(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】オキシム誘導体の水素化プロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 239/20 20060101AFI20240405BHJP
C07D 231/14 20060101ALI20240405BHJP
C07F 17/00 20060101ALI20240405BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240405BHJP
【FI】
C07C239/20
C07D231/14
C07F17/00 CSP
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021524251
(86)(22)【出願日】2019-11-01
(86)【国際出願番号】 EP2019079994
(87)【国際公開番号】W WO2020094527
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-10-27
(32)【優先日】2018-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520222106
【氏名又は名称】シンジェンタ クロップ プロテクション アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】スメイカル トマス
【審査官】宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-508794(JP,A)
【文献】特表2016-525084(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0129574(US,A1)
【文献】特開2018-083792(JP,A)
【文献】特開2015-074632(JP,A)
【文献】国際公開第2013/153407(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/153408(WO,A1)
【文献】特開2017-014195(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01862446(EP,A1)
【文献】Youcef Boutadla et al.,Alkyne insertion into cyclometallated pyrazole and imine complexes of iridium, rhodium and ruthenium; relevance to catalytic formation of carbo- and heterocycles,Dalton Transactions,2010年10月06日,39,pp.10447-10457,DOI: 10.1039/c0dt00280a
【文献】Yun-Fei Zhang et al.,Ir-Catalyzed C-H Amidation of Aldehydes with Stoichiometric/ Catalytic Directing Group,Chem. Eur. J.,2016年10月26日,22,pp.17808-17812,DOI : 10.1002/chem.201603805
【文献】Megumi Watanabe et al.,Synthesis, Structures, and Transfer Hydrogenation Catalysis of Bifunctional Iridium Complexes Bearing a C-N Chelate Oxime Ligand,Eur. J. Inorg. Chem.,2011年10月10日,pp.504-511,DOI: 10.1002/ejic.201100800
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C、C07D、C07F、C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシム(I)と水素とを、式(IIIa)又は式(IIIb)のイリジウム触媒及び酸の存在下に反応させることによる、式(II)のヒドロキシルアミン塩をもたらすための式(I)のオキシムの水素化に係るプロセス;
【化1】
であって、ここで、R
1、R
2及びR
3は各々独立して、水素、C
1~C
8アルキル、C
1~C
8ヒドロキシアルキル、C
1~C
8シアノアルキル、C
1~C
6アルコキシC
1~C
8アルキル、ジ(C
1~C
6アルコキシ)C
1~C
8アルキル、C
1~C
8ハロアルキル、C
2~C
6アルケニル、C
3~C
8シクロアルキル、フェニル、フェニルC
1~C
3アルキル又はヘテロアリールであり、ここで、前記シクロアルキル及びフェニル部分は各々、任意選択により、ヒドロキシル、ハロゲン、C
1~C
6アルキル、C
3~C
8シクロアルキル、C
1~C
6ハロアルキル、C
1~C
6アルコキシ、フェニル、ヘテロアリール、C
1~C
6アルコキシカルボニル、アシルアミノ、アミド、シアノ、ニトロ及びC
2~C
6アルケニルから選択される1個~5個の基で置換されており;又は
R
1及びR
2は、これらが結合している炭素原子と一緒になって、4員~8員飽和シクロアルキル又はヘテロシクリル環を形成し得、ここで、複素環式部分は、1個、2個又は3個のヘテロ原子を含む非芳香族単環式環であり、ここで、前記ヘテロ原子はN、O及びSから個々に選択され;
R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は各々独立して、水素又はC
1~C
3アルキルであり;
【化2】
は、イリジウムに配位する少なくとも1個の炭素原子及びイリジウムに配位する少なくとも1個の窒素原子を含む二座キレートリガンドを表し;
Xは、式R
14-SO
2O-又はR
15-C(O)O-のアニオン基を表し、ここで、
R
14は、ヒドロキシ、C
1
~C
6アルキル、C
1
~C
6アルコキシ、C
1
~C
6ハロアルキル又はフェニルであり、ここで、フェニル部分は、同一であっても異なっていてもよい、R
16から選択される1個、2個、3個又は4個の置換基により任意選択により置換されており;
R
16は、C
1
~C
4アルキル、C
1
~C
4ハロアルキル、ニトロ又はハロゲンであり;
R
15はC
1
~C
6ハロアルキル又はフェニルであり、ここで、前記フェニル部分は、同一であっても異なっていてもよい、R
17から選択される1個、2個、3個又は4個の置換基により任意選択により置換されており;
R
17は、C
1
~C
4アルキル、C
1
~C
4ハロアルキル、ニトロ又はハロゲンであり;
Yは中性リガンドを表し;並びに
Zはアニオン基を表す、プロセス。
【請求項2】
R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は各々、水素又はメチルを表す、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
Xは、式R
14-SO
2O
-の基を表す、請求項1又は請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記二座キレートリガンドは、式(IV-1)、(IV-2)、(IV-3)、(IV-5)、(IV-6)、(IV-7)、(IV-8)、(IV-9)、(IV-10)、(IV-11)及び(IV-12):
【化3】
の化合物から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
Zは、R
14-SO
2O
-、メシレート、スルフェート、ハイドロジェノスルフェート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロ
ホスフェート、テトラフェニルボレート又はテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートである、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記酸は、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、硫酸又はトリフリック酸である、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
YはH
2O又はMeCNである、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記イリジウム触媒は、式(III-1)、(III-11)、(III-17)、(III-18)、又は(III-19):
【化4】
の化合物である、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記式(II)のヒドロキシルアミンはN-メトキシ-1-(2,4,6-トリクロロフェニル)プロパン-2-アミン(II-1)である、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記N-メトキシ-1-(2,4,6-トリクロロフェニル)プロパン-2-アミン(II-1)を3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-ピラゾール-4-塩化カルボニル(XII)とさらに反応させて、3-(ジフルオロメチル)-N-メトキシ-1-メチル-N-[1-メチル-2-(2,4,6-トリクロロフェニル)エチル]ピラゾール-4-カルボキサミド(XIII):
【化5】
を得る、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
式(IIIc)又は(IIId):
【化6】
(式中、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は各々独立して、水素又はC
1~C
