IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヒタチ・エナジー・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-付加製造技術による電気素子の製造方法 図1a
  • 特許-付加製造技術による電気素子の製造方法 図1b
  • 特許-付加製造技術による電気素子の製造方法 図1c
  • 特許-付加製造技術による電気素子の製造方法 図2
  • 特許-付加製造技術による電気素子の製造方法 図3
  • 特許-付加製造技術による電気素子の製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】付加製造技術による電気素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 5/06 20060101AFI20240405BHJP
   H02B 13/045 20060101ALI20240405BHJP
   H01B 17/56 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
H02G5/06 351C
H02B13/045 C
H02G5/06 351Z
H01B17/56 D
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020550597
(86)(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2019057306
(87)【国際公開番号】W WO2019180238
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-02-22
(31)【優先権主張番号】18163770.3
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】523380173
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エルザー,ピエール
(72)【発明者】
【氏名】マチジアク,ルカシュ
(72)【発明者】
【氏名】セクラ,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】アゴスティーニ,フランチェスコ
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-033861(JP,A)
【文献】特開昭60-043010(JP,A)
【文献】特開平06-022436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 17/56 - 19/04
H02B 13/00 - 13/08
H02G 5/00 - 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造技術によって、後で作製された部品から電気素子(100、450)を製造する方法であって、
前記電気素子の物理特性の目標空間分布を決めることを含み、前記物理特性は、電気特性および/または機械特性であり、
前記電気素子の部品(50)を形成することと、
決められた前記物理特性の前記空間分布に従って、前記電気素子の後続部品(51)の物理特性を選択することと、
前記付加製造技術を用いて、前記部品(50)と少なくとも部分的に接触するように前記後続部品(51)を形成することとを含み、
前記後続部品(51)は、外部から加えられた応力を塑性変形に変換するように構成された弾性緩和部品(51)を含み、
前記後続部品(51)の前記物理特性を選択することおよび決められた前記物理特性の前記空間分布に従って前記後続部品(51)を形成することは、前記部品(50)および前記少なくとも1つの後続部品(51)の各々を形成する少なくとも2つの異なる材料の材料比を変更することを含む、方法。
【請求項2】
前記空間分布は、電気特性の場合、特定の電気環境に配置された前記電気素子の目標電場パターン(E)であり、機械特性の場合、前記電気素子の目標機械強度である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電気特性は、誘電率、導電率、またはそれらの組み合わせを含み、および/または
前記機械特性は、機械強度、弾性、可塑性、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記部品(50)および前記後続部品(51)は、絶縁部品である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
