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特許7466572電気化学測定ユニット、電気化学測定装置及び電気化学測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】電気化学測定ユニット、電気化学測定装置及び電気化学測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/403 20060101AFI20240405BHJP
   G01N 27/28 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
G01N27/403 371A
G01N27/28 341Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021567108
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(86)【国際出願番号】 JP2020044585
(87)【国際公開番号】W WO2021131521
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2019238756
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592187534
【氏名又は名称】株式会社 堀場アドバンスドテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】宮村 和宏
【審査官】黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-155953(JP,U)
【文献】特開2015-102325(JP,A)
【文献】特開2004-340717(JP,A)
【文献】特開2007-071792(JP,A)
【文献】特開2007-178236(JP,A)
【文献】特開平09-243588(JP,A)
【文献】特開2000-009675(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26-27/49
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル液が流れる流路に設けられるものであって、
前記サンプル液を導入する導入口及び導出する導出口を有し、前記サンプル液を貯留する貯留部と、
前記貯留部に貯留されたサンプル液の電気化学特性を測定する複合電極とを備え、
前記導入口が、前記導出口よりも下方に位置するように設けられ、
前記複合電極の感応部は、前記貯留部において、前記導出口よりも下方に位置するように設けられており、
前記複合電極が、前記複合電極の液絡部が前記導出口に対向するように、かつ前記液絡部の位置が前記導出口と同じ高さ又は前記導出口よりも高い位置となるように前記貯留部に取り付けられていることを特徴とする電気化学測定ユニット。
【請求項2】
前記導入口が、前記感応部よりも下方に位置するように設けられていることを特徴とする請求項1記載の電気化学測定ユニット。
【請求項3】
前記感応部が前記導出口よりも下方に位置するように前記複合電極を取りつける取付機構を備える請求項1又は2に記載の電気化学測定ユニット。
【請求項4】
前記導出口の径が、前記導入口の径よりも大きいものであることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の電気化学測定ユニット。
【請求項5】
前記貯留部が、サンプル液を貯留する貯留空間を有し、
前記感応部の下端が、前記貯留空間の底壁から上方に1mm以上離間した位置に配置されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の電気化学測定ユニット。
【請求項6】
前記複合電極が、ドーム型であることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の電気化学測定ユニット。
【請求項7】
前記複合電極が筒状のものであり、前記複合電極のサンプル液に浸漬される部分の外径が、前記複合電極のその他の部分の外径よりも細く成形されているものであることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の電気化学測定ユニット。
【請求項8】
前記複合電極のサンプル液に浸漬される部分の外径が5mm以内であることを特徴とする請求項記載の電気化学測定ユニット。
【請求項9】
請求項1記載の電気化学測定ユニットと、
前記導出口及び前記導入口に接続されて該電気化学測定ユニットにサンプル液を流通させる流路と、
前記複合電極によって測定された測定値に基づいてサンプル液の電気化学特性値を算出する算出部とを備える電気化学測定装置。
【請求項10】
サンプル液を導入する導入口及び導出する導出口を有し、前記サンプル液を貯留する貯留部と、
前記貯留部に貯留された前記サンプル液の電気化学特性を測定する複合電極とを備えた電気化学測定ユニットを使用し、
前記導入口が前記導出口よりも下方に設けられており、
前記複合電極の感応部を前記導出口よりも下方に設け
前記複合電極を、前記複合電極の液絡部が前記導出口に対向するように、かつ前記液絡部の位置が前記導出口と同じ高さ又は前記導出口よりも高い位置となるように前記貯留部に取り付けて前記サンプル液の電気化学特性を測定することを特徴とする電気化学特性測定方法。
【請求項11】
サンプル液が流れる流路に設けられるものであって、
前記サンプル液を導入する導入口及び導出する導出口と、
前記サンプル液を貯留する貯留空間と、
サンプル液の電気化学特性を測定する複合電極を前記貯留空間に挿入するための電極挿入口とを備え、
前記導入口が、前記導出口よりも下方に位置するように設けられ
