(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】ポリビニルアセタール樹脂フィルムおよびそれを含む積層体
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240405BHJP
B29C 59/04 20060101ALI20240405BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20240405BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240405BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
C08J5/18 CEX
B29C59/04 Z
B32B17/10
B32B27/30 102
C03C27/12 D
C03C27/12 L
(21)【出願番号】P 2020549289
(86)(22)【出願日】2019-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2019037612
(87)【国際公開番号】W WO2020067162
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2018180671
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】512192277
【氏名又は名称】クラレイ ユーロップ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Kuraray Europe GmbH
【住所又は居所原語表記】Philipp-Reis-Strasse 4, D-65795 Hattersheim am Main, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100162710
【氏名又は名称】梶田 真理奈
(72)【発明者】
【氏名】島住 夕陽
(72)【発明者】
【氏名】楠藤 健
(72)【発明者】
【氏名】磯上 宏一郎
(72)【発明者】
【氏名】保田 浩孝
(72)【発明者】
【氏名】小林 卓哉
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-539905(JP,A)
【文献】国際公開第2015/019452(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/019445(WO,A1)
【文献】特開2004-155110(JP,A)
【文献】特開昭61-061835(JP,A)
【文献】特開平06-210729(JP,A)
【文献】特開2011-152693(JP,A)
【文献】国際公開第2018/181386(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00-48/96
B32B 1/00-43/00
C03C 27/12
C08J 5/00-5/02
C08J 5/12-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアセタール樹脂材料から構成されるポリビニルアセタール樹脂フィルムであって、厚みが10~350μmであり、一方の面の十点平均粗さRz値が2μm未満であり、該表面の摩擦角が31°より大きく40°以下であり、かつ、他方の面の十点平均粗さRz値が2μm以上7μm以下であり、該表面の摩擦角が20°以上31°以下であり、
前記十点平均粗さRz値がJIS B0601-1994に準拠して測定した値であり、
前記摩擦角がJIS P 8147に記載の傾斜法に準処して測定した値であり、
前記ポリビニルアセタール樹脂材料中のポリビニルアセタール樹脂の、ブルックフィールド型(B型)粘度計を用いて20℃、30rpmで測定された、濃度10質量%のトルエン/エタノール=1/1(質量比)溶液の粘度が100~1000mPa・sであり、ポリビニルアセタール樹脂フィルム中の可塑剤の量がポリビニルアセタール樹脂フィルムの総質量に基づいて0~20質量%である、ポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項2】
一方の面の摩擦角と他方の面の摩擦角との差分絶対値が2°以上10°以下である、請求項1に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項3】
一方の面の十点平均粗さRz値と他方の面の十点平均粗さRz値との差分絶対値が1μm以上5μm以下である、請求項1または2に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項4】
前記ポリビニルアセタール樹脂材料中のポリビニルアセタール樹脂の、ブルックフィールド型(B型)粘度計を用いて20℃、30rpmで測定された、濃度10質量%のトルエン/エタノール=1/1(質量比)溶液の粘度が300mPa・s以下である、請求項1~3のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項5】
前記ポリビニルアセタール樹脂材料中のポリビニルアセタール樹脂の、ブルックフィールド型(B型)粘度計を用いて20℃、30rpmで測定された、濃度10質量%のトルエン/エタノール=1/1(質量比)溶液の粘度が200mPa・sより大きい、請求項1~3のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項6】
前記ポリビニルアセタール樹脂材料中のポリビニルアセタール樹脂の分子量分布が2.7以上である、請求項1~5のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項7】
前記ポリビニルアセタール樹脂材料中のポリビニルアセタール樹脂が、粘度平均重合度の異なる少なくとも2つのポリビニルアセタール樹脂の混合物、または、粘度平均重合度の異なる少なくとも2つのポリビニルアルコール系樹脂の混合物のアセタール化物である、請求項1~6のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
【請求項8】
複数の透明基材の間に、請求項1~7のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルムが挟持されてなる、積層体。
【請求項9】
さらに可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を含む、請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
前記透明基材がガラスである、請求項8または9に記載の積層体。
【請求項11】
請求項8~10のいずれかに記載の積層体からなる乗物用ガラス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアセタール樹脂フィルムおよび前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムを含む積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリビニルアセタール樹脂から構成されるフィルムは、透明性、柔軟性、衝撃吸収性、ガラスとの接着性等に優れるため、各種車両や建築用の合わせガラス用中間膜として広く用いられている。このようなフィルムは、一般にロール状に巻回された状態で保管され、利用に供されるが、経時的にフィルムロールの端部がずれて両端面に凹凸が生じ、両端面の形状がいわゆるタケノコ状のようになって不均一になりやすい。このようなフィルムロールにおける端面ずれを防止するために、少なくとも最表層が表面処理紙で形成された巻取り軸芯用紙管を用いたロール状巻物が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているような最表層が表面処理紙で形成された巻取り軸芯用紙管を用いたロール状巻物では、軸芯用紙管の表層面と巻き取られるフィルムとの関係において端面ずれを抑制し得ても、巻き取りにより隣接するフィルム同士のずれや自着による端面ずれの防止においては十分に満足し得るものではない。また、隣接するフィルム同士が自着することにより巻出し時にフィルムが破れやすくなったり、巻出し時にフィルムの表面に凹凸が生じるなどしてフィルム表面が不均一になったりするといった問題が生じる。このような自着を抑制するために、所望のフィルムと接着性の低いプラスチックフィルム(例えばポリエチレンフィルムなど)を間に挟む方法もあるが、使用時に離型する必要があり、ハンドリング性に劣る。
【0005】
そこで、本発明は、ロール状に巻回した際に経時的なフィルムロールの端面ずれや自着を生じ難く、また、ロールから巻き出した時に均一な表面を有する、低可塑または無可塑のポリビニルアセタール樹脂フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、以下の好適な態様を提供するものである。
[1]ポリビニルアセタール樹脂材料から構成されるポリビニルアセタール樹脂フィルムであって、厚みが10~350μmであり、一方の面の十点平均粗さRz値が2μm未満であり、該表面の摩擦角が31°より大きく40°以下であり、かつ、他方の面の十点平均粗さRz値が2μm以上7μm以下であり、該表面の摩擦角が20°以上31°以下であり、
前記十点平均粗さRz値がJIS B0601-1994に準拠して測定した値であり、
前記摩擦角がJIS P 8147に記載の傾斜法に準処して測定した値であり、
前記ポリビニルアセタール樹脂材料中のポリビニルアセタール樹脂の、ブルックフィールド型(B型)粘度計を用いて20℃、30rpmで測定された、濃度10質量%のトルエン/エタノール=1/1(質量比)溶液の粘度が100~1000mPa・sであり、ポリビニルアセタール樹脂フィルム中の可塑剤の量がポリビニルアセタール樹脂フィルムの総質量に基づいて0~20質量%である、ポリビニルアセタール樹脂フィルム。
