(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】フルオロポリマーコーティングを形成するためのフルオロポリマー溶液
(51)【国際特許分類】
C09D 127/12 20060101AFI20240405BHJP
C08F 214/18 20060101ALI20240405BHJP
C08F 216/14 20060101ALI20240405BHJP
C09D 7/20 20180101ALI20240405BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240405BHJP
【FI】
C09D127/12
C08F214/18
C08F216/14
C09D7/20
C09D7/63
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021197009
(22)【出願日】2021-12-03
(62)【分割の表示】P 2018541134の分割
【原出願日】2017-01-30
【審査請求日】2022-01-04
(32)【優先日】2016-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュードン チェン
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー ホプキンス
(72)【発明者】
【氏名】ロバート クレイトン ウェランド
【審査官】桜田 政美
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-231919(JP,A)
【文献】国際公開第2015/187413(WO,A1)
【文献】特開昭61-141713(JP,A)
【文献】特開平03-167214(JP,A)
【文献】国際公開第2004/067658(WO,A1)
【文献】特開平08-120212(JP,A)
【文献】特開平09-194538(JP,A)
【文献】特開2001-181551(JP,A)
【文献】特開2000-109694(JP,A)
【文献】特開2003-238894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 127/12
C08F 214/18
C08F 216/14
C09D 7/20
C09D 7/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマーコーティングを形成するための溶液であって、
i)有機溶媒と、
ii)フルオロポリマーであって、
(a)テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)、及びペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群から選択されるフルオロオレフィン;
(b)アルキル基が、C1~C6直鎖飽和炭化水素基、又はC3~C6分岐鎖若しくは環状飽和炭化水素基であるアルキルビニルエーテル、あるいは、アリール基が非置換若しくは置換されているアリールビニルエーテル;並びに
(c)式SiR1R2R3R4(式中、R1がビニルであり、R2、R3およびR4が分岐状C3~C6アルコキシ基から独立して選択される)を有するアルケニルシラン
である、モノマーから生じる繰り返し単位を含むフルオロポリマーと
を含み、前記フルオロポリマーが、50,000~330,000ダルトンの重量平均分子量を有し、前記フルオロポリマーは前記有機溶媒中に溶解されている、溶液。
【請求項2】
前記溶媒が、少なくとも50℃の標準沸点を有するケトン、グリコールエーテル、又はハロカーボンである、請求項1に記載の溶液。
【請求項3】
前記溶媒が、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートのうち少なくとも1つである、請求項1に記載の溶液。
【請求項4】
前記溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートである、請求項1に記載の溶液。
【請求項5】
前記アルケニルシランが、ビニルトリイソプロポキシシランである、請求項1に記載の溶液。
【請求項6】
0.5~35重量パーセントの前記フルオロポリマーを含有する、請求項1に記載の溶液。
【請求項7】
1マイクロメートルより大きい寸法の粒子が含まれない、請求項1に記載の溶液。
【請求項8】
前記フルオロポリマーが、テトラフルオロエチレン、メチルビニルエーテル、及びビニルトリイソプロポキシシランから生じる繰り返し単位を含み、前記溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであり、かつ前記溶液が、その溶液中に溶解した前記フルオロポリマーを15~25重量パーセント含有する、請求項1に記載の溶液。
【請求項9】
前記溶液が、光増感剤及び/又は光酸発生剤を更に含む、請求項1に記載の溶液。
【請求項10】
基材上にフルオロポリマーコーティングを形成するための方法であって、
(I)基材の少なくとも一部分上に溶液のコーティングを塗布する工程であって、前記溶液が、
i)有機溶媒と、
ii)フルオロポリマーであって、
(a)テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、並びにペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)、及びペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群から選択されるフルオロオレフィン;
(b)アルキル基が、C1~C6直鎖飽和炭化水素基、若しくはC3~C6分岐鎖若しくは環状飽和炭化水素基であるアルキルビニルエーテル、あるいは、アリール基が非置換若しくは置換されているアリールビニルエーテル;並びに
(c)式SiR1R2R3R4(式中、R1がビニルであり、R2、R3及びR4が分岐状C3~C6アルコキシ基から独立して選択される)アルケニルシラン
である、モノマーから生じる繰り返し単位を含むフルオロポリマーと
を含み、前記フルオロポリマーは前記有機溶媒中に溶解されている溶液である工程と、
(II)コーティングした溶液から前記有機溶媒の少なくとも一部を除去し、それにより前記フルオロポリマーコーティングを形成する工程と
