(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】癌の診断および治療のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/12 20060101AFI20240405BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240405BHJP
C07K 14/78 20060101ALI20240405BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240405BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240405BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240405BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240405BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240405BHJP
C40B 40/10 20060101ALI20240405BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240405BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240405BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240405BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240405BHJP
A61K 49/00 20060101ALI20240405BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20240405BHJP
G01N 33/574 20060101ALI20240405BHJP
G01N 33/531 20060101ALI20240405BHJP
A61K 38/56 20060101ALN20240405BHJP
【FI】
C12N15/12
C12N15/62 Z ZNA
C07K14/78
C07K19/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C40B40/10
A61P35/00
A61K38/16
A61K48/00
A61K35/12
A61K49/00
A61K47/64
G01N33/574 B
G01N33/531 A
A61K38/56
(21)【出願番号】P 2020568252
(86)(22)【出願日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2019064872
(87)【国際公開番号】W WO2019234190
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/065205
(32)【優先日】2018-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509146023
【氏名又は名称】バイオエヌテック エスエー
【氏名又は名称原語表記】BIONTECH SE
【住所又は居所原語表記】An der Goldgrube 12 55131 Mainz Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】サヒン, ウグル
(72)【発明者】
【氏名】ルイ, ボニー ギャビー
(72)【発明者】
【氏名】サロモン, ナジャ
(72)【発明者】
【氏名】ヴューステヒューブ-ローシュ, ジョイスリン
(72)【発明者】
【氏名】ダネシュダール, マティン
(72)【発明者】
【氏名】シュモルト, ハンス-ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】フィードラー, マルクス
【審査官】松井 一泰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/049009(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/022597(WO,A1)
【文献】特表2012-505929(JP,A)
【文献】特表2010-500875(JP,A)
【文献】国際公開第2016/146639(WO,A1)
【文献】GEBAUER, Michaela et al.,Combinatorial Design of an Anticalin Directed against the Extra-Domain B for the Specific Targeting of Oncofetal Fibronectin,J. Mol. Biol.,2013年,425,pp. 780-802
【文献】PARK, Jinho et al.,Fibronectin extra domain B-specific aptide conjugated nanoparticles for targeted cancer imaging,Journal of Controlled Release,2012年09月03日,163,pp. 111-118
【文献】MAAB, Franziska et al.,Cystine-knot peptides targeting cancer-relevant human cytotoxic T lymphocyte associated antigen 4 (CTLA-4),Journal of Peptide Science,2015年05月10日,21,pp. 651-660
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00- 15/90
C07K 1/00- 19/00
C12Q 1/00- 3/00
G01N 33/48- 33/98
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィブロネクチンエクストラドメインB(EDB)結合ペプチドであって、
当該EDB結合ペプチドは、
(i)SerValCysLysAsnValSerIleMetArgIleArgLeuCysArgArgAspSerAspCysProGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly(配列番号8)、
(ii)SerValCysAlaHisTyrAsnThrIleArgValArgLeuCysArgArgAspSerAspCysProGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly(配列番号9)、
(iii)ProMetCysThrGlnArgLysAsnArgIleArgLeuCysArgArgAspSerAspCysThrGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly(配列番号11)、
(iv)SerValCysLysGlnAlaAsnPheValArgIleArgLeuCysArgArgAspSerAspCysProGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly(配列番号12)、
(v)AlaMetCysThrGlnArgLysAsnArgIleArgLeuCysArgArgAspSerAspCysThrGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly(配列番号13)、
(vi)ProAlaCysThrGlnArgLysAsnArgIleArgLeuCysArgArgAspSerAspCysThrGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly(配列番号14)、
(vii)ProMetCysAlaGlnArgLysAsnArgIleArgLeuCysArgArgAspSerAspCysThrGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly(配列番号15)、
(viii)ProMetCysThrAlaArgLysAsnArgIleArgLeuCysArgArgAspSerAspCysThrGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly(配列番号16)、
(ix)ProMetCysThrGlnAlaLysAsnArgIleArgLeuCysArgArgAspSerAspCysThrGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly(配列番号17)、
(x)ProMetCysThrGlnArgAlaAsnArgIleArgLeuCysArgArgAspSerAspCysThrGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly(配列番号18)、
(xi)ProMetCysThrGlnArgLysAlaArgIleArgLeuCysArgArgAspSerAspCysThrGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly(配列番号19)、
(xii)ProMetCysThrGlnArgLysAsnArgIleArgLeuCysAlaArgAspSerAspCysThrGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly(配列番号24)、および
(xiii)ProMetCysThrGlnArgLysAsnArgIleArgLeuCysArgAlaAspSerAspCysThrGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly(配列番号25)
からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む、EDB結合ペプチド。
【請求項2】
足場を形成するかまたは足場の一部である、および/または共有結合修飾によって安定化されている、請求項1に記載のEDB結合ペプチド。
【請求項3】
共有結合修飾によって安定化されており、前記共有結合修飾が、1つ以上のジスルフィド架橋を介する環化である、請求項2に記載のEDB結合ペプチド。
【請求項4】
シスチンノット構造を形成する、および/またはその一部である、請求項1に記載のEDB結合ペプチド。
【請求項5】
請求項1に記載のEDB結合ペプチドを含むフィブロネクチンエクストラドメインB(EDB)結合剤。
【請求項6】
前記EDB結合ペプチドが共有結合および/または非共有結合で、担体タンパク質、標識、レポータ、およびタグから選択される少なくとも1つのさらなる部分と会合している、請求項5に記載のEDB結合剤。
【請求項7】
共有結合および/または非共有結合で会合している少なくとも2つのサブユニットを含み、前記サブユニットのそれぞれが、同じでも異なっていてもよい、請求項1に記載のEDB結合ペプチドを含む、EDB結合剤。
【請求項8】
共有結合および/または非共有結合で、少なくとも1つの検出可能な標識もしくはレポータおよび/または少なくとも1つの治療エフェクタ部分と会合した、請求項5に記載のEDB結合剤。
【請求項9】
請求項1に記載のEDB結合ペプチドをコードする組換え核酸。
【請求項10】
請求項9に記載の組換え核酸を含む宿主細胞。
【請求項11】
請求項1に記載のEDB結合ペプチドを含む試験キットまたはアッセイ装置。
【請求項12】
試料中のフィブロネクチンエクストラドメインB(EDB)の存在および/または量を検定するための方法であって、請求項1に記載のEDB結合ペプチドを使用することを含み、
EDBの存在および/または量を検定することが、
(i)試料を前記EDB結合ペプチドまたは前記EDB結合ペプチドを含むEDB結合剤と接触させること、ならびに
(ii)前記EDB結合ペプチドまたは前記EDB結合剤とEDBとの間の複合体の形成を検出することおよび/または複合体の量を決定すること
を含む、方法。
【請求項13】
患者における癌
の検出またはモニタリングのためのインビトロ方法であって、
当該方法は、前記患者におけるフィブロネクチンエクストラドメインB(EDB)の存在および/または量を検定することを含み、
EDBの存在および/または量を検定することが、請求項12に記載の方法にしたがって、前記患者から単離された生物学的試料を検定することを含む、方法。
【請求項14】
請求項1に記載のEDB結合ペプチドを含む医薬組成物。
【請求項15】
患者を処置するための医薬の調製のための、請求項1に記載のEDB結合ペプチドの使用であって、前記患者が癌を有するかまたは癌を発症するリスクがある、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織リモデリングおよび/または血管新生を特徴とする疾患、特に頭頸部癌、脳の癌、結腸直腸癌、肺癌、前立腺癌および乳癌などの癌性疾患のようなフィブロネクチンエクストラドメインB(EDB)を発現する疾患の診断および治療に関する。より具体的には、本発明は、フィブロネクチンエクストラドメインBを標的とするペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、心疾患を上回って、世界中で主要な死亡原因の1つである。世界人口のうち820万人が2012年に癌で亡くなっている(WHO)。古典的な抗癌療法、例えば放射線療法、化学療法および従来の外科的処置は、しばしば選択性が低く、したがって、健康な組織に対する重篤な毒性副作用を抱える。新しい治療形態は、腫瘍関連抗原に特異的な結合分子による腫瘍環境への生物活性分子(薬物、サイトカイン、放射性核種など)の標的化送達にある。これにより、標的陽性の腫瘍組織への薬物の選択的な方向付けが可能になり、健康な細胞に害を与えることなく悪性細胞を有効に死滅させる。これは、個々の癌療法に合理的に適合させた戦略をあらかじめ保証するために、患者内の標的陽性腫瘍の決定を可能にする、いわゆるコンパニオン診断の開発と共に行われる。ここでは、標的特異的な画像化技術の適用が、過去数十年間の目覚ましい進歩を明らかにする重要な診断段階となっている。画像化技術は、腫瘍関連タンパク質の存在と量、局在化、早期検出、分布、患者の層別化、および治療モニタリングについての重要な情報を提供することができる。腫瘍イメージングは、癌の診断および癌治療における治療成功のモニタリングのための基本的な工程である。コンピュータ断層撮影スキャンまたは磁気共鳴画像法などの長い間確立された技術は、何十年にもわたって日常的に使用されてきた。しかしながら、標的分子イメージングは、癌関連タンパク質に対する分子薬を使用して腫瘍を正確に可視化するので、より一層の注目を集めている。腫瘍血管新生の間に出現するバイオマーカは、通常、血管中に高レベルで発現され、したがって血流から容易にアクセス可能であるため、非常に有用である。
【0003】
フィブロネクチン(FN)は、I型、II型およびIII型ドメインからなる、細胞外マトリックスの二量体ジスルフィド結合糖タンパク質である。このタンパク質は、細胞接着、移動、分化および止血を含む多くの生理学的過程に寄与する。FNは、一次転写産物に由来する複数の選択的スプライシング変異体として発現される。アイソフォームエクストラドメインB(EDB)は、FNドメイン7と8の間に特異的に挿入される、91アミノ酸のさらなるIII型ドメインを含む。この高度に保存されたフィブロネクチンエクストラドメインB配列は、マウス、ラット、ウサギおよびヒトにおいて全く同じように生じる。フィブロネクチンエクストラドメインBは、通常、正常な成体組織には存在しないが、組織リモデリングおよび血管新生に関与する。さらに、フィブロネクチンエクストラドメインBは、頭頸部腫瘍、脳腫瘍および乳房腫瘍などのいくつかの侵攻性固形ヒト腫瘍の新生血管系において豊富な発現パターンを有する多くの異なる癌型で見出されている。
【0004】
血管新生が不十分な腫瘍を標的とする場合、大きなサイズの抗体、さらにはその断片でも、組織浸透の速度を遅くする可能性があり、これにより効率的な送達が妨げられる。さらに、抗体の長期の血液循環のために、特に画像化の概念の文脈では、診断用途に最適ではないと考えられる。前記に加えて、複雑なグリコシル化パターンとジスルフィド架橋を有する抗体の分子構造は、複雑なコストのかかる製造を必要とし、例えばイメージングトレーサによるさらなる機能化を複雑にする。これらの制限を克服するために、抗体に代わるものとして、いわゆるタンパク質足場が過去数十年の間に出現した:足場は、所与の標的の厳密で特異的な認識に合わせた相互作用分子を正確に操作するための堅固な構造フレームワークを提供する。それらのほとんどは、非還元条件下で適切に折りたたまれ、変性や再折り畳みを必要とせずに細菌中で発現され得る。化学合成でさえも、いくつかの形態を作製するための1つの選択肢である。最後に、それらは、多機能結合分子を生成するためのさらなる機能化(標識化、オリゴマー化、他のペプチドとの融合など)に非常に適する。様々な足場ベースのアプローチの中で、シスチンノットミニタンパク質(「ノッティン」)は、標的診断薬および治療薬の開発のために大きな可能性を示している。ミニタンパク質は、その名の通りの結び目構造を形成する3つのジスルフィド結合を含む小さな30~50アミノ酸のポリペプチドである。シュードノットシスチントポロジーは、インビボでの生物医学適用のために望ましい、並外れた熱安定性、タンパク質分解安定性、化学的安定性の原因である。例えば、構造的および機能的完全性を失うことなく、ミニタンパク質はアルカリ性または酸性環境で煮沸することができる。ジスルフィド拘束されたループ領域は、幅広い配列の多様性を許容し、様々な生物医学的標的を認識するタンパク質を操作するための堅固な分子フレームワークを提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Albrecht,Valerie;Richter,Antonia;Pfeiffer,Sarah;Gebauer,Michaela;Lindner,Simon;Gieser,Eugenie et al.(2016):Anticalins directed against the fibronectin extra domain B as diagnostic tracers for glioblastomas.In:International Journal of Cancer 138(5),S.1269-1280.DOI:10.1002/ijc.29874.
【文献】Barbas,Carlos F.;Burton,D.R.;Scott,J.K.;Silverman,G.J.(2004):Phage Display:Cold Spring Harbor Laboratory Pr.
【文献】Carnemolla,B.;Balza,E.;Siri,A.;Zardi,L.;Nicotra,M.R.;Bigotti,A.;Natali,P.G.(1989):A tumor-associated fibronectin isoform generated by alternative splicing of messenger RNA precursors.In:The Journal of cell biology 108(3),S.1139-1148.
【文献】Carnemolla,Barbara;Leprini,Alessandra;Allemanni,Giorgio;Saginati,Marc;Zardi,Luciano(1992):The inclusion of the type III repeat ED-B in the fibronectin molecule generates conformational modifications that unmask a cryptic sequence.In:Journal of Biological Chemistry 267(34),S.24689-24692.
【文献】Castellani,Patrizia;Viale,Giuseppe;Dorcaratto,Alessandra;Nicolo,Guido;Kaczmarek,Janusz;Querze,Germano;Zardi,Luciano(1994):The fibronectin isoform containing the ed-b oncofetal domain.A marker of angiogenesis.In:Int.J.Cancer 59(5),S.612-618.DOI:10.1002/ijc.2910590507.
【文献】Hackel,Benjamin J.;Kimura,Richard H.;Miao,Zheng;Liu,Hongguang;Sathirachinda,Ataya;Cheng,Zhen et al.(2013):18F-fluorobenzoate-labeled cystine knot peptides for PET imaging of integrin αvβ6.In:Journal of nuclear medicine:official publication,Society of Nuclear Medicine 54(7),S.1101-1105.DOI:10.2967/jnumed.112.110759.
【文献】Hernandez,J.F.;Gagnon,J.;Chiche,L.;Nguyen,T.M.;Andrieu,J.P.;Heitz,A.et al.(2000):Squash trypsin inhibitors from Momordica cochinchinensis exhibit an atypical macrocyclic structure.In:Biochemistry 39(19),S.5722-5730.
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【文献】Mariani,G.;Lasku,A.;Balza,E.;Gaggero,B.;Motta,C.;Di Luca,L.et al.(1997):Tumor targeting potential of the monoclonal antibody BC-1 against oncofetal fibronectin in nude mice bearing human tumor implants.In:Cancer 80(12 Suppl),S.2378-2384.
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【文献】Mohammadgholi,Mohsen;Sadeghzadeh,Nourollah;Erfani,Mostafa;Abediankenari,Saeid;Abedi,Seyed Mohammad;Emrarian,Iman et al.(2017):Human Fibronectin Extra-Domain B(EDB)-Specific Aptide(APTEDB)Radiolabelling with Technetium-99m as a Potent Targeted Tumour-Imaging Agent.In:Anti-cancer agents in medicinal chemistry.DOI:10.2174/1871520617666170918125020.
【文献】Moore,Sarah J.;Hayden Gephart,Melanie G.;Bergen,Jamie M.;Su,YouRong S.;Rayburn,Helen;Scott,Matthew P.;Cochran,Jennifer R.(2013):Engineered knottin peptide enables noninvasive optical imaging of intracranial medulloblastoma.In:Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 110(36),S.14598-14603.DOI:10.1073/pnas.1311333110.
【文献】Nielsen,Carsten H.;Kimura,Richard H.;Withofs,Nadia;Tran,Phuoc T.;Miao,Zheng;Cochran,Jennifer R.et al.(2010):PET imaging of tumor neovascularization in a transgenic mouse model with a novel 64Cu-DOTA-knottin peptide.In:Cancer Research 70(22),S.9022-9030.DOI:10.1158/0008-5472.CAN-10-1338.
【文献】Pankov,Roumen;Yamada,Kenneth M.(2002):Fibronectin at a glance.In:Journal of cell science 115(20),S.3861-3863.
【文献】Soroceanu,L.;Gillespie,Y.;Khazaeli,M.B.;Sontheimer,H.(1998):Use of chlorotoxin for targeting of primary brain tumors.In:Cancer Research 58(21),S.4871-4879.
【文献】Spicer,Christopher D.;Davis,Benjamin G.(2014):Selective chemical protein modification.In:Nature communications 5,S.4740.DOI:10.1038/ncomms5740.
【文献】Veiseh,Mandana;Gabikian,Patrik;Bahrami,S-Bahram;Veiseh,Omid;Zhang,Miqin;Hackman,Robert C.et al.(2007):Tumor paint:a chlorotoxin:Cy5.5 bioconjugate for intraoperative visualization of cancer foci.In:Cancer Research 67(14),S.6882-6888.DOI:10.1158/0008-5472.CAN-06-3948.
