(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】誘導対応ゾル-ゲルコーティング
(51)【国際特許分類】
C09D 1/00 20060101AFI20240405BHJP
F24C 15/10 20060101ALI20240405BHJP
H05B 6/12 20060101ALI20240405BHJP
C09D 5/24 20060101ALI20240405BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240405BHJP
C09D 183/02 20060101ALI20240405BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20240405BHJP
B32B 18/00 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
C09D1/00
F24C15/10 B
H05B6/12 305
C09D5/24
C09D7/61
C09D183/02
C09D183/04
B32B18/00
(21)【出願番号】P 2021542178
(86)(22)【出願日】2020-01-17
(86)【国際出願番号】 EP2020051194
(87)【国際公開番号】W WO2020152063
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-11-14
(32)【優先日】2019-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】594034072
【氏名又は名称】セブ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オーレリアン ベリュー
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-013710(JP,A)
【文献】特開2017-008152(JP,A)
【文献】特開2015-092481(JP,A)
【文献】特開2004-142968(JP,A)
【文献】特開平03-122162(JP,A)
【文献】特表2017-501789(JP,A)
【文献】特表2008-505435(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108610671(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器具を誘導対応にさせるための導電性フィラーを含むゾル-ゲルコーティング組成物であって、
前記組成物が、40~90%の導電性フィラーを含むことを特徴とし、パーセンテージは、ゾル-ゲルコーティング組成物の全質量に基づいて質量で表示された組成物。
【請求項2】
導電性フィラーは、強磁性、反磁性又は、常磁性であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
導電性フィラーは、銀、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、コバルト、ステンレス鋼、カーボンブラック及び、それらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
組成物が、50~85%の導電性フィラーを含むことを特徴とし、パーセンテージは、ゾル-ゲルコーティング組成物の全質量に基づいて質量で表示された、請求項1~3の何れか一項に記載の組成物。
【請求項5】
組成物が、金属又は半金属のアルコキシレート型前駆体及び、金属又は半金属のポリアルコキシレート型ゾル-ゲル前駆体から選択される少なくとも一つのゾル-ゲル前駆体を含むことを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の組成物。
【請求項6】
ゾル-ゲル前駆体は、テトラエトキシシラン(TEOS)及び/又は、メチルトリエトキシシラン(MTES)及び/又は、メチルトリメトキシシラン(MTMS)を含む、
請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載のゾル-ゲルコーティング組成物の少なくとも一つの層を備えたゾル-ゲルコーティング。
【請求項8】
請求項7に記載のゾル-ゲルコーティングでコートされた支持体を備えた調理器具。
【請求項9】
前記支持体は、無機材料又は、有機材料のものであることを特徴とする、
請求項8に記載の調理器具。
【請求項10】
無機材料は、ガラス若しくは、セラミックである、
請求項9に記載の調理器具。
【請求項11】
有機材料は、プラスチックである、
請求項9に記載の調理器具。
【請求項12】
調理器具の支持体の外側表面は、
請求項7のゾル-ゲルコーティングでコートされていることを特徴とする、
請求項8~11の何れか一項に記載の調理器具。
【請求項13】
以下の連続工程を備えた誘導対応調理器具を製造する方法:
(i)支持体を提供する;
(ii)導電性フィラーを含む
請求項1~6の何れか一項に記載のゾル-ゲルコーティング組成物を支持体に適用する;
(iii)200~500℃の温度で熱処理を適用する;
(iv)ゾル-ゲルコーティングでコートされた支持体の器具を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導対応調理器具の技術分野に関するものである。本発明の目的のために、「誘導対応」とは、誘導加熱技術、特に誘導クックトップに対応する能力を意味する。表示「誘導性」は、表示「誘導対応」と同様の意味を有すると理解されるべきである。誘導クックトップは、概して、交流電源によるインダクタから成る。導電性材料がこのインダクタの上に配置されるとき、多様な磁束がそれを通って流れ、そして、誘導の起電力の受皿となる。導電性材料中で誘導されたいわゆる渦電流は、ジュール効果により、材料を加熱させる。この効果は、電流が導電性材料を通過するとき生じる電気抵抗の熱発現である。熱エネルギーは、熱伝導により食品に移動し、そして、食品を加熱する。この原理の代表例を
図1に示す。
【背景技術】
【0002】
誘導対応である公知の調理器具は存在し、それらの支持体は内在的に誘導性であるか、それらの支持体は誘導性になるように処理されているか、部分的に誘導性の性質が支持体に加えられたからである。内在的に誘導性の支持体は、例えば、コーティング、特に、非粘着性のコーティングでコートされた又は、コートされていないフェライト系金属支持体(例えば、鋼、ステンレス鋼、鋳鋼)でも良い。誘電性にされた支持体は、例えば、その外側底が強磁性挿入物(例えば、コイニング又はボンディングにより支持体に接続されたフェライト系金属部品)を備えた又は、その外側底が特許文献1に記載のような強磁性素子からなるプラズマ堆積により処理された、アルミニウム、ガラス、セラミック若しくは、銅の支持体である。
