(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】ゴム摩擦試験方法
(51)【国際特許分類】
G01N 19/02 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
G01N19/02 B
(21)【出願番号】P 2020194220
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】諫山 直生
【審査官】山口 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-094903(JP,A)
【文献】特開2007-127551(JP,A)
【文献】特開2013-221855(JP,A)
【文献】特開2019-210968(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0151970(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 19/02
G01N 3/56
G01N 33/44
G01L 5/00
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験路面にゴム試験片を押し当て、前記試験路面上で前記ゴム試験片をすべらせながら移動させるゴム摩擦試験方法であって、
前記ゴム試験片は、金属製のホルダーによって中間ブロックを介して保持された状態で前記試験路面に押し当てられ、
前記中間ブロックは、前記ホルダーよりも柔らかいゴム又は樹脂で形成される、ゴム摩擦試験方法。
【請求項2】
前記中間ブロックの硬度は、前記ゴム試験片の硬度よりも高い、請求項1に記載のゴム摩擦試験方法。
【請求項3】
前記中間ブロックの厚みは、前記ゴム試験片の厚み以上である、請求項1又は2に記載のゴム摩擦試験方法。
【請求項4】
前記ゴム試験片は、前記試験路面に押し当てられる第1平坦面と、前記第1平坦面と平行な第2平坦面とを有し、
前記中間ブロックは、前記ゴム試験片の前記第2平坦面が貼り付けられる貼り付け面を有し、
前記貼り付け面は、前記第2平坦面よりも広く、
前記ゴム試験片の外周面と前記外周面よりも外側に位置する前記貼り付け面との間に、接着剤が塗布される、請求項1~3の何れか1項に記載のゴム摩擦試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ゴム摩擦試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、実路面を模擬した試験路面とゴム試験片とを用いて、自動車用タイヤに採用するゴム材料の摩擦特性を評価するゴム摩擦試験が行われている(例えば下記特許文献1)。
【0003】
ゴム摩擦試験機においてゴム試験片に摩耗が生じる場合に、ゴム試験片を保持するホルダーが試験路面と衝突して破壊する恐れがあるため、ゴム試験片は一定の厚みが必要である。また、十分な厚みを確保できない薄いゴム試験片では、ゴム試験片に摩耗や割れが生じやすく、ホルダーが試験路面に衝突する可能性が高まる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、ゴム試験片を保持するためのホルダーが試験路面に衝突して試験路面を破壊することを抑制できるゴム摩擦試験方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のゴム摩擦試験方法は、試験路面にゴム試験片を押し当て、前記試験路面上で前記ゴム試験片をすべらせながら移動させるゴム摩擦試験方法であって、
前記ゴム試験片は、金属製のホルダーによって中間ブロックを介して保持された状態で前記試験路面に押し当てられ、
前記中間ブロックは、前記ホルダーよりも柔らかいゴム又は樹脂で形成される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係るゴム摩擦試験機の一例を概略的に示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、ゴム摩擦試験方法における一実施形態について、
図1及び
図2を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0009】