選択された前記後続部品(51)の前記物理特性、典型的には前記電気特性および/または前記機械特性は、実質的に材料の固有特性である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記部品(50)は、付加製造技術を用いて形成される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記電気素子(100、450)の目標機械強度の前記空間分布を決めることは、前記電気素子(100、450)の主機械応力の経路(P)を特定することを含み、
前記後続部品(51)の前記機械特性を選択することおよび前記後続部品(51)を形成することは、特定された前記主機械応力の経路(P)上で、所定の強度閾値以上の機械強度を有する1つ以上の後続部品(51)を形成することを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記後続部品(51)の前記電気特性を選択することおよび決められた前記目標電場パターン(E)に従って前記後続部品を形成することは、前記部品(50)および前記少なくとも1つの後続部品(51)の各々を形成する少なくとも2つの異なる材料の材料比を変更することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記後続部品(51)の前記機械特性を選択することおよび決められた前記目標機械強度の前記空間分布に従って前記後続部品(51)を形成することは、前記部品(50)および前記少なくとも1つの後続部品(51)の各々を形成する少なくとも2つの異なる材料の材料比を変更することを含む、請求項2、7、8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
付加製造技術を用いて、複数の後続部品(51、52、53、54)を形成することを含み、
前記複数の後続部品(51、52、53、54)は、少なくとも2つの異なる材料の材料比を変更し、特に段階的に変更することによって形成される、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法によって得られる電気素子(100、450)、特に電気絶縁素子または電場傾斜素子。
【請求項12】
1つ以上の後続部品(51)として形成された電場傾斜部品(51)を含み、
前記電気素子が電場、特にHVACまたはHVDC電場に配置されているときに、前記電場傾斜部品(51)は、前記電場の電場密度を緩和するように構成されている、請求項11に記載の電気素子(100、450)。
【請求項13】
HVACまたはHVDC装置、特にHVACもしくはHVDC開閉装置またはHVACもしくはHVDC回路遮断器におけるACまたはDC絶縁体として、請求項11または12に記載の電気素子(100、450)の使用。
【請求項14】
HVACまたはHVDC構造、特にHVACまたはHVDCケーブル継手における電場傾斜素子として、請求項11または12に記載の電気素子(100、450)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、電気素子の製造方法、電気素子、および電気素子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
電気素子、例えば、高電圧高電流のACまたはDC素子は、充電部の適切な電気絶縁を確保するために設けられた構成要素を備える。絶縁の役割を有する電気素子の一例として、ガス絶縁開閉装置(switchgear)に使用されるスペーサが挙げられる。
【0003】
射出成形などの成形は、電気絶縁部品を製造するための一般的な方法である。より大きな絶縁部品は、真空鋳造法または自動加圧ゲル化(APG)法によって製造することができる。また、日本特許公開公報JP2016-031845Aは、三次元モデリング装置によって製造され、ガス絶縁開閉装置に使用されるスペーサを開示している。この従来技術によれば、絶縁スペーサの積層構造は、異なる積層部を有し、積層部の形成に使用された絶縁材料の配合比は、誘電率が絶縁スペーサの一方側から他方側に向かって連続的に減少するように変更されている。
【0004】
また、電気素子は、多くの場合、特定の機械特性を有し、および/または大きな機械応力に耐える必要がある。例えば、電気素子がガス絶縁開閉装置に使用される場合、電気素子に必要とされた電気素子の機械特性は、本質的に気密性である。したがって、電気素子は、適切な絶縁性能を有すると共に、例えば、導体を支持する適切な機械性能および圧力差に耐える適切な機械性能を有する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