前記複合電極を、前記複合電極の液絡部が前記導出口に対向するように、かつ前記液絡部の位置が前記導出口と同じ高さ又は前記導出口よりも高い位置となるように取り付けるものであることを特徴とする電気化学測定用セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、pH測定装置等に用いられる電気化学測定ユニット、電気化学測定装置及び電気化学測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フロー型のpH測定装置としては、特許文献1及び特許文献2のように、サンプル液が流れる流路内に感応部を備える測定電極と液絡部を備える比較電極とをそれぞれ別個に配置したものがある。
【0003】
このようなフロー型の測定装置では、流路内に測定電極と比較電極とがそれぞれ別個に配置されているので、pH測定時に前記感応部と前記液絡部とが、異なる位置を流れるサンプル液に接触することになり、測定に誤差が生じてしまうという問題がある。
【0004】
また、フロー型の測定装置では、サンプル液中に気泡が混入し前記感応部や液絡部に気泡が付着すると、pH測定に悪影響を与えてしまうという問題がある。特にサンプルが微量である場合には、サンプル液に対して気泡が占める体積が大きくなり、気泡による測定への影響が顕著に表れてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-012262号公報
【文献】実公平7-036277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述したような課題に鑑みてなされたものであり、フロー型の測定装置において、例えば、微量なサンプル液であってもそのpH等の電気化学特性値を簡単な構成で精度よく測定することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る電気化学測定ユニットは、サンプル液が流れる流路に設けられるものであって、前記サンプル液を導入する導入口及び導出する導出口を有し、サンプル液を貯留する貯留部と、前記貯留部に貯留されたサンプルの電気化学特性を測定する複合電極とを備え、前記導入口が前記導出口よりも下方に位置し、前記複合電極の感応部は、前記導出口よりも下方に位置するように設けられていることを特徴とするものである。
なお、本明細書中での上下方向とは、鉛直方向に沿った上下方向を指す。下方とは、鉛直方向における下方だけでなく、鉛直方向に対して斜めの下方も含むものである。
【0008】
このように構成された電気化学測定ユニットによれば、複合電極を使用しているので、感応部と液絡部との位置をできるだけ近づけることができる。その結果、感応部と液絡部とがほぼ同じ位置を流れるサンプル液に接触することができるので、チップ型等の特殊な電極を使用することなく、pH等の電気化学的特性を精度よく測定することができる。
【0009】
また、複合電極を使用しているので、貯留部内に測定電極と比較電極とを別々に配置する必要がなく、貯留部をできるだけ小型化することができる。
【0010】
さらに、前記導入口が前記導出口よりも下方に位置し、前記複合電極の感応部が、前記導出口よりも下方に位置しているので、前記導入口から前記貯留部内に流れ込んだサンプル液が前記貯留部の下方から上方に向かって流れる。
その結果、サンプル液中に気泡が含まれている場合であっても、気泡を前記導出口から外部へ排出しやすいので、気泡による影響をさらに抑えて、pH等の電気化学的特性をより精度よく測定することができる。
【0011】
前記感応部が前記導入口よりも上方に位置するように設けられているので、前記感応部は貯留部の底壁よりも上に位置していることになる。
そのため、前記複合電極の液絡部から滲出した内部液が比重の大きいものであり、前記貯留部の下部に内部液が滞留する場合であっても、電気化学測定への内部液の影響を小さく抑えることができる。
【0012】
前記複合電極に備えられた液絡部が、前記導出口に対向するように設けられていれば、液絡部から滲出する内部液を該導出口から前記貯留部の外へ排出しやすい。
そのため、前記貯留部内に内部液が滞留することによるサンプル液のpH等への影響を抑えることができる。
【0013】
前記導出口の径が、前記導入口の径よりも大きいものであれば、前記貯留部へのサンプル液の流入による前記貯留部の内圧上昇を抑制することができる。
その結果、前記複合電極の液絡部からサンプル液が該複合電極内部に流入することによる測定への悪影響を抑えることができる。
【0014】
本発明に係る電気化学測定ユニットを備えた電気化学測定装置としては、例えば、前述したような電気化学測定ユニットと、前記導入口及び前記導出口に接続されて、該電気化学測定ユニットにサンプル液を流通させる流路と、前記複合電極によって測定された測定値に基づいてサンプル液の電気化学特性値を算出する算出部とを備えるものを挙げることができる。
【0015】
サンプル液を導入する導入口及び導出する導出口を有し、前記サンプル液を貯留する貯留部と、前記貯留部に貯留されたサンプル液の電気化学特性を測定する複合電極とを備えた電気化学測定ユニットを使用し、前記複合電極の感応部を前記導出口よりも下方に設けてサンプル液の電気化学特性を測定することを特徴とする電気化学特性測定方法によっても、同様に本発明の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、フロー型の測定装置において、例えば、微量なサンプル液であってもそのpH等の電気化学特性値を簡単な構成で精度よく測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係る電気化学測定装置の全体模式図。
図2】本実施形態に係る電気化学測定装置の電気化学測定ユニット部分の拡大模式図。
図3】本実施形態に係る電気化学測定ユニットを複合電極の軸方向から見た断面図。
図4】本実施形態に係る電気化学測定ユニットの断面図。
