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特許7466463対象手術部位の組織を剪断するための方法及び装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】対象手術部位の組織を剪断するための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20240405BHJP
   A61B 17/32 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
A61F9/007 130H
A61B17/32
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020566192
(86)(22)【出願日】2019-02-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-10
(86)【国際出願番号】 SG2019050089
(87)【国際公開番号】W WO2019160508
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2022-02-07
(31)【優先権主張番号】62/631,960
(32)【優先日】2018-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508320723
【氏名又は名称】シンガポール ヘルス サービシーズ ピーティーイー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】520069615
【氏名又は名称】ベルキン マイケル
(74)【代理人】
【識別番号】100105946
【弁理士】
【氏名又は名称】磯野 富彦
(72)【発明者】
【氏名】ペレラ,シャミラ
(72)【発明者】
【氏名】ベルキン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】コック,アルビン
【審査官】大橋 俊之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0151835(US,A1)
【文献】特開2017-029240(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第01349881(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61B 17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象手術部位の組織を剪断するための手術ツールであって、
遠位端と近位端とを有するカニューレアセンブリであって、細長いチューブの第1管腔を軸方向に通る縦軸に沿う可撓性シース内に前記細長いチューブを備え、前記遠位端は外科用切断ブレードを形成し、傾斜した先端を有する、カニューレアセンブリと、
前記手術ツールの本体内の軸方向玉継ぎ手であって、前記カニューレアセンブリの前記近位端で前記細長いチューブに接続され、回転すると、対象手術部位の組織の一部を剪断するように、前記外科用切断ブレードを前記縦軸の回りに回転させる軸方向玉継ぎ手と、を備える、手術ツール。
【請求項2】
前記対象手術部位は、対象者の眼の線維柱帯である、請求項1に記載の手術ツール。
【請求項3】
前記縦軸に沿って前記可撓性シースと前記細長いチューブとの間に形成される第2管腔を更に備える請求項1に記載の手術ツール。
【請求項4】
前記手術ツールの前記本体に取り付けられ、前記近位端で前記カニューレアセンブリに接続される中央内側ハブ穴及び1以上の外側ハブ穴を有するコネクタハブを更に備え、
前記細長いチューブは、前記コネクタハブの前記中央内側ハブ穴内に設置され、前記コネクタハブの前記1以上の外側ハブ穴は前記第2管腔に接続される請求項3に記載の手術ツール。
【請求項5】
前記本体に、剪断される前記組織の一部を収集するための生検収集チャンバをさらに備える、請求項1に記載の手術ツール。
【請求項6】
前記生検収集チャンバは、剪断される前記組織の一部から組織の小片を捕捉するためのふるいを備える、請求項5に記載の手術ツール。
【請求項7】
前記ふるいは、半球状、平坦、円錐、またはドーム形状である請求項6に記載の手術ツール。
【請求項8】
前記ふるいは、前記生検収集チャンバ内で部分的にカバー範囲を持つ膜である請求項6に記載の手術ツール。
【請求項9】
前記ふるいは、複数の穴を備える請求項6に記載の手術ツール。
【請求項10】
前記外科用切断ブレードで前記一部を剪断する前に、前記遠位端で前記第1管腔へと前記一部を吸い込むように構成されている真空ポンプをさらに備える、請求項1に記載の手術ツール。
【請求項11】
前記第1管腔を通して生検収集チャンバへと剪断される前記組織の一部を吸い込むように構成されている真空ポンプをさらに備える、請求項1に記載の手術ツール。
【請求項12】
前記1以上の外側ハブ穴を通して前記カニューレアセンブリの前記近位端の前記第2管腔に接続される注入チューブを前記手術ツールの前記本体内にさらに備える、請求項に記載の手術ツール。
【請求項13】
前記手術ツールの前記本体に形成され、前記注入チューブに接続される洗浄流体入力口をさらに備える、請求項12に記載の手術ツール。
【請求項14】
前記可撓性シースは、前記手術ツールの前記本体の前記洗浄流体入力口を通して導入される洗浄流体が、前記遠位端の出口穴を通って前記対象手術部位を洗浄し得るように、前記カニューレアセンブリの前記遠位端の近傍の前記第2管腔へと入る前記出口穴を有する、請求項13に記載の手術ツール。
【請求項15】
ユーザにより押されて、前記対象手術部位における切断、吸引、又は注入機能の間を切り替え可能なボタンをさらに備える、請求項1に記載の手術ツール。
【請求項16】
前記対象手術部位の前記組織に真空を適用することと、前記ブレードの回転及び前記対象手術部位から血液を洗い流すための注入との間に所定の時間間隔が用いられる請求項11に記載の手術ツール。
【請求項17】
前記可撓性シースは、膨張可能なシースである請求項1に記載の手術ツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術ツールに関し、さらに具体的には対象手術部位の組織を剪断するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
緑内障は、視野欠損、最終的には失明を引き起こす視神経頭の進行性萎縮を特徴とする疾患群である。緑内障は多くの場合、上昇した眼圧(IOP)に関連付けられ、これは多重のメカニズムを介して視神経線維を傷付けるため、視野欠損の進行に最も重要な危険性要因となる。緑内障の他の原因として、局所循環不良、組織の衰弱、又は構造体の異常によって眼圧に対して神経がとりわけ傷つきやすいということもあり得る。「正常な」眼では、眼圧は10乃至21mmHgの範囲にある。緑内障の眼では、圧力は75mmHgまで上がり得る。IOPは緑内障の唯一の治療可能な面であり、その低下の成功は病気の進行を遅らせるのに効果的である。
【0003】
緑内障には数種類あり、原発性開放隅角(POAG)及び閉塞隅角緑内障が挙げられ、これらは、主に眼からの房水流出の障害による眼圧の異常な上昇を伴う。最も一般的なタイプは原発性開放隅角緑内障で、房水が虹彩角膜角に自由に出入りするが、線維柱帯(TM)の障害により房水排出が損なわれている。閉塞隅角緑内障はとりわけアジア人に一般的で、水晶体の外科的除去又はレーザ周辺虹彩切開術により最初は治療され得る。隅角を広げるためにこれが一度行われると、OAGの場合のように残りの隅角は隅角手術に潜在的に適するが、集合管以降の下流の損傷により、結果はより控えめなものとなり得る。緑内障のあまり一般的でないタイプとしては、炎症、外傷、及び出血に関連する続発性緑内障が挙げられる。これらは、下流の損傷によって又は多重のメカニズムが影響を及ぼしているため、治療がより困難であり得る。
【0004】
OAGは、線維柱帯における閉塞によって引き起こされる。これは眼圧の上昇の原因となる。主な障害は傍小管部分で起こり、これはシュレム管(SC)に隣接して位置している。小さなニードル又はプローブをシュレム管に導入し、管から前房(AC)を開きながら線維柱帯を機械的に破壊する手術(線維柱帯切開術)を行うことができる。房水の管への放出を容易にし、その結果、眼圧を下げるため、線維柱帯の約90°乃至120°はこのようにして破壊できる。
【0005】
現在の全てのOAGの治療は眼圧(IOP)を下げることにより成り立っている。初期治療は、プロスタグランジン類似体、βブロッカ、炭酸脱水酵素阻害薬その他の点眼薬を投与して、房水の流出又は流出増加を容易にすることを伴っている。薬物療法は大多数の緑内障患者にとって、特に長期間にわたると極めて高価である。加えて、病気に苦しめられる多くの人は、医薬品を簡単に入手できない遠隔の又は未開発の地域に住んでいる。治療で使用される医薬品には、多くの場合、好ましくない副作用がある。さらに、50パーセントを超える患者は、彼らの薬物治療を全く使用せず、あるいは最適に使用していないため、点滴薬の複雑な投薬計画の順守及び持続は困難である。
