(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】付加製造技術を使用して硬化性材料から光学体積要素を製造する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20240405BHJP
B29C 64/129 20170101ALI20240405BHJP
B29C 64/282 20170101ALI20240405BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240405BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240405BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240405BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/129
B29C64/282
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
(21)【出願番号】P 2021549081
(86)(22)【出願日】2020-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2020054696
(87)【国際公開番号】W WO2020169837
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-11-24
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】598142955
【氏名又は名称】エシロール アンテルナショナル
【氏名又は名称原語表記】ESSILOR INTERNATIONAL
【住所又は居所原語表記】147,rue de Paris,F-94277 Charenton-le-Pont,France
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【氏名又は名称】赤木 啓二
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(72)【発明者】
【氏名】マクシム ルコンペール
(72)【発明者】
【氏名】ピエール レイト
(72)【発明者】
【氏名】マニュエル テオデ
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-154924(JP,A)
【文献】特開2004-025843(JP,A)
【文献】特開2017-159557(JP,A)
【文献】特表2016-530127(JP,A)
【文献】特表2007-536131(JP,A)
【文献】国際公開第2019/002905(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加製造技術を使用して硬化性材料(50)から光学素子(100)を製造する方法であって、
- 未硬化の硬化性材料(50)の第1の一部分を提供するステップと、
- 前記第1の一部分の前記硬化性材料(50)の表面(55)を第1の硬化表面エネルギー(E
1)で照射することにより、前記光学素子(100)の第1の部分を形成するステップであって、前記第1の硬化表面エネルギー(E
1)は、第1の所定エネルギー閾値(T
1)より厳密に低く、且つ第2の所定閾値(T
2)より高く、前記第1の所定エネルギー閾値(T
1)は、前記光学素子(100)の前記第1の部分の厚さ全体において前記光学素子(100)の前記第1の部分を固体にするために十分なエネルギーに対応する固体所定エネルギー閾値(T
S)以下であり、前記第2の所定エネルギー閾値(T
2)は、誘導表面エネルギー(E
I)に等しい、ステップと、
- 前記第1の硬化表面エネルギー(E
1)での前記第1の部分の前記照射後、前記第2の所定エネルギー閾値(T
2)より高い少なくとも第2の硬化表面エネルギーで前記硬化性材料(50)の前記表面(55)を照射することにより、前記光学素子(100)の前記第1の部分と別個の前記光学素子(100)の少なくとも第2の部分を形成するステップと
を含み、前記第2の硬化表面エネルギーは、前記光学素子(100)の前記第2の部分及び前記光学素子(100)の前記第1の部分の少なくとも一部分の両方を照射し、前記光学素子(100)の前記第1の部分によって受け取られる前記第1の硬化表面エネルギー(E
1)及び前記少なくとも第2の硬化表面エネルギーの一部分の合計は、前記光学素子(100)の前記第1の部分を固体にするために十分で
ある、方法。
【請求項2】
未硬化の硬化性材料(50)の第1の一部分を提供する前記ステップ前に、少なくとも部分的に硬化される硬化性材料(50)の初期の一部分を提供するステップを含み、未硬化の硬化性材料(50)の前記第1の一部分は、前記初期の一部分と、前記第1の硬化表面エネルギー及び前記第2の硬化表面エネルギーで前記硬化性材料(50)の前記表面(55)を照射するために適切なエネルギー源(2)との間に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の所定エネルギー閾値(T
1)は、{E
J=E
C
*exp(th/D
P)}として定義されるJacobs方程式を使用することにより、前記光学素子の前記第1の部分について決定され、ここで、
- E
Jは、Jacobsエネルギーであり、前記固体所定エネルギー
閾値(T
S)は、前記Jacobsエネルギーと等しく、
- thは、前記光学素子(100)の前記第1の部分の厚さであり、
- D
Pは、前記硬化性材料(50)内の前記第1の硬化表面エネルギーの光深さ侵入値であり、
- E
Cは、前記硬化性材料(50)について定義された臨界Jacobsエネルギーであり、及び
- 前記第1の所定エネルギー閾値(T
1)は、前記臨界Jacobsエネルギー(E
C)
又は前記Jacobsエネルギー(E
J
)である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の所定エネルギー閾値(T
1)は、前記硬化性材料(50)について定義された前記臨界Jacobsエネルギー(E
C)であり、前記第1の硬化表面エネルギー(E
1)及び前記少なくとも第2の硬化表面エネルギーの合計は、前記Jacobsエネルギー(E
J)以
上である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
硬化表面エネルギーの一部が照射の各ステップにおいて前記光学素子(100)の前記第1の部分の少なくとも一部によって受け取られるように、前記硬化性材料(50)の前記表面(55)を照射するある数(H)のステップを含み、各硬化表面エネルギーは、前記第2の所定閾値(T
2)より高く、前記第1の部分によって受け取られる各硬化表面エネルギーの合計は、前記第1の所定エネルギー閾値(T
1)以上であり、前記数(H)は、3以上の整数である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記硬化性材料(50)の前記表面(55)を照射するステップは、中間硬化表面エネルギーで前記光学素子(100)の前記第1の部分を少なくとも部分的に照射するサブステップを含み、前記第1の硬化表面エネルギー及び前記中間硬化表面エネルギーの合計は、前記第1の所定エネルギー閾値(T
1)より厳密に低い、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
- エネルギー源(2)と、前記光学素子(100)の前記第1の部分との間に硬化性材料(50)の第2の一部分を提供するステップと、
- 硬化性材料(50)の前記第2の一部分で前記光学素子(100)の前記第2の部分を形成するステップと、
- 前記第2の硬化表面エネルギーの一部が前記光学素子(100)の前記第1の部分の少なくとも一部によって受け取られるように、少なくとも前記第2の硬化表面エネルギーで前記硬化性材料(50)の前記表面(55)を照射するステップと
を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記光学素子(100)の前記第1の部分を形成する前記ステップは、
- 前記第1の硬化表面エネルギーを適用するために適切なエネルギー源(2)のピクセルの第1のセットと関連する第1のイメージパターンを決定するサブステップと、
- 前記硬化性材料(50)の前記表面(55)上に前記エネルギー源(2)のピクセルの前記第1のセットを投射するサブステップであって、ピクセルの前記第1のセットは、第1の投射されたイメージを画定する、サブステップと
を含み、前記光学素子(100)の前記第2の部分を形成する前記ステップは、
- 前記第2の硬化表面エネルギーを適用するために適切なエネルギー源(2)のピクセルの第2のセットと関連する第2のイメージパターンを決定するサブステップと、
- 前記硬化性材料(50)の前記表面(55)上に前記エネルギー源(2)のピクセルの前記第2のセットを投射するサブステップであって、ピクセルの前記第2のセットは、前記第2の投射されたイメージを画定する、サブステップと
を含み、ピクセルの前記第1のセットに対するピクセルの前記第2のセットの相対的な位置は、ピクセルの前記投射された第2のセットの少なくとも1つのピクセルが、ピクセルの前記投射された第1のセットの少なくとも2つのピクセルを部分的に覆うように画定される、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
- 別の硬化表面エネルギーを適用するために適切なエネルギー源(2)のピクセルの別のセットと関連する少なくとも別のイメージパターンを決定するサブステップ、
- ピクセルの最後の投射されたセットの少なくとも1つのピクセルが、ピクセルのそれぞれの以前に投射されたセットの少なくとも2つのピクセルを部分的に覆うように、相対的な位置で前記硬化性材料(50)の前記表面(50)上に前記エネルギー源(2)のピクセルの各セットを連続して投射するサブステップと
を含み、ピクセルの投射されたセットの数(n)は、3以上の整数である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記(n)の投射されたイメージ間のピクセルの前記セットの前記相対的な位置は、前記光学素子(100)の前記第1の部分によって受け取られる硬化表面エネルギーの変動を最小化するように決定される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記数(n)は、前記光学素子の前記第1の部分によって受け取られる全硬化表面エネルギーが、前記固体所定エネルギー閾値(T
S
)と少なくとも等しいように決定される、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記光学素子(100)は、眼用レンズ(200)である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記光学素子(100)の前記第1の部分によって受け取られる前記第1の硬化表面エネルギー(E
1
)及び前記少なくとも第2の硬化表面エネルギーの前記一部分の前記合計は、前記固体所定エネルギー閾値(T
S
)以上である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
付加製造技術を使用して硬化性材料(50)から光学素子(100)を製造するための製造システム(1)であって、
- 未硬化の硬化性材料(50)を収容するために適切な容器(10)と、
- 前記光学素子(100)を支持するために適切な支持体(15)と、
- 第1の硬化表面エネルギーで前記硬化性材料(50)の表面(55)を照射することにより、前記光学素子(100)の第1の部分を形成するようにプログラムされた形成ユニット(3)と
を含み、前記第1の硬化表面エネルギーは、第1の所定エネルギー閾値(T
1)より厳密に低く、且つ第2の所定閾値(T
2)より高く、前記第1の所定エネルギー閾値(T
1)は、前記光学素子(100)の前記第1の部分の厚さ全体において前記光学素子(100)の前記第1の部分を固体にするために十分なエネルギーに対応する固体所定エネルギー閾値(T
S)以下であり、前記第2の所定エネルギー閾値(T
2)は、誘導表面エネルギー(E
I)に等しく、前記形成ユニット(3)は、前記光学素子(100)の前記第1の部分に少なくとも部分的に重なる前記硬化性材料(50)の前記表面(55)を少なくとも第2の硬化表面エネルギーで照射することにより、前記光学素子(100)の少なくとも第2の部分を形成するようにもプログラムされ、前記第2の硬化表面エネルギーは、前記第2の所定エネルギー閾値(T
2)より高く、前記第1の硬化表面エネルギー及び前記第2の硬化表面エネルギーの合計は、前記光学素子(100)の前記第1の部分を固体にするために十
分である、製造システム(1)。
【請求項15】
前記硬化性材料(50)の前記表面(55)に対しておよそ直角の軸に沿って前記光学素子(100)の前記形成された第1の部分をシフトさせるために、前記形成ユニット(3)に対して前記支持体(15)をシフトさせるようにプログラムされたシフトユニット(29)をさらに含む、請求項
14に記載の製造システム(1)。
【請求項16】
前記形成ユニット(3)は、前記第1の硬化表面エネルギー及び前記第2の硬化表面エネルギーで前記硬化性材料(50)の前記表面(55)を照射するために適切なエネルギー源(2)を含む、請求項
14又は
15に記載の製造システム(1)。
【請求項17】
前記形成ユニット(3)は、
- 前記第1の硬化エネルギーを適用するために適切な前記エネルギー源のピクセルの第1のセットと関連する第1のイメージパターンを決定するようにプログラムされたコンピュータ素子(6)であって、前記第2の硬化表面エネルギーを適用するために適切な前記エネルギー源のピクセルの第2のセットと関連する第2のイメージパターンを決定するようにもプログラムされたコンピュータ素子(6)と、
- 前記硬化性材料(50)の前記表面(55)上に前記第1の硬化表面エネルギーのピクセルの前記第1のセットを投射するために適切な光学システム(4)であって、ピクセルの前記第1のセットは、第1の投射されたイメージを画定し、前記光学システム(4)は、前記硬化性材料(50)の前記表面(55)上に前記エネルギー源のピクセルの前記第2のセットを投射するためにも適切であり、ピクセルの前記第2のセットは、第2の投射されたイメージを画定する、光学システム(4)と
を含む、請求項