【文献】Zhu,Xiaohua;Li,Jinbo;Hong,Yeongjin;Kimura,Richard H.;Ma,Xiaowei;Liu,Hongguang et al.(2014):99mTc-labeled cystine knot peptide targeting integrin αvβ6 for tumor SPECT imaging.In:Molecular Pharmaceutics 11(4),S.1208-1217.DOI:10.1021/mp400683q.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
当技術分野では、診断および治療アプローチに有用なフィブロネクチンエクストラドメインB結合分子が必要とされている。
【0007】
ヒトフィブロネクチンエクストラドメインBに対して高い特異性および選択性を示す、フィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドなどのフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤が本明細書に記載されている。本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤は、診断用途、特に腫瘍イメージング、および腫瘍環境の効率的な標的化による治療用途のための優れたツールである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、モモルディカ・コキネンシス(Momordica cochinchinensis)(ナンバンキカラスウリ)(oMCoTI-II)由来のノッティン型トリプシン阻害剤IIの開鎖変異体を、フィブロネクチンエクストラドメインB(EDB)特異的結合タンパク質を操作するための分子足場として使用した。この目的のために、モモルディカ・コキネンシス由来のトリプシン阻害剤II(oMCoTI-II)に基づくファージライブラリを使用して、組換えフィブロネクチンエクストラドメインBに対するシスチンノットミニタンパク質を選択した。操作されたシスチンノットミニタンパク質、MC-FN-010および誘導体MC-FN-016は、高いフィブロネクチンエクストラドメインB特異性と妥当な親和性を特徴とする。リガンドの化学的オリゴマー化および部位特異的蛍光色素結合は、その高い特異性を維持しながら結合強度を大幅に増加させ、U-87 MGベースの異種移植片神経膠芽腫マウスモデルでのインビボイメージングを可能にした。両方のフィブロネクチンエクストラドメインB結合分子が、腎臓を除いて、腫瘍中の強い蓄積と低いバックグラウンドシグナルを示した。本発明人の結果は、腫瘍イメージング技術のための分子足場としてのシスチンノットミニタンパク質の高い可能性を明らかにする。
【0009】
本発明は、一般に、癌疾患などのフィブロネクチンエクストラドメインBを発現する疾患の治療および/または診断に有用な化合物を提供する。これらの化合物は、フィブロネクチンエクストラドメインBを発現する細胞の選択的検出、ならびに/またはフィブロネクチンエクストラドメインBを発現する細胞および/もしくはフィブロネクチンエクストラドメインBを発現する細胞に関連する細胞などのフィブロネクチンエクストラドメインBが発現される環境に関連する細胞の根絶を提供する。本発明は、フィブロネクチンエクストラドメインBを発現しない、および/またはフィブロネクチンエクストラドメインBが発現される環境に関連しない正常細胞への有害作用を最小限に抑えることを可能にする。
【0010】
本発明は、アミノ酸配列モチーフArg-Ile/Val-Argを含むフィブロネクチンエクストラドメインB(EDB)結合ペプチドを提供する。
【0011】
一実施形態では、フィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドは、アミノ酸配列モチーフArg-Ile/Val-Arg-Leuを含む。
【0012】
一実施形態では、フィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドは以下のアミノ酸配列を含む:
(Xaa)n1 Cys(Xaa)n2 Arg Ile/Val Arg(Xaa)n3 Cys(Xaa)n4 Cys(Xaa)n5 Cys(Xaa)n6 Cys(Xaa)n7 Cys(Xaa)n8
ここで、
Cys残基はシスチンノット構造を形成し、
Xaaは、互いに独立して任意のアミノ酸であり、ならびに
n1、n2、n3、n4、n5、n6、n7、およびn8は、それぞれのアミノ酸の数であり、
ここで、アミノ酸Xaaの性質および/またはアミノ酸n1、n2、n3、n4、n5、n6、n7およびn8の数は、Cys残基間にシスチンノット構造が形成され得るものである。
【0013】
フィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドの一実施形態では:
n1は0~4、好ましくは1または2であり、
n2は3~10、好ましくは4、5、6または7であり、
n3は0~4、好ましくは0または1であり、
n4は3~7、好ましくは4、5または6であり、
n5は2~6、好ましくは2、3または4であり、
n6は1~3、好ましくは1または2であり、
n7は3~7、好ましくは4、5または6であり、および
n8は0~4、好ましくは1または2である。
【0014】
フィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドの一実施形態では、(Xaa)n3はLeuであるかまたは欠落しており、好ましくは(Xaa)n3はLeuである。フィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドの一実施形態では、(Xaa)n2は(Xaa)n2'Asnであり、好ましくはn2'は2~9、好ましくは3、4、5または6である。フィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドの一実施形態では、(Xaa)n7はArg(Xaa)n7'であり、好ましくはn7'は2~6、好ましくは3、4または5である。
【0015】
フィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドの一実施形態では:
n2は5もしくは6であるか、またはn2'は4もしくは5であり、
n3は0または1であり、
n4は5であり、
n5は3であり、
n6は1であり、および
n7は5であるか、またはn7'は4である。
【0016】
一実施形態では、フィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドは、アミノ酸配列:
(Xaa)n1 Cys(Xaa)n2 Arg Ile/Val Arg(Xaa)n3 Cys Arg Arg Asp Ser Asp Cys(Xaa)n5 Cys Ile Cys Arg Gly Asn Gly Tyr Cys(Xaa)n8
を含む。
【0017】
一実施形態では、フィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドは、アミノ酸配列:
(Xaa)n1 Cys(Xaa)n2 Arg Ile/Val Arg(Xaa)n3 Cys Arg Arg Asp Ser Asp Cys(Xaa)n5 Cys Ile Cys Arg Gly Asn Gly Tyr Cys Gly
を含む。
【0018】
フィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドの一実施形態では、Ile/ValはIleである。フィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドの一実施形態では、Ile/ValはValである。
【0019】
一実施形態では、本発明は、フィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドを提供し、これは、以下からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む:
(i)TrpLysCysGlnProThrAsnGlyTyrArgIleArgCysArgArgAspSerAspCysProGlyAspCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly、
(ii)SerValCysLysAsnValSerIleMetArgIleArgLeuCysArgArgAspSerAspCysProGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly、
(iii)SerValCysAlaHisTyrAsnThrIleArgValArgLeuCysArgArgAspSerAspCysProGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly、
(iv)ProMetCysThrGlnArgLysAsnArgIleArgLeuCysArgArgAspSerAspCysThrGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly、
(v)SerValCysLysGlnAlaAsnPheValArgIleArgLeuCysArgArgAspSerAspCysProGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly、
(vi)AlaMetCysThrGlnArgLysAsnArgIleArgLeuCysArgArgAspSerAspCysThrGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly、
(vii)ProAlaCysThrGlnArgLysAsnArgIleArgLeuCysArgArgAspSerAspCysThrGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly、
(viii)ProMetCysAlaGlnArgLysAsnArgIleArgLeuCysArgArgAspSerAspCysThrGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly、
(ix)ProMetCysThrAlaArgLysAsnArgIleArgLeuCysArgArgAspSerAspCysThrGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly、
(x)ProMetCysThrGlnAlaLysAsnArgIleArgLeuCysArgArgAspSerAspCysThrGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly、
(xi)ProMetCysThrGlnArgAlaAsnArgIleArgLeuCysArgArgAspSerAspCysThrGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly、
(xii)ProMetCysThrGlnArgLysAlaArgIleArgLeuCysArgArgAspSerAspCysThrGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly、
(xiii)ProMetCysThrGlnArgLysAsnArgIleArgLeuCysAlaArgAspSerAspCysThrGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly、および
(xiv)ProMetCysThrGlnArgLysAsnArgIleArgLeuCysArgAlaAspSerAspCysThrGlyAlaCysIleCysArgGlyAsnGlyTyrCysGly。
【0020】
一実施形態では、フィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドは、足場を形成するかまたは足場の一部である。一実施形態では、フィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドは、共有結合修飾によって安定化されている。一実施形態では、共有結合修飾は環化である。一実施形態では、環化は1つ以上のジスルフィド架橋を介する。
【0021】
一実施形態では、フィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドは、シスチンノット構造、好ましくは阻害剤シスチンノット構造を形成し、および/またはその一部である。一実施形態では、アミノ酸配列モチーフは、シスチンノット構造、好ましくは阻害剤シスチンノット構造のループ1内、好ましくはシスチンノット構造、好ましくは阻害剤シスチンノット構造のループ1のC末端に位置する。一実施形態では、シスチンノット構造は、モモルディカ・コキネンシス(oMCoTI-II)由来の開鎖トリプシン阻害剤IIに基づく。
【0022】
一実施形態では、少なくとも1つの融合パートナーをさらに含むフィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチド。一実施形態では、融合パートナーは、異種アミノ酸配列を含む。
【0023】
本発明はまた、本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドを含むフィブロネクチンエクストラドメインB(EDB)結合剤を提供する。本発明はまた、同じでも異なっていてもよい、本明細書に記載の1つ以上の、例えば2、3、4、5、6またはそれ以上のフィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドを含むフィブロネクチンエクストラドメインB(EDB)結合剤を提供する。
【0024】
フィブロネクチンエクストラドメインB結合剤の一実施形態では、フィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドは、共有結合および/または非共有結合で、好ましくは共有結合で、少なくとも1つのさらなる部分と会合している。
【0025】
フィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドまたはフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤の一実施形態では、融合パートナーまたはさらなる部分は、担体タンパク質、標識、レポータ、またはタグを含む。一実施形態では、レポータは、好ましくはアルカリホスファターゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、または蛍光分子からなる群より選択される、免疫学的アッセイのためのレポータである。一実施形態では、融合パートナーまたはさらなる部分は、His6カセット、チオレドキシン、Sタグ、ビオチンまたはそれらの組合せからなる群より選択される。
【0026】
一実施形態では、フィブロネクチンエクストラドメインB結合剤は、共有結合および/または非共有結合で会合している少なくとも2つのサブユニットを含み、前記サブユニットのそれぞれは、同じでも異なっていてもよい、本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドを含む。
【0027】
本発明によれば、一実施形態では、非共有結合は、ストレプトアビジンを含む化合物を介する。本発明によれば、一実施形態では、共有結合は、ペプチド性および/または非ペプチド性リンカーを介する。
【0028】
したがって、一実施形態では、本発明のフィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドは、オリゴマーまたは多量体の形態で存在する。この実施形態では、同じでも異なっていてもよい本発明の2つ以上のフィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドは、ビオチン/ストレプトアビジンなどを介した共有結合または非共有結合によって連結または結合され得る。したがって、本発明のフィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドは、二量体、三量体、四量体などを形成し得る。
【0029】
一実施形態では、本発明のフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤は、少なくとも4つのサブユニットを含む。一実施形態では、本発明のフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤は、少なくとも3つのサブユニットを含む。
【0030】
本発明はまた、共有結合および/または非共有結合で、好ましくは共有結合で、少なくとも1つの検出可能な標識もしくはレポータおよび/または少なくとも1つの治療エフェクタ部分と会合した、本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB(EDB)結合ペプチドまたは本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤を含むフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤を提供する。
【0031】
一実施形態では、本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドまたは本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤は、フィブロネクチンエクストラドメインBの天然エピトープに結合する。
【0032】
一実施形態では、フィブロネクチンエクストラドメインBは、内皮細胞および/または腫瘍細胞によって発現される。
【0033】
本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドまたは本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤の一実施形態では、結合は特異的結合である。
【0034】
本発明はまた、本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドをコードする組換え核酸を提供する。一実施形態では、組換え核酸は、ベクターの形態またはRNAの形態である。
【0035】
本発明はまた、本明細書に記載の組換え核酸を含む宿主細胞を提供する。
【0036】
本発明の別の目的は、癌疾患などのフィブロネクチンエクストラドメインBを発現する疾患の診断、検出またはモニタリング、すなわち後退、進行、経過および/または発症を決定するための手段および方法を提供することである。
【0037】
本発明は、本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドまたは本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤を含む試験キットを提供する。一実施形態では、試験キットは、イムノアッセイを実施するための少なくとも1つのさらなる試薬および/またはイムノアッセイを実施するためのキットの使用説明書をさらに含む。一実施形態では、試験キットは診断試験キットである。
【0038】
本発明の診断試験キットは、本発明の癌の診断、検出またはモニタリングのための方法において有用であり得る。キットは、情報を提供するパンフレット、例えば本明細書に開示される方法を実施するための試薬の使用方法を知らせるパンフレットを含み得る。
【0039】
本発明はまた、本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドまたは本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤を含むアッセイ装置を提供する。一実施形態では、アッセイ装置は、酵素結合免疫吸着アッセイ装置である。アッセイ装置の一実施形態では、フィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドまたはフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤は、固体支持体上に解除可能にまたは解除不能に固定化されている。
【0040】
本発明はまた、本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドまたは本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤を使用することを含む、試料中のフィブロネクチンエクストラドメインB(EDB)の存在および/または量を検定する方法を提供する。
【0041】
本発明はまた、患者における癌の診断、検出またはモニタリングのための方法であって、本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB(EDB)結合ペプチドまたは本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤を使用して、前記患者におけるフィブロネクチンエクストラドメインBの存在および/または量を検定することを含む方法を提供する。
【0042】
特定の態様では、本発明は、癌疾患の検出、すなわち癌疾患の位置または部位、例えば特定の組織または器官を決定するための方法に関する。一実施形態では、前記方法は、検出可能な標識に結合された本発明のフィブロネクチンエクストラドメインB結合化合物、例えば結合ペプチドまたは結合剤を患者に投与することを含む。
【0043】
前記患者の組織または器官の標識化は、前記組織または器官における癌疾患の存在またはリスクを示し得る。
【0044】
一実施形態では、組織または器官は、組織または器官が癌を有さない場合、フィブロネクチンエクストラドメインBを実質的に発現しない組織または器官である。
【0045】
本発明の方法の一実施形態では、前記検定は、前記患者から単離された生物学的試料に対して実施される。
【0046】
一実施形態では、生物学的試料は、癌疾患を有する患者、癌疾患を有するもしくは癌疾患に罹患していることが疑われる患者、または癌疾患の可能性を有する患者から単離される。一実施形態では、生物学的試料は、組織または器官が癌を有さない場合、フィブロネクチンエクストラドメインBを実質的に発現しない組織または器官からのものである。
【0047】
典型的には、生物学的試料中のフィブロネクチンエクストラドメインBのレベルは参照レベルと比較され、前記参照レベルからの逸脱は、対象における癌疾患の存在および/または病期を指示する。参照レベルは、対照試料(例えば健常組織もしくは対象由来)で決定されたレベル、または健常対象からの中央値レベルであり得る。前記参照レベルからの「逸脱」は、少なくとも10%、20%、または30%、好ましくは少なくとも40%または50%、またはそれ以上の増加または減少などの有意な変化を表す。フィブロネクチンエクストラドメインBの存在および/または参照レベルと比較して、例えば癌疾患のない患者と比較して増加しているフィブロネクチンエクストラドメインBの量は、前記患者における癌疾患の存在またはリスク(すなわち発症の可能性)を示し得る。
【0048】
一実施形態では、生物学的試料および/または対照/参照試料は、癌疾患による影響に関して診断、検出または観測されるべき組織または器官に対応する組織または器官からのものであり、例えば診断、検出または観測されるべき癌疾患は脳腫瘍であり、生物学的試料および/または対照/参照試料は脳組織である。
【0049】
一実施形態では、生物学的試料および/または対照/参照試料は、組織または器官が癌を有さない場合、フィブロネクチンエクストラドメインBを実質的に発現しない組織または器官からのものである。本発明の方法による患者における癌疾患の存在またはリスクの指示は、癌疾患が前記組織もしくは器官に存在すること、または前記組織もしくは器官に前記癌疾患のリスクがあることを示し得る。
【0050】
診断、検出またはモニタリングのための方法は、定量的および/または定性的評価、例えば標的分子、例えばフィブロネクチンエクストラドメインBの発現レベルの絶対的および/または相対的測定を可能にする。
【0051】
フィブロネクチンエクストラドメインBの存在および/または量についての前記検定を達成するための手段は本明細書に記載されており、当業者には明らかであろう。典型的には、本発明の方法における検定は、フィブロネクチンエクストラドメインBに特異的に結合する標識リガンド、例えば検出を提供する標識に直接または間接的に結合された、フィブロネクチンエクストラドメインBに特異的に結合する本発明の化合物、例えば指標酵素、放射性標識、フルオロフォア、または常磁性粒子の使用を含む。
【0052】
一実施形態では、フィブロネクチンエクストラドメインBの存在、または癌のない参照と比較してより高いフィブロネクチンエクストラドメインBの量は、患者が癌を有することを示す。
【0053】
本発明によるモニタリングの方法は、好ましくは、第1の時点での第1の試料および第2の時点でのさらなる試料におけるフィブロネクチンエクストラドメインBの存在および/または量について検定することを含み、癌疾患の後退、進行、経過および/または発症は、2つの試料を比較することによって決定され得る。
【0054】
患者から以前に採取された生物学的試料と比較して生物学的試料中で減少しているフィブロネクチンエクストラドメインBの量は、前記患者における癌疾患の後退、好ましい経過、例えば治療の成功、または発症のリスクの低下を示し得る。
【0055】
患者から以前に採取された生物学的試料と比較して増加しているフィブロネクチンエクストラドメインBの量は、前記患者における癌疾患の進行、好ましくない経過、例えば治療の失敗、再発または転移挙動、癌疾患の発症または発症のリスクを示し得る。
【0056】
本発明の方法の一実施形態では、フィブロネクチンエクストラドメインBの存在および/または量について検定することは、
(i)試料をフィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドまたはフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤と接触させること、ならびに
(ii)フィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドまたはフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤とフィブロネクチンエクストラドメインBとの間の複合体の形成を検出することおよび/または複合体の量を決定すること
を含む。
【0057】
本発明の方法の一実施形態では、フィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドまたはフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤は、少なくとも1つの検出可能な標識またはレポータを含むか、またはそれに結合されている。
【0058】
一実施形態では、本発明の方法は、イムノアッセイの状況で実施される。
【0059】
本発明の方法の一実施形態では、フィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドまたはフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤は、固体支持体上に解除可能にまたは解除不能に固定化されている。
【0060】
本発明によるフィブロネクチンエクストラドメインB結合化合物のフィブロネクチンエクストラドメインBへの結合は、フィブロネクチンエクストラドメインBの機能を妨げる可能性がある。さらに、フィブロネクチンエクストラドメインB結合化合物は、治療エフェクタ部分、例えば放射性標識、細胞毒素、細胞毒性酵素などに結合することができ、フィブロネクチンエクストラドメインBへの化合物の結合は、フィブロネクチンエクストラドメインBを発現する細胞またはフィブロネクチンエクストラドメインBを発現する細胞に関連する細胞、特に癌細胞を選択的に標的化し、死滅させることができる。一実施形態では、前記化合物は、腫瘍細胞の成長を低減し、および/または腫瘍細胞死を誘導し、したがって、腫瘍阻害作用または腫瘍破壊作用を有する。したがって、本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合化合物は、治療法において、特に癌疾患の予防的および/または治療的治療のために使用され得る。