図5】本発明の他の実施形態に係る電気化学測定装置の全体模式図。
図6】本発明の他の実施形態に係る電気化学測定用セルを表す模式図。
図7】本発明の他の実施形態に係る電気化学測定ユニット部分の拡大模式図。
図8】本発明の他の実施形態に係る前記電気化学測定ユニットの固定方法を説明する図。
図9】本発明の他の実施形態に係る前記電気化学測定ユニットの固定方法を説明する図。
図10】本発明の他の実施形態に係る複合電極の位置決め部材を表す模式図。
図11】本発明の他の実施形態に係る電気化学測定用セルを表す模式図。
図12】実施例1に係る電気化学測定ユニットを用いた測定結果(応答速度)を示すグラフ。
図13】比較例1に係る電気化学測定ユニットを用いた測定結果(応答速度)を示すグラフ。
図14】実施例1に係る電気化学測定ユニットを用いた測定結果(流量を変化させた場合)を示すグラフ。
図15】実施例2に係る電気化学測定ユニットを用いた測定結果(流量を変化させた場合)を示すグラフ。
図16】比較例1に係る電気化学測定ユニットを用いた測定結果(流量を変化させた場合)を示すグラフ。
図17】実施例1に係る電気化学測定ユニットを用いた測定結果(ポンプ脈動による影響)を示すグラフ。
図18】比較例1に係る電気化学測定ユニットを用いた測定結果(ポンプ脈動による影響)を示すグラフ。
図19】実施例1に係る電気化学測定ユニットを用いた測定結果(連続測定)を示すグラフ。
【符号の説明】
【0018】
100 ・・・電気化学測定装置
1 ・・・電気化学測定ユニット
11 ・・・貯留部
11a ・・・導入口
11b ・・・導出口
12 ・・・複合電極
121b・・・感応部
122b・・・液絡部
2 ・・・流路
6 ・・・取付機構
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る電気化学測定ユニット1及び電気化学測定装置100について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
本実施形態に係る電気化学測定装置100は、例えば、図1に示すように、分析装置Aから流出する微量のサンプル液のpH等を測定するフロー型の測定装置である。
なお、本明細書において、微量とは、前記電気化学測定ユニット1に供給されるサンプル液の流速が2ml/min以下の場合を指す。
【0021】
前記分析装置Aは、例えば、イオンクロマトグラフ等の液体クロマトグラフである。より具体的には、前記分析装置Aは、例えば、ナノ液体クロマトグラフ、キャピラリー液体クロマトグラフ、マイクロ液体クロマトグラフ等と呼ばれる低流量液体クロマトグラフ装置である。
【0022】
この電気化学測定装置100は、例えば、サンプル液を流通する流路2と、該流路内に設けられてサンプル液の電気化学特性を測定する電気化学測定ユニット1と、前記電気化学測定ユニット1からの測定信号に基づいてpH等の電気化学特性値を算出する算出部3と、該算出部3によって算出された電気化学特性値を表示する表示部4とを備えるものである。
【0023】
前記流路2は、例えば、液体クロマトグラフ装置などから流出する微量のサンプル液を前記電気化学測定ユニット1に流通させるものであり、前記電気化学測定ユニット1にサンプル液を導入する導入流路21と、前記電気化学測定ユニット1からサンプル液を導出する導出流路22とを備えている。
【0024】
前記導入流路21は、例えば、液体クロマトグラフなどから流出するサンプル液を前記電気化学測定ユニット1に導入するものであり、例えば、1/16インチのフッ素樹脂からなるチューブなど、汎用のチューブによって形成されているもの等を挙げることができる。なお、前記導入流路21の下流側の端部には、該導入流路21を前記電気化学測定ユニットに接続するための接続ポートが設けられている。
【0025】
前記導出流路22は、前記電気化学測定ユニット1からサンプル液を外部に導出するものであり、前記導入流路21と同様に、例えば、1/16インチのフッ素樹脂からなるチューブなど、汎用のチューブによって形成されているもの等を挙げることができる。なお、前記導出流路22の上流側の端部には、該導出流路22を前記電気化学測定ユニット1に接続するための接続ポートが設けられている。
【0026】
前記算出部3は、前記電気化学測定ユニット1からの測定信号に基づいてpH等の電気化学特性値を算出するものである。この算出部3は、例えば、CPUやメモリ、通信ポート等のデジタル電気回路の他、アナログ増幅器やバッファなどのアナログ電気回路、及びこれらを繋ぐADC、DACなどを具備した情報処理回路が、前記メモリに記憶させた所定のプログラムに従ってCPUやその周辺機器が協働することによって、その機能を担うものである。
前記算出部3は、前記電気化学測定ユニット1内に備えられていても良いし、外部に別途用意した汎用のPCなどに設けられているものとしても良い。
【0027】
前記表示部4は、前記算出部3によって算出されたpH値などの電気化学特性値を表示するものであり、例えば、汎用のPCのディスプレイなどを利用するものとしてもよいし、前記電気化学測定ユニット1の外面に取り付けられたディスプレイを使用するようにしてもよい。
【0028】
前記電気化学測定装置100が、サンプル液の流れを制御するバルブやポンプなどを備えた図示しない流量制御部をさらに備えていても良い。前記制御部は、必ずしも必須の構成ではなく、液体クロマトグラフ装置等が備える流量制御部を利用するようにしても良い。
【0029】
前記電気化学測定ユニット1は、図2に示すように、サンプル液を導入する導入口11a及び導出する導出口11bを有しサンプル液を貯留する貯留部(電気化学測定用セルともいう。)11と、前記貯留部11に貯留されたサンプル液の電気化学特性を測定する複合電極12とを備えるものである。
【0030】
前記貯留部11は、サンプル液を内部に貯留する貯留空間11cと、前記貯留空間に連通してサンプル液を導入する導入口11aと、前記貯留空間に連通してサンプル液を導出する導出口11bとを備えたものである。
