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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20240405BHJP
   F16K 47/02 20060101ALI20240405BHJP
   F25B 41/35 20210101ALI20240405BHJP
【FI】
F16K31/04 Z
F16K47/02 D
F25B41/35
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021050464
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148693
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2022-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100182545
【弁理士】
【氏名又は名称】神谷 雪恵
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100213757
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 詩人
(72)【発明者】
【氏名】小池 亮司
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-504253(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101520107(CN,A)
【文献】実開平02-064710(JP,U)
【文献】特開昭62-159869(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102679016(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102192358(CN,A)
【文献】特開2020-056472(JP,A)
【文献】特開2017-211034(JP,A)
【文献】特開2022-094879(JP,A)
【文献】国際公開第2015/063854(WO,A1)
【文献】特開2006-097901(JP,A)
【文献】特開2005-061694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/00 - 1/54
F16K 31/00 - 31/05
F16K 31/06 - 31/11
F16K 39/00 - 51/02
F25B 41/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁ハウジングと、前記弁ハウジングに設けられた主弁室の主弁ポートの開度を変更する主弁体と、前記主弁体に設けられた副弁室の副弁ポートの開度を変更する副弁体と、前記副弁体を軸方向に進退駆動する駆動部と、を備え、前記主弁室と前記副弁室とを連通させる連通路が形成された電動弁であって、
前記連通路から前記副弁ポートまでの流路に配置された消音部材である第1消音部材と、
前記副弁ポートから前記主弁ポートまでの流路に配置された消音部材である第2消音部材と、を備え、
前記第1消音部材及び前記第2消音部材は、流路を細分化するように形成され、前記第1消音部材の方が、前記第2消音部材よりも高い密度を有することを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記連通路は、前記主弁体の筒状部の側面に形成され、
前記連通路と前記第1消音部材との間には、前記筒状部に沿った環状空間が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記筒状部の側面に、前記環状空間に連通する複数の前記連通路が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記環状空間と前記第1消音部材とは、当該環状空間の軸方向に並んで配置されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の電動弁。
【請求項5】
前記第1消音部材及び前記第2消音部材は、三次元的なメッシュ状に形成されたフィルタであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の電動弁。
【請求項6】
