(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】車両用ベントダクト
(51)【国際特許分類】
B60H 1/26 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
B60H1/26 611A
B60H1/26 611Z
(21)【出願番号】P 2020153211
(22)【出願日】2020-09-11
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100158067
【氏名又は名称】江口 基
(74)【代理人】
【識別番号】100147854
【氏名又は名称】多賀 久直
(72)【発明者】
【氏名】杉江 信二
【審査官】佐藤 正浩
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-063212(JP,U)
【文献】特開2000-127756(JP,A)
【文献】特開2001-287542(JP,A)
【文献】特開2009-120163(JP,A)
【文献】特開2015-000632(JP,A)
【文献】特開2005-121294(JP,A)
【文献】登録実用新案第3196894(JP,U)
【文献】特開2018-024292(JP,A)
【文献】特開平03-248910(JP,A)
【文献】特開2010-061815(JP,A)
【文献】特開2003-291234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室側空間から車両外側に通じる通気路を介して空気が流通可能に構成されたダクト本体と、
前記ダクト本体に取り付けられ、車両外側への空気の流通を許容するように前記通気路を開閉可能な開閉弁と、
一面が前記通気路の内側に臨むと共に、該通気路における前記開閉弁で閉じられる通気口に対向するように配置された吸収体と、を備え、
前記吸収体は、不織布からなる袋状体と、該袋状体に封入され、繊維状活性炭を含む吸収部とを有し、
前記吸収体は、前記一面と反対側の他面が前記車室側空間に臨むように配置されて、前記一面および前記他面の間の方向で通気可能であり、
前記袋状体は、前記吸収体の前記一面を構成する第1面部が、該吸収体の前記他面を構成する第2面部よりも通気性が高く構成されている
ことを特徴とする車両用ベントダクト。
【請求項2】
前記吸収体は、前記通気口に対向して車室側に配置された壁部に形成された開口を塞ぐように設置されている請求項1記載の車両用ベントダクト。
【請求項3】
前記吸収体は、前記壁部から前記通気路の内側へ張り出すように設置されている請求項2記載の車両用ベントダクト。
【請求項4】
前記袋状体は、熱可塑性樹脂繊維を少なくとも含む不織布で構成され、
前記吸収体は、前記袋状体の溶着により前記壁部に取り付けられる請求項2または3記載の車両用ベントダクト。
【請求項5】
前記第2面部は、前記車室側空間に臨む表面の繊維が起毛している請求項1~4の何れか一項に記載の車両用ベントダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車室内から車両外側に排出される空気の通気路となる車両用ベントダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、車室内の空気を車両外側へ排出するための通気路として、ベントダクトと呼ばれるものが設置されている(例えば特許文献1参照)。ベントダクトは、通気路を有する筒状のダクト本体と、ゴムなどの可撓性を有する材料で形成されて、通気路を開閉可能な開閉弁とを備えている。開閉弁は、ダクト本体において通気路の上側を画成する上壁部に接合されて通気路に垂れ下がっており、車両内外の気圧差により、通気路を塞ぐ閉じ姿勢から車両外向きへのみ開くようになっている。そして、ベントダクトは、開閉弁が車両外向きへ開放することで車室内からの空気の排出を許容する一方で、自重で閉じ姿勢となる開閉弁により車両外側から埃や水などが車室側へ入り込むのを防止している。
【0003】
