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特許7466458ワイヤおよびケーブルコーティング用非発泡ポリオレフィン組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】ワイヤおよびケーブルコーティング用非発泡ポリオレフィン組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20240405BHJP
   C08L 23/26 20060101ALI20240405BHJP
   C08K 5/57 20060101ALI20240405BHJP
   C08K 5/42 20060101ALI20240405BHJP
   H01B 7/02 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L23/26
C08K5/57
C08K5/42
H01B7/02 F
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020555216
(86)(22)【出願日】2019-04-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-26
(86)【国際出願番号】 US2019027001
(87)【国際公開番号】W WO2019209546
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】62/663,390
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】プジャリ、サスワティ
(72)【発明者】
【氏名】テルラジャ、マニッシュ
(72)【発明者】
【氏名】エッセガー、モハメッド
【審査官】渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-009238(JP,A)
【文献】特開2014-009237(JP,A)
【文献】特開2010-150357(JP,A)
【文献】米国特許第05844009(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0050401(US,A1)
【文献】特表2017-521514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L、H01B7
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ブレンド組成物であって、前記組成物の重量に基づく重量パーセント(重量%)で、
(A)55~94.99重量%の熱可塑性ポリマーであって、それぞれエチレンに由来する単位を少なくとも50モル%含む1種以上のポリエチレンである熱可塑性ポリマーと、
(B)5~44.99重量%のシラン官能化ポリオレフィンと、
(C)0.01~5重量%の湿気縮合触媒と、
(D)任意成分としてのカーボンブラックと、
(E)酸化防止剤、光安定剤、UV安定剤、粘着添加剤、加工助剤およびこれらの組み合わせからなる群より選ばれた任意成分としての添加剤と、
を含んでなり、前記(A)~(E)の合計量が100重量%になる非発泡組成物である、溶融ブレンド組成物。
【請求項2】
前記縮合触媒が、ルイス酸またはルイス塩基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記縮合触媒が、ジブチルスズジラウレートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記縮合触媒が、スルホン酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組成物の架橋体。
【請求項6】
請求項1に記載の組成物を含む、ワイヤまたはケーブルシース。
【請求項7】
請求項6に記載のシースを含む、ワイヤまたはケーブル。
【請求項8】
前記熱可塑性ポリマーが、互いに異なる2種のポリエチレンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記カーボンブラック(D)が存在する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記熱可塑性ポリマーが、互いに異なる3種のポリエチレンを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記添加剤(E)が存在し、かつ、該添加剤が酸化防止剤、光安定剤及び加工助剤を含む、請求項10に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非発泡ワイヤおよびケーブルコーティング組成物に関する。一態様では、本発明は、非発泡ポリオレフィンワイヤおよびケーブルコーティング組成物に関し、一方で、別の態様では、本発明は、熱可塑性ポリマーと湿気硬化性ポリオレフィンとのブレンドを含む、そのような組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂のレオロジー特性またはメルトフロー特性を改善することは、様々なケーブル構造の加工性の改善に対して高まる需要に応えるために、ワイヤおよびケーブル用途にとって重要である。より具体的には、反応器後のステップでこれらの特性を調整する能力は、効果的な改変によって使用される様々なベース樹脂への扉を開く。例えば、典型的な狭い分子量分布(MWD)樹脂は、より低い剪断減粘挙動によって特徴付けられる粘度プロファイルを呈し、これは、高い押出ライン速度において制限された加工性および乏しい表面の平滑性をもたらす。そのような樹脂はまた、それらの幅広いMWD対応物と比較して、相対的により低いゼロ剪断粘度を呈し、厚いコーティングケーブル構造を作製するときに垂れ問題をもたらす。
【0003】
さらに、ツイストペアカテゴリのデータケーブルでの用途には、より高い耐破砕性および耐熱性を呈する電気信号保護用の高性能の固体絶縁体が必要とされる。これらの用途では、データケーブル自体(パワーオーバーイーサネット(Power over Ethernet)またはPoE)を介してデバイスに給電する低電圧信号の使用が増加し、ケーブルバンドルの動作温度がより高くなるという新しい傾向がある。可能な材料の軟化によりケーブル温度が上昇するため、発泡絶縁が圧縮応力に耐える長期的な能力に懸念がある。固体または非発泡絶縁は、この用途により良好な解決策を提供する。例えば、より高い融点のポリマーは、高温耐性を保持しながら柔軟性のために改変可能な成分の賢明なブレンドを介して、高い溶融強度、高速押出、および柔軟性のために改変され得る。これらの理由および他の理由により、ポリオレフィンの粘度および温度特性を、様々な用途および製造条件に合わせるように調整するための新しく効果的な方法が望まれている。