【0031】
より具体的に説明すると、前記貯留部11は、例えば、ガラス、塩化ビニル又はPFA(パーフルオロアルコキシフッ素樹脂)などで形成された縦2cm、横3cm、幅1cm程の直方体形状の樹脂ブロックの内部に貯留空間11cを形成したものである。前記貯留空間11cは、例えば、上下方向に延びる円筒状の空間である。この貯留空間11cは、複合電極のサンプル液に浸漬される部分の外径(例えば5mm)に応じた空間の大きさとし、できるだけ微量のサンプル液で正確な測定ができるように小型化することが望ましい。該貯留空間11cの体積は、例えば、0.1cm以上10cm以下であることが好ましく、より好ましくは、0.1cm以上5cm以下であることが好ましく、0.1cm以上2cm以下であることが特に好ましい。本実施形態では、この貯留空間11cは、例えば、直径が5mm程度、上下方向の高さが1cm程度のものである。
【0032】
前記導入口11aは、前記導入流路21に接続され、前記導入流路21から流れ込むサンプル液を前記貯留空間11cに供給するものである。本実施形態では、前記導入口11aは、例えば、前記樹脂ブロックの側面に開口しているものであり、前記導入口11aの上端が前記貯留空間11cの上下方向の長さの中央Cよりも下側に位置するように形成されている。また、前記導入口11aは、例えば、その下端が貯留部11の底壁と同じ高さになるように形成してある。前記導入口11aは、例えば、水平方向に形成された同じ直径の連通路によって前記貯留空間11cに連通しているものであり、その直径が0.8mm程度の円形状の開口である。
【0033】
前記導出口11bは、前記導出流路22に接続され、前記貯留空間11cから流れ出るサンプル液を前記導出流路22に導出するものである。前記導出口11bは、前記導入口11aよりも上側に形成されたものであり、本実施形態では、前記導出口11bは、例えば、前記樹脂ブロックの側面に開口しているものであり、前記導出口11bの下端が前記貯留空間11cの上下方向の長さの中央Cよりも上側に位置するように形成されている。前記導出口11bは、例えば、水平方向に形成された同じ直径の連通路によって前記貯留空間11cに連通しているものであり、その直径が1.0mm程度の円形状の開口である。
これら導入口11aと導出口11bは、例えば、図3に示すように、前記貯留空間11cを挟んで互いに対向するように設けられている。
【0034】
前記複合電極12は、図2に示すように、pH電極121(以下、測定電極ともいう。)と比較電極122とが一体構成されているものであり、当該複合電極12には、円筒状のpH電極支持管121aと、その外周を取り巻くように比較電極支持管122aとが一体に設けられている。なお、これらpH電極支持管121a及び比較電極支持管122aはいずれも同一組成のガラスから構成されている。
【0035】
比較電極支持管122aよりも若干先端部が突出させてあるpH電極支持管121aの先端部には感応部121bである応答ガラスが接合されており、前記比較電極支持管122aの外側周面には前記応答ガラスにできるだけ近い位置になるように液絡部122bが設けてある。なお、サンプル液に浸漬される部分の比較電極支持管122aはサンプル液に浸漬されない部分よりも細く成形されている。具体的には、サンプル液に浸漬される部分の比較電極支持管122aは、外径が3mm程度の円筒状にしてあり、それ以外のサンプル液に浸漬されない部分の比較電極支持管112aの外径は10mm程度の円筒状にしてある。前記応答ガラスは、サンプル液に浸漬される部分の比較電極支持管122aの外径に収まる大きさのものを使用している。本実施形態では、前記比較電極支持管122aとpH電極支持管121aの先端部とがくびれを形成せずに同一面として接合されているドーム型の複合電極12を採用している。
【0036】
比較電極支持管122a及びpH電極支持管121aには、いずれもAg/AgClからなる比較電極の内部極122c及びpH電極の内部極121cがそれぞれ収容されている。なお、これら内部極としてはAg/AgClからなるものに限定されず、例えば、Ag/AgBr、Ag/AgI、Hg/Hg2Cl2等からなるものを用いることもできる。
【0037】
比較電極支持管122a及びpH電極支持管121aには、更に、内部液として、高濃度(3.33M~飽和)のKCl溶液が充填してある。なお、比較電極支持管122aの内部液としてはKCl溶液に限定されず、例えば、CaCl2、NH4Cl、LiCl、NaCl等の水溶液を用いることもできる。
【0038】
前記複合電極12は、前記貯留部11の内部に貯留されたサンプル液にその感応部121b及び液絡部122bが浸漬するように、前記樹脂ブロックに形成された電極挿入口5を介して前記貯留部11内に先端部が下方に向くように挿入されている。前記電極挿入口5は、前記樹脂ブロックの上壁から前記貯留部11に連通するように形成されている。
【0039】
<貯留部に対する複合電極の取付構造>
次に、前記貯留部11に対する前記複合電極12の取付構造について説明する。
前記複合電極12は、前記貯留部11に対して前記複合電極12の感応部121bが前記導出口11bよりも下方に位置するように配置されている。ここで下方に配置するとは、前記感応部121bのサンプル液と接する部分の上下方向の長さの半分以上が前記導出口11bの下端よりも下側に位置することを含むものであり、本実施形態では前記感応部121bのサンプル液と接する部分全体が前記導出口11bの下端よりも下側に位置するようにしてある。
【0040】
