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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】埋入可能流体抽出システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20240405BHJP
   A61M 1/28 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
A61M1/00 131
A61M1/28
A61M1/00 161
A61M1/00 135
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020512943
(86)(22)【出願日】2018-05-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 IL2018050525
(87)【国際公開番号】W WO2018211500
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-04-28
(31)【優先権主張番号】62/505,931
(32)【優先日】2017-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519404388
【氏名又は名称】パラゲート メディカル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100206335
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 和宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】ハナニ ニタイ
(72)【発明者】
【氏名】ギルボア ハダール
(72)【発明者】
【氏名】アルトマン ハーナン
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0109855(US,A1)
【文献】特表2010-527247(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0128654(US,A1)
【文献】特開2007-007430(JP,A)
【文献】特表2001-506871(JP,A)
【文献】特表2012-507384(JP,A)
【文献】特表2014-521367(JP,A)
【文献】国際公開第2017/015351(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/00-1/38;60/00-60/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に埋入されるように形作られ、サイズ設定された埋入可能流体抽出システムであって、
内ルーメンを含む透過性サックであって、前記透過性サックは、平らで薄い本体を形成するように予め形作られ、前記透過性サックは、流体に対して透過性であり、開口を含む、透過性サックと、
前記透過性サックが患者の身体に導入された後に前記開口を通して前記透過性サックの中で前記サックの前記内ルーメンに展開及び挿入されるように構成された弾性内部スカフォルドであって、前記弾性内部スカフォルドは、前記内ルーメンに展開及び挿入された後に、前記透過性サックへの流体抽出中及び前記透過性サックからの流体排出中に前記透過性サック本体を平らで薄く維持するために前記透過性サックを引き伸ばすように構成された、弾性内部スカフォルドと、
を備える埋入可能流体抽出チャンバを備える、システム。
【請求項2】
前記弾性内部スカフォルドが、前記平らで薄い本体内で螺旋状に形成され、前記透過性サックの内ルーメンに真空が加えられたときに前記透過性サックの内側への潰れを防ぐのに十分な剛性を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記埋入可能流体抽出チャンバが、腹膜腔内に置かれるのに十分な小さなものまたは薄いものである、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記透過性サックが、少なくとも1つの平らな外表面を備え、前記少なくとも1つの平らな外表面が、組織表面に付着するように構成され、前記埋入可能流体抽出チャンバが、付着した前記組織表面に前記平らな表面を通して陰圧を加えることにより、前記組織から流体を抽出する、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの平らな外表面が、付着した前記組織の形状および/または輪郭と少なくとも部分的に一致するように形作られ、サイズ設定された、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記サックが、少なくとも部分的に多孔質膜層から作られている、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記サックの外面および/または内面が、前記多孔質膜層を備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記多孔質膜層が、均質膜層である、請求項6または7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記多孔質膜層が、前記透過性サックへの細胞の侵入を防ぐのに十分に小さい複数の細孔を備える、請求項6から8のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項10】
前記細孔の最大指定寸法が5μmよりも小さい、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記弾性内部スカフォルドが、前記弾性内部スカフォルドのルーメンの内側に置かれた細長い内スタイレットを含み、前記内スタイレットが、前記透過性サックの前記薄い本体を維持する、請求項1から10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記内スタイレットが、平らにされ薄くされた断面または丸められた断面を有する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記弾性内部スカフォルドが編組管を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記透過性サックの前記開口に設けられたポートコネクタを備え、前記弾性内部スカフォルドがコネクタを備え、前記コネクタが、前記ポートコネクタと連動するように構成され、前記透過性サックに対する前記弾性内部スカフォルドの運動を制限する、請求項1から13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記透過性サックが2つの平らな層を含み、前記2つの平らな層が、前記層の周縁に沿って互いに接続されており、
前記2つの平らな層が、前記周縁によって取り囲まれた領域内の少なくとも1つの接続点で接続されている、
請求項1から14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記弾性内部スカフォルドが、前記透過性サックに接触する組織の形状に一致するように構成された、管または複数のビーズを含む、請求項1から15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記サックの前記開口に接続された排出管と、
制御ユニットであって、前記排出管に接続され、ポンプを備え、前記制御ユニットが、前記排出管に陰圧を加えるよう前記ポンプを起動させる、制御ユニットと、
を備える、請求項1から16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記制御ユニットに接続された少なくとも1つの埋入型生理センサを備え、前記少なくとも1つの埋入型生理センサが、前記患者に関係した少なくとも1つの生理パラメータの値を測定するように構成され、前記制御ユニットが、前記少なくとも1つの生理パラメータの前記測定値に応じて前記ポンプの起動を制御するように構成された、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記少なくとも1つの生理パラメータが、前記患者の間隙圧および/または血圧および/または血液内容および/または心拍数を含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記少なくとも1つの生理パラメータがうっ血の表示を含む、請求項18または19のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項21】
前記排出管に流体的に接続されたカテーテルをさらに備え、前記カテーテルが、泌尿器系に接続された先端を有する、請求項17から20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記制御ユニットが、前記排出管に加えられる前記陰圧を発生させるのに十分な低レベル陰圧の短いバーストを発生させるよう、前記ポンプに信号を送る、請求項17から21のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項23】
前記制御ユニットに電気的に接続され、前記排出管上に置かれた少なくとも1つの弁を備え、前記ポンプが前記陰圧を発生させている間に前記排出管を閉じたり開いたりするよう、前記制御ユニットが前記弁に信号を送る、請求項17から22のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項24】
前記排出管と前記ポンプの出口とを接続する流路と、前記制御ユニットによって制御される少なくとも1つの追加の弁であって、前記流路上に置かれた少なくとも1つの追加の弁と、を備え、前記少なくとも1つの追加の弁が、前記流路を流れる流れを制御する、請求項17から23のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項25】
前記ポンプが前記陰圧を発生させている間に前記流路を閉じたり開いたりするよう、前記制御ユニットが前記少なくとも1つの追加の弁に信号を送る、請求項24に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条(e)の下、2017年5月14日に出願された米国特許仮出願第62/505,931号の優先権の恩典を主張するものである。この仮出願の内容は、その全体が、参照によって本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明は流体抽出システム(fluid extraction system)に関し、より詳細には、限定はされないが、埋入される(implanted)流体抽出システム(以後、埋入型流体抽出システム)に関する。
【背景技術】
【0003】
非特許文献1に記載されているとおり、腹膜に到達する流体の性質は、25%がリンパ液、75%が循環液および間質液である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Flesner他、Blood Purif 1992;10:136~14
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの例が以下に列挙されている。1つの例の特徴を、別の例の1つまたは複数の特徴と組み合わせることができることに留意すべきである。
【0006】
例1.患者に埋入されるように形作られ、サイズ設定された埋入可能流体抽出システムであって、
排出管に接続された流体抽出チャンバであり、組織に陰圧を加えることによって流体を抽出する流体抽出チャンバと、
皮下に埋入されるようにサイズ設定された制御ユニットであり、前記排出管に接続された制御ユニットとを備え、前記制御ユニットが、
少なくとも1つの治療プロトコルまたはその一部分を記憶するためのメモリと、
前記排出管に陰圧を加えるためのポンプと、
制御回路と
を備え、前記制御回路が、前記治療プロトコルに従って前記ポンプを起動させる、
埋入可能流体抽出システム。
【0007】
例2.前記制御回路に接続された少なくとも1つの埋入される生理センサ(以後、埋入型生理センサ)をさらに備え、前記センサが、前記患者に関係した少なくとも1つの生理パラメータの値を測定する、例1に記載のシステム。
【0008】
例3.前記少なくとも1つの生理パラメータが、前記患者の間隙圧(interstitial pressure)または血圧および/または血液内容(blood content)および/または心拍数を含む、例2に記載のシステム。
【0009】
例4.前記生理センサが、前記血液内容中のクレアチニンおよび/またはアルブミンおよび/またはナトリウムおよび/またはカリウムおよび/または尿素および/またはフォスフェート(Phosphate)のレベルを測定する、例3に記載のシステム。
【0010】
例5.前記少なくとも1つの生理パラメータがうっ血(congestion)の表示を含む、例2から4のいずれか一項に記載のシステム。
【0011】
例6.前記少なくとも1つの生理パラメータの測定された前記値が前記メモリに記憶される、例2から5のいずれか一項に記載のシステム。
【0012】
例7.前記制御回路に接続された少なくとも1つの埋入される抽出物センサ(以後、埋入型抽出物センサ)をさらに備え、前記センサが、抽出された流体に関係した少なくとも1つのパラメータの値を測定する、例1に記載のシステム。
【0013】
例8.前記少なくとも1つのパラメータが、抽出された前記流体の流れおよび/または抽出された前記流体の圧力および/または抽出された前記流体の体積を含む、例7に記載のシステム。
【0014】
例9.前記少なくとも1つのパラメータが、抽出された前記流体中の生体物質および/または化学物質のレベルを含む、例7または8に記載のシステム。
【0015】
例10.前記物質が、クレアチニンおよび/またはアルブミンおよび/またはナトリウムおよび/またはカリウムおよび/または尿素および/またはフォスフェートを含む、例9に記載のシステム。
【0016】
例11.前記抽出物センサが、うっ血またはうっ血の表示を測定する、例7に記載のシステム。
【0017】
例12.測定された前記値が前記メモリに記憶される、例7から11のいずれか一項に記載のシステム。
【0018】
例13.前記排出管に流体的に接続されたカテーテルをさらに備え、前記カテーテルが、泌尿器系に接続された先端を有する、例1から12のいずれか一項に記載のシステム。
【0019】
例14.前記排出管に流体工学的に接続されたリザーバをさらに備え、前記リザーバが、抽出された前記流体を蓄えるように形作られ、サイズ設定された、例1から13のいずれか一項に記載のシステム。
【0020】
例15.前記制御ユニットが、前記制御回路に接続された通信回路をさらに備え、前記通信回路が、無線通信を介して携帯型装置および/または遠隔コンピュータに接続された、例1から14のいずれか一項に記載のシステム。
【0021】
例16.前記通信回路が、警報信号を生成するよう、前記携帯型装置および/または前記遠隔コンピュータに信号を送る、例15に記載のシステム。
【0022】
例17.前記通信回路が、携帯型装置および/または遠隔コンピュータから情報を受け取り、前記情報が前記メモリに記憶される、例15または16に記載のシステム。
【0023】
例18.前記制御ユニットに接続されたバッテリをさらに備え、前記バッテリが、前記制御回路および前記ポンプに電力を供給する、例1から17のいずれか一項に記載のシステム。
【0024】
例19.前記バッテリが、再充電可能なバッテリである、例18に記載のシステム。
【0025】
例20.前記流体抽出チャンバが平らにされており、および/または薄い、例1から19のいずれか一項に記載のシステム。
【0026】
例21.前記流体抽出チャンバが、腹膜腔内に位置する器官の前記組織と直接に接触するように形作られ、サイズ設定された、例1から20のいずれか一項に記載のシステム。
【0027】
例22.前記流体抽出チャンバが、柱組織(column tissue)と直接に接触するように形作られ、サイズ設定された、例1から21のいずれか一項に記載のシステム。
【0028】
例23.前記流体抽出チャンバが、皮下に埋入されるように形作られ、サイズ設定された、例1から22のいずれか一項に記載のシステム。
【0029】
例24.前記制御ユニットが薄い、例1から23のいずれか一項に記載のシステム。
【0030】
例25.患者に埋入されるように形作られ、サイズ設定された埋入可能流体抽出システムであって、
排出管に接続された流体抽出チャンバであり、組織に陰圧を加えることによって流体を抽出する流体抽出チャンバと、
皮下に埋入されるようにサイズ設定された制御ユニットであり、前記排出管に接続された制御ユニットと
を備え、前記制御ユニットが、
プロトコル流体抽出治療の少なくとも1つの結果の値を測定するためのセンサと、
前記センサに接続された制御回路であり、前記値を分析することにより前記治療に関するフィードバックを受け取る制御回路と
を備える、埋入可能流体抽出システム。
【0031】
例26.前記治療のためのプロトコルまたはその一部分を記憶するためのメモリをさらに備え、前記流体抽出チャンバに陰圧を加えるためのポンプをさらに備える、例25に記載のシステム。
【0032】
例27.前記制御ユニットが、前記少なくとも1つの結果の前記値が所望の値範囲にない場合に警報信号を生成するよう携帯型装置または遠隔コンピュータに信号を送るための通信回路を備える、例25に記載のシステム。
【0033】
例28.前記流体抽出チャンバが、皮下に埋入されるように形作られ、サイズ設定された、例25から27のいずれか一項に記載のシステム。
【0034】
例29.
薄い本体を形成するように予め形作られた透過性サック(sack)であり、開口を備えるサックと、
前記開口を通して前記サックの中で展開されるように構成された内部スカフォルド(internal scaffold)であり、前記サックの前記薄い本体を維持する内部スカフォルドと
を備える埋入可能流体抽出チャンバ。
【0035】
例30.腹膜内に置かれるのに十分な小さなものである、例29に記載のチャンバ。
【0036】
例31.前記透過性サックが、平らで薄い本体を形成するように予め形作られている、例29または30に記載のチャンバ。
【0037】
例32.前記サックの外面の多孔質膜層をさらに備える、例29に記載のチャンバ。
【0038】
例33.前記サックの空洞内の多孔質膜をさらに備える、例29に記載のチャンバ。
【0039】
例34.前記サックが、少なくとも部分的に多孔質膜層から作られている、例29に記載のチャンバ。
【0040】
例35.前記内部スカフォルドが、前記内部スカフォルドのルーメン(lumen)の内側に置かれた細長い内スタイレット(inner elongated stylet)を含み、前記スタイレットが、前記透過性サックの前記薄い本体を維持する、例29から34のいずれか一項に記載のチャンバ。
【0041】
例36.前記内スタイレットが、平らにされ薄くされた断面を有する、例35に記載のチャンバ。
【0042】
例37.前記内スタイレットが長方形の断面を有する、例35に記載のチャンバ。
【0043】
例38.前記内スタイレットが丸い断面を有する、例35に記載のチャンバ。
【0044】
例39.前記内スタイレットが、形状記憶材料から作られている、例35から38のいずれか一項に記載のチャンバ。
【0045】
例40.前記膜の細孔のより大きな寸法が10マイクロメートルよりも小さい、例32から34のいずれか一項に記載のチャンバ。
【0046】
例41.前記内部スカフォルドがコネクタを備え、前記コネクタが、前記サックに対する前記内部スカフォルドの運動を制限する、例31から40のいずれか一項に記載のチャンバ。
【0047】
例42.前記内部スカフォルドが管を含む、例29から41のいずれか一項に記載のチャンバ。
【0048】
例43.前記内部スカフォルドが複数のビーズを含む、例29に記載のチャンバ。
【0049】
例44.前記ビーズが、イオン電荷を有するビーズを含む、例43に記載のチャンバ。
【0050】
例45.前記ビーズの最小寸法が少なくとも直径1mmである、例43または44に記載のチャンバ。
【0051】
例46.
前記サックが2つの平らな層を含み、前記2つの平らな層が、前記層の周縁に沿って互いに接続されており、
前記2つの平らな層が、前記周縁によって取り囲まれた領域内の少なくとも1つの接続点で接続されている、
例29から45のいずれか一項に記載のチャンバ。
【0052】
例47.前記内部スカフォルドが管のネットワークを含む、例29に記載のチャンバ。
【0053】
例48.管の前記ネットワークに、ゲルまたは自己重合性材料(self-polymeraizing material)が充填されている、例47に記載のチャンバ。
【0054】
例49.前記サックの外面が多孔質膜から作られている、例47または48に記載のチャンバ。
【0055】
例50.前記サックの外面の多孔質膜層を備える、例47または48に記載のチャンバ。
【0056】
例51.前記サックの空洞内の多孔質膜を備える、例47または48に記載のチャンバ。
【0057】
例52.
2つの平らな層を備える透過性サックであり、前記2つの平らな層が、前記層の周縁に沿って互いに接続された透過性サック
を備え、
前記2つの平らな層が、前記周縁によって取り囲まれた領域内の少なくとも1つの接続点で接続されている、
埋入可能流体抽出チャンバ。
【0058】
例53.患者に埋入されるように形作られ、サイズ設定された埋入可能流体抽出システムであって、
排出管に接続された流体抽出チャンバであり、組織に陰圧を加えることによって流体を抽出する流体抽出チャンバと、
前記排出管に接続された制御ユニットと
を備え、前記制御ユニットが、
ポンプを備え、前記ポンプが、前記排出管に陰圧および陽圧を加える、
システム。
【0059】
例54.前記流体抽出チャンバが、より高い強度およびより低い強度の前記陰圧を加える、例53に記載のシステム。
【0060】
例55.前記制御ユニットの制御回路が、より高い強度およびより低い強度の前記陰圧および前記陽圧を加えるよう、前記ポンプに信号を送る、例53または54に記載のシステム。
【0061】
例56.前記ポンプが回転ポンプであり、前記陰圧および前記陽圧を加えるために、前記回転ポンプが反対方向に回転する、例53から55のいずれか一項に記載のシステム。
【0062】
例57.流体抽出チャンバを展開するための方法であって、
排出出口を有する平らにされた流体抽出チャンバを体腔に導入するステップと、
前記チャンバの空洞に内部スカフォルドを挿入するステップと、
前記排出出口をシンク(sink)に接続するステップと
を含む方法。
【0063】
例58.前記シンクが、リザーバ、膀胱または腎盂を含む、例57に記載の方法。
【0064】
例59.前記平らにされた流体抽出チャンバに対する前記内部スカフォルドの運動を制限するステップを含む、例57に記載の方法。
【0065】
例60.接続する前記ステップが、前記排出出口をポンプに接続するステップを含む、例57から59のいずれか一項に記載の方法。
【0066】
例61.導入する前記ステップが、前記排出出口に接続された導入要素によって前記平らにされた流体抽出チャンバを導入するステップを含み、前記導入要素が、前記排出出口よりも高剛性(rigid)である、例57から60のいずれか一項に記載の方法。
【0067】
例62.導入する前記ステップが、折り畳まれた、排出出口を有する平らにされた流体抽出チャンバを体腔に導入するステップを含む、例57から61のいずれか一項に記載の方法。
【0068】
例63.導入する前記ステップの後に、前記折り畳まれた、平らにされた流体抽出チャンバを広げるステップをさらに含む、例62に記載の方法。
【0069】
例64.流体抽出治療を変更するための方法であって、
患者を治療している間に、前記治療に関係した少なくとも1つの生理パラメータの値を、制御ユニットの少なくとも1つのセンサによって測定するステップと、
前記測定に基づいて、前記治療のプロトコルまたはその一部分を、前記ユニットの制御回路によって変更するステップと
を含む方法。
【0070】
例65.測定する前記ステップが、前記患者の少なくとも1つの生理パラメータの値を測定するステップを含み、前記生理パラメータが、流体うっ血、血圧、体重および/または心拍数を含む、例64に記載の方法。
【0071】
例66.測定する前記ステップが、うっ血またはうっ血に関する表示を測定するステップを含む、例64または65に記載の方法。
【0072】
例67.前記うっ血またはうっ血の表示に基づいて間隙圧の回復時間を評価するステップをさらに含む、例66に記載の方法。
【0073】
例68.変更する前記ステップが、前記評価の結果に基づいて、組織に加えられる圧力、加圧の持続時間および/またはデューティ・サイクルを変更するステップを含む、例67に記載の方法。
【0074】
例69.測定する前記ステップが、前記患者の血中の生体物質および/または化学物質のレベルを測定するステップを含む、例64から68のいずれか一項に記載の方法。
【0075】
例70.測定する前記ステップが、前記患者から抽出された流体に関係した少なくとも1つのパラメータの値を測定するステップを含む、例64から69のいずれか一項に記載の方法。
【0076】
例71.前記抽出された流体に関係した前記少なくとも1つのパラメータが、前記抽出された流体の流れ、前記抽出された流体の圧力、前記抽出された流体の体積を含む、例70に記載の方法。
【0077】
例72.前記抽出された流体に関係した前記少なくとも1つのパラメータが、前記抽出された流体中の生体物質および/または化学物質のレベルを含む、例70または71に記載の方法。
【0078】
例73.前記生体物質および/または化学物質が、クレアチニン、尿素、ナトリウム、カリウム、フォスフェートおよび/またはアルブミンを含む、例72に記載の方法。
【0079】
例74.測定された前記値を前記制御ユニットのメモリに記憶するステップを含む、例64から73のいずれか一項に記載の方法。
【0080】
例75.前記腹膜内に埋入された流体抽出チャンバによって組織から流体を抽出するための方法であって、
前記流体抽出チャンバを前記組織と接触させるステップと、
前記チャンバにポンプによって能動的に高レベルの陰圧を加え、続いて低レベルの陰圧を加えるステップと
を含む方法。
【0081】
例76.装置による流体抽出治療および第2の治療を変更するための方法であって、
前記治療の少なくとも1つの結果の値を測定するステップと、
前記少なくとも1つの結果の測定された前記値に基づいて、前記流体抽出治療および/または前記第2の治療を変更するステップと
を含む方法。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態の追加の例が以下に列挙されている。1つの例の特徴を、別の例の1つまたは複数の特徴と組み合わせることができることに留意すべきである。
【0083】
例1.患者に埋入されるように形作られ、サイズ設定された埋入可能流体抽出システムであって、
平らで薄い形状を有し、排出管に接続されており、少なくとも1つの平らな外表面を備える流体抽出チャンバを備え、前記少なくとも1つの平らな外表面が、前記排出管に陰圧が加えられたときに組織表面に付着するように構成されており、付着した前記組織表面に前記平らな表面を通して前記陰圧を加えることにより、前記チャンバが前記組織から流体を抽出する、
システム。
【0084】
例2.前記排出管に接続された制御ユニットを備え、前記制御ユニットが、前記排出管に前記陰圧を加えるためのポンプを備える、例1に記載のシステム。
【0085】
例3.前記流体抽出チャンバに挿入されるように構成され、前記平らで薄い形状を維持するために前記流体抽出チャンバを引き伸ばすように構成された内部スケルトン(internal skeleton)を備える、例1または2に記載のシステム。
【0086】
例4.前記内部スケルトンが弾性金属メッシュ(mesh)を含む、例3に記載のシステム。
【0087】
例5.前記制御ユニットが、
少なくとも1つの治療プロトコルまたはその一部分を記憶するためのメモリと、
制御回路と
を備え、前記制御回路が、前記治療プロトコルに従って前記ポンプを起動させる、
例2に記載のシステム。
【0088】
例6.前記制御回路が、前記排出管に前記陰圧を断続的に加えるよう前記ポンプに信号を送る、例5に記載のシステム。
【0089】
例7.前記流体抽出チャンバが多孔質膜を含み、前記少なくとも1つの平らな表面が前記多孔質膜の平らな表面である、例1から6のいずれか一項に記載のシステム。
【0090】
例8.前記多孔質膜が複数の細孔を含み、前記細孔の幅が5μmよりも小さい、例7に記載のシステム。
【0091】
例9.前記少なくとも1つの平らな表面が、付着した前記組織の形状および/または輪郭と少なくとも部分的に一致するように形作られ、サイズ設定された、例1から8のいずれか一項に記載のシステム。
【0092】
例10.前記制御回路に接続された少なくとも1つの埋入型生理センサをさらに備え、前記センサが、前記患者に関係した少なくとも1つの生理パラメータの値を測定する、例5に記載のシステム。
【0093】
例11.前記少なくとも1つの生理パラメータが、前記患者の間隙圧および/または血圧および/または血液内容および/または心拍数を含む、例10に記載のシステム。
【0094】
例12.前記生理センサが、前記血液内容中のクレアチニンおよび/またはアルブミンおよび/またはナトリウムおよび/またはカリウムおよび/または尿素および/またはフォスフェートのレベルを測定する、例11に記載のシステム。
【0095】
例13.前記少なくとも1つの生理パラメータがうっ血の表示を含む、例10から12のいずれか一項に記載のシステム。
【0096】
例14.前記制御回路に接続された少なくとも1つの埋入型抽出物センサをさらに備え、前記センサが、抽出された流体に関係した少なくとも1つのパラメータの値を測定する、例5に記載のシステム。
【0097】
例15.前記少なくとも1つのパラメータが、抽出された前記流体の流れおよび/または抽出された前記流体の圧力および/または抽出された前記流体の体積を含む、例14に記載のシステム。
【0098】
例16.前記少なくとも1つのパラメータが、抽出された前記流体中の生体物質および/または化学物質のレベルを含む、例14または15に記載のシステム。
【0099】
例17.前記物質が、クレアチニンおよび/またはアルブミンおよび/またはナトリウムおよび/またはカリウムおよび/または尿素および/またはフォスフェートを含む、例16に記載のシステム。
【0100】
例18.前記抽出物センサが、うっ血またはうっ血の表示を測定する、例14から17のいずれか一項に記載のシステム。
【0101】
例19.前記排出管に流体工学的に接続されたカテーテルをさらに備え、前記カテーテルが、泌尿器系に接続された先端を有する、例1から18のいずれか一項に記載のシステム。
【0102】
例20.前記排出管に流体工学的に接続されたリザーバをさらに備え、前記リザーバが、抽出された前記流体を蓄えるように形作られ、サイズ設定された、例1から19のいずれか一項に記載のシステム。
【0103】
例21.前記制御ユニットが、前記制御回路に接続された通信回路をさらに備え、前記通信回路が、無線通信を介して携帯型装置および/または遠隔コンピュータに接続された、例5に記載のシステム。
【0104】
例22.前記通信回路が、警報信号を生成するよう、前記携帯型装置および/または前記遠隔コンピュータに信号を送る、例21に記載のシステム。
【0105】
例23.前記通信回路が、携帯型装置および/または遠隔コンピュータから情報を受け取り、前記情報が前記メモリに記憶される、例21または22に記載のシステム。
【0106】
例24.前記制御ユニットに接続されたバッテリをさらに備え、前記バッテリが、前記制御ユニットに電力を供給する、例5に記載のシステム。
【0107】
例25.前記流体抽出チャンバが、腹膜腔内に位置する器官の前記組織と直接に接触するように形作られ、サイズ設定された、例1から24のいずれか一項に記載のシステム。
【0108】
例26.前記流体抽出チャンバが、皮下に埋入されるように形作られ、サイズ設定された、例1から25のいずれか一項に記載のシステム。
【0109】
例27.