【0003】
支持体が内在的に誘導性であるとき、支持体を誘導性にさせる必要はなく、そして、したがって、追加の処理は必要ないが、このタイプの支持体は、食品を調理するとき、低い熱の誘導剤であり、そして、有害なホットスポットを生じさせる不利益を有する。時として、熱分解がホットスポットにおいて現れ、そして、食品をダメにすることもあり得る。
【0004】
支持体が内在的に誘導性でなく、そして、誘導性にさせなければならないとき、これは、1つ以上の追加の処理操作を必要とし、そして、したがって、調理器具の製造コストを増加させる。更に、アルミニウム、ガラス、セラミック若しくは、銅のような非誘導性の支持体は、(コーティングの低い接着性、コーティングの孔食で)容易にはエナメル化されず、そして、高価である。
【0005】
特許文献1は、調理器具を誘導対応にさせるために、調理器具の外側上の強磁性素子から成るプラズマ堆積を記載している。器具上の粉末の積層は、表面を粗くさせ、外側表面の不規則性がより少ないようにさせる目的で、サンディング又は仕上げ塗を積層してスムーズにさせなければならず、したがって、製造プロセスを複雑で、そして、高価なものにさせる。更に、非常に高温(200~800℃の間)で、そして粉末を使用して、実施されるこのプロセスは、制限的であり、生産ラインの従業者に、労働条件及び、安全上の問題を生じさせる。したがって、労働者に安全性を保証するために、これらの制約を克服することも必要である。更に、そのような器具は、食器洗い機のサイクル中で遭遇する加水分解現象に対する耐性が低い。
【0006】
これらの問題に加えて、ある有害化合物が、支持体を誘導性にさせる意図のコーティングで使用されているかもしれない。特許文献2で、磁気誘導コーティングは、電磁加熱適用のために、セラミック製調理器具の外側表面に適用され、そして、結合剤としてエポキシ樹脂を含む。ビスフェノールAはエポキシ樹脂であり、そして、樹脂の硬化プロセス中、多くは不完全に除去されている。したがって、いつくかのビスフェノールAは、結合剤として使用された樹脂中に残り、そして、調理器具に適用されている。したがって、特に、熱使用サイクル中において、健康に害する分解副産物及び/又はビスフェノールA、公衆衛生問題を提起する確認されている内分泌かく乱物質の放出により、最終の使用者に対して有害のリスクが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】フランス特許公開第2882240号公報
【文献】中国特許公開第108610671号公報
【文献】フランス特許第2576253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、内在的に誘電性でない(例えば、ガラス、アルミニウム、セラミック、銅、陶器、多孔性の建築材料[テラコッタ]、プラスチック支持体)支持体である調理器具、それらは誘導対応であり、その製造コストは妥当であり、ホットスポットを生じさせず、優れた加熱条件を、均一に示し、そして、容易にエナメル化されることが出来る調理器具を提案することが必要となる。これらの調理器具は、簡易化された方法で、従業員に安全性を保証する労働条件下で製造される必要があり、そして、これらの調理器具が無害であることを保証することも必須である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
出願人は、誘導対応調理器具を作成するためのゾル-ゲルコーティング組成物を開発した。このゾル-ゲルコーティング組成物の利点は、300℃までの良好な耐熱性、特に、食器洗浄機器を通して行われるとき、加水分解に対する優れた耐性及び、非常に良好な洗浄性を提供する一方で、ゾル-ゲルコーティングを受容するいかなる種類の支持体でも誘導対応に作成することが出来ることである。
【0010】
したがって、本発明は、導電性フィラーを含み、調理器具を誘導対応にさせることを意図するゾル-ゲルコーティング組成物に関するものである。
【0011】
本発明は、本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物の少なくとも一つの層を含む、ゾル-ゲルコーティングに関するものでもある。
【0012】
本発明は、本発明に従ったゾル-ゲルコーティングでコートされた支持体を備えた調理器具に関するものでもある。
【0013】
本発明は、本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物を使用した誘導対応調理器具の製造方法に関するものでもある。
【0014】
最後に、本発明は、調理器具を誘導対応にするために、ゾル-ゲルコーティングを調製するための導電性フィラーの使用に関するものでもある。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以下の利点の少なくとも一つを提供する:
-導電性フィラーは、本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物中にゾル-ゲル組成の安定性を害することなく、組成物の全質量の90%まで、非常に多くの量を含有させることが出来る;
-本発明に従ったゾル-ゲルコーティングは、プラスチック、ガラス、陶器、多孔性の建築材料(テラコッタ)、セラミック、銅、アルミニウムのようなゾル-ゲルコーティングでコートされることを受容するいかなるタイプの支持体を誘導対応にさせる能力を有する;
-本発明に従ったゾル-ゲルコーティングは、熱分散の良好な均一性を示し、特に、これらのコーティングは、食品を料理するときにホットスポットを示さない;
-本発明に従ったゾル-ゲルコーティングは、少なくとも500℃まで、熱的に安定している;
-本発明に従ったゾル-ゲルコーティングでコートされた調理器具は、スロークッキング(ことこと煮る、グラタン)において良好な結果を示す;
-そのような調理器具を製造する本方法は、高温を必要としない、確かに、本発明に従ったゾル-ゲルコーティングの硬化温度は、概して、800℃であるエナメルコーティングよりもかなり低く(、210~300℃)、したがって、支持体としてのアルミニウムのよう材料の使用を可能にさせる;
-導電性フィラーの別の利点は、例えば、磨くことのような特定の前処理の必要性なしに、導電性フィラーをゾル-ゲルコーティングの製造のあらゆるステージで含有させられることである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、誘導加熱システムの具体例の概略断面を示すものある。水を含む容器1は誘導クックトップ上に配置されている。このクックトップは、ガラス-セラミックプレート4、電磁気を形成する電磁誘導コイル5及び、電気パワー供給源6を備える。操作において、コイルは、プレート4及び、容器1の底を通過する磁場3を生じさせる。容器1の材料にも依存するが、後者は、誘導電流2の受皿となり、容器を加熱させ、そして、それにより、容器1に含まれる水は、熱伝導により加熱される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
