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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】アクリル-エポキシ接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/06 20060101AFI20240405BHJP
   C09J 9/00 20060101ALI20240405BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20240405BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240405BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20240405BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20240405BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240405BHJP
   C08G 59/68 20060101ALI20240405BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240405BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20240405BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240405BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
C09J133/06
C09J9/00
C09J163/00
C09J11/06
C09J11/08
C09J133/14
C09J11/04
C08G59/68
C08L63/00 A
B32B27/00 D
B32B27/30 A
B32B27/38
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020566949
(86)(22)【出願日】2019-05-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 IB2019054487
(87)【国際公開番号】W WO2019229695
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-27
(31)【優先権主張番号】62/679,052
(32)【優先日】2018-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルプ,ケリー エー.
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー,キャスリーン エス.
(72)【発明者】
【氏名】レコウ,ピーター オー.
(72)【発明者】
【氏名】ジャノスキ,ジョナサン イー.
(72)【発明者】
【氏名】チャステック,トーマス キュー.
(72)【発明者】
【氏名】ライランド,ブラッドフォード エル.
(72)【発明者】
【氏名】エルモア,ダグラス エル.
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/195970(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/196561(WO,A1)
【文献】特開2013-047321(JP,A)
【文献】特開2009-120808(JP,A)
【文献】特表2001-523295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J、C08G、C08L、B32B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性ボイド組成物であって、
a.15部~50部のヒドロキシ官能性若しくはエーテル官能性(メタ)アクリレートコポリマー、又はそのシロップ、
b.25部~50部のエポキシ樹脂成分、
c.5部~15部の液体ポリエーテルポリオール、
d.任意選択的に、最大25部のヒドロキシ官能性フィルム形成ポリマー、
e.a~dの100部に対して、0.1部~2.5部の水、
f.a~dの100部に対して、0.01部~5部のカチオン性光開始剤、
g.任意選択的に、ポリビニルアセタールポリマー、
h.硬化した前記組成物において10%超(>10%)の密度低下をもたらすのに十分な量のポリマー微小球であって、前記微小球が中性の表面を有する、微小球、
i.任意選択的に、多官能性(メタ)アクリレート及びラジカル光開始剤、
を含み、
a)~d)の合計は、100重量部である、硬化性ボイド組成物。
【請求項2】
前記ヒドロキシ官能性又はエーテル官能性(メタ)アクリレートコポリマーが、式:
【化1】
[式中、
は-H又はC~Cアルキルであり、
はアリール又は直鎖若しくは分枝鎖C~C10アルキレンであり、
はH、及びアリール又は直鎖若しくは分枝鎖C~Cアルキルであるか、或いは、
及びRは一緒になって環状エーテルを形成し、R及びR基の炭素原子の合計は、3~10個である]
のモノマー単位を含む、請求項1に記載の硬化性ボイド組成物。
【請求項3】
前記ヒドロキシ官能性又はエーテル官能性(メタ)アクリレートコポリマーが、式:
【化2】
[式中、
は-H又はC~Cアルキルであり、
は直鎖又は分枝鎖C~C10アルキレンであり、
はC~C10アルキレンである]
のモノマー単位を含む、請求項1に記載の硬化性ボイド組成物。
【請求項4】
前記ヒドロキシ官能性又はエーテル官能性(メタ)アクリレートコポリマーが、式:
【化3】
[式中、
はC~C10アルキレンであり、
は-H又はC~Cアルキルである]
のモノマー単位を更に含む、請求項1に記載の硬化性ボイド組成物。
【請求項5】
前記(メタ)アクリレートコポリマーが、テトラヒドロフルフリルアクリレートモノマー単位を含む、請求項1に記載の硬化性ボイド組成物。
【請求項6】
前記ヒドロキシ官能性若しくはエーテル官能性(メタ)アクリレートコポリマーが、
a)25~60重量%のヒドロキシ官能性又はエーテル官能性(メタ)アクリレートモノマー、
b)40~75重量%のC~Cアルキル(メタ)アクリレートエステルモノマー、
c)a及びbの100部に対して、0~10重量%の多官能性(メタ)アクリレート、
を含む、請求項1に記載の硬化性ボイド組成物
【請求項7】
前記組成物が、
a.15部~50部のヒドロキシ官能性又はエーテル官能性(メタ)アクリレートコポリマー、
b.25部~50部のエポキシ樹脂成分、
c.5部~15部のポリエーテルポリオール、
d.0部~25部のヒドロキシ官能性フィルム形成ポリマー、
を含み、a)~d)の合計は100重量部であり、
e.a)~d)の100部に対して、0.1部~5部のカチオン性光開始剤を含む、請求項1に記載の硬化性ボイド組成物。
【請求項8】
エポキシ樹脂のアクリレートポリマーに対する重量比が1:2~5:1である、請求項1~7のいずれか一項に記載の硬化性ボイド組成物。
【請求項9】
0.1重量部~6重量部の式:
【化4】
[式中、R11は水素、アリール基、又はC~C(シクロ)アルキル基であり、下付き文字xは少なくとも20である]のポリビニルアセタールポリマーを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
硬化性ボイド組成物であって、
a.ヒドロキシ官能性又はエーテル官能性(メタ)アクリレートモノマー、及びアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含む、15部~50部のモノマー混合物、
b.25部~50部のエポキシ樹脂成分、
c.5部~15部の液体ポリエーテルポリオール、
d.任意選択的に、最大25部のヒドロキシ官能性フィルム形成ポリマー、
e.a~dの100部に対して、0.1部~2.5部の水、
f.a~dの100部に対して、0.01部~5部のカチオン性光開始剤、
g.10%超(>10%)の密度低下をもたらすのに十分な量のポリマー微小球であって、前記微小球が中性の表面を有する、微小球、
h.a)~d)の100重量部に対して、0.1重量部~6重量部のポリビニルアセタールポリマーを含み、
a)~d)の合計は、100重量部である、硬化性ボイド組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造用及び半構造用結合接着剤物品、並びに接着剤及び物品の調製方法に関する。本発明は更に、構造用結合接着剤で一緒に結合された1種以上の構成成分を含有する製造物品に関する。
【背景技術】
【0002】
構造用結合テープは、1つ以上の基材を互いに結合させるのに有用である。多くの構造用結合テープは、(1)熱硬化性構造用結合テープ、及び(2)紫外線(UV)光活性構造用結合テープ、の2つの群のいずれかに属する。分類名が示すように、熱硬化性構造用結合テープは、テープの接着剤組成物を硬化するために、加熱を必要とする。UVi構造用結合テープは、紫外線に曝露すると硬化が開始するが、硬化させるのに加熱は必要としない、接着剤組成物を含有する。UVi構造用結合テープの硬化を加速するために、加熱してもよい。
【0003】