平らで薄い本体を形成するように予め形作られた透過性サックであり、開口を含むサックと、
前記開口を通して前記サックの中で展開されるように構成された弾性内部スカフォルドであり、前記サックの前記平らで薄い本体を維持するために前記サックを引き伸ばす弾性内部スカフォルドと
を備える埋入可能流体抽出チャンバ。
【0110】
例28.前記弾性内部スカフォルドが、透過性サックの内ルーメンに真空が加えられたときに透過性サックの内側への潰れ(collaspe)を防ぐのに十分な高い剛性を有する、例27に記載のチャンバ。
【0111】
例29.腹膜内に置かれるのに十分な小さなものである、例27または28に記載のチャンバ。
【0112】
例30.前記サックの外面の多孔質膜層をさらに備える、例27から29のいずれか一項に記載のチャンバ。
【0113】
例31.前記サックの空洞内の多孔質膜をさらに備える、例27から29のいずれか一項に記載のチャンバ。
【0114】
例32.前記サックが、少なくとも部分的に多孔質膜層から作られている、例27から29のいずれか一項に記載のチャンバ。
【0115】
例33.前記内部スカフォルドが、前記内部スカフォルドのルーメンの内側に置かれた細長い内スタイレットを含み、前記スタイレットが、前記透過性サックの前記薄い本体を維持する、例27から32のいずれか一項に記載のチャンバ。
【0116】
例34.前記内スタイレットが、平らにされ薄くされた断面または丸められた断面を有する、例33に記載のチャンバ。
【0117】
例35.前記内部スカフォルドが編組管(braided tube)を含む、例27から34のいずれか一項に記載のチャンバ。
【0118】
例36.前記膜の細孔の最大寸法が5μmよりも小さい、例30から32のいずれか一項に記載のチャンバ。
【0119】
例37.前記内部スカフォルドがコネクタを備え、前記コネクタが、前記透過性サックに対する前記内部スカフォルドの運動を制限する、例27から36のいずれか一項に記載のチャンバ。
【0120】
例38.前記透過性サックが2つの平らな層を含み、前記2つの平らな層が、前記層の周縁に沿って互いに接続されており、
前記2つの平らな層が、前記周縁によって取り囲まれた領域内の少なくとも1つの接続点で接続されている、
例27から37のいずれか一項に記載のチャンバ。
【0121】
例39.前記内部スカフォルドが管または複数のビーズを含む、例27から38のいずれか一項に記載のチャンバ。
【0122】
例40.患者に埋入されるように形作られ、サイズ設定された埋入可能流体抽出システムであって、
排出管に接続された流体抽出チャンバであり、組織表面と接触するように形作られ、サイズ設定された少なくとも1つの平らな外部多孔質膜を有する流体抽出チャンバと、
前記排出管に接続された制御ユニットであり、前記少なくとも1つの平らな外部多孔質膜を機械的に振動させるために、前記排出管の陰圧の上レベルおよび下レベルの発生をプロトコルに従って制御する制御ユニットと
を備えるシステム。
【0123】
例41.前記制御ユニットが、
前記排出管に接続された真空ポンプであり、陰圧を発生させるように構成された真空ポンプと、
前記ポンプに電気的に接続された制御回路であり、前記ポンプによる前記陰圧の発生を制御するように構成された制御回路と
を備える、例40に記載のシステム。
【0124】
例42.前記制御回路が、前記排出管に加えられる前記陰圧を発生させるのに十分な低レベル陰圧の短いバーストを発生させるよう、前記真空ポンプに信号を送る、例41に記載のシステム。
【0125】
例43.前記制御回路に電気的に接続され、前記排出管上に置かれた少なくとも1つの弁を備え、前記真空ポンプが前記陰圧を発生させている間に前記排出管を閉じたり開いたりするよう、前記制御回路が前記弁に信号を送る、例41または42に記載のシステム。
【0126】
例44.前記排出管と前記ポンプの出口とを接続する流路と、前記制御回路によって制御される少なくとも1つの弁であり、前記流路上に置かれた少なくとも1つの弁とを備え、前記少なくとも1つの弁が、前記流路を流れる流れを制御する、例41から43のいずれか一項に記載のシステム。
【0127】
例45.前記ポンプが前記陰圧を発生させている間に前記流路を閉じたり開いたりするよう、前記制御回路が前記弁に信号を送る、例44に記載のシステム。
【0128】
例46.流体抽出チャンバを展開するための方法であって、
排出出口を有する平らにされた流体抽出チャンバを体腔に導入するステップと、
前記平らにされたチャンバを整形するために、前記チャンバの空洞に弾性内部スカフォルドを挿入するステップと、
前記排出出口をシンクに接続するステップと
を含む方法。
【0129】
例47.前記シンクが、リザーバ、膀胱または腎盂を含む、例46に記載の方法。
【0130】
例48.前記平らにされた流体抽出チャンバに対する前記内部スカフォルドの運動を制限するために、前記平らにされたチャンバのポートに前記内部スカフォルドを接続するステップを含む、例46または47に記載の方法。
【0131】
例49.接続する前記ステップが、前記排出出口をポンプに接続するステップを含む、例46から48のいずれか一項に記載の方法。
【0132】
例50.前記平らにされた流体抽出チャンバの内部ルーメンに前記ポンプによって前記排出出口を通して陰圧を加えるステップを含む、例49に記載の方法。
【0133】
例51.前記陰圧を加える前記ステップの間、前記平らにされた流体抽出チャンバの外表面を組織表面に密に付着させるステップを含む、例50に記載の方法。
【0134】
例52.導入する前記ステップが、前記排出出口に接続された導入要素によって前記平らにされた流体抽出チャンバを導入するステップを含み、前記導入要素が、前記排出出口よりも高剛性である、例46から51のいずれか一項に記載の方法。
【0135】
例53.前記平らにされた流体抽出チャンバを導入する前記ステップが、折り畳まれた、排出出口を有する平らにされた流体抽出チャンバを体腔に導入するステップを含む、例46から52のいずれか一項に記載の方法。
【0136】
例54.導入する前記ステップの後に、前記折り畳まれた、平らにされた流体抽出チャンバを広げるステップをさらに含む、例53に記載の方法。
【0137】
例55.被験者を変化させるための方法であって、
薄い流体抽出チャンバの少なくとも1つの平らにされた表面を組織の表面と直接に接触させるステップと、
前記チャンバに接続された排出管にポンプによって陰圧を能動的に加えるステップと、
前記陰圧を、少なくとも100ml/日の流体を前記被験者から除去するのに十分な一定のレベルまたは変動するレベルに維持するステップと
を含む方法。
【0138】
特に定義されていない限り、本明細書で使用されている全ての技術的および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の技術者によって共通して理解される意味と同じ意味を有する。本発明の実施形態の実施または試験では、本明細書に記載された方法および材料と同様の方法および材料または等価の方法および材料を使用することができるが、以下では、例示的な方法および/または材料を説明する。矛盾する場合には、定義を含む本特許明細書が優先する。さらに、材料、方法および例は、例示だけを目的としたものであり、必ずしも限定を意図したものではない。
【0139】
当業者には理解されることだが、本発明のいくつかの実施形態は、システム、方法またはコンピュータ・プログラム製品として実施される。したがって、本発明のいくつかの実施形態は、全体がハードウェアの実施形態、(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード、などを含む)全体がソフトウェアの実施形態、またはソフトウェア態様とハードウェア態様とを組み合わせた実施形態の形態をとり、本明細書ではこれらの全ての実施形態が一般に、「回路」、「モジュール」または「システム」と呼ばれる。さらに、本発明のいくつかの実施形態は、その上にコンピュータ可読プログラム・コードが実装された1つまたは複数のコンピュータ可読媒体の中に実装されたコンピュータ・プログラム製品の形態をとる。本発明のいくつかの実施形態の方法および/またはシステムの実施態様は、選択されたタスクを手動、自動または手動と自動の組合せで実行すること、および/または完了することを含みうる。さらに、本発明の方法および/またはシステムのいくつかの実施形態の実際の計装および装備によれば、選択されたいくつかのタスクは、ハードウェア、ソフトウェアもしくはファームウェアによって、および/またはこれらの組合せによって、例えばオペレーティング・システムを使用して実施することができる。
【0140】
例えば、選択されたタスクを実行するための本発明のいくつかの実施形態に基づくハードウェアは、チップまたは回路として実施することができる。ソフトウェアとして、本発明のいくつかの実施形態に基づく選択されたタスクは、適当なオペレーティング・システムを使用してコンピュータによって実行されている複数のソフトウェア命令として実施することができる。本発明の例示的な実施形態では、本明細書に記載された方法および/またはシステムの例示的ないくつかの実施形態に基づく1つまたは複数のタスクが、複数の命令を実行するためのコンピューティング・プラットホームなどのデータ処理装置によって実行される。任意選択で、このデータ処理装置は、命令および/もしくはデータを記憶するための揮発性メモリ、ならびに/または命令および/もしくはデータを記憶するための不揮発性記憶装置、例えば磁気ハード・ディスクおよび/もしくはリムーバブル・メディアを含む。任意選択で、ネットワーク接続も提供される。任意選択で、ディスプレイおよび/またはキーボードもしくはマウスなどのユーザ入力デバイスも提供される。
【0141】
本発明のいくつかの実施形態に対しては、1つまたは複数のコンピュータ可読媒体の任意の組合せを利用することができる。このコンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体またはコンピュータ可読記憶媒体とすることができる。コンピュータ可読記憶媒体は例えば、限定はされないが、電子、磁気、光学、電磁気、赤外線または半導体システム、装置もしくはデバイス、または上記のものの適当な組合せとすることができる。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例(非網羅的リスト)には以下のものが含まれるであろう:1本もしくは数本のワイヤを有する電気接続、ポータブル・コンピュータ・ディスケット、ハード・ディスク、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リードオンリ・メモリ(ROM)、消去およびプログラムが可能なリードオンリ・メモリ(EPROMまたはフラッシュ・メモリ)、光ファイバ、ポータブル・コンパクト・ディスク・リードオンリ・メモリ(CD-ROM)、光学記憶デバイス、磁気記憶デバイス、または上記のものの適当な組合せ。本明細書の文脈では、コンピュータ可読記憶媒体を、命令実行システム、装置もしくはデバイスが使用するためのプログラム、または命令実行システム、装置もしくはデバイスとともに使用するためのプログラムを格納または記憶することができる任意の有形媒体とすることができる。
【0142】
コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読プログラム・コードがその上に実装された被伝搬データ信号を、例えばベースバンド中にまたは搬送波の部分として含むことができる。そのような被伝搬信号は、限定はされないが、電磁気、光学またはこれらの適当な組合せを含む、さまざまな形態のうちの任意の形態をとることができる。コンピュータ可読信号媒体は、コンピュータ可読記憶媒体ではない任意のコンピュータ可読媒体であって、命令実行システム、装置もしくはデバイスが使用するためのプログラム、または命令実行システム、装置もしくはデバイスとともに使用するためのプログラムを伝達し、伝搬し、または運ぶことができる任意のコンピュータ可読媒体とすることができる。
【0143】
コンピュータ可読媒体上に実装されたプログラム・コード、および/またはそれによって使用されるデータは、限定はされないが、無線、有線、光ファイバ・ケーブル、RFなど、または上記のものの適当な組合せを含む、適当な任意の媒体を使用して伝送することができる。
【0144】
本発明のいくつかの実施形態のための操作を実行するためのコンピュータ・プログラム・コードは、Java(登録商標)、Smalltalk、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語、および「C」プログラミング言語または同種のプログラミング言語などの従来の手続き型プログラミング言語を含む、1つまたは複数のプログラミング言語のどの組合せで書かれていてもよい。このプログラム・コードは、全体がユーザのコンピュータ上で実行されてもよく、一部がユーザのコンピュータ上で実行されてもよく、独立型ソフトウェア・パッケージとして実行されてもよく、一部がユーザのコンピュータ上で、一部が遠隔コンピュータ上で実行されてもよく、または全体が遠隔コンピュータもしくはサーバ上で実行されてもよい。上記の最後のシナリオでは、遠隔コンピュータが、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)もしくはワイド・エリア・ネットワーク(WAN)を含む任意のタイプのネットワークを介してユーザのコンピュータに接続されてもよく、またはこの接続が、外部コンピュータに対して(例えばインターネット・サービス・プロバイダを使用してインターネットを介して)実施されてもよい。
【0145】
以下では、本発明のいくつかの実施形態が、本発明の実施形態に基づく方法、装置(システム)およびコンピュータ・プログラム製品のフローチャート図および/またはブロック図を参照して説明されることがある。それらのフローチャート図および/またはブロック図の各ブロック、およびそれらのフローチャート図および/またはブロック図のブロックの組合せは、このコンピュータ・プログラム命令によって実装することができることが理解される。これらのコンピュータ・プログラム命令は、マシンを形成する汎用コンピュータ、専用コンピュータまたは他のプルグラム可能データ処理装置のプロセッサに、それらのコンピュータまたは他のプルグラム可能データ処理装置のプロセッサによって実行されるこれらの命令が、これらのフローチャートおよび/またはブロック図のブロックに指定された機能/動作を実装する手段を生成するような態様で提供することができる。
【0146】
これらのコンピュータ・プログラム命令はさらに、特定の方式で機能するようにコンピュータ、他のプルグラム可能データ処理装置または他のデバイスに指図することができるコンピュータ記憶媒体に、このコンピュータ可読媒体に記憶された命令が、これらのフローチャートおよび/またはブロック図のブロックに指定された機能/動作を実装する命令を含む製造物品を生成するような態様で記憶することができる。
【0147】
コンピュータ・プログラム命令はさらに、コンピュータ、他のプルグラム可能装置または他のデバイス上で一連の動作ステップを実行させて、コンピュータによって実装されるプロセスを生み出すために、このコンピュータ、他のプルグラム可能データ処理装置または他のデバイス上に、このコンピュータまたは他のプルグラム可能装置上で実行されるこれらの命令が、これらのフローチャートおよび/またはブロック図のブロックに指定された機能/動作を実装するためのプロセスを提供するような態様でロードすることができる。
【0148】
本明細書に記載された方法のうちのいくつかの方法は一般に、コンピュータによって使用されるためだけに設計されており、人間の専門家が純粋に手動で実行することが実行可能でないか、または実際的でないことがある。流体抽出治療の監視および変更などの同様の作業を手動で実行したい人間の専門家は、例えば専門知識および/または人間の脳のパターン認識能力を利用する方法など、完全に異なる方法を使用することが予想され、それらの方法は、本明細書に記載された方法のステップを手動で実行するよりもはるかに効率的であろう。
【0149】
本明細書では、本発明のいくつかの実施形態が、単なる例として、添付図面および画像を参照して説明される。次に、特に図面を詳細に参照するが、示される詳細は例であり、本発明の実施形態を例示的に論じるためのものであることが強調される。この点に関して、図面を参照してなされる以下の説明は、本発明の実施形態がどのように実施されるのかを当業者に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0150】
図1】体器官から流体を取り出すための埋入可能システムおよび装置の、本発明のいくつかの実施形態に基づくブロック図である。
図2A】体器官から流体を取り出すための埋入可能システムの外部要素との相互作用を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく略図である。
図2B】生体区画(biological compartment)と埋入型システムとの間の流体流れを説明する、本発明のいくつかの実施形態に基づくフローチャートである。
図3A】内部螺旋スカフォルドを含む流体抽出チャンバの、本発明のいくつかの実施形態に基づく略図である。
図3B】内部螺旋スカフォルドを含む流体抽出チャンバの、本発明のいくつかの実施形態に基づく略図である。
図3C】内部螺旋スカフォルドを含む流体抽出チャンバの、本発明のいくつかの実施形態に基づく略図である。
図3D】内部螺旋スカフォルドを含む流体抽出チャンバの、本発明のいくつかの実施形態に基づく略図である。
図3E】内部螺旋スカフォルドを含む流体抽出チャンバの、本発明のいくつかの実施形態に基づく略図である。
図3F】内部螺旋スカフォルドを含む流体抽出チャンバの、本発明のいくつかの実施形態に基づく略図である。
図3G】内部螺旋スカフォルドを含む流体抽出チャンバの、本発明のいくつかの実施形態に基づく略図である。
図3H】内部螺旋スカフォルドを含む流体抽出チャンバの、本発明のいくつかの実施形態に基づく略図である。
図3I】内部螺旋スカフォルドを含む流体抽出チャンバの、本発明のいくつかの実施形態に基づく略図である。
図3J】内部螺旋スカフォルドを含む流体抽出チャンバの、本発明のいくつかの実施形態に基づく略図である。
図3K】内部螺旋スカフォルドを含む流体抽出チャンバの、本発明のいくつかの実施形態に基づく略図である。
図3L】内部螺旋スカフォルドを含む流体抽出チャンバの、本発明のいくつかの実施形態に基づく略図である。
図3M】内部螺旋スカフォルドを含む流体抽出チャンバの、本発明のいくつかの実施形態に基づく略図である。
図3N】内部螺旋スカフォルドを含む流体抽出チャンバの、本発明のいくつかの実施形態に基づく略図である。
図4A】内部螺旋スカフォルドを含む、膜で覆われた流体抽出チャンバの、本発明のいくつかの実施形態に基づく画像である。
図4B】内部螺旋スカフォルドを含む、膜で覆われた流体抽出チャンバの、本発明のいくつかの実施形態に基づく画像である。
図4C】内部螺旋スカフォルドを含む、膜で覆われた流体抽出チャンバの、本発明のいくつかの実施形態に基づく画像である。
図5A】内部螺旋スカフォルドを含む流体抽出チャンバを備える流体抽出システムの展開プロセスの、本発明のいくつかの実施形態に基づく略図である。
図5B】内部螺旋スカフォルドを含む流体抽出チャンバを備える流体抽出システムの展開プロセスの、本発明のいくつかの実施形態に基づく略図である。
図5C】内部螺旋スカフォルドを含む流体抽出チャンバを備える流体抽出システムの展開プロセスの、本発明のいくつかの実施形態に基づく略図である。
図5D】内部螺旋スカフォルドを含む流体抽出チャンバを備える流体抽出システムの展開プロセスの、本発明のいくつかの実施形態に基づく略図である。
図5E】内部螺旋スカフォルドを含む流体抽出チャンバを備える流体抽出システムの展開プロセスの、本発明のいくつかの実施形態に基づく略図である。
図5F】内部螺旋スカフォルドを含む流体抽出チャンバを備える流体抽出システムの展開プロセスの、本発明のいくつかの実施形態に基づく略図である。
図5G】内部螺旋スカフォルドを含む流体抽出チャンバを備える流体抽出システムの展開プロセスの、本発明のいくつかの実施形態に基づく略図である。
図6】内部螺旋スカフォルドを含む流体抽出チャンバを備える流体抽出システムの展開プロセスを説明する、本発明のいくつかの実施形態に基づくフローチャートである。
図7A】ビーズが充填された流体抽出チャンバの、本発明のいくつかの実施形態に基づく画像である。
図7B】ビーズが充填された流体抽出チャンバの展開プロセスを説明する、本発明のいくつかの実施形態に基づくフローチャートである。
図8A】ゲルが充填された流体抽出チャンバ(以後、ゲル充填流体抽出チャンバ)の、本発明のいくつかの実施形態に基づく画像である。
図8B】ゲル充填流体抽出チャンバの展開プロセスを説明する、本発明のいくつかの実施形態に基づくフローチャートである。
図9A】流体抽出治療に影響を及ぼす入力の起源の、本発明のいくつかの実施形態に基づく略図である。
図9B】流体抽出治療に影響を及ぼす入力タイプの、本発明のいくつかの実施形態に基づく略図である。
図9C】流体抽出治療を変更するための一般的なプロセスの、本発明のいくつかの実施形態に基づくフローチャートである。
図9D】臨床パラメータ測定に基づいて流体抽出治療を変更するためのプロセスの、本発明のいくつかの実施形態に基づくフローチャートである。
図9E】排出された流体の測定に基づいて流体抽出治療を変更するためのプロセスの、本発明のいくつかの実施形態に基づくフローチャートである。
図9F】患者および/または医師から受け取った入力に基づいて流体抽出治療を変更するためのプロセスの、本発明のいくつかの実施形態に基づくフローチャートである。
図9G】埋入型流体抽出装置の設定および/または保守プロセスの、本発明のいくつかの実施形態に基づくフローチャートである。
図10A】支援実験の結果を説明する、本発明のいくつかの実施形態に基づくグラフである。
図10B】支援実験の結果を説明する、本発明のいくつかの実施形態に基づくグラフである。
図10C】支援実験の結果を説明する、本発明のいくつかの実施形態に基づくグラフである。
図10D】支援実験の結果を説明する、本発明のいくつかの実施形態に基づくグラフである。
図10E】支援実験の結果を説明する、本発明のいくつかの実施形態に基づくグラフである。
図10F】支援実験の結果を説明する、本発明のいくつかの実施形態に基づく画像および表である。
図10G】支援実験の結果を説明する、本発明のいくつかの実施形態に基づく表である。
図10H】支援実験の結果を説明する、本発明のいくつかの実施形態に基づくグラフである。
図11A】圧力変化機構(pressure alteration feature)を含む流体抽出システムの、本発明のいくつかの実施形態に基づくブロック図である。
図11B】圧力変化機構を含む流体抽出システムの、本発明のいくつかの実施形態に基づくブロック図である。
図11C】圧力変化機構を含む流体抽出システムの、本発明のいくつかの実施形態に基づくブロック図である。
図11D】圧力変化機構を含む流体抽出システムの、本発明のいくつかの実施形態に基づくブロック図である。
図11E】吸収チャンバ内に加えられた圧力の変化を示す、本発明の例示的ないくつかの実施形態に基づくグラフである。
図12A】異なる圧力条件下で2つのタイプの膜に付着したタンパク質濃度の変化を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づくグラフである。