【0006】
IOPの低下の非効率性又は低コンプライアンスによって評価され、薬物治療が失敗すると(例えば、点眼治療が効かなくなる)、レーザ又は外科的治療が使用され得る。緑内障のレーザ手術は、非侵襲的である一方、施設の整った大きな眼科病院に限定される。処置には3つの大きな欠点がある。第1に、処置は、20%の失敗率で、必ず眼の圧力を下げるわけではないかもしれない。第2に、処置の効果は永久でなく、最良のケースのシナリオで数か月から5年間のIOPの低下の継続が見られた。第3に、レーザ手術は線維柱帯の裏に瘢痕を作る場合がある。さらに、レーザ手術がもはや選択肢でない場合、患者は従来の手術の選択肢に頼るほかない。
【0007】
IOPを下げる最も一般的な手術は保護式濾過手術(線維柱帯切除術)であり、ここでは、角膜輪部の強膜に作られた瘻孔が上乗せされた部分的な厚みを有する縫合された強膜フラップにより保護される。強膜フラップは、眼球から房水の過剰な損失に対し追加的な抵抗を提供し、その結果、術後早期の低眼圧症の危険性を軽減させる。しかしながら、瘢痕は、とりわけアジア人人口においては、非常に一般的で、有害作用を制限しつつ抗線維化剤の一般的使用が、他の眼組織に対するこれらの薬剤の毒性のバランスを取りつつ必要とされる。
【0008】
例えば、殆どが開発途中で、部分的にのみ実用化されている、様々な最小限の侵襲的な処置及びインプラントその他の眼科インプラント器具を使用して、濾過手術の課題を克服するために様々な試みがこれまで行われてきており、現在でも行われている。アーメド緑内障ドレナージ装置等の緑内障ドレナージ装置が後に使用されている。このような装置は、IOPを抜くために眼球に作られた開口の完全性を維持するように、典型的にドレナージチューブを備える。このようなドレナージ装置はいくつかのデメリットに悩まされる。例えば、インプラントは眼球からの房水の流出を規制するためのバルブメカニズムを利用していてもよく、このようなバルブメカニズムにおける欠陥及び/又は不具合は、房水の過剰な放出及び低眼圧症の可能性の原因になりかねない。これらの装置は、結膜瘢痕から時の経過によって不具合を起こす傾向がある。
【0009】
さらに、典型的なインプラント挿入作業は複雑で、そして高額で時間を要する。多くの場合は、既存の瘢痕又は再手術の人といった複雑な緑内障の問題のために保留されている。より近年には、様々なインプラントが虹彩角膜角に挿入され、線維柱帯の閉塞をバイパスすることを伴う、低侵襲緑内障手術(MIGS)の使用が広がっている。これらは高価でさらなる技術が必要となる。これらの装置は典型的に線維柱帯における閉塞を対処し、有効性が制限的であるという問題があるが、線維柱帯切除術よりもはるかに安全である。これらは一般に白内障手術と併せて使用される。線維柱帯を対象とするMIGSのうちのいくつかは、120度を超えてTMを剥がすブレードがあるが、どれほどの損傷を管の後壁が受けるのか及び他の組織への付随的損傷に対する懸念がある。
【0010】
他には、管内に置かれて、TMをバイパスするのみならず管を拡げるインプラントがある。線維柱帯内のいくつかのインプラントは、より多くがTM内に置かれると、さらに劇的なIOP低下効果があることを示したが、当然これには費用がかかる。MIGSのより使用が困難なタイプのものには、管に挿入され360度通される光ファイバーカテーテルの使用が含まれる。眼内にインプラントを残すことなくカテーテルが引き抜かれる際に、管及び集合管を拡げるために粘弾性剤が使用される。最後に、米国食品医薬品局(FDA)は現在、ある脈絡膜上腔インプラントを、角膜の内皮細胞に有害作用があるため、市場から回収させている。
【0011】
これらの全てが失敗した場合、他の治療の形態には、眼への房水の分泌を減少させて、その結果、IOPを下げるため、一般にレーザ又は高周波超音波を当てることにより、眼の毛様体を物理的又は熱的破壊すること(「毛様体破壊」)が含まれる。これは、未だ頻繁に観察されている低眼圧症を引き起こすやり直し処置や過剰処置によって、さらなる視力喪失の原因になりかねず、影響の予測ができない可能性があるため、視力の低下した眼に対しては保留されている。
【0012】
比較的新しい技術に、発振波長308nmのXeClエキシマレーザーを使用したアブ インテルノ式のエキシマレーザー線維柱帯切開術(ELT)がある。ELTは、シュレム管の内壁の前部網に0.5mmの孔を作ることで房水流出率を高めるために開発された。この技術は、非常に高価で大きなレーザを非常に有毒なガスとともに使用することを伴う。308nmの波長は水では伝送されないからである。前房に挿入されたプローブを通してレーザビームがTMに当てられ、0.5mm以上の孔を作っているTMに触れる。これが、眼からプローブが取り外されることなく6乃至10回繰り返される。ELTは、IOPを下げるには非常に効果的だが、価格及び器具の複雑さから一般的には利用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
治療選択肢の限定的な有効性を考慮すると、さらに効果的で、繰り返し可能で、インプラントなしで、あまり破壊的でない緑内障治療、とりわけ、眼の線維柱帯の後壁を破壊せず眼の線維柱帯の後壁に触れない治療が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのため、本発明のいくつかの実施形態によると、対象手術部位の組織を剪断するための手術ツールが提供されている。前記手術ツールは遠位端と近位端とを有するカニューレアセンブリと、前記遠位端で前記カニューレアセンブリの管腔内へと入るカニューレ開口部と、前記遠位端の細長いチューブ及び前記カニューレ開口部内に接続されている切断装置と、軸方向玉継ぎ手とを備えてもよい。前記手術ツールの前記本体内の前記軸方向玉継ぎ手は、前記カニューレアセンブリの前記近位端に接続されて、回転すると、対象手術部位の組織の一部を剪断するように前記遠位端の前記切断装置を前記カニューレアセンブリの前記管腔を軸方向に通る縦軸の回りに回転させる。
【0015】
さらに本発明のいくつかの実施形態によると、前記対象手術部位は、対象者の眼の線維柱帯である。
【0016】
さらに本発明のいくつかの実施形態によると、前記カニューレアセンブリの前記遠位端は、湾曲した内向き形状を有する。
【0017】
さらに本発明のいくつかの実施形態によると、前記カニューレアセンブリの前記遠位端は、傾斜した先端を有する。
【0018】
さらに本発明のいくつかの実施形態によると、前記手術ツールは、外側チューブを備えてもよく、前記カニューレアセンブリが前記縦軸に沿って軸方向に通る前記外側チューブ内に設置され、前記カニューレアセンブリが前記外側チューブ内で回転可能である。
【0019】
さらに本発明のいくつかの実施形態によると、前記外側チューブは回転不能である。
【0020】
さらに本発明のいくつかの実施形態によると、前記切断装置は、前記カニューレ内の中間点まで放射状に延びている又は前記カニューレ開口部の同一平面上にある。
【0021】
さらに本発明のいくつかの実施形態によると、前記切断装置は外科用切断ブレードである。
【0022】
さらに本発明のいくつかの実施形態によると、前記切断装置は切断ワイヤである。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態によると、対象手術部位の組織を剪断するための手術ツールがさらに提供されている。前記手術ツールは、カニューレアセンブリと、外科用ブレードと、コネクタハブと、軸方向玉継ぎ手とを備えてもよい。遠位端と近位端とを有する前記カニューレアセンブリは、細長いチューブの第1管腔を軸方向に通る縦軸に沿う可撓性シース内に前記細長いチューブを有してもよい。前記縦軸に沿って前記シースと前記細長いチューブとの間に第2管腔が形成されてもよい。前記外科用ブレードは前記遠位端で前記細長いチューブに接続されてもよい。前記手術ツールの本体に取り付けられる前記コネクタハブは、前記近位端で前記カニューレアセンブリに接続される中央内側ハブ穴及び1以上の外側ハブ穴を有してもよい。前記細長いチューブは、前記コネクタハブの前記中央内側ハブ穴内に設置されてもよい。前記コネクタハブの前記1以上の外側ハブ穴は前記第2管腔に接続されてもよい。前記手術ツールの前記本体内の前記軸方向玉継ぎ手は、前記カニューレアセンブリの前記近位端で前記細長いチューブに接続され、回転すると、対象手術部位の組織の一部を剪断するように前記遠位端の前記外科用ブレードを前記縦軸の回りに回転させてもよい。
【0024】
さらに本発明のいくつかの実施形態によると、前記剪断される部分は、眼の線維柱帯から切除される眼組織を備えてもよい。
【0025】
さらに本発明のいくつかの実施形態によると、前記手術ツールは、前記本体に組織の前記剪断される部分を収集するための生検収集チャンバを備えてもよい。
【0026】
さらに本発明のいくつかの実施形態によると、前記生検収集チャンバは前記剪断される部分から組織の小片を捕捉するためのふるいを備えてもよい。
