(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】ケイ素含有表面層を有する過酸化物硬化ハロゲン化エラストマー
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20240405BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20240405BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20240405BHJP
C08L 27/16 20060101ALI20240405BHJP
C08L 27/18 20060101ALI20240405BHJP
C08L 53/00 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K3/34
C08K5/5415
C08L27/16
C08L27/18
C08L53/00
(21)【出願番号】P 2020534574
(86)(22)【出願日】2018-12-19
(86)【国際出願番号】 US2018066454
(87)【国際公開番号】W WO2019126298
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-12-16
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】福士 達夫
(72)【発明者】
【氏名】グエン,ソー キュー.
(72)【発明者】
【氏名】ソーロ,アレン エム.
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-045001(JP,A)
【文献】特表2013-532766(JP,A)
【文献】特開2007-169511(JP,A)
【文献】特表2012-531493(JP,A)
【文献】特表2018-520248(JP,A)
【文献】特開昭63-291930(JP,A)
【文献】特表2004-528452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)少なくとも25重量%の、フッ素及び塩素のうちの少なくとも1つであるハロゲンと、(ii)ヨウ素
又は臭素
のうちの少なくとも1つから選択される、複数の硬化部位と、を含む、部分ハロゲン化エラストマーガムと、
(b)前記部分ハロゲン化エラストマーガムの100質量部当たり少なくとも0.01質量部のケイ素含有化合物(ただし、シリコーン生ゴムまたはシリコーンゴムを除く)と、
(c)
前記部分ハロゲン化エラストマーガムの100部当たり少なくとも1mmolかつ最大10mmolの脱ハロゲン化水素剤と、
(d)過酸化物及び共剤から本質的になる、硬化系と、
を含む、硬化性部分ハロゲン化エラストマーガム組成物。
【請求項2】
前記部分ハロゲン化エラストマーガムが、フッ素化非晶質ポリマー又は塩素化非晶質ポリマーである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
フッ素化非晶質ポリマーが、共重合されたフッ化ビニリデンモノマー単位を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記部分ハロゲン化エラストマーガムが、フッ素化非晶質ポリマーを含み、前記フッ素化非晶質ポリマーが、(i)テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、及びヘキサフルオロプロピレンモノマー単位を含むコポリマー、(ii)テトラフルオロエチレン、及びプロピレンモノマー単位を含むコポリマー、(iii)テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、及びプロピレンモノマー単位を含むコポリマー、(iv)フッ化ビニリデン、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル、及びヘキサフルオロプロピレンモノマー単位を含むコポリマー、又は(v)テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、及びヘキサフルオロプロピレンモノマー単位を含むコポリマーのうちの少なくとも1つを含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記部分ハロゲン化エラストマーガムが、少なくとも1つのAブロック及び少なくとも1つのBブロックを含むブロックコポリマーである、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
(i)ポリヒドロキシ硬化剤、(ii)架橋性アミン、及び(iii)CX
1X
2=CX
3-L-M(式中、X
1、X
2、及びX
3は、独立して、H、Cl、及びFから選択され、X
1、X
2、及びX
3のうちの少なくとも1つはHであり、少なくとも1つは、F又はClであり、Lは、単結合又は連結基であり、Mは求核基である)を実質的に含まない、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記部分ハロゲン化エラストマーガムの100重量部当たり、5重量部未満の前記ケイ素含有化合物を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ケイ素含有化合物が、テトラアルコキシシランである、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
硬化した請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物を含む、物品。
【請求項10】
ケイ素を含む表面層を有する部分ハロゲン化エラストマーの製造方法であって、
(a)請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物を得ることと、
(b)前記組成物を少なくとも160℃の温度で少なくとも15分間、無拘束で加熱することと、を含む、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ケイ素を含む表面層を有するハロゲン化エラストマーが、そのようなエラストマーの前駆体組成物及び製造方法を含めて記載される。
【発明の概要】
【0002】
フルオロエラストマーは、封止用途(例えば、Oリング、ガスケット及びパッキン)において、並びに接触用途(例えば、ベルト、プリンタヘッド用のストッパ及びハードディスクドライブのヘッドコントローラ)において、造形又は成形部品として広く使用されている。したがって、フルオロエラストマーは非粘性表面を有することが重要である。
【0003】
フルオロエラストマーに対する表面処理は、エラストマー特性を維持しながら表面粘着性を低減するために行われてきた。1つのこのような処理では、成形及び硬化されたフルオロエラストマーを硬化剤に浸漬し、後硬化させる。この処理は、フルオロエラストマー表面においてより高いレベルの架橋をもたらし、これは粘着性を低減することができる。例えば、米国特許第4,981,912号(Kurihara)は、第1の架橋剤で硬化され、次に第1の部分架橋密度が造形物品にわたって均一な密度を有し、一方で第2の部分架橋密度が表面から造形物品の内側に向かって連続的に減少するように、表面が第2架橋剤と接触している、フルオロエラストマーを教示している。
【0004】
粘着性が低減されたハロゲン化材料を同定することが望ましい。一実施形態では、材料は、追加のプロセス工程を伴わず、急速に硬化し、及び/又は製造の費用対効果が高い。加えて、又は代替的に、材料は、耐久性の向上などの良好な機械的特性、並びに蒸気、水及び/又は酸に対する耐性などの良好な耐薬品性を有する。
【0005】
一態様では、
(a)ポリマーを含む部分ハロゲン化エラストマーガムであって、このポリマーが、(i)少なくとも25重量%の、フッ素及び塩素のうちの少なくとも1つであるハロゲンと、(ii)ヨウ素、臭素、及びニトリルのうちの少なくとも1つから選択される、複数の硬化部位と、を含む、部分ハロゲン化エラストマーガムと、
(b)部分ハロゲン化エラストマーガムの100質量部当たり少なくとも0.01質量部のケイ素含有化合物と、
(c)脱ハロゲン化水素剤と、
(d)過酸化物及び共剤から本質的になる、硬化系と、
を含む、硬化性部分ハロゲン化エラストマーガム組成物が記載される。
【0006】
以上の発明の概要は、各実施形態について説明することを意図するものではない。本発明における1つ以上の実施形態の詳細は、以下の説明にも記載されている。その他の特徴、目的、及び利点は、本明細書から及び特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書で使用する場合、用語
「a」、「an」、及び「the」という用語は、互換的に使用され、1以上を意味し、
「及び/又は」は、述べられた事柄の一方又は両方が起こり得ることを示すために使用され、例えば、A及び/又はBは、(A及びB)並びに(A又はB)を含み、
「主鎖」は、ポリマーの主な連続鎖を指し、重合が開始又は停止されたポリマーの末端を除外する。
「コポリマー」は、ターポリマー又はクワドポリマーなどの、明示的に列挙されていない他のモノマー(コモノマー)から誘導される他の繰り返し単位が存在する選択肢を除外することなく、列挙されたモノマー(コモノマー)から誘導される繰り返し単位を含むポリマーを指す。
「架橋」とは、予め形成した2つのポリマー鎖を、化学結合又は化学的な基を使用して連結することを指す。
「共重合された(interpolymerized)」とは、モノマーが一緒に重合してポリマー主鎖を形成することを指す。
「モノマー」は、重合を経てその後ポリマーの基本的構造の部分を形成することができる分子である。
「有機」は、当該技術分野において一般的な意味を有し、例えば、有機化合物は、炭化物、酸化炭素、二硫化炭素などの二元化合物;金属シアン化物、ホスゲン、硫化カルボニルなどの三元化合物、及び炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩が挙げられる、いくつかの例外/除外を有する炭素含有化合物である。
