(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】電源装置及びこれを用いた電動車両並びに蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/262 20210101AFI20240405BHJP
B60L 50/64 20190101ALI20240405BHJP
H01M 50/209 20210101ALI20240405BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20240405BHJP
H01M 50/251 20210101ALI20240405BHJP
H01M 50/284 20210101ALI20240405BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20240405BHJP
H01M 50/593 20210101ALI20240405BHJP
H01M 50/264 20210101ALI20240405BHJP
【FI】
H01M50/262 S
B60L50/64
H01M50/209
H01M50/249
H01M50/251
H01M50/262 E
H01M50/262 M
H01M50/284
H01M50/588
H01M50/593
H01M50/264
(21)【出願番号】P 2021511108
(86)(22)【出願日】2019-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2019050065
(87)【国際公開番号】W WO2020202664
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2019066827
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山城 豪
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-023302(JP,A)
【文献】特開2010-244894(JP,A)
【文献】特開2009-238606(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102010012930(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-298
H01M 50/50-598
B60L 50/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装缶を角型とし、一定のセル厚さを有する複数の二次電池セルと、
前記複数の二次電池セルを積層した電池積層体の両側端面を覆う一対のエンドプレートと、
前記複数の二次電池セルの積層方向に沿って延長された板状で、前記電池積層体の対向する側面にそれぞれ配置されて、前記エンドプレート同士を締結する複数の締結部材と、
を備える電源装置であって、
前記複数の締結部材の各々は、断面視において折曲させた波状片を複数、前記セル厚さに従ったピッチで周期的に形成した波状部分を有して
おり、
前記波状部分が、ばね状に形成されてなる電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置であって、
前記波状片が、前記複数の二次電池セルに対して少なくとも一形成されてなる電源装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電源装置であって、
前記波状片が、前記セル厚さ毎に形成されてなる電源装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記波状片が、前記電池積層体の外側に膨らむ方向に山形に折曲されてなる電源装置。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記複数の締結部材の各々は、前記電池積層体の二次電池セルの上面と当接するタブを形成してなる電源装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の電源装置であって、
前記タブは、前記波状片同士の間に形成された平坦状の平坦片に形成されてなる電源装置。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の電源装置であって、
前記複数の締結部材が、金属製であり、
前記電源装置が、さらに、
前記複数の締結部材の各々と前記電池積層体の間に介在される絶縁性の絶縁シートを備えてなる電源装置。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一
項に記載の電源装置を備える車両であって、
前記電源装置と、該電源装置から電力供給される走行用のモータと、前記電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備える車両。
【請求項9】
請求項1~
7のいずれか一
項に記載の電源装置を備える蓄電装置であって、
