(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】建築物の屋根構造体
(51)【国際特許分類】
E04D 13/15 20060101AFI20240405BHJP
E04B 1/70 20060101ALI20240405BHJP
E04B 7/18 20060101ALI20240405BHJP
E04D 3/38 20060101ALI20240405BHJP
E04D 3/40 20060101ALI20240405BHJP
E04D 12/00 20060101ALI20240405BHJP
E04D 13/152 20060101ALI20240405BHJP
E04D 13/16 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
E04D13/15 M
E04B1/70 E
E04B7/18 B
E04D3/38 G
E04D3/40 H
E04D12/00 C
E04D12/00 N
E04D13/152 A
E04D13/16 A
(21)【出願番号】P 2021177320
(22)【出願日】2021-10-29
【審査請求日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2021020918
(32)【優先日】2021-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000200323
【氏名又は名称】JFE鋼板株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】毛利 和也
(72)【発明者】
【氏名】真部 貴行
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-205331(JP,U)
【文献】実開昭59-051905(JP,U)
【文献】特開2000-087513(JP,A)
【文献】特開2000-291214(JP,A)
【文献】実開昭57-31427(JP,U)
【文献】実公昭50-2262(JP,Y1)
【文献】特開平06-229088(JP,A)
【文献】米国特許第06401412(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2002/0050104(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/15
E04D 13/152
E04D 13/16
E04B 1/70
E04B 7/18
E04D 3/38
E04D 3/40
E04D 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
野地板の表面に覆い被さるルーフィングと、該ルーフィングを介して該野地板に固定される屋根材とを備えた建築物の屋根構造体であって、
前記屋根材は、建築物の軒先に沿って山部と谷部が交互に繰り返され、かつ、該山部、該谷部がそれぞれ該屋根の軒先から棟に向けて連続的に伸びる波形形状をなす板材からなり、
前記屋根の軒先側に位置する水下末端部で前記山部の内側空間内において立ち上がり、吹き込まれる雨水の侵入を防止するとともに、前記山部の高さよりも低く設定された止水板と、
前記山部の裏面と前記止水板の上端部との間に形成されるとともに、前記内側空間内に外気を自然吸気若しくは機械的な強制吸気により取り込んで
前記屋根の棟側から自然排気若しくは強制排気させる外気導入口
と、を有することを特徴とする建築物の屋根構造体。
【請求項2】
前記屋根材の少なくとも谷部は、屋根の軒先側に位置する水下末端部が、屋根の軒先先端部よりも水上側に位置するものであることを特徴とする請求項1に記載した建築物の屋根構造体。
【請求項3】
前記屋根材は、前記ルーフィングの上に設置、固定される軒先水切りを備え、該軒先水切りは、該ルーフィングの上に位置する本体部分と、該本体部分に片持ち状態で一体連結し、建築物の屋根の軒先先端部を覆う面戸からなり、
前記止水板は、前記本体部分に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載した建築物の屋根構造体。
【請求項4】
