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特許7466493光検出器、光検出システム、ライダー装置、及び移動体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】光検出器、光検出システム、ライダー装置、及び移動体
(51)【国際特許分類】
   H01L 27/146 20060101AFI20240405BHJP
   H01L 31/107 20060101ALI20240405BHJP
   G01S 7/4863 20200101ALI20240405BHJP
   G01S 17/894 20200101ALI20240405BHJP
   G01S 17/931 20200101ALI20240405BHJP
【FI】
H01L27/146 A
H01L31/10 B
G01S7/4863
G01S17/894
G01S17/931
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021075746
(22)【出願日】2021-04-28
(65)【公開番号】P2022169968
(43)【公開日】2022-11-10
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】清水 真理子
(72)【発明者】
【氏名】藤原 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 啓太
(72)【発明者】
【氏名】岡本 和晃
(72)【発明者】
【氏名】権 鎬楠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和拓
【審査官】小山 満
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-034698(JP,A)
【文献】特開2020-102498(JP,A)
【文献】国際公開第2008/004547(WO,A1)
【文献】特開2018-201005(JP,A)
【文献】特開2020-150161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 27/146
H01L 31/107
G01S 7/4863
G01S 17/894
G01S 17/931
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル領域に設けられ、第1方向と、前記第1方向と交差する第2方向と、に沿って並ぶ複数の素子であって、前記複数の素子のそれぞれは、
第1導電形の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の上に設けられ、前記第1半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する第1導電形の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域の上に設けられた第2導電形の第3半導体領域と、
を含む、前記複数の素子と、
前記第1方向及び前記第2方向に平行な第1面において、前記複数の素子の周りにそれぞれ設けられた複数の分離部と、
前記第1面において前記複数の分離部のそれぞれの周りに設けられ、前記第2半導体領域よりも低い第1導電形の不純物濃度を有する第1導電形の第4半導体領域と、
前記第4半導体領域の上に設けられた第2導電形の第5半導体領域と、
複数の前記第3半導体領域の少なくとも一部と電気的に接続された第1配線と、
前記第1配線と電気的に接続された第1クエンチ部と、
前記セル領域の周りにおいて前記第5半導体領域と電気的に接続された第2配線と、
を備えた光検出器。
【請求項2】
前記複数の素子、前記複数の分離部、及び前記第5半導体領域の上に設けられた絶縁層と、
前記絶縁層の上に設けられ、前記複数の素子の上にそれぞれ位置する複数のレンズと、
をさらに備えた、請求項1記載の光検出器。
【請求項3】
前記複数の素子の1つにおいて、前記第2半導体領域及び前記第3半導体領域は、前記複数の素子の前記1つの周りに設けられた前記複数の分離部の1つから離れている、請求項1又は2に記載の光検出器。
【請求項4】
電極と、
前記電極の上に設けられた第1導電形の半導体層と、
をさらに備え、
前記複数の素子、前記複数の分離部、及び前記第4半導体領域は、前記半導体層の上に設けられた、請求項1~3のいずれか1つに記載の光検出器。
【請求項5】
前記複数の分離部の1つ以上の下端は、前記半導体層に接する、請求項4記載の光検出器。
【請求項6】
前記複数の分離部の1つ以上は、前記第1方向及び前記第2方向に垂直な第3方向から見たときに、角丸の四角形状又は五角以上の多角形である、請求項1~5のいずれか1つに記載の光検出器。
【請求項7】
前記複数の分離部の1つ以上は、前記第1方向及び前記第2方向に垂直な第3方向から見たときに、八角形である、請求項1~5のいずれか1つに記載の光検出器。
【請求項8】
前記第1配線と電気的に接続された第1パッドと、
前記第2配線と電気的に接続され、前記第1パッドから離れた第2パッドと、
をさらに備えた請求項1~7のいずれか1つに記載の光検出器。
【請求項9】
前記第2配線と電気的に接続された第2クエンチ部をさらに備えた、請求項1~8のいずれか1つに記載の光検出器。
【請求項10】
前記複数の素子の1つ以上は、アバランシェフォトダイオードである、請求項1~のいずれか1つに記載の光検出器。
【請求項11】
前記複数の素子の1つ以上は、ガイガーモードで動作される、請求項1~10のいずれか1つに記載の光検出器。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1つに記載の光検出器と、
前記光検出器の出力信号から光の飛行時間を算出する距離計測回路と、
を備えた光検出システム。
【請求項13】
物体に光を照射する光源と、
前記物体に反射された光を検出する請求項12記載の光検出システムと、
を備えたライダー装置。
【請求項14】
前記光源と前記光検出器の配置関係に基づいて、三次元画像を生成する画像認識システムをさらに備える請求項13記載のライダー装置。
【請求項15】