【0027】
さらに本発明のいくつかの実施形態によると、前記手術ツールは、前記外科用ブレードで前記一部を剪断する前に、前記遠位端で前記第1管腔へと前記一部を吸い込むように構成されている真空ポンプを備えてもよい。
【0028】
さらに本発明のいくつかの実施形態によると、前記手術ツールは、前記第1管腔を通して生検収集チャンバへと前記剪断される部分を吸い込むように構成されている真空ポンプを備えてもよい。
【0029】
さらに本発明のいくつかの実施形態によると、前記手術ツールは、前記1以上の外側ハブ穴を通して前記カニューレアセンブリの前記近位端の前記第2管腔に接続される注入チューブを前記手術ツールの前記本体内に備えてもよい。
【0030】
さらに本発明のいくつかの実施形態によると、前記手術ツールは、前記手術ツールの前記本体に形成され、前記注入チューブに接続される洗浄流体入力口を備えてもよい。
【0031】
さらに本発明のいくつかの実施形態によると、前記可撓性シースは、前記手術ツールの前記本体の前記洗浄流体入力口を通して導入される洗浄流体が、前記遠位端の出口穴を通って前記対象手術部位を洗浄し得るように、前記カニューレアセンブリの前記遠位端の近傍の前記第2管腔へと入る前記出口穴を有してもよい。
【0032】
さらに本発明のいくつかの実施形態によると、前記手術ツールは、ユーザにより押されて、前記対象手術部位における切断、吸引、又は注入機能の間を切り替え可能なボタンを備えてもよい。
【0033】
本発明のいくつかの実施形態によると、対象手術部位の組織を剪断するための方法がさらに提供されている。方法は、手術ツールのカニューレアセンブリの遠位端を対象手術部位にナビゲートする工程を備え、前記手術ツールは、前記カニューレアセンブリと、外科用ブレードと、コネクタハブと、軸方向玉継ぎ手とを備えてもよい。前記遠位端と近位端とを有する前記カニューレアセンブリは、細長いチューブの第1管腔を軸方向に通る縦軸に沿う可撓性シース内に前記細長いチューブを有し、前記縦軸に沿って前記シースと前記細長いチューブとの間に第2管腔が形成されている。前記外科用ブレードは前記遠位端の前記細長いチューブに接続されてもよい。前記手術ツールの本体に取り付けられる前記コネクタハブは、前記近位端で前記カニューレアセンブリに接続される中央内側ハブ穴及び1以上の外側ハブ穴を有してもよい。前記細長いチューブは、前記コネクタハブの前記中央内側ハブ穴内に設置されてもよい。前記コネクタハブの前記1以上の外側ハブ穴は前記第2管腔に接続される。前記手術ツールの前記本体内の前記軸方向玉継ぎ手は、前記カニューレアセンブリの前記近位端で前記細長いチューブに接続され、回転すると、前記遠位端の前記外科用ブレードを前記縦軸の回りに回転させてもよい。前記方法は、前記軸方向玉継ぎ手を回転させることで前記対象手術部位の組織の一部を剪断する工程を備えてもよい。
【0034】
さらに本発明のいくつかの実施形態によると、前記組織の前記一部を剪断する工程は、眼の小柱網から眼組織を切除することを含んでもよい。
【0035】
さらに本発明のいくつかの実施形態によると、前記方法は、前記第1管腔を通して生検収集チャンバへと前記剪断される部分を吸い込むように、前記第1管腔に真空を適用することによって生検サンプルを採取する工程を備えてもよい。
【0036】
さらに本発明のいくつかの実施形態によると、前記方法は、前記カニューレアセンブリの前記遠位端の近傍の前記第2管腔から前記可撓性シースの出口穴を通る洗浄流体で前記対象手術部位を洗浄する工程を備えてもよい。
【0037】
さらに本発明のいくつかの実施形態によると、前記方法は、前記外科用ブレードで前記一部を剪断する前に前記遠位端の前記第1管腔へと前記対象手術部位の眼組織の前記一部を吸い込む工程を備えてもよい。
【0038】
さらに本発明のいくつかの実施形態によると、前記方法は、前記組織部分を前記遠位端の前記第1管腔へと吸い込んだ後、所定の時間間隔内で前記対象手術部位の前記組織部分を前記外科用ブレードで剪断し、洗浄流体で前記対象手術部位を洗浄する工程を備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
本発明がより理解され、その実用的な適用が理解されるために、以下の図面が提供され、以降で参照される。図面は例としてのみ提示され、いかなる場合でも本発明の範囲を制限することはないことに注意すべきである。類似の構成要素は類似の参照番号で示される。
図1】本発明のいくつかの実施形態による、低侵襲線維柱帯切開術(MINT)を眼に施す手術器具を保持する医者の手を模式的に示す。
図2】本発明のいくつかの実施形態による、眼の拡大図を、線維柱帯の一部分に垂直に位置付けられたカニューレアセンブリの遠位端と共に模式的に示す。
図3A】本発明のいくつかの実施形態による、ペングリップ形状要素を有する手術ツールの第1実施形態を模式的に示す。
図3B】本発明のいくつかの実施形態による、ピストル形状要素を有する手術ツールの第2実施形態を模式的に示す。
図4】4Aは、本発明のいくつかの実施形態による、カニューレアセンブリを模式的に示す。4Bは、本発明のいくつかの実施形態による、切断ブレードを有するカニューレアセンブリを模式的に示す。4Cは、本発明のいくつかの実施形態による、ブレードの拡大図を模式的に示す。4Dは、本発明のいくつかの実施形態による、ブレードを有するカニューレアセンブリの遠位端の断面図を模式的に示す。4Eは、本発明のいくつかの実施形態による、切断ワイヤを有するカニューレアセンブリを模式的に示す。4Fは、本発明のいくつかの実施形態による、切断ワイヤを有するカニューレアセンブリの遠位端の断面図を模式的に示す。
図5A】本発明のいくつかの実施形態による、カニューレハブに取り付けられた膨張可能なシースを有するカニューレアセンブリを模式的に示す。
図5B】本発明のいくつかの実施形態による、カニューレハブに取り付けられたカニューレアセンブリの右方斜視図を模式的に示す。
図5C】本発明のいくつかの実施形態による、カニューレハブに取り付けられたカニューレアセンブリの左方斜視図を模式的に示す。
図6】本発明のいくつかの実施形態による、ピストル形状要素を有する手術ツールの断面側面図を模式的に示す。
図7A】本発明のいくつかの実施形態による、ロッキングインターフェースを模式的に示す。
図7B】本発明のいくつかの実施形態による、ロッキングインターフェースの断面図を模式的に示す。
図8A】本発明のいくつかの実施形態による、手術ツールの第3実施形態の側面図を模式的に示す。
図8B】本発明のいくつかの実施形態による、手術ツールの第3実施形態の斜視図を模式的に示す。
図9A】本発明のいくつかの実施形態による、カニューレアセンブリの第2実施形態の側面図を模式的に示す。
図9B】本発明のいくつかの実施形態による、カニューレアセンブリの第2実施形態の斜視図を模式的に示す。
図9C】本発明のいくつかの実施形態による、カニューレアセンブリの第2実施形態の断面図を模式的に示す。
図10】本発明のいくつかの実施形態による、対象手術部位の組織を剪断するための手術器具を制御するためのシステムを模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下の詳細な説明では、数々の具体的な詳細が、本発明を十分に理解するために説明されている。しかしながら、本発明はそれらの具体的詳細なしで実施され得ることが当業者に理解されるであろう。他の例では、周知の方法、手順、構成要素、モジュール、ユニット、及び/又は回路は、本発明を曖昧にしないように詳細に説明されていない。
【0041】
本発明の実施形態はこの点に限定されないが、例えば、「処理(processing)」、「演算(computing)」、「計算(calculating)」、「判定(determining)」、「確証(establishing)」、「分析(analyzing)」、「検査(checking)」等の用語を利用する考察は、コンピュータ、コンピューティングプラットフォーム、コンピューターシステム、又は、コンピュータのレジスタ及び/又はメモリ内の物理的(例えば、電子的)量として表されるデータを、同様にコンピュータのレジスタ及び/若しくはメモリ、又は動作及び/又は処理を行う命令を記憶してもよい他の情報非一時的記憶媒体(例えば、メモリ)内の物理的量として表される他のデータへと操作及び/又は変換する、他の電子コンピューティングデバイスの動作及び/又は処理を言及してもよい。本発明の実施形態はこの点に限定されないが、本明細書中で使用される「複数(plurality)」又は「複数(a plurality)」という用語は、例えば、「多数(multiple)」又は「2以上(two or more)」を含んでもよい。「複数(plurality)」及び「複数(a plurality)」という用語は、2以上の構成要素、装置、要素、ユニット、パラメータ等を説明するために明細書中にわたり使用されてもよい。明示的に述べられていない限り、本明細書中で説明されている方法の実施形態は、特定の順番又は順序に制約されない。さらに、記載の方法の実施形態又はその要素のいくつかは、同時に、時間における同じ点において、又は並行して発生又は行われることができる。特記のない限り、本明細書中で使用される「又は(or)」の接続詞の使用は、包括的(述べられた選択肢のいくつか又は全て)であると理解される。
