(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】ダム導水路の構築方法及びダム導水路
(51)【国際特許分類】
E02B 7/00 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
E02B7/00 Z
(21)【出願番号】P 2021000765
(22)【出願日】2021-01-06
【審査請求日】2023-08-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 国土交通省四国地方整備局那賀川河川事務所開発工務課が、「月刊 ダム日本、第907号(2020年5月号)、第37~45頁(長安口ダム改造事業について(全編))」(発行所:一般財団法人日本ダム協会、発行日:令和2年5月10日)にて、また、一般財団法人日本ダム協会が、「月刊 ダム日本、第907号(2020年5月号)、第1~7頁(写真で見る長安口ダム)」にて、安田和弘、後閑淳司、藤澤敦、大木洋和及び川中勲が発明した「ダム導水路の構築方法及びダム導水路」について公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 川中勲、大木洋和、藤田博史、天野秀介及び吉田等が、ウェブサイト(掲載アドレス:https://confit.atlas.jp/guide/event-img/jsce2020/VI-126/public/pdf?type=in、掲載年月日:令和2年8月1日)で公開された「令和2年度土木学会全国大会第75回年次学術講演会講演概要(VI-88 プレキャストブロックを用いたダム減勢工側壁の構築)」にて、「ダム導水路の構築方法及びダム導水路」について公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 久藤勝明、三野和志、坂東良太及び清水弘順が、「土木技術の総合情報誌 土木技術資料、第62巻、第9号、第40~43頁(那賀川流域の洪水被害軽減を目的とした長安口ダム造成事業の課題と対策)」(発行所:一般財団法人土木研究センター、発行日:令和2年9月1日)にて、「ダム導水路の構築方法及びダム導水路」について公開した。
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】後閑 淳司
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 敦
(72)【発明者】
【氏名】大木 洋和
(72)【発明者】
【氏名】川中 勲
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-228346(JP,A)
【文献】特開2005-344349(JP,A)
【文献】特開平8-109629(JP,A)
【文献】特開2003-119790(JP,A)
【文献】特開2011-032688(JP,A)
【文献】特開平11-210004(JP,A)
【文献】特開2002-194727(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/14
5/02
7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
堤体からの放流水を前記堤体の下流に導くダム導水路の構築方法であって、
固化材を含む改良土を前記堤体よりも下流の地山斜面に沿って盛立てて改良土構造体を造成する改良土構造体造成工程と、
プレキャスト製のコンクリートブロックを配置し前記コンクリートブロックの前面によって導水路領域を画定するコンクリートブロック配置工程と、
前記改良土構造体と前記コンクリートブロックの背面との間に有スランプのコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、
を備える、
ダム導水路の構築方法。
【請求項2】
前記改良土構造体造成工程では、前記改良土の敷均しと締固めとを複数回繰り返して前記改良土構造体を造成する、
請求項1に記載のダム導水路の構築方法。
【請求項3】
前記コンクリートブロック配置工程では、前記コンクリートブロックを前記導水路領域における前記放流水の流れ方向に複数配置し、
前記コンクリート打設工程の後、縦目地用枠を前記流れ方向に隣り合う前記コンクリートブロックの間に挿入した状態で、前記流れ方向に隣り合う前記コンクリートブロックの間に縦目地材を注入する、
請求項1又は2に記載のダム導水路の構築方法。
【請求項4】
前記改良土構造体造成工程は、第1改良土構造体を造成する第1改良土構造体造成工程と、前記第1改良土構造体の上に第2改良土構造体を造成する第2改良土構造体造成工程と、を含み、
前記コンクリート打設工程は、第2改良土構造体造成工程の前に、前記コンクリートブロックの背面と前記第1改良土構造体との間に前記コンクリートを打設して第1コンクリート構造体を形成することを含む、
請求項1から3のいずれか1項に記載のダム導水路の構築方法。
【請求項5】
前記第2改良土構造体造成工程では、前記第1改良土構造体と前記第1コンクリート構造体とを跨いで前記第2改良土構造体を造成する、
請求項4に記載のダム導水路の構築方法。
【請求項6】
前記コンクリートブロックの背面にはアンカー筋が設けられており、
前記コンクリート打設工程では、前記アンカー筋を前記コンクリートに埋設する、
請求項1から5のいずれか1項に記載のダム導水路の構築方法。
【請求項7】
前記コンクリートブロック配置工程は、第1コンクリートブロックを配置する第1コンクリートブロック配置工程と、前記第1コンクリートブロックの上に第2コンクリートブロックを配置する第2コンクリートブロック配置工程と、を含み、