前記止水板は、幅方向の端部において隣接する止水板を相互につなぎ合わせるとともに屋根材の谷部をその下側面より支える連結片を有し、該連結片に、屋根の軒-棟に向けて貫通する水抜き孔を設けたことを特徴とする請求項
1~3のいずれか1項に記載した建築物の屋根構造体。
【請求項5】
前記ルーフィングは、屋根の小屋裏の湿気を野地板を通して前記内側空間内に放出可能な防水透湿ルーフィングであることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載した建築物の屋根構造体。
【請求項6】
前記屋根材を、建築物の軒先に沿って伸延し、屋根の軒から棟に向けて間隔をおいて配置される複数本の横桟を介して野地板に固定してなることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載した建築物の屋根構造体。
【請求項7】
前記横桟は、屋根の軒-棟方向に向けて貫通する少なくとも1つの水抜き孔を有することを特徴とする請求項6に記載した建築物の屋根構造体。
【請求項8】
前記屋根材を、前記ルーフィングと前記野地板との間で、かつ、前記山部の内側空間内に配置される複数本の縦桟を介して野地板に固定してなることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載した建築物の屋根構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸建や集合住宅、事務所、マンション、福祉施設、リゾート施設等の建築物の屋根に適用して好適な屋根構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建築物の屋根の通気構造に関する先行技術としては、例えば、特許文献1、2に開示されたものが知られているが、従来の通気構造は、複雑な構造からなる桟木あるいは複数の通気板を用いる必要があり、施工コストの上昇が避けられない不利があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-234533号公報
【文献】特開2008-121411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、簡素化された構造のもとに、屋根材と野地板との間において高い通気効率を保持し得る建築物の屋根構造体を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、野地板の表面に覆い被さるルーフィングと、該ルーフィングを介して該野地板に固定される屋根材とを備えた建築物の屋根構造体であって、前記屋根材は、建築物の軒先に沿って山部と谷部が交互に繰り返され、かつ、該山部、該谷部がそれぞれ該屋根の軒先から棟に向けて連続的に伸びる波形形状をなす板材からなり、該山部は、該屋根の軒先側に位置する水下末端部において該山部の内側空間と一直線に連なり、該山部の内側空間内に外気を自然吸気若しくは機械的な強制吸気により取り込んで屋根の棟側から自然排気若しくは強制排気させる外気導入口を有することを特徴とする建築物の屋根構造体である。
【0006】
上記の構成からなる建築物の屋根構造体において、前記屋根材の少なくとも谷部は、屋根の軒先側に位置する水下末端部が、屋根の軒先先端部よりも水上側に位置するものであること、前記屋根材は、前記ルーフィングの上に設置、固定される軒先水切りを備え、該軒先水切りは、該ルーフィングの上に位置する本体部分と、該本体部分に片持ち状態で一体連結し、建築物の屋根の軒先先端部を覆う面戸からなり、該本体部分に、該山部の内側空間内において立ち上がり、前記外気導入口を通して吹き込まれる雨水の侵入を防止する止水板を設けたこと、前記止水板は、幅方向の端部において隣接する止水板を相互につなぎ合わせるとともに屋根材の谷部をその下側面より支える連結片を有し、該連結片に、屋根の軒-棟に向けて貫通する水抜き孔を設けたこと、前記ルーフィングは、屋根の小屋裏の湿気を野地板を通して前記内側空間内に放出可能な防水透湿ルーフィングであること、前記屋根材を、建築物の軒先に沿って伸延し、屋根の軒から棟に向けて間隔をおいて配置される複数本の横桟を介して野地板に固定してなること、前記横桟は、屋根の軒-棟方向に向けて貫