を含み、前記フルオロポリマーが、50,000~330,000ダルトンの重量平均分子量を有する、方法。
【請求項11】
コーティングした溶液から前記有機溶媒の少なくとも一部を除去する前記工程(II)の後に、(III)前記フルオロポリマーを硬化させることを更に含む、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記フルオロポリマーコーティングが、0.025~100マイクロメートルの厚さを有する、
請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2016年2月5日に出願された米国特許仮出願第62/291,994号の利益を主張しており、その全内容が参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、有機溶媒及び溶解したフルオロポリマーを含むフルオロポリマーコーティングを形成するためのフルオロポリマー溶液を目的とする。フルオロポリマーは、フルオロオレフィン、アルキルビニルエーテル又はアリールビニルエーテル、及びアルケニルシランの重合から生じる繰り返し単位を含むコポリマーである。
【背景技術】
【0003】
ポリマーコーティングは、例えば、電気的絶縁体として並びに物理的及び化学的手段による損傷からデバイスを保護するためなど、多種多様な設備のための様々な工業用デバイスで用いられている。このような理由によって、ポリマーコーティングは、超小型回路電子デバイスにおけるパッシベーション層として使用される。ポリマーが、多数の電子的構成要素、回路及び層の相互接続のための三次元フレームワークを提供するために、感光性、すなわち光架橋性であり、画定された小型の寸法を有するポリマーパターンを形成する場合、これらのポリマーの有用性は極めて高くなる。電子デバイスのつくりが小型化に向かい、より高周波に移行し、かつ、より小さな消費電力を有するため、ポリイミドなどの通常使用されるポリマーは、例えば、より低い誘電率、より低い損失正接、及びより少ない水分吸収などに対する今までにない厳格な要求に応じることができていない。
【0004】
フッ素化されたポリマーが広範囲の化学物質に対して優れた耐性を有するコーティングを提供し、かつ高い熱安定性及び耐火性を有することから、フルオロポリマーコーティングは多くの好ましい特性を有し、一方で使用に際した加工の選択肢及び機械的特性を維持している。フッ素化されたポリマーが、低い誘電率、高い体積/表面抵抗率、及び高い誘電破壊電圧を有するコーティングを提供することは、電子及び通信産業にとって特に有用である。
【0005】
製造の容易さ及び低コストを含む様々な理由のために、多くの場合、ポリマーの溶液を用いて基材をコーティングすることにより、ポリマーコーティングを基材上に形成する。溶媒は、コーティングの後で除去されるキャリアであり、更に処理され得る堆積したポリマーコーティングを残存させる。
【0006】
産業界は、ポリマーコーティングを形成するために使用されるポリマー溶液に様々な要求を課す。このようなポリマー溶液は、長い貯蔵安定期間を有する必要がある。このような溶液が、通常は周囲条件ではあるが、しばしば周囲から大きく逸脱した温度で、配送及び保存を含むそれらの製造と使用の間の期間にわたって、不溶性残渣又はゲルの形成を示さないことが極めて好ましい。エレクトロニクス産業は、このようなポリマー溶液に更なる要求を課す。電子デバイスの製造用途のためのポリマー溶液は、デバイスの表面に堆積した場合にデバイスエラーを引き起こすであろう小粒子(例えば、サブミクロンの寸法)を実質的に含んではならない場合が多い。したがって、これらのポリマー溶液は、このような粒子を除去するためのサブミクロンフィルタによる迅速かつ容易な濾過を可能にする粘度である必要があるが、同時に、溶液が工業用の単一塗膜コーティング処理において有用な溶液であるような(溶解した)ポリマー含有量を有する。より分子量の大きいポリマーは、通常、基材に良好に接着し上質なフィルムを形成するコーティングをもたらすため、電気的用途及び機械的特性の観点から一般に好ましい。しかし、分子量が大きいほど、ポリマー溶液の溶解度は低くなり、粘度が高くなるのが一般的である。ポリマー溶液が粘稠すぎる場合、工業的に濾過することができず、コーティングを所望の厚さ又は均質度にすることができない。更に、ポリマーコーティングは、コーティングが起泡、剥離又は剥落して不所望に基材が曝されることのないように、電子デバイスの使用中及び寿命にわたって基材に対して優れた接着性を有する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの重要な要件を満たし、基材上の高性能フルオロポリマーコーティングからもたらされ得るフルオロポリマー溶液に対する電子及び電子関連産業からのニーズが継続して存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、フルオロポリマーコーティングを形成するための溶液に関する。本フルオロポリマー溶液によれば、基材上のフルオロポリマーコーティングを調製するために使用されるフルオロポリマー溶液に関連する上記の欠点及び他の問題のいくつかが、低減又は解消される。本フルオロポリマー溶液は、それらの製造と使用との間の期間にわたって不溶性残渣又はゲルの形成が最小限であるか又は形成されない長い貯蔵安定期間を有し、容易な濾過を可能する粘度であり、そのため不所望の小粒子(例えば、サブミクロンの寸法)を実質的に含まず、工業的な単一塗膜コーティング処理において有用な溶液であるような(溶解した)ポリマー含有量を有し、かつ電子デバイスの使用中及び寿命にわたって基材への優れた接着性を有する基材上のフルオロポリマーコーティングを提供する。
【0010】
本開示は、フルオロポリマーコーティングを形成するための溶液であって、i)有機溶媒と、ii)フルオロポリマーであって、(a)テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びペルフルオロ(メチルビニルエーテル)からなる群から選択されるフルオロオレフィン;(b)アルキル基がC1~C6の直鎖飽和炭化水素基、又はC3~C6分岐鎖若しくは環状飽和炭化水素基であるアルキルビニルエーテル、あるいはアリール基が非置換若しくは置換されているアリールビニルエーテル;並びに(c)SiR1R2R3R4(式中、R1がエチレン性不飽和炭化水素基であり、R2がアリール、アリール置換炭化水素基、分岐状C3~C6アルコキシ基、又は置換若しくは非置換環状C5~C6アルコキシ基であり、並びにR3及びR4が、直鎖状若しくは分岐状C1~C6アルコキシ基、又は置換若しくは非置換環状C5~C6アルコキシ基から独立して選択される)を有するアルケニルシラン、であるモノマーから生じる繰り返し単位を含むフルオロポリマーとを含み、フルオロポリマーは有機溶媒中に溶解されている。