前記第1消音部材及び前記第2消音部材は、線状部材がランダムに屈曲されることで三次元的なメッシュ状に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動弁として、第1弁体部及び第2弁体部を備え、小流量制御状態又は大流量制御状態とすることが可能な流量調整弁が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された流量調整弁では、弁軸の連結軸の連通路に消音部材が設けられるとともに、弁体部材の連通路にも消音部材が設けられている。このように消音部材を設けることにより、騒音の低減と、大開度領域における圧力損失の低減と、の両立を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-211034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたように小流量制御状態又は大流量制御状態とすることが可能な電動弁では、小流量制御に対応した弁ポート(副弁ポート)を通過した(流出した)流体は、不安定な状態(大小の気泡が入り混じった状態)になりやすく、且つ、噴流となりやすい。このため、副弁ポートの下流側に消音部材を配置しても、流体がこの消音部材を通過しにくく、流体がより不安定な状態となって騒音を充分に低減できない場合があった。
【0005】
本発明の目的は、流体の流れを安定化させて騒音を低減することができる電動弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の電動弁は、弁ハウジングと、前記弁ハウジングに設けられた主弁室の主弁ポートの開度を変更する主弁体と、前記主弁体に設けられた副弁室の副弁ポートの開度を変更する副弁体と、前記副弁体を軸方向に進退駆動する駆動部と、を備え、前記主弁室と前記副弁室と連通を連通させる連通路が形成された電動弁であって、前記連通路から前記副弁ポートまでの流路に配置された第1消音部材と、前記副弁ポートから前記主弁ポートまでの流路に配置された第2消音部材と、を備え、前記第1消音部材及び前記第2消音部材は、流路を細分化するように形成され、前記第1消音部材の方が、前記第2消音部材よりも高い密度を有することを特徴とする。
【0007】
以上のような本発明によれば、連通路から副弁ポートまでの流路に配置された第1消音部材の方が、副弁ポートから主弁ポートまでの流路に配置された第2消音部材よりも高い密度を有することで、流体は、密度の高い第1消音部材を通過した後に、密度の低い第2消音部材を通過することとなる。これにより、第1消音部材によって気泡を充分に細分化した状態で副弁ポートに流体を流すことで騒音を低減するとともに、副弁ポートから流出した低密度な第2消音部材を通過することとなり、第2消音部材の通過時に流体が滞留しにくくなる。従って、流体の流れを安定化させて騒音をより低減することができる。
【0008】
この際、本発明の電動弁では前記連通路は、前記主弁体の筒状部の側面に形成され、前記連通路と前記第1消音部材との間には、前記筒状部に沿った環状空間が形成されていることが好ましい。このような構成によれば、流体が環状空間を循環するように通過した後に第1消音部材に到達しやすくなり、第1消音部材に到達する前に流体の速度を低下させることができる。
【0009】
また、本発明の電動弁では、前記筒状部の側面に、前記環状空間に連通する複数の前記連通路が形成されていることが好ましい。このような構成によれば、1箇所の連通路から副弁室内に流体が導入される構成と比較して、周方向における流体の流量の偏りを低減することができる。
【0010】
また、本発明の電動弁では、前記環状空間と前記第1消音部材とは、当該環状空間の軸方向に並んで配置されていることが好ましい。このような構成によれば、筒状部に形成された連通路の延在方向と、環状空間から第1消音部材に向かう方向と、が交差し、第1消音部材に到達する前に流体の速度を低下させることができる。
【0011】
また、本発明の電動弁では、前記第1消音部材及び前記第2消音部材は、三次元的なメッシュ状に形成されたフィルタであることが好ましく、さらに、前記第1消音部材及び前記第2消音部材は、線状部材がランダムに屈曲されることで三次元的なメッシュ状に形成されていることが好ましい。このような構成によれば、線状部材がランダムに屈曲されていることで、消音部材は、流体が通過可能な通過部として様々な大きさの通過可能面積のものを有する。従って、流体に様々な大きさの気泡が含まれている場合であっても細泡化しやすい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の電動弁によれば、流体の流れを安定化させて騒音を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一例である実施形態にかかる電動弁を示す断面図である。
