(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
H01Q 1/12 20060101AFI20240405BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20240405BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
H01Q1/12 Z
B60R11/02 A
H01Q1/22 Z
(21)【出願番号】P 2020219900
(22)【出願日】2020-12-29
【審査請求日】2022-12-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100129643
【氏名又は名称】皆川 祐一
(72)【発明者】
【氏名】田中 智徳
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-048253(JP,A)
【文献】特開2020-100233(JP,A)
【文献】特開2018-127208(JP,A)
【文献】特開昭62-066702(JP,A)
【文献】特開昭61-045603(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03741623(EP,A1)
【文献】特開2012-129667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 1/12
B60R 11/02
H01Q 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビンを備え、
前記キャビンには、上下方向に延びるピラーが設けられており、
前記ピラーは、塗装された外面を有し、
前記ピラーの上端部には、外側から部品を取り付けるための取付穴が前記外面に形成され、
前記外面には、前記取付穴の周囲に塗装されていない無塗装部分が設定されている、作業車両。
【請求項2】
前記取付穴に着脱可能に取り付けられるステーと、
前記ステーに支持されたアンテナと、を含む、請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
前記ステーは、金属製である、請求項2に記載の作業車両。
【請求項4】
メインフレームをさらに備え、
前記キャビンは、前記メインフレーム上に搭載されて、前記メインフレームに支持され、
前記取付穴は、前記キャビンを前記メインフレーム上に搭載する際の前記キャビンの吊り上げに使用される吊り具を取り付けるための穴である、請求項1~3のいずれか一項に記載の作業車両。
【請求項5】
前記無塗装部分は、前記吊り具と前記外面との接触部分に対応した形状である、請求項4に記載の作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、コンバインでは、最前部に刈取装置が配置され、その刈取装置の後方にメインフレームが設けられている。メインフレームの前端部上には、運転席や操作レバーおよび操作ペダルなどを収容したキャビンが支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キャビンの外面には、アンテナやバックミラー、取っ手など、種々の部品が取り付けられる。各部品の取り付けのために、キャビンに取付穴が形成されるが、その取付穴は、各部品に専用に設定され、他の部材の取り付けに共用されることはない。
【0005】
本発明の目的は、外面に形成された取付穴を複数の部品に有効に共用できる、作業車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明に係る作業車両は、塗装された外面を有し、外側から部品を取り付けるための取付穴が外面に形成され、取付穴の周囲に塗装されていない無塗装部分が設定されている。
【0007】
この構成によれば、作業車両の塗装された外面には、外側から部品を取り付けるための取付穴が形成されている。そして、取付穴の周囲には、塗装されていない無塗装部分が設定されている。
【0008】
たとえば、キャビンは、単独で組み立てられた後、メインフレーム上に搭載される。この搭載の際には、キャビンがクレーンなどで吊り上げられる。そのため、キャビンの搭載の際には、吊り索(スリング)を係止させる吊り具がキャビンに必要となるが、キャビンの搭載後は、その吊り具がキャビンから不要となる。塗装された外面がキャビンの外面であれば、その外面に形成された取付穴は、吊り具の取り付けに利用することができる。また、キャビンの搭載後に取付穴から取付具を取り外せば、その取付穴を他の部品の取り付けに利用することができる。
【0009】
また、取付穴に部品が取り付けられることにより、その部品で取付穴を隠すことができ、キャビンの外観(見た目)を向上させることができる。
【0010】
取付穴の周囲に無塗装部分が設定されているので、電装品を取付穴に取り付ければ、電装品を無塗装部分に電気的に接続することにより、電装品のアースを簡単にとることができる。したがって、吊り具を取り外した後の取付穴をとくに有効に利用することができる。