[2]一方の面の摩擦角と他方の面の摩擦角との差分絶対値が2°以上10°以下である、前記[1]に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
[3]一方の面の十点平均粗さRz値と他方の面の十点平均粗さRz値との差分絶対値が1μm以上5μm以下である、前記[1]または[2]に記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
[4]前記ポリビニルアセタール樹脂材料中のポリビニルアセタール樹脂の、ブルックフィールド型(B型)粘度計を用いて20℃、30rpmで測定された、濃度10質量%のトルエン/エタノール=1/1(質量比)溶液の粘度が300mPa・s以下である、前記[1]~[3]のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
[5]前記ポリビニルアセタール樹脂材料中のポリビニルアセタール樹脂の、ブルックフィールド型(B型)粘度計を用いて20℃、30rpmで測定された、濃度10質量%のトルエン/エタノール=1/1(質量比)溶液の粘度が200mPa・sより大きい、前記[1]~[3]のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
[6]前記ポリビニルアセタール樹脂材料中のポリビニルアセタール樹脂の分子量分布が2.7以上である、前記[1]~[5]のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
[7]前記ポリビニルアセタール樹脂材料中のポリビニルアセタール樹脂が、粘度平均重合度の異なる少なくとも2つのポリビニルアセタール樹脂の混合物、または、粘度平均重合度の異なる少なくとも2つのポリビニルアルコール系樹脂の混合物のアセタール化物である、前記[1]~[6]のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルム。
[8]複数の透明基材の間に、前記[1]~[7]のいずれかに記載のポリビニルアセタール樹脂フィルムが挟持されてなる、積層体。
[9]さらに可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を含む、前記[8]に記載の積層体。
[10]前記透明基材がガラスである、前記[8]または[9]に記載の積層体。
[11]前記[8]~[10]のいずれかに記載の積層体からなる乗物用ガラス。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロール状に巻回した際に経時的なフィルムロールの端面ずれや自着を生じ難く、また、ロールから巻き出した時に均一な表面を有する、低可塑または無可塑のポリビニルアセタール樹脂フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0009】
<ポリビニルアセタール樹脂フィルム>
本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムの一方の面の十点平均粗さRz値は2μm未満であり、該表面の摩擦角は31°より大きく40°以下であり、他方の面の十点平均粗さRz値は2μm以上7μm以下であり、該表面の摩擦角は20°以上31°以下である。合わせガラス用中間膜に用いられるような従来のポリビニルアセタール樹脂フィルムは、一般的にその両表面が同じような表面形状を有するが、本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムは、一方の面と他方の面とが互いに異なる表面形状を有する。これにより、製膜後の長尺のフィルムをロール状に巻回する際に隣接する樹脂フィルムの一方の面と他方の面との間に微細な空隙が生じ、フィルム同士の密着性が適度に低下するため経時的な自着を抑制することができる。また、フィルム同士の自着や空気の巻込みによるロールじわの発生を抑制することができ、巻き出し時に均一な表面を有するフィルムロールを得ることができる。さらに、樹脂フィルムの表面粗さを制御するとともに摩擦角を制御することにより、巻回時に隣接するフィルム同士が適度な密着性をもって接するため、フィルム同士のずれや自着を抑制し、経時的な端面ずれの発生を抑制することができる。
【0010】
本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムの一方の面の十点平均粗さRz値は2μm未満である。本発明において2μm未満の十点平均粗さを有する表面は比較的滑らかな表面となる(以下、フィルム表面のうち滑らかな面の十点平均粗さを「Rz1」ともいう)。Rz1が2μm以上であると、樹脂フィルムをロール状に巻回する際に2μm以上7μm以下の十点平均粗さRz値を有する比較的粗い他方の面(以下、フィルム表面のうち粗い面の十点平均粗さを「Rz2」ともいう)との間に適度な空隙が生じ難く、ロールじわの発生や自着を抑制しにくくなる。本発明において、Rz1は、好ましくは1.8μm以下、より好ましくは1.6μm以下である。その下限は特に限定されるものではなく0.1μmであってよいが、通常0.2μm以上である。
なお、樹脂フィルム表面の十点平均粗さは、表面粗さ計またはレーザー顕微鏡を用いて、JIS B0601-1994に準拠して測定することができる。接触式の表面粗さ計による測定が好ましい。具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0011】
本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムの他方の面の十点平均粗さRz値(Rz2)は2μm以上7μm以下である。Rz2が2μm未満であると、Rz1が2μm未満である一方の面との密着性が高くなり、ロールじわや自着が生じやすくなり、巻出し時に均一な表面が得られにくくなる。また、Rz2が7μmを超えると、一方の面との間の密着性が低下し、フィルムロールの端面ずれが生じやすくなる。本発明において、Rz2は、好ましくは2.5μm以上、より好ましくは3μm以上であり、好ましくは6.5μm以下、より好ましくは6μm以下、さらに好ましくは5.5μm以下である。
【0012】
本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムにおいて、一方の面の十点平均粗さRz値(Rz1)と他方の面の十点平均粗さRz値(Rz2)との差分絶対値は1μm以上5μm以下であることが好ましい。一方の面と他方の面の十点平均粗さの差分絶対値が上記範囲であると、樹脂フィルムの一方の面と他方の面の表面形状が互いに異なり、樹脂フィルムをロール状に巻回する際に隣接するフィルム間に適度な空隙が生じ、ロールじわや保管時の自着が抑制されるとともに、フィルム同士が適度な密着性を有するため経時的な端面ずれを効果的に抑制できる。本発明において、上記十点平均粗さの差分絶対値は、好ましくは1.5μm以上、より好ましくは2μm以上であり、また、好ましくは4.5μm以下である。
【0013】
本発明において、ポリビニルアセタール樹脂フィルムの十点平均粗さは、例えば、ポリビニルアセタール樹脂材料を溶融押出法により製膜する際に用いるロールの表面形状やロールの材質を制御する、溶融押出成形する際のプレス圧を制御する、エンボス加工の条件(樹脂フィルム温度およびロール表面温度の等)を制御する、適当なポリビニルアセタール樹脂材料を選択するなどの方法により調整することができる。
【0014】
本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムにおいて、2μm未満の十点平均粗さを有する方の表面(以下、「表面1」ともいう)の摩擦角は31°より大きく40°以下である。表面1の摩擦角が31°以下であると、摩擦角が20°以上31°以下である他方の面(以下、「表面2」ともいう)との密着性が強くなり、ロール状に巻回した際に自着を生じやすくなる。また、表面1の摩擦角が40°より大きいと、表面2との密着性が低下して端面ずれを生じやすくなる傾向にある。本発明において、表面1の摩擦角は、好ましくは39°以下、より好ましくは38°以下である。
なお、樹脂フィルム表面の摩擦角は、一般的な摩擦測定器を用いて、JIS P 8147に準拠して測定できる。具体的には、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0015】
本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムにおいて、2μm以上7μm以下の十点平均粗さを有する方の表面2の摩擦角は20°以上31°以下である。表面2の摩擦角が20°未満であると、表面1との密着性が強くなり、ロール状に巻回した際に自着を生じやすくなる。また、表面2の摩擦角が31°より大きいと、表面1との密着性が低下して端面ずれを生じやすくなる傾向にある。本発明において、表面2の摩擦角は、好ましくは23°以上、より好ましくは24°以上であり、また、好ましくは30°以下である。
【0016】
本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムにおいて、一方の面(表面1)の摩擦角と他方の面(表面2)の摩擦角との差分絶対値が2°以上10°以下であることが好ましい。表面1と表面2の摩擦角の差分絶対値が上記範囲であると、樹脂フィルムをロール状に巻回する際に隣接するフィルム同士が適度な密着性をもって接するため、経時的な端面ずれの発生を効果的に抑制し得るとともに、保管時の自着を抑制することができ、巻出し時に均一な表面が得られやすくなる。本発明において、上記摩擦角の差分絶対値は、好ましくは2.5°以上、より好ましくは3°以上であり、また、好ましくは9°以下、より好ましくは8°以下である。
【0017】
本発明において、ポリビニルアセタール樹脂フィルムの摩擦角は、例えば、ポリビニルアセタール樹脂材料を溶融押出法により製膜する際に用いるロールの表面形状やロールの材質を制御する、溶融押出成形する際のプレス圧を制御する、エンボス加工の条件(樹脂フィルム温度およびロール表面温度等)を制御する、適当なポリビニルアセタール樹脂材料を選択するなどの方法により調整することができる。
【0018】
