てることができる。ここで、区間501で励起される振動成分は区間502で励起される振動成分よりも小さい。よって、露光シーケンスにおいて1つのニューラルネットワークを使用する区間の開始を区間502の開始とすることが効果的である。
【0044】
このように、基板ステージWSTの制御偏差を低減したい複数の区間にそれぞれ対応する複数の小規模のニューラルネットワークを設けて、それらを切り替えながら使用することで、学習時間および演算時間の短縮といった効果が得られる。
【0045】
次に、処理システムPSを走査露光装置500における原版ステージ機構12の制御に適用した例を説明する。図2における制御装置8、ドライバ7、センサ6、アクチュエータACは、それぞれ、制御部24、ドライバRD、第1位置計測部17、アクチュエータRACに対応する。制御部24は、図3又は図4に例示される制御装置8のように、複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cを有しうる。制御部24は、制御パターンに応じて複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cから選択されるニューラルネットワークを使用して原版ステージ機構12の原版ステージRSTを制御しうる。
【0046】
複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cから使用するニューラルネットワークを選択するために使用される複数の制御パターンの各々は、図6を参照して例示的に説明したように、複数の時間区間に基づいて定義されうる。あるいは、該複数の制御パターンは、原版11をロードする工程のための制御パターン、原版11をアンロードする工程のための制御パターン、工程S703のための制御パターンを含んでもよい。あるいは、1つのシーケンスの全部または一部の期間における制御を1つの制御パターンとし、これに1つのニューラルネットワークを割り当ててもよい。
【0047】
次に、処理システムPSを走査露光装置500における基板搬送部22の制御に適用した例を説明する。図2における制御装置8、ドライバ7、センサ6、ステージ機構5は、それぞれ、制御部24、不図示のドライバ、基板搬送部22に対応する。制御部24は、図3又は図4に例示される制御装置8のように、複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cを有しうる。制御部24は、制御パターンに応じて複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cから選択されるニューラルネットワークを使用して基板搬送部22を制御しうる。
【0048】
制御装置8を基板搬送部22の制御に適用することで、基板搬送部22の駆動中の制御偏差を抑制することができ、基板ステージWSTに供給される基板14の位置の再現性を向上させることができる。また、加速度および速度を上げつつ、制御偏差を抑制することで、スループットを向上させることもできる。
【0049】
図6を参照して例示的に説明された複数の時間区間に基づく制御は、基板搬送部22の制御に適用されてもよい。即ち、複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cから制御に使用すべきニューラルネットワークを選択するために使用される複数の制御パターンの各々は、複数の時間区間に基づいて定義されうる。換言すると、複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cの各々は、複数の時間区間に基づいて定義される制御パターンの実行において選択されうる。
【0050】
基板搬送部22も、基板ステージ機構15と同様に、の制御偏差を低減したい複数の区間にそれぞれ対応する複数の小規模のニューラルネットワークを設けて、それらを切り替えながら使用することで、学習時間および演算時間の短縮といった効果が得られる。
【0051】
次に、図1の処理システムPSを走査露光装置500における温度制御器25に適用した例を説明する。図9には、温度制御器25の構成例が示されている。温度制御器25は、温度制御部(制御装置)26と、制御対象の温度を調整する温度調整器27と、制御対象の温度を測定する温度センサ28を備えうる。温度制御部26は、温度調整器27に対して、所定の時間間隔で指令値を送る。温度調整器27は、不図示のヒータおよび/または冷却器によって、走査露光装置500のチャンバの中の温度を調整する。走査露光装置500のチャンバの中の温度は、温度センサ28で測定され、その測定結果が温度制御部26に送られる。
【0052】
図10には、図9に例示された温度制御器25の1つの構成例を示すブロック線図が示されている。温度制御器25は、制御対象であるチャンバ内の温度を調整する温度調整器27と、チャンバ内の所定箇所の温度を測定する温度センサ28と、制御偏差に基づいて温度調整器27に操作量を与え、温度センサ28の出力を受け取る温度制御部26とを備えうる。温度制御部26は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Arrayの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)、又は、プログラムが組み込まれた汎用コンピュータ、又は、これらの全部または一部の組み合わせによって構成される。
【0053】
温度制御部26は、温度調整器27を制御するための制御信号を生成する。温度制御部26は、複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cと、複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cのうち制御信号を生成するために使用されるニューラルネットワークを選択する選択器87と、を備えうる。選択器87は、選択情報に基づいて、複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cのうち制御信号を生成するために使用されるニューラルネットワークを選択しうる。選択されたニューラルネットワークは、補償器として機能し、入力された情報(制御偏差)に基づいて操作量を生成しうる。選択情報は、温度制御部26において生成されてもよいし、他の装置(例えば、制御部24)から提供されてよい。ここで、複数の制御パターンから選択される制御パターンに応じて、数のニューラルネットワーク85a、85b、85cのうち使用されるニューラルネットワークが選択されるように選択情報が生成されうる。複数の制御パターンは、相互に区別可能な制御パターンでありうる。制御パターンは、例えば、目標値列(目標温度の時系列データ)でありうる。