したがって、本発明は、調理器具を誘導対応にさせるために、導電性フィラーを含むゾル-ゲルコーティング組成物に関するものである。
【0018】
本発明の目的のために、「導電性フィラー」又は「導電性材料」は、渦電流のような電流を通すことが出来るフィラー又は材料であると理解される。
【0019】
好ましくは、本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物の導電性フィラーは、強磁性、反磁性又は、常磁性である。
【0020】
本発明の目的のために、「強磁性」とは、永久磁石を形成するか又は、磁石により引き付けられるフィラー又は材料を意味する。強磁性の説明として、記載は、鉄、ニッケル、コバルト及び、これらのほとんどの合金から製造されても良い。
【0021】
本発明の目的のために、「常磁性」とは、自然発生的に磁性を有しないが、しかしながら、外部磁場の影響下、この励磁場と同じ方向に向いた磁化を獲得する(アルミニウムのような)フィラー又は材料を意味する。したがって、常磁性フィラー又は材料は、(反磁性材料とは異なり)一般的に極めて弱い、プラスの磁化率を有する。この磁化は、励磁場が切断されると消滅する。
【0022】
本発明の目的のために、「反磁性」とは、磁場の影響下、励磁場と反対の非常に弱い磁化を獲得する(銀や銅のような)フィラー又は材料を意味し、したがって、励磁場と反対の磁場を発生させる。この場がもはや提供されないとき、磁化は消える。
【0023】
好ましくは、本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物は、銀、銅、アルミニウム、鉄、ニッケル、コバルト、ステンレス鋼、カーボンブラック及び、それらの混合物から選択される導電性フィラーを含む。好適には、本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物は、銀、銅、アルミニウムから選択される導電性フィラーを含む。更により好適には、本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物は、銀の導電性フィラーを含む。有利には、本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物は、40~90%の導電性フィラー、より好ましくは、50~85%、更により好適には、55~80%、そして有利には、55~75%含む。
【0024】
パーセンテージは、本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物の全質量に関して質量で表示される。
【0025】
導電性フィラーは、異なる形態、特に、粉末、フレーク、カプセル化若しくは、非カプセル化又は、これらの組合せの形態であり得る。これらの形状又はサイズにより、導電性フィラーは、ゾル-ゲルコーティング組成物中で、塊となっても、分散しても良い。
【0026】
好ましくは、本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物は、粒子が、相互に非常に近接し、そして、コーティングされた後に相互に接触出来るように非常に細かい粉末形状の粒子である導電性フィラーを含む。コーティングの近くから近くに電流密度及び、誘電を作るように、フィラー間の接触は可能な限り高いことが好ましい。
【0027】
好ましくは、良好な電気導電性を提供するために、少なくとも0.5m2/g、より好ましくは、少なくとも0.7m2/g、のBET比表面積を導電性フィラーは有する。
【0028】
Brunauer, Emmett and Teller model(BET法)に基づいて、原子又は分子にアクセス出来る製品の単位質量当たりの全表面積を決定するために、粉末若しくは固体に対する比表面積又は、気体質量が測定される。測定技術は、液体窒素の沸点におけるその圧力に関連して、そして、通常の大気圧下において、吸収された窒素量に基づくものである。フィラーの実際の全表面の測定は、高低、不規則性、表面又は内側の孔、多孔性の存在を考慮する。フィラーのBET比表面積が高いほど、フィラー間の接触は大きい。使用されるBET測定装置は、例えば、そのMicrometrics Flowprep 060試料調製デバイス付のMicrometrics Gemini VII 2390になるであろう。
【0029】
好ましくは、本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物は、0.1μm~10μm、より好ましくは、0.2μm~8μmのD10である、特定の粒径分布を有する導電性フィラーを含む。
【0030】
好ましくは、本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物は、1μm~15μm、より好ましくは、2μm~12μmのD50である、特定の粒径分布を有する導電性フィラーを含む。
【0031】
好ましくは、本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物は、2μm~20μm、より好ましくは、3μm~15μmのD90である、特定の粒径分布を有する導電性フィラーを含む。
【0032】
好ましくは、本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物は、10μm~50μm、より好ましくは、10μm~28μmのD100である、特定の粒径分布を有する導電性フィラーを含む。
【0033】
導電性フィラーが銀フィラーである代わりの場合、それらは、好ましくは、0.2μm~1.5μmのD10、2μm~5μmのD50、3μm~11μmのD90及び、18μmのD10を有することになるであろう。
【0034】
D10は、Dv10とも示され、10%目の粒径容量分布であり、つまり、10%の容量は、D10以下の粒子を表し、そして、D10より大きい粒子が90%である。Dv10は、同様の方法で定義される。
【0035】
D50は、Dv50とも示され、50%目の粒径容量分布であり、つまり、50%の容量は、D50以下の粒子を表し、そして、D50より大きい粒子が50%である。Dv50は、同様の方法で定義される。
【0036】
D90は、Dv90とも示され、90%目の粒径容量分布であり、つまり、90%の容量は、D90以下の粒子を表し、そして、D90より大きい粒子が10%である。Dv90は、同様の方法で定義される。
【0037】
D100は、Dv100又はDmaxとも示され、100%目の粒径容量分布であり、つまり、100%の容量は、D100以下の粒子を表す。Dv100又はDmaxは、同様の方法で定義される。