図12B】異なる条件におけるベースライン圧力レベルからの圧力の変化を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づくグラフである。
図13A】本発明のいくつかの実施形態に基づく、導入システムの略図である。
図13B】本発明のいくつかの実施形態に基づく、導入システムの略図である。
図14A】導入システムの吸収チャンバ解放機構を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図である。
図14B】導入システムの吸収チャンバ解放機構を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図である。
図14C】導入システムの吸収チャンバ解放機構を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図である。
図14D】導入システムの吸収チャンバ解放機構を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図である。
図14E】ポート・コネクタを示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図である。
図15】拡張可能な内部ワイヤを有する吸収チャンバの、本発明のいくつかの実施形態に基づく略図である。
【発明を実施するための形態】
【0151】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明は流体抽出システムに関し、より詳細には、限定はされないが、埋入型流体抽出システムに関する。
【0152】
いくつかの実施形態の幅広い一態様は、被験者の臨床状態に合わせて流体抽出治療を調整することに関する。いくつかの実施形態では、この治療が、被験者の病気に従って調整される。その代わりにまたはそれに加えて、この治療は、治療中および/または治療後に測定された臨床パラメータに従って調整される。
【0153】
いくつかの実施形態の一態様は、少なくとも1つのセンサを備える埋入可能流体抽出装置またはシステムに関する。いくつかの実施形態では、このセンサが、患者の臨床パラメータ、例えば体温、血圧、血液内容および/またはうっ血レベルを測定する。その代わりにまたはそれに加えて、このセンサは、抽出および/または排出された流体の内容を測定する。いくつかの実施形態では、このセンサによって実施された測定に従って、装置の起動に関係した少なくとも1つのパラメータが変更される。
【0154】
いくつかの実施形態の一態様は、メモリを備える埋入型流体抽出装置またはシステムに関する。いくつかの実施形態では、このメモリが、装置の治療プロトコルおよび/または起動プロトコルを記憶している。その代わりにまたはそれに加えて、このメモリは、少なくとも1つの治療パラメータの値を記憶している。いくつかの実施形態では、このメモリに記憶された治療プロトコルおよび/または起動プロトコルに基づいて、装置を起動させる。いくつかの実施形態では、このメモリが、装置のログ・ファイルおよび/または装置によって測定された臨床パラメータの値を記憶している。
【0155】
いくつかの実施形態の一態様は、流体抽出治療中に少なくとも1つの治療パラメータを自動的に変更することに関する。いくつかの実施形態では、この少なくとも1つの治療パラメータが、臨床パラメータ測定値および/または治療中に患者から受け取った入力に基づいて変更される。その代わりにまたはそれに加えて、治療は、医師から受け取った入力に基づいて変更される。いくつかの実施形態では、治療の出力に基づいて治療が自動的に変更される。
【0156】
いくつかの実施形態では、この少なくとも1つの治療パラメータが、プロトコル表またはプロトコル設定に基づいて変更され、例えば、パラメータの測定値を、プロトコル表中の値または値の表示と比較することによって変更される。いくつかの実施形態では、このプロトコルおよび/または治療が、治療の結果に基づいて変更される。任意選択で、この表は、制御ユニットのメモリに記憶されている。
【0157】
いくつかの実施形態の一態様は、膜を備える埋入される透過性サックに関する。いくつかの実施形態では、このサックが、この膜で少なくとも部分的に覆われている。その代わりにまたはそれに加えて、この膜は、サックのルーメンの内側に置かれている。いくつかの実施形態では、このサックおよび/または膜が多孔質である。いくつかの実施形態では、細孔のサイズが細胞のサイズよりも小さい。いくつかの実施形態では、このサックが、折畳み可能なサックである。
【0158】
いくつかの実施形態では、このサックが、透過性の膜から作られている。いくつかの実施形態では、この膜が、サックとして形作られている。いくつかの実施形態では、このサックの部分が、流体に対して不透過性である。いくつかの実施形態では、このサックが球形である。いくつかの実施形態では、サックの最大寸法が30cmよりも小さく、例えば20、15、12cm、またはこれらの値の任意の中間値、またはこれらの値よりも小さな値である。
【0159】
いくつかの実施形態では、このサックおよび/または膜が、組織、例えば腹膜の内側に位置する器官の組織と直接に接触するように形作られ、サイズ設定されている。いくつかの実施形態では、このサックおよび/または膜が、柱または柱組織の部分と直接に接触するように形作られ、サイズ設定されている。いくつかの実施形態では、この膜が、例えば高レベルの陰圧、例えば真空が膜を通して組織に加えられたときに、組織と直接に密に接触するように形作られ、サイズ設定されている。本明細書で使用されるとき、吸収チャンバの一部分と組織との間、例えば吸収チャンバ、サックおよび/または透過性膜の表面と組織との間の密な接触は、接触部分の表面積の少なくとも30%が150μmよりも短い距離にある相互作用である。その代わりにまたはそれに加えて、吸収チャンバの一部分と組織との間、例えば吸収チャンバ、サックおよび/または透過性膜の表面と組織との間の密な接触は、接触した組織に対する内側への力のピークが少なくとも25Nとなることを、接触が容易にする相互作用である。
【0160】
いくつかの実施形態では、このサックおよび/または膜が平らでありまたは薄く、例えばサックおよび/または膜の最小寸法と最大寸法の比が少なくとも1:3、例えば1:4、1:5、またはこれらの比の中間の任意の比、またはこれらの比よりも大きな比である。いくつかの実施形態では、サックの外径が25cmよりも小さく、例えば20、17、15cm、またはこれらの値の任意の中間値、またはこれらの値よりも小さな値である。いくつかの実施形態では、このサックが、組織と直接に接触するように、任意選択で、組織と直接に密に接触するように形作られ、サイズ設定された、平らにされた少なくとも1つの表面を備える。
【0161】
いくつかの実施形態によれば、例えばこの少なくとも1つの平らな表面と組織との間の密着を維持するために、このサックは、組織または組織の外表面の形状および/または構造に従うように形作られ、サイズ設定された少なくとも1つの平らな表面を備える。本明細書では、組織または組織の外表面の形状および/または構造に従うことが、組織または組織の外表面の形状および/または構造と一致するとも言われる。いくつかの実施形態では、この少なくとも1つの平らな表面が、組織および/または組織表面と直接に接触した状態に配置され、任意選択で、組織および/または組織表面と直接に密に接触した状態に配置される。いくつかの実施形態では、組織に密着したサックの平らな表面を通して、組織からサック内へ流体が直接に抽出される。いくつかの実施形態では、組織表面に付着していないサックの外部領域を通しては、組織からの流体が、サック内へ直接には抽出されない。
【0162】
いくつかの実施形態によれば、このサック、膜および/または吸収チャンバが、平らで薄くなるように予め形作られている。いくつかの実施形態では、このサック、膜および/または吸収チャンバが、弛みおよび弾性の外表面を有することによって、組織の外形および/または組織の解剖学的輪郭と一致する。
【0163】
いくつかの実施形態の一態様は、展開可能な内部スカフォルドが充填された透過性サックに関する。いくつかの実施形態では、この内部スカフォルドが、サックを平らに保つ。いくつかの実施形態では、この内部スカフォルドが、機械的強度をサックに提供する。その代わりにまたはそれに加えて、この内部スカフォルドは、サックから流体を排出する。
【0164】
いくつかの実施形態では、サックが、予め形成された形状を有する。いくつかの実施形態では、展開可能な内部スカフォルドの形状が、サックの形状に合わせて予め形成されている。いくつかの実施形態では、この内部スカフォルドが編組管を含む。あるいは、この内部スカフォルドは、コイル状に巻かれた管(以後、コイル管)を含む。いくつかの実施形態では、例えば展開された内部スカフォルドを平らに保つために、この内部スカフォルドが内部スタイレットを含む。任意選択で、このスタイレットは長方形の断面を有する。いくつかの実施形態では、このスタイレットが、形状記憶材料、例えばニチノール(Nitinol)から作られている。
【0165】
いくつかの実施形態では、サックが、体腔、例えば腹膜内に埋入されるように形作られ、サイズ設定されている。あるいは、サックは、皮下に埋入されるように形作られ、サイズ設定されている。いくつかの実施形態では、サックが、平らにされており、かつ/または薄い。いくつかの実施形態では、サックが、組織と直接に接触する。
【0166】
いくつかの実施形態の一態様は、少なくとも2つの接続点で接続された2つの表面を備える透過性サックに関する。いくつかの実施形態では、これらの表面が、サックの最小寸法を制限するために少なくとも2つの点で接続されている。いくつかの実施形態では、これらの表面が、サックが膨らむことを防ぐために少なくとも2つの点で接続されている。いくつかの実施形態では、これらの2つの接続が、サックの周縁から、サックの直径の少なくとも1/3だけ離れた位置に位置する。その代わりにまたはそれに加えて、これらの表面は、粒子、例えばビーズから作られた内部スカフォルドがサックのルーメン全体にわたって均一に分布することを可能にするために、少なくとも2つの点で接続されている。サックのルーメンに入ることなく流体がサックを通り抜けることを可能にするために、いくつかの実施形態では、これらの少なくとも2つの接続点が開口を形成している。
【0167】
いくつかの実施形態では、このサックが、体腔、例えば腹膜内に埋入されるように形作られ、サイズ設定されている。あるいは、このサックは、皮下に埋入されるように形作られ、サイズ設定されている。いくつかの実施形態では、このサックが、平らにされており、かつ/または薄い。いくつかの実施形態では、このサックが、組織と直接に接触する。
【0168】
いくつかの実施形態の一態様は、折り畳まれたサックの展開に関し、このサックは、広げられ、構造的に安定し、安定した状態でロックされる。いくつかの実施形態では、サックの内側に置かれた内部スカフォルドにゲルまたは自己重合性流体を挿入することによって、サックを安定させる。いくつかの実施形態では、内部スカフォルドをサックに対してロックすることによって、サックが、安定した状態でロックされる。いくつかの実施形態では、内部スカフォルドが、サック内のスカフォルドの挿入部位に置かれたコネクタにロックされる。いくつかの実施形態では、内部スカフォルドが、例えば締りばめ(interference)ロッキング機構によって不可逆的にロックされる。あるいは、内部スカフォルドは、例えばコネクタの回転によって可逆的にロックされる。任意選択で、内部スカフォルドは、装置を引き出すために可逆的にロックされる。いくつかの実施形態では、サック内での内部スカフォルドの運動が制限されている。
【0169】
いくつかの実施形態では、このサックが、体腔、例えば腹膜内に埋入されるように形作られ、サイズ設定されている。あるいは、このサックは、皮下に埋入されるように形作られ、サイズ設定されている。いくつかの実施形態では、このサックが、平らにされており、かつ/または薄い。いくつかの実施形態では、このサックが、組織と直接に接触する。
【0170】
いくつかの実施形態によれば、折り畳まれたサックが展開され、安定した状態でロックされ、この安定した状態が、サックに関連付けられた膜、例えばサックを形成している膜またはサック内もしくはサックの外側に置かれた膜と組織との間の直接の付着、任意選択で直接の密着を可能にする状態である。いくつかの実施形態では、折り畳まれたサックが展開され、安定した状態でロックされ、この安定した状態が、サックと組織の外表面との間の直接の付着、任意選択で直接の密着を可能にする状態である。
【0171】
いくつかの実施形態の一態様は、前記組織に陰圧を間隔を置いて能動的に加えることによって組織から流体を抽出することに関する。いくつかの実施形態では、ポンプ、例えば蠕動ポンプが、前記組織に、高レベルの陰圧、続いて低レベルの陰圧を加える。任意選択で、ポンプを、ON:OFFデューティ・サイクルで動作させる。任意選択で、流体抽出チャンバが体に埋入されている時間のうちの10%から98%の間の時間、例えば10%、15%、25%、50%、またはこれらの値の任意の中間値の時間、ポンプを起動させる。
【0172】
いくつかの実施形態では、患者の状態、および/または患者の活動、例えば患者の飲料摂取、食料摂取、睡眠時間に合わせて、デューティ・サイクルが調整される。
【0173】
いくつかの実施形態の一態様は、流体抽出治療または流体抽出治療で使用される装置のプロトコルを、追加の治療および/または生理的活動に合わせて調整することに関する。いくつかの実施形態では、腎臓濾過速度および/または体液蓄積速度に合わせて流体抽出治療が調整される。いくつかの実施形態では、組織から流体を効率的に抽出するために、流体抽出システムが、低減された真空力(reduced vacuum force)を能動的に加える。いくつかの実施形態では、組織から流体を効率的に抽出するために、流体抽出システムが、低排出プロトコル・タイミング(reduced drainage protocol timing)を適用した。いくつかの実施形態では、腎臓濾過の効率が高いときに、この装置が、低減された真空力および/または低(reduce)排出プロトコル・タイミングを適用する。いくつかの実施形態では、1時間当たり体重の0.01%から0.05%(0.24%から1.2%/日)である必要な相対排出速度に到達するように、プロトコルまたは治療が調整される。
【0174】
いくつかの実施形態では、追加の治療のうちの少なくとも1つの治療のプロトコルが変更される。いくつかの実施形態では、この装置によって測定された出力に基づいて、追加の治療のプロトコルまたはその一部分が変更される。
【0175】
いくつかの実施形態の一態様は、チャンバに付着した不必要な物質を除去するために、流体抽出チャンバに陽圧を加えることに関する。陽圧を加えたとき、組織または流体抽出チャンバに加えられる全圧は陰圧のままであることに留意すべきである。いくつかの実施形態では、流体抽出チャンバに付着したタンパク質、組織および/または細胞を除去するために陽圧が加えられる。いくつかの実施形態では、この陽圧が、流体抽出チャンバの膜に付着したタンパク質、組織および/または細胞を除去するために加えられる。いくつかの実施形態では、この陽圧が、陽圧の短い一時的なバーストとして、例えば、存在する真空を、0.1~10秒の短い期間の間、中立圧力付近の圧力または天然組織(native tissure)の間隙圧(0~20mmHg)よりも高い圧力に変えることによるバーストとして加えられる。任意選択で、この圧力の変化は、緩やかでかつ/またはよりゆっくりである。いくつかの実施形態では、この陽圧が、加えられた陰圧、例えば真空ポンプによって加えられた陰圧と一緒に、全圧が陰圧となるように加えられる。いくつかの実施形態では、組織に対する全圧が陰圧であるときに、膜が組織に付着したままになる。あるいは、全圧が陽圧である場合、膜は、組織から少なくとも部分的に分離する。いくつかの実施形態では、全圧がゼロである。いくつかの実施形態では、全圧がゼロまたは陽圧であるときに、膜が異なる位置に移動して、例えば異なる組織領域または異なる組織と接触した状態に置かれる。
【0176】
いくつかの実施形態によれば、チャンバに関連付けられた膜、例えば組織と接触した膜を機械的に振動させるために、流体抽出チャンバに接続された排出管に対する、陰圧の上レベルおよび下レベルの適用が使用される。
【0177】
いくつかの実施形態によれば、この陽圧が、ポンプ、例えばチャンバに接続された蠕動ポンプによって加えられる。いくつかの実施形態では、このポンプが、チャンバの出口またはこの出口に接続された排出管に接続されている。いくつかの実施形態では、この陽圧が、チャンバに接続された排出管にポンプによって加えられる。いくつかの実施形態では、このポンプを、第1の方向に回転させてチャンバに陰圧を加え、第2の方向に回転させてチャンバに陽圧を加える。いくつかの実施形態では、この第1の方向と第2の方向との間で切り換わるために、このポンプの回転方向を逆転させる。
【0178】
いくつかの実施形態によれば、陰圧を加えるように構成されたポンプとチャンバとを接続する流体流路上に、少なくとも1つの弁が置かれる。いくつかの実施形態では、この少なくとも1つの弁、例えば電磁弁および/またはピンチ弁を起動させて、例えば開いたり閉じたりして、流体流路内およびチャンバ内において分路(shunt)および/または圧力変化を生じさせる。いくつかの実施形態では、この少なくとも1つの弁が、最長1秒、例えば0.13秒、0.5秒、0.8秒、またはこれらの期間の中間の任意の期間、またはこれらの期間よりも短い期間、またはこれらの期間よりもの長い期間、開かれたり、閉じられたりする。
【0179】
いくつかの実施形態によれば、この圧力変化は、流体流路上に置かれ、相対的陽圧ステップ(relative positive pressure step)を発生させるように構成された第2のポンプの起動によって加えられる。
【0180】
いくつかの実施形態では、この少なくとも1つの弁の起動、および/または陽圧を発生させるポンプの起動が、システムのコントローラによって制御される。任意選択で、この少なくとも1つの弁またはポンプの起動は、センサ、例えばチャンバから出る流体流路内の圧力変化および/またはチャンバ内の圧力変化を感知するように構成された圧力センサから送られる信号に従って、このコントローラによって制御される。
【0181】
例示的ないくつかの実施形態によれば、以下の状態を起こしている被験者では、本明細書に記載されたシステムおよび方法を使用した流体抽出治療が、150~500ml/日の範囲の流体を抽出するように調整される:(1)左心不全および根底にある慢性腎疾患、(2)腹水状態を除く右心不全、(3)両心室性心不全、(4)フォンタン不全(Fontan failure)、(5)全身性うっ血を伴う肺高血圧症。
【0182】
例示的ないくつかの実施形態によれば、以下の状態を起こしている被験者では、本明細書に記載されたシステムおよび方法を使用した流体抽出治療が、500~1000ml/日の範囲の流体を抽出するように調整される:(1)病期4および5の慢性腎疾患、(2)末期の腎臟病、(3)腹部コンパートメント症候群、(4)肝硬変、門脈圧亢進症などに関係した腹水状態。
【0183】
本明細書に記載された1つまたは複数の実施形態で埋入可能システムを使用することの潜在的利点は、このシステムが完全に埋入可能であること、および、このシステムが、任意選択で泌尿器系に流体を排出することである。記載された実施形態のうちの1つまたは複数の実施形態の任意選択の追加の利点は、このシステムが血液循環と接触しないこと、および、任意選択で、このシステムが、構成変更可能な動作を有することである。いくつかの実施形態では、このシステムが、組織から直接に流体を抽出する直接機構を使用する。さらに、本明細書に記載された実施形態のうちの1つまたは複数の実施形態では、このシステムが、組織に間隔を置いて圧力を加え、連続的には圧力を加えない。
【0184】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明の適用においては、上記の構成要素および/もしくは方法の構造および構成の、以下の説明に記載された詳細、ならびに/または図面および/もしくは実施例に示された詳細だけに、本発明が限定されるわけではないことが理解されているべきである。本発明は、他の実施形態を受け入れることができ、さまざまな手法で実施または実行することができる。
【0185】
例示的な埋入型システム
例示的ないくつかの実施形態によれば、流体を排出するための装置が、体腔内、例えば腹膜腔内に埋入される。次に、埋入可能装置または埋入可能システムを示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図1を参照する。
【0186】
例示的ないくつかの実施形態によれば、埋入可能システム、例えばシステム102は、体腔、例えば腹膜腔の内側に置かれるように、または皮下に埋入されるように形作られ、サイズ設定された流体抽出チャンバ、例えば流体吸収ユニット104を備える。いくつかの実施形態では、吸収ユニット104が、組織と接触するための少なくとも1つの平らな面を有する。いくつかの実施形態では、流体抽出チャンバ、例えば流体吸収ユニットが、平らにされており、および/または薄く、および/または湾曲しており、および/またはドーム形である。いくつかの実施形態では、流体抽出チャンバ、いくつかの実施形態では吸収ユニット104が、内ルーメン105および内ルーメン105を取り囲む平らな外層108を含む。いくつかの実施形態では、平らな外層108が膜、任意選択で多孔質膜である。いくつかの実施形態では、平らな外層108が、少なくとも部分的に組織と接触するように形作られ、サイズ設定されている。いくつかの実施形態では、組織と接触しているとき、組織からの流体が、平らな外層108を通り抜けて吸収ユニット104の内ルーメン105に直接に入る。任意選択で、この平らな外層は、組織から流体を直接に吸収するのに十分な大きな表面積を有する。いくつかの実施形態では、この流体の通り抜けが、組織と内ルーメン105の間の圧力差、例えば組織内の圧力が内ルーメン105の内側の圧力よりも高いときの組織と内ルーメン105の間の圧力差に起因して受動的に起こる。あるいは、ポンプが起動しているとき、流体は、組織から内ルーメン内へ能動的に通り抜ける。
【0187】
例示的ないくつかの実施形態によれば、平らな外層108は多孔質層であり、任意選択で、この多孔質層がサックを形成している。いくつかの実施形態では、サックの内側の内ルーメン105内に内膜、例えば内膜110が置かれている。いくつかの実施形態では、平らな外層108を通り抜けて組織から流体吸収ユニット104に直接に入った流体を吸収するように、内膜110が形作られ、サイズ設定されている。
【0188】
例示的ないくつかの実施形態によれば、流体吸収ユニット104は内スカフォルド(inner scaffold)109を備え、任意選択で、内スカフォルド109は剛性または半剛性(semi-rigid)である。いくつかの実施形態では、内スケルトン109が、平らな外層を安定させ、平らな外層の潰れを防ぐ。いくつかの実施形態では、内スカフォルドが、展開されるように、および/または内ルーメン105から取り出されるように形作られ、サイズ設定されている。いくつかの実施形態では、例えば内膜110の取出しおよび交換を可能にするために、内スカフォルド109が展開されるときまたは取り出されるときに、内膜110が内スカフォルド109に付着している。
【0189】
例示的ないくつかの実施形態によれば、流体吸収ユニット104は、排出管、例えば出口管124を流体吸収ユニットに接続するための少なくとも1つのコネクタ、例えばコネクタ112を備える。いくつかの実施形態では、出口管124がルーメン105に押し込まれており、任意選択で、出口管124が内スカフォルド109の部分である。いくつかの実施形態では、組織から流体吸収ユニット内に排出された流体が出口管124を通して取り出される。