前記電源装置と、該電源装置への充放電を制御する電源コントローラとを備えており、前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記二次電池セルへの充電を可能とすると共に、該二次電池セルに対し充電を行うよう制御する蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置及びこれを用いた電動車両並びに蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源装置は、電動車両の駆動用の電源装置や蓄電用の電源装置等に利用されている。このような電源装置は、充放電可能な複数の二次電池セルを複数枚積層している。一般的には、
図16の斜視図に示すように、電源装置900は角型の外装缶の二次電池セル901を、絶縁性のスペーサ902と交互に積層した電池積層体の両側の端面に、それぞれエンドプレート903を配置し、エンドプレート903同士を金属製のバインドバー904で締結している。
【0003】
二次電池セルは、充放電を繰り返すと外装缶が膨張、収縮する。特に近年の高容量化の要求に伴い、二次電池セル一枚あたりの高容量化が進んでおり、この結果、膨張量も大きくなる傾向にある。このような二次電池セルを多数枚、積層して締結している電池積層体においては、膨張量も二次電池セルの数に応じて大きくなり、バインドバーへの負荷が大きくなる。
【0004】
しかしながら、バインドバーは強度が求められることから金属製で構成されるところ、金属は弾性が低く、延伸に対する復元が働き難いため、二次電池セルの膨張に対する変形に追従し難いという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の一は、二次電池セルの膨張や収縮といった変形に対する追随性を高めた電源装置及びこれを用いた電動車両並びに蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある側面に係る電源装置は、外装缶を角型とし、一定のセル厚さを有する複数の二次電池セルと、前記複数の二次電池セルを積層した電池積層体の両側端面を覆う一対のエンドプレートと、前記複数の二次電池セルの積層方向に沿って延長された板状で、前記電池積層体の対向する側面にそれぞれ配置されて、前記エンドプレート同士を締結する複数の締結部材とを備える。前記複数の締結部材の各々は、断面視において折曲させた波状片を複数、前記セル厚さに従ったピッチで周期的に形成した波状部分を有しており、前記波状部分が、ばね状に形成されている。
【発明の効果】
【0008】
以上の電源装置によれば、二次電池セルの膨張により電池積層体が積層方向に長くなっても、波状部分が変形することで、電池積層体の変位を吸収し、締結状態を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1に係る電源装置を示す斜視図である。
【
図5】
図4の電源装置で絶縁シートを不図示とした平面図及び要部拡大平面図である。
【
図6】
図1の電源装置のVI-VI線における水平断面図である。
【
図7】
図1の電源装置のVII-VII線における垂直断面図である。
【
図10】
図9の締結部材を背面から見た斜視図である。
【
図12】実施形態2に係る電源装置で絶縁シートを不図示とした要部拡大平面図である。
【
図13】エンジンとモータで走行するハイブリッド車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
【
図14】モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
【
図15】蓄電用の電源装置に適用する例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態は、以下の構成によって特定されてもよい。
【0011】
本発明の一実施形態に係る電源装置は、外装缶を角型とし、一定のセル厚さを有する複数の二次電池セルと、前記複数の二次電池セルを積層した電池積層体の両側端面を覆う一対のエンドプレートと、前記複数の二次電池セルの積層方向に沿って延長された板状で、前記電池積層体の対向する側面にそれぞれ配置されて、前記エンドプレート同士を締結する複数の締結部材とを備える。前記複数の締結部材の各々は、断面視において折曲させた波状片を複数、前記セル厚さに従ったピッチで周期的に形成した波状部分を有している。
【0012】
本発明の他の実施形態に係る電源装置は、前記波状片を、前記複数の二次電池セルに対して少なくとも一形成される。
【0013】
また、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、前記波状片を、前記セル厚さ毎に形成される。
【0014】
さらに、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、前記波状片を、前記電池積層体の外側に膨らむ方向に山形に折曲される。
【0016】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、前記複数の締結部材の各々に、前記電池積層体の二次電池セルの上面と当接するタブを形成される。
【0017】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、前記タブを、前記波状片同士の間に形成された平坦状の平坦片に形成される。
【0018】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電源装置は、前記複数の締結部材が、金属製であり、前記電源装置が、さらに、前記複数の締結部材の各々と前記電池積層体の間に介在される絶縁性の絶縁シートを備える。
