(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】柱脚金物
(51)【国際特許分類】
E04B 1/24 20060101AFI20240405BHJP
E04B 1/58 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
E04B1/24 R
E04B1/58 511L
(21)【出願番号】P 2022120725
(22)【出願日】2022-07-28
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】595118892
【氏名又は名称】株式会社ポラス暮し科学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】上廣 太
(72)【発明者】
【氏名】原田 直希
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-204676(JP,A)
【文献】特開平09-203116(JP,A)
【文献】特開平11-013136(JP,A)
【文献】特開2008-267007(JP,A)
【文献】特開2007-231596(JP,A)
【文献】特開2017-089160(JP,A)
【文献】特開平11-036446(JP,A)
【文献】特開2005-030194(JP,A)
【文献】特開2008-038392(JP,A)
【文献】特開2002-038611(JP,A)
【文献】特開2003-096922(JP,A)
【文献】特開2000-136572(JP,A)
【文献】特開2002-256627(JP,A)
【文献】特開平10-131291(JP,A)
【文献】特開2008-045335(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/24
E04B 1/26
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物を構成する独立柱となる柱の下端面と設置面との間に配設され、前記柱を支え前記設置面に固定させる柱脚金物であって、
内周面に雌ねじが形成され
る筒状であり、上端面に天板を有
し、該天板上面が前記柱の下端面に接する上部筒体と、
下端にほぞ雌ねじを備え、前記上部筒体の内側にて前記天板を
下方から貫通する
ほぞ固定ボルトが螺着されることで前記上部筒体に同軸で固定され
前記天板上面に密着して起立し、
前記柱の下端面に開口するほぞ穴に挿入されて
、該柱を横断するピンが貫通して
該柱に対して抜け止めされるほぞ部材と、
外周面に
前記上部筒体の雌ねじと螺合する雄ねじが形成され
る筒状であり、下端面に底板を有し、
前記設置面に固定されるアンカーボルトが貫通する貫通穴を前記底板に有して
、筒の内側から前記設置面に固定される下部筒体と、
を具備
するとともに、
前記柱の太さとほぼ等しい直径で前記天板と前記底板とが形成され、前記天板と前記底板が固定されている前記上部筒体と前記下部筒体とが、前記天板と前記底板よりも若干小径で形成されることを特徴とする柱脚金物。
【請求項2】
建物を構成する独立柱となる柱の下端面と設置面との間に配設され、前記柱を支え前記設置面に固定させる柱脚金物であって、
外周面に雄ねじが形成され
る筒状であり、上端面に天板を有
し、該天板上面が前記柱の下端面に接する上部筒体と、
下端にほぞ雌ねじを備え、前記上部筒体の内側にて前記天板を
下方から貫通する
ほぞ固定ボルトが螺着されることで前記上部筒体に同軸で固定され
前記天板上面に密着して起立し、
前記柱の下端面に開口するほぞ穴に挿入されて
、該柱を横断するピンが貫通して
該柱に対して抜け止めされるほぞ部材と、
外周面に雄ねじが形成され
る筒状であり、下端面に底板を有し、
前記設置面に固定されるアンカーボルトが貫通する貫通穴を前記底板に有して
、筒の内側から前記設置面に固定される下部筒体と、
内周面に
前記上部筒体および下部筒体の雄ねじと螺合する雌ねじが形成され
る筒体よりなり、上端が前記上部筒体に螺合するとともに、下端が前記下部筒体に螺合し
、前記上部筒体と前記下部筒体とを連結して、前記設置面から前記柱の下端面までの距離に合わせ、前記天板と前記底板との離間距離を増減調整する連結筒体と、
を具備
するとともに、
前記柱の太さとほぼ等しい直径で前記天板と前記底板とが形成され、前記天板と前記底板が固定されている前記上部筒体と前記下部筒体とが、前記天板と前記底板よりも若干小径で形成されることを特徴とする柱脚金物。