16に記載の製造システム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部品、例えば眼用レンズの製造に関する。
【0002】
より正確には、本発明は、付加製造技術を使用して硬化性材料から光学素子を製造する方法に関する。
【0003】
本発明は、付加製造技術を使用して硬化性材料から光学素子を製造するための製造システムも記載する。
【背景技術】
【0004】
付加製造技術は、多くのデバイスを製造するために、特に最終的に得られるデバイスが必要な形状で直接形成されるとき、新技術の開発のフレームワーク内でプロトタイプデバイスを製造するために適切である。しかしながら、現行の開発段階では、眼用デバイスの大量製造のための工業用ツールとして使用されるように付加製造技術が適応されることは、稀である。
【0005】
眼用デバイスのために適切な付加製造技術は、通常、レイヤーバイレイヤー又はドロップバイドロップの構築プロセスに基づくものである。したがって、意図されたデバイスは、層又はドロップの重なりによって形成される。
【0006】
眼用レンズ、特に眼鏡の製造に関して、付加製造技術は、眼用レンズのモデルの製造のために使用される。しかしながら、これらのモデルが、着用者によって着用されるためのフレームに使用されるように適応されることは、稀である。実際に、製造された光学デバイス内において、層間の界面(又はドロップ及び/若しくは照射ツール内に存在するピクセルの痕跡)の堆積は、わずかな光学欠陥、特に回折欠陥を多くの場合に形成する。
【0007】
この界面の両側に位置する材料は、異なる時間で硬化するため、これらの欠陥は、層間の界面に現れ、それは、層間において回折を生成する(複数の層の積み重ねによる光学デバイスの形成によってパターンの繰り返しが誘導され、及び光学特性のそのような交互繰り返しは、回折欠陥の形成を誘導することに留意されたい)。さらに、単層内の材料の硬化も均一に生じず、むしろ点ごとに生じ、これらの点間でも回折が生じる。
【0008】
眼用レンズが最終的に使用されるとき、これらの欠陥は、重大である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、製造方法を提供する。
【0010】
より正確には、本発明は、付加製造技術を使用して硬化性材料から光学素子を製造する方法であって、
- 硬化性材料の第1の一部分を提供するステップと、
- 第1の所定エネルギー閾値より厳密に低く、且つ第2の所定閾値より高い第1の硬化表面エネルギーで前記第1の一部分の硬化性材料の表面を照射することにより、光学素子の第1の部分を形成するステップと、
- 第1の硬化表面エネルギーでの第1の部分の照射後、少なくとも第2の硬化表面エネルギーで硬化性材料の表面を照射することにより、光学素子の第1の部分と別個の光学素子の少なくとも第2の部分を形成するステップと
を含み、第2の硬化表面エネルギーは、光学素子の第2の部分及び光学素子の第1の部分の少なくとも一部分の両方を照射し、光学素子の前記第1の部分によって受け取られる第1の硬化表面エネルギー及び少なくとも第2の硬化表面エネルギーの一部分の合計は、第1の所定エネルギー閾値以上である、方法を含む。
【0011】
より特に、本発明は、付加製造技術を使用して硬化性材料から光学素子を製造する方法であって、
- 未硬化の硬化性材料の第1の一部分を提供するステップと、
- 第1の硬化表面エネルギーで前記第1の一部分の硬化性材料の表面を照射することにより、光学素子の第1の部分を形成するステップであって、第1の硬化表面エネルギーは、第1の所定エネルギー閾値より厳密に低く、且つ第2の所定閾値より高く、第1の所定エネルギー閾値は、光学素子の前記第1の部分の厚さ全体において光学素子の第1の部分を固体にするために十分なエネルギーに対応する固体所定エネルギー閾値以下であり、第2の所定エネルギー閾値は、誘導表面エネルギーに等しい、ステップと、
- 第1の硬化表面エネルギーでの第1の部分の照射後、第2の所定エネルギー閾値より高い少なくとも第2の硬化表面エネルギーで硬化性材料の表面を照射することにより、光学素子の第1の部分と別個の光学素子の少なくとも第2の部分を形成するステップと
を含み、第2の硬化表面エネルギーは、光学素子の第2の部分及び光学素子の第1の部分の少なくとも一部分の両方を照射し、光学素子の前記第1の部分によって受け取られる第1の硬化表面エネルギー及び少なくとも第2の硬化表面エネルギーの一部分の合計は、光学素子の第1の部分を固体にするために十分であり、光学素子の前記第1の部分によって受け取られる第1の硬化表面エネルギー及び少なくとも第2の硬化表面エネルギーの一部分の合計は、好ましくは、固体所定エネルギー閾値以上である、方法を含む。
【0012】
本発明により、光学素子の少なくともいくつかの異なる部分は、1回で完全に硬化されない。それらのいくつかは、光学素子を完全に製造する前でも完全に硬化されない。実際に、第1の部分の硬化性材料によって1回に受け取られる硬化エネルギーは、完全にそれを硬化するために十分ではない。したがって、形成された部分は、少なくとも最初に、液体及び固体間の中間状態で形成される。次いで、光学素子のいくつかの他の部分の形成中、以前に形成された少なくとも1つの部分は、固体状態に向かって変換率を増加させる硬化エネルギーの量を受け取る。一部の場合、本発明により、いくつかの部分は、光学素子製造の最終付近でのみ固体になるために十分な硬化エネルギーを受け取ることが可能である。
【0013】
中間状態の第1の部分は、第2の部分が第2の硬化エネルギーを受け取るとき、固体状態の代わりに、2つの部分がより効率的に結合することを可能にし、したがって前記部分間の界面の痕跡を減少又はさらに回避する。それらの隣接部は、他のものとより良好に相互浸透することが推測される。したがって、本発明によって形成される全ての隣接部は、より連続的な材料特性を有するように他のものに連結され、したがって界面に関連する欠陥が制限される。
【0014】
本発明によると、第1の部分及び第2の部分の少なくとも1つの対は、第1の部分及び第2の部分が光学素子の別個の部分であり、且つ潜在的に後硬化を含む付加製造による光学素子の製造の終了時、第1の部分及び第2の部分が両方とも完全に固体状態であるようなものであることに留意されたい。
【0015】
未硬化の硬化性材料の第1の一部分を提供する前記ステップ前に、本方法は、少なくとも部分的に硬化された硬化性材料の初期の一部分を提供するステップを含み、未硬化の硬化性材料の前記第1の一部分は、前記初期の一部分と、第1の硬化表面エネルギー及び第2の硬化表面エネルギーで硬化性材料の表面を照射するために適切なエネルギー源との間に配置されると要約することができる。これにより、硬化性材料の第1の一部分は、当業者の一般的な理解に従って層を形成することを可能にする硬化性材料に対応することが明らかとなる。
【0016】
本方法の他の有利な特徴は、以下の通りである。
- 第1の所定エネルギー閾値は、{EJ=EC
*exp}として定義されるJacobs方程式を使用することにより、光学素子の第1の部分について決定され、ここで、EJは、Jacobsエネルギーであり、これから第1の所定エネルギー閾値が導き出され、thは、光学素子の第1の部分の厚さであり、DPは、硬化性材料内の第1の硬化表面エネルギーの光深さ侵入値であり、及びECは、硬化性材料について定義された臨界Jacobsエネルギーであり、
- 第1の所定エネルギー閾値は、{EJ=EC
*exp}として定義されるJacobs方程式を使用することにより、光学素子の第1の部分について決定され、ここで、EJは、Jacobsエネルギーであり、固体所定エネルギー固体(TS)は、前記Jacobsエネルギーと等しく、thは、光学素子の第1の部分の厚さであり、DPは、硬化性材料内の第1の硬化表面エネルギーの光深さ侵入値であり、ECは、硬化性材料について定義された臨界Jacobsエネルギーであり、及び第1の所定エネルギー閾値は、臨界Jacobsエネルギーの関数であり、
- 第1の所定エネルギー閾値は、硬化性材料について定義された臨界Jacobsエネルギーであり、第1の硬化表面エネルギー及び少なくとも第2の硬化表面エネルギーの合計は、Jacobsエネルギー以上であり、
- 第1の硬化表面エネルギー及び少なくとも第2の硬化表面エネルギーの合計は、Jacobsエネルギー以上であり、優先的にはJacobsエネルギーの1.2倍以上、好ましくはJacobsエネルギーの1.5倍であり、
- 本方法は、硬化表面エネルギーの一部が、照射の各ステップにおいて光学素子の第1の部分の少なくとも一部によって受け取られるように、硬化性材料の表面を照射するある数のステップを含み、各硬化表面エネルギーは、第2の所定閾値より高く、第1の部分によって受け取られる各硬化表面エネルギーの合計は、第1の所定エネルギー閾値以上であり、前記数は、3以上の整数である。換言すると、「第1の硬化表面エネルギーでの第1の部分の照射後、少なくとも第2の硬化表面エネルギーで照射することにより、光学素子の第1の部分と別個の光学素子の少なくとも第2の部分を形成する」ステップは、2つ以上の照射ステップ数を含み、及び光学素子の第2の部分は、光学素子の3つ以上の別個の下位部分を含み得、
- 本方法は、少なくとも硬化性材料の表面を照射するステップに関して、前記照射ステップが、中間硬化表面エネルギーで光学素子の前記第1の部分を少なくとも部分的に照射するサブステップを含み、第1の硬化表面エネルギー及び中間硬化表面エネルギーの合計が第1の所定エネルギー閾値より厳密に低いようなものであり、
- 本方法は、エネルギー源と、光学素子の第1の部分との間に硬化性材料の第2の一部分を提供するステップと、硬化性材料の前記第2の一部分で光学素子の第2の部分を形成するステップと、第2の硬化表面エネルギーの一部が光学素子の第1の部分の少なくとも一部によって受け取られるように、少なくとも第2の硬化表面エネルギーで硬化性材料の表面を照射するステップとを含む。換言すると、硬化性材料の第2の一部分及びしたがって光学素子の第2の部分は、光学素子の第1の部分と異なる層、最も一般には製造プロセスにおいてそれより後に形成された層中にあり、
- 光学素子の第1の部分を形成するステップは、第1の硬化表面エネルギーを適用するために適切なエネルギー源のピクセルの第1のセットと関連する第1のイメージパターンを決定するサブステップと、硬化性材料の表面上にエネルギー源のピクセルの第1のセットを投射するサブステップとを含み、ピクセルの第1のセットは、第1の投射されたイメージを画定し、
- 光学素子の第2の部分を形成するステップは、第2の硬化表面エネルギーを適用するために適切なエネルギー源のピクセルの第2のセットと関連する第2のイメージパターンを決定するサブステップと、硬化性材料の表面上にエネルギー源のピクセルの第2のセットを投射するサブステップとを含み、ピクセルの第2のセットは、第2の投射されたイメージを画定し、
- ピクセルの第1のセットに対するピクセルの第2のセットの相対的な位置は、ピクセルの投射された第2のセットの少なくとも1つのピクセルが、ピクセルの投射された第1のセットの少なくとも2つのピクセルを部分的に覆うように画定され、
- 本方法は、別の硬化表面エネルギーを適用するために適切なエネルギー源のピクセルの別のセットと関連する少なくとも別のイメージパターンを決定するサブステップ、ピクセルの最後の投射されたセットの少なくとも1つのピクセルが、ピクセルのそれぞれの以前に投射されたセットの少なくとも2つのピクセルを部分的に覆うように、相対的な位置で硬化性材料の表面上にエネルギー源のピクセルの各セットを連続して投射するサブステップを含み、ピクセルの投射されたセットの数は、3以上の整数であり、
- ピクセルの投射されたセットの数は、照射ステップの数より大きく、
- 投射されたイメージ間のピクセルのセットの相対的な位置は、光学素子の第1の部分によって受け取られる硬化表面エネルギーの変動を最小化するように決定され、
- その数は、光学素子の第1の部分の任意の点によって受け取られる全硬化表面エネルギーが、第1の所定エネルギー閾値、優先的には臨界Jacobsエネルギー(Ec)と少なくとも等しいように決定され、
- 本方法は、光学素子が得られると、研磨などの除去機械加工ステップ又はコーティングなどの追加作業ステップを含む後処理ステップを含み、
- 付加製造技術は、ステレオリソグラフィー技術又はポリマー噴射技術の1つを含み、
- 光学素子は、眼用レンズであり、
- 眼用レンズの第1及び第2の部分は、眼用レンズの光学軸に対しておよそ直角の軸に沿って重ねられる。
【0017】
本発明は、付加製造技術を使用して硬化性材料から光学素子を製造するための製造システムであって、
- 硬化性材料を収容するために適切な容器と、
- 光学素子を支持するために適切な支持体と、
- 第1の硬化表面エネルギーで硬化性材料の表面を照射することにより、光学素子の第1の部分を形成するようにプログラムされた形成ユニットと
を含み、第1の硬化表面エネルギーは、第1の所定エネルギー閾値より厳密に低く、且つ第2の所定閾値より高く、形成ユニットは、光学素子の前記第1の部分に少なくとも部分的に重なる硬化性材料の表面を少なくとも第2の硬化表面エネルギーで照射することにより、光学素子の少なくとも第2の部分を形成するようにもプログラムされ、第1の硬化表面エネルギー及び第2の硬化表面エネルギーの合計は、第1の所定エネルギー閾値以上である、製造システムにも関する。
【0018】
より特に、本発明は、付加製造技術を使用して硬化性材料から光学素子を製造するための製造システムであって、
- 未硬化の硬化性材料を収容するために適切な容器と、
- 光学素子を支持するために適切な支持体と、
- 第1の硬化表面エネルギーで硬化性材料の表面を照射することにより、光学素子の第1の部分を形成するようにプログラムされた形成ユニットと
を含み、第1の硬化表面エネルギーは、第1の所定エネルギー閾値より厳密に低く、且つ第2の所定閾値より高く、第1の所定エネルギー閾値は、光学素子の第1の部分の厚さ全体において光学素子の第1の部分を固体にするために十分なエネルギーに対応する固体所定エネルギー閾値以下であり、第2の所定エネルギー閾値は、誘導表面エネルギーに等しく、形成ユニットは、光学素子の前記第1の部分に少なくとも部分的に重なる硬化性材料の表面を少なくとも第2の硬化表面エネルギーで照射することにより、光学素子の少なくとも第2の部分を形成するようにもプログラムされ、前記第2の硬化表面エネルギーは、第2の所定エネルギー閾値より高く、第1の硬化表面エネルギー及び第2の硬化表面エネルギーの合計は、光学素子の第1の部分を固体にするために十分であり、光学素子の前記第1の部分によって受け取られる第1の硬化表面エネルギー及び少なくとも第2の硬化表面エネルギーの一部分の合計は、好ましくは、固体所定エネルギー閾値以上である、製造システムにも関する。