【0011】
本開示はまた、基材上でフルオロポリマーコーティングを形成するための方法であって、(I)基材の少なくとも一部分上に溶液のコーティングを塗布する工程であって、この溶液は、i)有機溶媒と、ii)フルオロポリマーであって、(a)テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びペルフルオロ(メチルビニルエーテル)からなる群から選択されるフルオロオレフィン;(b)アルキル基がC1~C6の直鎖飽和炭化水素基、若しくはC3~C6分岐鎖若しくは環状飽和炭化水素基であるアルキルビニルエーテル、あるいは、アリール基が非置換若しくは置換されているアリールビニルエーテル;並びに(c)SiR1R2R3R4(式中、R1がエチレン性不飽和炭化水素基であり、R2がアリール、アリール置換炭化水素基、分岐状C3~C6アルコキシ基、又は置換若しくは非置換環状C5~C6アルコキシ基であり、並びに、R3及びR4が、直鎖状若しくは分岐状C1~C6アルコキシ基、又は置換若しくは非置換環状C5~C6アルコキシ基から独立して選択される)アルケニルシランである、モノマーから生じる繰り返し単位を含むフルオロポリマーとを含み、フルオロポリマーは有機溶媒中に溶解されている溶液である工程と、(II)コーティングした溶液から当該有機溶媒の少なくとも一部を除去することと、(III)当該フルオロポリマーを硬化させて、それにより当該フルオロポリマーコーティングを形成する工程と、を含む。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示の特徴及び利点は、以下の発明を実施するための形態を読むことにより、当業者はより容易に理解するであろう。明確にするために、別個の実施形態の文脈において上記及び下記の本開示の特定の特徴は、単一の要素中で組み合わせて提供されてもよいことが理解されるべきである。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈において記述されている本開示の様々な特徴も、別個に提供されてよく、また任意の下位組み合わせで提供されてもよい。加えて、単数についての言及は、その内容について別途具体的な指示がない限り、複数も含み得る(例えば、「a」及び「an」は1つ又はそれ以上について言及し得る)。
【0013】
本願中で特定される様々な範囲の数値の使用は、別途明確に記載のない限り、指定された範囲の最小値及び最大値の両方に用語「約」が先行するかのように、近似値として述べられる。このように、述べられた範囲より上下わずかに変化させたものを使用して、範囲内の値と実質的に同じ結果を達成することができる。また、これらの範囲の開示は、最小値と最大値との間のそれぞれ、及び全ての値を含む、連続範囲を意図している。
【0014】
一実施形態では、本発明はフルオロポリマーコーティングを形成するための溶液である。この溶液は、i)有機溶媒と、ii)フルオロポリマーであって、(a)テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びペルフルオロ(メチルビニルエーテル)からなる群から選択されるフルオロオレフィン;(b)アルキル基がC1~C6の直鎖飽和炭化水素基、又はC3~C6分岐鎖若しくは環状飽和炭化水素基であるアルキルビニルエーテル、あるいは、アリール基が非置換若しくは置換されているアリールビニルエーテル;並びに(c)式SiR1R2R3R4(式中、R1がエチレン性不飽和炭化水素基であり、R2がアリール、アリール置換炭化水素基、分岐状C3~C6アルコキシ基、又は置換若しくは非置換環状C5~C6アルコキシ基であり、並びに、R3及びR4が、直鎖状若しくは分岐状C1~C6アルコキシ基、又は置換若しくは非置換環状C5~C6アルコキシ基から独立して選択される)を有するアルケニルシラン、であるモノマーから生じる繰り返し単位を含むフルオロポリマーとを含み、フルオロポリマーは有機溶媒中に溶解されている。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、溶液は、有機溶媒とフルオロポリマーの混合重量に基づいて、0.5~35重量パーセントの溶解したフルオロポリマーと65~99.5重量パーセントの有機溶媒とを含有する。別の実施形態では、例えば、薄層コーティング(例えば、当該溶液の1回塗布に由来する、基材上の50nm厚のコーティング)の場合、溶液は、有機溶媒とフルオロポリマーの混合重量に基づいて、0.5~5重量パーセントの溶解したフルオロポリマーと95~99.5重量パーセントの有機溶媒とを含有する。一実施形態では、溶液は、2重量パーセントの溶解したフルオロポリマーと98重量パーセントの有機溶媒とを含有する。いくつかの実施形態によれば、溶液は、有機溶媒とフルオロポリマーの混合重量に基づいて、5~35重量パーセントの溶解したフルオロポリマーと65~95重量パーセントの有機溶媒とを含有する。別の実施形態では、溶液は、15~25重量パーセントの溶解したフルオロポリマーと80~85重量パーセントの有機溶媒とを含有する。別の実施形態では、溶液は、20重量パーセントの溶解したフルオロポリマーと80重量パーセントの有機溶媒とを含有する。
【0016】
これらの範囲内の有機溶媒中のフルオロポリマーの濃度は、選択されたコーティング方法によって基材上に形成される、溶液の適切なコーティングを可能にするように調整することができる。
【0017】
フルオロポリマーを有機溶媒中に溶解させて、本溶液を形成する。「溶解した」とは、フルオロポリマーが有機溶媒における溶液中にあり、かつ肉眼で見える固体又はゲルのフルオロポリマーが存在しないまま有機溶媒中で懸濁していることを意味する。溶液は、従来の装置における従来の方法によって形成される。例えば、有機溶媒を攪拌された容器に添加し、続いてフルオロポリマーを添加して所望の重量パーセントの含有量に到達させてもよい。混合物を、必要に応じて加熱しながら、有機溶媒中にフルオロポリマーが溶解するまで攪拌してもよい。
【0018】
