(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】搬送ロボット及び搬送システム
(51)【国際特許分類】
B65G 1/04 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
B65G1/04 555A
(21)【出願番号】P 2020147678
(22)【出願日】2020-09-02
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】591186176
【氏名又は名称】株式会社 ゼンショーホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】葛山 貴生
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0062051(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0267452(US,A1)
【文献】実開平06-042810(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第114476446(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108706265(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/00-1/20
B65G 35/00
B25J 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ロボットの走行経路に沿って延在する一対のレールが上下に複数並べられた構造物において、前記レールに沿って走行可能である走行モードと、上下に複数並べられたそれぞれの前記レール間を昇降可能である昇降モードとを含む動作を実行可能な搬送ロボットであって、
本体と、
前記本体に設けられ、前記レールが延在する方向に沿った回転軸周りに回動可能である複数の回転体とを備え、
前記複数の回転体は、
前記本体よりも前記搬送ロボットの走行方向の一方の片側である第1側において前記レールの一方に当接可能である少なくとも一つのアームを有する第1回転体と、
前記本体よりも前記搬送ロボットの走行方向の他方の片側である第2側において前記レールの他方に当接可能である少なくとも一つのアームを有する第2回転体とを備え、
前記昇降モードにおいては、前記第1回転体のアームと前記第2回転体のアームとが、互いに逆向きに回転して一対の前記レール間を昇降する、
搬送ロボット。
【請求項2】
前記第1側のアームとして、少なくとも第1アーム及び第2アームを備え、
前記第2側のアームとして、少なくとも第3アーム及び第4アームを備え、
前記搬送ロボットが昇降するモードにおいて、
前記第1アーム及び前記第2アームのいずれか一方が当該アームの回転中心よりも下側に位置した下段の前記レールに当接可能な状態において、前記第1アーム及び前記第2アームのいずれか他方が当該アームの回転中心よりも上側に位置した上段の前記レールに当接可能であり、かつ、前記第3アーム及び前記第4アームのいずれか一方が当該アームの回転中心よりも下側に位置した下段の前記レールに当接可能な状態において、前記第3アーム及び前記第4アームのいずれか他方が当該アームの回転中心よりも上側に位置した上段の前記レールに当接可能な状態となるように、前記第1アーム及び前記第2アームと、前記第3アーム及び前記第4アームとを、互いに逆向きに回転させることによって前記レール間を昇降する、
請求項1に記載の搬送ロボット。
【請求項3】
一対の車輪を更に備え、
前記搬送ロボットが走行するモードにおいて、前記第1側の前記車輪が前記第1側の前記レールを走行し、前記第2側の前記車輪が前記第2側の前記レールを走行し、
前記搬送ロボットが昇降するモードにおいて、前記第1側の前記車輪を前記第1側の前記レールよりも前記第2側へ退避させ、前記第2側の前記車輪を前記第2側の前記レールよりも前記第1側へ退避させる、
請求項1又は2に記載の搬送ロボット。
【請求項4】
前記一対の車輪の舵角を変更可能な舵角可変機構を更に備え、
前記搬送ロボットが昇降するモードにおいて、前記舵角可変機構により前記一対の車輪の舵角を変更し、前記第1側の前記車輪を前記第1側の前記レールよりも前記第2側へ退避させ、前記第2側の前記車輪を前記第2側の前記レールよりも前記第1側へ退避させる、
請求項3に記載の搬送ロボット。
【請求項5】
一対の前記車輪を少なくとも二組備え、各々の前記車輪の舵角を個別に変更できる、
請求項4に記載の搬送ロボット。
【請求項6】
前記一対の車輪を前記レールの延在する方向と直交する方向に移動させる車輪移動機構を更に備え、
前記搬送ロボットが昇降するモードにおいて、前記車輪移動機構により前記一対の車輪の間隔を変更し、前記第1側の前記車輪を前記第1側の前記レールよりも前記第2側へ退避させ、前記第2側の前記車輪を前記第2側の前記レールよりも前記第1側へ退避させる、
請求項3に記載の搬送ロボット。
【請求項7】
前記搬送ロボットが走行するモードにおいて、前記構造物に当接することにより前記搬送ロボットの前記第1側又は前記第2側への移動を規制する第2被ガイド部を更に備え、
前記第1側への移動を規制する前記第2被ガイド部は、前記第1側の前記車輪に付設されて該車輪よりも更に前記第1側に突出し、
前記第2側への移動を規制する前記第2被ガイド部は、前記第2側の前記車輪に付設されて該車輪よりも更に前記第2側に突出している、
請求項3から6いずれか一項に記載の搬送ロボット。
【請求項8】
前記搬送ロボットが昇降するモードにおいて、前記構造物に当接することにより前記搬送ロボットの前記第1側又は前記第2側への移動を規制する第1被ガイド部を更に備え、
前記第1側への移動を規制する前記第1被ガイド部は、前記第1側のアームの当接部と当該アームの回転中心との間に設けられ、
前記第2側への移動を規制する前記第1被ガイド部は、前記第2側のアームの先端と当該アームの回転中心との間に設けられている、
請求項1から7のいずれか一項に記載の搬送ロボット。
【請求項9】
前記第1被ガイド部は円形状の部材である、
請求項8に記載の搬送ロボット。
【請求項10】
前記第1側のアームの回転中心と、前記第2側の回転中心との距離を変更可能な中心間距離可変機構を更に備えた、
請求項1から9のいずれか一項に記載の搬送ロボット。
【請求項11】
一対のレールが上下に複数並べられた構造物と、
前記構造物において前記レール上を走行可能かつ上下に並べられた複数の前記レール間を昇降可能な搬送ロボットとを備え、
前記搬送ロボットは、
本体と、
前記本体に設けられ、前記レールが延在する方向に沿った回転軸周りに回動可能である、複数の回転体とを備え、
