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特許7466529カテーテルベースの医療デバイスにおける診断ツールとしての光ファイバセンサの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】カテーテルベースの医療デバイスにおける診断ツールとしての光ファイバセンサの使用
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/538 20210101AFI20240405BHJP
   A61M 60/174 20210101ALI20240405BHJP
   A61M 60/216 20210101ALI20240405BHJP
   A61M 60/414 20210101ALI20240405BHJP
   A61M 60/585 20210101ALI20240405BHJP
   A61M 60/816 20210101ALI20240405BHJP
   A61M 60/855 20210101ALI20240405BHJP
【FI】
A61M60/538
A61M60/174
A61M60/216
A61M60/414
A61M60/585
A61M60/816
A61M60/855
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2021515559
(86)(22)【出願日】2019-09-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 US2019052063
(87)【国際公開番号】W WO2020061399
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-14
(31)【優先権主張番号】62/734,702
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510121444
【氏名又は名称】アビオメド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ガンディ ラーフル スレシュ
(72)【発明者】
【氏名】チャン タオ
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0290372(US,A1)
【文献】特表2015-515348(JP,A)
【文献】特開2005-80982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/538
A61M 60/174
A61M 60/216
A61M 60/414
A61M 60/585
A61M 60/816
A61M 60/855
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
近位端および遠位端を有するカテーテルと、
モータ電流を有し前記カテーテルに結合されたモータを有する、血液ポンプと、
前記血液ポンプのポンピング動作中の光信号を検出するように構成された光ファイバセンサと、
前記光ファイバセンサに通信可能に結合された評価デバイスへと前記光ファイバセンサから前記光信号を送るように構成された、光ファイバと
を含み、
前記評価デバイスが、
前記送られた光信号および前記モータ電流を示す信号を入力として受け取り、
前記光信号の信号対雑音比(SNR)を計算し、
SNRの所定の閾値を受け取り、
前記計算されたSNRを前記所定の閾値と比較し、
前記血液ポンプに関連する機械的故障イベントを判定する
ように構成されており、
ある期間にわたって、
(1)前記モータ電流がゼロより大きく、かつ
(2)前記期間における前記計算されたSNRの増加が前記所定の閾値を超える
場合に、前記血液ポンプに関連する前記機械的故障イベントが発生したと前記評価デバイスによって判定される、
血液ポンプシステム。
【請求項2】
前記評価デバイスが、前記機械的故障イベントの判定に応答して、前記機械的故障イベントと関連付けられたインジケータを生成および出力するようにさらに構成されている、請求項1記載の血液ポンプシステム。
【請求項3】
前記評価デバイスが、ベースラインSNRに基づいて前記閾値を決定するようにさらに構成されている、請求項1~2のいずれか一項記載の血液ポンプシステム。
【請求項4】
前記決定された閾値が、前記ベースラインSNRの大きさの2倍である、請求項3記載の血液ポンプシステム。
【請求項5】
前記評価デバイスが、前記送られた光信号に基づいて圧力信号を決定するようにさらに構成されている請求項1~4のいずれか一項記載の血液ポンプシステム。
【請求項6】
前記評価デバイスが、前記計算されたSNR、前記モータ電流、および前記決定された圧力信号に基づいて前記機械的故障イベントを判定するように構成されている、請求項5記載の血液ポンプシステム。
【請求項7】
前記光ファイバセンサが前記血液ポンプハウジングに結合されている請求項1~6のいずれか一項記載の血液ポンプシステム。
【請求項8】
前記光ファイバセンサが前記カテーテルの前記遠位端に位置する請求項1~7のいずれか一項記載の血液ポンプシステム。
【請求項9】
前記期間が約1~約5分間である請求項1~8のいずれか一項記載の血液ポンプシステム。
【請求項10】
前記期間が約5~約10分間である、請求項1~8のいずれか一項記載の血液ポンプシステム。
【請求項11】
第2の光信号を検出するように構成された第2の光ファイバセンサと、
前記第2の光ファイバセンサに通信可能に結合された前記評価デバイスへと前記第2の光ファイバセンサから前記第2の光信号を送るように構成された、第2の光ファイバと
をさらに含む請求項1~10のいずれか一項記載の血液ポンプシステム。
【請求項12】
前記評価デバイスが、前記計算されたSNRに基づいて前記モータまたは前記血液ポンプのカニューレ振動を検出するようにさらに構成されている請求項1~11のいずれか一項記載の血液ポンプシステム。
【請求項13】
液ポンプの機械的故障イベントを判定するための血液ポンプシステムの方法であって、前記血液ポンプシステムは、評価デバイス、光ファイバセンサ、および光ファイバを備え、前記方法は、
前記評価デバイスによって、カテーテルに結合され前記血液ポンプを駆動するモータのモータ電流を決定することと、
前記光ファイバセンサによって、前記血液ポンプにおける光信号を検出することと、
前記光ファイバによって、前記光ファイバセンサから前記評価デバイスへと前記光信号を送ることと、
前記評価デバイスによって、前記送られた光信号信号対雑音比(SNR)を計算することと、
前記評価デバイスによって、前記計算されたSNRおよび前記決定されたモータ電流に基づいて前記血液ポンプに関連する機械的故障イベントを判定することであって、ある期間にわたって、