【発明の概要】
【0004】
一実施形態では、本発明は、組成物の重量に基づく重量パーセント(重量%)で、
(A)55~94.99重量%の熱可塑性ポリマーと、
(B)5~44.99重量%の湿気硬化性ポリマーと、
(C)0.01~5重量%の湿気縮合触媒と、を含む、溶融ブレンド組成物である。
【0005】
一実施形態では、組成物は、熱可塑性ポリマーおよび湿気硬化性ポリオレフィンが湿気縮合触媒と溶融ブレンドされるプロセスによって調製される。一実施形態では、得られた溶融ブレンド組成物は、次いで、湿気硬化ステップに供される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
定義
米国特許実務を目的として、いかなる参照される特許、特許出願、または刊行物の内容も、特に定義の開示(本開示に具体的に提供されるいかなる定義にも矛盾しない範囲で)、および当該技術分野における一般的知識に関して、それらの全体において参照により組み込まれる(または、その同等の米国版が参照によりそのように組み込まれる)。
【0007】
本明細書に開示されている数値範囲は、下限値および上限値を含む、下限値から上限値の全ての値を含む。明確な値(例えば、1~7)を含む範囲に関して、任意の2つの明確な値の間の任意の部分範囲が含まれる(例えば、1~2、2~6、5~7、3~7、5~6など)。
【0008】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する」という用語、およびそれらの派生語は、任意の追加の構成成分、ステップ、または手順は、具体的に開示されているか否かに関わらず、それらの存在を除外するようには意図されない。疑義を避けるために、「含む」という用語の使用を通じて主張される全ての組成物は、そうでないと述べられていない限り、ポリマーであるか否かに関わらず、任意の追加の添加剤、アジュバント、または化合物を含み得る。対照的に、「本質的に~からなる」という用語は、操作性に不可欠ではないものを除き、いかなる以降の記述の範囲からも、いかなる他の構成要素、ステップ、または手順も除外する。「からなる」という用語は、具体的に描写または列挙されていないいかなる構成要素、ステップ、または手順も除外する。「または」という用語は、特に明記しない限り、列挙されたメンバーを個別に、ならびに任意の組み合わせで指す。単数形の使用には、複数形の使用が含まれ、逆の場合も同じである。
【0009】
元素周期表へのいかなる参照も、1990~1991年にCRC Press,Inc.により発行されたものである。この周期表の元素の族への参照は、族の番号付けの新しい表記法による。
【0010】
相反する記載がない限り、文脈から黙示的でない限り、または当該技術分野で慣習的でない限り、全ての部およびパーセントは、重量に基づき、全ての試験方法は、本開示の出願日時点で最新のものである。
【0011】
「ワイヤ」などの用語は、導電性金属、例えば、銅もしくはアルミニウムの単一の撚線、または光学ファイバの単一の撚線を意味する。
【0012】
「ケーブル」および同様の用語は、保護絶縁、ジャケット、またはシース内の少なくとも1本のワイヤまたは光ファイバを意味する。典型的には、ケーブルは、典型的には一般的な保護絶縁、ジャケット、またはシース内の一緒に結合した2つ以上のワイヤおよび/もしくは光ファイバである。ジャケット内部の個々のワイヤまたはファイバは、むき出しであってもよく、被覆されてもよく、または絶縁されてもよい。組み合わせケーブルは、電気ワイヤおよび光学ファイバの両方を含み得る。ケーブルなどは、例えば、低電圧、中電圧、高電圧、超高電圧など、任意の電圧用途向けに設計することができる。典型的なケーブル設計は、USP5,246,783、6,496,629、および6,714,707に示されている。
【0013】
「ポリマー」は、同じであっても異なっていても、モノマーを反応させる(すなわち、重合させる)ことによって調製される化合物を意味する。したがって、ポリマーという総称は、通常、1種類のみのモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる「ホモポリマー」という用語、および以下に定義されるような「インターポリマー」という用語を包含する。
【0014】
「インターポリマー」および「コポリマー」は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されたポリマーを意味する。これらの一般的な用語には、古典的なコポリマー、すなわち、2つの異なる種類のモノマーから調製されたポリマー、および3つ以上の異なる種類のモノマーから調製されたポリマー、例えば、ターポリマー、テトラポリマーなど、の両方が含まれる。
【0015】
「オレフィン」および同様の用語は、分子が二重結合によって一緒に結合された一対の炭素原子を含む炭化水素(水素(H)および炭素(C)を含む化合物)を意味する。
【0016】
「ポリオレフィン」および同様の用語は、モノマーとして単純オレフィン(一般式CnH2nを有するアルケンとも呼ばれる)から生成されるポリマーのクラスを意味する。例えば、ポリエチレンは、オレフィンエチレンを重合することにより生成されるポリオレフィンである。ポリプロピレンは、オレフィンプロピレンを重合することにより生成されるポリオレフィンである。
【0017】
「ポリエチレン」、「エチレンポリマー」、および同様の用語は、エチレンに由来する単位を含むポリマーを意味する。エチレンポリマーは、典型的には、エチレンに由来する単位を少なくとも50モルパーセント(mol%)含む。
【0018】
「シラン官能化ポリオレフィン」および同様の用語は、シラン官能基を含むオレフィンポリマーを意味する。シラン官能基は、例えば、USP3,646,155または6,048,935に記載されているような、加水分解性不飽和シラン、例えば、ビニルトリアルコキシシランをオレフィン、例えば、エチレン、ポリマー骨格にグラフト化すること、またはエチレンおよびビニルトリメトキシシランとのコポリマーであり、DowDuPontから入手可能なSI-LINK(商標)DFDA-5451が一例である、オレフィンとの加水分解性不飽和シランの共重合のいずれかの結果である。
