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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】水処理のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/12 20230101AFI20240405BHJP
   F28D 7/16 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
C02F1/12
F28D7/16
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021560306
(86)(22)【出願日】2020-04-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 US2020027602
(87)【国際公開番号】W WO2020210581
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】62/833,026
(32)【優先日】2019-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521440297
【氏名又は名称】マイクロニック テクノロジーズ, インク.
【氏名又は名称原語表記】MICRONIC TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】14570 Industrial Park Road, Bristol VA 24202 UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】ロック, ケリー
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0034478(US,A1)
【文献】特開2014-210252(JP,A)
【文献】特開2001-062442(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/02-1/18
F28D1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理システムであって、
汚染物質を含む流入水および空気の混合物を前記システム内に送り込むように構成され配置されたブロワーモーターと、
回転速度および径方向速度を前記混合物に与えて前記混合物を霧化するように構成および配置されたアトマイザーを含む一次エバポレーターと、
前記一次エバポレーターから前記混合物を受け取り、二次エバポレーターおよび一次コンデンサーの両方の機能を持つように構成された熱交換器と、
前記二次エバポレーターから濃縮液および蒸気の混合物を受け取るよう構成および配置された濃縮液セパレーターと、
前記流入水と混合させるべく前記濃縮液の一部を移送するよう構成された濃縮液再循環導管と
注入水回路と、を備え
前記注入水回路は、注入水混合ポイントにおいて、前記ブロワーから放出される空気の温度よりも低い温度の水を前記ブロワーの下流の空気に注入するように構成および配置されている、
水処理システム。
【請求項2】
前記熱交換器はシェルアンドチューブ式熱交換器を含む、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
前記シェルアンドチューブ式熱交換器と前記アトマイザーとの間に設けられた円錐形状の界面をさらに備え、前記円錐形状の界面には、前記シェルアンドチューブ式熱交換器のチューブの開口部に対応する複数の穴がある、請求項2に記載の水処理システム。
【請求項4】
前記濃縮液セパレーターは、前記二次エバポレーターからの製品水と前記汚染物質とを分離するように構成されている、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項5】
前記濃縮液セパレーターは、前記汚染物質のうち沈殿した固体部分を回収するように構成されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
廃液排出ゼロシステムである、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
流入水を、前記流入水と前記空気とを混合させる混合ポイントの上流で、温めるように構成および配置された流入水予熱器をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記注入水回路が、第1の注入水熱交換器を含み、前記第1の注入水熱交換器は、前記注入水混合ポイントの下流にある注入水回収セパレーターから高温の注入水を受け取り、前記注入水が前記注入水混合ポイントに循環して戻る前に前記高温の注入水を冷却するように構成および配置されている、請求項に記載のシステム。