【0019】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る電動車両は、上記何れかの電源装置と、該電源装置から電力供給される走行用のモータと、前記電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪とを備える。
【0020】
さらにまた、本発明の他の実施形態に係る蓄電装置は、上記何れかの電源装置と、該電源装置への充放電を制御する電源コントローラと備えて、前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記二次電池セルへの充電を可能とすると共に、該二次電池セルに対し充電を行うよう制御する。
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための例示であって、本発明は以下のものに特定されない。また、本明細書は、特許請求の範囲に示される部材を、実施形態の部材に特定するものでは決してない。特に実施形態に記載されている構成部材の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。さらに、本発明を構成する各要素は、複数の要素を同一の部材で構成して一の部材で複数の要素を兼用する態様としてもよいし、逆に一の部材の機能を複数の部材で分担して実現することもできる。また、一部の実施例、実施形態において説明された内容は、他の実施例、実施形態等に利用可能なものもある。
【0022】
実施形態に係る電源装置は、ハイブリッド車や電気自動車などの電動車両に搭載されて走行用モータに電力を供給する電源、太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーの発電電力を蓄電する電源、あるいは深夜電力を蓄電する電源など、種々の用途に使用され、とくに大電力、大電流の用途に好適な電源として使用される。以下の例では、電動車両の駆動用の電源装置に適用した実施形態について、説明する。
[実施形態1]
【0023】
本発明の実施形態1に係る電源装置100を、
図1~
図11にそれぞれ示す。これらの図において、
図1は実施形態1に係る電源装置100を示す斜視図、
図2は
図1の電源装置100の分解斜視図、
図3は
図1の電源装置100の要部拡大斜視図、
図4は
図1の電源装置100の平面図、
図5は
図4の電源装置100で絶縁シート30を不図示とした平面図及び要部拡大平面図、
図6は
図1の電源装置100のVI-VI線における水平断面図、
図7は
図1の電源装置100のVII-VII線における垂直断面図、
図8は
図1の電源装置100の側面図、
図9は
図2の締結部材15を示す斜視図、
図10は
図9の締結部材15を背面から見た斜視図、
図11は
図10の締結部材15の分解斜視図を、それぞれ示している。これらの図に示す電源装置100は、複数の二次電池セル1を積層した電池積層体10と、この電池積層体10の両側端面を覆う一対のエンドプレート20と、エンドプレート20同士を締結する複数の締結部材15と、複数の締結部材15の各々と電池積層体10の間に介在される絶縁性の絶縁シート30とを備える。
(電池積層体10)
【0024】
電池積層体10は、
図1~
図2等に示すように、正負の電極端子2を備える複数の二次電池セル1と、これら複数の二次電池セル1の電極端子2に接続されて、複数の二次電池セル1を並列かつ直列に接続するバスバー(図示せず)を備える。これらのバスバーを介して複数の二次電池セル1を並列や直列に接続している。二次電池セル1は、充放電可能な二次電池である。電源装置100は、複数の二次電池セル1が並列に接続されて並列電池グループを構成すると共に、複数の並列電池グループが直列に接続されて、多数の二次電池セル1が並列かつ直列に接続される。
図1~
図3に示す電源装置100は、複数の二次電池セル1を積層して電池積層体10を形成している。また電池積層体10の両端面には一対のエンドプレート20が配置される。このエンドプレート20同士に、締結部材15の端部を固定して、積層状態の二次電池セル1を押圧した状態に固定する。
(二次電池セル1)
【0025】
二次電池セル1は、幅広面である主面の外形を四角形とし、一定のセル厚さCDを有する角形電池であって、幅よりも厚さを薄くしている。さらに、二次電池セル1は、充放電できる二次電池であって、リチウムイオン二次電池としている。ただ、本発明は、二次電池セルを角形電池には特定せず、またリチウムイオン二次電池にも特定しない。二次電池セルには、充電できる全ての電池、たとえばリチウムイオン二次電池以外の非水系電解液二次電池やニッケル水素二次電池セルなども使用できる。
【0026】
二次電池セル1は、
図2~
図7に示すように、正負の電極板を積層した電極体を外装缶1aに収納して、電解液を充填して気密に密閉している。外装缶1aは、底を閉塞する四角い筒状に成形しており、この上方の開口部を金属板の封口板1bで気密に閉塞している。外装缶1aは、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属板を深絞り加工して製作される。封口板1bは、外装缶1aと同じように、アルミニウムやアルミニウム合金などの金属板で製作される。封口板1bは、外装缶1aの開口部に挿入され、封口板1bの外周と外装缶1aの内周との境界にレーザ光を照射して、封口板1bを外装缶1aにレーザ溶接して気密に固定している。