【0038】
好ましくは、導電性フィラーは、99.9%、質量パーセントに近い高い純度を有するものが選択される。確かに、不純度は、フィラーの分布を妨害し得る。有利には、質量による不純度パーセンテージは0.1%、好ましくは、0.01%よりも少ない質量パーセントであるべきである。
【0039】
本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物は、金属又は半金属のアルコキシレート型のゾル-ゲル前駆体及び、金属又は半金属のポリアルコキシレート型のゾル-ゲル前駆体から選択される少なくとも一つのゾル-ゲル前駆体を含む。
【0040】
有利には、ゾル-ゲル前駆体は、化学式1又は、化学式2又は、化学式3に対応する化合物から選択される:
ここで:
R1、R2、R3又はR3´は、C1-C4アルキル基を示す。
R2´はC1-C4アルキル基又はフェニル基を示す。
nは元素M1、M2又はM3の最大原子価に対応する整数である。
M1、M2又はM3は、Si、B、Zr、Ti、Al、Vから選択された元素を示す。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物で使用することが出来る金属又は半金属のアルコキシレート型のゾル-ゲル前駆体及び、金属又は半金属のポリアルコキシレート型のゾル-ゲル前駆体として、特に、アルミン酸塩、チタン酸塩、ジルコン酸塩、バナジン酸塩、ホウ酸塩、ポリアルコキシシラン及び、これらの混合物から作られても良い。
【0045】
好ましくは、ゾル-ゲル前駆体は、ポリアルコキシシランを含む。ゾル-ゲル前駆体は、有利には、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)及び、ジメチルジメトキシシラン又は、これらの混合物から選択される。
【0046】
好ましくは、ゾル-ゲル前駆体は、テトラエトキシシラン(TEOS)及び/又は、メチルトリエトキシシラン(MTES)を含む。
【0047】
有利には、金属又は半金属のポリアルコキシレート型のゾル-ゲル前駆体は、例えば、トリメチルホウ酸塩のようなホウ酸塩である。ホウ酸塩は、陶器又はガラスタイプの基板上で、接着前駆体として更に働くことが出来る。ホウ素元素は、低い膨張係数を有するので、このタイプの基板に良く適している。
【0048】
有利には、本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物は、更に、コロイド酸化物、好ましくは、金属又は半金属の酸化物を含んでも良い。好ましくは、金属又は半金属の酸化物は、シリカ、アルミナ、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化バナジウム、酸化ジルコニウム及び、これらの混合物から選択される。
【0049】
有利には、本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物は、上記に記載の少なくとも一つのゾル-ゲル前駆体及び、前記組成物中に分散された上記のような少なくとも一つのコロイド酸化物を、組成物の全質量に基づいて少なくとも2%質量含む。
【0050】
本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物は、調理器具を誘導対応にさせることを意図している。したがって、本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物は、誘導対応ゾル-ゲルコーティングを製造することを可能にさせる。
【0051】
有利には、本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物は、水及び、酸又は塩基触媒の添加によるゾル-ゲル前駆体の加水分解、それに続く、ゾル-ゲルコーティング組成物を導く縮合反応により、ゾル-ゲルコーティング組成物が得られる。
【0052】
有利には、本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物は、液体又は半液体状態である。
【0053】
本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物は、例えば、酢酸、ギ酸、クエン酸、塩酸、酒石酸又は、これらの混合物のような酸触媒を含んでも良い。
【0054】
本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物は、例えば、水酸化ナトリウムNaOH、水酸化カリウムKOH、アンモニアNH4又は、これらの混合物のような塩基触媒を含んでも良い。
【0055】
本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物は、更に、少なくとも一つの顔料フィラーを含んでも良い。
【0056】
本発明の文脈において使用出来る顔料フィラーとして、特に記載は、コート若しくは非コートされたマイカ、酸化チタン、混合された酸化物(スピネル)、アルミノケイ酸塩、酸化鉄、カーボンブラック、ペリレン赤、メタリックフレーク、顔料、熱変色性有機色素又は、これらの混合物から作られても良い。
【0057】
これらの顔料フィラーの主な効果は、色を提供することであり、そして、更に、熱拡散の向上、本発明に従った組成物から得られるゾル-ゲルコーティングの硬さ(及び、耐久性)を向上させ、そして、潤滑特性を有することである。
【0058】
本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物は、更に、少なくとも一つの無機フィラーを含んでも良い。これらは、例えば、窒化ホウ素、硫化モリブデン、グラファイト及び、これらの混合物から選択されるフィラーである。
【0059】
本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物は、更に、少なくとも一つの有機フィラーを含んでも良い。有機フィラーの具体例として、特に記載は、PETT粉末、シリコーンビーズ、シリコーン樹脂、直鎖又は三次元ポリシルセスキオキサン(特に、液体又は粉末の形態)、ポリエチレンサルフェート(PES)粉末、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)粉末、フェニルポリサルフェート(PPS)粉末、ポリフルオロプロピルビニルエーテル(PFA)粉末、ポリエチレン粉末樹脂、アクリル樹脂及び、これらの混合物から作られても良い。
【0060】
本発明に従って、そして、支持体上にスクリーン印刷による適用を意図された、第一のゾル-ゲルコーティング組成物は、有利には、メチルトリエトキシシラン(MTES)及び、テトラエトキシシラン(TEOS)の混合物をゾル-ゲル前駆体として、そして、任意選択的にトリメチルホウ酸塩を含んでも良い。