【0061】
本発明の方法を使用する上記のような癌疾患の確定診断は、本明細書に記載の治療方法に適する癌疾患を示し得る。
【0062】
したがって、本発明の別の目的は、癌疾患の治療的および/または予防的治療のための手段および方法を提供することである。
【0063】
本発明はまた、本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチド、本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤、本明細書に記載の組換え核酸、または本明細書に記載の宿主細胞を含む医薬組成物を提供する。
【0064】
本発明の医薬組成物は、薬学的に許容される担体を含み得、および任意で、本明細書に記載されるさらなる物質を含み得る。
【0065】
本発明はまた、本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチド、本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤、本明細書に記載の組換え核酸、本明細書に記載の宿主細胞、または治療法で使用するため、特に患者における癌の治療または予防に使用するための本明細書に記載の医薬組成物を提供する。
【0066】
本発明はまた、患者における癌を標的化するのに使用するための、本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドまたは本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤を提供する。
【0067】
本発明はまた、本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチド、本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤、本明細書に記載の組換え核酸、本明細書に記載の宿主細胞、または本明細書に記載の医薬組成物を患者に投与することを含み、好ましくは患者が癌を有するかまたは癌を発症するリスクがある、患者を治療する方法を提供する。
【0068】
上記態様の一実施形態では、フィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドまたはフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤は、少なくとも1つの治療エフェクタ部分を含むか、またはそれに結合されている。
【0069】
上記態様の一実施形態では、癌は、フィブロネクチンエクストラドメインB陽性であり、および/またはフィブロネクチンエクストラドメインBを発現する細胞を含む。
【0070】
本発明のすべての態様によれば、癌は、好ましくは乳癌、脳の癌、肺癌(pulmonary or lung cancer)、結腸直腸癌、結腸癌、食道癌、頭頸部癌、胃癌、膵臓癌、腎臓癌、子宮頸癌、卵巣癌、膀胱癌、または前立腺癌からなる群より選択される。
【0071】
本発明のすべての態様によれば、フィブロネクチンエクストラドメインBは、好ましくは配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列または前記アミノ酸配列の変異体を含む。
【0072】
一態様では、本発明は、本明細書に記載の治療方法で使用するための本明細書に記載の薬剤を提供する。一実施形態では、本発明は、本明細書に記載の治療方法で使用するための、本明細書に記載される医薬組成物を提供する。
【0073】
本明細書に記載の治療は、外科的切除および/または放射線および/または従来の化学療法と組み合わせることができる。
【0074】
本発明の他の特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】(
図1A)IMACおよびSEC精製後のFNタンパク質の分析SDS-PAGE。合計10μgのタンパク質を、還元(+β-メルカプトエタノール)および非還元(-β-メルカプトエタノール)条件下でSDS-PAGEに適用した。タンパク質バッチの純度を、未処理のSDS-PAGE画像からImageQuantソフトウェアを使用したデンシトメトリ分析によってさらに決定した。この画像では、視覚化を向上させるためにコントラストと明るさが変更されている。 (
図1B)抗His抗体およびBC-1抗体を用いたFN-6789、FN-67B89およびFN-Bの酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)に基づく結合分析。エラーバーは、それぞれウェル当たり1μgのタンパク質が被覆された、2回の重複測定から得られた標準偏差を表す。
【
図2】MCopt 1.0およびMCopt 2.0ライブラリの3回のファージスクリーニングラウンド後の濃縮されたシスチンノットミニタンパク質配列。クローン名、シスチンノットミニタンパク質配列、および全スクリーニングクローンの割合を各候補物について示している。可変アミノ酸を太字で示す。同定された共通のR-I/V-R-(L)モチーフを灰色で強調表示している。
【
図3】MCopt 1.0ライブラリのファージディスプレイスクリーニングから得られた、ヒット同定工程後のEDB結合シスチンノットミニタンパク質。ランキング値は、ELISAによって決定されたシグナル(FN-B)対ノイズ(BSA)比に基づいて計算し、Trx-シスチンノットミニタンパク質の発現率に対してさらに正規化した。可変アミノ酸を太字で示す。
【
図4】Trx-シスチンノットミニタンパク質クローンMCopt 1.0-1/-2/-3およびMCopt 2.0-1/-2/-3の特異性分析。200nMの各変異体を、固定化されたFN-BおよびFN-67B89標的タンパク質、ならびに対照タンパク質FN-6789、粉乳およびウシ血清アルブミン(1μg/ウェルで被覆)に適用した。HRP結合抗sタグ抗体を使用して結合を分析した。陰性対照としての役割を果たすTrx-MC-Myc-010を用いてELISAを2回重複して実施した。
【
図5】Trx-シスチンノットミニタンパク質クローンMCopt 1.0-2/-3およびMCopt 2.0-1/-2/3の拡張特異性分析。合計200nMの各変異体を、FN-B、T7-TEV-B、FN-67B89およびFN-B(8-14)標的タンパク質、ならびに陰性対照のFN-6789、粉乳、ウシ血清アルブミン、リゾチーム、オボアルブミンおよびアルドラーゼ(1μg/ウェルで被覆)に適用した。ELISAを2回重複して実施し、エラーバーは標準偏差を表し、Trx-MC-Myc-010は陰性シスチンノットミニタンパク質対照としての役割を果たした。
【
図6A】MCopt 1.0-2/-3およびMCopt 2.0-1/-2/-3のEDB結合の飽和結合曲線。Trx-シスチンノットミニタンパク質結合を、10の異なる濃度のFN-B、FN-67B89およびFN-B(8-14)標的タンパク質、ならびにFN-6789対照タンパク質(1μg/ウェルで被覆)に対して検定した。HRP結合抗sタグ抗体を用いてTrx-シスチンノットミニタンパク質の結合を検出した。ELISAを2回重複して実施した(FN-B(8-14)については1回の値)。
【
図6B】MCopt 1.0-2/-3およびMCopt 2.0-1/-2/-3のEDB結合の飽和結合曲線。Trx-シスチンノットミニタンパク質結合を、10の異なる濃度のFN-B、FN-67B89およびFN-B(8-14)標的タンパク質、ならびにFN-6789対照タンパク質(1μg/ウェルで被覆)に対して検定した。HRP結合抗sタグ抗体を用いてTrx-シスチンノットミニタンパク質の結合を検出した。ELISAを2回重複して実施した(FN-B(8-14)については1回の値)。
【
図7A】親MC-FN-010配列の1番目、2番目または5番目のループのそれぞれのアミノ酸をアラニンと交換した。アラニン置換を灰色で強調表示している。
【
図7B】親MC-FN-010およびTrx融合タンパク質としてのアラニンスキャン変異体(50nM~1.563nM)を、予備被覆したヒトFN-Bと共にインキュベートした。10ngのHRP結合抗sタグ抗体を用いて結合を検出した。ELISAを、2回重複して、3つの独立したアッセイにおいて実施した。各変異体の相対的結合を、見かけの結合定数を決定し、親MC-FN-010と比較することによって計算した。エラーバーは、3回の重複測定の標準偏差を表す。
【
図7C】親MC-FN-010の配列。太字および角括弧は、アミノ酸システインおよびジスルフィド結合の接続性を示す。明灰色で強調表示されている残基は標的結合に関連しており、灰色で表示されている残基は結合相互作用に寄与しないかまたわずかな程度にしか寄与しない。
【
図8】神経膠芽腫異種移植腫瘍切片へのMC-FN-010の特異的結合。EDBリガンドMC-FN-010および陰性対照MC-FN-0115によるU-87 MG腫瘍組織の免疫蛍光染色の代表的な結果。組織切片(5μm)を、四量体化したシスチンノットミニタンパク質-ビオチンストレプトアビジン-Cy3複合体(赤色)および血管系を可視化するための抗CD31抗体(緑色)で染色した。スケールバーは100μmを示す。
【
図9】(
図9A)ELISAを使用したヒトFN-67B89およびFN-6789に対するTrx-MC-FN-010の特異性分析。 (
図9B)ELISAを使用したヒトFN-67B89およびFN-6789へのTrx-MC-FN-016の特異性分析。Trx-MC-FN-010およびTrx-MC-FN-016のFN-67B89への結合を、FN-6789と比較して1.56~50nMの範囲の濃度で、50ngのHRP結合抗Sタグ抗体を用いて検出した。ELISAを、ウェル当たり1μgの被覆したFN-67B89またはFN-6789を使用して、2回重複して実施した。
【
図10】(
図10A)表面プラズモン共鳴分析から得られたMC-FN-010およびMC-FN-016の速度論的パラメータ。ビオチン化ヒトFN-67B89をストレプトアビジンセンサに固定化して、4000nMから開始する2倍段階希釈を使用してMC-FN-010およびMC-FN-016の親和性測定を実施した。速度論的パラメータを、生成されたセンサグラムに適用した1:1ラングミュアフィッティングモデルを使用して計算した。 (
図10B)単一サイクルの速度論的分析による表面プラズモン共鳴から得られたAF680-(MC-FN-010)
3およびAF680-(MC-FN-016)
3の速度論的パラメータ。ビオチン化ヒトFN-67B89をストレプトアビジンチップに固定化して、10nMから開始する2倍段階希釈を使用してAF680-(MC-FN-010)
3およびAF680-(MC-FN-016)
3の結合測定を実施した。速度論的パラメータを、生成されたセンサグラムに適用した1:1ラングミュアフィッティングモデルを使用して計算した。
【
図11A】U-87 MG保有マウスのインビボおよびエクスビボイメージング。皮下注射したヒトU-87MG細胞から生じた腫瘍を有するマウスを、3.36nmolのAF680-(MC-FN-010)
3、AF680-(MC-FN-016)
3(EDB結合剤)および対照AF680-(MC-FN-0115)
3の静脈内投与後に画像化した。それぞれが異なる腫瘍サイズを担持する群当たり3匹のマウスで、群を層別化した。注射の1時間後、2時間後および6時間後にイメージングを実施した。インビボイメージング後、器官および腫瘍を切除し、秤量し、エクスビボ蛍光シグナル分析に使用した。
【
図11B】腫瘍、腎臓、肝臓および肺における経時的な蛍光シグナルの発生。器官の蛍光シグナルを、Living Image 2.5画像解析ソフトウェアを使用して定量化し、それぞれの器官/腫瘍重量に正規化した。三重の反復から得られたデータセットの平均±SEを示す。二元配置分散分析で統計的有意性を計算した(*P<0.0342;**P<0.0055;***P=0.0001;****P<0.0001;n.s.=有意でない)。
【
図12】EDBリガンドMC-FN-010および陰性対照MC-FN-0115による正常なマウス脳の代表的な免疫蛍光染色。組織切片(6μm)を、四量体化したシスチンノットミニタンパク質-ビオチン/ストレプトアビジン-Cy3複合体および血管系を可視化するための抗CD31抗体で染色した。スケールバー、100μm。
【
図13A】マウス異種移植腫瘍として増殖させたヒトU-87 MG神経膠芽腫細胞株に由来する組織切片へのMC-FN-010の特異的結合。三量体MC-FN-010および陰性対照MC-FN-0115によるU-87 MG腫瘍組織(A)および正常マウス脳(B)の代表的な免疫蛍光染色。組織切片(6μm)をAlexa Fluor 680結合三量体シスチンノットミニタンパク質で染色し、抗CD31抗体を二次抗体で検出して血管系を可視化した。スケールバー、20μm。
【
図13B】マウス異種移植腫瘍として増殖させたヒトU-87 MG神経膠芽腫細胞株に由来する組織切片へのMC-FN-010の特異的結合。三量体MC-FN-010および陰性対照MC-FN-0115によるU-87 MG腫瘍組織(A)および正常マウス脳(B)の代表的な免疫蛍光染色。組織切片(6μm)をAlexa Fluor 680結合三量体シスチンノットミニタンパク質で染色し、抗CD31抗体を二次抗体で検出して血管系を可視化した。スケールバー、20μm。
【
図14A】U-87 MG保有マウスのインビボイメージング。Fox n1/nuマウスの側腹部に皮下注射したヒトU-87 MG細胞に由来する腫瘍を、3.34nmolのAF680-(MC-FN-016)
3を単独で、または同時に注射(同時注射)もしくはその30分前に注射(事前注射)した3倍および5倍モル過剰のDOTA-(MC-FN-016)
3と組み合わせて静脈内投与した後、イメージングに供した。トリプルアラニン変異ペプチドAF680-(MC-FN-0115)
3は陰性対照としての役割を果たした。
【
図14B】プローブの静脈内注射の6時間後の器官のイメージング。
【
図14C】腫瘍の蛍光シグナルを定量化し、それぞれの腫瘍重量に対して正規化した。
【
図15】EDBへのシスチンノットミニタンパク質変異体のSPR結合分析。表面プラズモン共鳴分析によって測定し、1:1ラングミュアフィッティングモデルを使用して計算した、EDB特異的シスチンノットミニタンパク質変異体の速度論的パラメータ。ビオチン化ヒトFN-67B89をストレプトアビジンセンサに固定化して、2倍段階希釈を使用してDOTA-(MC-FN-016)
3の親和性を測定した。
【発明を実施するための形態】
【0076】
本発明を以下で詳細に説明するが、本発明は、本明細書に記載される特定の方法論、プロトコルおよび試薬に限定されず、これらは異なり得ることが理解されるべきである。また、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、本発明の範囲は付属の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されるべきである。特に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0077】
以下において、本発明の要素を説明する。これらの要素を具体的な実施形態と共に列挙するが、それらは、さらなる実施形態を創出するために任意の方法および任意の数で組み合わせてもよいことが理解されるべきである。様々に説明される例および好ましい実施形態は、本発明を明確に記述される実施形態のみに限定すると解釈されるべきではない。この説明は、明確に記述される実施形態を任意の数の開示される要素および/または好ましい要素と組み合わせた実施形態を支持し、包含すると理解されるべきである。さらに、本出願において記述されるすべての要素の任意の並び替えおよび組合せは、文脈上特に指示されない限り、本出願の説明によって開示されていると見なされるべきである。
【0078】
好ましくは、本明細書で使用される用語は、"A multilingual glossary of biotechnological terms:(IUPAC Recommendations)",H.G.W.Leuenberger,B.Nagel,and H.Kolbl,Eds.,Helvetica Chimica Acta,CH-4010 Basel,Switzerland,(1995)に記載されているように定義される。
【0079】
本発明の実施は、特に指示されない限り、当技術分野の文献(例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition,J.Sambrook et al.eds.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor 1989参照)で説明されている化学、生化学、細胞生物学、免疫学、および組換えDNA技術の従来の方法を用いる。
【0080】
本明細書および以下の特許請求の範囲全体を通して、文脈上特に必要とされない限り、「含む」という語および「含むこと」などの変形は、記述される成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群の包含を意味するが、いかなる他の成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群の排除も意味しないと理解され、しかしいくつかの実施形態では、そのような他の成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群が排除され得る、すなわち主題は、記述される成員、整数もしくは工程または成員、整数もしくは工程の群の包含に存する。本発明を説明する文脈で(特に特許請求の範囲の文脈で)使用される「1つの」および「その」という用語ならびに同様の言及は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、単数および複数の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に属する各々別々の値を個別に言及することの簡略方法として機能することが意図されている。本明細書で特に指示されない限り、各個別の値は、本明細書で個別に列挙されているかのごとくに本明細書に組み込まれる。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書で特に指示されない限り、または文脈と明らかに矛盾しない限り、任意の適切な順序で実施することができる。本明細書で提供されるありとあらゆる例または例示的言語(例えば「など」)の使用は、単に本発明をより良く説明することを意図しており、特許請求される本発明の範囲に限定を課すものではない。本明細書中のいかなる言語も、本発明の実施に不可欠な、特許請求されていない要素を指示すると解釈されるべきではない。
【0081】
本明細書の本文全体を通していくつかの資料を引用する。本明細書で引用される資料(すべての特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、指示書等を含む)の各々は、上記または下記のいずれでも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。本明細書のいかなる内容も、本発明が先行発明のためにそのような開示に先行する権利を有さないことの承認と解釈されるべきではない。
【0082】
本発明は、フィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドまたは1つ以上のフィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドを含む薬剤などのフィブロネクチンエクストラドメインB結合化合物または薬剤に関する。
【0083】
フィブロネクチン(FN)は、C末端で2つのジスルフィド結合によって連結された約250kDaの2つのサブユニットからなる二量体で構成される、細胞外マトリックス(ECM)および体液中に存在する高分子量の接着性糖タンパク質である。各単量体は、3種類の反復単位:12のI型(それぞれ約40アミノ酸)、2つのII型(約60アミノ酸)および15~17のIII型(約90アミノ酸)FNリピートからなる。フィブロネクチンは多種多様な細胞相互作用を媒介し、細胞接着、正常な細胞形態の確立と維持、細胞の移動、成長および分化などの多くの過程に関与する。フィブロネクチンは、コラーゲン、ヘパリン、フィブリン、および細胞膜受容体を含む他のいくつかのECMおよび細胞表面タンパク質と相互作用する。最後に、FNは、リピートIII-10のRGD配列上の古典的FN受容体α5-β1を含む、多数のインテグリンのリガンドであり得る。フィブロネクチンは第2染色体上に局在する単一遺伝子の産物であるが、一部のECMタンパク質では、3つの部位:III型接続配列(IIICS)、完全なIII型リピートエクストラドメインA(EDA)、および完全なIII型リピートエクストラドメインB(EDB)でサイトカインおよび細胞外/細胞内pHによって調節される過程である、プレmRNAの選択的スプライシングから、異なるアイソフォームが生じる。これらの最後は、91アミノ酸の完全なIII型相同性リピートであり、エクソンの使用頻度またはスキッピングがこれらのIII型リピートの包含または除外をもたらす。したがって、アイソフォームエクストラドメインB(EDB)は、FNドメイン7と8の間に特異的に挿入される91アミノ酸のさらなるIII型ドメインを含む。FN III型リピート7と8の間にEDBが挿入されると、潜在配列を脱マスク化し、他の配列を妨げる立体配座変化が誘導される。フィブロネクチンエクストラドメインBは、通常、正常な成体組織には存在しないが、組織リモデリングおよび血管新生に関与する。さらに、フィブロネクチンエクストラドメインBは、いくつかの侵攻性固形ヒト腫瘍の新生血管系において豊富な発現パターンを有する多くの異なる癌型で見出されている。
【0084】
本発明によれば、「フィブロネクチンエクストラドメインB」という用語は、好ましくはヒトフィブロネクチンエクストラドメインBに関する。
【0085】
好ましくは、「フィブロネクチンエクストラドメインB」という用語または「EDB」という略語は、エクストラドメインBリピートを含む特定のフィブロネクチンアイソフォームに関する。一実施形態では、「フィブロネクチンエクストラドメインB」という用語または「EDB」という略語は、配列表の配列番号1の核酸配列または前記核酸配列の変異体を含む、好ましくはそれからなる核酸、およびこの核酸によってコードされるタンパク質、好ましくは配列表の配列番号2のアミノ酸配列または前記アミノ酸配列の変異体を含む、好ましくはそれからなるタンパク質に関する。特定の実施形態では、「フィブロネクチンエクストラドメインB」という用語または「EDB」という略語はまた、本明細書ではEDBフィブロネクチンのエクストラドメインBリピート部分を明確に表すために使用される。一実施形態では、EDBフィブロネクチンのそのようなエクストラドメインBリピート部分は、配列表の配列番号28に示されるアミノ酸配列または前記アミノ酸配列の変異体を含む。
【0086】
フィブロネクチンエクストラドメインBは、頭頸部癌、脳の癌、結腸直腸癌、肺癌、前立腺癌および乳癌などの様々な起源の癌で発現される。フィブロネクチンエクストラドメインBは、原発性腫瘍および転移の診断、予防および/または治療のための貴重な標的である。
【0087】
本発明のフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤は、フィブロネクチンエクストラドメインBに結合する能力、すなわちフィブロネクチンエクストラドメインBに存在するエピトープに結合する能力を有する。一実施形態では、フィブロネクチンエクストラドメインB結合剤は、腫瘍形成などにおける血管新生血管系の周囲に発現されるフィブロネクチンエクストラドメインBに結合する。一実施形態では、フィブロネクチンエクストラドメインB結合剤は、腫瘍組織の細胞外マトリックス内などの腫瘍組織内および/もしくは腫瘍組織周囲で、ならびに/または腫瘍新生血管などの腫瘍血管内および/もしくは腫瘍血管において発現されるフィブロネクチンエクストラドメインBに結合する。特に好ましい実施形態では、フィブロネクチンエクストラドメインB結合剤は、フィブロネクチンエクストラドメインBの天然エピトープに結合する。
【0088】
「エピトープ」という用語は、結合剤によって認識される分子の一部または部分を指す。例えば、エピトープは、結合剤によって認識される、分子上の個別の三次元部位である。エピトープは通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面基からなり、通常、特定の三次元構造特性および特定の電荷特性を有する。立体配座エピトープと非立体配座エピトープは、変性溶媒の存在下では前者への結合が失われ、後者への結合は失われないという点で区別される。タンパク質のエピトープは、好ましくは前記タンパク質の連続または不連続部分を含み、好ましくは5~100、好ましくは5~50、より好ましくは8~30、最も好ましくは10~25アミノ酸長であり、例えばエピトープは、好ましくは8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25アミノ酸長であり得る。
【0089】
本発明によれば、「フィブロネクチンエクストラドメインB結合剤」または「フィブロネクチンエクストラドメインB結合化合物」という用語は、フィブロネクチンエクストラドメインBへの結合能力を有する任意の化合物(分子の複合体を含む)を含む。好ましくは、そのような結合剤は、本発明の少なくとも1つのフィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドであるか、またはそれを含む。フィブロネクチンエクストラドメインB結合剤が本発明の少なくとも2つのフィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチド(同じでも異なっていてもよい)を含む場合、これらのペプチドは共有結合または非共有結合で会合(すなわち結合)し得る。フィブロネクチンエクストラドメインB結合剤は、標識または治療エフェクタ部分などの任意の他の化合物または部分に共有結合または非共有結合で会合した1つ以上のフィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドを含み得る。
【0090】
本発明によれば、薬剤が標準的なアッセイにおいてフィブロネクチンエクストラドメインBなどの所定の標的に有意な親和性を有し、前記所定の標的に結合する場合、薬剤は前記所定の標的に結合することができる。「親和性」または「結合親和性」は、しばしば平衡解離定数(KD)によって測定される。好ましくは、「有意な親和性」という用語は、10-5M以下、10-6M以下、10-7M以下、10-8M以下、10-9M以下、10-10M以下、10-11M以下、または10-12M以下の解離定数(KD)で所定の標的に結合することを指す。
【0091】
薬剤が標準的なアッセイにおいて標的に有意な親和性を有さず、前記標的に有意に結合しない、特に検出可能に結合しない場合、薬剤は前記標的に(実質的に)結合することができない。好ましくは、薬剤は、2μg/mlまで、好ましくは10μg/ml、より好ましくは20μg/ml、特に50μg/mlまたは100μg/ml以上の濃度で存在する場合、前記標的に検出可能に結合しない。好ましくは、薬剤が結合することができる所定の標的への結合のKDよりも少なくとも10倍、102倍、103倍、104倍、105倍、または106倍高いKDである標的に結合する場合、薬剤は前記標的に有意な親和性を有さない。例えば、薬剤が結合することができる標的へのその薬剤の結合のKDが10-7Mである場合、薬剤が有意な親和性を有さない標的への結合のKDは、少なくとも10-6M、10-5M、10-4M、10-3M、10-2M、または10-1Mである。
【0092】
本発明によれば、「結合」という用語は、好ましくは特異的結合に関する。
【0093】