【0011】
作業車両は、取付穴に着脱可能に取り付けられるステーと、ステーに支持されたアンテナとを備えていてもよい。
【0012】
この構成では、アンテナを無塗装部分に電気的に接続することにより、アンテナのアースをとることができる。
【0013】
また、ステーが金属製である場合には、ステーが無塗装部分に接触することにより、アース線を介さずにアンテナを無塗装部分に電気的に接続させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、外面に形成された取付穴を複数の部品に有効に共用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコンバインの右側面図である。
【
図3】キャビンの右後上端部を右後方から見た斜視図である。
【
図4】キャビンの右後上端部を右後方から見た斜視図であり、ラジオアンテナおよびアンテナステーが取り外された状態を示す。
【
図6】キャビンの左後上端部を左後方から見た斜視図である。
【
図7】キャビンの左後上端部を左後方から見た斜視図であり、カバーが取り外された状態を示す。
【
図8】第1鋼板および第2鋼板を突き合わせて形成される角部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
<コンバインの全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るコンバイン1の右側面図である。
図2は、コンバイン1の平面図である。
【0018】
コンバイン1は、圃場を走行しながら穀稈の刈り取りおよび穀稈からの脱穀を行う収穫機の一例である。
【0019】
コンバイン1は、
図1に示されるように、複数の鋼材を組み合わせた構造物であるメインフレーム2を備えている。また、コンバイン1は、圃場などの不整地を走破する能力を有する走行装置として、左右一対のクローラ3を採用している。メインフレーム2は、その左右一対のクローラ3に支持されている。
【0020】
クローラ3には、駆動スプロケット4が駆動輪として備えられている。駆動スプロケット4には、車軸5が相対回転不能に接続されている。車軸5には、エンジンの動力が動力伝達機構を介して伝達される。エンジンは、排気タービン式過給機付きのディーゼルエンジンである。動力伝達機構は、たとえば、HST(Hydro Static Transmission:静油圧式無段変速機)やギヤ機構を含む。エンジンおよび動力伝達機構は、メインフレーム2に支持されている。動力伝達機構は、メインフレーム2の前端部における左右方向(車幅方向)の中央部上に配置され、エンジンは、動力伝達機構の後側において、動力伝達機構よりも右側に迫り出して配置されている。
【0021】
メインフレーム2の前方であって、コンバイン1の最前部には、刈取装置11が設けられている。刈取装置11は、コンバイン1の前進に伴って、圃場に植立されている穀稈を刈り取る。
【0022】
メインフレーム2には、脱穀装置12、キャビン13およびグレンタンク14が支持されている。
【0023】
脱穀装置12は、
図2に示されるように、メインフレーム2の左部分上に配置されている。脱穀装置12は、刈取装置11に刈り取られた穀稈の株元側を脱穀フィードチェーンによって後方に搬送し、穀稈の穂先側を扱室に供給して脱穀する。
【0024】
キャビン13は、メインフレーム2の前端部上で右側に寄せて配置されている。キャビン13は、その内部に運転者が搭乗する空間を提供し、その空間内には、たとえば、運転者が着座する運転席や操作レバーおよび操作ペダルなどの操作部材が配置されている。
図1に示されるように、キャビン13のフロアを提供する底板部15は、動力伝達機構の右側で、メインフレーム2の右前端部から上方に離間している。そして、キャビン13は、底板部15よりも左側の部分が動力伝達機構の上方に迫り出し、後部がエンジンの上方に迫り出している。
【0025】
キャビン13の右側面には、乗降口16が形成され、その乗降口16を開閉するドア17が設けられている。コンバイン1の運転者(刈取作業を行う作業者)は、ドア17を開いて、乗降口16からキャビン13に対して乗り降りすることができる。
【0026】
グレンタンク14は、キャビン13の後方に、キャビン13との間に間隔を空けて配置されている。グレンタンク14は、その内部に籾(穀粒)を貯留可能な空間を提供している。脱穀装置12で穀稈から外れた籾は、グレンタンク14に搬送されて、グレンタンク14内に貯留される。グレンタンク14には、アンローダ18が接続されており、グレンタンク14に貯留された籾は、アンローダ18により搬出して機外に排出することができる。
【0027】
<ラジオアンテナ>
図3は、キャビン13の右後上端部を右後方から見た斜視図である。
【0028】
キャビン13には、乗降口16の後側に、乗降口16の後端縁に沿って延びるピラー21が設けられている。そのピラー21の上端部には、ラジオ電波を受信するためのラジオアンテナ22が取り付けられている。具体的には、ラジオアンテナ22は、金属製のアンテナステー23に支持されて、アンテナステー23が2個のボルト24でピラー21に固定されることにより、ピラー21に取り付けられている。