前記コンクリート打設工程は、前記第1コンクリートブロックの背面と前記改良土構造体との間に前記コンクリートを打設する第1コンクリート打設工程と、前記第2コンクリートブロックの背面と前記改良土構造体との間に第2コンクリートを打設する第2コンクリート打設工程と、を含み、
前記第1コンクリート打設工程の後に、前記第2コンクリートブロックの背面に前記アンカー筋を設け、前記第2コンクリート打設工程にて、前記第2コンクリートブロックの背面に設けられた前記アンカー筋を前記コンクリートに埋設する、
請求項6に記載のダム導水路の構築方法。
【請求項8】
前記コンクリートブロック配置工程は、第1コンクリートブロックを配置する第1コンクリートブロック配置工程と、前記第1コンクリートブロックの上に第2コンクリートブロックを配置する第2コンクリートブロック配置工程と、を含み、
前記第2コンクリートブロックの背面に設けられた注入孔から、前記第1コンクリートブロックと前記第2コンクリートブロックとの間に横目地材を注入する、
請求項1から6のいずれか1項に記載のダム導水路の構築方法。
【請求項9】
前記コンクリートブロック配置工程は、第1コンクリートブロックを配置する第1コンクリートブロック配置工程と、前記第1コンクリートブロックの上に第2コンクリートブロックを配置する第2コンクリートブロック配置工程と、を含み、
前記第1コンクリートブロックの背面と前記改良土構造体との間に前記コンクリートを打設した後に、前記第1コンクリートブロックと前記第2コンクリートブロックとの間に横目地材を注入する、
請求項1から6のいずれか1項に記載のダム導水路の構築方法。
【請求項10】
前記第2コンクリートブロック配置工程では、前記第1コンクリートブロックの上面又は前記第2コンクリートブロックの下面に横目地用枠を設けた状態で、前記第2コンクリートブロックを前記第1コンクリートブロックの上に配置し、前記横目地用枠を用いて前記第1コンクリートブロックと前記第2コンクリートブロックとの間に横目地材注入領域を画定する、
請求項8又は9に記載のダム導水路の構築方法。
【請求項11】
堤体からの放流水を前記堤体の下流に導くダム導水路であって、
固化材を含む改良土を前記ダムよりも下流の地山斜面に沿って盛立てて造成された改良土構造体と、
前面を有し、前記前面によって導水路領域を画定するように配置されたプレキャスト製のコンクリートブロックと、
前記改良土構造体と前記コンクリートブロックとの間に打設されたコンクリートと、を備える、
ダム導水路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダム導水路の構築方法及びダム導水路に関する。
【背景技術】
【0002】
既設のダムにおける堤体の下流には、堤体から放流された水を堤体の下流に導くダム導水路が構築されることがある。特許文献1には、コンクリートで構築されたダム導水路が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたダム導水路の壁面を形成するためには、コンクリートの打設領域を定める型枠を仮設する必要がある。既設のダムでは、降雨による放流がダム導水路の構築中にも行われ、放流された水が構築中のダム導水路を流れることがある。ダム導水路を構築するために仮設された型枠は、放流された水によって流されるおそれがあるため、放流のたびに型枠の撤去及び仮設を行わなければならない。その結果、ダム導水路の構築に要する期間が長くなる。
【0005】
本発明は、ダム導水路の構築に要する期間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、堤体からの放流水を堤体の下流に導くダム導水路の構築方法であって、固化材を含む改良土を堤体よりも下流の地山斜面に沿って盛立てて改良土構造体を造成する改良土構造体造成工程と、プレキャスト製のコンクリートブロックを配置しコンクリートブロックの前面によって導水路領域を画定するコンクリートブロック配置工程と、改良土構造体とコンクリートブロックの背面との間に有スランプのコンクリートを打設するコンクリート打設工程と、を備える。
【0007】
また、本発明は、堤体からの放流水を堤体の下流に導くダム導水路であって、固化材を含む改良土をダムよりも下流の地山斜面に沿って盛立てて造成された改良土構造体と、前面を有し、前面によって導水路領域を画定するように配置されたプレキャスト製のコンクリートブロックと、改良土構造体とコンクリートブロックとの間に打設されたコンクリートと、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ダム導水路の構築に要する期間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るダム導水路を備えるダム構造物の概略を示す斜視図である。
【
図2】(a)は、
図1に示す減勢工の平面図であり、(b)は、
図2(a)に示すIIB-IIB線に沿う断面図である。
【
図3】(a)は、
図2(b)に示すIIIA部の拡大断面図であり、(b)は、
図3(a)に示すIIIB-IIIB線に沿う断面図である。
【
図4】(a)は、コンクリートブロックの背面図であり、(b)は、コンクリートブロックの上面図であり、(c)は、コンクリートブロックの底面図である。
【
図5】上下方向に隣り合うコンクリートブロックの断面を、
図4(a)に示すV-V線に対応して示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るダム導水路の構築方法を説明するための図であり、第1コンクリート打設工程までの手順を示す。
【