本開示の一態様によれば、付加製造技術によって、後で作製された部品から電気素子を製造する方法が提供される。この方法は、電気素子の物理特性の目標空間分布を決めることを含み、物理特性は、電気特性および/または機械特性であり、電気素子の部品を形成することと、決められた物理特性の空間分布に従って、電気素子の後続部品の物理特性を選択することと、付加製造技術を用いて、部品と少なくとも部分的に接触するように後続部品を形成することとを含む。
【0006】
一実施形態において、空間分布は、電気特性の場合、特定の電気環境に配置された電気素子の目標電場パターンであり、機械特性の場合、電気素子の目標機械強度である。
【0007】
「目標」パターンという用語は、本明細書に使用される場合、「所望の」パターンとして理解されてもよい。例えば、目標パターンは、シミュレーションによって得られる。一例として、目標電場パターンは、最終製品の電気素子の特定の形状または構成に対して、電場の空間分布をシミュレーションすることによって得られる。別の例として、電気素子の目標機械強度は、最終製品の電気素子の特定の形状または構成に対して、機械強度の空間分布をシミュレーションすることによって得られる。
【0008】
部品という用語は、本明細書に使用される場合、後続部品を形成する技術と同様の技術によって形成された任意のものであってもよい。この部品は、技術的に可能な限り小さくてもよい。したがって、後続部品は、電気素子の主な部品である。
【0009】
この部品は、初期部品として既に存在してもよい。本明細書に開示された方法は、電気素子を完成させるために、この初期部品に適用される。また、本方法を実施する際に、初期部品が存在しなくてもよい。この部品は、付加製造技術によって形成され、その後の1つ以上の部品は、この部品を形成するために使用された技術と同様の付加製造技術によって形成される。
【0010】
一態様において、付加製造技術において、物理特性は、例えば、異なる材料を使用することによって変更されまたは選択される。これによって、1つ以上の後続部品は、電気素子の各々の製造位置に対する適切な物理特性または目標物理特性を有する。
【0011】
付加製造技術という用語は、本明細書に使用される場合、任意の3D印刷技術、例えば、液槽光重合、材料押出、材料噴射、粉末に基づく3D印刷、または積層に基づく3D印刷を含む。好ましくは、付加製造技術は、光重合、材料押出および材料噴射の1つである。液槽光重合技術において、液槽中の液体ポリマまたは液体ポリマの混合物は、光の照射により活性化された重合プロセスによって、選択的に硬化される。材料押出技術において、熱可塑性材料またはゴム材料などは、ノズルまたはオリフィスを介して選択的に堆積される。材料噴射技術において、適切な材料の液滴は、選択的に堆積される。本明細書において例示的な技術として使用された様々な付加製造技術は、公知であるため、その詳細は、本明細書において説明されない。
【0012】
典型的には、付加製造技術において、後続部品は、ポリマ材料として形成される。ポリマ材料という用語は、本明細書に使用される場合、一例として、(例えば、ポリエチレンまたはポリエチレンテレフタレートを含むがこれらに限定されない)熱可塑性材料、(例えば、エポキシドを含むがこれに限定されない)熱硬化性材料、(例えば、ゴム材料またはシリコーン材料を含むがこれらに限定されない)エラストマー材料、硬化性ポリマ絶縁材料、またはそれらの組み合わせを含む。
【0013】
電気環境という用語は、本明細書に使用される場合、例えば、電気素子が使用されている装置の電気特性および/または寸法を含む。例えば、電気環境は、一定の電圧を有する電極と接地電位との間の電場または電場分布として定義される。装置は、一例として、回路遮断器または開閉装置、例えばガス絶縁開閉装置を含む。電気環境は、例えば、測定および/またはシミュレーションによって得られる。
【0014】
目標電場パターンは、例えば、絶縁素子を電気素子として電気環境に配置することによって、電気素子を電気環境の一部にするときに得られた所望の電場パターンである。電気素子は、典型的には、電気環境の電場分布に影響を及ぼす。後続部品の電気特性は、電気環境において所望の電場パターンを形成するように選択され、その後、後続部品は、選択された電気特性に従って形成される。
【0015】
典型的には、電気素子の目標機械強度の空間分布を決めることは、電気素子の主機械応力の経路を特定することを含み、後続部品の機械特性を選択することおよび後続部品を形成することは、特定された主機械応力の経路上で、所定の強度閾値以上の機械強度を有する1つ以上の後続部品を形成することを含む。