いくつかの実施形態によれば、フルオロポリマー溶液は、ミクロン又はサブミクロン(例えば、0.4~1又は1.5ミクロン)孔径のカートリッジフィルタを通して圧力をかけて濾過される。一実施形態では、これにより、若干量の0.4ミクロンより大きく1ミクロンより小さい粒子がフィルタを通過する可能性があることが認められながらも、溶液から最長形状寸法において0.4ミクロンより大きい粒子が除去される。一実施形態では、溶液は実質的に1ミクロンより大きい寸法の粒子を含まない。
【0019】
一実施形態では、溶液は、相安定貯蔵期間を有する。このことは、フルオロポリマーが、フルオロポリマーコーティングを形成するために溶液を使用するまで及び使用中においてさえ、形成後の溶液中に残存し、かつ時間経過並びに周囲条件における溶液の配送及び保存によってゲル又は固体を形成しないことを意味する。一実施形態では、溶液は、少なくとも2週間の期間の周囲条件による保存時に、フルオロポリマーが溶液中に残存し、かつゲル又は固体が形成されないような相安定貯蔵期間を有する。別の実施形態では、溶液は、少なくとも4週間の期間の周囲条件による保存時に、フルオロポリマーが溶液中に残存し、かつゲル又は固体が形成されないような相安定貯蔵期間を有する。
【0020】
本有機溶媒は、その中でフルオロポリマーが安定し、かつ周囲条件において相安定溶液を形成することができる物質である。一実施形態では、有機溶媒は、少なくとも50℃の標準沸点を有する。別の実施形態では、有機溶媒は、少なくとも100℃の標準沸点を有する。別の実施形態では、有機溶媒は、少なくとも150℃の標準沸点を有する。一実施形態では、有機溶媒は、ケトン類、エーテル類、エステル類及びハロカーボン類から選択される。一実施形態では、有機溶媒は、ケトン溶媒、例えば、アセトン、アセチルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどであってもよい。一実施形態では、有機溶媒は、エステル溶媒、例えば、エチルアセテート、プロピルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、ペンチルアセテート、シクロヘキシルアセテート、ヘプチルアセテート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、ブチルプロピオネート、イソブチルプロピオネート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メチルラクテート、エチルラクテート、γ-ブチロラクトンなどであってもよい。一実施形態では、有機溶媒は、エーテル溶媒、例えば、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコール又はプロピレングリコールのアルキルエーテル類、及びアニソールなどであってもよい。一実施形態では、有機溶媒は、ハロカーボン、例えば、クロロホルム、テトラクロロエチレンなどであってもよい。一実施形態では、有機溶媒は、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、又はこれらの組み合わせである。一実施形態では、溶媒は非反応性溶媒であり、このことは有機溶媒がフルオロポリマーコーティングに含まれるか、又はフルオロポリマーコーティングを補填する成分にはならないことを意味する。
【0021】
本フルオロポリマーは、フルオロオレフィンモノマーから生じる繰り返し単位を含む。フルオロオレフィンは、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)、及びペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群から選択される少なくとも1つのモノマーである。いくつかの実施形態では、これらのフルオロオレフィンに加えて、フルオロポリマーは、トリフルオロエチレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、ペルフルオロジメチルジオキソール、トリフルオロプロピレン、ペルフルオ(2-メチレン-4-メチル-1,3-ジオキソラン、ヘキサフルオロイソブチレン、メチル3-[1-[ジフルオロ[(トリフルオロビニル)オキシ]メチル]-1,2,2,2-テトラフルオロエトキシ]-2,2,3,3-テトラフルオロプロピオネート、2-[1-[ジフルオロ[(1,2,2-トリフルオロエテニル)オキシ]メチル]-1,2,2,2-テトラフルオロエトキシ]-1,1,2,2-テトラフルオロ-フッ化エタンスルホニル、又はこれらの組み合わせを含む、本フルオロポリマーに共重合可能な他のフッ素化モノマーから生じる繰り返し単位を含んでもよい。いくつかの実施形態では、フルオロポリマーを形成するフルオロオレフィンモノマーは、上述のフルオロオレフィンからなるか、又は本質的になってもよい。
【0022】
フルオロオレフィンは、フルオロポリマー内の繰り返し単位の総量に基づき、40~60モルパーセントの量でフルオロポリマー中に組み込まれる。いくつかの実施形態では、フルオロオレフィンは、42~58モルパーセントの範囲でフルオロポリマー中に組み込まれる。他の実施形態では、フルオロオレフィンは、45~55モルパーセントの範囲でフルオロポリマー中に組み込まれる。
【0023】
本フルオロポリマーは、少なくとも1つのアルキルビニルエーテルモノマー又はアリールビニルエーテルモノマーから生じる繰り返し単位を含む。本明細書で使用する場合、アルキルビニルエーテルは、アルキル基がC1~C6直鎖飽和炭化水素基又はC3~C6分岐鎖若しくは環状飽和炭化水素基であるものである。例となるアルキルビニルエーテルとしては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、sec-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、n-ペンチルビニルエーテル、イソアミルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、及びシクロヘキシルビニルエーテルがある。いくつかの実施形態では、アルキルビニルエーテルは、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、又はこれらの組み合わせからなる、又は本質的になる。本発明で使用する場合、アリールビニルエーテルは、アリール基が非置換(フェニル)又は置換(例えば、アルキルフェニル(例えば、トリル、キシリル、-C6H4(CH2CH3))、ハロフェニル、アミノフェニル)されているものである。例となるアリールビニルエーテルとしては、フェニルビニルエーテルがある。