【請求項9】
前記注入水回路は、外囲空気を用いて前記注入水混合ポイントの上流で前記注入水を冷却するように構成および配置された熱交換器をさらに備える、請求項に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1の注入水熱交換器の下流に第2の注入水熱交換器をさらに備え、前記第2の注入水熱交換器は、外囲空気を利用して前記注入水混合ポイントの上流の前記注入水を冷却するよう構成および配置されている、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
水処理システムであって、
汚染物質を含む流入水および空気の混合物を前記システム内に送り込むように構成および配置されたブロワーモーターと、
回転速度および径方向速度を前記混合物に与えて前記混合物を霧化するよう構成および配置されたアトマイザーを含む一次エバポレーターと、
前記一次エバポレーターから前記混合物を受け取り、二次エバポレーターおよび一次コンデンサーの両方の機能を持つよう構成された熱交換器と、
前記二次エバポレーター/一次コンデンサーの下流に設けられている向流型熱交換器であって、前記流入水と前記空気とを混合させる前に前記流入水を予熱するように構成された向流型熱交換器と、
前記一次コンデンサーの下流に位置している濃縮液セパレーターであって、濃縮液蒸気混合物を受け取り、溶解した状態で濃縮汚染物質を含む水の流体流から、沈殿している固体汚染物質を分離するように構成された濃縮液セパレーターと、
前記溶解した状態で濃縮汚染物質を含む水の少なくとも一部を再循環させて、前記一次エバポレーターの上流で流入水と混合するように構成された濃縮液再循環回路と、
分離された前記沈殿している固体汚染物質を貯蔵するように構成された濃縮液タンクと を備える水処理システム。
【請求項12】
注入水回路をさらに備え、前記注入水回路は、注入水混合ポイントにおいて、前記ブロワーから放出される空気の温度よりも低い温度の水を前記ブロワーの下流の空気に注入するように構成および配置されている、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
流入水を、前記流入水と前記空気とを混合させる混合ポイントの上流で、温めるように構成および配置される流入水予熱器をさらに備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
水処理システムであって、
汚染物質を含む流入水および空気の混合物を前記システム内に送り込むように構成および配置されたブロワーモーターと、
回転速度および径方向速度を前記混合物に与えて前記混合物を霧化するよう構成および配置されたアトマイザーを含む一次エバポレーターと、
前記一次エバポレーターから前記混合物を受け取り、二次エバポレーターおよび一次コンデンサーの両方の機能を持つように構成されたシェルアンドチューブ式熱交換器と、
前記シェルアンドチューブ式熱交換器と前記アトマイザーとの間に配置されている円錐形状の界面であって、前記シェルアンドチューブ式熱交換器のチューブにおける開口部と対応する複数の穴を有する円錐形状の界面と
を備える水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国特許仮出願第62/833,026号(出願日:2019年4月12日)に基づく優先権を主張するものであり、この米国仮特許出願の内容はすべて、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本明細書に記載の実施形態は、溶液から溶質を除去するためのシステムおよび方法に関する。より詳細には、本明細書に記載されている実施形態は、微生物、ミネラル、その他の溶解した固体および/または汚染物質を水から除去するためのシステムおよび方法に関するものである。
【0003】
流体から溶質を除去する廃液排出ゼロ(ZLD)システムの開発が関連産業で求められている。特に、産業廃棄物として排出される濃縮ブラインは廃棄が難しく、処理センターへの輸送が必要となるがこれは高コストであると同時に、その後にはエバポレーターシステムでの処理を実施するが、これもエネルギー使用量および経済的コストの面から見て高コストとなり得る。
【0004】