(電極端子2)
【0027】
二次電池セル1は、
図3~
図5等に示すように天面である封口板1bを端子面1Xとして、この端子面1Xの両端部に正負の電極端子2を固定している。電極端子2は、突出部を円柱状としている。ただ、突出部は、必ずしも円柱状とする必要はなく、多角柱状又は楕円柱状とすることもできる。
【0028】
二次電池セル1の封口板1bに固定される正負の電極端子2の位置は、正極と負極が左右対称となる位置としている。これにより、
図3~
図5等に示すように、二次電池セル1を左右反転させて積層し、隣接して接近する正極と負極の電極端子2をバスバーで接続することで、隣接する二次電池セル1同士を直列に接続できるようにしている。なお、本発明は、電池積層体を構成する二次電池セルの個数とその接続状態を特定しない。後述する他の実施形態も含めて、電池積層体を構成する二次電池セルの個数、及びその接続状態を種々に変更することもできる。
(電池積層体10)
【0029】
複数の二次電池セル1は、各二次電池セル1の厚さ方向が積層方向となるように積層されて電池積層体10を構成している。電池積層体10は、正負の電極端子2を設けている端子面1X、
図1~
図6においては封口板1bが同一平面となるように、複数の二次電池セル1を積層している。
【0030】
電池積層体10は、隣接して積層される二次電池セル1同士の間に、絶縁スペーサ16を介在させてもよい。絶縁スペーサ16は、樹脂等の絶縁材で薄いプレート状又はシート状に製作されている。絶縁スペーサ16は、二次電池セル1の対向面とほぼ等しい大きさのプレート状とする。この絶縁スペーサ16を互いに隣接する二次電池セル1の間に積層して、隣接する二次電池セル1同士を絶縁できる。なお、隣接する二次電池セル間に配置されるスペーサとしては、二次電池セルとスペーサの間に冷却気体の流路が形成される形状のスペーサを用いることもできる。また、二次電池セルの表面を絶縁材で被覆することもできる。例えばPET樹脂等のシュリンクチューブで二次電池セルの電極部分を除く外装缶の表面を熱溶着させてもよい。この場合は、絶縁スペーサを省略してもよい。また、複数の二次電池セルを多並列、多直列に接続する電源装置においては、互いに直列に接続される二次電池セル同士の間に絶縁スペーサを介在させて絶縁する一方、互いに並列に接続される二次電池セル同士においては、隣接する外装缶同士に電圧差が生じないので、これらの二次電池セルの間の絶縁スペーサを省略することもできる。
【0031】
さらに、
図2に示す電源装置100は、電池積層体10の両端面にエンドプレート20を配置している。なおエンドプレート20と電池積層体10の間に端面スペーサ17を介在させて、これらを絶縁してもよい。端面スペーサ17も、樹脂等の絶縁材で薄いプレート状又はシート状に製作できる。
【0032】
実施形態1に係る電源装置100は、複数の二次電池セル1が互いに積層される電池積層体10において、互いに隣接する複数の二次電池セル1の電極端子2同士をバスバーで接続して、複数の二次電池セル1を並列かつ直列に接続する。また、電池積層体10とバスバーとの間にバスバーホルダを配置してもよい。バスバーホルダを用いることで、複数のバスバーを互いに絶縁し、かつ二次電池セルの端子面とバスバーとを絶縁しながら、複数のバスバーを電池積層体の上面の定位置に配置できる。
【0033】
バスバーは、金属板を裁断、加工して所定の形状に製造される。バスバーを構成する金属板には、電気抵抗が小さく、軽量である金属、例えばアルミニウム板や銅板、あるいはこれらの合金が使用できる。ただ、バスバーの金属板は、電気抵抗が小さくて軽量である他の金属やこれらの合金も使用できる。
(エンドプレート20)
【0034】
エンドプレート20は、
図1~
図3に示すように、電池積層体10の両端に配置されると共に、電池積層体10の両側面に沿って配置される左右一対の締結部材15を介して締結される。エンドプレート20は、電池積層体10の二次電池セル1の積層方向における両端であって、端面スペーサ17の外側に配置されて電池積層体10を両端から挟着している。
(段差部20b)
【0035】
エンドプレート20は、締結部材15で締結した状態で、締結部材15に設けた係止ブロック15bを係止するための段差部20bを形成している。段差部20bは、後述する締結部材15の係止ブロック15bを係止できる大きさと形状に形成される。
図2の例では、エンドプレート20を水平断面視T字状となるように、鍔状の段差部20bが形成されている。また段差部20bの近傍に、エンドプレートねじ穴20cを開口している。
(締結部材15)
【0036】
締結部材15は、両端を電池積層体10の両端面に配置されたエンドプレート20に固定される。複数の締結部材15でもってエンドプレート20を固定し、もって電池積層体10を積層方向に締結している。各締結部材15は、
図9~
図11等に示すように、電池積層体10の側面に沿う所定の幅と所定の厚さを有する金属製で、電池積層体10の両側面に対向して配置されている。
【0037】
締結部材15は、長手方向の両端でそれぞれエンドプレート20と固定される締結部分15cと、締結部分15c同士の間を連結する中間部分15aと、中間部分15aの上下から突出された複数のタブ15lとで構成される。これら締結部分15cと中間部分15aと複数のタブ15lとは、金属板で一体に形成することが好ましい。