本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムの厚みは10~350μmである。厚みが10μm未満であると、ポリビニルアセタール樹脂フィルムの収縮や変形が生じやすくなる。また、厚みが350μmより大きいと、本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムに隣接して可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を貼合した場合に、該可塑化ポリビニルアセタール樹脂層から本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムへの可塑剤移行量が多くなり、積層体の耐貫通性が低下しやすくなり、例えば乗物用ガラスとして該積層体を用いた場合の衝突時の頭部衝撃の低減効果を十分に得ることが難しくなる。ポリビニルアセタール樹脂フィルムの厚みは、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上であり、また、好ましくは330μm以下、より好ましくは295μm以下、より好ましくは270μm以下、より好ましくは250μm以下、より好ましくは150μm以下、より好ましくは120μm以下、最も好ましくは100μm未満である。ポリビニルアセタール樹脂フィルムの厚みが前記下限値以上かつ前記上限値以下であると、上述した問題が生じ難く、かつ、良好な製膜性が得られやすい。
なお、ポリビニルアセタール樹脂フィルムの厚みは、例えば厚さ計またはレーザー顕微鏡等を用いて測定できる。
【0019】
(ポリビニルアセタール樹脂)
本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムは、ポリビニルアセタール樹脂を含むポリビニルアセタール樹脂材料から構成される。ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールまたはエチレンビニルアルコールコポリマー等のポリビニルアルコール系樹脂のアセタール化によって製造される樹脂である。なお、本発明において「ポリビニルアセタール樹脂材料」には、ポリビニルアセタール樹脂からなるもの、および、ポリビニルアセタール樹脂を含む樹脂組成物からなるもののいずれもが含まれる。
【0020】
本発明におけるポリビニルアセタール樹脂フィルムに含まれるポリビニルアセタール樹脂は、1つのポリビニルアセタール樹脂であるか、または粘度平均重合度、アセタール化度、酢酸ビニル単位含有量、ビニルアルコール単位含有量、エチレン単位含有量、アセタール化に用いられるアルデヒドの分子量、および鎖長のうちいずれか1つ以上がそれぞれ異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂であってよい。ポリビニルアセタール樹脂フィルムが異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、溶融成形の容易性の観点、並びに合わせガラスに機能性層等を設ける場合の変形および合わせガラス使用時のガラスのずれ等を防ぎやすい観点から、ポリビニルアセタール樹脂は、粘度平均重合度の異なる少なくとも2つのポリビニルアセタール樹脂の混合物であるか、または粘度平均重合度の異なる少なくとも2つのポリビニルアルコール系樹脂の混合物のアセタール化物であることが好ましい。
【0021】
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、好ましくは40モル%以上、より好ましくは45モル%以上、さらに好ましくは50モル%以上、さらにより好ましくは60モル%以上、特に好ましくは68モル%以上であり、好ましくは86モル%以下、より好ましくは84モル%以下、さらに好ましくは82モル%以下である。アセタール化度は、ポリビニルアセタール樹脂の製造原料であるポリビニルアルコール系樹脂中の主鎖の炭素2個からなる単位(例えば、ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位、エチレン単位等)を一繰返し単位とし、その一繰返し単位を基準とした、アセタールを形成する上記単位の量である。アセタール化度が前記した下限値と上限値との範囲内であると、得られるポリビニルアセタール樹脂フィルムの力学的強度が十分なものになりやすく、ポリビニルアセタール樹脂と可塑剤との相溶性が良好になりやすいため好ましい。ポリビニルアセタール樹脂フィルムが異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度が、前記した下限値と上限値との範囲内であることが好ましい。また、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度は、耐水性の観点からは65モル%以上であることが好ましい。アセタール化度は、アセタール化反応におけるアルデヒドの使用量を調整することにより調整できる。
【0022】
ポリビニルアセタール樹脂の酢酸ビニル単位含有量は、好ましくは0.1モル%以上、より好ましくは0.3モル%以上であり、さらに好ましくは0.5モル%以上であり、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下であり、特に好ましくは0.5~3モル%または5~8モル%である。酢酸ビニル単位の含有量は、ポリビニルアセタール樹脂の製造原料であるポリビニルアルコール系樹脂中の主鎖の炭素2個からなる単位(例えば、ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位、エチレン単位等)を一繰返し単位とし、その一繰返し単位を基準とした酢酸ビニル単位の量である。酢酸ビニル単位含有量は、ポリビニルアセタール樹脂の極性に影響を及ぼし得、それによってポリビニルアセタール樹脂フィルムの可塑剤相溶性または機械的強度が変化し得る。酢酸ビニル単位含有量が前記した下限値と上限値との範囲内であると、場合により隣接して積層される可塑化ポリビニルアセタール樹脂層との良好な接合、および光学歪の低減等が達成されやすい。ポリビニルアセタール樹脂フィルムが異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂の酢酸ビニル単位含有量が、前記範囲内であることが好ましい。酢酸ビニル単位の含有量は、原料のポリビニルアルコール系樹脂のケン化度を適宜調整することにより調整できる。
【0023】
ポリビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位含有量は、好ましくは9~36モル%、より好ましくは18~34モル%、さらに好ましくは22~34モル%、さらにより好ましくは26~34モル%、特に好ましくは26~31モル%、特により好ましくは26~30モル%である。ビニルアルコール単位含有量は、ポリビニルアセタール樹脂の製造原料であるポリビニルアルコール系樹脂中の主鎖の炭素2個からなる単位(例えば、ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位、エチレン単位等)を一繰返し単位とし、その一繰返し単位を基準としたビニルアルコール単位の量である。ビニルアルコール単位含有量が前記範囲内であると、場合により隣接して積層される可塑化ポリビニルアセタール樹脂フィルムとの屈折率差が小さくなり、光学むらの少ない合わせガラスを得やすい。一方で、さらに遮音性能を合わせて付与するために好ましいビニルアルコール単位含有量は9~29モル%、より好ましくは12~26モル%、さらに好ましくは15~23モル%、特に好ましくは16~20モル%である。ポリビニルアセタール樹脂フィルムが異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位含有量が、前記範囲内であることが好ましい。ビニルアルコール単位含有量は、アセタール化反応におけるアルデヒドの使用量を調整することにより前記範囲内に調整できる。
【0024】
ポリビニルアセタール樹脂は通常、アセタールを形成する単位、ビニルアルコール単位および酢酸ビニル単位から構成されており、これらの各単位量は、例えばJIS K6728「ポリビニルブチラール試験方法」または核磁気共鳴法(NMR)によって測定される。
【0025】
本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成するポリビニルアセタール樹脂材料中のポリビニルアセタール樹脂の、ブルックフィールド型(B型)粘度計を用いて20℃、30rpmで測定された、濃度10質量%のトルエン/エタノール=1/1(質量比)溶液の粘度は、100~1000mPa・sである。前記粘度が100mPa・sより小さいと、ポリビニルアセタール樹脂フィルムを合わせガラスとして用いた際に十分な耐熱性を確保することが難しく、1000mPa・sより大きいと良好な製膜性を得にくい。
【0026】
本発明の一態様において、ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成するポリビニルアセタール樹脂の、ブルックフィールド型(B型)粘度計を用いて20℃、30rpmで測定された、濃度10質量%のトルエン/エタノール=1/1(質量比)溶液の粘度は、好ましくは300mPa・s以下、より好ましくは250mPa・s以下、さらに好ましくは200mPa・s以下、特に好ましくは180mPa・s以下である。前記粘度が前記上限値以下であると、該ポリビニルアセタール樹脂フィルムを用いて合わせガラスを作製した場合に加熱温度または加熱時間を所望の範囲としやすく、ポリビニルアセタール樹脂の未溶融部が残りにくくなるため、ポリビニルアセタール樹脂フィルムの黄変が起こりにくい。上記粘度が好適である具体的な例としては、ポリビニルアセタール樹脂フィルムと可塑化ポリビニルアセタール樹脂層との間のほぼ全面に、無機物層、或いは可塑剤を浸透させにくい樹脂層、例えばポリエステル樹脂またはポリオレフィン系樹脂等を含んでなる機能性層が形成されている場合等が挙げられる。かかる態様における上記粘度の下限値は、ポリビニルアセタール樹脂の未溶融部のない合わせガラスが得られやすい観点から、好ましくは100mPa・s以上、より好ましくは120mPa・s以上、特に好ましくは150mPa・s以上である。
【0027】