「特異的結合」とは、薬剤が、別の標的への結合と比較して、それが特異的である標的により強く結合することを意味する。薬剤は、第2の標的の解離定数(KD)よりも低い解離定数で第1の標的に結合する場合、第2の標的と比較して第1の標的により強く結合する。好ましくは、薬剤が特異的に結合する標的の解離定数(KD)は、薬剤が特異的に結合しない標的の解離定数(KD)よりも102倍、103倍、104倍、105倍、106倍、107倍、108倍、109倍、または1010倍以上低い。
【0094】
好ましくは、薬剤が、フィブロネクチンエクストラドメインBなどの所定の標的には結合することができるが、他の標的には(実質的に)結合することができない、すなわち標準的なアッセイにおいて他の標的に有意な親和性を有さず、他の標的に有意に結合しない場合、薬剤は前記所定の標的に特異的である。好ましくは、そのような他の標的に対する親和性および結合が、ウシ血清アルブミン(BSA)、カゼイン、ヒト血清アルブミン(HSA)または他の特定のポリペプチドなどのフィブロネクチンエクストラドメインBに無関係なタンパク質に対する親和性または結合を有意に上回らない場合、薬剤はフィブロネクチンエクストラドメインBに特異的である。好ましくは、薬剤は、それが特異的でない標的への結合のKDよりも少なくとも102倍、103倍、104倍、105倍、106倍、107倍、108倍、109倍、または1010倍低いKDで所定の標的に結合する場合、前記所定の標的に特異的である。
【0095】
標的への薬剤の結合は、任意の適切な方法を使用して実験的に決定することができる;例えば、Berzofsky et al.,"Antibody-Antigen Interactions"In Fundamental Immunology,Paul,W.E.,Ed.,Raven Press New York,NY(1984)、Kuby,Janis Immunology,W.H.Freeman and Company New York,NY(1992)、および本明細書に記載の方法参照。親和性は、従来の技術を使用して、例えば平衡透析によって;製造者によって概説される一般的手順を用いて、表面プラズモン共鳴分析(例えばBiacore)を使用することによって;放射性標識された標的抗原を使用する放射免疫測定法によって;または当業者に公知の別の方法によって、容易に決定し得る。親和性データは、例えばScatchard et al.,Ann N.Y.Acad.ScL,51:660(1949)の方法によって分析し得る。特定の相互作用の測定される親和性は、異なる条件下で、例えば異なる塩濃度、pHの下で測定された場合、異なり得る。したがって、親和性および他の抗原結合パラメータ、例えばKD、IC50の測定は、好ましくは結合剤および標的の標準溶液、ならびに標準緩衝液を用いて行われる。
【0096】
本発明の一実施形態では、癌は、フィブロネクチンエクストラドメインB陽性癌である。本発明によれば、「フィブロネクチンエクストラドメインB陽性癌」という用語または同様の用語は、フィブロネクチンエクストラドメインBを含むまたはフィブロネクチンエクストラドメインBに関連する癌、特にフィブロネクチンエクストラドメインBを発現する腫瘍細胞および/または内皮細胞などの細胞を含む癌を意味する。一実施形態では、「フィブロネクチンエクストラドメインB陽性癌」という用語または同様の用語は、フィブロネクチンエクストラドメインBが、腫瘍組織の細胞外マトリックス内などの腫瘍組織内および/もしくは腫瘍組織周囲で、ならびに/または腫瘍新生血管などの腫瘍血管内および/もしくは腫瘍血管において発現される癌を意味する。
【0097】
一実施形態では、フィブロネクチンエクストラドメインBが癌に空間的に関連する場合、特にフィブロネクチンエクストラドメインBが腫瘍組織の細胞外マトリックス内などの癌内ならびに/または腫瘍血管内および/もしくは腫瘍血管に存在する場合、前記癌はフィブロネクチンエクストラドメインBを含むか、またはフィブロネクチンエクストラドメインBに関連する。好ましくは、フィブロネクチンエクストラドメインBを含むまたはフィブロネクチンエクストラドメインBに関連する癌は、フィブロネクチンエクストラドメインBを発現する細胞を含む。前記細胞は、癌細胞または内皮細胞などの癌に関連する細胞、特に腫瘍新生血管などの腫瘍血管の内皮細胞などの癌関連内皮細胞であり得る。
【0098】
「一部」または「断片」という用語は、本明細書では互換的に使用され、連続するエレメントを指す。タンパク質配列の一部または断片は、好ましくはタンパク質配列の少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、または少なくとも100個の連続するアミノ酸を含む。
【0099】
「部分」という用語は、連続する要素および/または不連続な要素を指す。タンパク質配列の一部分は、好ましくはタンパク質配列の少なくとも6、特に少なくとも8、少なくとも12、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも50、または少なくとも100個の連続するおよび/また不連続なアミノ酸を含む。
【0100】
本発明によれば、フィブロネクチンエクストラドメインBは、発現レベルが検出限界未満である場合、および/または発現レベルがフィブロネクチンエクストラドメインB特異的結合剤による結合を可能にするには低すぎる場合、(実質的に)発現されない。
【0101】
本発明によれば、フィブロネクチンエクストラドメインBは、発現レベルが検出限界を超える場合、および/または発現レベルがフィブロネクチンエクストラドメインB特異的結合剤による結合を可能にするのに十分に高い場合、発現される。好ましくは、細胞によって発現されるフィブロネクチンエクストラドメインBは、細胞から細胞外マトリックスなどに分泌される。
【0102】
「足場」という用語は、剛性を与える構造、例えばフィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドまたは本明細書に記載のアミノ酸配列モチーフに剛性を与える構造に関する。
【0103】
シスチンノットは、少なくとも3つのジスルフィド架橋(システイン分子の対から形成される)を含むタンパク質構造モチーフである。これは、第3のジスルフィド結合が通り抜ける、2つのジスルフィド結合とそれらの接続骨格セグメントによって形成される埋め込まれた環を含む。この構造は、好ましくは、βシート構造と関連する。シスチンノットを含むペプチドは、好ましくは25~60、好ましくは25~50または25~40アミノ酸残基の長さである。
【0104】
シスチンノットは、多くの種にわたって多くのペプチドまたはタンパク質中に生じ、かなりの構造安定性を提供する。ジスルフィド結合のトポロジーが異なる3種類のシスチンノットがある:成長因子シスチンノット(GFCK)、阻害剤シスチンノット(ICK)および環状シスチンノット、またはシクロチド。
【0105】
阻害剤シスチンノット(ICK)またはノッティンは、3つのジスルフィド架橋を含むタンパク質構造モチーフである。それらの間のポリペプチドの区画と共に、2つのジスルフィド(それぞれ1番目と4番目のシステインおよび2番目と5番目のシステインを連結する)がループを形成し、第3のジスルフィド結合(配列中の3番目と6番目のシステインを連結する)がこのループを通過することで、ノットを形成する。このモチーフは、クモ類および軟体動物由来のものなどの無脊椎動物の毒素に一般的である。このモチーフは、植物に見られるいくつかの阻害タンパク質にも見出される。
【0106】
したがって、本発明によれば、ICKモチーフは、2つのシステイン内骨格セグメントおよびそれらの接続ジスルフィド結合、CysI-CysIVおよびCysII-CysVを含み、これらが、第3のジスルフィド結合、CysIII-CysVIが貫通する環を形成する。
【0107】
ICKモチーフは、環状シスチンノットまたはシクロチドに類似するが、後者のファミリーに存在するポリペプチド骨格の環化を欠く。成長因子シスチンノット(GFCK)はモチーフを共有するが、そのトポロジーは、ループ(それぞれ2番目と5番目のシステインおよび3番目と6番目のシステインの間で形成される)を通り抜ける1番目と4番目のシステインの間の結合であるようなトポロジーである。
【0108】
シクロチドは2つの主要な構造サブファミリーに分類される。2つのうちあまり一般的ではないメビウスシクロチドは、局所的な180°の骨格のねじれを誘導するシス-プロリンをループ5に含むが、ブレスレットシクロチドは含まない。トリプシン阻害剤シクロチドは、配列多様性および天然の活性に基づいて、それらの独自のファミリーに分類される。トリプシン阻害剤シクロチドは、他のシクロチドよりも、ノッティンまたは阻害剤シスチンノットとして公知のカボチャ植物由来の非環状トリプシン阻害剤のファミリーとの相同性がより高い。
【0109】
MCoTI-IおよびMCoTI-IIは、トゲヒョウタン(spinal gourd)、モモルディカ・コキネンシスの種子に由来する天然のポリペプチドである。これらのポリペプチドは、トリプシン様プロテアーゼの阻害剤であり、アミノ末端とカルボキシ末端を接続する追加のループと、3つの保存されたジスルフィド結合の結び目のある配置を含む。シスチンノットは、3つの分子内ジスルフィド結合によって規定され、線状ペプチド配列のCysICysIVおよびCysII-CysVが、第3のジスルフィド結合であるCysIII-CysVIが貫通する環を形成する。この配置は、並外れた熱安定性およびタンパク質分解安定性を示す、明確に定義された極めて安定な足場を提供する。構造的類似性と共通の生物学的活性、すなわちトリプシンファミリーのプロテアーゼの阻害により、MCoTI-IおよびMCoTI-IIは、低分子プロテアーゼ阻害剤のカボチャ阻害剤シスチンノット(ICK)ファミリーに分類されている。このファミリーの成員は、シスチンノットフレームワークを生じさせる3つの分子内ジスルフィド結合によって結び付けられた、小さな三本鎖βシートと短い310ヘリックスを形成する開鎖分子である。MCoTI-IおよびMCoTI-IIは、環状であるカボチャ阻害剤の大きなファミリーの唯一の公知の成員である。環化ループを欠くMCoTI-IIの開鎖変異体が合成されている。
【0110】
特定の実施形態では、本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合ペプチドは、シスチンノット構造、好ましくは阻害剤シスチンノット構造を形成する、および/またはその一部である。特定の実施形態では、本明細書に記載のアミノ配列モチーフは、シスチンノット構造、好ましくは阻害剤シスチンノット構造の一部である。一実施形態では、本明細書に記載のアミノ酸配列モチーフは、シスチンノット構造、好ましくは阻害剤シスチンノット構造のループ1内に位置する。一実施形態では、本明細書に記載のアミノ酸配列モチーフは、シスチンノット構造、好ましくは阻害剤シスチンノット構造のループ1のC末端に位置する。一実施形態では、システインノット構造の第1のループ(ループ1)は、シスチンノット構造の1番目のシステインと2番目のシステインとの間に位置する。
【0111】
本発明によれば、本明細書に記載のペプチドは、単離されたペプチドとして、または別のペプチドもしくはポリペプチドの一部として、当技術分野で周知の化学合成法によって合成的に生成することができる。あるいは、ペプチドは、ペプチドを産生する微生物において生成することができ、次にこれを単離し、所望する場合はさらに精製する。したがって、ペプチドは、細菌、酵母もしくは真菌などの微生物において;哺乳動物細胞もしくは昆虫細胞などの真核細胞において;またはアデノウイルス、ポックスウイルス、ヘルペスウイルス、セムリキ森林ウイルス、バキュロウイルス、バクテリオファージ、シンドビスウイルスもしくはセンダイウイルスなどの組換えウイルスベクターにおいて生成することができる。ペプチドを生成するための適切な細菌には、大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、またはペプチドを発現することができる他の任意の細菌が含まれる。ペプチドを発現するための適切な酵母の種類には、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、カンジダ属(Candida)、またはペプチドを発現することができる他の任意の酵母が含まれるが、これらに限定されない。前述の細菌、組換えウイルスベクター、真核細胞を使用してペプチドを生成する方法は、当技術分野で周知である。
【0112】
ペプチドを生成するために、ペプチドをコードする核酸は、好ましくはプラスミド内にあり、核酸は、微生物におけるペプチドの発現に影響を及ぼすプロモータに作動可能に連結されている。適切なプロモータには、T7ファージプロモータ、T3ファージプロモータ、β-ガラクトシダーゼプロモータ、およびSp6ファージプロモータが含まれるが、これらに限定されない。ペプチドを単離および精製するための方法は当技術分野で周知であり、ゲル濾過、アフィニティクロマトグラフィ、イオン交換クロマトグラフィ、または遠心分離などの方法が含まれる。
【0113】
本発明のペプチドは、それ自体でまたは融合ペプチドの一部として、異種ペプチドまたはタンパク質に結合させることができる。そのような異種タンパク質には、ウシ血清アルブミン(BSA)などの担体タンパク質、およびホースラディッシュペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼを含むがこれらに限定されないレポータ酵素が含まれるが、これらに限定されない。さらに、本発明のペプチドまたは本発明のペプチドを含む融合ペプチドは、フルオレセインまたはR-フィコエリトリンを含むがこれらに限定されない蛍光レポータ分子に化学的に結合させることができる。担体タンパク質、酵素、および蛍光レポータ分子をペプチドおよび融合ペプチドに結合させるための方法は、当技術分野で周知である。
【0114】
ペプチドの単離を容易にするために、ペプチドが、融合ポリペプチドの簡単な回収、例えばアフィニティクロマトグラフィまたは金属アフィニティクロマトグラフィ、好ましくはニッケルアフィニティクロマトグラフィによる単離を可能にする異種タグ、例えば異種ポリペプチドまたはポリヒスチジン、好ましくは6つのヒスチジン残基に翻訳的に融合(共有結合連結)されている融合ポリペプチドを作製することができる。場合によっては、精製後にタグを除去することが望ましい場合がある。そのために、融合ポリペプチドは、ペプチドと異種タグとの間の接合部に切断部位を含むことも企図される。切断部位は、その部位のアミノ酸配列に特異的な酵素で切断されるアミノ酸配列からなる。
【0115】
本明細書に記載のフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤は、フィブロネクチンエクストラドメインBまたはフィブロネクチンエクストラドメインB抗体の存在または量を検定するためのアッセイにおいて使用され得る。そのようなアッセイは、免疫検出を含むがこれに限定されない多くの方法で実施することができ、ELISA、特にペプチドELISA、競合結合アッセイ、RIA等を含む。本発明の方法は、フィブロネクチンエクストラドメインBまたはフィブロネクチンエクストラドメインB抗体の定量的および/または定性的評価、例えば絶対的および/または相対的評価を可能にする。
【0116】
一般に、アッセイは、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)の実施形態を使用して実施される。
【0117】
本明細書で使用される「酵素結合免疫吸着アッセイまたはELISA」という用語は、マルチウェルプレート形式(通常は1プレート当たり96ウェル)で試料、例えば血漿、血清または細胞/組織抽出物からのタンパク質濃度を定量的または半定量的に決定するための方法に関する。おおまかに言えば、溶液中のタンパク質がELISAプレートに吸着される。目的のタンパク質に特異的な抗体を使用してプレートをプローブし得る。ブロッキングおよび洗浄方法を最適化することによってバックグラウンドが最小限に抑えられ(IHCの場合)、陽性および陰性対照の存在によって特異性が確保される。検出方法は通常、比色分析または化学発光に基づく。
【0118】
第1のウェルまたは一連のウェルが、ウェルの表面に固定化されたフィブロネクチンエクストラドメインBに対するモノクローナル抗体を含む、複数のウェルを含むマイクロタイタプレートが提供され得る。結合したモノクローナル抗体を含むウェルに試料を添加し得る。試料中のフィブロネクチンエクストラドメインBはモノクローナル抗体に結合する。ELISAを、抗体複合体が形成されるのに十分な時間インキュベートする。本発明のペプチドをさらに添加してもよい。ペプチドは、融合ポリペプチドの一部であり得る。その後、ウェルを洗浄して未結合物質をすべて除去する。次に、ウェルを、標識抗体または融合ポリペプチドに結合して検出可能な複合体を形成するレポータ分子に結合した抗体と共にインキュベートし得る。標識またはレポータからの検出可能なシグナルは、試料がフィブロネクチンエクストラドメインBを含むことを示し、一方シグナルの非存在は、試料がフィブロネクチンエクストラドメインBを含まないことを示し得る。融合ポリペプチドが、標識またはレポータ分子、例えばアルカリホスファターゼなどのレポータ酵素を含む場合、抗体複合体は、標識抗体を必要とせずに直接検出することができる。
【0119】
あるいは、第1のウェルまたは一連のウェルが、ウェルの表面に固定化された担体タンパク質または融合ポリペプチドに結合し得る本発明のペプチドを含む、複数のウェルを含むマイクロタイタプレートが提供され得る。結合したペプチドを含むウェルに試料を添加し得る。試料中のフィブロネクチンエクストラドメインBおよびウェル表面に結合したペプチドを、複合体が形成されるのに十分な時間インキュベートする。その後、ウェルを洗浄して未結合物質をすべて除去する。ウェル中の固定化されたペプチドに結合するフィブロネクチンエクストラドメインBの量は、ウェルを、標識抗体またはフィブロネクチンエクストラドメインBに結合するレポータ分子に結合して検出可能な複合体を形成する抗体と共にインキュベートすることによって決定される。レポータからの検出可能なシグナルは、試料がフィブロネクチンエクストラドメインBを含むことを示し、一方シグナルの非存在は、試料がフィブロネクチンエクストラドメインBを含まないことを示す。シグナルの強度は、試料中のフィブロネクチンエクストラドメインBの濃度の推定値を提供し得る。
【0120】
本発明のペプチドはまた、フィブロネクチンエクストラドメインBに対する抗体の存在を検出するための方法において使用され得る。これらの方法を実施するための適切なイムノアッセイの設計は、大きく変動する可能性があり、これらの様々なイムノアッセイが当技術分野で公知である。適切なイムノアッセイプロトコルは、例えば競合、直接反応、またはサンドイッチ型アッセイに基づき得る。使用されるイムノアッセイプロトコルはまた、例えば固体支持体を使用してもよく、または免疫沈降によるものでもよい。アッセイは、標識されたペプチドの使用を含み得、標識は、例えば蛍光分子、化学発光分子、放射性分子、または色素分子であり得る。特に好ましいアッセイは、ELISAアッセイなどの酵素標識および酵素媒介イムノアッセイである。
【0121】
したがって、ペプチドはまた、試料中のフィブロネクチンエクストラドメインBに対する抗体を決定するためのELISAアッセイなどのアッセイにおいて使用され得る。この目的のために、ELISAプレートのウェルをペプチドで被覆し得る。フィブロネクチンエクストラドメインBおよびウェル表面に結合したペプチドを、複合体が形成されるのに十分な時間インキュベートし得る。その後、血漿などの試料を添加し、フィブロネクチンエクストラドメインB特異的抗体(一次抗体)の検出を、一次抗体に対する標識された二次抗体を用いて実施し得る。
【0122】
本明細書に記載されるようにアッセイ試薬として使用される場合、本発明のペプチドは標識に結合され得る。
【0123】
本発明によれば、標識は、その存在を容易に検出することができる任意の実体である。好ましくは、標識は直接標識である。直接標識は、それらの天然の状態で、肉眼で容易に見えるか、または光学フィルタおよび/もしくは刺激の適用、例えば蛍光を促進するためのUV光を用いて容易に見える実体である。例には、放射性化合物、化学発光化合物、電気活性化合物(レドックス標識など)、および蛍光化合物が含まれる。直接微粒子標識、例えば染料ゾル、金属ゾル(例えば金)および着色ラテックス粒子も非常に適しており、蛍光化合物と共に好ましい。これらの選択肢のうちで、着色ラテックス粒子および蛍光化合物が最も好ましい。小さな領域または体積への標識の濃縮は、容易に検出可能なシグナル、例えば強く着色された領域を生じさせるはずである。酵素、例えばアルカリホスファターゼおよびホースラディッシュペルオキシダーゼなどの間接標識も使用できるが、これらは通常、可視シグナルが検出できる前に基質などの1つ以上の展開試薬の添加を必要とする。
【0124】
本発明によれば、標識は、(i)検出可能なシグナルを提供する;(ii)第2の標識と相互作用して、第1の標識もしくは第2の標識によって提供される検出可能なシグナル、例えばFRET(蛍光共鳴エネルギー転移)を変化させる;(iii)電荷、疎水性、形状もしくは他の物理的パラメータによって移動度、例えば電気泳動移動度に影響を及ぼす;または(iv)捕捉部分、例えば親和性、抗体/抗原もしくはイオン錯体形成を提供するように機能し得る。標識として適切なのは、蛍光標識、発光標識、発色団標識、放射性同位体標識、同位体標識、好ましくは安定同位体標識、同重体標識、酵素標識、粒子標識、特に金属粒子標識、磁性粒子標識、ポリマー粒子標識、ビオチンなどの有機低分子、細胞接着タンパク質またはレクチンなどの受容体のリガンドまたは結合分子、結合剤の使用によって検出できる核酸および/またはアミノ酸残基を含む標識配列などの構造体である。標識には、非限定的に、硫酸バリウム、イオセタム酸、イオパノ酸、カルシウムイポデート、ジアトリゾ酸ナトリウム、ジアトリゾ酸メグルミン、メトリザミド、チロパノ酸ナトリウム、ならびにフッ素-18および炭素-11などの陽電子放射体、ヨウ素-123、テクネチウム-99m、ヨウ素-131およびインジウム-111などのγ放射体、フッ素およびガドリニウムなどの核磁気共鳴用の核種を含む放射性診断物質が含まれる。好ましい実施形態では、標識は、フィブロネクチンエクストラドメインB結合剤に結合したDOTA(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸)などのリガンドと錯体形成し得るルテチウム177またはガリウム68などの放射性核種を含む。
【0125】
本発明のペプチドへの標識の結合は、共有結合もしくは非共有結合(疎水性結合を含む)、または吸着によるものであり得る。そのような結合のための技術は当技術分野で一般的であり、使用される特定の試薬に容易に適合させ得る。
【0126】
本明細書で使用される「試料」という用語は、患者から単離され、分析目的に使用され得る任意の生物学的試料を含む。前記試料は、体液試料、組織試料、または細胞試料であり得る。例えば、本発明に包含される試料は、組織(例えば切片もしくは外植片)試料、単一細胞試料、細胞コロニー試料、細胞培養試料、血液(例えば全血もしくは血球画分、血清もしくは血漿などの血液画分)試料、尿試料、または他の末梢源からの試料である。前記試料は混合またはプールされてもよく、例えば、試料は血液試料と尿試料の混合物であってもよい。前記試料は、体液、細胞(1つもしくは複数)、細胞コロニー、外植片、または切片を患者から取り出すことによって提供され得るが、以前に単離された試料を使用することによっても提供され得る。例えば、組織試料は、従来の生検技術によって患者から取り出され得るか、または血液試料は、従来の採血技術によって患者から採取され得る。試料、例えば組織試料または血液試料は、治療的処置の開始前、治療的処置中、および/または治療的処置後に患者から得られ得る。
【0127】
一実施形態では、試料は体液試料である。本明細書で使用される「体液試料」という用語は、患者の身体に由来する任意の液体試料を指す。前記体液試料は、成分または画分を含む、血液試料、尿試料、痰試料、母乳試料、脳脊髄液(CSF)試料、耳垢(みみあか)試料、内リンパ試料、外リンパ試料、胃液試料、粘液試料、腹水試料、胸膜液試料、唾液試料、皮脂(皮膚の油分)試料、精液試料、汗試料、涙試料、膣分泌物試料、または嘔吐物試料であり得る。前記体液試料は、混合またはプールされてもよい。したがって、体液試料は、血液試料と尿試料の混合物、または血液試料と脳脊髄液試料の混合物であってもよい。前記体液試料は、患者から体液を取り出すことによって提供され得るが、以前に単離された体液試料物質を使用することによっても提供され得る。
【0128】
1つの好ましい実施形態では、試料は、全血試料、または血球画分、血清もしくは血漿試料などの血液画分試料である。
【0129】
一実施形態では、生物学的試料は、癌などの疾患に罹患していることが疑われる組織から得られた試料である。一実施形態では、生物学的試料は、腫瘍試料、例えば腫瘍から得られ、腫瘍細胞および/または細胞外マトリックスもしくは細胞外マトリックス成分などの腫瘍間質を含む試料である。本発明によれば、「生物学的試料」という用語はまた、生物学的試料の画分または単離物などの処理された生物学的試料、例えば核酸およびペプチド/タンパク質単離物も含む。
【0130】
本発明によれば、参照試料または参照生物などの「参照」は、試験試料または試験生物、すなわち患者から本発明の方法で得られた結果を関連付け、比較するために使用され得る。典型的には、参照生物は健常生物、特に腫瘍疾患に罹患していない生物である。
【0131】
「参照値」または「参照レベル」は、十分に多数の参照を測定することによって参照から経験的に決定することができる。好ましくは、参照値は、少なくとも2、好ましくは少なくとも3、好ましくは少なくとも5、好ましくは少なくとも8、好ましくは少なくとも12、好ましくは少なくとも20、好ましくは少なくとも30、好ましくは少なくとも50、または好ましくは少なくとも100の参照を測定することによって決定される。
【0132】
本明細書で使用される「低減する」、「減少させる」または「阻害する」は、レベル、例えば細胞の発現レベルまたは増殖レベルの、好ましくは5%以上、10%以上、20%以上、より好ましくは50%以上、最も好ましくは75%以上の全体的な減少または全体的な減少を生じさせる能力を意味する。物質の量はまた、参照試料では検出可能であるが、試験試料では存在しないかまたは検出できない場合、参照試料と比較して生物学的試料などの試験試料では低減されている。
【0133】
「増加する」または「増強する」などの用語は、好ましくは、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、より好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも80%、最も好ましくは少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも10000%またはそれ以上の増加または増強に関する。物質の量はまた、試験試料では検出可能であるが、参照試料では存在しないかまたは検出できない場合、参照試料と比較して生物学的試料などの試験試料では増加している。
【0134】
本発明のペプチドなどのフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤は、固体支持体、例えばイムノアッセイウェルもしくはディップスティックの表面に結合され得、および/または適切な試薬、対照、説明書などと共に適切な容器内のキットに包装され得る。
【0135】
したがって、本発明はまた、本発明の少なくとも1つのフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤を含むキットを提供する。好ましい実施形態では、キットは、イムノアッセイを実施するための1つ以上の適切な試薬などの少なくとも1つのさらなる薬剤、対照、またはキットの使用説明書をさらに含む。
【0136】
本発明によれば、本発明の少なくとも1つのフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤を含むアッセイ装置がさらに提供される。一実施形態では、アッセイ装置は、酵素結合免疫吸着アッセイ装置からなる群より選択される。
【0137】