ベントダクトは、車両走行時の振動等により開閉弁が開いてしまい、ロードノイズなどの車外騒音が侵入するおそれがある。そこで、例えば特許文献1のように、通気路の壁面をグラスウールやスポンジやフェルトなどの吸音材で覆う騒音対策が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1で用いられているグラスウールやスポンジやフェルトなどの吸音材は、繊維間の空隙等によって吸音する構造であることから、空隙で臭いもある程度捕集してしまう。このため、吸音材で捕集された臭いが開閉弁が閉じているときに、車室側に侵入するおそれがある。
【0006】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、車外騒音の侵入防止に加えて脱臭もできる車両用ベントダクトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本発明に係る車両用ベントダクトは、
車室側空間から車両外側に通じる通気路を介して空気が流通可能に構成されたダクト本体と、
前記ダクト本体に取り付けられ、車両外側への空気の流通を許容するように前記通気路を開閉可能な開閉弁と、
一面が前記通気路の内側に臨むと共に、該通気路における前記開閉弁で閉じられる通気口に対向するように配置された吸収体と、を備え、
前記吸収体は、不織布からなる袋状体と、該袋状体に封入され、繊維状活性炭を含む吸収部とを有し、
前記吸収体は、前記一面と反対側の他面が前記車室側空間に臨むように配置されて、前記一面および前記他面の間の方向で通気可能であり、
前記袋状体は、前記吸収体の前記一面を構成する第1面部が、該吸収体の前記他面を構成する第2面部よりも通気性が高く構成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両用ベントダクトによれば、車外騒音の侵入を防止できると共に、脱臭ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施例に係るベントダクトを示す概略斜視図である。
【
図2】実施例のベントダクトを示す縦断面図である。
【
図4】実施例のベントダクトについて、車室圧力が通常で、温度が通常である場合のイメージ図である。
【
図5】実施例のベントダクトについて、高温になった場合のイメージ図である。
【
図6】実施例のベントダクトについて、車室圧力が上昇した場合のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に係る車両用ベントダクトにつき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【実施例】
【0011】
図2に示すように、実施例に係る車両用ベントダクト(以下、単にベントダクトという。)10は、車体構成部材Sに形成された取付口Saに嵌め合わせて取り付けられている。ベントダクト10は、リアバンパーなどの車両外装部材(図示せず)によって外側が覆われて、車両外側から隠されている。ベントダクト10は、車両外側に通じる通気路Tを有し、この通気路Tが車体構成部材Sの内側に設けられた車室側空間Uに繋がっている。ベントダクト10は、上流が車室に繋がる車室側空間Uの空気を、通気路Tを通して車両外側へ排出可能になっている。
【0012】
図1および
図2に示すように、ベントダクト10は、車室側空間Uから車両外側に通じる通気路Tを介して空気が流通可能に構成されたダクト本体12を備えている。また、ベントダクト10は、ダクト本体12に取り付けられて、通気路Tを開閉可能な開閉弁14を備えている。なお、通気路Tにおいて、開閉弁14で閉じられる部位を通気口12aという。実施例のベントダクト10は、通気路Tにおける通気口12aを通る部位が水平方向横向きになるように車体構成部材Sに取り付けられている。また、ベントダクト10は、通気路Tにおいて通気口12aに対向するように配置された吸収体16を備えている。
【0013】
なお、以下の説明では、通気路Tにおいて、通気口12aに対して車両外側に通じる側をダクト外側といい、通気口12aに対して車室側に通じる側をダクト内側という。また、ダクト内外方向へ揺動する開閉弁14の開閉方向と直交する水平方向が、ベントダクト10の横方向になる。通気路Tは、車室側を上流といい、車両外側を下流という場合がある。
【0014】
ダクト本体12は、ポリプロピレン(PP)などの熱可塑性樹脂を材料とする硬質の樹脂成形品である。