図1は、ゴム摩擦試験方法を実施するためのゴム摩擦試験機の一例を示している。但し、本発明に係るゴム摩擦試験方法は、かかるゴム摩擦試験機を用いて実施されるものに限られない。
【0010】
ゴム摩擦試験機10は、実路面を模擬してなる試験路面1と、ゴム試験片2を中間ブロック3を介して保持する金属製のホルダー4と、試験路面1にゴム試験片2を押し当てる荷重装置5と、試験路面1に対してゴム試験片2を相対移動させるための駆動装置6と、ゴム試験片2に作用する荷重を計測する荷重センサ7と、試験に必要な動作の制御を行う制御装置8とを備える。
【0011】
試験路面1は、アスファルト路面やコンクリート路面などの実路面を模擬してなる。試験路面1は、道路で実際に使用される骨材、またはそれと同等の性状を持つ硬質な骨材を接着剤で固着することにより形成される。或いは、試験路面1は、実際の道路から路面を切り出し、それを測定用に加工することにより形成される。試験路面1を形成する方法は、これら以外でもよく、特に限定されない。試験路面1の表面は、骨材による多少の凹凸はあるものの、全体として平坦に形成されている。また、試験路面1は研磨布を用いても良い。
【0012】
図2は、ゴム試験片2の周辺を拡大して示す拡大図である。ゴム試験片2は、試験路面1に押し当てられる第1平坦面2aを有する。また、ゴム試験片2は、第1平坦面2aに平行な第2平坦面2bを有し、第2平坦面2bが中間ブロック3に接着される。
【0013】
ゴム試験片2は、加硫ゴムにより形成される。加硫ゴムは、例えばタイヤ用のトレッドゴムである。ゴム試験片2の硬度は、例えば55~75度である。ここでの硬度は、JISK6253のデュロメータ硬さ(durometer hardness)であり、一般ゴム(中硬さ)用のタイプAデュロメータを用いて、23℃の雰囲気下で測定された硬度を意味する。
【0014】
ゴム試験片2は、直径が20mm以上の円板形状をなし、厚みは例えば1~5mmである。直径が20mm以上の円板形状とすることで、試験路面1に対する接触面積の変化を小さくでき、接地圧力の不均一を抑制することができる。これにより、計測精度を確保することができ、また、偏摩耗によるゴム試験片2の大きな割れの発生を防ぐことができる。
【0015】
ただし、ゴム試験片2の形状は特に限定されず、ゴム試験片2は直方体状等でもよい。また、例えば実際のタイヤのトレッドゴムを切り出してゴム試験片2としてもよい。
【0016】
中間ブロック3は、ゴム試験片2の第2平坦面2bに貼り付けられる第1貼り付け面3aを有する。また、中間ブロック3は、第1貼り付け面3aに平行な第2貼り付け面3bを有し、第2貼り付け面3bがホルダー4に貼り付けられる。中間ブロック3は、ゴム試験片2及びホルダー4に接着剤により固定される。ゴム試験片2とホルダー4の間に中間ブロック3を設けることで、薄いゴム試験片2の場合にもホルダー4が試験路面1に衝突して試験路面1を破壊することを抑制できる。
【0017】
中間ブロック3は、ゴム又は樹脂により形成される。ゴム又は樹脂で形成された中間ブロック3は、金属製のホルダー4よりも柔らかい。また、中間ブロック3は、試験路面1よりも柔らかい。
【0018】
中間ブロック3の硬度は、ゴム試験片2の硬度よりも高い。中間ブロック3の硬度は、例えば80~100度である。中間ブロック3の硬度が不足すると、摩擦試験のせん断力による中間ブロック3の変形を無視できなくなる。一方、中間ブロック3の硬度が高すぎると、仮に中間ブロック3が試験路面1に衝突した際の試験路面1のダメージが大きくなる。
【0019】
中間ブロック3は、例えば円柱状である。ただし、中間ブロック3の形状は特に限定されず、第1貼り付け面3aと第2貼り付け面3bが平行であればよく、例えば直方体状でもよい。
【0020】
中間ブロック3の厚みは、ゴム試験片2の厚み以上である。中間ブロック3の厚みは、例えば5~15mmである。
【0021】
中間ブロック3の第1貼り付け面3aは、ゴム試験片2の第2平坦面2bよりも広い。ゴム試験片2及び中間ブロック3が何れも円柱状の場合、中間ブロック3の直径は、ゴム試験片2の直径よりも1割以上大きいことが好ましい。
【0022】