【0061】
本発明に従って、そして、支持体上にスクリーン印刷による適用を意図された、第二のゾル-ゲルコーティング組成物は、有利には、メチルトリエトキシシラン(MTES)及び、テトラエトキシシラン(TEOS)の混合物をゾル-ゲル前駆体として、そして、任意選択的にトリメチルホウ酸塩及び、(フィラーとして)アルミナを含んでも良い。
【0062】
本発明は、上記の本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物を使用したゾル-ゲルコーティングにも関する。
【0063】
このコーティングは、本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物の使用から作成出来る。
【0064】
本発明に従った器具のゾル-ゲルコーティングは、導電性フィラーを含むゾル-ゲルコーティング組成物の使用から作ることも出来、調理器具を誘電対応にすることを意図する。
【0065】
本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物のための導電性フィラーに関する上記の全ての記載は、同様にコーティングにも適用される。
【0066】
本発明のゾル-ゲルコーティングは、上記のゾル-ゲルコーティング組成物の少なくとも一つの層を備えても良い。
【0067】
本発明の目的のために、「ゾル-ゲルコーティング」は、ゾル-ゲルルートにより合成されたコーティングを意味する。したがって、コーティングは、有機無機複合体又は全て無機物からの何れかにより得られても良い。
【0068】
本発明の目的のために、「ゾル-ゲルルート」は、低温における一連の化学反応(加水分解及び縮合)により、液相の前駆体溶液を固体に変換することを含む合成の原理を意味する。
【0069】
有利には、液相前駆体ベースの溶液は、金属又は半金属のアルコキシレート型のゾル-ゲル前駆体及び/又は、金属又は半金属のポリアルコキシレート型のゾル-ゲル前駆体を含む。好ましくは、これは、本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物である。本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物用のゾル-ゲル前駆体に関する上記の全ての記載は、同様にコーティングにも適用される。
【0070】
本発明に従ったゾル-ゲルコーティングは、有機無機複合体コーティング又は全て無機物のコーティングの何れかであっても良い。
【0071】
本発明の目的のために、「有機無機複合体コーティング」は、そのネットワークは、無機物が必須であるが、しかし、特に、使用される前駆体及び、コーティングの硬化温度のために又は、有機フィラーの含有のために、有機基を含むコーティングを意味する。
【0072】
本発明の目的のために、「全て無機物のコーティング」は、全てが無機材料に基づくものであり、有機基を含まないコーティングを意味する。そのようなコーティングは、少なくとも400℃で硬化又は、400℃よりも低い硬化温度で金属若しくは半金属のアルコキシレート型の前駆体及び/又は、金属若しくは半金属のポリアルコキシレート型の前駆体から得ることが出来る。
【0073】
有利には、本発明に従ったゾル-ゲルコーティングは、少なくとも1つの金属若しくは半金属のアルコキシレート型の前駆体又は、少なくとも1つの金属若しくは半金属のポリアルコキシレート型の前駆体から形成されたマトリックスを含むゾル-ゲル材料、並びに、コーティングの全質量に基づいて少なくとも2%、前記マトリックス上に分散しているコロイド酸化物、好ましくは、金属又は半金属の酸化物を含む。
【0074】
本発明に従ったゾル-ゲルコーティングは、1つの層又は相互に重ね合わせた複数の層の何れかの支持体上に配置されても良い。
【0075】
本発明に従ったゾル-ゲルコーティングは、特に、もし装飾を含む場合に、連続層又は、非連続層の形態であっても良い。好ましくは、装飾は、スクリーン又はパッド印刷により適用される。特に、装飾は、特許文献3に記載の方法に従って適用することが出来る。
【0076】
好ましくは、本発明のコーティングは、単独の連続層を形成する。本発明に従ったゾル-ゲルコーティングは、非連続の層を形成すると予想することも出来る。
【0077】
本発明に従ったゾル-ゲルコーティングは、5.0・10-7Ω・m~7.5・10-5Ω・mの間で構成される、好ましくは、8.0・10-7Ω・m~3.6・10-5Ω・mの間で構成される抵抗値を有する。有利には、本発明に従ったゾル-ゲルコーティングは、固体の状態である。
【0078】
本発明は、本発明に従ったゾル-ゲルコーティングでコートされた支持体を備えた調理器具にも関するものでもある。
【0079】
本発明は、本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物の適用後に、本発明に従ったゾル-ゲルコーティングでコートした支持体を備える調理器具にも関する。加熱処理の後、本発明に従ったゾル-ゲルコーティングは、調理器具の支持体を接着させて、ゾル-ゲルコーティングでコートした支持体を有する器具を形成する。
【0080】
概して、調理器具の支持体の一部は、本発明に従ったゾル-ゲルコーティングでコートされているが、しかし、調理器具の支持体の全部がコートされていると予想し得る。概して、誘導加熱手段、特に、誘導調理用クックトップと接触するよう意図されている部分のみがコートされている。
【0081】
本発明に従った部分的又は完全にコーティングされた調理器具の支持体は、ガラス、セラミックのような無機材料又は、プラスチックのような有機材料から作ることが出来る。
【0082】
概して、本発明に従った、部分的又は完全にコートされた調理器具の支持体は、電気的に導電材料からは製造されない。
【0083】
本発明に従った調理器具用のコーティング支持体としてのガラスは、良好な機械強度及び、熱ショックに対する良好な抵抗性の利点を有する、強化されたホウケイ酸塩又は、ガラス-セラミックであり得る。このタイプの支持体は、組成、成型及び強化を熟知しているガラスメーカーから得ることが出来る。成型操作及び、コーティング組成物の適用は分離して行うことが出来、これは、非連続プロセスの実行において有利となり得る。化学的又は機械的な表面処理は、ゾル-ゲルコーティングとガラス支持体の間で強化された結合を得るために有用であるかもしれない。せっ器及び、セラミックは、本発明に従った調理器具のためのコーティング支持体としても好適であるかもしれない。いわゆる「all-fire」セラミックは、概して、特定の製品、多大なノウハウを必要とする成型品を使用する。これらの材料の利点は、材料が高い熱ショックに耐えられることである。これらの材料は、好ましくは、重力キャスティング又は、従来からの圧若しくは、生産性向上のため静水圧により成型される。