【0042】
本明細書中の本発明の実施形態は対象手術部位の組織を剪断するための手術ツールを説明する。手術ツールは、遠位端と近位端とを有するカニューレアセンブリと、遠位端でカニューレアセンブリの管腔へと入るカニューレ開口部と、遠位端及びカニューレ開口部内に接続される切断装置と、手術ツール内の軸方向玉継ぎ手とを備えてもよく、軸方向玉継ぎ手はカニューレアセンブリの近位端に接続され、回転すると、対象手術部位の組織の一部を剪断するように、遠位端の切断装置をカニューレアセンブリの管腔を軸方向に通る縦軸の回りに回転させる。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態では、剪断された組織部分は病理分析用の生検サンプルとして使用されてもよい。手術ツールは、対象者の身体の任意の位置の組織の層を分離させるために使用されてもよい。手術ツールは、例えば、組織の上層を取り除き、組織の下層は対象手術部位に無傷で残すように使用されてもよい。下記のように眼手術及び眼の生検サンプルの採取のために手術器具を使用することに加えて、例えば、真空補助下生検、癌の生検、又は皮膚の生検で使用されてもよい。
【0044】
本発明の実施形態は以下に低侵襲手術器具をさらに説明するが、低侵襲手術器具は眼の線維柱帯の一部を取り除くため、小さな角膜の切開を通して挿入されてもよく、その結果、緑内障の治療において、房水の排出を可能にする。組織の除去は機械的手段又は他の組織破壊技術によって実現されてもよい。
【0045】
手術器具はまた、吸引システムを備えてもよい。吸引システムは、剥離組織、ガス及び気泡の形成、並びに生成された全ての眼内破片を取り除くように構成されてもよい。除去された線維柱帯組織は、さらなる分析のために生検チャンバに収集されてもよい。
【0046】
手術器具は、眼の隅角の線維柱帯及びシュレム管への容易なアクセスを得るために、注入システムに接続されて、前房を維持して深めてもよい。注入は、手術が行われている最中に流体を集合管へと流出させることもできるため、手術部位に血液がないように保ち、執刀医がはっきりと見ることを可能にする。
【0047】
当該手術器具は緑内障治療のための簡単な外科的ソリューションを提供する。ELTのようなシュレム管の開窓術を行うが、さらにより簡単で安い器具を使用する。実施形態によっては、手術器具は、iStent注入(Glaukos社)及びHydrusステント(Ivantis)等の機械的装置の使い勝手の良さを組み合わせてもよいが、虹彩によって潜在的にブロックされ得る場所又は角膜の損傷を引き起こし得る場所に装置を残さない。TMをバイパスし、カフークデュアルブレード(KDB)等の装置を残さない他の低侵襲緑内障手術(MIGS)治療は、例えば、使用が難しい。このことはSCに重大な損傷を引き起こす場合があり、標的化した正確な外科的穿孔処置よりも隣接する組織に損傷(例えば、虹彩離断及びデスメ膜剥離)を引き起こしやすい場合がある。アブ インテルノ式の管形成処置(ABiC)は、より高価で高機能な機器を必要とし、行うことが技術的により難しいが、潜在的に集合管を拡げる唯一のMIGS処置であり得るというメリットも有する。
【0048】
要約すると、正確なTM標的化等のELT処置のいくつかのメリットと、実証済みの長期のIOPコントロールをコスト削減及び機械的TM MIGSの使いやすさと共に提供する複合処置としては、当該複合処置は、先行技術により妨げられない固有の処置として有望である。このことはまた、ゴニオスコピー補助経腔的線維柱帯切開術(GATT)のようなより外科的に破壊的な隅角処置とKDB及びiStent注入等の正確だがより予測困難で高価な装置との均衡をうまくとる。さらに、IOPの低下が実現されるとしても、より多くのiStent注入をインプラントすることは人にとってはより高価となるため可能ではないが、繰り返し可能な処置としての低侵襲線維柱帯切開術(MINT)は、追加費用なしでTMの穿孔をより多く提供し得る。このようにして、標的化し得るTMの最適な円周又は最適な数の穴が作られ得る。iStentが不正確に挿入された場合、機能不全となり、そのチャンスは失われる。しかしながら、穿孔が不正確に位置しても、正しい場所にまた1つあければよいので、学習曲線がそれほど急勾配でない。
【0049】
前述したように臨床的適応に基づく、本明細書中で説明されている手術器具は、原発性開放隅角緑内障の全ての形態を治療し得る。他のMIGSと同様に、開放された隅角又は閉塞隅角緑内障におけるTMのアクセス可能箇所を処置するために適し得るが、かさばる装置がその場に残されて、虹彩によりブロックされる又は慢性的な炎症とその後遺症を潜在的に引き起こすことがないので、より成功しやすい。
【0050】
市場には様々なTM MIGS処置が存在する。切除又は処置されたTMに対する量に関して、MINTはiStent注入を超えるもの及びKDBと同等のものを提供するが、ゴニオスコピー補助経腔的線維柱帯切開術(GATT)又はTMの360度を標的とするTrab360の処置ほどではない。使いやすさに関して、MINTはABiC及びHydrusよりも実施しやすいが、iStent注入よりは若干難しいかもしれない。前房内の血液に起因する視覚回復の遅れに関しては、これはKDB及びGATTよりは少ないが、同様に、TMの大きな部分を除去するのとは反対に血液を出すには小さな穴しかないという点で、iStent注入及びHydrusと同等かもしれない。
【0051】
Xen45(アラガン)、Innfocus Microshunt、及びCyPass(アルコン)等の競合する非TM MIGS装置と比べて、MINTの主たるデメリットは、例えば、IOPを上強膜静脈圧(例えば、11mmHg)未満に下げる能力である。ところが、TM MIGSとしては、逆に、視力を脅かす視覚的合併症を伴う低眼圧症の原因となるこのレベルをIOPが下回らないという利点を有している。これらの予測不能な合併症は回避することが困難で、成し遂げなくてはならない手術がさらに必要となる。この低眼圧症はTM MIGSでは起こり得ない。
【0052】
本発明の実施形態では、手術器具は、隣接する組織の損傷を減らすように、適切な装置のデザインによって実現されてもよい、以下の特徴を持っていてもよい。
【0053】
挿入の容易さ:2.65mmの角膜の創傷を通して挿入される手術器具装置の小さな先端形状。
【0054】
切除の容易さ:中空インナーチャンバ内に固定された切断ブレード又は切断ワイヤを有するカニューレであって、カニューレは眼の線維柱帯に対し垂直/接線方向に挿入及び進路変更動作を行うように縦軸に沿って回転できる。代替的にカニューレを通して伝送されるレーザビームを使用して対象組織を切除してもよい。
【0055】
吸引の容易さ:最小限の組織処置又は周囲組織への損傷で切除した線維柱帯を採取する能力。
【0056】
最小限の損傷:組織表面でカニューレ先端が摩耗した場合であっても周囲の線維柱帯への損傷を防ぐため、カニューレ先端外壁形状は内向きに湾曲していてもよい。
【0057】
両手利きの片手使用のための手持ち型の手術器具装置は、ピストル又はペングリップの形状要素を有していてもよい。
【0058】
手術器具装置はバッテリ式で完全に携帯可能であってもよい。
【0059】
手術器具装置には、切除された線維柱帯生検収集のための生検チャンバが搭載されていてもよい。
【0060】
手術器具装置は、前房を維持して深め、手術部位を洗浄してその領域に血液がないようにするために注入システムに接続されていてもよいオプションの注入口を備えていてもよい。
【0061】
手術器具装置は、カニューレアセンブリを備えてもよく、カニューレアセンブリは、カニューレ先端内で放射状に延び、カニューレ先端に対して面一の切断ブレード又は切断ワイヤを有する、眼内で一時的な外科的使用をするための使い捨て可能な医療的に承認された材料であってもよい。
【0062】
カニューレは、手持ち型手術ツールに接続された際に分離して独立的なチャンバを形成するための2つのルアーロック接点を有する「デュアルハブ」機構を有してもよい。
【0063】
カニューレは、注入を提供するようにその長さに沿って巻かれた柔らかく膨張可能及び可撓性なシースを備えてもよく、遠位端の近傍のシースにおける1以上の穴から洗浄流体が流出してもよい。
【0064】