【0029】
図4は、キャビン13の右後上端部を右後方から見た斜視図であり、ラジオアンテナ22およびアンテナステー23が取り外された状態を示す。
【0030】
2個のボルト24が外されて、ラジオアンテナ22およびアンテナステー23が取り外されると、2個のボルト24がそれぞれねじ込まれていた2個の取付穴25が露出する。
【0031】
【0032】
ピラー21の表面は、塗装されているが、取付穴25の周囲には、取付穴25の周縁に沿って、塗装されていない円環状の無塗装部分26が設定されている。
【0033】
コンバイン1の製造工程では、キャビン13は、単独で組み立てられた後、メインフレーム2上に搭載される。この搭載の際には、キャビン13をクレーンなどで吊り上げる必要がある。そのため、キャビン13には、吊り索(スリング)を係止させる吊り具を取り付けるための取付穴25が形成されていて、その取付穴25に吊り具が取り付けられる。そして、吊り具が取付穴25に取り付けられた状態で、キャビン13の外面が塗装され、その後、キャビン13がメインフレーム2上に搭載される。
【0034】
キャビン13がメインフレーム2上に搭載された後は、吊り具が不要となる。そのため、キャビン13の搭載後に、不要となった吊り具が取付穴25から取り外される。吊り具が取付穴25に取り付けられた状態で、キャビン13の外面の塗装が行われるので、吊り具が取り外されると、取付穴25とともに取付穴25の周囲の無塗装部分26が露出する。そのため、キャビン13の外観(見た目)が悪くなる。
【0035】
そこで、吊り具が取り付けられていた取付穴25を利用して、ラジオアンテナ22を支持するアンテナステー23が取り付けられている。
【0036】
<カバー>
図6は、キャビン13の左後上端部を左後方から見た斜視図である。
【0037】
キャビン13の左側面には、目隠しのためのカバー31が取り付けられている。カバー31は、2個のボルト32でキャビン13に取り付けられている。
【0038】
図7は、キャビン13の左後上端部を左後方から見た斜視図であり、カバー31が取り外された状態を示す。
【0039】
2個のボルト32が外されて、カバー31が取り外されると、2個のボルト32がそれぞれねじ込まれていた2個の取付穴33が露出する。キャビン13の左側面は、塗装されているが、取付穴33の周囲には、取付穴33の周縁に沿って、塗装されていない円環状の無塗装部分34が設定されている。
【0040】
図8は、第1鋼板41および第2鋼板42を突き合わせて形成される角部43を示す斜視図である。
【0041】
コンバイン1には、第1鋼板41および第2鋼板42を突き合わせて角部43を形成した箇所が存在する。角部43では、第1鋼板41が第2鋼板42の一方側から第2鋼板42の端縁を他方側に越えて、第2鋼板42の他方側に第1鋼板41の端部44が突き出ている。そして、第1鋼板41と第2鋼板42との間は、第1鋼板41の端部44と第2鋼板42とに跨がるように、それらの隙間にコーキング剤45が充填されることにより、コーキングされている。
【0042】
<作用効果>
以上のように、外面が塗装されているピラー21には、外側から部品を取り付けるための取付穴25が形成されている。そして、取付穴25の周囲には、塗装されていない無塗装部分26が設定されている。そのため、金属製のアンテナステー23が取付穴25に取り付けられると、アンテナステー23が無塗装部分26に接触して、アンテナステー23が無塗装部分26に電気的に接続される。そのため、アース線を介さなくても、アンテナステー23をアースに接続することができる。その結果、アンテナステー23に支持されるラジオアンテナ22のアースを簡単にとることができる。したがって、吊り具を取り外した後の取付穴25を有効に利用することができる。また、取付穴25にアンテナステー23が取り付けられることにより、そのアンテナステー23で取付穴25を隠すことができ、キャビン13の外観(見た目)を向上させることができる。
【0043】
<変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、他の形態で実施することも可能である。
【0044】
たとえば、前述の実施形態では、作業車両の一例として、作業装置としての刈取装置11および脱穀装置12を備えるコンバイン1を取り上げたが、本発明は、人参や大根、枝豆、キャベツなどの野菜を収穫して搬送する収穫搬送装置を作業装置として備える収穫機、苗植付装置を作業装置として備える田植機、播種装置を作業装置として備える直播機、プラウを作業装置として備えるトラクタ、バケットを作業装置として備える建設作業車など、種々の作業車両に適用することができる。
【0045】
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1:コンバイン(作業車両)
21:ピラー
22:ラジオアンテナ(アンテナ)
23:アンテナステー(ステー)
25,33:取付穴
26,34:無塗装部分