【請求項3】
前記下部筒体の貫通穴が、長穴であ
り、該長穴の短径が前記アンカーボルトの外径よりも若干大きく、長径がアンカーボルト外径のほぼ三倍程度に形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の柱脚金物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱脚金物に関する。
【背景技術】
【0002】
建物側の基礎、例えば、布基礎やベタ基礎などの上に、土台を介して立てられる柱とは異なる条件で立てられる独立柱が知られている。例えば特許文献1、2には、基礎と通し柱の間に介在させて、基礎と通し柱とを緊結する継手具が開示されている。また、特許文献3には、被覆材である木製の板材に割れを生じ難くさせるとともに、雨水や湿気による影響を受け難くさせる木製独立柱が開示される。さらに、特許文献4、5には、アンカーボルトを適用して基礎コンクリートに直接柱を固定するようにした木造建築の継手具や木造建築用柱脚金物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-204676号公報
【文献】特開平11-172767号公報
【文献】特開2012-52325号公報
【文献】特開平11-148181号公報
【文献】特開2002-167868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、独立柱に用いられる従来の継手具や柱脚金物は、高さの調整が容易ではなく、基礎の天面は不陸であることも相俟って、調整用のパッキンを挟むなどの煩雑な調整作業が必要となった。また、継手具や柱脚金物は、柱自体に比べて外形が極端に細く、剛性に乏しく、単に柱の下端を接続するのみの部材であって、柱の一部としての装飾性のみであり、建物側としての構造体の一部ではなく容易に倒壊するおそれもある。
【0005】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、容易な高さ調整が可能となり、意匠性と剛性も兼ね備えることができる柱脚金物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の柱脚金物15は、建物を構成する独立柱となる柱33の下端面34と設置面39との間に配設され、前記柱33を支え前記設置面39に固定させる柱脚金物15であって、
内周面に雌ねじ27が形成される筒状であり、上端面に天板29を有し、該天板29上面が前記柱33の下端面34に接する上部筒体21と、
下端にほぞ雌ねじ41を備え、前記上部筒体21の内側にて前記天板29を下方から貫通するほぞ固定ボルト37が螺着されることで前記上部筒体21に同軸で固定され前記天板29上面に密着して起立し、前記柱33の下端面34に開口するほぞ穴24に挿入されて、該柱33を横断するピン45が貫通して該柱33に対して抜け止めされるほぞ部材23と、
外周面に前記上部筒体21の雌ねじ27と螺合する雄ねじ47が形成される筒状であり、下端面に底板49を有し、前記設置面39に固定されるアンカーボルト51が貫通する貫通穴57を前記底板49に有して、筒の内側から前記設置面39に固定される下部筒体25と、
を具備するとともに、
前記柱33の太さとほぼ等しい直径で前記天板29と前記底板49とが形成され、前記天板29と前記底板49が固定されている前記上部筒体21と前記下部筒体25とが、前記天板29と前記底板49よりも若干小径で形成されることを特徴とする。
【0007】
この柱脚金物15では、柱33の下端面34に固定される上部筒体21と、設置面39のアンカーボルト51に固定される下部筒体25とが、双方に形成された雌ねじ27と雄ねじ47とを螺合することで高さの調整が可能となる。設置面39から柱33の下端面34までの距離が異なる場合であっても、上部筒体21と下部筒体25とを相対回転させることにより、天板29と底板49との離間距離を増減調整して、柱33の下端面34を設置面39に支持することができる。柱脚金物15は、柱33の太さとほぼ等しい直径で天板29と底板49とが形成され、これら天板29と底板49が固定されている上部筒体21と下部筒体25とが、天板29と底板49よりも若干小径で形成される。そしてこれら上部筒体21と下部筒体25とは、螺合されることによりコラム状となる。このため、柱脚金物15を介在させて柱33を設置面39に支持する場合、柱33と設置面39の間に介在する柱脚金物15が極端に細くならず、外観が華奢に見えることもない。また、柱脚金物15は、柱33よりも若干細い程度の外径でコラム状となるため、圧縮(座屈)、引っ張りに加え、曲げ方向の強度も大きく確保することができる。