【0019】
好ましい実施形態によると、本システムは、硬化性材料の表面に対しておよそ直角の軸に沿って光学素子の形成された第1の部分をシフトさせるために、形成ユニットに対して支持体をシフトさせるようにプログラムされるために適切なシフトユニットを含む。
【0020】
好ましい実施形態によると、形成ユニットは、第1の硬化表面エネルギー及び第2の硬化表面エネルギーで硬化性材料の表面を照射するために適切なエネルギー源を含む。
【0021】
好ましい実施形態によると、形成ユニットは、
- 第1の硬化エネルギーを適用するために適切なエネルギー源のピクセルの第1のセットと関連する第1のイメージパターンを決定するようにプログラムされたコンピュータ素子であって、第2の硬化エネルギーを適用するために適切なエネルギー源のピクセルの第2のセットと関連する第2のイメージパターンを決定するようにもプログラムされたコンピュータ素子と、
- 硬化性材料の表面上に第1の硬化表面エネルギーのピクセルの第1のセットを投射するために適切な光学システムであって、ピクセルの第1のセットは、第1の投射されたイメージを画定し、光学システムは、硬化性材料の表面上にエネルギー源のピクセルの第2のセットを投射するためにも適切であり、ピクセルの第2のセットは、第2の投射されたイメージを画定する、光学システムと
を含む。
【0022】
非限定的な例として示される添付の図面を参照する以下の説明は、本発明がどのようなものを含み、及びそれをどのように実施することができるのかを明白にする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】硬化表面エネルギーの関数としての硬化性材料の変換率を示す曲線を表す。
【
図2】本発明に従って光学素子を製造するように適応された例示的な製造システムを表す。
【
図3-5】それが本発明の第1の実施形態に従って処理された場合の光学素子の硬化性材料の異なる上面図を概略的に示す。
【
図6-7】それが本発明の第2の実施形態に従って処理された場合の光学素子の硬化性材料の側面図を概略的に示す。
【
図8】本発明の方法に従って製造される眼用レンズを表す。
【
図9】Jacobs方程式に従う標準曲線の例を表す。
【
図10】本発明に従って光学素子の厚さを通して硬化性材料を照射する2つの硬化表面エネルギーの伝達を表す。
【
図11-12】それぞれ本発明の場合及び従来技術の場合の硬化性材料の配列を示す。
【
図13】本発明によるピクセルゾーンの細分割を示す。
【
図14-17】
図13で画定された領域上のピクセルのセットの連続投射を示す。
【
図18-20】本発明による3つの実施例における連続照射の関数としての変換率の展開を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、一般に、付加製造技術を使用して光学素子を製造するために適応される方法に関する。
【0025】
本発明は、より特に、例えば眼鏡フレームに取り付けるために適切な眼用レンズを製造するために応用される。眼用レンズは、眼鏡フレームに取り付けられるように適応される形状にすでに潜在的に製造されているか、又は必要な形状に達するためにさらなる縁取りステップを必要とする。
【0026】
「付加製造技術」という表現は、従来の機械加工などの除去製造方法論とは対照的に、通常、層を重ねて3Dモデルデータから物体を製造するために材料を接合するプロセスを記載する、国際規格ASTM 2792-12に定義される製造技術を意味する。したがって、固体物体は、体積要素(主に層若しくはボクセル又はドロップ若しくは液滴或いはいくつかの場合にはさらに物質のブロック)を並置することによって製造される。したがって、本発明の場合、光学素子は、体積要素ごと、好ましくはレイヤーバイレイヤーで製造される。
【0027】
付加製造技術は、実際にはステレオリソグラフィー(SLA)、デジタルライトプロセシングステレオリソグラフィー(DLP-SLA)又はポリマー噴射であり得る。付加製造技術は、CAD(コンピュータ支援設計)ファイルにおいて画定されることが可能な所定の配列に従う体積要素の並置によって物体を作成するプロセスを含む。
【0028】
ステレオリソグラフィー(SLA)及びデジタルライトプロセシングステレオリソグラフィー(DLP-SLA)は、両方とも固体物体を作成するために積み重ねられる固体層を形成するためのフォトポリマー液体樹脂の容器上に光、ほとんどの場合に紫外線光の焦点を合わせることによって作用する。ステレオリソグラフィー(SLA)に関して、液体樹脂は、印刷領域を走査するレーザービームによる光への選択的露光を受け取る。デジタルライトプロセシングステレオリソグラフィー(DLP-SLA)は、樹脂の全表面にわたって各層のイメージを投射するために、デジタルプロジェクタースクリーンを使用する。プロジェクターがデジタルスクリーンであり、各層のイメージが感覚的に正方形のピクセルから構成されるため、ボクセル(体積は、正方形ピクセル及び層の厚さによって画定される)と呼ばれる小長方形ブリックから形成される層が得られる。
【0029】
代替として、LCD又はLEDピクセルなどのミクロミラーを形成するために使用される技術次第で、ピクセルは、六角形、菱形又は伸長形などの他の形状を有し得る。
【0030】
ポリマー噴射技術は、ビルドプラットホーム上へ液体フォトポリマー樹脂の液滴を噴出するために、インクジェットプリントヘッドを使用する。液体樹脂は、赤外線源又は紫外線源などの光源によって直ちに硬化され、層又は最終光学素子を構築するために、液滴のセットごとに固化される(及び固体物体を形成する)。
【0031】
実際には、ここで、使用された付加製造技術は、硬化性材料上での光パターンの投射に基づく。光パターンは、例えば、赤外線パターン又は紫外線パターンである。硬化性材料は、例えば、フォトポリマー樹脂であり、及び光学素子は、光重合プロセスによって製造される。一例として、フォトポリマー樹脂は、(メタ)アクリレートモノマーを含む。
【0032】
実際には、硬化性材料の変換率Cv(又は重合率)によって光重合プロセスを特徴付けることができる。変換率Cvは、硬化性材料の物質の物理状態と関連付けられる。硬化性エネルギーによる照射、ほとんどの場合、光による照射前、硬化性材料は、液体である。変換率Cvは、0付近であると考えられ、且つ硬化性材料の老化によるわずかな重合にも逆らえない。硬化性表面エネルギーによる硬化性材料の照射下において、硬化性材料は、重合し、液体状態から固体状態に進行的に切り替わる。硬化性材料は、複数の状態、特に「ゲル状態」と呼ばれる中間状態を経験し、その対応する変換率Cvは、硬化性材料次第である。中間状態は、液体でも固体でもない、それらの間の物質状態に対応し、特にJacobsの方法論による方法による固体ではないが、モノマーが互いに重合を開始しており、ポリマーネットワークの部分を形成し始めている状態である。中間状態の変換率Cvは、例えば、いくつかのアクリレートモノマーに関して20%~80%であり得るか、又はいくつかの他のものに関して10%より高く且つ/若しくは67%より低くなり得る。硬化性材料は、変換率Cvが一般に80%より高い場合、固体状態であると考えられる。いくつかのアクリレートモノマーに関して、硬化性材料は、変換率Cvが67%より高い場合に固体状態であると考えられる。材料次第で、硬化性材料は、変換率が、経験的に約60%~約80%で決定され得る臨界変換率より高い場合に固体状態であると考えられる。
【0033】
中間状態及び固体状態を特徴付ける変換率は、光源から誘導される硬化表面エネルギーE(又は光線量)、硬化性材料の吸収特性及び硬化性材料を重合させる開始剤の効率次第である。
図1は、アクリレートモノマーの場合の硬化性材料を照射する硬化表面エネルギーEの関数としての変換率C
v(%)を表す。
【0034】
この
図1中で見られるように、いくつかの場合、特にラジカル鎖成長重合に関して、硬化表面エネルギーEが誘導表面エネルギーE
Iより低い限り、変換率は、0付近のままである。(「誘導期」と呼ばれる)この期間中、硬化性材料は、液体のままであり、重合は、起こらない。ラジカル鎖成長重合の場合、開始剤の活性化によって形成される一次ラジカルとモノマーとの間の反応は、抑制剤、ここでは前記ラジカルと優先して反応し、従ってモノマーとの反応を妨げる二原子酸素によって停止される。したがって、誘導期中、硬化性材料によって受け取られる硬化表面エネルギーEは、抑制剤、ここでは二原子酸素を消費するために使用される。硬化性材料によって受け取られる硬化表面エネルギーEが誘導表面エネルギーE
Iに達すると、重合プロセスが起こる。
【0035】
いくつかのカチオン鎖成長重合などのいくつかの重合プロセスは、誘導期を有さないことに留意されたい。そのような場合、本発明は、無視できる誘導表面エネルギーによって適用される(この場合、以下で定義される「第2の硬化表面エネルギー閾値」も無視できる)。
【0036】
(モノマーの変換によって)重合プロセスは、進行し、及び変換率Cvは、増加するが、全ての受け取られた硬化表面エネルギーが臨界JacobsエネルギーECよりも低い限り、硬化性材料は、非固体状態のままであるが、一層堅牢になる。
【0037】
臨界JacobsエネルギーECは、0の理論的厚さで層を印刷するために十分な固体状態に達するために提供される最小表面エネルギーとして定義される。硬化表面エネルギーは、物質状態と関連するため、対応する変換率Cvは、所与の材料に関して臨界JacobsエネルギーECと対になる。ラジカル鎖成長重合によって重合されたアクリレートモノマーのいくつかの場合、対応する変換率Cvは、約60%~80%である。
【0038】
臨界JacobsエネルギーECは、Jacobs方程式(Paul F.Jacobs,Fundamentals of stereolithography in International Solid Freeform Fabrication Symposium,1992):{th=DP
*ln(E/EC)}に基づく経験的な方法を使用して決定される。Eは、硬化表面エネルギーであり、ECは、臨界Jacobsエネルギーであり、DPは、硬化性材料内の硬化表面エネルギーの光深さ侵入値であり、及びthは、重合厚さである。
【0039】
光深さ侵入値DP及び臨界JacobsエネルギーECは、Jacobsの実験から誘導される標準曲線から得られる。実験は、既知の硬化表面エネルギーのセットによって硬化性材料(ここでは樹脂)を照射し、測定可能な固体材料の対応する重合厚さを測定することを含む。標準曲線は、硬化表面エネルギーEの自然対数(ln)の関数としての重合された、測定された厚さの半対数プロットである。
【0040】
図9は、そのような標準曲線の例を表す。この図中に見ることができるように、標準曲線は、直線である。光深さ侵入値D
Pは、標準曲線の勾配であり、及び臨界JacobsエネルギーE
Cは、横座標軸と標準曲線との間の交差点である。
【0041】
臨界JacobsエネルギーECより高い場合、硬化性材料は、かなりの固体部分を形成し始め、変換増加によって物理及び/又は光学特性がさらに変化し得るとしても、固体重合材料を得るためにモノマー変換をより増加させる必要はない。したがって、材料の非ゼロの厚さに関して、全ての受け取られた硬化表面エネルギーがJacobsエネルギーEJより低いままである限り、重合プロセスは、進行し、及び変換率Cvが増加するが、硬化性材料の期待される層は、ゲル状態であり、一層堅牢になる。
【0042】
JacobsエネルギーEJは、所与の厚さの所与の硬化性材料がJacobsの方法論に従って測定されるために十分な固体状態まで所与の厚さ全体を硬化することをもたらすための最小硬化表面エネルギーに対応する。JacobsエネルギーEJは、臨界JacobsエネルギーEC、硬化性材料に対応する光深さ侵入値DP及び層の期待される厚さthの組合せに従い、Jacobs方程式から得られる。ラジカル鎖成長重合プロセスによって硬化されるアクリレートモノマーの場合、対応する変換率Cvは、通常、約60%~80%である。変換率に関するこの範囲によると、変換増加によって物理及び/又は光学特性がさらに変化し得るとしても、固体重合材料を得るためにモノマー変換をより増加させる必要がないことに留意されたい。
【0043】
眼用レンズ製造とは別の領域での3D印刷の従来の実施の範囲内で、所与の層に適用される硬化表面エネルギーがJacobsエネルギーEJより高く、一般に、約50%~約200%増加した厚さを有する層を固体状態に硬化させるために十分なエネルギーが提供されるように設定されることに留意されたい。換言すると、JacobsエネルギーEJは、考えられた層より150%厚い層に関する臨界JacobsエネルギーECと、考えられた層より300%厚い層に関する臨界JacobsエネルギーECとの間に含まれ得る。本発明は、眼用用途の光学必要条件に到達するためにこれらの実施を無視する。
【0044】
図2は、DLP-SLAプロセスとして光学素子を製造するために適応される製造システム1を示す。この製造システムは、形成ユニット3、容器10、支持体15及びシフト手段20を含む。
【0045】
形成ユニット3は、エネルギー源2、光学システム4及びコンピュータ素子6を含む。形成ユニット3は、指示が実行されるときに下記の通りに光学素子100を製造する方法を実施するために適応される。実際には、コンピュータ素子6は、マイクロプロセッサー及びメモリ(示されていない)を含む。マイクロプロセッサーは、光学素子100を製造するための指示を実行するように適応され、及びメモリは、これらの指示を貯蔵する。一例として、コンピュータ素子6は、硬化表面エネルギーを提供する各連続ステップの硬化表面エネルギーの大きさに関して及び硬化性材料50の表面55に投射されるイメージパターン(又は光パターン)に関して指示を生じるようにプログラムされる。これらの指示は、例えば、エネルギー源2及び/又は光学システム4に伝達される。
【0046】
エネルギー源2は、硬化表面エネルギーによって硬化性材料50の表面55を照射するために適切である。エネルギー源2は、光学システム4によって硬化性材料50に向けて光線、例えば紫外線光ビームを提供する。
【0047】
光学システム4は、エネルギー源2から生じる光を硬化性材料50の表面55上に投射するために適応される。光学システム4は、格子フォーマットに配置された複数のミクロミラー8を含む。ミクロミラー8は、隙間によって互いに分離される(実際には、2つの隣接したミクロミラー間で完全な接合があることは、不可能である)。ミクロミラー8は、例えば、8×8μm2のサイズの感覚的に正方形の形状である。隙間は、約10.8μmのミクロミラー間のピッチに関して、1~10μmに含まれ、例えば約2.8μmである。硬化性材料50の表面55上に投射されたら、ミクロミラー8は、ミクロミラー及び隙間の直接投射を含む、所与のピッチで投射されたピクセルを形成する。例えば、ピッチは、約40×40μmであり得、約30×30μmは、約10μmの隙間によって分離されるミクロミラーの投射に対応する。