図2】前記電動弁の要部を拡大して示す断面図である。
図3】前記電動弁の連通路及び環状空間を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態の電動弁1は、例えばパッケージエアコンやルームエアコン等の空気調和機の冷凍サイクルシステムに用いられるものであって、図1に示すように、弁ハウジング2と、ガイド部材3と、主弁体4と、副弁体5と、駆動部6と、第1消音部材7と、第2消音部材8と、を備える。主弁体4及び副弁体5は所定の軸方向に沿って移動するように設けられており、以下では、この軸方向をZ方向とし、Z方向に直交する2方向をX方向及びY方向とし、Z方向における上下は図1を基準とする。
【0015】
弁ハウジング2は、例えば黄銅やステンレス等により略円筒形状に形成されており、その内側に主弁室2Rを有している。弁ハウジング2は、その側面においてX方向の一方側に開口した第1ポート21と、Z方向下側に開口した第2ポート22と、を有する。第1ポート21には、X方向に沿って延びる第1継手管11が接続され、第2ポート22には、Z方向に沿って延びる第2継手管12が接続され、第1継手管11及び第2継手管12は主弁室2Rに連通する。第1継手管11及び第2継手管12は、例えばろう付け等によって弁ハウジング2に対して固着されればよい。
【0016】
弁ハウジング2の下端部には、Z方向を軸方向として主弁室2R側に(上側に向かって)突出した円筒状の主弁座23が形成され、この主弁座23の内側が主弁ポート23aとなっており、主弁ポート23aと第2ポート22とが連通する。即ち、第2継手管12が主弁ポート23aを介して主弁室2Rに導通される。本実施形態では、電動弁1は、第1ポート21を一次側とするとともに第2ポート22を二次側とし、第1継手管11から主弁室2Rに流入した流体(冷媒)が第2継手管12から流出するように使用されるものとするが、電動弁1は、双方向に流体が流れ得るサイクルに組み込まれてもよい。
【0017】
ガイド部材3は、弁ハウジング2の上端の開口部に取り付けられるものであって、弁ハウジング2の内周面内に圧入される圧入部31と、圧入部31の内側に位置する略円柱状のガイド部32と、ガイド部32の上部に延設されたホルダ部33と、ホルダ部33の上方に設けられたストッパ部34と、ガイド部32の外周に位置するリング状のフランジ部35と、を有している。圧入部31、ガイド部32、ホルダ部33及びストッパ部34は樹脂製の一体品として構成されている。また、フランジ部35は、例えば、黄銅やステンレス等により構成された金属板であり、このフランジ部35は、インサート成形により樹脂製の圧入部31及びホルダ部33と共に一体に設けられている。
【0018】
ガイド部材3は、弁ハウジング2に組み付けられ、フランジ部35において弁ハウジング2の上端部に溶接により固定されている。また、ガイド部材3には、Z方向を軸方向とする円筒形状のガイド孔32aがガイド部32に形成され、ガイド孔32aと同軸の挿通孔33aがホルダ部33の中心に形成されている。また、ストッパ部34の中心には、ガイド孔32a及び挿通孔33aと同軸の雌ねじ部(ねじ孔)34aが形成されている。
【0019】
主弁体4は、ホルダ部33のガイド孔32a内に配置されるものであって、図2にも示すように、全体がZ方向を軸方向とする円筒状に形成されている。主弁体4は、XY平面に沿って延在し副弁体5が接近又は離隔する隔壁部41と、隔壁部41から主弁ポート23aとは反対側(上側)に向かって延びる筒状部42と、主弁座23に対して接近又は離隔する主弁部43と、を一体に有する。
【0020】
隔壁部41は、筒状部42の下端部に設けられた副弁座部であり、所定の板厚(Z方向寸法)を有する板状に形成されている。隔壁部41と筒状部42とによって有底筒状の部分が形成され、この有底筒状の部分の内部が副弁室4Rとなる。隔壁部41の中央部には、貫通孔である副弁ポート41aが形成されている。筒状部42は、円筒状に形成され、その内側に後述する押え部材93が設けられ、押え部材93の内周面がニードルガイド孔として機能する。このニードルガイド孔内には、後述する弁軸51に取り付けられたガイド用ボス部53が挿通されるとともに、この筒状部42の上端にはリング状のリテーナ44が嵌合固着または溶接等により固着されている。また、リテーナ44とガイド孔32aの上端部との間には、主弁ばね4aが配設され、この主弁ばね4aにより主弁体4は主弁座23の方向(Z方向下側;閉方向)に付勢されている。