また、本発明の別の一態様において、ポリビニルアセタール樹脂材料中のポリビニルアセタール樹脂の、ブルックフィールド型(B型)粘度計を用いて20℃、30rpmで測定された、濃度10質量%のトルエン/エタノール=1/1(質量比)溶液の粘度は、好ましくは200mPa・sより大きく、より好ましくは210mPa・s以上、さらに好ましくは220mPa・s以上、さらにより好ましくは230mPa・s以上、特に好ましくは240mPa・s以上、特により好ましくは265mPa・s以上である。ポリビニルアセタール樹脂の前記粘度が前記下限値以上であると、高温になってもガラスがずれにくい合わせガラスが得られやすく、例えば機能性層や導電体などの構造体を積層した場合にもこれらの変形および破壊を十分に抑制することができる。かかる態様における上記粘度の上限値は、良好な製膜性が得られやすい観点から、通常は1000mPa・s以下、好ましくは800mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下、さらに好ましくは450mPa・s以下、特に好ましくは400mPa・s以下である。
【0028】
前記粘度は、粘度平均重合度の高いポリビニルアルコール系樹脂を原料または原料の一部として用いて製造したポリビニルアセタール樹脂を使用または併用することにより調整できる。ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成するために使用されるポリビニルアセタール樹脂が複数の樹脂の混合物からなる場合、前記粘度は、そのような混合物の粘度である。
【0029】
前記ポリビニルアセタール樹脂材料中のポリビニルアセタール樹脂のピークトップ分子量は、好ましくは115,000~200,000、より好ましくは120,000~160,000、特に好ましくは130,000~150,000である。ポリビニルアセタール樹脂のピークトップ分子量が前記範囲内であると、好適なフィルム製膜性および好適なフィルム物性(例えば、ラミネート適性、耐クリープ性および破断強度)が得られやすい。前記ピークトップ分子量は、粘度平均重合度の高いポリビニルアルコール系樹脂を原料または原料の一部として用いて製造したポリビニルアセタール樹脂を使用または併用することにより調整できる。
【0030】
前記ポリビニルアセタール樹脂材料中のポリビニルアセタール樹脂の分子量分布、即ち重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは2.7以上、より好ましくは2.8以上、特に好ましくは2.9以上である。ポリビニルアセタール樹脂の分子量分布が前記下限値以上であると、製膜性および好適なフィルム物性(例えば、ラミネート適性、耐クリープ性および破断強度)を両立させやすい。前記分子量分布は、粘度平均重合度の異なるポリビニルアルコール系樹脂の混合物をアセタール化したり、粘度平均重合度の異なるポリビニルアルコール系樹脂のアセタール化物を混合したりすることにより調整できる。分子量分布の上限値は特に限定されなるものではないが、製膜しやすさの観点から、通常は10以下、好ましくは5以下である。
【0031】
前記ポリビニルアセタール樹脂材料が異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂のピークトップ分子量および分子量分布が、上記範囲内であることが好ましい。
なお、ピークトップ分子量および分子量分布は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、分子量既知のポリスチレンを標準として求められる。
【0032】
本発明に用いられるポリビニルアセタール樹脂は、従来公知の方法により製造でき、代表的には、ポリビニルアルコール系樹脂(例えばポリビニルアルコール樹脂またはエチレンビニルアルコールコポリマー)をアルデヒドによりアセタール化することによって製造できる。限定されるものではないが、具体的には例えば、濃度3~30質量%のポリビニルアルコールまたはエチレンビニルアルコールコポリマーの水溶液を80~100℃の温度範囲で保持した後、10~60分かけて徐々に冷却し、温度が-10~30℃まで低下したところで、アルデヒドおよび酸触媒を添加し、温度を一定に保ちながら、30~300分間アセタール化反応を行う。次に、反応液を30~200分かけて20~80℃の温度まで昇温し、30~300分保持した後、反応液を必要に応じて濾過した後、アルカリ等の中和剤を添加して中和し、樹脂を濾過、水洗および乾燥することにより、本発明に使用し得るポリビニルアセタール樹脂を製造できる。
【0033】
アセタール化反応に用いる酸触媒は特に限定されず、有機酸および無機酸のいずれも使用できる。そのような酸触媒の例として、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸および塩酸等が挙げられる。これらの中でも、酸の強度および洗浄時の除去のしやすさの観点から、塩酸、硫酸および硝酸が好ましく用いられる。
【0034】
好適な破断エネルギーを有するポリビニルアセタール樹脂が得られやすい観点から、ポリビニルアセタール樹脂の製造に使用されるアルデヒドまたはケト化合物は、2~10個の炭素原子を有する直鎖状、分岐状または環状化合物であることが好ましく、直鎖状または分岐状化合物であることがより好ましい。これにより、相応の直鎖状または分岐状のアセタール基がもたらされる。また、本発明において使用されるポリビニルアセタール樹脂は、複数のアルデヒドまたはケト化合物の混合物により、ポリビニルアルコールまたはエチレンビニルアルコールコポリマーをアセタール化して得られるアセタール化物であってもよい。
【0035】
本発明において使用されるポリビニルアセタール樹脂は、少なくとも1つのポリビニルアルコール系樹脂と、2~10個の炭素原子を有する1つ以上の脂肪族非分岐のアルデヒドとの反応により生じるものであることが好ましい。そのようなアルデヒドとしては、好適な破断エネルギーを有するポリビニルアセタール樹脂が得られやすい観点から、n-ブチルアルデヒドが好ましい。アセタール化に使用するアルデヒドにおけるn-ブチルアルデヒドの含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは99質量%以上であり、100質量%であってもよい。本発明の好ましい一態様において、ポリビニルアセタール樹脂はポリビニルブチラール樹脂である。
【0036】
ポリビニルアセタール樹脂を製造するために使用されるポリビニルアルコール系樹脂は、単独であるか、または粘度平均重合度若しくは加水分解度等が異なるポリビニルアルコール系樹脂の混合物であってよい。
【0037】
ポリビニルアセタール樹脂の原料となるポリビニルアルコール系樹脂の粘度平均重合度は、好ましくは100以上、より好ましくは300以上、さらに好ましく400以上、さらにより好ましくは600以上、特に好ましくは700以上、特により好ましくは750以上である。ポリビニルアルコール系樹脂の粘度平均重合度が前記下限値以上であると、合わせガラスの作製時に機能性層の変形および破壊を抑制しやすく、得られる合わせガラスにおいて熱によりガラスがずれる現象を防止し得る。また、ポリビニルアルコール系樹脂の粘度平均重合度は、好ましくは5000以下、より好ましくは3000以下、さらに好ましくは2500以下、特に好ましくは2300以下、特により好ましくは2000以下である。ポリビニルアルコール系樹脂の粘度平均重合度が前記上限値以下であると、良好な製膜性を得やすい。
【0038】
なお、ポリビニルアセタール樹脂の好ましい粘度平均重合度の値は、上記したポリビニルアルコール系樹脂の好ましい粘度平均重合度の値と同一である。ポリビニルアセタール樹脂フィルムが異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂を含む場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂の粘度平均重合度が、前記下限値以上かつ前記上限値以下であることが好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の粘度平均重合度は、JIS K 6726「ポリビニルアルコール試験方法」に基づいて測定することができる。
【0039】
ポリビニルアセタール樹脂フィルムは、良好な製膜性を得やすい観点から、未架橋のポリビニルアセタールを含むことが好ましい。ポリビニルアセタール樹脂フィルムが、架橋されたポリビニルアセタールを含むことも可能である。ポリビニルアセタールを架橋するための方法は、例えば、EP 1527107B1およびWO 2004/063231 A1(カルボキシル基含有ポリビニルアセタールの熱自己架橋)、EP 1606325 A1(ポリアルデヒドにより架橋されたポリビニルアセタール)、およびWO 2003/020776 A1(グリオキシル酸により架橋されたポリビニルアセタール)に記載されている。また、アセタール化反応条件を適宜調整することで、生成する分子間アセタール結合量をコントロールしたり、残存水酸基のブロック化度をコントロールしたりすることも有用な方法である。
【0040】
(可塑剤)
本発明において、ポリビニルアセタール樹脂フィルム中の可塑剤の量は、ポリビニルアセタール樹脂フィルムの総質量に基づいて0~20質量%である。前記可塑剤量が20質量%を超えると、良好な製膜性が得にくくなる。また、特に高温環境下で樹脂フィルムが変形しやすくなる傾向にあるため、例えば機能性層をポリビニルアセタール樹脂フィルムに付与し積層して合わせガラスを作製する場合、良好な機能性を発揮し得なくなる。可塑剤量を少なくするまたは可塑剤を配合しないことにより、ポリビニルアセタール樹脂フィルムは、成膜性および取扱性に優れる傾向にあるが、同時に低可塑または無可塑のポリビニルアセタール樹脂フィルムでは、ロールじわが発生しやすくなる傾向にある。本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムでは、樹脂フィルムの両表面の十点平均粗さおよび摩擦角が上記特定の関係になるよう制御することにより、樹脂フィルムの一方の面と他方の面とが異なる表面形状を有する。このため、可塑剤量が少ないことに起因して本来ロールじわが生じやすい樹脂フィルムであっても、隣接する樹脂フィルム間に適度な空隙を生じ、ロールじわの発生を効果的に抑制することができ、フィルムを巻き出した際に均一なフィルム表面が得られやすい。したがって、比較的滑らかな面(表面1)に機能性層等を積層することにより、機能性層の経時的な変形および破壊を生じ難い合わせガラスを得ることができ、本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムは、機能性層等を有する合わせガラス用の樹脂フィルムとして好適に使用し得る。