図7】本発明の実施形態に係るダム導水路の構築方法を説明するための図であり、り、第2コンクリート打設工程までの手順を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係るダム導水路及びその構築方法について、図面を参照して説明する。
【0011】
まず、ダム導水路を備えるダム構造物1の概略について、
図1を参照して説明する。
図1は、ダム構造物1の概略を示す斜視図である。
図1において、上流から下流に向かってダム構造物1を見て、右側の岸を「右岸」とし、左側の岸を「左岸」とする。
【0012】
図1に示すように、ダム構造物1は、水を堰止める堤体2と、堤体2の下流に設けられた減勢工3と、を備えている。堤体2は、開閉可能に形成されたクレストゲート2a,2bを備えており、クレストゲート2a,2bの開放によりダム貯水(図示省略)が堤体2から放流される。減勢工3は、副ダム3aを備えており、堤体2からの放流水(図示省略)の勢いを副ダム3aにより弱めた状態で放流水を下流に導く。堤体2におけるクレストゲート2aの下側には導流部4aが設けられており、クレストゲート2aからの放流水は、導流部4aにより減勢工3に導かれる。堤体2と減勢工3との間の地山には、導流壁4bが設けられており、クレストゲート2bからの放流水は、導流壁4bによっても減勢工3に導かれる。つまり、減勢工3、導流部4a及び導流壁4bは、堤体2からの放流水を堤体2の下流に導くダム導水路である。
【0013】
減勢工3及び導流壁4bは、既設の堤体2の下流にコンクリートで構築される。
【0014】
非常時には、堤体2からの放流は、減勢工3及び導流壁4bの構築中にも行われることがあり、放流された水が構築中の減勢工3及び導流壁4bを流れる。放流水が流れる導水路領域100を画定する壁面を形成するためにコンクリート打設用の型枠を仮設する場合には、仮設の型枠が放流水によって流されるおそれがあるため、放流が見込まれるたびに型枠の撤去及び仮設を行わなければならない。その結果、減勢工3及び導流壁4bの構築に要する期間が長くなる。
【0015】
本実施形態では、プレキャスト製のコンクリートブロック10(
図2参照)によって導水路領域100を画定する。つまり、減勢工3及び導流壁4bの壁面は、コンクリートブロック10によって形成される。したがって、減勢工3及び導流壁4bにおける壁面の形成に型枠の仮設が不要になり、減勢工3及び導流壁4bの構築に要する期間を短縮することができる。
【0016】
以下、減勢工3の構造及び構築方法について、
図2から
図7を参照して説明する。導流壁4bの構造及び構築方法は、減勢工3の構造及び構築方法と略同じであるため、その詳細は省略する。
【0017】
図2(a)は、減勢工3の平面図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示すIIB-IIB線に沿う断面図である。
図2(a)及び(b)に示すように、減勢工3は、地山における川底に形成された床部20と、床部20上に地山の斜面に沿って造成された改良土構造体30と、前面10aが導水路領域100を画定するプレキャスト製の複数のコンクリートブロック10と、改良土構造体30とコンクリートブロック10との間に設けられたコンクリート構造体40と、を備えている。
【0018】
床部20は、川底に有スランプのコンクリート、又はゼロスランプのコンクリートを打設することにより形成される。床部20となるコンクリートの打設領域は、地山の斜面によって画定される。
【0019】
なお、「有スランプのコンクリート」とは、スランプ値が3cm以上のコンクリートであり、「ゼロスランプのコンクリート」とは、スランプ値が3cm未満のコンクリートである。「スランプ値」は、固化前のセメント系材料の軟らかさ、流動性を示す値であり、スランプ値が大きいほど軟らかいこと、流動性が高いことを意味する。スランプ値は、例えばJIS(日本工業規格)A 1101:2005に規定されているスランプ試験方法により測定される。
【0020】
改良土構造体30は、改良土を盛立てることによって造成される。改良土は、例えば、地山の掘削により生じる現地発生土に固化材を加えて製造されるCSG(Cemented Sand and Gravel)材料である。固化材は、例えばセメントや石灰等である。未固化状態における改良土の流動性は、有スランプのコンクリートに比して低く、型枠を設けずに改良土を所望の形状に造成することが可能であり、改良土構造体30の造成に仮設の型枠は不要である。
【0021】
改良土構造体30には、地山の斜面と間隔を空けて法面30aが形成されている。改良土構造体30の法面30aと地山の斜面との間には、埋戻し地盤50が形成される。埋戻し地盤50は、現地発生土又は別に用意した土砂で改良土構造体30の法面30aと地山の斜面との間を埋戻すことによって形成される。
【0022】
改良土構造体30の上には、埋戻し地盤50における現地発生土又は土砂の流出を堰止めるコンクリート製の堰体60が形成される。堰体60は、導水路領域100における放流水の流れ方向に延びており、埋戻し地盤50における現地発生土又は土砂が導水路領域100に流出するのを防止し、一方で、導水路領域100における放流水が埋戻し地盤50に流出することを防止する。
【0023】
複数のコンクリートブロック10は、導水路領域100における放流水の流れ方向に並べられると共に上下方向に並べられる。コンクリートブロック10の前面10aによって、導水路領域100が画定されている。つまり、コンクリートブロック10によって減勢工3の壁面が形成されている。したがって、減勢工3における壁面の形成に型枠の仮設が不要である。
【0024】