請求項13又は14に記載のライダー装置を備えた移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光検出器、光検出システム、ライダー装置、及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体領域に入射した光を検出する光検出器がある。光検出器について、信頼性の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-114728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、信頼性を向上可能な、光検出器、光検出システム、ライダー装置、及び移動体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る光検出器は、複数の素子と、複数の分離部と、第1導電形の第4半導体領域と、第2導電形の第5半導体領域と、第1配線と、第1クエンチ部と、第2配線と、を含む。前記複数の素子は、セル領域に設けられる。前記複数の素子は、第1方向と、前記第1方向と交差する第2方向と、に沿って並ぶ。前記複数の素子のそれぞれは、第1導電形の第1半導体領域、第1導電形の第2半導体領域、及び第2導電形の第3半導体領域を含む。前記第2半導体領域は、前記第1半導体領域の上に設けられ、前記第1半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する。前記第3半導体領域は、前記第2半導体領域の上に設けられる。前記複数の分離部は、前記第1方向及び前記第2方向に平行な第1面において、前記複数の素子の周りにそれぞれ設けられる。前記第4半導体領域は、前記第1面において前記複数の分離部のそれぞれの周りに設けられる。前記第5半導体領域は、前記第4半導体領域の上に設けられる。前記第1配線は、複数の前記第3半導体領域の少なくとも一部と電気的に接続される。前記第1クエンチ部は、前記第1配線と電気的に接続される。前記第2配線は、前記セル領域の周りにおいて前記第5半導体領域と電気的に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、第1実施形態に係る光検出器を例示する模式的平面図である。
図2図2は、図1の一部を拡大した模式的平面図である。
図3図3は、図2における部分IIIの拡大平面図である。
図4図4は、図3のIV-IV断面図である。
図5図5は、図2における部分Vの拡大平面図である。
図6図6は、図5のVI-VI断面図である。
図7図7(a)及び図7(b)は、第1実施形態に係る光検出器の製造工程を例示する模式的断面図である。
図8図8(a)及び図8(b)は、第1実施形態に係る光検出器の製造工程を例示する模式的断面図である。
図9図9(a)及び図9(b)は、第1実施形態に係る光検出器の製造工程を例示する模式的断面図である。
図10図10(a)及び図10(b)は、第1実施形態に係る光検出器の製造工程を例示する模式的断面図である。
図11図11(a)及び図11(b)は、第1実施形態に係る光検出器の製造工程を例示する模式的断面図である。
図12図12(a)及び図12(b)は、第1実施形態に係る光検出器の製造工程を例示する模式的断面図である。
図13図13(a)は、参考例に係る光検出器の特性を示す模式図である。図13(b)は、第1実施形態に係る光検出器の特性を示す模式図である。
図14図14は、第1実施形態及び参考例に係る光検出器に関する実験結果を示すグラフである。
図15図15は、第1実施形態に係る光検出器の一部を例示する模式的平面図である。
図16図16は、第1実施形態に係る光検出器の一部を例示する模式的平面図である。
図17図17は、第2実施形態に係る光検出器を示す模式的断面図である。
図18図18は、第2実施形態に係る光検出器を示す模式的断面図である。
図19図19は、第3実施形態に係る光検出器を示す模式的断面図である。
図20図20は、第4実施形態に係る光検出器を示す模式的断面図である。
図21図21は、第5実施形態に係る光検出器を示す模式的平面図である。
図22図22は、第6実施形態に係る光検出器を示す模式的平面図である。
図23図23は、第7実施形態に係る光検出器を示す模式的平面図である。
図24図24は、第8実施形態に係るライダー(Laser Imaging Detection and Ranging:LIDAR)装置を例示する模式図である。
図25図25は、ライダー装置の検出対象の検出を説明するための図である。
図26図26は、第8実施形態に係るライダー装置を備えた移動体の上面略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
以下の説明及び図面において、n及びp、pの表記は、各不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわち、「+」が付されている表記は、「+」及び「-」のいずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に高く、「-」が付されている表記は、いずれも付されていない表記よりも不純物濃度が相対的に低いことを示す。これらの表記は、それぞれの領域にp形不純物とn形不純物の両方が含まれている場合には、それらの不純物が補償しあった後の正味の不純物濃度の相対的な高低を表す。
以下で説明する各実施形態について、各半導体領域のp形とn形を反転させて各実施形態を実施してもよい。
【0008】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る光検出器を例示する模式的平面図である。図2は、図1の一部を拡大した模式的平面図である。図3は、図2における部分IIIの拡大平面図である。図4は、図3のIV-IV断面図である。
第1実施形態に係る光検出器1は、図1及び図2に示すように、セル領域CR、外周領域OR、第1配線41、第2配線42、第1パッド51、及び第2パッド52を含む。
【0009】
図3及び図4に示すように、セル領域CRは、p形(第1導電形)半導体領域11(第1半導体領域)、p形半導体領域12(第2半導体領域)、n形(第2導電形)半導体領域13(第3半導体領域)、p形半導体領域14(第4半導体領域)、n形半導体領域15(第5半導体領域)、分離部20、電極21、半導体層22、絶縁層23~26、第1クエンチ部31、及び第1配線41を含む。図2及び図3では、絶縁層23~26が省略されている。
【0010】
ここでは、p形半導体領域11からp形半導体領域12に向かう方向をZ方向(第3方向)とする。Z方向に対して垂直な一方向をX方向(第1方向)とする。Z方向に対して垂直であり、X方向と交差する一方向をY方向(第2方向)とする。Y方向は、X方向に直交しても良い。また、説明のために、p形半導体領域11からp形半導体領域12に向かう方向を「上」と言い、その反対方向を「下」と言う。これらの方向は、p形半導体領域11とp形半導体領域12との相対的な位置関係に基づき、重力の方向とは無関係である。
【0011】
図4に示すように、半導体層22は、電極21の上に設けられる。p形半導体領域11及び14は、半導体層22の上に設けられる。p形半導体領域12は、p形半導体領域11の上に設けられる。n形半導体領域13は、p形半導体領域12の上に設けられる。
【0012】
分離部20は、X-Y面(第1面)において、p形半導体領域11、p形半導体領域12、及びn形半導体領域13を含む素子10の周りに設けられる。分離部20は、絶縁性である。p形半導体領域14は、X-Y面において分離部20の周りに設けられ、p形半導体領域11及びp形半導体領域12の周りに位置する。n形半導体領域15は、p形半導体領域14の上に設けられる。例えば、p形半導体領域12及びn形半導体領域13は、分離部20に接する。n形半導体領域15は、分離部20に接する。
【0013】