典型的には、ある長さの構造用結合テープ、又はテープのダイカットピースをロールから取り出し、指圧によって第1の基材に貼り付ける。UVi構造用結合テープの場合、構造用結合テープをUVなどの化学線に曝露することができる。次に、第2の基材を、構造用結合テープの曝露済表面と接触させ、しばらくの間、基材に圧力をかける。次に、熱硬化性構造用結合テープ、及び任意選択でUVi構造用結合テープを熱にさらし、その後このアセンブリを冷却する。その結果物が結合物品である。
【0004】
加えて、現行の多くの構造用接着剤組成物は、接着剤組成物を硬化するのに、加熱を必要とする。結合物品の製造プロセスでは、結合物品の更なる取り扱い及び/又は包装を可能にするために、結合物品を冷却工程に供する必要があることに加えて、接着剤組成物を硬化するために、結合物品を加熱工程に供する必要がある。加工過程の観点から、加熱工程を伴わない結合物品の製造プロセスが非常に望ましいであろう。
【0005】
ほとんどの用途では、構造用又は半構造用結合は、恒久的であるように設計される。結果として、基材を分離する努力は、多くの場合、失敗し、基材の損傷をもたらす。加えて、硬化接着剤組成物は、いずれかの基材において予測不可能な凝集破壊及び接着破壊を示す。
【0006】
しかし、接着剤組成物が、使用中に高い結合性能特性(すなわち、接着剤組成物が半構造用接着剤として機能する期間及び環境条件、例えば温度範囲)を呈するが、使用後に取り外し可能であること、又は基材間の接合部の再加工を可能とすることが好ましい用途が存在する。これらの対立する性能基準は相反するものである。多くの産業では、物品は、構造用及び半構造用接着剤を使用して基材に結合される。時間が経つにつれて、物品及び/又は基材は交換を必要とするか、又は基材への接合部が摩耗について検査される場合がある。これらの物品を除去し、再加工し、及び/又は新しい物品と交換することができれば好ましい。
【0007】
当該技術分野において必要とされているのは、結合性能を有し、かつ/又は異なる熱膨張係数及び異なる物理的及び/若しくは化学的表面特性を有する異なる基材を結合するために使用されてもよい接着剤物品である。加えて、当該技術分野で必要とされているのは、テープが、その片側から光により活性化可能であるUVi構造用結合テープである。当該技術分野において必要とされているのは、性能を損なうことなく、極端な熱及び湿度下で硬化され得る結合テープである。所望どおりに結合表面を分離することを可能にする接着剤物品が必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、優れた接着特性を有する新規接着剤物品の発見によって、上述した困難及び問題のいくつかに対処する。構造用結合接着剤物品は、望ましい強度及び接着特性を有する。物品の接着剤は光活性化(すなわち、光源にさらされると硬化が開始する)し、硬化に加熱を必要とせず、高湿度の条件下で硬化され得る。構造用結合接着剤物品は、多くの用途、特に、1つ以上の基材を一緒に結合するための接着剤として使用することができ、これにより損傷を与えることなく結合した表面の分離が可能になり、所望どおりの再加工が可能となる。
【0009】
「半構造用接着剤」は、少なくとも約0.75MPa、より好ましくは少なくとも約1.0MPa、最も好ましくは少なくとも約1.5MPaの重ね剪断強度を有する硬化接着剤である。しかし、特に高い重ね剪断強度を有するそれら硬化接着剤は、構造用接着剤と称される。構造用接着剤は、少なくとも約3.5MPa、より好ましくは少なくとも約5MPa、最も好ましくは少なくとも約7MPaの重ね剪断強度を有するそれら硬化接着剤である。
【0010】
本発明では、硬化によって半構造用又は構造用接着剤をもたらす硬化性感圧接着剤物品について記載する。接着剤物品は、少なくとも1つの脆弱なボイド接着剤層と、任意選択的に少なくとも1つの非ボイド(例えば、フィルム)接着剤層とを含む。「発泡体」又は「ボイド」とは、非常に低い密度のガス相、微小球、又は気泡が連続的なポリマーマトリックス中に分散される構造を指す。ボイドは、好ましくは膨張微小球の添加によって導入され得る。
【0011】
接着剤物品は、2つの表面を使用時には本質的に分離不可能とするが、ボイド接着剤層が選択的に凝集破壊されるように剪断力を適用すると容易に分離可能とすることによって、選択的接着破壊を可能にする。この特徴により、結合表面に損傷を与えることなく物品を取り外すことが可能になるので、この特徴は結合用途において有用である。接着剤物品は、ボイド層の凝集破壊によって選択的に破壊する。加えて、ボイド層によって、異なる物理的及び化学的特性を有する基材を結合するのに適合させることが可能になる。
【0012】
いくつかの実施形態では、本開示は:
a)a1)ヒドロキシ官能性又はエーテル官能性(メタ)アクリレートモノマー及びa2)(メタ)アクリレートエステルモノマーを含む混合物、又はシロップコポリマーのモノマー混合物、
b)エポキシ樹脂、
c)ポリエーテルポリオール、
d)任意選択的に、ヒドロキシ官能性フィルム形成ポリマー、
e)水、並びに
f)光触媒、並びに
g)任意選択的に、ポリビニルアセタールポリマー、
h)硬化した組成物において10%超(>10%)の密度低下をもたらすのに十分な量のポリマー微小球であって、微小球が中性の表面を有する、微小球、
i)任意選択的に、多官能性アクリレート及びラジカル光開始剤、
を含む硬化性組成物を提供する。
【0013】
この部分硬化した組成物は、硬化した組成物中の10%超(>10%)の密度低下をもたらすのに十分な量の膨張ポリマー微小球であって、上記微小球が中性の表面を有する、微小球を更に含む。微小球の添加は、必要なボイドを含有する硬化した接着剤をもたらし、予測可能な方法で選択的に凝集破壊する脆弱層を提供する。
【0014】
a)~g)を含む上記組成物は、最初に:
a)ヒドロキシ官能性又はエーテル官能性(メタ)アクリレートコポリマー、
b)エポキシ樹脂、
c)ポリエーテルポリオール、
d)任意選択的に、ヒドロキシ官能性フィルム形成ポリマー、
e)水、並びに
f)光触媒、
g)任意選択的に、ポリビニルアセタールポリマー、
h)硬化した組成物において10%超(>10%)の密度低下をもたらすのに十分な量のポリマー微小球であって、微小球が中性の表面を有する、微小球、
i)任意選択的に、多官能性アクリレート及びラジカル光開始剤、
を含む硬化性組成物にフリーラジカル重合され得る。
【0015】
この組成物は、光触媒の光分解によって更に重合されて、エポキシ樹脂を硬化させ、ボイド接着剤層を提供し得る。
【0016】
これらの組成物は、硬化した組成物において10%超(>10%)の密度低下をもたらすのに十分な量の膨張ポリマー微小球であって、微小球が中性の表面を有する、微小球を更に含む。この組成物は、光触媒の光分解によって更に重合されて、エポキシ樹脂を硬化させ、ボイド接着剤層を提供し得る。第2硬化段階の結果は、連続的な(メタ)アクリレートコポリマーとエポキシポリマーの連続相と、膨張ポリマー微小球の不連続相とを含む、ボイド組成物(voided composition)として記述され得る。2つのポリマー相は、共連続的であってもよく、2つの相の間にある程度の架橋が存在してもよい。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ボイド(発泡)接着剤層の接着剤組成物は、部分的に、ペンダントヒドロキシル官能基又はエーテル官能基を有する(メタ)アクリレートコポリマーを含む。コポリマーは、ヒドロキシル官能性又はエーテル官能性モノマー単位から誘導される。いくつかの実施形態では、コポリマーは、式:
【化1】
[式中、
は-H又はC~Cアルキルであり、
はアリール又は直鎖若しく分枝鎖C~C10アルキレンであり、
はH、アリール又は直鎖若しくは分枝鎖C~Cアルキルであり、
及びRは一緒になって環状エーテルを形成してもよく、好ましくはR及びR基の炭素原子の合計は、3~10個、好ましくは3~6個である]
のモノマー単位から誘導される。
【0018】
いくつかの実施形態では、ボイド(発泡)接着剤層は、部分的に、式:
【化2】
[式中、
は-H又はC~Cアルキルであり、
は直鎖又は分枝鎖C~C10アルキレンであり、
はC~C10アルキレンである]
のペンダントエーテル官能基を有するモノマーから誘導される(メタ)アクリレートコポリマーを含む。
【0019】
いくつかの好ましい実施形態では、ボイド(発泡)接着剤層は、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート(THFA)コポリマー成分を含む。特に規定がない限り、THFAアクリレート及びメタクリレートは、THFAと略する。より詳細には、接着剤組成物は、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、C~C(メタ)アクリレートエステル、及び任意選択のカチオン反応性の官能性(メタ)アクリレートのコポリマーを含む。
【0020】
ヒドロキシ又はエーテル官能性モノマー単位に加えて、コポリマーは、C~Cアルキル(メタ)アクリレートエステルモノマーを更に含む。有用なモノマーとしては、全ての異性体を含む、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、及びオクチルアルコールのアクリレート及びメタクリレート、並びにこれらの混合物が挙げられる。アルコールは、C~Cアルカノールから選択され、ある実施形態ではアルカノールのモル平均炭素数(molar average carbon number)がC~Cであることが好ましい。この範囲であれば、コポリマーがエポキシ樹脂成分との十分な混和性を有し、重ね剪断力を含む、有用な、接着剤特性の全体的バランスを有するUVi構造用結合接着剤を配合することが可能となるということが見出された。