前記複数の回転体は、
前記本体よりも前記搬送ロボットの走行方向の一方の片側である第1側において前記レールの一方に当接可能である少なくとも一つのアームを有する、第1回転体と、
前記本体よりも前記搬送ロボットの走行方向の他方の片側である第2側において前記レールの他方に当接可能である少なくとも一つのアームを有する、第2回転体とを備え、
昇降モードにおいては、前記第1回転体のアームと前記第2回転体のアームとが、互いに逆向きに回転して一対の前記レール間を昇降する、
搬送システム。
【請求項12】
前記構造物は、上段の前記レールと下段の前記レールとの間に設けられた昇降ガイドを更に備え、
前記搬送ロボットは、前記搬送ロボットが昇降するモードにおいて、前記昇降ガイドに当接することにより前記搬送ロボットの前記第1側又は前記第2側への移動を規制する第1被ガイド部を更に備え、
前記第1側への移動を規制する前記第1被ガイド部は、前記第1側のアームの先端と当該アームの回転中心との間に設けられ、
前記第2側への移動を規制する前記第1被ガイド部は、前記第2側のアームの少なくとも一方の先端と当該アームの回転中心との間に設けられている、
請求項11に記載の搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送ロボット及び該搬送ロボットを用いた搬送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
あらかじめ設置された走行路に沿って搬送ロボットが走行して物品をピックアップでき、走行中の走行路だけでなく上段の走行路及び下段の走行路にも搬送ロボットが移動できる搬送システムが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、移動ロボットを備えた自動保管・出庫システムが開示されている。移動ロボットは、水平軌道に沿って水平移動できて、複数の水平軌道に斜めに交差して設置されたランプを通じて他の水平軌道に垂直移動できる。特許文献1の
図39Bや
図41Bが参照されるように、ランプは、移動ロボットのスプロケット歯車に噛合して吊り上げるチェーンを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のような従来構成では、搬送ロボットが昇降できる場所は、走行路の特定の場所に設けられた昇降専用の昇降路に限定されていた。そこで、本発明は、構造物の任意の場所で昇降可能な搬送ロボット及び該ロボットを用いた搬送システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る搬送システムは、一対のレールが上下に複数並べられた構造物と、レール上を走行可能かつ上下に並べられた複数の一対のレール間を昇降可能な搬送ロボットとを備えている。本発明の他の一態様に係る構造物は、搬送ロボットの走行経路に沿って延在する一対のレールが上下に複数並べられた構造物である。また、本発明の他の一態様に係る搬送ロボットは、本体と、本体に設けられ、一対のレールが延在する方向に沿った回転軸周りに回動可能である複数の回転体とを備えている。複数の回転体は、本体よりも搬送ロボットの走行方向の一方の片側である第1側において一対のレールの一方に当接可能である少なくとも一つのアームを有する第1回転体と、本体よりも搬送ロボットの走行方向の他方の片側である第2側において一対のレールの他方に当接可能である少なくとも一つのアームを有する第2回転体とを備える。昇降モードにおいては、第1回転体のアームと第2回転体のアームとが、互いに逆向きに回転して一対のレール間を昇降する。
【0007】
これらの態様によれば、搬送ロボットが、上下に並べられた複数の一対のレール間を上昇する場合、第1回転体と第2回転体とを互いに逆向きに回転させながら、第1側及び第2側の少なくともいずれかのアームの当接部を下側に位置する一対のレールの第1側又は第2側のレールに当接させて自重を支持しつつ、他のアームの当接部を上側に位置する一対のレールの第1側又は第2側のレールに当接させ自重を引き上げることにより複数の一対のレール間を上昇することができる。この際、各アームの回転方向は、少なくとも一つのアームがレールに当接した状態において本体が上昇する方向に回転するように決定される。また、搬送ロボットが、上下に並べられた複数の一対のレール間を下降する場合、第1側のアームと第2側のアームとを互いに逆向きに回転させながら、第1側及び第2側の少なくともいずれかのアームの当接部を上側に位置する一対のレールの第1側・又は第2側のレールに当接させてぶら下がり、他のアームの当接部を下側に位置する一対のレールの第1側又は第2側のレールに近づけて着地することにより、複数の一対のレール間を下降することができる。この際、各アームの回転方向は少なくとも一つのアームがレールに当接した状態において本体が上昇する方向に回転するように決定される。そのため、搬送ロボットは、一対のレールが上下に複数並べられた構造物の任意の場所で昇降できる。
【0008】
上記態様において、第1側のアームとして、少なくとも第1アーム及び第2アームを備え、第2側のアームとして、少なくとも第3アーム及び第4アームを備えてもよい。また、搬送ロボットが昇降するモードにおいて、第1アーム及び第2アームのいずれか一方が当該アームの回転中心よりも下側に位置した下段のレールに当接可能な状態において、第1アーム及び第2アームのいずれか他方が当該アームの回転中心よりも上側に位置した上段のレールに当接可能であり、かつ、第3アーム及び第4アームのいずれか一方が当該アームの回転中心よりも下側に位置した下段のレールに当接可能な状態において、第3アーム及び第4アームのいずれか他方が当該アームの回転中心よりも上側に位置した上段のレールに当接可能な状態となるように、第1アーム及び第2アームと、第3アーム及び第4アームとを、互いに逆向きに回転させることによって一対のレール間を昇降してもよい。
【0009】
この態様によれば、搬送ロボットが、アームの回転中心よりも下段のレールにアームを当接させて自重を支持しつつ、アームの回転中心よりも上段のレールにアームを当接させて自重を引き上げることにより上段のレールに上昇することができる。アームの回転中心よりも上段のレールにアームを当接させてぶら下がり、アームの回転中心よりも下段のレールにアームを近づけて着地することにより、下段のレールに下降することができる。そのため、搬送ロボットは、一対のレールが上下に複数並べられた構造物の任意の場所で昇降できる。
【0010】
上記態様において、一対の車輪を更に備えていてもよい。搬送ロボットが走行するモードにおいて、第1側の車輪が第1側のレールを走行し、第2側の車輪が第2側のレールを走行し、搬送ロボットが昇降するモードにおいて、第1側の車輪を第1側のレールよりも第2側へ退避させ、第2側の車輪を第2側のレールよりも第1側へ退避させてもよい。