世界の水需要は2050年までに55%増加すると予測されている。主な要因は、製造業、火力発電、家庭での使用において需要が高まるためである。全世界における淡水供給量の70%は農業用であるが、先進国では工業用市場が最大量を消費しており、この傾向は他の発展途上国にも拡大している。1日に使用される工業用水は数十億ガロンであるが、そのうち69%は排水処理されているものの再利用されていない。米国だけでも、再利用されていない廃水が毎年90兆ガロン以上発生している。
【0005】
海水、汽水域の地下水、逆浸透膜のリジェクト水、生産水、廃水、工業プロセス水などの含塩水源からの水回収は、多くの地域における地方自治体および工業用途の水需要を満たすために必要である。海水淡水化技術は、リジェクト水に含まれる総溶解固形分(TDS)の濃度が高く、大規模な物流およびサプライチェーンが必要で、環境へ悪影響を及ぼす、といった問題点がある。処理工程で発生する濃縮ブラインのリジェクト水の廃棄は、特に乾燥地および内陸部では、環境に与える影響が大きい。エバポレーターシステムは、特に廃液排出ゼロ(ZLD)を目的とする場合、廃水の処理および再利用に関して唯一実行可能な解決策である。しかし、海水淡水化システムおよび工業プロセスのリジェクトブラインをこのように処理することは、エネルギー消費量が非常に多く、高コストで、技術的にも困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、本発明者らは、水の浄化、特にZLDを目的として利用可能なシステムが必要であることを認めた。ZLDは、水市場が持続可能性の高い未来へと移行する中、関連業界の優先事項となりつつある。これは主に、環境、経済、規制面からの圧力が要因である。ZLD処理を求める産業界では、濃縮廃水の管理を改善し廃棄コストを削減するべく、蒸発技術の必要性が高まっている。現在のエバポレーターには多額の設備投資および運営費用、そして物流サプライチェーンが必要であるが、これらを不要としつつ現在の工業プロセスの高濃度汚染廃水を濃縮してZLDプロセスを実現可能なシステムが望まれている。
【0007】
このため、水浄化のシステムおよび方法を改良することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係る水処理システムは、汚染物質を含む流入給水および空気の混合物を当該システム内に吹き込むように構成および配置されたブロワーモーターと、混合物を霧化するために回転速度および径方向速度を混合物に付与するように構成および配置されたアトマイザーを含む一次エバポレーターと、一次エバポレーターから混合物を受け取ると共に二次エバポレーターとして機能するよう構成され、一次エバポレーターから混合物を受け取ると共に一次コンデンサーとして機能するよう構成され熱交換器とを、備える。
【0009】
一実施形態において、前項の水処理システムを動作させる方法は、本明細書に記載されているように当該システムを動作させることを含む。
【0010】
一実施形態において、水処理システムはさらに、濃縮流入水の一部を混合ポイントに送出して、一次エバポレーターの上流で流入水と混合するように構成および配置された濃縮液再循環回路を備える。
【0011】
一実施形態において、水処理システムはさらに、ブロワーの下流の空気流に注入水を送出するように構成および配置された注入水回路を備える。
【0012】
一実施形態において、注入水回路は、空気流に送出する前に高温の注入水を冷却するように構成された1または複数の熱交換器を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明は、図面を参照することで理解が深まり得る。
【0014】
図1】一実施形態に係る水処理システムの等角正面図である。
【0015】
図2】一実施形態に係る水処理システムの概略図である。
【0016】
図3】一実施形態に係る水処理システムの側面図である。
【0017】
図4】一実施形態に係るエバポレーターの一部切り欠き図である。
【0018】
図5】一実施形態に係るアトマイザーの断面図である。
【0019】
図6】アトマイザー、および、アトマイザーとエバポレーターとの間の円錐形の界面の一部切り欠き図である。
【0020】
図7】一実施形態に係る水処理システムの概略図である。
【0021】
図8】一実施形態に係る水処理システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
一実施形態に係る水処理システム10を図1に示す。当該システムは、空気/水セパレーター12、一対の製品水/空気水セパレーター14、製品水タンク16、湯槽タンク13、一対のエバポレーター20を備える。
【0023】