コンクリート構造体40となるコンクリートのスランプ値は、改良土構造体30となる改良土のスランプ値よりも高い。コンクリート構造体40は、有スランプのコンクリートを改良土構造体30とコンクリートブロック10との間に打設することにより形成される。つまり、コンクリート構造体40となるコンクリートの打設領域は、コンクリートブロック10と改良土構造体30とにより画定される。そのため、コンクリート構造体40の形成に仮設の型枠が不要である。
【0025】
このように、改良土構造体30の造成、減勢工3における壁面の形成、及びコンクリート構造体40の形成に仮設の型枠が不要である。したがって、減勢工3の構築に要する期間を短縮することができる。
【0026】
また、コンクリート構造体40となるコンクリートの打設時には、改良土構造体30とコンクリートブロック10との間にコンクリートが行き渡る。したがって、コンクリート構造体40を介してコンクリートブロック10を改良土構造体30と一体化することができ、減勢工3の耐久性を向上させることができる。
【0027】
有スランプのコンクリートは、現地発生土ではなく、所望の品質を確保できるように分別、分級選別された骨材と水と固化材と所定の割合で混練することによって製造され、改良土よりも高価である。減勢工3では、コンクリートブロック10と地山の斜面との間の全体にコンクリート構造体40を形成するのではなく、コンクリートブロック10から間隔を空けて改良土構造体30を造成し、コンクリートブロック10と改良土構造体30との間にコンクリート構造体40を形成している。そのため、有スランプのコンクリートの量を減らすことができ、減勢工3の構築コストを低減することができる。
【0028】
図3(a)は、
図2(b)に示すIIIA部の拡大断面図である。
図3(b)は、
図3(a)に示すIIIB-IIIB線に沿う断面図である。
【0029】
図3(a)に示すように、改良土構造体30は、上下方向に複数造成され、コンクリート構造体40は、上下方向に複数形成される。改良土構造体30の各々の高さ、及びコンクリート構造体40の各々の高さは、コンクリートブロック10の高さと略同じである。
【0030】
以下において、床部20の直上に造成される改良土構造体30を「改良土構造体31」とし、改良土構造体31の直上に造成される改良土構造体30を「改良土構造体32」とし、改良土構造体31,32を総称する場合には、「改良土構造体30」を用いる。床部20の直上に配置されるコンクリートブロック10を「コンクリートブロック11」とし、コンクリートブロック11の直上に配置されるコンクリートブロック10を「コンクリートブロック12」とし、コンクリートブロック11,12を称する場合には、「コンクリートブロック10」を用いる。同様に、床部20の直上に形成されるコンクリート構造体40を「コンクリート構造体41」とし、コンクリート構造体41の直上に形成されるコンクリート構造体40を「コンクリート構造体42」とし、コンクリート構造体41,42を総称する場合には、「コンクリート構造体40」を用いる。
【0031】
改良土構造体30の中腹には小段30bが形成され、小段30bの下側及び上側に法面30c,30dがそれぞれ形成されている。改良土構造体30の上段部の改良土構造体32は、改良土構造体30の下段部の改良土構造体31と下段部のコンクリート構造体41とを跨いで造成される。そのため、上段部の改良土構造体32の一部は、下段部のコンクリート構造体41の上方に配置される。したがって、上段部のコンクリートブロック12と上段部の改良土構造体32の間隔を狭めることができ、上段部のコンクリート構造体42となるコンクリートの量をより減らすことができる。これにより、減勢工3の構築コストをより低減することができる。
【0032】
改良土構造体31とコンクリート構造体41との間には、モルタル層80が形成される。モルタル層80は、改良土構造体31及びコンクリート構造体41よりも高い付着性を有する。そのため、改良土構造体31とコンクリート構造体41とを強固に一体化することができる。したがって、減勢工3の耐久性をより向上させることができる。
【0033】
モルタル層80は、床部20とコンクリート構造体41との間にも形成される。したがって、床部20とコンクリート構造体41とを強固に一体化することができる。
【0034】
なお、モルタル層80は、床部20とコンクリート構造体41との間にのみ、又は改良土構造体31とコンクリート構造体41との間にのみ形成される形態であってもよい。
【0035】
また、モルタル層80は、コンクリート構造体41とコンクリート構造体42との間、及び改良土構造体32とコンクリート構造体42との間にも形成される。したがって、コンクリート構造体41とコンクリート構造体42とを強固に一体化することができると共に改良土構造体32とコンクリート構造体42とを強固に一体化することができる。
【0036】
なお、モルタル層80は、コンクリート構造体41とコンクリート構造体42との間にのみ、又は改良土構造体32とコンクリート構造体42との間にのみ形成される形態であってもよい。
【0037】
コンクリートブロック10には、前面10aとは反対側の背面10bから突出するアンカー筋71が設けられる。アンカー筋71は、コンクリート構造体40に埋設される。そのため、コンクリートブロック10は、アンカー筋71を介してコンクリート構造体40に結合される。したがって、コンクリート構造体40を介してコンクリートブロック10を改良土構造体30により強固に一体化することができ、減勢工3の耐久性をより向上させることができる。
【0038】
