(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】ポリイミド樹脂
(51)【国際特許分類】
C08G 73/10 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
C08G73/10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022116964
(22)【出願日】2022-07-22
【審査請求日】2022-07-22
(32)【優先日】2022-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲テ▼超
(72)【発明者】
【氏名】▲ホアン▼ 威儒
(72)【発明者】
【氏名】張 宏毅
(72)【発明者】
【氏名】劉 家霖
(72)【発明者】
【氏名】魏 千凱
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-187344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/10-73/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸残基とジアミン残基とを含むポリイミド樹脂であって、
前記テトラカルボン酸残基が、
3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)由来のテトラカルボン酸残基、
1,4-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル)二無水物(TAHQ)由来のテトラカルボン酸残基、
ピロメリット酸二無水物(PMDA)由来のテトラカルボン酸残基、
4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)由来のテトラカルボン酸残基、
4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)由来のテトラカルボン酸残基、
2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)由来のテトラカルボン酸残基、
ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(BTDA)由来のテトラカルボン酸残基、
シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(CBDA)由来のテトラカルボン酸残基、
1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(HPMDA)由来のテトラカルボン酸残基、及び
4,4’-ビスフェノールA二無水物(BPADA)
からなる群より選択され、
前記ジアミン残基100モル部に対し、下記一般式(A8)により表されるジアミン化合物由来の前記ジアミン残基が20モル部以上であり、残り80モル部以下の前記ジアミン残基が鎖状構造の脂肪族分子構造モノマーを含まないジアミン化合物由来のジアミン残基である、
ポリイミド樹脂。
ここで、mは独立して6~8の整数から選択される。
【請求項2】
テトラカルボン酸残基とジアミン残基とを含むポリイミド樹脂であって、
前記ジアミン残基100モル部に対し、末端アミン基がポリフェニレンエーテル(PPE)で修飾されたジアミン化合物由来の前記ジアミン残基が20モル部以上であり、残り80モル部以下の前記ジアミン残基が鎖状構造の脂肪族分子構造モノマーを含まないジアミン化合物由来のジアミン残基であり、
下記一般式(1)により表される構造部を含む、
ポリイミド樹脂:
、
ここで、
mは独立して6~8の整数から選択され、
R
1及びR
2は独立して
3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)由来のテトラカルボン酸残基、
1,4-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル)二無水物(TAHQ)由来のテトラカルボン酸残基、
ピロメリット酸二無水物(PMDA)由来のテトラカルボン酸残基、
4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)由来のテトラカルボン酸残基、
4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)由来のテトラカルボン酸残基、
2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)由来のテトラカルボン酸残基、
ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(BTDA)由来のテトラカルボン酸残基、
シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(CBDA)由来のテトラカルボン酸残基、
1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(HPMDA)由来のテトラカルボン酸残基、及び
4,4’-ビスフェノールA二無水物(BPADA)由来のテトラカルボン酸残基
から選択され、
R
3は下記一般式(A8)により表されるジアミン化合物由来のジアミン残基とされ:
ここで、mは独立して6~8の整数から選択される。
【請求項3】
10GHzの電磁波における誘電正接(Df)が0.0040以下である、
請求項
2に記載のポリイミド樹脂。
【請求項4】
吸水率が0.3%未満である、
請求項
2に記載のポリイミド樹脂。
【請求項5】
ガラス転移温度が250℃よりも高い、
請求項
2に記載のポリイミド樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリイミド樹脂に関するものであり、特に、良好な誘電特性、低い耐水性、又は好ましい耐熱性を有するポリイミド樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