p形半導体領域12とn形半導体領域13との間及びp形半導体領域14とn形半導体領域15との間には、pn接合がそれぞれ形成される。これらのpn接合面は、例えば、X-Y面に平行である。
【0014】
p形半導体領域12におけるp形不純物濃度は、p形半導体領域11におけるp形不純物濃度よりも高く、p形半導体領域14におけるp形不純物濃度よりも高い。p形半導体領域11におけるp形不純物濃度は、p形半導体領域14におけるp形不純物濃度と同じでも良いし、p形半導体領域14におけるp形不純物濃度とは異なっていても良い。p形半導体領域11の下部は、p形半導体領域14の下部と繋がっていても良い。
【0015】
形半導体領域13におけるn形不純物濃度は、p形半導体領域12におけるp形不純物濃度よりも高い。n形半導体領域15におけるn形不純物濃度は、p形半導体領域14におけるp形不純物濃度よりも高い。n形半導体領域13におけるn形不純物濃度は、n形半導体領域15におけるn形不純物濃度と同じでも良いし、n形半導体領域15におけるn形不純物濃度とは異なっていても良い。
【0016】
例えば、p形半導体領域14のZ方向における厚みは、p形半導体領域11のZ方向における厚みと、p形半導体領域12のZ方向における厚みと、の和に等しい。
【0017】
図3に示すように、複数の素子10が、X方向及びY方向に並んでいる。複数の分離部20が、X-Y面において複数の素子10の周りにそれぞれ設けられる。複数のp形半導体領域14は、複数の分離部20によって互いに分離される。また、複数のn形半導体領域は、複数の分離部20によって互いに分離される。分離部20により、隣り合うp形半導体領域14同士の間、及び隣り合うn形半導体領域15同士の間でのキャリアの移動が抑制される。1つのp形半導体領域14及び1つのn形半導体領域15が、X-Y面において複数の分離部20のそれぞれの周りに設けられる。複数の分離部20は、X方向及びY方向において互いに離れている。
【0018】
絶縁層23は、複数の素子10、n形半導体領域15、及び複数の分離部20の上に設けられる。絶縁層24は、絶縁層23の上に設けられる。絶縁層25は、絶縁層24の上に設けられる。絶縁層26は、絶縁層25の上に設けられる。絶縁層23~26は、光透過性である。
【0019】
図3に示すように、n形半導体領域13及び第1クエンチ部31は、第1配線41と電気的に接続される。例えば、n形半導体領域13は、プラグ41a、配線41b、プラグ41c、第1クエンチ部31、及びプラグ41dを介して、第1配線41と電気的に接続される。すなわち、第1クエンチ部31は、n形半導体領域13と第1配線41との間に設けられ、これらと電気的に接続される。
【0020】
第1クエンチ部31の電気抵抗は、プラグ41a、配線41b、プラグ41c、及びプラグ41dのそれぞれの電気抵抗よりも大きい。第1クエンチ部31の電気抵抗は、50kΩ以上6MΩ以下であることが好ましい。
【0021】
第1クエンチ部31の少なくとも一部は、n形半導体領域15又は分離部20の上方に位置する。第1クエンチ部31は、素子10の上には設けられない。これにより、素子10に向けて進行した光が、第1クエンチ部31によって遮られることを抑制できる。
【0022】
第1配線41は、X方向に沿って延びる。1つの第1配線41は、X方向に並ぶ複数のn形半導体領域13と電気的に接続される。図2に示すように、Y方向において、複数の第1配線41が設けられる。図1に示すように、複数の第1配線41は、共通配線50を介して、第1パッド51と電気的に接続される。第1パッド51は、ボンディングワイヤ等を介して、外部の電子機器と電気的に接続される。
【0023】
図5は、図2における部分Vの拡大平面図である。図6は、図5のVI-VI断面図である。
外周領域ORは、セル領域CRの周りに設けられる。図5及び図6に示すように、外周領域ORは、p形半導体領域14、n形半導体領域15、絶縁層23~26、及び第2配線42を含む。p形半導体領域14、n形半導体領域15、絶縁層23~26は、セル領域CRの他に、外周領域ORにさらに設けられる。図5では、絶縁層23~26が省略されている。
【0024】
形半導体領域15は、外周領域ORにおいて、第2配線42と電気的に接続される。例えば図5に示すように、n形半導体領域15は、複数の点において、第2配線42と電気的に接続される。より具体的には、n形半導体領域15のX方向における端部の一部及びY方向における端部の一部は、外方に向けて突出し、複数のプラグ42aを介して第2配線42と電気的に接続される。
【0025】
第2配線42は、第1配線41から離れ、第1配線41とは電気的に分離される。図1に示すように、第2配線42は、第2パッド52と電気的に接続される。第2パッド52は、第1パッド51から離れている。第2パッド52は、ボンディングワイヤ等を介して、外部の電子機器と電気的に接続される。第1パッド51からは、第2配線42を流れる信号とは異なる信号を取り出すことができる。第2パッド52からは、第1配線41を流れる信号とは異なる信号を取り出すことができる。
【0026】
光検出器1の動作を説明する。
上方から素子10に光が入射すると、素子10で電荷が発生する。電荷が発生すると、第1クエンチ部31及び第1配線41に電流が流れる。第1配線41に流れる電流を検出することで、素子10への入射光に対応する出力電流を検出できる。
【0027】
形半導体領域11及び14は、半導体層22を介して、電極21と電気的に接続される。n形半導体領域13は、第1配線41を介して、第1パッド51と電気的に接続される。n形半導体領域15は、第2配線42を介して、第2パッド52と電気的に接続される。第1パッド51、第2パッド52、及び電極21の電位をそれぞれ制御することで、p形半導体領域12とn形半導体領域13との間、及びp形半導体領域14とn形半導体領域15との間に電圧を印加できる。
【0028】
例えば、電極21に、第1パッド51に対して、負の電圧を印加する。これにより、p形半導体領域12とn形半導体領域13との間には、逆電圧が印加される。素子10は、アバランシェフォトダイオードとして機能する。
【0029】
p形半導体領域12とn形半導体領域13との間には、降伏電圧を超える逆電圧が印加されても良い。すなわち、素子10は、ガイガーモードで動作しても良い。ガイガーモードで動作することにより、高い増倍率(換言すると高いゲイン)でパルス状の信号が出力される。これにより、光検出器1の受光感度を向上できる。素子10は、微弱光を検出するための単一光子アバランシェダイオードとして機能する。
【0030】
第2パッド52の電位が第1パッド51の電位と実質的に同じになるように制御されても良い。これにより、p形半導体領域14とn形半導体領域15との間には、逆電圧が印加される。p形半導体領域14及びn形半導体領域15は、アバランシェフォトダイオードとして機能する。
【0031】