3アルキルから選択され;
R
11A、R
11B、R
11C、R
11D、R
11E、R
13A、R
13B、R
13C及びR
13Dは各々独立して、水素、ハロゲン、C
1~C
8アルキル、C
1~C
8アルコキシ、C
1~C
8ハロアルキル、C
1~C
8ハロアルコキシ、ヒドロキシC
1~C
8アルコキシ、C
1~C
8アルコキシC
1~C
6アルコキシ、C
1~C
8アルコキシカルボニル、C
1~C
8アルコキシカルボニルC
1~C
6アルコキシ、C
1~C
8アルキルカルボニルC
1~C
6アルコキシ、フェノキシ又はニトロであり;
R
12は、水素、C
1~C
8アルキル又はフェニルであり、ここで、各フェニル部分は、C
1~C
8アルキル及びC
1~C
8アルコキシから選択される1個~5個の基により任意選択により置換されており;又は
R
12及びR
13Dは、これらが結合している炭素原子と一緒になって、6員~8員部分飽和シクロアルキル又はヘテロシクリル環を形成し得、ここで、複素環式部分は、1個又は2個のヘテロ原子を含む非芳香族環であり、ここで、前記ヘテロ原子はN、O及びSから個々に選択され;
Xは、メシレート、トシレート、ノシレート、スルフェート、ハイドロジェノスルフェート、トリフレート又はトリフルオロアセテートであり;
Yは、H
2O
であり;並びに
Zは、メシレート、トシレート、ノシレート、スルフェート、ハイドロジェノスルフェート、トリフレート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフェニルボレート又はテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートである)
の化合物。
【請求項12】
式(III-1)、(III-11)、(III-17)、(III-18)及び(III-19):
【化7】
の化合物から選択される式(III)の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オキシムのイリジウム-触媒水素化に係る新規プロセスに関する。本発明はまた、オキシムのイリジウム-触媒水素化において用いられる新規イリジウム触媒、及び、これらの触媒の調製プロセスに関する。本発明はさらに、他の不飽和基材のイオン性水素化における新規イリジウム触媒の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
対応するヒドロキシルアミン誘導体へのオキシム及びオキシムエーテルの還元は、多くの有機合成における有用なステップである。
【化1】
【0003】
シアノ水素化ホウ素ナトリウム又はボラントリエチルアミン錯体などのボラン錯体を用いるオキシム及びオキシムエーテルの還元が、国際公開第13/127764号に記載されている。ボラン還元法の主な欠点は、還元剤の高いコスト、化学量論量の廃棄物の形成がもたらされるこのプロセスの低い原子効率、及び、シアノ水素化ホウ素の毒性である。多くの事例において、ボランオキシム還元では、対応する第一級アミンへの過還元が生じてしまう(J.Chem.Soc.Perkin Trans.I,1985,2039)。
【0004】
国際公開第13/127764号には、白金-炭素触媒及び硫酸又は塩酸などの強酸の存在下における、ヒドロキシルアミンへのオキシム及びオキシムエーテルの不均一系水素化が開示されている。この方法の主な欠点は、厳しい反応条件及び限定された範囲であり、例えば、ニトロ基又はアルケン基などの基材における容易に還元される他の官能基は耐性がない。いくつかの場合において、不均一系オキシムからヒドロキシルアミンへの水素化では、対応する第一級アミンへの過還元、並びに、触媒被毒が生じてしまう。
【0005】
オキシム及びオキシムエーテルのヒドロキシルアミンへの均一系水素化に係る報告はほとんどない。オキシムの遷移金属-触媒水素化は通例、対応する第一級アミンへの過還元、及び、低い触媒効率により苦労を伴うものである(コバルト触媒-Bull.Chem.Soc.Jpn.1963,36,763;ルテニウム触媒-Tetrahedron:Asymmetry 1992,3,1283;ロジウム触媒-J.Chem.Soc.Chem.Commun.1995,1767;Org.Lett.2013,15,484;Tetrahedron:Asymmetry 2016,27,268;イリジウム触媒-Synth.Commun.2001,31,2767)。
【0006】
欧州特許第1862446号明細書には、60barの水素、ビス(1,5-シクロオクタジエン)イリジウム(I)テトラフルオロボレート及び(R)-1-[(S)-2-ジフェニルホスフィノフェロセニル]エチルジ-tert-ブチルホスフィンの組み合わせを用いる、エチル3-メトキシイミノブタノエート誘導体の均一系イリジウム-触媒水素化が開示されている。しかしながら、実際には、この方法は、3-ケトエステルのオキシムに範囲が限定されている。このような基材は2,3-不飽和エステルに互変異性化し、従って、記載のオキシム水素化反応は、実際には炭素-炭素二重結合還元である。
【0007】
Angew.Chem.Int.Ed.2014,53,13278及びChem.Eur.J.2015,21,17583には、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン触媒を用いるオキシム誘導体の均質水素化が開示されているが、しかしながら、この方法は、嵩高いO-置換基(t-ブチル又はSi[(CH3)2CH]3)を有するオキシムエーテルに限定されており、比較的厳しい反応条件(5%触媒、60~100bar H2)を利用する。
【0008】
Org.Biomol.Chem,2013,11,6934、及び、関連する国際公開第13/153407号及び国際公開第13/153408号には、対応するイミンを介したケトン及びアルデヒドの還元性アミノ化のための一定のシクロペンタジエニルイリジウム触媒が開示されている。しかしながら、これらの開示されている触媒は、オキシムの還元には非効率的であることが見出されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
ここで、本発明者らは、一定の選択されたイリジウム触媒を用いることで、比較的温和な条件下に水素を用いるオキシムの還元を実施することが可能であることを見出した。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明によれば、オキシム(I)と水素とを、式(IIIa)又は式(IIIb)のイリジウム触媒及び酸の存在下に反応させることによる、式(II)のヒドロキシルアミン塩をもたらすための式(I)のオキシムの水素化に係るプロセス;
【化2】
が提供され、ここで、R
1、R
2及びR
3は各々独立して、水素、C
1~C
8アルキル、C
1~C
8ヒドロキシアルキル、C
1~C
8シアノアルキル、C
1~C
6アルコキシC
1~C
8アルキル、ジ(C
1~C
6アルコキシ)C
1~C
8アルキル、C
1~C
8ハロアルキル、C
2~C
6アルケニル、C
3~C
8シクロアルキル、フェニル、フェニルC
1~C
3アルキル又はヘテロアリールであり、ここで、前記シクロアルキル及びフェニル部分は各々、任意選択により、ヒドロキシル、ハロゲン、C
1~C
6アルキル、C
3~C
8シクロアルキル、C
1~C
6ハロアルキル、C
1~C
6アルコキシ、フェニル、ヘテロアリール、C
1~C
6アルコキシカルボニル、アシルアミノ、アミド、シアノ、ニトロ及びC
2~C
6アルケニルから選択される1個~5個の基で置換されており;又は
R
1及びR
2は、これらが結合している炭素原子と一緒になって、4員~8員飽和シクロアルキル又はヘテロシクリル環を形成し得、ここで、複素環式部分は、1個、2個又は3個のヘテロ原子を含む非芳香族単環式環であり、ここで、ヘテロ原子はN、O及びSから個々に選択される。
【0011】
好ましくは、R1、R2及びR3は各々独立して、水素、C1~C4アルキル、C1~C4ヒドロキシアルキル、C1~C4シアノアルキル、C1~C3アルコキシC1~C4アルキル、ジ(C1~C3アルコキシ)C1~C4アルキル、C1~C4ハロアルキル、C2~C3アルケニル、C3~C6シクロアルキル、フェニル、フェニルC1~C2アルキル又はヘテロアリールであり、ここで、シクロアルキル及びフェニル部分は各々、任意選択により、ヒドロキシル、ハロゲン、C1~C3アルキル、C3~C6シクロアルキル、C1~C3ハロアルキル、C1~C3アルコキシ、フェニル、ヘテロアリール、C1~C3アルコキシカルボニル、アシルアミノ、アミド、シアノ、ニトロ及びC2~C3アルケニルから選択される1個、2個又は3個の基で置換されており;又は
R1及びR2は、これらが結合している炭素原子と一緒になって、4員~6員飽和シクロアルキル又はヘテロシクリル環を形成し得、ここで、複素環式部分は、1個、2個又は3個のヘテロ原子を含む非芳香族単環式環であり、ここで、ヘテロ原子はN、O及びSから個々に選択される。
【0012】
より好ましくは、R1、R2及びR3は各々独立して、水素、C1~C4アルキル、C1~C4ヒドロキシアルキル、C1~C3アルコキシC1~C4アルキル、ジ(C1~C3アルコキシ)C1~C4アルキル、C1~C4ハロアルキル、C2~C3アルケニル、フェニル及びフェニルC1~C2アルキルであり、ここで、フェニル部分は、ハロゲン、C1~C3アルキル、C1~C3ハロアルキル、C1~C3アルコキシ、C1~C3アルコキシカルボニル、ヒドロキシル及びニトロから、好ましくはクロロ、メチル、メトキシ、メトキシカルボニル及びニトロから選択される1個、2個又は3個の基で任意選択により置換され得る。
【0013】
実施形態の1つの組において、R1は、tert-ブチル、メトキシカルボニル、1,1-ジメトキシメチル、シクロプロピル、フェニル又はベンジルを表し、ここで、各フェニル又はベンジル部分の芳香族環は、クロロ、メチル、メトキシ、メトキシカルボニル及びニトロから独立して選択される1個、2個又は3個の基で任意選択により置換されており;
R2は、水素、メチル又はエチルを表し;並びに