【0021】
モル平均炭素数は、各アルカノール(C1~8アルカノール)のモル数に各アルカノールの炭素数を乗じて合計し、得られた値をアルカノールの全モル数で除することにより算出することができる。
Σα-ω[(アルカノールのモル)×(アルカノールの炭素原子数)]/αからωのアルカノールのモル数
【0022】
加えて、コポリマーはカチオン反応性モノマー、すなわちカチオン反応性官能基を有する(メタ)アクリレートモノマーを含有してよい。このようなモノマーの例としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、及びトリメトキシシリルプロピルアクリレートなどのアルコキシシリルアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。いくつかの好ましい実施形態では、官能性(メタ)アクリレートコポリマーは、式:
【化3】
[式中、
はC~C10アルキレンであり、
は-H又はC~Cアルキルである]
のモノマー単位のカチオン反応性モノマー単位を更に含む。
【0023】
カチオン反応性モノマーは、フリーラジカル重合性モノマーの全ての合計に関して、0~10重量%、好ましくは1~5重量%の量で存在してもよい。
【0024】
任意選択的に、多官能性(メタ)アクリレートを重合性モノマーのブレンド中に組み込んで、コポリマーを架橋し、凝集力を構築してもよい。有用な多官能性(メタ)アクリレートの例としては、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート及びテトラ(メタ)アクリレート、例えば1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート及びプロポキシル化グリセリントリ(メタ)アクリレートなど、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。多官能性(メタ)アクリレートの量及び種類は、接着剤組成物の用途に応じて調整される。典型的には、多官能性(メタ)アクリレートは、残りのフリーラジカル重合性単官能性モノマー100重量部を基準として、最大10部、好ましくは0.1部~100部の量で存在する。
【0025】
重合性組成物の安定性のために、コポリマーは、本質的に、存在していると紫外線硬化より前にエポキシ樹脂の重合を開始してしまう酸官能性モノマーを含有しない。更にコポリマーは、アミド、ラクタム、尿素、ウレタン、カルボキシレート、チオレート、サルフェート、ホスフェート、及びホスフィン基などの接着剤組成物のカチオン硬化を阻害するのに十分塩基性である部分を有するアクリル系モノマーを含有しないことが好ましい。同様の理由により、コポリマーは、アミン官能性モノマーを一切含有しないことが好ましい。
【0026】
官能性(メタ)アクリレートコポリマーは、一般に、以下の重合モノマー単位:
a)25~60重量%、好ましくは45超~55(>45 to 55)重量%のヒドロキシル官能性又はエーテル官能性(メタ)アクリレート、
b)40~75重量%、好ましくは45~55重量%のC~C、好ましくはC~Cのアルキル(メタ)アクリレートエステルモノマー、
c)0~10重量%、好ましくは1~5重量%のカチオン反応性の官能性モノマー、
d)0~10重量%、好ましくは1~5重量%の多官能性(メタ)アクリレート、を含み、
a)~c)の合計は100重量%である。
【0027】
接着剤組成物は、1種以上の官能性(メタ)アクリレートコポリマーを、接着剤の望ましい特性によって変動する量で含む。望ましくは、接着剤組成物は、接着剤組成物中のモノマー/コポリマーの総重量100部に対して、15重量部~65重量部、好ましくは15重量部~50重量部、より好ましくは25重量部~35重量部の量で、1種以上の官能性(メタ)アクリレートコポリマーを含む。
【0028】
接着剤は、1種以上のエポキシ樹脂を含む。本開示の組成物において有用なエポキシ樹脂又はエポキシドは、開環によって重合可能な少なくとも1つのオキシラン環を有する、すなわち、平均エポキシ官能価が1よりも大きい、好ましくは少なくとも2である、いずれの有機化合物であってもよい。エポキシドは、モノマー若しくはポリマーの、脂肪族、脂環式、複素環式、芳香族、水素化、又はこれらの混合物であり得る。好ましいエポキシドは、1分子あたり1.5個よりも多くのエポキシ基、好ましくは1分子あたり少なくとも2個のエポキシ基を含有する。有用な材料は、典型的には重量平均分子量が約150~約10,000、より典型的には約180~約1,000である。エポキシ樹脂の分子量は、通常、硬化接着剤が望ましい特性をもたらすように選択される。好適なエポキシ樹脂としては、末端エポキシ基を有する直鎖ポリマーエポキシド(例えば、ポリオキシアルキレングリコールのジグリシジルエーテル)、骨格にエポキシ基を有するポリマーエポキシド(例えば、ポリブタジエンポリエポキシ)、及びペンダントエポキシ基を有するポリマーエポキシド(例えば、グリシジルメタクリレートポリマー又はコポリマー)、並びにこれらの混合物が挙げられる。エポキシド含有材料は、次の一般式を有する化合物を含む。
【化4】
[式中、Rはアルキル、アルキルエーテル、又はアリールであり、nは1~6である]。
【0029】
これらのエポキシ樹脂としては、例えば、多価フェノールを過剰なエピクロロヒドリンと反応させることにより調製されるような芳香族グリシジルエーテル、脂環式グリシジルエーテル、水素添加グリシジルエーテル、及びこれらの混合物が挙げられる。そのような多価フェノールには、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、及び多核フェノールを挙げることができる。多核フェノールは、例えばp,p’-ジヒドロキシジベンジル、p,p’-ジヒドロキシジフェニル、p,p’-ジヒドロキシフェニルスルホン(p,p'-dihydroxyphenyl sulfone)、p,p’-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-1,1-ジナフチルメタン、並びにジヒドロキシジフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルエチルメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルメチルプロピルメタン、ジヒドロキシジフェニルエチルフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルプロピルフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルブチルフェニルメタン、ジヒドロキシジフェニルトルイルエタン、ジヒドロキシジフェニルトルイルメチルメタン、ジヒドロキシジフェニルジシクロヘキシルメタン、及びジヒドロキシジフェニルシクロヘキサンの2,2’、2,3’、2,4’、3,3’、3,4’、及び4,4’異性体などである。
【0030】
また、多価フェノールホルムアルデヒド縮合生成物、及び反応性基としてエポキシ基又はヒドロキシ基だけを含有するポリグリシジルエーテルも有用である。有用な硬化性エポキシ樹脂は、例えば、Lee and Nevillによる「Handbook of Epoxy Resins」(McGraw-Hill Book Co.,New York(1967))、及びEncyclopedia of Polymer Science and Technology(6,p.322(1986))を含む種々の刊行物にも記載されている。
【0031】
使用するエポキシ樹脂の選択は、意図する最終用途による。接着線においてより大きな延性が必要とされる場合には、可撓化された骨格を有するエポキシドが、望ましい場合がある。ビスフェノールAのジグリシジルエーテル及びビスフェノールFのジグリシジルエーテルなどの材料は、これらの材料が硬化によって達成する望ましい構造接着剤特性をもたらすことができ、一方、これらのエポキシの水素添加したバージョンは、油性表面を有する基材との適合性に有用であり得る。
【0032】
本開示において有用な市販のエポキシドの例としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(例えば、Momentive Specialty Chemicals,Inc.製のEPON 828、EPON 1001、EPON 1004、EPON 2004、及びEPONEX 1510の商標名にて入手可能であるようなもの、並びにDow Chemical Co.から入手可能なD.E.R.331、D.E.R.332、D.E.R.334、及びD.E.N.439の商標名にて入手可能であるようなもの)、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル(例えば、Huntsman Corporationから入手可能なARALDITE GY 281の商標名にて入手可能なもの)、ジグリシジルエポキシ官能基を含有するシリコーン樹脂;難燃性エポキシ樹脂(例えば、Dow Chemical Co.から入手可能な、DER 560の商標名にて入手可能な、臭素化ビスフェノール型エポキシ樹脂)、及び1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0033】