「過フッ素化」とは、全ての水素原子がフッ素原子に置き換えられている、炭化水素から誘導される基又は化合物を意味する。しかし、過フッ素化化合物は、酸素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子のような、フッ素原子及び炭素原子以外の原子を更に含有してもよい。
「ポリマー」は、少なくとも20,000ダルトン、少なくとも3,000ダルトン、少なくとも50,000ダルトン、少なくとも100,000ダルトン、少なくとも300,000ダルトン、少なくとも500,000ダルトン、少なくとも750,000ダルトン、少なくとも1,000,000ダルトン又は更には少なくとも1,500,000ダルトンであり、かつポリマーの早期ゲル化を引き起こすほどには高くない分子量の数平均分子量(Mn)を有するマクロ構造を指す。
【0008】
また、本明細書において、端点による範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~10は、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98などを含む)。
【0009】
また、本明細書において、「少なくとも1つ」の記載は、1以上の全ての数(例えば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100など)を含む。
【0010】
本明細書において、エラストマー表面又はその付近に形成されたケイ素を含む表面層は、特定の処理及び配合条件下でハロゲン化エラストマーを過酸化物硬化させる際に起こり得ることが発見された。このような表面層を含む部分ハロゲン化エラストマーは、粘着性の低減、耐久性の向上、耐薬品性の改善、及び/又はより速い硬化速度を有することが見出されている。
【0011】
ケイ素含有化合物
【0012】
本開示のケイ素含有化合物は、ケイ素を含む化合物であり、ケイ素半金属類が挙げられる。ケイ素含有化合物は、水和、ヒドロキシル化又は架橋されていてもよい。一実施形態では、ケイ素含有化合物は、Si-O-Xを含み、式中、Xは、有機基又はSi、Al、Bなどの別の金属化合物である。Si原子周辺のSi-O-X結合の数は、1、2、3、又は4個であり得る。
【0013】
本開示のケイ素含有化合物は、非晶質、結晶性、半結晶性又はガラスセラミックであってもよく、ガラスセラミックは、非晶相及び1つ以上の結晶相を有する。
【0014】
一実施形態では、本開示のケイ素含有化合物は、粒状であり、これはケイ素含有化合物の個々の粒子が観察されることを意味する。一実施形態では、ケイ素含有化合物は、少なくとも3nm、5nm、10nm、15nm又は更には25nm、最大で約50nm、100nm、200nm又は更には500nmの平均直径を有するナノ粒子である。一実施形態では、ケイ素含有化合物は、少なくとも0.5ミクロン(μm)、0.7μm、1μm、又は更には2μm、最大で約50μm、100μm、500μm、750μm、又は更には1mmの平均直径を有するマイクロ粒子である。上記に列挙した直径は、一次粒子径についてのものである。いくつかの実施形態において、一次粒子は、一緒に凝集又は集塊して、より大きな粒子を形成することができ、一次粒子は、凝集体の形態で本質的に不可逆的に一緒に結合される。凝集体を形成するヒュームドシリカ、発熱性シリカ及び沈殿シリカなどの材料では、凝集体を個々の一次粒子に直接分離することは不可能である。平均粒径は、光散乱又は顕微鏡検査法などの当該技術分野において公知の技術を使用して決定することができる。一実施形態では、粒子は球状に造形されている。しかし、いくつかの実施形態において、粒子は、小枝、小板又は繊維などの非球状の形状、工学的形状又は更には不規則な形状など非球状であってもよい。一実施形態では、粒子は中空であり、例えば、ガラスシェル及び中空コアを含むグラスバブルなどである。一実施形態では、粒子は、全体にわたって固形物であり、気泡を実質的に含まない。一実施形態では、無機ケイ素含有微粒子は有機部分で表面処理され、例えば、ジメチル、ジクロロシランで処理された粒子などである。
【0015】
例示的なケイ素含有化合物としては、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ナトリウム、ホウケイ酸塩、二ケイ酸リチウム及びケイ酸カリウムなどの金属ケイ酸塩;ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、Z-ガラス、Eガラス、チタネート系及びアルミナ系ガラスなどのガラス;ガラスビーズ;ガラスフリット;ヒュームドシリカ、発熱性シリカ、沈殿シリカ及びシリカフュームなどのシリカ;金属ケイ素、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0016】
市販のケイ素含有化合物の例としては、Schott Industries,Kansas City,Missouriから商品名「NEXTERION GLASS D」で入手可能なガラス及びCorning Incorporated,New York,New Yorkから商品名「PYREX」で入手可能なガラス;NALCO製品1040、1042、1050、1060、2327及び2329など商品名「NALCO COLLOIDAL SILICAS」でNalco Chemical Co.(Naperville,IL)から入手可能なコロイドシリカゾル;Evonik Degussa Corp.,Essen,Germanyから商品名「AERMIL」及び「AEROSIL 972」で入手可能な、並びにCabot Corp.,Boston,MAから入手される商品名「CAB-O-SIL TS 530」で入手可能なフュームドシリカ;PPG Industries,Pittsburg,PAから全て入手されるHI-SIL 210、HI-SIL 233、HI-SIL 532EP及びHI-SIL ABSなどの「HI-SIL」、及びSilene 732Dの商品名で入手可能な沈降シリカ;3M Co.から入手される商標名「3M FUSED SILICA 550」、「3M FUSED SILICA 20」及び「3M FUSED SILICA 40」で入手可能な溶融シリカ;3M Co.から入手される商標名「3M REFLECTIVE GLASS BEADS」で入手可能なガラスビーズ;3M Co.,St.Paul,MNから商標名「3M GLASS BUBBLES iM16K」で入手可能な中空グラスバブルズ、並びにPotters Industries,LLC,Valley Forge,PAから商標名「Q-CEL」及び「SHERICEL」で入手可能な中空グラスバブルズ;3M Company,St.Paul,MNから全て入手される商標名「3M CERAMIC MICROSPHERES W-210」、「3M CERAMIC MICROSPHERES W-410」及び「3M CERAMIC MICROSPHERES W-610」で入手可能なセラミック微小球;Evonik Degussa Corp.から商標名「AEMIL 90」で入手可能な二酸化ケイ素;U.S.Silica Co.,Frederick,MDから入手される商標名「MIN-U-SIL 5M」で入手可能な石英粉末;JIOS Aerogel USA,Inc.,Irvine,CAから入手される商品名「JIOS AEROVA AEROGEL POWDER」で入手可能な、並びにCabot Corp.,Boston,MAから入手される商品名「LUMIRA」エアロゲル及び「ENOVA」エアロゲルで入手可能なシリカエアロゲル粉末が挙げられる。
【0017】
市販のケイ酸塩としては、Luzenac America Inc.,Three Forks,MTから入手される商品名「MIITRON VAPOR R」及び「TALC」で入手可能なケイ酸マグネシウム;NYCO Minerals,Willsboro,NYから入手される商品名「NYAD」、「NYGLOS」、「WOLLASTOCOAT」及び「WOLLASTOKUP」で入手可能なケイ酸カルシウム;並びにJ.M.Huber Corp.,Edison,NJから商品名「ZEOLEX」で入手可能なアルミノケイ酸ナトリウムが挙げられる。
【0018】
一実施形態では、ケイ素含有化合物は粒状ではない。一実施形態では、ケイ素含有化合物は、周囲条件で液体である。ケイ素含有非粒状化合物としては、アルコキシド、例えば、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、メチルトリメトキシシラン、アルキルトリアルコキシシラン及びこれらのオリゴマーなどのアルコキシシランが挙げられる。
【0019】
一実施形態では、ケイ素含有化合物は、部分ハロゲン化エラストマーガムの100部当たり、少なくとも0.01、0.05、0.1、0.2、0.5、又は更には1部の量で使用される。一実施形態では、ケイ素含有化合物は、部分ハロゲン化エラストマーガムの100部当たり、10、7、5、又は更には3部未満の量で使用される。ケイ素含有化合物は、本開示において異なる活性を有することがあるので、ケイ素含有化合物の量は、使用されるケイ素含有化合物によって左右され得る。活性に影響を及ぼし得るこのような要因としては、どのケイ素含有化合物を使用するのか、粒状であればケイ素含有化合物の表面積、並びに/又は反応に利用可能なSi及び/若しくはSiOの量が挙げられる。
【0020】
部分ハロゲン化エラストマーガム
【0021】
本明細書で使用される場合、語句「エラストマーガム」は、従来のエラストマーとして加工され得るポリマーを指す。従来のエラストマーとして加工されるとは、ポリマーが二本ロールミル又は内部ミキサーで加工され得ることを意味する。ミルブレンドは、ゴム製造者が、ポリマーガムと必要な硬化剤及び/又は添加剤とを混ぜ合わせて使用する加工である。ミルによりブレンドするため、エラストマーガムは、十分な弾性率を有さなければならない。換言すれば、ミルに粘着するほどに軟質ではなく、ミル上に置くことができないほどに剛直ではない。一実施形態では、本開示の部分ハロゲン化エラストマーガムは、100℃にて1%の歪み及び1Hz(ヘルツ)の周波数で測定された際、少なくとも0.1、0.3、又は更には0.5MPa(メガパスカル)、かつ最大2.5、2.2、又は更には2.0MPaの弾性率を有する。