技術の進歩に伴い、電子部品は軽く、薄く、短く、コンパクトであるという目標に向け開発されている。更に、第5世代移動ネットワーク(以降、5Gと呼称)の出現に伴い、当該産業において高周波伝送、高速信号伝送、低遅延の要求が上昇している。このため、現在、関連分野では、電子基板の誘電特性(低誘電率と低誘電正接)及び耐熱性の要件を満たすため、高ガラス転移温度(Tg)、低誘電率(Dk)、低誘電正接(Df)、及び良好な耐熱性を持つ基板材料の研究開発に励んでいる。
【0003】
一般的なポリイミド樹脂は、多くがベンゼン環を含む分子構造である。これらが良好な耐熱性及び高ガラス転移温度を有するとはいえ、これらの誘電特性は劣っている。ポリイミド樹脂を重合するために脂肪族分子構造モノマーが用いられる場合、誘電正接が低減されるとはいえ、樹脂のガラス転移温度が下がり、同時に、樹脂の耐燃性が劣るという問題が存在する可能性がある。このため、本発明は、良好な誘電特性、低い吸水率、及び好ましい耐熱性を持つポリイミド樹脂の開発に捧げるものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、良好な誘電特性、低い吸水率、及び好ましい耐熱性を持つポリイミド樹脂を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸残基とジアミン残基とを含む。テトラカルボン酸残基は、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)由来のテトラカルボン酸残基、1,4-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル)二無水物(TAHQ)由来のテトラカルボン酸残基、ピロメリット酸二無水物(PMDA)由来のテトラカルボン酸残基、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)由来のテトラカルボン酸残基、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)無水ジフタル(6FDA)由来のテトラカルボン酸残基、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)由来のテトラカルボン酸残基、ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(BTDA)由来のテトラカルボン酸残基、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(CBDA)由来のテトラカルボン酸残基、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(HPMDA)由来のテトラカルボン酸残基、及び4,4’-ビスフェノールA二無水物(BPADA)からなる群より選択される。
【0006】
本発明のポリイミド樹脂は、テトラカルボン酸残基とジアミン残基とを含む。ジアミン残基100モル部に対し、末端アミン基がポリフェニレンエーテル(PPE)で修飾されたジアミン化合物由来のジアミン残基が20モル部以上である。
【0007】
本発明のポリイミド樹脂は次の特性を有する:10GHzの電磁波の下で0.0040以下の誘電正接(Df)、0.3%未満の吸水率、及び250℃よりも高いガラス転移温度。
【発明の効果】
【0008】
まとめると、本発明のポリイミド樹脂は、良好な誘電特性、低い吸水率、及び好ましい耐熱性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[ポリイミド樹脂の製造]
【0010】
本実施形態において、ポリイミド樹脂を製造するために要する原材料は下記のとおりである。
【0011】
1つの実施形態において、溶剤は、トルエン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)、ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルホルムアミド(DMF)、シクロヘキサノン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)からなる群より選択される。ただし、本発明はこれに限定されない。
【0012】
1つの実施形態において、ジアミン構造を有する一級アミン化合物は下記の一般式(A1)~一般式(A8)により表されるジアミン化合物より選択されてよい。
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
一般式(A1)~一般式(A7)において、「R1」は独立して炭素数1~6の一価の炭化水素基又はアルコキシ基から選択され、「A」は独立して-O-、-S-、-CO-、-SO-、-SO2-、-COO-、-CH2-、-C(CH3)2-、-NH-、又は-CONH-の二価連結基から選択され、「n1」は独立して0~4の整数から選択される。
【0022】
一般式(A3)において、一般式(A2)と重複するものは除外される。一般式(A5)において、一般式(A4)と重複するものは除外される。
【0023】
一般式(A1)により表されるジアミンは、例えば、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルプロパン、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルプロパン、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、又は(3,3’-ビスアミノ)ジフェニルアミンであるが、これに限定されない。
【0024】
一般式(A2)で表されるジアミンは、例えば、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]アニリン、又は3-[3-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]アニリンであるが、これに限定されない。