【0190】
例示的ないくつかの実施形態によれば、システム102は、埋入可能制御ユニット、例えば制御ユニット106を備える。いくつかの実施形態では、制御ユニット106が、ポンプ130、例えばコネクタ128を介して出口管124に接続された蠕動ポンプを備える。いくつかの実施形態では、ポンプ130が、制御ユニット106の制御回路114に接続されている。いくつかの実施形態では、吸収された流体を流体吸収ユニット104から取り出すために、制御回路114がポンプ130を起動させる。その代わりにまたはそれに加えて、制御回路114は、例えば組織から吸収ユニット104内への流体の抽出を可能にするのに十分な圧力、任意選択で十分な陰圧を発生させるためにポンプ130を起動させる。その代わりにまたはそれに加えて、ポンプ130は、例えば流体吸収ユニット104の外表面に蓄積または付着した物質を除去するために、流体吸収ユニット104に対して陽圧を発生させる。いくつかの実施形態では、ポンプ130が、流体吸収ユニット104の外面に置かれた外部膜層から物質、例えば組織を除去するために、流体吸収ユニットに対して陽圧を発生させる。いくつかの実施形態では、陽圧を加える前に、システム103が、内部リザーバ、例えばリザーバ136を閉じ、任意選択で、流体吸収ユニット104から泌尿器系につながるカテーテルを密封する。いくつかの実施形態では、リザーバが閉じられたときに、リザーバが、抽出された流体のうちの少なくとも一部の量を含んでいる。
【0191】
例示的ないくつかの実施形態によれば、ポンプ130は出口管124に機械的に接続されており、出口管124に陰圧および/または陽圧を加える。いくつかの実施形態では、制御ユニット106が、排出管に対する陰圧の上レベルおよび下レベルの発生を制御し、任意選択で、プロトコル、例えばメモリ116に記憶されたプロトコルに従ってこれを制御する。いくつかの実施形態では、この陰圧の加えられた上レベルおよび下レベルが、吸収ユニット104および/または平らな外層108を機械的に振動させて、例えば吸収ユニット104および/または平らな外層108に付着したタンパク質、組織および/または細胞を除去するために使用される。
【0192】
例示的ないくつかの実施形態によれば、ポンプ130は、管134によって、リザーバ136、例えば内部リザーバまたは外部リザーバに接続されている。その代わりにまたはそれに加えて、ポンプ130は、泌尿器系、例えば膀胱または腎盂に、例えばカテーテル140によって接続されている。いくつかの実施形態では、流体吸収ユニット104からの吸収された流体が、制御ユニット106を介して、リザーバ内、例えば埋入可能リザーバもしくは体外リザーバ内、および/または膀胱に排出される。いくつかの実施形態では、吸収された流体を、流体吸収ユニット104からリザーバ136内および/または泌尿器系内に能動的に除去するため、ポンプ130を起動させる。
【0193】
例示的ないくつかの実施形態によれば、制御ユニット106は、少なくとも1つのセンサ、例えばセンサ122を備える。いくつかの実施形態では、センサ122が、組織から流体吸収ユニット104内への流体流れおよび/または流体吸収ユニット104から制御ユニット106内への流体流れを感知する流体流れセンサである。いくつかの実施形態では、センサ122が、カテーテル140または管134を通過する制御ユニットからの流体流れを感知する。任意選択で、センサ122は、ポンプ130を通過する流体流れを感知する。いくつかの実施形態では、センサ122が、組織から流体吸収ユニット104内への流体流路内の圧力および/または流体吸収ユニット104から制御ユニット106内への流体流路内の圧力を感知する流体圧力センサを備える。任意選択で、センサ122は、ポンプ130に関連付けられた流体流路内の、ポンプ130の前および/または後の圧力を感知する。
【0194】
例示的ないくつかの実施形態によれば、センサ122は、患者に関係した少なくとも1つの臨床パラメータ、例えば血圧、間隙圧、血中および/もしくは尿中の物質のレベル、心拍数、体温または患者に関係した他の臨床もしくは生理パラメータを感知する臨床センサである。いくつかの実施形態では、センサ122が、排出された流体および/または尿および/または血液の内容、例えば化学分子または生体分子のレベルおよび/または濃度、例えば電解質、クレアチニン、尿素、アルブミンおよび/または患者状態の治療のために患者に投与された合成医薬品のレベルおよび/または濃度に関係した少なくとも1つのパラメータを測定する。
【0195】
例示的ないくつかの実施形態によれば、センサ122は、感知されたパラメータの値を制御回路114に送る。いくつかの実施形態では、感知されたデータが、制御回路114と通信する独立した埋入可能装置または外部装置から取り出される。いくつかの実施形態では、制御回路114が、これらの値のうちの少なくとも一部を制御ユニット106のメモリ116に記憶する。いくつかの実施形態では、メモリ116が、制御ユニット106および/または流体吸収ユニット104のログ・ファイルを記憶する。いくつかの実施形態では、メモリ116が、少なくとも1つの治療プロトコルおよび/または少なくとも1つの治療パラメータの値を記憶する。任意選択で、この少なくとも1つの治療プロトコルまたは治療パラメータは、ポンプ130の起動、例えばポンプ130の起動の持続時間、起動セッション間の休止期間数および休止期間の持続時間、ならびに/またはポンプ130のポンピング・パワーに関する。
【0196】
例示的ないくつかの実施形態によれば、制御ユニット106は通信手段120を備える。いくつかの実施形態では、通信手段120が制御回路114に接続されており、無線受信器および/または無線送信器を含む。いくつかの実施形態では、通信手段120が、体外に位置する少なくとも1つの外部装置または外部回路、例えばセンサ、コンピュータ、外部メモリ、携帯型装置および/または遠隔制御装置から情報を受け取る。その代わりにまたはそれに加えて、通信手段120は、体内に位置する埋入可能装置、例えば心臓ペースメーカおよび/または埋入可能センサから情報を受け取る。いくつかの実施形態では、通信手段120が、受け取った情報を制御回路114に送る。
【0197】
例示的ないくつかの実施形態によれば、制御回路114は、体外に位置する装置または回路、例えばセンサ、コンピュータ、外部メモリ、携帯型装置および/または遠隔制御装置に情報を送信するよう、通信手段120に信号を送る。いくつかの実施形態では、制御回路114が、外部インタフェース、例えば体外に位置するユーザ・インタフェースに情報を送信するよう、通信手段120に信号を送る。いくつかの実施形態では、制御回路が、埋入型システムの治療および/もしくは起動に関連した警報もしくは表示および/または測定された臨床パラメータに関連した警報もしくは表示を生成するよう、外部インタフェースに信号を送る。その代わりにまたはそれに加えて、通信手段は、体内に位置する埋入可能装置、例えば心臓ペースメーカおよび/または埋入可能センサに情報を送信する。
【0198】
例示的ないくつかの実施形態によれば、制御ユニット106は、制御ユニット106の構成要素、例えばポンプ130に電力に供給するための少なくとも1つのバッテリ118を備える。いくつかの実施形態では、バッテリ118が再充電可能なバッテリであり、または交換可能なバッテリである。
【0199】
例示的ないくつかの実施形態によれば、制御ユニット106のハウジング142が生体適合性材料から作られており、任意選択で、皮下に埋入されるように形作られ、サイズ設定されている。いくつかの実施形態では、ハウジング142が、制御ユニット106の特定の要素を交換すること、例えばバッテリ118および/またはポンプ130を交換することを可能にするように配置されている。いくつかの実施形態では、例えば皮下埋入を可能にするために、ハウジング142が平らである。
【0200】
例示的ないくつかの実施形態によれば、出口124をカフ(cuff)123が少なくとも部分的に取り囲んでいる。いくつかの実施形態では、カフ123が、腹膜の外側に置かれた制御ユニット106と腹膜の内側に埋入された流体吸収ユニット104との間に置かれている。あるいは、流体吸収ユニットは、腹膜の外側、例えば皮下に埋入される。いくつかの実施形態では、腹膜腔への流体吸収ユニット104の挿入中に開けられた腹膜の開口に配置されるように、カフ123が形作られ、サイズ設定されている。
【0201】
例示的ないくつかの実施形態によれば、管134および/またはポンプ130にダンパ133が接触している。いくつかの実施形態では、ダンパ133が、ポンプの振動および/または管134を通過する脈動性の流体流れを減衰させる。任意選択で、ダンパは、センサ122による流体流れおよび/または流体内容の測定を可能にするために、管134を通過する脈動性の流体流れおよび/またはポンプ130の振動を減衰させる。
【0202】
例示的ないくつかの実施形態によれば、制御回路は、固定されたデューティ・サイクルで起動するようポンプに信号を送るタイミング回路に接続されている。いくつかの実施形態では、制御回路が、固定されたタイミング・ルーチンで断続的に作動するよう、ポンプに信号を送る。任意選択で、タイミング回路が存在するときにはメモリが存在しない。
【0203】
例示的なシステム相互作用
例示的ないくつかの実施形態によれば、埋入型システム、例えば埋入型システム102は、体内の組織からの流体排出を制御および/または監視するために使用されるシステムの部分である。次に、体組織から流体を排出するためのシステムの相互作用を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図2Aを参照する。
【0204】
例示的ないくつかの実施形態によれば、埋入型システム102は、体外に位置する装置に接続されており、任意選択で、無線接続によって接続されている。いくつかの実施形態では、システム102が、専門家または医師204に接続されている。いくつかの実施形態では、例えばシステム102が適正に機能していないとき、および/または流体排出治療の少なくとも1つの結果が所望の結果ではないときに、装置が、表示および/または警報を医師に送信する。いくつかの実施形態では、選択されたスケジュールに従って、および/または要求があったときに、システム102が、治療報告および/または装置ログ・ファイルを医師204に送信する。
【0205】
例示的ないくつかの実施形態によれば、患者の臨床状態が変化した場合に、例えば装置によって測定された臨床パラメータ値が所望の値範囲にないときに、システム102が医師204に表示を送る。いくつかの実施形態では、医師が、更新された治療プロトコルを装置に送り、またはシステム102のメモリに記憶された少なくとも1つの既存の治療プロトコルもしくは治療パラメータを変更する。
【0206】
例示的ないくつかの実施形態によれば、埋入型システム102は、患者206に、表示および/または警報を送る。いくつかの実施形態では、装置が適正に機能していない場合、および/または装置によって測定された臨床パラメータが所望の値範囲にないときに、システム102が表示および/または警報を送る。
【0207】
例示的ないくつかの実施形態によれば、システム102は、看護者、例えば看護士208に表示および/または警報を送信する。いくつかの実施形態では、装置が適正に機能していないとき、および/または装置の構成要素を交換する必要があるとき、例えば排出された流体を集めるために使用されている外部バッグが満杯であり、外部バッグを交換すべきであるときに、システム102が看護士208に表示を送信する。いくつかの実施形態では、患者のところに来るよう要求があったときに、システム102が看護士208に警報を送信する。
【0208】
例示的ないくつかの実施形態によれば、システム102は、携帯型装置、例えば携帯型装置212に表示を送信する。いくつかの実施形態では、携帯型装置212が、人間が検出可能な表示、例えば音声表示および/または視覚的表示を生成する。いくつかの実施形態では、携帯型装置212が、人間が検出可能な表示を、患者206および/または医師204および/または看護士208に送る。いくつかの実施形態では、携帯型装置212が、携帯型装置212の入力要素を使用してシステム102に情報を送信するために使用される。
【0209】
例示的ないくつかの実施形態によれば、システム102は、情報、例えば臨床パラメータ値および/または装置のログ・ファイルを、遠隔サーバ210または遠隔コンピュータに送信する。いくつかの実施形態では、システム102が、情報、例えば変更された治療プロトコルおよび/または提案された治療をサーバ210からダウンロードする。
【0210】
区画間の例示的な流体流れ
例示的ないくつかの実施形態によれば、体の異なる生体区画間を流体が流れる。次に、体の生体区画間の流体流れおよび生体区画と埋入された流体抽出チャンバとの間の流体流れを示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図2Bを参照する。
【0211】
例示的ないくつかの実施形態によれば、220で、リンパ系からの流体および/または細胞内液および/または血管内液が間隙空間(interstitial space)に入る。いくつかの実施形態では、組織から流体吸収ユニット104内に流体が入ることを可能にするために、膜、例えば流体吸収ユニット104の膜が組織と直接に接触する。いくつかの実施形態では、例えば流体吸収ユニット104に接続されたポンプが起動しているときに、組織からの流体が受動的または能動的に流体吸収ユニット104に入る。さらに、227で、間隙空間からの流体が腎臓に流入し、任意選択で、230で再吸収される。
【0212】
例示的ないくつかの実施形態によれば、226で、流体吸収ユニット104からの流体が、例えばカテーテルを介して尿路、例えば膀胱に運ばれる。その代わりにまたはそれに加えて、流体吸収ユニット104からの流体は、224で、例えばカテーテルによって排出バッグに運ばれる。いくつかの実施形態では、排出バッグが体外に位置する。
【0213】
例示的ないくつかの実施形態によれば、228で、尿路からの流体が尿として体から排出される。
【0214】
例示的な流体吸収ユニット
例示的ないくつかの実施形態によれば、組織からの効率的な直接流体抽出を可能にするためには、組織が、流体吸収ユニットの膜、例えば流体抽出チャンバの膜とぴったりと接触している必要がある。いくつかの実施形態では、例えば流体抽出チャンバの外表面とぴったりと合うように組織表面の形状を変化させるために、流体抽出チャンバが、組織表面の部分に力を加える半剛性構造を維持する。次に、流体吸収ユニット、例えば流体抽出チャンバを示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図3A~3Nを参照する。
【0215】
例示的ないくつかの実施形態によれば、例えば図3Aに示されているように、流体吸収ユニット300、例えば流体抽出チャンバが、サック、例えばサック306と、サック306の開口に配置されたポート310を介してサック306に接続された管314とを備える。いくつかの実施形態では、サック306の外面に膜が配置されている。あるいは、この膜は、サック306の内側に配置されている。
【0216】
例示的ないくつかの実施形態によれば、サック306内に、内部スカフォルド、例えば螺旋コイル312が置かれている。いくつかの実施形態では、例えば流体吸収ユニット300の半剛性構造を維持するために、この内部スカフォルドがサック306の内面に力を加える。いくつかの実施形態では、サック306の半剛性構造が、例えばサックの外面が組織と接触したときに組織の外面の形状を変化させることを可能にする。いくつかの実施形態では、サック306の外表面とぴったりと合うように、組織の外面の形状が変化する。
【0217】
例示的ないくつかの実施形態によれば、管314をカフ320が少なくとも部分的に取り囲み、カフ320が、腹膜アクセス開口に置かれる。
【0218】
例示的ないくつかの実施形態によれば、例えば図3Bおよび3Cに示されているように、サック306、任意選択で、少なくとも部分的に膜で覆われたサック306は、螺旋形のテンプレートに予め形成されており、その中に、内部スカフォルド、例えば螺旋管または螺旋コイル312が導入されている。いくつかの実施形態では、螺旋管または螺旋コイル312の導入がサック306に機械的強度を提供する。
【0219】
例示的ないくつかの実施形態によれば、例えば図3Dおよび3Eに示されているように、サック306に導入管308が接続される。いくつかの実施形態では、導入管308が、ポート310を介してサック306に接続される。いくつかの実施形態では、導入管308が、腹膜アクセス開口を通して腹膜腔にサック306を導入するために使用される。
【0220】
例示的ないくつかの実施形態によれば、例えば図3Fに示されているように、螺旋コイル312の開口304内にコネクタ316が部分的に置かれる。いくつかの実施形態では、螺旋コイルの外側に置かれたコネクタ316の端に管314が接続される。いくつかの実施形態では、螺旋コイルを体に挿入する前に、コネクタ316に管314が接続される。あるいは、コネクタ316は、例えば螺旋コイルが体内にあるときにコネクタに管314を接続することを可能にするインタロッキング機構を備える。
【0221】
次に、内部スカフォルド、例えばサック内の螺旋コイルを示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図3Gから3Iを参照する。
【0222】
例示的ないくつかの実施形態によれば、内部スカフォルド、例えば螺旋コイル312および管314が、導入管308を通してサック306に押し込まれる。いくつかの実施形態では、サック306への管314の挿入を防ぐようにコネクタ316が形作られている。いくつかの実施形態では、コネクタ316の外径がポート310の内径よりも大きい。その代わりにまたはそれに加えて、例えば図3Fに示されているように、コネクタ316に面した管314の遠位セクション315は、ポート310の直径に比べてより大きな直径を有する。いくつかの実施形態では、例えばサック306から螺旋コイル312を引き抜くことを防ぐために、コネクタ316が、ポート310とインタロックし、任意選択で、不可逆的にインタロックする。いくつかの実施形態では、締りばめロッキング機構、例えばコネクタ316内および/またはポート310内に置かれたスナップばめロッキング機構を使用して、コネクタ316がポート310と不可逆的にインタロックする。あるいは、コネクタ316は、例えばコネクタ316を回転させることによってポート310と不可逆的にインタロックする。任意選択で、管314を回転させることによってコネクタ316を回転させる。
【0223】
例示的ないくつかの実施形態によれば、例えば図3Jに示されているように、螺旋コイル312がサック306内に置かれたときに、導入管308をポート310から分離し、後退させる。いくつかの実施形態では、コネクタ316とポート310の間のロックの方が、導入管308とポート310の間のロックに比べて強い。あるいは、導入管308は、導入管を時計回りにまたは逆時計回りに回すことによってポート310から分離される。いくつかの実施形態では、サック306内で螺旋コイル312をロックする必要な回転方向、例えばコネクタ316をポート310とインタロックすることによりサック306内で螺旋コイル312をロックするのに必要な回転方向とは反対方向に、導入管が回される。
【0224】
次に、内部螺旋スカフォルドを示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図3Kおよび3Lを参照する。例示的ないくつかの実施形態によれば、内部スカフォルド、例えば螺旋コイル312は、内部ルーメン322を有する管状構造体である。いくつかの実施形態では、この管状構造体が、螺旋コイルの外表面と内部ルーメン322とをつなぐ複数の開口を含む。いくつかの実施形態では、螺旋コイルのこれらの開口を通ってサック内の流体が内部ルーメンに入り込む。いくつかの実施形態では、螺旋コイルの内部ルーメンがこの流体をサックの外に導く。
【0225】
例示的ないくつかの実施形態によれば、内部スカフォルド、例えば螺旋コイル312は、機械的強度を提供する目的に使用され、内部ルーメンを通してサックの外に流体を導く目的には使用されない。いくつかの実施形態では、サック内で流体が自由に流動することを可能にするため、内部スカフォルド、例えば螺旋コイル312が、内部スカフォルドの外面に空隙、例えば空隙324を備える。いくつかの実施形態では、排出管、例えば管314に接続されたサックの開口、例えばポート310を通って流体がサックを出る。
【0226】
例示的ないくつかの実施形態によれば、例えば図3Mに示されているように、流体吸収ユニットはサック330を備え、任意選択で、サック330は、外部カバー膜332および内部支持層334を有する。いくつかの実施形態では、カバー膜332が、流体がサック330に入ることを可能にする多孔質膜である。いくつかの実施形態では、膜332の細孔が、サックへの細胞の侵入を許さない十分に小さなものである。いくつかの実施形態では、細孔サイズ、例えば細孔幅または細孔の最大寸法が、10マイクロメートル(ミクロン)よりも小さく、例えば9ミクロン、8ミクロン、7ミクロン、0.5ミクロン、0.45ミクロン、0.25ミクロン、またはこれらのサイズの任意の中間サイズ、またはこれらのサイズよりも小さなサイズである。あるいは、細孔サイズは10ミクロンよりも大きく、例えば10ミクロン、11ミクロン、12ミクロン、またはこれらのサイズの任意の中間サイズ、またはこれらのサイズよりも大きなサイズである。
【0227】
例示的ないくつかの実施形態によれば、内部支持層334は、サック330内に置かれた内部スカフォルドから外部カバー膜332を分離するように形作られ、サイズ設定されている。いくつかの実施形態では、内部支持層が織物、任意選択で弾性織物から作られており、または不織シートとして製造されている。いくつかの実施形態では、この弾性織物が、サックに挿入された内部スカフォルドによって加えられた力またはサック内から膜に向かって加えられた圧力に耐え、カバー層334(膜)の潰れおよび生体組織からの圧力に耐える十分な強さを有する。例えばカバー膜332を通って侵入した流体がサック330に入ることを可能にするため、いくつかの実施形態では支持層334が多孔質である。例えば浸入推進力を増大させるため、および/または抽出された流体のある種の成分の浸入に影響を及ぼすために、いくつかの実施形態では、支持層334が、イオン電荷を持つ基で表面処理されている。
【0228】
例示的ないくつかの実施形態によれば、サック330は、少なくとも1つの開口を備える。いくつかの実施形態では、開口の内側にポート、例えばポート336が配置されている。いくつかの実施形態では、内部スカフォルドの遠位ヘッダ344、例えば編組管338の遠位ヘッダ344が、ポート336を通してサック330に挿入されるように形作られている。いくつかの実施形態では、編組管の外径がポート336の内径よりも小さい。いくつかの実施形態では、編組管の直径が2~8mmの範囲にあり、例えば2、3、4、5、6、7、8mm、またはこれらの値の任意の中間値である。いくつかの実施形態では、ポート336の直径が3~9mmの範囲にあり、例えば3、4、5、6、7、8、9mm、またはこれらの値の任意の中間値である。いくつかの実施形態では、編組管338が内スタイレット340を含み、任意選択で、内スタイレット340が、形状記憶材料、例えばニチノールから作られている。いくつかの実施形態では、編組管338がサック330に導入され、サック330内に置かれたときに、編組管338を平らに維持するように、内スタイレットが形作られている。