【0022】
エラストマーガムは、部分的にハロゲン化されている(すなわち、ポリマー主鎖上の炭素が、水素原子及びハロゲン原子の両方を含むことを意味する)。一実施形態では、エラストマーガムは、部分的にハロゲン化されており(すなわち、過ハロゲン化されておらず)、少なくとも25、40、50、60、70、又は更には72重量%のハロゲンを含み、このハロゲンは、フッ素及び/又は塩素である。一実施形態では、部分ハロゲン化エラストマーガムは、ポリマー主鎖の全C-H結合に対して、少なくとも40%、50%、60%、又は更には70%のC-ハロゲン結合を含む。いくつかの実施形態では、他の原子は、例えば、連結された酸素原子(すなわち、エーテル結合)を含むポリマー主鎖に沿って存在する。
【0023】
例示的な部分ハロゲン化エラストマーガムとしては、フルオロポリマー及び/又は塩素化ポリマーが挙げられる。
【0024】
非晶質塩素化ポリマーとしては、エピクロロヒドリンポリマー、クロロポリエチレン(CM)及びクロロスルホニルポリエチレン(CSM)が挙げられる。例示的なエピクロロヒドリンポリマーとしては、ポリクロロメチルオキシラン(エピクロロヒドリンポリマー、CO)、エチレンオキシド、並びにクロロメタルオキシラン(エピクロロヒドリンコポリマー、ECO)及びエピクロロヒドリン-エチレンオキシド-アリルグリシジルエーテル(エピクロロヒドリンターポリマー、GECO)が挙げられる。
【0025】
一実施形態では、エラストマーガムは、任意に1つ以上の非フッ素化モノマーと組み合わせて、1つ以上のフッ素化モノマー(複数可)から誘導されてもよい。フッ素化モノマーの例としては、水素原子及び/又は塩素原子を有してもよいフッ素化C2~C8オレフィン、例えばテトラフルオロエチレン(TFE)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、2-クロロペンタフルオロプロペン、ジクロロジフルオロエチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン(VDF)、及びヘキサフルオロプロピレン(HFP)などのフッ素化アルキルビニルモノマー;過フッ素化ビニルエーテル(PVE)を含むフッ素化ビニルエーテル及び過フッ素化アリルエーテルを含むフッ素化アリルエーテルが挙げられる。好適な非フッ素化コモノマーとしては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、並びにエチレン(E)及びプロピレン(P)などのC2~C8オレフィンが挙げられる。
【0026】
本開示で使用することができる過フッ素化ビニルエーテルの例としては、以下の式に対応するものが挙げられ:
CF2=CFO(Rf’O)mRf (I)
式中、Rf”は、2、3、4、5、又は6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖ペルフルオロアルキレンラジカル基であり、mは、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10から選択される整数であり、Rfは、1、2、3、4、5、又は6個の炭素原子を含むペルフルオロアルキル基である。例示的なペルフルオロビニルエーテルモノマーとしては、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル(PMVE)、ペルフルオロ(エチルビニル)エーテル(PEVE)、ペルフルオロ(n-プロピルビニル)エーテル(PPVE-1)、ペルフルオロ-2-プロポキシプロピルビニルエーテル(PPVE-2)、ペルフルオロ-3-メトキシ-n-プロピルビニルエーテル、ペルフルオロ-2-メトキシ-エチルビニルエーテル、ペルフルオロ-メトキシ-メチルビニルエーテル(CF3-O-CF2-O-CF=CF2)、及びCF3-(CF2)2-O-CF(CF3)-CF2-O-CF(CF3)-CF2-O-CF=CF2、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
本開示で使用することができる過フッ素化アリルエーテルの例としては、式CF2=CFCF2O(Rf”O)n(Rf’O)mRf (II)に対応するものが挙げられ、
式中、Rf”及びRf’は、独立して、2、3、4、5、又は6個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖ペルフルオロアルキレンラジカル基であり、m及びnは、独立して、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、及び10から選択される整数であり、Rfは、1、2、3、4、5、又は6個の炭素原子を含むペルフルオロアルキル基である。例示的なペルフルオロ化アリルエーテルモノマーとしては、ペルフルオロ(エチルアリル)エーテル、ペルフルオロ(n-プロピルアリル)エーテル、ペルフルオロ-2-プロポキシプロピルアリルエーテル、ペルフルオロ-3-メトキシ-n-プロピルアリルエーテル、ペルフルオロ-2-メトキシ-エチルアリルエーテル、ペルフルオロ-メトキシ-メチルアリルエーテル、及びCF3-(CF2)2-O-CF(CF3)-CF2-O-CF(CF3)-CF2-O-CF2CF=CF2、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0028】
好適なフルオロアルキルビニルモノマーは、以下の一般式に対応する。
CF2=CF-Rd
f又はCH2=CH-Rd
f
式中、Rd
fは、炭素原子が1~10個、好ましくは1~5個のペルフルオロアルキル基を表す。フルオロアルキルビニルモノマーの典型的な例は、ヘキサフルオロプロピレンである。
【0029】
一実施形態では、部分ハロゲン化エラストマーガムは、VDFから誘導される共重合単位(interpolymerized units)を含む。一実施形態では、部分ハロゲン化エラストマーガムは、25~65重量%のVDF、又は更には35~60重量%のVDFから誘導される。
【0030】
一実施形態では、部分ハロゲン化エラストマーガムはまた、炭素-炭素二重結合を含み、及び/又はポリマー鎖に沿って炭素-炭素二重結合を形成することができる。一実施形態では、部分ハロゲン化エラストマーガムは、ポリマーの主鎖に沿って炭素-炭素二重結合を含むか、又はポリマーの主鎖に沿って炭素-炭素二重結合を形成することができる。別の実施形態では、部分ハロゲン化エラストマーガムは、炭素-炭素二重結合を含むか、又はポリマーの主鎖からのペンダント基において炭素-炭素二重結合を形成することができる。
【0031】
炭素-炭素二重結合を形成することができるポリマーとは、そのポリマーが、二重結合を形成することができる単位を含有することを意味する。そのような単位としては、例えば、ポリマー主鎖又はペンダント側鎖に沿う、2つの隣接する炭素が挙げられ、ここでは、水素が第1の炭素に結合しており、脱離基が第2の炭素に結合している。脱離反応(例えば熱反応、及び/又は酸若しくは塩基の使用)中、脱離基及び水素が脱離し、これら2つの炭素原子の間に二重結合を形成する。例示的脱離基としては、ハロゲン化物、アルコキシド、水酸化物、トシレート、メシレート、アミン、アンモニウム、硫化物、スルホニウム、スルホキシド、スルホン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0032】
フッ素置換、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンなどを含有しても含有しなくてもよい、少量の他の共重合性モノマーを添加することによって、ポリマー形成中に部分ハロゲン化エラストマーガムを改質することが、当業者に既知である。これらの追加のモノマー(すなわち、コモノマー)の使用は、本開示の範囲内である。一般に、これらの追加のモノマーは、部分ハロゲン化エラストマーガム中の25モルパーセント未満、好ましくは10モルパーセント未満、更には3モルパーセント未満で使用されるであろう。
【0033】
一実施形態では、部分ハロゲン化エラストマーガムが、非晶質であるランダムコポリマーであり、長距離秩序がないことを意味する(すなわち、長距離秩序では、最近接隣接物によるものより大きな巨大分子の配列及び配向があると理解される)。非晶質ポリマーは、DSC(示差走査熱量測定)によって検出可能な結晶特性を有さず、すなわち、DSC下で研究される場合、-85℃で開始し、10℃/分で350℃まで上昇させて、10℃/分の速度で-85℃まで冷却する第1の加熱サイクル及び-85℃で開始して10℃/分で350℃まで上昇させる第2の加熱サイクルでのDSCサーモグラムを使用して試験されるとき、ポリマーは、加熱/冷却/加熱サイクルの第2の熱からの0.002、0.01、0.1、又は更には1ジュール/gを超えるエンタルピーを有する融点又は融解転移を有さないことを意味する。例示的な非晶質ランダムフッ素化コポリマーは、TFE及び過フッ素化ビニルエーテルモノマー単位を含むコポリマー(TFE及びPMVEを含むコポリマー;TFE及びPEVEを含むコポリマーなど)、TFE及び過フッ素化アリルエーテルモノマー単位を含むコポリマー;TFE及びプロピレンモノマー単位を含むコポリマー;TFE、プロピレン、及びVDFモノマー単位を含むコポリマー;VDF及びHFPモノマー単位を含むコポリマー;TFE、VDF、及びHFPモノマー単位を含むコポリマー;TFE及びエチルビニルエーテル(EVE)モノマー単位とを含むコポリマー;TFE及びブチルビニルエーテル(BVE)モノマー単位を含むコポリマー;TFE、EVE、及びBVEモノマー単位を含むコポリマー;VDF及び過フッ素化ビニルエーテルモノマー単位を含むコポリマー(VDF及びCF2=CFOC3F7モノマー単位を含むコポリマーなど);エチレン及びHFPモノマー単位;CTFE及びVDFモノマー単位を含むコポリマー;TFE及びVDFモノマー単位を含むコポリマー;TFE、VDF、及び過フッ素化ビニルエーテルモノマー単位を含むコポリマー(TFE、VDF、及びPMVEモノマー単位を含むコポリマーなど);VDF、TFE、及びプロピレンモノマー単位を含むコポリマー;TFE、VDF、PMVE、及びエチレンモノマー単位を含むコポリマー;TFE、VDF、及び過フッ素化ビニルエーテルモノマー単位を含むコポリマー(TFE、VDF、及びCF2=CFO(CF2)3OCF3)モノマー単位を含むコポリマーなど)、並びにこれらの組み合わせを挙げることができる。一実施形態では、フッ素化ポリマーは、VDF及びHFPモノマー単位を含むコポリマーではない。