【0019】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」、および同様の用語は、2つ以上のポリマーの組み合わせを意味する。そのようなブレンドは、混和性であっても、そうでなくてもよい。そのような組み合わせは、相分離しても、しなくてもよい。そのような組み合わせは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、および当該技術分野で知られている任意の他の方法から決定される1つ以上のドメイン構成を含んでいても、含まなくてもよい。
【0020】
「組成物」などの用語は、2つ以上の構成成分の混合物またはブレンドを意味する。例えば、シラングラフト化エチレンポリマーを調製する文脈において、組成物は、少なくとも1つのエチレンポリマー、少なくとも1つのビニルシラン、および少なくとも1つのフリーラジカル開始剤を含むであろう。ケーブルシースまたは他の製造物品を調製する文脈において、組成物は、エチレン-ビニルシランコポリマー、触媒硬化システム、および潤滑剤、充填剤、酸化防止剤などのような任意の所望の添加剤を含む。
【0021】
「周囲条件」および同様の用語は、物品の周囲領域または環境の温度、圧力、および湿度を意味する。典型的なオフィスビル、または実験室の周囲条件には、23℃の温度および大気圧が含まれる。
【0022】
「グラフト化条件」および同様の用語は、加水分解性不飽和シランとポリオレフィンの2つが、互いに接触したときに、加水分解性不飽和シランが、ポリオレフィンをグラフト化、すなわち、それに追加またはそれと組み合わされる温度、圧力、湿度、滞留時間、撹拌などを意味する。グラフト化条件は、シランおよびポリオレフィンの性質、ならびに触媒の有無によって異なり得る。
【0023】
「触媒量」とは、反応を促進する、例えば、シラン化合物のポリオレフィンへのグラフト化、またはエチレン-ビニルシランポリマーの架橋などを、検出可能なレベルで、好ましくは商業的に許容可能なレベルで行うために必要な触媒の量を意味する。
【0024】
「架橋」、「硬化」、および類似の用語は、ポリマーが物品に成形される前または後に、架橋を誘導した処理に供されるか、または曝露され、キシレンまたは90重量パーセント以下(すなわち、10重量パーセント以上のゲル含有量)のデカレン抽出物を有することを意味する。架橋が創成されるプロセスの段階は、一般に「硬化段階」と称され、プロセス自体は、一般に「硬化」と称される。
【0025】
「架橋性」、「硬化性」、および同様の用語は、ポリマーは、物品に成形される前または後に、硬化または架橋されておらず、実質的な架橋を誘導した処理に供されていないまたは曝露されていないが、ポリマーが、そのような処理に供されるまたは曝露される(例えば、水への曝露)と実質的な架橋を引き起こすまたは促進する添加剤(複数可)または官能性を含むことを意味する。
【0026】
「熱可塑性ポリマー」および同様の用語は、加熱すると繰り返し軟化して流動可能になり、室温まで冷却すると硬化状態に戻ることができる直鎖状または分岐状ポリマーを意味する。本発明の文脈において、熱可塑性ポリマーは、概して、ASTM D638-72の方法を使用して10,000psi(68.95MPa)を超える弾性率を有する。さらに、熱可塑性ポリマーは、軟化状態に加熱されると、任意の所定の形状の物品に成形または押出され得る。
【0027】
「熱硬化性ポリマー」、「熱硬化性ポリマー」、および同様の用語は、いったん硬化すると、ポリマーが熱によって軟化することができない、すなわち、さらに成形することができないことを意味する。熱硬化性ポリマーは、いったん硬化すると、スペースネットワークポリマーであり、高度に架橋されて剛性の三次元分子構造を形成する。
【0028】
「ペレット」および同様の用語は、典型的には、粉末または粒状材料を圧縮することによって、またはダイを介した溶融物の押出中に形成されるストランドを細断することによって形成される小さな粒子を意味する。ペレットの形状およびサイズは大きく異なり得る。
【0029】
「湿気硬化性ポリマー」および同様の用語は、湿気に曝露されると架橋することができるポリマーを意味する。架橋の量または程度は、とりわけ、(1)硬化条件、例えば、温度、水の量、および水の形態(浴、ミストなど)、滞留時間、触媒の有無、ならびに存在する場合、触媒の種類および量など、ならびに(2)湿気硬化性ポリマー自体に依存するであろう。加水分解性シラン基を含むポリオレフィンポリマーの文脈において、シラン基は、水への曝露時に最初に加水分解され、ここでは、加水分解性シラン基が、シラノール基に変換され、アルコールが副産物として形成される。次いで、シラノール基は、縮合反応によって架橋される。典型的には、第1および第2のステップの両方が、縮合触媒で触媒される。
【0030】
「溶融ブレンド」は、少なくとも2つの構成成分が組み合わされるか、そうでなければ一緒に混合され、構成成分のうちの少なくとも1つが溶融状態にあるプロセスである。溶融ブレンドは、例えば、バッチ混合、押出ブレンド、押出成型などの1つ以上の様々な既知のプロセスによって達成され得る。「溶融ブレンド」組成物は、溶融ブレンドのプロセスを通じて形成された組成物である。
【0031】
「コーティング」および同様の用語は、塗布された材料および基材が互いに付着するように、ある材料、すなわち、塗布された材料の別の材料、すなわち、塗布される材料の、別の材料、すなわち、例えば基材への接触、堆積、「塩析」、沈殿などの任意の方法での塗布を意味する。「コーティング」はまた、基材に接触または堆積などされている塗布された材料を指す。ワイヤおよびケーブルの文脈において、コーティングは、典型的には、半導体層、または絶縁層、または外部保護ジャケットなどのワイヤまたは以前にコーティングされたワイヤもしくはケーブルの上に押出されて接触しているポリマーである。
【0032】
「発泡」および同様の用語は、多くの気泡が閉じ込められた固体または液体を意味する。本発明の文脈において、固体または液体中に閉じ込められた気泡は、典型的には、発泡剤の使用を通じて生成される。「非発泡」および同様の用語は、任意のかなりの量の閉じ込められた気泡がない固体または液体を意味する。本発明の文脈において、非発泡体は、発泡剤の不在下で生成されるか、または発泡剤が存在する場合、それ(すなわち、発泡剤)は活性ではない。本発明の文脈において、「非発泡」および「固体」は、同義的に使用される。
【0033】
熱可塑性ポリマー
加熱すると軟化する任意のポリマーは、本発明の実施に使用され得る熱可塑性ポリマーである。そのようなポリマーには、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などが含まれる。