図9等の例では、金属板を折曲して中間部分15aに波状部分15jを形成し、また中間部分15aの上下端縁を折曲してタブ15lを形成している。また
図3や
図5等に示すように、波状部分15jは複数の波状片15iと平坦片15kで構成される。波状片15i同士の間は、平坦片15kで接続されている。
【0038】
一方、締結部材15の締結部分15cには、
図11に示すように係止ブロック15bが設けられており、この部分の締結部分15cの厚さを厚くしている。この係止ブロック15bを、エンドプレート20の段差部20bに係止して、締結部材15をエンドプレート20に螺合等により固定する。
(絶縁シート30)
【0039】
また締結部材15と電池積層体10の間には、絶縁シート30が介在される。絶縁シート30は絶縁性を備える材質、例えば樹脂などで構成され、金属製の締結部材15と電池セルとの間を絶縁している。
図2等に示す絶縁シート30は、電池積層体10の側面を覆う平板31と、この平板31の上下にそれぞれ設けられたタブ支持部32とで構成される。タブ支持部32は、締結部材15の各タブ15lと二次電池セル1の上面との間に介在されて、タブ15lと二次電池セル1とを絶縁する。このタブ支持部32は、締結部材15に形成されたタブ15l毎に設けられる。よって、締結部材15のタブ15lを形成したピッチと合致するように、タブ支持部32が形成される。また絶縁シート30は、上述したバスバーを保持するバスバーホルダと兼用するように構成してもよい。
【0040】
なお、電池積層体や電池積層体の表面が絶縁されている場合、例えば二次電池セルが絶縁性のケースに収納されていたり、樹脂製の熱収縮性チューブで覆われている場合、又は締結部材の表面に絶縁性の塗料やコーティングが施されている場合、あるいは締結部材が絶縁性の材質で構成されている場合等は、絶縁シートを不要とできる。
(波状部分15j)
【0041】
中間部分15aは、波状に形成された波状部分15jを有している。波状部分15jは、波状片15iを複数、二次電池セル1のセル厚さCDに従ったピッチで周期的に形成している。中間部分15aをばね状に形成し、各波状片15iにばね性を持たせることで、電池積層体10が膨張しても、これに追従するように波状部分15jを変形させて中間部分15aを変位させることができ、締結部材に応力が集中して破断する事態を回避できる。一方で、電池積層体10が膨張状態から復帰すると、これに応じて波状部分15jが変形して元の形状に復帰することで、締結部材による電池積層体10の締結状態が維持される。このように波状部分15jを有する締結部材15は、電池積層体10の積層方向の変化に応じて変形させ、かつ締結状態を維持できる。
【0042】
各波状片15iは、複数の二次電池セル1に対して少なくとも一形成されている。好ましくは、
図5の拡大平面図等に示すように、波状片15iを、電池積層体10の二次電池セル毎に形成する。これによって、各二次電池セル1の外装缶の変形に個別に対応できる。ただ、必ずしも各二次電池セル毎に波状片を形成する必要はなく、例えば
図12に示す実施形態2に係る電源装置200で絶縁シートを不図示とした平面図のように、二次電池セル一つおき、すなわち二次電池セル2個毎に、波状片15iを形成してもよい。波状片15iを形成するピッチは、二次電池セルの仕様、電池容量や予想される電源装置の使用環境(温度や湿度など)や想定される外装缶の変形量などに応じて、適宜設計される。また波状片15iは、
図5に示すように電池積層体10の外側に膨らむ方向に山形に折曲されている。このように、波状片15iを外側に突出させることで、波状片15iが電池積層体10と干渉する事態を回避できる。
【0043】
また各波状片15iは、一の山形に形成する他、複数の山形に形成してもよい。また湾曲させた状態に限らず、ジグザグ状や蛇腹状、アコーディオン状等としてもよい。さらに波状片15iを同一の形状とせず、位置に応じて波状片15iの形状を変化させてもよい。
(タブ15l)
【0044】
また複数の締結部材15の各々は、電池積層体10の二次電池セル1の上面と当接するタブ15lを形成している。タブ15lは
図3の拡大斜視図及び
図7の垂直断面図に示すように、絶縁シート30のタブ支持部32を介して、二次電池セル1の上面を押圧する。これにより、各二次電池セル1を上下方向からタブ15lで押圧して高さ方向に保持し、振動や衝撃等が電池積層体10に印加されても、各二次電池セル1が上下方向に位置ずれしないように維持できる。
【0045】
締結部材15にタブ15lを設ける位置は、波状片15iと異なる位置とすることが好ましい。
図3や
図5等に示す例では、波状片15i同士の間に位置する平坦片15kにタブ15lを形成している。これによって、中間部分15aから折曲されたタブ15lが、波状片15iの変形を阻害する事態を回避し、波状片15iのばね性を効果的に発揮させることができる。
【0046】
この締結部材15には、鉄などの金属板、好ましくは鋼板や鉄、鉄合金、SUS、アルミニウム、アルミニウム合金等が使用できる。また締結部材15を同一の部材で構成しつつ、締結部分15cと中間部分15aで厚さを異ならせてもよい。あるいは、締結部分15cを第一金属で、中間部分15aを、第一金属と異なる第二金属で、それぞれ構成してもよい。この場合、第一金属は第二金属よりも剛性を高く、第二金属は第一金属よりも延伸性を高くする。このような異種金属の選定によって、締結部分15cに剛性を、中間部分15aに延伸性を、それぞれ持たせることが可能となる。