【0011】
この態様によれば、第1側の車輪を第1側のレールよりも第2側へ退避させ、第2側の車輪を第2側のレールよりも第1側へ退避させることができるため、搬送ロボットが構造物を垂直移動するとき、車輪とレールとの干渉を防ぐことができる。舵角回転によって車輪を退避させてもよいし、車輪の直線状の動き等により、車輪を退避させてもよい。
【0012】
上記態様において、一対の車輪の舵角を変更可能な舵角可変機構を更に備えていてもよい。搬送ロボットが昇降するモードにおいて、舵角可変機構により一対の車輪の舵角を変更し、第1側の車輪を第1側のレールよりも第2側へ退避させ、第2側の車輪を第2側のレールよりも第1側へ退避させてもよい。
【0013】
この態様によれば、舵角可変機構を用いた舵角回転によって、第1側の車輪を第1側のレールよりも第2側へ退避させ、第2側の車輪を第2側のレールよりも第1側へ退避させることができる。
【0014】
上記態様において、搬送ロボットは、一対の車輪を少なくとも二組備え、各々の車輪の舵角を個別に変更できてもよい。
【0015】
この態様によれば、例えば、前輪を互いに直交させ、後輪を互いに直交させて、本体の対角に位置した車輪を互いに平行にすれば、全ての車輪から等距離になる位置を軸にして、搬送ロボットが独楽のように360度旋回できる。構造物に方向転換のための場所を設ける場合、狭い場所でも搬送ロボットが方向転換できる。
【0016】
上記態様において、一対の車輪をレールの延在する方向と直交する方向に移動させる車輪移動機構を更に備えていてもよい。搬送ロボットが昇降するモードにおいて、車輪移動機構により一対の車輪の間隔を変更し、第1側の車輪を第1側のレールよりも第2側へ退避させ、第2側の車輪を第2側のレールよりも第1側へ退避させてもよい。
【0017】
この態様によれば、車輪移動機構を用いた直線状の動きによって、第1側の車輪を第1側のレールよりも第2側へ退避させ、第2側の車輪を第2側のレールよりも第1側へ退避させることができる。
【0018】
上記態様において、搬送ロボットは、該搬送ロボットが走行するモードにおいて、構造物に当接することにより搬送ロボットの第1側又は第2側への移動を規制する第2被ガイド部を更に備えていてもよい。第1側への移動を規制する第2被ガイド部は、第1側の車輪に付設されて該車輪よりも更に第1側に突出していてもよい。第2側への移動を規制する第2被ガイド部は、第2側の車輪に付設されて該車輪よりも更に第2側に突出していてもよい。
【0019】
この態様によれば、第2被ガイド部を構造物に当接させて第1側又は第2側への移動を規制することで、走行中に搬送ロボットが蛇行、或いは、搬送ロボットの走行経路が第1側又は第2側のいずれかに偏るのを抑制でき、例えば、走行中に搬送ロボットがレールからコースアウトすることを防ぐことができる。高速で走行しても搬送ロボットがコースアウトしにくくなるため、搬送ロボットをより高速で走行させることができる。
【0020】
上記態様において、構造物は、上段のレールと下段のレールとの間に設けられた昇降ガイドを更に備えていてもよい。搬送ロボットは、該搬送ロボットが昇降するモードにおいて、構造物に当接することにより搬送ロボットの第1側又は第2側への移動を規制する第1被ガイド部を更に備えていてもよい。第1被ガイド部は、円形状の部材であってもよい。第1側への移動を規制する第1被ガイド部は、第1側のアームの当接部と当該アームの回転中心との間に設けられ、第2側への移動を規制する第1被ガイド部は、第2側のアームの当接部と当該アームの回転中心との間に設けられていてもよい。
【0021】
この態様によれば、搬送ロボットが構造物を昇降するとき、第1被ガイド部を構造物のガイド部に当接させて両者の位置ずれを防ぐことができる。当該位置ずれを防ぐことで、搬送ロボットの昇降をスムーズに行うことができるとともに、アームがレールに当接できずに搬送ロボットが動けなくなることを防ぐことができる。
【0022】
上記態様において、搬送ロボットは、第1側のアームの回転中心と、第2側のアームの回転中心との距離を変更可能な中心間距離可変機構を更に備えていてもよい。
【0023】
この態様によれば、各々のアームの先端は回転中心の周りを公転する軌跡を描くため、アームとレールとが当接する位置はアームの角度に応じて僅かにずれる。この態様によれば、アームの先端がレールの所定の位置に追従するように回転中心を動かして、アームとレールとの位置ずれを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、一対のレールが上下に複数並べられた構造物の任意の場所で昇降可能な搬送ロボット及び該搬送ロボットを用いた搬送システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の各実施形態に共通する搬送システムの一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1実施形態の搬送ロボットを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、搬送ロボットが昇降する動作を説明する図であって、走行モードの搬送ロボットを示す正面図である。
【
図4】
図4は、
図3に連続する図であって、アームを回転させて浮かせた車輪を退避させた状態を示す正面図である。
【
図5】
図5は、
図4に連続する図であって、上段及び下段のレールのどちらにもアームが当接した状態を示す正面図である。
【
図6】
図6は、
図5に連続する図であって、下段のレールよりも高く車輪を引き上げた状態を示す正面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2実施形態の搬送ロボットの走行モードを示す斜視図である。
【
図8】
図8は、
図7に示された搬送ロボットの昇降モードを示す斜視図である。
【
図9】
図9は、本発明の第3実施形態の搬送ロボットの一例を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、搬送ロボットが昇降する動作を説明する図であって、走行モード等の搬送ロボットの一例を示す正面図である。
【
図11】
図11は、
図10に連続する図であって、アームを回転させて浮かせた車輪を退避させた状態を示す正面図である。
【
図12】
図12は、
図11に連続する図であって、下段のレールを足場にしてアームが車輪を引き上げた状態を示す正面図である。
【
図13】
図13は、
図12に連続する図であって、上段及び下段のレールのどちらにもアームが当接した状態を示す正面図である。
【
図14】
図14は、