【0024】
アルキルビニルエーテル又はアリールビニルエーテルは、フルオロポリマー内の繰り返し単位の総量に基づき、40~60モルパーセントの量でフルオロポリマー中に組み込まれる。いくつかの実施形態では、アルキルビニルエーテル又はアリールビニルエーテルは、42~58モルパーセントの範囲でフルオロポリマー中に組み込まれる。他の実施形態では、アルキルビニルエーテル又はアリールビニルエーテルは、45~55モルパーセントの範囲でフルオロポリマー中に組み込まれる。
【0025】
本フルオロポリマーは、少なくとも1つのアルケニルシランモノマーから生じる繰り返し単位を含む。本発明で使用する場合、アルケニルシランは一般式SiR1R2R3R4に対応し、式中、R1がエチレン性不飽和炭化水素基であり、R2がアリール、アリール置換炭化水素基、分岐状C3~C6アルコキシ基、又は置換若しくは非置換環状C5~C6アルコキシ基であり、並びに、R3及びR4が、直鎖状若しくは分岐状C1~C6アルコキシ基、又は置換若しくは非置換環状C5~C6アルコキシ基から独立して選択される。
【0026】
アルケニルシランのR1のエチレン性不飽和炭化水素基は、フルオロオレフィン及びアルキルビニルエーテル又はアリールビニルエーテルと合わさったフルオロポリマー主鎖に有利に共重合することができる不飽和炭化水素基である。いくつかの実施形態では、エチレン性不飽和炭化水素基は、2~5個の炭素原子を有するものである。いくつかの実施形態では、エチレン性不飽和炭化水素基は、エテニル(ビニル)、2-プロペニル(アリル)、1-プロペニル、2-ブテニル、1,3-ブタジエニル、2-ペンテニルなどである。好ましい実施形態では、エチレン性不飽和炭化水素基はエテニルである。
【0027】
アルケニルシランのR2基は、アリール、アリール置換炭化水素基、分岐状C3~C6アルコキシ基、又は置換若しくは非置換環状C5~C6アルコキシ基である。R2基は、シランのケイ素原子に結合した比較的立体的に嵩高い置換基となるように本発明者によって選択された。これは本発明者によって発見されたものであり、有利な共重合及びエチレン性不飽和炭化水素基を介してアルケニルシランをフルオロポリマー主鎖に組み込むことが可能となり、更に、周囲温度及び特別な対策をしないで少なくとも三ヶ月の間、有機溶媒中で溶解したままとなり、かつ不所望にゲルを形成しないような(例えば、シランアルコキシ基の加水分解に続くケイ素-酸素架橋(例えば、-Si-O-Si-)によってゲルを形成しない)相安定貯蔵期間を有するフルオロポリマーをもたらす。一実施形態では、R2は、アリール、例えば、フェニル、ナフチルなどである。別の実施形態では、R2は、アリール置換炭化水素基、例えば、ベンジル、-CH2CH2C6H5などである。別の実施形態では、R2は、分岐状C3~C6アルコキシ基である。別の実施形態では、R2は、置換又は非置換環状C5~C6アルコキシ基である。例となるR2基としては、イソプロポキシ(-OCH(CH3)CH3、2-プロポキシ)、イソブトキシ(1-メチルプロポキシ、-OCH(CH3)CH2CH3)、secブトキシ(2-メチルプロポキシ、-OCH2CH(CH3)CH3)、tertブトキシ(2-メチル-2-プロポキシ、-OC(CH3)3)などがある。好ましい実施形態では、R2は、イソプロポキシである。
【0028】
アルケニルシランのR3及びR4基は、直鎖状若しくは分岐状C1~C6アルコキシ基、又は置換若しくは非置換環状C5~C6アルコキシ基から独立して選択される。一実施形態では、R3及びR4は同一である。
【0029】
一実施形態では、アルケニルシランは、R2、R3及びR4基が同一であるトリアルコキシシランである。
【0030】
例となる本発明のアルケニルシランとしては、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリイソプロポキシシラン、ブテニルトリイソプロポキシシラン、及びビニルフェニルジメトキシシランがある。好ましい実施形態では、本発明のアルケニルシランモノマーは、ビニルトリイソプロポキシシランである。いくつかの実施形態において、アルケニルシランは、ビニルトリイソプロポキシシランからなる、又は本質的になる。このようなアルケニルシランは、例えば、Gelest Inc.(Morrisville,PA,USA)から入手可能である。
【0031】
一実施形態では、フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン、メチルビニルエーテル、及びビニルトリイソプロポキシシランモノマーから生じる繰り返し単位からなる、又は本質的になる。一実施形態では、フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン、エチルビニルエーテル、及びビニルトリイソプロポキシシランモノマーから生じる繰り返し単位からなる、又は本質的になる。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、アルケニルシランは、フルオロポリマーの形成に使用されるモノマーの総量に基づき、0.2~10モルパーセントの量でフルオロポリマー中に組み込まれる。他の実施形態によれば、アルケニルシランは、1.2~8モルパーセントの量でフルオロポリマー中に組み込まれ、更に他の実施形態では、1.4~7モルパーセントの範囲でフルオロポリマー中に組み込まれる。
【0033】
一実施形態では、フルオロポリマーは、フルオロオレフィンから生じる繰り返し単位を40~60モルパーセント含み、アルキルビニルエーテル又はアリールビニルエーテルから生じる繰り返し単位を40~60モルパーセント含み、かつアルケニルシランから生じる繰り返し単位を0.2~10モルパーセント含む。
【0034】