(1)前記モータ電流がゼロより大きく、かつ
(2)前記期間における前記計算されたSNRの増加所定の閾値を超える
場合に前記機械的故障イベントが発生したと前記評価デバイスによって判定されることと、
を含む方法
【請求項14】
前記機械的故障イベントの判定に応答して、前記評価デバイスによって、前記機械的故障イベントと関連付けられたインジケータを生成および出力することをさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記評価デバイスによって、ベースラインSNRに基づいて前記閾値を決定することをさらに含む、請求項13記載の方法。
【請求項16】
前記決定された閾値が、前記ベースラインSNRの大きさの2倍である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記評価デバイスによって、前記送られた光信号に基づいて圧力信号を決定することをさらに含む、請求項13~16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
前記機械的故障イベントが、前記評価デバイスによって、前記計算されたSNR、前記決定されたモータ電流、および前記決定された圧力信号に基づい判定される、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記光ファイバセンサが前記モータに結合されている、請求項13~18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
前記光ファイバセンサが前記カテーテル遠位端に位置する、請求項13~19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
前記期間が約1~約5分間である、請求項13~20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
前記期間が約5~約10分間である、請求項13~20のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連技術
本出願は、2018年9月21日に出願された、「USE OF OPTICAL FIBER SENSOR AS A DIAGNOSTIC TOOL IN CATHETER-BASED MEDICAL DEVICE」という名称の米国仮特許出願第62/734,702号の優先権の恩典を主張するものである。前述の出願の全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
背景
カテーテルベースの医療デバイスを監視して該デバイスが確実に正常に動作するようにすることができる。例えば、血液ポンプのベアリング故障の早期の確実な検出は、ポンプの突然の停止およびそれに伴う患者への悪影響を防止するのに役立つ。一部の血液ポンプは、モータ電流を感知信号として使用して、ポンプの性能を監視する。ただし、モータ電流は、必ずしもベアリング故障の初期兆候を捕捉するとは限らず、他の要因の影響を受ける可能性がある。
【0003】
血液ポンプを光ファイバ圧力センサと一体化して、患者の血管系におけるポンプの配置を監視することができる。光ファイバセンサは、圧力信号の監視に加えて、応力/ひずみ、温度、および振動の監視にも使用することができる。例えば、米国特許第9,669,144号に記載されているように、光ファイバセンサは、カテーテルのねじれの監視に使用することができる。しかしながら、光ファイバセンサは、カテーテルベースの医療デバイスの進行中の動作特性の検出には採用されていない。
【発明の概要】
【0004】
概要
本明細書に記載されるシステム、方法、および装置は、カテーテルベースの医療デバイスの性能および状況を評価し、最終的には潜在的な故障を検出するための診断ツールとしての光ファイバセンサの使用を提供する。システムの適応形態は、光センサと光ファイバとを含み得、該光ファイバは、センサを、モニタに、またはセンサから入力信号を受け取り医療デバイスの特性を決定するように構成されたその他の信号処理デバイスに接続する。いくつかの実施態様では、ツールは、血液ポンプの機械的故障を検出するために使用される。態様は、血液ポンプのポンピング動作中の光信号を検出するように構成された光センサと、光ファイバセンサに通信可能に結合された評価デバイスへと光ファイバセンサから光信号を送るように構成された光ファイバとを含む血液ポンプシステムについて開示される。センサは、ポンプのポンピング作用によって引き起こされた、光センサヘッドを変更または変形させる血液中の撹乱を検出するように、ポンプの近くに配置されている。センサヘッドは、センサヘッドを圧迫する血液の圧力に基づいて変形する。センサヘッドが変形すると、光がセンサファイバ中に跳ね返り、評価デバイスによって検出される。この反射光は基準信号またはベースライン信号と比較され、比較から圧力信号が抽出される。反射光を使用して、センサは、ポンプシステムに含まれるポンプハウジング、ロータ、モータ、またはカニューレの振動によって引き起こされた血液中の撹乱を検出することもできる。いくつかの適応形態では、センサは、ポンプハウジングに取り付けられているか、またはポンプハウジングに隣接して配置されているか、または(埋め込み式モータの場合には)ポンプモータの近くに配置されている。評価デバイスは、送られた光信号およびポンプモータ電流を示す信号を入力として受け取りモータ電流および光信号に基づいてポンプに関連する機械的故障イベントを判定するように、構成され得る。
【0005】
このツールは、検出を強化するために、1つまたは複数の他のパラメータ、例えばモータ電流読み取り値および配置信号や流量などの他のセンサ読み取り値と組み合わせて使用され得る。第1の実施態様では、このツールは、近位端および遠位端を有するカテーテルと、カテーテルに結合されたモータを有する血液ポンプと、血液ポンプのポンピング動作中の光信号を検出するように構成された光センサと、カテーテルを通って延びており、光センサから光センサに通信可能に結合された評価デバイスへと光信号を送るように構成された光ファイバとを含む血液ポンプシステムに実装されている。光センサは、ポンプのポンピング作用の結果として生じる血液中の撹乱を検出するようにポンプにまたはその近くに配置されている。評価デバイスは、入力信号を受け取り血液ポンプに関連する機械的故障イベントが発生したかどうかを判定するように、構成される。特定の実施態様では、その判定は入力光信号および血液ポンプモータのモータ電流に基づいてなされる。ポンプが動作中にポンピングを停止するかまたは抵抗に遭遇した場合、光信号(および光信号と関連付けられたノイズ)は、モータ、ポンプ、またはポンプ構成要素またはカニューレの振動の変化により変化することになり、その変化を評価デバイスによって検出することができる。評価デバイスは、送られた光信号およびモータ電流を示す信号を入力として受け取り、光信号の信号対雑音比(SNR)を計算し、SNRの所定の閾値を受け取り、計算されたSNRを所定の閾値と比較し、血液ポンプ、ポンプ構成要素、カニューレまたはポンプモータに関連する機械的故障イベントを判定するように、構成することができる。