第1クエンチ部31は、素子10に光が入射し、アバランシェ降伏が発生した際に、アバランシェ降伏の継続を抑制するために設けられる。アバランシェ降伏が発生し、第1クエンチ部31に電流が流れると、第1クエンチ部31の電気抵抗に応じて電圧降下が生じる。電圧降下により、p形半導体領域12とn形半導体領域13との間の電位差が小さくなり、アバランシェ降伏が停止する。これにより、素子10は短い時定数で高速応答し、次に素子10へ入射した光を検出できるようになる。
【0032】
上述したように、大きな電圧降下を生じさせる抵抗体が第1クエンチ部31として設けられても良いし、抵抗体に代えて電流を遮断する制御回路が第1クエンチ部31として設けられても良い。制御回路には、アクティブクエンチ回路と呼ばれる公知の構成を適用可能である。例えば、制御回路は、コンパレータ、制御ロジック部、及び2つのスイッチング素子を含み、第1配線41と電気的に接続される。制御回路は、セル領域CRに設けられても良いし、外周領域ORに設けられても良い。
【0033】
各要素の材料の一例を説明する。
形半導体領域11、p形半導体領域12、n形半導体領域13、p形半導体領域14、n形半導体領域15などの各半導体領域は、シリコン、炭化シリコン、ガリウムヒ素、及び窒化ガリウムからなる群より選択される少なくとも1つの半導体材料を含む。これらの半導体領域がシリコンを含むとき、リン、ヒ素、又はアンチモンがn形不純物として用いられる。ホウ素又はフッ化ホウ素がp形不純物として用いられる。
【0034】
形半導体領域11及び14のそれぞれにおけるp形不純物濃度は、例えば1.0×1013atom/cm以上、1.0×1016atom/cm以下である。p形半導体領域12におけるp形不純物濃度は、例えば1.0×1016atom/cm以上、1.0×1018atom/cm以下である。n形半導体領域13及び15のそれぞれにおけるn形不純物濃度は、例えば1.0×1018atom/cm以上、1.0×1021atom/cm以下である。
【0035】
半導体層22は、例えば、p形半導体基板の少なくとも一部である。半導体層22は、上述した半導体材料を含む。半導体層22におけるp形不純物濃度は、1.0×1017atom/cm以上、1.0×1021atom/cm以下である。
【0036】
分離部20及び絶縁層23~26は、絶縁材料を含む。例えば、分離部20及び絶縁層23~26は、シリコンと、酸素及び窒素からなる群より選択される1つと、を含む。例えば、分離部20及び絶縁層23~26は、酸化シリコン又は窒化シリコンを含む。抵抗体としての第1クエンチ部31は、半導体材料としてポリシリコンを含む。第1クエンチ部31には、n形不純物又はp形不純物が添加されていても良い。
【0037】
プラグ41a、41c、41d、及び42aは、金属材料を含む。例えば、プラグ41a、41c、41d、及び42aは、チタン、タングステン、銅、及びアルミニウムからなる群より選択された少なくとも1つを含む。プラグ41a、41c、41d、及び42aは、チタン、タングステン、銅、及びアルミニウムからなる群より選択された少なくとも1つの窒化物又はシリコン化合物を含んでも良い。
【0038】
電極21、第1配線41、配線41b、第2配線42、第1パッド51、及び第2パッド52は、銅及びアルミニウムからなる群より選択された少なくとも1つを含む。
【0039】
図7(a)~図12(b)は、第1実施形態に係る光検出器の製造工程を例示する模式的断面図である。
図7(a)~図12(b)を参照して、第1実施形態に係る光検出器の製造工程の一例を説明する。
【0040】
図7(a)に示すように、シリコン基板100a及びp形のシリコンエピ層101を含む基板を用意する。シリコン基板100aからシリコンエピ層101に向かう方向は、Z方向に対応する。シリコンエピ層101は、シリコン基板100aの上に、シリコンをエピタキシャル成長させることで形成される。シリコン基板100a及びシリコンエピ層101は、ホウ素がドープされた単結晶p形シリコンを含む。シリコン基板100aにおけるホウ素濃度は、4.0×1018cm-3である。シリコンエピ層101におけるホウ素濃度は、1.0×1015cm-3である。シリコンエピ層101の厚さは、10μmである。
【0041】
シリコンエピ層101の表面を酸化し、100nmの厚さのシリコン酸化膜102を形成する。減圧熱CVD法により、シリコン酸化膜102の上に、シリコン酸化膜103を1μm堆積させる。素子分離領域104を規定するレジスト105をリソグラフィ工程によって形成する。素子分離領域104をZ方向から見たときの形状は、分離部20をZ方向から見たときの形状に対応する。図7(b)に示すように、反応性イオンエッチング(RIE)法により、レジスト105の開口部を通してシリコン酸化膜103及びシリコン酸化膜102をエッチングする。素子分離領域104の幅は、1μmである。
【0042】
レジスト105を剥離する。素子分離領域104のシリコンエピ層101を、シリコン酸化膜103をマスクとして用いてエッチングする。これにより、図8(a)に示すように、第1トレンチ106が形成される。エッチング深さは、例えば8μmである。第1トレンチ106の形成に際しては、約2°のテーパ角度を付けることが好ましい。テーパ角度は、Z方向に対する第1トレンチ106の側面の傾きである。これにより、後の酸化膜埋め込み時のボイド発生を抑制することができる。
【0043】
第1トレンチ106の表面を酸化し、50nmの厚さのシリコン酸化膜1061を形成する。埋め込み酸化膜1063をプラズマ化学気相成長(CVD)法により1.2μm堆積する。1000℃の窒素アニールを実行し、埋め込み酸化膜1063の構造を緻密化する。図8(b)に示すように、化学機械研磨(CMP)処理により埋め込み酸化膜1063を平坦化する。
【0044】
フッ酸処理によりシリコン酸化膜102を剥離する。シリコンエピ層101の表面を酸化し、50nmの厚さのシリコン酸化膜107を形成する。0.2μmの厚さのポリシリコン膜を減圧熱CVD法により成膜する。リソグラフィ工程とRIE工程により、ポリシリコン膜を所定の形状に加工する。これにより、図9(a)に示すように、クエンチ抵抗112が形成される。クエンチ抵抗112の抵抗を調整するために、例えばホウ素を、注入加速電圧20keVで、1.0×1015cm-2の不純物を注入し、活性化アニールを行う。
【0045】
図9(b)に示すように、リソグラフィ工程及びイオン注入工程により、p形アバランシェ層109を、埋め込み酸化膜1063に囲まれた素子領域108内に部分的に形成する。p形アバランシェ層109は、ホウ素のイオン注入により形成される。ホウ素のピーク深さが0.8μmであり、ピーク濃度が1.0×1017cm-3となるように、p形アバランシェ層109を形成する。
【0046】
図10(a)に示すように、イオン注入工程により、n形アバランシェ層113a及び113bを形成する。n形アバランシェ層113aは、p形アバランシェ層109の表面に形成される。n形アバランシェ層113bは、埋め込み酸化膜1063同士の間及び複数の素子領域108の外周において、シリコンエピ層101表面に形成される。n形アバランシェ層113a及び113bは、リンのイオン注入により形成される。n形アバランシェ層113a及び113bは、ピーク濃度が1.5×1020cm-3となるように形成される。n形アバランシェ層113a及び113bを活性化するために、窒素雰囲気中でアニール処理を行う。