一実施形態では、フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン、エチルビニルエーテル及びビニルトリイソプロポキシシランから生じる繰り返し単位を含み、50,000~330,000ダルトンの重量平均分子量を有し、溶媒は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであり、溶液は、15~25重量パーセントのフルオロポリマーを含有する。一実施形態では、フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレン、エチルビニルエーテル及びビニルトリイソプロポキシシランから生じる繰り返し単位を含み、120,000~330,000ダルトンの重量平均分子量を有し、溶媒は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであり、溶液は、15~25重量パーセントのフルオロポリマーを含有する。別の実施形態では、フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレンから生じる繰り返し単位を40~60モルパーセント、エチルビニルエーテルから生じる繰り返し単位を40~60モルパーセント、及びビニルトリイソプロポキシシランから生じる繰り返し単位を0.2~10モルパーセント含み、50,000~330.000ダルトンの重量平均分子量を有し、溶媒は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであり、溶液は、15~25重量パーセントのフルオロポリマーを含有する。別の実施形態では、フルオロポリマーは、テトラフルオロエチレンから生じる繰り返し単位を40~60モルパーセント、エチルビニルエーテルから生じる繰り返し単位を40~60モルパーセント、及びビニルトリイソプロポキシシランから生じる繰り返し単位を0.2~10モルパーセント含み、120,000~330.000ダルトンの重量平均分子量を有し、溶媒は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであり、溶液は、15~25重量パーセントのフルオロポリマーを含有する。
【0035】
いくつかの実施形態によれば、フルオロポリマーは、10,000~350,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態によれば、フルオロポリマーは、100,000~350,000ダルトンの範囲の重量平均分子量を有する。他の実施形態では、フルオロポリマーの重量平均分子量は、最小値が、10,000、20,000、30,000、40,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000、100,000、110,000、120,000、125,000、130,000、140,000、150,000、160,000、又は170,000ダルトンであり、かつ最大値が、350,000、340,000、330,000、320,000、310,000、又は300,000ダルトンである、重量平均分子量の最小値から重量平均分子量の最大値までを含む範囲であり得る。一実施形態では、フルオロポリマーは、約200,000ダルトンの重量平均分子量を有する。
【0036】
フルオロポリマーは、公知の方法に従って製造することができる。いくつかの実施形態では、モノマーを、溶媒を使用せずに重合してもよく、別の実施形態では、モノマーを、溶媒中で重合してもよく、この溶媒は、フルオロポリマー用溶媒であってもなくてもよい。他の実施形態では、フルオロポリマーは、モノマーのエマルション重合によって生成されてよい。所望のフルオロポリマーを生成するため、モノマー、少なくとも1つのフリー基反応開始剤、及び任意選択的に酸受容体をオートクレーブに投入し、大気圧から1,500気圧の高さまでの範囲の圧力において、10分間~24時間、25℃~約200℃の範囲の温度まで加熱してよい。次に、得られる生成物をオートクレーブから取り出し、濾過、洗浄、及び乾燥してフルオロポリマーを得てよい。
【0037】
フルオロポリマーを製造するための重合方法に使用される好適なフリー基反応開始剤は、任意の既知のアゾ及び/又は過酸化物反応開始剤であってよい。例えば、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)ジカルボネート、ジ-t-過酸化ブチル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、過酸化ベンゾイル、2,2-アゾジイソブチロニトリル、2,2-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル-2,2-アゾビス(イソブチレート)、又はこれらの組み合わせを使用してよい。使用できるフリー基反応開始剤の量は、モノマー混合物中のモノマーの総量に基づき、0.05重量パーセント~約4重量パーセントの範囲内である。他の実施形態では、使用されるフリー基反応開始剤の量は、0.1重量パーセント~約3.5重量パーセントの範囲内であり、なお更なる実施形態では、0.2重量パーセント~3.25重量パーセントの範囲内である。全ての重量パーセントは、モノマー混合物中のモノマーの総量に基づく。
【0038】
酸受容体は、フルオロポリマーを形成するための重合方法においても使用することができる。酸受容体は、金属炭酸塩又は金属酸化物、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、酸化バリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、又はこれらの組み合わせであってよい。酸受容体は、0重量パーセント~約5重量パーセントの範囲内で存在してよい。他の実施形態では、酸受容体は、0.1重量パーセント~4重量パーセントの範囲内で存在してよく、なお更なる実施形態では、0.2重量パーセント~3重量パーセントの範囲内で存在してよい。全ての重量パーセントは、モノマー混合物中のモノマーの総量に基づく。酸受容体は、フルオロオレフィン中に存在し得る、又は、重合工程中に発生し得る、フッ化水素などの酸を中和するために存在する。
【0039】