【0006】
SNR変化はポンプの問題を示す可能性がある。SNRは血液ポンプの振動、または、カニューレやモータなどのシステムの構成要素の振動と相関がある(本明細書で使用される場合、ポンプの振動は、一般に、デバイスがインビボで動作しているときに発生する、ポンプ、ポンプの構成要素、またはカニューレ、またはモータを含む埋め込み式デバイスの機械的振動を指す)。モータが停止されると、ポンプも停止し、その結果モータ電流はゼロになり、振動は最小になる。この状態では、ポンプの機械的振動が低いため光信号のノイズレベルが低いので、SNRは比較的大きい。通常の条件では、モータが動作しているとき、モータ電流はゼロより大きく、ポンプの振動は増加する。この状態では、光信号のノイズレベルが大きいので、SNRは比較的低い。ポンプを詰まらせたり、速度を低下させたり、または完全に停止させたりする機械的故障イベントが発生する可能性がある。そのような状態では、ある期間にわたって、モータ電流はゼロより大きい(モータが電流を駆動していることを示す)がSNRは増加している、例えば、計算されたSNRがその期間中に所定の閾値を超えるまで増加している場合に、故障が検出され得る。モータ電流がゼロより大きいことは、モータが、あたかもポンプが正常に動作しているかのように動作していることを示すが、しかしSNRの増加は、ポンプがより多くの振動を受けていることを示し、これは、ポンプがポンピングし続けているにもかかわらず故障していることを示している可能性がある(例えば、ベアリングが摩耗している可能性がある)。
【0007】
評価デバイスは、機械的故障イベントの判定に応答して、機械的故障イベントと関連付けられたインジケータを生成および出力するように構成され得る。
【0008】
いくつかの実施態様では、評価デバイスは、ベースラインSNRに基づいて閾値を決定するように構成される。閾値は、正常なポンプの定常状態動作中のSNR(または平均値)であり得る。いくつかの実施態様では、決定された閾値は、ベースラインSNRの大きさの2倍、または少なくとも3倍または10倍以上である。
【0009】
特定の実施態様では、評価デバイスは、送られた光信号に基づいて圧力信号を決定し、その信号を使用してポンプの性能を評価するように構成される。例えば、評価デバイスは、計算されたSNR、モータ電流、および決定された圧力信号に基づいて機械的故障イベントを判定するように構成され得る。
【0010】
光ファイバは、デバイスの性能を評価するために容易に使用できる検出可能な信号を受け取るように配置されている。いくつかの実施態様では、光ファイバセンサは、ポンプハウジングに、またはモータの近くのカテーテルもしくはカニューレに取り付けられているが、ポンプから(またはモータを通って)流れる血液と接触するように配置されている。特定の実施態様によれば、光ファイバセンサは、カテーテルの遠位端に位置する。いくつかの実施態様では、診断ツールは、第2の光信号を検出する第2の光ファイバセンサと、第2の光信号を評価デバイスに送る第2の光ファイバとを含む。第2の光信号は、例えば、ポンプの遠位端と関連付けられたポンピングリズムのSNRにおける変化を検出するために、ポンプの遠位端の近く(ポンプ入口開口部の近くなど)に配置され得る。そのような信号は、機械的故障イベントの判定にも使用され得る。
【0011】
ポンプの性能(ならびに特にSNRおよびモータ電流)を監視する期間を、ユーザが短期または長期の監視のために調整することができる。いくつかの実施態様では、この期間は約1~約5分間に設定される。特定の実施態様によれば、この期間は、約5~約10分間、または最大6時間、最大24時間または最大1週間以上である。
【0012】
本開示では様々な方法も企図しており、例えば、血液ポンプの動作中のポンプの機械的故障イベントを判定する方法を提供する。この方法は、血液ポンプを駆動するモータのモータ電流を決定する工程を含む。この方法はまた、ポンプ動作中の血液ポンプにおける光信号を検出する工程および光信号を、光ファイバを使用して、(例えば、ポンプハウジングやポンプロータの近くに配置された)光センサから評価デバイスに送る工程も含む。さらに、この方法は、評価デバイスにおいて、送られた光信号に基づいて信号対雑音比(SNR)を計算する工程を含む。この方法は、計算されたSNRおよび決定されたモータ電流に基づいて血液ポンプモータに関連する機械的故障イベントを判定する工程をさらに含む。SNR変化は、ポンプの問題(例えば、デバイスの故障につながり得る機械的応力)を示し得る。いくつかの構成では、機械的故障イベントは、ある期間にわたってモータ電流がゼロより大きくかつその期間における計算されたSNRの増加が所定の閾値を超えるときに、トリガされる。
【0013】
いくつかの実施態様では、この方法は、機械的故障イベントの判定に応答して、機械的故障イベントを示す信号を生成および出力する工程をさらに含む。例えば、機械的故障イベントを示す信号は、処理システムに送られ、聴覚アラーム、視覚アラーム、またはその両方として表示され得る。
【0014】
特定の実施態様では、この方法は、例えば、ポンプの通常動作中に発生するベースラインSNRに基づいて閾値を決定する工程をさらに含む。いくつかの実施態様によれば、決定された閾値は、ベースラインSNRの大きさの2倍である。
【0015】
いくつかの実施態様では、この方法は、送られた光信号に基づいて圧力信号を決定する工程をさらに含む。特定の実施態様では、この方法は、計算されたSNR、決定されたモータ電流、および決定された圧力信号に基づいて機械的故障イベントを判定する工程をさらに含む。
【0016】
特定の実施態様では、光ファイバセンサはモータに結合されている。いくつかの実施態様によれば、光ファイバセンサは、カテーテルの遠位端に位置する。
【0017】
いくつかの実施態様では、期間は約1~約5分間である。いくつかの実施態様によれば、期間は約5~約10分間である。
【0018】