【0034】
一実施形態では、熱可塑性ポリマーは、ポリオレフィンである。本発明の実施に有用なポリオレフィン樹脂には、ポリオレフィンホモポリマーおよびインターポリマーの両方が含まれる。ポリオレフィンホモポリマーの例は、エチレンおよびプロピレンのホモポリマーである。ポリオレフィンインターポリマーの例は、エチレン/アルファ-オレフィンインターポリマーおよびプロピレン/アルファ-オレフィンインターポリマーである。アルファ-オレフィンは、好ましくはC3-20直鎖状、分岐状、または環状アルファ-オレフィンである(プロピレン/アルファ-オレフィンインターポリマーの場合、エチレンはアルファ-オレフィンと考えられる)。C3-20アルファ-オレフィンの例としては、プロペン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、および1-オクタデセンが挙げられる。アルファ-オレフィンはまた、シクロヘキサンまたはシクロペンタンなどの環状構造を含み、3-シクロヘキシル-1-プロペン(アリルシクロヘキサン)およびビニルシクロヘキサンなどのアルファ-オレフィンを生じることができる。この用語の古典的な意味におけるアルファ-オレフィンではないが、本発明の目的のために、ノルボルネンおよび関連オレフィンなどの特定の環状オレフィンは、アルファ-オレフィンであり、上に記載されるアルファ-オレフィンの一部または全ての代わりに使用することができる。同様に、スチレンおよびその関連オレフィン(例えば、アルファ-メチルスチレンなど)は、本発明の目的のためのアルファ-オレフィンである。例示的なポリオレフィンコポリマーとしては、エチレン/プロピレン、エチレン/ブテン、エチレン/1-ヘキセン、エチレン/1-オクテン、エチレン/スチレンなどが挙げられる。例示的なターポリマーとしては、エチレン/プロピレン/1-オクテン、エチレン/プロピレン/ブテン、エチレン/ブテン/1-オクテン、およびエチレン/ブテン/スチレンが挙げられる。コポリマーは、ランダムまたはブロック状であり得る。
【0035】
ポリオレフィン樹脂はまた、ハロゲン、および/または不飽和エステルもしくは酸などの1つ以上の官能基を含むことができ、これらのポリオレフィンは周知であり、従来の高圧技術によって調製することができる。塩素は、典型的なハロゲン(例えば、PVC)であり、不飽和エステルは、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、またはビニルカルボキシレートであり得る。アルキル基は、1~8個の炭素原子を有することができ、好ましくは1~4個の炭素原子を有することができる。カルボキシレート基は、2~8個の炭素原子を有することができ、好ましくは2~5個の炭素原子を有することができる。エステルコモノマーに起因するコポリマーの部分は、コポリマーの重量に基づいて1~最大50重量パーセントの範囲であり得る。アクリレートおよびメタクリレートの例は、エチルアクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、t-ブチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、および2-エチルヘキシルアクリレートである。ビニルカルボキシレートの例は、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、およびビニルブタネートである。不飽和酸の例としては、アクリル酸またはマレイン酸が挙げられる。
【0036】
本発明の実施に有用なエチレン系ポリマーの例としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)(例えば、The Dow Chemical CompanyのFLEXOMER(商標)エチレン/1-ヘキセンポリエチレン)、均一に分岐した線状エチレン/アルファ-オレフィンコポリマー(例えば、Mitsui Petrochemicals Company LimitedのTAFMER(商標)およびDEX-PlastomersのEXACT(商標))、均一に分岐した、実質的に線状のエチレン/アルファ-オレフィンポリマー(例えば、The Dow Chemical Companyから入手可能なAFFINITY(商標)ポリオレフィンプラストマーおよびENGAGE(商標)ポリオレフィンエラストマー)、およびエチレンブロックコポリマー(The Dow Chemical Companyからまた入手可能なINFUSE(商標))が挙げられる。実質的に線状のエチレンコポリマーは、USP5,272,236、5,278,272、および5,986,028により詳細に記載されており、エチレンブロックコポリマーは、USP7,579,408、7,355,089、7,524,911、7,514,517、7,582,716、および7,504,347により詳細に記載されている。
【0037】
本発明の実施における使用に特に関心のあるオレフィン系インターポリマーは、LDPE、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、およびHDPEである。これらのエチレン系コポリマーは、DOWLEX(商標)、ATTANE(商標)、およびFLEXOMER(商標)などの商標でThe Dow Chemical Company、PETROTHENE(商標)などの商標でEquistar/LyondellBasell、NOVAPOL(商標)、およびSCLAIR(商標)などの商標でNova Chemical Company、ならびにEXCEED(商標)、EXACT(商標)、およびENABLE(商標)などの商標でExxonMobil Chemical Companyを含むいくつかの異なる供給源から市販されている。
【0038】
本発明の実施において有用なポリオレフィンには、プロピレン、ブテン、および他のアルケンベースコポリマー、例えば、プロピレン由来の大多数の単位および別のアルファ-オレフィン(エチレンを含む)由来の少数の単位を含むコポリマーも含まれる。本発明の実施において有用な例示的なプロピレンポリマーとしては、The Dow Chemical Companyから入手可能なVERSIFY(商標)ポリマー、およびExxonMobil Chemical Companyから入手可能なVISTAMAXX(商標)ポリマーが挙げられる。
【0039】
熱可塑性ポリマー、特に熱可塑性ポリオレフィンポリマーは、典型的には、立方センチメートル当たり0.856、または0.865、または0.870~0.975、または0.950、または0.920グラム(g/cm)の密度を有する。密度は、ASTM D-792の手順によって測定される。