図13に連続する図であって、下段のレールよりも高く車輪を引き上げた状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。実施形態の説明の便宜上、重力を基準に「上」「下」を定義し、搬送ロボット2のレール上における進行方向を基準に「前」「後」「左」「右」を定義する。本発明の各実施形態の搬送ロボット2は、該搬送ロボット2の進行方向に対して左右に配置された一対のレールの上を跨って走行できる。
【0027】
各実施形態の搬送ロボット2は、同じレールを走行モードにおける走行路と昇降モードにおける昇降路と双方に兼用できることが特徴の一つである。以下、図面を参照して各実施形態について詳しく説明する。
【0028】
図1は、本発明の各実施形態に共通する搬送システム1の一例を示す斜視図である。
図1に示すように、搬送システム1は、搬送ロボット2の走行経路に沿って延在する一対のレール(101L,101R),…(104L,104R)が上下に複数並べられた構造物100と、構造物100においてレールの上を走行可能かつ昇降可能な搬送ロボット2とを備えている。
【0029】
レールの上面には、搬送ロボット2の走行機構4や昇降機構3が当接する。各々のレールは、上面がおおむね平坦な棒状に形成されている。上面に微細な凹凸を付与して滑り止め等にしてもよい。レールの材質は特に限定されず、金属であってもよいし、樹脂であってもよい。各々のレールは、直線状に延在していてもよいし、湾曲して延在していてもよい。
【0030】
上面の幅は、搬送ロボット2の車輪41の幅よりも幅広に形成されている。上面以外の形状は特に限定されず、レールの断面が矩形であってもよいし、他の形状であってもよい。断面形状が異なるレールを混在させて上下に並べてもよい。上下に並べられたレール同士において、任意のレール(例えば、102L)の上面から当該レール102Lの一段上のレール103Lの上面までの間隔は、任意のレール102Lの上面から当該レール102Lの一段下のレール101Lの上面までの間隔と等しい。
【0031】
構造物100において、同じ高さに位置し、かつ延在方向が異なるレール同士は、平板で接続されてもよい。搬送ロボット2が方向転換するための方向転換スペースとして利用できる。同じ高さで延在方向が異なるレール同士は、湾曲したレールで接続されてもよい。構造物100は、昇降中の搬送ロボット2の移動を案内する昇降ガイド120、走行中の搬送ロボット2の移動を案内する走行ガイド130等を更に備えていてもよい。昇降ガイド120及び走行ガイド130については
図3から
図6を参照して後で説明する。
【0032】
搬送システム1は、例えば、飲食店や物流倉庫に用いられる。搬送システム1を飲食店に用いる場合には、例えば上段のレール104L,104Rを走行して料理が載せられたトレイをパントリーからホールに搬送し、例えば下段のレール101L,101Rを走行して空き皿が載せられたトレイをホールから洗い場に搬送してもよい。
【0033】
商品を提供する往路で走行するレールと空き皿をバッシングする復路で走行するレールとを区別して上下に並べることができる。商品を提供する往路と空き皿をバッシングする復路とに共通のレールを用いる場合と比べて往路のレールを衛生的に保つことができる。用途の異なるレールを左右に並べる場合と比べて構造物100の占有面積を小さくできる。また、搬送システム1を倉庫に用いる場合には、例えば、倉庫内のコンテナ等の搬送手段として用いることができる。
【0034】
なお構造物100は、すべての部位において、レールが上下に複数段設けられている必要はない。飲食店あるいは物流倉庫の形状やレイアウトに応じて、その一部にはレールが単数段である箇所が存在してもかまわない。構造物の少なくとも一部についてレールが上下に複数段設けられていることにより、その領域において、搬送ロボット2の昇降動作が可能となればよい。
【0035】
[第1実施形態]
図2は、本発明の第1実施形態の搬送ロボット2を示す斜視図である。搬送ロボット2は、本体20と、該本体20に組み付けられた昇降機構3及び走行機構4とを備えている。昇降機構3は、搬送ロボット2が構造物100を垂直移動する昇降モードに用いられ、走行機構4は、搬送ロボット2が構造物100を水平移動する走行モードに用いられる。本体20は、昇降機構3及び走行機構4の動作を制御する制御部を備えている。
【0036】
昇降機構3は、回転可能に構成されたアームプレート30と、アームプレート30を回転駆動するアーム駆動部32とを備えている。アームプレート30は、搬送ロボット2の第1側(例えば左側)と第2側(例えば右側)とに少なくとも一つずつ設けられている。アームプレート30は、本実施形態における回転体の一例である。各々のアームプレート30は、少なくとも一つのアーム31を備えている。図示した例では、各々のアームプレート30が、卍状(Swanstika shape)に形成され、アームプレート30の回転中心Oを通る回転軸の時計回りに90度ずつ等間隔に配置された四本のアーム31を備えている。
【0037】
本体20の左側に取り付けられたアームプレート30(第1回転体の一例)と、本体20の右側に取り付けられたアームプレート30(第2回転体の一例)とは、左右対称に形成され、互いに逆向きに回転する。本体20の左側は第1側の一例であり、右側が第2側の一例である。右側を第1側とし、左側を第2側としてもよい。各々のアーム31の先端には、レールと当接可能な当接部34A~34Dが設けられている。
【0038】
図2では、当接部34A~34Dが円盤状に形成され、アーム31の回転軸と平行な回転軸を有するローラで構成されている。後述する昇降モード(
図3乃至
図6参照)において、アームプレート30が回転するとき、当接部34A~34Dがレールの上面と摺接しながらレールの幅方向に僅かに移動する。当接部34A~34Dに回転可能なローラを設ければ、ローラが転動することにより当接部34A~34Dとレールとの間の摩擦を低減して塵埃の発生を抑えることができる。
【0039】
走行機構4は、レール上を走行可能な少なくとも一対の車輪41と、車輪41を回転駆動する車輪駆動部42と、車輪41の舵角を変更する転舵駆動部43とを備えている。
図2では、本体20が略方形の平板状に形成され、本体20の四隅にアームプレート30及び車輪41が一つずつ取り付けられている。つまり、搬送ロボット2が、左右一対のアームプレート30を二組備え、左右一対の車輪41を二組備えている。
【0040】
アームプレート30及び車輪41の構成は図示した例に限定されない。搬送ロボット2は、一対のアームプレート30を一組だけ備えていてもよいし、三組以上備えていてもよい。搬送ロボット2は、一対の車輪41を一組だけ備えていてもよいし、三組以上備えていてもよい。他の構成については
図7及び
図8を参照する第2実施形態で詳しく説明する。
【0041】