【0025】
一般式(A3)で表されるジアミンは、例えば、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R)、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン(APB)、4,4’-[2-メチル-(1,3-フェニレン)ジオキシ]ビスアニリン、4,4’-[4-メチル-(1,3-フェニレン)ジオキシ]ビスアニリン、又は4,4’-[5-メチル-(1,3-フェニレン)ジオキシ]ビスアニリンであるが、これに限定されない。
【0026】
一般式(A4)で表されるジアミンは、例えば、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、又はビス[4,4’-(3-アミノフェノキシ)]ベンズアニリドであるが、これに限定されない。
【0027】
一般式(A5)で表されるジアミンは、例えば、4-[3-[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]アニリン、又は4,4’-[酸素系ビス(3,1-フェノキシ)]ビサニリンであるが、これに限定されない。
【0028】
一般式(A6)で表されるジアミンは、例えば、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル(BAPE)、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン(BAPS)、又はビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン(BAPK)であるが、これに限定されない。
【0029】
一般式(A7)で表されるジアミンは、例えば、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)]ビフェニル、又はビス[4-(4-アミノフェノキシ)]ビフェニルであるが、これに限定されない。
【0030】
一般式(A8)において、「m」は独立して6~8の整数から選択される。
【0031】
1つの実施形態において、一般式(A8)の構造を有する化合物はポリフェニレンエーテルジアミンと呼ばれる(以降、PPE-NH2と呼称)。
【0032】
1つの実施形態において、アミン化合物中の総アミン基を100モル部とすると、PPE-NH2のアミン基の数は少なくとも20モル部以上である。
【0033】
1つの実施形態において、一般式(A1)~一般式(A8)により表されるジアミン化合物に加え、ジアミン構造を有する一級アミン化合物は、4,4-ジアミノジシクロヘキシルメタン(PACM;CAS番号:1761-71-3)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE-R;CAS番号:2479-46-1)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(BAPP;CAS番号:13080-86-9)、又はこれらの組合せからなる群より選択されるジアミン化合物を更に含んでよい。
【0034】
1つの実施形態において、無水物は次の無水物化合物から選択されてよい:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA;CAS番号:2420-87-3)、1,4-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル)二無水物(TAHQ;CAS番号:2770-49-2)、ピロメリット酸二無水物(PMDA;CAS番号:89-32-7)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA;CAS番号:1823-59-2)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA;CAS番号:1107-00-2)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA;CAS番号:3711-01-1)、ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(BTDA;CAS番号:2421-28-5)、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(CBDA;CAS番号:4415-87-6)、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(HPMDA;CAS番号:2754-41-8)、4,4’-ビスフェノールA二無水物(BPADA;CAS番号:38103-06-9)、又はこれらの組合せ。
【0035】
ポリイミド樹脂は、下記一般式(1)により表される構造を含んでよい。
【0036】
【0037】
一般式(1)において、「m」は独立して6~8の整数から選択され、「R1」及び「R2」は独立して二無水物モノマー、又は二無水物モノマーに対応する基又は二無水物モノマーに由来する基から選択され、「R3」はジアミンモノマー、又はジアミンモノマーに対応する基又はジアミンモノマーに由来する基から選択される。
【0038】
本実施形態において、上記の方法により形成されたポリイミド樹脂はポリフェニレンエーテル構造を有する。このため、ポリイミド樹脂は低吸水率、低誘電率(Dk)、及び低誘電正接(Df)を有することができる。1つの実施形態において、10GHzの無線周波数で、ポリイミド樹脂に対応する誘電率は約3.1~3.6であり、ポリイミド樹脂に対応する誘電正接は0.0040未満であることができる。
【0039】
[実施例及び比較例]
【0040】
後続の段落において、本発明は実施例及び比較例を具体的に表すが、基本的に本発明はこれに限定されない。
【0041】
[無水物の製造]
【0042】