【0021】
筒状部42には、図3にも示すように、その内外を連通する複数(本実施形態では8個)の連通路421が形成されている。8個の連通路421は、Z方向を中心とする周方向において等間隔で並んでいる。筒状部42に連通路421が形成されていることにより、主弁室2Rと副弁室4Rと副弁ポート41aと主弁ポート23aとが連通するようになっている。
【0022】
また、隔壁部41には、Z方向上側に向かって延びる筒状部411と、筒状部411の外側に位置する環状空間412と、環状空間412の下面に連続する傾斜面413と、が形成されている。筒状部411は、内側に副弁ポート41aが形成されたものである。環状空間412は、筒状部42の内側に沿うように円環状に形成され、複数の連通路421が連通している。傾斜面413は、連通路421の下端部から、内周側に向かうにしたがって上側に向かうように傾斜し、環状空間412の下面に接続される。これにより、径方向から見た際に、連通路421と環状空間412とは重なりを有しつつ、環状空間412が上側に若干オフセットして配置されている。
【0023】
主弁部43は、筒状部42を隔壁部41よりも下側に延長するように略円筒状に形成されている。主弁部43は、全閉状態において主弁座23に対して着座(当接)するように設けられている。
【0024】
副弁体5は、ニードル弁であって、後述するロータ軸61の下端部に設けられており、ロータ軸61側に連なる弁軸51と、弁軸51の下端に連なるニードル部52と、を一体に有している。副弁体5は、弁軸51に固着されたガイド用ボス部53をさらに有している。ガイド用ボス部53は弁軸51と別体として固着されているが、ガイド用ボス部53は弁軸51と一体に形成されたものであってもよい。ガイド用ボス部53は、押え部材93によって形成されるニードルガイド孔内に摺動可能に挿通されている。
【0025】
駆動部6は、弁ハウジング2の上端に固定されたケース24の内外に設けられたものであって、ステッピングモータ6Aと、ステッピングモータ6Aの回転により副弁体5を進退させるねじ送り機構6Bと、ステッピングモータ6Aの回転を規制するストッパ機構6Cと、を有する。ケース24は、弁ハウジング2に対して例えば溶接等によって気密に固定されている。
【0026】
ステッピングモータ6Aは、ロータ軸61と、ケース24の内部に回転可能に配設されたマグネットロータ62と、ケース24の外周においてマグネットロータ62に対して対向配置された不図示のステータコイルと、その他、図示しないヨークや外装部材等により構成されている。ロータ軸61はブッシュを介してマグネットロータ62の中心に取り付けられ、このロータ軸61におけるガイド部材3側の外周には雄ねじ部61aが形成されている。この雄ねじ部61aはガイド部材3の雌ねじ部34aに螺合されており、これにより、ガイド部材3はロータ軸61をZ方向に沿った軸線上に支持している。そして、ガイド部材3の雌ねじ部34aとロータ軸61の雄ねじ部61aとが、ねじ送り機構6Bを構成している。
【0027】
第1消音部材7は、弁軸51及びニードル部52が通過可能なように全体として円環状に形成され、連通路421から副弁ポート41aまでの流路に配置される。第1消音部材7は、線状部材がランダムに屈曲されることで三次元的なメッシュ状に形成されたフィルタである。第1消音部材7は、例えばデミスターであればよい。このようにメッシュ状に形成された第1消音部材7は、流路を細分化するように機能し、流体(冷媒)は、細分化されつつ第1消音部材7を通過する。即ち、気液混合状態の流体が第1消音部材7を通過すると、気泡が細分化される。このとき、第1消音部材7は、線状部材がランダムに屈曲されていることから、流体が通過可能な通過部として様々な大きさの通過可能面積のものを有する。また、流体が第1消音部材7内を所定の通過方向に沿って通過する際、通過方向位置によって通過可能面積が変化する。これにより、様々な大きさの気泡が細分化されるようになっている。
【0028】