図2では、各々のアームプレート30に対応してアーム駆動部32が一つずつ設けられ、各々の車輪41に対応して車輪駆動部42が一つずつ設けられている。一つのアーム駆動部32が複数のアームプレート30をまとめて駆動するように構成してもよい。同様に、一つの車輪駆動部42が複数の車輪41をまとめて駆動するように構成してもよい。
【0042】
図2では、各々の車輪41に対応して転舵駆動部43が一つずつ設けられている。転舵駆動部43の構成は図示した例に限定されない。複数の車輪41に対応して一つの転舵駆動部43が設けられるように構成してもよい。転舵駆動部43は、略直方体に形成され、本体20と車輪駆動部42との間を接続している。
【0043】
転舵駆動部43の下面の中心に設けられた出力軸は、車輪駆動部42の上面の中心から偏心した位置に固定されている。車輪駆動部42の出力軸は、水平方向に延在し、車輪41の車軸に固定されている。車輪41は、車輪駆動部42の上面の中心から見て操舵駆動部43の出力軸とは反対側に位置している。つまり、操舵駆動部43の出力軸から見た車輪41は、車輪駆動部42の上面の中心よりも更に離れた位置にある。
【0044】
四輪にそれぞれ設けられた転舵駆動部43は、鉛直軸周りに車輪駆動部42を回転させ、車輪駆動部42ごと直下にある車輪41の舵角を変更できる。前輪及び後輪の舵角がともにゼロであれば、搬送ロボット2が真っ直ぐ走行し、前輪及び後輪の少なくとも一方の舵角がゼロでなければ、搬送ロボット2が曲がりながら走行する。いずれにせよ、搬送ロボット2が真っ直ぐ走行したり、カーブを曲がったりするとき、左右の前輪は、舵角が等しく互いに平行であり、左右の後輪は、舵角が等しく互いに平行である。
【0045】
本実施形態の搬送ロボット2は、左右の前輪の舵角を個別に変更可能、かつ左右の後輪の舵角を個別に変更可能である。換言すると、左右の前輪が平行ではなく直交し、左右の後輪が平行ではなく直交し、略方形の本体20の対角に位置した車輪41が平行になるように操舵できる。この状態で本体20の対角に位置した車輪41を互いに逆向きに回転させると、本体20の中心を軸にして、搬送ロボット2が独楽のように360度旋回する。四輪の舵角を個別に変更できる本実施形態の搬送ロボット2は、前進することなくその場で360度旋回できるため、前述した方向転換スペースのような狭い場所でも方向転換できる。転舵駆動部43は、車輪41の舵角を変更することにより、車輪41がレール102L,102Rに干渉しないように、各々の車輪41を退避させることができる。車輪41の退避については
図3及び
図4を参照して後で説明する。
【0046】
図2では、搬送ロボット2の昇降機構3が第1被ガイド部35を更に備え、走行機構4が第2被ガイド部45を更に備えている。第1被ガイド部35は、搬送ロボット2が構造物100を昇降する昇降モードにおいて、構造物100の昇降ガイド120に当接することにより搬送ロボット2の左側又は右側への移動を規制する。同様に、第2被ガイド部45は、搬送ロボット2が構造物100を走行する走行モードにおいて、構造物100の走行ガイド130に当接することにより搬送ロボット2の左側又は右側への移動を規制する。
【0047】
図2では、第1被ガイド部35が、円盤状に形成された回転可能なローラであり、各々のアーム31に付設されている。第1被ガイド部35は、例えば、回転中心Oと当接部34A~34Dと双方から等距離の曲げ部に配置され、アーム31の回転軸と平行な回転軸を有している。
【0048】
図2では、第2被ガイド部45が、円盤状に形成された回転可能なローラであり、各々の車輪41に付設されている。搬送ロボット2が左側へ移動することを規制する第2被ガイド部45は、左側の車輪41に付設されて該車輪41よりも左側に突出している。同様に、搬送ロボット2が右側へ移動することを規制する第2被ガイド部45は、右側の車輪41に付設されて該車輪41よりも右側に突出している。この第2被ガイド部45は必ずしも回転可能なローラである必要はなく、円形の部材であればよい。
【0049】
図2では、搬送ロボット2が、本体20の上に取り付けられたトレイリフト機構23を更に備えている。トレイリフト機構は、この上面にトレイを載置するためのエリアであり、適切な昇降機構(図示せず)にて上下に移動する構成を有する。このトレイリフト機構23により、例えば、下段のレール101L,101Rに待機中の搬送ロボット2が、上段のレールの高さまでトレイを持ち上げたり、上段のレールの高さからトレイを受け取ったりすることができる。
【0050】
続いて、
図3から
図6を参照して
図2に示された搬送ロボット2が構造物100を昇降する動作について説明する。ただし、
図3から
図6は、細部の形状を模式的に示しているため、アームの形状等が
図2と異なる場合がある。走行モードにおける搬送ロボット2は、
図3に示すように、左側の車輪41が直下にある左側のレール101Lから浮いておらず当該レールに当接し、右側の車輪41が直下の右側のレール101Rから浮いておらず当該レールに当接している。
【0051】
車輪41を含む走行機構4に付設された第2被ガイド部45は、左右方向において構造物100の走行ガイド130に対向している。アームプレート30は、各々のアーム31の当接部34A~34Dが本体20よりも第1側又は第2側に位置することが可能なように本体20に設置されている。アーム31の当接部34A~34Dは、レール102L,102Rから離間している。
【0052】
昇降モードにおいて搬送ロボット2がレール101L,101Rから一段上のレール102L,102Rに上昇する場合、まず、アームプレート30を回転させる。アームプレート30に取り付けられた各アーム31は、アームプレートの回転に従って、当接部34A~34Dが回転中心Oを軸とした円形の軌跡を描くように回転する。すなわち、アーム31の回転中心とアームプレート30の回転中心とは同心となる。
【0053】
回転中心Oを基準にした当接部34Aの高さは、正弦波の変位量で表され、アーム31の回転角に応じて周期的に変化する。当接部34Aの高さが低くなる向き(紙面手前から見て反時計回り)にアーム31が回転すると、当接部34Aが下方に移動して、
図4に示すように、やがて、直下のレール102Lと当接する。アーム31が更に回転すると、下方へ向かう当接部34Aの移動がレール102Lに阻まれて、当接部34Aが下方へ移動できなくなる。
【0054】
このとき回転中心Oは、当接部34Aに対して相対的に上方へ移動している。当接部34Aがそれ以上は下方へ移動できなくなると、その分だけ回転中心Oが上方へ移動する。回転中心Oを有するアーム駆動部32は、本体20に固定されているため、回転中心Oとともに本体20と該本体20に固定された走行機構4が上方へ移動する。
【0055】
つまり、この状態で更にアーム31を回転させれば、下方へ移動しようとする当接部34Aでレール102L,102Rを押圧し、その反力によって車輪41をレール101L,101Rから浮かせることができる。次いで、
