(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
B62D 61/10 20060101AFI20240405BHJP
B62D 49/08 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
B62D61/10
B62D49/08 Z
(21)【出願番号】P 2021101773
(22)【出願日】2021-06-18
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】井田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】平岡 実
(72)【発明者】
【氏名】石川 淳一
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 竣也
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-235692(JP,A)
【文献】特開2020-001442(JP,A)
【文献】特開2020-135622(JP,A)
【文献】特表2018-528037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 61/10 ー 61/12
B62D 49/08
A61G 5/04 - 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体の左右両側における前後夫々に位置する複数の走行車輪と、
前記車両本体に支持されるとともに、複数の前記走行車輪を前記車両本体に対して位置変更可能に支持する支持機構と、
前記支持機構の動作を制御する制御装置と、が備えられ、
前記支持機構は、
前記車両本体の前側及び後側のそれぞれに設けられ且つ横軸芯周りで揺動可能に支持された第一リンクと、
前記第一リンクに横軸芯周りで揺動可能に支持され且つ前記複数の走行車輪を回転自在に支持する第二リンクと、
伸縮動作によって、少なくとも前記第一リンク及び前記第二リンクを揺動する油圧シリンダと、を含み、
前記制御装置は、
前記車両本体の前側の前記第一リンクを進行方向前側に揺動させるように前記油圧シリンダの伸縮動作を制御することによって進行方向前側の前記走行車輪を前記車両本体に対して進行方向前側に移動させる前輪移動処理と、
前記車両本体の前側及び後側のそれぞれの前記第一リンクを進行方向後側に揺動させるように前記油圧シリンダの伸縮動作を制御することによって前記車両本体を進行方向前側に移動させる本体移動処理と、
前記車両本体の後側の前記第一リンクを進行方向前側に揺動させるように前記油圧シリンダの伸縮動作を制御することによって進行方向後側の前記走行車輪を前記車両本体に対して進行方向前側に移動させる後輪移動処理と、
を順次行うことにより車体を移動させるように、前記支持機構の動作を制御する車体移動制御を実行する作業車。
【請求項2】
前記制御装置が、前記前輪移動処理を実行するに先立って、車体重心位置を進行方向後側に寄せるとともに、進行方向後側の前記走行車輪を駆動停止させる請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
複数の前記走行車輪を各別に回転駆動可能な車輪駆動手段が備えられ、
前記制御装置が、前記前輪移動処理において、進行方向前側の前記走行車輪を回転駆動させるように前記車輪駆動手段の作動を制御する請求項1又は2に記載の作業車。
【請求項4】
複数の前記走行車輪を各別に回転駆動可能な車輪駆動手段が備えられ、
前記制御装置が、前記後輪移動処理において、進行方向後側の前記走行車輪を回転駆動させるように前記車輪駆動手段の作動を制御する請求項1から3のいずれか一項に記載の作業車。
【請求項5】
前記車輪駆動手段は、前記走行車輪を各別に駆動可能な複数の油圧モータにて構成されている請求項3又は4に記載の作業車。
【請求項6】
前記支持機構は、複数の前記走行車輪の夫々を前記車両本体に対して昇降可能に支持する複数の屈折リンク機構を備えている請求項1から5のいずれか一項に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸等が存在する不整地を走行するのに適した作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記したような作業車として、従来では、車両本体に対して支持機構としての屈折リンク機構を介して4つの走行車輪が支持され、車両本体に対する走行車輪の高さを変更させることにより、地面に凹凸があっても走行車輪が接地追従しながら回転駆動することによって車両本体の姿勢を維持しながら走行できるようにしたものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成では、車体が移動するときは、走行車輪を駆動回転させることにより走行する構成となっているので、例えば、走行車輪が泥濘に入った場合、あるいは、砂地や草木が茂って表面が軟弱になっている路面を走行する場合であれば、走行車輪が路面に対して空回りして駆動力が伝えられず確実な走行が行えないおそれがある。