【0034】
一実施形態では、部分ハロゲン化エラストマーガムは、化学的に異なるブロック又は配列が互いに共有結合しており、ブロックが異なる化学組成及び/又は異なるガラス転移温度を有するブロックコポリマーである。一実施形態では、ブロックコポリマーは、第1のブロックであるAブロックを含み、これは半結晶性セグメントである。示差走査熱量計(DSC)で分析した場合、このブロックは少なくとも1つの70℃より高い融点温度(Tm)、及び例えば0ジュール/グラム(J/g)より大きい測定可能なエンタルピーを有する。第2ブロック又はBブロックは非晶質セグメントであり、これは、長距離秩序がないことを意味する(すなわち、長距離秩序では、最近接隣接物より大きな巨大分子の配列及び配向があると理解される)。非晶質セグメントは、DSCで検出可能な結晶性の特性を有さない。DSC分析した場合、Bブロックは、DSCで2ミリジュール/gより大きいエンタルピーを有する融点又は溶融転移を有さないであろう。一実施形態では、Aブロックは、少なくとも次のモノマーから、すなわち、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)及びフッ化ビニリデン(VDF)から誘導されるコポリマーである。一実施形態では、Aブロックは、30~85重量%のTFE、5~40重量%のHFP及び5~55重量%のVDF、30~75重量%のTFE、5~35重量%のHFP及び5~50重量%のVDF、又は更には40~70重量%のTFE、10~30重量のHFP及び10~45重量%のVDFを含む。一実施形態では、Bブロックは、少なくとも次のモノマーから、すなわち、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)及びフッ化ビニリデン(VDF)から誘導されるコポリマーである。一実施形態では、Bブロックは、25~65重量%のVDF及び15~60重量%のHFP、又は更には35~60重量%のVDF及び25~50重量%のHFPを含む。モノマーは、上記のものに加えて、A及び/又はBブロックに含まれていてもよい。一般に、Aブロック及びBブロックの重量平均は、少なくとも1000、5000、10000又は更には25000ダルトン、かつ最大で400000、600000又は更には800000ダルトンから独立して選択される。このようなブロックコポリマーは、それぞれ2017年1月18日に出願された、国際公開第2017/013379号(Mitchell et al.)、並びに米国特許仮出願第62/447675号、同第62/447636号及び同第62/447664号に開示されており、これらは全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
本開示の部分ハロゲン化エラストマーガムは、過酸化物硬化系におけるポリマーの架橋を促進する硬化部位を含有する。これらの硬化部位は、ヨウ素、臭素、及び/又はニトリルのうちの少なくとも1つを含む。ポリマーを、連鎖移動剤及び/又は硬化部位モノマーの存在下で重合させて、ポリマーに硬化部位を導入してよい。このような硬化部位モノマー及び連鎖移動剤は、当該技術分野において既知である。例示的な連鎖移動剤としては、ヨード連鎖移動剤、ブロモ連鎖移動剤、又はクロロ連鎖移動剤が挙げられる。例えば、重合において好適なヨード連鎖移動剤としては、式RIx(式中、(i)Rは3~12個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基又はクロロペルフルオロアルキル基であり、(ii)xは1又は2である)のものが挙げられる。ヨード連鎖移動剤は過フッ素化ヨード化合物でよい。例示的なヨード-ペルフルオロ化合物としては、1,3-ジヨードペルフルオロプロパン、1,4-ジヨードペルフルオロブタン、1,6-ジヨードペルフルオロヘキサン、1,8-ジヨードフルオロオクタン、1,10-ジヨードペルフルオロデカン、1,12-ジヨードペルフルオロドデカン、2-ヨード-1,2-ジクロロ-1,1,2-トリフルオロエタン、4-ヨード-1,2,4-トリクロロペルフルオロブタン及びこれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態では、ヨード連鎖移動剤は、式I(CF2)n-O-Rf-(CF2)mIであり、式中、nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10であり、mは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10であり、Rfは、部分フッ素化又は過フッ素化アルキレンセグメントであり、これは直鎖又は分岐鎖であり得、任意に少なくとも1つの連結されたエーテル結合を含む。例示的な化合物としては、I-CF2-CF2-O-CF2-CF2-I、I-CF(CF3)-CF2-O-CF2-CF2-I、I-CF2-CF2-O-CF(CF3)-CF2-O-CF2-CF2-I、I-(CF(CF3)-CF2-O)2-CF2-CF2-I、I-CF2-CF2-O-(CF2)2-O-CF2-CF2-I、I-CF2-CF2-O-(CF2)3-O-CF2-CF2-I、及びI-CF2-CF2-O-(CF2)4-O-CF2-CF2-I、I-CF2-CF2-CF2-O-CF2-CF2-I、並びにI-CF2-CF2-CF2-O-CF(CF3)-CF2-O-CF2-CF2-Iが挙げられる。いくつかの実施形態では、臭素は、式RBrxの臭素化連鎖移動剤から誘導され、式中、(i)Rは、3~12個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル又はクロロペルフルオロアルキル基であり、かつ(ii)x=1又は2である。連鎖移動剤は、過フッ素化ブロモ化合物でよい。
【0036】
硬化部位モノマーは、用いられる場合、臭素、ヨウ素、及び/又はニトリル硬化部位のうちの少なくとも1つを含む。
【0037】
一実施形態では、硬化部位モノマーは、式:(a)CX2=CX(Z)のものであってもよく、(式中、(i)各Xは独立して、H若しくはFであり、かつ(ii)Zは、I、Br、Rf-U(式中、U=I若しくはBrであり、Rf=任意にエーテル結合を含有する、過フッ素化又は部分過フッ素化アルキレン基であり))、あるいは式(b)Y(CF2)qYのものであってもよい(式中、(i)YはBr又はI若しくはClであり、(ii)q=1~6である)。加えて、非フッ素化ブロモ又はヨードオレフィン、例えば、ヨウ化ビニル及びヨウ化アリルを使用することができる。例示的な硬化部位モノマーとしては、CH2=CHI、CF2=CHI、CF2=CFI、CH2=CHCH2I、CF2=CFCF2I、ICF2CF2CF2CF2I、CH2=CHCF2CF2I、CF2=CFCH2CH2I、CF2=CFCF2CF2I、CH2=CH(CF2)6CH2CH2I、CF2=CFOCF2CF2I、CF2=CFOCF2CF2CF2I、CF2=CFOCF2CF2CH2I、CF2=CFCF2OCH2CH2I、CF2=CFO(CF2)3-OCF2CF2I、CH2=CHBr、CF2=CHBr、CF2=CFBr、CH2=CHCH2Br、CF2=CFCF2Br、CH2=CHCF2CF2Br、CF2=CFOCF2CF2Br、CF2=CFCl、I-CF2-CF2CF2-O-CF=CF2、I-CF2-CF2CF2-O-CF2CF=CF2、I-CF2-CF2-O-CF2-CF=CF2、I-CF(CF3)-CF2-O-CF=CF2、I-CF(CF3)-CF2-O-CF2-CF=CF2、I-CF2-CF2-O-CF(CF3)-CF2-O-CF=CF2、I-CF2-CF2-O-CF(CF3)-CF2-O-CF2-CF=CF2、I-CF2-CF2-(O-(CF(CF3)-CF2)2-O-CF=CF2、I-CF2-CF2-(O-(CF(CF3)-CF2)2-O-CF2-CF=CF2、Br-CF2-CF2-O-CF2-CF=CF2、Br-CF(CF3)-CF2-O-CF=CF2、I-CF2-CF2-CF2-O-CF(CF3)-CF2-O-CF=CF2、I-CF2-CF2-CF2-O-CF(CF3)-CF2-O-CF2-CF=CF2、I-CF2-CF2-CF2-(O-(CF(CF3)-CF2)2-O-CF=CF2、I-CF2-CF2-CF2-O-(CF(CF3)-CF2-O)2-CF2-CF=CF2、Br-CF2-CF2-CF2-O-CF=CF2、Br-CF2-CF2-CF2-O-CF2-CF=CF2、I-CF2-CF2-O-(CF2)2-O-CF=CF2、I-CF2-CF2-O-(CF2)3-O-CF=CF2、I-CF2-CF2-O-(CF2)4-O-CF=CF2、I-CF2-CF2-O-(CF2)2-O-CF2-CF=CF2、I-CF2-CF2-O-(CF2)3-O-CF2-CF=CF2、I-CF2-CF2-O-(CF2)2-O-CF(CF3)CF2-O-CF2=CF2、I-CF2-CF2-O-(CF2)2-O-CF(CF3)CF2-O-CF2-CF2=CF2、Br-CF2-CF2-O-(CF2)2-O-CF=CF2、Br-CF2-CF2-O-(CF2)3-O-CF=CF2、Br-CF2-CF2-O-(CF2)4-O-CF=CF2、及びBr-CF2-CF2-O-(CF2)2-O-CF2-CF=CF2が挙げられる。
【0038】