そのような装置は様々な形態をとることができ、実施されるアッセイの正確な性質に応じて変更することができる。例えば、本発明のペプチドは、固体支持体、典型的にはニトロセルロースまたは他の疎水性多孔質材料上に被覆され得る。あるいは、ペプチドは、合成プラスチック材料、マイクロタイタアッセイプレート、マイクロアレイチップ、ラテックスビーズ、セルロースまたは合成ポリマー材料を含むフィルタ、ガラスまたはプラスチックスライド、ディップスティック、キャピラリー充填装置などに被覆され得る。これらの表面へのペプチドの被覆は、当技術分野で公知の方法によって達成することができる。タンパク質担体は、典型的には複合体形成のために使用され、BSAまたは接着性ペプチドが最も好ましい。一実施形態では、本発明のペプチドは、固体支持体上に解除可能に固定化されている。さらなる好ましい実施形態では、本発明のペプチドは、固体支持体上に解除不能に固定化されている。
【0138】
本明細書に記載のペプチドは、ペプチドをコードするRNAなどの核酸を投与することによって、および/またはペプチドをコードするRNAなどの核酸を含む宿主細胞を投与することによって、患者に送達され得ることが理解されるべきである。したがって、患者に投与されるとき、ペプチドをコードする核酸は、裸の形態で、またはリポソームもしくはウイルス粒子の形態などの適切な送達ビヒクル中に、または宿主細胞内に存在し得る。提供された核酸は、持続的な方法で長期間にわたってペプチドを産生することができる。患者に送達される核酸は、組換え手段によって生成することができる。核酸が宿主細胞内に存在せずに患者に投与される場合、核酸は、好ましくは、核酸によってコードされるペプチドの発現のために患者の細胞によって取り込まれる。核酸が宿主細胞内に存在しつつ患者に投与される場合、核酸は、好ましくは、核酸によってコードされるペプチドを産生するように患者内の宿主細胞によって発現される。
【0139】
本明細書で使用される「核酸」という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)、例えばゲノムDNA、cDNA、mRNA、組換え生産された分子および化学合成された分子を含むことが意図されている。核酸は、一本鎖または二本鎖であり得る。RNAは、インビトロ転写されたRNA(IVT RNA)または合成RNAを含む。
【0140】
本明細書で使用される場合、「RNA」という用語は、リボヌクレオチド残基を含む分子を意味する。「リボヌクレオチド」とは、β-D-リボフラノース部分の2'位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドを意味する。この用語は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、部分的に精製されたRNAなどの単離されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え生産されたRNA、ならびに1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換および/または改変によって天然のRNAとは異なる改変されたRNAを含む。そのような改変は、例えばRNAの末端(一方もしくは両方)または内部などへの、例えばRNAの1つ以上のヌクレオチドにおける、非ヌクレオチド物質の付加を含み得る。RNA分子中のヌクレオチドには、天然には存在しないヌクレオチドまたは化学合成されたヌクレオチドまたはデオキシヌクレオチドなどの非標準のヌクレオチドも含まれ得る。これらの改変RNAは、類似体または天然に存在するRNAの類似体と称され得る。
【0141】
本発明によれば、「RNA」という用語は、「メッセンジャーRNA」を意味する「mRNA」を含み、好ましくはこれに関し、DNAを鋳型として使用して生成され得る、ペプチドまたはタンパク質をコードする「転写産物」に関する。mRNAは、典型的には5'非翻訳領域(5'-UTR)、タンパク質またはペプチドコード領域、および3'非翻訳領域(3'-UTR)を含む。本発明の一実施形態では、RNAは、インビトロ転写または化学合成によって得られる。好ましくは、mRNAは、DNA鋳型を使用したインビトロ転写によって生成される。インビトロ転写の方法は当業者に公知である。例えば、様々なインビトロ転写キットが市販されている。
【0142】
本発明に従って使用されるRNAの発現および/または安定性を増加させるために、RNAは、好ましくは発現されるペプチドまたはタンパク質の配列を変更することなく、修飾され得る。
【0143】
本発明に従って使用されるRNAに関連して「修飾」という用語は、前記RNA中に天然には存在しないRNAの任意の修飾を含む。
【0144】
本発明の一実施形態では、本発明に従って使用されるRNAは、キャップされていない5'-三リン酸を有さない。そのようなキャップされていない5'-三リン酸の除去は、RNAをホスファターゼで処理することによって達成できる。
【0145】
本発明によるRNAは、その安定性を高めるおよび/または細胞毒性を低下させるために、修飾された天然または合成のリボヌクレオチドを有し得る。例えば、一実施形態では、本発明に従って使用されるRNAにおいて、シチジンを5-メチルシチジンで部分的または完全に、好ましくは完全に置換する。あるいはまたはさらに、一実施形態では、本発明に従って使用されるRNAにおいて、ウリジンをプソイドウリジンで部分的または完全に、好ましくは完全に置換する。
【0146】
一実施形態では、「修飾」という用語は、RNAに5'キャップまたは5'キャップ類似体を提供することに関する。「5'キャップ」という用語は、mRNA分子の5'末端に見出されるキャップ構造を指し、一般に独特の5'-5'三リン酸結合によってmRNAに連結されたグアノシンヌクレオチドからなる。一実施形態では、このグアノシンは7位でメチル化されている。「従来の5'キャップ」という用語は、天然に存在するRNA 5'キャップ、好ましくは7-メチルグアノシンキャップ(m7G)を指す。本発明の文脈において、「5'キャップ」という用語は、RNAキャップ構造に類似し、好ましくはインビボおよび/または細胞中で、RNAに結合した場合にRNAを安定化する能力を有するように修飾されている5'キャップ類似体を含む。
【0147】
RNAに5'キャップまたは5'キャップ類似体を提供することは、前記5'キャップまたは5'キャップ類似体の存在下でのDNA鋳型のインビトロ転写によって達成され得、前記5'キャップは、生成されたRNA鎖に共転写的に組み込まれるか、またはRNAは、例えばインビトロ転写によって生成され得、5'キャップは、キャッピング酵素、例えばワクシニアウイルスのキャッピング酵素を使用して転写後にRNAに結合させ得る。
【0148】
RNAはさらなる修飾を含み得る。例えば、本発明で使用されるRNAのさらなる修飾は、天然のポリ(A)尾部の伸長もしくは切断、または前記RNAのコード領域に関連しない非翻訳領域(UTR)の導入などの5'-UTRまたは3'-UTRの改変、例えばα2グロビン、α1グロビン、βグロビン、好ましくはβグロビン、より好ましくはヒトβグロビンなどのグロビン遺伝子に由来する1コピー以上、好ましくは2コピーの3'-UTRの挿入であり得る。
【0149】
本発明の文脈において、「転写」という用語は、DNA配列中の遺伝暗号がRNAに転写される過程に関する。その後、RNAはタンパク質に翻訳され得る。本発明によれば、「転写」という用語は「インビトロ転写」を含み、「インビトロ転写」という用語は、RNA、特にmRNAが、好ましくは適切な細胞抽出物を使用して、無細胞系においてインビトロで合成される過程に関する。好ましくは、クローニングベクターが転写産物の生成に適用される。これらのクローニングベクターは、一般に転写ベクターと呼ばれ、本発明によれば「ベクター」という用語に包含される。
【0150】
本発明による「翻訳」という用語は、メッセンジャーRNAの鎖が、ペプチドまたはタンパク質を作製するようにアミノ酸の配列の構築を指示する、細胞のリボソームにおける過程に関する。
【0151】
「発現」という用語は、本発明に従ってその最も一般的な意味で使用され、例えば転写および/または翻訳による、RNAおよび/またはペプチドもしくはタンパク質の産生を含む。RNAに関して、「発現」または「翻訳」という用語は、特にペプチドまたはタンパク質の産生に関する。この用語はまた、核酸の部分的発現も含む。さらに、発現は一過性または安定的であり得る。本発明によれば、発現という用語は、「異所性発現」または「異常発現」も含む。
【0152】
「異所性発現」または「異常発現」とは、本発明によれば、参照、例えば特定のタンパク質、例えばフィブロネクチンエクストラドメインBの異所性発現または異常発現に関連する疾患を有していない対象における状態と比較して、発現が変化している、好ましくは増加していることを意味する。発現の増加とは、少なくとも10%、特に少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも100%、少なくとも200%、少なくとも500%、少なくとも1000%、少なくとも10000%、またはさらにそれ以上の増加を指す。一実施形態では、発現は罹患組織でのみ見出され、健常組織での発現は抑制されている。
【0153】
「特異的に発現される」という用語は、タンパク質が本質的に特定の組織または器官でのみ発現されることを意味する。例えば、胃粘膜で特異的に発現されるタンパク質は、前記タンパク質が主に胃粘膜で発現され、他の組織では発現されないかまたは他の組織もしくは器官型では有意な程度に発現されないことを意味する。したがって、胃粘膜の細胞で排他的に発現され、精巣などの他の組織では有意に低い程度に発現されるタンパク質は、胃粘膜の細胞で特異的に発現される。
【0154】
本発明によれば、「~をコードする核酸」という用語は、核酸が、適切な環境、好ましくは細胞内に存在する場合、それがコードするタンパク質またはペプチドを産生するように発現され得ることを意味する。
【0155】
本発明に従って記載される核酸は、好ましくは単離されている。「単離された核酸」という用語は、本発明によれば、核酸が、(i)例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってインビトロで増幅された、(ii)クローニングによって組換え生産された、(iii)例えば切断およびゲル電気泳動分画によって精製された、または(iv)例えば化学合成によって合成されたことを意味する。単離された核酸は、組換えDNA技術による操作に利用可能な核酸である。
【0156】
本発明による、例えば核酸およびアミノ酸配列に関する「変異体」という用語は、任意の変異体、特に突然変異体、スプライス変異体、立体配座変異体、アイソフォーム変異体、対立遺伝子変異体、種変異体および種ホモログ、特に天然に存在するものを含む。対立遺伝子変異体は、遺伝子の正常な配列の改変に関連しており、その重要性はしばしば不明である。完全な遺伝子配列決定は、しばしば所与の遺伝子について多数の対立遺伝子変異体を同定する。種ホモログは、所与の核酸またはアミノ酸配列のものとは異なる種を起源とする核酸またはアミノ酸配列である。
【0157】
核酸分子に関して、「変異体」という用語は縮重核酸配列を含み、本発明による縮重核酸は、遺伝暗号の縮重のためにコドン配列が参照核酸とは異なる核酸である。
【0158】
さらに、本発明による特定の核酸配列の「変異体」には、単一または複数、例えば少なくとも2、少なくとも4、または少なくとも6、好ましくは最大3、最大4、最大5、最大6、最大10、最大15、または最大20のヌクレオチド置換、欠失および/または付加を含む核酸配列が含まれる。
【0159】
好ましくは、所与の核酸配列と、前記所与の核酸配列の変異体である核酸配列との間の同一性の程度は、少なくとも約60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%である。同一性の程度は、好ましくは、参照核酸配列の全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または約100%である領域について与えられる。例えば、参照核酸配列が200個のヌクレオチドからなる場合、類似性または同一性の程度は、好ましくは少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約60、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180、または約200個のヌクレオチド、好ましくは連続するヌクレオチドについて与えられる。好ましい実施形態では、同一性の程度は、参照核酸配列の全長について与えられる。
【0160】
2つの核酸配列間の「配列同一性」は、これらの配列間で同一であるヌクレオチドの割合を示す。
【0161】
「同一性パーセント」という用語は、最適なアラインメント後に得られる、比較する2つの配列間で同一であるヌクレオチドの割合を示すことが意図されており、この割合は純粋に統計的であり、2つの配列間の相違は、ランダムにおよびそれらの全長にわたって分布する。2つのヌクレオチド配列間の配列比較は、従来、これらの配列を最適に整列させた後に比較することによって行われ、前記比較は、配列類似性の局所領域を同定し、比較するためにセグメントごとにまたは「比較ウィンドウ」ごとに行われる。比較のための配列の最適なアラインメントは、手作業に加えて、Smith and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482の局所相同性アルゴリズムによって、Neddleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443の局所相同性アルゴリズムによって、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 85,2444の類似性検索法によって、またはこれらのアルゴリズムを使用するコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST NおよびTFASTA)によって作成され得る。
【0162】
同一性パーセントは、比較する2つの配列間で同一の位置の数を決定し、この数を比較する位置の数で除し、得られた結果に100を乗じて、これら2つの配列間の同一性パーセントを得ることによって計算される。
【0163】
好ましくは、所与の核酸配列および前記所与の核酸配列の変異体である核酸配列は、ハイブリダイズすることができる。
【0164】
2つの配列が互いに相補的である場合、核酸は別の核酸に「ハイブリダイズすることができる」または「ハイブリダイズする」。2つの配列が互いに安定な二重鎖を形成できる場合、核酸は別の核酸に「相補的」である。本発明によれば、ハイブリダイゼーションは、好ましくは、ポリヌクレオチド間の特異的なハイブリダイゼーションを可能にする条件(ストリンジェントな条件)下で実施される。ストリンジェントな条件は、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,J.Sambrook et al.,Editors,2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory press,Cold Spring Harbor,New York,1989、またはCurrent Protocols in Molecular Biology,F.M.Ausubel et al.,Editors,John Wiley&Sons,Inc.,New Yorkに記載されており、例えばハイブリダイゼーション緩衝液(3.5xSSC、0.02%フィコール、0.02%ポリビニルピロリドン、0.02%ウシ血清アルブミン、2.5mM NaH2PO4(pH7)、0.5%SDS、2mM EDTA)中、65℃でのハイブリダイゼーションを指す。SSCは、0.15M塩化ナトリウム/0.15Mクエン酸ナトリウム、pH7である。ハイブリダイゼーション後、DNAが転写された膜を、例えば室温で2×SSC中で洗浄し、次に68℃までの温度で0.1~0.5×SSC/0.1×SDS中で洗浄する。
【0165】
相補性パーセントは、第2の核酸配列と水素結合(例えばワトソン-クリック塩基対合)を形成することができる核酸分子中の連続する残基の割合を示す(例えば10個のうちの5、6、7、8、9、10個が50%、60%、70%、80%、90%、および100%相補的である)。「完全に相補的」または「全面的に相補的」とは、核酸配列のすべての連続する残基が、第2の核酸配列の同じ数の連続する残基と水素結合することを意味する。好ましくは、本発明による相補性の程度は、少なくとも70%、好ましくは少なくとも75%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、さらにより好ましくは少なくとも90%、または最も好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%または99%である。最も好ましくは、本発明による相補性の程度は100%である。
【0166】
「誘導体」という用語は、ヌクレオチド塩基上、糖上またはリン酸塩上の核酸の任意の化学的誘導体化を含む。「誘導体」という用語はまた、天然には存在しないヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体を含む核酸を含む。好ましくは、核酸の誘導体化はその安定性を高める。
【0167】
核酸は、本発明によれば、単独で、または他の核酸、特に異種核酸と組み合わせて存在し得る。好ましくは、ペプチドまたはタンパク質をコードする核酸は、前記ペプチドまたはタンパク質を発現する。好ましい実施形態では、核酸は、前記核酸に対して同種でも異種でもよい発現制御配列または調節配列に機能的に連結されている。コード配列および調節配列は、それらが、前記コード配列の発現または転写が前記調節配列の制御下または影響下にあるように互いに共有結合連結されている場合、互いに「機能的に」連結されている。コード配列が機能的タンパク質に翻訳される場合、調節配列が前記コード配列に機能的に連結されていると、前記調節配列の誘導は、コード配列にフレームシフトを引き起こすことなく、または前記コード配列が所望のタンパク質もしくはペプチドに翻訳されるのを不可能にすることなく、前記コード配列の転写をもたらす。
【0168】
「発現制御配列」または「調節配列」という用語は、本発明によれば、遺伝子の発現を調節するプロモータ、エンハンサおよび他の制御エレメントを含む。本発明の特定の実施形態では、発現制御配列を調節することができる。発現制御配列の正確な構造は、種または細胞型に応じて異なり得るが、一般に、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列などの、それぞれ転写および翻訳の開始に関与する5'非転写配列および5'非翻訳配列を含む。より具体的には、5'非転写調節配列は、機能的に連結された遺伝子の転写制御のためのプロモータ配列を含むプロモータ領域を含む。調節配列はまた、エンハンサ配列または上流活性化配列を含み得る。
【0169】
本発明によれば、核酸はさらに、前記核酸によってコードされるタンパク質またはペプチドの宿主細胞からの分泌を制御するペプチドをコードする別の核酸と組み合わせて存在し得る。本発明によれば、核酸はまた、コードされるタンパク質またはペプチドを宿主細胞の細胞膜に固定させるかまたは前記細胞の特定の細胞小器官に区画化させるペプチドをコードする別の核酸と組み合わせて存在し得る。同様に、レポータ遺伝子または任意の「タグ」である核酸との組合せが可能である。
【0170】
好ましい実施形態では、組換え核酸分子は、本発明によれば、核酸の発現を制御する、適切な場合はプロモータを有する、ベクターである。「ベクター」という用語は、本明細書ではその最も一般的な意味で使用され、例えば核酸が原核生物および/または真核生物宿主細胞に導入され、適切な場合はゲノムに組み込まれることを可能にする、前記核酸のための任意の中間ビヒクルを含む。この種のベクターは、好ましくは細胞内で複製および/または発現される。中間ビヒクルは、例えばエレクトロポレーション、マイクロプロジェクタイルボンバードメント、リポソーム投与、アグロバクテリウム(agrobacteria)を用いた移入、またはDNAもしくはRNAウイルスを介した挿入における使用に適合させ得る。ベクターは、プラスミド、ファージミド、バクテリオファージまたはウイルスゲノムを含む。
【0171】
本発明による核酸は、宿主細胞のトランスフェクションに使用し得る。ここでの核酸とは、組換えDNAと組換えRNAの両方を意味する。組換えRNAは、DNA鋳型のインビトロ転写によって調製し得る。さらに、これは、適用前に配列の安定化、キャッピングおよびポリアデニル化によって修飾し得る。
【0172】
本発明の文脈における「組換え」という用語は、「遺伝子操作を介して作製された」ことを意味する。好ましくは、本発明の文脈における組換え核酸などの「組換え物」は、天然には存在しない。
【0173】
本明細書で使用される「天然に存在する」という用語は、物体が自然界で見出され得るという事実を指す。例えば、生物(ウイルスを含む)中に存在し、自然界の供給源から単離することができ、実験室で人間によって意図的に修飾されていないペプチドまたは核酸は、天然に存在する。
【0174】
「細胞」または「宿主細胞」という用語は、好ましくは無傷の細胞、すなわち酵素、細胞小器官、または遺伝物質などのその正常な細胞内成分を放出していない無傷の膜を有する細胞に関する。無傷の細胞は、好ましくは生存可能な細胞、すなわちその通常の代謝機能を実施することができる生細胞である。好ましくは、前記用語は、本発明によれば、外因性核酸でトランスフェクトすることができる任意の細胞に関する。好ましくは、外因性核酸でトランスフェクトされたときの細胞は、核酸を発現することができる。
【0175】
「宿主細胞」という用語は、本発明によれば、原核細胞(例えば大腸菌)または真核細胞(例えば樹状細胞、B細胞、CHO細胞、COS細胞、K562細胞、酵母細胞および昆虫細胞)を含む。ヒト、マウス、ハムスター、ブタ、ヤギ、霊長動物からの細胞などの哺乳動物細胞が特に好ましい。細胞は、多数の組織型に由来してもよく、初代細胞および細胞株を含み得る。具体的な例には、ケラチノサイト、末梢血白血球、骨髄の幹細胞および胚性幹細胞が含まれる。核酸は、単一のコピーまたは2つ以上のコピーの形態で宿主細胞に存在することができ、一実施形態では、宿主細胞で発現される。
【0176】
「ペプチド」という用語は、オリゴペプチドおよびポリペプチドを含み、ペプチド結合によって共有結合で連結された2個以上、好ましくは3個以上、好ましくは4個以上、好ましくは6個以上、好ましくは8個以上、好ましくは10個以上、好ましくは13個以上、好ましくは16個以上、好ましくは21個以上、および好ましくは8個、10個、20個、30個、40個または50個まで、特に100個までのアミノ酸を含む物質を指す。「タンパク質」という用語は、大きなペプチド、好ましくは100個を超えるアミノ酸残基を有するペプチドを指すが、一般に、「ペプチド」と「タンパク質」という用語は同義語であり、本明細書では互換的に使用される。
【0177】
本発明によれば、ペプチドは、天然アミノ酸および非天然アミノ酸を含み得る。一実施形態では、ペプチドは単に天然アミノ酸を含む。
【0178】
本発明によれば、「非天然アミノ酸」という用語は、20の天然アミノ酸種のものとは異なる構造を有するアミノ酸を指す。非天然アミノ酸は天然アミノ酸のものと類似の構造を有するため、非天然アミノ酸は所与の天然アミノ酸の誘導体または類似体として分類されることがある。
【0179】
本発明によれば、「環状ペプチド」という用語は、環を形成するペプチドまたはポリペプチド鎖に関する。ペプチドは、4つの異なる方法で環化され得る:頭-尾結合(C末端-N末端結合)、頭-側鎖結合、側鎖-尾結合、または側鎖-側鎖結合。本発明によれば、環状ペプチドを与える分子内ジスルフィド架橋を形成することができるシステインなどのチオール基を含む2つ以上の残基を含むペプチドが特に好ましい。
【0180】
本発明によれば、ペプチドは、1つ以上の他の化合物に共有結合または非共有結合し得る。そのような化合物には、ペプチドおよびタンパク質などのペプチド性化合物、ならびにポリエチレングリコール(PEG)などの非ペプチド性化合物が含まれる。
【0181】
一実施形態では、本明細書に記載のペプチドはペグ化されている。ペグ化は、ポリエチレングリコール(PEG)ポリマー鎖をペプチドまたはタンパク質などの別の分子に共有結合させる工程である。PEGの共有結合は、宿主の免疫系から薬剤を「マスク」し(免疫原性および抗原性を低下させる)、薬剤の流体力学的サイズ(溶液中のサイズ)を増加させることができ、これは、腎クリアランスを低下させることによって薬剤の循環時間を延長する。ペグ化は、疎水性薬物およびタンパク質に水溶性を提供することもできる。
【0182】
好ましくは、本発明に従って記載されるタンパク質およびペプチドは単離されている。「単離されたタンパク質」または「単離されたペプチド」という用語は、タンパク質またはペプチドがその天然環境から分離されていることを意味する。単離されたタンパク質またはペプチドは、本質的に精製された状態であり得る。「本質的に精製された」という用語は、タンパク質またはペプチドが、それが自然界でまたはインビボで結合している他の物質を本質的に含まないことを意味する。そのようなタンパク質およびペプチドは、例えば免疫学的アッセイもしくは診断アッセイにおいて、または治療薬として使用され得る。本発明に従って記載されるタンパク質およびペプチドは、組織または細胞ホモジネートなどの生物学的試料から単離することができ、また、多数の原核生物または真核生物発現系において組換え発現させ得る。
【0183】
「抗体」という用語は、ジスルフィド結合によって相互に連結された少なくとも2本の重(H)鎖と2本の軽(L)鎖を含む糖タンパク質、およびそのような糖タンパク質の抗原結合部分を含む任意の分子を含む。「抗体」という用語は、モノクローナル抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、限定されることなく、一本鎖抗体、例えばscFvならびにFabおよびFab'断片などの抗原結合抗体断片を含む抗体の結合断片または誘導体を含む分子を含み、また、抗体のすべての組換え形態、例えば原核生物で発現される抗体、非グリコシル化抗体、ならびに本明細書に記載の任意の抗原結合抗体断片および誘導体を含む。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略される)および重鎖定常領域からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略される)および軽鎖定常領域からなる。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域が間に組み入れられた、相補性決定領域(CDR)と称される超可変性の領域にさらに細分化することができる。各VHおよびVLは、次の順序でアミノ末端からカルボキシ末端へと配置された3つのCDRと4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクタ細胞)および古典的補体系の第1成分(C1q)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0184】
特定のアミノ酸配列、例えば配列表に示されるものに関して本明細書で与えられる教示は、前記特定の配列と機能的に等価である配列、例えば前記特定のアミノ酸配列の特性と同一または類似の特性を示すアミノ酸配列をもたらす前記特定の配列の変異体にも関連するように解釈されるべきである。1つの重要な特性は、フィブロネクチンエクストラドメインBなどの標的への結合を保持することである。
【0185】
本発明の目的のために、アミノ酸配列の「変異体」は、アミノ酸挿入変異体、アミノ酸付加変異体、アミノ酸欠失変異体および/またはアミノ酸置換変異体を含む。タンパク質のN末端および/またはC末端に欠失を含むアミノ酸欠失変異体は、N末端および/またはC末端切断変異体とも呼ばれる。
【0186】
アミノ酸挿入変異体は、特定のアミノ酸配列中に1個または2個以上のアミノ酸の挿入を含む。挿入を有するアミノ酸配列変異体の場合、1個以上のアミノ酸残基がアミノ酸配列の特定の部位に挿入されるが、結果として生じる産物の適切なスクリーニングを伴うランダム挿入も可能である。
【0187】