本開示のさらなる実施態様によれば、モータによって駆動されるカテーテルベースの血液ポンプシステムを動作させるための方法であって、血液ポンプシステムが、入口カニューレと、シュラウド内のロータを有するポンプとを含む、方法が提供される。この方法は、モータからポンプのロータへと電流を送ることによってロータを作動させる工程を含む。この方法は、モータへとおよびモータから流れる電流を検出する工程をさらに含む。この方法は、ポンプの構成要素、またはカニューレ、モータまたはその他のシステム構成要素の振動を検出する工程をさらに含む。この方法は、検出された振動に基づいてモータへの電流を調整する工程をさらに含み得る。いくつかの実施態様では、検出された振動は、ポンプのロータまたはモータ内のベアリング故障を示す。他の実施態様では、振動を検出する工程は、シュラウド、カニューレ、およびモータのうちの少なくとも1つの上またはその近くに配置された光センサからの光信号を検出することを含む。特定の実施態様では、この方法は、モータへの電流が正である期間中のシステム構成要素(例えば、ポンプやカニューレ)の振動の変化を検出することによってポンプロータの故障を特定する工程をさらに含む。
【0019】
システムおよび方法は、様々なポンプ構成を有する血液ポンプシステムに適用することができる。例えば、ポンプロータおよびカテーテルに結合されたモータを有する内蔵モータを備えたポンプ(例えばImpellaシステム)と、外部モータおよび駆動ケーブルであるポンプ(例えば、外部モータによって供給されるトルクを変換するための血液ポンプスタイルのポンプ)とに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
上記その他の目的および利点は、以下の詳細な説明を添付の図面と併せて考察すれば明らかになるものであり、図面において、同様の参照符号は全体を通して同様の部分を指す。
【0021】
図1】大動脈弁を通って左心室内に延びており、1つまたは複数の組み込まれた光ファイバセンサを有する、大動脈を通して配置された例示的な血液ポンプを示す等角図である。
図2】光ファイバを有する図1の光ファイバセンサを示す断面図である。
図3図1の血液ポンプのモータ電流と、図1および図2の光ファイバセンサからの信号に基づく計算された信号対雑音比との連続ロギングの例示的なグラフを示す図である。
図4図2の光ファイバセンサからの信号に基づく計算されたSNRの連続ロギングの例示的なグラフを示す図である。
図5図5A~5Cは、図1の血液ポンプの配置信号およびモータ電流と、図1および図2の光ファイバセンサからの信号に基づく計算されたSNRとの連続ロギングの例示的なグラフを示す図である。
図6図1の血液ポンプに関連する機械的故障イベントを判定するための例示的な方法を示す図である。
図7図6の判定された機械的故障イベントおよび図1の血液ポンプと関連付けられたインジケータを生成および出力するための例示的な方法を示す図である。
図8】血液ポンプシステムから収集されたデータを表す7つの例示的なグラフを示す図である。
図9図8に示される期間後の期間中に血液ポンプシステムから収集されたデータを表す7つの例示的なグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
本明細書に記載されるシステム、方法、および装置の全体的な理解を提供するために、特定の例示的な態様について説明する。本明細書に記載されるシステム、方法、および装置は、カテーテルベースの医療デバイスの性能および状況を評価するための診断ツールとしての光ファイバセンサの使用を提供する。評価デバイスが、光ファイバセンサからの光信号の信号対雑音比(SNR)を計算するために使用される。SNRを使用して、医療デバイス、例えば、心臓内血液ポンプの機械的振動の大きさを決定することができる。より高い振動の場合、SNRはより低い振動の場合と比較してずっと低い。加えて、医療デバイスが動作している間、SNR信号の上昇は、医療デバイスにおける機械的故障イベントの発生と一致する。例えば、血液ポンプのSNR信号の瞬時のスパイクは、ポンプベアリング故障と一致し得る。逆に、振動のない静的な状態では、瞬時の変化は観察されない。
【0023】
光ファイバセンサのSNRを(単独で、または他の動作パラメータと組み合わせて)使用して、機械的故障イベントおよび不安定性のより早期のより確実な検出を容易にすることができる。血液ポンプの機械的故障の早期の確実な検出は、ポンプの突然の有害な停止およびそれに伴う患者への悪影響を防止するのに役立つ。光ファイバセンサのSNRはまた、体内のデバイスの位置を決定するのにも役立ち得る。体内にデバイスを正しく配置することは、最適な性能を得るために重要である。光ファイバセンサのSNRを使用するもう1つの利点は、振動を検出し、デバイスの性能、安定性、および温度を評価するためにSNRを使用できることである。
【0024】
図1に、下行大動脈11内に逆行して導入されたカテーテル10を有する心臓内血液ポンプを示す。下行大動脈11は、まず心臓から上行し、次いで下行する、大動脈弓14を有する大動脈12の一部である。大動脈12の先頭で、大動脈弁15は左心室16を大動脈12に接続し、心臓内血液ポンプは大動脈弁15を通って延びている。血液ポンプは、カテーテル10に加えて、カテーテルホース20の遠位端で固定された回転ポンピングデバイス50を含む。ポンピングデバイス50は、カテーテルに結合するモータセクション51およびモータセクション51から遠位に配置されたポンプセクション52、ならびにポンプセクション52から遠位方向に突出するフローカニューレ53を有する。ポンプセクションは、シュラウド内のロータを有する。カニューレは、遠位入口54と、ロータの近位に位置する近位出口とを有する。回転ポンピングデバイス50のモータ速度は、回転ポンピングデバイス50を駆動するモータ電流に依存する。吸引入口54の遠位には、例えば「ピグテール」として構成された、軟性の柔軟な先端55が設けられている。
【0025】
様々な流体、電気その他のラインが、ポンピングデバイス50を動作させるためにカテーテルホース20を通って延びている。これらのうち、図1には、その近位端で評価デバイス100に取り付けられている2つの光ファイバ28および29を有する構成が示されている。これらの光ファイバ28および29は、それぞれ、そのセンサヘッド60および30が、一方ではポンプセクション52のハウジングの外側に、他方では吸引入口54の外側に位置している光圧力センサの一部である。センサヘッド60は、大動脈に流入する血液と接触しており、よって、(大動脈圧を測定し、ポンプの振動を検出するために)大動脈を流れる血液内の光信号を検出することができる。センサヘッド30は(使用される場合)、左心室内のポンプの遠位端の近くに配置されているので、左室圧を測定するために(またポンプまたはカニューレの振動を検出するためにも)左心室内の血液と接触する。光信号測定は、例えば、血流中に光のパルス(または連続した流れ)を送り、処理のために評価デバイスに返すことができる光センサ信号を形成する戻りパルスを受け取ることによって行われる。戻りパルスは、以下でさらに説明されるように、センサヘッド30および60のガラス膜の変形によりセンサヘッドに再度結合される元のパルスの反射である。センサヘッドからの光信号は評価デバイス100に送られ、評価デバイス100はそれらを電気信号に変換し、それらを送って表示画面101に表示する。2つのセンサが示されているが、システムは、1つだけを使用するように構成されてもよい。以下でさらに論じられるように、センサヘッド60は、振動が最大になるはずのポンプハウジングおよびモータセクション51の近くにあるので、センサヘッド60は、センサ30よりも機械的故障イベントを検出するのにより適し得る。ただしセンサ30は、ポンプの故障も示し得るポンピング中のカニューレの動きのリズムの変化を検出するために使用することもできる。回転ポンピングデバイス50のモータ電流は、カテーテル内の導線を通って評価デバイス100にも送られ、これを表示画面101に表示することができる。