図2に示すように、サイクルはブロワーモーター30によって駆動される。ブロワーモーター30は、空気と処理対象流体(回路の一部では蒸気として存在している場合もある)とをエバポレーターに送り込む。処理対象流体には、流体から除去および廃棄されるべき物質が溶解または混入している。この溶質は、例えば、単塩(塩化ナトリウム)を含んでいてもよく、流体は、汚染物質と見なされる任意の種類の溶質が混入した工業廃水であってもよい。例えば、流体には、懸濁した固体、溶解した固体、細菌、重金属、真菌、医薬品、プラスチック粒子、ナノ材料などが含まれるとしてよい。チーズ製造などの食品製造の場合、廃水には塩分と共に大量の有機廃棄物が含まれていることがある。
【0024】
ブロワーは、例えば、流量が毎分30立方フィートから毎分3000立方フィートで、圧力が3p.s.i.から40p.s.i.である空気の流れ(例えば、流入空気)を発生させる遠心ポンプまたはブロワーであってもよい。一部の実施形態では、ブロワーは、毎分約300立方フィートの流量で圧力が約5p.s.i.のプレナム等の中で加圧された空気流を発生させることができる。エバポレーターまでの経路の途中で空気を加熱するために、インタークーラー(不図示)を任意で搭載するとしてよい。インタークーラーは、電源からの廃熱と組み合わせることで、エバポレーターへの供給部28で水を温めるために利用し得るという有益な点もある。
【0025】
処理対象水は、熱交換器を含むエバポレーター32に通される。熱交換器で、ブロワーから送られてくる相対的に高温の空気が相対的に低温の水によって冷却される。図2に示すように、向流式熱交換器34は汚染水を受け取り、その汚染水は、清浄水蒸気の凝縮によって温められる。清浄水蒸気は、凝縮して清浄水流出口を通って流出する。
【0026】
エバポレーター20は、図4から分かるように、シェルアンドチューブ式熱交換器であってもよい。エバポレーター20は、一次コンデンサーおよび二次エバポレーターとして機能する。シェルアンドチューブ式熱交換器では、一方の流体がチューブの内部を流れ、他方の流体がチューブのシェル側を流れる。熱はチューブの壁を流れるので、熱伝導率の高い材料を使用する必要がある。さらに、耐腐食性がある材料であって、熱交換器のゾーン間の圧力差およびシェルと周囲圧力との間の圧力差を維持するのに十分な強度を持つ材料を使用することが有用であるとしてよい。例えば、銅、銅合金、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル合金などの金属を利用することができる。多数のチューブを使用することで、熱伝達のために表面積を大きく確保している。
【0027】
図5が最も分かりやすいが、水は、シェルアンドチューブ式熱交換器に入る前に、一次エバポレーターとして機能するアトマイザー40によって加圧された状態で注入されて霧化する。円錐形状の部材42(図6)には、穴44が設けられている。穴44は、チューブの開口部と実質的に位置合わせされているが、連通していない。チューブ内部の流体は蒸発する一方、チューブ外部の流体は凝縮する。ブロワーモーター30は、エバポレーターの出口側にあるので、チューブ内を真空にして内側領域での蒸発を促進しつつ、外側は高圧にして外側領域での凝縮を促進する。
【0028】
図6に見られる円錐形状の部材42は、空気流、小さな水滴および結晶体が表面に沿ってシート状に流れることを可能にし、表面への固形物の堆積を抑制する機能を持つ。これにより、洗浄およびスケール除去の必要性が低くなり得る。しかし、当然のことながら、メンテナンス、洗浄、スケール除去を実施しやすいようにエバポレーターを確実に構成することは有用性が高いとしてよい。流体はこの後、エバポレーターのチューブの内部の周囲を流れ、エバポレーターのチューブの外部には結露が発生する。一実施形態では、円錐形状は一次エバポレーターと角度が等しい。
【0029】
アトマイザー40(「ポッド」と呼ばれることもある)は、液体である流入水を高速回転する空気と混合させて、流体を霧化するように構成された装置である。当該システムと組み合わせて使用できるタイプのアトマイザーの一例は、米国特許第10,507,402号に記載されている。当該特許は、参照によりその内容を全て本明細書に組み込むものとする。一部の実施形態では、流入水は、再循環した濃縮水とさらに混合させる。これについては以下でさらに詳細に説明する。
【0030】
アトマイザー40は、水滴に対して角速度と径方向内向きの速度を付与すると共に、空気を飽和させることができるような形状を持つ。ある実施形態では、フィン50は空気流に回転成分を付与する。空気はこの後、平坦なスロットに沿って内向きに流れ、径方向内向きの速度を発生させる。この気流は、部分的に真空状態である。ある実施形態では、堆積した固形物を洗浄することを目的として時々、アトマイザー40の流入流路に給水を注入する。これは、実施形態毎に、予定されているとしてもよいし、適宜実行されるとしてもよい。