第1消音部材7は、図2に示すように、一対の固定部材91A,91Bと押え部材93とによって主弁体4の筒状部42内に固定される。第1消音部材7は、一対の固定部材91A,91BによってZ方向から挟み込まれ、且つ、固定部材91A,91Bの上側に押え部材93が配置される。第1消音部材7と固定部材91A,91Bと押え部材93とが、隔壁部41とリテーナ44とによってZ方向から挟み込まれて固定される。このとき、第1消音部材7は、環状空間412とZ方向に並ぶように上側に配置される。一対の固定部材91A,91Bには、それぞれ、Z方向に延びる複数の貫通孔からなる連通部92A,92Bが形成されている。これにより、環状空間412と、第1消音部材7が配置された空間と、が連通され、第1消音部材7が配置された空間と、副弁室4Rと、が連通される。即ち、環状空間412から副弁室4Rに流体が流れ込む際には、必ず第1消音部材7を通過するようになっている。押え部材93は、全体が筒状に形成されることにより、上記のように第1消音部材7を押えるための押え部として機能するとともに、上端部において内径が小さくなった(縮径された)係合部931を有し、係合部931において、副弁体5のガイド用ボス部53と係合可能になっている。また、押え部材93は、例えばPPS樹脂等の摺動部材によって構成されている。これにより、例えば金属製(ステンレス製)のガイド用ボス部53が、押え部材93の内周面に対して摺動した際や、係合部931と係合した際に、摺動抵抗を抑制することができるようになっている。
【0029】
尚、本実施形態では、固定部材91A及び固定部材91Bを用いて第1消音部材7を主弁体4の筒状部42内に固定しているが、いずれか一方のみを用いてもよいし、固定部材91A,91Bを用いずに押え部材93のみで第1消音部材7を固定してもよい。
【0030】
第2消音部材8は、副弁ポート41aから主弁ポート23aまでの流路に配置されたものであって、即ち、第1ポート21を一次側とした場合に第1消音部材7よりも下流側に配置されている。第2消音部材8は、第1消音部材7と同様に、線状部材がランダムに屈曲されることで三次元的なメッシュ状に形成されたフィルタであり、例えばデミスターであればよい。第1消音部材7の方が、第2消音部材8よりも高い密度を有している。ここで、密度とは、体積当たりの質量である。これにより、第1消音部材7の方が、第2消音部材8よりも気泡を細分化する性能が高い。尚、第1消音部材7の方が、第2消音部材8よりも気泡を細分化する性能が高くなるように、例えば線材の太さ等のパラメータが互いに異なっていてもよい。
【0031】
第2消音部材8は、円筒状の主弁部43の内側に嵌合する(隙間なく埋められる)ように配置されていることで、Z方向において副弁ポート41aに対向している。これにより、副弁ポート41aを通過した流体が主弁ポート23aに流れ込む際には、必ず第2消音部材8を通過するようになっている。第2消音部材8は、例えばリング状の部材を介し、主弁部43の下端部によって加締められて固定されればよい。
【0032】
ここで、電動弁1における主弁体4及び副弁体5の開閉動作の詳細について説明する。ステッピングモータ6Aの駆動によってマグネットロータ62及びロータ軸61が回転すると、ロータ軸61の雄ねじ部61aとガイド部材3の雌ねじ部34aとのねじ送り機構6Bにより、ロータ軸61がZ方向に沿って移動する。これにより、副弁体5がZ方向に進退移動して副弁ポート41aに対して接近又は離隔し、副弁ポート41aの弁開度が制御される(小流量制御)。また、副弁体5のガイド用ボス部53が押え部材93の係合部931に係合し、主弁体4は副弁体5と共に移動して、主弁座23に対して接近又は離隔する(大流量制御)。これにより、第1継手管11から第2継手管12に向かって流れる冷媒の流量が制御される。なお、本実施形態では、副弁体5がZ方向に進退移動して副弁ポート41aを有する副弁座部に最も接近した状態においても、副弁体5が副弁座部には当接(着座)せず、副弁体5と副弁座部との間に間隙が形成されて副弁ポート41aを流体が通過可能となっているが、副弁体5が副弁座部に着座する構成であってもよい。
【0033】
ガイド部材3のストッパ部34の外周面には、雄ねじ状のガイド溝34bが形成され、このガイド溝34bには、スライダ63が設けられている。スライダ63は、マグネットロータ62に当接し、マグネットロータ62の回転に伴ってガイド溝34bに沿って回転かつ上下動する。そして、スライダ63は、ガイド溝34bの上端または下端に当接することで、マグネットロータ62の回転を規制するストッパ機構6Cを構成している。このストッパ機構6Cにより、ロータ軸61およびマグネットロータ62の最下端位置および最上端位置が規制される。
【0034】