【0016】
主機械応力の経路は、典型的には、装置に配置された電気素子が実際に動作する時に生じる。例えば、電気素子としての絶縁装置の片側または両側に作用するガス圧によってガス絶縁開閉装置に形成された一定の圧力分布によって、主機械応力の経路は、形成される。主機械応力の経路という用語は、本明細書に使用される場合、電気素子の比較的に薄い領域、電気素子の配置領域などにおける同等レベルの機械応力の複数の経路を含んでもよい。
【0017】
所定の強度閾値は、例えば、主機械応力の経路に沿って電気素子の構成要素に作用すると予想される特定の力に耐えるのに十分であるように選択されてもよい。予想される力は、例えば、電気素子を実際に配置した装置を測定および/またはシミュレーションすることによって求めることができる。
【0018】
一実施形態において、主機械応力の経路上の、所定の強度閾値以上の機械強度を有する後続部品は、軽量材料で囲まれている。したがって、動作時に生じる主応力経路上の材料が比較的に高密度および高強度であり、この高強度材料を囲む材料がより軽量であるため、得られた電気素子は、軽量であり、高強度を有する。
【0019】
特に、目標電場パターンを達成するための選択と、目標機械強度を達成するための選択とは、同時に行われる。同時選択は、同様の後続部品に対して行うことができる。同時選択を同時に行うことができない場合、例えばトレードオフによる相対的な重要性に従って、目標電場パターンおよび目標機械強度のうちの1つを選択してもよい。また、同時選択は、異なる後続部品に対して行うこともできる。これによって、一部の後続部品は、主に目標電場パターンの達成に寄与し、残りの後続部品は、主に目標機械強度の達成に寄与する。
【0020】
物理特性の選択という用語は、本明細書に使用される場合、例えば、特定の需要に従って対応する特性を選択する設計プロセスの一部としての意図的な行為として理解すべきである。対応する特性は、一般的に、特定の範囲内に変更することができる予め決定されたまたは予め決定可能な(すなわち、選択可能な)特性である。選択という用語は、本明細書に使用される場合、対応する特性の許容可能な値、例えば、対応する特性の特定の上限閾値以下の範囲値および/または対応する特性の特定の下限閾値以上の範囲値を選択することを含む。各々の閾値は、特定の需要を満たす。
【0021】
特定の物理特性を選択することは、選択された全ての物理特性の特定の需要を同時に満たすように、対応する他の物理特性を同時に選択することを含むことができる。例えば、目標電場パターンに従って電気特性を選択することは、電気特性および機械特性の両方が特定の需要を満たすように、目標機械強度に従って機械特性を同時に選択することを含むことができる。同様に、目標機械強度に従って機械特性を選択することは、電気特性および機械特性の両方が特定の需要を満たすように、目標電場パターンに従って電気特性を同時に選択することを含むことができる。
【0022】
特定の物理特性を選択することは、対応する他の物理特性を同時に選択することを含むことができる。全ての物理特性が特定の需要を同時に満たすことができない場合、全ての物理特性のうち、満たすべき1つ以上の特性、例えば、特定の需要を満たす他の特性の重要度よりも高い重要度を有する1つ以上の特性を選択する。
【0023】
例えば、目標電場パターンに従って電気特性を選択することは、同時に機械特性を選択することを含むことができる。電気特性および機械特性が特定の需要を同時に満たすことができない場合、電気特性および機械特性のうち、満たすべき1つの特性、例えば、特定の需要を満たす他方の特性の重要度よりも高い重要度を有する1つの特性を選択する。
【0024】
同様に、機械特性を選択することは、例えば、電気特性を同時に選択することを含むことができる。電気特性および機械特性が特定の需要を同時に満たすことができない場合、電気特性および機械特性のうち、満たすべき1つの特性、例えば、特定の需要を満たす他方の特性の重要度よりも高い重要度を有する1つの特性を選択する。
【0025】
典型的には、部品および後続部品の物理特性は、実質的に材料の固有特性である。例えば、部品および後続部品の電気特性および機械特性は、実質的に材料の固有特性である。材料の固有特性は、関与する材料のみによって定義および/または達成される。しかしながら、後続部品の形状は、物理特性、すなわち、電気特性および/または機械特性に寄与する可能性がある。
【0026】