別の実施形態では、硬化部位モノマーは、ニトリル含有硬化部分を含む。有用なニトリル含有硬化部位モノマーとしては、ニトリル含有フッ素化オレフィン及びニトリル含有フッ素化ビニルエーテル、例えば、ペルフルオロ(8-シアノ-5-メチル-3,6-ジオキサ-1-オクテン)、CF2=CF-O-(CF2)n-CN(式中、n=2~12、好ましくは、2、3、4、5、又は6である)が挙げられる。ニトリル含有硬化部位モノマーの例としては、CF2=CF-O-[CF2-CF(CF3)-O]n-CF2-CF(CF3)-CN(式中、nは0、1、2、3、又は4、好ましくは、0、1、又は2である)、CF2=CF-[OCF2CF(CF3)]x-O-(CF2)n-CN(式中、xは1又は2であり、nは1、2、3、又は4である)、並びにCF2=CF-O-(CF2)n-O-CF(CF3)CN(式中、nは2、3、又は4である)が挙げられる。例示的なニトリル含有硬化部位モノマーとしては、CF2=CFO(CF2)5CN、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CN、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF(CF3)CN、CF2=CFOCF2CF2CF2OCF(CF3)CN、CF2=CFOCF2CF(CF3)OCF2CF2CN、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0039】
一実施形態では、本開示の部分ハロゲン化エラストマーガムは、部分ハロゲン化エラストマーガムの総重量に対して、少なくとも0.1、0.5、1、2、又は更には2.5重量%のヨウ素、臭素、及び/又はニトリル基を含む。一実施形態では、部分ハロゲン化エラストマーガムは、部分ハロゲン化エラストマーガムの総重量に対して、3、5、又は更には10重量%以下のヨウ素、臭素、及び/又はニトリル基を含む。
【0040】
脱ハロゲン化水素剤
【0041】
本開示の硬化性組成物は、部分ハロゲン化エラストマーガムからハロゲン化水素(例えば、HF)を生成するために使用される脱ハロゲン化水素剤を含む。脱ハロゲン化水素剤としては、部分ハロゲン化エラストマーガムからHCl及び/又はHFを生成することができる塩基性化合物が挙げられる。脱ハロゲン化水素剤としては、部分ハロゲン化エラストマーガムから脱ハロゲン化水素を誘発する、水酸化オニウム塩基性溶液、アルコキシド、及び/又は有機アミンが挙げられる。本明細書で有用な特定の脱ハロゲン化水素剤の例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド及びテトラブチルアンモニウムハライドなどの四級アンモニウム化合物、二級又は三級アルキルアミンなど、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。脂肪族、複素環式、又は芳香族アミン若しくはその前駆体が用いられてもよく、その例としては、トリエチルアミン及びその塩、ピリジン及びその塩、キノリン及びその塩、ヘキサメチレンジアミン及びそのカルバメート、4,4’-ビス(アミノシクロヘキシル)メタン及びそのカルバメート、並びにN,N’-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサメチレンジアミンが挙げられるが、これらに限定されない。当然のことながら、上記の脱ハロゲン化水素剤のいずれかの混合物も使用することができる。フッ素化ポリマーの脱フッ化水素は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,678,842号(Sandler)に記載されている。
【0042】
一実施形態では、脱ハロゲン化水素化合物は、有機オニウム化合物である。有機オニウム化合物は、典型的には、有機又は無機部分に結合した少なくとも1個のヘテロ原子、すなわち、N、P、S、Oなどの非炭素原子を含有しており、例えばアンモニウム塩、ホスホニウム塩及びイミニウム塩が挙げられる。有用な四級有機オニウム化合物の1つの部類は、比較的正であり、かつ比較的負であるイオンを広く含み、リン、ヒ素、アンチモン又は窒素は、一般に、正イオンの中心原子を含み、負イオンは、有機又は無機アニオン(例えば、ハロゲン化物、硫酸塩、酢酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、水酸化物、アルコキシド、フェノキシド、ビスフェノキシドなど)であってもよい。有機オニウム化合物の多くは、当該技術分野において記載され、既知である。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第4,233,421号(Worm)、同第4,912,171号(Grootaert et al.)、同第5,086,123号(Guenthner et al.)、同第5,262,490号(Kolb et al.)、及び同第5,929,169号(Jing et al.)を参照されたい。代表的な例としては、以下の個々に列挙された化合物及びこれらの混合物が挙げられる。
トリフェニルベンジルホスホニウムクロリド
トリブチルアリルホスホニウムクロリド
トリブチルベンジルアンモニウムクロリド
テトラブチルアンモニウムブロミド
トリアリールスルホニウムクロリド
8-ベンジル-1,8ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセニウムクロリド
ベンジルトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムクロリド、
トリブチルメトキシプロピルホスホニウムクロリド、及び
ベンジル(ジエチルアミノ)ジフェニルホスホニウムクロリド。
【0043】
有用な有機オニウム化合物の別の部類としては、1つ以上のペンダントフッ素化アルキル基を有するものが挙げられる。一般に、最も有用なフッ素化オニウム化合物は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,591,804号(Coggio et al.)に開示されている。
【0044】
脱ハロゲン化水素剤の量は、使用する薬剤に応じて変更し得る。一般に、十分な脱ハロゲン化水素剤を使用して、ハロゲン化水素の形成を引き起こすべきである。しかしながら、過度に多くの脱ハロゲン化水素剤は、エラストマーの最終特性に有害である場合がある。一実施形態では、脱ハロゲン化水素剤の量は、部分ハロゲン化エラストマーガムの100部当たり少なくとも0.1、0.2、0.5、又は更には1ミリモル(mmol)であり、かつ部分ハロゲン化エラストマーガムの100部当たり最大で5、8、又は更には10mmolである。
【0045】
過酸化物硬化系
【0046】
本開示の組成物は、過酸化物と共剤とを含む過酸化物硬化系を含む。
【0047】
一実施形態では、過酸化物は有機過酸化物であり、好ましくは、ペルオキシ酸素に結合した三級炭素原子を有する三級ブチルペルオキシドである。
【0048】
過酸化物の例としては、ベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-tert-ブチルペルオキシヘキサン、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルクロロへキサン、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート(TBIC)、tert-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート(TBEC)、tert-アミルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、tert-ヘキシルペルオキシイソプロピルカーボネート、カルボノペルオキシ酸、O,O’-1,3-プロパンジイルOO,OO’-ビス(1,1-ジメチルエチル)エステル、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ヘキシルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(4-メチルベンゾイル)ペルオキシド、ラウレルペルオキシド、及びシクロヘキサノンペルオキシドが挙げられる。他の好適な過酸化物硬化剤は、米国特許第5,225,504号(Tatsu et al.)に列挙されている。
【0049】
使用される過酸化物の量は、部分ハロゲン化エラストマーガムの100重量部当たり、一般に少なくとも0.1、0.2、0.4、0.6、0.8、1、1.2又は更には1.5、最大で2、2.25、2.5、2.75、3、3.5、4、4.5、5、又は更には5.5重量部である。
【0050】
共剤は、ラジカルと迅速に反応し、副反応を潜在的に抑制すること、及び/又は追加の架橋を発生させることによって、過酸化物硬化効率を改善するために使用される反応性添加剤である。共剤は、水素引き抜き又は過酸化物からのラジカルの添加を介してラジカルを形成し、次いで、Br、I、及び/又はニトリル部位を介してポリマーと反応することができる。共剤は多官能性多価不飽和化合物であり、当該技術分野において既知であり、アリル含有シアヌレート、イソシアヌレート、及びフタレート、ジエンのホモポリマー、並びにジエン及びビニル芳香族のコポリマーを含む。ジ-及びトリアリル化合物、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、ビニルピリジン、1,2-シス-ポリブタジエン及びそれらの誘導体を含む多種多様な有用な共剤が市販されている。例示的な共剤としては、グリセリンのジアリルエーテル、トリアルキルホスフィン酸、アジピン酸ジアリル、ジアリルメラミン及びトリアリルイソシアヌレート(TAIC)、トリ(メチル)アリルイソシアヌレート(TMAIC)、トリ(メチル)アリルシアヌレート、ポリ-トリアリルイソシアヌレート(ポリ-TAIC)、キシレン-ビス(ジアリルイソシアヌレート)(XBD)、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、フタル酸ジアリル、トリス(ジアリルアミン)-s-トリアジン、亜リン酸トリアリル、1,2-ポリブタジエン、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。2つの末端不飽和部位を含む例示的な部分フッ素化化合物としては、CH2=CH-Rf1-CH=CH2(式中、Rf1は、1~8個の炭素原子のペルフルオロアルキレンであり得る)及びフッ素含有TAIC(米国特許第特許第6191233号(Kishine et al.)に開示されているものなど)が挙げられる。