通する少なくとも1つの水抜き孔を有すること、さらに、前記屋根材を、前記ルーフィングと前記野地板との間で、かつ、前記山部の内側空間内に配置される複数本の縦桟を介して野地板に固定してなること、が課題解決のための具体的手段として好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、屋根材を、建築物の軒先に沿って山部と谷部が交互に繰り返され、かつ、該山部、該谷部がそれぞれ該屋根の軒先から棟に向けて連続的に伸びる波形形状をなす板材からなるものとし、該山部に、該屋根の軒先において該山部の内側空間と一直線に連なる向きに開放され、該山部の内側空間内に外気を自然吸気若しくは機械的な強制吸気により取り込んで該屋根の棟側から自然排気若しくは強制排気させる外気導入口を設けたことにより、簡素化された構造のもとに高い通気効率を保持することが可能となり、屋根材と野地板との間における温度上昇の抑制、湿気の抑制、建築物の小屋内、小屋組み、屋根に使用される木材の湿気の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明にしたがう建築物の屋根構造体の実施の形態を、部分的に取り出して模式的に示した外観斜視図である。
【
図2】
図1に示した屋根構造体において屋根材をルーフィングから引き離した状態を示した外観斜視図である。
【
図3】
図1に示した屋根構造体の軒-棟方向の断面を模式的に示した図である。
【
図4】
図1に示した屋根構造体の正面を示した図である。
【
図5】谷部を流れる雨水の減速状況の説明図である。
【
図6】本発明にしたがう建築物の屋根構造体の他の実施の形態を模式的に示した図である。
【
図7】
図6の正面の要部を拡大して示した図である。
【
図8】
図6に示した屋根構造体の分解状態を示した外観斜視図である。
【
図9】本発明にしたがう建築物の屋根構造体のさらに他の実施の形態を模式的に示した図である。
【
図10】
図9の正面の要部を拡大して示した図である。
【
図11】
図9に示した屋根構造体の分解状態を示した外観斜視図である。
【
図12】横桟を用いて屋根材を固定した場合と縦桟を用いて屋根材を固定した場合における「けらば」高さを比較した図である。
【
図13】実証実験棟の外観を示した図(参考写真)である。
【
図14】屋根材の表面温度、山部の内側空間(通気層)の温度の測定ポイントを示した図である。
【
図15】野地板含水率の測定結果の代表例を示したグラフである。
【
図16】山部の内側空間(通気層)の温度の測定結果の代表例を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明にしたがう建築物の屋根構造体の実施の形態を、部分的に取り出して模式的に示した外観斜視図であり、
図2は、
図1に示した屋根構造体において屋根材をルーフィングから引き離した状態を示した外観斜視図である。また、
図3は、
図1に示した屋根構造体の軒-棟方向の断面を模式的に示した図であり、
図4は、
図1に示した屋根構造体の正面図(軒先水切りの面戸は表示せず)である。
【0010】
図1~4における符号1は、建築物の屋根の下地を形成する野地板、2は、野地板1の表面に覆い被さるルーフィングである。ルーフィング2は、雨水の、野地板1側への侵入を防止する機能を有しており、アスファルトルーフィングや改質アスファルトルーフィングあるいは小屋裏の湿気を野地板1への表面側へと放出できる防水透湿ルーフィングが適用される。
【0011】
また、図における符号3は、ルーフィング2を介して野地板1に固定される屋根材である。屋根材3は、建築物の軒先に沿って山部3aと谷部3bが交互に繰り返され、かつ、山部3a、谷部3bがそれぞれ屋根の軒先から棟に向けて連続的に伸びる波形形状をなす板材が用いられる。なお、本発明において「軒先に沿って」とは、屋根材3が軒先に平行方向に配置される場合の他、多少の角度が付されて配置される場合を含むものとする。
【0012】
屋根材3としては、板厚が0.3~0.9mm程度の亜鉛めっき鋼板、アルミニウム-亜鉛めっき鋼板、ステンレス鋼板、銅板、塗装鋼板等からなる縦葺タイプあるいは横葺タイプの屋根材を用いることができるが、板厚や材質、葺きあげタイプについてはとくに限定されない。また、本発明の実施の形態では、軒から棟に向けて一定の間隔で山部3a、谷部3bに幅方向に伸延する段差dを形成したものを例として示したが、段差dを有しないストレートタイプの屋根材であってもかまわない。山部3aのピッチは30~200mm程度、高さは10~100mm程度に設定される。