アミノ酸付加変異体は、1個以上のアミノ酸、例えば1、2、3、5、10、20、30、50個、またはそれ以上のアミノ酸のアミノ末端および/またはカルボキシ末端融合を含む。
【0188】
アミノ酸欠失変異体は、配列からの1個以上のアミノ酸の除去、例えば1、2、3、5、10、20、30、50個、またはそれ以上のアミノ酸の除去を特徴とする。欠失は、ペプチドまたはタンパク質の任意の位置にあってよい。
【0189】
アミノ酸置換変異体は、配列内の少なくとも1個の残基が除去され、別の残基がその位置に挿入されていることを特徴とする。修飾が、相同なタンパク質もしくはペプチド間で保存されていないアミノ酸配列内の位置にあること、および/またはアミノ酸を類似の性質を有する他のアミノ酸で置換することが好ましい。好ましくは、タンパク質変異体におけるアミノ酸変化は、保存的アミノ酸変化、すなわち同様に荷電したアミノ酸または非荷電アミノ酸の置換である。保存的アミノ酸変化には、その側鎖が関連するアミノ酸のファミリーの1つの置換が含まれる。天然に存在するアミノ酸は、一般に、酸性(アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性(リジン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性(アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、および非荷電極性(グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、トレオニン、チロシン)アミノ酸の4つのファミリーに分けられる。フェニルアラニン、トリプトファン、およびチロシンは、時に芳香族アミノ酸として一緒に分類されることがある。
【0190】
好ましくは、所与のアミノ酸配列と前記所与のアミノ酸配列の変異体であるアミノ酸配列との間の類似性、好ましくは同一性の程度は、少なくとも約60%、65%、70%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%である。類似性または同一性の程度は、好ましくは、参照アミノ酸配列の全長の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または約100%であるアミノ酸領域について与えられる。例えば、参照アミノ酸配列が200個のアミノ酸からなる場合、類似性または同一性の程度は、好ましくは少なくとも約20、少なくとも約40、少なくとも約60、少なくとも約80、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180、または約200個のアミノ酸、好ましくは連続するアミノ酸について与えられる。好ましい実施形態では、類似性または同一性の程度は、参照アミノ酸配列の全長について与えられる。配列類似性、好ましくは配列同一性を決定するためのアラインメントは、当技術分野で公知のツールを用いて、好ましくは最適な配列アラインメントを使用して、例えばAlignを使用して、標準的な設定、好ましくはEMBOSS::needle、マトリックス:Blosum62、ギャップ開始10.0、ギャップ伸長0.5を使用して行うことができる。
【0191】
「配列類似性」は、同一であるかまたは保存的アミノ酸置換を表すアミノ酸の割合を示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、これらの配列間で同一であるアミノ酸の割合を示す。
【0192】
「同一性パーセント」という用語は、最適なアラインメント後に得られる、比較する2つの配列間で同一であるアミノ酸残基の割合を示すことが意図されており、この割合は純粋に統計的であり、2つの配列間の相違は、ランダムにおよびそれらの全長にわたって分布する。2つのアミノ酸配列間の配列比較は、従来、これらの配列を最適に整列させた後に比較することによって行われ、前記比較は、配列類似性の局所領域を同定し、比較するためにセグメントごとにまたは「比較ウィンドウ」ごとに行われる。比較のための配列の最適なアラインメントは、手作業に加えて、Smith and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482の局所相同性アルゴリズムによって、Neddleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443の局所相同性アルゴリズムによって、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 85,2444の類似性検索法によって、またはこれらのアルゴリズムを使用するコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST NおよびTFASTA)によって作成され得る。
【0193】
同一性パーセントは、比較する2つの配列間で同一の位置の数を決定し、この数を比較する位置の数で除し、得られた結果に100を乗じて、これら2つの配列間の同一性パーセントを得ることによって計算される。
【0194】
本明細書に記載のペプチドおよびアミノ酸変異体は、公知のペプチド合成技術を用いて、例えば固相合成(Merrifield,1964)および同様の方法によって、または組換えDNA操作によって、容易に調製され得る。置換、挿入または欠失を有するタンパク質およびペプチドを調製するためのDNA配列の操作は、例えばSambrook et al.(1989)に詳細に記載されている。
【0195】
本発明によれば、「ペプチド」または「タンパク質」という用語は、ペプチドおよびタンパク質の「誘導体」を含む。そのような誘導体は、ペプチドおよびタンパク質の修飾形態である。そのような修飾には任意の化学修飾が含まれ、ならびに炭水化物、脂質、タンパク質および/またはペプチドなどのタンパク質またはペプチドに関連する任意の分子の単一または複数の置換、欠失および/または付加が含まれる。「誘導体」という用語はまた、前記ペプチドおよびタンパク質のすべての機能的な化学的等価物に及ぶ。好ましくは、修飾ペプチドは、増加した安定性および/または増加した免疫原性を有する。
【0196】
本発明のフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤は、治療アプローチにおいて使用され得る。この目的のために、本発明のフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤は、1つ以上の治療エフェクタ部分に共有結合および/もしくは非共有結合され得、ならびに/または様々な成分と組み合わされて薬学的に許容される組成物を生成し得る。本明細書に記載されるペプチドなどの薬剤は、任意の適切な医薬組成物の形態で投与され得る。
【0197】
「標的細胞」とは、癌細胞などの望ましくない細胞を意味する。好ましい実施形態では、標的細胞は、フィブロネクチンエクストラドメインBに関連するかまたは空間的に連結され、例えば近接し、例えば標的細胞は、腫瘍細胞および/またはフィブロネクチンエクストラドメインBを発現する内皮細胞などの細胞を含む癌または腫瘍内に存在する。一実施形態では、フィブロネクチンエクストラドメインBは、腫瘍組織の細胞外マトリックス内などの腫瘍組織内および/もしくは腫瘍組織周囲で、ならびに/または腫瘍新生血管などの腫瘍血管内および/もしくは腫瘍血管において発現される。
【0198】
本発明によれば、「治療エフェクタ部分」という用語は、治療効果を発揮し得る任意の分子を意味する。本発明によれば、治療エフェクタ部分は、好ましくは、フィブロネクチンエクストラドメインBまたはフィブロネクチンエクストラドメインBに関連するかまたは空間的に連結される細胞に選択的に誘導される。癌細胞に対して治療効果を発揮する任意の薬剤を、フィブロネクチンエクストラドメインB結合剤に結合させるための薬物として使用することができる。好ましくは、薬物の結合は、本明細書で論じるように、フィブロネクチンエクストラドメインB結合剤の結合特性、特に特異性を改変しないまたは有意に改変しない。
【0199】
本発明によれば、治療エフェクタ部分は、抗癌剤、放射性ヨウ素標識化合物などの放射性同位体、毒素、細胞増殖抑制薬または細胞溶解薬等を含む。抗癌剤は、例えばアミノグルテチミド、アザチオプリン、ブレオマイシン硫酸塩、ブスルファン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、シクロホスファミド、シクロスポリン、シタラビジン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、タキソール、エトポシド、フルオロウラシル、インターフェロンα、ロムスチン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトタン、塩酸プロカルバジン、チオグアニン、ビンブラスチン硫酸塩およびビンクリスチン硫酸塩を含む。他の抗癌剤は、例えばGoodman and Gilman,"The Pharmacological Basis of Therapeutics",8th Edition,1990,McGraw-Hill,Inc.、特にChapter 52(Antineoplastic Agents(Paul Calabresi and Bruce A.Chabner)に記載されている。毒素は、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、コレラ毒素、百日咳毒素、リシン、ゲロニン、アブリン、ジフテリア外毒素またはシュードモナス(Pseudomonas)外毒素などのタンパク質であり得る。毒素残基は、コバルト60などの高エネルギー放出放射性核種であり得る。
【0200】
治療エフェクタ部分には、特に細胞毒素または細胞毒性薬が含まれる。細胞毒素または細胞毒性薬には、細胞に有害であり、特に細胞を死滅させる任意の薬剤が含まれる。
【0201】
細胞毒性薬の有用なクラスには、例えば抗チューブリン剤、DNA副溝結合剤(例えばエンジインおよびレキシトロプシン)、DNA複製阻害剤、アルキル化剤(例えばシスプラチン、モノ(白金)、ビス(白金)および三核白金錯体などの白金錯体ならびにカルボプラチン)、アントラサイクリン、抗生物質、葉酸代謝拮抗剤、代謝拮抗剤、化学療法増感剤、デュオカルマイシン、エトポシド、フッ素化ピリミジン、イオノフォア、ニトロソ尿素、プラチノール、予備形成化合物、プリン代謝拮抗剤、ピューロマイシン、放射線増感剤、ステロイド、タキサン(例えばパクリタキセルおよびドセタキセル)、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカロイドなどが含まれる。
【0202】
個々の細胞毒性薬には、例えばアンドロゲン、アントラマイシン(AMC)、アスパラギナーゼ、5-アザシチジン、アザチオプリン、ブレオマイシン、ブスルファン、ブチオニンスルホキシミン、カンプトテシン、カルボプラチン、カルムスチン(BSNU)、CC-1065、クロラムブシル、シスプラチン、コルヒチン、シクロホスファミド、シタラビン、シチジンアラビノシド、サイトカラシンB、ダカルバジン、ダクチノマイシン(以前のアクチノマイシン)、ダウノルビシン、デカルバジン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エストロゲン、5-フルオロデオキシウリジン、5-フルオロウラシル、グラミシジンD、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン(CCNU)、メクロレタミン、メルファラン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート、ミトラマイシン、マイトマイシンC、ミトキサントロン、ニトロイミダゾール、パクリタキセル、プリカマイシン、プロカルバジン、ストレプトゾトシン、テニポシド、6-チオグアニン、チオテパ、トポテカン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、VP-16およびVM-26が含まれる。
【0203】
抗チューブリン剤の例には、ドラスタチン(例えばオーリスタチンE、AFP、MMAF、MMAE、AEB、AEVB)、メイタンシノイド、タキサン(例えばパクリタキセル、ドセタキセル)、T67(Tularik)、ビンカアルキロイド(例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、およびビノレルビン)、バッカチン誘導体、タキサン類似体(例えばエポチロンAおよびB)、ノコダゾール、コルヒチンおよびコルセミド(colcimid)、エストラムスチン、クリプトフィジン、セマドチン、コンブレタスタチン、ディスコデルモライド、およびエリュテロビンが含まれるが、これらに限定されない。
【0204】
細胞毒性放射性医薬品を生成するための放射性同位体には、例えばヨウ素-131、イットリウム-90またはインジウム-111が含まれる。
【0205】
そのような治療エフェクタ部分(薬物)をペプチドに結合させるための技術は周知である。ペプチド-薬物複合体の生成は、当業者に公知の任意の技術によって達成することができる。ペプチドと薬物は、それら自身のリンカー基を介して互いに直接結合し得るか、またはリンカーもしくは他の物質を介して間接的に結合し得る。
【0206】
ペプチドへの薬物の共有結合には、多くの異なる反応が利用可能である。これは、しばしば、リジンのアミン基、グルタミン酸およびアスパラギン酸の遊離カルボン酸基、システインのスルフヒドリル基、ならびに芳香族アミノ酸の様々な部分を含む、ペプチド分子のアミノ酸残基の反応によって達成される。共有結合の最も一般的に使用される非特異的方法の1つは、化合物のカルボキシ(またはアミノ)基をペプチドのアミノ(またはカルボキシ)基に連結するカルボジイミド反応である。さらに、ジアルデヒドまたはイミドエステルなどの二官能性薬剤が、化合物のアミノ基をペプチド分子のアミノ基に連結するために使用されてきた。シッフ塩基反応も、ペプチドへの薬物の結合にも利用可能である。この方法は、グリコール基またはヒドロキシ基を含む薬物の過ヨウ素酸酸化を含み、したがってアルデヒドを形成し、それが次にペプチド分子と反応する。結合は、ペプチド分子のアミノ基とのシッフ塩基の形成によって起こる。イソチオシアネートも、薬物をペプチドに共有結合させるためのカップリング剤として使用することができる。他の技術は当業者に公知であり、本発明の範囲内である。
【0207】
ペプチド-薬物複合体を作製するための当技術分野で公知の多くの連結基が存在する。リンカーは、好ましくは、ペプチドおよび薬物のいずれかまたは両方と反応する1つ以上の官能基を含む。官能基の例には、アミノ、カルボキシル、メルカプト、マレイミド、およびピリジニル基が含まれる。
【0208】
本発明の一実施形態では、ペプチドは、二官能性架橋試薬によって薬物と連結される。本明細書で使用される場合、「二官能性架橋試薬」は、2つの反応性基を有し、その一方がペプチドと反応することができ、他方が薬物と反応してペプチドを薬物と連結することができ、それにより複合体を形成する試薬を指す。リンカー試薬が薬物の保持、例えば細胞毒性、およびペプチドの標的化特性を提供する限り、任意の適切な二官能性架橋試薬を本発明に関連して使用することができる。好ましくは、リンカー分子は、薬物とペプチドが互いに化学的に結合する(例えば共有結合する)ように、化学結合を介して薬物をペプチドに結合する。
【0209】
一実施形態では、二官能性架橋試薬は、切断不可能なリンカーを含む。切断不可能なリンカーは、安定した共有結合様式で薬物をペプチドに連結することができる任意の化学的部分である。好ましくは、切断不可能なリンカーは、生理学的条件下で、特に体内および/または細胞内で切断可能ではない。したがって、切断不可能なリンカーは、薬物またはペプチドが活性を維持する条件下で、酸誘導切断、光誘導切断、ペプチダーゼ誘導切断、エステラーゼ誘導切断、およびジスルフィド結合切断に対して実質的に耐性である。薬物とペプチドとの間に切断不可能なリンカーを形成する適切な架橋試薬は、当技術分野で周知である。一実施形態では、薬物は、チオエーテル結合を介してペプチドに連結される。
【0210】
1つの特に好ましい実施形態では、連結試薬は、切断可能なリンカーである。好ましくは、切断可能なリンカーは、生理学的条件下で、特に体内および/または細胞内で切断可能である。適切な切断可能なリンカーの例には、ジスルフィドリンカー、酸不安定性リンカー、光解離性リンカー、ペプチダーゼ不安定性リンカー、およびエステラーゼ不安定性リンカーが含まれる。
【0211】
リンカーの例には、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート(SPDB)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スルホスクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)、N-スクシンイミジル-4-(マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキシレート(SMCC)、N-スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシ-(6-アミドカプロエート)(LC-SMCC)、4-マレイミド酪酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(GMBS)、3-マレイミドカプロン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(EMCS)、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)、N-(α-マレイミドアセトキシ)-スクシンイミドエステル(AMAS)、スクシンイミジル-6-(β-マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート(SMPH)、N-スクシンイミジル-4-(p-マレイミドフェニル)-ブチレート(SMPB)、N-(p-マレイミドフェニル)イソシアネート(PMPI)、6-マレイミドカプロイル(MC)、マレイミドプロパノイル(MP)、p-アミノベンジルオキシカルボニル(PAB)、N-スクシンイミジル-4-(2-ピリジルチオ)ペンタノエート(SPP)、およびN-スクシンイミジル(4-ヨードアセチル)アミノベンゾエート(SIAB)が含まれるが、これらに限定されない。バリン-シトルリン(Val-Cit)またはアラニン-フェニルアラニン(ala-phe)などのペプチドリンカーも使用することができ、前述のリンカーのいずれかを適切な組合せで使用し得る。
【0212】
ジスルフィド含有リンカーは、生理学的条件下で起こり得るジスルフィド交換によって切断可能なリンカーである。さらに他の実施形態では、リンカーは、還元条件下で切断可能である(例えばジスルフィドリンカー)。例えばSATA(N-スクシンイミジル-5-アセチルチオアセテート)、SPDP(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、SPDB(N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)ブチレート)およびSMPT(N-スクシンイミジル-オキシカルボニル-α-メチル-α-(2-ピリジル-ジチオ)トルエン)を使用して形成され得るものを含む、様々なジスルフィドリンカーが当技術分野で公知である。
【0213】
酸不安定性リンカーは、酸性のpHで切断可能なリンカーである。例えば、エンドソームおよびリソソームなどの特定の細胞内区画は酸性pH(pH4~5)を有し、酸不安定性リンカーを切断するのに適した条件を提供する。酸不安定性リンカーは、血液中のpHなどの中性pH条件下では比較的安定しているが、pH5.5または5.0未満では不安定である。例えば、ヒドラゾン、セミカルバゾン、チオセミカルバゾン、cis-アコニット酸アミド、オルトエステル、アセタール、ケタールなどを使用することができる。
【0214】
光解離性リンカーは、体表面および光にアクセスできる多くの体腔において有用である。さらに、赤外光は組織を透過することができる。
【0215】
ペプチダーゼ不安定性リンカーは、細胞内または細胞外の特定のペプチドを切断するために使用できる。一実施形態では、切断可能なリンカーは、穏やかな条件下で、すなわち細胞毒性剤の活性が影響を受けない細胞内の条件下で切断される。
【0216】
リンカーは、例えば、リソソームまたはエンドソームプロテアーゼを含むがこれらに限定されない細胞内ペプチダーゼまたはプロテアーゼ酵素によって切断される、ペプチジルリンカーであり得るか、またはそれを含み得る。典型的には、ペプチジルリンカーは、少なくとも2アミノ酸長または少なくとも3アミノ酸長である。切断剤には、カテプシンBおよびDならびにプラスミンが含まれ得、これらはすべて、ジペプチド薬物誘導体を加水分解して、標的細胞内で活性薬物の放出をもたらすことが公知である。例えば、癌性組織で高度に発現されるチオール依存性プロテアーゼカテプシンBによって切断可能なペプチジルリンカーを使用することができる(例えばPhe-LeuまたはGly-Phe-Leu-Glyリンカー)。特定の実施形態では、細胞内プロテアーゼによって切断可能なペプチジルリンカーは、バリン-シトルリン(Val-Cit;vc)リンカーまたはフェニルアラニン-リジン(Phe-Lys)リンカーである。治療薬の細胞内タンパク質分解性放出を使用することの1つの利点は、薬剤が複合体化されると、典型的には弱毒化されること、および典型的には複合体の血清安定性が高いことである。
【0217】
「個体」および「対象」という用語は、本明細書では互換的に使用される。これらは、疾患または障害(例えば癌)に罹患している可能性があるかまたは罹患しやすいが、疾患または障害を有していても有していなくてもよいヒト、非ヒト霊長動物または他の哺乳動物(例えばマウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマもしくは霊長動物)を指す。多くの実施形態では、個体はヒトである。特に明記されない限り、「個体」および「対象」という用語は特定の年齢を示すものではなく、したがって成人、高齢者、子供、および新生児を包含する。本発明の好ましい実施形態では、「個体」または「対象」は「患者」である。「患者」という用語は、本発明によれば、治療のための対象、特に罹患した対象を意味する。
【0218】
「疾患」という用語は、個体の身体に影響を及ぼす異常な状態を指す。疾患はしばしば、特定の症状および徴候に関連する医学的状態として解釈される。疾患は、感染症などの外部に由来する因子によって引き起こされ得るか、または自己免疫疾患などの内部機能障害によって引き起こされ得る。ヒトでは、「疾患」はしばしば、罹患した個体に疼痛、機能障害、苦痛、社会問題、もしくは死を引き起こすか、または個体と接触するものに対して同様の問題を引き起こす状態を指すためにより広く使用される。このより広い意味では、疾患は時に、損傷、無力、障害、症候群、感染、孤立した症状、逸脱した挙動、および構造と機能の非定型のバリエーションを含むが、他の状況および他の目的では、これらは区別可能なカテゴリーと見なされ得る。多くの疾患を患い、それと共に生活することは、人生観および人格を変える可能性があるため、疾患は通常、身体的だけでなく感情的にも個体に影響を及ぼす。本発明によれば、「疾患」という用語は、癌、特に本明細書に記載の癌の形態を含む。本明細書における癌または癌の特定の形態への言及には、その癌転移も含まれる。好ましい実施形態では、本出願に従って治療される疾患は、フィブロネクチンエクストラドメインBを発現する細胞を含む。
【0219】
「フィブロネクチンエクストラドメインBを発現する細胞が関与する疾患」または同様の表現は、本発明によれば、フィブロネクチンエクストラドメインBが罹患組織または器官の細胞によって発現されることを意味する。一実施形態では、罹患組織または器官の細胞によるフィブロネクチンエクストラドメインBの発現は、健常組織または器官の状態と比較して増加している。一実施形態では、発現は罹患組織でのみ見出され、健常組織での発現は抑制されている。本発明によれば、フィブロネクチンエクストラドメインBを発現する細胞が関与する疾患には、癌疾患が含まれる。さらに、本発明によれば、癌疾患は、好ましくは、細胞がフィブロネクチンエクストラドメインBを発現する疾患である。
【0220】
「癌疾患」または「癌」という用語は、典型的には無秩序な細胞増殖を特徴とする個体の生理学的状態を指すまたは表す。癌の例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が含まれるが、これらに限定されない。より具体的には、そのような癌の例には、骨癌、血液癌、肺癌、肝臓癌、膵臓癌、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚または眼内黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、結腸癌、乳癌、前立腺癌、子宮癌、性器および生殖器の癌、ホジキン病、食道癌、小腸癌、内分泌系の癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、副腎癌、軟部組織肉腫、膀胱癌、腎臓癌、腎細胞癌、腎盂癌、中枢神経系(CNS)の新生物、神経外胚葉癌、脊髄軸腫瘍、神経膠腫、髄膜腫、および下垂体腺腫が含まれるが、これらに限定されない。本発明による「癌」という用語は、癌転移も含む。好ましくは、「癌疾患」は、フィブロネクチンエクストラドメインBの発現または存在を特徴とする。
【0221】
「転移」とは、癌細胞がその元の部位から身体の別の部分に広がることを意味する。転移の形成は非常に複雑な過程であり、原発性腫瘍からの悪性細胞の分離、細胞外マトリックスの侵襲、内皮基底膜の貫通による体腔および血管への進入、次いで血液によって輸送された後、標的器官の浸潤に依存する。最後に、標的部位における新しい腫瘍の成長は血管新生に依存する。腫瘍転移は、腫瘍細胞または成分が残存し、転移能を発現し得るため、しばしば原発性腫瘍の除去後にも起こる。一実施形態では、本発明による「転移」という用語は、原発性腫瘍および所属リンパ節系から離れた転移に関する「遠隔転移」に関する。一実施形態では、本発明による「転移」という用語は、リンパ節転移に関する。
【0222】
本発明によれば、「腫瘍」または「腫瘍疾患」という用語は、好ましくは腫脹または病変を形成する細胞(新生細胞、腫瘍形成性細胞または腫瘍細胞と呼ばれる)の異常な成長を指す。「腫瘍細胞」とは、急速な制御されない細胞増殖によって成長し、新たな成長を開始させた刺激が停止した後も成長し続ける異常細胞を意味する。腫瘍は、構造機構および正常組織との機能的協調の部分的または完全な欠如を示し、通常、良性、前悪性または悪性のいずれかであり得る明確な組織塊を形成する。本発明によれば、「癌疾患」は、好ましくは「腫瘍疾患」である。しかしながら、一般に、「癌」および「腫瘍」という用語は、本明細書では互換的に使用される。
【0223】
好ましくは、本発明による腫瘍疾患は、癌疾患、すなわち悪性疾患であり、腫瘍細胞は癌細胞である。好ましくは、腫瘍疾患または癌疾患は、フィブロネクチンエクストラドメインBの存在を特徴とする。一実施形態では、癌は、フィブロネクチンエクストラドメインB陽性癌である。
【0224】
再発または回帰は、人が過去に罹患した状態に再び侵される場合に起こる。例えば、患者が腫瘍疾患に罹患したことがあり、前記疾患の治療を受けて成功し、前記疾患を再び発症した場合、前記の新たに発症した疾患は再発または回帰と見なされ得る。しかしながら、本発明によれば、腫瘍疾患の再発または回帰は、元の腫瘍疾患の部位でも起こり得るが、必ずしもそうとは限らない。腫瘍の再発または回帰には、腫瘍が元の腫瘍の部位とは異なる部位で発生する状況および元の腫瘍の部位で発生する状況も含まれる。好ましくは、患者が治療を受けた元の腫瘍は原発性腫瘍であり、元の腫瘍の部位とは異なる部位の腫瘍は二次性腫瘍または転移性腫瘍である。
【0225】
「治療」または「治療的処置」という用語は、個体の健康状態を改善する、および/または寿命を延長させる(増加させる)任意の治療に関する。前記治療は、個体における疾患を排除し、個体における疾患の発症を停止もしくは遅延させ、個体における疾患の発症を阻害もしくは遅延させ、個体における症状の頻度もしくは重症度を低下させ、および/または現在疾患を有しているかもしくは以前に有していたことがある個体における再発を減少させ得る。