【0041】
前記可塑剤量は、ポリビニルアセタール樹脂フィルムの総質量に基づいて好ましくは0~19質量%、より好ましくは0~15質量%、さらに好ましくは0~10質量%、特に好ましくは0~5質量%である。ポリビニルアセタール樹脂フィルム中の可塑剤の量が前記範囲内であると、ポリビニルアセタール樹脂フィルムの製膜性および取扱性が優れる傾向にあり、また、機能性層等を有する合わせガラスの作製に好適に使用し得る樹脂フィルムとなる。
【0042】
ポリビニルアセタール樹脂フィルム中に可塑剤が含まれる場合、可塑剤として、好ましくは、下記群の1つまたは複数の化合物が使用される。
・多価の脂肪族または芳香族酸のエステル。例えば、ジアルキルアジペート(例えば、ジヘキシルアジペート、ジ-2-エチルブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルアジペート、ヘキシルシクロヘキシルアジペート、ジヘプチルアジペート、ジノニルアジペート、ジイソノニルアジペート、ヘプチルノニルアジペート);アジピン酸とアルコール若しくはエーテル化合物を含むアルコールとのエステル(例えば、ジ(ブトキシエチル)アジペート、ジ(ブトキシエトキシエチル)アジペート);ジアルキルセバケート(例えば、ジブチルセバケート);セバシン酸と脂環式若しくはエーテル化合物を含むアルコールとのエステル;フタル酸のエステル(例えば、ブチルベンジルフタレート、ビス-2-ブトキシエチルフタレート);および脂環式多価カルボン酸と脂肪族アルコールとのエステル(例えば、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸ジイソノニルエステル)が挙げられる。
・多価の脂肪族若しくは芳香族アルコールまたは1つ以上の脂肪族若しくは芳香族置換基を有するオリゴエーテルグリコールのエステルまたはエーテル。例えば、グリセリン、ジグリコール、トリグリコール、テトラグリコール等と、直鎖状若しくは分岐状の脂肪族若しくは脂環式カルボン酸とのエステルが挙げられる。具体的には、ジエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)(以下において、「3GO」と称することもある)、トリエチレングリコール-ビス-(2-エチルブタノエート)、テトラエチレングリコール-ビス-n-ヘプタノエート、トリエチレングリコール-ビス-n-ヘプタノエート、トリエチレングリコール-ビス-n-ヘキサノエート、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、およびジプロピレングリコールジベンゾエートが挙げられる。
・脂肪族または芳香族アルコールのリン酸エステル。例えば、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニル-2-エチルヘキシルホスフェート、およびトリクレジルホスフェートが挙げられる。
・クエン酸、コハク酸および/またはフマル酸のエステル。
【0043】
また、多価アルコールと多価カルボン酸とからなるポリエステル若しくはオリゴエステル、これらの末端エステル化物若しくはエーテル化物、ラクトン若しくはヒドロキシカルボン酸からなるポリエステル若しくはオリゴエステル、またはこれらの末端エステル化物若しくはエーテル化物等を可塑剤として用いてもよい。
【0044】
ポリビニルアセタール樹脂フィルム中に可塑剤が含まれる場合、該ポリビニルアセタール樹脂フィルムと積層され得る可塑化ポリビニルアセタール樹脂層との間で可塑剤が移行することに伴う問題(例えば、経時的な物性変化等の問題)を抑制する観点から、積層する可塑化ポリビニルアセタール樹脂層に含まれるものと同じ可塑剤、または該可塑化ポリビニルアセタール樹脂層の物性(例えば、耐熱性、耐光性、透明性および可塑化効率)を損なわない可塑剤を使用することが好ましい。このような観点から、可塑剤として、トリエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコール-ビス(2-エチルブタノエート)、テトラエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)、テトラエチレングリコール-ビスヘプタノエートが含まれることが好ましく、トリエチレングリコール-ビス-(2-エチルヘキサノエート)が含まれることが特に好ましい。
【0045】
さらに、本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムは、別の添加剤を含んでいてよい。そのような添加剤としては、例えば、水、紫外線吸収剤、酸化防止剤、接着調整剤、増白剤若しくは蛍光増白剤、安定剤、色素、加工助剤、耐衝撃性改良剤、流動性改良剤、架橋剤、顔料、発光材料、屈折率調整剤、遮熱材料、有機若しくは無機ナノ粒子、焼成ケイ酸および表面活性剤等が挙げられる。
【0046】
ポリビニルアセタール樹脂フィルム中のゲルの量を少なくすることにより、ポリビニルアセタール樹脂フィルム上に凸状欠陥が生じにくくなり、Rz値を比較的低い範囲に制御しやすくなる。ポリビニルアセタール樹脂フィルム中のゲルの量を少なくするためには、ポリビニルアセタール樹脂のペレット化時や製膜時のゲルの生成を抑制することが有用であり、そのためには、酸化防止剤等の安定化剤を、ポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成するポリビニルアセタール樹脂材料に添加することが有用である。
【0047】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤および硫黄系酸化防止剤等が挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤が好ましく、アルキル置換フェノール系酸化防止剤が特に好ましい。
【0048】
フェノール系酸化防止剤の例としては、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、および2,4-ジ-t-アミル-6-(1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレート等のアクリレート系化合物、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、オクタデシル-3-(3,5-)ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス(6-t-ブチル-m-クレゾール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ビス(3-シクロヘキシル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メタン、3,9-ビス(2-(3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ)-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、およびトリエチレングリコールビス(3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート)等のアルキル置換フェノール系化合物、6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-2,4-ビス-オクチルチオ-1,3,5-トリアジン、6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルアニリノ)-2,4-ビス-オクチルチオ-1,3,5-トリアジン、6-(4-ヒドロキシ-3-メチル-5-t-ブチルアニリノ)-2,4-ビス-オクチルチオ-1,3,5-トリアジン、および2-オクチルチオ-4,6-ビス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-オキシアニリノ)-1,3,5-トリアジン等のトリアジン基含有フェノール系化合物等が挙げられる。
【0049】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2-t-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、および10-デシロキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン等のモノホスファイト系化合物、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジ-トリデシルホスファイト)、4,4’-イソプロピリデン-ビス(フェニル-ジ-アルキル(C12~C15)ホスファイト)、4,4’-イソプロピリデン-ビス(ジフェニルモノアルキル(C12~C15)ホスファイト)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ジ-トリデシルホスファイト-5-t-ブチルフェニル)ブタン、およびテトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンホスファイト等のジホスファイト系化合物等が挙げられる。これらの中でもモノホスファイト系化合物が好ましい。
【0050】
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル3,3-チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス-(β-ラウリル-チオプロピオネート)、および3,9-ビス(2-ドデシルチオエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。