R3は、水素、メチル、エチル、イソプロピル、t-ブチル、アリル又はベンジルを表す。
【0014】
実施形態の他の組において、R1は、tert-ブチル、メトキシカルボニル、1,1-ジメトキシメチル、シクロプロピル、2-メチルフェニル、2-クロロフェニル、4-ニトロフェニル、4-メトキシフェニル、2-ブロモベンジル、4-メトキシベニル又は2,4,6-トリクロロベンジルを表し;
R2は、水素、メチル又はエチルを表し;並びに
R3は、水素、メチル、エチル、イソプロピル、t-ブチル、アリル又はベンジルを表す。
【0015】
実施形態の1つの組において、R1はフェニル又はベンジルを表し、ここで、各フェニル又はベンジル部分の芳香族環は、クロロ、メチル、メトキシ、メトキシカルボニル又はニトロから独立して選択される1個、2個又は3個の基で任意選択により置換され;
R2は水素又はメチルを表し;及び
R3は、水素、メチル、エチル、イソプロピル、t-ブチル、アリル又はベンジルを表す。
【0016】
もっとも好ましい実施形態において、式(II)のヒドロキシルアミンは、N-メトキシ-1-(2,4,6-トリクロロフェニル)プロパン-2-アミン(II-1)である。
【0017】
R6、R7、R8、R9及びR10は各々独立して、水素又はC1~C3アルキルである。好ましくは、R6、R7、R8、R9及びR10は各々独立して水素又はメチルであり、より好ましくは、R6、R7、R8、R9及びR10は各々、メチルを表す。
【0018】
【化3】
は、イリジウムに配位する少なくとも1個の炭素原子及びイリジウムに配位する少なくとも1個の窒素原子を含む二座キレートリガンドを表す。多くの金属-キレートリガンドが当業者に公知であり、本発明における使用に好適であろう。特に好適な二座キレートリガンドは、配位している窒素及び炭素原子において1,4-関係を有するもの、好ましくは、配位している炭素原子がフェニル環の一部を形成し、ここで、前記フェニル環がオルト位で置換されているものである。
【0019】
好ましい二座キレート化C,Nリガンドは、構造(IV)、(IVa)又は(IVb):
【化4】
のリガンドであり、ここで、R
11A、R
11B、R
11C、R
11D、R
11E、R
13A、R
13B、R
13C及びR
13Dは各々独立して、水素、ハロゲン、C
1~C
8アルキル、C
1~C
8アルコキシ、C
1~C
8ハロアルキル、C
1~C
8ハロアルコキシ、ヒドロキシC
1~C
8アルコキシ、C
1~C
8アルコキシC
1~C
6アルコキシ、C
1~C
8アルコキシカルボニル、C
1~C
8アルコキシカルボニルC
1~C
6アルコキシ、C
1~C
8アルキルカルボニルC
1~C
6アルコキシ、フェノキシ又はニトロであり;
R
12は、水素、C
1~C
8アルキル又はフェニルであり;並びに、ここで、各フェニル部分は、C
1~C
8アルキル及びC
1~C
8アルコキシから選択される1個~5個の基により任意選択により置換されており;又は
ここで、二座キレートリガンドは(IVa)又は(IVb)であり、R
11A及びR
13Dは、これらが結合している炭素原子と一緒になって、5員又は6員不飽和環を形成し得、好ましくはR
11A及びR
13Dは、これらが結合している炭素原子と一緒になって、6員不飽和環を形成し得;又は
R
12及びR
13Dは、これらが結合している炭素原子と一緒になって、5員~8員部分飽和又は不飽和シクロアルキル又はヘテロシクリル環を形成し得、ここで、複素環式部分は、1個又は2個のヘテロ原子を含む非芳香族環であり、及び、ここで、ヘテロ原子は、N,O及びSから独立して選択される。一実施形態において、R
12及びR
13Dは、これらが結合している炭素原子と一緒になって、6員~8員部分飽和又は不飽和シクロアルキル又はヘテロシクリル環を形成し得、ここで、複素環式部分は、1個又は2個のヘテロ原子を含む非芳香族環であり、ここで、ヘテロ原子は、N、O及びSから独立して選択される。
【0020】
好ましくは、R11A、R11B、R11C、R11D、R11E、R13A、R13B、R13C及びR13Dは各々独立して、水素、ハロゲン、C1~C3アルコキシ、ヒドロキシC1~C3アルコキシ、C1~C3アルコキシC1~C3アルコキシ、C1~C3アルコキシカルボニルC1~C3アルコキシ、C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ又はニトロであり、及び、R12は、水素、C1~C3アルキル又はフェニルであり;並びに、ここで、各フェニル部分は、C1~C3アルキル及びC1~C3アルコキシから選択される1個~3個の基により任意選択により置換されており;より好ましくは、R11A、R11B、R11C、R11D、R11E、R13A、R13B、R13C及びR13Dは各々独立して、水素、ハロゲン、C1~C3アルコキシ、ヒドロキシC1~C3アルコキシ、C1~C3アルコキシC1~C3アルコキシ又はC1~C3アルコキシカルボニルC1~C3アルコキシであり、及び、R12は、水素、C1~C3アルキル又はフェニルであり;並びに、ここで、各フェニル部分は、C1~C3アルキル及びC1~C3アルコキシから選択される1個~3個の基により任意選択により置換されており;又は
ここで、二座キレートリガンドは(IVa)又は(IVb)であり、R11A及びR13Dは、これらが結合している炭素原子と一緒になって、5又は6員、好ましくは6員不飽和環を形成し得;又は
R12及びR13Dは、これらが結合している炭素原子と一緒になって、5員~7員、好ましくは6員又は7員、部分飽和シクロアルキル又はヘテロシクリル環を形成し、ここで、複素環式部分は1個のO原子を含む非芳香族環である。一実施形態において、R12及びR13Dは、これらが結合している炭素原子と一緒になって、5又は6員部分飽和シクロアルキル又はヘテロシクリル環を形成し得、ここで、複素環式部分は、1個のO原子を含む非芳香族環である。
【0021】
より好ましくは、R11A、R11B、R11C、R11D、R11E、R13A、R13B、R13C及びR13Dは各々独立して、水素、メチル、メトキシ、エトキシ、2-ヒドロキシエトキシ、2-メトキシエトキシ、メトキシカルボニル-メトキシ、イソ-プロポキシカルボニル-メトキシ又はニトロであり、及び、R12は、水素、メチル又はフェニルであり;及び、ここで、各フェニル部分は、1個のメトキシ基により任意選択により置換されており;より好ましくは、R11A、R11B、R11C、R11D、R11E、R13A、R13B、R13C及びR13Dは各々独立して、水素、メチル、メトキシ、エトキシ、2-ヒドロキシエトキシ、2-メトキシエトキシ、メトキシカルボニル-メトキシ又はイソ-プロポキシカルボニル-メトキシであり、又は
R12及びR13Dは、これらが結合している炭素原子と一緒になって、6員又は7員部分飽和シクロアルキル又はヘテロシクリル環を形成し得、ここで、複素環式部分は1個の酸素原子を含む非芳香族環である。
【0022】
一実施形態において、R11A、R11B、R11C、R11D、R11E、R13A、R13B、R13C及びR13Dは各々独立して、水素、C1~C8アルキル、C1~C8アルコキシ又はニトロである。
【0023】
二座キレートリガンドの例は、以下に示されている式(IV-1)、(IV-2)、(IV-3)、(IV-5)、(IV-6)、(IV-7)、(IV-8)、(IV-9)、(IV-10)、(IV-11)又は(IV-12):
【化5】
の化合物である。
【0024】
Xはアニオン基、すなわち、正味で負の電荷を有する基を表し、ここで、Xはハロゲンではない。Xがハロゲンである(IIIa)の錯体においては、アニオン基が金属に対して過度に強固に結合しており、このような錯体は、中性又は酸性水素化条件下において、触媒的に活性な水素化物中間体を十分な量で提供しないことを本発明者らは見出した。好適なアニオン基Xの例としては、式R14-SO2O-又はR15-C(O)O-のアニオン性リガンドが挙げられ、ここで
R14は、ハロゲン、ヒドロキシ、C1~C6アルキル、C1~C6アルコキシ、C1~C6ハロアルキル又はフェニルであり、ここで、フェニル部分は、同一であっても異なっていてもよい、R16から選択される1個、2個、3個又は4個の置換基により任意選択により置換されており;
R16は、C1~C4アルキル、C1~C4ハロアルキル、ニトロ又はハロゲンであり、好ましくはメチル、エチル、トリフルオロメチル、ニトロ又はハロゲンであり、より好ましくはメチル又はハロゲンであり、さらにより好ましくはメチル、クロロ又はフルオロである。
【0025】
好ましくは、R14は、ヒドロキシ、メチル、トリフルオロメチル、フェニル又はトリルである。
【0026】
R15はC1~C6ハロアルキル又はフェニルであり、ここで、フェニル部分は、同一であっても異なっていてもよい、R17から選択される1個、2個、3個又は4個の置換基により任意選択により置換されている。
【0027】
R17は、C1~C4アルキル、C1~C4ハロアルキル、ニトロ又はハロゲンである。
【0028】
好ましくは、R15はトリフルオロメチルである。
【0029】
一実施形態において、Xは、式R14-SO2Oの基を表す。一実施形態において、Xは、メシレート、トシレート、ノシレート、スルフェート、ハイドロジェンスルフェート、トリフレート又はトリフルオロ酢酸塩である。
【0030】
Yは、中性リガンド、すなわち、全体で無電荷であるリガンドを表す。中性リガンドの例としては、限定されるものではないが、H2O、アルコール、エーテル、ケトン、エステル、アミド及びニトリルが挙げられる。好ましくは、Yは、H2O、PhCN又はMeCNであり、より好ましくはH2O又はMeCNであり、最も好ましくは、YはH2Oである。
【0031】