【0229】
例示的ないくつかの実施形態によれば、内部スカフォルドは、編組管338の近位セクションに置かれたコネクタ342を備える。いくつかの実施形態では、コネクタ342が、編組管338を少なくとも部分的にまたは完全に取り囲んでいる。いくつかの実施形態では、編組管338がサック330に押し込まれると、コネクタ342がポート336上にロックされる。いくつかの実施形態では、コネクタがポート336とインタロックし、任意選択で不可逆的にインタロックする。あるいは、コネクタ342は、ポート336と可逆的にインタロックする。いくつかの実施形態では、コネクタ342が、コネクタ342の回転によって、またはコネクタ342に接続された排出管341の回転によって、ポート336とインタロックする。あるいは、コネクタ342は、ポート336に力を加えることによってポート336とインタロックする。いくつかの実施形態では、コネクタ342が、ポート336内に密封ロック(seal-lock)され、任意選択で、閉じ込められたOリング密封材に対して半径方向に押圧することによって密封ロックされる。いくつかの実施形態では、ポート336内にコネクタ342を密封ロックすること、任意選択で、閉じ込められたOリング密封材に対して半径方向に押圧することによって密封ロックすることが、数ニュートンの合理的な強い力を加えたときにスナップアウト選択肢を可能にする。いくつかの実施形態では、スナッピングアウトまたは解放が、指定された工具を導入することによってのみ可能である。
【0230】
例示的ないくつかの実施形態によれば、スタイレット340は、長方形または円形の断面を有する。いくつかの実施形態では、例えば断面図351に示されているように、スタイレット340が、管350、例えばシリコン管に沿って置かれ、延ばされている。いくつかの実施形態では、このシリコン管が外部編組層でくるまれている。あるいは、例えば断面図353に示されているように、スタイレット340、任意選択で長方形の断面を有するスタイレットは、管356、例えばシリコン管内に置かれており、管356、例えばシリコン管に沿って延びている。いくつかの実施形態では、管356が外部コイルでくるまれている。
【0231】
例示的ないくつかの実施形態によれば、スタイレット340は、吸収チャンバ330の所望の平らな螺旋の形態に、形状記憶材料により形作られている。いくつかの実施形態では、スタイレットが、同様の剛さ(stiffness)または剛性(rigidity)を有する螺旋形の形状を最もよく提供するような変化する断面を有するいくつかのマンドレルを含む。任意選択で、スタイレットの遠位(先端)部分に、より小さな断面積のエリアが位置し、スタイレットの近位部分に、より大きな断面積がある。いくつかの実施形態では、スタイレット340にテーパが付けられており、スタイレット340の断面サイズまたは直径が連続的に変化する。いくつかの実施形態では、スタイレット340が、ニチノール、ステンレス鋼、コバルト・クロムもしくはポリマー、またはこれらの材料の任意の組合せなど、カバー層よりも剛さが大きい材料でできている。
【0232】
次に、流体吸収ユニットが腹膜に導入されるときの流体吸収ユニットの構成要素を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図3Nを参照する。
【0233】
例示的ないくつかの実施形態によれば、導入管360が、管の遠位端の雌ねじ359、またはポート336の嵌合溝にぴったりとはまる突き出た把持機構を備える。いくつかの実施形態では、サックのポートが雌ねじ359に接続される。いくつかの実施形態では、リリーサ(releaser)、例えばリリーサ364が、長方形の断面を有する長方形の端部362を備える。その代わりにまたはそれに加えて、リリーサ364は、ポート336の内面に位置する対応する溝にぴったりとはまる把持機構を備える。いくつかの実施形態では、長方形の端部362が、導入管360の内部形状とぴったりと合っている。いくつかの実施形態では、サックのポートから導入管360を解放するために、リリーサ364の長方形の端部362が導入管360の近位端361に挿入される。任意選択で、リリーサ364は、例えばガス漏れを防ぐために近位端において密封された導入管360にはめ込まれている。いくつかの実施形態では、導入管360の雌ねじ359からポートを解放するため、リリーサ364が導入管360内に少なくとも部分的に置かれた後に、リリーサ364が、時計回りもしくは逆時計回りに回され、または押されもしくは引っ張られる。編組管338および/またはチャンバ全体を取り出すために、いくつかの実施形態では、リリーサ360が、編組管338の解放を可能にする。
【0234】
例示的ないくつかの実施形態によれば、編組コイル366、任意選択で螺旋形の形状を取得するように予め形成された編組コイル366がサックに導入された後に、サックのポートから導入管360が解放される。その代わりにまたはそれに加えて、導入管360は、編組コイル366の近位端に置かれたコネクタ368が前述のとおりにポートとインタロックしたときにポートから解放される。いくつかの実施形態では、コネクタ368のこれとは反対の側に排出管370が接続されている。
【0235】
例示的ないくつかの実施形態によれば、任意選択で排出管370またはコネクタ368に接続されたプッシャ(pusher)またはマンドレル372によって、サックに編組コイル366が押し込まれる。いくつかの実施形態では、マンドレル372を時計回りにまたは逆時計回りに回しまたは回転させることによって、サックに編組コイル366が押し込まれる。
【0236】
例示的ないくつかの実施形態によれば、例えば図3Nに示されているように、サック376は、流体吸収ユニットの展開プロセスの間、導入管360の周りにまたは導入管360内に折り畳まれている。展開性能を向上させるため、いくつかの実施形態では、例えば断面図377に示されているように、サック376内にまたはサック376の外側に、内スタイレット・ワイヤ361が挿入される。いくつかの実施形態では、折り畳まれた状態にあるサック376が、展開プロセスの間、カバー・ライナ378によって覆われている。いくつかの実施形態では、カバー・ライナ378が、展開プロセスの間、膜380が体組織と接触すること、および/または腹腔鏡導入器もしくは他の導入具内を通って滑り込むのに十分な剛さもしくは十分な剛性を提供することを防ぐ。それに加えてまたはその代わりに、カバー・ライナ378は、展開プロセス中にサック376が不必要に拡張することを防ぐ。いくつかの実施形態では、カバー・ライナ378の直径が腹膜開口の直径よりも小さい。いくつかの実施形態では、カバー・ライナ378が、折り畳まれたサック376を保持するのに十分な大きさを有する。いくつかの実施形態では、ライナの内径が6から14mmの範囲にあり、例えば6、7、8、10mm、またはこれらの値の任意の中間値、またはこれらの値よりも大きな値である。いくつかの実施形態では、カバー・ライナ378の厚さが0.05~1mmの範囲にある。いくつかの実施形態では、カバー・ライナが、体から引き出すのに十分な長さを有する。いくつかの実施形態では、カバー・ライナ378が、表面処理された滑らかなポリマーまたは親水性ポリマーでできている。あるいは、カバー・ライナ378は、再吸収可能な材料および/または可溶性材料から作られている。
【0237】
例示的ないくつかの実施形態によれば、例えばサックを広げるのを助けるために、任意選択で、サックに関して押し戻され、サックを露出させる間、サックを広げるのを助けるために、カバー・ライナ376が、サック378の縁に締め付けられている。
【0238】
例示的ないくつかの実施形態によれば、例えば図4A~4Cに示されているように、流体吸収ユニット402、例えば流体抽出チャンバは、膜で包まれたチャンバ404を備える。いくつかの実施形態では、膜で包まれたチャンバ404が、ポート310と同様の出口コネクタ412を備える。いくつかの実施形態では、膜で包まれたチャンバ402が、円板として形作られており、チャンバの周囲に輪郭密封部(outline sealing)406を備える。いくつかの実施形態では、輪郭密封部406が、円板形のチャンバ402の両面に置かれた2枚の膜間の接続部を密封している。
【0239】
例示的ないくつかの実施形態によれば、排出管401は、排出流体を体内、例えば腹膜腔内、任意選択で腹膜に固定するための筋肉下縫合リーフレット(sub-muscular suturing leaflet)410を備える。例えば腹膜アクセス・ポート内における排出管401の位置を固定するため、いくつかの実施形態では、排出管に、少なくとも1つの固定バンド408が巻き付けられている。
【0240】
例示的ないくつかの実施形態によれば、例えば図4Bおよび4Cに示されているように、丸いチャンバ、例えば膜で包まれたチャンバ404の中に配置されたときに螺旋を形成するように、螺旋形の編組管414が予め形成されている。
【0241】
埋入型システムの例示的な展開
次に、埋入型システムの展開を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図5A~5Gを参照する。
【0242】
例示的ないくつかの実施形態によれば、例えば図5Aに示されているように、体壁および腹膜に開口が開けられる。いくつかの実施形態では、導入管504に、折り畳まれた状態のサック508が巻き付けられる。いくつかの実施形態では、例えば図5Bに示されているように、腹膜ポート502を通して腹膜内に導入管504が押し込まれる。
【0243】
例示的ないくつかの実施形態によれば、例えば図5Cに示されているように、腹膜内でサック508が広がる。いくつかの実施形態では、例えば図5Dに示されているように、例えば広げられた状態のサック510を安定させるために、広げられたサック508に導入管504を通して編組管512が押し込まれる。
【0244】
例示的ないくつかの実施形態によれば、例えば図5Eに示されているように、サック508が広げられた状態で安定したときに、導入管を後退させる。いくつかの実施形態では、サック508に接続された排出管507が、腹膜の開口に置かれたカフ505を備える。いくつかの実施形態では、腹膜の外側、任意選択で皮下に、制御ユニット514が埋入される。いくつかの実施形態では、制御ユニット514に排出管507が接続され、任意選択で、制御ユニット514の内側に配置されたポンプに排出管507が接続される。いくつかの実施形態では、制御ユニットが、排出カテーテル516、例えばピッグテール・カテーテルによって、泌尿器系、任意選択で膀胱518に接続される。
【0245】
例示的ないくつかの実施形態によれば、例えば図5Fに示されているように、制御ユニット514が、ピッグテール・カテーテルによって腎盂515に接続される。
【0246】
例示的ないくつかの実施形態によれば、例えば図5Gに示されているように、腹腔鏡511を使用して腹膜内にサック508が導入され、展開される。腹腔鏡511は、サック508の導入および配置プロセスを視覚化することを可能にする。いくつかの実施形態では、固定具を使用せずに、腹膜内でサックが展開され、配置される。
【0247】
次に、埋入可能装置の展開のためのプロセスを示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図6を参照する。
【0248】
例示的ないくつかの実施形態によれば、602で、折り畳まれたサックを有するカテーテルが腹膜内に導入される。いくつかの実施形態では、折り畳まれたサックが導入管に巻き付けられている。いくつかの実施形態では、折り畳まれたサックが、管、例えば導入管のルーメンの中に入れられている。任意選択で、折り畳まれたサックは、腹膜内への挿入段階の間、サックを保護する外部層または外部シートによって覆われており、任意選択で、サックは、膜によって覆われている。その代わりにまたはそれに加えて、折り畳まれたサックを覆っている外部層または外部シートは、サックが広がるのを防ぐ。
【0249】
例示的ないくつかの実施形態によれば、604で、サックが広げられる。いくつかの実施形態では、腹膜内の所望の位置にサックが置かれたときに、サックが広げられる。いくつかの実施形態では、サックを覆っている層またはカバーまたは覆いを後退させることによって、サックが広げられる。いくつかの実施形態では、例えばサックが広がることを可能にするために、腹膜内へのサックの導入の間に、サックを覆っている管を後退させる。
【0250】
例示的ないくつかの実施形態によれば、606で、広げられたサックの内ルーメンに、内部スカフォルドまたは内部スケルトンが挿入される。いくつかの実施形態では、この内部スカフォルド、例えば編組管またはコイル管が、内部スカフォルドを回転させることによって挿入される。いくつかの実施形態では、内部スカフォルドの回転が、サック内への内部スカフォルドの前進運動を生じさせる。あるいは、内部スカフォルドはサックに押し込まれる。例えば内部スカフォルドのサックからの脱出を防ぐために、いくつかの実施形態では、内部スカフォルドが所望の位置に置かれたとき、および/または内部スカフォルドが所望の長さだけサックに押し込まれたときに、ロック機構が起動する。いくつかの実施形態では、内部スカフォルドを回転させることによって、または内部スカフォルドを押すことによって、内部スカフォルドがサック内でロックされる。いくつかの実施形態では、内部スカフォルドが、サック内で、可逆的または不可逆的にロックまたは固定される。
【0251】
例示的ないくつかの実施形態によれば、608で、制御装置が埋入される。いくつかの実施形態では、制御装置が、腹膜の外側に埋入される。任意選択で、制御装置は皮下に埋入される。いくつかの実施形態では、制御装置が、ポケットの内側に埋入され、および/または組織に固定される。
【0252】
例示的ないくつかの実施形態によれば、610で、サックが制御装置に接続される。いくつかの実施形態では、管、例えば排出管によって、サックが制御装置に流体工学的に接続される。任意選択で、排出管は、制御装置の内側に位置するポンプに接続される。いくつかの実施形態では、排出管が、サックの内側に置かれた内部スカフォルドに接続される。任意選択で、排出管は内部スカフォルドであり、例えば内部スカフォルドの異なる領域である。
【0253】
例示的ないくつかの実施形態によれば、612で、制御装置に排出カテーテルが接続される。いくつかの実施形態では、排出カテーテルが、制御装置の内側に位置するポンプに流体工学的に接続される。いくつかの実施形態では、制御装置に、排出カテーテルの第1の開口が流体工学的に接続される。いくつかの実施形態では、排出カテーテルの第2の開口が、泌尿器系内、例えば腎臓または膀胱内に配置される。
【0254】
例示的なビーズ充填サック
次に、ビーズが充填されたサック(以後、ビーズ充填サック)を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図7Aを参照する。
【0255】
例示的ないくつかの実施形態によれば、サック、例えばサック700が、膜、例えば膜702によって覆われている。いくつかの実施形態では、充填管、例えば充填管706が、サック700の開口に接続され、サック700にビーズを充填するために使用される。例えばサック700の外面を平らに維持し、任意選択で半剛性に維持するために、いくつかの実施形態では、このビーズがサック700に機械的強度を提供する。いくつかの実施形態では、ビーズが、潰れていないサック内容積を維持する。その代わりにまたはそれに加えて、例えば組織からサック700内へ流体を引き寄せる浸透圧を誘起するために、ビーズはイオン電荷を有している。いくつかの実施形態では、サックに接続されたポンプによって加えられる能動的な真空力に加えて、ビーズによって浸透圧が誘起される。あるいは、この真空力の代わりに、ビーズによって浸透圧が誘起される。いくつかの実施形態では、ビーズのサイズが0.5mmから3mmの範囲にあり、例えば0.5、1、2、3mm、またはこれらの値の任意の中間値である。いくつかの実施形態では、ビーズの最小寸法が少なくとも0.5mm、例えば0.5、1、1.5mm、またはこれらの値の任意の中間値、またはこれらの値よりも大きな値である。いくつかの実施形態では、このビーズが、球形または楕円形のビーズである。いくつかの実施形態では、ビーズが半多孔質(semi-porous)であり、および/または穿孔されている。いくつかの実施形態では、例えば膜702の接触エリアの全体の透過性を増大させるために、ビーズが、高剛性の外面を備える。
【0256】
例示的ないくつかの実施形態によれば、サック700が、平らな2つの表面を有する円板として形作られている。いくつかの実施形態では、サックが、これらの平らな表面に、サックのルーメンに入らずに流体が平らな表面を通り抜けることを可能にする少なくとも2つの開口を備える。いくつかの実施形態では、これらの開口、例えば開口704が、これらの2つの平らな表面の内面を異なる位置で接続することによって形成されている。いくつかの実施形態では、平らな表面の内面を接続することが、サック700のルーメン内でのビーズの運動を制限する。任意選択で、ビーズの運動を制限することは、サック700のルーメン内でビーズが均一に分布することを強制する。いくつかの実施形態では、ビーズの均一な分布が、サック700の内面に内面全体にわたって均一な機械力をビーズが加えることを可能にする。それに加えてまたはその代わりに、ビーズ、例えば帯電したビーズのサック内における均一な分布は、サック700の表面全体にわたって均一な浸透圧を加えることを可能にする。
【0257】
次に、ビーズ充填サックを展開するためのプロセスを示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図7Bを参照する。
【0258】
例示的ないくつかの実施形態によれば、708で、カテーテルおよび折り畳まれたバルーンまたは折り畳まれたサックが腹膜内に導入される。いくつかの実施形態では、例えば図6で説明されたように、例えば導入段階の間、バルーンの折畳みを防ぐため、および/またはバルーンを体組織から分離するために、導入段階の間、折り畳まれたバルーンが層またはシートによって覆われている。いくつかの実施形態では、バルーンが膜で覆われている。
【0259】
例示的ないくつかの実施形態によれば、710で、バルーンが広がる。いくつかの実施形態では、腹膜内の所望の位置にバルーンが置かれたときに、バルーンが広げられる。いくつかの実施形態では、バルーンを覆っているカバーまたは層を取り除くことによって、バルーンが広がる。あるいはまたは任意選択で、バルーンは、バルーンを覆っている管を後退させることによって広がる。
【0260】
例示的ないくつかの実施形態によれば、712で、バルーンに充填管が接続される。いくつかの実施形態では、充填管が、サックの開口に接続された導入管の近位開口に接続される。あるいは、充填管は、導入管の内側でバルーンに押し込まれる。
【0261】
例示的ないくつかの実施形態によれば、714で、バルーンにビーズが充填される。いくつかの実施形態では、充填管を通してビーズがバルーンに押し込まれ、任意選択で、腹膜の外側に配置された充填管の開口を通して力を加えることによってビーズがバルーンに押し込まれる。
【0262】
例示的ないくつかの実施形態によれば、716で、ビーズが充填されたバルーン、例えばビーズ充填サックが、少なくとも部分的に封止される。いくつかの実施形態では、サックからのビーズの放出を防ぐために、ビーズ充填サックが少なくとも部分的に封止される。いくつかの実施形態では、ビーズのサイズよりも小さな細孔を有するメッシュをバルーンの開口に配置することによって、バルーンが充填されたサックが部分的に封止される。あるいは、充填管、またはビーズを充填するために使用されたサックの開口が封止される。
【0263】
例示的ないくつかの実施形態によれば、ビーズがサックから放出されないようになった後に、図6に記載された610で、サックが制御装置に接続される。
【0264】
いくつかの実施形態では、ビーズが、高いポロシティ(porosity)、例えば1000kDaよりも大きなポロシティを有するように製造されたものである。いくつかの実施形態では、このポロシティが65kDaよりも大きく、例えば80、10、120kDaよりも大きく、またはこれらの値の任意の中間値よりも大きく、またはこれらの値よりも大きな値よりも大きい。いくつかの実施形態では、ビーズのポロシティが、アルブミンのサイズよりも大きい。いくつかの実施形態では、ビーズが、特定の極性、電荷、サイズ排除性(size-exclusion)および/または親和性を有するように製造されたものである。いくつかの実施形態では、直径160mm、厚さ6mmの比較的に大きなチャンバに対して、材料Polypropele(0.9g/cm)を含む例えばサイズ2.5mmの穿孔された球体を使用することは、サック内のビーズ数120を与え、その重量は72グラムになる。
【0265】
例示的なゲル充填チャンバ
次に、ゲルが充填された内スケルトンを有するチャンバを示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図8Aを参照する。
【0266】
例示的ないくつかの実施形態によれば、チャンバ、例えばチャンバ802は、膜、例えば膜804で覆われた内スケルトンを備える。いくつかの実施形態では、内スケルトンが中心管状リング803を備え、中心管状リング803から少なくとも1本の管状リブが延びている。あるいは、内スケルトンは、チャンバ802の周縁を取り囲む外部管状リング805を備え、外部管状リング805から少なくとも1本の管状リブ806が延びている。いくつかの実施形態では、この少なくとも1本の管状リブが、中心リングおよび外部リングと接触している。いくつかの実施形態では、この少なくとも1本の管状リブが、外部管状リング805および/または中心管状リング803に流体工学的に接続されている。
【0267】
例示的ないくつかの実施形態によれば、内スケルトンの中心管状リング803および/または外部管状リング805および/または管状リング806に、充填管810が流体工学的に接続されている。いくつかの実施形態では、内スケルトンに、ゲル、または重合性流体、任意選択で自己重合性流体、またはヒドロゲル、または粘性流体、例えばショ糖が加えられた食塩水が充填される。いくつかの実施形態では、ゲルまたは自己重合性流体の挿入後、チャンバの充填開口が密封される。いくつかの実施形態では、チャンバ802に入った流体が、ゲルまたは重合性流体に接触することなく、これらの内スケルトン要素間を自由に通過する。いくつかの実施形態では、膜804を通り抜けてチャンバ802に入った流体が、チャンバ802の開口に接続された排出管810を介してチャンバ802から排出される。
【0268】
次に、ゲル充填チャンバを展開するためのプロセスを示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図8Bを参照する。
【0269】
例示的ないくつかの実施形態によれば、図7Bの710に記載されているように、チャンバ、例えばバルーン・チャンバが広げられる。いくつかの実施形態では、814で、チャンバに、ゲルまたは重合性流体が充填される。いくつかの実施形態では、このゲルが、充填管を通してチャンバの内部スケルトンに充填される。いくつかの実施形態では、内部スケルトン内のゲルが、チャンバに入った流体、例えば組織から抽出された流体から分離される。
【0270】
例示的ないくつかの実施形態によれば、816で、ゲル充填管が密封される。ゲル充填管は、所望の量のゲルまたは重合性流体がチャンバに挿入されときに密封される。
【0271】