【0031】
アトマイザー/一次エバポレーター40の出力は主に、空気流に混入した微細なエアロゾルと、エアロゾル微粒子とである。この界面に位置する装置は、エアロゾルがチューブ内部を通過する際に、エアロゾルを維持する機能を持つ。チューブの壁を伝わってくる熱によって空気が温められ、相対湿度が下がり、エアロゾルがさらに蒸発する。
【0032】
上記のシェルアンドチューブユニットの出口側に設置された円錐形状の流量等分部45は、複数のチューブ間で流れを均等に分配し易いよう、ドーナツ型の流路を形成する機能を持つ。シェルの出力側且つ流量等分部45の下流に設置された板状のセパレーター46は、濃縮液および蒸気の混合物を分離する機能を持つ。一実施形態では、当該システムは、廃棄物流として、濃縮ブラインではなく、沈殿した固体廃棄物を出力する廃液排出ゼロ(ZLD)システムであるように構成される。
【0033】
本明細書では「廃液排出ゼロ(ZLD)」という用語を使用しているが、一部の実施例では、廃棄物流にある程度の量の液体が含まれている可能性があるものと理解されたい。つまり、この用語は、関連技術分野で使用されている場合、液体の排出がほぼゼロであるか、液体の排出が最小限であることを意味するとしてよく、排出される固体には液体状の水分がある程度の量は含まれている可能性がある。同様に、ZLDプロセスは、実施形態では、当該システムでの処理後に沈殿した固体廃棄物から残留水分を除去するためのフィルタープレスプロセスまたは遠心分離プロセスを含むとしてよい。
【0034】
一部の実施形態では、水浄化システムは、当該システムの特定の部分における空気および/または水の流れを制御する制御システム(不図示)を備えるとしてよい。例えば、制御システムは、圧力センサーおよび調整可能なバルブなどの一連の構成要素を有し、ブロワーからの空気の流量および圧力を監視および/または制御することができる。同様に、アトマイザーアセンブリおよび/またはエバポレーター・アセンブリに流入または流出する溶液の流量、圧力、および/または飽和度を制御することができる。このようにして、混合物の飽和レベルを監視および制御することができる。
【0035】
ある実施形態では、水をブロワー出力に注入して冷却し、一次コンデンサー/二次エバポレーターでの処理前に空気を再度飽和させるとしてよい。同様に、ブロワー自体が熱を発生させるので、ブロワーの出力を熱交換器(前述のインタークーラー)に通すことで、この熱をシステムを動作させるためのエネルギーの一部として利用することができる。これについては、図7および図8を参照して以下でより詳細に説明する。
【0036】
図7は、図2の実施形態と同様の実施形態を示す模式図であるが、図示されている構造には追加されているものがある。上述したように、インタークーラー、または、インタークーラー用の流体ループを図2には図示していない。図7には、この特徴に加え、他の特徴もいくつか図示している。
【0037】
図7の水処理システム10´は、前述した実施形態と同様に、空気および混入した流体(回路の一部では蒸気として存在しているとしてもよい)を吹き込んで、当該システム内を通過させるブロワーモーター30を備える。本実施形態では任意で、ブロワーモーター30の下流に第1の熱交換器31を備える。前述のように、ブロワーモーターが過剰な熱を発生させることがある。この熱は、一部が第1熱交換器31で取り込まれ、ブロワーからの空気流の温度が下がる。ある実施形態では、このプロセスには、供給水の温度と空気流の温度とを一致させることで、供給水を注入しても処理流の温度が変化しないようにする機能がある。同時に、熱交換器は、第2の熱交換器60に移送する流体を加熱する。第2の熱交換器60では、この流体を用いて、回路の蒸発部/凝縮部を通過する蒸気を加熱する。熱交換器ポンプ62によって、熱伝達流体が熱交換器31、60を通過する。
【0038】
熱交換器31からの空気および蒸気の混合物は、一次コンデンサー/二次エバポレーター80に流入し、蒸気の一部が凝縮して製品水タンク16に移動する。
【0039】