Zは、アニオン基、すなわち、正味で負の電荷を有する基を表し、ここで、Zはハロゲン又はアセテートではない。アニオン基の例としては、式R14-SO2O-(ここで、R14は上記に記載されている)のリガンド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロリン酸、過塩素酸、テトラフェニルボレート、テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フッ素化アルコキシアルミネート、メシレート、トリフレート、トシレート、ニトレート、ハイドロジェノスルフェート(hydrogenosulfate)又はスルフェート、及び、他の弱く配位するアニオン基が挙げられる。好ましくは、Zは、式R14-SO2O-(ここで、R14は上記に記載されている)のもの、メシレート、スルフェート、ハイドロジェノスルフェート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロリン酸、テトラフェニルボレート又はテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、より好ましくは、メシレート又はテトラフルオロボレートである。
【0032】
上記のプロセスによってもたらされるN-メトキシ-1-(2,4,6-トリクロロフェニル)プロパン-2-アミン(II-1)を3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-ピラゾール-4-塩化カルボニル(XII)とさらに反応させて、3-(ジフルオロメチル)-N-メトキシ-1-メチル-N-[1-メチル-2-(2,4,6-トリクロロフェニル)エチル]ピラゾール-4-カルボキサミド(XIII)を得るプロセス:
【化6】
もまた提供される。
【0033】
本発明の一実施形態において、イリジウム触媒は、式(III-1)、(III-11)、(III-17)、(III-18)又は(III-19):
【化7】
の化合物であり、好ましくはイリジウム触媒は、式(III-1)の化合物であり、式(III-1)、(III-11)、(III-17)、(III-18)又は(III-19)の化合物もまた提供され、好ましくは、式(III-1)の化合物が提供される。
【0034】
本発明の他の実施形態において、式(IIIc)又は(IIId):
【化8】
の化合物が提供され、ここで、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は各々独立して、水素又はC
1~C
3アルキルである。好ましくは、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は各々独立して、水素又はメチルであり、より好ましくは、R
6、R
7、R
8、R
9及びR
10は各々メチルを表し;
ここで、R
11A、R
11B、R
11C、R
11D、R
11E、R
13A、R
13B、R
13C及びR
13Dは各々独立して、水素、ハロゲン、C
1~C
8アルキル、C
1~C
8アルコキシ、C
1~C
8ハロアルキル、C
1~C
8ハロアルコキシ、ヒドロキシC
1~C
8アルコキシ、C
1~C
8アルコキシC
1~C
6アルコキシ、C
1~C
8アルコキシカルボニル、C
1~C
8アルコキシカルボニルC
1~C
6アルコキシ、C
1~C
8アルキルカルボニルC
1~C
6アルコキシ、フェノキシ又はニトロであり;
R
12は、水素、C
1~C
8アルキル又はフェニルであり;ここで、各フェニル部分は、C
1~C
8アルキル及びC
1~C
8アルコキシから選択される1個~5個の基により任意選択により置換されており;又は
R
12及びR
13Dは、これらが結合している炭素原子と一緒になって、5員~8員部分飽和若しくは不飽和シクロアルキル又はヘテロシクリル環を形成し得、ここで、複素環式部分は、1個又は2個のヘテロ原子を含む非芳香族環であり、ここで、ヘテロ原子はN、O及びSから独立して選択される。一実施形態において、R
12及びR
13Dは、これらが結合している炭素原子と一緒になって、6員若しくは8員部分飽和若しくは不飽和シクロアルキル又はヘテロシクリル環を形成し得、ここで、複素環式部分は1個又は2個のヘテロ原子を含む非芳香族環であり、ここで、ヘテロ原子はN、O及びSから独立して選択され;
Xは、メシレート、トシレート、ノシレート、スルフェート、ハイドロジェンスルフェート、トリフレート又はトリフルオロ酢酸塩であり;
Yは、H
2O、PhCN又はMeCNであり;及び
Zは、メシレート、トシレート、ノシレート、スルフェート、ハイドロジェノスルフェート、トリフレートテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロリン酸、テトラフェニルボレート又はテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートである。
【0035】
好ましくは、R11A、R11B、R11C、R11D、R11E、R13A、R13B、R13C及びR13Dは各々独立して、水素、ハロゲン、C1~C3アルコキシ、ヒドロキシC1~C3アルコキシ、C1~C3アルコキシC1~C3アルコキシ、C1~C3アルコキシカルボニルC1~C3アルコキシ、C1~C3アルキル、C1~C3アルコキシ又はニトロであり、及び、R12は、水素、C1~C3アルキル又はフェニルであり;並びに、ここで、各フェニル部分は、C1~C3アルキル及びC1~C3アルコキシから選択される1個~3個の基により任意選択により置換されており;より好ましくは、R11A、R11B、R11C、R11D、R11E、R13A、R13B、R13C及びR13Dは各々独立して、水素、ハロゲン、C1~C3アルコキシ、ヒドロキシC1~C3アルコキシ、C1~C3アルコキシC1~C3アルコキシ又はC1~C3アルコキシカルボニルC1~C3アルコキシであり、及び、R12は、水素、C1~C3アルキル又はフェニルであり;並びに、ここで、各フェニル部分は、C1~C3アルキル及びC1~C3アルコキシから選択される1個~3個の基により任意選択により置換されており;又は
R12及びR13Dは、これらが結合している炭素原子と一緒になって、5員~7員、好ましくは6員又は7員部分飽和シクロアルキル又はヘテロシクリル環を形成し得、ここで、複素環式部分は1個のO原子を含む非芳香族環である。一実施形態において、R12及びR13Dは、これらが結合している炭素原子と一緒になって、5又は6員部分飽和シクロアルキル又はヘテロシクリル環を形成し得、ここで、複素環式部分は1個のO原子を含む非芳香族環である。
【0036】
より好ましくは、R11A、R11B、R11C、R11D、R11E、R13A、R13B、R13C及びR13Dは各々独立して、水素、メチル、メトキシ、エトキシ、2-ヒドロキシエトキシ、2-メトキシエトキシ、メトキシカルボニル-メトキシ、イソ-プロポキシカルボニル-メトキシ又はニトロであり、及び、R12は、水素、メチル又はフェニルであり;並びに、ここで、各フェニル部分は、1個のメトキシ基により任意選択により置換されており;より好ましくは、R11A、R11B、R11C、R11D、R11E、R13A、R13B、R13C及びR13Dは各々独立して、水素、メチル、メトキシ、エトキシ、2-ヒドロキシエトキシ、2-メトキシエトキシ、メトキシカルボニル-メトキシ又はイソ-プロポキシカルボニル-メトキシであり;又は
R12及びR13Dは、これらが結合している炭素原子と一緒になって、6員又は7員、好ましくは6員、部分飽和シクロアルキル又はヘテロシクリル環を形成し得、ここで、複素環式部分は1個のO原子を含む非芳香族環である。
【0037】
本明細書において用いられるところ、「ハロゲン」又は「ハロ」という用語は、フッ素(フルオロ)、塩素(クロロ)、臭素(ブロモ)又はヨウ素(ヨード)、好ましくはフッ素、塩素又は臭素を指す。もっとも好ましくは、ハロゲンは塩素である。
【0038】
本明細書において用いられるところ、シアノは-CN基を意味する。
【0039】
本明細書において用いられるところ、「ヒドロキシル」又は「ヒドロキシ」という用語は、-OH基を意味する。
【0040】
本明細書において用いられるところ、アミノは-NH2基を意味する。
【0041】
本明細書において用いられるところ、アシルアミノは-NH(C=O)Ra基を意味し、ここで、Raは、以下に一般的に定義されているC1~C4アルキルラジカルである。
【0042】
本明細書において用いられるところ、アミドは-(C=O)NRaRa基を意味し、ここで、Raは、水素又は以下に一般的に定義されているC1~C4アルキルラジカルから独立して選択される。
【0043】
本明細書において用いられるところ、ニトロは-NO2基を意味する。
【0044】
本明細書において用いられるところ、「C1~C8アルキル」という用語は、単に炭素及び水素原子からなり、不飽和を含有せず、1個~6個の炭素原子を有し、並びに、単結合によって分子の残部に結合している直鎖又は分岐鎖炭化水素鎖ラジカルを指す。C1~C6アルキル、C1~C4アルキル、C1~C3アルキル及びC1~C2アルキルは相応に解釈されるべきである。C1-8アルキルの例としては、これらに限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル(イソプロピル)、n-ブチル及び1-ジメチルエチル(t-ブチル)が挙げられる。「C1~C2アルキレン」基は、C1~C2アルキルの対応する定義を参照するが、ただし、このようなラジカルは2つの単結合によって分子の残部に結合することを除く。C1~C2アルキレンの例は、-CH2-及び-CH2CH2-である。
【0045】
本明細書において用いられるところ、「C2~C6アルケニル」という用語は、単に炭素及び水素原子からなり、(E)-又は(Z)-立体配置のいずれかであることが可能である少なくとも1つの二重結合を含有し、2個~6個の炭素原子を有し、単結合によって分子の残部に結合している直鎖又は分岐鎖炭化水素鎖ラジカル基を指す。C2~C6アルケニルの例としては、これらに限定されないが、エテニル(ビニル)、プロプ-1-エニル、プロプ-2-エニル(アリル)及びブタ-1-エニルが挙げられる。
【0046】
本明細書において用いられるところ、「C1~C8アルコキシ」という用語は、上記に一般的に定義されているとおり、RaがC1-8アルキルラジカルである式-ORaのラジカルを指す。C1~C6アルコキシ、C1~C4アルコキシ、C1~C3アルコキシ及びC1~C2アルコキシという用語は、相応に解釈されるべきである。C1~C6アルコキシの例としては、これらに限定されないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ及びt-ブトキシが挙げられる。