例示的ないくつかの実施形態によれば、818で、チャンバが固定される。いくつかの実施形態では、内部スケルトンが所望の剛性に達した後、または内部スケルトンがチャンバの外表面に所望の内力を加えた後に、チャンバが固定される。いくつかの実施形態では、チャンバの外表面に置かれた少なくとも1つの固定具によって、チャンバが固定される。
【0272】
例示的ないくつかの実施形態によれば、820で、ゲルまたは流体が充填される。いくつかの実施形態では、ゲルまたは流体がチャンバに、任意選択で専用の充填ポートを通して充填される。いくつかの実施形態では、この専用の充填ポートが、排出管と同軸におよび/または排出管の管内に置かれる。
【0273】
例示的ないくつかの実施形態によれば、排出ポートが開かれた後、例えば図6の610に記載されているように、チャンバが制御ユニットに接続される。
【0274】
システム構成要素の例示的な取外しおよび/または交換
例示的ないくつかの実施形態によれば、腹膜チャンバの摘出が必要な場合には、最初に、サックの充填材(螺旋編組管もしくはコイル管、ビーズまたは非重合性ゲル)が取り出される。いくつかの実施形態では、充填材を取り出した後、サックが、その相対的な剛さまたは剛性を失い、サックを折り畳むことができ、摘出のための小さな切開口/ポートを可能にするように操作することができる。いくつかの実施形態では、充填材を取り出した後も、膜サックがその最初の位置に残される。
【0275】
治療に影響を及ぼす入力の例示的な起源
次に、流体濾過治療に影響を及ぼすパラメータを示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図9Aを参照する。
【0276】
例示的ないくつかの実施形態によれば、流体濾過治療900は、患者の臨床パラメータ902の影響を受ける。いくつかの実施形態では、患者の臨床状態に合わせて少なくとも1つの治療パラメータが調整される。いくつかの実施形態では、この臨床パラメータが、患者の身体的状態に基づいて、ならびに/または臨床パラメータの検査および測定の結果に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、この治療を、選択された患者、例えばウォーム・アンド・ウェット患者に適合させる。
【0277】
例示的ないくつかの実施形態によれば、治療900は、排出された流体の内容904の影響を受ける。いくつかの実施形態では、排出された流体中の化学成分および/または生体成分のレベルに基づいて、治療の少なくとも1つのパラメータが変更される。
【0278】
例示的ないくつかの実施形態によれば、治療900は、システム・ステータス906の影響を受ける。いくつかの実施形態では、システム・ステータスの変化、例えばシステムの少なくとも1つの構成要素のエラーまたは動作不良に従って、治療の少なくとも1つのパラメータが変更される。いくつかの実施形態では、システムの流体吸収ユニットおよび/または流体流路が詰まったときに、治療が停止または変更される。いくつかの実施形態では、例えば埋入型システムの少なくとも1つの構成要素の交換を可能にするために、治療が変更される。
【0279】
例示的ないくつかの実施形態によれば、治療900は、他の装置から受け取った入力908に従って変更される。いくつかの実施形態では、センサおよび/または装置から受け取った入力、任意選択で、制御ユニット、例えば制御ユニット106と通信する埋入されたセンサおよび装置から受け取った入力に従って、治療900の少なくとも1つのパラメータが変更される。
【0280】
例示的ないくつかの実施形態によれば、治療900は、専門家入力910の影響を受ける。いくつかの実施形態では、専門家、例えば医師が、遠隔コンピュータから、任意選択で患者および/または装置から受け取った表示に基づいて、治療を変更する。いくつかの実施形態では、医師が、患者の状態の改善または悪化に従って治療を変更する。
【0281】
例示的ないくつかの実施形態によれば、治療900は、患者入力912の影響を受ける。いくつかの実施形態では、患者入力912が、治療に対する患者コンプライアンス、例えば患者が治療指示に従っているかどうかを含む。いくつかの実施形態では、患者入力912が、姿勢および体位を含む。いくつかの実施形態では、患者入力が、患者の体の運動を含む。任意選択で、患者入力912は、患者の食物および水の消費量、例えば選択された期間内に患者が飲んだ水の量を含む。
【0282】
治療に影響を及ぼす入力の例示的なタイプ
次に、流体抽出治療に影響を及ぼす入力のタイプを示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図9Bを参照する。
【0283】
例示的ないくつかの実施形態によれば、流体抽出治療900は、臨床パラメータ901の影響を受ける。いくつかの実施形態では、臨床パラメータ901に基づいて、治療または少なくとも1つの治療パラメータが変更される。任意選択で、測定された臨床パラメータ901に基づいて、異なる治療計画が選択される。いくつかの実施形態では、臨床パラメータが、体重、例えば患者によって測定された体重、血圧および/または心拍数を含む。いくつかの実施形態では、臨床パラメータ901が、患者のうっ血レベルに関係したパラメータ、例えば肺うっ血、起坐呼吸、発作性夜間呼吸困難、末梢性(両側性)水腫、頸静脈拡張、うっ血性肝腫大、腸うっ血、腹水および/または肝頸静脈逆流に関係したパラメータを含む。いくつかの実施形態では、臨床パラメータ901が、患者の低灌流(hypoperfusion)レベルに関連したパラメータ、例えば四肢冷汗(Cold sweated extremities)、尿量過少、精神錯乱、めまいおよび/または脈圧狭小に関係したパラメータを含む。いくつかの実施形態では、臨床パラメータが、絶対値として、または基準もしくはベースライン値に関して測定される。
【0284】
例示的ないくつかの実施形態によれば、流体抽出治療900は、感覚データ903の影響を受ける。いくつかの実施形態では、感覚データ903が、患者の体を感知することによって、例えば患者の皮膚がどれくらい熱いのかもしくは冷たいのか、患者の皮膚の発汗がどれくらいであるのかを感知することによって受け取ったデータ、および/または水腫後の患者の脚の嚥下を感知することによって受け取ったデータを含む。
【0285】
例示的ないくつかの実施形態によれば、流体抽出治療900は、行動データ905の影響を受ける。いくつかの実施形態では、行動データ905が、体動および/または姿勢に関係したデータを含む。いくつかの実施形態では、行動データ905が、食料および飲料の摂取に関係したデータを含む。
【0286】
例示的ないくつかの実施形態によれば、流体抽出治療900は、警報907、例えば流体を抽出するための埋入型システムによって生成された警報の影響を受ける。いくつかの実施形態では、警報907が、装置のステータスに関係した警報、例えば動作不良警報を含む。いくつかの実施形態では、警報907が、治療の結果に関係した警報、例えば治療の結果が所望の結果でないときの警報を含む。いくつかの実施形態では、警報907が、治療コンプライアンスに関係した警報、例えば選択された治療プロトコルに従っていない形で患者が行動したときの警報を含む。
【0287】
例示的ないくつかの実施形態によれば、流体抽出治療900は、プロトコル調整909の影響を受ける。いくつかの実施形態では、プロトコル調整909が、埋入型流体抽出装置のポンプの起動に関係した調整、例えば加えられる真空力のレベル、ポンプ起動の持続時間および/またはデューティ・サイクルの持続時間に関係した調整を含む。
【0288】
治療を変更するための例示的な一般的なプロセス
次に、流体抽出治療を変更するための一般的なプロセスを示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図9Cを参照する。
【0289】
例示的ないくつかの実施形態によれば、920で、患者が選択される。いくつかの実施形態では、治療に適した患者が、患者の臨床状態に基づいて選択される。いくつかの実施形態では、急性心不全を起こしている患者、任意選択で、既知の慢性的背景を有する急性心不全を起こしている患者が選択され、任意選択で、患者の血流力学的およびうっ血プロフィールに基づいて選択される。いくつかの実施形態では、920で、患者のうっ血レベルに基づいて、および/または低灌流レベルに基づいて患者が選択される。いくつかの実施形態では、うっ血レベルおよび/または低灌流レベルが、患者の血流力学的プロフィールを表す。いくつかの実施形態では、低いうっ血レベルにあり、かつ低灌流レベルにはないと診断された患者が、ウォーム-ドライ患者と呼ばれる。いくつかの実施形態では、高いうっ血レベルにあり、かつ低灌流レベルにはない、または低い低灌流レベルにあると診断された患者が、ウォーム-ウェット患者と呼ばれる。いくつかの実施形態では、低いうっ血レベルにあり、かつ高い低灌流レベルにあると診断された患者が、コールド-ドライ患者と呼ばれる。いくつかの実施形態では、高いうっ血レベルにあり、かつ高い灌流レベルにあると診断された患者が、コールド-ウェット患者と呼ばれる。いくつかの実施形態では、ウォーム-ウェット患者および/またはコールド-ウェット患者が選択される。
【0290】
例示的ないくつかの実施形態によれば、922で、治療が決定される。いくつかの実施形態では、患者の臨床状態に基づいて治療プロトコルが決定される。あるいは、患者の臨床状態に基づいて、少なくとも1つの治療プロトコル・パラメータ値が決定される。いくつかの実施形態では、患者の臨床分類、例えばウォーム-ウェットなのかまたはコールド-ウェットなのかの分類に基づいて、治療プロトコルが決定される。
【0291】
例示的ないくつかの実施形態によれば、924で、治療が開始される。いくつかの実施形態では、患者に関係した臨床パラメータのベースライン値または基準値を測定した後に、治療が開始される。
【0292】
例示的ないくつかの実施形態によれば、926で、1つまたは複数のパラメータが測定される。いくつかの実施形態では、測定されるパラメータが、治療の結果に関係したパラメータを含む。いくつかの実施形態では、測定されるパラメータが、臨床パラメータ、行動パラメータ、精神パラメータ、感覚パラメータおよび/または治療に関係したパラメータを含む。いくつかの実施形態では、926で、うっ血またはうっ血プロキシ(proxy)が測定される。任意選択で、間質液または抽出された流体のうっ血またはうっ血プロキシが測定される。
【0293】
例示的ないくつかの実施形態によれば、928で、入力を受け取る。いくつかの実施形態では、この入力を、患者、看護者、看護士または医師から受け取る。任意選択で、この入力を、測定されたパラメータの分析に従って受け取る。
【0294】
例示的ないくつかの実施形態によれば、930で、治療が変更される。いくつかの実施形態では、測定されたパラメータに基づいて、および/または受け取った入力に基づいて、治療または少なくとも1つの治療パラメータが調整される。いくつかの実施形態では、治療の持続時間および/または埋入型システムのポンプによって加えられる力が変更される。いくつかの実施形態では、患者の新たな臨床状態に合わせて治療を調整するために、治療および/または少なくとも1つの治療パラメータが変更される。
【0295】
例示的ないくつかの実施形態によれば、930で、例えば間隙圧の回復時間を評価するために、治療中に、組織に加えられる圧力および/またはポンプのデューティ・サイクルが変更される。いくつかの実施形態では、930で、間隙圧の回復速度に合わせて治療を調整するために、組織に加えられる圧力および/またはポンプのデューティ・サイクルが変更される。
【0296】
臨床測定に基づいて治療を変更するための例示的なプロセス
例示的ないくつかの実施形態によれば、例えば血管分布うっ血患者(vascularity congested patient)では、システムが、静脈性うっ血に対するプロキシとしての血管内圧モニタに結合され、心室充満圧が正常値または所望の値範囲に下がるまでシステムが作動する。
【0297】
例示的ないくつかの実施形態によれば、例えば全身性容量過負荷患者(systemic volume overloaded patient)では、システムが、インピーダンス・ウォーター・アセスメント、体重および内部うっ血プロキシ・モニタに基づく。いくつかの実施形態では、全身性容量過負荷患者に比べて血管分布うっ血患者の方が、システムが、よりゆっくりと動作するように調整される。
【0298】
例示的ないくつかの実施形態によれば、以下の状態を起こしている被験者では、本明細書に記載されたシステムおよび方法を使用した流体抽出治療が、150~500ml/日の範囲の流体を抽出するように調整される:(1)左心不全および根底にある慢性腎疾患、(2)腹水状態を除く右心不全、(3)両心室性心不全、(4)フォンタン不全、(5)全身性うっ血を伴う肺高血圧症。
【0299】
例示的ないくつかの実施形態によれば、以下の状態を起こしている被験者では、本明細書に記載されたシステムおよび方法を使用した流体抽出治療が、500~1000ml/日の範囲の流体を抽出するように調整される:(1)病期4および5の慢性腎疾患、(2)末期の腎臟病、(3)腹部コンパートメント症候群、(4)肝硬変、門脈圧亢進症などに関係した腹水状態。
【0300】
いくつかの実施形態によれば、予め決められた治療が、治療中に実行された臨床パラメータ測定に基づいて変更され、任意選択で自動的に変更される。次に、臨床パラメータ測定に従って流体抽出治療を変更するためのプロセスを示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図9Dを参照する。
【0301】
例示的ないくつかの実施形態によれば、932で、臨床パラメータが測定される。いくつかの実施形態では、治療中に、臨床パラメータ、例えば図9Bに示された臨床パラメータ901が測定される。任意選択で、臨床パラメータが、少なくとも1つのセンサ、例えばセンサ122によって自動的に測定される。その代わりにまたはそれに加えて、臨床パラメータ、例えば患者の体重または血圧は、患者によって測定され、または装置に無線で接続された外部センサによって測定される。
【0302】
例示的ないくつかの実施形態によれば、934で、患者の状態が診断される。いくつかの実施形態では、患者の状態が、測定された臨床パラメータに基づいて診断される。いくつかの実施形態では、934で、測定された臨床パラメータに基づいて、患者の血流力学的プロフィールが決定される。いくつかの実施形態では、934で、泌尿器系に関係した臨床状態、例えば腎臓の状態ならびに/または心臓および/もしくは血液の状態が診断される。いくつかの実施形態では、934で、生体区画間の流体運動、例えば血液と細胞の間および/または血液と泌尿器系の間の流体運動に関係した臨床状態が診断される。
【0303】
例示的ないくつかの実施形態によれば、936で、患者の臨床状態が病期分類される。いくつかの実施形態では、936で、臨床状態、例えば病気または病的状態が病期分類される。任意選択で、患者の臨床状態は、測定された臨床パラメータまたは測定された他のパラメータに基づいて病期分類される。
【0304】
例示的ないくつかの実施形態によれば、930で、治療が変更される。いくつかの実施形態では、932での臨床パラメータの測定に基づいて、治療および/または少なくとも1つの治療パラメータが変更される。その代わりにまたはそれに加えて、治療および/または少なくとも1つの治療パラメータは、934での臨床状態の診断および/または936での臨床状態の病期分類に基づいて変更される。いくつかの実施形態では、患者の新たな臨床状態に合わせて治療を調整するために、治療および/または少なくとも1つの治療パラメータが変更される。
【0305】
抽出された流体の測定に基づいて治療を変更するための例示的なプロセス
いくつかの実施形態によれば、予め決められた治療が、治療中に実行された排出された流体の測定に基づいて変更され、任意選択で自動的に変更される。次に、抽出された流体の測定に従って流体抽出治療を変更するためのプロセスを示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図9Eを参照する。
【0306】
例示的ないくつかの実施形態によれば、940で、抽出された流体が測定される。いくつかの実施形態では、940で、抽出された流体の内容が測定される。いくつかの実施形態では、抽出された流体中の化学物質、無機質および生体作用物質のレベル、例えば抗体、タンパク質、ビタミン、酸のレベルが測定される。いくつかの実施形態では、測定される物質が、ナトリウム・レベル、カリウム・レベル、フォスフェート・レベル、クレアチニン・レベル、アルブミン・レベル、尿素レベルまたは他のバイオマーカ・レベル、例えば脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)を含む。いくつかの実施形態では、測定された物質の濃度が決定される。任意選択で、測定された物質のレベルは、基準またはベースライン値と比較される。いくつかの実施形態では、測定された物質のレベルが、血中の物質のレベルと比較される。
【0307】
例示的ないくつかの実施形態によれば、942で、抽出された流体の測定に基づいて、患者の状態が診断される。いくつかの実施形態では、942で、排出された流体の測定に基づいて、患者の血流力学的プロフィールが決定される。いくつかの実施形態では、942で、泌尿器系に関係した臨床状態、例えば腎臓の状態ならびに/または心臓および/もしくは血液の状態が診断される。いくつかの実施形態では、942で、生体区画間の流体運動、例えば血液と細胞の間および/または血液と泌尿器系の間の流体運動に関係した臨床状態が診断される。
【0308】
例示的ないくつかの実施形態によれば、944で、患者の臨床状態が病期分類される。いくつかの実施形態では、944で、臨床状態、例えば病気または病的状態が病期分類される。任意選択で、患者の臨床状態は、940で実行された排出された流体の測定に基づいて病期分類される。
【0309】
例示的ないくつかの実施形態によれば、946で、治療が変更される。いくつかの実施形態では、940で実行された抽出された流体の測定に基づいて、治療および/または少なくとも1つの治療パラメータが変更される。その代わりにまたはそれに加えて、治療および/または少なくとも1つの治療パラメータは、942で実行された臨床状態の診断および/または944で実行された臨床状態の病期分類に基づいて変更される。いくつかの実施形態では、患者の新たな臨床状態に合わせて治療を調整するために、治療および/または少なくとも1つの治療パラメータが変更される。
【0310】
患者および/または専門家からの入力に従って治療を変更するための例示的なプロセス
いくつかの実施形態によれば、予め決められた治療が、治療中または治療後に患者および/または専門家から受け取った入力に基づいて変更され、任意選択で自動的に変更される。次に、受け取った入力に基づいて流体抽出治療を変更するためのプロセスを示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図9Fを参照する。
【0311】
例示的ないくつかの実施形態によれば、948で、患者からの入力を受け取る。いくつかの実施形態では、患者からの入力が、患者によって測定された臨床パラメータ、例えば体重または血圧を含む。いくつかの実施形態では、患者からの入力が、決定された治療の以下のステップ、例えば飲料摂取および/もしくは食料摂取養生法(regime)、睡眠時間ならびに/または体動を含む。
【0312】
例示的ないくつかの実施形態によれば、950で、専門家、例えば医師からの入力を受け取る。いくつかの実施形態では、専門家からの入力が、少なくとも1つの治療パラメータおよび/または臨床パラメータを含む。いくつかの実施形態では、専門家からの入力が、追加の治療プロトコルおよび/もしくは治療指示、ならびに/または提案された治療変更を含む。
【0313】
例示的ないくつかの実施形態によれば、952で、患者および/または専門家から受け取った入力に基づいて、患者の状態が診断される。いくつかの実施形態では、952で、患者および/または専門家入力に基づいて、患者の血流力学的プロフィールが決定される。いくつかの実施形態では、952で、泌尿器系に関係した臨床状態、例えば腎臓の状態および/または心臓の状態および/または血液の状態が診断される。いくつかの実施形態では、952で、生体区画間の流体運動、例えば血液と細胞の間および血液と泌尿器系の間の流体運動に関係した臨床状態が診断される。
【0314】
例示的ないくつかの実施形態によれば、954で、患者に対して受け取った入力および/または専門家から受け取った入力に基づいて、患者の臨床状態が病期分類される。いくつかの実施形態では、944で、病気または病的状態が病期分類される。
【0315】
例示的ないくつかの実施形態によれば、956で、治療コンプライアンスが決定される。いくつかの実施形態では、956で、治療に対する患者のコンプライアンスが、948で患者から受け取った入力に基づいて決定される。いくつかの実施形態では、治療手法全体に対する患者のコンプライアンス、例えば飲料および食料摂取養生法に対する患者のコンプライアンスが決定される。
【0316】
例示的ないくつかの実施形態によれば、958で、表示が送られる。いくつかの実施形態では、この表示が、報告、例えばコンプライアンス報告を含む。いくつかの実施形態では、この表示が患者に送られ、任意選択で、埋入型システムと通信する携帯型装置および/またはコンピュータに送られる。その代わりにまたはそれに加えて、この表示は、埋入型システムと通信する携帯型装置および/またはコンピュータを介して、専門家、例えば医師に送られる。いくつかの実施形態では、埋入型システムが、表示、例えば人間が検出可能な表示を生成するよう、携帯型装置および/またはコンピュータに信号を送る。
【0317】
例示的ないくつかの実施形態によれば、960で、治療が変更される。いくつかの実施形態では、患者および/または専門家から受け取った入力に基づいて、治療および/または少なくとも1つの治療パラメータが変更される。その代わりにまたはそれに加えて、治療および/または少なくとも1つの治療パラメータは、952で実行された臨床状態の診断および/または954で実行された臨床状態の病期分類に基づいて変更される。いくつかの実施形態では、治療および/または少なくとも1つの治療パラメータが、956で決定された治療コンプライアンスに基づいて変更される。
【0318】
装置保守のための例示的なプロセス
次に、装置保守のためのプロセスを示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図9Gを参照する。
【0319】
例示的ないくつかの実施形態によれば、961で、埋入可能装置の設定(setup)が決定される。いくつかの実施形態では、この装置設定が、ポンプ、例えばポンプ130の起動パラメータを含む。いくつかの実施形態では、ポンプの起動パラメータが、起動持続時間、選択された期間における起動サイクル数、およびポンプによって生成される真空力の強度を含む。いくつかの実施形態では、装置設定が、埋入型システムと外部装置、例えば携帯型装置との間で通信チャネルを確立することを含む。いくつかの実施形態では、装置設定が、表示送信スケジュール、例えばコンプライアンス報告送信スケジュールを調整することを含む。いくつかの実施形態では、装置設定が装置較正を含む。いくつかの実施形態では、決定された設定が、装置を起動させるため、および/またはパラメータを測定するため、および/または治療を自動的に変更するための学習アルゴリズムを変更および較正することを含む。
【0320】