後続部品を形成することは、本明細書に使用される場合、典型的には、材料を供給または塗布することと、材料を仕上げるまたは硬化させることとを含む。例えば、典型的な付加製造技術において、材料は、塗布され、レーザ光放射によって硬化させられる。
【0027】
後続部品が部品と少なくとも部分的に接触することは、後続部品が部品の少なくとも1つの表面を覆うことを含むことができる。また、後続部品が部品と少なくとも部分的に接触することは、後続部品が部品を囲むこと、部品の全体を覆うこと、または部品を包むことを含むことができる。「部分的に」という用語は、本明細書において、典型的には少なくとも一部の領域を意味する。例えば、後続部品は、部品の少なくとも一部の領域において、部品と接触する。
【0028】
一実施形態において、電気特性は、誘電率、導電率、またはそれらの組み合わせを含む。例えば、電気特性としての誘電率は、電気素子に電場を印加する時に、電気素子の目標挙動を達成するように選択されてもよい。具体的には、目標挙動は、電場の能動傾斜、電場の制御、または電場の整形などの電場傾斜挙動を含むことができる。
【0029】
非限定的な例として、電気素子は、組み立てられたときに接地側に位置する絶縁部を含み、絶縁部の特定の形状、例えば曲率に起因して、高い強度の電場は、絶縁部の表面に存在することがある。特にHYDC用途において、高い強度の電場は、表面領域に電荷の蓄積を引き起こすことがある。このことは、電気素子の動作に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0030】
従来の解決策において、各々の場制御装置が電気素子の電極領域に配置されるか、または鋳造または成形プロセスに適するように電気素子が開放構造(アクセス可能な構造)を有する必要があるため、電場制御特徴部の形状および複雑性は、制限されている。したがって、従来の解決策において、電場制御特徴部は、上述した従来の電気素子の絶縁部に形成できない可能性がある。
【0031】
本明細書において説明された解決策において、電場制御特徴部は、付加製造技術によって形成された後続部品として提供されてもよい。電場制御特徴部を得るために(電場傾斜を達成するために)、複数の後続部品を形成することができ、異なる後続部品には、異なる導電率を有する材料を様々な濃度で使用することができる。
【0032】
一実施形態において、機械特性は、機械強度、弾性、可塑性、またはそれらの組み合わせを含む。例えば、複数の後続部品を形成することができ、異なる後続部品には、異なる弾性を有する材料を様々な濃度で使用することができる。
【0033】
一実施形態において、物理特性は、熱特性を含み、熱特性は、熱伝導性、熱貫流率、熱容量、またはそれらの組み合わせを含む。例えば、複数の後続部品を形成することができ、異なる後続部品には、異なる熱伝導率を有する材料を様々な濃度で使用することができる。
【0034】
一実施形態において、部品および後続部品は、絶縁部品である。しかしながら、この部品は、電極などの導電体であってもよく、後続部品は、絶縁部品である。導電体は、従来の製造プロセスによって形成されてもよい。一実施形態において、部品は、付加製造技術によって形成される。部品が電極などの導電体である場合、導電体は、例えば、金属の選択的レーザ焼結または直接的レーザ焼結などの金属加工を含む付加製造技術によって製造されてもよい。導電体を部品として製造するための付加製造技術と、絶縁部品を後続部品として製造するための付加製造技術は、金属加工とポリマ加工とを組み込んでもよい。
【0035】
一実施形態において、後続部品の物理特性を選択することおよび後続部品を形成することは、部品および少なくとも1つの後続部品の各々を形成する少なくとも2つの異なる材料の材料比を変更することを含み、2つの異なる材料は、異なる物理特性を示す。
【0036】
変更することは、急激な変更、連続的な変更、または段階的な変更を含むことができる。連続的な変更または段階的な変更によって、各々の物理特性の勾配を有する後続部品を形成することができる。
【0037】
例えば、決められた目標電場パターンに従って後続部品の電気特性を選択することおよび後続部品を形成することは、部品および少なくとも1つの後続部品の各々を形成する少なくとも2つの異なる材料の材料比または材料濃度を変更することを含む。また、この例において、追加的にまたは代替的に、目標機械強度の決められた空間分布に従って後続部品の機械特性を選択することおよび後続部品を形成することは、部品および少なくとも1つの後続部品の各々を形成する少なくとも2つの異なる材料の材料比または材料濃度を変更することを含む。変更することは、急激な変更、連続的な変更、または段階的な変更を含むことができる。少なくとも2つの異なる材料は、典型的には、異なる導電率、異なる導電率、異なる屈曲性、またはそれらの組み合わせを有する。