【0005】
そこで、走行車輪が空回りするおそれがある場合であっても、車体移動を可能にすることが要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る作業車の特徴構成は、車両本体の左右両側における前後夫々に位置する複数の走行車輪と、前記車両本体に支持されるとともに、複数の前記走行車輪を前記車両本体に対して位置変更可能に支持する支持機構と、前記支持機構の動作を制御する制御装置と、が備えられ、前記支持機構は、前記車両本体の前側及び後側のそれぞれに設けられ且つ横軸芯周りで揺動可能に支持された第一リンクと、前記第一リンクに横軸芯周りで揺動可能に支持され且つ前記複数の走行車輪を回転自在に支持する第二リンクと、伸縮動作によって、少なくとも前記第一リンク及び前記第二リンクを揺動する油圧シリンダと、を含み、前記制御装置は、前記車両本体の前側の前記第一リンクを進行方向前側に揺動させるように前記油圧シリンダの伸縮動作を制御することによって進行方向前側の前記走行車輪を前記車両本体に対して進行方向前側に移動させる前輪移動処理と、前記車両本体の前側及び後側のそれぞれの前記第一リンクを進行方向後側に揺動させるように前記油圧シリンダの伸縮動作を制御することによって前記車両本体を進行方向前側に移動させる本体移動処理と、前記車両本体の後側の前記第一リンクを進行方向前側に揺動させるように前記油圧シリンダの伸縮動作を制御することによって進行方向後側の前記走行車輪を前記車両本体に対して進行方向前側に移動させる後輪移動処理と、を順次行うことにより車体を移動させるように、前記支持機構の動作を制御する車体移動制御を実行する点にある。
【0007】
本発明によれば、車体移動制御を実行するときは、先ず、進行方向前側の走行車輪を車両本体に対して進行方向前側に移動させる。このとき、進行方向前側の走行車輪は、回転駆動してもよいが、自由回転させてもよく、回転停止させる状態でもよい。次に、車両本体を進行方向前側に移動させる。車両本体の移動によって車両本体の重心位置が進行方向下手側の走行車輪により多くの荷重が支持される状態となる。その後、進行方向後側の走行車輪を車両本体に対して進行方向前側に移動させる。このとき、進行方向後側の走行車輪に対しては、荷重負担が少ないので、車両本体は進行方向前側に移動したまま、進行方向後側の走行車輪だけを進行方向前側に引き寄せることができる。
【0008】
その結果、車体移動制御を実行することによって、走行車輪が駆動回転によって車体を移動させるように推進力を発揮できない場合であっても、車体を確実に移動させることができる。
【0009】
従って、走行車輪が空回りするおそれがある場合であっても、車体移動を可能にすることが可能な作業車を提供できるに至った。
【0010】
本発明においては、前記制御装置が、前記前輪移動処理を実行するに先立って、車体重心位置を進行方向後側に寄せるとともに、進行方向後側の前記走行車輪を駆動停止させると好適である。
【0011】
本構成によれば、車体重心位置が進行方向後側に寄った状態であるから、進行方向前側の走行車輪に対する荷重負担が少ない状態となり、しかも、進行方向後側の走行車輪を停止しているので、前輪移動処理を円滑に行い易い。
【0012】
本発明においては、複数の前記走行車輪を各別に回転駆動可能な車輪駆動手段が備えられ、前記制御装置が、前記前輪移動処理において、進行方向前側の前記走行車輪を回転駆動させるように前記車輪駆動手段の作動を制御すると好適である。
【0013】
本構成によれば、進行方向前側の走行車輪を回転駆動させながら前輪移動処理を実行するので、進行方向前側の走行車輪の移動が円滑に行われる。
【0014】
本発明においては、複数の前記走行車輪を各別に回転駆動可能な車輪駆動手段が備えられ、前記制御装置が、前記後輪移動処理において、進行方向後側の前記走行車輪を回転駆動させるように前記車輪駆動手段の作動を制御すると好適である。
【0015】
本構成によれば、進行方向後側の走行車輪を回転駆動させながら後輪移動処理を実行するので、進行方向後側の走行車輪の移動が円滑に行われる。
【0016】
本発明においては、前記車輪駆動手段は、前記走行車輪を各別に駆動可能な複数の油圧モータにて構成されていると好適である。
【0017】
走行駆動が油圧モータにて行われるよう構成されているから、水分や細かな塵埃等による影響を受け難く耐久性に優れる。
【0018】