【0040】
熱可塑性ポリマー、特に熱可塑性オレフィンポリマーは、典型的には、10分当たり0.01、または0.1、または0.5~1,000、または100、または10、または1.0グラム(g/10分)のメルトインデックスを有する。エチレンベースポリマーのメルトインデックスは、ASTM D-1238(190℃/2.16kg)の手順によって測定され、プロピレンベースポリマーについては、ASTM D-1238(230℃/2.16kg)の手順によって測定される。
【0041】
上記のオレフィン系ポリマーのうちのいずれかのブレンドもまた、本発明で使用することができ、オレフィンポリマーは、好ましい形態において、本発明のオレフィンポリマーが、ブレンドの熱可塑性ポリマー成分の少なくとも約50、好ましくは少なくとも約75、およびより好ましくは少なくとも約80重量パーセントを構成する程度まで、1つ以上の他の熱可塑性ポリマーとブレンドまたは希釈することができる。あまり好ましくない形態では、求められ得る他の特性に応じて、オレフィンポリマー含有量は、熱可塑性ポリマー成分の50%未満であり得る。一実施形態では、熱可塑性ポリマーは、いかなるオレフィンポリマーも使われていないか、または含まない。
【0042】
本発明の組成物中、すなわち、熱可塑性ポリマー、湿気硬化性ポリオレフィン、および湿気縮合触媒の溶融ブレンド中の熱可塑性ポリマーの量は、典型的には、組成物の総重量に基づいて、少なくとも55、または60、または70重量パーセント(重量%)である。組成物中の熱可塑性ポリマーの最大量は、典型的には、組成物の重量に基づいて、94.99、または90、または85、または80重量%を超えない。
【0043】
湿気硬化性ポリオレフィン
本発明の実施において使用される湿気硬化性ポリオレフィンは、シラン官能基を有するポリオレフィンである。シラン官能基は、共重合および/またはグラフト化によってポリオレフィンの中または上に導入することができる。
【0044】
オレフィン、例えば、エチレンと効果的に共重合するか、またはオレフィンポリマーにグラフト化して架橋する、任意のシランを本発明の実施に使用することができ、以下の式によって説明されるものは例示的であり、
【化1】
式中、Rは、水素原子またはメチル基であり、xおよびyは、0または1であり、ただし、xが1の場合、yは1であり、mおよびnは独立して、0~12(それらを含む)の整数であり、好ましくは0~4であり、各R’’は独立して、1~12個の炭素原子を有するアルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、ブトキシ)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ)、アラルオキシ基(例えば、ベンジルオキシ)、1~12個の炭素原子を有する脂肪族アシルオキシ基(例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロパノイルオキシ)、アミノもしくは置換アミノ基(アルキルアミノ、アリールアミノ)、または1~6個(それらを含む)の炭素原子を有する低級アルキル基などの加水分解性有機基であり、ただし、3つのR基のうちの1つ以下がアルキルであることを条件とする。そのようなシランは、高圧プロセスなどの反応器内でオレフィンと共重合させることができる。そのようなシランは、成形または成型作業の前または最中のいずれかに、好適な量の有機過酸化物の使用により、好適なオレフィンポリマーにグラフト化することもできる。熱および光安定剤、顔料などの追加の成分もまた、配合物に含まれ得る。メルカプトプロピルトリアルコキシシランなどのフリーラジカルプロセスを介してポリマーの不飽和を増加させるシランも含まれる。
【0045】
好適なシランとしては、ビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、シクロヘキセニル、またはガンマ-(メタ)アクリルオキシアリル基などのエチレン性不飽和ヒドロカルビル基、および例えば、ヒドロカルビルオキシ、ヒドロカルボニルオキシ、またはヒドロカルビルアミノ基などの加水分解性基を含む不飽和シランが挙げられる。加水分解性基の例としては、メトキシ、エトキシ、ホルミルオキシ、アセトキシ、プロプリオニルオキシ、およびアルキルまたはアリールアミノ基が挙げられる。好ましいシランは、不飽和アルコキシシランであり、これはポリマーにグラフト化されるか、または反応器内で他のモノマー(エチレンおよびアクリレートなど)と共重合することができる。これらのシランおよびそれらの調製方法は、MeverdenらのUSP5,266,627にさらに詳しく記載されている。ビニルトリメトキシシラン(VTMS)、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ガンマ-(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、およびこれらのシランの混合物は、本発明の実施において使用される湿気硬化性ポリマーのシラン官能基の好ましい源である。
【0046】
湿気硬化性におけるシラン官能基の量は、ポリマーの性質、シラン、処理または反応器条件、グラフト化または共重合効率、最終用途、および同様の要因に応じて大きく異なり得るが、典型的には、ポリマーは、少なくとも0.5、好ましくは少なくとも0.7重量パーセントを含む。便宜性および経済性についての考慮は、湿気硬化性ポリマーにおけるシラン基の最大量に対する主要な制限のうちの2つであり、典型的には、そのような官能基の最大量は、5重量パーセントを超えず、好ましくは3重量パーセントを超えない。
【0047】
シランは、典型的には、フリーラジカル開始剤、例えば、ペルオキシドもしくはアゾ化合物の存在下で、任意の従来の方法によって、または電離放射線などによって、ポリマーにグラフト化される。過酸化物開始剤のうちの任意の1つなどの有機開始剤が好ましく、例えば、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、t-ブチルペルベンゾエート、ベンゾイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t-ブチルペルオクトエート、メチルエチルケトンペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、過酸化ラウリル、および過酢酸tert-ブチルである。好適なアゾ化合物は、2,2-アゾビスイソブチロニトリルである。開始剤の量は異なり得るが、典型的には、100樹脂当たり少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.03重量部(phr)の量で存在する。典型的には、開始剤は0.15phrを超えず、好ましくは約0.10phrを超えない。シラン化合物と開始剤との重量比も大きく異なり得るが、典型的なシラン:開始剤重量比は、10:1~500:1、好ましくは18:1~250:1である。100樹脂当たりの重量部またはphr単位で使用される場合、「樹脂」は、オレフィン系ポリマーを意味する。