少なくとも1つのグリシジルエーテル末端部分、及び好ましくは飽和若しくは不飽和環状骨格を有するエポキシ含有化合物が、任意選択的に反応性希釈剤として組成物に添加されてよい。反応性希釈剤は、加工の際の補助のため、例えば、硬化中と同様に組成物中の粘度を制御するため、硬化した組成物を可撓化するため、及び組成物中の材料を相溶化するためなどの種々の目的で添加してよい。
【0034】
このような希釈剤の例としては、シクロヘキサンジメタノールのジグリシジルエーテル、レゾルシノールのジグリシジルエーテル、p-tert-ブチルフェニルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル、トリメチロールエタンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、トリグリシジルp-アミノフェノール、N,N’-ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’-テトラグリシジルメタ-キシリレンジアミン、及び植物油のポリグリシジルエーテルが挙げられる。反応性希釈剤は、HELOXY 107及びCARDURA N10の商標名にてMomentive Specialty Chemicals,Inc.から市販されている。組成物は、所望の重ね剪断、耐剥離性、及び衝撃強さを得ることを助ける強化剤を含んでいてもよい。
【0035】
接着剤組成物は、望ましくは、エポキシ当量が約100~約1500である1種以上のエポキシ樹脂を含有する。より望ましくは、接着剤は、エポキシ当量が約100~約600である1種以上のエポキシ樹脂を含有する。更により望ましくは、接着剤は、2種以上のエポキシ樹脂を含有し、少なくとも1種のエポキシ樹脂は、エポキシ当量が約150~約250であり、少なくとも1種のエポキシ樹脂は、エポキシ当量が約500~約600である。
【0036】
接着剤組成物は、1種以上のエポキシ樹脂を、構造用接着剤層の望ましい特性によって変動する量で含んでよい。望ましくは、接着剤組成物は、接着剤組成物中のモノマー/コポリマーの総重量100部に対して、25重量部~50重量部、好ましくは35重量部~45重量部の量で、1種以上のエポキシ樹脂を含む。
【0037】
接着剤組成物は、接着剤組成物中のモノマー/コポリマーの総重量100部に対して、5部~15部の量のより低いMの液体(25℃において)ヒドロキシ官能性ポリエーテル(ポリエーテルポリオール)を更に含む。
【0038】
この分類のヒドロキシ官能性ポリエーテル化合物の例としては、ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレングリコール;ポリオキシエチレン及びポリオキシプロピレントリオール;並びにポリテトラメチレンオキシドグリコールが挙げられるが、これらに限定されない。ポリオキシアルキレンポリオールは、接着剤組成物の「オープンタイム」を増加可能するために、硬化反応を変更するのに特に好適である。本明細書で使用する場合、用語「オープンタイム」は、接着剤組成物を照射した後の期間を意味するのに使用されるのであって、その間、第2の基材は、接着剤組成物に結合され得る。
【0039】
望ましくは、接着剤組成物のオープンタイムは、約5.2J/cmのエネルギー量の化学線に曝露した後、少なくとも2分である。しかしながら、共に結合する基材の一方、又は両方が、構造用接着剤層を曝露するべき放射に対して半透明であると、その場合、放射への曝露は、両基材を接着剤により互いに貼り付けた後、半透明基材を通して実施され得るので、オープンタイムは妥当性を欠く。アセンブリの両基材が不透明である場合、第2の基材を接着剤に貼り付けるより前に、接着剤は化学線に曝露されるであろう。この場合、構造用接着剤層の好適な加工性を可能にするには、少なくとも2分のオープンタイムが望ましい。
【0040】
本発明での使用に好適な市販のヒドロキシ官能性ポリ(アルキレンオキシ)化合物としては、POLYMEG(商標)シリーズのポリテトラメチレンオキシドグリコール((Lyondellbasell,Inc.,Jackson,Tenn.)から入手可能)、TERATHANE(商標)シリーズのポリテトラメチレンオキシドグリコール(Invista,Newark,Del.)、BASF Corp.(Charlotte,N.C.)製の、POLYTHF(商標)シリーズのポリテトラメチレンオキシドグリコール、ARCOL(商標)及びACCLAIM(商標)シリーズのポリオキシプロピレンポリオール(Covestro製)、及びDow Automotive Systems,Auburn Hills,MI製の、VORANOL(商標)シリーズのポリエーテルポリオールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
接着剤層は、少なくとも1つの、望ましくは少なくとも2つのヒドロキシル基を有する、少なくとも1種のヒドロキシル官能性フィルム形成ポリマーを任意選択的に含有する。更に、用語「ヒドロキシル官能性フィルム形成ポリマー」は、同じくヒドロキシル基を含有する上記ポリエーテルポリオールを含まない。望ましくは、フィルム形成ポリマーは、アミノ及びメルカプト部分などの、その他の「活性水素」含有基を実質的に含まない。更に、フィルム形成ポリマーは、望ましくは、硬化中に化学線及び/又は熱にさらした際に化合物が分解しないように、熱的に、及び/又は光分解的に不安定であり得る基もまた、実質的に含まない。
【0042】
ヒドロキシル含有フィルム形成ポリマーは、2つ以上の一級又は二級の脂肪族ヒドロキシル基(すなわち、ヒドロキシル基は非芳香族炭素原子に直接接合している)を含有する。いくつかの実施形態では、ヒドロキシル官能性フィルム形成ポリマーは、ヒドロキシル価が少なくとも0.01である。ヒドロキシル基が、エポキシ樹脂と共にカチオン重合に参加すると考えられている。
【0043】
ヒドロキシル官能性フィルム形成ポリマーを、フェノキシ樹脂、エチレン-ビニルアセテート(EVA)コポリマー(25℃において固体)、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオール、及び25℃において固体であるポリビニルアセタール樹脂から選択してよい。ヒドロキシル基は、末端に位置していてもよく、又はポリマー若しくはコポリマーからペンダントであってもよい。
【0044】
ヒドロキシル含有フィルム形成ポリマーの1つの有用な分類は、ヒドロキシ含有フェノキシ樹脂である。特に、望ましいフェノキシ樹脂は、ジグリシジルビスフェノール化合物を重合することで生じるものである。典型的には、フェノキシ樹脂は、60,000未満、望ましくは約20,000~約30,000の範囲の数平均分子量を有する。本発明における使用に好適な市販のフェノキシ樹脂としては、Inchem Corp.(Rock Hill,S.C.)から入手可能なPAPHEN(商標)PKHP-200、及びSYN FAC(商標)8009、773240、8024、8027、8026、8071、及び8031などのSYN FAC(商標)シリーズのポリオキシアルキル化ビスフェノールA(Milliken Chemical,Spartanburg,S.C.製)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
ヒドロキシル含有フィルム形成ポリマーの、第2の有用な分類は、エチレン-ビニルアセテート(EVA)コポリマー樹脂である。EVA樹脂は少量の遊離ヒドロキシル基を含有し、EVAコポリマーは、カチオン重合の間に更に脱アセチル化されると考えられている。
【0046】
好適なエチレン-ビニルアセテートコポリマー樹脂としては、少なくとも約28重量パーセントのビニルアセテートを含有する、熱可塑性エチレン-ビニルアセテートコポリマー樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一実施形態では、エチレン-ビニルアセテートコポリマーは、熱可塑性コポリマーであって、該コポリマーの少なくとも約28重量%のビニルアセテート、望ましくは少なくとも約40重量%のビニルアセテート、より望ましくは少なくとも50重量%のビニルアセテート、更により望ましくは少なくとも60重量%のビニルアセテートを含有する熱可塑性コポリマーを含む。本発明の更なる実施形態では、エチレン-ビニルアセテートコポリマーは、該コポリマー中に、約28~約99重量%のビニルアセテート、望ましくは約40~90重量%のビニルアセテート、より望ましくは約50~約90重量%のビニルアセテート、更により望ましくは約60~約80重量%のビニルアセテートの範囲の量で、ビニルアセテートを含有する。
【0047】
本発明で使用することができる市販のエチレン-ビニルアセテートコポリマーの例としては、E.I.Du Pont de Nemours and Co.,Wilmington,Del.製のELVAX(商標)150、210、250、260、及び265を含むElvaxシリーズ、Celanese,Inc.,Irving,TX製のATEVA(商標)シリーズ、Lanxess Corp.,Pittsburgh,Pa.製の、LEVAPREN(商標)450、452、及び456(45重量%ビニルアセテート)を含むLEVAPREN(商標)400、それぞれLanxess Corp製の、LEVAPREN(商標)500HV(50重量%ビニルアセテート)、LEVAPREN(商標)600HV(60重量%ビニルアセテート)、LEVAPREN(商標)700HV(70重量%ビニルアセテート)及びLEVAPREN(商標)KA 8479(80重量%ビニルアセテート)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