本発明においては、前記支持機構は、複数の前記走行車輪の夫々を前記車両本体に対して昇降可能に支持する複数の屈折リンク機構を備えていると好適である。
【0019】
本構成によれば、支持機構として、複数のリンク同士を揺動可能に連結するという簡単な構成の屈折リンク機構を用いることで、簡単な構造で安価に構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、以下の説明においては、図中に示される矢印FRの方向を「前」、矢印BKの方向を「後」、矢印RHの方向を「右」、矢印LHの方向を「左」、矢印UPの方向を「上」、矢印DWの方向を「下」とする。
【0022】
図1,2に示すように、作業車には、車両全体を支持する平面視で略矩形状の車両本体1と、車両本体1を支持する複数の走行車輪2と、複数の走行車輪2の夫々に対応して設けられた複数の補助車輪3と、複数の走行車輪2を車両本体1に対して位置変更可能に支持する支持機構Aと、複数の走行車輪2を各別に駆動する複数の油圧モータ6とが備えられている。
【0023】
走行車輪2は、車両本体1の左右両側における前後夫々に位置する。本実施形態では、作業車は、左前、右前、左後、及び右後の4つの走行車輪2を備える。又、左前、右前、左後、及び右後の4つの支持機構Aを備える。支持機構Aは、屈折リンク機構4と、屈折リンク機構4の姿勢を個別に変更可能な複数の油圧シリンダ29,30と、を備えている。
【0024】
車両本体1には、全体を支持する矩形枠状の車体フレーム7と、油圧シリンダ29,30に向けて作動油を送り出す油圧供給源8と、油圧供給源8から姿勢変更操作手段5に供給される作動油を制御する弁機構9とが備えられている。油圧供給源8は、エンジンによって駆動される油圧ポンプを備えている。弁機構9の上側には、弁機構9の作動を制御するECU13(Electronic Control Unit)が備えられている。ECU13は、マイクロコンピュータを備えており、制御プログラムに従って種々の制御を実行可能である。油圧制御弁11及びECU13により、制御装置Cが構成されている。
【0025】
〔支持機構〕
上述したように、支持機構Aは、屈折リンク機構4と複数の油圧シリンダ29,30と、を備えている。
図1に示すように、複数(具体的には4つ)の走行車輪2は、屈折リンク機構4を介して車両本体1に対して各別に昇降可能に支持されている。屈折リンク機構4は、縦軸芯Y周りで回動可能に車体フレーム7に支持され、屈折リンク機構4を旋回操作させる旋回用油圧シリンダ(以下、旋回シリンダと称する)18が備えられている。
【0026】
屈折リンク機構4には、縦軸芯Y周りで回動可能に車体フレーム7に支持される基端部24と、上側端部が基端部24の下部に横軸芯X1周りで回動可能に支持された第一リンク25と、一端部が第一リンク25の下側端部に横軸芯X2周りで回動可能に支持され且つ他端部に走行車輪2が支持された第二リンク26とが備えられている。
【0027】
図2に示すように、走行車輪2は、第二リンク26の揺動側端部において、左右方向の車体外方側に位置する状態で支持されている。油圧モータ6は、第二リンク26の揺動側端部において、左右方向の車体内方側(走行車輪2とは反対側)に位置する状態で支持されている。
【0028】
複数の屈折リンク機構4の夫々に対応して、屈折リンク機構4の姿勢を各別に変更可能な複数の油圧シリンダ29,30が備えられている。すなわち、車両本体1に対する第一リンク25の揺動姿勢を変更可能な第一油圧シリンダ29と、第一リンク25に対する第二リンク26の揺動姿勢を変更可能な第二油圧シリンダ30と、が備えられている。第一油圧シリンダ29及び第二油圧シリンダ30は、夫々、第一リンク25の近傍に集約して配置されている。
【0029】
第二油圧シリンダ30の作動を停止した状態で第一油圧シリンダ29を伸縮操作すると、第一リンク25、第二リンク26及び走行車輪2の夫々が、相対的な姿勢を一定に維持したまま一体的に、基端部24に対する枢支連結箇所の横軸芯X1周りで揺動する。第一油圧シリンダ29の作動を停止した状態で第二油圧シリンダ30を伸縮操作すると、第一リンク25の姿勢が一定に維持されたまま、第二リンク26及び走行車輪2が、一体的に、第一リンク25と第二リンク26との連結箇所の横軸芯X2周りで揺動する。
【0030】
複数の屈折リンク機構4夫々の中間屈折部に回転可能に補助車輪3が支持されている。補助車輪3は走行車輪2と略同じ外径の車輪にて構成されている。第一リンク25と第二リンク26とを枢支連結する支軸が車体横幅方向外方側に突出するように延長形成され、支軸の延長突出箇所に補助車輪3が回動可能に支持されている。
【0031】
図示はしないが、屈折リンク機構4、走行車輪2、補助車輪3、及び、油圧シリンダ29,30の夫々が、旋回シリンダ18の操作により、一体的に縦軸芯周りで回動することにより旋回操作させることができる。