【0026】
センサは、様々な有益な情報を提供することができる。センサヘッド60(および任意選択で、センサ30などの別のセンサ)が患者内に配置されている場合、システムは大動脈圧を測定することができる。他のセンサが使用される場合、センサヘッド30による心室圧など、他の圧力も検出され得る。圧力測定は、心臓の回復を追跡するための収縮性測定を提供することもできる。収縮性は、心筋が収縮する固有の能力を表す。また圧力信号を評価して、ポンピングデバイス50のカニューレを通る血液の流れを計算するために使用できる圧力差を特定することもできる。心拍中の心室圧および血流量を使用して収縮性を決定することができる。遠位センサヘッド30は、心室圧を検出するために、例えば、ヘッドが先端から突出するように配置されている、軟性の柔軟な先端55内に延在することもできる。センサヘッド30で心室圧を検出することにより、臨床家は、ポンプが大動脈弁を横切ったことを検出することができる。さらに、センサには先端55のわずかな曲がりを検出するのに十分な感度があり、これにより臨床家が弁を横切ってポンプをより効率的に押すように案内することができる。ポンプが、図1と同様に、心臓壁の近くに位置するとき、センサは、例えば、入口が心室内の僧帽弁および腱を吸引することによって引き起こされるような、曲がりやねじれの結果として心臓壁にかかる過度の圧力を検出することもできる。この状態の検出により、ユーザはポンプを回転させ、または引き抜くことができる。
【0027】
図2に電気光学圧力測定がさらに示されている。図2に、その中を光ファイバ29(および任意選択で28)が自由に移動できるルーメン27を有する圧力測定カテーテル26を示す。カテーテル26は、好ましくは、ニチノールまたは別の形状記憶合金またはポリマーホース製とすることができる。図1に示されるように、カテーテル26は、出口点57でカテーテルホース20から出て、(例えば外側で)柔軟なフローカニューレ53に沿って案内される。圧力測定カテーテルは、光ファイバ29(または28)の遠位端34に、空洞33に隣接した薄いガラス膜32を含むヘッドハウジング31を有する(30や60などの)センサヘッドを有する。光はガラス膜32に衝突し、低損失(すなわち、ファイバの長さ全体にわたる低減衰損失)でファイバ28(または29)を出入りする。ガラス膜32は、感圧性であり、センサヘッド30(または60)に作用する圧力の大きさに従って変形する。ガラス膜32の変形により、光が反射し、光ファイバ28(または29)に再度結合する。光ファイバ28(または29)の近位端で、すなわち、評価デバイス100で、デジタルカメラ、例えば、CCDカメラやCMOSが入射光を受け取り、圧力に依存する電気信号を生成する。例えば、カメラは、入射光を受け取り、光学画像または光学パターンを生成し、その画像またはパターンを、画像またはパターンを入力として受け取り、それを使用して圧力信号を計算するように構成された評価デバイス内の信号プロセッサに送り得る。いくつかの態様では、信号プロセッサは、計算された圧力信号を使用して、電動式ポンピングデバイス50への電力供給を制御するように構成される。例えば、計算された圧力信号が低い場合、信号プロセッサは電動式ポンピングデバイス50への電力供給を増やす。計算された圧力信号が高い場合、信号プロセッサは電動式ポンピングデバイス50への電力供給を減らす。
【0028】
上記のように、遠位センサヘッド30は、ポンプの先端55で心室圧を検出するために、軟性の柔軟な先端55内に延びている。図示のように、ヘッド60は、ポンプの近位に配置されており、大動脈圧を検出するために大動脈内にとどまる。その信号が検出され、評価デバイス100に送られる。ヘッド30および60からの信号を評価デバイス100で比較し、ポンプの配置および監視に使用される、差分圧力信号/測定に使用することができる。差分信号または測定は、本明細書で論じられるように、モータ電流ならびにポンプの配置および性能を監視するための他のパラメータと組み合わせて使用することもできる。さらに、これにより先端55の曲がりを非常に高感度で検出することが可能になり、弁の横断を簡単にすることができる。ポンプが、図1と同様に、壁の近くに位置している場合、曲がりやねじれの結果として心臓壁にかかる過度の圧力をさらに検出することができる。後者は、入口が心臓構造を吸引することにもつながり得る。この状態の検出はユーザがポンプを回転させ、または引き抜くことによって修正することができる。
【0029】
遠位センサヘッド60および光ファイバ28Bを使用して、回転ポンピングデバイス50のモータセクション51で機械的故障イベントを検出することができる。遠位センサヘッド60から光ファイバ28Bを使用して評価デバイス100に送られる光信号を使用して、評価デバイス100は光信号のSNRを計算することができる。SNRは、回転ポンピングデバイス50の機械的振動と相関がある。回転ポンピングデバイス50が停止しているとき、回転ポンピングデバイス50の機械的振動は最小である。この状態では、光信号のノイズレベルが低いので、SNRは比較的大きい。回転ポンピングデバイス50が動作しているとき、回転ポンピングデバイス50の機械的振動は増加する。通常動作中には、光信号のノイズレベルが大きいので、SNRは比較的低く、(モータがポンプへの電流を駆動しているので)モータ電流はゼロより大きい。回転ポンピングデバイス50がその通常の条件で動作しているときのSNRをベースラインSNRとみなすことができ、機械的故障イベントを知らせ得るSNR変化を検出するための閾値SNRを決定するために使用することができる。機械的故障イベント中、SNRは、回転ポンピングデバイス50の速度が、例えば、ベアリング故障やロータの部分的詰まりのために低下するときに短期間にわたって増加し得るが、モータ電流は正であり、モータがまだ働いていることを示す。
【0030】