成型技術は、多様な形状を得ることを可能にし、その後、成型された材料は、乾燥され、そして、例えば、1400℃、4時間の工程で焼成される。これらの生の対象物、(コーティングされていないため)破片とも呼ばれは、成型プロセスと関連する、ある興味深い粗さを有し、そして、本発明に従ったゾル-ゲルコーティングの適用を制御するために好ましい。本発明に従った又はそうでない、ゾル-ゲルコーティングの第一の層は、良好な美的外観を提供し、そして、特に、上記の本発明に従った抵抗性又は、強磁性の層に対する効果的な接着プライマーを作成するために、器具の外側にスプレーにより適用することが出来る。本発明に従った誘導ゾル-ゲル層の直接印刷も可能であるから、この「プライマー」層は必須ではない。プラスチックも、本発明に従った調理器具に対するコーティング支持体として適している。この場合、食品と接触するためにプラスチックは適することになる。シリコーンは、この点に関して記述され得るが、しかし、これは相対的に柔軟であるので、強化されても良いと予想される。シンジオタクティックポリスチレン-30%FV 250℃耐性は、再加熱システムに対する好適な解決策を提供しえると言うことも出来る。本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物は、任意選択的に、この支持体に特別に適用させても良いかもしれない。プラスチック支持体付きの調理器具に対して、それらは、「保温」バックアップシステムとして使用することも出来る。
【0084】
有利には、本発明に従った調理器具の支持体は、食品を受容するように意図された内側表面及び、誘電加熱手段に向かって配置されることを意図された外側表面を有する。
【0085】
有利には、本発明に従ったコーティングは、調理器具の支持体の2つの表面の少なくとも1つの上、好ましくは外側表面上に配置されている。
【0086】
有利には、調理器具の支持体の外側表面は、本発明に従ったゾル-ゲルコーティングでコートされている。
【0087】
本発明の目的のために、「調理器具」は、フライパン、ソースパン、ハイサイディドフライパン、シチューポット、クッキングポット、蒸パン、鍋、ベーキングパン、カケロンのような外部加熱システムにより加熱されることが出来る対象物、そして、ハンドルを有し且つ容器と接触の材料又は食材に、外部加熱システムにより提供される熱エネルギーを伝達することが出来る、より一般的な容器を意味する。
【0088】
本発明に従ったゾル-ゲルコーティングでコートされた調理器具は、誘電対応であり、特に、45ワット~3.5キロワットの範囲のパワーを有する誘導クックトップ付である。
【0089】
本発明は以下の連続したステップを含む調理器具の製造方法にも関する:
(i)支持体を提供する、
(ii)導電性フィラーを含む本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物を支持体に適用する、
(iii)200~500℃の温度で熱処理を適用する、
(iv)支持体がゾル-ゲルコーティングでコートされた器具を得る。
【0090】
このプロセスの適用は、本発明に従った支持体がゾル-ゲルコーティングでコートされた器具を得ることを可能にさせる。
【0091】
ステップ(i)及び、ステップ(ii)で使用される支持体は、上記に述べたものである。
【0092】
有利には、本発明に従ったプロセスは、更に、ステップ(i)の前に、コートされることが意図される支持体の表面の表面処理のステップを備えても良い。この表面処理は、ゾル-ゲルコーティングの層の接着に好適になる粗さを作成するために、化学処理(特に、化学酸洗)又は、機械的処理(サンドブラスティング、ブラッシング、グラインディング、ショットブラスティングなど)又は、物理的処理(特に、プラズマによる)から構成されてもよい。表面処理は、脱脂処理操作をして表面をクリーンにして実施することも出来る。
【0093】
有利には、ステップ(ii)に従った組成物の適用の前に、支持体は任意選択的にクリーンにして、そして、加熱される。加熱温度は、40~80℃の間で構成され、この事前加熱は、適用中に滴下することを防止する。
【0094】
代替的なものに従うと、本発明に従ったプロセスのステップ(ii)は、以下のサブステップに従って行われても良い。
-少なくとも一つのコロイド酸化物、好ましくは金属又は半金属酸化物、少なくとも一つのアルコールを含む溶媒並びに、任意選択的に少なくとも一つのシリコーンオイルを含む水性組成物(A)を調製する、
-導電性フィラー及び、金属又は半金属のアルコキシレート型のゾル-ゲル前駆体及び、金属又は半金属のポリアルコキシレート型のゾル-ゲル前駆体から選択される少なくとも一つのゾル-ゲル前駆体を含む溶液(B)、好ましくは酸性の溶液を調製する、
-溶液(B)を、水性組成物(A)と混合して、ゾル-ゲルコーティング組成物を得る、
-得られたゾル-ゲルコーティング組成物を支持体に適用する。
【0095】
水性組成物(A)中の少なくとも一つのアルコールを含む溶媒の存在は、水性組成物(A)と溶液(B)の相溶性を向上させる。
【0096】
しかしながら、溶媒なしで働かせることも可能となるが、しかし、この場合、ポリアルコキシレートの選択は、水との顕著な相溶性で低減させる。過剰な量の溶媒(20質量%以上)は可能であるが、それは、環境に対して好ましくない、不必要な揮発性有機化合物を生じさせる。
【0097】
好ましくは、酸素を加えたアルコール系溶媒又は、エーテルアルコールが、本発明の水性組成物(A)中の溶媒として使用されている。
【0098】
ステップ(ii)中で使用されている溶液(B)は、更に、例えば、酢酸、ギ酸、クエン酸、塩酸若しくは、酒石酸又は、これらの混合物のような有機酸を含んでも良い。
【0099】
本発明に従った好適な酸は有機酸であり、そして、より好ましくは、酢酸又は、ギ酸である。
【0100】
水性組成物(A)の調製及び、溶液(B)の調製の後、これらの2つの組成物は、一緒に混合され、ゾル-ゲルコーティング組成物(A+B)を形成する。組成物(A)及び、(B)のそれぞれの各量は好ましくは、ゾル-ゲルコーティング組成物中のコロイド化シリカの量が、合計乾燥物質の質量に基づく質量%で、2~30%となるように調製される。
【0101】
本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物(A+B)は、噴霧による又は、浸漬、塗る、ブラッシング、ローリング、注入、カーテンコーティング、遠心コーティング若しくはスクリーン印刷のようないかなる他の適用方法により支持体に適用することが出来る。しかしながら、例えば、スプレイガン手段による噴霧は、均一で、そして、連続した層を形成し、硬化後、連続した均等な厚さのシールコーティングになるという利点を有する。
【0102】
本発明に従ったプロセスのステップ(ii)中で、支持体への適用は、スクリーン印刷、ローリング、注入、噴霧又は、カーテン印刷により行うことが出来る。