更なる有用なフィルム形成ポリマーとしては、Dow Chemical,Midland,MIから入手可能な、ポリカプロラクトンポリオールのシリーズである、TONE(商標)、Perstorp Inc.製のCAPA(商標)シリーズのポリカプロラクトンポリオール、DESMOPHEN(商標)631A75などの、DESMOPHEN(商標)シリーズの飽和ポリエステルポリオール(Covestro,Pittsburg,Pa.から入手可能)が挙げられる。
【0049】
ボイド層及び非ボイド層の一方又は両方は、1種以上のヒドロキシル含有フィルム形成ポリマー樹脂を、構造用接着剤層の望ましい特性によって変動する量で含んでもよい。望ましくは、接着剤組成物は、1種以上のヒドロキシル含有フィルム形成ポリマー樹脂を、接着剤組成物中のモノマー/コポリマーの総重量100部に対して約25重量部以下の量で含む。より望ましくは、接着剤組成物は、1種以上のフィルム形成ポリマー樹脂を、接着剤組成物中のモノマー/コポリマーの総重量100部に対して約10重量部~約25重量部の量で含む。更により望ましくは、本発明の構造用結合テープの構造用接着剤層は、接着剤組成物中のモノマー/コポリマーの総重量100部に対して15重量部~約20重量部の量で、1種以上のフィルム形成ポリマー樹脂を含む。
【0050】
要約すると、ボイド又は発泡層の硬化性接着剤組成物は、
a.15部~65部、好ましくは15部~50部のヒドロキシル官能性又はエーテル官能性(メタ)アクリレートコポリマー、
b.25部~50部のエポキシ樹脂成分、
c.5部~15部のポリエーテルポリオール、及び
d.0部~25部、好ましくは10部~25部のヒドロキシ官能性フィルム形成ポリマー、
を含み、a)~d)の合計は100重量部であり、
e.a)~d)の100部に対して、0.01部~5部のカチオン性光開始剤を含む。
【0051】
ボイド層の組成は、同じであっても異なっていてもよく、上記範囲内で変化してもよい。多くの実施形態では、エポキシ樹脂の量は(メタ)アクリレートコポリマーよりも多く、エポキシ樹脂対(メタ)アクリレートポリマーの重量比は、1:2~5:1、好ましくは1:1.1~5:1である。
【0052】
接着剤組成物は、構造用接着剤層組成物のコストを低減する、粘度を調節する並びに/若しくは更なる強度を付与する、又はより迅速若しくは均一な硬化を達成し得るよう本発明の接着剤組成物及び物品の熱伝導性を変更するために、最大約50重量部(a)~d)の100重量部に対して)、望ましくは最大約10パーセントの種々の添加剤を更に含んでもよく、添加剤は、例えば、充填剤、安定剤、可塑剤、粘着付与剤、流動性調整剤、硬化速度抑制剤、接着促進剤(例えば、シラン及びチタネート)、補助剤、耐衝撃性改良剤、熱伝導性粒子、及び導電性粒子など、例えば、シリカ、ガラス、粘土、タルク、顔料、着色剤、ガラスビーズ、及び酸化防止剤である。
【0053】
本開示は、少なくとも1つの脆弱な(ボイド又は発泡)接着剤層と、任意選択的に少なくとも1つの非ボイド層とを含有する接着剤物品を提供する。非ボイド層は、同じ組成範囲内であるが、膨張微小球を欠く、ボイド層について記載したものと同じ成分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、本開示は、ボイド層と、非ボイド層が異なるポリマー組成物のものであり得る少なくとも1つの非ボイド層とを含む多層物品を提供する。
【0054】
好適な非ボイド基材は、単一材料又は異なる材料の組み合わせを含むことができ、本質的に均質又は不均質であり得る。有用な不均質基材としては、物理的支持体(例えば、ポリマーフィルム)上に担持された材料(例えば、ガラス又はプライマー)のコーティングを有するコーティングされた基材が挙げられる。
【0055】
有用な基材としては、木材、ガラス、鉱物(例えば、コンクリートなどの人工セラミックス及び大理石などの天然に存在する石の両方)、ポリマー(例えば、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレートなど)、金属(例えば、銅、銀、アルミニウム、鉄、クロム、ステンレス鋼、ニッケルなど)、金属合金、金属化合物(例えば、金属酸化物など)、革、羊皮、紙、織物、塗装表面、及びこれらの組み合わせを含むようなものが挙げられる。好ましい基材としては、プライマー処理された形態又はプライマー処理されていない形態のいずれかであるケイ質表面を有するものが挙げられる。好ましい基材としては、ガラス、鉱物、木材、金属、金属合金、金属化合物、プライマー処理されたポリマー、及びこれらの組み合わせ(より好ましくは、ガラス、鉱物、金属、金属合金、金属化合物、プライマー処理されたポリマー、及びこれらの組み合わせ、最も好ましくはガラス、鉱物、及びこれらの組み合わせ)が挙げられる。
【0056】
組成物は、25~500マイクロメートル以上の範囲の有用な厚さでこのような基材上にコーティングされてもよい。コーティングは、ローラーコーティング、ディップコーティング、ナイフコーティング、スプレーコーティング、ホットメルトコーティング、又は押出コーティングなどの任意の従来の手段により実施され得る。硬化性組成物の溶液を使用して、コーティングを容易にしてもよい。安定した厚さは、組成物を硬化する前に、所望のコーティング厚さを維持して架橋組成物を形成するために必要である。
【0057】
好ましい実施形態では、接着剤物品は、2つの非ボイド層と、それらの間に配置された脆弱なボイド層とを含む。本明細書で使用する場合、ボイドとは、物品の密度がポリマーマトリックス単独の密度よりも低いポリマーマトリックスを含む物品を指す。密度低下は、望ましくは、気体が充填されたボイドをマトリックス中に形成させること(例えば、発泡剤によって)、又はポリマー微小球(例えば、膨張性微小球)若しくは非ポリマー微小球(例えば、ガラス微小球)を封入することを含む、多くの方法によって達成される。ボイド層を生成するためにボイドを開始する任意の手段は、全体として、ボイド開始成分として既知である。
【0058】
好ましい実施形態では、ボイド接着剤層は微小球を含む。微小球は、ポリマー微小球(膨張性微小球又は予備膨張微小球を含む)又は非ポリマー微小球(例えば、ガラス微小球)であってもよい。「膨張性ポリマー微小球」は、ポリマーシェルと、気体、液体、又はこれらの組み合わせの形態のコア材料とを含み、加熱時に膨張する、微小球である。少なくとも加熱温度において、コア材料の膨張は、次にシェルの膨張を引き起こす。膨張性微小球は、シェルが最初に膨張することができ、又は壊れることなく更に膨張することができる微小球である。いくつかの微小球は、加熱温度で又はその温度付近でのみコア材料が膨張することができるポリマーシェルを有し得る。
【0059】
ポリマーシェルのための熱可塑性樹脂の選択は、ボイド組成物の機械的特性に影響を及ぼす。したがって、組成物の特性は、微小球を適切に選択することによって、又は異なる種類の微小球の混合物を使用することによって、調整することができる。例えば、アクリロニトリル含有樹脂は、高い引張強度及び凝集力が所望される場合に、特にアクリロニトリル含量が樹脂の少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、更により好ましくは少なくとも70重量%である場合に、有用である。一般に、引張強度及び凝集力は両方とも、アクリロニトリル含量の増加とともに増大する。場合によっては、そのボイドがマトリックスより低い密度を有していても、ポリマーマトリックス単独より高い引張強度及び凝集力を有するボイド層を調製することが可能である。このことにより、高強度で低密度の物品を調製することが可能となる。
【0060】
シェルとして使用され得る好適な熱可塑性樹脂の例としては、アクリル酸及びメタクリル酸エステル、例えばポリアクリレート;アクリレート-アクリロニトリルコポリマー;及びメタクリレート-アクリル酸コポリマーなどが挙げられる。塩化ビニリデン含有ポリマー、例えば塩化ビニリデン-メタクリレートコポリマー、塩化ビニリデン-アクリロニトリルコポリマー、アクリロニトリル-塩化ビニリデン-メタクリロニトリル-メチルアクリレートコポリマー、及びアクリロニトリル-塩化ビニリデン-メタクリロニトリル-メチルメタクリレートコポリマーなどもまた使用してもよいが、高強度が所望される場合は好ましくない。一般に、高強度が所望される場合、微小球シェルは、好ましくは20重量%以下の塩化ビニリデン、より好ましくは15重量%以下の塩化ビニリデンを有する。高強度用途には、塩化ビニリデン単位を本質的に含まない微小球が更により好ましい。
【0061】