上下方向に隣り合うコンクリートブロック11,12の間には、横目地材72が注入される。横目地材72は、例えば無収縮モルタルである。無収縮モルタルは上下方向に隣り合うコンクリートブロック11,12の間に注入された後に、経時的に硬化し、一体化する。したがって、減勢工3の耐久性をより向上させることができる。また、横目地材72により、コンクリートブロック11,12の間への水の流入を防止することができる。なお、横目地材72は、床部20とコンクリートブロック11との間にも注入される。
【0039】
コンクリートブロック11,12の間には、横目地材72の注入領域を画定する横目地用枠73が設けられる。横目地用枠73は、例えば止水性を有するゴム製や樹脂製である。横目地用枠73によって、横目地材72がコンクリートブロック11,12の間から流出するのを防止することができる。なお、横目地用枠73は、床部20とコンクリートブロック11との間にも設けられる。
【0040】
図3(b)に示すように、流れ方向に隣り合うコンクリートブロック10の間には、縦目地材74が注入される。縦目地材74は、横目地材72と同様に、例えば無収縮モルタルである。無収縮モルタルは流れ方向に隣り合うコンクリートブロック10の間に注入された後に、経時的に硬化し、一体化する。したがって、減勢工3の耐久性をより向上させることができる。また、縦目地材74により、流れ方向に隣り合うコンクリートブロック10の間への水の流入を防止することができる。
【0041】
流れ方向に隣り合うコンクリートブロック10には、縦目地材74の注入領域を画定する縦目地用枠75,76が互いに間隔を空けて設けられる。縦目地用枠75は、流れ方向に隣り合うコンクリートブロック10の間に設けられ、導水路領域100への縦目地材74の流出を防止する。縦目地用枠76は、流れ方向に隣り合うコンクリートブロック10の背面10bどうしの間に渡って設けられ、縦目地材74が隣り合うコンクリートブロック10の間から流出するのを防止したりコンクリート構造体40となる打設された、まだ固まらないコンクリートが隣り合うコンクリートブロック10の間に流入したりするのを防止する。縦目地用枠75,76は、例えば止水性を有する、ゴム製、樹脂製であり、形状は板状である。
【0042】
図4(a)は、コンクリートブロック10の背面図であり、
図4(b)は、コンクリートブロック10の上面図であり、
図4(c)は、コンクリートブロック10の底面図である。
【0043】
図4(a)、(b)及び(c)に示すように、コンクリートブロック10は、前面10aと背面10bとを接続する上面10c、下面10d、右側面10e及び左側面10fを有する。上面10c及び下面10dは、互いに略平行であり、右側面10e及び左側面10fは、互いに略平行である。上面10c及び下面10dには、横目地用枠73(
図3(a)参照)を配置するための溝10g,10hが形成されており、右側面10e及び左側面10fには、縦目地用枠75(
図3(b)参照)を配置するための溝10i,10jが形成されている。
【0044】
背面10bは、前面10aと略平行に延びる平行面10kと、平行面10kから右側面10e及び左側面10fまでそれぞれ延びる傾斜面10m,10nと、を有する。傾斜面10m,10nは、平行面10kから右側面10e及び左側面10fにそれぞれ向かうにつれ間隔が広がるように平行面10kに対して傾斜している。
【0045】
コンクリートブロック10には、横目地材72(
図3(a)参照)用の注入孔77と戻り孔78とが設けられる。注入孔77の開口77a,77bは、傾斜面10m及び下面10dにそれぞれ形成される。戻り孔78の開口78a,78bは、傾斜面10n及び下面10dにそれぞれ形成される。つまり、注入孔77は、傾斜面10mと下面10dとの間を延びており、戻り孔78は、傾斜面10nと下面10dとの間を延びている。注入孔77の開口77aは、戻り孔78の開口78aよりも上方に位置している。注入孔77の開口77b及び戻り孔78の開口78bは、溝10hによって囲まれた領域に位置している。
【0046】
図5は、上下方向に隣り合うコンクリートブロック11,12の断面を、
図4(a)に示すV-V線に対応して示す図である。注入孔77及び戻り孔78は、コンクリートブロック11,12の間に横目地材72を注入する際に用いられる。具体的には、
図5に示すように、コンクリートブロック11の上にコンクリートブロック11を配置した状態で、コンクリートブロック12における注入孔77の開口77aに横目地材72を流し込む。横目地材72は、コンクリートブロック12における注入孔77の開口77bからコンクリートブロック11,12の間に注入される。コンクリートブロック11,12の間に横目地材72が行き渡ると、横目地材72は、コンクリートブロック12における戻り孔78の開口78bに流入し、開口78aから流出する。つまり、横目地材72が戻り孔78から流出するまで横目地材72を注入孔77に流し込むことにより、コンクリートブロック11,12の間に横目地材72を行き渡らせることができる。
【0047】
図示を省略するが、コンクリートブロック11の注入孔77及び戻り孔78は、床部20とコンクリートブロック11との間に横目地材72を注入する際に用いられる。
【0048】
次に、減勢工3の構築方法について、
図6及び
図7を参照して説明する。
図6及び
図7は、減勢工3の構築方法を説明するための図である。以下では、床部20を構築した後、
図3に示すコンクリートブロック12の高さまで減勢工3を構築する手順を主に説明する。
【0049】
減勢工3の構築方法では、まず、
図6(a)に示すように、床部20上に地山斜面(
図2(b)参照)に沿って、コンクリートブロック10の高さと略同じ高さの改良土構造体31を盛立てて造成する(第1改良土造成工程)。
【0050】