ポンプの性能を評価するためにベースライン(または他の閾値)を上回るSNRの増加を検出し、評価することができる。いくつかの用途では、評価デバイス100は、ある期間におけるSNRの増加が、(例えば、モータ電流が正であることによって示される)ポンプが動作している期間中の(またはある時点での)閾値を超えるかどうかを判定することによって、機械的故障イベントが発生したかどうかを判定する。評価デバイス100は、機械的故障イベントの前のベースラインSNRに基づく閾値で構成されることになる。例えば、閾値は、ベースラインSNRの大きさの倍数(例えば、4分の1、3分の1、2分の1、または2倍)として設定することができる。評価デバイス100が機械的故障イベントを判定するために他の閾値を使用することもできる。あるいは、評価デバイス100は、SNR変化を評価するための閾値を示すユーザからの入力を受け取ることもできる。SNRが評価される期間は、所望の任意の期間とすることができる。例えば、入力される期間は、1分間、約1~約5分間、約5~約10分間、または約10分間~約20分間であり得る。評価デバイス100が機械的故障イベントを判定するために他の期間を使用することもできる。評価デバイス100が、機械的故障イベントが発生したと判定した場合、例えば、モータ電流が正のままである間に評価期間中にSNRが閾値を超える場合、評価デバイス100は、機械的故障イベントと関連付けられたインジケータを生成および出力することができる。このインジケータを表示画面101に表示することができる。
【0031】
図3に、数日間にわたる、図1の回転ポンピングデバイス50のモータ電流と、図1および図2の光ファイバセンサからの信号に基づく計算されたSNRとの連続ロギングの例示的なグラフ300を示す。グラフ300は、モータ電流302およびSNR304を含む。回転ポンピングデバイス50のモータ電流302は、数日間にわたって評価デバイス100に送られ、回転ポンピングデバイス50が動作しているときにはゼロより大きく、モータが停止しているときにはゼロである。ベースラインSNRは、SNRが比較的低いので、回転ポンピングデバイス50が動作しているときのSNRになる。ベアリング故障イベント306中、SNR304は、短期間(例えば、図3の例では数分間)にわたってベースラインSNRから増加する。例えば、図3に示されるように、SNR304は、おおよそ3500のベースラインSNRから5500のSNR304まで増加する。SNRは、ベアリング故障が原因で回転ポンピングデバイス50の速度が低下しているためこの短期間にわたって増加し、したがってポンプの振動が減速する。この例では、短期間にわたるSNRの増加はおおよそ2000である。評価デバイス100は、ベアリング故障イベント306を検出するための閾値SNRを決定する。例えば、評価デバイス100は、ベースラインSNRがポンプの通常動作中のSNRであるため、ベースラインSNRに基づいて閾値を決定することができる。ポンプ動作中のSNRからの大きな偏差はベアリング故障イベントを指示する。これはポンプの他の故障を指示する可能性もある。評価デバイス100は、閾値が固定および/または所定の量のベースラインSNRであると決定することができる。例えば、図3に示されるように、評価デバイス100は、閾値がベースラインSNR(3500)の2分の1、すなわち1750であると決定することができる。モータ電流がゼロより大きく(回転ポンピングデバイス50が動作している)かつ短期間にわたるSNRの増加(2000)が閾値(1750)よりも大きいので、評価デバイス100は、ベアリング故障イベント306が発生したと判定する。光ファイバセンサのSNR304をモータ電流302と組み合わせて使用することの少なくとも1つの利点は、ポンプ故障イベント306(例えば、通常は検出が困難なベアリング故障)をより早期により確実に検出することが可能になることである。前世代の血液ポンプとは異なり、本開示のシステムおよび方法は、光センサを使用して、SNR304などの光ファイバセンサから信号を検出することによってポンプの性能を評価することを企図している。センサは、血管系におけるポンプの配置を監視するためにも使用され得る。
【0032】
図4に、1ヵ月間にわたる図2の光ファイバセンサからの信号に基づく計算されたSNRの連続ロギングの例示的なグラフ400を示す。グラフ400は、第1のSNR402および第2のSNR404を含む。第1のSNR402と第2のSNR404とは、各々、異なる時点において評価デバイス100から取得され、グラフ400において比較されている。数日間にわたる通常動作中、第1のSNR402および第2のSNR404は短期間にわたって増加しない。ベアリング故障イベント406をシミュレートするために、血液ポンプに送られる電源が切られた。ベアリング故障イベント406中、第1のSNR402および第2のSNR404は、電源喪失により短期間にわたって増加する。電源喪失により回転ポンピングデバイス50の速度が低下し、結果として振動が減少する。振動の減少はベアリング故障イベント406をシミュレートする。図3に関して説明したように、評価デバイス100は、第1のSNR402および第2のSNR404に基づいてベアリング故障イベント406が発生したと判定することができる。図4は、誤検出が、あったとしてもわずかであるため、SNR信号をベアリング故障のインジケータとして使用することの信頼性を示している。
【0033】
あるいは、評価デバイス100は、配置信号、モータ電流、およびSNRを使用して、機械的故障イベントが発生したかどうかを判定することもできる。配置信号は、評価デバイス100によって、送られたセンサヘッド60の光信号から計算され、圧力を示す。配置信号は、図3および図4に関して上述したプロセスと組み合わせて、機械的故障イベントを判定するために使用することができる。例えば、図5A図5Cに、図1の回転ポンピングデバイス50の配置信号およびモータ電流と、図1および図2の光ファイバセンサからの信号に基づく計算されたSNRとの連続ロギングの3つの例示的なグラフを示す。図5A図5Cの3つのグラフの各々に示されるように、配置信号が安定しているとき、評価デバイスは、回転ポンピングデバイス50の機械的振動がモータ速度の増加とともに増加するので、モータ速度が増加するにつれてSNRの低下を判定することができる。評価デバイス100は、配置信号が安定しており、モータ速度/電流が安定しており、SNRが短期間にわたって増加する場合に、機械的故障イベントを特定することになる。例えば、SNRの増加は瞬時であり得る。いくつかの例では、SNRの増加は、約100ミリ秒間~約1秒間、または約1秒間~約10秒間の期間にわたって発生し得る。別の例では、SNRの増加は、約1~約5分間、または約5~約10分間の期間にわたって発生し得る。SNRを配置信号およびモータ電流と組み合わせて使用することは、配置信号が患者の体内のポンプの位置に関するより多くの情報を提供するので有利である。
【0034】
図6に、図1の血液ポンプ50に関連する機械的故障イベントを判定するプロセス600を示す。工程602で、評価デバイス100が、血液ポンプを駆動するモータのモータ電流を決定する。例えば、図1および図2に関して上述したように、回転ポンピングデバイス50のモータ電流は、評価デバイス100に送られ、これを表示画面101に表示することができる。