【0038】
一実施形態において、方法は、付加製造技術を用いて、複数の後続部品を形成することを含み、複数の後続部品は、少なくとも2つの異なる材料の材料比を変更し、特に段階的に変更することによって形成される。
【0039】
本開示のさらなる態様によれば、電気素子が提供される。電気素子は、本明細書に記載の方法によって得ることが可能であり、または本明細書に記載の方法によって得られる。
【0040】
一実施形態において、電気素子は、1つ以上の後続部品として形成された電場傾斜部品を含み、この電場傾斜部品は、電気素子が電場、特にHVACまたはHVDC電場などの高電圧電場に配置されているときに、電場の電場密度を緩和するように構成されている。電場傾斜部品は、一般的に、本明細書に記載された電場傾斜特徴に対応する。これによって、電場傾斜または電場制御特性を得ることができる。
【0041】
一実施形態において、電気素子は、1つ以上の後続部品として形成された弾性緩和部品を含み、この弾性緩和部品は、外部から加えられた応力を弾性緩和部品の塑性変形に変換するように構成されている。
【0042】
本開示のさらに別の態様によれば、電気素子の使用が提供される。電気素子は、本明細書に記載する方法によって得ることが可能であり、または本明細書に記載の方法によって得られる。電気素子の使用は、HVACまたはHVDC装置、特にHVACもしくはHVDC開閉装置またはHVACもしくはHVDC回路遮断器において、電気素子をACまたはDC絶縁体として使用することを含む。
【0043】
本開示のさらに別の態様によれば、電気素子の別の使用が提供される。電気素子は、本明細書に記載する方法によって得ることが可能であり、または本明細書に記載の方法によって得られる。電気素子の使用は、HVAC構造またはHVDC構造、特にHVACまたはHVDCケーブル継手において、電気素子を電場傾斜素子として使用することを含む。
【0044】
本明細書に記載された態様、特徴、および実施形態により、絶縁素子などの電気素子は、適切な機械特性および電気特性を備えることができる。特に従来の成形または鋳造プロセスに比べて、製造コストを低減することができる。特に、金型を必要しないため、電気素子の原型を迅速に作ることができ、迅速に変更することもできる。また、比較的複雑な形状(例えば、中空構造体)および/または軽量な形状を実現することができる。さらに、異なる材料を単一の複合材に組み込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1a】本開示の一実施形態に係る電気素子を示す概略断面図である。
図1b】本開示の一実施形態に係る電気素子を示す概略断面図である。
図1c】本開示の一実施形態に係る電気素子を示す概略断面図である。
図2】本開示の一実施形態に係る電気素子を示す概略斜視図である。
図3】開閉装置に配置された本開示の一実施形態に係る電気素子を示す概略断面図である。
図4】ケーブル継手に配置された本開示の一実施形態に係る電気素子を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
発明を実施するための形態
添付の図面を参照して、本開示の実施形態を説明する。
【0047】
図1a~1cは各々、電気素子100を示す概略断面図である。図1a~1cに示された電気素子100の共通部品の説明は、1回に行われ、単一の電気素子に対して繰り返さない。電気素子100は、絶縁性基体50を有し、導電性電極200が、基体50の両側を貫通して固定される。電極200は、例えば金属材料からなり、高電圧が印加される場合、電気素子10の絶縁性基体50によって接地電極(図示せず)から絶縁される。接地電極は、例えば、ガス絶縁開閉装置(GIS)のハウジングの一部である。例示としてGISの場合、電気素子100は、一方から他方に向かって気密(図面において、左右の方向に気密)になる必要がある。
【0048】
したがって、図示された実施形態において、電気素子100は、電極200を機械的に支持すると共に、接地と位相との間(他の種類の用途において一般的に相間である)の電気絶縁を提供し、GIS用途において圧力差に対する機械抵抗を提供する。
【0049】
図示された実施形態において、絶縁性基体50は、電気素子100の一部として形成されている。部品50は、3D印刷などの付加製造技術、例えば、液槽光重合、材料押出、材料噴射、粉末に基づく3D印刷、または積層に基づく3D印刷によって形成されてもよい。部品50は、電気特性、機械特性、熱特性および磁気特性のうち、1つ以上の規定の物理特性を示すことができる。1つ以上の物理特性は、実質的に均一であってもよい。代替的に、1つ以上の物理特性は、部品50の全体にわたって変化してよく、例えば、勾配挙動を示してもよい。典型的には、部品50の勾配挙動は、電極200の走行方向に対して実質的に垂直な方向に沿っている。