【0048】
エネルギー源及び光学システムの他の組合せが存在することに留意されたい。例えば、イメージパターンの形成は、ミクロミラー又はLCD若しくはLEDスクリーンを使用してエネルギー源によって完全に生じられ得、及び光学システムは、位置効果及び焦点効果を提供するのみである。代わりに、エネルギー源は、連続的又は規則的バースト様式でエネルギーを提供し得、及び光学システムは、位置効果及び焦点効果の上にイメージパターンを生じる。さらに、ミクロミラー又はLCD若しくはLEDピクセル或いは投射されたピクセルのサイズは、本発明から逸脱することなく、本例から変動し得る。
【0049】
図2中に見られるように、光学システム4は、ここで、エネルギー源2からの紫外線ビームを複数のミクロミラー8に向かわせるように適応された投射システム7を含む。
【0050】
硬化性材料50は、液体状態で容器10中に貯蔵される。重合すると、硬化性材料50は、支持体15によって担持される光学素子100を形成する。実際には、液体硬化性材料50の一部分が支持体15上にあるように、支持体15は、硬化性材料50のバットに部分的に浸漬される。したがって、エネルギー源2によって提供される光線は、硬化性材料50のこの一部分に投射される。したがって、この一部分が重合するとき、形成される光学素子の一部は、支持体15上にある。
【0051】
以下に記載されるように、本発明によれば、光学素子は、いくつかの部分(記載された実施形態ではいくつかの層)で形成される。
【0052】
第一に、硬化性材料50の初期の一部分は、光学素子100を形成するために使用される。未硬化の硬化性材料の別の一部分(「第1の一部分」と記載される)をこの初期の一部分上に堆積させる前に、この初期の一部分は、少なくとも部分的に硬化される。次いで、この第1の一部分の第1の部分は、硬化される。
【0053】
初期の一部分の硬化された部分は、光学素子100のこの第1の部分に関する機械的基準として使用される。
【0054】
換言すると、本発明によれば、未硬化の硬化性材料の第1の一部分は、初期の一部分上(すなわち硬化性材料の表面を照射するために適切な初期の一部分とエネルギー源2との間で)配置される。
【0055】
本明細書中、「硬化されていない」という用語は、全く重合していない新鮮な硬化性材料を指す。次いで、未硬化の硬化性材料のこの第1の一部分を照射することにより、第1の部分が形成される。
【0056】
第1の部分として、初期の一部分の硬化された部分は、最終的に光学素子の不可欠な部分である。
【0057】
支持体は、レンズを支持するための硬化された硬化性材料によって形成された支持体ビーム又は構造を含み得ることは留意されたい。
【0058】
製造システム1は、シフト手段20も含む。シフト手段20は、硬化性材料のバットに対して、その上に光学素子100が形成される支持体15をシフトさせるために適切である。このシフト手段20は、硬化性材料20の表面55に対して感覚的に直角である軸に沿って、硬化性材料のバットに対する支持体15の垂直移動を可能にする。支持体15のこの垂直移動により、重合するための液体硬化性材料50の厚さの制御が可能となる。したがって、シフト手段20は、重合する層の厚さ制御を可能にする。
【0059】
シフト手段20は、本例において、硬化性材料50の表面55に対して感覚的に平行である軸に沿っての水平移動も可能にする。
【0060】
図2中に示されるように、製造システム1は、ここで、リコーターデバイス12を含む。このリコーターデバイス12は、例えば、硬化性材料の以前の層の上部にいくらかの硬化性材料を拡散するために適切である。別の方法では、リコーターは、使用されず、材料の平坦さを達成するために及び硬化性材料の以前の層の上部に追加される硬化性材料の厚さを制御するために、硬化性材料の表面上に膜が配置され得る。
【0061】
前記の通り、本発明によれば、光学素子100は、硬化表面エネルギーによって硬化性材料50を照射することによって製造される。
【0062】
実際には、照射は、LCD若しくはLEDピクセル又はデジタルミクロミラーデバイス(DMD)などのミクロミラーの形態において、エネルギー源2又は光学システム4内のピクセルのセットと関連するイメージパターンに基づく。ピクセルのこのセットは、形成ユニット3によって硬化性材料の表面55上に投射される。しかしながら、前記の通り、実際には、ミクロミラー8は、完全に接合されず、いくらかの隙間がそれらの間にある。したがって、硬化性材料の表面上の投射されたイメージは、隙間に対応するいくつかの陰領域を含む。これらの陰領域は、硬化表面エネルギーによってあまり照射されない。したがって、これらの陰領域は、低重合である領域に対応する。同一層及び層の後の繰り返された層の範囲内の重合率のそのような規則的な変動の繰り返しは、観察可能な回折欠陥の形成を導く。そのような欠陥は、眼鏡レンズの期待される光学品質と適合しない。
【0063】
説明の目的で機構が単純化されていることに留意されたい。また、以下では、所与のイメージパターンに関して隙間の投射に対応する陰領域は、照射されず、且つ前記イメージパターンに関連する照射中に重合しないことが考慮される。しかしながら、本発明は、この具体例に束縛されず、この簡略化された機構を用いて記載される例は、必要な変更を加えて、陰領域が硬化性表面エネルギーを受け取る場合、したがって対応する硬化性材料が重合し得る場合に適用される。それらの場合、陰領域は、ミクロミラー又はLCD若しくはLEDピクセルの直接的投射と同様に重合しない、いくつかの材料を含むことに留意されたい。
【0064】
実際に、本発明者らは、硬化性表面エネルギーが非常に高い場合さえ、陰領域は、イメージパターンの単一投射の照射中にJacobsの意味での固体になるために十分な表面エネルギーを受け取り、陰領域の重合率及び/又は速度は、ミクロミラーの直接投射に対応する領域におけるものよりも低く、観察可能な回折欠陥の形成を導くことを示すことを認識した。さらに、重合の動力学は、陰領域及び(明領域と呼ばれる)ミクロミラーの直接投射下の領域中で異なるため、ポリマーネットワークは、陰領域と明領域との間で異なり、したがって異なる光学特性が導かれる。したがって、これにより、投射されたピクセルのピッチに対応する空間周波数を有する光学特性の周期的変動が導かれる。
【0065】
本明細書中、ピクセルは、ミクロミラー8及び考慮されたミクロミラー8の周囲に配置された2つの隣接するミクロミラー間の隙間の半分の硬化性材料表面上のイメージとして定義される。
【0066】
本発明は、光学素子100を製造するための均一重合を有益に可能にする。本発明により、2つの例示的な実施形態が実施される。
【0067】
第1の実施形態は、
図3~5中に表される。例えば、第1の実施形態は、1つの層の硬化性材料50によって主に実施される。例えば、それは、光学素子100の第1の形成された層又は他のものの上に形成された別の層において主に実施可能である。
【0068】
図3~5に示される例によると、第1の実施形態は、ここで、光学素子100の第1の形成された層上で主に実施される。
【0069】
この第1の実施形態によると、初期イメージパターン及び関連するピクセルの初期セットは、硬化性材料の表面55上で第1の硬化表面エネルギーE1を適用するために決定される。第1の硬化表面エネルギーE1は、第1の所定エネルギー閾値T1より厳密に低い。
【0070】
第1の所定エネルギー閾値T1は、固体所定エネルギー閾値TS以下である。固体所定エネルギー閾値TSは、十分な「グリーン強度」を有するためのエネルギーに対応する。これは、それを取り扱うために十分であるが、それを完全に硬化するためのエネルギーより低い、光学素子100の第1の部分を硬化するために十分なエネルギーを意味する。光学素子100の第1の部分は、例えば、単層によって形成される。「グリーン」という用語は、ここで、最終物体とは対照的に、最初に形成された光重合された物体であり、それは、付加製造プロセス後に追加的な熱硬化を受けるものを意味する。このエネルギー閾値TSについてのより多くの詳細は、論文「Polymers for 3D Printing and Customized Additive Manufacturing」,Samuel Clark Ligon,Robert Liska,Juergen Stampfl,Matthias Gurr,and Rolf Muelhaupt,Chemical Reviews 2017 117(15),10212-10290,DOI:10.1021/acs.chemrev.7b00074で見出すことができる。
【0071】
換言すると、固体所定エネルギー閾値TSは、光学素子100の第1の部分の厚さ全体において光学素子100の第1の部分を固体にするために十分なエネルギーに対応する。
【0072】
さらに、固体所定エネルギー閾値TSは、誘導表面エネルギーEIより厳密に高く、例えば誘導表面エネルギーEIの2倍より高い。この固体所定エネルギー閾値TSは、依然として重合していない部分よりも固体である部分を得るために十分である。
【0073】
第1の所定エネルギー閾値T1は、臨界JacobsエネルギーECの関数であり、例えば臨界JacobsエネルギーECと等しい。他の例として、第1の所定エネルギー閾値T1は、Jacobs方程式から誘導された推奨されたエネルギーEJ(以下では、JacobsエネルギーEJとも記載される)である(Jacobs方程式の定義上、JacobsエネルギーEJは、臨界JacobsエネルギーECより高い)。一例として、固体所定エネルギー閾値TSは、JacobsエネルギーEJと等しい。
【0074】
第1の硬化表面エネルギーE1は、第2の所定エネルギー閾値T2より高い。実際には、この第2の所定エネルギー閾値T2は、上記の誘導表面エネルギーEIと等しい(したがって重合が生じ、抑制二原子酸素の大多数がすでに消費されている)。
【0075】
例証となる例として、5mJの臨界JacobsエネルギーECの実験的に決定した値及び200μmの光深さ侵入値Dpを有するアクリレートモノマーをベースとする硬化性材料が考慮される。したがって、10μmの厚さを有する層を構築するために、第1の閾値は、T1=5.26mJ(=EJ)である。第2の閾値は、約T2=0.21mJである。
【0076】
この例の場合、第1の硬化エネルギーE1は、4つの異なる照射において第1の所定エネルギー閾値T1に達するためにE1=1.66mJと等しく選択される。
【0077】
ピクセルのこの初期セットは、支持体15より上の硬化性材料50の表面55上に投射される。初期層35aが形成される。しかしながら、第1の硬化表面エネルギーE1が臨界JacobsエネルギーECよりも厳密に低いため、照射される硬化性材料は、固体状態ではないが、液体状態及び固体状態間の中間状態である。
【0078】
図3は、硬化性材料50上で投射されたイメージの痕跡の上面図の一例を示す。この痕跡は、交互の中間状態領域30a(直接照射され、重合が生じるもの)と、未重合領域32a(直接照射されないもの)とを示す。未重合領域32aは、上記の陰領域に対応し、ミクロミラー8間の隙間から誘導され、且つこの例において未重合である。この例は、実際に生じるものの単純化された形態であることが想起される。ほとんどの重合された材料に関して、光の拡散、若しくはピクセルに対応する仮想光線の分散、若しくはピクセルから陰領域への活性種の移動又は他の手段のいずれかにより、未重合領域がなお部分的に照射されることが期待される。
【0079】
類似の量の硬化表面エネルギーによって硬化性材料の全表面を被覆するために(したがって全初期層35aを可能な限り均一に重合させるために)、ピクセルのいくつかのセットが硬化性材料の同一表面に連続的に投射される必要がある。したがって、いくつかの他の対応する硬化表面エネルギーは、(初期層35a上へ硬化性材料の新しい層を追加する前に)初期層35a上で連続的に直接適用される。他の硬化表面エネルギーのそれぞれは、第2の所定エネルギー閾値T2より高く、第1の所定エネルギー閾値T1より厳密に低い。好ましくは、他の硬化表面エネルギーのそれぞれは、臨界JacobsエネルギーECより厳密に低い。全初期層を重合させるために(換言すると、例えば0.70より高い、初期層35aの主要部分において高い変換率を得るために)、他の硬化表面エネルギーが決定される。したがって、他の硬化表面エネルギーは、初期層35aによって受け取られる第1の硬化表面エネルギーE1及びそれぞれの他の硬化表面エネルギーの合計が初期層35aを固体にするために十分であるように決定される。特に、初期層35aによって受け取られる第1の硬化表面エネルギーE1及びそれぞれの他の硬化表面エネルギーの合計は、固体所定エネルギー閾値TSより高い。優先的には、初期層35aによって受け取られる第1の硬化表面エネルギーE1及びそれぞれの他の硬化表面エネルギーの合計は、Jacobsエネルギー(EJ)の1.2倍以上、好ましくはJacobsエネルギー(EJ)の1.5倍である。上記の通り、ボクセルは、正方形ピクセル及び層の厚さによって形成される体積要素である。
【0080】
陰領域を補正するために、ピクセルのそれぞれの投射されたセットは、ピクセルサイズ(又はピッチ)より小さい距離で、以前に投射されたものからシフトされる。換言すると、それは、ピクセルの投射されたセットの少なくとも1つのピクセルが、ピクセルの他の投射されたセットの2つのピクセルと少なくとも部分的に重なるように、ピクセルの投射されたセットの相対的な位置がピクセルの他の投射されたセットに対して画定されることを意味する。このような重なりは、ピクセルの限定数の投射されたセットによる重合を平滑にすることを可能にする。有利には、特にピクセルが感覚的に正方形であるか、又は菱形形状を有するか、又は間隔的に長方形である場合、ピクセルの少なくとも3つの投射されたセットがあり、及び各ピクセルは、少なくとも2つの方向に沿って陰領域を有し、したがってx軸及びy軸を形成する。ピクセルの3つのセットは、ピクセルの少なくとも1つの投射されたセットが、それがピクセルの他の投射されたセットの少なくとも1つに対してx及びy軸の両方に沿ってシフトされるようなものである。
【0081】
第1の実施形態によると、硬化性材料の全表面を被覆するためのピクセルの投射されたセットの数nが決定される。数nは、nがシフトに対応することに加えて、ピクセルのn回投射されたセットに従ってnの硬化表面エネルギーによって照射された初期層における物質状態又は変換率の変動を最小化するために、且つ可能な場合には(硬化性材料に課せられる硬化速度に対応する)重合の動力学の変動をさらに最小化するために最適化される。換言すると、ピクセルのn投射されたセット(したがってnの関連する投射されたイメージ)のなかでのピクセルのそれぞれの投射されたセットの相対的な位置は、全ての硬化ステップが達成されたときの、種々の陰領域を含む初期層35aの各ボクセル間で受け取られる全硬化表面エネルギーの変動を最小化するように決定される。実際には、数nは、(重合に関する)均一性の標的解像度次第である。