好適なポリマー微小球の例としては、参照により本明細書に組み込まれる、各々Pierce Stevens(Buffalo,N.Y.)からの米国特許第5658969号(Gerace)、同第5342689号(Melberら)、同第5180752号(Melberら)、同第5112657号(Melber)、同第5011682号(Melber)、同第4722943号(Melber)に記載されているものが挙げられる。好適な市販の膨張性ポリマー微小球の例は、中性コーティング、例えば、水酸化アルミニウム(アルミナ三水和物又はATH)コーティングを含有するDualite E035-FRを特徴とするものである。予備膨張及び膨張性微小球は、CHASE Corp(Westwood,MA)からDualiteの商標名で入手可能である。市販の微小球の他の例は、「Expancel 007」及び「Expancel 031」という商品名でAzko Nobelから入手可能なものである。酸性度により、以下の微小球も好適であり得る:「820」、「461」、「551」、「642」。加えて、F80SD、F100D、及びExpancel 091微小球は、シェル中に塩化ビニリデン単位を本質的に有していない。加えて、「F-80DE」の商品名で、Matsumoto Yushi Seiyaku Co.,Ltdからの、シリカコーティングを含有するMatsumoto Microsphere(登録商標)F-DEシリーズの膨張アクリロニトリルマイクロカプセルが好適である。
【0062】
膨張ポリマー微小球は、相当量の水が存在する場合、光酸硬化に干渉しない中性の表面を有しなければならないことが発見された。多くのポリマー微小球は、相当な水が存在する場合、エポキシの硬化を遅延させる塩基性コーティング(典型的にはCaCO)を有することが見出された。水は、カチオン性開始剤によって初期に生成される酸と反応するコーティングの一部を可溶化すると考えられる。有用なポリマー微小球及びその固有のコーティングは、本明細書に記載の試験方法を使用して、6~8、好ましくは6.5~7.5のpHを有する。
【0063】
接着剤組成物に組み込まれた微小球の量は、密度低下によって測定したときに、少なくとも10%、より好ましくは20%を超える低下を有するボイド層を得るように選択される;[1-純粋接着剤組成物の密度に対するボイド層密度の比]×100。微小球は、最大ボイド層密度が50%であるような量で添加され得る。一般に、ボイド層は、0.45~0.85g/cm、好ましくは0.6~0.85g/cmの密度を有する。
【0064】
各層の接着剤組成物は、(メタ)アクリレートコポリマー(又はモノマー混合物)と、エポキシ樹脂、ポリエーテルポリオール、任意選択のヒドロキシ官能性フィルム形成ポリマー、任意選択のポリビニルアセタール、及びカチオン性光開始剤を組み合わせ、混合物を化学線、好ましくは385nm超(>385nm)の波長で照射することにより光重合させることで調製してもよい。ボイド層は、必要な密度低下及び必要な脆弱性をもたらすために微小球を更に含む。
【0065】
いくつかの実施形態では、モノマー混合物を光又は熱開始剤を使用してフリーラジカル重合させることで、(メタ)アクリレートコポリマーを別個に調製する。コポリマーは、任意の従来のフリーラジカル重合法により調製してもよく、これには溶液、放射線照射、バルク、分散、乳化、無溶媒、及び懸濁プロセスが含まれる。得られる接着剤コポリマーは、ランダム又はブロック(コ)ポリマーであり得る。
【0066】
(メタ)アクリレートコポリマーの調製において有用な熱開始剤は、熱に暴露すると、モノマー混合物の(共)重合を開始させるフリーラジカルを生成する開始剤である。好適な水溶性開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム及びこれらの混合物、前述の過硫酸塩の反応生成物などの酸化還元開始剤、並びにメタ重亜硫酸ナトリウム及び重亜硫酸ナトリウムからなる群から選択されるものなどの還元剤、並びに4,4’-アゾビス(4-シアノペンタン酸)及びその可溶性塩(例えば、ナトリウム、カリウム)からなる群から選択されるものが挙げられる。好適な開始剤としては、VAZO(商標)64(2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル))及びVAZO(商標)52(2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルペンタンニトリル))(両方ともE.I.du Pont de Nemours Co.から入手可能)などのアゾ化合物、過酸化ベンゾイル及び過酸化ラウロイルなどの過酸化物、並びにこれらの混合物からなる群から選択されるようなものもまた、挙げられる。好ましい油溶性熱開始剤は、(2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル))である。
【0067】
使用する場合、熱開始剤は、感圧接着剤中のモノマー成分100重量部に対して、約0.05重量部~約1重量部、好ましくは約0.1重量部~約0.5重量部を占めてもよい。
【0068】
有用な光開始剤としては、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾインエーテル、Irgacure(商標)651光開始剤(BASF(Ludwigshafen,Germany))として入手可能な2,2-ジメトキシアセトフェノン、Esacure(商標)KB-1光開始剤(Sartomer Co.(West Chester,PA))として入手可能な2,2ジメトキシ-2-フェニル-1-フェニルエタノン、並びにジメトキシヒドロキシアセトフェノンなどの置換アセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノンなどの置換α-ケトール、2-ナフタレン-スルホニルクロライドなどの芳香族スルホニルクロライド、並びに1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシ-カルボニル)オキシムなどの光学活性オキシムが挙げられる。これらのうちで特に好ましいものは、置換アセトフェノンである。
【0069】
好ましい光開始剤は、ノリッシュI開裂を起こして、アクリル二重結合への付加により開始可能なフリーラジカルを生成する、光活性化合物である。かかる光開始剤は、好ましくは、モノマー混合物100部あたり0.1pbw~1.0pbwの量で存在する。モノマー混合物及び光開始剤に活性化UV線を照射して、モノマー成分を重合させてもよい。
【0070】
UV光源には2つの種類があり得る。すなわち、1)280~400nmの波長範囲にわたって、概ね10mW/cm以下(例えば、Electronic Instrumentation&Technology,Inc.(Sterling,VA)によって製造されたUvimap(商標)UM365L-S放射計を用いて、United States National Institute of Standards and Technologyによって承認された手順に従って測定した場合)をもたらす、バックライトなどの比較的低強度の光源、及び2)概ね10mW/cmを上回る、好ましくは15~450mW/cmの間の強度をもたらす中圧水銀ランプなどの比較的高強度の光源があり得る。例えば、600mW/cmの強度、及び約1秒間の曝露時間を成功裡に使用することができる。強度は、約0.1~約150mW/cm、好ましくは約0.5~約100mW/cm、より好ましくは約0.5~約50mW/cmの範囲をとり得る。
【0071】
化学光源の1つの有用なクラスは、発光ダイオード(「LED」)を使用する。LED系UV源は優位である。なぜならば、それはUV光を、ブラックライト及び水銀ランプなどの他のUV光源と比べてはるかに狭い波長範囲に渡って発生させることができるからである。このようなLED源は、例えば、Excelitas Technologies(Waltham,MA)から入手可能なACシリーズ365nm又は395nm LED硬化システムが市販されている。
【0072】
典型的な溶液重合法は、モノマー、好適な溶媒、及び任意選択の連鎖移動剤を反応容器に添加すること、フリーラジカル開始剤を添加すること、窒素でパージすること、並びに反応容器を、バッチサイズ及び温度に応じて、反応が完了するまで、典型的には約1~24時間、高温(典型的には約40~100℃の範囲)に維持すること、によって実施される。溶媒の例は、メタノール、テトラヒドロフラン、エタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアセテート、エチルアセテート、トルエン、キシレン、及びエチレングリコールアルキルエーテルである。これらの溶媒は単独で、又はこれらの混合物として使用することができる。
【0073】
いくつかの実施形態では、アクリル混合物は、ガラスジャーにアクリルモノマー及びフィルム形成ポリマーを充填することによって調製することができる。次いで、混合物を一晩回転させるか、又はNetzsch Model 50 Dispersatorを使用して、透明かつ均質になるまで混合することができる。得られた材料は、接着剤組成物の他の成分と組み合わせてよく、任意選択的に基材(剥離ライナーなど)上にコーティングし、重合させてもよい。
【0074】
重合は、シロップポリマーの成分の官能基と反応しないエチルアセテート、トルエン、及びテトラヒドロフランなどの好適な溶媒の存在下で、又は好ましくは非存在下で行うことができる。
【0075】
シロップポリマー技術は、モノマーを部分的に重合して、溶質(メタ)アクリレートコポリマー及び未重合溶媒モノマーを含むシロップポリマーを製造することを含む。シロップポリマー組成物を、有用なコーティング粘度となるよう重合させ、それを接着剤組成物のその他の成分と混合してよく、任意選択的に基材(テープバッキングなど)上にコーティングし、更に重合させてもよい。部分的重合は、1種以上の溶媒モノマー中に、(メタ)アクリレート溶質コポリマーがある、コーティング可能な溶液を提供する。シロップ重合法を使用する場合は、配合後に、溶媒モノマーを完全に重合するための更なるフリーラジカル開始剤が必要であると理解されるであろう。