【0051】
これらの酸化防止剤は単独で、或いは2種以上を組み合わせて用いることができる。酸化防止剤の添加量は、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.01質量部以上である。酸化防止剤の量が前記下限値以上であると、ポリビニルアセタール樹脂の分解等によるゲルの生成が効果的に抑制されやすい。また、酸化防止剤の添加量は、ポリビニルアセタール樹脂100質量部に対して、通常は5質量部以下、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下である。酸化防止剤の添加量は5質量部より多くしてもよいが、ゲル生成抑制に関する格段の効果は望めない。
【0052】
また、ポリビニルアセタール樹脂の酸化劣化を防止するために、ポリビニルアセタール樹脂フィルムの製造工程の少なくとも一部を窒素雰囲気下で行うこと、例えば、押出機を用いてポリビニルアセタール樹脂フィルムを製造する際にフィード口および吐出口付近を窒素置換することも好ましい。
【0053】
その他の安定化剤としては、紫外線吸収剤、紫外線遮蔽剤および光安定剤等が挙げられる。
【0054】
紫外線吸収剤としては、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、および2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロネート、および4-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)-1-(2-(3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ)エチル)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等のヒンダードアミン系紫外線吸収剤、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、およびヘキサデシル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤、およびマロン酸エステル系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0055】
マロン酸エステル系紫外線吸収剤としては、2-(p-メトキシベンジリデン)マロン酸ジメチル、テトラエチル-2,2-(1,4-フェニレンジメチリデン)ビスマロネート、および2-(p-メトキシベンジリデン)-ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル4-ピペリジニル)マロネート等が挙げられる。市販のマロン酸エステル系紫外線吸収剤を使用してもよく、その例としては、Hostavin B-CAP、Hostavin PR-25、およびHostavin PR-31(いずれもクラリアント社製)が挙げられる。
【0056】
紫外線遮蔽剤としては、シュウ酸アニリド化合物、例えば、N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシ-5-t-ブチルフェニル)シュウ酸ジアミド、N-(2-エチルフェニル)-N’-(2-エトキシ-フェニル)シュウ酸ジアミド、および2-エチル-2’-エトキシ-オキシアニリド(クラリアント社製「SanduvorVSU」)等の窒素原子上に置換されたアリール基等を有するシュウ酸ジアミド類等が挙げられる。
【0057】
紫外線吸収剤または紫外線遮蔽剤の添加量は、ポリビニルアセタール樹脂フィルムに含まれるポリビニルアセタール樹脂に対して質量基準で、好ましくは10ppm以上、より好ましくは100ppm以上である。紫外線吸収剤または紫外線遮蔽剤の添加量が前記下限値以上であると、充分な効果が発揮されやすい。また、紫外線吸収剤または紫外線遮蔽剤の添加量は、ポリビニルアセタール樹脂フィルムに含まれるポリビニルアセタール樹脂に対して質量基準で、通常は50,000ppm以下、好ましくは10,000ppm以下である。紫外線吸収剤または紫外線遮蔽剤の添加量を50,000ppmより多くしてもよいが、ゲル生成抑制に関する格段の効果は望めない。
紫外線吸収剤または紫外線遮蔽剤は、単独で、または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0058】
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤を使用でき、その市販品の例としては、株式会社ADEKA製「アデカスタブLA-57(商品名)」が挙げられる。
【0059】
本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルム中のポリビニルアセタール樹脂の量は、ポリビニルアセタール樹脂フィルムの総質量に基づいて75質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、85質量%以上がさらに好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上が特に好ましい。ポリビニルアセタール樹脂フィルム中のポリビニルアセタール樹脂の量が前記範囲内であると、透明性、製膜性および取扱性に優れたポリビニルアセタール樹脂フィルムを製造しやすく、また、機能性層等を有する合わせガラスの作製に好適に使用し得る樹脂フィルムとなる。
【0060】
本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムは、多成分による層分離構造を有していてもよいが、層分離構造は島成分の平均粒径が100nm未満であることが好ましく、80nm未満であることがより好ましく、海島の層分離構造を示さないことが特に好ましい。海島の層分離構造を示さないか、十分に細かい粒径を示すことにより、車のフロントガラスなどにも使用可能な透明性を確保できる。
【0061】
(ポリビニルアセタール樹脂フィルムの製造方法)
ポリビニルアセタール樹脂フィルムの製造方法は特に限定されない。前記ポリビニルアセタール樹脂、場合により所定量の可塑剤、および必要に応じて他の添加剤を配合し、これを均一に混練した後、押出法、カレンダー法、プレス法、キャスティング法、インフレーション法等の公知の製膜方法によりフィルム状に成形することで作製し得る。
【0062】
公知の製膜方法の中でも特に押出機を用いてフィルムを製造する方法が好適に採用される。押出時の樹脂温度は150~250℃が好ましく、170~230℃がより好ましい。樹脂温度が高くなりすぎるとポリビニルアセタール樹脂が分解を起こし、揮発性物質の含有量が多くなる。一方で温度が低すぎる場合にも、揮発性物質の含有量は多くなる。揮発性物質を効率的に除去するためには、押出機のベント口から、減圧により揮発性物質を除去することが好ましい。
【0063】
溶融押出において、表面形状や材質の異なる冷却ロールを用いることにより、樹脂フィルム表面の十点平均粗さおよび摩擦角を特定の範囲に制御することができる。例えば、平滑な面を形成するために、金属弾性ロールおよび金属剛体ロール等の鏡面金属冷却ロールに代表される平滑な(鏡面)冷却ロールを用いることができ、粗い面を形成するために、所望の表面形状(表面粗さ)に対応した金属製や硬質ゴム製等のエンボスロールを用いることができる。樹脂フィルムの各表面の十点平均粗さおよび摩擦角が上記特定の範囲となるよう、樹脂フィルムの両表面の表面形状を制御するためにこれらのロールを適宜選択し、Tダイから押出した樹脂材料を製膜することが好ましい。例えば、押出した樹脂材料をニップするロール対の一方を鏡面ロールに、他方を凹凸を形成するのに適したエンボスロールにすることで、平滑な面と比較的粗い面とを有する樹脂フィルムを得ることができる。
【0064】
ポリビニルアセタール樹脂フィルムの両表面の表面形状を制御しやすく、上記特定の十点平均粗さおよび摩擦角を得やすい観点から、製膜時のロール対の少なくとも一方に弾性ロールを用いることが好ましく、金属弾性ロールを用いることがより好ましい。また、同様の観点から、冷却ロールから剥離する際のポリビニルアセタール樹脂フィルムの温度は、ポリビニルアセタール樹脂フィルムに含まれるポリビニルアセタール樹脂のガラス転移温度より、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは15℃以上、特に好ましくは20℃以上低いことが好ましい。冷却ロールから剥離する際のポリビニルアセタール樹脂フィルムの温度と上記ガラス転移温度とが上記関係を満たすと、冷却ロールからの剥離時のポリビニルアセタール樹脂フィルムの粘着性に起因する表面荒れ、またはフィルムの収縮等に起因する厚さむらが低減されやすい。なお、ポリビニルアセタール樹脂フィルムに含まれるポリビニルアセタール樹脂が異なる2つ以上のポリビニルアセタール樹脂である場合、少なくとも1つのポリビニルアセタール樹脂のガラス転移温度と、冷却ロールの剥離点でのポリビニルアセタール樹脂フィルムの温度とが上記関係を満たすことが好ましい。
【0065】
本発明において、ポリビニルアセタール樹脂フィルムの表面の十点平均粗さおよび摩擦角は、いずれもフィルムの表面形状に影響を受けるものではあるが、十点平均粗さと摩擦角とは必ずしも一定の相関関係にあるものではない。したがって、本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムにおいては、各表面の十点平均粗さと摩擦角とを上記所定の範囲にそれぞれ制御することが重要である。
【0066】
本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムは、ロールから巻き出した際のフィルム表面の均一性に優れるため、機能性層等の他の層を積層した際の経時的な変形および破壊を抑制する効果に優れており、機能性層を積層するための樹脂フィルムとして好適である。機能性層は、合わせガラスなどの積層体に特定の機能を付与する層を意味し、例えば、導電層、赤外線反射層または紫外線反射層のような特定波長電磁波反射層、色補正層、赤外線吸収層、紫外線吸収層、蛍光・発光層、遮音層、エレクトロクロミック層、フォトクロミック層、サーモクロミック層、意匠性層および高弾性率層などが挙げられる。