【0008】
また、この柱脚金物59では、上部筒体61の筒部分が、角筒形状となる。角筒形状としては、例えば六角形状、つまり六角筒が好適となる。角筒形状を六角形状とすることにより、市販される六角ナットの流用が可能となる。これにより、柱脚金物59の部材費を安価にすることができる。この柱脚金物59では、六角筒63の上端面に、例えば円形の天板29が溶接等により同軸で固定される。下部筒体25は、上端の雄ねじ47が、六角筒63の雌ねじ27に螺合するサイズのものとする。この柱脚金物59では、上部筒体61の外周が六角形状となるので、回転調整時に、スパナーやレンチ等の工具を用いて、回転調整に対して上部筒体61を小さい力で容易に回転させることができるようになる。
【0009】
さらに、この柱脚金物59では、天板29の外周縁31に、被覆体が固定される。被覆体は、上部筒体61における全体の外周面を覆うことができる。天板29は、例えば円板で形成される。この円板の下面には、溶接等により六角筒63が同軸で固定されている。六角筒63は、天板29の外周円における内側に六角筒63の外接円が収まるサイズとなる。被覆体は、内径部が天板29の外径部に嵌るサイズの円筒とすることができる。この場合、六角筒63は、外接円が、被覆体の内径部よりも小径のもが用いられる。これにより、天板29に固定された被覆体は、内径部に、六角筒63を収容して、覆うことができる。
【0010】
本発明の請求項2記載の柱脚金物65は、建物を構成する独立柱となる柱33の下端面34と設置面39との間に配設され、前記柱33を支え前記設置面39に固定させる柱脚金物65であって、
外周面に雄ねじ47が形成される筒状であり、上端面に天板29を有し、該天板29上面が前記柱33の下端面34に接する上部筒体67と、
下端にほぞ雌ねじ41を備え、前記上部筒体67の内側にて前記天板29を下方から貫通するほぞ固定ボルト37が螺着されることで前記上部筒体67に同軸で固定され前記天板29上面に密着して起立し、前記柱33の下端面34に開口するほぞ穴24に挿入されて、該柱33を横断するピン45が貫通して該柱33に対して抜け止めされるほぞ部材23と、
外周面に雄ねじ47が形成される筒状であり、下端面に底板49を有し、前記設置面39に固定されるアンカーボルト51が貫通する貫通穴57を前記底板49に有して、筒の内側から前記設置面39に固定される下部筒体25と、
内周面に前記上部筒体67および下部筒体25の雄ねじ47と螺合する雌ねじ27が形成される筒体よりなり、上端が前記上部筒体67に螺合するとともに、下端が前記下部筒体25に螺合し、前記上部筒体67と前記下部筒体25とを連結して、前記設置面39から前記柱33の下端面34までの距離に合わせ、前記天板29と前記底板49との離間距離を増減調整する連結筒体69と、
を具備するとともに、
前記柱33の太さとほぼ等しい直径で前記天板29と前記底板49とが形成され、前記天板29と前記底板49が固定されている前記上部筒体67と前記下部筒体25とが、前記天板29と前記底板49よりも若干小径で形成されることを特徴とする。
【0011】
この柱脚金物65では、上部筒体67と下部筒体25とが、連結筒体69を介して連結される。連結筒体69は、内径部に雌ねじ27を有する筒体で、その上端には上部筒体67の雄ねじ47が螺合され、下端には下部筒体25の雄ねじ47が螺合される。したがって、連結筒体69は、上端側で上部筒体67が内径部から進退自在となり、下端側で下部筒体25が内径部から進退自在となる。連結筒体69は、雄ねじ47の螺合範囲のみに雌ねじ27が形成されてもよく、上端から下端に亘って雌ねじ27が形成されていてもよい。この場合、連結筒体69は、上端と下端との間のねじ非形成部の長さを変えて、複数の全長の異なるものを用意してもよい。なお、連結筒体69は、上部筒体67が螺合する上端の雌ねじ27と、下部筒体25が螺合する下端の雌ねじ27とが、逆ねじで形成されてもよい。上下が逆ねじで形成された連結筒体69によれば、連結筒体69を回転することにより、上部筒体67と下部筒体25とを同時に内径部から進退させることができるようになる。これにより、柱脚金物65は、高さ調整作業を迅速に行うことができる。
【0012】