また、前記複合電極12は、前記貯留部11に対して前記複合電極12の感応部121bが前記導入口11aよりも上方に位置するように配置されている。ここで上方に配置するとは、前記感応部121bのサンプル液と接する部分の上下方向の長さの半分以上が前記導入口11aの上端よりも上側にあることを含むものであり、本実施形態では前記感応部121bのサンプル液と接する部分全体が前記導入口11aの上端よりも上側に位置するようにしてある。このような位置関係で前記貯留部11に前記複合電極12を取り付けると、前記複合電極12の感応部121bの下端は、貯留部11の底壁よりも上側に離間して配置されることになる。より具体的に説明すると、前記複合電極12は、前記貯留部11に対して、貯留空間11c空間の底壁と前記感応部121bの下端との距離が1mm以上離れるように取り付けられている。本実施形態では、前記複合電極12の感応部121bの下端と、貯留空間11cの底壁との間の距離が2mm程度離れるように複合電極が取り付けられるようにしてある。
【0041】
さらに、前記複合電極12は前記感応部121bよりも上方に設けられた前記液絡部122bが、前記導出口11bが形成されている側を向いて対向するように配置してある。このときの液絡部122bの高さは、前記導出口11bとほぼ同じ高さになるように配置されるのが好ましい。
なお、本実施形態では、前記複合電極12と前記貯留空間11cとが同軸上に配置されるようにしてある。
【0042】
上述したような位置関係は、前記複合電極12を前記貯留部11に取り付ける取付機構6によってもたらされるものである。
【0043】
前記取付機構6は、例えば、図4に示すように、前記複合電極12を保持する保持部材61と、該保持部材61を前記貯留部11に対して固定する固定部62とを備えるものである。
【0044】
前記保持部材61は、前記複合電極12が、その内部に嵌まり込む電極保持孔を有し、該電極保持孔の内側周面と前記複合電極12の外側周面が接することによって前記複合電極12を保持するものである。
【0045】
より詳しく説明すると、前記電極保持孔の内側周面と前記複合電極の外側周面は、互いに接してはいるものの互いに密着してはいないので、前記複合電極12を前記電極保持孔の内部に挿入した状態で、前記複合電極12を上下に動かしたり、回転させたりすることが可能である。
前記固定部62は、例えば、前記保持部材61の外側周面に形成された雄ねじと、前記電極挿入口5の内側周面に形成され前記雄ねじに螺合する雌ねじとを備えている。
【0046】
本実施形態では、前記保持部材61と、前記貯留部11との間に、例えば、前記複合電極12の外側周面に嵌合するように形成された変形可能な環状部材63が配置されている。この環状部材63は、例えば、樹脂などで形成されたOリングなどである。この環状部材63は、その上面で前記保持部材61と当接しかつ下面が前記樹脂ブロックと当接するものであり、前記上面が周方向外側に向かって下方に傾斜している。
【0047】
前記保持部材61を前記固定部62によって前記貯留部11に固定すると、前記保持部材61の下端が前記環状部材63の上面を押圧し、前記上面の傾斜によって前記環状部材63が前記複合電極12の外側周面に押し付けられて密着する。その結果、前記複合電極12は、上下動又は回動できなくなくなり、前記複合電極12が前記貯留部11に対して固定されるようにしてある。
【0048】
このように構成した電気化学測定ユニット1及び電気化学測定装置100によれば、感応部121bを有する測定電極121と液絡部122bを有する比較電極122とが一体に形成されている複合電極12を使用しているので、測定電極121と比較電極とを別々に設ける場合に比べて、感応部121bと液絡部122bとの間の距離を小さくすることができる。その結果、サンプル液が常に流れている場合であっても、感応部121bと液絡部122bとがほぼ同じ位置を流れているサンプル液に接触することができるので、pH等の電気化学的特性を精度よく測定することができる。
また、複合電極を使用しているので、貯留部内に測定電極と比較電極とを別々に配置する必要がなく、貯留部の内部容積を例えば10cm以下とできるなど、できるだけ小型化することができる。
【0049】
前記導入口11aが前記導出口11bよりも下方に位置するように設けられているので、前記導入口11aから前記貯留部11内に流れ込んだサンプル液が前記貯留部11の下方から上方に向かって流れる。
その結果、サンプル液中に気泡が含まれている場合であっても、気泡を前記導出口11bから外部へ排出しやすいので、気泡が感応部121bや液絡部122bの周辺に留まりにくく、気泡による測定への悪影響をより低減することができる。
前記貯留部11が、ガラスからなるものであれば、ガラスの親水性によって気泡が貯留部11の壁に密着することを防いで、気泡をより外部へ排出しやすい。もしくは、親水性を付与するコーティング等の処理を行うことでも同様の効果が得られる。
【0050】
導入口11aと感応部121bと導出口11bとが、下方からこの順番で並んでいるので、導入口11aから流入したサンプル液が確実に感応部121b付近を流れて導出口11bへ向かう。
【0051】
液絡部122bが、導出口11bに対向して配置されていれば、液絡部122bから滲出する内部液を該導出口11bから前記貯留部11の外へ排出しやすい。液絡部122bの高さが、導出口11bと同じ高さであれば、内部液を導出口11bから外部へより排出しやすい。
【0052】
また、導入口11aの下端が、貯留空間11cの底壁と同じ高さになるように設けられているので、内部液として比重の重いものを使用する場合には、該内部液を導入口11aからも貯留空間の外へ排出しやすい。
そのため、前記貯留部11内に内部液が滞留することによるサンプル液のpH等への影響を抑えることができる。
【0053】
前記導出口11bの径を、前記導入口11aの径よりも大きくしてあるので、前記貯留部11へのサンプル液の流入による前記貯留部11の内圧上昇を抑制することができる。
その結果、前記複合電極12の液絡部122bからサンプル液が該複合電極12内部に流入することによる測定への悪影響を抑えることができる。
【0054】