【0013】
また、図における符号4は、山部3aの水下末端部3a1に設けられた外気導入口である。外気導入口4は、山部3aの内側空間Mと一直線に連なって開放されたものとなっており、山部3aの内側空間Mに外気を自然吸気により取り込み、
図3の矢印にしたがい屋根の棟側(換気棟)から屋根材3の谷部3bを経て自然排気させるものである。
【0014】
外気導入口4と屋根材3の谷部3bの水下末端部3b1は、屋根の軒先先端部よりも寸法L(少なくとも5mm程度)だけ水上側(軒側)に後退させた場合を例として示しているが、これにより、谷部3bを通って軒に向けて流下する雨水の速度を、寸法Lの範囲内で減速させることができるようになっている。なお、雨水の流下する速度を減速させるには、少なくとも谷部3bの、屋根の軒先側に位置する水下末端部3b1が屋根の軒先先端部よりも水上側に位置していればよく、外気導入口4については、屋根の軒先先端部に位置したものであってもよい。
【0015】
また、図における符号5は、ルーフィング2の上に設置、固定される軒先水切りである。軒先水切り5は、ルーフィング2の上に位置する本体部分5aと、該本体部分5aに片持ち状態で一体連結し、屋根の軒先先端部を覆う面戸5bから構成されており、本体部分5aには山部3aの内側空間M内において5~15mm程度の高さでもって立ち上がり、外気導入口4を通して吹き込まれた雨水の侵入を防止する止水板5cが設けられている。
【0016】
また、図における符号6は、止水板5cの幅方向の端部に設けられた連結片である。連結片6は、隣接する止水板5cを相互につなぎ合わせるとともに屋根材3の谷部3bをその下側面より支えるものである。また、符号7は、連結片6に設けられた水抜き孔であり、この水抜き孔7は、屋根の軒-棟に向けて連結片6を貫通するように設けられており、止水板5cを乗り越えて山部3aの内側空間M内に侵入した雨水を排出することができるようになっている。
【0017】
また、図における符号8は、屋根材3の山部3aの頂部から野地板1、桁あるいは母屋に打ち込まれ、屋根材3をルーフィング2を介して野地板1に固定するねじである。
【0018】
本発明にしたがう建築物の屋根構造体は、外気導入口4より自然吸気若しくは機械的に強制吸気された外気が、屋根材3の内側空間Mを通して通気され、屋根の棟側(換気棟)の、例えば、谷部3bを経て外界へと自然排気若しくは強制排気させることを可能とするものであり、簡素化された構造のもとで屋根材3と野地板1の間における通気効率を高めることができる。
【0019】
波形形状をなす屋根材3においては、谷部3bにおいて雨水が集中して流れるため、雨水の流下速度が比較的大きく、軒樋の受け口を幅広にしなければ谷部3bを流下する雨水が軒樋tを飛び越えてしまい軒樋tで雨水を受けることができないことも懸念されるが、本発明では、
図5に示すように、谷部3bを流下する雨水の速度を軒先水切り5の寸法Lの範囲で一旦流すことにより減速させることが可能であり、幅広の軒樋tを使用する必要がなく、軒樋tの選択の自由度が高い利点がある。
【0020】
図6は、本発明にしたがう建築物の屋根構造体の他の実施の形態を模式的に示した図であり、
図7は、
図6の正面の要部を拡大して示した図(軒先水切りは表示せず)である。また、
図8は、
図6に示した屋根構造体の分解状態を示した外観斜視図である。
【0021】
図6~8における符号9は、建築物の軒先に沿って伸延し、屋根の軒から棟に向けて間隔をおいて配置された横桟、10は、横桟9に設けられた水抜き孔である。水抜き孔10は、屋根の軒―棟方向に向けて横桟9を貫通するように形成されている。屋根材3は、横桟9を介して野地板1に固定される。
【0022】
屋根材3を、ねじ8を用いて直接野地板1あるいは桁、母屋等に固定した場合、野地板1には、ねじ8による穴が複数形成され、その穴を通して雨水が小屋裏に侵入することも懸念されるが、横桟9を介して屋根材3を野地板1に固定することにより野地板1に形成される穴の数を低減することができ、止水性の改善を図ることができる。