例示的ないくつかの実施形態によれば、962で、治療が開始される。いくつかの実施形態では、決定された装置設定に基づいて装置が動作する。さらに、装置のメモリ、例えばメモリ116に記憶された治療プロトコルに基づいて装置が動作する。
【0321】
例示的ないくつかの実施形態によれば、964で、装置ステータスが決定される。いくつかの実施形態では、装置ステータスが、予め定められた時点において、ならびに/または患者および/もしくは専門家から要求があったときに決定される。いくつかの実施形態では、装置ステータスが、バッテリ充電ステータス、ポンプ起動ステータス、流体流れステータスおよび/または流体抽出ステータスを含む。
【0322】
例示的ないくつかの実施形態によれば、966で、表示が送られる。いくつかの実施形態では、この表示が、決定された装置ステータスが所望の装置ステータスでない場合に送られる。いくつかの実施形態では、966で、装置動作不良が生じた場合に表示が送られる。その代わりにまたはそれに加えて、装置構成要素、例えば膜、流体吸収ユニット、カテーテル管、排出管、バッテリを交換または位置変更すべき場合に、表示が送られる。いくつかの実施形態では、バッテリを充電すべき場合に、表示が送られる。
【0323】
例示的ないくつかの実施形態によれば、968で、少なくとも1つの装置構成要素が交換される。いくつかの実施形態では、バッテリおよび/または膜および/または排出管および/または流体吸収ユニットもしくはチャンバが交換される。
【0324】
例示的な治療計画
例示的ないくつかの実施形態によれば、病院で急性症状を、任意選択でIV利尿および/または限界濾過を用いて安定させた後に、患者に装置が埋入される。いくつかの実施形態では、(一定程度、)経口利尿薬抵抗性であると診断され、任意選択で同じ状態を再び認めた後に、患者に装置が埋入される。
【0325】
例示的ないくつかの実施形態によれば、血管分布うっ血患者では、装置が、血管内圧モニタに、任意選択で静脈性うっ血に対するプロキシとして結合される。いくつかの実施形態では、装置が、内部うっ血センサを備え、または内部もしくは外部うっ血センサに接続されている。いくつかの実施形態では、心室充満圧が正常値に下がるまで装置が作動する。いくつかの実施形態では、正常値またはほぼ正常値に達した後、装置をより短い期間、起動させ、かつ/または低減された真空力をポンプによって加える。いくつかの実施形態では、全身性末梢性うっ血が正常値に達するまでシステムが作動する。
【0326】
例示的ないくつかの実施形態によれば、全身性容量過負荷と診断された患者では、装置が、インピーダンス・ウォーター・アセスメントおよび/または体重評価に基づき、任意選択で、内部うっ血プロキシ・モニタに基づく。
【0327】
例示的ないくつかの実施形態によれば、1日あたりのターゲット排出速度を有するように、装置がプログラムされる。その代わりにまたはそれに加えて、装置は、内部的に測定されたうっ血プロキシをそのベースライン値にするのに必要な排出速度を算出する。
【0328】
例示的ないくつかの実施形態によれば、装置は、所定のスケジュールで、例えば1から6時間ごとに、例えば1、2、3、4、5、6時間ごとに、またはこれらの値の任意の中間値ごとに、最適化ラン(optimization run)を実行する。いくつかの実施形態では、装置が、ON時間:20秒刻みまたはそれよりも短い期間もしくは長い期間の刻みで20から180秒、例えば30~170秒、OFF時間:30秒刻みまたはそれよりも短い期間もしくは長い期間の刻みで60から600秒の範囲のデューティ・サイクルをスイープする。任意選択で、装置は、-5:-45kPaの範囲、例えば-5kPaから-20kPaの間、-15kPaから-35kPaの間、-20kPaから-45kPaの間の範囲、またはこれらの値もしくは範囲の中間の任意の値もしくは範囲、またはこれらの値もしくは範囲よりも小さな値もしくは範囲、またはこれらの値もしくは範囲よりも大きな値もしくは範囲に圧力を維持することができるポンプ・パワー(スピード)をスイープする。いくつかの実施形態では、次の最適化ランまでは、ターゲット排出速度を与える最小値が動作点として設定される。いくつかの実施形態では、最良の性能または流体抽出効率を与える最適な動作点が、以前に決定された動作点と比較され、プログラムされたターゲット排出速度に関して考慮される。
【0329】
例示的ないくつかの実施形態によれば、ON能動サイクル中の流量値が、平均値および必要値を満たしていないとき、装置は、休止状態または待機状態に切り換わり、任意選択で「うっ血プロキシ」測定を実行する。いくつかの実施形態では、うっ血プロキシ測定を評価するために、内圧センサおよび流量センサが利用される。いくつかの実施形態では、ベースライン値が患者ごとに臨床評価中に較正される。いくつかの実施形態では、動作中に、装置が、真空圧(上で詳述した)および/またはON:OFF・デューティ・サイクルをスイープし、任意選択で、チャンバ内圧力の回復速度と得られた流量とを比較する。いくつかの実施形態では、圧力およびデューティ・サイクルが同じであれば、回復時間が速いほど、うっ血は大きい。いくつかの実施形態では、装置がさらに、圧力-流量曲線および/または局所インピーダンス測定によって、腔液および/または間質液の存在を評価する。いくつかの実施形態では、「うっ血プロキシ」測定が、より大きな動作変量(operation variable)が必要かどうか、および/または排出により少ない体積を使用することが可能かどうかを評価するために使用される。
【0330】
例示的ないくつかの実施形態によれば、システムが、患者の飲料摂取および/または食料摂取嗜癖に関係した少なくとも1つの生理パラメータを測定する。いくつかの実施形態では、食料摂取または飲料摂取の後に、システムが、患者から表示を受け取る。いくつかの実施形態では、患者の食料摂取または飲料摂取の後に、システムが、より長い時間にわたって、および/またはより高い強度でポンプを起動させる。
【0331】
例示的ないくつかの実施形態によれば、患者が眠っているかどうかをシステムが識別する。いくつかの実施形態では、患者の睡眠期間の間、システムがポンプの起動を停止する。
【0332】
例示的ないくつかの実施形態によれば、システムが、うっ血および/またはうっ血の表示の値を測定する。いくつかの実施形態では、システムが、測定された値から、間隙圧を算出し、算出された間隙圧に合わせて、プロトコル、少なくとも1つの治療プロトコルまたはポンプのデューティ・サイクルを調整する。
【0333】
実験結果の例
次に、この装置、例えば直接界面チャンバ(direct interface chamber)とさまざまな腹膜排出カテーテルとの間の排出速度の違いを示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図10Aを参照する。例示的ないくつかの実施形態によれば、組織と直接に接触した均質な半透膜を使用したときには、離散的に穴が開けられたカテーテルに比べて、排出速度が25倍になる。
【0334】
いくつかの実施形態では、例えば図10Aに示されているように、(さまざまなタイプの膜上の)埋入された「平らな直接界面チャンバ」からの28回の測定と通常の腹腔カテーテルとの間の排出速度の差(表面積に対して正規化されている)。いくつかの実施形態では、組織と直接に接触した均質な半透膜を有する方が、離散的に穴が開けられたカテーテルよりも25倍有利である。
【0335】
次に、排出された流体中のさまざまな物質の濃度と血清中のそれらの物質の濃度との間の比較のグラフを示す、図10Bを参照する。いくつかの実施形態では、血清と排出された流体との間で、カリウム、ナトリウムおよびフォスフェートのレベルが似ている。いくつかの実施形態では、排出された流体中のクレアチニン、尿素およびアルブミンのレベルが、血清中のレベルに比べて低い。いくつかの実施形態では、この比較のグラフが、血清中の物質レベルに対する、流体抽出速度を増大させることまたは低下させることの効果を評価するのに役立ち、例えば、排出された流体中のアルブミン・レベルを最小限に抑えようとするときに役立つ。
【0336】
次に、流体排出手技の経時的なフォローアップ分析を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図10Cを参照する。例示的ないくつかの実施形態によれば、半透膜によって覆われた円板形の吸収チャンバは、6週間を超える期間にわたって、1時間当たり体重の0.05%(1.2%/日)である必要な相対排出速度の6倍の排出速度に到達する。例示的ないくつかの実施形態によれば、直径15mmの片側オリフィスを有するPTFE円板形吸収チャンバを半透膜によって覆った。いくつかの実施形態では、このチャンバを、通常通りに水を与えた6匹のラットの腹膜腔に埋入した。いくつかの実施形態では、吸収チャンバから流体を排出するマイクロカテーテルを経皮ポートまで延ばした。いくつかの実施形態では、6週間超の間、流体の排出および採取を実施した。任意選択で、得られた排出速度は、1時間当たり体重の0.05%(1.2%/日)である必要な相対排出速度の6倍よりも高く維持される。
【0337】
次に、ブタの流体排出手技の経時的なフォローアップ分析を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図10Dを参照する。例示的ないくつかの実施形態によれば、半透膜によって覆われた埋入された円板形吸収チャンバは、3~6週の期間に、240ml/日の平均排出値に到達した。
【0338】
次に、この吸収チャンバおよび装置を使用した急性容量過負荷下における濾過の分析結果を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図10Eを参照する。例示的ないくつかの実施形態によれば、中心静脈圧を、例えば高コロイド乳酸リンゲル液(highly colloid ringer-lactate solution)の静脈内への注入(12リットル静脈過負荷、3時間以内、ブタ)によって、7mmHgから16mmHgに増大させる。いくつかの実施形態では、図10Eに示されているように、中心静脈圧を増大させると排尿速度も30倍に増大した。加えて、装置は、これらの条件下で排出速度を2倍に増大させた。このことは、任意選択で、うっ血レベルに対する感応性を証明している。
【0339】
次に、埋入型システムで使用された膜の組織学的分析を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図10Fを参照する。例示的ないくつかの実施形態によれば、対照装置に関して、この組織学的分析は、1か月の組織増殖期の進行にわたって非常に軽度の異物応答を示す。いくつかの実施形態では、この分析が、対照膜と比較したときの、埋入型システムで使用された膜の軽症の線維増多、軽度の炎症およびより薄い被膜(capsule)の形成を明らかにした。
【0340】
図10FのパネルAでは、膜の両側で細胞が視覚化されており(細胞の核が青く染色されており)、膜が明褐色に染色されている。被試験装置の膜を使用したときには、図10FのパネルBに示されているように、細胞は、膜の外側だけに存在し、内側には存在しない(膜の内側には青く染色された核が存在しない)。
【0341】
例示的ないくつかの実施形態によれば、例えば図10Fに示されているように、対照装置に関して、組織学的分析は、1か月の組織増殖期の進行にわたって非常に軽度の異物応答を示した。いくつかの実施形態では、埋入後の膜に薄い被膜が形成される。
【0342】
例示的ないくつかの実施形態によれば、この膜は、0.4~5μm(um)の範囲のサイズを有する細孔、例えば0.4、0.5、0.8、1、2、5μm(um)のサイズ、またはこれらのサイズの任意の中間サイズを有する細孔を含む。いくつかの実施形態では、膜表面が、例えば親水性のテフロン(登録商標)によって処理されている。いくつかの実施形態では、膜表面が滑らかであり、例えばメッシュ織物とは違っている。
【0343】
次に、デューティ・サイクル比較表を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図10Gを参照する。例示的ないくつかの実施形態によれば、連続排出に起因する流体抽出の終結を回避するため、装置を、デューティ・サイクルに従って間隔を置いて起動させる。いくつかの実施形態では、最大排出体積および最大排出速度が、60秒の起動状態とそれに続く60秒の待機状態とからなるデューティ・サイクルで達成される。いくつかの実施形態では、埋入型システムが、患者ごとにデューティ・サイクルを較正し、任意選択で、設定段階中および/または治療中にこれを較正する。いくつかの実施形態では、例えば最も効率的な排出プロセスを達成するために、デューティ・サイクルが患者ごとに較正される。いくつかの実施形態では、排出体積、平均排出速度および/または流量を測定することによって、デューティ・サイクルが装置によって較正される。いくつかの実施形態では、この表に示されたパラメータのうちの少なくともいくつかのパラメータに基づいて、デューティ・サイクルが患者ごとに最適化される。
【0344】
例示的ないくつかの実施形態によれば、連続排出時には、回復が図られない限り、数分後には分泌が停止し、分泌が維持されない。
【0345】
次に、タンパク質の詰まりに起因する加速試験中の遮断速度を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図10Hを参照する。
【0346】
例示的ないくつかの実施形態によれば、膜、例えば膜110は、既存のカテーテルに比べて、一定の流体抽出速度を、任意選択で、膜細孔の目詰まりを防ぎ、または最小限に抑えることによって、維持する。
【0347】
流体抽出チャンバ内の例示的な圧力変化
例示的ないくつかの実施形態によれば、流体抽出チャンバ、例えば図1に示された流体吸収ユニット104に関連付けられた膜は、例えばタンパク質ファウリング(fouling)過程によって部分的に遮断される。いくつかの実施形態では、流体抽出チャンバ内の圧力の変化が、膜の遮断を減じ、または防ぐ。いくつかの実施形態では、例えばプッシュバック機構を使用して、膜に、圧力の変化、任意選択で一時的な圧力変化が加えられる。
【0348】
例示的ないくつかの実施形態によれば、埋入可能システム、例えば図1に示されたシステム102が、一方向の静水圧勾配を連続的または断続的に加える。いくつかの実施形態では、この加えられた圧力が、カバー膜を通り抜けて流体抽出チャンバのルーメンに入る流体の通過を後押しする。いくつかの実施形態では、圧力プッシュバックの適用が、例えば、膜をフラッシング(flushing)することなしに膜をリフレッシュすること、任意選択で、膜を揺らしおよび/または振動させることによって膜をリフレッシュすることを可能にする。いくつかの実施形態では、膜のフラッシング、任意選択で、新鮮で清潔な液体および/または以前に排出された流体を用いた膜のフラッシングが、埋入可能装置内へ清潔な流体を導入する複雑な操作を強いる。その代わりにまたはそれに加えて、膜フラッシングは、膀胱と流体接触した感染した液体で腹膜チャンバを汚染する危険を負わせる。
【0349】
例示的ないくつかの実施形態によれば、例えば効率的な膜リフレッシング・レベルを達成するための圧力変化、任意選択で、圧力プッシュバックの適用による圧力変化は、例えば、膜の凝集したタンパク質の含量を5%から80%低下させ、それに比例して透過性を回復させ、この圧力変化は、例えば膜を通した逆方向への流体流れの移動を最小限に抑えるために一時的である。次に、流体抽出チャンバ内の圧力変化を生じさせるためのシステムを示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図11A~11Dを参照する。
【0350】
例示的ないくつかの実施形態によれば、例えば図11Aに示されているように、流体抽出チャンバ、例えば吸収チャンバ1104が膜に関連付けられており、任意選択で、この膜は、チャンバ内に置かれており、チャンバの外面に置かれており、および/または流体抽出チャンバの外面がこの膜から作られている。いくつかの実施形態では、吸収チャンバ1104が、管を介して、ポンプ、例えば吸収チャンバ1104内に陰圧を加えるように構成された方向ポンプに接続されている。いくつかの実施形態では、流体が、ポンプ1110によって、出口1112を通して、任意選択で膀胱、腎盂、埋入されたリザーバ内または体外に押し出される。
【0351】
例示的ないくつかの実施形態によれば、制御回路、例えばコントローラが、このポンプを断続的に起動させることによって圧力変化を生じさせる。いくつかの実施形態では、このコントローラが、ポンプを一時的に非活動化し、最長5秒の短い期間の後、例えば0.5秒、1秒、1.5秒の後、またはこれらの期間の中間の任意の期間、これらの期間よりも短い期間、もしくはこれらの期間よりも長い期間の後に、ポンプを再起動させる。いくつかの実施形態では、制御回路が、プロトコルに従って、任意選択でシステムのメモリ、例えば図1に示されたメモリ116に記憶されたプロトコルに従って、ポンプを断続的に起動させる。
【0352】
例示的ないくつかの実施形態によれば、吸収チャンバ1104は、少なくとも1つの弁、例えば電磁弁1120および/またはピンチ弁1116を通してポンプ1110に接続されている。いくつかの実施形態では、例えば図11Aに示されているように、吸収チャンバ1104が、入口管1106を通して、コンプライアンス管1114、例えばピンチ弁1116のコンプライアンス管に接続されている。いくつかの実施形態では、弁、例えば電磁弁1120が、コンプライアンス管114に接続されている。いくつかの実施形態では、流体が、吸収チャンバ1104から、ピンチ弁1116のコンプライアンス管および電磁弁1120を通って流れる。いくつかの実施形態では、吸収チャンバ1104とポンプ1110の間の流体流路に置かれた少なくとも1つの弁、例えば電磁弁1120および/またはピンチ弁1116が、システム1102のコントローラ、例えばコントローラ1118に電気的に接続されている。任意選択で、このコントローラはポンプ1112に電気的に接続されており、ポンプ動作を制御する。
【0353】
例示的ないくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの弁、例えば電磁弁1120および/またはピンチ弁の起動が、入口管1106および吸収チャンバ1104内の圧力レベルを変化させる。いくつかの実施形態では、この圧力レベルの変化が、吸収チャンバに関連付けられた少なくとも1つの膜からのタンパク質および他の生物活性化合物の脱離および/または除去を可能にする。いくつかの実施形態では、電磁弁1120および/またはピンチ弁1116の起動、任意選択で一時的な起動に起因するこの圧力変化が、一時的な圧力変化である。それに加えてまたはその代わりに、この圧力変化は緩やかな圧力変化である。
【0354】
例示的ないくつかの実施形態によれば、例えば図11Bに示されているように、吸収チャンバ1104は、入口管を通してポンプ1110に接続されている。いくつかの実施形態では、ポンプ1110が、入口管1106を通して、吸収チャンバおよび吸収チャンバに関連付けられた膜に陰圧を加える。いくつかの実施形態では、ポンプ1110を迂回する流体流路、例えば流路1138上に弁、例えば電磁弁1142が配置されている。いくつかの実施形態では、流路1138が、入口管1106とポンプ1110の出口1140とを相互接続している。任意選択で、電磁弁1142の起動はコントローラ1144の制御下にある。いくつかの実施形態では、電磁弁1142の起動、例えばこの弁の開閉が、圧力の変化、例えば吸収チャンバ内の陽圧の短時間の増大を引き起こし、このことが、チャンバに関連付けられた膜からの生物活性化合物の脱離および/または除去につながる。いくつかの実施形態では、これらの圧力変化が一時的であり、かつ/または緩やかである。
【0355】
例示的ないくつかの実施形態によれば、例えば図11Cに示されているように、システム1150は、少なくとも1つのポンプ、例えば入口管1106とポンプ1110の出口1160の間の流路上、例えば管上に置かれたポンプ1162を備える。あるいは、ポンプ1162は、コンプライアンス管、例えばポンプ1110を出るコンプライアンス管1158と入口管1106の間の流路上、例えば管上に置かれる。いくつかの実施形態では、ポンプ1162が、入口管1106および吸収チャンバ内に陽圧を能動的に加え、このことが、任意選択で、チャンバに関連付けられた膜からのタンパク質および他の生物活性化合物の脱離および/または除去を引き起こす。
【0356】
例示的ないくつかの実施形態によれば、ポンプ1162が、入口管1106内に流体の反対向きのバーストを適用して吸収チャンバ内の陽圧を増大させる膜ポンプまたは容積式ポンプ(positive displacement pump)を含む。いくつかの実施形態では、ポンプ1162の起動が、ポンプ1162に電気的に接続されたコントローラ1164の制御下にある。任意選択で、センサ1152、例えば入口管1106内および/または吸収チャンバ1104内の圧力を測定するように構成された圧力センサから受け取った信号に基づいて、ポンプ1162を起動させる。いくつかの実施形態では、ポンプ1162の起動を制御するコントローラ1164がセンサ1152に電気的に接続されている。
【0357】
例示的ないくつかの実施形態によれば、例えば図11Dに示されているように、システム1170のポンプ、例えば吸収チャンバ1104内に陰圧を発生させる両方向ポンプ1172は、陽圧を発生させるようにも構成されている。いくつかの実施形態では、ポンプ1172が、入口管1106および吸収チャンバ1104内に陽圧、任意選択で陽圧の一時的なバーストを発生させるように構成されている。その代わりにおよび/またはそれに加えて、ポンプ1172は、吸収チャンバ内に陰圧の一時的なバーストを発生させるように構成されている。いくつかの実施形態では、ポンプ1172が、両方向ポンプ、例えば両方向歯車ポンプを含む。
【0358】
例示的ないくつかの実施形態によれば、吸収チャンバ内における陽圧の発生は、流体の逆流、例えば膀胱または出口管に接続された他のチャンバから入口管および/または吸収チャンバ内への流体の逆流の間に実行される。いくつかの実施形態では、例えばシステム内への流体の逆流を防ぐために、出口管上に一方向弁、例えば逆止め弁(check valve)が置かれる。
【0359】
次に、吸収チャンバ内の圧力変化を示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図11Eを参照する。例示的ないくつかの実施形態によれば、T0で、例えばポンプ、任意選択で真空ポンプによって陰圧が加えられる。いくつかの実施形態では、例えば吸収チャンバのルーメン内へ組織から直接に流体を抽出するために、この陰圧が、吸収チャンバに接続された排出管および/または吸収チャンバ内に加えられる。任意選択で、陰圧が加えられたときに、チャンバの表面は組織に密着し、任意選択で、チャンバの平らな表面が組織表面に密着する。
【0360】
例示的ないくつかの実施形態によれば、T1に、より低いレベルの陰圧または陽圧を、例えば図11A~11Dに記載された装置および/または機構を使用して加えることによって、陰圧レベルが低減される。いくつかの実施形態では、陰圧、例えば真空と加えられた陽圧とを合わせたものである全圧力レベルL1が、圧力レベル0よりも低い陰圧レベルである。いくつかの実施形態では、吸収チャンバおよび/または吸収チャンバに関連付けられた膜と組織との間の密着付着を維持するために、全圧力レベルL1が陰圧レベルである。さらに、例えば、流体および他の物質が、吸収チャンバのルーメンから、吸収チャンバと組織の間の空間に放出されること、ならびに/または組織内に直接に放出されることを防ぐために、全圧力レベルL1は陰圧レベルである。
【0361】