中間ブロック3は、第1貼り付け面3aの外縁が、第2平坦面2bの外縁の外側に位置するようにゴム試験片2に貼り付けられる。中間ブロック3とゴム試験片2を接着剤で貼り合わせる際、第1貼り付け面3aと第2平坦面2bの界面に接着剤20を塗布するだけでなく、ゴム試験片2の外周面2cと、外周面2cよりも外側、言い換えると第2平坦面2bの外縁よりも外側に位置する第1貼り付け面3aとの間にも接着剤20を塗布することで、中間ブロック3とゴム試験片2の接着力を向上させて摩擦試験中の剥離を抑制できる。
【0023】
複数のゴム試験片2の比較試験を行う場合、中間ブロック3は、同材料、同形状に揃えることが好ましい。これにより、ゴム試験片2の摩擦試験に対する中間ブロック3による誤差を抑制できる。
【0024】
ホルダー4は、中間ブロック3の第2貼り付け面3bよりも大きくなっている。前述の中間ブロック3とゴム試験片2を接着剤で貼り付ける場合と同様、中間ブロック3とホルダー4を接着剤で貼り合わせる際、中間ブロック3とホルダー4の界面に接着剤を塗布するだけでなく、中間ブロック3の外周面と、この外周面よりも外側に位置するホルダー4との間にも接着剤を塗布することで、中間ブロック3とホルダー4の接着力を向上させることができる。
【0025】
ホルダー4は荷重装置5に接続されている。荷重装置5は、試験路面1に対して垂直なZ方向(
図1の上下方向)に沿ってホルダー4を往復動可能に構成されている。このホルダー4の位置(ホルダー4と試験路面1との間隔)を適宜に設定することで、ゴム試験片2に入力されるZ方向の荷重を調整でき、延いては所定の圧力条件下でゴム試験片2を試験路面1に押し当てることができる。また、荷重装置5は、ホルダー4のZ方向への移動速度を調整することができ、これにより、ゴム試験片2に荷重を負荷する速度を調整することができる。荷重装置5は、サーボモータにより構成されているが、他のアクチュエータ機構を利用しても構わない。
【0026】
駆動装置6は、荷重装置5を支持するテーブル9をX方向(
図1の左右方向)に沿って往復動可能に構成されている。このテーブル9の移動によってホルダー4が移動し、試験路面1上でゴム試験片2を滑らせながら移動させることができる。また、駆動装置6は、テーブル9のX方向への移動速度を調整することができ、これにより、試験路面1に対するゴム試験片2の滑り速度を調整することができる。本実施形態では、駆動装置6がサーボモータにより構成されているが、これに限定されない。
【0027】
荷重センサ7は、垂直成分及び水平二成分の計三成分の荷重を計測可能であり、ゴム試験片2に作用するZ方向の荷重(垂直力)、X方向の荷重(前後力)及びY方向の荷重(横力)を計測することができる。荷重センサ7は、例えばロードセルによって構成される。本実施形態では、ホルダー4の上側(ゴム試験片2とは反対側)に荷重センサ7が取り付けられている。
【0028】
制御装置8は、摩擦係数の算出に必要な計算を行う演算部8aと、荷重装置5や駆動装置6などの作動を制御する作動制御部8bと、試験作業者からの入力を受け付ける入力部8cと、ゴム摩擦試験機10の操作や設定などに関する各種情報を画面上に表示する表示部8dとを備える。荷重センサ7による計測値は制御装置8に送られ、それに基づいて演算部8aが摩擦係数を計算する。
【0029】
また、ゴム摩擦試験機10は、試験路面1、ゴム試験片2、及びこれらの周囲の雰囲気の温度を調整する温度調整装置(不図示)を備えるようにしてもよい。温度調整装置としては、加熱装置、冷却装置等が挙げられる。温度調整装置は、制御装置8により制御される。
【0030】
ゴム摩擦試験では、荷重を負荷してゴム試験片2を試験路面1に押し当てた状態で、ゴム試験片2と試験路面1とを相対移動させることによりゴム試験片2の摩擦係数を測定する。本実施形態では、荷重装置5により荷重を負荷してゴム試験片2を試験路面1に押し当てた状態で、静止した試験路面1に対してゴム試験片2を移動させることにより試験路面1とゴム試験片2との間の摩擦係数を測定する。本実施形態のゴム摩擦試験機10は、静止摩擦係数と動摩擦係数のどちらもが測定可能である。
【0031】
以上のように、本実施形態に係るゴム摩擦試験方法は、試験路面1にゴム試験片2を押し当て、試験路面1上でゴム試験片2をすべらせながら移動させるゴム摩擦試験方法であって、ゴム試験片2は、金属製のホルダー4によって中間ブロック3を介して保持された状態で試験路面1に押し当てられ、中間ブロック3は、ホルダー4よりも柔らかいゴム又は樹脂で形成されるものである。
【0032】