【0067】
機能性層を設ける場合、本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムの表面のうち、表面粗さの小さい表面1に機能性層を設けることが好ましい。表面粗さの小さい方の面に機能性層を設けることにより、樹脂フィルムと機能性層との密着性が向上し、機能性層の経時的な変形や破壊が生じ難くなる。ポリビニルアセタール樹脂フィルムに複数の機能性層を設ける場合、機能性層の種類や目的により積層する面を適宜選択すればよいが、後述する積層体(合わせガラス)を形成する際に、本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムの表面2の面を透明基材と貼合することにより、合わせガラス等における発泡を効果的に抑制し得ることから、複数の機能性層はいずれも表面1の面側に設けることが好ましい。
【0068】
<積層体>
本発明は、複数の透明基材の間に、本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムを含む積層体に関する。
【0069】
前記透明基材は、透明性、耐候性および力学強度の観点から、好ましくは無機ガラス(以下、単にガラスと称することもある)、またはメタクリル樹脂シート、ポリカーボネート樹脂シート、ポリスチレン系樹脂シート、ポリエステル系樹脂シート、ポリイミド系樹脂シート、若しくはポリシクロオレフィン系樹脂シート等の有機ガラスであり、より好ましくは無機ガラス、メタクリル樹脂シートまたはポリカーボネート樹脂シートであり、特に好ましくは無機ガラスである。無機ガラスとしては特に制限されないが、フロートガラス、強化ガラス、半強化ガラス、化学強化ガラス、グリーンガラスまたは石英ガラス等が挙げられる。また、使用する透明基材の形状に特に制限はなく、単純な平面状の透明基材であっても、曲率を有する透明基材であってもよい。
【0070】
ポリビニルアセタール樹脂フィルムが機能性層を含む場合、積層体において、前記ポリビニルアセタール樹脂フィルムにおける機能性層は透明基材と接していてもよいし、後述する可塑化ポリビニルアセタール樹脂層等の他の層と接していてもよい。
【0071】
本発明において、積層体は可塑化ポリビニルアセタール樹脂層をさらに含んでいてもよい。可塑化ポリビニルアセタール樹脂層は、ポリビニルアセタール樹脂および可塑剤を含有する。可塑化ポリビニルアセタール樹脂層に含まれるポリビニルアセタール樹脂および可塑剤としては、本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成し得るものとして先に例示したものと同様のものを用いることができる。
【0072】
可塑化ポリビニルアセタール樹脂層における可塑剤の含有量は、層の積層前の初期状態では、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層の総質量に基づいて、好ましくは16.0質量%以上、より好ましくは16.1~36.0質量%、さらに好ましくは22.0~32.0質量%、特に好ましくは26.0~30.0質量%である。前記可塑剤含有量が前記範囲内であると、耐衝撃性に優れた合わせガラスが得られやすい。また、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層として、遮音機能を有する可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を用いることもできる。その場合、可塑剤の含有量は、層の積層前の初期状態では、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層の総質量に基づいて、好ましくは30質量%以上、より好ましくは30~50質量%、さらに好ましくは31~40質量%、特に好ましくは32~35質量%である。
【0073】
可塑化ポリビニルアセタール樹脂層は、必要に応じて、本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成する添加剤として例示したような添加剤を含有してよい。また、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層は、本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムと同様の方法により製造できる。
【0074】
可塑化ポリビニルアセタール樹脂層の厚みは、好ましくは100~1600μm、より好ましくは350~1200μm、さらに好ましくは700~900μmである。可塑化ポリビニルアセタール樹脂層の厚みが前記範囲内であると、優れた耐貫通性を得やすい。上記厚みは、厚み計またはレーザー顕微鏡等を用いて測定される。
【0075】
積層体が可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を有する場合、本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成するポリビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位の量と、前記可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を構成するポリビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位の量との差(積層前における差)は、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下、特に好ましくは1モル%以下である。本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成するポリビニルアセタール樹脂または可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を構成するポリビニルアセタール樹脂が複数の樹脂の混合物からなる場合、本発明のポリビニルアセタール樹脂層を構成するポリビニルアセタール樹脂の平均ビニルアルコール単位の量と、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層のポリビニルアセタール樹脂の平均ビニルアルコール単位の量とが、前記関係を満たしていることが好ましい。前記差が前記上限値以下であると、積層体において可塑剤が移行した後の平衡状態におけるポリビニルアセタール樹脂フィルムと可塑化ポリビニルアセタール樹脂層との屈折率差が小さくなることから、互いに寸法が異なる可塑化ポリビニルアセタール樹脂層とポリビニルアセタール樹脂フィルムとを使用した場合にその境界が視認しにくいため好ましい。
【0076】
一方、本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成するポリビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位の量と、前記可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を構成するポリビニルアセタール樹脂のビニルアルコール単位の量とに差をつけることで、可塑剤が移行した後の平衡状態においてポリビニルアセタール樹脂フィルムにおける可塑剤量と可塑化ポリビニルアセタール樹脂層における可塑剤量との間に差をつけ、遮音性能に優れる積層体を得ることも可能である。その場合、前記ビニルアルコール単位の量の差は好ましくは5モル%以上、より好ましくは8モル%以上である。
【0077】
可塑化ポリビニルアセタール樹脂層は市販の可塑化ポリビニルブチラールシートであってもよく、赤外線吸収能または反射能を持つナノ粒子が分散された可塑化ポリビニルアセタール樹脂層、着色された可塑化ポリビニルアセタール樹脂層、または遮音機能を有する可塑化ポリビニルアセタール樹脂層であってもよい。
【0078】
積層体は、当業者に公知の方法で製造できる。例えば、透明基材の上に本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムおよび場合により可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を任意の順で任意の枚数重ねて配置し、さらにもう一つの透明基材を重ねたものを、予備圧着工程として温度を高めることによってポリビニルアセタール樹脂フィルムおよび場合により可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を透明基材に全面または局所的に融着させ、次いでオートクレーブで処理することで、積層体を製造できる。また、本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルム、および場合により可塑化ポリビニルアセタール樹脂層等の積層体を構成する透明基材以外の層をあらかじめ予備接着した上で2つの透明基材の間に配置して高温で互いに融着させることにより、積層体を製造してもよい。
この際、透明基材に接する本発明のポリビニルアセタール樹脂フィルムの表面は、十点平均粗さの大きい表面2の面であることが好ましい。表面粗さが大きい面が透明基材と接することにより、透明基材とポリビニルアセタール樹脂フィルムとを貼合する際に脱気しやすくなり、積層体(合わせガラス)における発泡を抑制することができる。
【0079】
本発明の積層体は、建物または乗物に用いられる合わせガラスとして使用できる。従って、本発明はまた、乗物用合わせガラスである積層体に関する。乗物用合わせガラスとは、汽車、電車、自動車、船舶または航空機といった乗物のための、フロントガラス、リアガラス、ルーフガラスまたはサイドガラス等を意味する。
【0080】