例示的ないくつかの実施形態によれば、低減された陰圧の期間(T2-T1)は、システムの制御回路によって、任意選択でシステムのメモリに記憶された1つまたは複数の治療プロトコルおよび/または起動パラメータに基づいて、決定される。それに加えてまたはその代わりに、より低い陰圧レベルが加えられる時刻T1、ならびに/または、より低い陰圧の適用および/もしくは陽圧の適用の連続した間隔間の期間(T3-T1もしくはT3-T2)は、システムの制御回路によって、任意選択でシステムのメモリに記憶された1つまたは複数の治療プロトコルおよび/または起動パラメータに基づいて、決定される。
【0362】
陽圧適用を試験するための例示的な検証実験
次に、膜タンパク質の圧出(expression)に対する陽圧の効果を試験するための実験の結果を示す、図12Aおよび12Bを参照する。この実験では、本明細書では「プッシュバック」とも呼ばれる陽圧適用の効果が、線維芽細胞培養に対して試験された。この効果は、以下の3つの異なる実験設定で試験された。
A.緩衝された活性線維芽細胞溶液への膜の静的液浸(動的流れなし)。3週間。
B.被試験膜を通して溶液を循環させる動的設定。期間は同じ。
C.1日に2回、逆流の一時的なバーストが加えられるプッシュバック設定。期間は同じ。
【0363】
図12Aに示されているように、サブミクロン範囲に対応し、試験条件においては例えば図10Fに示されているようにより急速に遮断される傾向がある高密度で低ポロシティの膜は、(膜の透過性を低減させない)静的液浸において示されるレベルにタンパク質レベルを回復させることによるプッシュバックの利益を得ることができる。循環溶液中に配置された0.45μm膜に対する逆流の一時的なバースト(プッシュバック)の適用は、循環溶液中に配置されただけの膜(動的)と比較して、膜上のタンパク質濃度を約50%低減させた。
【0364】
図12Bに示されているように、小体積の液体のプッシュバックによって吸収チャンバ内の圧力を一時的に変化させることができることを確認するため、チャンバ内へ異なる体積の流体を戻す(約80mlのチャンバ容積内へ1から3mlを戻す)一時的なプッシュバック中の圧力の変化が記録された。
【0365】
その内スケルトン、膜化合物の限定された弾性およびベースライン真空のためにチャンバのコンプライアンスが限定されている、高濃度でない液体の環境中では、小体積(容積の1~4%)の一時的な戻りが、膜に加えられる圧力勾配の最大75~85%の変更を可能にすることをこの試験は示している。
【0366】
例示的な導入システム
次に、吸収チャンバの送達システムを示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図13Aおよび13Bを参照する。例示的ないくつかの実施形態によれば、送達システム1302は、折り畳まれた吸収チャンバ、例えば透過性サックを含む中空遠位ライナ1306を備える。いくつかの実施形態では、折り畳まれた吸収チャンバが、中空遠位ライナ1306の中に折り込まれている。本明細書に記載されているとおり、いくつかの実施形態では、折り畳まれた吸収チャンバが膜を備え、または少なくとも部分的に膜から作られている。いくつかの実施形態では、中空遠位ライナ1306が、導入シャフト1304の上、任意選択で延長可能でかつ/または入れ子式の導入シャフトの上を摺動可能である。いくつかの実施形態では、導入シャフト1304が、固定された内部シャフト1317の上を摺動可能である。いくつかの実施形態では、導入シャフト1304および/または固定された内部シャフト1317が、ハンドル1308、例えば、吸収チャンバに結合された導入シャフトを体腔内、例えば腹膜内の所望の位置まで誘導することを可能にするように構成された回転可能なハンドルに接続されている。任意選択で、ハンドル1308は、吸収チャンバおよび/または膜の少なくとも一部分の組織表面への付着、任意選択で密着を可能にする所望の位置および/または向きに、導入シャフトおよび結合された吸収チャンバを誘導するように構成されている。
【0367】
例示的ないくつかの実施形態によれば、導入シャフト1304の近位端は、管、例えば波形管1312、任意選択でシリコーンでできた波形管1312に接続されている。いくつかの実施形態では、波形管1312が、圧縮可能な弾性蛇腹管である。いくつかの実施形態では、送達システム1302がカートリッジ1310を備える。いくつかの実施形態では、カートリッジ1310が、編組スケルトン管、例えば図3Mに示された管338を含む。いくつかの実施形態では、この編組スケルトン管が、例えばカートリッジ1310内での格納体積を低減させるために、カートリッジ内で螺旋状に巻かれている(wounded)。いくつかの実施形態では、波形管1312の近位開口にカートリッジ開口が接続されている。いくつかの実施形態では、使用者が、カートリッジ1310の中に格納された格納された編組スケルトン管を、波形管1312および導入シャフトのルーメンを通して吸収チャンバ内へ前進させる。
【0368】
例示的ないくつかの実施形態によれば、吸収チャンバを展開し、その後に、編組スケルトン管を、カートリッジ1310から、展開され折り畳まれた吸収チャンバの中へ前進させる。あるいは、吸収チャンバを広げている間に、編組スケルトン管をカートリッジ1310から吸収チャンバの中へ前進させる。任意選択で、吸収チャンバが展開され、編組スケルトン管を含んでいるときに、吸収チャンバの平らな表面を組織の表面に付着させるために、ハンドルが使用される。
【0369】
例示的ないくつかの実施形態によれば、カートリッジが、任意選択でカートリッジ1310内に配置された編組スケルトン管の近位端に接続された少なくとも1つの開口、例えばフラッシング・ポート1314および/またはガス抜きルアー(venting luer)1316を備える。いくつかの実施形態では、このガス抜きルアーが、ガス抜き、例えば滅菌のためのガス抜き、および/またはフラッシング、例えばカートリッジ1310に格納された編組スケルトン管を吸収チャンバの中へ前進させるときの摩擦を低減させるためのフラッシングを可能にする。いくつかの実施形態では、フラッシング・ポートが、上述のとおり、フラッシングを可能にし、摩擦を低減させるように構成されている。その代わりにまたはそれに加えて、このフラッシング・ポートは、体腔の内側、例えば腹膜の内側で吸収チャンバを補助するために、スタイレットまたはガイド・ワイヤを導入することを可能にする。
【0370】
例示的ないくつかの実施形態によれば、システム1302は、少なくとも1つの安全コントローラ、例えば解放安全装置(release safety catch)1311を備える。いくつかの実施形態では、解放安全装置1311が、体腔内での吸収チャンバの意図的な解放を保証するために使用される。いくつかの実施形態では、解放安全装置1311がハンドル1308の運動を制御する。あるいは、この解放安全装置は、導入シャフト1304による広げられた吸収チャンバの中への編組スケルトン管の前進を制御する。その代わりにまたはそれに加えて、この安全装置は、吸収チャンバからの導入システムの解放を防ぐ。
【0371】
例示的ないくつかの実施形態によれば、例えば図14A~14Dに示されているように、吸収チャンバ1402の開口1401内に、ポート・コネクタ1404の少なくとも一部分、例えば遠位セクションが置かれる。いくつかの実施形態では、固定された内部シャフト1317の部分的に分割された遠位セクション1406内に、ポート・コネクタの近位セクションが配置される。いくつかの実施形態では、シャフト1408の外面に把持部材1315が接続されており、把持部材1315が、任意選択で可動シャフトであるシャフト1408の把持および後退を可能にするように構成されている。いくつかの実施形態では、部分的に分割された遠位セクション1406の周囲に、シャフト1408の遠位端が置かれており、シャフト1408の遠位端は、部分的に分割された遠位セクション1406が開くことを防ぐ。いくつかの実施形態では、シャフト1408を後退させること、例えば固定された内部シャフト1317の上でシャフト1408を摺動させることが、部分的に分割された遠位セクション1406上に加えられた外部圧力を解放する。
【0372】
例示的なポート・コネクタ
次に、ポート・コネクタを示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図14Eを参照する。例示的ないくつかの実施形態によれば、ポート・コネクタ1422は、遠位セクション1424および近位セクション1426を備える。いくつかの実施形態では、遠位セクションが、吸収チャンバの開口に置かれるように形作られ、サイズ設定されている。任意選択で、遠位セクションの外径は、近位セクション1426の外径よりも小さい。いくつかの実施形態では、近位直径の外径が、固定された内部シャフトの部分的に分割されたセクション、例えばシャフト1408の部分的に分割されたセクション1406の内側にぴったりと合うように調整されている。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の摩擦増大要素、例えばOリング1428および1429が、ポート・コネクタ1422に挿入された管とコネクタとの間の摩擦を増大させることを可能にする。いくつかの実施形態では、この管の遠位端に置かれた管コネクタが開口1433に挿入され、この管コネクタは、ポート・コネクタの遠位セクションの内部ルーメンに位置する内面1425と相互作用する。いくつかの実施形態では、この内面が管コネクタに摩擦力を加える。
【0373】
例示的ないくつかの実施形態によれば、ポート・コネクタ1422の近位セクション1426は、1つまたは複数の隆起部および/または溝および/または開口、例えば近位セクション1426の外表面および/または内表面の溝1427を備える。いくつかの実施形態では、この1つまたは複数の隆起部および/または溝および/または開口が、例えば図14Cおよび14Dに示された部分的に分割されたセクション1406と相互作用するために、近位セクション1426の把持または解放を可能にするために使用される。いくつかの実施形態では、この1つまたは複数の隆起部および/または溝および/または開口が、吸収チャンバの展開中に、および/または吸収チャンバが被験者から引き抜かれるときに、摩擦を増大させるため、および/または近位セクションをインタロックするために使用される。
【0374】
例示的ないくつかの実施形態によれば、内部ルーメンから管を引き抜いている間、近位セクションに、例えば抽出チャンバ把持装置によって外力を加えることは、吸収チャンバから管を後退させることを可能にする。いくつかの実施形態では、近位セクション1426を把持することが、例えば体から吸収チャンバを摘出することを可能にする。いくつかの実施形態では、ポート・コネクタ、例えば円錐面および2つのOリングを備えるポート・コネクタ1422が、例えば吸収チャンバから内側の管を引き抜くために内側の管を後退させるための、あるコネクタ・ロック力および約4倍の解放力を提供する。
【0375】
吸収チャンバを広げる例
例示的ないくつかの実施形態によれば、折り畳まれた吸収チャンバは、覆いまたは外被から解放されたときに広げられる。いくつかの実施形態では、自己拡張要素が拡張して例えば弛緩した状態になったときに、折り畳まれた吸収チャンバが広がる。その代わりにまたはそれに加えて、折り畳まれた吸収チャンバは、折り畳まれた吸収チャンバに流体が押し込まれたときに広がる。任意選択で、チャンバは、ガス、例えば空気がチャンバ開口を通してチャンバに押し込まれたときに広がる。次に、自己拡張可能な吸収チャンバを示す、本発明のいくつかの実施形態に基づく図15を参照する。
【0376】
例示的ないくつかの実施形態によれば、吸収チャンバ、例えば吸収チャンバ15は自己拡張可能な吸収チャンバである。いくつかの実施形態では、吸収チャンバ1502が、外被または覆いから吸収チャンバが解放されたときに開いて弛緩した状態になるように構成された自己拡張可能な内部スカフォルド、例えば細いワイヤを備える。いくつかの実施形態では、例えば吸収チャンバの平らな形状および/または薄い形状を維持するために、自己拡張可能な内部スカフォルドの拡張が吸収チャンバの内表面に力を加える。
【0377】
例示的なシステム導入プロセス
例示的ないくつかの実施形態によれば、被験者の腹膜を膨らませる。いくつかの実施形態では、腹膜腔内へのガス、例えば空気の導入によって、腹膜を膨らませる。任意選択で、空気源に接続された管を腹膜腔内に少なくとも部分的に挿入することによって、腹膜を膨らませる。
【0378】
例示的ないくつかの実施形態によれば、腹膜腔を通して被験者の膀胱にカテーテル遠位端が導入される。いくつかの実施形態では、膀胱から遠い方に位置するカテーテル端であるカテーテルの近位端が体外に置かれる。あるいは、カテーテルの近位端は腹膜腔内に置かれる。任意選択で、カテーテルはピッグテール・カテーテルである。
【0379】
例示的ないくつかの実施形態によれば、折り畳まれた吸収チャンバを含む中空遠位ライナ1306が、腹壁の開口を通して腹膜腔に導入される。任意選択で、折り畳まれた吸収チャンバを含む中空遠位ライナ1306は、トロカール・カテーテルの開口を通して腹膜腔に導入される。
【0380】
例示的ないくつかの実施形態によれば、中空遠位ライナ1306が腹膜腔内の所望の位置にあるときに、遠位ライナ1306を、ハンドル1308に近づく方向1305に後退させる。いくつかの実施形態では、遠位ライナ1306上、任意選択で遠位ライナ1306の近位端に置かれた把持部材1303を把持し、後退させることによって、遠位ライナ1306を後退させる。いくつかの実施形態では、遠位ライナの後退が吸収チャンバを広げる。任意選択で、遠位ライナ1306の後退は、腹膜腔内で吸収チャンバを露出させる。
【0381】
例示的ないくつかの実施形態によれば、波形管を、例えば編組スケルトン管を保持するように押圧し、1307の方向に移動させることによって、カートリッジ1310内に置かれた管、例えば編組スケルトン管を、折り畳まれた吸収チャンバの中へ前進させる。いくつかの実施形態では、カートリッジ1310内に置かれた管が、金属メッシュでくるまれたシリコン管を含み、この金属メッシュが、内シリコン管を圧縮力から守るように構成されている。いくつかの実施形態では、例えばカートリッジから吸収チャンバ内へのメッシュの前進を監視するために、この金属メッシュが、1つまたは複数の視覚的インジケータを含む。いくつかの実施形態では、波形管を押圧することが、管を取り囲む金属メッシュを保持すること、ならびに金属メッシュおよび内側の管を1307の方向に移動させて折り畳まれた吸収チャンバに入れることを可能にする。
【0382】
例示的ないくつかの実施形態によれば、例えば金属メッシュと吸収チャンバの内面との間の摩擦を低減させるために、フラッシング・ポート1314および/またはガス抜きルアー1316を通して流体が導入されている間に、金属メッシュおよび内側の管を、折り畳まれた吸収チャンバの中へ前進させる。
【0383】
例示的ないくつかの実施形態によれば、金属メッシュおよび内側の管の所望の長さが吸収チャンバ内に配置されたときに、表示が提供される。任意選択で、この表示は、カートリッジ1310および/または導入シャフトの窓または開口を通して発せられる視覚的表示である。いくつかの実施形態では、吸収チャンバ内に少なくとも部分的に置かれたポート・コネクタ、例えば図14Aに示されたポート・コネクタ1404の近位セクション内で、金属メッシュおよび/または内側の管に配置されたロック、例えば締りばめロックがロックされるまで、金属メッシュおよび内側の管を吸収チャンバの中へ前進させる。いくつかの実施形態では、金属メッシュ上の締りばめロックが、吸収チャンバおよび/またはポート・コネクタに対する金属メッシュおよび/または内側の管の運動を防ぐ。
【0384】
例示的ないくつかの実施形態によれば、表示が提供されたとき、ならびに/または締りばめロックが金属メッシュおよび/もしくは内側の管をロックしたときに、安全装置、例えば図13Bに示された安全装置1311が外される。いくつかの実施形態では、この安全装置が、例えばハンドル1308に向かっての把持部材1315のさらなる後退を防ぐことによって、吸収チャンバからの導入システムの解放を防ぐ。いくつかの実施形態では、遠位ライナ1306の把持部材1303が把持部材1315と相互接続しており、把持部材1303が、1313の方向のハンドル1308に向かっての把持部材1315の後退のために使用される。
【0385】
例示的ないくつかの実施形態によれば、部分的に分割された遠位セクション、例えば図14Cに示された部分的に分割されたセクション1406が、腹膜内で吸収チャンバを開き、吸収チャンバを解放することを、シャフト1304の後退が可能にする。いくつかの実施形態では、吸収チャンバに接続された管の近位開口が体外または腹膜内に置かれることを、導入システムの後退が可能にする。
【0386】
例示的ないくつかの実施形態によれば、管の近位開口およびカテーテルの近位開口に、制御ユニット、例えば図1に示された制御ユニット106または図5Eに示された制御ユニット514が接続される。いくつかの実施形態では、この制御ユニットが次いで、体内、例えば皮下に置かれる。あるいは、制御ユニットおよびカテーテルの遠位端は、例えば吸収チャンバから外部容器への流体の排出を可能にするために体外に置かれる。
【0387】
本出願により発行される特許の存続期間の間に、多くの関連流体抽出装置が開発されることが予想される。流体抽出という用語の範囲は、このような新規の全ての技術をアプリオリに包含することが意図されている。
【0388】
量または値に関して本明細書で使用されるとき、用語「約(about)」は「~の±10%以内」を意味する。
【0389】
用語「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(includes)」、「有する(has)」、「有する(having)」およびこれらの用語の同根語は、「~を含むが、~だけに限定されない」ことを意味する。
【0390】
用語「からなる(consisting of)」は、「~を含み、~だけに限定される」ことを意味する。
【0391】
用語「から本質的になる(consisting essentally of)」は、その組成物、方法または構造物が、追加の成分、ステップおよび/または部分を、その追加の成分、ステップおよび/または部分が、特許請求の範囲に記載された組成物、方法または構造物の基本的な新規の特性を大幅には変更しないものである場合に限って、含んでもよいことを意味する。
【0392】
本明細書で使用されるとき、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈からそうでないことが明らかでない限り、それらの語が指す複数の事物を含む。例えば、用語「化合物(a compound)」または「少なくとも1つの化合物(at least one coumound)」は、その混合物を含め、複数の化合物を含むことがある。
【0393】
本出願の全体を通じて、本発明の実施形態が、範囲形式に関して提示されることがある。範囲形式の記述は単に便宜および簡潔さのためになされたものであり、そのような記述を、本発明の範囲を硬直的に限定するものと解釈すべきではないことを理解すべきである。したがって、1つの範囲の記述は、可能な全ての部分範囲ならびにその範囲内の個々の数値を具体的に開示したものと考えるべきである。例えば、「1から6まで」などの範囲の記述は、「1から3まで」、「1から4まで」、「1から5まで」、「2から4まで」、「2から6まで」、「3から6まで」などの部分範囲、ならびにその範囲内の個々の数値、例えば1、2、3、4、5および6を具体的に開示したものと考えるべきである。このことは、範囲の幅に関係なく適用される。
【0394】
本明細書において数値範囲(例えば「10~15」、「10から15」、またはこれらの別のこのような範囲表示によって連結された任意の数値対)が示されているときには、文脈がそうでないことを明らかに示している場合を除き、その範囲は、示された範囲限界内の、範囲限界を含む一切の数値(分数または整数)を含むことが意図されている。本明細書では、第1の表示数と第2の表示数の間の「範囲(range/ranging/renges)」という表現と、第1の表示数から第2の表示数まで(「to」、「up to」、「until」または「through」(または範囲を示す別のこのような用語))の「範囲(range/ranging/renges)」という表現とが相互に交換可能に使用されており、これらの表現は、第1および第2の表示数、ならびにそれらの間の全ての分数および整数を含むことが意図されている。
【0395】
特段の指示がない限り、本明細書で使用されている数値およびそれらの数値に基づく数値範囲は、当業者なら理解している合理的な測定の正確さおよび丸め誤差の範囲内の近似である。
【0396】
本明細書で使用されるとき、用語「方法」は、所与のタスクを達成するための手法、手段、技法および手順を指し、これには、限定はされないが、化学、薬理学、生物学、生化学および医学分野の専門家によって知られている手法、手段、技法および手順、または、化学、薬理学、生物学、生化学および医学分野の専門家が、知られている手法、手段、技法および手順から容易に生み出すことができる手法、手段、技法および手順が含まれる。
【0397】
本明細書で使用されるとき、用語「治療する」は、状態の進行を阻止し、実質的に抑制し、遅らせ、もしくは逆転させること、状態の臨床的症状もしくは美的症状(aesthetical symptom)を実質的に改善すること、または状態の臨床的症状もしくは美的症状の出現を実質的に防ぐことを含む。
【0398】
分かりやすくするために別々の実施形態の文脈で説明した本発明のある種の特徴を、単一の実施形態において組み合わせて提供することもできることが理解される。反対に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で説明した本発明のさまざまな特徴が、別々に、または適当な部分組合せ(subcombination)で、または本発明の記載された他の任意の実施形態で適当に、提供されることもある。さまざまな実施形態の文脈で説明したある種の特徴を、それらの要素なしではその実施形態が実施不可能である場合を除き、それらの実施形態の必須の特徴と考えるべきではない。
【0399】
本発明を、その特定の実施形態に関連して説明したが、当業者には多くの代替、変更および変形が明らかであることが明白である。したがって、添付の特許請求項の趣旨および幅広い範囲に含まれるそのような全ての代替、変更および変形を包含することが意図されている。
【0400】
本明細書で言及された全ての公告、特許および特許出願は、それぞれの個々の公告、特許または特許出願が参照によって本明細書に組み込まれていると明確かつ個別に示されているのと同じ程度に、その全体が参照によって本明細書に組み込まれている。さらに、本出願における参考文献の引用または識別を、そのような参考文献が本発明の先行技術として利用可能であることを認めたものと解釈すべきではない。セクション見出しが使用されている範囲において、それらの見出しは必然的に限定を意図したものであると解釈すべきではない。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図3G
図3H
図3I
図3J
図3K
図3L
図3M
図3N
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図10H
図11A
図11B
図11C
図11D
図11E
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図15