【0226】
「予防的治療」または「予防的処置」という用語は、個体において疾患が発生するのを防ぐことを意図した任意の治療に関する。「予防的治療」または「予防的処置」という用語は、本明細書では互換的に使用される。例えば、癌のリスクがある対象は、癌を予防するための治療法の候補となる。
【0227】
「リスクがある」とは、一般集団と比較して、疾患、特に癌を発症する可能性が通常よりも高いと特定された対象を意味する。さらに、疾患、特に癌を有していたか、または現在有している対象は、引き続き疾患を発症する可能性があるため、疾患を発症するリスクが高い対象である。現在癌に罹患しているか、または罹患したことがある対象は、癌転移のリスクも高い。
【0228】
癌の(治療的)治療は、手術、化学療法、放射線療法および標的療法からなる群より選択され得る。
【0229】
本明細書で使用される「手術」という用語は、手術中の腫瘍の除去を含む。これは癌の一般的な治療である。外科医は、局所切除を使用して腫瘍を除去し得る。
【0230】
本明細書で使用される「化学療法」という用語は、好ましくは、細胞を死滅させるかまたは細胞の分裂を停止させることによって癌細胞の増殖を停止させるための、化学療法剤または化学療法剤の組合せの使用を指す。化学療法が経口摂取されるか、静脈または筋肉内に注射された場合、薬物は血流に入り、全身の癌細胞に到達することができる(全身化学療法)。化学療法が脳脊髄液、臓器、または腹部などの体腔に直接注入される場合、薬物は主にそれらの領域中の癌細胞に影響を及ぼす(局所化学療法)。
【0231】
本発明による化学療法剤には、細胞増殖抑制性化合物および細胞毒性化合物が含まれる。従来の化学療法剤は、ほとんどの癌細胞の主要な特性の1つである、急速に分裂する細胞を死滅させることによって作用する。これは、化学療法が、骨髄、消化管、および毛包における細胞などの通常の状況下で急速に分裂する細胞にも害を及ぼすことを意味する。これは、化学療法の最も一般的な副作用をもたらす。癌で異常発現されるタンパク質(フィブロネクチンエクストラドメインBなど)を標的とし、治療部分または当該薬剤に結合した薬剤を介して作用する薬剤は、化学療法の一形態と見なされ得る。しかしながら、最も厳密な意味では、本発明による「化学療法」という用語は標的療法を含まない。
【0232】
本発明によれば、「標的療法」という用語は、罹患していない器官、組織または細胞は標的化しないかまたはより少ない程度に標的化する一方で、癌組織または細胞などの罹患した器官、組織または細胞を選択的に標的化するために使用できる、任意の治療法に関する。罹患した器官、組織または細胞の標的化は、好ましくは、罹患細胞の死滅および/または増殖もしくは生存能力の低下をもたらす。そのような治療法には、i)特定の標的、例えばフィブロネクチンエクストラドメインBを標的とする治療部分を送達するために治療部分に結合された薬剤(例えば治療部分に結合されたフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤)、またはii)特定の標的、例えばフィブロネクチンエクストラドメインBを標的とし、罹患細胞の増殖、広がり、移動および/もしくは生存能力を損なう薬剤(例えば治療部分に結合したもしくは治療部分に結合していないフィブロネクチンエクストラドメインB結合剤)が含まれる。
【0233】
本発明に従って記載される医薬組成物および治療方法は、本明細書に記載される疾患を治療的に処置するまたは予防するために使用され得る。癌に対する作用を試験するために動物モデルを使用することが可能である。例えば、ヒトの癌細胞をマウスに導入して腫瘍を生成し得る。癌細胞への作用(例えば腫瘍サイズの縮小)を、動物に投与された薬剤の有効性の尺度として測定し得る。
【0234】
ペプチドは、それ自体公知の方法で投与され得る。一般に、1ng~1mg、好ましくは10ng~100μgのペプチドの用量が製剤化され、投与される。
【0235】
核酸(DNAおよびRNA)の投与が望ましい場合、1ng~0.1mgの用量を製剤化し、投与し得る。
【0236】
一実施形態では、核酸は、エクスビボ法によって、すなわち患者から細胞を取り出し、核酸を組み込むために前記細胞を遺伝子修飾し、改変された細胞を患者に再導入することによって投与される。これは一般に、遺伝子の機能的コピーをインビトロで患者の細胞に導入すること、および遺伝子改変された細胞を患者に再導入することを含む。遺伝子の機能的コピーは、遺伝子が遺伝的に改変された細胞において発現されることを可能にする調節エレメントの機能的制御下にある。トランスフェクションおよび形質導入の方法は当業者に公知である。
【0237】
本発明はまた、例えばウイルスおよび標的制御リポソームなどのベクターを使用することによってインビボで核酸を投与することを提供する。
【0238】
好ましい実施形態では、核酸を投与するためのウイルスまたはウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ワクシニアウイルスおよび弱毒化ポックスウイルスを含むポックスウイルス、セムリキ森林ウイルス、レトロウイルス、シンドビスウイルスならびにTyウイルス様粒子からなる群より選択される。アデノウイルスおよびレトロウイルスが特に好ましい。レトロウイルスは、典型的には複製欠損である(すなわち感染性粒子を生成することができない)。
【0239】
インビトロまたはインビボで核酸を細胞に導入する方法には、核酸のリン酸カルシウム沈殿物のトランスフェクション、DEAEと結合した核酸のトランスフェクション、目的の核酸を担持する上記ウイルスによるトランスフェクションまたは感染、リポソーム媒介トランスフェクションなどが含まれる。特定の実施形態では、核酸を特定の細胞に向かわせることが好ましい。そのような実施形態では、核酸を細胞に投与するために使用される担体(例えばレトロウイルスまたはリポソーム)は、結合した標的制御分子を有し得る。例えば、標的細胞上の表面膜タンパク質に特異的な抗体または標的細胞上の受容体のリガンドなどの分子を、核酸担体に組み込み得るかまた結合し得る。好ましい抗体は、腫瘍抗原に選択的に結合する抗体を含む。リポソームによる核酸の投与が望ましい場合、標的の制御および/または取込みを可能にするために、エンドサイトーシスに関連する表面膜タンパク質に結合するタンパク質をリポソーム製剤に組み込み得る。そのようなタンパク質は、特定の細胞型に特異的なキャプシドタンパク質またはその断片、内在化されるタンパク質に対する抗体、細胞内部位を指向するタンパク質などを含む。
【0240】
本発明の治療的に活性な化合物は、注射または注入を含む任意の従来の経路によって投与し得る。投与は、例えば経口的、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下または経皮的に実施し得る。投与は、局所的または全身的、好ましくは全身的であり得る。
【0241】
「全身投与」という用語は、薬剤が個体の体内に有意な量で広く分布するようになり、所望の効果を発現するような薬剤の投与を指す。例えば、薬剤は、血液中でその所望の効果を発現することができ、および/または血管系を介してその所望の作用部位に達する。典型的な全身投与経路には、薬剤を血管系に直接導入することによる投与、または経口、肺もしくは筋肉内投与が含まれ、この場合、薬剤は吸着され、血管系に入り、血液を介して1つ以上の所望の作用部位に運ばれる。
【0242】
本発明によれば、全身投与は非経口投与によることが好ましい。「非経口投与」という用語は、薬剤が腸管を通過しないような薬剤の投与を指す。「非経口投与」という用語には、静脈内投与、皮下投与、皮内投与または動脈内投与が含まれるが、これらに限定されない。
【0243】
本発明の医薬組成物は、好ましくは無菌であり、所望の反応または所望の効果を生じさせるために、本明細書に記載の薬剤および任意で本明細書で論じるさらなる薬剤の有効量を含む。
【0244】
医薬組成物は通常、均一な剤形で提供され、それ自体公知の方法で調製され得る。医薬組成物は、例えば、溶液または懸濁液の形態であり得る。
【0245】
医薬組成物は、塩、緩衝物質、防腐剤、担体、希釈剤および/または賦形剤を含んでもよく、それらのすべてが、好ましくは薬学的に許容される。「薬学的に許容される」という用語は、医薬組成物の活性成分の作用と相互作用しない物質の非毒性を指す。
【0246】
薬学的に許容されない塩は、薬学的に許容される塩を調製するために使用されてもよく、本発明に含まれる。この種の薬学的に許容される塩は、非限定的に、以下の酸:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸などから調製される塩を含む。薬学的に許容される塩は、ナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩などのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩としても調製され得る。
【0247】
医薬組成物での使用に適する緩衝物質には、塩中の酢酸、塩中のクエン酸、塩中のホウ酸、および塩中のリン酸が含まれる。
【0248】
医薬組成物での使用に適する防腐剤には、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、パラベンおよびチメロサールが含まれる。
【0249】
「担体」という用語は、適用を容易にする、増強するまたは可能にするために活性成分が組み合わされる、天然または合成の有機または無機成分を指す。本発明によれば、「担体」という用語はまた、患者への投与に適する1つ以上の適合性の固体もしくは液体充填剤、希釈剤または封入物質を含む。
【0250】
非経口投与のための可能な担体物質は、例えば滅菌水、リンゲル液、乳酸リンゲル液、滅菌塩化ナトリウム溶液、ポリアルキレングリコール、水素化ナフタレンおよび、特に、生体適合性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマーまたはポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンコポリマーである。
【0251】
注射製剤は、乳酸リンゲル液などの薬学的に許容される賦形剤を含み得る。
【0252】
本明細書で使用される場合「賦形剤」という用語は、医薬組成物中に存在し得る、例えば担体、結合剤、潤滑剤、増粘剤、界面活性剤、防腐剤、乳化剤、緩衝剤、香味剤、または着色剤などの活性成分ではないすべての物質を示すことが意図されている。
【0253】
本明細書に記載の薬剤および組成物は、有効量で投与される。「有効量」は、単独でまたはさらなる用量と共に、所望の反応または所望の効果を達成する量を指す。特定の疾患または特定の状態の治療の場合、所望の反応は、好ましくは疾患の経過の阻害に関する。これは、疾患の進行を遅くすること、および特に疾患の進行を妨げるまたは逆転させることを含む。疾患または状態の治療における所望の反応はまた、前記疾患または前記状態の発症の遅延または発症の防止であり得る。
【0254】
本明細書に記載の薬剤または組成物の有効量は、治療される状態、疾患の重症度、年齢、生理学的状態、サイズおよび体重を含む患者の個々のパラメータ、治療の期間、付随する治療の種類(存在する場合)、特定の投与経路ならびに同様の因子に依存する。したがって、本明細書に記載の薬剤の投与量は、そのような様々なパラメータに依存し得る。患者の反応が初期用量では不十分である場合、より高い用量(または異なる、より局所的な投与経路によって達成される効果的により高い用量)を使用し得る。
【0255】
本明細書に記載の薬剤および組成物は、本明細書に記載されるような様々な障害を治療または予防するために、例えばインビボで患者に投与することができる。好ましい患者には、本明細書に記載の薬剤および組成物を投与することによって矯正または改善することができる障害を有するヒト患者が含まれる。これには、フィブロネクチンエクストラドメインBの変化した発現パターンを特徴とする障害が含まれる。
【0256】
例えば、一実施形態では、本明細書に記載の薬剤は、癌疾患、例えばフィブロネクチンエクストラドメインBの存在を特徴とする本明細書に記載されるような癌疾患を有する患者を治療するために使用できる。
【0257】
本発明を以下の図面および実施例によって詳細に説明するが、これらは例示目的のみに使用されるものであり、限定することを意図しない。説明および実施例によって、同様に本発明に含まれるさらなる実施形態が当業者にアクセス可能である。
【実施例】
【0258】
本明細書で使用される技術および方法は、本明細書に記載されているか、またはそれ自体公知の方法で、例えばSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Edition(1989)Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.に記載されているように実施される。キットおよび試薬の使用を含むすべての方法は、特に指示されない限り、製造者の情報に従って実施される。
【0259】
実施例1:材料および方法
標的の発現、精製およびビオチン化
単一ドメイン(FN-B、Uniprot ID P02751、アイソフォーム7、アミノ酸E1265-T1355)としての、またはその周囲のIII型ドメイン(FN-67B89、アミノ酸G1080-E1455)に隣接する、組換えヒトフィブロネクチンEDBは、本試験における標的タンパク質としての役割を果たし、EDBを含まないドメイン6~9(FN-6789)を対照として使用した。すべての変異体を、c末端ヘキサヒスチジン(H6)タグを付けて大腸菌で発現させ、固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィ(IMAC)およびサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)によって精製した。このために、コドン最適化したDNA配列がThermo Fisher Scientificによって合成され、これをpET-21a発現ベクター(Novagen)にクローニングし、大腸菌BL21(DE3)細胞(Agilent)に導入した。タンパク質を、OD600が約0.7に達するまで、30℃、120rpmで、750mLスケールで発現させた。タンパク質産生を誘導するために、750μLの1M IPTGを主培養物に添加し、25℃、120rpmで一晩インキュベートした。細胞を回収し、10mLの平衡化緩衝液(20mM Tris-HCl pH8.0、10%グリセロール、500mM NaCl、10mMイミダゾール)に再懸濁し、ソニフィケーション(Branson Digital Sonifier 250)によって溶解した。上清を、AKTAprime(商標)plus system(GE Healthcare)および20分で10~500mMイミダゾールの線形勾配を使用して、1mL HisTrapカラム(GE Healthcare)でのIMACによって精製した。続いて、タンパク質をPBS(14mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na2HPO4、1.8mM KH2PO4、pH 7.5)に対して4℃で一晩透析し、HiLoad 26/600 Superdex 200pg(FN-67B89およびFN-6789の場合)または75pg(FN-Bの場合)カラム(GE Healthcare)を使用したサイズ排除クロマトグラフィによってさらに精製した。最終的に精製されたタンパク質を、SDS-PAGE、分析SEC、およびEDB特異的BC-1抗体(ab154210、Abcam)を使用したELISAによって分析した。タンパク質を、-20℃で5%マンニトールおよび5%トレハロースを添加したPBS中でアリコートとして保存した。
【0260】
FN-B、FN-67B89およびFN-6789タンパク質を、製造者の紹介に従って、EZ-Link Sulfo-NHS-LC-Biotin(Thermo Fisher Scientific)を使用して第一級NH2基によってビオチン化した。
【0261】
FN-67B89標的タンパク質の品質管理
発現され、精製されたFN-67B89タンパク質の品質を決定するために、96ウェル形式でタンパク質間相互作用を分析する手法としてELISAを使用した。最初の段階では、50mM Na2CO3、pH 9.4の被覆緩衝液を使用して、アルカリ性条件下での受動吸収によって、10μg/mLの標的タンパク質を100μLの容量でMaxisorb(商標)96ウェルプレートに被覆した。ELISAプレートの被覆を4℃で一晩実施した。被覆緩衝液を除去した後、プレートを300μLのPBS-Tで3回洗浄し、300μLのブロッキング緩衝液(PBS中3%BSA)を添加した。ブロッキングを室温で2時間実施した。一次インキュベーションのために、プレートを300μLのPBS-Tで3回洗浄し、PBS-Tで1:1000に希釈した100μLのBC-1抗体と共に4℃で1時間インキュベートした。PBSで1:5000に希釈したHRP結合抗マウス抗体(554002、BD Pharmingen(商標))を、100μL/ウェルのPBS-Tで3回洗浄した後に添加し、4℃で1時間インキュベートした。次に、プレートをPBS-Tで3回、PBSで3回洗浄した後、HRPを介したTMB基質の変換によって抗原-抗体複合体を検出した。100μLのTMB基質をウェルに添加し、試料中に存在する分析物の量に比例して青色を発現させた。50μLの0.2M HClを添加することによって発色を停止させ、450nmで比吸光度を測定した。
【0262】
ファージディスプレイによるEDB特異的リガンドの選択
EDB特異的シスチンノットミニタンパク質を、モモルディカ・コキネンシス(oMCoTI-II)からのトリプシン阻害剤IIの開鎖変異体に基づく2つの異なるコンビナトリアルライブラリを使用したファージディスプレイによって選択した。どちらのライブラリもM13ファージミド系に基づくが、適用されるランダム化スキームが異なる。MCopt1.0ライブラリでは、ループ1(6、9および12アミノ酸の長さの相違を含む)および3、ならびにN末端の2つのアミノ酸がランダム化されているが、MCopt2.0ライブラリは、10アミノ酸のみを有するループ1のランダム化によって構築された。さらに、MCopt1.0はメジャーコートタンパク質pVIIIによって提示され、MCopt2.0はpIIIによって提示されるため、ディスプレイの種類においても異なる。
【0263】
ストレプトアビジンで被覆した(SA)磁気ビーズに基づく合計3回のスクリーニングラウンドを各ライブラリで実施した。スクリーニングラウンドのために、2x50μLのDynabeads(登録商標)M-280ストレプトアビジン(Life Technologies)をそれぞれ2mLチューブに移し、1mL TBS-T(50mM Tris、150mM NaCl、0.1%Tween-20、pH7.4)で洗浄した。200μLのTBS(50mM Tris、150mM NaCl、pH7.4)中の100μgのビオチン化FN-Bを最初のチューブに添加し、200μLのTBSを標的なしで2番目のチューブに添加し(ファージの陰性選択)、ビーズを30rpmで20分間、ローリングミキサー上でインキュベートした。チューブを磁石に戻し、残りの溶液を廃棄し、ビーズをTBS-Tで2回洗浄した。ビーズを、4℃、30rpmで1時間、TBS中の2%粉乳(Carl Roth)でブロックした。ビオチン化FN-B被覆SAビーズをさらに30分間ブロックし、一方7×1013(1回目のラウンド)または7×1012(2回目および3回目のラウンド)ファージを1mLのTBS中2%粉乳中の被覆されていないSAビーズに添加し、室温、30rpmで30分間インキュベートした(陰性選択)。標的被覆ビーズのブロッキング溶液を廃棄し、ビーズをTBS-Tで2回洗浄し、陰性選択からのファージ上清を添加した。標的被覆ビーズをファージ懸濁液と共に室温および30rpmで1時間インキュベートした。続いて、結合していないファージを洗い流し、ビーズをTBS-Tで6回、TBSで2回洗浄した。結合したファージを溶出するために、洗浄したビーズに50μLの100mMトリメチルアミン(TEA)を添加して、pHシフト溶出を行った。TEAビーズ懸濁液を3000rpmで6分間インキュベートし、磁石に戻し、上清を、中和のために100μLの1M Tris/HCl pH7を含む新しいチューブに移した。2番目の溶出段階は、50μLの100mMグリシン(pH2)を標的被覆ビーズに添加し、混合物をサーモミキサーにおいて最大rpmで10分間インキュベートすることによって実施した。チューブを磁石に戻し、上清を最初の溶出からのTris/TEA混合物に移した。ファージ溶出液を使用して、ファージプール増幅のために指数関数的に増殖している大腸菌XL1-Blue(Agilent)を感染させた。0.5のOD600で1800μLの大腸菌XL1-Blue細胞を溶出液に添加し、撹拌せずに37℃で30分間および150rpmで撹拌しながら37℃で30分間インキュベートした。次に、感染したXL1-Blue細胞を、100μg/mLのカルベニシリンおよび0.4%グルコースを含む2つの大きな寒天プレートに分注し、37℃で一晩インキュベートした後、翌日にファージレスキューを実施した。
【0264】
ファージレスキューのために、プレートごとに4mLのLB培地を分配し、細胞スクレーパで細胞をこすり取った。50mLの培養物を、最終OD600が0.2になるように接種した。OD600が0.5になるまで細胞を増殖させ、ファージミドベクターからファージを産生するために0.5×1012 VCSM13ヘルパーファージ(Agilent)に感染させた。大腸菌XL1-Blue細胞を、撹拌せずに37℃で30分間インキュベートし、続いて150rpmで撹拌しながら37℃で30分間インキュベートした。細菌懸濁液を4500×gで10分間、室温で遠心分離し、上清を廃棄した。タンパク質産生の誘導のために細菌ペレットを50mL LB培地(100μg/mLカルベニシリン、25μg/mLカナマイシン、1mM IPTGを添加した)に取り、大腸菌ファージ産生培養物を30℃、250rpmで一晩増殖させた。4500×gで15分間、4℃で遠心分離して大腸菌細胞を回収した。10mLのPEG/NaCl溶液(25%(w/v)ポリエチレングリコール、15%(w/v)NaCl)を40mLのファージ含有上清に添加し、逆さにし、氷上に30分間置いた。15.000×g、4℃で20分間の遠心分離によってファージ粒子を沈殿させた。上清を廃棄し、ファージペレットを1600μLのTris/HCl(pH8.0)に取り、その後15.000×g、4℃で10分間遠心分離した。ファージ含有上清を再び400μLのPEG/NaClに添加し、氷上で20分間インキュベートした。2回目のPEG/NaCl沈殿後、チューブを15.000×g、4℃で15分間遠心分離した。ファージペレットを800μLのTris/HClに再懸濁し、最終精製段階で15分間65℃に加熱した。ファージ懸濁液を15.000×gで10分間、室温で遠心分離し、上清を採取し、2波長モードOD269-OD320を使用してファージ粒子濃度を測光法で決定した。ファージ濃度を、M13ファージのヌクレオチド含有量およびモル吸光係数に従って計算した(Barbas et al.2004)。
【0265】
選択されたシスチンノットミニタンパク質のヒット同定
同定工程では、PCRによってシスチンノットミニタンパク質配列を増幅するために、3回目のスクリーニングラウンドに由来する濃縮スクリーニングプールファージミドを調製した。チオレドキシンA融合変異体としてのシスチンノットミニタンパク質の発現を可能にするために、PCRインサートをpET-32a(Novagen)の誘導体である発現ベクターpET-32-LibExにクローニングした。このベクターは、細胞質での効率的なジスルフィド結合形成を可能にする大腸菌チオレドキシンA、迅速な精製のためのH6タグ、抗体による検出のためのsタグ、および融合タグを除去するためのトロンビン切断部位をコードするDNA配列を連続的な順序で担持する。シスチンノットミニタンパク質配列をコードするDNA断片を、トロンビン切断部位の下流で、固有のBam HIおよびKpn I制限部位を介してpET-32-LibExベクターに導入した。ベクターを熱ショックによってE.coli SHuffle(登録商標)T7 Express細胞(New England BioLabs)に導入し、細胞を選択寒天プレートに播種した。単一コロニーを採取し、配列決定し、1mLの自動誘導培地(MagicMedia(商標)、Thermo Fisher Scientific)での小規模発現のために96ウェルプレートに移した。タンパク質生産を30℃、220rpmで一晩行った。細胞を3000xgで15分間の遠心分離によって回収し、凍結融解サイクルと組み合わせて0.1mg/mLリゾチーム(Merck Millipore)および5U/mLベンゾナーゼ(Merck Millipore)を含む緩衝液(20mM Tris、2mM MgCl2、20mM NaCl、pH8)中でインキュベートして溶解し、80℃で10分間加熱した。細胞破片を除去するための最後の遠心分離(3000xg、15分、4℃)の後、E-PAGE(商標)および結合分析のために上清を収集した。
【0266】
E-PAGE(商標)(Life Technologies)を、生成され、熱精製されたタンパク質を定量化するために、96プローブを並行して同時に分析するためのハイスループットゲルシステムとして使用した。E-PAGE(商標)分析は、製造者の指示に従って実施した。
【0267】
タンパク質間相互作用を分析するための手法としてELISAを使用した。96ウェルマイクロタイタプレート(Nunc MaxiSorp(商標)、Thermo Fisher Scientific)の穴を、1μg FN-B、ウシ血清アルブミン(BSA、Eurobio)、乳粉、ストレプトアビジン(Sigma Aldrich)、T7-His-TEV-B(LD BioPharma)、FN-B(8-14)(R&D Systems)、リゾチーム、オボアルブミン(GE Healthcare Life Science)、アルドラーゼ(GE Healthcare Life Science)、または0.6μgの抗c-myc抗体(M4439、Sigma)で、4℃にて一晩被覆した。ウェルをPBS-T(0.1%(w/v)Tween-20を含む1xPBS)で3回洗浄し、PBSで希釈した1xカゼイン緩衝液(Sigma Aldrich)で室温にて2時間ブロックし、記載したように再度洗浄した。それぞれの熱精製融合タンパク質を含む20μLの上清を80μLのPBS-TまたはPBS-Tで希釈した200nMのMC-Myc-010融合タンパク質(抗c-myc抗体を含むウェル)に添加し、穴に適用し、4℃で1時間インキュベートした。PBS-Tで3回洗浄した後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)結合抗Sタグ抗体(ab18589またはab19324、Abcam)でそれぞれの変異体の結合を検出した。酵素反応を、TMBを発色基質として用いて測定し、約5分後に0.2M HClで停止させた。450nmでの吸光度の測定は、Infinite M200 PROマイクロプレートリーダ(Tecan)を使用して実施した。
【0268】
異なるプレート間で結合シグナルを比較するために、ELISAシグナルを内部プレート対照(c-myc結合)に対して正規化した。次に、正規化したFN-Bシグナルを正規化したBSAシグナルに参照して、選択されたシスチンノットミニタンパク質の結合能力を評価した。さらに、標的結合シグナルはタンパク質発現率と相関しており、ヒットを同定するためのランキング値が得られた。
【0269】
組換えシスチンノットミニタンパク質の生産
組換えタンパク質の生産を、それぞれのシスチンノットミニタンパク質配列をコードするpET-32-LibExベクターを担持するE.coli SHuffle(登録商標)T7 Express細胞を使用して、30℃、120rpmにて750mLスケールで実施した。培養物が約0.7のOD600に達した後、750μLの1M IPTGを添加し、25℃、120rpmで一晩インキュベートすることによって産生の誘導を達成した。大腸菌細胞を回収し、10mLの平衡化緩衝液に再懸濁し、ソニフィケーションによって溶解し、10分間80℃に加熱した。細胞破片を遠心分離(15.000×g、4℃で30分間)した後、AKTAprime(商標)plusシステムおよび20分で10~500mMイミダゾールの線形勾配を使用して、1mL HisTrapカラムでのIMACによって上清を精製した。シスチンノットミニタンパク質融合タンパク質含有画分を収集し、トロンビン切断緩衝液(20mM Tris、150mM NaCl、1.5mM CaCl2および5%(w/v)グリセロール、pH8.45)に対して4℃で一晩透析した。