本明細書中で説明されている本発明の実施形態は、緑内障の治療のための眼科用手術器具及び方法に関する。緑内障は様々な形態の開放隅角緑内障(OAG)であってもよい。緑内障の治療のための方法は、機械的切断、剪断、焼灼、切除、蒸発、又は他の適切な組織破壊技術によって線維柱帯(TM)のいくつかの小さな個別部分の除去を含んでもよく、これにより眼の前房からSCへの流路が妨害されないようにできる。方法はまた、切除された組織生検の吸引及び収集を含んでもよい。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態では、手術器具は眼の前房又は後房内に注入するための装置を任意に備えてもよい。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態では、手術器具は手持ち型携帯可能手術装置に取り付けられた使い捨てカニューレを備えてもよい。他の実施形態では、カニューレは使い捨てであってもよい。使い捨てカニューレは、カニューレ先端内で放射状に延び、カニューレ先端に対して面一の切断ブレード又は切断ワイヤを有する、眼内で一時的な外科的使用のための使い捨て可能な医療的に承認された材料からできていてもよい。眼の線維柱帯に対し垂直及び接線方向に挿入され、手持ち型装置により吸引が適用された場合、線維柱帯の一部がカニューレ内へと吸い込まれる。そして、カニューレは、中空チャンバ内で線維柱帯をきれいに切除する剪断作業を行うように、その縦軸に沿って回転してもよい。剪断作業はその後、所望するIOPの低下に従って、TMの他の部分で繰り返されてもよい。
【0067】
カニューレは流路注入に平行に延びるチューブを伴ってもよく、チューブは前房を維持して深め、視認性を高めるためにその領域に血液がないように保つように手術部位を洗浄する。他の実施形態では、カニューレを巻いている柔らかい膨張可能なシース(例えば、シリコン)が、注入を提供するように使用されてもよく、膨張可能なシースではその長さに沿って巻かれた柔らかく膨張可能及び可撓性なシースを備えてもよく、カニューレ先端の近傍のシースに形成された穴から洗浄流体が流出してもよい。
【0068】
さらに他の実施形態では、カニューレは焼灼、蒸発、又は他の組織破壊的技術により実質的には完全な組織除去が可能なレーザプローブであってもよい。組織の焼灼又は蒸発を可能にするために、線維柱帯の近接部のプローブ内にファイバが保持され、これがプローブ先端の遠位端に光エネルギーを指向する。注入能力を有するカニューレは、2.65mmの角膜の創傷を通した挿入のために小さな先端形状を有していてもよい。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態では、手術器具はバッテリ式手持ち型ツールであってもよく、これはカニューレの回転及び洗浄流体の注入率を操作及び制御する。手術器具は、カニューレの操作及びTM組織の剪断を可能にするための電気ロータを備えてもよい。手術器具は、切除された線維柱帯を閉じ込めるための収集チャンバを備えてもよい。
【0070】
本発明のいくつかの実施形態では、手術器具は、吸引又は注入を制御するポンプシステムと、携帯使用を可能にするバッテリと、回転及び注入の作動を切り替える1以上のトリガーボタンと、洗浄流体入力口とを備えてもよく、洗浄流体入力口は分離した注入システム又は装置内に組み込まれているかのいずれかに任意に接続されてもよい。手術器具はピストル又はペングリップの形状要素又は両手利きの片手使用に適切なその他の形状要素を有してもよい。
【0071】
稼働中、手術器具は、線維柱帯の一部を除去し、房水が前房から通って上強膜静脈系に繋がるシュレム管へ、そしてその結果、身体の全身循環系へと自由に出入りできるようにすることでIOP低下の効果を発揮してもよい。多数の切除部位が1以上の集合管を露出できるように、より大きな排出領域のため、線維柱帯周りの放射状(例えば、眼40周り)に、異なる時計時刻(例えば、異なる角度)で行われてもよい。
【0072】
本明細書中で説明されている手術ツールを使用する緑内障治療の方法は、簡単、効果的、低費用、低侵襲的、インプラント不能な緑内障治療の選択肢である。
【0073】
図1は、本発明のいくつかの実施形態による、眼40に低侵襲線維柱帯切開術(MINT)を施す手術器具15を保持する医者の手10を模式的に示す。手術器具15は、本明細書中でMINT手術器具、手術ツール、又はMINT手術ツールと呼ばれる又は同義で使用されてもよい。手術器具15は、遠位端23を有する、典型的に使い捨てアタッチメントである、カニューレアセンブリ20を備えてもよい。カニューレアセンブリ20は、軸25に沿って斜めに、切開部35を介して角膜45を通って眼40の中へ挿入されるように構成されていてもよい。図1の下部に示される眼40は、まぶた32と、強膜34と、瞳孔31と、角膜縁38(例えば、角膜強膜接合部)とを含む。
【0074】
図2は、本発明のいくつかの実施形態による、眼40の拡大図を線維柱帯68の一部分に垂直に位置付けられたカニューレアセンブリ20の遠位端23と共に模式的に示す。図2は、眼40の解剖学的特徴を模式的に示す。これらの解剖学的特徴は、角膜45、シュレム管66、線維柱帯68、虹彩角膜角70、毛様体上皮71、毛様筋72、角膜縁38、虹彩36、毛様体突起76、毛様体扁平部78、強膜80、及び網膜82を含んでもよい。
【0075】
本発明のいくつかの実施形態では、カニューレアセンブリ20は、一般的に長さ2.65mmの、角膜創傷切開部35を通して、例えば軸25に沿って挿入されてもよい。角膜創傷切開部35は、一般的に角膜縁38の近傍で、角膜45の任意の適切な位置に作られてよい。遠位端23は、図1の矢印26によって示されるように線維柱帯68に沿って異なる点にて眼40の線維柱帯68(例えば、図2の矢印69によって示される対象手術部位)に垂直及び接線方向に置かれてもよい。矢印26は、医者が手術ツール15の遠位先端23を前房内でナビゲートする際における、角膜創傷切開部35を通る軸25の異なる軌道を表してもよい。遠位端23は任意の適切な構成のブレード30を備えてもよい。カニューレアセンブリ20が、矢印88により示される縦軸25に沿って一般的に360度だけ回転すると、線維柱帯68の組織の部分89が切除され得る。眼組織の部分89は、例えば、緑内障の又は他の病理学的組織が存在するか判定するための検査のための生検組織サンプルとして使用されてもよい。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態では、手術器具15は、緑内障の治療において、房水排出を増加させ、IOPを下げるように、眼40の線維柱帯68の部分89を取り除くために使用されてよい。
【0077】
本発明のいくつかの実施形態では、手術器具15は、例えば、矢印により示されるように真空88を作り出し、軸25に沿って切除された生検組織サンプル89を吸引するための真空ポンプ等の吸引システムを備えてもよい。吸引システムは、剥離組織、ガス及び気泡形成、並びに外科的処置の最中に作られた他の全ての眼内破片を取り除くように設計されてもよい。他の実施形態では、手術器具15の使用は眼の緑内障の眼疾患の生検に限らず、他のタイプの眼疾患の生検サンプルを収集する(例えば、任意のタイプの眼組織を切除する)ために使用されてもよい。
【0078】
さらに、吸引システムは、線維柱帯から生検組織89を採取することの補助に使用されてもよい。例えば、真空88は組織をカニューレアセンブリ20内へと吸い込んでもよく、ここでブレード30が、組織サンプルをねじって及び/又は剪断するために360度回転してもよく、ここで真空88が生検サンプル89を収集チャンバ内に吸い込んでもよい。実施形態によっては、手術器具15は吸引した生検組織サンプル89を収集するための収集チャンバを備えてもよい。
【0079】
本発明のいくつかの実施形態では、手術ツール130は、処置中に眼40の前房を維持して深めるように、眼40に洗浄流体を注入する注入システムに接続されてもよい。眼40の深められた前房は、眼科執刀医が、線維柱帯68及びシュレム管66への容易なアクセスによって遠位端23を軸25に沿って眼40内へ挿入することを可能にする。洗浄流体は、このように手術部位に血液のないように保って手術を行っている間、カニューレアセンブリ20の遠位端23から流出してもよく、執刀医が手術部位をはっきり視認するようにできてもよい。別の言い方をすると、洗浄流体は、例えば、房水等の流体の喪失により医療処置中に眼が虚脱することを防ぐために使用されてもよい。
【0080】
実施形態によっては、洗浄流体又は注入流体は、注入のための平衡塩類溶液(BSS)を含んでもよい。他の実施形態では、洗浄流体は医療処置中に眼の中に導入されてもよい薬物を含んでもよい。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態では、対象手術部位の組織に真空を適用することと、ブレードの回転及び対象手術部位から血液を洗い流すための注入との間に時間的な遅延(例えば、所定の時間間隔)が利用されてもよい。0乃至1秒の範囲の時間的な遅延は、切断ブレードで組織を剪断する前に遠位端23内に組織を吸い込むために十分な負圧が対象手術部位の組織に蓄積することを可能にしてもよい。
【0082】
図3Aは、本発明のいくつかの実施形態による、ペングリップ形状要素を有する手術ツール15の第1実施形態を模式的に示す。ペングリップ形状要素は、両手利きの片手使用を許容してもよい。ペングリップ形状要素を有する手術ツール15は、手術ツールの手持ち部分に接続されるカニューレハブ140回りに回転するカニューレアセンブリ20を備えてもよい。実施形態によっては、手術ツール15のボタン100及び102が割り当てられて、回転/吸引機能及び注入機能を作動させてもよい。
【0083】