【0048】
任意の従来の方法を使用してシランをポリオレフィンポリマーにグラフト化することができるが、一方で、1つの好ましい方法は、BUSS(商標)ニーダーなどの反応器押出機の第1段階でその2つを開始剤とブレンドすることである。グラフト化条件は異なり得るが、溶融温度は、典型的には、滞留時間および開始剤の半減期に応じて160~260℃、好ましくは190~230℃である。
【0049】
ビニルトリアルコキシシランのオレフィンおよび他のモノマーとの共重合は、オレフィンホモポリマーならびに酢酸ビニルおよびアクリレートとのコポリマーの製造に使用される高圧反応器で行われ得る。
【0050】
本発明の組成物中、すなわち、熱可塑性ポリマー、湿気硬化性ポリオレフィン、および湿気縮合触媒の溶融ブレンド中の湿気硬化性ポリマーの量は、典型的には、組成物の総重量に基づいて、少なくとも5、または10重量パーセント(重量%)である。組成物中の湿気硬化性ポリマーの最大量は、典型的には、組成物の重量に基づいて、44.99、または40、または35、または30、または25重量%を超えない。
【0051】
オレフィンポリマー、特にシラン含有エチレンポリマーは、立方センチメートル当たり0.856、または0.870、または0.900~0.925、または0.950、または0.975グラム(g/cm)の密度を有する。密度は、ASTM D-792の手順によって測定される。これら、例えば、ビニルトリメトキシシランは、0.25、または0.75、または1.25~1.57、または2.25、または3重量%のシランを含む。
【0052】
オレフィンポリマー、特にエチレンポリマーは、典型的には、10分当たり0.01、または0.1、または0.5~1,000、または100、または10、または1.0グラム(g/10分)のメルトインデックスを有する。エチレンベースポリマーのメルトインデックスは、ASTM D-1238(190℃/2.16kg)の手順によって測定され、プロピレンベースポリマーについては、ASTM D-1238(230℃/2.16kg)の手順によって測定される。
【0053】
一実施形態では、熱可塑性ポリマーのメルトインデックスは、湿気硬化性ポリマーのメルトインデックスよりも低い。一実施形態では、熱可塑性ポリマーのメルトインデックスは、湿気硬化性ポリマーのメルトインデックスの90、または80、または70、または60、または50、または40、または30、または20、または10パーセント未満である。2つのポリマー間のメルトインデックスのこの差は、2つのポリマーの良好な混合を促進する。
【0054】
湿気縮合触媒
湿気縮合触媒、または単に架橋触媒には、ルイスおよびブレンステッド酸および塩基が含まれる。ルイス酸は、ルイス塩基からの電子対を受け入れることができる化学種である。ルイス塩基は、電子対をルイス酸に供与することができる化学種である。本発明の実施において使用され得るルイス酸には、ジブチルスズジラウレート(DBTDL)などのカルボン酸スズ、ジメチルヒドロキシスズオレエート、ジオクチルスズマレエート、ジ-n-ブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、酢酸第一スズ、オクタン酸第一スズ、ならびにナフテン酸鉛、カプリル酸亜鉛、およびナフテン酸コバルトなどの様々な他の有機金属化合物が含まれる。DBTDLは、好ましいルイス酸である。本発明の実施において使用され得るルイス塩基には、これらに限定されないが、第一級、第二級、および第三級アミンが含まれる。
【0055】
本発明の実施において使用される架橋触媒の最小量は、触媒量である。典型的には、この量は、シラン官能化ポリオレフィンおよび触媒の合計重量の少なくとも0.01、好ましくは少なくとも0.02、およびより好ましくは少なくとも0.03重量パーセント(重量%)である。組成物中の架橋触媒の最大量の唯一の制限は、経済性および実用性(例えば、収穫逓減)によって課せられるものであるが、典型的には、一般的な最大値は、湿気硬化性ポリマーおよび触媒の合計重量の5重量%未満、好ましくは3重量%未満、およびより好ましくは2重量%未満を含む。
【0056】
シラン架橋触媒は、典型的には、マスターバッチの形態で熱可塑性ポリマーおよび/または湿気硬化性ポリマーに添加されるが、本発明の組成物の他のポリマーへのその添加の形態が何であろうと、それは、熱可塑性ポリマーと湿気硬化性ポリマーとの溶融ブレンド中に存在する。この溶融ブレンドは、標準的な技術および機器、例えば、内部バッチミキサー、反応押出機などを使用して行われる。
【0057】
充填剤および添加剤
本発明の組成物は、1つ以上の充填剤および/または添加剤を含むことができる。存在する充填剤の量は、好ましくは、湿気硬化性組成物の機械的および/または化学的特性の許容不能に大きな劣化を引き起こすであろう量を超えるべきではない。典型的には、存在する充填剤の量は、組成物の重量に基づいて、2~35、好ましくは5~20重量パーセント(重量%)である。代表的な充填剤には、カオリン粘土、水酸化マグネシウム、シリカ、炭酸カルシウム、およびカーボンブラックが挙げられる。充填剤は、難燃特性を有していても、または有していなくてもよい。充填剤が存在する場合の本発明の好ましい一実施形態では、充填剤は、充填剤がさもないとシラン硬化反応を妨げる可能性があるいかなる傾向も防止または遅延させる材料でコーティングされる。ステアリン酸は、そのような充填剤コーティングの例示である。充填剤および触媒は、あらゆる望ましくない相互作用および反応も回避するように選択され、この選択は、当該技術の範囲内で良好である。
【0058】