【0050】
また、電極200または電極200の一部、例えば電気素子100の電極インサートは、金属材料の加工に適した付加製造技術、例えば粉末に基づく3D印刷によって形成されてもよい。電極200は、従来の電極形成プロセスによって形成されてもよい。
【0051】
図1a~1cの実施形態の各々において、少なくとも1つの後続部品51、52、53、54は、3D印刷などの付加製造技術、例えば、液槽光重合、材料押出、材料噴射、粉末に基づく3D印刷、または積層に基づく3D印刷によって形成されている。
【0052】
本実施形態において電気素子100は、主に軸対称である。したがって、付加製造工程は、回転基板(電極200の一部、例えば電極インサート)を提供することと、回転基板に沿って、すなわち、回転軸に垂直な2つの並進方向に沿って、3Dプリンタヘッドを移動することとを含むことができる。これによって、部品50、51、52、53、54を作製することができる。しかしながら、電気素子100は、軸対称形状に限定されず、付加製造方法は、回転基板を含まなくてもよい。
【0053】
部品50、51、52、53、54のうちの1つが作製されると、次に形成される部品は、本明細書に記載されたように、その先行部品に対して後続部品となる。後続部品51、52、53、54のいずれかの付加製造プロセスを実行する前に、各々の後続部品51、52、53、54の物理特性、例えば電気特性および機械特性を選択する。後続部品の物理特性は、対応する先行部品の物理特性と異なるように選択されてもよい。一般的に、少なくとも1つの物理特性、典型的には、電気特性および機械特性のうちの少なくとも1つは、対応する先行部品から後続部品に移行するときに変更される(すなわち、異なるように選択される)。
【0054】
なお、先行部品の物性は、必ずしも均一でなくてもよい。例えば、上述したように、部品50の物理特性は、勾配挙動、典型的には電極に実質的に垂直な方向に勾配挙動を示してもよい。また、後続部品51、52、53、54の各々の物理特性は、勾配挙動を示してもよく、すなわち、隣接する先行部品50の領域の物理特性と異なるように選択されてもよい。
【0055】
図1aにおいて、後続部品51は、電気素子100の径方向(r方向)に沿って、絶縁性基体50の全体に塗布されている。一例として、選択時に、複数の物理特性、例えば電気特性および機械特性の両方を変更してもよい。したがって、例示的な後続部品51は、先行部品50とは異なる電気特性および機械特性を有する。また、1つの物理特性、例えば電気特性および機械特性のうちの1つのみを変更してもよい。したがって、別の例示的な後続部品51は、先行部品50に比べて変更された特性を有する。
【0056】
図1bにおいて、後続部品51は、径方向rに沿って、電気素子100の絶縁性基体50の一部に塗布され、後続部品52は、径方向rに沿って絶縁性基体50の別の部分に塗布されている。図1aを参照して前述したように、後続部品51は、先行部品50とは異なる物理特性、例えば異なる電気特性、異なる機械特性、または異なる両方を有する。同様に、後続部品52は、先行部品51とは異なる物理特性、例えば異なる電気特性、異なる機械特性、または異なる両方を有する。
【0057】
図1cは、電気素子100の別の例を示している。後続部品51は、径方向rに沿って、絶縁性基体50の一部に塗布されている。後続部品52および53は、z方向に沿って、径方向の別の部分に積層されている。後続部品54は、径方向の別の部分に塗布されている。図1aを参照して前述したように、後続部品51は、先行部品50とは異なる物理特性、例えば異なる電気特性、異なる機械特性、または異なる両方を有する。同様に、後続部品52は、先行部品51とは異なる物理特性、例えば異なる電気特性、異なる機械特性、または異なる両方を有する。同様に、後続部品53は、先行部品52とは異なる物理特性、例えば異なる電気特性、異なる機械特性または異なる両方を有する。同様に、後続部品54は、先行部品53とは異なる物理特性、例えば異なる電気特性、異なる機械特性、または異なる両方を有する。
【0058】