改良土は、振動が加えられて締固められることにより初期に一定の強度を発現する。第1改良土造成工程では、不図示のブルドーザ等を用いて改良土を敷均した後、不図示の転圧ローラ又は振動ローラと、不図示の振動板と、を用いて改良土の外部から振動を付加して改良土を締固める。転圧ローラ又は振動ローラは、敷均された改良土における略水平な面の締固めに用いられ、振動板は、敷均された改良土における法面の締固めに用いられる。
【0051】
改良土を締固めることができる範囲は限られており、所定の高さ(例えば75cm)を超える高さで改良土を敷均して締固める場合には、改良土が十分に締固められないおそれがある。そこで、本実施形態では、所定の高さ以下での改良土の敷均しと、改良土の締固めと、を複数回繰り返すことにより、改良土構造体31を造成する。そのため、改良土構造体31となる改良土を十分に締固めることができ、改良土構造体31の強度を高めることができる。
【0052】
図6(a)に示す例では、ブルドーザによる敷均し3層3回と敷き均された3層の最上部において振動ローラによる締固め1回との敷均し・締固め工程を2回(2段)繰り返しており、敷均し・締固め工程を1回行い、1段目の造成が完了した後の改良土構造体31の中腹に小段30bが形成されている。すなわち、まず、1段目の敷均しと締固めとして、改良土を所定の高さで敷均し、1段目の頂部30fを転圧ローラ又は振動ローラを用いて締固めると共に1段目の法面30cを振動板を用いて締固める。次に、2段目の敷均しと締固めとして、1段目の頂部30fの一部が小段30bとなるように1段目の上に改良土を所定の高さで敷均し、2段目の頂部30eを転圧ローラ又は振動ローラを用いて締固めると共に2段目の法面30dを振動板を用いて締固める。このように、改良土構造体31は、2段に分けて造成される
【0053】
次に、
図6(b)に示すように、コンクリートブロック11を床部20の上に配置し、前面10aによって導水路領域100を画定する(第1コンクリートブロック配置工程)。具体的には、床部20の上に横目地用枠73を配置し、横目地用枠73の上にコンクリートブロック11を配置する。これにより、床部20とコンクリートブロック11との間に横目地用枠73により横目地材注入領域が画定される。その後、コンクリートブロック11における注入孔77(
図4(b)及び(c)参照)に横目地材72を流し込む。これにより、床部20とコンクリートブロック11の間に横目地材72が注入される。横目地材72がコンクリートブロック11における戻り孔78(
図4(b)及び(c)参照)から流出したところで、横目地材72の流し込みを停止する。
【0054】
なお、第1コンクリートブロック配置工程を行った後、第1改良土造成工程を行ってもよい。また、第1コンクリートブロック配置工程において、横目地用枠73をコンクリートブロック11の下面10dに配置した状態でコンクリートブロック11を床部20の上に配置してもよい。
【0055】
次に、
図6(c)に示すように、床部20の上面における改良土構造体31とコンクリートブロック11との間の領域、並びに、改良土構造体31の法面30c、小段30b及び法面30dにモルタルを敷均し、モルタル層80を形成する。その後、コンクリートブロック11の背面10bにアンカー筋71を設ける。
【0056】
なお、コンクリートブロック11の背面10bにアンカー筋71を設けた後、モルタル層80を形成してもよい。また、コンクリートブロック11を床部20の上に配置する前にアンカー筋71をコンクリートブロック11の背面10bに設けてもよい。
【0057】
次に、
図6(d)に示すように、改良土構造体31とコンクリートブロック11との間に有スランプのコンクリートを打設して、コンクリート構造体41を形成する(第1コンクリート打設工程)。有スランプのコンクリートは、改良土構造体31とコンクリートブロック11との間に行き渡った状態で有スランプのコンクリートの内部から振動を付加して締固め、その後、経時的に硬化する。したがって、コンクリート構造体41を介してコンクリートブロック11を改良土構造体31と一体化することができ、減勢工3の耐久性を向上させることができる。
【0058】
コンクリート構造体41となるコンクリートの打設により、アンカー筋71はコンクリートに埋設される。そのため、コンクリートブロック11は、アンカー筋71を介してコンクリート構造体41に結合される。したがって、コンクリート構造体41を介してコンクリートブロック11を改良土構造体31により強固に一体化することができ、減勢工3の耐久性をより向上させることができる。
【0059】
図示を省略するが、コンクリートを改良土構造体31とコンクリートブロック11との間に打設する前に、縦目地用枠76(
図3(b)参照)を流れ方向に隣り合うコンクリートブロック11に渡って設けておく。これにより、コンクリートが流れ方向に隣り合うコンクリートブロック11の間に流入するのを防止することができる。
【0060】
コンクリートを改良土構造体31とコンクリートブロック11との間に打設した後、流れ方向に隣り合うコンクリートブロック11の間に縦目地用枠75(
図3(b)参照)を挿入した状態で、縦目地材74(
図3(b)参照)を流れ方向に隣り合うコンクリートブロック11の間に上方から注入する。縦目地用枠75の挿入は、コンクリートを改良土構造体31とコンクリートブロック11との間に打設する前であってもよいし後でもよい。
【0061】
縦目地材74の注入を、コンクリート構造体41を形成する前に行ってもよい。コンクリート構造体41を形成した後に縦目地材74を注入する場合には、コンクリート構造体41を注入作業の足場として用いることができる。したがって、注入作業のための足場を別途仮設する必要がなく、減勢工3の構築に要する期間を短縮することができる。
【0062】
次に、
図7(a)に示すように、改良土構造体31の上に改良土を地山斜面(