除去すべき物質を含む流入水は、流入水タンク64から供給される。流入水は二次コンデンサー34を通じて送出される。二次コンデンサー34は、ループの該当部分で流入物の予熱器として機能する。この流体はその後、混合ポイント66に流れ、濃縮液タンク70から再循環濃縮液供給ポンプ68によって送出された再循環濃縮液と混合させる。図示した実施形態では、再循環濃縮液供給ポンプ68は、濃縮液タンク70から再循環用の濃縮液を直接受け取るのではなく、濃縮液がまず、汚染物質タンク74内のふるいセパレーター72を通過するようになっている。ふるいセパレーター72は、沈殿した汚染物質を捕捉するために使用される。一実施形態では、ふるい分離機を定期的に取り外して物質を回収してよい。別の実施形態では、ふるいは、連続的または断続的に移動するベルトであってもよい。ベルトのうち汚れていない部分を流れの中に置き、沈殿した汚染物質を有する部分は、回収容器への汚染物質の洗浄/放出のために流路から取り除く。濃縮液の一部は、供給ポンプ68によって濃縮液タンクに戻され、別の一部は混合ポイント66で流入水と混合させた後でシステム内を再循環させる。追加でスカベンジャーポンプ76を、濃縮液タンク70から汚染物質タンク74に濃縮液を移送するために、備えるとしてもよい。
【0040】
このように再注入することで、供給速度とシステムの蒸発速度とを一致させる効果がある。例えば、90ガロン/日の給水に対して、300ガロン/日の濃縮液を再循環させて使用するとしてよい。装置の規模が大きくなると、再循環量は同じ比率で増加するのではなく、給水処理速度が高くなっても再循環量は同水準にとどまる傾向があると考えられる。再循環量は、実験で得られた蒸発率を考慮して、供給量を維持するよう適宜変更することができる。
【0041】
流入水および再循環濃縮液はこの後、第2熱交換器からの液体/蒸気混合物と、一次エバポレーターにおいて混合させる。前述した実施形態と同様に、一次エバポレーターは、空気と混合させた霧状の液体を、二次エバポレーター(シェルアンドチューブ式熱交換器のエバポレーターのチューブ内)を通じて、濃縮液セパレーター82に供給するアトマイザー40であってもよい。濃縮液セパレーター82は、濃縮液を分離して濃縮液タンク70に送出し、蒸気および空気をブロワー30に戻してループを再び開始する。
【0042】
本実施形態では、システムの動作の制御および監視が容易になるようにセンサーS1、・・・、S12を備えるとしてよい。これらのセンサーは、例えば、温度、圧力、流量などのパラメータを監視するように構成されていてもよい。ある実施形態では、S1がエバポレーターの入力部における温度、圧力、流量を、S2がエバポレーターの出力部における温度および圧力を、S3がブロワーの入力部における温度および圧力を、S4がブロワーの出力部における温度および圧力を、S5およびS6がコンデンサーの入力部および出力部における温度および圧力をそれぞれ監視する。S8およびS9はそれぞれ、第1熱交換器の液体の入力部および出力部における温度を監視する。S7は第2熱交換器の蒸気出力部の温度を、S11およびS12はそれぞれ、第2熱交換器の液体の入力部と出力部における温度をそれぞれ監視する。
【0043】
次に図8を参照すると、さらなる実施形態10´´が図示されている。本実施形態では、流入水は、流入タンク64から流入ポンプ90を介して二次コンデンサー34に送られる。この二次コンデンサー34は、二次コンデンサー34のコンデンサー側を通過する蒸気流の熱で流入水を暖める熱交換器として機能する。
【0044】
任意で、流入水予熱器92をブロワー30の下流に配置してもよい。流入水予熱器92は、ブロワー30で発生した空気/蒸気ループから熱を除去し、その熱を利用して流入水をさらに予熱するように構成された熱交換器である。
【0045】
流入水予熱器92から、流入水は混合ポイント66に送出される。混合ポイント66で、再循環させた濃縮液と混合させる。再循環濃縮液供給ポンプ68は、濃縮液セパレーター82からの再循環濃縮液の流れを供給する。再循環させた濃縮液および予熱された流入水の混合物は、アトマイザー/一次エバポレーター40で霧化される。上述したように、アトマイザー40は、アトマイザー40の径方向内側に方向付けられた螺旋状の流れを生成するように構成されている。この流れは、アトマイザー40から、エバポレーター/一次コンデンサー80のうちチューブの内部であるエバポレーター側に入る。チューブの内部は、前述の通り、相対的に低い温度と圧力に保たれている。
【0046】
エバポレーター80の作用により水蒸気が発生するが、この水蒸気は一般的に清浄であり流入水の大部分を成す。流入水の残りは濃縮液として残存し、その中には高濃度の汚染物質が含まれており、通常は液滴として存在している。濃縮液および蒸気は、濃縮液セパレーター82に送出される。一実施形態では、セパレーター82は、遠心分離部および分散部の2つの構成要素を有し、流れを減速させて空気および水の分離を可能にし、液体をサンプに集め、濃縮液を再循環ポンプを介して混合ポイント66に戻す。濃縮液は、濃縮液セパレーター82から濃縮液タンク70に送られる一方、蒸気および空気はブロワー30の入力部に戻される。
【0047】