この構成によれば、ゴム試験片2とホルダー4の間に中間ブロック3を設けることで、薄いゴム試験片2の場合にもホルダー4が試験路面1に衝突して試験路面1を破壊することを抑制できる。また、仮に中間ブロック3が試験路面1に衝突しても、中間ブロック3がホルダー4のよりも柔らかいため、試験路面1を破壊することを抑制できる。
【0033】
また、本実施形態に係るゴム摩擦試験方法においては、中間ブロック3の硬度は、ゴム試験片2の硬度よりも高い、という構成である。
【0034】
この構成によれば、摩擦試験のせん断力によって中間ブロック3が変形することを抑制でき、試験結果の精度が向上する。
【0035】
また、本実施形態に係るゴム摩擦試験方法においては、中間ブロック3の厚みは、ゴム試験片2の厚み以上である、という構成である。
【0036】
この構成によれば、ホルダー4が試験路面1からより離れるため、ホルダー4が試験路面1に衝突するのを抑制できる。
【0037】
また、本実施形態に係るゴム摩擦試験方法においては、ゴム試験片2は、試験路面1に押し当てられる第1平坦面2aと、第1平坦面2aと平行な第2平坦面2bとを有し、中間ブロック3は、ゴム試験片2の第2平坦面2bが貼り付けられる貼り付け面3aを有し、貼り付け面3aは、第2平坦面2bよりも広く、ゴム試験片2の外周面2cと外周面2cよりも外側に位置する貼り付け面3aとの間に、接着剤20が塗布される、という構成である。
【0038】
この構成によれば、中間ブロック3とゴム試験片2の接着力を向上させて摩擦試験中の剥離を抑制できる。
【0039】
なお、ゴム摩擦試験方法は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、ゴム摩擦試験方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記した複数の実施形態の各構成や各方法等を任意に採用して組み合わせてもよく、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0040】
上記実施形態に係るゴム摩擦試験方法においては、中間ブロック3の硬度は、ゴム試験片2の硬度よりも高い、という構成である。しかしながら、ゴム摩擦試験方法は、かかる構成に限られない。例えば、中間ブロック3の硬度は、ゴム試験片2の硬度と同じでもよい。
【0041】
上記実施形態に係るゴム摩擦試験方法においては、中間ブロック3の厚みは、ゴム試験片2の厚み以上である、という構成である。しかしながら、ゴム摩擦試験方法は、かかる構成に限られない。例えば、中間ブロック3の厚みは、ゴム試験片2の厚みよりも大きい、という構成でもよい。
【0042】
上記実施形態に係るゴム摩擦試験方法においては、中間ブロック3の第1貼り付け面3aが、ゴム試験片2の第2平坦面2bよりも広い、という構成である。しかしながら、ゴム摩擦試験方法は、かかる構成に限られない。例えば、中間ブロック3の第1貼り付け面3aは、ゴム試験片2の第2平坦面2bと同じ広さであってもよい。
【0043】
上記実施形態に係るゴム摩擦試験方法においては、中間ブロック3は円柱状であるが、これに限定されない。例えば、中間ブロック3は、ゴム試験片2の滑り方向(
図1のX方向)の長さが、ゴム試験片2の滑り方向に垂直な方向(
図1のY方向)の長さよりも長い楕円柱状であってもよい。中間ブロック3を楕円柱状とすることで、摩擦試験のせん断力によって中間ブロック3が変形することを抑制できる。
【0044】
また、中間ブロック3において、第1貼り付け面3aの外縁の角部を面取り形状としてもよい。これにより、中間ブロック3が試験路面1に衝突した際の衝撃を緩和できる。
【0045】
上記実施形態では、試験路面1を固定してゴム試験片2を動かすことで、ゴム試験片2を試験路面1に対してすべり移動させているが、これに限定されない。ゴム試験片2のすべり移動は、試験路面1に対するゴム試験片2の相対移動を伴うものであればよく、例えばゴム試験片2を固定して試験路面1を動かすことで、ゴム試験片2を試験路面1に対してすべり移動させてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…試験路面、2…ゴム試験片、2a…第1平坦面、2b…第2平坦面、2c…外周面、3…中間ブロック、3a…第1貼り付け面、3b…第2貼り付け面、4…ホルダー、10…ゴム摩擦試験機、20…接着剤