図2参照)に沿って盛立てて改良土構造体32を造成する(第2改良土構造体造成工程)。具体的には、第1改良土構造体造成工程と同様に、所定の高さ以下での改良土の敷均しと、改良土の締固めと、を複数回(本実施形態では2回、2段)繰り返すことにより、改良土構造体32を造成する。
【0063】
第2改良土構造体造成工程は、第1コンクリート打設工程の後に行われる。そのため、改良土構造体32を造成する作業の足場としてコンクリート構造体41を用いることができる。したがって、造成作業のための足場を別途仮設する必要がなく、減勢工3の構築に要する期間を短縮することができる。
【0064】
第2改良土構造体造成工程では、改良土構造体31とコンクリート構造体41とを跨いで改良土構造体32を造成する。そのため、改良土構造体32の法面30cは、コンクリート構造体41の上方に配置される。したがって、後述する工程にて配置されるコンクリートブロック12と改良土構造体32の間隔を狭めることができ、後述する工程にてコンクリートブロック12と改良土構造体32との間に打設されるコンクリートの量を減らすことができる。これにより、減勢工3の構築コストをより低減することができる。
【0065】
次に、
図7(b)に示すように、コンクリートブロック12をコンクリートブロック11の上に配置し、前面10aによって導水路領域100を画定する(第2コンクリートブロック配置工程)。具体的には、コンクリートブロック11の上に横目地用枠73を配置し、横目地用枠73の上にコンクリートブロック12を配置する。これにより、コンクリートブロック11とコンクリートブロック12との間に横目地用枠73により横目地材注入領域が画定される。その後、コンクリートブロック12における注入孔77(
図4(b)及び(c)参照)に横目地材72を流し込む。これにより、コンクリートブロック11とコンクリートブロック12の間に横目地材72が注入される。横目地材72がコンクリートブロック12における戻り孔78(
図4(b)及び(c)参照)から流出したところで、横目地材72の流し込みを停止する。
【0066】
コンクリートブロック12の背面10bに設けられた注入孔77から、コンクリートブロック11とコンクリートブロック12との間に横目地材72を注入するため、注入作業の足場はコンクリートブロック12と改良土構造体32との間にあればよく、導水路領域100への足場の仮設が不要である。したがって、減勢工3の構築に要する期間を短縮することができる。
【0067】
また、横目地材72を、第1コンクリート打設工程の後にコンクリートブロック11とコンクリートブロック12の間に注入するため、コンクリート構造体41を注入作業の足場として用いることができる。したがって、注入作業のための足場を別途仮設する必要がなく、減勢工3の構築に要する期間を短縮することができる。
【0068】
なお、第2コンクリートブロック配置工程を行った後、第2改良土造成工程を行ってもよい。また、第1コンクリートブロック配置工程において、横目地用枠73をコンクリートブロック12の下面10dに配置した状態でコンクリートブロック12をコンクリートブロック11の上に配置してもよい。コンクリートブロック11を床部20の上に配置する前に横目地用枠73をコンクリートブロック11の上面10cに設けてもよい。
【0069】
次に、
図7(c)に示すように、コンクリート構造体41の上面、並びに、改良土構造体32の法面30c、小段30b及び法面30dにモルタルを敷均し、モルタル層80を形成する。その後、コンクリートブロック12の背面10bにアンカー筋71を設ける。
【0070】
コンクリートブロック12へのアンカー筋71の設置は、第1コンクリート打設工程の後に行われる。そのため、アンカー筋71をコンクリートブロック12に設ける作業の足場としてコンクリート構造体41を用いることができる。したがって、アンカー筋71をコンクリートブロック12に設ける作業のための足場を別途仮設する必要がなく、減勢工3の構築に要する期間を短縮することができる。
【0071】
なお、コンクリートブロック12の背面10bにアンカー筋71を設けた後、モルタル層80を形成してもよい。また、コンクリートブロック12をコンクリートブロック11の上に配置する前にアンカー筋71をコンクリートブロック12の背面10bに設けてもよい。
【0072】
次に、改良土構造体32とコンクリートブロック12との間に有スランプのコンクリートを打設して、コンクリート構造体42を形成する(第2コンクリート打設工程)。コンクリートの固化により、コンクリート構造体42を介してコンクリートブロック12と改良土構造体32とが一体化する。コンクリートブロック12に設けられたアンカー筋71はコンクリートに埋設される。
【0073】
図示を省略するが、コンクリートを改良土構造体32とコンクリートブロック12との間に打設する前に、縦目地用枠76(
図3(b)参照)を流れ方向に隣り合うコンクリートブロック12に渡って設けておく。これにより、コンクリートが流れ方向に隣り合うコンクリートブロック12の間に流入するのを防止することができる。
【0074】
コンクリートを改良土構造体32とコンクリートブロック12との間に打設した後、流れ方向に隣り合うコンクリートブロック12の間に縦目地用枠75(
図3(b)参照)を挿入した状態で、縦目地材74(
図3(b)参照)を流れ方向に隣り合うコンクリートブロック11の間に上方から注入する。縦目地材74の注入はコンクリートを改良土構造体32とコンクリートブロック12との間に打設する前に行ってもよい。
【0075】
以上により、コンクリートブロック12の高さまでの減勢工3の構築が完了する。以降、改良土構造体30の造成、コンクリートブロック10の配置及びコンクリートの打設を繰り返すことにより、減勢工3を所望の高さまで構築することができる。