【0047】
CVD法により、0.5umの厚さの絶縁膜114を成膜する。図10(b)に示すように、リソグラフィ工程及びRIE工程により、複数のコンタクトホール119を形成する。複数のコンタクトホール119は、クエンチ抵抗112及びn形アバランシェ層113aの上にそれぞれ形成される。
【0048】
コンタクトホール119の内面に沿って、チタン膜120及び窒化チタン膜121をスパッタ法によりそれぞれ10nm成膜する。窒化チタン膜121の上に、タングステン膜122をCVD法により0.3μm成膜する。絶縁膜114をストッパとして用いて、CMPによりチタン膜120、窒化チタン膜121、及びタングステン膜122を平坦化する。これにより、コンタクトホール119が、チタン膜120、窒化チタン膜121、及びタングステン膜122により埋め込まれる。スパッタ法により、0.5umの厚さのアルミニウム層123を成膜する。図11(a)に示すように、リソグラフィ工程及びRIE工程により、アルミニウム層123を所定の形状に加工する。
【0049】
CVD法により、0.3umの厚さの絶縁膜118を成膜する。図11(b)~図12(b)は、複数の素子領域108の外周の様子を示す。図11(b)に示すように、リソグラフィ工程及びRIE工程により、絶縁膜118、絶縁膜114、及びシリコン酸化膜107を貫通するコンタクトホール125を形成する。コンタクトホール125は、n形アバランシェ層113bの上に形成される。
【0050】
コンタクトホール125の内面に沿って、チタン膜126及び窒化チタン膜127をスパッタ法によりそれぞれ10nm成膜する。窒化チタン膜127の上に、タングステン膜128をCVD法により0.3μm成膜する。絶縁膜118をストッパとして用いて、CMPにより、チタン膜126、窒化チタン膜127、及びタングステン膜128を平坦化する。これにより、コンタクトホール125が、チタン膜126、窒化チタン膜127、及びタングステン膜128により埋め込まれる。スパッタ法により、0.5umの厚さのアルミニウム層129を成膜する。図12(a)に示すように、リソグラフィ工程及びRIE工程により、アルミニウム層129を所定の形状に加工する。
【0051】
図12(b)に示すように、パッシベーション膜130として、0.3μmの厚さのシリコン窒化膜をCVD法により成膜する。その後、パッシベーション膜130に開口を形成し、アルミニウム層123の一部及びアルミニウム層129の一部をそれぞれパッドとして露出させる。シリコン基板100aの厚さが600μmになるまで、シリコン基板100aの裏面を研磨する。裏面電極としてTi膜及びAu膜を成膜する。以上の工程により、実施形態に係る光検出器1が製造される。
【0052】
上述した製造工程によって得られたシリコン基板100aは、光検出器1の半導体層22に対応する。シリコンエピ層101は、p形半導体領域11及び14に対応する。p形アバランシェ層109は、p形半導体領域12に対応する。n形アバランシェ層113aは、n形半導体領域13に対応する。n形アバランシェ層113bは、n形半導体領域15に対応する。シリコン酸化膜1061及び埋め込み酸化膜1063は、分離部20に対応する。シリコン酸化膜107は、絶縁層23に対応する。絶縁膜114は、絶縁層24に対応する。絶縁膜118は、絶縁層25に対応する。パッシベーション膜130は、絶縁層26に対応する。クエンチ抵抗112は、第1クエンチ部31に対応する。アルミニウム層123は、第1配線41、配線41b、共通配線50、及び第1パッド51に対応する。アルミニウム層129は、第2配線42及び第2パッド52に対応する。
【0053】
第1実施形態の利点を説明する。
図13(a)は、参考例に係る光検出器の特性を示す模式図である。図13(b)は、第1実施形態に係る光検出器の特性を示す模式図である。
図13(a)に示す参考例に係る光検出器1rでは、n形半導体領域15が設けられていない。図13(a)及び図13(b)において、破線の矢印A1及びA2は、p形半導体領域11又はp形半導体領域14で発生した電子の流れを示している。
【0054】
図13(a)に示すように、素子10において、p形半導体領域12とn形半導体領域13との間に逆方向の電圧が印加されたとき、p形半導体領域12とn形半導体領域13との間の界面から空乏層DL1が広がる。素子10に光が入射し、空乏層DL1において光電変換が生じると、キャリアが空乏層DL1をドリフトし、アバランシェ降伏が生じる。第1配線41及び第1パッド51には、このアバランシェ降伏に基づく信号が流れる。
【0055】
一方、半導体層22、p形半導体領域11、及びp形半導体領域14などでは、各半導体領域中の結晶欠陥、熱などにより、素子10に光が入射していないときにも、キャリアが発生する。p形半導体領域12とn形半導体領域13との間に電圧が印加されると、このキャリアは、矢印A1で示すように、空乏層DL1内をドリフトし、アバランシェ降伏を発生させうる。素子10に光が入射していないときでも、第1配線41及び第1パッド51に、アバランシェ降伏に基づく信号(暗電流)が流れうる。すなわち、光の誤検出が生じる可能性がある。
【0056】
この課題について、光検出器1は、p形半導体領域14及びn形半導体領域15を含む。p形半導体領域14とn形半導体領域15との間に逆方向の電圧が印加されたとき、図13(b)に示すように、p形半導体領域14とn形半導体領域15との間の界面から空乏層DL2が広がる。p形半導体領域14とn形半導体領域15との間には、p形半導体領域12のようなp形不純物濃度の高い領域が設けられていない。このため、空乏層DL2は、素子10の空乏層DL1よりも下方に向けて広がり易い。換言すると、p形半導体領域14及びn形半導体領域15を含むダイオードの降伏電圧は、p形半導体領域12及びn形半導体領域13を含むダイオードの降伏電圧よりも高い。例えば、素子10では、p形半導体領域12の全体が空乏化され、p形半導体領域11の途中まで空乏層DL1が広がる。素子10の周りでは、p形半導体領域14の全体が空乏化され、分離部20の下方まで空乏層DL2が広がる。
【0057】
空乏層DL2により、p形半導体領域14で発生したキャリアは、n形半導体領域15へ流れる。また、空乏層DL2の広がりにより、分離部20の下方では、横方向の電界が発生する。分離部20の下方で発生したキャリアは、この横方向の電界により、空乏層DL2へ引き込まれる。キャリアは、セル領域CRのn形半導体領域15から外周領域ORのn形半導体領域15へ流れ、第2配線42を通して排出される。すなわち、暗電流が第1配線41及び第1パッド51へ流れることを抑制できる。第1実施形態によれば、光検出器1による光の誤検出を抑制し、光検出器1の信頼性を向上できる。
【0058】
素子10におけるアバランシェ降伏によって発生した信号は、第1配線41を通して、第1パッド51より取り出される。p形半導体領域14において発生した信号は、第2配線42を通して、第2パッド52から排出される。第1パッド51から取り出した信号のみを光の検出に用いることで、光検出の精度を向上できる。