【0051】
使用される共剤の量は、部分ハロゲン化エラストマーガムの100重量部当たり、一般に少なくとも0.1、0.5、又は更には1重量部であり、かつ部分ハロゲン化エラストマーガムの100重量部当たり、最大2、2.5、3、又は更には5重量部である。
【0052】
他の添加剤
【0053】
例えば、強度を強化する又は機能性を付与する目的で、従来の補助剤、例えば、加工助剤(ワックス、カルナバワックスなど);Struktol Co.,Stow,OHから入手される商品名「STRUKTOL WB222」で入手可能なものなどの可塑剤;充填剤;及び/又は着色剤を組成物に添加してもよい。
【0054】
このような充填剤としては、クレイ、アルミナ、ベンガラ、タルク、珪藻土、硫酸バリウム、炭酸カルシウム(CaCO3)、フッ化カルシウム、酸化チタン及び酸化鉄などの有機充填剤又は無機充填剤が挙げられ、ポリテトラフルオロエチレン粉末、PFA(TFE/ペルフルオロビニルエーテルコポリマー)粉末、導電性充填剤及び放熱充填剤などを任意選択の構成成分として組成物に添加してもよい。当業者は、特定の充填剤を、加硫処理した化合物に所望の物理特性を得るのに必要な量にて選択することができる。
【0055】
一実施形態では、カーボンブラックが組成物に添加される。カーボンブラック充填剤は、ポリマー組成物の弾性率、引張り強度、伸び、硬度、耐摩耗性、導電性及び加工性のバランスを保つ手段として典型的に用いられる。好適な例としては、MTブラック(メディアム・サーマル・ブラック)(名称:N-991、N-990、N-908、及びN-907)、FEF N-550、並びに大粒径ファーネスブラックが挙げられる。使用する場合、部分ハロゲン化エラストマーガムの100重量部当たり1~100重量部の大粒径ブラックの充填剤で一般に十分である。
【0056】
一実施形態では、組成物は、部分ハロゲン化エラストマーガムの100重量部当たり、40、30、20、15、又は更には10重量%未満の無機充填剤fを含む。
【0057】
酸受容体は、典型的には、酸捕捉剤としてエラストマー硬化に使用される。酸受容体は、典型的には、脱ハロゲン化水素硬化反応を伴うエラストマー硬化反応において使用される。本開示は過酸化物硬化エラストマーを対象とするため、一実施形態では、本明細書に開示される硬化性組成物は、酸受容体を実質的に含まない。換言すれば、組成物は、部分ハロゲン化エラストマーガムの100重量部当たり、0.1、0.05、又は更には0.01重量部未満の酸受容体を含む。別の実施形態では、硬化性組成物は、少量の酸受容体を含み、例えば、部分ハロゲン化エラストマーガムの100重量部当たり、5、3、又は更には1重量部未満の酸受容体を含む。
【0058】
酸受容体は、典型的には、金属酸化物若しくは金属水酸化物などの無機塩基、又は無機塩基と有機酸受容体とのブレンドであってもよい。無機受容体の例としては、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、第二リン酸鉛、酸化亜鉛、炭酸バリウム、水酸化ストロンチウム、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイトなどが挙げられる。有機受容体としては、エポキシ、アルカリステアレート(ステアリン酸ナトリウムなど)、三級アミン、及びシュウ酸マグネシウムが挙げられる。
【0059】
本開示の部分ハロゲン化エラストマーガムは、主に、Br、Ir、及び/又はCN硬化部位との過酸化物硬化反応によって硬化される。一実施形態では、本開示の組成物は、過酸化物と共剤とから本質的になる硬化系を含む。換言すれば、部分ハロゲン化エラストマーガムの硬化に寄与しない限り、少量の他の硬化剤が存在してもよく、これは、ポリマーの硬化(例えば、加熱)に応答して粘度の増加として観察され得る。一実施形態では、本開示の硬化性組成物は、アミン、トリアジン及び/又はビスフェノール硬化系を実質的に含まない。
【0060】
一実施形態では、本開示の硬化性組成物は、部分ハロゲン化エラストマーガム(phr)の100重量部当たり1重量部未満の(i)ポリヒドロキシ硬化剤、(ii)架橋性アミン(多官能性アミン)、及び/又は(iii)CX1X2=CX3-L-M(式中、X1、X2、及びX3は、独立して、H、Cl、及びFから選択され、X1、X2、及びX3のうちの少なくとも1つはHであり、少なくとも1つは、F又はClであり、Lは、単結合又は連結基であり、Mは求核基である)を含む。
【0061】
ポリヒドロキシ化合物は、米国特許第3,876,654号(Pattison)、及び同第4,233,421号(Worm)に開示されているポリヒドロキシ化合物など、架橋剤又は共硬化剤として機能することが当該技術分野において既知のものを含む。代表的な例としては、芳香族ポリヒドロキシ化合物、好ましくは次のもの:ジ-、トリ-及びテトラヒドロキシベンゼン、ナフタレン、及びアントラセン、並びにビスフェノールのうちのいずれか1つが挙げられる。例示的な芳香族ポリヒドロキシ化合物としては、4,4’-ヘキサフルオロイソプロピリデニルビスフェノールが挙げられ、より一般的にはビスフェノールAFとして知られている。更なる有用な例としては、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールSとしても知られる)及び4,4’-イソプロピリデニルビスフェノール(ビスフェノールAとしても知られる)が挙げられる。
【0062】
例示的な架橋性アミンとしては、ヘキサメチレンジアミン及びそのカルバメート、4,4’-ビス(アミノシクロヘキシル)メタン及びそのカルバメート、並びにN,N’-ジシンナミリデン-1,6-ヘキサメチレンジアミンが挙げられる。
【0063】
式CX1X2=CX3-L-Mの例示的な硬化剤は、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2016/100421号(Grootaert et al.)及び国際公開第2016/100420号(Grootaert et al.)に開示されている。例えば、連結基、Lは、連結されたO、S、若しくはN原子(例えば、エーテル結合)、又は二価有機基であってもよく、連結されたヘテロ原子(例えば、O、S若しくはN)を任意選択で含んでもよい、及び/又は任意選択で置換されていてもよい。例示的な二価有機基としては、-CH2-C6H4(OCH3)-、-CH2-O-CH2(CF2)4-CH2-及び-CH2-O-C6H4-C(CF3)2-C6H4-、並びに-CH2-O-C6H4-C(CF3)2-C6H4-O-CH2-が挙げられる。例示的な求核基、Mとしては、アルコール(-OH)、アミン(-NH2、-NHR及び-NRR’(式中、R及びR’は有機基である))、チオール(-SH)、並びにカルボン酸(-COOH)が挙げられる。
【0064】
一実施形態では、本開示の硬化性組成物は、
(a)(i)少なくとも25重量%の、フッ素及び塩素のうちの少なくとも1つであるハロゲンと、(ii)ヨウ素、臭素、及びニトリルのうちの少なくとも1つから選択される、複数の硬化部位と、を含む、部分ハロゲン化エラストマーガムと、
(b)部分ハロゲン化エラストマーガムの100質量部当たり少なくとも0.01質量部のケイ素含有化合物と、
(c)脱ハロゲン化水素剤と、
(d)過酸化物及び共剤から本質的になる、硬化系と、から本質的になる。
語句「から本質的になる」は、組成物が列挙された要素を含み、組成物に実質的に影響を与えない限り、列挙されていない追加の要素を含んでもよいことを意味する。換言すれば、列挙されていない要素を残らず全て除去した場合、組成物の加工(例えば、硬化時間、押出速度など)及び最終製品特性(例えば、化学的及び熱抵抗、硬度など)は変わらないままである。
【0065】
硬化性部分ハロゲン化エラストマーガム組成物は、部分ハロゲン化エラストマーガム、ケイ素含有化合物、脱ハロゲン化水素剤、及び過酸化物硬化系を、他の構成成分(例えば、追加の添加剤)と共に、従来のゴム加工装置において混合して、固体混合物、すなわち、当該技術分野において「コンパウンド」とも称される、追加の成分を含有する固体ポリマーを提供することによって、調製され得る。これらの成分を混合して、他の成分を含有するかかる固体ポリマー組成物を生成するこのプロセスは、典型的には、「コンパウンド化」と呼ばれる。かかる設備としては、ゴム用ミル、バンバリーミキサーなどの密閉式ミキサー、及び混合押出成形機が挙げられる。混合中の混合物の温度は、典型的には、約120℃を超えて上昇することはない。混合中、構成成分及び添加剤は、結果として得られるポリマー「コンパウンド」又はポリマーシート全体にわたって均一に分布する。その後、「コンパウンド」は、押出されるか、又は型、例えば空洞若しくはトランスファーモールド内でプレスされ、続いてオーブン硬化され得る。代替的実施形態では、硬化は、オートクレーブで行われてもよい。
【0066】
硬化は、典型的には、硬化性部分ハロゲン化エラストマーガム組成物を熱処理することによって達成される。典型的には、第1の硬化が実施され、続いて第2の後硬化工程が行われる。
【0067】
第1の硬化は、所望であれば更に造形され得る標的形状を形成する(又はプリフォームする)ため、形状を維持することができる程度に物品を架橋するために行われる。
【0068】
本明細書においてプレス硬化と称される第1の硬化は、硬化性組成物を、射出成形機、圧縮成形機、トランスファー成形機、加硫プレス、押出成形、続いて塩浴又はオートクレーブ硬化などの当該技術分野において既知の技術を使用して、少なくとも120、140、又は更には150℃の温度、かつ最大で220℃又は更には200℃の温度に、少なくとも1、5、15、20又は更には30分間、かつ最大で0.75、1、5、10又は更には15時間曝露することによって実施される。一実施形態では、少なくとも700、1000、2000、3000又は更には3400kPa、かつ最大で6800、7500、10000、15000又は更には20000kPaの圧力が圧縮成形に典型的に使用される。最初に、成形型を離型剤でコーティングし、プレベークしてもよい。