(係止ブロック15b)
【0047】
締結部材15は、
図9~
図11に示すように、中間部分15aと、締結部分15cと、ブロック状の係止ブロック15bを備える。中間部分15aは板状の部材で、その長手方向の両端に締結部分15cを接合している。係止ブロック15bは、締結部分15cの端縁部の内面に固定されている。係止ブロック15bは所定の厚さを有する板状で、締結部分15cの内側に突出する姿勢で固定されており、締結部材15をエンドプレート20に連結する状態では、エンドプレート20に設けた段差部20bに係止されて、締結部材15を電池積層体10の両側の定位置に配置する。係止ブロック15bは、スポット溶接やレーザ溶接等の溶接により締結部分15cに固定される。
【0048】
図に示す係止ブロック15bは、エンドプレート20を締結した状態で、エンドプレートねじ穴20cと一致するように、締結側貫通孔15bcを開口している。また締結部分15cは、締結側貫通孔15bcと対応する位置に、締結主面側貫通孔15acを開口している。締結側貫通孔15bcと締結主面側貫通孔15acは、係止ブロック15bを締結部分15cに固定した状態で合致するように設計される。
【0049】
係止ブロック15bの開口された締結側貫通孔15bcは、複数個を、係止ブロック15bの延長方向に沿うように開口させている。同様に締結主面側貫通孔15acも、複数個を締結部分15cの端縁、あるいは係止ブロック15bの延長方向に沿うように開口させている。これに応じてエンドプレートねじ穴20cも、エンドプレート20の側面に沿って複数個が形成されている。
【0050】
係止ブロック15bは、複数のボルト15fを介してエンドプレート20の外周面に固定している。なお、これら締結部材15と係止ブロック15b、エンドプレート20との固定は、必ずしもボルトを用いた螺合に限られず、ピンやリベット等としてもよい。
【0051】
上述の通り、締結部材15を構成する中間部分15aと締結部分15cと係止ブロック15bは、鉄、鉄合金、SUS、アルミニウム、アルミニウム合金等が利用できる。また係止ブロック15bは、電池積層方向の横幅を10mm以上とすることができる。さらにエンドプレート20は、金属製とすることができる。好ましくは、係止ブロック15bと締結部分15cを、同じ金属製とする。これによって、係止ブロック15bと締結部分15cとの溶接が容易に行える。
【0052】
このように、締結部材15を、長手方向の左右端部、すなわち電池積層体10の積層層方向の両端部において折曲して、エンドプレート20の主面側から螺合するのでなく、
図1~
図3に示すように締結部材15を、電池積層体10の積層方向においては平板状として折曲部を設けることなく、エンドプレート20の段差部20bと係止ブロック15bとによる係止構造と螺合とによって、電池積層体10を締結することで、剛性を高め、二次電池セル1の膨張による破断等のおそれを緩和できる。
【0053】
多数の二次電池セル1を積層している電源装置は、複数の二次電池セル1からなる電池積層体10の両端に配置されるエンドプレート20を締結部材15で連結することで、複数の二次電池セル1を拘束するように構成されている。複数の二次電池セル1を、高い剛性をもつエンドプレート20や締結部材15を介して拘束することで、充放電や劣化に伴う二次電池セル1の膨張、変形、相対移動、振動による誤動作などを抑制できる。
【0054】
以上のように、本実施形態に係る電源装置100によれば、二次電池セル1の膨張によって生じる電池積層方向に拡がろうとする応力が、締結部分15cそのものに加えて、段差部20bと係止ブロック15bによる係合、締結部分15cと係止ブロック15bの溶接、ボルト15fによる螺合の各部材に印加されることになる。よってこれら各部材の剛性を高めて応力を適度に分散させることで、全体としての剛性を高めて二次電池セル1の膨張、収縮に対応可能な電源装置100を実現できる。さらに、二次電池セルの膨張に応じて波状片15iを有する波状部分15jが変形することで、電池積層体10の変位に対応可能できる。
【0055】
以上の電源装置は、電動車両を走行させるモータに電力を供給する車両用の電源として利用できる。電源装置を搭載する電動車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。なお、電動車両を駆動する電力を得るために、上述した電源装置を直列や並列に多数接続して、さらに必要な制御回路を付加した大容量、高出力の電源装置を構築した例として説明する。
(ハイブリッド車用電源装置)
【0056】
図13は、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両HVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、これらのエンジン96及び走行用のモータ93で駆動される車輪97と、モータ93に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置100の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池を充電する。なお、車両HVは、