【0082】
このような第1の実施形態において、数nは、3以上の整数である。換言すると、それは、初期層35aを重合させるために、ピクセルの少なくとも3つの投射されたセット(したがって少なくとも3つの硬化表面エネルギーの組合せ)が必要であることを意味する。
【0083】
実際には、ピクセルの投射されたセットの全ての相対的な位置の配列は、硬化性材料の全表面の被覆を可能にするサイクルを画定することができる。一例として、サイクルは、正方形、又は菱形形、又は三角形形であり得る。
【0084】
図3~5中に表される例において、数nは、3と等しく、これは、ピクセルの3つの投射されたセット(したがって3つの対応する投射されたイメージ)が、支持体15の上部で利用可能な硬化性材料の表面55を均一に重合させるために必要であることを意味する。
【0085】
図4は、ピクセルの投射された初期のセットに重なるピクセルの第2のセットの投射の重層を表す。ピクセルの第2のセットの投射は、ピクセルの第1の投射されたセットから、x軸に沿って約半分のピクセルピッチ及びy軸に沿って半分のピクセルピッチでシフトされる。実際には、ピクセルの2つのセット間でこのシフトを得るために、支持体15を移動することが可能である。代わりに、光学システム4のセッティングでシフトを導入することができる。
【0086】
図4中に見られるように、硬化性材料の表面の主要部分は、中間状態領域30bを有する状態で目に見えるように重合する(第1及び第2の硬化表面エネルギーの合計は初期層のいくつかのボクセルに関する第1の所定エネルギー閾値T
1より低い)。しかしながら、いくつかの未重合の領域32bが依然として存在する(境界に位置する未重合の領域は、以下で考慮される)。
【0087】
図5は、ピクセルの第2のセットより上のピクセルの第3セットの重層を表す。ピクセルの第3セットの投射は、未重合の領域32bを被覆するために、ピクセルの第1のセットに対してx軸に沿って約3分の1のピクセルピッチ及びy軸に沿って3分の1のピクセルピッチでピクセルの第1及び第2のセットからシフトする。この図中、初期層35aの全中心領域は、少なくとも1回照射されていた。実際には、ピクセルの第1、第2及び第3セットの3つの投射を横切る位置にあるいくつかの領域は、受け取った全エネルギーが第1の所定エネルギー閾値T
1より高いため、実際に重合する。しかしながら、以前の未重合の領域32bのいくつかは、受け取った全硬化エネルギーが第1の所定エネルギー閾値T
1より厳密に低い状態で1又は2回のみの照射を受け取った。したがって、以前の未重合の領域32bは、ピクセルの第3セットの投射後、なお中間状態である。実際には、これらの領域は、初期層35aに重なる1つ以上の層の形成を伴ってより重合する。しかしながら、ピクセルの1セットのみを使用して、JacobsエネルギーE
Jが1回で提供されるプロセスと比較して、本実施形態による中心領域35aは、変換率及び重合の動力学の改善された均一性を示す。この第1の実施形態において、他の層は、初期層35aと同一の様式で形成される。
【0088】
この第1の実施形態の別の例証となる例を開発するために、ピクセルゾーン500を9つの領域に再分割し、且つ関連するインターピクセルゾーンを7つの領域に分割する。この分割は、
図13中に表され、したがって16の異なる領域Z
1、Z
2、Z
3、Z
4、Z
5、Z
6、Z
7、Z
8、Z
9、Z
10、Z
11、Z
12、Z
13、Z
14、Z
15、Z
16が画定される。上記のピクセルの投射されたセットは、同時に9つの領域を被覆する(
図13においてハッチング領域で示される)。
【0089】
第1の実施形態のこの変形形態において、数nは、4と等しい整数である。換言すると、それは、初期層を重合させるためには、ピクセルの4つの投射されたセット(したがって4つの硬化表面エネルギーの組合せ)が必要であることを意味する。
【0090】
ピクセルゾーン500に関してのみ、ピクセルのこれらの4つのセットの連続照射、
図14~17が考慮される。
図14~17は、連続的に照射される16領域、Z
1、Z
2、Z
3、Z
4、Z
5、Z
6、Z
7、Z
8、Z
9、Z
10、Z
11、Z
12、Z
13、Z
14、Z
15、Z
16間の領域を示す。ここでは(たとえいくつかの他のピクセルゾーンがこれらの図中で表されるとしても)、1つのピクセルゾーン500の16領域Z
1、Z
2、Z
3、Z
4、Z
5、Z
6、Z
7、Z
8、Z
9、Z
10、Z
11、Z
12、Z
13、Z
14、Z
15、Z
16に焦点が合わせられる。
【0091】
図14は、ピクセルの第1のセットの投射のなかで照射される9つの領域を示す。この図中に見ることができるように、ハッチング領域Z
1、Z
2、Z
3、Z
4、Z
5、Z
6、Z
7、Z
8、Z
9のみが直接照射される。
【0092】
ピクセルの第2のセットの投射は、ここではx方向でスライドさせてシフトさせる。
図15は、ピクセルゾーン500の状態を示す。ピクセルの第2のセットの投射は、ピクセルの第1のセットの投射と重なるため、いくつかの領域、ここではZ
3、Z
6、Z
9は、2回照射される。いくつかの領域Z2、Z
5、Z
8、Z
10、Z
11、Z
12は1回のみ直接照射され、いくつかの他の領域Z
13、Z
14、Z
15、Z
16は、最初の2回の照射の1つを受けない。
【0093】
ピクセルの第3セットの投射は、ここでは
図15からy方向でスライドさせてシフトさせる。
図16は、ピクセルゾーン500の状態を示す。ピクセルの第3セットの投射は、ピクセルの第1及び第2のセットの投射と重なるため、1領域Z
9は、3回直接照射される。いくつかの領域Z
3、Z
6、Z
9、Z
12は、この投射後、2回の照射を受けた。いくつかの他の領域Z
1、Z
2、Z
4、Z
5、Z
7、Z
8、Z
10、Z
11、Z
15、Z
16は、1回のみの照射を受け取った。2領域Z
13、Z
14は、依然として3回の照射の1つを直接受けない。
【0094】
ピクセルの第4セットの投射は、ここでは
図16からx方向でスライドさせてシフトさせる。
図17は、ピクセルゾーン500の状態を示す。ピクセルの第4セットの投射は、ピクセルの第1、第2及び第3セットの投射と重なるため、1領域Z
9は、4回直接照射される。いくつかの領域Z
3、Z
6、Z
7、Z
8、Z
12、Z
15は、この投射後、2回の照射を受けた。他の領域は、1回のみの照射を受けた。
【0095】
しかしながら、ピクセルの第2、第3及び第4セットの投射が近隣のピクセルゾーン、特に前記近隣のピクセルゾーンの特定の領域と重なることに留意されたい。したがって、材料のバルク内のピクセルゾーン500を考慮して、それは、ピクセルの対応するセットがピクセルゾーン500と重なり得る他の近隣のピクセルゾーン500によって包囲される。
【0096】
したがって、バルク中のピクセルゾーン500の各ピクセル領域によって受け取られる正確な照射率を理解するために、ピクセルゾーン500に対応する投射に由来する照射は考慮されるべきであるが、近隣のピクセルゾーンに対応する投射に由来する照射も考慮されるべきである。
【0097】
したがって、本例において、層内のピクセルの4つの上記の投射されたセットを使用して、領域Z1、Z3、Z7、Z9、すなわちピクセルゾーン500に対応する表面の25%は、ここでは第1の所定エネルギー閾値T1より十分に多いエネルギーである、4つの照射に対応するエネルギーを受け取った。さらに、領域Z2、Z4、Z6、Z8、Z10、Z12、Z13、Z15、すなわちピクセルゾーン500に対応する表面の50%は、ここでは第1の閾値T1よりも低く、且つ臨界JacobsエネルギーECよりも低くさえある、2回のみの照射を受け取った。最終的に、領域Z5、Z11、Z14、Z16、すなわちピクセルゾーン500に対応する表面の25%は、1回のみの照射を受け取った。さらにこの場合、所与の値の照射を受け取ったピクセルゾーン500の領域の各群は、最も均一な可能な様式で離れて拡散される。
【0098】
したがって、第1の実施形態は、4回の照射の合計がJacobsエネルギーより高いが、硬化エネルギーによる2回の照射の合計が一般にJacobsエネルギーより低く、多くの場合に臨界JacobsエネルギーECより低いため、その表面の約75%に関して、第2の実施形態(以下に記す)の条件を考慮に入れ得る。したがって、そのような場合又は照射間のシフトの異なる数若しくは配列による類似の場合、第2の実施形態の境界例として含まれ得る。
【0099】
さらに、第1の層と比較してより多く又はより少なく照射されるピクセルゾーン500の領域の部分を逆にするようにわずかにシフトされて、同様にピクセルの4つの投射されたセットで第2の層が第1の層上で形成される場合、2つの層を通過した後、ピクセルゾーン500の全ての領域は、ほぼ同一量のエネルギー:すなわち4回又は5回の照射を受け取らなければならい。この教示は、必要な変更を加えて、照射間のシフトの数又は配列が異なる類似の場合に適用され得る。
【0100】
均一重合に関する第2の実施形態は、
図6及び7中に表される。第2の実施形態は、例えば、硬化性材料のいくつかの層を通して実行される。
【0101】
第2の実施形態を説明する前に、
図10において、種々の層によって形成された光学素子の深さDを通して硬化性材料を照射する硬化表面エネルギーの伝達を観察することができる。
【0102】
光学素子は、ここで、初期層がLn-6であり、最後の層がLnである、種々の層Ln-6、Ln-5、Ln-4、Ln-3、Ln-2、Ln-1及びLnの重層によって形成される。
【0103】
曲線F
1は、この層上に別の層を置く前に完全にそれを硬化するために、臨界JacobsエネルギーE
Cより高い硬化表面エネルギーが各層上で適用される通常の従来技術に対応する。したがって、以前に説明されたように、対応する層は、直接硬化される。層を通しての硬化表面エネルギーの伝達は、非効率的であり、種々の層間が不連続であることが見られる(これらの不連続は、
図12にも示される)。
【0104】
図10中、曲線F
2は、本発明、特に少なくとも1つのさらなる層の照射後に臨界JacobsエネルギーE
Cに到達し、且つ少なくとも2つのさらなる層の後にJacobsエネルギーに到達する場合を指す(図中に示されるように、層L
n-1の底部は、臨界JacobsエネルギーE
Cより少ないエネルギーを有するため、層L
n-1が完全に固体にならないことを意味する)。この場合、その上に別の層が配置される前に各層上に適用される硬化表面エネルギーは、臨界JacobsエネルギーE
Cより低い。上記の通り、この照射下において、層は、液体状態及び固体状態間の中間状態である。固体状態に到達するまで、連続照射において層の硬化が生じる。種々の層がこの中間状態であるため、層間の不連続は、曲線F
1で観察されるものより重要でない1(この効果は、
図11中に現れる)。
【0105】
(上記の第1のものとしての)第2の実施形態により、硬化性材料50の表面上で第1の硬化表面エネルギーE1を適用するための初期イメージパターン及びピクセルの関連する初期セットが決定される。第1の硬化表面エネルギーE1は、第1の所定エネルギー閾値T1(ここでは臨界JacobsエネルギーEC)より厳密に低く、第2の所定エネルギー閾値T2(ここでは誘導表面エネルギーEI)より高い。
【0106】
ピクセルのこの初期セットは、支持体15上の硬化性材料の表面上に投射される。初期層35cが形成される。しかしながら、第1の硬化表面エネルギーE1が臨界JacobsエネルギーECより厳密に低いため、照射される硬化性材料は、中間状態である。この中間状態は、初期層35cが少なくとも部分的に重合することを意味する。
【0107】
第1の所定エネルギー閾値T1が層の所与の厚さに関するJacobsエネルギーEJでもあり得ることが想起される。さらに、本発明の場合、特にこの第2の実施形態において、それぞれの個々の照射に関して、第1の所定エネルギー閾値T1より低いが、2回以上の照射において第1の所定エネルギー閾値T1に到達するために、第1の硬化表面エネルギーE1は、最も一般に第1の所定エネルギー閾値T1の2/3又はさらに第1の所定エネルギー閾値T1の半分以下であることに留意されたい。光深さ侵入値DPが2つの層の厚さより大きい場合、JacobsエネルギーEJの2/3は、臨界JacobsエネルギーECより低い。したがって、第1の所定エネルギー閾値T1がJacobsエネルギーEJである場合、ほとんどの実際的な場合において、第1の硬化表面エネルギーE1は臨界JacobsエネルギーECよりも実際に低い。換言すると、層の所与の厚さに関して、第1の硬化表面エネルギーE1、第2の硬化表面エネルギーE2並びに第1及び第2の硬化表面エネルギー間で受け取られる可能な中間硬化表面エネルギーの合計が、専用の第1の所定エネルギー閾値T1以上であり、優先的にはJacobsエネルギーEJ以上であるのに対して、第1の硬化表面エネルギーE1が第1の所定エネルギー閾値T1より低い(優先的には臨界JacobsエネルギーEC以下である)ように本発明を記載することが可能である。
【0108】
換言すると、この第2の実施形態において、層に直接適用される第1の硬化表面エネルギーE1は、第1の所定エネルギー閾値T1より低く、直接的及び間接的に(すなわち直接又は他の層を通して)層に適用される全硬化表面エネルギーは、第1の所定エネルギー閾値T1以上である。
【0109】
この所定エネルギー閾値T1は、臨界JacobsエネルギーECと等しくなり得る。しかしながら、ECの値は、経験的に到達されて、測定誤差の傾向があり、これは、JacobsエネルギーEJを考慮することが好まれる理由であり;及び少なくとも2つのさらなる層の照射後にJacobsエネルギーが到達される製造プロセスを使用することが好まれる。実際に、そのような場合、材料次第で、算出されたJacobsエネルギーの3分の1と半分との間に含まれる硬化表面エネルギーが使用され得、したがって、有効硬化表面エネルギーは、いずれの測定誤差にもかかわらず、臨界Jacobsエネルギーより確実に小さい。
【0110】
図6は、初期層35cの側面図の例を示す。初期層35cは、交互の中間状態領域30c(直接照射され、重合が生じるもの、以下で明領域と記載される)と、未重合領域32c(直接照射されず、簡略化された例に関して非重合であると考えられるもの)とを含む。未重合の領域32cは、上記の陰領域に対応し、ミクロミラー8間で隙間から誘導される。