本発明の請求項3記載の柱脚金物15は、請求項1または2に記載の柱脚金物であって、前記貫通穴が、長穴57であり、該長穴57の短径が前記アンカーボルト51の外径よりも若干大きく、長径がアンカーボルト51外径のほぼ三倍程度に形成されることを特徴とする。
【0013】
この柱脚金物15では、下部筒体25の底板49に形成される貫通穴が、長穴57で形成される。長穴57は、短径がアンカーボルト51の外径よりも若干大きく、長径がアンカーボルト外径よりも大きく、例えばほぼ三倍程度とすることができる。したがって、下部筒体25は、移動方向に長穴57の長径を沿わす向きとすることにより、アンカーボルト51に対して360°の方向に、アンカーボルト直径の約三倍分の調整移動が可能となり、アンカーボルト51と柱33の位置ずれが生じている場合に調整が可能となる。
【0014】
なお、本発明の柱脚金物15は、前記上部筒体21が、円筒形状であることとしてもよい。
【0015】
この柱脚金物15では、上部筒体21が、円筒形状となる。上部筒体21は、下部筒体25に対して回転することで、1回転ごとにねじ山の1ピッチ分で高さ調整が可能となる。この際、上部筒体21は、円筒形状で形成されているので、角筒形状の場合と異なり、方向に制約が生じない。これにより、任意の向きで回転調整を終了させることができる。また、柱脚金物15は、柱33の太さとほぼ等しい直径で下部筒体25とが螺合されてコラム状となるため、柱33と設置面39の間に介在する柱脚金物15が極端に細くならず、見栄えが良好となる。
【0016】
そして、この柱脚金物によれば、上部筒体が比較的大径の円筒形状となり、柱の太さから極端に細くならないため、外観として華奢に見えず、見た目の良いコラム状となり、かつ、圧縮(座屈)、引っ張りに加え、曲げ方向の強度も大きく確保することができ、剛性も確保できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る請求項1記載の柱脚金物によれば、設置面から柱の下端面までの距離に応じて上部筒体と下部筒体とを相対回転させることで容易に高さ調整が可能となる。また、柱としての装飾性や意匠性と、十分な剛性も兼ね備えることができる。
【0018】
また、この柱脚金物によれば、角筒形状であることで、市販品を流用して上部筒体を安価に製造できるとともに、高さ調整時における上部筒体の回転作業を、工具(レンチ等)を用いて容易に行うことができる。
【0019】
さらに、この柱脚金物によれば、天板の外周縁に固定された被覆体によって、上部筒体における全体の外周面を覆うことができるので、角筒形状を円柱状に見せて、安価な市販品を流用しながら、見た目の良いコラム状にできる。
【0020】
本発明に係る請求項2記載の柱脚金物によれば、連結筒体の上下で螺合する上部筒体と下部筒体とをそれぞれに調整でき、また、異なる長さの連結筒体を用意しておくことで、設置面から柱の下端面までの距離が調整範囲を超えて大きく異なる独立柱に対しても対応できる。
【0021】
本発明に係る請求項3記載の柱脚金物によれば、アンカーボルトの位置に対して下部筒体の位置を微調整して固定できるので、アンカーボルトと柱の位置ずれを長穴の範囲で吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】玄関ポーチの軒を支える独立柱に用いられた第1実施形態に係る柱脚金物の斜視図である。
【
図2】柱脚金物を用いた柱脚固定構造の分解斜視図である。
【
図3】(a)は上部筒体の底面図、(b)は上部筒体の側面図である。
【
図4】第1実施形態に係る柱脚金物により設置面39に支持された柱の側断面図である。
【
図5】(a)は下部筒体の側面図、(b)は下部筒体の平面図である。
【
図6】アンカーボルトに対して移動が可能となった下部筒体の説明図である。
【
図7】第2実施形態に係る柱脚金物の斜視図である。
【
図8】(a)は上部筒体の側面図、(b)は上部筒体の底面図である。
【
図9】第2実施形態に係る柱脚金物により設置面に支持された柱の側断面図である。
【
図10】(a)は下部筒体の平面図、(b)は下部筒体の側面図である。
【
図11】第3実施形態に係る柱脚金物の要部斜視図である。
【
図12】第3実施形態に係る柱脚金物により設置面に支持された柱の側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
図1は、玄関ポーチ11の軒13を支える独立柱に用いられた第1実施形態に係る柱脚金物15の斜視図である。