図1に示すように、実施例のダクト本体12の主要部は、上下の壁部18,20および左右の横壁部22,22によって横長略矩形の開口形状の通気路Tを有する筒形に形成されている。また、ダクト本体12の主要部には、上壁部18と下壁部20との間に延在して通気路Tを左右に区切る板状の区画壁部24が、横方向に離間して複数設けられている。そして、ダクト本体12は、横壁部22,22、下壁部20および区画壁部24のダクト外側に臨む面によって上から下に向かうにつれてダクト外側へ傾く受け面が設けられ、この受け面によって閉じ姿勢の開閉弁14を受け止めるようになっている。実施例では、ダクト本体12の主要部が形成する通気路Tの中で、受け面によって受け止められた開閉弁14によって塞がれる箇所が通気口12aである。
【0015】
図1および
図2に示すように、ダクト本体12には、主要部の車室側(内側)にダクト通路部25が設けられている。ダクト通路部25は、上壁部18の車室側(内側)に連なる上通路壁部26と、横壁部22の車室側(内側)に連なる横通路壁部28と、通気口12aに対向して配置された内通路壁部(壁部)30とによって、通気路Tにおける上流側の一部を形成している。なお、通気路Tのうち、ダクト通路部25によって空気の流れの向きが規定される部分を区別する場合、ダクト通路Taという。ダクト通路部25は、車室側の開口が下方にあいており、ダクト通路Taが下側から水平方向外側へ向きが変わるようになっている。
【0016】
図1および
図2に示すように、ダクト本体12には、該ダクト本体12の外郭をなす各壁部18,20,22,22の前端から延出する板状のフランジ部32が全周に亘って形成されている。ベントダクト10は、車体構成部材Sに形成された取付口Saにダクト本体12の外郭をなす壁部18,20,22,22を挿入すると共に、フランジ部32を開口の開口縁に重ねた状態で車体に取り付けられる。
【0017】
図2に示すように、ダクト本体12には、上壁部18および下壁部20の外面に、ベントダクト10を車体に取り付けた際に、車体構成部材Sの取付口Saの開口縁に当たるリブ状の当接部34が設けられている。また、上壁部18および下壁部20には、ベントダクト10を車体に取り付けるための係止部36が設けられている。係止部36は、壁部18,20の外面から突出した後にダクト外側へ屈曲する鉤形状であり、ベントダクト10を車体に取り付けた際に車体構成部材Sに引っ掛かる。
【0018】
開閉弁14は、薄い板状体であって、オレフィン系エラストマー(TPO)やスチレン系エラストマー等のエラストマー、エチレン-プロピレン-ジエンゴム等のゴム系材料など、弾性変形可能な材料で構成されている。
図2に示すように、開閉弁14は、上部が上壁部18から下方へ張り出した取付片18aに固定されているだけで、取付片18aから通気路Tに吊り下がる弁本体に、閉じ姿勢に向けて自重が作用するようになっている。
【0019】
ベントダクト10は、上縁部をダクト本体12に取り付けた開閉弁14が通気路Tに吊り下がり、可撓性を有する開閉弁14の自重による内向きの変位がダクト本体12での受け面で規制されて、通気路Tを塞ぐ閉じ姿勢になる(
図2実線参照)。ベントダクト10は、自重で閉じ姿勢となった開閉弁14によって、通気路Tを塞いで車両外側からの埃や水などの異物の侵入を防止する。また、ベントダクト10は、ドアを閉じたときなどの車室内外の気圧差により開閉弁14が外向きへ弾性変形することで通気路Tを開放し、車室内から車両外側へ向けた空気の流通を許容する(
図2二点鎖線参照)。
【0020】
図2に示すように、吸収体16は、一面が通気路Tの内側に臨むと共に、通気口12aに対向するように配置されている。吸収体16は、通気路Tにおいて通気口12aよりも上流側に位置している。実施例の吸収体16は、通気口12aに対向して配置された内通路壁部30に形成された開口30aを塞ぐように設置され、内通路壁部30の一部を構成している。吸収体16は、通気口12a側に臨む一面と反対側の他面が、車室側空間Uに臨むように配置されている。吸収体16は、一面および他面の間の厚み方向で通気可能に構成されている。なお、空気は、吸収体16を通るよりも、通気抵抗が小さい通気路Tにおける車室側開口の方を優先して流通するようになっている。
【0021】