図4に示すように、舵角可変機構を用いて左側の車輪41を左側のレール102Lよりも右側に退避させ、右側の車輪41を右側のレール102Rよりも左側に退避させる。
【0056】
前述したように、転舵駆動部43の出力軸は車輪41から離れた位置において車輪駆動部42の上面に固定されている。転舵駆動部43の出力軸から見て車輪41が左右方向外側に位置している状態で舵角を180度変化させれば、車輪41が転舵駆動部43の出力軸周りに公転し、当該軸から見て180度反対側、すなわち左右方向内側に移動する。転舵駆動部43は、舵角可変機構の一例であり、車輪41の公転半径に応じて車輪間の距離を短縮できる。この結果、昇降動作の際に車輪がレールと干渉することを防ぐ。
【0057】
アーム31を更に回転させ、レール102L,102Rを足場にして本体20と共に車輪41を引き上げる。
図5に示すように、参照符号L1,R1で示すアーム31を更に回転させると、レール102L,102Rよりも上段のレール103L,103Rに参照符号L2,R2で示す他のアーム31が当接する。前述した上下のレール102Lの上面とレール103Lの上面との間隔は、当接部34の高さを表す正弦波の振幅(最大変位量)と略同一か振幅よりも僅かに小さい。
【0058】
本実施形態の搬送ロボット2は、本体20の第1側(例えば、左側)に少なくとも一つずつ設けられた第1及び第2アームL1,L2と、本体20の第2側(例えば右側)に少なくとも一つずつ設けられた第3及び第4アームR1,R2とを備え、第1及び第2アームL1,L2のいずれか一方(例えば第1アームL1)が当該アームの回転中心Oよりも下側に位置した下段のレール102Lに当接可能な状態において、第1及び第2アームL1,L2のいずれか他方(例えば第2アームL2)が当該アームの回転中心Oよりも上側に位置した上段のレール103Lに当接可能であり、第3及び第4アームR1,R2のいずれか一方(例えば第3アームR1)が当該アームの回転中心Oよりも下側に位置した下段のレール102Rに当接可能な状態において、第3及び第4アームR1,R2のいずれか他方(例えば第4アームR2)が当該アームの回転中心Oよりも上側に位置した上段のレール103Rに当接可能である。
【0059】
図5に示した例では、本体20の左側に設けられた紙面奥行き方向に前後二枚のアームプレート30の各々が、第1及び第2アームL1,L2を備え、本体20の右側に設けられた紙面奥行き方向に前後二枚のアームプレート30の各々が、第3及び第4アームR1,R2を備えている。
【0060】
図5に示した例では、レール102Lとレール103Lとの間に、搬送ロボット2の左側への移動を規制する昇降ガイド120が設けられている。同様に、レール102Rとレール103Rとの間に、搬送ロボット2の右側への移動を規制する昇降ガイド120が設けられている。左側への移動を規制する昇降ガイド120は、例えば、第1被ガイド部35の移動軌跡上に配置され、上側に向かうに従い右側に向かう傾斜面に形成されている。傾斜面は、レール102Lの内縁とレール103Lの内縁とを含む仮想面に対して例えば45度傾斜している。右側への移動を規制する昇降ガイド120は、左側への移動を規制する昇降ガイド120と左右対称に形成されている。
【0061】
図4に示した状態から
図5に示した状態に移るとき、アーム31に設けられた第1被ガイド部35が構造物100に設けられた昇降ガイド120に当接し、搬送ロボット2が左右一対のレール103L,103Rから等距離になるように案内される。この際、第1被ガイド部35と昇降ガイド120との接触部が支点となり、アームプレート30の回転運動に伴って、レール上の第1及び第3アームL1,R1の各当接部34Aが本体20側に摺動し、本体20とともに車輪41が引き上げられる。搬送ロボット2は、左右一対のレール103L,103Rから等距離になるように案内されているため、第2及び第4アームL2,R2の当接部34A,34Bが所望の位置にて各レール103L,103Rに接触可能となる。
【0062】
図5に示された状態から第2アームL2及び第4アームR2を更に回転させると、自重を支える足場がレール102L,102Rから該レール102L,102Rよりも上段のレール103L,103Rに切り替わる。レール103L,103Rを足場にしてアーム31が本体20と共に車輪41をより高く引き上げることができる。
【0063】
また、レール102L,102Rから各アーム31の当接部34Aが離間した後は、第1被ガイド部35と昇降ガイド120との接触部を支点として、アームプレート30の回転運動に伴って、当接部34Aがレール103L,103R上を本体20側から離れる方向に摺動し、本体20と共に車輪41が引き上げられる。
【0064】
図6に示すように、下段のレール102L,102Rよりも高く車輪41を引き上げると、舵角可変機構を用いて下段のレール102L,102Rの直上に車輪41を移動させてから、アーム31を逆回転させて上段のレール103L,103Rからアーム31を離間させると、車輪41がレール102L,102Rに着地し、再び走行モードになる。
【0065】
以上の手順により、レール101L,101Rの延在方向に対して任意の場所において、レール101L,101Rから該レール101L,101Rよりも上段のレール102L,102Rに車輪41を引き上げて搬送ロボット2を構造物100の任意の場所で上昇させることができる。搬送ロボット2は、同様の手順により、下段のレール101L,101Rではなく方向転換スペース140のような平坦な場所から上段のレール102L,102Rに移動することもできる。
【0066】
図3から
図6を参照して説明した一連の動作を逆順で行えば、レール102L,102Rから該レール102L,102Rよりも下段のレール101L,101Rに車輪41を下して搬送ロボット2を下降させることができる。すなわち、走行モードから昇降モードに切り替えて、搬送ロボット2が構造物100を下降する場合、まず、アーム31を回転させて車輪41を浮かせる。
【0067】
次いで、
図6に示すように、車輪41を退避させる。上段のレール103L,103Rにぶら下がりながら下段のレール102L,102Rにアーム31を近づけると、
図5に示すように、回転中心Oよりも上側のレール103L,103Rにアーム31(第2及び第4アームL2,R2)が当接し、回転中心Oよりも下側のレール102L,102Rにアーム31(第1及び第3アームL1,R1)が当接する。
【0068】
図5に示された状態から第1及び第3アームL1,R1を更に回転させると、
図4に示すように、自重を支える足場が上段のレール103L,103Rから下段のレール102L,102Rに切り替わる。
図4に示すように、レール102L,102Rを足場にして車輪41をレール101L,101Rの高さまで下す。
【0069】