【0023】
図9は、本発明にしたがう建築物の屋根構造体のさらに他の実施の形態を模式的に示した図であり、
図10は、
図9の正面の要部を拡大して示した図(軒先水切りは表示せず)であり、
図11は、
図9に示した屋根構造体の分解状態を示した外観斜視図である。
【0024】
図9~11における符号11は、ルーフィング2と野地板1との間で、かつ、山部3aの内側空間M内に配される縦桟である。屋根材3は、縦桟11を用いて野地板1に固定することも可能である。この場合、ルーフィング2として防水透湿ルーフィングを用い、これを、縦桟11を覆うように配置することにより止水性のより一層の改善が望め、縦桟11の湿気も排出することができる。また、横桟9を用いて固定する場合に比べねじ8の長さを短縮することが可能であり、屋根材3の、野地板1に対する設置レベルを低くできる利点がある。
【0025】
図12は、横桟9を用いて屋根材3を固定した場合と縦桟11を用いて屋根材3を固定した場合における屋根の「けらば」高さを比較した図である。とくに、縦桟11を用いて屋根材を固定した場合にあっては、「けらば」高さH1を、横桟9を用いて屋根材3を固定した場合の「けらば」高さH2に比較して10mm以上低くすることが可能であり、屋根の「けらば」にシャープな印象を与え、美観の改善に寄与することができる。
【0026】
本発明にしたがう建築物の屋根構造体につき、
図13に示すような実証実験棟(実大モデルの屋根構造体であって、屋根の幅2m、長さ2.2m、屋根勾配2/10の切妻型)を作製し、この実証実験棟を用いて、通気の影響を受けると考えられる、野地板含水率、山部3aの内側空間(通気層)Mの温度の変動状況についての調査を行った。
【0027】
なお、上記の実証実験棟では、厚さ12mmの合板を野地板として使用し、その実証実験棟の室内には、エアコンと、湿度コントロール機能付きの加湿器を設置し、室内空間の温度と湿度が24時間一定(温度25℃、湿度50%)になるようにした。また、野地板含水率は、現場等で野地板が濡れた場合や小屋裏内が多湿状態になった場合を想定し、野地板含水率の初期値を60%程度以上の高い水準に設定し、その測定を、屋根面の4か所(北面水上、北面水下、南面水上、南面水下)で行った。屋根材の表面温度、山部3aの内側空間Mの温度の測定ポイントを
図14に示す。
【0028】
図15は、野地板含水率の測定結果の代表例を示したグラフであり、
図16は、山部3aの内側空間Mの温度の測定結果の代表例を示したグラフである。
【0029】
山部3aの内側空間Mがない屋根構造体にあっては、野地板1からの通気による屋外への湿気の放出が見込めないため野地板含水率の低下はあまり期待できず、結露、漏水等による野地板の腐朽による強度低下等の問題が生じやすかったが、本発明にしたがう屋根構造体においては、
図15に示すように、野地板含水率が20%(合板を野地板として使用した場合において野地板含水率が20%以下であれば、腐朽による強度低下が生じにくいとされている)に低下するまでわずか9日程度であり、山部3aの内側空間Mを通した湿気の屋外への放出により野地板1を短時間のうちに乾燥できることが確認された。
【0030】
また、山部3aの内側空間Mの温度については、
図16に示すように、通気なしの屋根構造体のシミュレーション結果と比較したところ、本発明にしたがう屋根構造体では、夏場の高温時間帯で最大18℃程度の温度低減効果があることが確認された。
【0031】
以上により、本発明にしたがう屋根構造体によれば、通気による野地板1の乾燥効果、山部3aの内側空間Mの温度の低減効果により建築物の室内空間の温度を低減できることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、構造の簡素化を図りつつも通気効率の高い屋根構造体が提供できる。
【符号の説明】
【0033】
1 野地板
2 ルーフィング
3 屋根材
3a 山部
3a1 水下末端部
3b 谷部
3b1 水下末端部
4 外気導入口
5 軒先水切り
5a 本体部分
5b 面戸
5c 止水板
6 連結片
7 水抜き孔
8 ねじ
9 横桟
10 水抜き孔
11 縦桟
d 段差
M 内側空間
L 寸法
t 軒樋
H1 「けらば」高さ
H2 「けらば」高さ