【0047】
本明細書において用いられるところ、「C1~C8ハロアルキル」という用語は、上記に一般的に定義されているとおり、同一又は異なる1個以上のハロゲン原子により置換されているC1~C8アルキルラジカルを指す。C1~C8ハロアルキルの例としては、これらに限定されないが、フルオロメチル、フルオロエチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル及び3,3,3-トリフルオロプロピルが挙げられる。
【0048】
本明細書において用いられるところ、「C1~C8ハロアルコキシ」という用語は、上記に一般的に定義されているとおり、同一又は異なる1個以上のハロゲン原子により置換されているC1~C8アルコキシラジカルを指す。
【0049】
本明細書において用いられるところ、「ヒドロキシC1~C8アルキル」という用語は、上記に定義されている1個以上のヒドロキシ基によって置換されている、上記に一般的に定義されているC1~C8アルキレンラジカルを指す。
【0050】
本明細書において用いられるところ、「ヒドロキシC1~C8アルコキシ」という用語は、上記に定義されている1個以上のヒドロキシ基によって置換されている、上記に一般的に定義されているC1~C8アルコキシラジカルを指す。
【0051】
本明細書において用いられるところ、「シアノC1~C8アルキル」という用語は、上記に定義されている1個以上のシアノ基により置換されている、上記に一般的に定義されているC1~C8アルキレンラジカルを指す。
【0052】
本明細書において用いられるところ、「C1~C8アルコキシC1~C6アルコキシ」という用語は、式RbO-RaO-のラジカルを指し、ここで、Rbは上記に一般的に定義されているC1~C8アルキルラジカルであり、及び、Raは上記に一般的に定義されているC1~C6アルキレンラジカルである。C1~C8アルコキシC1~C6アルコキシの例としては、これらに限定されないが、メトキシメトキシ、エトキシメトキシ及びメトキシエトキシが挙げられる。
【0053】
本明細書において用いられるところ、「C1~C8アルコキシカルボニル」という用語は、式RaOC(O)-のラジカルを指し、ここで、Raは上記に一般的に定義されているC1~C8アルキルラジカルである。
【0054】
本明細書において用いられるところ、「C1~C6アルコキシC1~C8アルキル」という用語は、式RaORb-のラジカルを指し、ここで、各Raは独立して、上記に一般的に定義されているC1~C6アルキルラジカルであり、及び、Rbは上記に一般的に定義されているC1~C8アルキレンラジカルである。
【0055】
本明細書において用いられるところ、「ジ(C1~C6アルコキシ)C1~C8アルキル」という用語は、式(RaO)2Rb-のラジカルを指し、ここで、各Raは独立して、上記に一般的に定義されているC1~C6アルキルラジカルであり、及び、Rbは上記に一般的に定義されているC1~C8アルキレンラジカルである。
【0056】
本明細書において用いられるところ、「C1~C8アルコキシカルボニルC1~C6アルコキシ」という用語は、式RaOC(O)RbO-のラジカルを指し、ここで、Raは上記に一般的に定義されているC1~C8アルキルラジカルであり、及び、Rbは上記に一般的に定義されているC1~C6アルキルラジカルである。
【0057】
本明細書において用いられるところ、「C1~C8アルキルカルボニルC1~C6アルコキシ」という用語は、式RaC(O)RbO-のラジカルを指し、ここで、Raは上記に一般的に定義されているC1~C8アルキルラジカルであり、及び、Rbは上記に一般的に定義されているC1~C6アルキルラジカルである。
【0058】
本明細書において用いられるところ、「C3~C8シクロアルキル」という用語は、飽和若しくは部分飽和であり、及び、3個~8個の炭素原子を含有する単環式環ラジカルを指す。C3~C6シクロアルキル及びC3~C5シクロアルキルは、相応に解釈されるべきである。C3~C8シクロアルキルの例としては、これらに限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンタン-1-イル、シクロペンタン-3-イル及びシクロヘキセン-3-イルが挙げられる。
【0059】
本明細書において用いられるところ、「フェニルC1~C3アルキル」という用語は、上記に定義されているC1~C3アルキルラジカルにより分子の残部に結合しているフェニル環を指す。フェニルC1~C3アルキルの例としては、これらに限定されないが、ベンジルが挙げられる。
【0060】
本明細書において用いられるところ、「ヘテロアリール」という用語は、一般に、窒素、酸素及び硫黄から個々に選択される1個又は2個のヘテロ原子を含む5又は6員単環式芳香族環ラジカルを指す。ヘテロアリールラジカルは、炭素原子又はヘテロ原子を介して分子の残部に結合していてもよい。ヘテロアリールの例としては、これらに限定されないが、フリル、ピロリル、チエニル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、ピリミジル及びピリジルが挙げられる。
【0061】
本明細書において用いられるところ、=Oは、例えば、カルボニル(-C(=O)-)基において見出されるものといったオキソ基を意味する。
【0062】
本明細書において用いられるところ、O-メシル又はメシレートは、式-OS(O)2CH3のラジカルを指す。
【0063】
本明細書において用いられるところ、O-トシル又はトシレートは、式-OS(O)2C6H4-p-CH3のラジカルを指す。
【0064】
本明細書において用いられるところ、O-ノシル又はノシレートは、式-OS(O)2C6H4-p-NO2のラジカルを指す。
【0065】
本明細書において用いられるところ、O-トリフリル又はトリフレートは、式-OS(O)2CF3のラジカルを指す。
【0066】
本明細書において用いられるところ、O-トリフルオロアセチル又はトリフルオロ酢酸塩は、式-OC(O)CF3のラジカルを指す。
【0067】
本明細書において用いられるところ、テトラフルオロボレートは、式BF4
-のラジカルを指す。
【0068】
本明細書において用いられるところ、テトラフェニルボレートは、式B(C6H5)4
-のラジカルを指す。
【0069】
本明細書において用いられるところ、テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボリルは、式B(3,5-(CF3)2C6H3)4
-のラジカルを指す。
【0070】
本明細書において用いられるところ、ヘキサフルオロリン酸は、式PF6
-のラジカルを指す。
【0071】
本明細書において用いられるところ、スルフェートは、式SO4
2-のラジカルを指す。
【0072】
本明細書において用いられるところ、ハイドロジェンスルフェートは、式HSO4
-のラジカルを指す。
【0073】
国際公開第10/063700号に記載されているとおり、一般式(II)のいく種かのヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩が、殺有害生物性化合物の中間体であることが公知である。
【0074】
好適なイリジウム触媒(IIIa)は、既知のシクロメタレート化クロロ錯体(VI)(Org.Biomol.Chem.,2013,11,6934;国際公開第2013/153407号)から、メタンスルホン酸銀、硫酸銀、銀p-トルエンスルホネートなどの好適な金属塩(X-M、ここで、Xは(IIIa)に定義されているとおりであり、及び、Mは金属を表す)を用いて、ハロゲン交換を介して調製され得る。或いは、イリジウム触媒(IIIa)は、イリジウム錯体(VII)(ここで、Xは、(IIIa)において定義されているとおりである)及び例えばN,1-ビス(4-メトキシフェニル)エタンイミンといった好適なC,Nリガンドのシクロメタル化を介して調製され得る。このような反応は、好ましくは、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン又はテトラヒドロフランなどの非配位性又は弱配位性溶剤中において行われる。
【化9】
【0075】
触媒合成を例えばニトリル又は水といった配位性溶剤の存在下で行う場合、構造(IIIb)の錯体(Y及びZは上に定義されるとおりである)が代わりに単離され得る。
【0076】
本発明のプロセスによれば、イリジウム触媒の量は通常、オキシム基材のモル数を基準として、0.001mol%~5mol%、好ましくは0.01mol%~1mol%である。
【0077】
本発明のプロセスによれば、水素圧は通常、1~100bar、好ましくは5~80bar、より好ましくは7~60bar、最も好ましくは10~50barである。
【0078】
本発明のプロセスによれば、反応温度は通常、-20℃~120℃、好ましくは0℃~100℃、より好ましくは0℃~80℃、さらにより好ましくは10℃~60℃である。
【0079】
好ましくは、オキシム水素化は少なくとも化学量論量の酸の存在下で行われる。従って、酸のモル量は、還元されるオキシム基材の量以上であるべきであり、例えば少なくとも1~3モル当量、好ましくは1~2モル当量、及び、特に1、1.1又は2モル当量である。酸のpKaは、オキシム基材及びヒドロキシルアミン生成物を少なくとも部分的にプロトン化することが可能であるようなものでなければならない。従って、酸のpKaは、生成物であるヒドロキシルアミン塩(II)のpKaよりも低いことが好ましい。ほとんどのオキシム基材に好適な酸としては、限定されるものではないが、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、硫酸、トリフルオロ酢酸及びトリフリック酸が挙げられ、好ましくは、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、硫酸、及びトリフリック酸から選択される。より好ましくは、酸は、メタンスルホン酸、カンファースルホン酸及び硫酸から選択される。