【0035】
工程604で、評価デバイス100が、モータ電流がゼロより大きいかどうかを判定する。例えば、回転ポンピングデバイス50が停止している場合モータ電流はゼロであり、回転ポンピングデバイス50が動作している場合モータ電流はゼロより大きい。モータ電流がゼロの場合、プロセス600は工程606で終了する。しかしながら、モータ電流がゼロより大きい場合、プロセス600は工程608に進む。
【0036】
工程608で、評価デバイス100が、血液ポンプで光信号を検出する。例えば、図1および図2に関して上述したように、ガラス膜32は、感圧性であり、センサヘッド60(または30)に作用する圧力の量に応じて変形する。例えば、ガラス膜32の変形により、光が反射し、光ファイバ28(または29)に再度結合する。
【0037】
工程610で、光ファイバ28が光信号を光ファイバセンサから評価デバイスに送る。例えば、図1および図2に関して上述したように、センサヘッド30および60によって送られた光信号を、評価デバイス100において電気信号に変換し、例えば、表示画面101に表示することができる。
【0038】
工程612で、評価デバイス100が、送られた光信号に基づいてSNRを計算する。例えば、遠位センサヘッド60から光ファイバ28を使用して評価デバイス100に送られる光信号を使用して、評価デバイス100は光信号のSNRを計算することができる。SNRは、回転ポンピングデバイス50の機械的振動にリンクされる。回転ポンピングデバイス50が停止されているとき、モータ電流はゼロであり、回転ポンピングデバイス50の機械的振動は最小である。この状態では、光信号のノイズレベルが低いので、SNRは比較的大きい。回転ポンピングデバイス50が動作しているとき、モータ電流はゼロより大きく、かつ回転ポンピングデバイス50の機械的振動は増加する。この状態では、光信号のノイズレベルが大きいので、SNRは比較的低い。
【0039】
工程614で、評価デバイス100が、計算されたSNRに基づいて血液ポンプモータに関連する機械的故障イベントを判定する。図1および図2に関して上述したように、回転ポンピングデバイス50が停止しているとき、回転ポンピングデバイス50の機械的振動は最小である。この状態では、光信号のノイズレベルが低いので、SNRは比較的大きい。回転ポンピングデバイス50が動作しているとき、モータ電流はゼロより大きく、かつ回転ポンピングデバイス50の機械的振動は増加する。(例えば、ポンプが正常に動作しているときの)ベースラインからのSNRの急激な上昇は、ポンプの機械的問題を知らせる。例えば、故障状態では、光信号のノイズレベルは大きいがモータ電流はゼロより大きいのでSNRは比較的低く、モータは電流でポンプを駆動しているがポンプはポンピングしていない(かまたは減速している)ことを示す。評価デバイス100は、機械的故障イベントを検出するための閾値SNRを決定する。一局面では、評価デバイスは、ユーザ入力から閾値SNRを受け取ることができる。あるいは、回転ポンピングデバイス50が動作しているときのSNRをベースラインSNRとみなすことができ、機械的故障イベントを検出するための閾値SNRを決定するために使用することができる。機械的故障イベント中、SNRは、例えば、ベアリング故障が原因で回転ポンピングデバイス50の速度が低下したため、短期間にわたって増加する。工程614について、図7のプロセス700に関連して、以下でより詳細に説明する。
【0040】
図7に、プロセス600の判定された機械的故障イベントおよび図1の血液ポンプと関連付けられたインジケータを生成および出力するプロセス700を示す。工程702で、評価デバイス100が、送られた光信号およびモータ電流を示す信号を入力として受け取る。例えば、図1および図2に関して上述したように、回転ポンピングデバイス50のモータ電流は、評価デバイス100に送られ、これを表示画面101に表示することができ、センサヘッド30および60の一方または両方によって送られた光信号を、評価デバイス100において電気信号に変換し、例えば、表示画面101に表示することができる。
【0041】
工程704で、評価デバイス100が、モータ電流がゼロより大きいかどうかを判定する。例えば、回転ポンピングデバイス50が停止している場合モータ電流はゼロであり、回転ポンピングデバイス50が動作している場合モータ電流はゼロより大きい。モータ電流がゼロの場合、プロセス700は工程706で終了する。しかしながら、モータ電流がゼロより大きい場合、プロセス700は工程708に進む。回転ポンピングデバイス50が停止される(かまたは減速する)と、回転ポンピングデバイス50の機械的振動が減速し、ポンプが停止すると最小に達する。ポンプ停止状態では、光信号のノイズレベルが低いので、SNRは比較的大きい。回転ポンピングデバイス50が動作しているとき、モータ電流はゼロより大きく、かつ回転ポンピングデバイス50の機械的振動は増加する。この状態では、通常のポンプ動作中には、光信号のノイズレベルが大きいので、SNRは比較的低い。
【0042】
しかし、ポンプの故障または誤動作中、SNRは変化し、これを特定するのに以下の工程が役立つ。工程708で、評価デバイス100が、送られた光信号に基づいてSNRを計算する。例えば、近位センサヘッド60から光ファイバ28を使用して評価デバイス100に送られる光信号を使用して、評価デバイス100は光信号のSNRを計算することができる。SNRは、回転ポンピングデバイス50の機械的振動と相関がある。
【0043】
工程710で、評価デバイス100がSNRの所定の閾値を受け取る。例えば、回転ポンピングデバイス50が動作しているときのSNRをベースラインSNRとみなすことができ、機械的故障イベントを検出するための閾値SNRを決定するために使用することができる。評価デバイス100は、機械的故障イベントの前のベースラインSNRに基づいて閾値を決定することができる。例えば、閾値は、ベースラインSNRの大きさの倍数(例えば、4分の1、2分の1、または2倍)とすることができる。
【0044】
工程712および工程714で、評価デバイス100が、計算されたSNRをある期間にわたって所定の閾値と比較し、その期間における計算されたSNRの増加が所定の閾値を超えるかどうかを判定する。例えば、機械的故障イベント中、SNRは、回転ポンピングデバイス50の速度が(ベアリング故障などの)ポンプ構成要素の故障が原因で低下したため、短期間にわたって増加する。評価デバイス100は、期間におけるSNRの増加が閾値を超えるかどうかを判定することによって、機械的故障イベントが発生したかどうかを判定することができる。この期間は、ユーザによって設定された任意の期間とすることができる。例えば、この期間を、1分間よりも長くすることができる。別の例では、この期間を、約1~約5分間、または約5~約10分間とすることができる。図3に関して説明したように、モータ電流がゼロより大きく(回転ポンピングデバイス50が動作している)かつ短期間にわたるSNRの増加(2000)が閾値(1750)よりも大きいので、評価デバイス100は、故障イベント306が発生したと判定することができる。