【0059】
図14は、第1実施形態及び参考例に係る光検出器に関する実験結果を示すグラフである。
図14において、横軸は、第1パッド51及び第2パッド52に対して電極21に印加される負の電圧Vopを示す。縦軸は、各電圧Vopにおいて得られたダークカウントレートDCRを示す。横軸の値及び縦軸の値は、相対値で表されている。実線は、第1実施形態の光検出器に関する実験結果である。具体的には、実線は、第2パッド52の電位を、第1パッド51の電位と同じに設定したときの、ダークカウントレートDCRの測定結果を示す。第2パッド52の電位が固定され、電極21に電圧Vopが印加されると、p形半導体領域14とn形半導体領域15との間に電圧Vが印加される。破線は、参考例の光検出器に関する実験結果である。具体的には、破線は、第2パッド52の電位が固定されず、第2パッド52の電位がフローティングであるときの、ダークカウントレートDCRの測定結果を示す。この場合、p形半導体領域14とn形半導体領域15との間に電圧Vが印加されない。第2パッド52の電位がフローティングである状態は、n形半導体領域15や、第2配線42、第2パッド52などが設けられていない形態に対応する。
【0060】
ダークカウントレートDCRが小さいほど、光の誤検出が発生し難く、光検出器の信頼性が高いことを示す。図14の結果から、第2パッド52の電位が固定された場合、第2パッド52の電位がフローティングの場合に比べて、ダークカウントレートDCRは、約12%低下することが分かった。
【0061】
さらに、第1実施形態では、n形半導体領域15が、セル領域CRの外周において、第2配線42と電気的に接続される。分離部20同士の間の領域では、分離部20を形成する際に、多くの結晶欠陥が発生する。分離部20同士の間の領域においてn形半導体領域15と第2配線42とを電気的に接続すると、欠陥により、n形半導体領域15と第2配線42との間の接続抵抗が増大しうる。これにより、n形半導体領域15の電位が、第2パッド52の電位に対して変動しうる。例えば、第2パッド52の電位を第1パッド51の電位と同じに設定した場合でも、n形半導体領域15の電位がn形半導体領域13の電位に比べて変動する可能性がある。
【0062】
この課題について、第1実施形態では、セル領域CRの外周において、n形半導体領域15と第2配線42が電気的に接続される。これにより、欠陥によるn形半導体領域15と第2配線42との間の接続抵抗の増大を抑制し、n形半導体領域15の電位をより安定化できる。これにより、光検出器1の特性をより安定化でき、光検出器1の信頼性を向上できる。
【0063】
また、素子10に光が入射したとき、二次光子が発生する。一部の二次光子は、隣り合う素子10に向けて進行する。分離部20の屈折率は、素子10の屈折率とは異なる。このため、少なくとも一部の二次光子は、分離部20の界面で反射される。分離部20が設けられることで、クロストークノイズを低減できる。
【0064】
光検出器1では、図2及び図3に示すように、互いに離れた複数の分離部20が設けられる。この場合、隣り合う素子10同士の間に1つの分離部20が設けられる場合に比べて、分離部20の界面の数が増える。界面の数の増加により、隣り合う素子10に向けて進む二次光子がさらに反射され易くなる。これにより、クロストークノイズをさらに低減できる。
【0065】
第2パッド52の電位を固定せず、フローティングにした場合には、分離部20近傍の素子10の外周部分において、p形半導体領域12とn形半導体領域13の接合面付近では、高い電界がかかりやすい。素子10の外周部分と中央部分との間での電界強度の不均一が大きいと、素子10の光子検出効率が低下する可能性がある。第2パッド52の電位を固定すると、分離部20近傍の電界強度を下げることができる。これにより、素子10の外周部分と中央部分との間での電界強度の差を低減できる。この結果、素子10の光子検出効率をより安定に設計でき、光検出器1の信頼性を向上できる。
【0066】
図15及び図16は、第1実施形態に係る光検出器の一部を例示する模式的平面図である。
例えば、分離部20は、Z方向から見たときに、5角以上の多角形である。図15に示す例では、分離部20は、Z方向から見たときに、八角形状である。具体的には、分離部20は、X方向に沿って延びる一対の第1延在部分20a、Y方向に沿って延びる一対の第2延在部分20b、及び複数の連結部分20cを含む。素子10は、Y方向において、一対の第1延在部分20aの間に設けられる。素子10は、X方向において、一対の第2延在部分20bの間に設けられる。それぞれの連結部分20cは、第1延在部分20aの一端と、第2延在部分20bの一端と、を連結している。
【0067】
第1延在部分20aのX方向における長さは、連結部分20cのX方向における長さよりも長い。第2延在部分20bのY方向における長さは、連結部分20cのY方向における長さよりも長い。連結部分20cのX方向における長さL1及び連結部分20cのY方向における長さL2は、それぞれ1μm以上であることが好ましい。例えば、Z方向から見たときに、連結部分20cは、直線状である。第1延在部分20aと連結部分20cとの間の角度θ1は、135度以上が好ましい。第2延在部分20bと連結部分20cとの間の角度θ2は、135度以上が好ましい。
【0068】
又は、図16に示すように、Z方向から見たときに、分離部20の角は、湾曲していても良い。すなわち、Z方向から見たときに、連結部分20cが湾曲していても良い。図16に示す例では、分離部20は、Z方向から見たときに、角丸の四角形状である。例えば、第1延在部分20aと連結された連結部分20cの一端は、X方向に沿う。第2延在部分20bと連結された連結部分20cの他端は、Y方向に沿う。これにより、連結部分20cは、第1延在部分20a及び第2延在部分20bと滑らかに連結される。
【0069】
図15及び図16に示す例において、連結部分20cのX方向及びY方向におけるそれぞれの長さは、1μm以上であることが好ましい。これにより、連結部分20c近傍で発生する応力を効果的に緩和できる。
【0070】
ここでは、分離部20が、一対の第1延在部分20a、一対の第2延在部分20b、及び複数の連結部分20cを含む例を説明した。分離部20は、互いに連設された1つの第1延在部分20a、1つの第2延在部分20b、及び1つの連結部分20cを少なくとも含んでいれば良い。これにより、1つの第1延在部分20a、1つの第2延在部分20b、及び1つの連結部分20cが設けられた領域近傍の応力を緩和できる。
【0071】
[第2実施形態]
図17及び図18は、第2実施形態に係る光検出器を示す模式的断面図である。
図17に示すように、第2実施形態に係る光検出器2は、光検出器1と比べて、レンズ35をさらに含む。レンズ35は、平坦化された絶縁層26の上に設けられ、素子10の上に位置する。複数のレンズ35が、複数の素子10の上にそれぞれ位置する。レンズ35の上面は、凸状に湾曲している。レンズ35の下面は、例えば、X-Y面に平行である。
【0072】