本発明の組成物はまた、例えば、本発明の組成物の望ましい物理的または機械的特性を妨げない程度の、酸化防止剤(例えば、Ciba Specialty Chemicalsから入手可能な例えばIRGANOX(商標)1010などのヒンダードフェノール)、亜リン酸塩(例えば、Ciba Specialty Chemicalsから入手可能なIRGAFOS(商標)168)、UV安定剤、粘着添加剤、光安定剤(ヒンダードアミンなど)、可塑剤(フタル酸ジオクチルまたはエポキシ化大豆油など)、金属不活性化剤、スコーチ阻害剤、離型剤、粘着付与剤(炭化水素粘着付与剤など)、ワックス(ポリエチレンワックスなど)、核形成剤(Milliken Chemicalsから入手可能なHYPERFORM(商標)HPN-20E、およびDowDuPontからのPTFEなど)、加工助剤(油、ステアリン酸などの有機酸、有機酸の金属塩など)、油増量剤(パラフィン油および鉱油など)、着色剤または顔料などの添加剤を含み得る。これらの添加剤は、当業者に既知の量で使用される。
【0059】
化合および製造
熱可塑性ポリマー、湿気硬化性ポリマー、縮合触媒、ならびに最適な充填剤および添加剤の化合は、当業者に既知の標準的な手段によって実施することができる。化合機器の例は、BANBURY(商標)またはBOLLING(商標)内部ミキサーなどの内部バッチミキサーである。代替として、FARREL(商標)連続ミキサー、WERNER AND PFLEIDERER(商標)二軸スクリューミキサー、またはBUSS(商標)混練連続押出機などの、連続一軸もしくは二軸スクリューミキサーまたは押出機が使用され得る。使用するミキサーのタイプ、およびミキサーの動作条件は、粘度、体積抵抗率、押出表面平滑性などの組成物の特性に影響を与える。
【0060】
組成物の構成成分は、典型的には、混合物を完全に均質化するのに十分であるが、材料をゲル化させるには不十分な温度および時間の長さで混合される。触媒は、典型的には、シラングラフト化オレフィンポリマーに添加されるが、添加剤がある場合は添加剤の前、添加剤とともに、または添加剤の後に添加されてもよい。典型的には、構成成分は、溶融混合装置で一緒に混合される。次いで、混合物は、最終物品に成形される。化合および物品製造の温度は、シラングラフト化オレフィンポリマーの融点よりも高いが、250℃未満であるべきである。
【0061】
いくつかの実施形態では、触媒および添加剤のうちのいずれかまたは両方が、事前に混合されたマスターバッチとして添加される。そのようなマスターバッチは、一般的に触媒および/または添加剤を不活性プラスチック樹脂、例えば、低密度ポリエチレンに分散させることにより形成される。マスターバッチは、溶融化合法により好都合に形成される。
【0062】
一実施形態では、構成成分、例えば充填剤中に存在するかまたは関連する水分から生じ得る可能性のあるスコーチを低減または排除するために、構成成分のうちの1つ以上を化合前に乾燥させるか、あるいは構成成分の混合物を化合後に乾燥させる。
【0063】
製造物品
一実施形態では、本発明の組成物は、既知の量および既知の方法によって(例えば、USP5,246,783および4,144,202に記載される機器および方法を用いて)、保護ジャケットまたは絶縁層としてケーブルに適用することができる。典型的には、組成物は、ケーブルコーティング用ダイを備える反応器-押出機内で調製され、組成物の構成成分が配合された後、ケーブルがダイから引き出される際に、組成物は、ケーブル上に押出される。硬化は、反応器-押出機中で開始することができる。
【0064】
必要または好ましいわけではないが、成形物品は、高温および外部水分のいずれかまたは両方に曝露されてもよく、高温の場合、典型的には、物品が所望の架橋度に達するような期間の間、周囲温度以上であるがポリマーの融点未満である。成形後硬化の温度は、0℃超であるべきである。
【0065】
本発明のポリマー組成物から作製され得る他の製造物品としては、繊維、リボン、シート、テープ、チューブ、パイプ、隙間充填材、密封材、ガスケット、ホース、発泡体、履物、およびベロが挙げられる。これらの物品は、既知の機器と技術を使用して製造することができる。
【0066】
以下の実施例により、本発明をより詳細に説明する。特に明記しない限り、全ての部およびパーセントは、重量によるものである。
【実施例
【0067】
試験方法
密度について測定される試料を、ASTM D1928に従って調製する。試料を、374°F(190℃)および30,000psiで3分間、次いで70°F(21℃)および30,000psiで1分間圧縮する。ASTM D792、方法Bを使用して、1時間以内の試料加圧で密度測定を行う。
【0068】
メルトインデックス、またはI2を、ASTM D1238、条件190℃/2.16kgに従ってエチレンベースポリマーについて測定し、10分当たり溶出されるグラム(g/10分)で報告する。メルトフローレート、またはMFRを、ASTM D1238、条件230℃/2.16kgに従ってプロピレンベースポリマーについて測定し、g/10分で報告する。
【0069】
引張および伸長を、ISO527-2、試験片タイプ5Aに従って測定した。
【0070】
動的振動剪断断(DOS)レオロジー(周波数掃引100~0.1rad/秒)を、比較例で、190℃で測定し(未改変のベース樹脂のペレットと、いかなる発泡剤も含まない過酸化物処理ポリマー材料とから成型されたプラークで)、この発明例で、硬化ステップ後のペレットから、およびいかなる発泡剤も含まない材料から成型されたプラークで測定した。
【0071】
ワイヤ平滑性試験:伝導体ジャケットの表面平滑性を、SURFTEST(商標)SV-400シリーズ178表面テクスチャ測定装置を介して、ANSI1995に従って測定する。ワイヤ試料をVブロックに置いて、スタイラス(10urn)を特定の開始位置まで下げる(約1グラムの力をワイヤに加える)。毎秒2ミリメートルの固定速度で、スタイラスを横方向に動かして測定する。ワイヤ試料当たり4つの読み取り値および4つの試料を試験し、次いで、それらをマイクロインチで報告される値で平均する。
【0072】
材料
DFH2065は、0.920g/cmの密度および0.65g/10分のメルトインデックス(190℃/2.16kg)を有する粒状の線状低密度ポリエチレン(LLDPE)である。
【0073】
DFNA-4580は、The Dow Chemical Companyから入手可能な、0.945g/cmの密度および0.8g/10分のメルトインデックスを有する高密度ポリエチレン(HDPE)である。
【0074】
DOWLEX(商標)GM8480Fは、The Dow Chemical Companyから入手可能な、0.917g/cmの密度および3g/10分のメルトインデックス(190℃/2.16kg)を有するLLDPEである。
【0075】