【0111】
第2の実施形態によると、陰領域32cは、各層の陰領域32cが重ならないような様式での初期層35c上での1つ又は複数の他の層の形成中に補正される。
【0112】
それぞれの他の層は、対応する硬化表面エネルギーによる少なくとも1回の照射に基づいて製造される。実際には、種々の層上の硬化性材料の表面の照射の数Hは、それぞれの対応する硬化表面エネルギーの一部が第1の初期層の少なくとも一部によって受け取られるように、及びH回照射は、第1の初期の層の前記部分が第1の所定エネルギー閾値T1(ここではJacobsエネルギーEJ)に対応する硬化表面エネルギーを受け取るために十分であり且つ必要であるように決定される。換言すると、数Hは、JacobsエネルギーEJを受け取るために、複数の重ねられた層の形成中に第1の初期層によって受け取られる照射の数に対応する。換言すると、数Hの決定した値を考慮に入れるために、H-1照射(それぞれ他の層を通して又は直接受け取られているエネルギー)中、考慮された層によって受け取られるエネルギーの合計は、固体所定エネルギー閾値より低くTSであり、H照射(直接又は他の層を通して)中、考慮された層によって受け取られるエネルギーの合計は、固体所定エネルギー閾値TS以上である。換言すると、数Hの決定された値を考慮するために、光深さ侵入値DPを法として、第1の硬化表面エネルギーE1のH-1倍が第1の所定エネルギー閾値T1より低くなるように、且つ第1の硬化表面エネルギーE1のH倍が第1の所定エネルギー閾値T1以上となるように第1の硬化表面エネルギー(E1)が選択されなければならない。
【0113】
この実施形態において、各層に対して単一照射が生じるため、数Hは、照射の全数に対応する。したがって、層に関して対応する硬化表面エネルギーによって層が照射されたら、エネルギーの一部は、この層の硬化性材料の重合を開始するためにこの層内で使用され、及びエネルギーの一部は、硬化表面エネルギーによって重なった、すでに存在する層に伝達される。それらの層内において、エネルギーの一部は、硬化性材料の重合を進めるために最も近い層内で使用され、及び残りの部分は、硬化性材料内にさらに伝達される。
【0114】
変形形態において、第1及び第2の実施形態間の混合型である別の状況が考慮され得る。この変形形態において、方法は、層を照射するHステップを含み、それらのステップの一部又は全部は、同一層を2回以上直接照射するサブステップを含む(いくつかの層は、2回以上の直接照射を受け取る)。
【0115】
第2の実施形態において、1つの層によって直接受け取られる、それぞれの対応する硬化表面エネルギーは、第2の所定エネルギー閾値T2より高い。Hのそれぞれの硬化表面エネルギーの値は、Hの硬化表面エネルギーによって重なったボクセルの部分において、それぞれのボクセル受け取る第1の硬化表面エネルギーE1及び対応する硬化表面エネルギーの合計は、(初期層の厚さ全体を重合させるために)固体所定エネルギー閾値TS以上であるように選択される。
【0116】
本発明の実施形態によると、数Hは、3以上の整数であり、使用されるプロセスの動力学を定義する。受け取られるそれぞれの対応する硬化表面エネルギーは、硬化性材料内の硬化性表面エネルギーの深さ侵入値DP次第であり、したがって硬化性材料の光吸収が考慮される。換言すると、それぞれの対応する表面エネルギーは、必要に応じて、特定の1ボクセルを重合させるために、いくつかの層を貫通するために十分である必要がある。
【0117】
本発明の実施形態によると、層の数H及び層の厚さは、層の厚さによる層の数Hの積が、硬化性材料内の硬化性表面エネルギーの光深さ侵入値DP以下であるように決定される。実際には、所与の層における陰領域を補正するために、この所与の層の硬化性表面エネルギーの輪郭を形成するピクセルの投射されたセットは、所与の層の直接上又は下の層の硬化性表面エネルギーの輪郭を形成するピクセルの投射されたセットに対してシフトされる。したがって、一実施形態において、光深さ侵入値DPは、ピクセルの投射されたセットのピクセル間での硬化性材料状態の局所的変動を制限するために十分に高く、したがって層の厚さによる層の数の上記積より大きくなり得る。
【0118】
第2の実施形態によると、実用的な様式において、第1の硬化性表面エネルギーE1によって照射されて、初期層35cが形成された後、新しい層を形成するためにその上に未硬化の硬化性材料の一部分が添加される。未硬化の硬化性材料のこの一部分は、初期層35cとエネルギー源との間で配置される。実際には、硬化性材料は、例えば、リコーター12によって添加される。代替として、膜の補助の有無にかかわらず、初期層35c上に(未硬化の硬化性材料に対応する)いくつかの液体硬化性材料を添加するために、初期層35cを硬化性材料中に浸漬するために、(初期層35cを有する)支持体15をシフト手段20によって垂直に移動することができる。
【0119】
ピクセルの別の投射されたセットによってこの液体硬化性材料(又は未硬化の硬化性材料)を照射する前に、陰領域32cを被覆するためにピクセルの他のセットが投射されるような様式で製造システム1が調整される。実際には、支持体15は、硬化性材料の表面に対して感覚的に平行な軸に沿ってシフトされることが可能である。操作がより単純な選択肢として、ピクセルの他が投射したセットがシフトされ、陰領域32c上に投射されるような様式で光学システム4を調整することができる。
【0120】
図7中に表されるように、他の層37cを照射する、上記の明領域に対応する硬化性表面エネルギーのピクセルの少なくとも一部が少なくとも1つの未重合の領域32cに重なるように、別の層37cが初期層35c上に形成される。このステップを繰り返すことにより、種々の層を通しての対応する硬化表面エネルギーの伝達により、H回の照射によって重なった初期層35cの一部は、第1及び他の硬化表面エネルギーの合計が固体所定エネルギー閾値T
S以上であるため、固体として考慮される状態で重合する。未重合という用語は、上記の通り、説明を単純化するように例が提示されるという事実のため、領域32cに関して使用されることが想起される。実際には、明領域30cよりは重合しないとしても、未重合の領域32cがわずかに重合することが可能である。
【0121】
本方法の利点は、陰領域の管理の有無にかかわらず、物質の中間状態でありながら生じる層間での圧壊プロセスにより、層の材料が互いに相互浸透する(それによって欠陥が減少する)ような様式で、重ねられた層の硬化性材料がそれ自体を組織することが可能であることである。そのために、光線量分布は、高度に制御される必要がある。特に、隣接したボクセル間の物質状態の変動がより低いほど、欠陥は、より十分に減少する。
図11及び12は、理論に束縛されることなく、本発明の場合及び本発明者らによって理解される従来技術の場合の硬化性材料の配列の簡略化された例証をそれぞれ示す。
図12(従来技術を表す)に見られるように、いくつかの層L
n-1、L
n-2、L
n-3、L
n-4は、固体状態Sである。しかしながら、それぞれの層が臨界JacobsエネルギーE
Cより高い硬化表面エネルギーによって照射されたため、それぞれの層は、他から独立して固体状態になり、及び特にさらなる層が形成される前にそれぞれの層が固体状態Sである。したがって、特に層間の界面で不連続材料特性が観察される。本発明に関する
図11で示すように、層L
n-3、L
n-4は、固体状態Sであり、層L
n-1、L
n-2は、中間状態Inであり、及び層nは、依然として液体状態Lである。重ねられた層がそれら自体を組織することができ、連続的材料特性が観察されるような様式で硬化性材料が照射される。
【0122】
したがって、本発明のこの実施形態を使用することにより、材料の層の重層の使用に関連する光学欠陥に関して光学品質が増加する。実際に、複数の層の積み重ねを有する光学デバイスの形成は、層のコアと2つの層間の界面との間での光学特性の変動によって形成されるパターンの繰り返しを誘導することに留意されたい。光学特性のそのような交互繰り返しは、光学特性のわずかな変動が生じた場合でも回折欠陥(以下では積み重ね欠陥)の形成を誘導する。これらの積み重ね欠陥は、光学デバイスが光学軸に対して感覚的に平行に配置された層を有するように構築される場合、さらに顕著である。
【0123】
したがって、本発明を使用することにより、1つの層から他の層への移行は、より均一となり、それらの積み重ね欠陥は、最小化又はさらに回避される。
【0124】
さらに、追加的に上記の陰領域の管理とともに使用することにより、光学品質は、ピクセル化されたエネルギー源又は光学システム4を使用することに関連する光学欠陥に関してさらに改善される。
【0125】
硬化性材料が、7mJの臨界JacobsエネルギーEC及び200の光深さ侵入値DPの実験的に決定された値を有するメタクリレートモノマーをベースとする例証例Aを考慮する。厚さ10μmの層を構築するために、したがって、第1の閾値(ここではJacobsエネルギーEJと等しい)は、T1=7.56mJ(=EJ)である。第2の閾値は、約T2=0.12mJである。
【0126】
第1の硬化表面エネルギーは、約2つの層のさらなる層の照射後に第1の閾値の到達を導く、以下の関係T2<E1=3.2mJ<T1を確認するように選択される。
【0127】
図13中に上記されるピクセルゾーンの分割を考慮すると、例Aは、ピクセルの種々のセットの投射をシフトさせない場合に対応する。
【0128】
図18は、本例Aの場合の連続照射の関数としての変換率C
Vの展開を示す。この図中で2本の曲線が識別される。
【0129】
曲線C
1は、水平であり、0に近い変換率に対応する。この曲線C
1は、照射を受けないピクセルゾーンの領域に対応する。ピクセルの投射されたセットが
図14中に表されるものであることを考えれば、したがって、曲線C
1は、直接照射されない領域Z
10、Z
11、Z
12、Z
13、Z
14、Z
15、Z
16の変換率の展開を示す。ピクセルのセットの投射が照射のコースにシフトされないため、これらの領域Z
10、Z
11、Z
12、Z
13、Z
14、Z
15、Z
16は、依然として直接照射されていない。したがって、これらの領域は、上記の未重合の領域32cに対応する。
【0130】
曲線C
2に関する
図18中に見られるように、ピクセルゾーンのいくつかの他の領域に関して、変換率C
Vは、照射の過程で増加する。ピクセルの投射されたセットが
図14中に表されるものであることを考えれば、したがって、曲線C
1は、直接照射される領域Z
1、Z
2、Z
3、Z
4、Z
5、Z
6、Z
7、Z
8、Z
9の変換率の展開を示す。これらの領域は、数回照射されるため、変換率C
Vは、100%の最大変換率に到達するまで増加する。対応する領域Z
1、Z
2、Z
3、Z
4、Z
5、Z
6、Z
7、Z
8、Z
9は、したがって、完全に硬化される(及び上記明領域30cに対応する)。
【0131】
図18中に見られるように、変換率に関して2つの種類の領域間に大きい相違があり、したがって欠陥の形成が導かれる。
【0132】
実際には、未重合の領域32cが、最終的に、完全重合されたものに近くなり得るように、この例Aは、実際に生じるものの単純化された形態であることが想起される。しかしながら、このモデルは、それらの重合がモード、動力学及び速度において、領域30cから実際に異なることを示す。
【0133】
7mJの臨界JacobsエネルギーEC及び200の光深さ侵入値DPの値を有するメタクリレートモノマーをベースとする硬化性材料を使用して、以下で例Bと呼ばれる別の例証例を考慮する。厚さ10μmの層を構築するために、したがって、第1の閾値(ここではJacobsエネルギーEJと等しい)は、T1=7.56mJ(=EJ)である。第2の閾値は、約T2=0.12mJである。
【0134】
第1の硬化表面エネルギーは、第1の閾値H=3に到達するための照射の全数に関して、約2つの層のさらなる層の照射後に第1の閾値の到達を導く、以下の関係T2<E1=2.33mJ<T1を確認するように選択される。
【0135】
それぞれの層の投射されたイメージの特徴に関して、パラメーターは、以下の通りである。
- ピクセルサイズ=30×30um
- 陰領域サイズ=10×30um
【0136】
図13中に上記されるピクセルゾーンの分割を考慮すると、例Bは、ピクセルの種々のセットの投射が他のものからシフトされる場合に対応する。ここで、投射は、
図14~17中に提示されるスキームに従ってシフトされる(第1のものは、x方向に沿って、第2のものは、-y方向に沿って、及び第3のものは、-x方向に沿って)。ここで、実際には、例Bは、第2の実施形態を示す。したがって、ピクセルのセットの投射のそれぞれのシフトは、新しい層に関連付けられる。
【0137】
図19は、この例Bの場合の連続照射の関数としての変換率C
Vの展開を示す。この図中で9本の曲線が識別される。
【0138】
それぞれの曲線は、ピクセルゾーン500の少なくとも1つの領域に対応する。
【0139】
この図中に見られるように、曲線C11に関連する変換率は、円滑に展開する。それは、対応する領域がピクセルの種々のセットの全ての投射によって直接照射されることを意味する。上記されたピクセルゾーン500の分割を考慮すると、曲線C11は、領域Z1、Z3、Z7、Z9に対応する。これらの領域は、常に照射されるため、変換率CVは、100%の最大変換率に到達するまで徐々に増加する。
【0140】
曲線C3に関連する変換率は、段階ごとに増加する。第1の照射中、対応する領域は、直接照射されない。したがって、変換率は、0付近のままである。ピクセルのセットの投射がシフトされるため、この領域は、例えば、4回目の照射で照射される。したがって、この領域は、ピクセルのセットの投射のサイクル中、1回のみ照射される。しかしながら、それぞれの照射は、すでに構築されたものの上の新しい層の形成に関連付けられるため、実際に領域に到達する硬化表面エネルギーは、他の領域が直接受け取るものよりも低い(一部は上部にある層によって吸収されるため)。したがって、変換率が低い。
【0141】
曲線C4、C5、C7、C8、C9で観察される展開は、形態に関して、曲線C3に関して記載されるものと類似である(したがって同じ論拠を使用して誘導されることが可能である)。
【0142】
曲線C3、C4、C5は、投射のサイクル中、かつて直接照射された領域Z5、Z11、Z14、Z16に対応する。
【0143】
しかしながら、それらは、投射のサイクル中に2回照射される領域Z2、Z4、Z6、Z8、Z10、Z12、Z13、Z15に対応するため、変換率は、曲線C7、C8、C9によって表される領域に関してより高い。例Bを例Aと比較すると、陰領域を管理することを目的とするプロセスを使用する場合、変換率の均一性及び重合動力学又は速度の均一性が改善されることが示されることに留意されたい。実際に、例Bにおける変換率変動は、例Aよりも非常に少ない。例Bによって製造されるレンズは、例Aによって製造されるレンズよりも、形成ユニット3のピクセルに関連付けられる回析欠陥の強度が低い。両方の場合において、第2の実施形態によるものであり、積み重なり回折欠陥を減少又は排除することができる。