レンズ35は、光透過性の樹脂を含む。樹脂は、アクリル系樹脂が好ましい。アクリル系樹脂は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを混ぜた樹脂であってもよい。複数のレンズ35は、互いに離れていても良いし、互いに接していても良い。互いに接しているほうが、レンズ35を介して素子10に入射する光量が増えるため、好ましい。図18に示すように、1つの樹脂層35aの上面に複数の凸部が設けられ、それぞれの凸部がレンズ35として機能しても良い。樹脂層35aを設けることで、レンズ35の焦点深さを調整することができる。
【0073】
レンズ35を設けることで、光を素子10に向けて集めることができる。特に、n形半導体領域15を設けて、p形半導体領域14とn形半導体領域15との間に電圧を印加する場合、図13(a)及び図13(b)に示したように、光電変換されたキャリアを検出できる範囲が、制限され、素子10の外方を含まない範囲に限定される可能性がある。この結果、光子検出効率が低下する可能性がある。レンズ35により、素子10の中央部へ光を集めることで、n形半導体領域15を設けることによる光子検出効率の低下を補うことができる。
【0074】
[第3実施形態]
図19は、第3実施形態に係る光検出器を示す模式的断面図である。
第3実施形態に係る光検出器3は、光検出器1と比べて、分離部20の下端が半導体層22に接する。例えば、分離部20の下端は、X-Y面において半導体層22に囲まれる。p形半導体領域11とp形半導体領域14は、分離部20によって分離される。
【0075】
分離部20と半導体領域の界面には、キャリアの生成又は再結合中心が高密度に存在する。このため、熱的に励起されたキャリアが、アバランシェ降伏を引き起こし、誤検出を起こす原因になる可能性がある。例えば、分離部20の下端近傍で発生したキャリアが、空乏層DL1へ達し、アバランシェ降伏を引き起こす可能性がある。一方、半導体層22は、不純物濃度が高いため、キャリア寿命が短い。分離部20下端が不純物濃度の高い半導体層22に接する場合、分離部20下端近傍で熱的に励起されたキャリアが、空乏層DL1へ達し、アバランシェ降伏を引き起こす可能性は低減する。特に、n形半導体領域15を設けて、p形半導体領域14とn形半導体領域15との間に電圧が印加される場合に、素子10の分離部20近傍からのn形半導体領域13へのキャリアの拡散を抑制できる。
【0076】
[第4実施形態]
図20は、第4実施形態に係る光検出器を示す模式的断面図である。
図20に示した光検出器4のように、p形半導体領域12及びn形半導体領域13は、分離部20から離れていても良い。p形半導体領域11の一部が、p形半導体領域12と分離部20との間、及びn形半導体領域13と分離部20との間に設けられる。
【0077】
形半導体領域13が分離部20と接していると、分離部20を設けるための第1トレンチ106を形成した際に、n形半導体領域13外周における欠陥が増加する。欠陥の増加は、入射光によるパルスから遅れて出力されるアフターパルスの影響を増大させる。n形半導体領域13が分離部20から離れていると、n形半導体領域13外周における欠陥の数を低減でき、欠陥に起因するアフターパルスの影響を抑制できる。
【0078】
同様に、n形半導体領域15は、分離部20から離れている。p形半導体領域14の一部は、n形半導体領域15と分離部20との間に設けられる。これにより、分離部20の周囲に形成される結晶欠陥から離れて、n形半導体領域15を形成できる。これにより、光検出器4の信頼性が向上する。
【0079】
[第5実施形態]
図21は、第5実施形態に係る光検出器を示す模式的平面図である。
図21に示す光検出器5のように、分離部20は、絶縁領域20I及び金属領域20Mを含んでも良い。絶縁領域20Iは、素子10と金属領域20Mとの間、p形半導体領域14と金属領域20Mとの間、及びn形半導体領域15と金属領域20Mとの間に設けられる。
【0080】
金属領域20Mは、素子10、p形半導体領域14、及びn形半導体領域15とは、電気的に分離される。金属領域20Mの電位は、フローティングであっても良いし、固定されても良い。
【0081】
例えば、絶縁領域20Iは、酸化シリコン又は窒化シリコンなどの絶縁材料を含む。金属領域20Mは、タングステン、アルミニウム、チタン、及び銅からなる群より選択された少なくとも1つの金属を含む。金属領域20Mは、金属とシリコンの化合物を含んでも良い。金属領域20Mは、複数の金属層を含んでも良い。例えば、金属領域20Mは、タングステン層、窒化チタン層、及びチタン層を含む。窒化チタン層は、タングステン層と絶縁領域20Iとの間に設けられる。チタン層は、窒化チタン層と絶縁領域20Iとの間に設けられる。
【0082】
分離部20が金属領域20Mを含むことで、分離部20が絶縁材料のみから構成される場合に比べて、二次光子がさらに反射され易くなる。これにより、クロストークノイズをさらに低減できる。
【0083】
[第6実施形態]
図22は、第6実施形態に係る光検出器を示す模式的平面図である。
図22に示す光検出器6のように、分離部20は、絶縁領域20I及び空隙Vを含んでも良い。絶縁領域20Iは、素子10と空隙Vとの間、p形半導体領域14と空隙Vとの間、及びn形半導体領域15と空隙Vとの間に設けられる。
【0084】
二次光子は、素子10と分離部20との界面や、分離部20とp形半導体領域14との界面によって反射される。光検出器6によれば、二次光子は、さらに、絶縁領域20Iと空隙Vとの界面で反射される。これにより、クロストークノイズをさらに低減できる。
【0085】
また、空隙Vが設けられることで、素子10、p形半導体領域14、分離部20で発生する応力を緩和できる。例えば、光検出器6の製造中に、クラック等が発生することを抑制できる。これにより、光検出器6の歩留まりを向上できる。
【0086】
[第7実施形態]
図23は、第7実施形態に係る光検出器を示す模式的平面図である。
第7実施形態に係る光検出器7は、図23に示すように、第2クエンチ部32をさらに含む点で、光検出器1とは異なる。第2クエンチ部32は、第2配線42と電気的に接続される。図23の例では、第2クエンチ部32は、第2配線42と第2パッド52との間に設けられ、これらと電気的に接続される。
【0087】
第2クエンチ部32は、大きな電圧降下を生じさせる抵抗体であっても良いし、アクティブクエンチ回路を含んでも良い。第2パッド52の電位を、第1パッド51の電位と同じに設定したとき、第2クエンチ部32は、n形半導体領域15の表面電位を調整するために設けられる。例えば、第2クエンチ部32が、大きな電圧降下を生じさせる抵抗体の場合、p形半導体領域14とn形半導体領域15との間に流れる電流量を低減できる。この結果、n形半導体領域15の表面電位を固定しながら、素子10をより安定にガイガーモード動作させることができ、光検出器7の信頼性を向上できる。
【0088】
[第8実施形態]
図24は、第8実施形態に係るライダー(Laser Imaging Detection and Ranging:LIDAR)装置を例示する模式図である。