【0054】
温度制御部26は、目標値(目標温度)と温度センサ28の出力(測定温度)との差分(すなわち、制御偏差)を計算する減算器86を備えうる。選択器87は、デマルチプレクサ87aおよびマルチプレクサ87bを含みうる。デマルチプレクサ87aは、複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cのうち選択情報によって指定されるニューラルネットワークに対して制御偏差を供給しうる。マルチプレクサ87bは、複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cのうち選択情報によって指定されるニューラルネットワークによって生成された信号を出力しうる。なお、図10では、3つのニューラルネットワーク85a、85b、85cが例示されているが、ニューラルネットワークの個数は任意である。複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cのそれぞれの層数およびニューロン数は任意である。複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cのパラメータ値は、強化学習によって決定されうる。
【0055】
複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cの各々は、制御対象を制御する制御パターンのうち対応する1つの制御パターンの実行において使用されるように選択器87によって選択されうる。あるいは、複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cの各々は、制御対象を制御する複数の制御パターンの少なくとも1つの制御パターンの少なくとも一部において使用されるように選択器87によって選択されうる。
【0056】
図11には、図9に例示された温度制御器25の他の構成例を示すブロック線図が示されている。図11に示された構成例は、図10に示された構成例に対して主補償器81および加算器82が追加された構成を有する。主補償器81は、例えば、P要素(比例要素)、I要素(積分要素)、D要素(微分要素)を含む補償器(例えば、PID補償器)でありうるが、これに限定されるものではない。減算器86は、目標値(目標温度)と温度センサ28の出力温度(測定温度)との差分を計算し、その差分を選択器87によって選択されたニューラルネットワークに供給するとともに主補償器81に供給する。加算器82は、主補償器81によって生成された第1操作量と、選択器87によって選択されたニューラルネットワークによって生成された第2操作量とを加算し、制御信号を生成しうる。該制御信号は、温度調整器27に供給されうる。
【0057】
走査露光装置500のチャンバ内の温度は、例えば、原版ステージ機構12および基板ステージ機構15の発熱によって変化しうる。基板の露光シーケンスが始まると、原版ステージ機構12および基板ステージ機構15のアクチュエータに電流が流れることで、原版ステージ機構12および基板ステージ機構15が発熱する。露光シーケンスの開始直後は、チャンバ内の空間の温度変化が大きく、基板の露光シーケンスを続けることで温度変化が緩やかになっていく。すなわち、温度変化と基板の処理枚数との間に相関がある。
【0058】
そこで、選択情報を基板の処理枚数に応じて変更し、これによって複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cのうち温度制御に使用されるニューラルネットワークを切り替えてもよい。例えば、温度変化が激しい1枚目の基板から10枚目の基板までの処理時間における温度をニューラルネットワークの30aで制御することができる。その後、11枚目の基板から50枚目の基板までの処理時間における温度をニューラルネットワークの30aで制御し、51枚目以降の基板の処理時間における温度をニューラルネットワークの30cで制御することができる。
【0059】
あるいは、露光レシピ(例えば、ショット領域サイズ)によって原版ステージ機構12および基板ステージ機構15の駆動量が異なり、発熱量が異なりうる。そこで、選択情報を露光レシピに応じて変更し、これによって複数のニューラルネットワーク85a、85b、85cのうち温度制御に使用されるニューラルネットワークを切り替えてもよい。
【0060】
以上では、走査露光装置500に製造システムMSを適用した例を説明したが、製造システムMSは、他のタイプの露光装置(例えば、ステッパ)に適用されてもよいし、インプリント装置等の他のタイプのリソグラフィー装置に適用されてもよい。ここで、リソグラフィー装置は、基板にパターンを形成するための装置であり、その概念には、露光装置、インプリント装置、電子線描画装置等が含まれうる。
【0061】
以下、上記のようなリソグラフィー装置を使って物品(例えば、半導体IC素子、液晶表示素子、MEMS等))を製造する物品製造方法を説明する。該物品製造方法は、リソグラフィー装置によって基板に原版のパターンを転写する転写工程と、該転写工程を経た該基板を処理する処理工程と、を含み、該処理工程を経た該基板から物品を得る方法でありうる。
【0062】
リソグラフィー装置が露光装置である場合、物品製造方法は、感光剤が塗布された基板(基板、ガラス基板等)を露光する工程と、その基板(感光剤)を現像する工程と、その現像された基板を他の周知の工程で処理する工程とを含みうる。他の周知の工程には、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等が含まれる。本物品製造方法によれば、従来よりも高品位の物品を製造することができる。リソグラフィー装置がインプリント装置である場合、物品製造方法は、基板の上のインプリント材を型を使って成形することによって、インプリント材の硬化物からなるパターンを形成する工程と、該パターンを使って該基板を処理する工程とを含みうる。
【0063】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0064】
8:制御装置、81:主補償器、82:加算器、85a、85b、85c:ニューラルネットワーク、86:減算器、87:選択器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11