図2に示すように、吸収体16は、不織布からなる袋状体38と、この袋状体38に封入され、繊維状活性炭を含む吸収部40とを備えている。袋状体38を構成する不織布としては、ポリエチレンやポリプロピレン等の熱可塑性樹脂繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、レーヨン繊維など、単体または複合した不織布を用いることができる。なお、後述するように内通路壁部30への取り付けの観点からは、熱可塑性樹脂繊維を少なくとも含む不織布が好ましい。繊維状活性炭は、ポリエステル、セルロース、ポリアクリロニトル(PAN)、フェノール樹脂、レーヨン、アクリル樹脂等の有機繊維を出発原料とするものや、コールタール等を出発原料とするピッチ系のものなどを用いることができる。吸収部40の主体である繊維状活性炭は、例えば、線径が5d~15dで、線長が1mm~100mmのものを用いるとよい。
【0022】
袋状体38は、吸収体16の一面(通気口12a側の面)を構成する第1面部42が、吸収体16の他面(車室側空間U側の面)を構成する第2面部44よりも通気性が高く構成されている。吸収体16は、内通路壁部30において厚み方向の両面が露出しているが、通気口12aに臨む第1面部42が、車室側空間Uに臨む第2面部44よりも空気が通り易くなっている。例えば、第1面部42を第2面部44よりも目付量を小さく(密度を低く)したり、第1面部42を第2面部44よりも繊維径を大きくしたりするなどによって差をつけることができる。
【0023】
袋状体38を構成する不織布としては、例えば、通気性が50cm3/cm2/s~150cm3/cm2/sの範囲にあるものを用いるとよい。吸収体16としては、厚み方向の通気性を0.5cm3/cm2/s以上確保できると、吸音材としての性能を好適に発揮するので好ましい。
【0024】
実施例の吸収体16は、袋状体38が熱可塑性樹脂繊維を少なくとも含む不織布で構成されている。そして、吸収体16は、袋状体38の溶着により内通路壁部30に取り付けられる。この場合、内通路壁部30についても熱可塑性樹脂で構成することが好ましい。具体的には、袋状体38の外縁に形成したシール部38aを、内通路壁部30における開口30aの開口縁に重ね合わせて超音波等により溶着することで、吸収体16を内通路壁部30に固定している。なお、袋状体38を構成する不織布として、熱可塑性繊維を含むものやホットメルトコーティング処理がなされたものであると、熱プレスによる二次加工によって、厚さの調整や取り付け対象に合わせて賦形するなどの加工が可能になる。
【0025】
図2に示すように、吸収体16は、内通路壁部30から通気路Tの内側へ張り出すように設置されている。吸収体16は、通気口12aと反対側の他面が内通路壁部30と面が揃っている。すなわち、吸収体16は、ダクト通路Taに張り出す一方で、ダクト通路Taよりも上流側で車室側空間U内へ張り出していない。なお、実施例の吸収体16は、通気口12aに相対する面だけでなくダクト通路Taに張り出す上下左右の面も第1面部42で構成されている。
【0026】
図3に示すように、実施例の吸収体16において、第2面部44は、車室側空間Uに臨む表面の繊維が起毛している。例えば、吸収体16を内通路壁部30に取り付けた後、第2面部44の表面をブラッシングすることによって、第2面部44の表面を起毛させることができる。
【0027】
(車室圧力通常、温度通常時)
ベントダクト10は、車室圧力が通常であるとき、開閉弁14が基本的に閉じ姿勢にあるが、車両走行時の振動などによって開閉弁14が揺れて通気口12aから車外騒音が侵入することがある。この場合、通気口12aから侵入した車外騒音は、通気口12aに対向配置された吸収体16に入射して吸音される(
図4(a)参照)。ここで、吸収体16は、通気口12a側の第1面部42の通気性が高いので、袋状体38が吸収部40への車外騒音の入射を妨げることを抑制できる。従って、実施例のベントダクト10によれば、通気路Tを介して車外騒音が車室に入ることを防止できる。ベントダクト10は、通気路Tおよび車室側空間Uの温度が50℃より低い通常状態にあるとき、吸収体16を構成する吸収部40の繊維状活性炭の作用によって通気路Tおよび車室側空間Uの臭いを吸着して除去することができる(
図4(b)参照)。このとき、吸収体16は、一面が通気路Tに臨むと共に他面が車室側空間Uに臨んでいるので、臭いを効率よく捕集することができる。