この実施形態は、ライン光源、レンズと構成され長距離被写体検知システム(LIDAR)などに応用できる。ライダー装置5001は、対象物411に対してレーザ光を投光する投光ユニットTと、対象物411からのレーザ光を受光しレーザ光が対象物411までを往復してくる時間を計測し距離に換算する受光ユニットR(光検出システムともいう)と、を備えている。
【0089】
投光ユニットTにおいて、光源404は、光を発する。例えば、光源404は、レーザ光発振器を含み、レーザ光を発振する。駆動回路403は、レーザ光発振器を駆動する。光学系405は、レーザ光の一部を参照光として取り出し、そのほかのレーザ光をミラー406を介して対象物411に照射する。ミラーコントローラ402は、ミラー406を制御して対象物411にレーザ光を投光する。ここで、投光とは、光を当てることを意味する。
【0090】
受光ユニットRにおいて、参照光用光検出器409は、光学系405によって取り出された参照光を検出する。光検出器410は、対象物411からの反射光を受光する。距離計測回路408は、参照光用光検出器409で検出された参照光と光検出器410で検出された反射光に基づいて、対象物411までの距離を計測する。画像認識システム407は、距離計測回路408で計測された結果に基づいて、対象物411を認識する。
【0091】
ライダー装置5001は、レーザ光が対象物411までを往復してくる時間を計測し距離に換算する光飛行時間測距法(Time of Flight)を採用している。ライダー装置5001は、車載ドライブ-アシストシステム、リモートセンシング等に応用される。光検出器410として上述した実施形態の光検出器を用いると、特に近赤外線領域で良好な感度を示す。このため、ライダー装置5001は、人が不可視の波長帯域への光源に適用することが可能となる。ライダー装置5001は、例えば、移動体向け障害物検知に用いることができる。
【0092】
図25は、ライダー装置の検出対象の検出を説明するための図である。
光源3000は、検出対象となる物体600に光412を発する。光検出器3001は、物体600を透過あるいは反射、拡散した光413を検出する。
【0093】
光検出器3001は、例えば、上述した本実施形態に係る光検出器を用いると、高感度な検出を実現できる。なお、光検出器410および光源404のセットを複数設け、その配置関係を前もってソフトウェア(回路でも代替可)に設定しておくことが好ましい。光検出器410および光源404のセットの配置関係は、例えば、等間隔で設けられることが好ましい。それにより、各々の光検出器410の出力信号を補完しあうことにより、正確な三次元画像を生成することができる。
【0094】
図26は、第8実施形態に係るライダー装置を備えた移動体の上面略図である。
図26の例では、移動体は、車である。本実施形態に係る車両700は、車体710の4つの隅にライダー装置5001を備えている。本実施形態に係る車両は、車体の4つの隅にライダー装置を備えることで、車両の全方向の環境をライダー装置によって検出することができる。
【0095】
移動体は、図26に表した車以外に、ドローン、ロボットなどであっても良い。ロボットは、例えば、無人搬送車(AGV)である。これらの移動体の4つの隅にライダー装置を備えることで、移動体の全方向の環境をライダー装置によって検出することができる。
【0096】
本願明細書において、「垂直」及び「平行」は、厳密な垂直及び厳密な平行だけではなく、例えば製造工程におけるばらつきなどを含むものであり、実質的に垂直及び実質的に平行であれば良い。
【0097】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明の実施形態は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、光検出器に含まれるp形半導体領域、p形半導体領域、n形半導体領域、分離部、電極、半導体層、絶縁層、クエンチ部、レンズ、配線、プラグ、パッド、セル領域、外周領域などの各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
【0098】
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0099】
その他、本発明の実施の形態として上述した光検出器、光検出システム、ライダー装置、及び移動体を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての光検出器、光検出システム、ライダー装置、及び移動体も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
【0100】
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【0101】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
1~5,1r:光検出器、 10:素子、 11:p形半導体領域、 12:p形半導体領域、 13:n形半導体領域、 14:p形半導体領域、 15:n形半導体領域、 20:分離部、 20a:第1延在部分、 20b:第2延在部分、 20c:連結部分、 20I:絶縁領域、 20M:金属領域、 21:電極、 22:半導体層、 23~26:絶縁層、 31:第1クエンチ部、 32:第2クエンチ部、 35:レンズ、 35a:樹脂層、 41:第1配線、 41a:プラグ、 41b:配線、 41c:プラグ、 41d:プラグ、 42:第2配線、 42a:プラグ、 50:共通配線、 51:第1パッド、 52:第2パッド、 100a:シリコン基板、 101:シリコンエピ層、 102:シリコン酸化膜、 103:シリコン酸化膜、 104:素子分離領域、 105:レジスト、 106:第1トレンチ、 107:シリコン酸化膜、 108:素子領域、 109:p形アバランシェ層、 112:クエンチ抵抗、 113a:n形アバランシェ層、 113b:n形アバランシェ層、 114,118:絶縁膜、 119:コンタクトホール、 120:チタン膜、 121:窒化チタン膜、 122:タングステン膜、 123:アルミニウム層、 125:コンタクトホール、 126:チタン膜、 127:窒化チタン膜、 128:タングステン膜、 129:アルミニウム層、 130:パッシベーション膜、 402:ミラーコントローラ、 403:駆動回路、 404:光源、 405:光学系、 406:ミラー、 407:画像認識システム、 408:距離計測回路、 409:参照光用光検出器、 410:光検出器、 411:対象物、 412,413:光、 600:物体、 700:車両、 710:車体、 1061:シリコン酸化膜、 1063:埋め込み酸化膜、 3000:光源、 3001:光検出器、 5001:ライダー装置、 CR:セル領域、 DL1,DL2:空乏層、 OR:外周領域、 R:受光ユニット、 T:投光ユニット、 V:空隙、 θ1,θ2:角度
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