前記複合電極12の感応部121bが、貯留部11の底壁から1mm以上離間するように前記複合電極12を配置してあるので、比重の大きい高濃度KCl水溶液等の内部液が貯留部11の底に滞留したとしても、高濃度のKCL水溶液が溜まっている部分を避けてpH等を測定することができる。 そのため、前記貯留部11の一番下の底壁に前記複合電極12の下端が触れるように前記複合電極12を挿入する場合よりも測定精度を高く保つことができる。
【0055】
一方で、前記複合電極12の感応部121bの下端が、前記貯留部11の一番下の底壁に前記複合電極12の先端が触れないように前記複合電極12の感応部121bの下端の位置を高くしすぎると、前記貯留空間11cの容積が大きくなりすぎてしまい、サンプルが微量の場合に、サンプルのpH等の電気化学特性の変化に対する測定値の応答が悪くなってしまう。
【0056】
この点、本実施形態に係る電気化学測定ユニット1によれば、前記感応部121bの下端を2mm程度前記貯留空間11cの底壁から離すようにしているので、前記貯留空間11cの容積が大きくなりすぎず、サンプルのpH等の電気化学特性の変化に対する測定値の応答の悪化を抑えることができる。
なお、前記貯留部11に前記複合電極12を取り付けた後の貯留空間11cの容積は、前記貯留空間11cの大きさや、前記複合電極12の取り付け位置にもよるが、およそ0.1cm以上10cm以下となるようにしてある。
【0057】
前記樹脂ブロックが、薬剤耐性の高い塩化ビニルやPFAなどで形成されているので、サンプル液による貯留部11の劣化が起こりにくい。
前記貯留空間11cが、円筒状のものであるので円筒状の複合電極12を収容しやすく、またサンプル液の流れが前記貯留空間11cの内部でよどむことを抑えることができる。
【0058】
前記樹脂ブロックの内部に形成されている貯留空間11cが、直径が5mm程度、上下方向の高さが1cm程度と比較的小さいものであるので、貯留空間11cの体積が大きい場合に比べて、サンプル液の流れに対する測定の応答を向上させることができる。
【0059】
前記複合電極12がドーム型電極であるので、複合電極12をより小型化することができ、この複合電極を収容する貯留空間11cについても、より小型化することができる。
【0060】
本発明に係る電気化学測定ユニット及び電気化学測定装置は、前述した実施形態に限られるものではない。
分析装置は、液体クロマトグラフに限られないが、好ましくは、分析装置本体と、試薬を調合して試薬のpH等を経時的に変化させる試薬調合機構とを備えるものであることが好ましい。
このような試薬調合機構を備える分析装置の後段に、本発明に係る電気化学測定ユニットを配置しておけば、前記試薬調合機構によって調合された試薬のpH等が所望の値からずれていないかどうかを測定によって確認することができる。
さらに、分析装置による分析結果を、実際に測定されたpH等と対応させることもできる。
前記分析装置本体と前記試薬調合機構とが流路を介して接続されている場合には、本発明に係る電気化学測定ユニットを前記試薬調合機構の後段であり、前記分析装置本体の前段に配置するようにしてもよい。
【0061】
前記分析装置又は前記試薬調合機構から流出する液を全て前記電気化学測定装置に導入するものに限らず、例えば、図5に示すように、前記分析装置又は前記試薬調合機構と前記電気化学測定装置とを接続する流路を、例えば、チーズ接手などを使用して分岐させても良い。
このようにすれば、前記分析装置又は前記試薬調合機構から流出する液が流れる主流路とは別のバイパス流路上に前記電気化学測定装置を設けることもできる。
分岐した流路のうち、どちらに液を流すかについては、例えば、各流路の内径によって調節しても良いし、それぞれの分岐流路にニードルバルブやオリフィス等を設けて調節するようにしても良いし、流路を切り替える三方弁等を設けても良い。
【0062】
また、図5に示すように、前記電気化学測定装置から流出する流路についても分岐させて、電気化学測定装置の前段の流路と同様に流路を切替られるようにしても良い。特に前記電気化学測定装置から流出する液をサンプル流路に戻す場合や、後段に設けられた別の分析装置に流入する場合には、このように後段の流路を分岐させておけば、前記電気化学測定装置から流出する液をサンプル流路又は分析装置に導入するかドレインから排出するのかを選択することができる。
【0063】
前記導入口と前記導出口は、前記貯留空間を挟んで互いに対向するように設けられているものに限らず、例えば、図6(a)、(b)及び(c)に示したように、前記貯留空間に対して同じ側に設けられていても良いし、前記貯留空間を形成している壁のうち、互いに隣り合う壁にれぞれ設けられていても良い。また、図6に示した電気化学測定用セルは、前記導入口よりも前記導出口が上側に位置するように流路に取り付けられてさえいれば、どのような向きで取り付けられていても良い。 前記導入口は、前記導入口の下端の高さが前記貯留部の底壁と同じ高さにあるものに限らず、例えば、前記貯留部の底壁よりも高い位置になる等、前記導入口の下端の高さが前記貯留部の底壁とは異なる高さになるように設けられていても良い。
【0064】
前記導出口は前記導入口よりも大きくしてあったが、これに限られず、例えば、前記導出口と前記導入口の大きさを等しくしても良い。
前記液絡部は、必ずしも前記導出口と同じ高さに配置されている必要はなく、前記導出口よりも高い位置や、前記導出口よりも低い位置に配置されていても良い。
【0065】
前記実施形態では、前記導出口及び前記導入口が前記樹脂ブロックの側面に位置する向きで、前記樹脂ブロックが前記流路に接続されていたが、例えば、図7に示すように、前記導出口及び前記導入口が前記樹脂ブロックの上面と下面にそれぞれ配置されるように前記樹脂ブロックが前記流路に接続されていても良いし、これらとは異なる任意の角度で前記樹脂ブロックが前記流路に接続されていても良い。
【0066】
なお、前記樹脂ブロックを前記流路に接続したときの前記樹脂ブロックの角度に関わらず、上下方向とは鉛直方向に沿った上下方向を意味し、前記貯留部の底壁とは、前記貯留部を流路に接続した状態で、前記貯留空間の鉛直方向の最下面を形成している壁を指す。