【0144】
図2に示され、且つ上記される製造システム2は、付加製造技術を使用して光学素子を製造する方法を実行するために適切である。本明細書中に提示される方法の例は、レイヤーバイレイヤーの製造ケースで記載される。したがって、光学素子は、種々の重合層の重層から形成される。代わりに、本方法は、(層の重層と異なる)他の付加製造技術によって光学素子を製造するためにも適切であり得る。
【0145】
本方法は、鎖成長重合(付加重合とも呼ばれる)又はステップ成長重合(縮合重合とも呼ばれる)と互換性を有する。
【0146】
本方法の開始前に、且つ製造される光学素子を考慮すると、コンピュータ素子6が光学素子のそれぞれのボクセルに関してそれがいずれのエネルギーを受けるか、及びこのボクセルに関して物質の状態、及び/又は重合率、及び/又は重合の動力学がどのようなものであるかを決定する。換言すると、コンピュータ素子6は、期待される硬化性物質の状態に達するために必要な照射ステップの数、又は変換率、又は所望の重合の動力学及び各ステップにおいてどの程度の量のエネルギーが提供されるかを決定する。
【0147】
これらのパラメーターに基づいて、コンピュータ素子6は、ここで、光学素子100を製造するために形成される必要のある層の数、硬化性材料が固体になるために各層の各ボクセルが受け取らなければならない照射の数、所与の層の硬化性材料が固体になるために使用される種々の層の照射の数H及び関連する硬化表面エネルギーを誘導する。全てのこれらのパラメーターは、層の積み重ねの軸に沿って且つ可能な場合には各層内で均一に重合する光学素子を製造するために決定される。
【0148】
特に、コンピュータ素子6は、ピクセルのセットのそれぞれのピクセルの投射間で形成可能である陰領域を考慮し得る。したがって、コンピュータ素子6は、硬化性材料の表面上に投射するピクセルのセットの数n(したがって投射されたイメージの数nに対応する)も誘導する。
【0149】
他からのピクセルのセットのそれぞれの投射の相対的な位置も決定される。一例として、ピクセルの投射されたセットの数nは、それぞれのボクセルのそれぞれの照射の数Hより高く、これは、ピクセルのnセットが投射される場合、それぞれのボクセルの特定の割合が、第1の所定エネルギー閾値T1より多く照射されることを意味する。一例として、この割合は、50%と等しく、これは、ボクセルの体積の半分が少なくとも第1の所定エネルギー閾値T1を受け取ることを意味する。数nが数Hより高い場合、それぞれのボクセルの一部は、ピクセルの第n番目のセットが投射される前に第1の所定エネルギー閾値T1を累積的に受け取り得る。本方法は、未硬化の硬化性材料50の初期の一部分を提供するステップによって開始する。実際には、それは、例えば、それを浸漬して、支持体15上に未硬化(又は液体)硬化性材料50の初期の一部分を有するために支持体15を移動させることを意味する。代替として、硬化性材料の初期の一部分は、リコーター12によって提供することができる。一実施形態において、硬化性材料50の初期の一部分は、硬化性であるか、硬化されたか又は部分的に硬化された材料の別の体積上で提供される。
【0150】
次いで、本方法は、エネルギー源2のピクセルの第1のセットと関連する第1のイメージパターンを決定するステップを含む。ピクセルのこの第1のセットは、第1の硬化表面エネルギーE1の適用と関連する。この決定ステップ後、硬化性材料の表面上にピクセルの第1のセットを投射するステップが続く。したがって、ピクセルの第1のセットは、第1の輪郭を有する第1の投射されたイメージを画定する。
【0151】
したがって、これらの決定及び投射ステップは、光学素子の第1の部分を形成するステップを導く。
図3及び6に関して上記された通り、この段階において、第1の部分は、完全には重合しない(第1の部分は、中間状態である)。実際には、第1の部分の変換率は、第2の所定エネルギー閾値、光深さ侵入値及び製造速度次第で可能な限り低い。JacobsエネルギーE
Jに到達する前の層の高い数Hに対応する、より低い開始変換率は、層間の材料特性のより良好な連続性及び隣接部分のより良好な相互浸透を可能にする。
【0152】
均一に第1の部分(及び全部の光学素子)を重合させるために、本方法は、優先的には、上記の第2の実施形態に基づく。代替として、本方法は、硬化されるボクセルのサブパートの少なくとも70%、優先的には少なくとも80%、より優先的にはボクセルの全ての部分に関して、さらなる層の形成前に、層によって直接受け取られる表面エネルギーが第1の所定エネルギー閾値T1より低く、優先的には臨界JacobsエネルギーECより低い限り、第1の実施形態の教示が導入される、前記実施形態の変動に基づくことが可能である。代替として、それは、以前に導入された第1の実施形態に基づくことが可能である。
【0153】
別の代替として、本方法は、第1及び第2の両方の実施形態の組合せに基づき得る。この場合、光学素子は、層を形成するための照射と、それぞれの形成された層上での照射とを組み合わせることによって形成される。一例として、光学素子を形成するためのスキームは、以下の通りであり得る。第1の層を形成し、次いでこの第1の層を2回照射し(2回の投射間にシフトを用いる)、次いで第2の層を形成し、次いで第2の層(及び第2の層を通しての硬化性エネルギーの伝達による第1の層)を3回照射するための移動のサイクルに従う。そのような実施形態において、1層あたりの照射の数は、本発明のこの実施形態を裏切ることなく、1から約5又は6以上まで適応され得る。
【0154】
実際には、4回の照射がJacobsエネルギーEJに到達するのに十分でないことを考えれば、第1の層は、第1の実施形態に関して上記された通り、4回の照射を受け取り得、及び第2の層は、第1の層と比較してより多く又はより少なく照射されるピクセルの部分を逆転するようにわずかにシフトされて、同様にピクセルの4回の投射されたセットによって第1の層上に形成され得る。したがって、2つの層を貫通した後、ピクセルの全ての部分は、同一のエネルギー量、実際に5回の照射を受け取った。この教示は、必要な変更を加えて、照射間のシフトの数又は配列が異なる類似の場合に適用され得る。換言すると、本例は、ピクセルのn=8投射されたセットのサイクルを有することに対応する。これは、H=2つの層に広げられ、サイクルに沿ってピクセルのそれぞれの部分が照射の5回のサブステップによって照射されるように構成されていた。いくつかの変形形態において、JacobsエネルギーEJは、2つの層の形成によって到達される。いくつかの他の変形形態において、JacobsエネルギーEJは、H=4つ、6つ又はそれを超える層の照射後に到達される。
【0155】
特定の変形形態において、それぞれの層は、類似の量の硬化表面エネルギーによって硬化性材料の全表面を被覆するために(したがって、可能な限り均一に全初期層を重合させるために)、互いからわずかにシフトされて、ピクセルのn回投射されたセットによって直接n回の照射を受け取り得る。したがって、ピクセルのいくつかのセットは、硬化性材料の同一表面に連続して投射される必要がある。したがって、対応する硬化表面エネルギーは、この初期層上に(未硬化の)硬化性材料の新しい層を追加する前に、初期層上で連続的に直接適用される。しかしながら、上記の第1の実施形態とは反対に、且つ上記の第2の実施形態に従い、それぞれの層に適用されるn硬化表面エネルギーは、それらの合計が第2の所定エネルギー閾値T2より高く、及びそれらの合計が第1の所定エネルギー閾値T1より厳密に低いようなものである。n硬化表面エネルギーは、全初期層を中間状態まで重合させるために決定される。したがって、n硬化表面エネルギーは、第2の実施形態においてピクセルのいくつかの投射されたセットに導入されるように、第1の硬化表面エネルギーE1を分布させることによって決定される。初期層によって受け取られるこれらの硬化表面エネルギーの合計は、第1の所定エネルギー閾値T1より厳密に低い第1の硬化表面エネルギーE1と等しい。
【0156】
7mJの臨界JacobsエネルギーEC及び200の光深さ侵入値DPの値を有するメタクリレートモノマーをベースとする同じ硬化性材料を使用して、以下で例Bと呼ばれる別の例証例を考慮する。厚さ10μmの層を構築するために、したがって、第1の閾値(ここではJacobsエネルギーEJと等しい)はT1=7.56mJ(=EJ)である。第2の閾値は、約T2=0.12mJである。
【0157】
第1の硬化表面エネルギーE1は、第1の閾値H=3に到達するための照射の全数に関して、約2つのさらなる層の照射後に第1の閾値の到達を導く、以下の関係T2<E1=2.33mJ<T1を確認するように選択される。
【0158】
さらに、本実施形態において、ピクセルの4セットにおいて、それぞれの層は4回直接照射される。それぞれのセットは、連続してそれぞれの層に1回で直接適用される。ピクセルのセットのそれぞれの投射に関連する導き出された硬化表面エネルギー=E1/(1+3)=0.8mJ。
【0159】
投射されたイメージの特徴に関して、パラメーターは、以下の通りである。
- ピクセルサイズ=30×30um
- 陰領域サイズ=10×30um
【0160】
図13中に上記されるピクセルゾーンの分割を考慮すると、例Cは、第1及び第2の実施形態(ピクセルの4セットの投射が1つの層を通して他のものからシフトされ、且つ他の層の形成で繰り返される場合)の組合せに対応する。ここでは、1つの層のなかでで、投射は、
図14~17中に提示されるスキームに従ってシフトされる(第1のものは、x方向に沿って、第2のものは、-y方向に沿って、及び第3のものは、-x方向に沿って)。ここでは実際には、例Bは第2の実施形態を示す。
【0161】
図20は、本例Cの場合の連続照射の関数としての変換率C
Vの展開を示す。この図中で3本の曲線が識別される。
【0162】
それぞれの曲線は、ピクセルゾーン500の少なくとも1つの領域に対応する。
【0163】
この図中に見られるように、本例Cによれば、ピクセル500のそれぞれの領域が少なくとも1回直接照射されるため、変換率は円滑に展開する(ここでは第1及び第2の実施形態が組み合わせられる)。しかしながら、変換率の大きさは、ピクセルゾーン500のそれぞれの領域によって受け取られる照射の数によって種々である。
【0164】
曲線C20は、最も低い変換率を有し、1層あたり1回のみ直接照射される領域、ここでは領域Z5、Z11、Z14、Z16に対応する。曲線C21は、中間の変換率を有し、1層あたり2回、直接照射される領域、ここではZ2、Z4、Z6、Z8、Z10、Z12、Z13、Z15に対応する。曲線C22は、最も高い変換率を有し、1層あたり4回照射される領域、ここではZ1、Z3、Z7、Z9に対応する。
【0165】
第2の実施形態のこの変形形態は、例Bと比較して、興味深い解決案でもあることを示す。しかしながら、第2の実施形態の他の変形形態では、それぞれの層が1回のみ直接照射されるのに対して、別の層へのスイッチ切り替え前に、それぞれの層が複数回、ここでは4回照射されなければならないため、プロセス期間及び計算に関して、それは、はるかに費用のかかるものである。
【0166】
実際には、本方法は、(それぞれの照射への)それぞれの対応する硬化表面エネルギーの一部が、種々の層を通しての伝達によって光学素子の形成された第1の層の少なくとも一部によって受け取られるように、第1の層を提供する第1のステップを含む、未硬化の硬化性材料を提供し、且つ硬化性材料の表面を照射するステップの数Hを含む。
【0167】
場合により、全てのH層を照射することによって第1の層に供給される硬化表面エネルギーの合計は、H番目の層を照射するときに第1の所定エネルギー閾値T1に達するようなものであり得る。代わりに、第1の所定エネルギーT1閾値が第1の層内で達するように、第2の層の第1の照射が第1の層への伝達によって十分なエネルギーを提供するように、第1の層の少なくとも1回の照射は、第1の所定エネルギーT1閾値にほとんど達する。H層を通しての第1の層へのエネルギーの追加的な伝達は、硬化性材料のさらなる硬化及び可能な場合には陰領域の硬化を可能にする。上記される2つの場合の間のいずれの変動も可能である。
【0168】
実際には、それぞれの照射ステップは、対応する硬化表面エネルギー及び関連する投射されたイメージを画定するピクセルのこのセットの投射を適用するための少なくとも1つのイメージパターン及びピクセルの関連するセットの決定と関連する。一実施形態において、照射のそれぞれのステップと関連する投射は、第1の部分の位置に関して、以前のものからシフトされる。換言すると、それは、ピクセルの投射されたセットの少なくとも1つのピクセルが、ピクセルの他の投射されたセットの2つのピクセルと少なくとも部分的に重なるように、ピクセルの投射されたセットの相対的な位置がピクセルの他の投射されたセットに対して画定されることを意味する。
【0169】
実際には、支持体15は、硬化性材料の表面に対して感覚的に平行である軸に沿って移動することができる。別の構成は、光学システム4のセッティング(例えば、位置及び/又は配向)を調整することである。
【0170】
この場合、照射の1つのステップは、例えば、中間硬化表面エネルギーによる、光学素子の形成された第1の部分を少なくとも部分的に照射することに対応する。この照射ステップは、中間硬化表面エネルギー及び関連する投射されたイメージを画定するピクセルのこのセットの投射を適用するためのイメージパターン及びピクセルの関連するセットの決定に関連する。第1の硬化表面エネルギーE1及び中間硬化表面エネルギーの合計は、第1の所定エネルギー閾値T1より厳密に低く、これは、この照射ステップ後、光学素子の第1の部分が依然として中間状態であることを意味する。
【0171】
加えて又は代替として、硬化性材料50の表面55に対して感覚的に直角である軸に沿って支持体15をシフトさせることができる。換言すると、支持体15上且つ特に形成された第1の部分の周囲に未硬化の硬化性材料の第2の一部分を提供するように、支持体15を垂直にシフトさせることができる。
【0172】
光学素子がレイヤーバイレイヤーで製造される場合、第2の一部分は、例えば、光学素子の第1の形成された部分上に提供される。
図8は、本発明に従って製造された眼用レンズ200の例を表す。光学素子が眼用レンズ200である場合、本発明の実施形態によれば、第1の部分及び第2の部分は、したがって、この眼用レンズ200の光学軸L
Lに対しておよそ直角の軸L
Sに沿って重ねられる(この光学軸L