【0045】
評価デバイス100が、その期間における計算されたSNRの増加が所定の閾値を超えないと判定した場合、プロセス700は工程716で終了する。しかしながら、評価デバイス100が、その期間における計算されたSNRの増加が所定の閾値を超えると判定した場合、プロセス700は工程718に進む。
【0046】
工程718で、評価デバイス100が、機械的故障イベントと関連付けられたインジケータを生成および出力する。例えば、評価デバイス100が、機械的故障イベントが発生したと判定した場合、評価デバイス100は、機械的故障イベントと関連付けられたインジケータを生成および出力することができる。このインジケータを表示画面101に表示することができる。デバイス100は、判定に応答してモータを停止する制御信号を送ることもできる。
【0047】
図8図9に、機械的故障がある血液ポンプシステムから収集されたデータを示す。図8に、血液ポンプシステムから収集されたデータを表す7つの例示的なグラフを示す。グラフ804は、光センサのSNR(単位なし)を示しており、グラフ806は、生のパージ流量(mL/hr)を示しており、グラフ808は、配置信号(mmHg)を示しており、グラフ810は、モータ電流(mA)を示しており、グラフ812は、モータ速度(rpm)を示しており、グラフ814は、ポンプ流量(L/min)を示しており、グラフ816は、アラーム発生(アラーム番号)を示している。グラフ804からグラフ816は、同じ時間スケールで示されており、同じ時刻(2019年3月7日12:31:34)から開始している。時刻802で、(グラフ804に示される)SNRは、時刻802の前のSNRに対して著しく増加した。時刻802の前、平均SNRは約2500であり、最大値は約6000、最小値は約1000であった。時刻802の後、平均SNRは約5000であり、最大値は8000超、最小値は約1000であった。時刻802で、(グラフ810に示される)モータ電流も短期間にわたって急速に増加し、時刻802の前の最大値約830mA、最小値約690mA、平均値約760mAから、時刻802の後の最大値1000mA超、最小値約780mA、平均値約850mAまで急上昇した。(グラフ814に示される)ポンプ流量分散の振幅もまた時刻802で、時刻802の前の約1Lの振幅から時刻802の後の約0.2Lの振幅に減少した。時刻802におけるSNRおよびモータ電流のこれらの増加は、血液ポンプシステムにおける機械的問題または不安定性、すなわち、後で図9に示される後述するモータ故障につながったベアリング故障に時間的に対応する問題を示している。
【0048】
図9は、図8に示されるグラフの続きである(図8に示されるグラフのx軸が終わる、2019年3月7日14:52:57から開始する)。グラフ904は、グラフ804のSNRの続きを示しており、グラフ906は、グラフ806の生のパージ流量の続きを示しており、グラフ908は、グラフ808の配置信号の続きを示しており、グラフ910は、グラフ810の生のモータ電流の続きを示しており、グラフ912は、グラフ812のモータ速度信号の続きを示しており、グラフ914は、グラフ814の生のポンプ流量信号の続きを示しており、グラフ916は、グラフ816のアラーム発生信号の続きを示している。時刻902で、血液ポンプシステムのモータが故障した。図9に示されるように、(時刻802のベアリング故障の後に)モータが故障したときに、SNRが増加し、配置信号が減少し、モータ電流がおおよそ0mAまで減少し、モータが動作を停止し(モータ速度が0rpmになり)、ポンプ流動が停止し、(グラフ916に示される)アラームがトリガされた。時刻802におけるSNRおよびモータ電流の増加は、時刻902におけるモータ故障のおおよそ1時間前の血液ポンプシステムにおける機械的問題を示していた。(例えば時刻802で)SNRおよびモータ電流の増加を特定することの少なくとも1つの利益は、血液ポンプシステムにおける機械的問題および不安定性のより早期のより確実な検出である。いくつかの実施態様では、そのようなSNR、モータ電流、またはその両方の増加が、アラーム、モータの停止をトリガするか、またはユーザに、モータが故障する前に血液ポンプシステムを取り外す(場合によっては交換する)よう促し得る。
【0049】
以上を考慮すれば、当業者は、本開示が、カテーテルベースの医療デバイスの性能および状況を評価するための診断ツールとしての光ファイバセンサの使用を提供することを理解するであろう。本明細書に記載される態様および特徴は、経皮的心臓ポンプシステムに関連した使用について特に説明されているが、以下で述べる構成要素およびその他の特徴が任意の適切な方法で互いに組み合わされ、電気生理学的研究およびカテーテルアブレーション装置、血管形成術およびステント留置装置、血管造影カテーテル、末梢挿入中心静脈カテーテル、中心静脈カテーテル、ミッドラインカテーテル、末梢カテーテル、下大静脈フィルタ、腹部大動脈瘤治療装置、血栓除去装置、TAVR送達システム、バルーンポンプを含む心臓治療および心臓補助装置、外科的切開を使用して埋め込まれた心臓補助装置、ならびに任意の他の静脈または動脈ベースの管腔内導入カテーテルおよび装置などの他のタイプの医療デバイスに適応および適用され得ることが理解されるであろう。
【0050】
以上は本開示の原理の単なる例示であり、システム、方法、および装置は、限定ではなく例示を目的として提示されている記載の態様以外によっても実施することができる。本明細書で開示されるシステム、方法、および装置は、システムの経皮的心臓ポンプにおける使用について示されているが、他の埋め込み可能な心臓ポンプまたは埋め込み可能な心臓補助装置のためのシステム、方法、および装置に適用され得ることを理解されたい。
【0051】
当業者には、本開示を検討した後に変形形態および改変形態が想起されるであろう。以上で説明または例示された様々な特徴は、それらの任意の組み合わせを含めて、他のシステムにおいて組み合わされ、または統合されてもよい。さらに、特定の特徴が省略され、または実装されない場合もある。以上で説明または例示された様々な実施態様は、任意の方法で組み合わされ得る。
【0052】
変更、置換、および改変の例は、当業者であれば確かめることができ、本明細書で開示される情報の範囲から逸脱することなくなされ得る。本明細書中に引用されたすべての参考文献は、参照によりその全体が組み入れられ、本出願の一部をなす。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9