【0270】
融合タンパク質は、ELISAベースのアッセイに直接使用するか、または例えばSPR分析のために、タグなしのミニタンパク質が必要な場合はさらに処理した。このために、融合タンパク質を1mgタンパク質あたり0.5Uのトロンビン(Sigma-Aldrich)で切断し、37℃で一晩インキュベートした。
【0271】
タンパク質断片の分離を、0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)を添加したH2O中の2~80%アセトニトリルの線形勾配を使用して、Agilent 1260 Infinity Quaternary LCシステム(Agilent)および3mL RESOURCE(商標)RPCカラム(GE Healthcare)を用いた逆相クロマトグラフィによって実施した。シスチンノットミニタンパク質を含むそれぞれの画分を、最終段階としてRVC 2-18-CD Plus SpeedVac(Christ)で凍結乾燥した。シスチンノットミニタンパク質の量を秤量によって決定し、ペプチドを-20℃で凍結乾燥形態で保存した。標準的なエレクトロスプレーイオン化プロトコルを使用したLCMS Single Quad G6130B System(Agilent Technologies)での質量分析によって同一性を検証した。
【0272】
選択されたMC-FN-010のアラニンスキャニング変異誘発
EDB結合に寄与するMC-FN-010内の残基を同定するために、アラニンスキャニング変異誘発を実施した。この方法は、定義された配列位置のアラニンに対するアミノ酸の体系的な置換と、生成された変異体のその後の結合分析を含む。アラニンスキャニングを生成するために、MC-FN-010誘導体の変異をPCRによって導入するか、またはGeneArt(商標)Strings(商標)断片(Thermo Fisher Scientific)の直接合成によってコード配列全体を構築した。それぞれのDNA断片を、固有のBamHIおよびKpnI制限部位を使用してpET-32-LibEx発現ベクターにクローニングし、E.coli SHuffle(登録商標)T7 Expressコンピテント細胞(New England BioLabs)に導入した。すべての変異をDNA塩基配列決定によって検証した。アラニンスキャニング変異誘発変異体を、5mLの選択的自己誘導培地を使用して24ウェル形式で発現させた。生産および融合タンパク質の精製は、96ウェル形式について上述したように実施したが、HisPur(商標)Ni-NTAスピンカラム(Thermo Fisher Scientific)を使用した上清のさらなる精製段階を含んだ。シスチンノット融合タンパク質の標的タンパク質およびオフターゲットタンパク質への結合能力および特異性は、上記のように抗体ベースのELISAアッセイを用いて実施した。
【0273】
表面プラズモン共鳴分光法
単量体および三量体のシスチンノットミニタンパク質リガンドの標的タンパク質への結合速度論を、PBS-Tをランニング緩衝液として用いるBiacore T-100装置(GE Healthcare Life Science)を使用して決定した。このために、ビオチン化FN-67B89タンパク質(200~300μg/mL)を、SAセンサチップ(GE Healthcare Life Science)のフローセルに結合することによって捕捉した。単量体リガンドを分析するために、最大750応答単位(RU)の固定化標的密度を適用し、三量体変異体については、最大400のRUを目指した。50~4000nMの範囲の濃度でマルチサイクル速度論的方法を使用して、単量体リガンドの結合分析を実施した。サイクルを90秒の結合期間で開始し、続いて420秒の解離期間と最後の再生段階を実施した。20μL/分の流量を適用して速度論的測定を実施した。三量体変異体は、同じ結合および解離条件下で分析したが、30μL/mLの一定流量で単一サイクルの速度論的測定モードを使用した。この場合、分析物の濃度は1.25nM~10nMであった。結合速度論および定常状態分析は、グローバル速度論適合モデル(1:1ラングミュア、Biacore T-100 Evaluation Software、GE Healthcare Life Science)を使用して計算した。
【0274】
免疫蛍光染色
免疫蛍光染色のために、凍結保存された腫瘍または脳の小片を5ミクロンの厚さの切片に切断し、氷冷アセトンで5分間固定し、風乾した。次に、3%BSAを含むPBS中で室温にて5分間、スライドをブロックした。EDBを染色するために、1μgのそれぞれのビオチン化シスチンノットミニタンパク質を、2.9μgのストレプトアビジン-Cy3複合体(Rockland Immunochemicals)と共に室温で30分間インキュベートした。次に、あらかじめ形成した複合体を腫瘍切片に添加し、37℃で30分間インキュベートした。その後、1%BSAを含むPBSでスライドを3回洗浄した。CD31染色を、1%BSAを含むPBSで1:100に希釈したラット抗マウスCD31 IgG抗体(クローン390、eBioscience)を使用して37℃で30分間実施した。PBSで3回洗浄した後、細胞核を、PBSで1:5000に希釈したHochst 33342(Thermo Fisher Scientific)を用いて室温で30分間染色した。スライドを上記のように再度洗浄し、封入剤(Dako)の薄層中で、カバーガラスで覆った。Zeiss Apotome顕微鏡(Carl Zeiss)で画像を捕捉し、ZENソフトウェア(Carl Zeiss)で分析した。
【0275】
ペプチド合成
三量体Alexa Fluor 680(AF680)結合リガンドおよびN末端ビオチン化ミニタンパク質をPepscanから購入した。得られたすべてのペプチド構築物は、100μgのアリコートとして-20℃で保存した。実験のために、すべてのペプチドを100μLのDPBS(Gibco)に溶解し、1μg/μLの濃度にした。すべての構築物について、ESI質量分析によって同一性を検証し、分析逆相クロマトグラフィ(Pepscan)によって純度を分析した。さらに、標的結合特性(FN-67B89への結合)および特異性(FN-6789への結合)を特徴付けるために、三量体をSDS-PAGEおよびSPRによって分析した。
【0276】
U-87 MG異種移植マウスモデル
ヒト神経膠芽腫U-87 MG(ATCC)細胞株を、無菌条件下に37℃、5%CO2および95%湿度で、10%FCSを添加したEMEM培地(ATCC)で培養した。
【0277】
マウスは、BioNTech AGの動物施設に収容し、すべての動物プロトコルはTierschutzkommision des Landesuntersuchungsamts Rheinland-Pfalzによって承認された。体重が約25~28gの範囲の4週齢のFox n1/nuマウスをJanvierから入手した。異種移植マウスの試験のために、7x10
6個のヒトU-87 MG細胞をFox n1/nuマウスの右側腹部に皮下注射し、腫瘍を約5週間増殖させた。楕円体式
【数1】
を用いて皮下腫瘍の大きさを決定した。腫瘍体積が100~1200mm
3のすべての動物を試験に含め、マウスを実験コホートに無作為に割り当てた。
【0278】
インビボおよびエクスビボイメージング
三量体構築物の生体内分布および腫瘍標的化の分析のために、所望の腫瘍サイズを担持するマウスを含めた。すべての三量体構築物を、最終容量100μlのPBS緩衝液(3.34nmol/マウス)中で眼球後静脈叢を介して静脈内注射した。マウス(各構築物についてn=3)を、615~665nmの励起範囲を使用し、695~770nmで発光シグナルをモニタリングして、IVIS Spectrum System(Perkin Elmer)で画像化した。画像化工程を注射の1時間後、2時間後または6時間後に実施し、安楽死させた後、腫瘍と特定の器官を切除し、画像化し、秤量し、さらなる分析のために凍結保存した。Living Image(登録商標)ソフトウェア(PerkinElmer)を使用して、目的の領域の蛍光強度を定量化した。GraphPad Prismで二元配置分散分析を使用した三重に反復したデータセットに基づいて統計的有意性を計算した。
【0279】
実施例2:EDB特異的リガンドのスクリーニングおよび選択
シスチンノットミニタンパク質は腫瘍イメージングの薬剤として理想的に適することが示されているため(Kimura et al.2009;Moore et al.2013;Miao et al.2009;Soroceanu et al.1998;Veiseh et al.2007,Nielsen et al.2010;Hackel et al.2013;Zhu et al.2014)、標的結合リガンドを選択するためのコンビナトリアルファージライブラリ構築の基礎として、モモルディカ・コキネンシストリプシン阻害剤-II(oMCoTI-II)の開鎖配列を使用した(Hernandez et al.2000)。第1のライブラリ(MCopt 1.0)は、最初のループにランダム化されたアミノ酸、3番目のループに散在する位置、および最初のシステインの前に2つの可変残基を有する配列を含む。シスチンノットミニタンパク質配列を、M13ファージのメジャーコートタンパク質(pVIII)に遺伝的に融合した。さらに、第2のライブラリ(MCopt 2.0)は、配列の最初のループでのランダム化、およびM13ファージのマイナーコートタンパク質(pIII)によるタンパク質の提示を用いて開発した。したがって、ライブラリは、ランダム化されたループ位置と配列の長さ、およびタンパク質提示価で区別され、これはリガンド選択の結果の変動性につながり得る。卵巣または滑膜細胞の間質を除くほとんどの正常組織には存在しないが、様々な腫瘍実体で高度に発現されることが公知である(Carnemolla et al.1989;Castellani et al.1994)フィブロネクチンエクストラドメインB(EDB)に対するシスチンノットミニタンパク質を同定するために、両方のライブラリを並行して適用した。
【0280】
その後のスクリーニングおよびヒット同定工程に適した標的および対照タンパク質を生成するために、単一のEDBドメイン(FN-B)、周囲のIII型ドメインに隣接するEDB(FN-67B89)、およびEDBなしのIII型ドメイン6~9(FN-6789)を組換え生産した。
図1Aに示すように、すべてのFN変異体の正しいタンパク質サイズを確認することができ、得られた純度は93%を上回った。EDBを含むフィブロネクチンとEDBを含まないフィブロネクチンを区別するモノクローナル抗体(BC-1)を使用することによって(Carnemolla et al.1992)、FN-67B89タンパク質の天然の折り畳みを評価した。さらに、C末端のH6タグをすべてのFN融合タンパク質で検出した(
図1B)。両方のファージライブラリをビオチン化FN-Bに対して3回の連続するラウンドでスクリーニングし、完了後、46個の単一クローンを配列決定した。MCopt 1.0スクリーニングでは、1つのシスチンノットミニタンパク質が強く濃縮され、プールの40%を占めた。さらに、他の2つのシスチンノットミニタンパク質クローンは4%と2%で濃縮された(
図2)。MCopt 2.0スクリーニングの場合は、3つの異なるシスチンノットミニタンパク質クローンが、全配列の13%、10%および2%の割合で濃縮された。興味深いことに、6つの増幅された配列のうち5つは、ループ1のc末端に共通のR-I/V-R-(L)モチーフを含む(
図2)。
【0281】
これらの所見に促されて、MCopt 1.0ライブラリのスクリーニングから得られた濃縮配列のFN-B結合能力を評価した。この目的のために、シスチンノットミニタンパク質を発現させ、96ウェルミニスケール形式でチオレドキシン、hisタグおよびsタグにC末端融合させた(Trx-シスチンノットミニタンパク質)。タンパク質のFN-BおよびBSAへの結合をELISAで検定し、さらに各クローンの発現率をE-PAGE(登録商標)分析によって決定した。得られたシグナル対ノイズ比と発現値に基づいて、FN-B相互作用の尺度として各候補物のランキングスコアを計算した。3つの異なるTrx-シスチンノットミニタンパク質変異体は、BSA対照と比較してFN-Bへの相互作用の増加を示し(
図3)、配列は、予想されたようにスクリーニングプールからの濃縮クローンに対応する。これら3つの候補物およびMCopt2.0スクリーニングからのR-I/V-R-(L)モチーフ含有クローンを、その後のより綿密な結合分析のために含めた。
【0282】
実施例3:濃縮されたシスチンノットミニタンパク質候補物の特異性分析
次に、社内で生産したEDB標的タンパク質(FN-BおよびFN-67B89)、ならびにオフターゲットタンパク質(FN-6789)および様々な対照タンパク質(粉乳、ストレプトアビジンおよびウシ血清アルブミン)を使用して、残りの6つのシスチンノットミニタンパク質の標的結合特異性に焦点を合わせた。エクストラドメインBを欠くフィブロネクチンは多くの異なる細胞型によって発現されるため、FN-6789は完全に対応するオフターゲットタンパク質である(Mao und Schwarzbauer 2005)。すべての候補物は、組換えFN-BおよびFN-67B89標的タンパク質に対して同等に高い妥当なEDB標的結合を示す(
図4)。共通のR-I/V-R-(L)モチーフに基づいて選択した変異体(MCopt 1.0-2/-3およびMCopt 2.0-1/-2/-3)は、中程度から低いオフターゲットおよび対照タンパク質シグナルを示した。MCopt 1.0-2およびMCopt 1.0-3はMCopt 1.0ヒット同定で既に同定されたが、MCopt 2.0-1、-2および-3は、それらの共通のモチーフに基づいてMCopt 2.0プールからのみ同定され、したがって以前のFN-B標的結合では検定されなかった。しかしながら、R-I/V-R-(L)モチーフを含まないMCopt 1.0-1は、オフターゲットFN-6789および粉乳を除くすべての対照タンパク質への高い相互作用が観察されたため、特異性評価ができなかった。これらのデータは、観察されたアミノ酸モチーフがEDB結合に関連することを強く示す。
【0283】
次に、市販のT7-TEV-B(LD BioPharma)、T7-TEV N末端隣接EDBドメイン、およびFN-B(8-14)(R&D Systems)、C末端ドメイン8~13およびドメイン14の1/2を有するEDBも含めることにより、5つの有望な候補物のEDB特異性をさらに評価した。この場合もやはり、結合シグナルは、試験したすべてのEDB含有標的タンパク質について同等に高く、オフターゲットシグナルは比較的低かった(
図5)。使用したすべての標的タンパク質がEDBを異なる形式で、すなわちEDB単独で(FN-B)、人工N末端構築物に隣接して(T7-His-TEV)、天然のC末端およびN末端III型ドメインに隣接して(FN-67B89)、ならびにその近接する天然のC末端III型ドメインに隣接して(FN-B(8-14))提示するため、観察された結合活性は実際にEDBセンターピースに特異的であると結論付けることができる。
【0284】
最後に、
図6に示すように、異なる受容体飽和濃度を有する、FN-B、FN-67B89およびFN-B(8-14)に対する4つのR-I/V-R-(L)モチーフ含有候補物(MCopt 1.0-2/-3およびMCopt 2.0-1/-2)の用量依存的結合データを生成した。FN-6789オフターゲットに対して観察されるバックグラウンドシグナルは、一般に、すべてのEDB含有標的タンパク質よりもはるかに低く、FN-6789とEDBのフィブロネクチンIII型ドメインが明確に区別されていることを示す。以前に特異性ELISAで既に見られたように、クローンMCopt 2.0-3は、FN-6789オフターゲットに対する高度な非特異的結合を示す。クローンMCopt 2.0-3は、EDB標的結合において重要な機能を有すると考えられる共通のR-I/V-R-(L)モチーフを共有するが、ランダム化されたシスチンノットミニタンパク質ループ1の他の残基は、例えば疎水性相互作用に起因して、非特異的結合を促進する可能性がある。
【0285】
次に、造影剤としてのシスチンノットミニタンパク質の意図される用途のために、表面プラズモン共鳴(SPR)分析によってタグなしのタンパク質の結合能力を検討した。驚くべきことに、MCopt 1.0-3のみが、試験した50~1000nMの濃度範囲で5つの候補物すべてにわたってFN-67B89標的タンパク質に対する強い結合を明らかにした(データは示していない)。したがって、以下ではMC-FN-010と呼ばれる、MCopt 1.0-3を、さらなる分析と光学イメージングプローブの開発のために選択した。
【0286】
実施例4:MC-FN-010結合部位のマッピング
異なる選択されたシスチンノットミニタンパク質におけるアミノ酸モチーフR-I/V-R-(L)についての以前の所見は、既にEDB結合への高い配列寄与を示唆したが、その後、その関連性を実験的により詳細に評価した。MC-FN-010標的配列における単一アラニン置換を取り上げ、合計で14の誘導体構築物を得た(
図7Aに示すように、MC-FN-011からMC-FN-0114まで連続的に番号を付している)。すべての構築物を単一ドメインFN-Bに対して試験した。予想されたように、配列の先頭にアラニン交換を有する7つの構築物は、依然として強い標的相互作用を示し、これらの位置がEDB結合にとって重要ではないことを示唆した。対照的に、共通のモチーフ位置に交換を有する4つの構築物は、結合の喪失を明らかにした。5番目のループでのさらなるアラニン置換は、標的相互作用の減少をもたらし、その関連性も示した(
図7B)。これらの結果は、
図7Cに要約されているように、最初のループ(RIRL)の4つのアミノ酸残基および5番目のループのアルギニン残基が、FN-67B89への結合相互作用に直接影響するか、またはミニタンパク質の立体配座に間接的な影響を及ぼすことを確認する。
【0287】
実施例5:腫瘍組織に対する親MC-FN-010ミニタンパク質の特異性分析
さらに、微小環境に天然のEDBタンパク質を含むU-87 MG腫瘍異種移植片切片を使用して、細胞状況内での親MC-FN-010の特異性を検討した。ヒト神経膠芽腫腫瘍は、血管構造にフィブロネクチンEDBアイソフォームを保有することが公知である(Mariani et al.1997)。アラニンスキャニング変異誘発に基づいて、3つの位置(PMCTQR
ANRI
AACRRDSDCTGACICRGNGYCG)にアラニン置換を有する陰性対照構築物(MC-FN-0115)を生成した。免疫蛍光イメージング実験のために、ビオチン化形式としてのMC-FN-010およびMC-FN-0115をCy3標識ストレプトアビジンで四量体化した。四量体化されたMC-FN-010-bioは、血管マーカと見なされる、内皮細胞の遍在的に発現される表面タンパク質、CD31に対するAlexa Fluor 647結合抗体で確認されたように、血管周囲の領域をほぼ単独で装飾した(
図8)。Cy3とAlexa Fluor 647の重ね合わせ画像は、血管に関連する両方の蛍光シグナルの共局在を示す。さらに、周りの血管周囲領域における四量体化MC-FN-010の局在を検出することができた。対照的に、陰性対照構築物MC-FN-0115で染色されたU-87 MG腫瘍切片は、蛍光シグナルを全く示さなかった(
図8)。四量体化されたMC-FN-010およびMC-FN-0115の蛍光シグナルは、正常なマウスの脳切片では観察されなかった(
図12)。
【0288】
実施例6:FN-67B89へのシスチンノットミニタンパク質の結合および親和性
標的タンパク質を診断ツールとして使用する前に、それらを造影剤と特異的に結合させる必要がある(Spicer und Davis 2014)。リード候補物MC-FN-010は、ループ1にリジンを含むが、これは第一級アミンへの選択的薬剤結合のためには好ましくない。以前の分析に基づいて、このアミノ酸はEDB結合に積極的に寄与しないため、誘導体構築物MC-FN-016を2番目の候補物として選択する。Trx-MC-FN-016のFN-67B89への結合が、親Trx-MC-FN-010と同等のシグナルで用量依存的に観察された(
図9)。対照的に、FN-6789への全体的なバックグラウンドシグナルは、継続的に比較的低かった。両方のシスチンノットミニタンパク質候補物は、FN-6789との相互作用を伴わずにFN-67B89を排他的に標的とし、フィブロネクチンは複数の細胞型で広く発現されるため、これは重要である(Pankov und Yamada 2002)。ビオチン化FN-67B89に対するタグなしのMC-FN-010およびMC-FN-016の親和性をSPR分析によって検定した。両方のシスチンノットミニタンパク質の結合速度論は、速いオフ速度で1桁のマイクロモル範囲の低い結合親和性を明らかにした(
図10A)。
【0289】
実施例7:EDB特異的光学イメージングプローブの生成および評価
より強い結合強度を達成するために、リガンドを、潜在的なアビディティ効果を利用するオキシムライゲーションによって化学的に三量体化した。さらに、マウスへの投与後の分布と局在の観察を可能にするために、分子を近赤外蛍光色素であるAlexa Fluor 680でタグ付けした。3つの三量体構築物すべてを化学合成した後、正しいサイズと純度を管理するために様々なアッセイを実施した。SDS-PAGEおよび逆相クロマトグラフィ分析は、すべての構築物で重要な著明点を示さなかった(データは示していない)。特に、オリゴマー化戦略は、両方のEDB結合シスチンノットミニタンパク質(AF680-(MC-FN-010)
3およびAF680-(MC-FN-016)
3)の親和性を大幅に改善し、3桁のピコモル親和定数および単量体変異体と比較して著しく緩やかなオフ速度をもたらした(
図10B)。
【0290】
以前に、他のEDB標的分子が神経膠芽腫を画像化するための診断試薬として適用されることが示された(Albrecht et al.2016;Mohammadgholi et al.2017)。この目的のために、本発明人のEDB結合シスチンノットミニタンパク質がヒト神経膠芽腫を保有するFox n1/nuマウスを標的とする可能性に焦点を合わせた。3.34nmol AF680-(MC-FN-010)
3、AF680-(MC-FN-016)
3および陰性対照AF680-(MC-FN-0115)
3の静脈内(r.o.)注射後に、全身および器官のエクスビボイメージングを実施した。
図11Aは、陰性対照AF680-(MC-FN-0115)
3と比較したAF680-(MC-FN-010)
3およびAF680-(MC-FN-016)
3に起因する強い腫瘍シグナルを伴う蛍光画像を提示する。すべての三量体構築物は、初期の時間枠で肝臓、胆嚢および腎臓でも検出することができた。6時間後、胆嚢を除く様々な器官のシグナルが減少したが、重要な点として、AF680-(MC-FN-010)
3およびAF680-(MC-FN-016)
3から生じた腫瘍シグナルは残存した。さらに、器官の蛍光シグナルは、
図11Bに示すようにそれぞれの重量と相関していた。親AF680-(MC-FN-010)
3は、すべての時点で陰性対照と比較して有意に強い腫瘍シグナルを有していた。ただし、AF680-(MC-FN-016)
3はAF680-(MC-FN-010)
3よりも低いシグナルを示したが、それでも陰性対照AF680-(MC-FN-0115)
3よりは高いシグナルを示した。
【0291】
実施例8:マウス異種移植腫瘍として増殖させたヒトU-87 MG神経膠芽腫細胞株に由来する組織切片へのMC-FN-010の特異的結合。
凍結保存された腫瘍または脳の小片を6ミクロンの厚さの切片に切断し、氷冷アセトンで5分間固定し、風乾した。次に、3%BSAを含むPBS中で室温にて5分間、スライドをブロックした。次いで、EDBの染色のために、0.1μgのAF680-(MC-FN-010)
3および1%BSAを含むPBSで1:100に希釈した抗マウスCD31抗体(RB-10333-P1、Thermo Fisher)を腫瘍切片に添加し、37℃で30分間インキュベートした。その後、1%BSAを含むPBSでスライドを3回洗浄した。一次抗マウスCD31抗体のCD31染色を、37℃で30分間、1%BSAを含むPBSで1:400に希釈した二次抗ウサギIgG-Cy3抗体(111-165-003、Jackson ImmunoResearch)で検出した。PBSで3回洗浄した後、細胞核を、PBSで1:5000に希釈したHochst 33342(Thermo Fisher Scientific)を用いて室温で30分間染色した。スライドを上記のように再度洗浄し、封入剤(Dako)の薄層中で、カバーガラスで覆った。Zeiss Apotome顕微鏡(Carl Zeiss)で画像を捕捉し、ZENソフトウェア(Carl Zeiss)で分析した。
図13は、ヒト神経膠芽腫異種移植腫瘍および正常な脳組織試料での三量体構築物(AF680-(MC-FN-010)
3および対照AF680-(MC-FN-0115)
3)によるさらなる免疫蛍光染色を示す。AF680-(MC-FN-010)
3は、血管マーカCD31で局在化されたU-87 MG切片の腫瘍血管周辺の領域を染色したが、対照AF680-(MC-FN-0115)
3は全く染色を示さなかった。正常なマウス脳切片ではAF680-(MC-FN-010)
3による染色は観察されず、腫瘍血管系の特異性を示した。
【0292】
実施例9:選択されたシスチンノットミニタンパク質による特異的腫瘍標的化。
実施例1(U-87 MG異種移植マウスモデル)に記載されているように、U-87 MG異種移植マウスモデルを生成した。
【0293】
インビボ競合実験のために、所望の腫瘍サイズ(約200mm
3)を有するマウスに、競合物質として3倍または5倍モル過剰の非標識三量体プローブ(DOTA-(MC-FN-016)
3)をAF680標識三量体(3.34nmol)と共に眼球後静脈叢を介して静脈内注射した。マウスを、615~665nmの励起範囲を使用し、695~770nmで発光シグナルをモニタリングして、IVIS Spectrum System(Perkin Elmer)で画像化した。マウス全体の画像化工程を注射の1時間後、2時間後または6時間後に実施した。6時間後、マウスを安楽死させ、腫瘍と特定の器官を切除し、画像化し、秤量し、さらなる分析のために凍結保存した。目的の領域の蛍光強度を、Living Image(登録商標)ソフトウェア(PerkinElmer)を使用して定量化した。これらのマウスの腫瘍蛍光強度の動態を、インビボおよびエクスビボイメージングによって、競合物質なしで標識AF680-(MC-FN-016)
3で処置したマウスのものと比較した。測定されたFN-67B89への見かけの結合定数はAF680-(MC-FN-016)
3と同等であったため、DOTA-(MC-FN-016)
3は競合実験に良好に適していた(
図15)。競合物質で処置したマウスにおいてインビボで測定された腫瘍シグナルは、各時点で実質的に減少した(
図14A)。先の実験(
図11)と同様に、陰性対照ペプチドAF680-(MC-FN-0115)
3は腫瘍の濃縮を示さなかった。6時間後、マウスを安楽死させ、腫瘍と器官を切除し、エクスビボ蛍光イメージング分析(
図14B)を実施した。測定された蛍光強度を腫瘍重量に対して正規化した。非標識三量体による競合が確認され、シグナル減少の競合物質用量への依存性が観察された(
図14C)。標識三量体の30分前に競合物質を注射すると、同時注射と比較してより有効であることが認められた。
【0294】
本発明人の試験は、組換えEDBに対するファージライブラリからのシスチンノットミニタンパク質(MC-FN-010)の選択を説明している。MC-FN-010およびその誘導体MC-FN-016を、腫瘍イメージングアプローチのための分子足場として操作した。両方のEDB結合分子は、腎臓を除いて、U87-MG異種移植腫瘍における強い蓄積および低いバックグラウンドシグナルを示した。これらの結果は、腫瘍診断技術のための薬剤としてのMC-FN-010およびMC-FN-016の高い可能性を実証する。
【配列表】