SI-LINK(商標)DFDA-5451は、The Dow Chemical Companyから入手可能な、0.922g/ccの密度および1.5g/10分のメルトインデックス(MI)を有するエチレンおよび1.5%のビニルトリメトキシシラン(VTMS)のコポリマーである。
【0076】
SI-LINK(商標)DFDB-5480 NT触媒マスターバッチは、低密度ポリエチレン(0.925g/cc、3.0g/10分のMI)および1.7重量%のジブチルスズジラウレートを含む。
【0077】
AXELERON(商標)GP A-0037 BK CPDカーボンブラックマスターバッチは、1.18g/ccの密度を有し、LLDPEおよび45重量%のカーボンブラックを含む。マスターバッチはDowDuPontから入手可能である。
【0078】
SYNOX(商標)TBM6(4,4’-チオビス(2-t-ブチル-5-メチルフェノール)は、Synchemer Coから入手可能な抗酸化剤および光安定剤である。
【0079】
DYNAMAR(商標)FX5912は、3M Coから市販されているポリマー加工添加剤である。
【0080】
手順
組成物を、150℃のBRABENDER(商標)バッチミキサーで化合する。縮合触媒(ジブチルスズ、SI-LINK(商標)DFDB-5480NT)を、ブレンド前に乾燥させる。化合後、組成物を、BRABENDER(商標)3/4インチ直径、25:1 L/D押出機から1分当たり50回転(rpm)での動作で、1分当たり38フィートの巻取速度で押出する。押出機の温度プロファイルは、5つのゾーン全てで210℃である。押出されたストランドを、ペレット[サイズ?]に切断し、90℃の水浴で4時間硬化させ、次いで、対流式オーブンで、80℃で一晩乾燥させるか、または50℃および75%の相対湿度で、14日間湿度チャンバーで硬化させ、次いで、80℃で一晩乾燥させる。次いで、硬化および乾燥したペレットを、引張試験および伸長試験(1分当たり20インチの速度)のために4インチ×4インチの75ミルのプラークに溶融プレスする。動的振動剪断試験を、190℃で、毎秒100~0.1ラジアンの周波数掃引で行った。配合および試験結果を以下の表に報告する。
【表1】
【0081】
結果および考察
CE-1は、完全に架橋されたシステムであり、典型的な湿気硬化性シランコポリマーを表す。注釈2aのように、化合後に材料をペレット化し、次いで、硬化させた。この化合物は、CE-4での使用のために調製し、熱可塑性ではないため、それ自体では押出可能ではない。
【0082】
CE-2は、幅広いMWD気相LLDPE樹脂を使用した熱可塑性化合物である。化合物は、良好な機械的特性および押出ジャケットの優れた表面平滑性を示す。
【0083】
CE-3は、狭いMWD(nMWD)溶液LLDPE樹脂を使用した熱可塑性化合物である。化合物は、CE-2と比較して優れた機械的特性を示すが、しかしながら、押出ジャケットの表面平滑性は、粗さの値およびより幅広いSTDの両方によって示されるように明らかに劣っている。
【0084】
CE-4は、nMWD LLDPEと20重量%の予備硬化したシランコポリマーとのブレンドである。この実施例は、ベースシステムと比較して著しくより高いV0.1/V100比を示すが、しかしながら、それは、引張および伸長(T&E)データによって示されるように、非常に粗い表面および乏しい機械的特性を有する非常に不均一な押出物をもたらした。この比較例は、触媒の存在下で最初に全ての構成成分を熱可塑性様式で混合し、次いで、最終物品の製造前に化合物を架橋ステップに供することの重要性を実証する。
【0085】
CE-5は、湿気縮合触媒の不在下でのnMWD LLDPEと10重量%のシランコポリマーとの熱可塑性ブレンドである。この実施例は、本発明によって提案された改変を伴わずに、LDPE成分を追加する効果を示す。結果は、このレベルのLDPE添加では、V0.1およびV100の値、ならびにV0.1/V100比、また同等のT&E、および実際にはCE-3に対する表面平滑性の低下によって示されるように、レオロジーにわずかな変化があることを示す。
【0086】
IE-1は、湿気縮合触媒の存在下でのnMWD LLDPEと10重量%のシランコポリマーとの熱可塑性ブレンドである。結果は、CE-5に匹敵し、それらがゼロ剪断粘度(V100のわずかな低減でV0.1がより高い)の顕著な改善を示し、V0.1/V100比の著しい増加をもたらすため、本発明を実証するべきである。T&E性能は許容可能であり、この改変レベルでは、表面平滑性はCE-5(触媒なし)に対して改善されているが、未改変のベース樹脂ケースCE-5に対しては依然として改善されていない。
【0087】
IE-2は、触媒の存在下で化合されたnMWD LLDPEと20%のシランコポリマーとの熱可塑性ブレンドであり、押出前に湿気硬化ステップに供する。この発明例は、同じ濃度レベルで事前架橋されたシランコポリマーを使用するCE-3(ベースLLDPE)およびCE-4に匹敵するべきである。CE-3およびCE-5の両方と比較して、この発明例は、許容可能な機械的特性、V0.1/V100比の増加、ならびに表面平滑性の顕著な改善を示す。
【0088】
IE-3は、触媒の存在下で化合されたnMWD LLDPEと30%のシランコポリマーとの熱可塑性ブレンドであり、押出前に湿気硬化ステップに供する。CE-3(ベースLLDPE)と比較して、この実施例は、V0.1/V100比の著しい増加を示すが、より低い機械的特性、および劣った表面平滑性を示し、最適な特性のための硬化性相の量の好ましい範囲の制限をおそらく示す。以下、本発明の態様を列挙する。
(態様1)
溶融ブレンド組成物であって、前記組成物の重量に基づく重量パーセント(重量%)で、
(A)55~94.99重量%の熱可塑性ポリマーと、
(B)5~44.99重量%の湿気硬化性ポリマーと、
(C)0.01~5重量%の湿気縮合触媒と、を含む、溶融ブレンド組成物。
(態様2)
前記熱可塑性ポリマーが、ポリオレフィンである、態様1に記載の組成物。
(態様3)
前記熱可塑性ポリマーが、ポリエチレンである、態様1に記載の組成物。
(態様4)
前記湿気硬化性ポリマーが、シラン官能化ポリオレフィンである、態様1~3のいずれかに記載の組成物。
(態様5)
前記縮合触媒が、ルイス酸またはルイス塩基である、態様1~4のいずれかに記載の組成物。
(態様6)
前記縮合触媒が、ジブチルスズジラウレートである、態様1~5のいずれかに記載の組成物。
(態様7)
前記縮合触媒が、スルホン酸である、態様1~6のいずれかに記載の組成物。
(態様8)
態様1~7のいずれかに記載の架橋組成物。
(態様9)
態様1~8のいずれかに記載の組成物を含む、ワイヤまたはケーブルシース。
(態様10)
態様9に記載のシースを含む、ワイヤまたはケーブル。