【0028】
(車室圧力通常、高温時)
ベントダクト10は、車室圧力が通常であると共に通気路Tおよび車室側空間Uが50℃以上の高温になったとき、吸収体16を構成する吸収部40の繊維状活性炭から該繊維状活性炭に吸着されていた臭いが放出される。このとき、吸収体16は、通気口12a側の第1面部42の方が第2面部44よりも通気性が高いので、吸収部40から放出される臭いが車室側空間Uではなく通気口12a側(ダクト通路Ta)に出ることになる(
図5参照)。従って、実施例のベントダクト10によれば、臭いが車室に戻ることを防止できる。そして、通気路Tおよび車室側空間Uの温度が下がれば、吸収部40で臭いを再び吸着することになるが、第1面部42の通気性がよいので、ダクト通路Taの臭いを効率よく捕集することができる。
【0029】
(車室圧力上昇時)
ベントダクト10は、車室圧力が上昇したとき、開閉弁14が開いて通気口12aを開放することで、通気路Tを介して車室の空気を車外へ逃す。吸収体16は、車室側の第2面部44の通気性が比較的低いので、空気が吸収体16を通る短絡を抑えて、ダクト通路部25の下部開口からダクト通路Taを通して空気を通気口12aから車外へ排出させることができる。通気路Tおよび車室側空間Uが高温になって吸収体16から臭いが放出されていた場合、車外への空気の排出と併せて臭いも車外へ排出することができる(
図6参照)。なお、空気の一部が吸収体16を通ったとしても、臭いは通気口12aから排出されることになる。
【0030】
繊維状活性炭は、50℃より低い温度において臭いを吸着するが、50℃以上の高温において臭いを放出する性質を有している。車両は、夏季などに車室の温度が80℃まで達することがあるが、ベントダクト10は、活性炭特有の性質に対応する前述の構成であるので、臭いを吸着するだけでなく、吸着した臭いが車室に戻らないようになっている。このように、ベントダクト10によれば、通気口12aから侵入する車外騒音を吸収体16で吸音できることに加えて臭いを繊維状活性炭で捕集することができ、繊維状活性炭から臭いが放出されたとしても、車室側に戻ることを防止することができる。
【0031】
吸収体16は、通気口12aに対向して配置された内通路壁部30に形成された開口30aを塞ぐように設置されている。このようにすることで、通気口12aから入る車外騒音を吸音し易くすることができる。しかも、通気口12aまでのダクト通路Taを規定する内通路壁部30を設置部分として用いることで、構成を簡単にすることができる。
【0032】
吸収体16は、内通路壁部30から通気路Tの内側へ張り出すように設置されている。これにより、通気口12aから入る車外騒音を吸音し易くすることができると共に、繊維状活性炭から臭いが放出されたときに車室側へ向かい難くすることができる。
【0033】
袋状体38を、熱可塑性樹脂繊維を少なくとも含む不織布で構成し、吸収体16を、袋状体38の溶着により内通路壁部30に取り付けている。これにより吸収体16を取り付けるための構成を簡単にすることができる。
【0034】
吸収体16において、第2面部44は、車室側空間Uに臨む表面の繊維が起毛している。起毛した繊維の毛細管現象によって臭いを保持することができ、高温になったときに車室に近い第2面部44から臭いを放出され難くすることができる。これにより、繊維状活性炭から臭いが放出されたとしても、車室側に戻ることを防止することができる。
【0035】
(変更例)
前述した事項に限らず、例えば以下のようにしてもよい。
(1)ダクト本体は、主要部とダクト通路部とを別体に形成した後に両者を接合する構成であっても、主要部とダクト通路部とを一体に形成しても、何れであってもよい。また、主要部とダクト通路部とが別体である場合、主要部とダクト通路部とを離して配置してもよい。
(2)ダクト通路部は、下方へ開口する実施例に限らず、上下左右の何れか1つまたは複数方向へ開口してもよい。
(3)吸収体を設置する壁部として、車体を構成するパネル等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0036】
12 ダクト本体,12a 通気口,14 開閉弁,16 吸収体,
30 内通路壁部(壁部),30a 開口,38 袋状体,40 吸収部,
42 第1面部,44 第2面部,T 通気路,U 車室側空間