退避させていた車輪41をレール101L,101Rの直上に移動させ、
図3に示すように、アーム31を更に回転させてレール102L,102Rから離間させ、車輪41をレール101L,101Rに着地させる。
【0070】
以上の手順により、レール102L,102Rの任意の場所においてレール102L,102Rから該レール102L,102Rよりも下段のレール101L,101Rに車輪41を下して搬送ロボット2を下降させることができる。搬送ロボット2は、同様の手順により、下段のレール101L,101Rではなく方向転換スペース140のような平坦な場所に着地することもできる。
【0071】
続いて、
図7から
図14を参照して本発明の第2及び第3実施形態の搬送ロボット2について説明する。なお、第1実施形態の構成と同一又は類似の機能を有する構成は、同一の符号を付して対応する第1実施形態の記載を参酌することとし、ここでの説明を省略する。また、その他の構成は、第1実施形態と同一である。
【0072】
[第2実施形態]
図7及び
図8は、本発明の第2実施形態の搬送ロボット2を示す斜視図である。
図7は、最小の構成における走行モードの一例を示し、
図8は、最小の構成における昇降モードの一例を示している。
図7に示すように、第2実施形態の搬送ロボット2は、本体20の左右に二つずつ設けられたアームプレート30と、左右一対の車輪41とを備えている。各々のアームプレート30は、アーム31を一つだけ備えている。
図8に示すように、第2実施形態に係る舵角可変機構は、左右の車輪41を繋ぐ車軸を鉛直軸周りに90度回動させることにより車輪41を前後に並べることができる。左右方向における走行機構4の幅は、
図7ではおおむね一対の車輪41の距離であり、
図8では車輪41の直径である。後者の方が幅狭であるため、車輪41をレールから退避させることができる。
【0073】
四本のアーム31は、第1乃至第4アームL1,L2,R1,R2にそれぞれ対応している。
図8では、第1及び第3アームL1,R1が本体20の対角になるように位置し、第2及び第4アームL2,R2が本体20の対角になるように位置している。第2実施形態の搬送ロボット2は、第1実施形態と同様に、第1及び第2アームL1,L2のいずれか一方(例えば第1アームL1)の当接部34Aが当該アームの回転中心Oよりも下側に位置した下段のレール102Lに当接している状態において、第1及び第2アームL1,L2のいずれか他方(例えば第2アームL2)の当接部34Bが当該アームの回転中心Oよりも上側に位置した上段のレール103Lに当接可能であり、第3及び第4アームR1,R2のいずれか一方(例えば第3アームR1)の当接部34A´が当該アームの回転中心Oよりも下側に位置した下段のレール102Rに当接している状態において、第3及び第4アームR1,R2のいずれか他方(例えば第4アームR2)の当接部34B´が当該アームの回転中心Oよりも上側に位置した上段のレール103Rに当接可能である。
【0074】
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、第1乃至第4アームL1,L2,R1,R2を用いて、構造物100の任意の場所で搬送ロボット2が昇降できる。図示しないが、搬送ロボット2の構成は、アームプレート30が本体20の左右に一つずつであってもよい。その場合、左側のアームプレート30が第1及び第2アームL1、L2を少なくとも一つずつ備え、右側のアームプレート30が第3及び第4アームR1、R2を少なくとも一つずつ備えていればよい。
【0075】
[第3実施形態]
図9は、本発明の第3実施形態の搬送ロボット2の一例を示す斜視図である。第3実施形態の搬送ロボット2は、第1被ガイド部35に代えて、本体20の左右に設けられたアームプレート30の回転中心Oの距離を変更できる中心間距離可変機構を備えている。ここで、アームプレート30の回転中心と当該アームプレート30に備えられたアーム31の回転中心Oとは同心となるため、中心間距離可変機構は第1側のアーム31の回転中心Oと第2側のアーム31の中心間距離Oとの距離を変更することとなる。
【0076】
図9では、中心間距離可変機構が、4リンク1自由度のスライダクランクを二組含んだリンク機構(37,38)とその駆動源であるアクチュエータ36との組合せとして構成されている。リンク機構(37,38)は、アクチュエータ36から入力された回転運動を直線運動に変換して左右一対のアーム駆動部32を左右対称にスライドさせる。
【0077】
リンク機構(37,38)を構成するクランク37は、一端がアクチュエータ36の出力軸に接続され、他端がアーム駆動部32の天面に接続されている。アーム駆動部32の底面は、リンク機構(37,38)を構成するスライダ38に接続され、スライダ38に沿って摺動する。なお、中心間距離可変機構は、図示した例に限定されず、公知の構成を種々選択できる。
【0078】
続いて、
図10から
図14を参照して第3実施形態の搬送ロボット2が構造物100を昇降する動作について説明する。第3実施形態では、アームプレート30から前述した第1被ガイド部35が省略されていてもよい。アームプレート30は、搬送ロボット2の左側及び右側に少なくとも一つずつ設けられている。各々のアームプレート30は、少なくとも一つのアーム31を備えている。
図10では、各々のアームプレート30が、卍状に形成され、90度ずつ等間隔に配置された四本のアーム31を備えている。また、本実施形態においては、本体20の左右各々において紙面奥行き方向に前後二枚(すなわち計4枚)のアームプレート30が設けられている。
【0079】
アームプレート30は、水平方向(左右)にスライド可能なアーム駆動部32に設置される。左右に設けられたアーム駆動部32は前述したアクチュエータ36及びリンク機構(37,38)等の中心間距離可変機構と各々連動しており、左右対称にスライドして各アームプレート30の回転中心O間の距離を変更する。
図10では、アームプレート30が、走行機構4よりも内側(本体20側)に位置している。
【0080】
また、
図10では、左側のレール102L~103Lの左縁と、右側のレール102R~103Rの右縁とに縁110がそれぞれ設置され、レールの断面がL字形に形成されている。走行モードにおいて、縁110は、走行ガイド130として機能し、左右方向において第2被ガイド部45と対向する。昇降モードにおいて、縁110は、昇降ガイドとして機能し、左右方向において当接部34Aと対向する。
【0081】
走行モードや搬送ロボット収容時において、アームプレート30の回転中心Oの位置は特に限定されない。例えば、
図10に示すように、搬送ロボット2の左右一対のアームプレート30の回転中心Oの距離が最短となるように一対のアーム駆動部32間の距離を調整してもよい。図示しないが、レール102L,102Rとアーム31とが干渉しない範囲で回転中心Oの距離を広げてもよい。