Lは、例えば、単焦点レンズの場合、光がレンズを通過するときに光が外れない軸)。代替として、重なりの軸L
Sは、この光学軸L
Lに対して45度より高く傾けられる。
【0173】
したがって、本方法は、エネルギー源2のピクセルの第2のセットと関連する第2のイメージパターンを決定するステップを含む。ピクセルのこの第2のセットは、第2の硬化表面エネルギーE2の適用と関連する。この第2の硬化表面エネルギーE2は、第2の所定エネルギー閾値T2よりも高い。この決定ステップ後、硬化性材料の表面上へのピクセルの第2のセットを投射するステップが続く。したがって、ピクセルの第2のセットは、第2の投射されたイメージを定義する。
【0174】
したがって、これらの決定及び投射ステップは、光学素子の第2の部分を形成するステップを導く。
【0175】
第2の部分が光学素子の製造において形成される最後の部分である場合、第1の硬化表面エネルギーE1及び第2の硬化表面エネルギーE2の合計は、第1の所定エネルギー閾値T1以上であり、したがってJacobsの意味での固体であるような全光学素子の重合を可能にする(硬化性材料次第で、例えば70%又は60%又は80%より高い変換率に対応する)。
【0176】
第2の部分が光学素子の製造において形成される最後の部分ではない場合、他の部分を照射及び形成するさらなるステップは、この第2の形成後に繰り返される。例えば、第3の部分及び/又は第4の部分などの中間部分を形成するために、照射のいくつかの中間ステップが第1の部分及び第2の部分を形成する間に起こり得ることが想起される。第1の硬化表面エネルギーE1、照射の中間ステップに関連するそれぞれの硬化表面エネルギー及び第2の硬化表面エネルギーE2の合計は、第1の所定エネルギー閾値T1より高い。例えば、さらなるステップは、第2の部分及び可能な中間部分の重合を完了する効果を有し得るか、又は第1の所定のエネルギー閾値T1に達するためにまさに必要とされるエネルギーよりも多いエネルギーを第1の部分が受け取ることをさらに可能にし得、したがってまさに第1の所定エネルギー閾値T1(例えば、JacobsエネルギーEJ)を適用することによって到達される場合よりも高い変換率を可能にし得る。
【0177】
本方法は、光学素子と特にその端部を重合させるために、最終硬化表面エネルギーによって光学素子の形成された部分を照射する最終ステップをさらに含み得る。最終硬化表面エネルギーは、ここで、第1の所定エネルギー閾値T1以上である。ときに後硬化とも呼ばれるこの最終硬化は、UV及び/又は熱処理により、重合を完成させ、且つ/又は材料の内部応力を緩和することを目的とする。換言すると、照射の最終ステップにより、高い変換率、例えば70%より高い、より優先的には90%より高い変換率を直接得るために十分である硬化表面エネルギーを、依然として中間状態である任意の部分上に適用することを可能にする。次いで、光学素子が完全に形成される。
【0178】
最終的に、本方法は、光学素子が得られた後の1つ以上の後処理のステップを含む。これらの後処理ステップは、例えば、研磨などの除去機械加工又はコーティングなどの追加作業のステップである。これらの後処理ステップ後、光学素子は、直ちに使用可能である。
本開示に係る発明は、下記の態様を含む:
<態様1>
付加製造技術を使用して硬化性材料(50)から光学素子(100)を製造する方法であって、
- 未硬化の硬化性材料(50)の第1の一部分を提供するステップと、
- 前記第1の一部分の前記硬化性材料(50)の表面(55)を第1の硬化表面エネルギー(E
1
)で照射することにより、前記光学素子(100)の第1の部分を形成するステップであって、前記第1の硬化表面エネルギー(E
1
)は、第1の所定エネルギー閾値(T
1
)より厳密に低く、且つ第2の所定閾値(T
2
)より高く、前記第1の所定エネルギー閾値(T
1
)は、前記光学素子(100)の前記第1の部分の厚さ全体において前記光学素子(100)の前記第1の部分を固体にするために十分なエネルギーに対応する固体所定エネルギー閾値(T
S
)以下であり、前記第2の所定エネルギー閾値(T
2
)は、誘導表面エネルギー(E
I
)に等しい、ステップと、
- 前記第1の硬化表面エネルギー(E
1
)での前記第1の部分の前記照射後、前記第2の所定エネルギー閾値(T
2
)より高い少なくとも第2の硬化表面エネルギーで前記硬化性材料(50)の前記表面(55)を照射することにより、前記光学素子(100)の前記第1の部分と別個の前記光学素子(100)の少なくとも第2の部分を形成するステップと
を含み、前記第2の硬化表面エネルギーは、前記光学素子(100)の前記第2の部分及び前記光学素子(100)の前記第1の部分の少なくとも一部分の両方を照射し、前記光学素子(100)の前記第1の部分によって受け取られる前記第1の硬化表面エネルギー(E
1
)及び前記少なくとも第2の硬化表面エネルギーの一部分の合計は、前記光学素子(100)の前記第1の部分を固体にするために十分であり、及び前記光学素子(100)の前記第1の部分によって受け取られる前記第1の硬化表面エネルギー(E
1
)及び前記少なくとも第2の硬化表面エネルギーの前記一部分の前記合計は、好ましくは、前記固体所定エネルギー閾値(T
S
)以上である、方法。
<態様2>
未硬化の硬化性材料(50)の第1の一部分を提供する前記ステップ前に、少なくとも部分的に硬化される硬化性材料(50)の初期の一部分を提供するステップを含み、未硬化の硬化性材料(50)の前記第1の一部分は、前記初期の一部分と、前記第1の硬化表面エネルギー及び前記第2の硬化表面エネルギーで前記硬化性材料(50)の前記表面(55)を照射するために適切なエネルギー源(2)との間に配置される、態様1に記載の方法。
<態様3>
前記第1の所定エネルギー閾値(T
1
)は、{E
J
=E
C
*
exp(th/D
P
)}として定義されるJacobs方程式を使用することにより、前記光学素子の前記第1の部分について決定され、ここで、
- E
J
は、Jacobsエネルギーであり、前記固体所定エネルギー固体(T
S
)は、前記Jacobsエネルギーと等しく、
- thは、前記光学素子(100)の前記第1の部分の厚さであり、
- D
P
は、前記硬化性材料(50)内の前記第1の硬化表面エネルギーの光深さ侵入値であり、
- E
C
は、前記硬化性材料(50)について定義された臨界Jacobsエネルギーであり、及び
- 前記第1の所定エネルギー閾値(T
1
)は、前記臨界Jacobsエネルギー(E
C
)の関数である、態様1又は2に記載の方法。
<態様4>
前記第1の所定エネルギー閾値(T
1
)は、前記硬化性材料(50)について定義された前記臨界Jacobsエネルギー(E
C
)であり、前記第1の硬化表面エネルギー(E
1
)及び前記少なくとも第2の硬化表面エネルギーの合計は、前記Jacobsエネルギー(E
J
)以上であり、優先的には前記Jacobsエネルギー(E
J
)の1.2倍以上、好ましくは前記Jacobsエネルギー(E
J
)の1.5倍である、態様3に記載の方法。
<態様5>
硬化表面エネルギーの一部が照射の各ステップにおいて前記光学素子(100)の前記第1の部分の少なくとも一部によって受け取られるように、前記硬化性材料(50)の前記表面(55)を照射するある数(H)のステップを含み、各硬化表面エネルギーは、前記第2の所定閾値(T
2
)より高く、前記第1の部分によって受け取られる各硬化表面エネルギーの合計は、前記第1の所定エネルギー閾値(T
1
)以上であり、前記数(H)は、3以上の整数である、態様1~4のいずれか一項に記載の方法。
<態様6>
前記硬化性材料(50)の前記表面(55)を照射するステップは、中間硬化表面エネルギーで前記光学素子(100)の前記第1の部分を少なくとも部分的に照射するサブステップを含み、前記第1の硬化表面エネルギー及び前記中間硬化表面エネルギーの合計は、前記第1の所定エネルギー閾値(T
1
)より厳密に低い、態様5に記載の方法。
<態様7>
- エネルギー源(2)と、前記光学素子(100)の前記第1の部分との間に硬化性材料(50)の第2の一部分を提供するステップと、
- 硬化性材料(50)の前記第2の一部分で前記光学素子(100)の前記第2の部分を形成するステップと、
- 前記第2の硬化表面エネルギーの一部が前記光学素子(100)の前記第1の部分の少なくとも一部によって受け取られるように、少なくとも前記第2の硬化表面エネルギーで前記硬化性材料(50)の前記表面(55)を照射するステップと
を含む、態様1~6のいずれか一項に記載の方法。
<態様8>
前記光学素子(100)の前記第1の部分を形成する前記ステップは、
- 前記第1の硬化表面エネルギーを適用するために適切なエネルギー源(2)のピクセルの第1のセットと関連する第1のイメージパターンを決定するサブステップと、
- 前記硬化性材料(50)の前記表面(55)上に前記エネルギー源(2)のピクセルの前記第1のセットを投射するサブステップであって、ピクセルの前記第1のセットは、第1の投射されたイメージを画定する、サブステップと
を含み、前記光学素子(100)の前記第2の部分を形成する前記ステップは、
- 前記第2の硬化表面エネルギーを適用するために適切なエネルギー源(2)のピクセルの第2のセットと関連する第2のイメージパターンを決定するサブステップと、
- 前記硬化性材料(50)の前記表面(55)上に前記エネルギー源(2)のピクセルの前記第2のセットを投射するサブステップであって、ピクセルの前記第2のセットは、前記第2の投射されたイメージを画定する、サブステップと
を含み、ピクセルの前記第1のセットに対するピクセルの前記第2のセットの相対的な位置は、ピクセルの前記投射された第2のセットの少なくとも1つのピクセルが、ピクセルの前記投射された第1のセットの少なくとも2つのピクセルを部分的に覆うように画定される、態様1~7のいずれか一項に記載の方法。
<態様9>
- 別の硬化表面エネルギーを適用するために適切なエネルギー源(2)のピクセルの別のセットと関連する少なくとも別のイメージパターンを決定するサブステップ、
- ピクセルの最後の投射されたセットの少なくとも1つのピクセルが、ピクセルのそれぞれの以前に投射されたセットの少なくとも2つのピクセルを部分的に覆うように、相対的な位置で前記硬化性材料(50)の前記表面(50)上に前記エネルギー源(2)のピクセルの各セットを連続して投射するサブステップと
を含み、ピクセルの投射されたセットの数(n)は、3以上の整数である、態様8に記載の方法。
<態様10>
前記(n)の投射されたイメージ間のピクセルの前記セットの前記相対的な位置は、前記光学素子(100)の前記第1の部分によって受け取られる硬化表面エネルギーの変動を最小化するように決定される、態様9に記載の方法。
<態様11>
前記数(n)は、前記光学素子の前記第1の部分によって受け取られる全硬化表面エネルギーが、前記固体所定エネルギー閾値(T
S
)、優先的にはJacobsエネルギー(E
J
)と少なくとも等しいように、好ましくは前記光学素子の前記第1の部分の任意の点によって受け取られる全硬化表面エネルギーが前記臨界Jacobsエネルギー(Ec)と少なくとも等しいように決定される、態様9又は10に記載の方法。
<態様12>
前記光学素子(100)は、眼用レンズ(200)である、態様1~11のいずれか一項に記載の方法。
<態様13>
付加製造技術を使用して硬化性材料(50)から光学素子(100)を製造するための製造システム(1)であって、
- 未硬化の硬化性材料(50)を収容するために適切な容器(10)と、
- 前記光学素子(100)を支持するために適切な支持体(15)と、
- 第1の硬化表面エネルギーで前記硬化性材料(50)の表面(55)を照射することにより、前記光学素子(100)の第1の部分を形成するようにプログラムされた形成ユニット(3)と
を含み、前記第1の硬化表面エネルギーは、第1の所定エネルギー閾値(T
1
)より厳密に低く、且つ第2の所定閾値(T
2
)より高く、前記第1の所定エネルギー閾値(T
1
)は、前記光学素子(100)の前記第1の部分の厚さ全体において前記光学素子(100)の前記第1の部分を固体にするために十分なエネルギーに対応する固体所定エネルギー閾値(T
S
)以下であり、前記第2の所定エネルギー閾値(T
2
)は、誘導表面エネルギー(E
I
)に等しく、前記形成ユニット(3)は、前記光学素子(100)の前記第1の部分に少なくとも部分的に重なる前記硬化性材料(50)の前記表面(55)を少なくとも第2の硬化表面エネルギーで照射することにより、前記光学素子(100)の少なくとも第2の部分を形成するようにもプログラムされ、前記第2の硬化表面エネルギーは、前記第2の所定エネルギー閾値(T
2
)より高く、前記第1の硬化表面エネルギー及び前記第2の硬化表面エネルギーの合計は、前記光学素子(100)の前記第1の部分を固体にするために十分であり、前記光学素子(100)の前記第1の部分によって受け取られる前記第1の硬化表面エネルギー(E
1
)及び前記少なくとも第2の硬化表面エネルギーの一部分の合計は、好ましくは、前記固体所定エネルギー閾値(T
S
)以上である、製造システム(1)。
<態様14>
前記硬化性材料(50)の前記表面(55)に対しておよそ直角の軸に沿って前記光学素子(100)の前記形成された第1の部分をシフトさせるために、前記形成ユニット(3)に対して前記支持体(15)をシフトさせるようにプログラムされたシフトユニット(29)をさらに含む、態様13に記載の製造システム(1)。
<態様15>
前記形成ユニット(3)は、前記第1の硬化表面エネルギー及び前記第2の硬化表面エネルギーで前記硬化性材料(50)の前記表面(55)を照射するために適切なエネルギー源(2)を含む、態様13又は14に記載の製造システム(1)。
<態様16>
前記形成ユニット(3)は、
- 前記第1の硬化エネルギーを適用するために適切な前記エネルギー源のピクセルの第1のセットと関連する第1のイメージパターンを決定するようにプログラムされたコンピュータ素子(6)であって、前記第2の硬化表面エネルギーを適用するために適切な前記エネルギー源のピクセルの第2のセットと関連する第2のイメージパターンを決定するようにもプログラムされたコンピュータ素子(6)と、
- 前記硬化性材料(50)の前記表面(55)上に前記第1の硬化表面エネルギーのピクセルの前記第1のセットを投射するために適切な光学システム(4)であって、ピクセルの前記第1のセットは、第1の投射されたイメージを画定し、前記光学システム(4)は、前記硬化性材料(50)の前記表面(55)上に前記エネルギー源のピクセルの前記第2のセットを投射するためにも適切であり、ピクセルの前記第2のセットは、第2の投射されたイメージを画定する、光学システム(4)と
を含む、態様15に記載の製造システム(1)。