蒸気および空気はまず、任意で流入物予熱器92を通過して、ブロワーモーター30から余分な熱を取り除き、その後に水注入ポイント96で冷水を注入して蒸気および空気をさらに冷却する。注入水は、外囲空気を冷媒とする熱交換器98によって冷却される。注入水、蒸気および空気の混合物は、空気から水を分離する遠心セパレーターである注入水回収セパレーター100を通過する。この時点で高温の注入水は、熱交換器98を介して水注入ポイント96に戻される前に、熱交換器60を通過してもよい。熱交換器60の他のループについては、さらに後述する。
【0048】
残りの蒸気および空気の混合物は、エバポレーター/一次コンデンサー80の一次コンデンサー部分を通過し、そこから二次コンデンサー34に到達する。一次コンデンサー80では、蒸気の大部分が液体に凝縮される。残りは二次コンデンサー34で凝縮される。空気流に混入した液体は、液体/蒸気セパレーター102を通過し、製品水が空気流から分離される。空気流は、熱交換器60を経由してエバポレーターに戻り、ループが継続される。製品水は、ポンプ104によって製品水タンク16から送り出される。熱交換器60は、低温側を通過する空気流を利用して、熱交換器60の高温側を通過する注入水を冷却する。同時に、空気流が加熱され、混入している残存蒸気の量に応じて空気流の相対湿度が低下する。任意で、図示されているように、製品水の一部は、注入水ポンプ105によって送出されて、注入ループに水を供給し、注入ポイント106で注入されてもよい。
【0049】
本出願の記載は、例示および説明を目的として提示されたものであり、本発明を全て網羅することを意図したものではなく、また、開示した形態に本発明を限定することを意図したものではない。多くの変形例および変更例が当業者には明らかであろう。例えば、各実施形態の態様は、他の各実施形態の態様と組み合わせてもよい。一例として、予熱器は、図2の実施形態だけでなく、図7および図8の実施形態にも使用することができる。セパレーターおよび熱交換器のさまざまな実施形態は、記載された複数のさまざまな実施形態のそれぞれにおいて使用され得る。ポンプの具体的な配置は、それぞれが相互作用するタンクの上流から下流まで、さまざまとしてよい。実施形態は、本発明の趣旨、実際の用途を最も分かりやすく説明できるものが選択され記載されており、また当業者が本発明を理解し、特定の用途に適したかたちでさまざまに変形しつつさまざまな実施形態を実施できるよう選択され記載されている。特に指定のない限り、「約(about)」という用語は、公称値の±10%以内を意味すると理解すべきである。
【0050】
共通の参照番号は、共通の名称を持つ構成要素を示すために使用されるが、それらの構成要素が同一でなければならないことを意味すると解釈されるべきではない。実際には、例えば、流量、流入水の種類、汚染物質の濃度など、さまざまなシステムを動作させる上での考慮事項に基づいて設計される。そのため、例えば、上述した各システムには一次コンデンサー/二次エバポレーターが含まれているが、実際には形態が多少異なるとしてよい。
【0051】
本明細書では、「fluid(流体)」という用語は、液体、気体、溶解または混入した固体を含む液体、またはそれらの組み合わせを指すものと理解される。「atomize(霧状にする)」および「vaporize(蒸発させる)」という用語は、液体または溶液を一連の微小な粒子、液滴および/または微細なスプレー状のものにするプロセスを表す。例えば、本明細書では、液体を霧状にするように、および/または、液体の霧状の流れを生成するように構成された装置または構成要素は、液体を一連の微小な粒子および/または細かいスプレー状のものに細分化および/または「break(破壊)」したりする任意の適切な装置または構成要素であるとしてよい。
【0052】
本明細書において用いられている場合、文脈上明らかに別の意味に規定される場合を除き、単数形の「a」、「an」および「the」は複数形の示唆を含む。例えば、「a member(一の部材)」という用語は、単一の部材または複数の部材の組み合わせを意味し、「a material(一の材料)」という用語は、1もしくは複数の材料、または、それらの組み合わせを意味することを意図している。「実質的に(substantially)」という用語は、例えば、10%のバラツキを含むものと理解してよい。
【0053】
上記の説明は例示を目的としたものであり、本発明を限定するものではない。したがって、以下に記載する特許請求の範囲から逸脱することなく、記載されているように変更し得ることが当業者でには明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8