【0076】
以上の実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0077】
本実施形態では、プレキャスト製のコンクリートブロック10を配置し、前面10aによって導水路領域100を画定する。つまり、減勢工3の壁面は、コンクリートブロック10によって形成される。したがって、減勢工3における壁面の形成に型枠の仮設が不要になり、減勢工3の構築に要する期間を短縮することができる。
【0078】
また、有スランプのコンクリートを改良土構造体30とコンクリートブロック10との間に打設する。そのため、有スランプのコンクリートは、改良土構造体30とコンクリートブロック10との間に行き渡った状態で固化する。したがって、コンクリート構造体40を介してコンクリートブロック10を改良土構造体30と一体化することができ、減勢工3の耐久性を向上させることができる。
【0079】
また、改良土構造体造成工程では、改良土の敷均しと締固めとを複数回繰り返して改良土構造体30を造成する。そのため、改良土構造体30となる改良土を十分に締固めることができ、改良土構造体30の強度を高めることができる。
【0080】
また、コンクリート打設工程の後、縦目地用枠75を流れ方向に隣り合うコンクリートブロック10の間に挿入した状態で、流れ方向に隣り合うコンクリートブロック10の間に縦目地材74を注入する。そのため、注入作業をコンクリート構造体41上で行うことができると共に、導水路領域100への縦目地材74の流出を防止することができる。
【0081】
また、コンクリート打設工程は、第2改良土構造体造成工程の前に、コンクリートブロック11の背面10bと改良土構造体31との間にコンクリートを打設してコンクリート構造体41を形成する第1コンクリート打設工程を含む。そのため、改良土構造体32を造成する作業の足場として、コンクリート構造体41を用いることができる。したがって、改良土構造体32を造成する作業のための足場を別途仮設する必要がなく、減勢工3の構築に要する期間を短縮することができる。
【0082】
また、第2改良土構造体造成工程では、改良土構造体31とコンクリート構造体41とを跨いで改良土構造体32を造成する。そのため、改良土構造体32の一部は、コンクリート構造体41の上方に配置される。したがって、コンクリートブロック12と改良土構造体32の間隔を狭めることができ、コンクリート構造体42となるコンクリートの量を減らすことができる。これにより、減勢工3の構築コストを低減することができる。
【0083】
また、第1及び第2コンクリート打設工程では、コンクリートブロック11,12に設けられたアンカー筋71をコンクリートに埋設する。そのため、コンクリートブロック11,12は、アンカー筋71を介してコンクリート構造体41,42にそれぞれ結合される。したがって、コンクリート構造体41、42を介してコンクリートブロック11,12を改良土構造体31,32により強固に一体化することができ、減勢工3の耐久性をより向上させることができる。
【0084】
また、第1コンクリート打設工程の後に、コンクリートブロック12の背面10bにアンカー筋71を設け、第2コンクリート打設工程にて、コンクリートブロック12の背面10bに設けられたアンカー筋71をコンクリートに埋設する。そのため、アンカー筋71をコンクリートブロック12に設ける作業の足場として、コンクリート構造体41を用いることができる。したがって、アンカー筋71をコンクリートブロック12に設ける作業のための足場を別途仮設する必要がなく、減勢工3の構築に要する期間を短縮することができる。
【0085】
また、コンクリートブロック12の背面10bに設けられた注入孔77から、コンクリートブロック11とコンクリートブロック12との間に横目地材72を注入する。そのため、注入作業の足場はコンクリートブロック12と改良土構造体32との間にあればよく、導水路領域100への足場の仮設が不要である。したがって、減勢工3の構築に要する期間を短縮することができる。
【0086】
また、コンクリートブロック11の背面10bと改良土構造体31との間にコンクリートを打設しコンクリート構造体41を形成した後に、コンクリートブロック11とコンクリートブロック12との間に横目地材72を注入する。そのため、コンクリート構造体41を、注入作業の足場として用いることができる。したがって、注入作業のための足場を別途仮設する必要がなく、減勢工3の構築に要する期間を短縮することができる。
【0087】
また、第2コンクリートブロック配置工程では、コンクリートブロック11の上面10cに横目地用枠73を設けた状態で、コンクリートブロック12をコンクリートブロック11の上に配置し、横目地用枠73を用いてコンクリートブロック11とコンクリートブロック12との間に横目地材注入領域を画定する。そのため、横目地用枠73によって、横目地材72がコンクリートブロック11,12の間から流出するのを防止することができると共にコンクリートブロック11,12の間に水が流入するのを防止することができる。
【0088】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0089】
2・・・堤体
3・・・減勢工(ダム導水路)
10,11,12・・・コンクリートブロック
10a・・・前面
10b・・・背面
30,31,32・・・改良土構造体
40,41,42・・・コンクリート構造体
71・・・アンカー筋
72・・・横目地材
73・・・横目地用枠
74・・・縦目地材
75・・・縦目地用枠
76・・・縦目地用枠
77・・・注入孔
100・・・導水路領域