【0067】
前記流路を前記導入口又は前記導出口に接続する接続ポートは、Oリングを介在させてねじによって接続するものとしても良いが、これに限られず、例えば、前記流路を前記導入口又は前記導出口に接着又は溶着してもよいし、シールテープなどを使用して接続しても良いし、フェラルなどによってねじ込むようにしても良いし、ワンタッチ接手などを使用して接続しても良い。
【0068】
前述した樹脂ブロック、貯留部、導入口、導出口、複合電極、流路径などの大きさは、測定するサンプルの流量などによって適宜変更することができる。
前記貯留部の形状は、複合電極の形状に合わせて適宜変更してもよい。
前記複合電極の形状は、円筒形状に限らず、角柱状であっても良いし、異形筒状であってもよい。
前記貯留空間の形状は、前記複合電極の形状に合わせて変更しても良く、角柱状や、異形筒状のものであっても良い。
導入口及び導出口の形状は、円形状に限らず、多角形状であっても良いし、異形状であっても良い。
【0069】
前記実施形態では、測定電極がpH電極であるものを記載したが、測定電極はpH電極にかぎらず、イオン選択性電極であっても良いし、酸化還元電位を測定するための測定電極であっても良い。
酸化還元電位を測定する測定電極の場合には、応答ガラスではなく、内部極の一部をサンプル液側に露出させたものを感応部として使用すればよい。
【0070】
前記複合電極は、前記樹脂ブロックの上面から挿入されているものに限らず、例えば、図7に示すように、前記樹脂ブロックの側面から挿入されていても良いし、前記樹脂ブロックに斜め方向から前記貯留部に挿入されていても良い。
【0071】
前記複合電極が前記樹脂ブロックの側面から挿入されている場合や、前記樹脂ブロックに対して斜め方向から挿入されている場合には、前記液絡部が上方を向くように前記複合電極を配置しておくと、前記液絡部からサンプル液中に滲出する内部液の量を少なく抑えることができる。
【0072】
前記取付構造は、前記保持部材が前記樹脂ブロックに当接する当たり面を有し、このあたり面が前記樹脂ブロックに当接することによって、前記複合電極の上下の位置を位置決めするようにしても良い。
【0073】
前記樹脂ブロックは、例えば、図8に示すように、これら樹脂ブロック11及び複合電極12を内部に収容する筐体CSやこれら樹脂ブロック11を背後から支持する背板に対して固定されているものとしても良い。
より具体的には、前記樹脂ブロック11は、例えば、該樹脂ブロック11に形成されたねじ穴Hと前記筐体CSに設けられたねじ穴Hとをボルトなどで締め付けることによって前記筐体CSに固定されるようにしても良い。ただし、このような取り付け方に限られるものではない。
【0074】
前記複合電極12は、例えば、図8に示すように、前記複合電極12のサンプル液に浸漬されない部分の一部を前記筐体CS又は前記背板に樹脂からなる1つ又は複数のバンドBなどで固定されていても良いし、図9に示すように、前記サンプル液に浸漬されない部分に設けられたフックFを前記筐体CS又は前記背板に設けられたフック受けFHにひっかけるようにして固定しても良い。
また、前記複合電極12は、図10に示すような位置決め部材Vによって前記樹脂ブロック11に対して位置決めされていても良い。前記位置決め部材Vは、前記複合電極12のサンプル液に浸される部分の側面だけでなく、前記複合電極12のサンプル液に浸されない部分の側面をも覆うように、前記複合電極12を内部に収容するものであり、例えば、直方体状のブロックに前記複合電極12の外形に沿った貫通孔が形成されたものである。前記位置決め部材Vは、前記複合電極12を前記貫通孔の内部に収容することによって前記複合電極12のサンプル液に浸されない部分とそれ以外の部分との間に形成された肩の部分を保持して、前記複合電極12の高さを位置決めするものである。位置決め部材Vは、前記樹脂ブロック11とは別体として形成されていても、前記樹脂ブロック11と一体に形成されていても良い。
【0075】
以上に説明したように前記複合電極のサンプル液に浸されない部分を支えておけば、外径の細い前記複合電極のサンプル液に浸される部分のみを前記取付構造によって前記樹脂ブロックに固定している場合に比べて、前記複合電極が折れてしまう危険性を低く抑えることができる。
【0076】
前記電気化学測定ユニットは、1つのみで使用するものに限らず、例えば、図11に示すように、複数の電気化学測定ユニットを接続して使用するようにしても良い。この場合、複数のユニットは、同じ種類のものであっても良いし、異なる種類のものであっても良い。
例えば、電気伝導率等を測定する電磁気センサを有する測定ユニットや、pH以外のイオン濃度を測定する測定ユニット、酸化還元電位を測定する測定ユニットなどを並べてOリングなどを介して液密に接続するようにしても良い。この場合には、例えば図11に示すように、それぞれの電気化学測定ユニットの電気化学測定セル同士を、いずれのセルにおいてもサンプル液が下から上に流れるように、下流側のセルの導出口が上流側のセルの導出口よりも上方になるように接続することが好ましい。
前述したような複数の電気化学測定セルが、1つの樹脂ブロックとして一体に形成されていても良い。これらの電気化学測定ユニットは、必ずしも前述した複合電極のようなロッド状の電極が差し込まれているものに限らず、例えば、内部の貯留空間や流路内に面状のセンサがはめ込まれているようなものであっても良い。
その他、本発明の趣旨に反しない範囲での種々の変更や組み合わせが可能である。
【実施例
【0077】
以下に、本発明の実施例を詳細に述べるが、本発明はこれらに限られるものでないことは言うまでもない。
この実施例では、貯留部内でのサンプル液の流れる方向による測定結果への影響を調べた。さらに、貯留部内での感応部の位置による測定結果への影響についても調べた。
【0078】
(実施例1)