【0076】
好ましい実施形態では、コポリマーは、シロップポリマー技術によって調製され、得られたシロップは、溶質コポリマー及び溶媒モノマーを含み、エポキシ樹脂、ポリエーテルポリオール、カチオン性光開始剤、及び任意選択のフィルム形成ポリマーと組み合わされる。ボイド層はボイド剤を含む。組成物中のコポリマーは、重合、架橋、及び粘度の増加をもたらすために更に照射してもよい。この方法では、フリーラジカル光開始剤は、エポキシ成分の重合を避けるために、カチオン性光開始剤のものとは異なる波長で重合をもたらすように選択されるべきである。一般に、このシロップ技術は、近可視周波数でフリーラジカル光開始剤を使用し、次いでUV周波数でカチオン性光開始剤を使用する。
【0077】
米国特許第4,619,979号及び同第4,843,134号(Kotnourら)に記載されている連続フリーラジカル重合法などの無溶媒重合法、米国特許第5,637,646号(Ellis)に記載されているバッチ反応容器を使用する本質的に断熱の重合法、並びに米国特許第5,804,610号(Hamerら)に記載されている、パッケージ化されたプレ接着性組成物を重合するために説明される方法を使用して、ポリマーを調製することもできる。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5637646(Ellis)に記載されているように、好ましくは、第1のコポリマーは、断熱バッチ重合プロセスにより調製され、この場合、反応過程でバッチへ又はバッチから交換される任意のエネルギーの絶対値の総量は、重合が起こっている間に生じている重合の量に対応する反応によって放出される総エネルギーの約15%未満となる。
【0078】
好ましくは、成分は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第9607522号(Hamerら)及び米国特許第5,804,610号(Hamerら)に記載されるパッケージ化されたプレ接着剤組成物を重合するために記載される方法において説明される方法を使用して組み合わされ、光重合される。
【0079】
Hamerの方法において、反応槽又は容器を形成するために使用されるパッケージ材料は、好ましくは、接着剤組成物と組み合される時、望ましい接着剤特性に実質的に悪影響を及ぼさない材料で調製される。接着剤組成物及びパッケージ材料の混合物から生成されるホットメルトコーティングされた接着剤は、接着剤組成物単独から生成されるホットメルトコーティングされた接着剤と比較して、改善された接着剤特性を有し得る。
【0080】
別の好ましい実施形態では、組成物は、官能性(メタ)アクリレートコポリマーのモノマー、フリーラジカル開始剤、エポキシ樹脂及びポリオール、任意選択的に、フィルム形成ポリマー、水、カチオン性光開始剤、微小球、並びにポリビニルブチラールなどのポリビニルアセタールポリマーを組み合わせることによって調製される。いくつかの実施形態では、ポリビニルアセタールポリマーは、ヒドロキシ官能性フィルム形成ポリマーの代わりに、又はそれに加えて使用されてもよい。ポリビニルアセタール樹脂の使用により、上記のシロップ技術を使用することなく、モノマー混合物をコーティングすることができる。このようなポリマーは、一般式:
【化5】
[式中、R11は水素、アリール基、又はC~C(シクロ)アルキル基であり、下付き文字xは少なくとも20である]のものである。このようなポリマーの使用は、本出願人の同時係属中である米国特許出願公開第2016-0289440号(Janoskiら)に記載されており、本明細書に参照により組み込まれる。
【0081】
ポリビニルアセタールは、存在する場合、硬化性組成物100重量部に対して0.1重量部~6重量部の量で使用される。より具体的には、硬化性組成物は、
a.ヒドロキシ官能性又はエーテル官能性(メタ)アクリレートモノマー、及びアルキル(メタ)アクリレートモノマーを含む、15部~50部のモノマー混合物、
b.25部~50部のエポキシ樹脂成分、
c.5部~15部の液体ポリエーテルポリオール、
d.任意選択的に、最大25部のヒドロキシ官能性フィルム形成ポリマー、
e.a~dの100部に対して、0.1部~2.5部の水、
f.a~dの100部に対して、0.01部~5部のカチオン性光開始剤、
g.10%超(>10%)の密度低下をもたらすのに十分な量のポリマー微小球であって、上記微小球が中性の表面を有する、微小球、
h.a)~d)に加えてf)及びg)の100重量部に対して、0.1重量部~6重量部のポリビニルアセタールポリマーを含んでよく、
a)~d)の合計は、100重量部である。
【0082】
本発明において利用されるポリビニルアセタール樹脂は、当該技術分野において公知のとおり、例えばポリビニルアルコールをアルデヒドと反応させることによって得られる。
【0083】
ポリビニルアルコール樹脂は、この製造方法に制限されない。例えば、ポリ酢酸ビニルなどをアルカリ、酸、アンモニア水などで鹸化することによって生成されるものを使用し得る。ポリビニルアルコール樹脂は完全に鹸化していてもよく、あるいは部分的に鹸化していてもよい。80mol%以上の鹸化度を有するものを使用することが好ましい。ポリビニルアルコール樹脂は、単独で、又は2つ以上の組み合わせで使用することができる。
【0084】
ポリビニルアセタール樹脂の製造に使用されるアルデヒドとしては、ホルムアルデヒド(パラホルムアルデヒドを含む)、アセトアルデヒド(パラアセトアルデヒドを含む)、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、n-オクチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2-エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキサール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2-メチルベンズアルデヒド、3-メチルベンズアルデヒド、4-メチルベンズアルデヒド、p-ヒドロキシベンズアルデヒド、m-ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β-フェニルプロピオンアルデヒドなどが挙げられる。これらのアルデヒドは、単独で、又は2つ以上の組み合わせで使用することができる。
【0085】
各方法では、硬化性組成物は、硬化性組成物100重量部に対して、0.1重量部~2.5重量部の水を含む。少量の水は、硬化速度及び得られた接着特性を変化させることが見出された。少なすぎると効果は見られない。多すぎると硬化が遅れる。少量の水は、利用可能なヒドロニウムイオン及びマトリックスを通過するその移動度を増加させる。水は、当該技術分野の任意の手段によって導入され得るが、含水量が所望の値になるまで、高湿度条件下で硬化性組成物を平衡化することが好ましい。
【実施例
【0086】
特に記載のない限り、実施例及び本明細書のその他の箇所における全ての部、百分率、比などは、重量によるものである。別段の指示がない限り、他の全ての試薬は、Sigma-Aldrich Company(St.Louis,Missouri)などのファインケミカル業者から入手したか、又は入手可能であり、あるいは公知の方法で合成することができる。表1(以下)に、実施例で使用した材料及びそれらの供給元を一覧で示す。
【表1】
【0087】
試験方法
方法A
表2に示す量でBA、THFA、及びIRGACURE 651をガラスジャーに充填し、光開始剤が溶解し、均質な混合物が得られるまで撹拌することによってアクリル混合物M1を調製した。ジャーの蓋にある開口部を介して挿入した管を通して窒素ガスを導入し、少なくとも5分間激しくバブリングすることによって、各混合物を脱気した。撹拌しながら、各混合物がコーティングに適していると考えられる粘度に達するまで、各混合物をUVA光に曝露した。光源は、365nmのピーク発光波長を有するLEDアレイであった。UV曝露後、空気をジャー内に導入した。
【0088】
方法B
示される量でEPON 828及びEPON 1001Fをガラスジャーに充填し、均質な混合物が得られるまで、135℃のオーブン内でスラリーを加熱することによって「エポキシ-ポリオールプレミックス」を調製した。ACCLAIM 2200を撹拌しながら添加し、混合物を周囲温度に冷却した。使用直前に、混合物を約200°Fまで再加熱し、注ぎやすさのために粘度を低下させた。
【0089】
ガラスジャー中で、アクリル混合物M1、GPTMS、HDDA、CPI 6976、エポキシ-ポリオールプレミックス、及びIRGACURE 819を表4及び6に示す量で組み合わせた。アクリルモノマーBA、THFA、IBOA、又はHEAの組み合わせを含有する混合物については、M1の代わりにモノマーを添加した。次いで、表4及び6に示す量でTS720シリカ又はMOWITAL B60HHを添加し、得られた混合物を、コウルス(cowls)ブレード混合を1分間使用して剪断した。次いで、GPTMS、HDDA、CPI 6976、エポキシ-ポリオールプレミックス、及びIRGACURE 819を指定の量で添加した。次いで、指定のサンプルについて微小球を添加した。ジャーをホイルで裏打ちしたキャップで緊密に閉じ、ジャーローラー上に置いて、光から一晩保護した。