【0080】
典型的には、オキシム水素化反応は溶剤の存在下で行われ、好ましい溶剤は、アルコール、エステル、エーテル又は炭化水素などの有機溶剤である。好ましい溶剤は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、2-メチル-2-ブタノール及び2-ブタノールなどのアルコール、並びに、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン及びメチルテトラヒドロフランなどのエーテルである。もっとも好ましい溶剤は、イソプロパノール及び2-ブタノールなどの第二級アルコール、並びに、テトラヒドロフラン及びメチルテトラヒドロフランなどのエーテルである。好ましくは、溶剤はイソプロパノールである。
【0081】
本発明はまた、式(IIIa)又は式(IIIb)のイリジウム触媒及び任意選択により酸の存在下における、水素による、例えば、アシレンアミン、イミン、エナミン、複素環、アルデヒド及びケトンといった他の不飽和基材のイオン性水素化に関する。
【実施例】
【0082】
以下の実施例は本発明を例示するためのものである。
【0083】
以下の略語が用いられている:s=一重項;bs=幅広の一重項;d=二重項;br d=幅広の二重項、dd=二重の二重項、dt=二重の三重項、t=三重項、tt=三重の三重項、q=四重項、sept=七重項、m=多重項、RT=室温、Rt=保持時間、MH+=分子カチオンの分子量、DCM=ジクロロメタン。
【0084】
1H及び19F NMRスペクトルを、BBFOplusプローブを備えるBruker Avance III 400分光計で、それぞれ400MHz/376.6MHzで記録した。
【0085】
以下の出発材料が市販されている:
クロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)[(2-ピリジニル-kN)フェニル-kC]イリジウム(III)(CAS=945491-51-0);
クロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル){5-ニトロ-2-{1-[(4-メトキシフェニル)イミノ-kN]エチル}フェニル-kC}イリジウム(III)(CAS=1439402-25-1);
7-(2-メトキシエトキシ)テトラリン-1-オン(CAS=1697644-15-7);
メチル2-(4-オキソテトラリン-6-イル)オキシアセテート(CAS=1937197-95-9);
7-(2-ヒドロキシエトキシ)テトラリン-1-オン(CAS=1260011-13-9)。
【0086】
以下の出発材料を文献手法に従って調製した:
イリジウム、クロロ[5-(エチルメチルアミノ)-2-(2-ピリジニル-κN)フェニル-κC][(1,2,3,4,5-η)-1,2,3,4,5-ペンタメチル-2,4-シクロペンタジエン-1-イル](CAS=1379114-67-6)(Chem.Eur.J.2012,18,6063-6078に従う)。
イリジウム、クロロ[4,5-ジメトキシ-2-[1-[(4-メトキシフェニル)イミノ-κN]エチル]フェニル-κC][(1,2,3,4,5-η)-1,2,3,4,5-ペンタメチル-2,4-シクロペンタジエン-1-イル](CAS=1507388-46-6)(Chem.Eur.J.2014,20,245-252に従う)。
イリジウム、クロロ[(1,2,3,4,5-η)-1,2,3,4,5-ペンタメチル-2,4-シクロペンタジエン-1-イル][5,6,7,8-テトラヒドロ-3-メトキシ-8-[(4-メトキシフェニル)イミノ-κN]-1-ナフタレニル-κC](CAS=1469468-10-7)(SYNLETT 2014,25,81-84に従う)。
イリジウム、クロロ[(1,2,3,4,5-η)-1,2,3,4,5-ペンタメチル-2,4-シクロペンタジエン-1-イル][5,6,7,8-テトラヒドロ-8-[(4-メトキシフェニル)イミノ-κN]-1-ナフタレニル-κC](CAS=1469468-08-3)(SYNLETT 2014,25,81-84に従う)。
イリジウム、クロロ[4,5-ジメトキシ-2-[1-[(4-メトキシフェニル)イミノ-κN]エチル]フェニル-κC][(1,2,3,4,5-η)-1,2,3,4,5-ペンタメチル-2,4-シクロペンタジエン-1-イル](CAS=1507388-46-6)(Chem.Eur.J.2014,20,245-252に従う)。
イリジウム(2+)、トリアクア[(1,2,3,4,5-η)-1,2,3,4,5-ペンタメチル-2,4-シクロペンタジエン-1-イル]-、スルフェート(CAS=254734-81-1)(国際公開第2008/093668号に従う)。
【0087】
基本手順1:式(IV)のN-アリールケチミンリガンドの合成
対応するケトン(1.0当量)、4-メトキシアニリン(1.1当量)及びトリエチルアミン(6.0当量)及びDCM(0.4M)を、乾燥した反応フラスコに仕込んだ。DCM中の四塩化チタン(0.6当量)溶液(全体で反応を0.2Mとするため)を-78℃で滴下した。反応混合物を2~80時間撹拌した。反応混合物を飽和Na2CO3溶液で失活させ、混合物をセライト床を介してろ過した。水性層をDCMで抽出し、有機層をNa2SO4で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物を(a)Et2O若しくはシクロヘキサンによる結晶化により、(b)カラムクロマトグラフィにより精製するか、又は、(c)粗生成物として用いた。
【0088】
【0089】
基本手順2:式(VI)のイリジウム-クロロ-錯体の合成
ジクロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)イリジウム(III)ダイマー(1.0当量)、酢酸ナトリウム(10.0当量)及び対応するリガンド(2.2当量)を、乾燥した反応フラスコに仕込んだ。DCM(40mL/mmol[Ir])をアルゴン雰囲気下で添加し、反応混合物を室温で撹拌した。反応が完了した後(転換率を1H-NMRにより監視した)、反応混合物をCelite(登録商標)のプラグでろ過し、DCMで洗浄した。母液を乾燥するまで濃縮して、イリジウム-クロロ-錯体を得た。さらなる精製法に関しては、各生成物における詳細な説明を参照されたい。
【0090】
実施例1:(N,1,1-トリス(4-メトキシフェニル)メタンイミンイリジウムクロロ錯体(VI-1)の調製
【化10】
磁気撹拌棒及び凝縮器を備える一首丸底フラスコに、4-メトキシアニリン(0.598g)、ビス(4-メトキシフェニル)メタノン(1.00g)、分子ふるい及びトルエン(8.0mL)を仕込み、反応混合物を還流下に24時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、ろ紙でろ過した。得られたろ液を減圧下で減量させて、N,1,1-トリス(4-メトキシフェニル)メタンイミンを得た。
【0091】
磁気撹拌棒を備える一首丸底フラスコに、N,1,1-トリス(4-メトキシフェニル)メタンイミン(324mg)、DCM(4.3mL)、ジクロロ(ペンタメチルシクロペンタジエニル)-イリジウム(III)ダイマー(300mg)及び酢酸ナトリウム(150.0mg)を仕込み、反応混合物を還流下に3時間撹拌した。他の分量のN,1,1-トリス(4-メトキシフェニル)メタンイミン(100mg)を添加し、混合物をさらに30分間、還流下に撹拌した。次いで、反応混合物をシリカパッドを通してろ過し、ろ液を減圧下で減量させた。得られた固体を沸騰しているジクロロエタン(5mL)中に溶解し、MeOH(15mL)を添加した。混合物を冷凍庫(-22℃)中に一晩入れ、得られた結晶を傾瀉により単離し、MeOHで洗浄し、減圧下で乾燥させて、361mgの表題の化合物(VI-1)を赤色の結晶として得た。
1H NMR(CDCl3)δ=7.38(d,J=2.6Hz,1H),6.57-7.36(m,9H),6.49(dd,J=8.4Hz,J=2.6Hz,1H),3.90(s,3H),3.77(s,3H),3.75(s,3H),1.47(s,15H)ppm.
【0092】
【0093】
基本手順3:式(III)のイリジウム-メシレート-錯体の合成
反応フラスコに、イリジウム-クロロ-錯体(1.0当量)及びメタンスルホン酸銀(1.1当量)をアルゴン雰囲気下で仕込み、反応フラスコをアルミニウム箔で包んだ(メタンスルホン酸銀は光感応性である)。CDCl3(2.5mL/mmol)を添加し、反応混合物をアルゴン雰囲気下で20時間撹拌した。反応混合物をCDCl3で希釈し、シリンジフィルタ(0.22μm)を通してろ過した。ろ液を減圧下で濃縮して、イリジウム-メシレート-錯体を得た。さらなる精製法に関しては、各生成物における詳細な説明を参照されたい。
【0094】
実施例2:(E)-4-メトキシ-N-(1-(4-メトキシフェニル)エチリデン)アニリンイリジウムメシレート錯体(III-1)の調製
【化11】
反応フラスコに、(E)-4-メトキシ-N-(1-(4-メトキシフェニル)エチリデン)アニリンイリジウムクロリド錯体(400mg、CAS=1258964-48-5)及びメタンスルホン酸銀(136mg)をアルゴン雰囲気下で仕込み、反応フラスコをアルミニウム箔で包んだ(メタンスルホン酸銀は光感応性である)。CDCl
3(2mL)を添加し、反応混合物をアルゴン雰囲気下で20時間撹拌した。反応混合物をさらなる分量のCDCl
3(2mL)で希釈し、シリンジフィルタ(0.22μm)を通してろ過した。ろ液を減圧下で濃縮して、表題の化合物(III-1、401mg)を黄色の固体として得た。
1H NMR(CDCl
3)δ 7.70(bd,J=2.6Hz,1H),7.46(d,J=8.4Hz,1H),6.98(bs,4H),6.63(dd,J=8.4Hz,J=2.6Hz,1H),3.94(s,3H),3.86(s,3H),2.32(s,3H),1.78(s,3H),1.42(s,15H)ppm.