図13に示すように、電源装置100を充電するための充電プラグ98を備えてもよい。この充電プラグ98を外部電源と接続することで、電源装置100を充電できる。
(電気自動車用電源装置)
【0057】
また、
図14は、モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両EVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させる走行用のモータ93と、このモータ93で駆動される車輪97と、このモータ93に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池を充電する。また車両EVは充電プラグ98を備えており、この充電プラグ98を外部電源と接続して電源装置100を充電できる。
(蓄電装置用の電源装置)
【0058】
さらに、本発明は、電源装置の用途を、車両を走行させるモータの電源には特定しない。実施形態に係る電源装置は、太陽光発電や風力発電等で発電された電力で電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。
図15は、電源装置100の電池を太陽電池82で充電して蓄電する蓄電装置を示す。
【0059】
図15に示す蓄電装置は、家屋や工場等の建物81の屋根や屋上等に配置された太陽電池82で発電される電力で電源装置100の電池を充電する。この蓄電装置は、太陽電池82を充電用電源として充電回路83で電源装置100の電池を充電した後、DC/ACインバータ85を介して負荷86に電力を供給する。このため、この蓄電装置は、充電モードと放電モードを備えている。図に示す蓄電装置は、DC/ACインバータ85と充電回路83を、それぞれ放電スイッチ87と充電スイッチ84を介して電源装置100と接続している。放電スイッチ87と充電スイッチ84のON/OFFは、蓄電装置の電源コントローラ88によって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ88は充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をOFFに切り替えて、充電回路83から電源装置100への充電を許可する。また、充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で、電源コントローラ88は充電スイッチ84をOFFに、放電スイッチ87をONにして放電モードに切り替え、電源装置100から負荷86への放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をONにして、負荷86への電力供給と、電源装置100への充電を同時に行うこともできる。
【0060】
さらに、電源装置は、図示しないが、夜間の深夜電力を利用して電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。深夜電力で充電される電源装置は、発電所の余剰電力である深夜電力で充電して、電力負荷の大きくなる昼間に電力を出力して、昼間のピーク電力を小さく制限することができる。さらに、電源装置は、太陽電池の出力と深夜電力の両方で充電する電源としても使用できる。この電源装置は、太陽電池で発電される電力と深夜電力の両方を有効に利用して、天候や消費電力を考慮しながら効率よく蓄電できる。
【0061】
以上のような蓄電システムは、コンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用または工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機や道路用の交通表示器などのバックアップ電源用などの用途に好適に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係る電源装置及びこれを備える車両は、ハイブリッド車、燃料電池自動車、電気自動車、電動オートバイ等の電動車両を駆動するモータの電源用等に使用される大電流用の電源として好適に利用できる。例えばEV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源装置が挙げられる。またコンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機等のバックアップ電源用等の用途にも適宜利用できる。
【符号の説明】
【0063】
100、200…電源装置、1…二次電池セル、1X…端子面、1a…外装缶、1b…封口板、2…電極端子、10…電池積層体、15…締結部材、15a…中間部分、15b…係止ブロック、15c…締結部分、15ac…締結主面側貫通孔、15bc…締結側貫通孔、15f…ボルト、15i…波状片、15j…波状部分、15k…平坦片、15l…タブ、16…絶縁スペーサ、17…端面スペーサ、20…エンドプレート、20b…段差部、20c…エンドプレートねじ穴、30…絶縁シート、31…平板、32…タブ支持部、81…建物、82…太陽電池、83…充電回路、84…充電スイッチ、85…DC/ACインバータ、86…負荷、87…放電スイッチ、88…電源コントローラ、91…車両本体、93…モータ、94…発電機、95…DC/ACインバータ、96…エンジン、97…車輪、98…充電プラグ、900…電源装置、901…二次電池セル、902…スペーサ、903…エンドプレート、904…バインドバー、CD…セル厚さ、HV、EV…車両。