前記実施形態で説明したものと同じ(導出口の位置を感応部よりも上方に配置し、導入口を感応部よりも下方に配置し、複合電極の先端に配置した感応部を貯留部の底壁から2mm程度上方に位置するように配置した)電気化学測定ユニットを備えた電気化学測定装置を用いてサンプル液のpHを測定した。
【0079】
(実施例2)
複合電極の先端に配置した応答ガラスを貯留部の底壁に当接する位置に配置した以外は実施例1と同じ電気化学測定ユニットを備えた電気化学測定装置を用いてサンプル液のpHを測定した。
【0080】
(比較例1)
導出口の位置を感応部よりも下方に配置し、導入口の位置を感応部よりも上方に配置した以外は実施例1と同じ電気化学測定ユニットを備えた電気化学測定装置を用いてサンプル液のpHを測定した。
【0081】
<応答速度>
これら実施例1又は比較例1の電気化学測定装置を用いて、サンプル液をpH4の標準液から水道水に切り替えた際の応答速度(T95)を調べた。結果を図12及び図13に示す。図12はサンプル液の流速が、450μl/minの場合を、図13はサンプル液の流速が2000μl/minの場合の結果を示す。
【0082】
図12及び図13の結果から、実施例1の電気化学測定装置を使用した場合には、流速が2000μl/minのときのT95が70秒と、フロー型のpH測定に十分に使用できるものであることがわかった。一方、比較例1の電気化学測定装置を使用した場合には、測定値がドリフトし、応答速度を特定することができなかった。
【0083】
サンプル液が貯留部の上方から下方に向かって流れる比較例1において、測定値がドリフトしてしまった原因は、内部液によるものではないかと考えられる。比較例1の測定装置では、サンプル液が貯留部の上方から下方に向かって流れるので、液絡部から滲出した内部液(3.3MのKCl水溶液)もこの流れに従って液絡部よりも下方に配置されている感応部の方向に流れて応答ガラス表面でのpH応答に影響を与えているのではないかと考えられる。
【0084】
<サンプル液の流速による測定結果への影響>
次に、流速によるpH測定への影響を調べた。サンプル液としては、pH4の標準液を使用し、流速を0μl/min、450μl/min、1000μl/min又は2000μl/minとした場合の測定結果を図14図16に示す。
【0085】
図14は、実施例1の電気化学測定装置に各流速でサンプル液を供給した場合のpH測定結果を示すグラフである。
図15は、実施例2の電気化学測定装置に各流速でサンプル液を供給した場合のpH測定結果を示すグラフである。
図16は、比較例1の電気化学測定装置に各流速でサンプル液を供給した場合のpH測定結果を示すグラフである。
【0086】
これらの結果のうち、流速が0μl/min以外の場合の各グラフを見比べると、実施例1及び実施例2では、流速に関わらず測定されるpH値が安定している(±0.01pH以内)のに対して、比較例1では、流速が2000μl/minの場合に、測定開始から15分以降にpH値が大きくぶれていることがわかる。これはサンプル液中に気泡が混入したことによるものであると思われる。
【0087】
実施例1や実施例2の場合には、たとえサンプル液中に気泡が存在していたとしても、サンプル液が貯留部の下方から上方に向かって流れているので、サンプル液の流速に関わらず気泡が導出口から排出されやすく、気泡によるpH測定への影響はほとんどないものと考えられる。
【0088】
一方で、比較例1では、サンプル液が貯留部の上方から下方に向かって流れるので、いったん貯留部に気泡が入ってしまうとなかなか気泡が抜けず、特にサンプル液の流速が遅い場合には、気泡が液絡部や応答ガラスの表面に付着してしまって、pH測定にも大きな影響を与えてしまったと考えられる。
【0089】
ところで、流速が0μl/minの場合の実施例1と実施例2との結果を比較すると、実施例2では、時間がたつにつれてだんだんとpH値が低下している。
これは、サンプルの流れが無いので、液絡部から滲出した内部液が貯留部の底部に滞留してしまい、この内部液が滞留している部分に複合電極の先端に配置された応答ガラスが位置しているので、この部分におけるpHが時間とともに変化していることが原因であると考えられる。
【0090】
<ポンプ脈動による測定値への影響>
実施例1及び比較例1において、サンプル液としてpH4の標準液を使用し、さらにサンプル液の流速を遅くした場合の測定結果が、それぞれ図17及び図18である。サンプル液の流速が遅くなると、サンプル液中に滲出する内部液による測定値への影響が表れることがわかる。
【0091】
図17から、実施例1の電気化学測定装置を使用した場合には、ポンプ脈動によってpH値が変動してはいるものの、変動は規則的であり測定値は比較的安定している。
これに対して、図18の比較例1の場合には、ポンプ脈動によるpH値の変動が大きく測定値が安定していないことが分かる。
【0092】
これは、比較例1では、サンプル液が貯留部内を上から下に向かって流れているので、液絡部から滲出した内部液がサンプル液の流れによって液絡部よりも下方にある感応部の周囲に内部液が流れてしまうからであると考えられる。
【0093】
<連続測定>
実施例1の電気化学測定装置を使用し、連続して長時間pH4の標準液のpHを測定をした結果を図19に示す。この結果から、サンプル液の温度によって測定値がぶれているように見えるものの、実施例1の電気化学測定装置であれば、±0.01pH/24時間という非常に安定した測定ができることがわかった。
図19では、サンプル液中に気泡が混入していたが、気泡によるpH測定への影響はなかった。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明によれば、フロー型の測定装置において、例えば、微量なサンプル液であってもそのpH等の電気化学特性値を簡単な構成で精度よく測定することができる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19