【0090】
方法C
次いで、硬化性層を、2つのライナーを合わせた厚さよりも0.005~0.040インチ(127~1016マイクロメートル)大きいギャップ設定を有する二本ロールコーターを使用して、シリコーン剥離コーティングPETライナーの間にコーティングして、420nmのピーク発光波長を有する複数の電球を用いてUVAエネルギー(両側に1700mJ/cm)に曝露した。低出力感知ヘッドを装備したPOWER PUCK IIラジオメーター(EIT,Inc.,Sterling,VA)を用いて、毎分12~15フィート(毎分3.7~4.6メートル)のウェブ速度で、総UVA2エネルギーを測定した。次に、ラジオメーターウェブ速度及エネルギーを使用して、アクリル系組成物硬化中に使用したウェブ速度での総曝露エネルギーを計算した。
【0091】
方法D(エポキシ変換のFT-NIR測定)
エポキシ変換(変換率%)は、フーリエ変換近赤外分光法(FT-NIR)(ThermoFisher Nicolet iS10 FT-IR分光計)を用いて測定した。1インチ×1インチの硬化性テープ片を切り出すことにより、試験サンプルを調製した。第1のライナーを除去し、2×3インチの顕微鏡スライドの中央に下向きに置いた。第2のライナーを除去し、1インチ×3インチの顕微鏡スライドをテープの上部に置き、サンドイッチ構造を作製した。365nmのピーク発光波長を有するLEDアレイ(CLEARSTONE TECHNOLOGIES,Hopkins,MN)を使用して、アセンブリをUV-A放射線に曝露した。総UV-Aエネルギー(約5~7J/cm)は、POWER PUCK IIラジオメーター(EIT,Inc.,Sterling,VA)を用いて決定した。変換率%についてのスペクトルは、水分%についてのスペクトルと同一の方法で得られる(方法F)。したがって、変換率%及び水分%は、同じFT-NIRスペクトルから決定することができる。変換率%の定量化は、第2のエポキシ環倍音及び基本音C-H伸張の組み合わせに起因して、4530cm-1付近の分解されたエポキシに基づくものであった。較正のために、硬化性テープ(未硬化)及び完全に硬化した材料のスペクトルを得た。完全に硬化したスペクトルを各サンプルスペクトルから減算した。2点ベースライン補正を、エポキシ及び正規化ピークの両方に適用した。正規化を達成するために、エポキシピークを4590cm-1~4750cm-1領域における総吸光度に対して比率で示し、これは、芳香族基に関連する基本音C-H伸張及びC-C伸張振動の組み合わせに起因する。これらの信号強度の比率化は、測定値から測定値までの有効光路長の任意の変化を補正する(すなわち、ピーク正規化)。単純なベースライン補正により適していることから、正規化での使用において、脂肪族領域(4425cm-1~4275cm-1)ではなく芳香族領域を選択した。定量化のために、未硬化サンプルのピーク比が0%変換率と関連付けられると仮定することによってピーク比を較正した。
【0092】
方法E(多層法)
層A-層B-層Aの構造を有する多層物品を得るために、第2の層A組成物の180mm×140mm部分を得、その第1のライナーを除去した。積層体の層B部分から残っているライナーを除去し、次いで、プラスチックスプレッダーを使用して手で圧力を加えることにより、第2の層A組成物を積層体の層B部分に積層した。気泡及びボイドを最小限に抑え、層を機械方向に平行に整列させるように注意を払った。
【0093】
方法F(水分のFT-NIR測定)
硬化性テープの含水量(水分%)を、フーリエ変換近赤外分光法(FT-NIR)を使用して監視した。サンプルをガラス顕微鏡スライド上に置き、透過モードで分析した。定量化は、H-O-H伸長及び曲げ振動の組み合わせに起因する5310cm-1~5040cm-1領域における水からの寄与に基づくものであった。この水のピークは、4750cm-1~4575cm-1領域における総吸光度に対して比率で示し、これは、基本音芳香族C-H及び環伸長振動に関連する。これらの信号強度の比率化は、測定値から測定値までの有効光路長の任意の変化を補正する(すなわち、ピーク正規化)。単純なベースライン補正により適していることから、正規化での使用において、脂肪族領域(4425cm-1~4275cm-1)ではなく芳香族領域を選択した。2点ベースライン補正を、水及び正規化ピークの両方に適用した。ピーク比は、定量を可能にするためにカールフィッシャー分析によって決定された様々な含水量を有する一連のサンプルに対して較正した。
【0094】
方法G(重ね剪断試験)
E-コーティングされたスチール(「stl」)への接着性を、結合した試験片の重ね剪断強度を測定することによって決定した。25mm×50.8mmの基材片をイソプロピルアルコール及び水の1:1(v:v)溶液で拭き、風乾させた。接着剤組成物の12.7mm×25mm部分の片側から剥離ライナーを除去し、組成物を1つの片へと貼り付けた。第2の剥離ライナーを除去し、365nmのピーク発光波長を有するLEDアレイ(CLEARSTONE TECHNOLOGIES,Hopkins,MN)を使用して、組成物をUV-A放射線に曝露した。総UV-Aエネルギー(5~7J/cm)は、POWER PUCK IIラジオメーター(EIT,Inc.,Sterling,VA)を用いて決定した。第2の片を照射した試料へと貼り付け、こうして結合部を閉じた。6kgの静荷重を試験片に6秒間加えることによって、アセンブリをウエットアウトさせた。試験に先だって、試験片を周囲温度及び湿度にて24時間硬化させた。
【0095】
動的重ね剪断試験を、インストロン引張試験機型式5581(Instron Corp.(Canton,MA))を使用して、周囲温度にて実施した。試験片をグリップに載せ、2.5mm/分でクロスヘッドを操作し、試験片に荷重をかけ、破壊した。破断応力をMPa単位で記録した。
【0096】
方法H(カールフィッシャー)
様々なサイズ(約0.2g)のサンプルアリコートをバイアルに密封し、Metrohm774オーブンプロセッサ内で120℃まで加熱した。予め乾燥させた窒素流中で、水をバイアルからMetrohm851カールフィッシャー電量滴定装置に移した。滴定は、Metrohm Tiamo(登録商標)2.0ソフトウェアで制御し、自動的に終了した。含水量及びサンプル質量に基づいて、抽出時間はさまざまであったが、300秒の最低抽出時間を用いた。KFユニットは、クーロマットAG-Oven(メタノール)で構成した。
【0097】
方法I(pH試験)
約0.10g(0.1mg単位で)を50mL遠心管に秤量することにより、サンプルを調製した。およそ50mLのMilli-Q脱イオン水を添加し、溶液を機械的手首運動型振盪器上で24時間振盪して抽出した。基準値について、サンプルを50mL遠心管中で秤量した(約0.15g)。およそ50mLの脱イオン水を添加し、溶液を機械的手首運動型振盪器上で24時間振盪して抽出した。サンプルを、既知の体積の標準化HCl溶液で処理し、標準化NaOH溶液で逆滴定した。3連のブランクを調製し、サンプルとともに分析した。アルカリ度は、以下の式によって定義した:
【数1】
式中、VolHCl及びNHClは、抽出物に添加されるHClの体積及び規定度であり、VolNaOH及びNNaOHは、NaOH滴定の体積及び規定度である。滴定前の低イオン強度電極を用いて、微小球抽出物のpHを測定した。
【0098】
実施例
表2に列挙したアクリル混合物(M1)を、配合実験にて使用するために調製した。方法Aに従ってアクリル混合物M1を調製した。
【表2】
【0099】
アクリル混合物M1を使用して、(表4に列挙されるような)ボイド層及び(表6に列挙されるような)非ボイド層を調製した。ボイド層及び非ボイド層を、それぞれ、方法B及びCに従って配合及びコーティングした。
【0100】
方法Iに従って、抽出可能な塩基及び全酸-塩基特性について微小球を評価した。少量の球体(約0.5g)を水(約2mL)中でボルテックスし、pH紙(0~14)を用いて水溶液を試験することによってpHを得た。
【表3】
【表4】
【0101】
硬化性ボイド層を、それらを一定の湿度チャンバ内で予備調整することによって、耐湿性について評価した。含水量は、方法Fに従って監視した。層は、含水量が一定(10~14日間)のままであるときに平衡化されたと見なした。次いで、方法Dに従って、テープをエポキシ変換について評価した。
【表5】
【表6】
【0102】
多層構造を、方法Eに従い、2つの非ボイド層間にボイド層を用いて調製し、表7に示した。
【表7】
【0103】
平衡化された水のピーク面積を方法Fに従って測定し、表8に示した。
【表8】
【0104】
接着特性を、方法Gによる重ね剪断試験によって測定し、表9に示した。
【表9】
【表10】
【0105】
上記の特許出願において引用されたすべての参考文献、特許文献又は特許出願は、一貫した形でその全文が参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれた参照文献の一部と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の記載における情報が優先するものとする。前述の記載は、当業者が、特許請求の範囲に記載の開示を実践することを可能にするためのものであり、本開示の範囲を限定するものと解釈すべきではなく、本開示の範囲は特許請求の範囲及びその全ての等価物によって定義される。