一実施形態では、本発明は、基材上でフルオロポリマーコーティングを形成するための方法であって、(I)基材の少なくとも一部分上に溶液のコーティングを塗布する工程であって、この溶液は、i)有機溶媒と、ii)フルオロポリマーであって、(a)テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)、及びペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群から選択されるフルオロオレフィン;(b)アルキル基がC1~C6の直鎖飽和炭化水素基、若しくはC3~C6分岐鎖若しくは環状飽和炭化水素基であるアルキルビニルエーテル、あるいは、アリール基が非置換若しくは置換されているアリールビニルエーテル;並びに(c)式SiR1R2R3R4(式中、R1がエチレン性不飽和炭化水素基であり、R2がアリール、アリール置換炭化水素基、分岐状C3~C6アルコキシ基、又は置換若しくは非置換環状C5~C6アルコキシ基であり、並びに、R3及びR4が、直鎖状若しくは分岐状C1~C6アルコキシ基、又は置換若しくは非置換環状C5~C6アルコキシ基から独立して選択される)を有するアルケニルシラン、であるモノマーから生じる繰り返し単位を含むフルオロポリマーとを含み、フルオロポリマーは有機溶媒中に溶解されている溶液である工程と、(II)コーティングした溶液から当該有機溶媒の少なくとも一部を除去することと、(III)当該フルオロポリマーを硬化させて当該フルオロポリマーコーティングを形成する工程と、を含む。
【0040】
一実施形態では、本フルオロポリマーコーティング及び硬化フルオロポリマーコーティングは、0.025~100マイクロメートルの厚さを有し得る。別の実施形態では、本フルオロポリマーコーティング及び硬化フルオロポリマーコーティングは、0.1~50マイクロメートルの厚さを有し得る。別の実施形態では、本フルオロポリマーコーティング及び硬化フルオロポリマーコーティングは、0.025~0.1マイクロメートルの厚さを有し得る。
【0041】
フルオロポリマーコーティングは、導電性材料、半導性材料、及び/又は非導電材料などの、様々な基材上に形成できる。例えば、基材は、ガラス、ポリマー、無機半導体、有機半導体、酸化スズ、酸化亜鉛、二酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化インジウム、酸化インジウム亜鉛、酸化亜鉛スズ、酸化インジウムガリウム、酸化インジウムガリウム亜鉛、酸化インジウムスズ亜鉛、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、窒化ケイ素、銅、アルミニウム、又はこれらの組み合わせであってよい。
【0042】
基材上にフルオロポリマーコーティングを形成する本方法は、(I)基材の少なくとも一部分上に溶液のコーティングを塗布する工程を含む。基材の少なくとも一部分上への有機溶媒とフルオロポリマー(フルオロポリマー溶液)との溶液のコーティングの塗布は、スピンコーティング、スプレーコーティング、フローコーティング、カーテンコーティング、ローラーコーティング、ブラッシング、インクジェット印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、リソグラフ印刷、ディップコーティング、ブレードコーティング又はドロップコーティング法などの従来の方法によって実施できる。スピンコーティングは、過剰量のフルオロポリマー溶液を基材に塗布し、その後、基材を高速で回転させて遠心力により基材の表面全体に組成物を一様に広げて分布させることを含む。得られたフルオロポリマーコーティングの厚さは、スピンコーティング速度、フルオロポリマー溶液の濃度、及び使用した溶媒に依存し得る。
【0043】
基材上にフルオロポリマーコーティングを形成する本方法は、(II)コーティングした溶液から有機溶媒の少なくとも一部を除去する工程を含む。フルオロポリマー溶液を基材に塗布した後、コーティングの高温への曝露、大気圧未満への曝露、塗布層上への直接的若しくは間接的ガス吹き込み、又はこれらの方法の組み合わせを用いて、有機溶媒の少なくとも一部あるいは実質的に全てを除去できる。例えば、空気中又は任意選択的に少量の窒素ガスをパージした真空オーブン中で、塗布したフルオロポリマーコーティングを加熱してよい。他の実施形態では、有機溶媒を除去するため、コーティングを60~110℃の範囲の温度に加熱してよい。
【0044】
基材上にフルオロポリマーコーティングを形成するための本方法は、(III)フルオロポリマーを架橋して架橋フルオロポリマーコーティングを形成する工程を必要に応じて含む。フルオロポリマーの架橋は、架橋部位としてアルケニルシランのケイ素を用いることにより生じさせることができる。熱架橋又は光架橋などの従来のシロキサン用架橋方法を、フルオロポリマーの架橋に用いることができる。一実施形態では、フルオロポリマーは、架橋可能なフルオロポリマーであると考えられ、架橋されることができる未架橋のフルオロポリマーを意味する。例えば、光架橋性フルオロポリマーは、1種以上の光酸発生剤、及び任意選択的に、光増感剤の存在下において、適当な波長の光で照射されたときに架橋した。
【0045】
一実施形態では、フルオロポリマーを架橋してフルオロポリマーコーティングを形成する工程(III)は、フルオロポリマーを光架橋して光架橋フルオロポリマーを形成することを含み、ここで、ポリマーネットワーク内の架橋は光の作用により形成される。いくつかの実施形態によれば、フルオロポリマーコーティングを形成するための溶液は、i)有機溶媒と、(ii)上述の特定のモノマーから生じる繰り返し単位を含むフルオロポリマーと、iii)光酸発生剤、及び任意選択的にiv)光増感剤を含む。
【0046】
好適なii)光酸発生剤は、当技術分野で公知であり、例えば、(p-イソプロピルフェニル)(p-メチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)-ボレート、トリス[4-(4-アセチルフェニル)スルファニルフェニル]スルホニウムとトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドとの塩でありBASF(Florham Park,New Jersey)から入手可能なIRGACURE(登録商標)GSID-26-1、BASFからまた入手可能なトリス[(トリフルオロメタン)スルホニル]メタンを伴うビス(1,1-ジメチルエチルフェニル)ヨードニウム塩、ビス(4-デシルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアンチモネートオキシラン、UV9387CとしてMomentiveから入手可能なモノ[(C12~C14-アルコキシ)メチル]誘導体を含んでよい。IRGACURE(登録商標)GSID-26-1光酸発生剤は、光増感剤を別に加える必要がないため、特に有用である。光酸発生剤は、フルオロポリマーコーティング組成物中に、フルオロポリマーコーティング固体の総量に基づき、約0.1~10重量パーセントの範囲の量で存在してよい。他の実施形態では、光酸発生剤は、0.1~2.0重量パーセントの範囲内で存在してよく、なお更なる実施形態では、0.1~1.5重量パーセントの範囲の量で存在してよい。なお更なる実施形態では、光酸発生剤は、フルオロポリマーコーティング組成物の総量に基づき、0.2~1.0重量パーセントの範囲内で存在してよい。