他の実施形態では、手術ツール15は1つ又は2つのボタンを有してもよい。1つのボタンが使用される実施形態では、1つのボタンを、医師が例えば、回転、吸引、及び/又は注入機能の間で切り替えてもよい。実施形態によっては、1つのボタンは手術ツール15の本体に存在していなくてもよく、手術ツール15の回転(例えば、切断)、吸引、及び/又は注入機能の間で切り替えるように、ユーザ(例えば、医者)によって使用される手術ツール15に接続されてもよいフットペダル又は起動ペダルとして実装されてもよい。
【0084】
例えば、執刀医が外科用メスで角膜に1.8乃至2.7mmの切開部を作った後、執刀医は手術ツール15の遠位端23を挿入して対象手術部位(例えば、線維柱帯)に遠位端23をナビゲートし、対象手術部位で回転(例えば、切断)、吸引及び/又は注入機能の間を切り替える1つのボタンを押して装置を作動させてもよい。
【0085】
図3Bは、本発明のいくつかの実施形態による、ピストル形状要素を有する手術ツール130の第2実施形態を模式的に示す。実施形態によっては、手術ツール130は、カニューレハブ140と、遠位端23を有するカニューレアセンブリ20と、トリガ135とを備えてもよい。カニューレアセンブリ20は、膨張可能なシース110と、遠位端23にブレード30を有するカニューレ105とを備えてもよい。カニューレ105は、近位端でカニューレハブ140と接続されてもよい。手術ツール130のボタン133及び135が割り当てられ、例えば、回転/吸引機能及び/又は注入機能を起動してもよい。
【0086】
図4Aは、本発明のいくつかの実施形態による、カニューレアセンブリ20を模式的に示す。生検カニューレアセンブリ20の一般的な長さは20乃至25mmである。
【0087】
図4Bは、本発明のいくつかの実施形態による、切断ブレード152を有するカニューレアセンブリ20を模式的に示す。当該ブレード穿孔の実施形態は、断面直径が一般的に0.5mm以上の開口部150を有するブレード152を備えてもよい。
【0088】
図4Cは、本発明のいくつかの実施形態による、ブレード152の拡大図を模式的に示す。ブレード152の背後にはカニューレ105の管腔への開口部150。
【0089】
図4Dは、本発明のいくつかの実施形態による、ブレード152を有するカニューレアセンブリ20の遠位端23の断面図を模式的に示す。開口部150は、一般的に直径(例えば、カニューレ105の直径)0.5mm以上であってもよい。カニューレ壁からカニューレアセンブリ20の外縁までの距離は、矢印156で示されるように一般的に0.15mmであってもよい。図4Dに示されるマーカー154でのブレード152の幅は一般的に0.02mmであってもよい。ブレード152は、カニューレ先端(例えば、遠位端23)内の中間点まで放射状に延びてもよく、カニューレ開口部150と同一平面上又は近接して位置付けられてもよい。ブレードの刃先はカニューレ開口部150と平行である。
【0090】
本発明のいくつかの実施形態では、カニューレ遠位端23が操作中に手術部位の組織表面で摩耗した場合であっても、手術部位外の周囲の線維柱帯への損傷を防ぐために、カニューレ先端の湾曲した形状は遠位端23で内向きに湾曲してもよい。ブレード152は、カニューレアセンブリ20が360度回転すると、開口部150内のいかなる組織もねじられて及び/又は剪断されるように、カニューレアセンブリ20の内壁に固定されていてもよい。
【0091】
図4Eは、本発明のいくつかの実施形態による、切断ワイヤ160を有するカニューレアセンブリ20を模式的に示す。本実施形態は、ブレード30が切断ワイヤ160を有してもよい代替ワイヤ穿孔デザインを示す。
【0092】
図4Fは、本発明のいくつかの実施形態による、切断ワイヤ160を有するカニューレアセンブリ20の遠位端23の断面図を模式的に示す。切断ワイヤ160は、カニューレ開口部150の内径にわたって放射状に完全に延びて、回転すると線維柱帯の剪断を行ってもよい。ブレード穿孔の実施形態のように、カニューレ遠位端23が手術部位の組織表面で摩耗した場合であっても、手術部位外の周囲の線維柱帯への損傷を防ぐために、カニューレ先端の外壁形状は内向きに湾曲してもよい。切断ワイヤ160の幅は一般的に0.5mm以上であってもよい。
【0093】
図5Aは、本発明のいくつかの実施形態による、カニューレハブ140に取り付けられた膨張可能なシース110を有するカニューレアセンブリ20を模式的に示す。カニューレ105は、第1管腔144を有してもよい。第2管腔149がシース110とカニューレ105(例えば、細長いチューブ105)との間に形成される。
【0094】
図5Bは、本発明のいくつかの実施形態による、カニューレハブ140に取り付けられたカニューレアセンブリ20の右方斜視図を模式的に示す。
【0095】
図5Cは、本発明のいくつかの実施形態による、カニューレハブ140に取り付けられたカニューレアセンブリ20の左方斜視図を模式的に示す。
【0096】
本発明のいくつかの実施形態では、カニューレアセンブリ20はカニューレハブ140に取り付けられたカニューレ105を備えてもよい。他の実施形態では、カニューレアセンブリ20は、柔らかい膨張可能なシースラッピング(例えば、シース110)を備えて、遠位端23の近傍の1以上の出口穴142から洗浄流体が流出してもよい注入を提供してもよい。
【0097】
本発明のいくつかの実施形態では、柔らかい膨張可能なシースラッピングは、カニューレ105と平行に延びるチューブ(例えば、シース110)の形状で、注入液を眼40のチャンバ内に導いてもよい。シース110内及び(例えば、第2管腔149を介して)出口穴142から出る注入液の流れの方向は図5B及び図5Cの両方で矢印によって見ることができる。カニューレハブ140は、手術ツール15に取り付け可能で、カニューレハブ140の1以上の穴148は、穴148を介してカニューレアセンブリ20のシース110内に洗浄流体が流れることを可能にしてもよい。
【0098】
同様に、線維柱帯68から剪断された組織サンプル89は遠位端23からカニューレ105の第1管腔144を通して吸引されてもよい。剪断された組織サンプル89は、真空88によって第1管腔144を通って、カニューレ105の回転87を許容する方法で第1管腔144がカニューレハブ140の中心孔145に接続されるカニューレ105の近位端24まで運ばれてもよい。カニューレハブ140のねじ部146は、カニューレハブ140を手術ツール15のロッキングインターフェースに接合及び固定するために使用されてもよい。剪断された組織サンプル89は、手術ツール15内の生検収集チャンバに運ばれてもよい。
【0099】
図5A乃至図5Cに示される実施形態において、カニューレハブ140は、2つのルアーロック接点を備えて、外科的手持ち型装置15に接続されると分離して隔絶したチャンバを形成してもよい。2つの隔絶したチャンバ(例えば、第1管腔144及び第2管腔149)が、1以上の穴148を介してシース110へと外側のハブ内の洗浄流体の独立した流れ及びカニューレ第1管腔144を通しての吸引を可能にする。
【0100】
図6は、本発明のいくつかの実施形態による、ピストル形状要素を有する手術ツール130の断面側面図を模式的に示す。手術ツール130は、遠位端23と、カニューレハブ140に接続される近位端24とを有するカニューレアセンブリ20を備えてもよい。カニューレハブ140は、手術ツール130の本体172に取り付けられてもよい。本体172の要素は、図6に示されるように点線で画定されるボックス内に示されている。本体172は、例えば、トリガ135と、カニューレ105の360度回転のための軸方向玉継ぎ手175と、生検収集チャンバ170と、平衡塩類溶液(BSS)点滴のために洗浄流体を導入するための洗浄流体入力口180とを備えてもよい。本体172では、洗浄流体は入力口180から軸方向玉継ぎ手175に接続されている注入チューブ188内へと流れてもよい。
【0101】
実施形態によっては、挿入図169に示されるように、生検収集チャンバ170は、遠位端23から移動中及び生検収集チャンバ170に到着する前に、小片173に崩れ得る剪断される部分89から組織の捕捉した小片173のためのふるい171を備えてもよい。ふるい171は、流量を向上させるために任意の適切なサイズ及び/又は形状であってよい。ふるい171は、図6に示されるように半球状の形状であってもよい。ふるい171は、平坦で円すい(例えば、三角形)又はドーム形状であってもよい。ふるい171は、生検収集チャンバ170内で部分的にカバー範囲を持つ膜であってもよい。これは生検収集チャンバ170への入り口に設置されてもよいし、生検収集チャンバ170内のいかなる場所に位置付けられてもよい。ふるい171は、ふるい171を表す点線の間隙で示されるように穴を有していてもよい。ふるい171の穴は円状又は正方形状であってもよく、各穴は20μm乃至1mmのサイズ範囲にある。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態では、剥離組織サンプル89を、本体172内のチューブ184及び186を介して、生検収集チャンバ170へと導いている間、軸方向玉継ぎ手175(又は任意の適切な類似機構)が使用されて、洗浄流体をシース105に注ぎ込んでいる間、カニューレ105を回転87させる。チューブ184は第1管腔144に接続されてもよい。軸方向玉継ぎ手175は洗浄流体を、カニューレハブ140に接続されたチューブ182(例えば、注入チューブ188の続き)及び穴148を介してシース110の近位端へと注ぎ込む。洗浄流体は、遠位端23近傍の1以上の出口穴142から手術部位へと流出するように、シース110内のカニューレアセンブリ20の近位端24から遠位端23まで注ぎ込まれてもよい。