【0069】
本明細書において後硬化と称される第2の硬化工程は、高い強度及び減少した圧縮永久ひずみのためにエラストマー中の低分子構成成分をプレス硬化又はガス化するのに十分ではなかった架橋反応を完了させる目的で行われる。後硬化は、典型的には、サンプルの断面厚さに応じて、少なくとも120、140又は更には150℃、かつ最大で200、220、250又は更には300℃の温度で、少なくとも10、15、30又は更には60分間、かつ最大で2、5、10、15、24、36又は更には48時間にわたって行われる。厚さのある部分では、後硬化中の温度は、通常、範囲の下限から所望の最高温度まで次第に上昇する。使用最高温度は、好ましくは約260℃であり、この値で約1時間以上保持する。
【0070】
一実施形態では、部分ハロゲン化エラストマーガムは、可動ダイレオメーター(MDR)を使用して、ASTM D5289-93aに従って、177℃で、予熱なし、30分の経過時間、及び0.5弧度で試験すると、5、4、3、又は更には2分未満のt’90(トルクがML+0.9(MH-ML)に達するのに要する時間)を有する。
一実施形態では、本開示の硬化組成物は、良好な熱安定性及び/又は耐薬品性を有する。熱安定性は、エラストマーが圧縮に応答する能力である。本開示の物品は、ASTM D395-16e1に従って、200℃で70時間試験したとき、60、50、40、30、又は更には20%未満の圧縮永久ひずみを有してもよい。ポリマーの耐薬品性は、典型的には、水、蒸気、及びエチレンジアミンで試験される。本開示の物品は、ASTM D-471-06により試験する場合、230℃で168時間試験すると、60%未満、又は更には50%未満の体積膨潤度の蒸気に対する耐性を有し得る。本開示の物品は、ASTM D-471-06により試験する場合、230℃で168時間試験すると、80%未満、50%未満、40%未満、又は更には30%未満の体積膨潤度の水に対する耐性を有し得る。本開示の物品は、ASTM D-471-06により試験する場合、100℃で168時間試験すると、50%未満、45%未満、又は更には40%未満の体積膨潤度のエチレンジアミンに対する耐性を有し得る。
【0071】
本開示では、成形されたエラストマー物品が後硬化されるとき、表面層が表面又は表面付近に生じることが発見された。表面層はケイ素含有であり、Si-O結合を含むと思われる。一実施形態では、表面ケイ素層は二酸化ケイ素を含む。一実施形態では、表面層は非晶質ケイ素である。表面層は、物品の表面にわたって連続的又は実質的に連続的である(すなわち、表面の少なくとも75、80、85、90、95、又は更には99%を覆う)ことを意味する層である。表面層は、硬化物品の表面又は表面の付近にあり、これは、表面層が表面、又は表面の200、100、50若しくは更には10nm以内にあることを意味する。
【0072】
一実施形態では、硬化生成物は、バルク組成物よりも、表面ケイ素層の表面において2、5、10倍を超える、又は更には20倍大きいケイ素含有量を有し、これは、XRF(X線蛍光)又はFTIR(フーリエ変換赤外分光法)によって分析することができる。
【0073】
一実施形態では、表面層の厚さは、使用される温度及び曝露される時間量によって左右され得る。
【0074】
この表面層を形成するために、配合材料は、部分ハロゲン化エラストマーガム、ケイ素含有化合物、及び脱ハロゲン化水素を可能にするための有効量の脱ハロゲン化水素剤を含む。表面層を形成するために、部分ハロゲン化エラストマーガムは、十分な時間にわたって熱のレベルに曝露されなければならず、表面がガスを自由に遊離させることができなければならないと考えられる。一実施形態では、成形物品の表面は酸化的であり、換言すれば、酸素ガス、水、又は酸素原子を容易に供与することができるいくつかの他の化合物を含む。
【0075】
一実施形態では、表面層は、より長い後硬化時に厚さを増加させる。一実施形態では、SiとFとの表面比は、バルクにおけるSiとFとの理論比と比較して、より長い後硬化時間の際に増加する。一実施形態では、Siとハロゲンの理論比(組成物中の構成成分によって決定される)は、少なくとも0.001又は更には0.005であり、0.01又は更には0.05以下である。一実施形態では、硬化した組成物の表面(例えば、表面層)は、少なくとも0.05、0.1、0.2、0.4、又は更には0.5のSiとFとの比を有し、これは波長分散型蛍光X線(WDXRF)分析装置によって測定することができる。
【0076】
理論に束縛されるものではないが、加熱はHFなどのハロゲン化水素を形成する、部分ハロゲン化エラストマーガムの脱ハロゲン化水素を引き起こし、これがケイ素含有化合物からSiを引き抜いて、例えばSiF4を形成すると考えられる。次いで、このガス状生成物は、エラストマーガムの表面に移動し、そこで表面ケイ素層を形成する。このプロセスは、エラストマー部分の表面にケイ素を堆積させるだけでなく、テクスチャ加工された表面を作り出すと考えられる。過酸化物硬化系は、ポリマーを物理的に架橋(又は硬化)するために使用される。
【0077】
ハロゲン化エラストマー上のマット仕上げとして現れるテクスチャ加工された表面は、表面層の形成と一致するように見える。
【0078】
有利には、本開示の硬化組成物は、低粘性、低摩擦性及び/又は表面粗さを有することができる。一実施形態では、硬化組成物は、ボール/ピン・オン・ディスク摩擦試験を使用して試験したときに改善された摩耗性能を有する。一実施形態では、硬化組成物は、1000rpmで60分間、-1.5、-1.0超、又は更には超又は更には-0.8ニュートン超の摩擦力(Fx)を有する。一実施形態では、硬化組成物は、1.0、0.75、又は更には0.50未満の摩擦係数(COF)を有する。
【0079】
本開示の組成物は、成形物品、例えば、Oリング、ガスケット、ベルト、バルブ、ストッパ、シール、ホースなどで使用されてもよい。例えば、本開示の硬化組成物は、回転軸シール(クランク軸シールなど)、バルブ(電磁弁、調整弁、ガス開閉弁、水弁など)、バルブステムシール、ガスシール、オイルシール、燃料キャップガスケット、油レベルゲージ、並びにハードディスクドライブ構成要素(シール、衝撃吸収ストッパ、ダンパ、ガスケット及びバランサなど)に使用されてもよい。
【0080】
本開示の硬化組成物は、耐久性のある表面用途に使用することができる。一実施形態では、本明細書に開示される組成物は、基材の表面に耐久性(例えば、耐摩耗性及び/又は耐引っかき性)を付与するために基材に適用されるフィルムに作製されてもよい。基材は、例えば、衣類物品又は履物;自動車、船舶又は他の車両におけるシートの被覆材;自動車、船舶又は他の車両の本体;整形外科デバイス;電子デバイス(例えば、トラックパッド及び外面カバーを含む)、ハンドヘルドデバイス及びウェアラブルデバイス(時計、センサ及びモニタリングデバイスを含む);家庭用機器;スポーツ用品などの形態であってもよい。別の実施形態では、本明細書に開示される組成物は、手首、腕又は脚などの身体部分のためのウェアラブルデバイス内に作製(例えば、成形)されてもよい。一実施形態では、このようなウェアラブルデバイスとしては、加速度計、ジャイロスコープ、慣性センサ、全地球測位、運動センサ、心拍モニタなどを含み得る、腕時計、センサ及びモニタリングデバイスが挙げられる。
【0081】
本開示の例示的な実施形態としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
実施形態1.(a)(i)少なくとも25重量%の、フッ素及び塩素のうちの少なくとも1つであるハロゲンと、(ii)ヨウ素、臭素、及びニトリルのうちの少なくとも1つから選択される、複数の硬化部位と、を含む、部分ハロゲン化エラストマーガムと、
(b)部分ハロゲン化エラストマーガムの100質量部当たり少なくとも0.01質量部のケイ素含有化合物と、
(c)脱ハロゲン化水素剤と、
(d)過酸化物及び共剤から本質的になる、硬化系と、を含む、硬化性部分ハロゲン化エラストマーガム組成物。
【0083】
実施形態2.部分ハロゲン化エラストマーガムが、フッ素化非晶質ポリマー又は塩素化非晶質ポリマーである、実施形態1に記載の組成物。
【0084】
実施形態3.フッ素化非晶質ポリマーが、共重合されたフッ化ビニリデンモノマー単位を含む、実施形態2に記載の組成物。
【0085】
実施形態4.フッ素化非晶質ポリマーが、(i)テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、及びヘキサフルオロプロピレンモノマー単位を含むコポリマー、(ii)テトラフルオロエチレン、及びプロピレンモノマー単位を含むコポリマー、(iii)テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、及びプロピレンモノマー単位を含むコポリマー、(iv)フッ化ビニリデン、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル、及びヘキサフルオロプロピレンモノマー単位を含むコポリマー、並びに(v)テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、及びヘキサフルオロプロピレンモノマー単位を含むコポリマーのうちの少なくとも1つを含む、実施形態2に記載の組成物。
【0086】
実施形態5.部分ハロゲン化エラストマーガムが、少なくとも1つのAブロック及び少なくとも1つのBブロックを含むブロックコポリマーである、実施形態1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【0087】
実施形態6.フッ素化エラストマーガムの重量を基準にして、Aブロックが、30~85重量%のTFE、5~40重量%のHFP、及び5~55重量%のVDFを含み、Bブロックが、25~65重量%のVDF及び15~60重量%のHFP、又は更には35~60重量%のVDF及び25~50重量%のHFPを含む、実施形態5に記載の組成物。