【0047】
フルオロポリマーコーティング組成物はまた、任意選択的に、iii)光増感剤を含んでもよい。好適な光増感剤として、例えば、クリセン、ベンツピレン、フルオラントレン、ピレン、アントラセン、フェナントレン、キサントン、インダントレン、チオキサンテン-9-オン、又はこれらの組み合わせを挙げてよい。いくつかの実施形態では、光増感剤は、2-イソプロピル-9H-チオキサンテン-9-オン、4-イソプロピル-9H-チオキサンテン-9-オン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、フェノチアジン、又はこれらの組み合わせであってよい。任意の光増感剤は、0~約10重量パーセントの範囲内で使用してよく、重量パーセントは、フルオロポリマー固体の総量に基づく。他の実施形態では、光増感剤は、組成物中に、0.1~2.0重量パーセントの範囲内で、なお更なる実施形態では、0.1~1.0重量パーセントの範囲内で存在してよい。全ての重量パーセントは、フルオロポリマーコーティング組成物の総重量に基づく。
【実施例】
【0048】
化学薬品の供給源:
a)PGMEA(1-メトキシ-2-プロピルアセテート、リソグラフィ等級、JT Baker、JTB-6343-05、Center Valley、PA)
b)ビニルトリイソプロポキシシラン(Gelest Chemicals、SIV9210、Morrisiville、PA)
c)1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン(Alfa Aesar、H33737、Ward Hill、MA)
d)エチルビニルエーテル(Alfa Aesar、A15691-0F、Ward Hill、MA)
e)無水炭酸カリウム(EMD、PX1390-1、Philadelphia、PA)
f)V-601反応開始剤、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート(Wako Chemicals、Richmond、Virginia)
【0049】
実施例1ポリ(テトラフルオロエテン/エチルビニルエーテル/ビニルトリイソプロポキシシラン)(ポリマー#1)の調製
-20℃未満に冷却した400mlオートクレーブに、0.5gの粉末炭酸カリウム、0.24gのV-601反応開始剤(ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート)、3.8mL(4.4g)のビニルトリイソプロポキシシラン、36g(0.5モル)のエチルビニルエーテル、及び200mL(250g)の1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを投入した。オートクレーブを排気し、50g(0.5モル)のTFEを更に投入した。反応混合物を振盪し、66℃に加熱した。オートクレーブ中の圧力は、最大200psigであり、8時間後に76psigまで低下した。冷却すると、粘稠液体(233.85g)が得られた。これを1LのNalgene瓶に移し、200gのPGMEAで希釈した。追加の70gのPGMEAを用いて残留ポリマーを溶解し、得られた溶液もまた1LのNalgene瓶に添加した。瓶をテープで封止し、ロールミル上で2時間回転させた。ポリマー溶液を2Lの丸底ガラスフラスコに移し、25ミリバール(19トル)まで真空度を低下させて揮発物を除去した。得られた溶液を20psig空気圧下で0.2~0.45ミクロンのカートリッジフィルタに通液した。濾過は円滑かつ効率よく行われた。ポリマー溶液(総量397.5g、固体14.2%)を0.5Lのクリーンルームに準じたボトルに回収した。
【0050】
種々の分析が実行された。
カーボンNMR:49.6モル%のTFE、49.1モル%のエチルビニルエーテル、及び1.36モル%のビニルトリイソプロポキシシラン
ヘキサフルオロイソプロパノールにおけるSEC:Mn=68,140及びMw=202,220
【0051】
実施例2比較例ポリ(テトラフルオロエテン/エチルビニルエーテル/ビニルトリイソプロポキシシラン)(ポリマー#2)の調製
-20℃未満に冷却した400mlオートクレーブに、0.5gの粉末炭酸カリウム、0.24gのV-601反応開始剤(ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート)、3.8mL(4.4g)のビニルトリイソプロポキシシラン、36g(0.5モル)のエチルビニルエーテル、及び100mL(125g)の1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタンを投入した。オートクレーブを排気し、50g(0.5モル)のTFEを更に投入した。反応混合物を振盪し、66℃に加熱した。オートクレーブ中の圧力は、最大227psigであり、22時間後に30psigまで低下した。冷却すると、ゴム状物質(170.92g)が得られた。これを0.5Lのガラス瓶に移し、295gのPGMEAを添加した。瓶をテープで封止し、ロールミル上で一晩回転させた。ポリマー溶液を2Lの丸底フラスコに移し、4.8トルまで真空度を低下させて揮発物を除去した。得られた溶液は非常に高濃度であった。50gのPGMEAを添加し、ロールミル上で10分間回転させた。これを35psig空気圧下で0.2~0.45ミクロンのカートリッジフィルタに通液した。濾過は困難であり、4つのフィルタカートリッジを用いて全ての材料を濾過した。ポリマー溶液を0.5Lのクリーンルームに準じた(粒子を含まない)ガラスボトルに回収した。ポリマー溶液(総量228.2g、固体15.5%)を0.5Lのクリーンルームに準じたボトルに回収した。
【0052】
種々の分析が実行された。
カーボンNMR:50.5モル%のTFE、48.3モル%のエチルビニルエーテル、及び1.20モル%のビニルトリイソプロポキシシラン。
ヘキサフルオロイソプロパノールにおけるSEC:Mn=92,450及びMw=374,480。