【0103】
図6の挿入図105は、矢印107がシース110内での洗浄流体の方向を示し、矢印109がカニューレ105内(例えば、第1管腔144内)での吸引(例えば、真空88)の方向を示すカニューレアセンブリ20の断面を示す。
【0104】
図7Aは、本発明のいくつかの実施形態による、ロッキングインターフェース141を模式的に示す。
【0105】
図7Bは、本発明のいくつかの実施形態による、ロッキングインターフェース141の断面図を模式的に示す。
【0106】
手持ち型手術ツール130及び15は、使い捨てカニューレアセンブリをMINT手術器具の本体に取り付けて保持するように、ねじ部147付き本体172の雄型コネクタ(又は任意の適切なはめ合わせコネクタ)にカニューレアセンブリ20のカニューレハブ140(例えば、ねじ部146)を、取り付け又はねじ止めするためのロッキングインターフェース141を備えてもよい。使い捨てカニューレ(例えば、カニューレ105)の図7A及び7Bに示されるデュアルハブデザインは、外側シース110の第2管腔149内での洗浄流体の独立的及び分離された流れ107(例えば、注入)及びカニューレ105の第1管腔144内の吸引流れ109を可能にする。
【0107】
本発明のいくつかの実施形態では、手術ツール130は電気モータを備えて、カニューレを回転させ、手術部位において生検組織の剪断を可能にしてもよい。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態では、手術ツール130はポンプシステムを備えて、線維柱帯生検サンプルを収集するため、生検組織サンプル89を生検収集チャンバ170へと吸い込むように、第1管腔144内に真空88を形成してもよい。
【0109】
本発明のいくつかの実施形態では、洗浄流体入力口180は分離した注入システムに接続されてもよいし、手術ツール130自体に含まれてもよい。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態では、トリガ135は、カニューレの回転及び洗浄流体の手術部位への注入の起動を切り替えるために使用されてもよい。
【0111】
本発明のいくつかの実施形態では、トリガ135は、カニューレ105の回転及び生検サンプル89の生検収集チャンバ170内への吸い込みを起動させるために使用されてもよい。
【0112】
本発明のいくつかの実施形態では、液体空気膜又はバルブが使用され、生検収集チャンバ170及び真空システムを分離してもよい。
【0113】
本発明のいくつかの実施形態では、手術ツール130は携帯運用のためのバッテリを備えてもよい。
【0114】
本発明のいくつかの実施形態では、図6に示されるような指操作のためにトリガ135が手術ツール130の本体172の前側に位置付けられてもよい。他の実施形態では、トリガ135は、親指操作のために手術ツール130の本体172の後側に位置付けられてもよい。
【0115】
本発明のいくつかの実施形態では、液体空気膜又はバルブ機構の必要性をなくすように、せん動ポンプが本体172内の入力口180と生検収集チャンバ170との間に配置されてもよい。
【0116】
本発明のいくつかの実施形態では、手術ツール130は、手術ツール130がシリンジとして動作し得る場合、1以上のフィンガーグリップを備えてもよい。
【0117】
本発明のいくつかの実施形態では、手術ツール130はカニューレ105に平行に延びるチューブによって提供される注入を有してもよい。
【0118】
図8Aは、本発明のいくつかの実施形態による、手術ツール200の第3実施形態の側面図を模式的に示す。
【0119】
図8Bは、本発明のいくつかの実施形態による、手術ツール200の第3実施形態の斜視図を模式的に示す。
【0120】
手術ツール200は、挿入図212に示されるように外側チューブ214を有するカニューレアセンブリ210と、ステッピングモータ216と、後方カップアダプタ218と、末端カップ固定ネジ220と、空気/真空チューブスイベルコネクタ222と、回転中にチューブ210を支持するための深溝フランジ球体ベアリング224と、前方ベアリングアダプタ226と、第2深溝フランジ球体ベアリング228と、前方接続チューブ230と、本体232(例えば、手術ツール外側シェル)と、末端カップ234と、電力ライン236と、真空ライン240とを備えてもよい。
【0121】
様々な実施形態で、カニューレアセンブリ210は、切断特徴部において溶接された外科用鋼23Gチューブから形成されてもよい。外側チューブ214は、外科用鋼19Gチューブから形成されてもよい。ステッピングモータ216は、20mm中空軸ステッピングモータを備えてもよい。後方カップアダプタ218は、ナイロン摩擦接続装置-クランプ、カッターチューブ、モータ、及びスイベルコネクタを備えてもよい。末端カップ固定ネジ220は、M3ネジを備えてもよい。空気/真空チューブスイベルコネクタ222は、6mmの空気/真空チューブスイベルコネクタであってもよい。前方ベアリングアダプタ226は、精密圧延ステンレス中空軸から形成されてもよい。前方接続チューブ230は、ナイロン摩擦接続装置-クランプ、カッターチューブ、モータ、及びスイベルコネクタを備えてもよい。電力ライン236は、JST2.0PH6ピン乃至4ピン型電気線を備えてもよい。真空ライン240は、6x4mmの空気/真空ラインを備えてもよい。
【0122】
図9Aは、本発明のいくつかの実施形態による、カニューレアセンブリ305の第2実施形態の側面図を模式的に示す。
【0123】
図9Bは、本発明のいくつかの実施形態による、カニューレアセンブリ305の第2実施形態の斜視図を模式的に示す。
【0124】
図9Cは、本発明のいくつかの実施形態による、カニューレアセンブリ305の第2実施形態の断面図を模式的に示す。
【0125】
本発明のいくつかの実施形態では、カニューレアセンブリ305の遠位端300(例えば、内側チューブ305)は、カニューレ開口部を通って縦軸に沿って軸方向に通過する外側チューブ310内に設置されてもよい。切断ブレード320は、図9Cに示されるように(例えば、カニューレ開口部から0乃至10mmのわずかな間隔をあけて)カニューレ開口部と同一平面上に又はカニューレ開口部の近傍に設置されてもよい。カニューレアセンブリ300は外側チューブ310内で回転可能であってもよい。実施形態によっては、外側チューブ310は、対象手術部位の近傍の周囲組織への擾乱の誘発を回避し、単純に対象手術部位の組織に接触する遠位先端315でより良好な吸い込みを提供するように、回転不能とし、あるいは適所に固定されてもよい。
【0126】
本発明のいくつかの実施形態では、カニューレアセンブリ305の遠位端300は、図9Aに示される角度φが0乃至90度の範囲にあってもよい傾斜した遠位先端315を有してもよい。傾斜した先端は、遠位先端315が眼の周辺前房内の典型的な角度で眼組織に接触する際、より均一な吸い込みを提供してもよい。
【0127】
図10は、本発明のいくつかの実施形態による、対象手術部位の組織を剪断するための手術ツール200を制御するためのシステム350を模式的に示す。システム350が使用されて、例えば、患者の眼に低侵襲線維柱帯切開術(MINT)が行われてもよい。システム350は、流体セパレータ410を介して手術ツール200の真空ライン240(例えば、図8A及び8Bに示される)に接続された制御ボックス400を備えてもよい。制御ボックス400は、オン/オフスイッチ355、液晶ディスプレイ360、及びブレード30(例えば、カニューレアセンブリ210)の回転速度を制御するための制御ノブ365を備えてもよい。真空ポンプ390が制御ボックス400に接続されてもよく、ここで真空ポンプ390が真空規制バルブ385、真空ゲージ395、及び真空入力口397を備えてもよい。起動(フット)ペダル380がペダル制御ライン370を介して制御ボックス400に接続されてもよい。起動ペダル380が、手術ツール200を制御するためにユーザ(例えば、医者)によって使用されてもよい。起動ペダル380が使用されて、手術ツール200の回転(例えば、切断)、吸引、及び/又は注入機能の間で切り替えられてもよい。
【0128】
本発明のいくつかの実施形態では、手術ツール15は、レーザジェネレータ及びカニューレを備えてもよい。カニューレは、切除、蒸発、又は焼灼による実質的に完全な組織除去を可能にするレーザプローブであってもよい。レーザプローブは、光エネルギーをプローブ先端の遠位端に及び手術部位へと(例えば、組織の焼灼又は蒸発を可能にするために線維柱帯の近接部に)向けるファイバを備えてもよい。手術ツール15は、分離した注入システムに任意に接続されてもよい注入/吸引入力口を備えてもよい。