ここで、小流量制御時の電動弁1における流体の流れについて説明する。まず、第1ポート21から主弁室2Rに流体が流れ込む。この流体は、気泡を含んで気液混合状態となる場合があり、以下では、気泡を含んでいるものとして説明する。主弁室2Rに流れ込んだ流体は、連通路421を介して、副弁室4R内に流体が流れ込む。このとき、連通路421を通過した流体は、環状空間412内で循環した後に固定部材91Bの連通部92Bと、第1消音部材7と、固定部材91Aの連通部92Aと、を通過して副弁室4R内に到達する。流体が連通路421を通過して環状空間412に向かう際、流れの方向は、XY平面に沿った方向となる。一方で、流体が環状空間412から第1消音部材7に向かう際、流れの方向はZ方向に沿ったものとなる。即ち、流れの方向が略直角に曲げられることとなり、流速が低下するようになっている。
【0035】
上記のように流体が第1消音部材7を通過することで、気泡が細分化される。そして、この流体は副弁ポート41aを通過して流れが絞られた後、第2消音部材8を通過して主弁ポート23aに向かう。このとき、第2消音部材8の方が第1消音部材7より密度が低いことから、流体が第2消音部材8において滞留しにくい。
【0036】
流体が副弁ポート41aを通過する(流出する)と、急激に減圧されることにより当該流体には様々な大きさの気泡が含まれやすく、且つ、副弁ポートから流出する噴流となりやすい。従って、第1消音部材7と第2消音部材8とで気泡の細分化性能が同等(例えば密度が同等)である場合や、第2消音部材8の方が第1消音部材7よりも細分化性能が高い(例えば密度が高い)場合、副弁ポート41aを通過した流体は、第2消音部材を通過し難く、一部の流体が滞留し、流体がより不安定な状態となりやすい。
【0037】
以上の本実施形態によれば、連通路421から副弁ポート41aまでの流路に配置された第1消音部材7の方が、副弁ポート41aから主弁ポート23aまでの流路に配置された第2消音部材8よりも高い密度を有することで、第1消音部材7によって気泡を充分に細分化した状態で副弁ポート41aに流体を流すことで騒音を低減するとともに、副弁ポート41aから流出した流体が低密度な第2消音部材8を通過することとなり、第2消音部材8の通過時に流体が滞留しにくくなる。従って、流体の流れを安定化させて騒音をより低減することができる。このとき、高密度な第1消音部材のみを設けて第2消音部材を設けない構成では、流体が副弁ポートで急激に減圧されたことに起因する騒音が生じるが、このような構成と比較して、本実施形態では、副弁ポートを通過して不安定化した流体の流れを安定化させて騒音を充分に低減することができる。
【0038】
また、連通路421と第1消音部材7との間に環状空間412が形成されていることで、第1消音部材7に到達する前に流体の速度を低下させることができる。
【0039】
また、複数の連通路421が形成されていることで、1箇所の連通路から副弁室4R内に流体が導入される構成と比較して、周方向における流体の流量の偏りを低減することができる。
【0040】
また、環状空間412と第1消音部材7とがZ方向に並んでいることで、連通路421の延在方向と、環状空間412から第1消音部材7に向かう方向と、が交差し、第1消音部材7に到達する前に流体の速度を低下させることができる。
【0041】
また、第1消音部材7及び第2消音部材8は、線状部材がランダムに屈曲されていることで、流体が通過可能な通過部として様々な大きさの通過可能面積のものを有する。従って、流体に様々な大きさの気泡が含まれている場合であっても細泡化しやすい。
【0042】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記実施形態では、複数の連通路421が等間隔に形成されているものとしたが、このような構成に限定されない。即ち、複数の連通路が互いに異なる間隔で配置されていてもよいし、1つの連通路のみが形成されていてもよい。
【0043】
また、前記実施形態では、環状空間412と第1消音部材7とがZ方向に並んでいるものとしたが、環状空間と第1消音部材とは、例えば連通路の延在方向に沿って並んでいてもよい。
【0044】
また、前記実施形態では、連通路421と第1消音部材7との間に環状空間412が形成されているものとしたが、環状空間が形成されずに連通路から第1消音部材に直接流体が流れ込む構成としてもよい。このような構成によれば、主弁体を小型化しやすい。
【0045】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1…電動弁、2…弁ハウジング、23a…主弁ポート、2R…主弁室、4…主弁体、41a…副弁ポート、412…環状空間、42…筒状部、421…連通路、4R…副弁室、5…副弁体、6…駆動部、7…第1消音部材、8…第2消音部材
図1
図2
図3