13C NMR(CDCl
3)δ 182.2,168.8,162.3,157.8,143.4,142.8,129.8,121.0,108.5,88.3,55.5,55.3,39.1,16.7,8.8 ppm.2つの炭素シグナルが、シグナルの広がりによって観察されなかった。
【0095】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【0096】
実施例3:(E)-4-メトキシ-N-(1-(4-メトキシフェニル)エチリデン)アニリンイリジウムスルフェート錯体(III-14)の調製
【化12】
反応バイアルに、ペンタメチルシクロペンタジエニルイリジウムスルフェート錯体(143mg、CAS=[254734-81-1])、(E)-N,1-ビス(4-メトキシフェニル)エタンイミン(76mg)及びCD
3OD(1.2mL)を、アルゴン雰囲気下で仕込んだ。反応バイアルを一晩撹拌した。反応混合物の
1H NMR分析により、シクロメタレート化イリジウム錯体が73%NMR収率で形成されたことを明らかにした。
1H NMR(CDCl
3)δ 7.65(d,J=8.4Hz,1H),7.57(d,J=2.2Hz,1H),6.77(dd,J=8.4Hz,J=2.2Hz,1H),3.94(s,3H),3.87(s,3H),2.42(s,3H),1.42(s,15H)ppm.4つのプロトンのシグナルは、シグナルの広がりによって観察されなかった。
【0097】
実施例4:(E)-4-メトキシ-N-(1-(4-メトキシフェニル)エチリデン)アニリンイリジウム(アセトニトリル)テトラフルオロボレート錯体(III-15)の調製
【化13】
反応バイアルに、(E)-4-メトキシ-N-(1-(4-メトキシフェニル)エチリデン)アニリンイリジウムクロリド錯体(250mg、CAS=1258964-48-5)、ナトリウムテトラフルオロボレート(89mg)及びアセトニトリル(1.6mL)を仕込んだ。反応混合物を室温で48時間撹拌し、セライトパッド(DCMで洗浄した)を通してろ過した。ろ液を減圧下で濃縮し、固体残渣をジエチルエーテルを用いて倍散して、246mgの表題の化合物を黄色の固体として得た。
1H NMR(CDCl
3)δ 7.52(d,J=8.4Hz,1H),7.27(d,J=2.4Hz,1H),7.00-7.20(bs,4H),6.72(dd,J=8.4Hz,J=2.4Hz,1H),3.94(s,3H),3.88(s,3H),2.60(s,3H),2.42(s,3H),1.49(s,15H)ppm.
【0098】
実施例5:(E)-4-メトキシ-N-(1-(4-メトキシフェニル)エチリデン)アニリンイリジウムトリフルオロ酢酸塩錯体(III-16)の調製
【化14】
反応バイアルに、(E)-4-メトキシ-N-(1-(4-メトキシフェニル)エチリデン)アニリンイリジウムクロリド錯体(250mg、CAS=1258964-48-5)、銀トリフルオロ酢酸塩(107mg)及びCDCl
3(1.0mL)を仕込んだ。反応混合物を室温で20時間撹拌し、セライトパッドを通してろ過した(ジクロロメタンで洗浄した)。ろ液を濃縮し、カラムクロマトグラフィ(シリカ、酢酸エチル-シクロヘキサン勾配)により精製した。単離した固体を最低量のジクロロメタン中に溶解し、n-ペンタンで希釈した。生成物を、冷凍庫中において一晩で結晶化させた。生成物を傾瀉により回収し、n-ペンタンで洗浄し、減圧下で乾燥させて、129mgの表題の化合物を黄色の固体として得た。
1H NMR(CDCl
3)δ 7.66(d,J=2.2Hz,1H),7.40(d,J=8.4Hz,1H),6.09-7.10(bm,2H),6.55-6.65(m,1H),3.91(s,3H),3.87(s,3H),2.29(s,3H),1.43(s,15H)ppm.2つのプロトンのシグナルは、シグナルの広がりによって観察されなかった。
【0099】
実施例6:オキシム水素化を介したヒドロキシルアミン(II-1)の合成
【化15】
100mLのハステロイ反応器に、(E)-N-メトキシ-1-(2,4,6-トリクロロフェニル)プロパン-2-イミン(2.00g、99:1=E/Z、95%NMR純度)及び触媒(III-1)(5.0mg)を仕込み(固体として)、反応器を閉じ、アルゴンでフラッシュした。iPrOH(10mL、無水、アルゴンで脱気)及びメタンスルホン酸(0.72mL)をアルゴン雰囲気下で反応器に添加し、反応器を水素(3×5bar)でパージし、50bar H
2に加圧し、23℃で一晩撹拌した。水素を放出し、反応器を再度アルゴンでパージした。粗反応混合物のGC及びNMR分析は完全な転換を示していた。反応混合物を飽和NaHCO
3溶液(15mL)及び水(10mL)にゆっくりと添加し、ジクロロメタンで抽出した(2×15mL)。組み合わせた有機層をNa
2SO
4で乾燥させ、ろ過し、蒸発させて、1.97g(97%NMR純度)の所望の生成物(II-1)を得た。
【0100】
実施例7:オキシム水素化によるヒドロキシルアミン(II-1)の合成、種々の条件
【化16】
条件:別に示される場合を除き、触媒III-1、1.5当量のメタンスルホン酸、iPrOH溶剤(200g基材/1L溶剤)。
【0101】
【0102】
すべての反応において、所望の生成物に対する高い選択性(>95%)が得られた。
【0103】
実施例8:種々の触媒を用いるオキシム水素化を介したヒドロキシルアミン(II-1)の合成
【化17】
条件:1.5当量のメタンスルホン酸、iPrOH溶剤(200g基材/1L溶剤)、0.1mol%触媒、30barのH
2、室温、16時間(別に示される場合を除く)。
【0104】
【0105】
すべての反応において、所望の生成物に対する高い選択性(>95%)が観察された。
【0106】
実施例9:オキシム水素化を介したヒドロキシルアミン(II)の合成、基材範囲
【化18】
条件:1.5当量のメタンスルホン酸、iPrOH溶剤、1mol%触媒III-1、50barのH
2、室温、16時間
【0107】
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【表6-4】
【表6-5】
【表6-6】
【0108】
実施例10:他の基材のイオン性水素化-アシレンアミン水素化を介したシス-N-[2-(2,4-ジクロロフェニル)シクロブチル]アセトアミドの合成
【化19】
50mLのガラスバイアルに、N-[2-(2,4-ジクロロフェニル)シクロブテン-1-イル]アセトアミド(256mg)、触媒(III-1)(6.8mg)、メタンスルホン酸(48mg)及びイソプロパノール(4mL)を仕込んだ。ガラスバイアルを、水素でパージ(3回)したパラレルオートクレーブに入れ、50barの水素、及び、23℃で16時間水素化した。水素を放出し、反応器をアルゴンでパージした。粗反応混合物のGC及びNMR分析は完全な転換を示していた。反応混合物を飽和NaHCO
3溶液(15mL)及び水(10mL)にゆっくりと添加し、DCM(2×15mL)で抽出した。組み合わせた有機層をNa
2SO
4で乾燥させ、ろ過し、蒸発させて、250mgのcisN-[2-(2,4-ジクロロフェニル)シクロブチル]アセトアミドを得た。分析データは、文献:国際公開第15/003951号と合致している。
【0109】
実施例11:他の基材のイオン性水素化-複素環水素化を介した2-(トリフルオロメチル)ピペリジンの合成
【化20】
50mLのガラスバイアルに、2-トリフルオロメチルピリジン(144mg)、触媒(III-1)(6.8mg)、メタンスルホン酸(144mg)及びイソプロパノール(4mL)を仕込んだ。ガラスバイアルを水素でパージ(3回)したパラレルオートクレーブに入れ、50barの水素、及び、50℃で16時間水素化した。水素を放出し、反応器をアルゴンでパージした。粗反応混合物のGC及びNMR分析は完全な転換を示していた。反応混合物を蒸発させ、NMRにより分析した。出発材料の完全な転換、及び、2-(トリフルオロメチル)ピペリジン(CAS=154630-93-0)の形成が確認された。
【0110】
比較例1:
【化21】
2種の溶剤(THF/TFA及びMeOH)中、T=60℃、及び、H
2=50barの圧力、2%の触媒充填量における、96種の多様な均一系触媒-金属前駆体(Rh、Ir、Pt、Ru、中性/カチオン性)/リガンド分類(単座/二座、ホスフィン、亜リン酸塩等)のスクリーニング。所望の生成物(II-1、以下の表において「生成物」とラベルを付した)に向かう転換をGCにより測定したところ、これは面積割合に基づいている。
【0111】
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【0112】
これらの実験は、すべての事例において、形成された生成物(II-1)の量が<1%であったため、通例用いられる金属前駆体及びリガンドの組み合わせでは、(I-1)などのオキシム基材の均一系な水素化は可能ではないことを実証する。
【0113】
比較例2:
【化22】
水素化条件:温度=60℃、及び、H
2圧力=60bar、時間=20時間。欧州特許第1862446号明細書に記載の反応条件。所望の生成物((II-1)、以下の表において「生成物」とラベルを付した)に向かう転換をGCにより測定し、これは面積割合に基づいている。