3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、1,4-フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル)二無水物(TAHQ)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、4,4’-オキシジフタル酸無水物(ODPA)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)無水ジフタル(6FDA)、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、ベンゾフェノン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物(BTDA)、シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物(CBDA)、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物(HPMDA)、又は4,4’-ビスフェノールA二無水物(BPADA)が一般的な無水物であり、通常の商業慣行により得られる。
【0043】
[ポリイミド樹脂の合成]
【0044】
実施例4(即ち、全無水物の合計に対しPMDAが20モル%、BPDAが80モル%であり、全アミンの合計に対しPPE-NH2が100モル%)に類似又は同一の実施例において、ポリイミド樹脂の合成を以下に詳細に説明する。
【0045】
工程:窒素ガス流下において、ジアミンモノマーの対応する量(例えばPPE-NH2の100モル%)と重合後に約15重量%の固形分濃度を有する溶剤(例えばジメチルアセトアミド(DMAc))とを300mlのセパラブル反応フラスコ内に注入し、室温で攪拌して溶解させる。ジアミンモノマーが完全に溶解した後、二無水物モノマーの対応する量(例えば20モル%の二無水物モノマー(PMDA)と80モル%の二無水物モノマー(BPDA))を加え、重合反応のため室温で約15時間攪拌する。最後に、ポリアミド溶液が得られる。
【0046】
[ポリイミドフィルムの製造]
【0047】
ポリイミドフィルムの製造方法を以下に詳細に説明する。
【0048】
該ポリアミド溶液を12μmの厚さで銅箔上に均一にコーティングし、硬化の後、コーティングしたポリアミド溶液の厚さは25μmである。次いで、溶液を130℃での加熱及び乾燥により除去する。次に、130℃から350℃まで段階的昇温加熱処理を実行し、脱水イミド化が完了する。ポリイミドフィルムを得るため、ポリイミド複合材料含有銅箔を塩化鉄水溶液を用いてエッチングする。
【0049】
[各実施例及び各比較例の評価方法]
【0050】
ガラス転移温度(Tg)試験:一般的な動的機械分析装置(DMA)(例えばUBMから市販、商品名:E4000F)を5mm×20mmのサイズのポリイミドフィルムを30℃から400℃まで4℃/分の加熱速度及び11Hzの周波数で試験するために用い、損失係数(tanδ)の最高温度をガラス転移温度として設定する。加えて、DMAにより試験された30℃での貯蔵弾性率が1GPa(ギガパスカル、1×109Pa)以上で且つ280℃での貯蔵弾性率が0.3GPa未満を示すものは「熱可塑性」として定義し、30℃での貯蔵弾性率が1GPa以上で且つ280℃での貯蔵弾性率が0.3GPa以上を示すものは「非熱可塑性」として定義する。
【0051】
吸水率試験:ポリイミドフィルムを10cm×10cmの正方形試験片に切断し、オーブンにおいて105℃で1時間ベークして、測定のために取り出し、初期重量を記録する。サンプルを85℃/85%RHオーブンに24時間放置する。フィルムを取り出した後、表面水滴を拭き取り、吸水後の重量を測定する。ポリイミドフィルムの吸水率は、フィルムの吸水後重量と初期重量とを算出することで得られる。
【0052】
誘電率(Dk)試験又は誘電正接(Df)試験:試験方法において、銅箔を除去した銅箔基板の試験片を24℃~26℃の範囲の温度、45%~55%の範囲の湿度で約24時間放置する。次いで、一般的なベクトルネットワークアナライザ(Agilentから市販、商品名:E8363C又はE4991A)とスプリットポスト誘電体共振器(SPDR共振器)を用い、10GHzの高周波における樹脂片の誘電率又は誘電正接を試験する。
【0053】
難燃性試験:UL-94標準方法に基づきサンプルの難燃性を試験する。表1と表2において、難燃性試験に合格したサンプルを「〇」で示し、そうでないものを「×」で示す。
【0054】
[各実施例及び各比較例の比較]
【0055】
各実施例及び各比較例において、対応するポリイミド樹脂及び対応する銅箔基板を上述した方法で形成しており、差異はポリイミド樹脂を形成するために用いた組成及び比率にある。加えて、表1と表2の各実施例及び各比較例において、各無水物の比率(モル%)は全無水物の合計に対する比率であり、各アミンの比率(モル%)はは全アミンの合計に対する比率である。各組成及び対応する評価は表1又は表2に示すとおりである。
【0056】
【0057】
【0058】
表1と表2に示すように、一般式(A1)~式(A8)により表されるジアミン化合物を介して形成されたポリイミド樹脂は、高ガラス転移温度、低吸水率、低誘電率、低誘電正接、又は好ましい難燃性を有することができる。
【0059】
表1と表2に示すように、一般式(A8)により表されるジアミン化合物を20モル%以上有するよう形成されたポリイミド樹脂は、低誘電正接と高ガラス転移温度の両方を有することができる。
【0060】
表1と表2に示すように、一般式(A8)により表されるジアミン化合物を75モル%以上有するよう形成されたポリイミド樹脂は、低誘電正接(例えば0.0030未満の誘電正接)を有することができ、難燃性が標準難燃性試験に合格することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
加えて、本発明の実施形態のポリイミド樹脂は、直接的又は間接的に銅箔基板に塗布することができ、他の民生、産業、又は適切な応用のための電子製品に更に加工されることができる。