図2は、本開示の一実施形態に係る電気素子100を示す概略斜視図である。電気素子100は、絶縁材料からなる基体50を含み、基体50は、導電性材料からなる電極インサート200を含む。基体50の上面には、絶縁材料からなる層51が塗布されている。層51は、(基体50を先行部品とする場合に)電気素子の後続部品である。層51の絶縁材料は、基体の物理特性とは異なる物理特性を有するように選択される。例えば、層51の絶縁材料は、基体50の電気特性とは異なる電気特性、基体50の機械特性とは異なる機械特性、または異なる両方を有するように選択される。
【0059】
図3は、ガス絶縁開閉装置に配置された図2の電気素子100を示す概略断面図である。ガス絶縁開閉装置の内側導電性支持部220aおよび220bは、電気素子100の電極インサート200に取り付けられた電極を支持する。この電極には、高電圧が印加されている。ガス絶縁開閉装置のハウジングを形成する外側導電性支持部210aおよび210bは、電気素子100の径方向外側部分を支持する。有利な絶縁挙動を達成するために、図3の電気素子100の左側領域および右側領域には、SFガスなどの絶縁ガスが充填されている。
【0060】
基体50の電気特性は、ハウジング210aおよび210bに対して電極200を絶縁するのに十分な絶縁挙動を有する。層51の電気特性は、ガス絶縁開閉装置の内部に存在する電場の電場傾斜を可能にするように選択される。一例として、電場傾斜特性によって、図3の電場線Eは、絶縁体表面に触れず、電荷の蓄積、特にHVDC用途において電荷の蓄積を防止する。
【0061】
図3において、Pは、電気素子100の主機械応力の例示的な経路を示す。例示的な力Fは、電気素子100に作用する。層50および51の機械特性は、使用される材料の可撓性を変更することによって、電気素子100の機械傾斜を可能にするように選択されている。これにより、経路Pに沿った機械強度が全体的により高くなる。異なる材料の分布を選択することによって、応力を低減できると共に、弾性緩和ゾーンを実装することもできる。これによって、外側からの応力は、巨視的に塑性変形に変換され、絶縁体支持構造から除去されることができる。
【0062】
図4は、高圧DCケーブル継手などのケーブル継手400の一部としての電気素子450を示す概略断面図である。図4において、rは、径方向を示し、zは、軸方向を示す。給電状態において、ケーブル導体410およびケーブルコネクタまたは偏向器420は、高電圧にあり、スクリーン430は、接地電位にある。ケーブル導体410とケーブルコネクタ420とは、軸方向zにおいて互いに当接している。ケーブル絶縁体445は、軸方向zに沿ってケーブルコネクタ420まで、ケーブル導体410を覆っている。継手絶縁部440は、軸方向zに沿って、ケーブルコネクタ420の領域から所定距離まで延在している。
【0063】
電気素子450は、径方向rの一方側に位置するケーブル絶縁部445またはケーブルコネクタ420と、径方向rの反対側に位置するスクリーン430または継手絶縁部440との間に挟持されている。図4の実施形態において、電気素子450は、電場傾斜要素または電場傾斜チューブとして機能する。また、電気素子450は、かなりの機械応力に耐える必要がある。
【0064】
図4の実施形態において、ケーブル接続部400内の電気素子450の特定の幾何学構成および電気構成に対して、電場の目標空間分布(所望の空間分布)が決められる。同様に、ケーブル接続部400内の電気素子450の特定の構成に対して、機械強度の目標空間分布(所望の空間分布)が決められる。
【0065】
電気素子450は、本明細書に開示される方法によって、決められた電場の空間分布および決められた機械応力の空間分布に従って製造される。例えば、設置状態における電気素子450の目標電場パターン(所望の電場パターン)は、シミュレーションなどによって決められる。同様に、例えば、電気素子450の主機械応力の経路は、例えばシミュレーションによって決められる。
【0066】
電気素子450の目標電場パターンに適合する少なくとも1つの電気特性、例えば、誘電率、導電率、またはそれらの組み合わせは、付加製造技術を用いた製造プロセス中に、場所に応じて選択される。
【0067】
同様に、電気素子450の主機械応力の経路に適合する少なくとも1つの機械特性、例えば、機械強度、弾性、可塑性、またはそれらの組み合わせは、付加製造技術を用いた製造プロセス中に、場所に応じて選択される。
【0068】
これによって、図4の本実施形態に係る電気素子450、すなわち、ケーブル接続部400用の電場傾斜チューブ450が得られる。
【0069】
以上、実施形態を参照して、本発明を説明した。しかしながら、当業者は、上述した実施形態以外の他の実施形態が本開示の一部であり、本開示の範囲が添付の特許請求の範囲によって定義されることを容易に理解するであろう。
図1a
図1b
図1c
図2
図3
図4