【0114】
【0115】
すべての事例において、低い選択性、及び、所望の生成物(II-1、上記の表において「生成物」とラベルを付した)のゼロ又はきわめて低い収率が観察された。これらの実験は、欧州特許第1862446号明細書に記載の触媒及び条件は、(II-1)などのオキシム基材の効率的な水素化が可能ではないことを実証する。
【0116】
比較例3:
【化23】
Org.Biomol.Chem.,2013,11,6934に記載されている反応条件下では、所望の生成物(II-1)の形成は観察されなかった。
【0117】
【0118】
【0119】
本発明者らによる発明に記載されている反応条件下ではあるが、イリジウムクロロ錯体(VI)(例えば、Org.Biomol.Chem.,2013,11,6934;国際公開第2013/153407号に報告されている)を使用しては、所望の生成物(II-1)の形成は観察されなかった。これらの実験は、イリジウムハロゲン錯体が、本プロセスにおける触媒程には効率的でないことを実証している。
【0120】
比較例5:
【化25】
本発明の反応条件を酸を伴わずに利用した場合、所望の生成物(II-1)の形成は観察されなかった。この実験は、本発明者らによる発明に係るプロセスにおいて、化学量論量の好適な酸が必須であることを実証している。
本発明のまた別の態様は、以下のとおりであってもよい。
〔1〕オキシム(I)と水素とを、式(IIIa)又は式(IIIb)のイリジウム触媒及び酸の存在下に反応させることによる、式(II)のヒドロキシルアミン塩をもたらすための式(I)のオキシムの水素化に係るプロセス;
【化26】
であって、ここで、R
1
、R
2
及びR
3
は各々独立して、水素、C
1
~C
8
アルキル、C
1
~C
8
ヒドロキシアルキル、C
1
~C
8
シアノアルキル、C
1
~C
6
アルコキシC
1
~C
8
アルキル、ジ(C
1
~C
6
アルコキシ)C
1
~C
8
アルキル、C
1
~C
8
ハロアルキル、C
2
~C
6
アルケニル、C
3
~C
8
シクロアルキル、フェニル、フェニルC
1
~C
3
アルキル又はヘテロアリールであり、ここで、前記シクロアルキル及びフェニル部分は各々、任意選択により、ヒドロキシル、ハロゲン、C
1
~C
6
アルキル、C
3
~C
8
シクロアルキル、C
1
~C
6
ハロアルキル、C
1
~C
6
アルコキシ、フェニル、ヘテロアリール、C
1
~C
6
アルコキシカルボニル、アシルアミノ、アミド、シアノ、ニトロ及びC
2
~C
6
アルケニルから選択される1個~5個の基で置換されており;又は
R
1
及びR
2
は、これらが結合している炭素原子と一緒になって、4員~8員飽和シクロアルキル又はヘテロシクリル環を形成し得、ここで、複素環式部分は、1個、2個又は3個のヘテロ原子を含む非芳香族単環式環であり、ここで、前記ヘテロ原子はN、O及びSから個々に選択され;
R
6
、R
7
、R
8
、R
9
及びR
10
は各々独立して、水素又はC
1
~C
3
アルキルであり;
【化27】
は、イリジウムに配位する少なくとも1個の炭素原子及びイリジウムに配位する少なくとも1個の窒素原子を含む二座キレートリガンドを表し;
Xは、式R
14
-SO
2
O-又はR
15
-C(O)O-のアニオン基を表し、ここで、
R
14
は、ヒドロキシ、C
1
~C
6
アルキル、C
1
~C
6
アルコキシ、C
1
~C
6
ハロアルキル又はフェニルであり、ここで、フェニル部分は、同一であっても異なっていてもよい、R
16
から選択される1個、2個、3個又は4個の置換基により任意選択により置換されており;
R
16
は、C
1
~C
4
アルキル、C
1
~C
4
ハロアルキル、ニトロ又はハロゲンであり;
R
15
はC
1
~C
6
ハロアルキル又はフェニルであり、ここで、前記フェニル部分は、同一であっても異なっていてもよい、R
17
から選択される1個、2個、3個又は4個の置換基により任意選択により置換されており;
R
17
は、C
1
~C
4
アルキル、C
1
~C
4
ハロアルキル、ニトロ又はハロゲンであり;
Yは中性リガンドを表し;並びに
Zはアニオン基を表す、プロセス。
〔2〕R
6
、R
7
、R
8
、R
9
及びR
10
は各々、水素又はメチルを表す、前記〔1〕に記載のプロセス。
〔3〕Xは、式R
14
-SO
2
O
-
の基を表す、前記〔1〕又は前記〔2〕に記載のプロセス。
〔4〕前記二座キレートリガンドは、式(IV-1)、(IV-2)、(IV-3)、(IV-5)、(IV-6)、(IV-7)、(IV-8)、(IV-9)、(IV-10)、(IV-11)及び(IV-12):
【化28】
の化合物から選択される、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載のプロセス。
〔5〕Zは、R
14
-SO
2
O
-
、メシレート、スルフェート、ハイドロジェノスルフェート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフェニルボレート又はテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートである、前記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載のプロセス。
〔6〕前記酸は、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、硫酸又はトリフリック酸である、前記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載のプロセス。
〔7〕YはH
2
O又はMeCNである、前記〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載のプロセス。
〔8〕前記イリジウム触媒は、式(III-1)、(III-11)、(III-17)、(III-18)、又は(III-19):
【化29】
の化合物である、前記〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載のプロセス。
〔9〕前記式(II)のヒドロキシルアミンはN-メトキシ-1-(2,4,6-トリクロロフェニル)プロパン-2-アミン(II-1)である、前記〔1〕~〔8〕のいずれか一項に記載のプロセス。
〔10〕前記N-メトキシ-1-(2,4,6-トリクロロフェニル)プロパン-2-アミン(II-1)を3-(ジフルオロメチル)-1-メチル-ピラゾール-4-塩化カルボニル(XII)とさらに反応させて、3-(ジフルオロメチル)-N-メトキシ-1-メチル-N-[1-メチル-2-(2,4,6-トリクロロフェニル)エチル]ピラゾール-4-カルボキサミド(XIII):
【化30】
を得る、前記〔9〕に記載のプロセス。
〔11〕式(IIIc)又は(IIId):
【化31】
(式中、R
6
、R
7
、R
8
、R
9
及びR
10
は各々独立して、水素又はC
1
~C
3
アルキルから選択され;
R
11A
、R
11B
、R
11C
、R
11D
、R
11E
、R
13A
、R
13B
、R
13C
及びR
13D
は各々独立して、水素、ハロゲン、C
1
~C
8
アルキル、C
1
~C
8
アルコキシ、C
1
~C
8
ハロアルキル、C
1
~C
8
ハロアルコキシ、ヒドロキシC
1
~C
8
アルコキシ、C
1
~C
8
アルコキシC
1
~C
6
アルコキシ、C
1
~C
8
アルコキシカルボニル、C
1
~C
8
アルコキシカルボニルC
1
~C
6
アルコキシ、C
1
~C
8
アルキルカルボニルC
1
~C
6
アルコキシ、フェノキシ又はニトロであり;
R
12
は、水素、C
1
~C
8
アルキル又はフェニルであり、ここで、各フェニル部分は、C
1
~C
8
アルキル及びC
1
~C
8
アルコキシから選択される1個~5個の基により任意選択により置換されており;又は
R
12
及びR
13D
は、これらが結合している炭素原子と一緒になって、6員~8員部分飽和シクロアルキル又はヘテロシクリル環を形成し得、ここで、複素環式部分は、1個又は2個のヘテロ原子を含む非芳香族環であり、ここで、前記ヘテロ原子はN、O及びSから個々に選択され;
Xは、メシレート、トシレート、ノシレート、スルフェート、ハイドロジェノスルフェート、トリフレート又はトリフルオロアセテートであり;
Yは、H
2
O、PhCN又はMeCNであり;並びに
Zは、メシレート、トシレート、ノシレート、スルフェート、ハイドロジェノスルフェート、トリフレート、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフェニルボレート又はテトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートである)
の化合物。
〔12〕式(III-1)、(III-11)、(III-17)、(III-18)及び(III-19):
【化32】
の化合物から選択される式(III)の化合物。
〔13〕式(IIIa)又は式(IIIb)のイリジウム触媒及び任意選択により酸の存在下における、水素によるアシレンアミン、イミン、エナミン、複素環、アルデヒド及びケトンのイオン性水素化プロセス。