【0032】
油圧モータ6に対応する油圧制御弁11により作動油の流量調整が行われることで、油圧モータ6の回転速度すなわち走行車輪2の回転速度を変更することができる。油圧制御弁11は制御装置Cによって制御される。
【0033】
〔センサ〕
この作業車は種々のセンサを備える。
図1、
図3に示すように、4つの第二油圧シリンダ30の夫々について、ヘッド側圧力センサS1及びキャップ側圧力センサS2を備える。ヘッド側圧力センサS1は、第二油圧シリンダ30のヘッド側室の油圧を検出する。キャップ側圧力センサS2は、第二油圧シリンダ30のキャップ側室の油圧を検出する。
【0034】
図3に示すように、4つの第一油圧シリンダ29及び4つの第二油圧シリンダ30の夫々について、伸縮操作量を検出可能な複数のストロークセンサS3を備える。各油圧シリンダ29,30の伸縮操作量は、操作対象である第一リンク25及び第二リンク26の揺動位置に対応する検出値である。
【0035】
図1、
図3に示すように、車両本体1には、傾斜状態検出手段としての傾斜センサS4が備えられている。傾斜センサS4は、周知の構成である慣性計測装置(Inertial Measurement Unit)(IMU)を用いて構成されている。IMUは、三軸加速度センサとジャイロセンサとを有し、車両本体1の姿勢変化状態、具体的には、前後方向並びに左右方向の傾きを検知することができる。
【0036】
走行車輪2には、油圧モータ6により駆動される走行車輪2の回転速度を検出する回転センサS5が備えられている。回転センサS5にて検出された走行車輪2の回転速度に基づいて、走行車輪2の回転速度が目標の値となるように、油圧モータ6への作動油の供給が制御される。油圧モータ6に供給される作動油の圧力を検出する圧力センサS6が備えられている。圧力センサS6にて検出された作動油の圧力に基づいて、走行車輪2の駆動トルクが目標の値となるように、油圧モータ6への作動油の供給(圧力)が制御される。
【0037】
4つの旋回シリンダ18の夫々について、伸縮操作量を検出可能なストロークセンサS7を備える。旋回シリンダ18の伸縮操作量は、操作対象である屈折リンク機構4の回動位置(旋回角)に対する検出値である。
【0038】
この作業車は、
図1、
図4に示すように、4個の走行車輪2が全て接地し且つ4個の補助車輪3が全て地面から浮上する4輪走行状態が通常の走行形態である。このとき、第一リンク25が略鉛直姿勢で上下方向に延び、第二リンク26が略水平姿勢で前後方向に延びる状態となっている。詳述はしないが、走行形態としては、この形態以外に、屈折リンク機構4を姿勢変更することにより、種々の走行形態を採ることができる。
【0039】
〔ECU〕
図3に示すように、ECU13は、姿勢制御部100及び走行制御部101を備えている。走行制御部101は、上記したような通常の走行形態において移動走行するときは、4個の走行車輪の夫々について、回転センサS5にて検出された走行車輪22の回転速度が目標速度となり、かつ、圧力センサS6にて検出される駆動トルクが目標の値となるように、油圧モータ6の作動を制御する。
【0040】
姿勢制御部100は、上記したような通常の走行形態において移動走行するときは、傾斜センサS4の検出情報に基づいて車両本体1が水平姿勢になるように支持機構Aの動作を制御する水平制御を実行する。
【0041】
水平制御において、姿勢制御部100は、傾斜センサS4の検出情報に基づいて、車両本体1の水平姿勢からの前後方向での傾斜角及び左右方向での傾斜角が水平姿勢に対応する値になるように、4個の第一油圧シリンダ29及び4個の第二油圧シリンダ30の作動を制御する。
【0042】
しかし、例えば、走行車輪2が泥濘に入った場合、あるいは、砂地や草木が茂って表面が軟弱になっている路面を走行する場合等においては、油圧モータ6の作動によって走行車輪2を回転駆動しても、空回りして良好な移動走行が行えないおそれがある。
【0043】
そこで、このような場合には、ECU13は、走行車輪2の回転によらなくても車体を移動させることが可能な車体移動制御を実行するよう構成されている。
【0044】
〔車体移動制御〕
次に、車体移動制御について説明する。
尚、この車体移動制御を開始するタイミングとしては、操作者が無線操縦によって制御を開始させるようにしてもよく、又、走行車輪2が空回りしていることが検知されると、その検知結果に基づいて自動で開始させるようにしてもよい。
【0045】
図4~
図8の動作説明図と
図9のフローチャートとを参照しながら、ECU13により実行される車体移動制御について説明する。
【0046】
制御が開始されると、支持機構Aの状態が
図4に示すような基準姿勢となるように姿勢変更する(ステップ♯01)。すなわち、