【0129】
本発明のいくつかの実施形態では、手術ツール15はレーザジェネレータ及びカニューレを備えてもよい。カニューレは切除、蒸発、又は焼灼による実質的に完全な組織除去を可能にするレーザプローブであってもよい。しかしながら、レーザビームを伝導するための1以上の光ファイバは、例えば、束状で用意されてもよい。束は、被覆材でまとめられてもよく、光エネルギーをプローブ先端の遠位端に及び手術部位へと(例えば、組織の焼灼又は蒸発を可能にするために線維柱帯の近接部に)向けるために使用されてもよい。
【0130】
本発明のいくつかの実施形態では、対象手術部位の組織を剪断するための手術ツールは、遠位端と近位端とを有するカニューレアセンブリと、遠位端でカニューレアセンブリの管腔内へと入るカニューレ開口部と、遠位端及びカニューレ開口部内に接続された切断装置と、カニューレアセンブリの近位端に接続された手術ツール内の軸方向玉継ぎ手とを備えてもよく、軸方向玉継ぎ手は、回転すると、対象手術部位の組織の一部を剪断するように遠位端の切断装置をカニューレアセンブリの管腔を通って軸方向に通過する縦軸の回りに回転させる。
【0131】
本発明のいくつかの実施形態では、対象手術部位は、対象者の眼の線維柱帯であってもよい。
【0132】
本発明のいくつかの実施形態では、カニューレアセンブリの遠位端は、湾曲した内向き先端形状を有してもよい。
【0133】
本発明のいくつかの実施形態では、カニューレアセンブリの遠位端は、傾斜した先端を有してもよい。
【0134】
本発明のいくつかの実施形態では、手術ツールは、外側チューブを備えて、カニューレアセンブリが縦軸に沿って軸方向に通過する外側チューブ内に設置され、カニューレアセンブリが外側チューブ内で回転可能であってもよい。
【0135】
本発明のいくつかの実施形態では、外側チューブは回転可能でなくてもよい。
【0136】
本発明のいくつかの実施形態では、切断装置はカニューレ内の中間点まで放射状に延びる又はカニューレ開口部と同一平面上でにあってもよい。
【0137】
本発明のいくつかの実施形態では、切断装置は外科的切断ブレードであってもよい。
【0138】
本発明のいくつかの実施形態では、対象手術部位の組織を剪断するための手術ツールは、カニューレアセンブリ20を備えてもよい。遠位端23と近位端24とを有するカニューレアセンブリ20は、細長いチューブ105の第1管腔144を軸方向に通る縦軸25に沿う可撓性シース110内に細長いチューブ(例えば、カニューレ105)を有してもよく、第2管腔149が縦軸25に沿ってシース110と細長いチューブ105との間に形成される。外科用ブレード30は、遠位端23において細長いチューブ105と接続してもよい。手術ツールの本体172に取り付けられてもよいコネクタハブ140は、近位端24でカニューレアセンブリ20と接続する中央内側ハブ穴145及び1以上の外側ハブ穴148を有してもよい。細長いチューブ105は、コネクタハブ140の中央内側ハブ穴145内に設置されてもよい。コネクタハブ140の1以上の外側ハブ穴148は第2管腔149に接続されてもよい。手術ツールの本体172内の軸方向玉継ぎ手175は、カニューレアセンブリ20の近位端24で細長いチューブ105に接続されてもよいが、回転87すると、対象手術部位の組織の部分89を剪断するように、遠位端23の外科用ブレード30を縦軸25回りに回転87させる。
【0139】
本発明のいくつかの実施形態では、剪断される部分は眼40の線維柱帯から切除された眼組織を含んでもよい。
【0140】
本発明のいくつかの実施形態では、手術ツールは、組織の剪断される部分を収集するために本体内に生検収集チャンバを備えてもよい。
【0141】
本発明のいくつかの実施形態では、生検収集チャンバは、剪断される部分から組織の小片を捕捉するためのふるいを備えてもよい。
【0142】
本発明のいくつかの実施形態では、手術ツールは外科用ブレードで部分を剪断する前に、部分を遠位端の第1管腔に吸い込むように構成されている真空ポンプを備えてもよい。
【0143】
本発明のいくつかの実施形態では、手術ツールは剪断される部分を、第1管腔を通して生検収集チャンバへと吸い込むように構成されている真空ポンプを備えてもよい。
【0144】
本発明のいくつかの実施形態では、手術ツールはピストル形状要素を有していてもよい。
【0145】
本発明のいくつかの実施形態では、手術ツールはペングリップ形状要素を有していてもよい。
【0146】
本発明のいくつかの実施形態では、外科用ブレードは開口部の中間点まで放射状に延びて、遠位端の第1管腔内へ入ってもよい。
【0147】
本発明のいくつかの実施形態では、外科用ブレードは切断ワイヤを備えてもよい。
【0148】
本発明のいくつかの実施形態では、手術ツールは、1以上の外側ハブ穴を通してカニューレアセンブリの近位端で第2管腔に接続される手術ツールの本体内の注入チューブを備えてもよい。
【0149】
本発明のいくつかの実施形態では、手術ツールは、手術ツールの本体に形成されて、注入チューブに接続される洗浄流体入力口を備えてもよい。
【0150】
本発明のいくつかの実施形態では、可撓性シースはカニューレアセンブリの遠位端の近傍に第2管腔へと入る出口穴を有してもよく、手術ツールの本体内の洗浄流体入力口を通して導入された洗浄流体が遠位端の出口穴を通過して、対象手術部位を洗浄してもよい。
【0151】
本発明のいくつかの実施形態では、手術ツールは軸方向玉継ぎ手を回転させるためのモータを備えてもよい。
【0152】
本発明のいくつかの実施形態では、遠位端は内向きに湾曲している。
【0153】
本発明のいくつかの実施形態では、手術ツールはユーザにより押されてもよいボタンを備えて、対象手術部位での切断、吸引、又は注入機能の間を切り替えてもよい。
【0154】
本発明のいくつかの実施形態では、対象手術部位の組織を剪断するための方法は手術ツールのカニューレアセンブリの遠位端を対象手術部位にナビゲートする工程を含み、手術ツールは、細長いチューブの第1管腔を軸方向に通る縦軸に沿った可撓性シース内に細長いチューブを備えてもよい、遠位端と近位端とを有するカニューレアセンブリであって、第2管腔が縦軸に沿ってシースと細長いチューブとの間に形成されるカニューレアセンブリと、遠位端で細長いチューブに接続される外科用ブレードと、近位端でカニューレアセンブリと接続される中央内側ハブ穴及び1以上の外側ハブ穴を有してもよい、手術ツールの本体に取り付けられるコネクタハブと、細長いチューブはコネクタハブの中央内側ハブ穴内に設置され、コネクタハブの1以上の外側ハブ穴は第2管腔に接続され、カニューレアセンブリの近位端で細長いチューブに接続される手術ツールの本体内の軸方向玉継ぎ手であって、回転すると、遠位端の外科用ブレードを縦軸の回りに回転させる軸方向玉継ぎ手とを備え、軸方向玉継ぎ手を回転させることで対象手術部位の組織の一部を剪断する工程を含む。
【0155】
本発明のいくつかの実施形態では、組織の一部を剪断することは眼の小柱網から眼組織を切除することを含んでもよい。
【0156】
本発明のいくつかの実施形態では、方法は剪断される部分を、第1管腔を通して生検収集チャンバ内に吸い込むように第1管腔に真空を適用させることで生検サンプルを採取することを含んでもよい。
【0157】
本発明のいくつかの実施形態では、方法はカニューレアセンブリの遠位端の近傍の第2管腔から可撓性シースの出口穴を通る洗浄流体で対象手術部位を洗浄することを含んでもよい。
【0158】
本発明のいくつかの実施形態では、方法は外科用ブレードで部分を剪断する前に対象手術部位の眼組織の部分を遠位端の第1管腔へと吸い込むことを含んでもよい。
【0159】
本発明のいくつかの実施形態では、方法は組織部分を遠位端の第1管腔へと吸い込んだ後、所定の時間間隔内で対象手術部位の組織部分を外科用ブレードで剪断し、洗浄流体で対象手術部位を洗浄することを含んでもよい。
【0160】
異なる実施形態が本明細書中に開示されている。特定の実施形態の特徴は他の実施形態の特徴と組み合わされてもよく、従って、特定の実施形態は多数の実施形態の特徴の組み合わせであってもよい。本発明の実施形態の上述の説明は、図示及び説明の目的のために提示されている。本発明を開示された正確な形態に徹底させる又は限定する意図はない。当業者は、上記教示を考慮して多くの変形例、バリエーション、置き換え、変更、及びその同等が可能であることを理解する必要がある。そのため、添付の請求項は、本発明の真の主旨内に収まるよう、そのような変形例及び変更をすべて網羅すると理解される。
【0161】
本発明の特定の特徴が本明細書中で図示され説明されたが、ここで、多くの変形例、置き換え、変更、及びその同等が当業者によって行われるであろう。そのため、添付の請求項は、本発明の真の主旨内に収まるよう、そのような変形例及び変更をすべて網羅すると理解される。

図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10