【0103】
本発明に従ったプロセスのステップ(ii)中で、支持体への適用は、噴霧を含む熱分解噴霧又はゾル-ゲルコーティング組成物の溶液の滴形態の霧状化により行われても良い。本発明に従ったプロセスのステップ(ii)中で、支持体への適用は、平面コーティングにより行っても良く、それは、一方において、産業上の観点からコーティングの消費量における顕著な節約になり、他方において、器具の外側への噴霧(オーバースプレイ)の問題を解消する。
【0104】
有利には、本発明に従ったプロセスのステップ(iii)は、200~400℃の温度で、特別に210~300℃の温度で、より特別に220~280℃の温度で、好ましくは250℃で、行われても良い。
【0105】
乾燥ステップは、ステップ(ii)及び(iii)の間で予想されても良い。乾燥のいかなる手段、オーブン乾燥、紫外線又は赤外線放射による乾燥、プラズマ乾燥、オープンエアー乾燥又は、これらの加熱手段の組合せを考慮することが出来る。
【0106】
この任意の乾燥ステップは、溶媒を蒸発させ、そして、コーティングの濃縮/硬化に関連するストレスを回避させる。
【0107】
別の代替的なものに従うと、プロセスは、ゾル-ゲルコーティング組成物を支持体に適用するステップ(ii)と、加熱を加えるステップ(iii)の間に、以下の2つの連続したサブステップを備える:
支持体を予備圧縮化させ、それにより、コートさせて、4B~4Hの範囲から成る鉛筆硬度を有するゾル-ゲルコーティング層を得るステップ(ii-1)、その後、
食品を受容する内側表面及び、熱源上に配置されることを意図された外側表面を有する調理器具の最終形状が得られるまで、コートされた表面を押し付けるステップであって、この押し付けは、ゾル-ゲルコーティング層が提供される表面又は、その反対側の表面の何れかであるステップ(ii-2)。
【0108】
本発明の目的のために、「鉛筆硬度」とは、表面のかき傷に対するコーティング又はラッカーの耐性を意味する。したがって、この硬度は、間接的に、ゾル-ゲルの濃縮の状態を反映する。ゾル-ゲルコーティング層のこの予備圧縮化ステップは、有利には、20℃~150℃の間から成る温度で乾燥、そして、より特別には、従来型の硬化オーブン中、80℃~150℃の間から成る温度で、強制的な乾燥から成る。
【0109】
好ましくは、本発明に従ったプロセスのそのような強制的な乾燥配置において、乾燥の継続期間は、30秒~5分の間であれば良い。
【0110】
本発明に従ったプロセスのステップ(iii)の後、本発明に従ったゾル-ゲルコーティングでコートされた支持体の器具が得られる。
【0111】
本発明に従ったプロセスの実施後のコーティングの厚さは、1~2000μmの間から成ること、特に2~1000μmの間から成ること、好ましくは、2~150μmの間から成ることが出来る。
【0112】
常磁性又は、反磁性の導電性フィラーを有する本発明に従ったプロセスの実施後のコーティングの厚さは、1~40μmの間から成ること、特に、2~30μmの間から成ること、好ましくは、5~15μmの間から成ることが出来る。
【0113】
強磁性導電性フィラーを有する本発明に従ったプロセスの実施後のコーティングの厚さは、50μm~2mmの間から成ること、特に、70μm~1mmの間から成ること、好ましくは、70μm~500μmの間から成ることが出来る。
【0114】
コーティングの厚さは、粒子のD100、そして、特に導電性フィラーのD100に依存することになり、そして、概して、D100は、コーティングの成分が突き出ないように、コーティングの厚さよりも大きくなることは出来ない。しかしながら、幅が長さと異なる細長い粒子の場合、D100は、コーティングの厚さよりも大きくなっても良いと予想され、細長い粒子は、コーティング層から突き出ることなくコーティン中に埋め込まれる。
【0115】
本発明は、更に、誘導対応調理器具を作成するためのゾル-ゲルコーティングを調製するための導電性フィラーの使用にも関する。
【0116】
導電性フィラーは、加熱手段の発生器の誘導電流から生じるコーティングのレベルでジュール効果によるパワーの消失の結果として、調理器具を誘導対応にさせる。
この使用に従って実施される導電性フィラーは、上記に記載されたものである。
【実施例】
【0117】
<レーザーグラニュトメトリー法>
添付の特許請求の範囲も含めた本開示において、グラニュトメトリー及び、粒径は、例えば、Malvern MS2000レーザー粒径分析器を使用して、レーザー粒径分析により測定される。
【0118】
測定は、好適な溶媒中、湿潤プロセス(例えば、水性又は溶媒媒体中で)を介してか又は、乾燥プロセスを介してか、何れかで行われる。光源は、赤色He-Neライト放射源及び、青色ダイオードを有するクラス1レーザーから成る。
【0119】
光学モデルは、Mieモデルであり、そして、コンピュータマトリックスは、Mieタイプのものである。
【0120】
装置は、粒径曲線が公知である、標準試料(複数の異なる粉末の単一分散ラテックス)を使用して定期的に標準化する。レーザー回析分析中に必要な訂正を行うために、使用される各材料の屈折率を知る必要がある。
【0121】
レーザーの配置及び、分析室の清潔度は、測定の前にチェツクされる。
【0122】
バックグラウンドノイズの測定が最初に行なわれ:
-2000rpmのポンプスピード、800rpmの攪拌器スピード及び、10秒以上の音測定及び、超音波の存在なしで、湿潤プロセスに対して、水若しくは溶媒液体の存在下、又は、
-10秒以上の音測定で、乾燥プロセスに対して、空気の存在下、
その後、レーザー光強度は少なくとも80%以上であり、そして、指数曲線の減衰がバックグラウンドノイズに対して得られることを確認する。もし条件を満たさない場合、セルのレンズはきれいにされる必要がある。
【0123】
その後、試料の最初の測定が以下のパラメータで行われる。
-湿潤プロセス:2000rpmのポンプスピード、800rpmの撹拌機スピード、超音波なし、10~20%の間のオブスキュレーションリミット
-乾燥プロセス:10~20%の間のオブスキュレーションリミット
【0124】
試料は、10%よりも若干高いオブスキュレーションを得るように導入される。オブスキュレーションの安定化の後、測定は、(10000回析イメージ分析の収集時間)10秒、(塊を避けるために)超音波の存在下で行われる。得られた粒径分布曲線では、粉末の集合の一部は塊と成り得ることを考慮しなければならない。セルを空にすることなく、測定は、少なくとも2回行われ、結果の安定性及び、気泡がないことをチェツクする。
【0125】
詳細な説明に示す全ての測定及び、特定の範囲は、超音波付で得られた平均値に対応する。
【0126】
<製品>
・ゾル-ゲル前駆体:
-メチルトリエトキシシラン(MTES);
-テトラエトキシシラン(TEOS);
-トリメチルホウ酸塩;
・コロイド酸化物:40%シリカ水溶液としてのコロイドシリカ;