図1に示すような通常の走行形態に対して、前後の走行車輪2が互いに前後方向に沿って近づくように第一リンク25が内向きに揺動した姿勢となっている。
【0047】
そして、上記したような基準姿勢から車体の重心位置Gが車体の後側に移動するように支持機構A(屈折リンク機構4)による姿勢変更操作を実行する(ステップ♯02)。
【0048】
尚、傾斜センサS4により検出される車両本体1の水平姿勢からの傾斜状態と、ストロークセンサS3により検出される支持機構Aの状態(第一リンク25の傾斜角と第二リンク26の傾斜角等)とにより、実際の重心位置Gを演算にて求めることもできるが、ここでは、実際の重心位置Gを求めるのではなく、進行方向前側に位置する走行車輪2(以下、前側走行車輪という)と、進行方向後側に位置する走行車輪2(以下、後側走行車輪という)との間での間隔(ホイールベース)の中央位置よりも進行方向の後側に大きく寄せるように大まかな移動操作とする。
【0049】
次に、前側走行車輪2を車両本体1に対して進行方向前側へ移動させる(ステップ♯03)。例えば、前側走行車輪2を支持する第二リンク26を水平姿勢に維持しながら第一リンク25を前方側へ揺動操作して前方側へ移動させる。この処理が前輪移動処理に対応する。
【0050】
上記前輪移動処理を実行するときは、前側走行車輪2を接地追従させながら進行方向に向けて回転駆動する。一方、後側走行車輪2は回転を停止させる。
【0051】
このように車体の重心位置Gを後側に寄せて、後側走行車輪側に荷重を多くさせ、かつ、後側走行車輪2を回転停止させた状態で、前側走行車輪2を移動させるので、前側走行車輪2が移動し易いものとなる。
【0052】
次に、前側走行車輪2及び後側走行車輪2を共に回転停止させた状態で、車両本体1を進行方向前側へ移動させる(ステップ♯04)。この処理が本体移動処理に対応する。この処理により車体の重心位置Gが前方側に寄った状態となる。
【0053】
さらに、その後、後側走行車輪2を車両本体1に対して進行方向前側に移動させる。この処理が後輪移動処理に対応する。この後輪移動処理を実行するときは、後側走行車輪2を接地追従させながら進行方向に向けて回転駆動する。一方、前側走行車輪2は、回転を停止させる。
【0054】
後輪移動処理を実行したのちは、
図4に示す基準姿勢と同じ基準姿勢となる(
図8参照)が、車体は前進方向側に少し移動した状態となる。
【0055】
このように車体重心位置を前側に寄せて、前側走行車輪側にかかる荷重を多くし、かつ、前側走行車輪2を回転停止させた状態で、後側走行車輪2を移動させるので、後側走行車輪が移動し易いものとなる。
【0056】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、車体移動制御において、前輪移動処理を実行するに先立って、車体の重心位置Gを進行方向後側に寄せるとともに、後側走行車輪2を駆動停止させる構成としたが、この構成に代えて、前輪移動処理を実行するに先立って、重心位置Gを進行方向後側に寄せる処理だけを実行する構成、あるいは、後側走行車輪2を駆動停止させる処理だけを実行する構成としてもよく、それらの処理をいずれも実施しないようにしてもよい。
【0057】
(2)上記実施形態では、前輪移動処理において前側走行車輪2を回転駆動させるようにしたが、自由回転状態にしてもよく、回転を停止させるようにしてもよい。
【0058】
(3)上記実施形態では、後輪移動処理において後側走行車輪2を回転駆動させるようにしたが、自由回転状態にしてもよく、回転を停止させるようにしてもよい。
【0059】
(4)上記実施形態では、車体は常に走行車輪2が地面に接地することにより支持される構成としたが、例えば、走行車輪2よりも下方側に突出して接地する状態と、走行車輪2の接地部よりも上方に退避する状態と、に姿勢切り換え可能な支持脚を備える構成でもよい。そして、前輪移動処理及び後輪移動処理を実行するときに、支持脚を接地状態にして、車両本体1を位置保持させるようにしてもよい。
【0060】
(5)支持機構Aの態様は上述のものに限定されない。例えば、支持機構Aが、1つのリンク、又は3つ以上のリンクを備える機構であってもよい。
【0061】
(6)支持機構Aの姿勢を変更する装置として、油圧シリンダ29,30に代えて、電動のアクチュエータを備えるものでもよい。
【0062】
(7)走行車輪2が、電動モータやエンジン等により駆動される構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、凹凸等が存在する不整地を走行するのに適した作業車に適用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 車両本体
2 走行車輪
4 屈折リンク機構
6 車輪駆動手段(油圧モータ)
A 支持機構
C 制御装置