本発明において、積層体がポリビニルアセタール樹脂フィルムに隣接または近接して可塑化ポリビニルアセタール樹脂層を含む場合、通常、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層に含まれる可塑剤は、時間経過に伴ってポリビニルアセタール樹脂フィルムの層に移行し、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層に含まれる可塑剤量とポリビニルアセタール樹脂フィルムの層に含まれる可塑剤量とは同程度となる。本発明において、この平均可塑剤量は、好ましくは18~35質量%、より好ましくは20~30質量%、特に好ましくは25~29質量%である。平均可塑剤量が前記範囲内であると、例えば衝突時の乗車人物の頭部への衝撃が緩和される等、合わせガラスの所望の特性が得られやすい。可塑化ポリビニルアセタール樹脂層に含まれる可塑剤の量、可塑化ポリビニルアセタール樹脂層の厚さ、ポリビニルアセタール樹脂フィルムに含まれる可塑剤の量、およびポリビニルアセタール樹脂フィルムの厚さを調整することにより、平均可塑剤量は前記範囲内に調整できる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、以下の実施例において「%」は特に断りのない限り、「質量%」を意味する。
【0082】
(1)ポリビニルアセタール樹脂材料
各実施例および比較例において用いたポリビニルアセタール樹脂の組成および物性を表1に示す。
【0083】
【0084】
表1に記載のポリビニルアセタール樹脂1および2を表2に示す質量比でブレンドし、ポリビニルアセタール樹脂材料PVB-aおよびPVB-bを得た。得られたポリビニルアセタール樹脂材料の、濃度10質量%のトルエン/エタノール=1/1(質量比)溶液の粘度、ピークトップ分子量および分子量分布を、下記の方法に従い測定、算出した。また、PVB-aおよびPVB-bの製膜性を下記の方法に従い評価した。
【0085】
<ポリビニルアセタール樹脂の粘度測定>
上記表1および下記表2に記載のポリビニルアセタール樹脂1および2、並びに各混合物の粘度は、ポリビニルアセタール樹脂1、2およびこれらの各比率の混合物を、トルエン/エタノール=1/1の混合溶液中に濃度10質量%となるよう加え、溶解させ、得られた溶液の粘度を、ブルックフィールド型(B型)粘度計を用いて20℃、30rpmで測定した。
【0086】
<ポリビニルアセタール樹脂材料のピークトップ分子量および分子量分布の測定>
得られたポリビニルアセタール樹脂フィルムを構成するための樹脂を、GPCにより分析した。GPC分析には、分析装置としてViscotek製GPCmaxTDA305およびRI検出器を用い、カラムとてShodex製GPC KF-806LおよびGPC KF-806Lを2本連結して別途先端にガードカラムとしてのShodex製 KF-Gを連結したものを用い、THF溶媒および標準ポリスチレン(Agilent Technologies社製 Easical GPC/SEC Calibration Standards PS-1)を用い、解析ソフトとしてOmniSE、C4.7を用いた。40℃、注入量100μLで測定を行い、前記樹脂のピークトップ分子量および分子量分布を求めた。結果を表2に示す。
【0087】
<製膜性の評価>
PVB-aおよびPVB-bのペレットを単軸押出機で溶融押し出しした際の製膜性を、下記基準で評価した。結果を表2に示す。
A 製膜性は非常に良好であった。
B 製膜は良好であった。
C 着色および分解ガスの発生が起こったが、製膜可能であった。
D 製膜不可能であった。
【0088】
【0089】
[実施例1]
(1)ポリビニルアセタール樹脂フィルムの作製
表1に示す物性を有するポリビニルブチラール樹脂1(以下、「樹脂1」と称する)およびポリビニルブチラール樹脂2(以下、「樹脂2」と称する)を、80:20の質量比でブレンドしたPVB-aを、溶融混練してストランド状に押出し、ペレット化した。得られたペレットを単軸押出機とTダイを用いて230℃で溶融押出した。金属弾性ロールと金属剛体ロールを用いて製膜を行い、ポリビニルアセタール樹脂フィルムPVBF-Aを製造した。
【0090】
(2)ポリビニルアセタール樹脂フィルムの物性/特性の評価
得られたポリビニルアセタール樹脂フィルムの表面物性を、以下の方法に従い測定した。また、ポリビニルアセタール樹脂フィルムをロール状に巻回した際の端面ずれ、および、自着性を以下の方法に従い評価した。
【0091】
<十点平均粗さRz値>
フィルム両表面の十点平均粗さRz値を、株式会社ミツトヨ製サーフテストSJ-310(測定力:0.75mN、スタイラス形状:先端半径2μmR/先端角度60°)を用い、JIS B0601-1994に準拠して測定した。結果を表3に示す。
【0092】
<摩擦角>
フィルムの両表面の摩擦角を、それぞれ、摩擦測定器(株式会社東洋精機製作所製、形式:AN-S形)を用いて、JIS P 8147に記載の傾斜法に準処して測定した。具体的には、傾斜板に厚み100μmのPETフィルム(東洋紡エステル(登録商標)フィルム 品名5101;片面がコロナ処理されたもの)を、コロナ処理面側が傾斜板に接しないように固定した。おもりとして、長方形の平らな底面をもつ幅60mm、長さ100mmおよび質量1000gの金属製ブロックを使用し、そのおもりに幅60mm、長さ約120mmの測定対象とするポリビニルアセタール樹脂フィルムを固定した。次に、本体の水平を確認後、傾斜板の傾斜角を0にあわせ、おもりを固定したポリビニルアセタール樹脂フィルムの測定対象とする表面が、PETフィルムのコロナ処理面と接するように設置した。1°/secの一定速度で傾斜板の傾斜角度を上げ、おもりを固定したポリビニルアセタール樹脂フィルムがすべり始めた時の傾斜角をよみとった。同様の試験を10回繰り返し、平均値を算出し、その値を摩擦角とした。測定雰囲気は、温度:20±2℃、相対湿度:65±5%である。結果を表3に示す。
【0093】
<端面ずれの評価>
厚み50μmのポリビニルアセタール樹脂フィルムを、巻取張力90N/m幅、巻取速度10m/分、巻長1000mで、内径152mm、外径164mm、幅400mmのABS樹脂製の巻軸にロール状に巻き取った。巻き取ったロール状巻物を温度35℃、相対湿度65%の環境下に1ケ月間水平に放置した後、ロール状巻物の端面のズレ状況を目視で観察した。評価基準は下記の通りである。結果を表3に示す。
A:ズレが観察されなかった。
B:フィルム端部のズレが1mm未満であった。
C:フィルム端部のズレが1mm以上であった。
【0094】
<自着性の評価>
ポリビニルアセタール樹脂フィルムを10cm×3cmの大きさに切断して得られた試験片の短軸の端部から5mm内側までポリイミドテープを張り付けたフィルム試験片を準備した。前記フィルム試験片に、ポリイミドテープを張り付けていない上記と同じ試験片(同一材料で同一の大きさ)を重ねて合わせて、2枚のポリビニルアセタール樹脂フィルム試験片の間に、その端部でポリイミドテープが挟持された積層体を作製した。この際に試験片の一方の面(表面1)と他方の面(表面2)が接するようにした。その上に6kgの重りを載せ、50℃で8時間静置後、23℃、50%RHの条件下で24時間放置した。その後、2枚の積層体片をポリイミドテープの部分から手ではがし、それぞれの状態を観察した。評価基準は下記の通りである。結果を表3に示す。
A:容易に剥がれ、フィルム表面に変形がみられなかった。
B:多少接着している部分があるが、剥がした際、フィルム表面に変形がみられなかった。
C:強く接着しており、剥がした際、フィルム表面に変形がみられた。
【0095】
[実施例2]
実施例1の金属弾性ロールをゴム弾性ロールに変更した以外は実施例1と同様に製膜し、ポリビニルアセタール樹脂フィルムPVBF-Bを得た。得られたPVBF-Bの表面物性および特性を、実施例1と同様の方法で測定および評価した。結果を表3に示す。
【0096】
[実施例3]
ポリビニルアセタール樹脂材料としてPVB-aの代わりにPVB-bを用いた以外は実施例1と同様に製膜し、ポリビニルアセタール樹脂フィルムPVBF-Cを得た。得られたPVBF-Cの表面物性および特性を、実施例1と同様の方法で測定および評価した。結果を表3に示す。
【0097】
[実施例4]
可塑剤として3GOを用い、該可塑剤が樹脂PVB-aに対して添加量が5質量%になるように溶融混練した。次に、得られた溶融混練物をストランド状に押出し、ペレット化した。得られたペレットを、実施例1と同様に製膜し、ポリビニルアセタール樹脂フィルムPVBF-Dを得た。得られたPVBF-Dの表面物性および特性を、実施例1と同様の方法で測定および評価した。結果を表3に示す。
【0098】
[実施例5]
実施例4の可塑剤量を5質量%から15質量%に変更した以外は実施例4と同様にペレットを得た。得られたペレットを、実施例1の金属弾性ロールをゴム弾性ロールに変更した以外は実施例1と同様に製膜し、ポリビニルアセタール樹脂フィルムPVBF-Eを得た。得られたPVBF-Eの表面物性および特性を、実施例1と同様の方法で測定および評価した。結果を表3に示す。
【0099】
[実施例6]
実施例1の金属弾性ロールを金属剛体ロールに変更した以外は実施例1と同様に製膜し、ポリビニルアセタール樹脂フィルムPVBF-Fを得た。得られたPVBF-Fの表面物性および特性を、実施例1と同様の方法で測定および評価した。結果を表3に示す。
【0100】
[比較例1]
実施例1の金属剛体ロールを金属弾性ロールに変更した以外は実施例1と同様に製膜し、ポリビニルアセタール樹脂フィルムPVBF-Gを得た。得られたPVBF-Gの表面物性および特性を、実施例1と同様の方法で測定および評価した。結果を表3に示す。
【0101】
[比較例2]
ポリビニルアセタール樹脂材料としてPVB-aの代わりにPVB-bを用いた以外は実施例6と同様に製膜し、ポリビニルアセタール樹脂フィルムPVBF-Hを得た。得られたPVBF-Hの表面物性および特性を、実施例1と同様の方法で測定および評価した。結果を表3に示す。
【0102】
[比較例3]
実施例1の金属弾性ロールをエンボスロールに変更した以外は実施例1と同様に製膜し、ポリビニルアセタール樹脂フィルムPVBF-Iを得た。得られたPVBF-Iの表面物性および特性を、実施例1と同様の方法で測定および評価した。結果を表3に示す。
【0103】
【0104】
本発明に従う実施例1~6のポリビニルアセタール樹脂フィルムでは、ロール状に巻回した際の端面ずれおよび保管時の自着の抑制効果に優れていた。一方、本発明の規定を満たさない比較例1~3のポリビニルアセタール樹脂フィルムは、いずれも、端面ずれの抑制効果および保管時の自着抑制効果を併せ持つものではなかった。