【0088】
実施形態7.部分ハロゲン化エラストマーガムの100部当たり、0.1超~1ミリモル未満の脱ハロゲン化水素剤を含む、実施形態1~6のいずれか1つに記載の組成物。
【0089】
実施形態8.組成物が、(i)ポリヒドロキシ硬化剤、(ii)架橋性アミン、及び(iii)CX1X2=CX3-L-M(式中、X1、X2、及びX3は、独立して、H、Cl、及びFから選択され、X1、X2、及びX3のうちの少なくとも1つはHであり、少なくとも1つは、F又はClであり、Lは、単結合又は連結基であり、Mは求核基である)を実質的に含まない、実施形態1~7のいずれか1つに記載の組成物。
【0090】
実施形態9.組成物が、酸受容体を実質的に含まない、実施形態1~8のいずれか1つに記載の組成物。
【0091】
実施形態10.組成物が、部分ハロゲン化エラストマーガムの100重量部当たり、5重量部未満のケイ素含有化合物を含む、実施形態1~9のいずれか1つに記載の組成物。
【0092】
実施形態11.ケイ素含有化合物が、無機である、実施形態1~10のいずれか1つに記載の組成物。
【0093】
実施形態12.ケイ素含有化合物が、有機である、実施形態1~10のいずれか1つに記載の組成物。
【0094】
実施形態13.ケイ素含有化合物が、粒子である、実施形態1~12のいずれか1つに記載の組成物。
【0095】
実施形態14.ケイ素含有化合物が、ナノ粒子である、実施形態13に記載の組成物。
【0096】
実施形態15.ケイ素含有化合物が、グラスバブルズである、実施形態13~14のいずれか1つに記載の組成物。
【0097】
実施形態16.ケイ素含有化合物が、液体である、実施形態1~12のいずれか1つに記載の組成物。
【0098】
実施形態17.ケイ素含有化合物が、テトラアルコキシシランである、実施形態16に記載の組成物。
【0099】
実施形態18.カーボンブラックを更に含む、実施形態1~17のいずれか1つに記載の組成物。
【0100】
実施形態19.過酸化物が、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン;ジクミルペルオキシド;ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン;ジアルキルペルオキシド;ビス(ジアルキルペルオキシド);2,5-ジメチル-2,5-ジ(第三級ブチルペルオキシ)3-ヘキシン;過酸化ジベンゾイル;2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド;過安息香酸第三級ブチル;α,α’-ビス(t-ブチルペルオキシ-ジイソプロピルベンゼン);t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、t-アミルペルオキシ2-エチルヘキシルカーボネート、t-ヘキシルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジ[1,3-ジメチル-3-(t-ブチルペルオキシ)ブチル]カーボネート、カルボノペルオキソ酸(carbonoperoxoic acid)、O,O’-1,3-プロパンジイルOO,OO’-ビス(1,1-ジメチルエチル)エステルのうちの少なくとも1つである、実施形態1~18のいずれか1つに記載の組成物。
【0101】
実施形態20.部分ハロゲン化エラストマーガムの100重量部当たり、少なくとも0.1かつ最大5重量部の過酸化物を含む、実施形態1~19のいずれか1つに記載の組成物。
【0102】
実施形態21.共剤が、(i)グリセリンのジアリルエーテル、(ii)トリアリルホスフィン酸、(iii)ジアリルアジペート、(iv)ジアリルメラミン及びトリアリルイソシアヌレート、(v)トリ(メチル)アリルイソシアヌレート、(vi)トリ(メチル)アリルシアヌレート、(vii)ポリ-トリアリルイソシアヌレート、(viii)キシリレン-ビス(ジアリルイソシアヌレート)、(xi)CH2=CH-Rf1-CH=CH2(式中、Rf1は、1~8個の炭素原子のペルフルオロアルキレンであり得る)、及び(x)これらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、実施形態1~20のいずれか1つに記載の組成物。
【0103】
実施形態22.部分ハロゲン化エラストマーガムの100重量部当たり、0.1~10重量部の共剤を含む、実施形態1~21のいずれか1つに記載の組成物。
【0104】
実施形態23.硬化した実施形態1~22のいずれか1つに記載の組成物を含む、物品。
【0105】
実施形態24.シール、Oリング、ガスケット、又はウェアラブルデバイスのうちの少なくとも1つである、実施形態23に記載の物品。
【0106】
実施形態25.ケイ素を含む表面層を有する部分ハロゲン化エラストマーの製造方法であって、
(a)実施形態1~22のいずれか1つに記載の組成物を得ることと、
(b)この組成物を少なくとも160℃の温度で少なくとも15分間、無拘束で加熱することと、を含む、製造方法。
【実施例】
【0107】
特に注記がない限り、実施例及び明細書の残りの箇所における全ての部、百分率、比等は重量による。実施例において用いられる全ての試薬は、特に指示のない限り又は明確でない限り、例えば、Sigma-Aldrich Chemical Company,Milwaukee,WI,USAなどの一般化学品供給業者から入手したものであるか、若しくは入手可能であり、又は当業者に既知であるものである。
【0108】
以下の略語を本明細書で使用する:g=グラム、cm=センチメートル、mm=ミリメートル、μm=マイクロメートル、mil=千分の1インチ、wt%=重量%、min=分、h=時間、N=ニュートン、FTIR=フーリエ変換赤外、ATR=減衰全反射、phr=ゴム100当たりの部(重量)、及びrpm=毎分回転数。このセクションで使用される材料の略語、並びに材料の説明を表1に示す。
【表1】
【0109】
特性評価方法(Characterization Methods)
【0110】
FTIR分光測光による表面におけるSiO2の存在を判定する方法:
【0111】
FTIRスペクトルは、MIRACLE Single Reflection ATRサンプリング付属装置及びGe結晶(両方ともPike Technologies,Madison,WI,USAから入手可能)を備えた、SPECTRUM 100 FTIR(Perkin Elmer,Waltham,MA,USAから入手可能)を使用して、後硬化したシートの表面から測定した。約1072cm-1のピークをSi-O延伸に割り当て、約1179cm-1のピークをSi-F延伸に割り当てた。以下の表2において、Tは観察されたトレースピークを指し、Wは観察された弱いピークを指し、Sは観察された強いピークを指す。
【0112】
摩耗性能の判定方法:
【0113】
後硬化に続いて、直径1.25インチ(3.18cm)のディスクサンプルを、円形ダイを使用して後硬化したサンプルのシートから打ち抜いた。円形を、直径5/16インチ(0.79cm)の円形ダイで各サンプルの中心から切り出した。ボール/ピン・オン・ディスク摩擦試験は、モデルUMT摩擦試験機(CETR,Campbell,CA,USAから入手可能)を使用し、周囲温度において、直径3/8インチ(0.95cm)のステンレス鋼ボールを、1000rpm、60分持続時間、時計回りの方向で使用して150gの力を適用するという条件によって、各サンプルに実施した。摩擦力(Fx)及び摩擦係数(COF)の報告値を表2に示す。
【0114】
実施例1(EX-1)
【0115】
少量のSiO2(0.6phr)及び85重量%のTBMPPCl(1phr)を、表2に示されるような他の成分と共に、2本のロールミルを用いてフルオロポリマーAに配合した。次いで、3インチ(7.62cm)×6インチ(15.2cm)の成形型を使用して、化合物を177℃で6分間、シートとしてプレス硬化した。プレス硬化後、シートを250℃で4時間後硬化させ、空気循環炉内の金属ワイヤに吊り下げた。後硬化したシートは、滑らかな、滑りやすい、マット仕上げ表面を有した。EX-1は、「FTIR分光測光による表面におけるSiO2の存在を判定する方法」及び「摩耗性能の判定方法」で上述したように特性評価した。約1072cm-1の明確なピークをSi-O延伸に割り当てた。Si-O延伸は、後硬化後にEX-1についてのみ観察された。特性評価結果を、表2に要約する。
【0116】
比較例1(CE-1)
【0117】
CE-1がSiO2又はTBMPPClを含まなかったことを除いて、EX-1について記載したとおりにサンプルを調製し、特性評価した。
【0118】
実施例2(EX-2)
【0119】
フルオロポリマーAをフルオロポリマーBと置き換え、TBMPPCl及びSiO2の量が表2に示すとおりであることを除いて、サンプルを調製し、EX-1として特性評価した。
【0120】
実施例3(EX-3)、実施例4(EX-4)、及び実施例5(EX-5)
【0121】
TBMPPClの量を表2に示すとおりにしたことを除いて、EX-2について記載したようにサンプルを調製し、特性評価した。
【0122】
比較例2(CE-2)
【0123】
CE-2がSiO2又はTBMPPClを含まなかったことを除いて、EX-2について記載したとおりにサンプルを調製し、特性評価した。
【0124】
実施例6(EX-6)
【0125】
TBMPPClの量を表2に示すとおりにしたことを除いて、EX-2について記載したようにサンプルを調製し、特性評価した。
【0126】
実施例7(EX-7)
【0127】
フルオロポリマーBをフルオロポリマーCと置き換えたことを除いて、EX-6について記載したようにサンプルを調製し、特性評価した。
【表2】
【0128】
本発明の範囲及び趣旨を逸脱することのない、本発明の予見可能な改変及び変更が、当業者には明らかであろう。本発明は、例示目的のために本出願に記載されている実施形態に限定されるものではない。本明細書の記述と本明細書に述べられ参照により組み込まれる任意の文書中の開示との間に何らかの不一致及び矛盾が存在する場合、本明細書の記述が優先される。