【0082】
昇降モードにおいて、搬送ロボット2が上昇する場合、
図11に示すように、まず、転舵駆動部43により舵角がおおむね90度となるように操舵する。転舵駆動部43の出力軸周りに各々の車輪41が90度公転するため、転舵駆動部43の出力軸から見て左右いずれか一方にあった車輪41が、当該出力軸から見て前後いずれか一方に移動して左右のレール102L,102Rと干渉しない位置に退避する。
【0083】
次いで、アーム31の当接部34Aがレール102L,102Rの各縁110に当接可能な位置となるまで一対のアーム駆動部32間の距離を調整しながらアームプレート30を回転させる。アームプレート30に取り付けられた各アーム31は、アームプレート30の回転に従って、当接部34Aが回転中心Oを軸とした円形の軌跡を描いて回転する。なお、前述したように、アーム31の回転中心Oとアームプレート30の回転中心とは同心である。
図11中のX0は、左右の回転中心Oの距離を示している。
【0084】
アーム31の当接部34Aがレール102L,102Rの縁110に当接した状態を維持したままアームプレート30を更に回転させ、
図12に示すように、レール102L,102Rを足場にして本体20とともに車輪41を引き上げる。
図12において、X1は回転中心Oの中心間距離を示し、X0は
図11に示された回転中心Oの中心間距離を示している。すなわち、この
図11の状態では、回転中心Oの中心間距離が拡大していることが理解される。
【0085】
また、以降の図においても同様に、X0は
図11における回転中心Oの中心間距離を示している。
【0086】
ついで、アーム31の当接部34Aがレール102L,102Rの縁110に当接した状態を維持したままアームプレート30を更に回転させると、
図13に示すように、レール102L,102Rよりも上段のレール103L,103Rの縁110に他のアーム31の当接部34Bが当接する。また、
図13に示す状態では、昇降モードにおいて回転中心O間の距離X2が最大となる。
【0087】
図13に示された状態からアームプレート30を更に回転させると、
図14に示すように、自重を支える足場がレール102L,102Rから該レール102L,102Rよりも上段のレール103L,103Rに切り替わる。レール103L,103Rを足場にしてアーム31が本体20と共に車輪41をより高く引き上げることができる。
【0088】
また、
図14に示すようにレール102L,102Rから当接部34Aが離間した後は、103L,103Rの縁110当接部34Bとの接触部が支点となり、アームプレート30の回転運動と連動して左右アームプレート30の回転中心Oが各々紙面中央側にスライドすることで、本体20と共に車輪41が引き上げられる。
【0089】
図14に示すように、下段のレール102L,102Rよりも高く車輪41を引き上げると、下段のレール102L,102Rの上に車輪41を載置可能となる。ついで、レール102L,102R上を走行可能なように車輪41を操舵し、車輪41をレール102L,102R上に載置させた後、各回転中心Oを更に紙面中央側にスライドさせ、アームを退避させて再び走行モードになる。
【0090】
以上の手順により、レール102L~103L,102R~103Rの延在方向に対して任意の場所において、方向転換スペースのような平坦な場所や下段のレールから、それらよりも上段のレール102L~103L,102R~103Rに車輪41を引き上げて搬送ロボット2を構造物100の任意の場所で上昇させることができる。
【0091】
第1実施形態では、昇降モードにおいて回転中心Oの移動軌跡は上下に延びる直線状になる。これに対し、第3実施形態では、前述したように、昇降モードにおける回転中心Oの移動軌跡が左右に移動する。具体的には、第3実施形態における回転中心Oの移動軌跡が、アーム31の先端に設けられた当接部34Aを中心とする円弧状になっている。このような軌跡を描くように回転中心Oを動かすと、当接部34Aがレール102Rの所定の位置に追従するように動く。
【0092】
第3実施形態によれば、第1実施形態と同様に、構造物100の任意の場所で搬送ロボット2が昇降できる。さらに、昇降モードにおいて中心間距離可変機構を用いてアーム31とレール102Rとの位置ずれを防ぐことができる。また、第3実施形態の搬送ロボット2によれば、昇降モードにおいて中心間距離可変機構を用いてアーム31と各レール間との距離の調整が可能なため、例えば、走行経路において左右レール間の距離が異なるような場合であっても、構造物100の任意の場所で搬送ロボット2が昇降できる。
【0093】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【0094】
また、特にアーム及び当接部の数については上述の実施形態に限定されるものではなく、例えば、レールに接する当接部を有し本体よりも第1側に当接部が位置することが可能なように本体に回動可能に設置された第1側のアームと、レールに接する当接部を有し本体よりも第2側に当接部が位置することが可能なように本体に回動可能に設置された第2側のアームとを各々一ずつ有する構成であればよい。
【0095】
このような構成であっても、アームの形状(アームを構成する部材の形状、各部材の組み合わせ角、各部材のサイズ等)や、アームの回転中心の位置及び移動方向及び移動距離、各アームの回転速度及び当接部の回転角に対する垂直方向の移動距離などを適宜選定することで、搬送ロボットが本実施形態における構造物の上下に並べられた複数の一対のレール間を昇降可能なように構成することができる。
【0096】
また、昇降時に車輪をレールより退避させる構成は、上記のように舵角の変更による退避でなく車輪をレールと直交する方向に直線的に移動させるような構成でもよい。たとえばレール上を前後に直線的に走行するだけの構成においては通常の車輪、左右、回転が必要な場合はメカナムホイールを使用し、昇降時には車輪を直線的にレールと直交する方向(内側)に移動させるような構成を有するような搬送体でもよい。
【符号の説明】
【0097】
1…搬送システム、2…搬送ロボット、3…昇降機構、4…走行機構、20…本体、23…トレイリフト機構、30…アームプレート(回転体の一例)、31…アーム、32…アーム駆動部、34A,34A´,34B,34B´,34C,34D…当接部、35…第1被ガイド部、36…アクチュエータ、37…クランク、38…スライダ、41…車輪、42…車輪駆動部、43…転舵駆動部(舵角可変機構の一例)、45…第2被ガイド部、100…構造物、101L~104L,101~104R…レール、110…レールの縁、120…昇降ガイド、130…走行ガイド、L1…第1アーム、L2…第2アーム、O…回転中心、R1…第3アーム、R2…第4アーム、距離…X0,X1,X2。