・溶媒:
-プロパン-2-オール;
-テルピノール(terpinol);
-ブチルグリコール;
・酸:塩酸;
・塩基:
-KOH;
-NaOH;
-NH4OH;
・レオロジー剤:
-尿素修飾アクリル酸コポリマー;
-Ubbelohde粘度計による、25℃、5%溶液に対する測定により、18~22mPa.sの粘度を有するエチルセルロース;
-モル分子量が2500~5000g.mol-1のアクリル酸コポリマー;
・湿潤剤:ジオール官能化フッ素化ポリエーテルポリマー;
・水:蒸留水
・導電性フィラー
-0.64μmのD10、1.5μmのD50、3.0μmのD90及び、7.0μmのD100及び、BET表面積>0.5m2/gを有する銀粉末No.1;
-0.97μmのD10、3.03μmのD50、7.62μmのD90及び、25.43μmのD100及び、BET表面積>0.5m2/gを有する銀粉末No.2;
-1~3μmのD10、4~6μmのD50、8.5~12μmのD90及び、15μmのD100及び、BET表面積>0.5m2/gを有する強磁性粉末;
-2.0~6.0μmのD10、7.0~11.0μmのD50、12.0~17.0μmのD90及び、15μmのD100及び、BET表面積>0.5m2/gを有するカプセル化アルミニウム;
・フィラー:アルミナ Al2O3;
-支持体:セラミック陶器;
-シリコーンオイル:食品グレードの反応性シリコーンオイル;
【0127】
<組成物>
(実施例1)
銀粉末(酸ルート)を含む本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物
本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物が、以下の表1に記載の組成で製造された。
【0128】
【0129】
この組成物を製造するために、シラン、トリメチルホウ酸塩と水、酸及び、コロイドシリカを反応させて、本発明に従ったスクリーン印刷可能なゾル-ゲルコーティング組成物を得た。反応は、製造される量に依存して、(数分から1時間)すぐに止められた。この反応は発熱するので、換気フード下で、そして、反応壁に冷却システムを使用して行うことが奨励される。
【0130】
混合物を安定化及び、冷却させた後、導電性フィラー(銀粉末)及び/又は、顔料及び/又は、補強フィラーを段階的に、分散下で加えた。その後、組成物の他の成分(溶媒、添加剤及び、表面活性剤)を含有させた。数時間の静止の後、ペーストは、スクリーン印刷に使用された。ペーストは、冷蔵庫又は室温で保存されて、数日から数週間の間、最大の流動安定性を確保した。
【0131】
本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物が得られた。
【0132】
(実施例2)
強磁性粉末(酸ルート)を含む本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物
本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物が、以下の表2に記載の組成で製造された。
【0133】
【0134】
本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物は、実施例1に記載のプロトコルに従って得られた。
【0135】
(実施例3)
アルミニウム粉末(酸ルート)を含む本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物
本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物が、以下の表3に記載の組成で製造された。
【0136】
【0137】
本発明に従った、ゾル-ゲルコーティング組成物は、実施例1に記載のプロトコルに従って得られた。
【0138】
(実施例4)
銀粉末(塩基ルート)を含む本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物
本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物が、以下の表4に記載の組成で製造された。
【0139】
【0140】
この組成物を製造するために、シラン、トリメチルホウ酸塩、ナトリウム化合物、炭酸カリウム及び、アンモニアをガラスフラスコ中で計量した。その後、これらの成分は、25℃のウォータバス中で、12時間攪拌された。12時間後、溶液は、透明な黄色であり、溶液を加熱させ、そして「フレーク」を作り出す危険があるため、非常にゆっくり滴下により脱イオン化水が添加された。その後、溶液は、最初は、真空下、8~12μmのろ紙で、その後、5~8μmのろ紙で、ろ過される前に、25℃に冷却された。
【0141】
導電性フィラー(銀粉末)を徐々に分散下で加えた。その後、組成物の他の成分(溶媒、添加剤及び、表面活性剤)を含有させた。ペーストは、冷蔵庫又は室温で保存されて、数日から数週間の間、最大の流動安定性を確保した。
【0142】
本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物が得られた。
【0143】
<コーティングでコートされた支持体>
以下のプロトコルに従った本発明に従ったゾル-ゲルコーティング組成物でコートされた支持体を得るために、実施例1のゾル-ゲルコーティング組成物を、セラミック陶器支持体(パン型容器)に適用した。
-最初に、容器をきれいにし、その後、40~80℃の温度に加熱した。
-装飾用の色をしたゾル-ゲルコーティング組成物を、容器の全ての外側(外側スカート及び底部)上をスプレーし、次に、温度80~120℃で、数秒間乾燥させた。この組成物は、導電性フィラーを含まず、そして、本発明に従ったものではなない。この装飾ゾル-ゲルコーティング組成物は、以下の表5に記載の比率に従って製造された。
-その後、実施例1のゲルコーティング組成物は、1つ以上の層が30μmの厚さになる迄、ブラシにより適用され、その後、温度80~120℃で、ゆっくりと乾燥させた。
-硬化ステップは、スタートして温度を5分間で250℃に上昇させ、その後、250℃で10分間維持し、そして、その後、5分間で冷却して、約250℃で行われた。
【0144】
【0145】
実施例1の組成物の適用により得られた誘導対応コーティング付でその外側底部がコートされたセラミック陶器パンが得られた。支持体に適用されたゾル-ゲルコーティング組成物の抵抗性は、SOLEMS SQOHM-1 4-ポイントマルチメータにより測定された。計算された抵抗性は、5・10―6であった。
【0146】
<テスト>
実施例1の銀ゾル-ゲルコーティング組成物でコートされた底部を有するセラミック陶器器具の誘導熱実績をテストした。容器は1Lの水で満たされ、誘導熱システムで加熱された。結果を以下の表6に示す。
【0147】