第1実施形態に係る柱脚金物15は、例えば玄関ポーチ11の軒13を支える独立柱に用いることができる。例えば木造の建物等の玄関ポーチ11では、独立柱に意匠上の統一感を与えるために、木製柱の使用が好まれる。木製柱は、アプローチから玄関扉17との間に段差19がある場合、柱脚下端面34が柱脚金物15を介してコンクリート等の段差19に支持される。
【0024】
図2は、柱脚金物15を用いた柱脚固定構造の分解斜視図である。
第1実施形態に係る柱脚金物15は、上部筒体21と、ほぞ部材23と、下部筒体25と、を有する。これらの部材は、材質として鉄を好適に用いることができる。
【0025】
図3(a)は上部筒体21の底面図、(b)は上部筒体21の側面図である。
上部筒体21は、本体が筒状に形成される。第1実施形態において、柱脚金物15は、上部筒体21が、円筒形状で形成される。本体の内周面には、雌ねじ27が形成される。上部筒体21は、本体の軸線が鉛直方向に沿う方向で使用される。本体の上端面には、例えば円形の天板29が溶接等により固定される。天板29は、本体の外径よりも若干大きな外径で形成される。つまり、天板29は、外周縁31が本体の半径方向外側へ若干張り出している。第1実施形態において、天板29は、断面正方形の柱33における正方形の外接円よりも小さく正方形の内接円よりも大きい。天板29の中心には、固定穴35が穿設される。上部筒体21は、固定穴35、本体、天板29が同軸で形成される。固定穴35には、本体側から挿通された締結具であるほぞ固定ボルト37が天板29より上方へ突出する。
【0026】
図4は、第1実施形態に係る柱脚金物15により設置面39に支持された柱33の側断面図である。
ほぞ部材23は、パイプや棒材よりなる。棒材には、異形鉄筋を用いることもできる。ほぞ部材23は、ほぞ下端面にほぞ雌ねじ41が形成される。ほぞ部材23は、上部筒体21の天板29に、本体側より貫通したほぞ固定ボルト37がほぞ雌ねじ41に螺合することにより、上部筒体21に同軸で固定されて起立する。ほぞ部材23は、起立先端に、軸線直交方向で貫通するピン貫通穴43が穿設される(
図2も参照)。ピン貫通穴43は、ほぞ部材23の上下方向に離間して複数が設けられてもよい。このピン貫通穴43には、柱33を横断する方向(軸線直交方向)で打ち込まれるピン45が挿入される。ほぞ部材23は、柱脚下端面34に開口するほぞ穴24に挿入されて柱33を横断するこのピン45が貫通して抜け止めされる。
【0027】
図5(a)は下部筒体25の側面図、(b)は下部筒体25の平面図である。
下部筒体25は、本体が筒状に形成される。本体の外周面には、雌ねじ27と螺合する雄ねじ47が形成される。下部筒体25は、本体の軸線が鉛直方向に沿う方向で使用される。本体の下端面には、例えば円形の底板49が溶接等により固定される。底板49は、本体の外径よりも若干大きな外径で形成される。下部筒体25は、設置面39に固定されるアンカーボルト51が貫通する貫通穴57を底板49の中心に有して設置面39に固定される。
【0028】
アンカーボルト51は、設置面39から雄ねじ部分が直接突出するもの(芯棒打ち込み式アンカー)、内ねじを有したアンカー本体が設置面39に打ち込まれて、このアンカー本体に対して雄ねじ部分を螺合するもの(内ねじアンカー)のいずれであってもよい。
【0029】
図2に示すように、第1実施形態では、芯棒打ち込み式アンカーを例示する。芯棒打ち込み式アンカーでは、設置面39から突出したアンカーボルト51を下部筒体25の底板49に穿設された長穴57に通し、その先端にワッシャ53、ナット55を取り付けて下部筒体25を設置面39に固定する。一方、図示は省略するが、内ねじアンカーでは、下部筒体25の底板49に穿設された長穴57にアンカーボルト51を通し、その先端を設置面39に打ち込んだ内ねじアンカーに螺着して下部筒体25を設置面39に固定する。
【0030】
柱脚金物15は、底板49に設けられる貫通穴が、底板49の直径方向に長い長穴57で形成される。
【0031】
図6は、アンカーボルト51に対して移動が可能となった下部筒体25の説明図である。
長穴57は、短径がアンカーボルト51の外径よりも若干大きく、長径がアンカーボルト外径よりも大きく、例えばほぼ三倍程度となる。これにより、下部筒体25は、長穴57の長手方向一端側から長手方向他端側までの間が、アンカーボルト51に対しての取付位置調整範囲Ajとなる。
【0032】
次に、上記した第1実施形態に係る柱脚金物15の作用を説明する。
【0033】
第1実施形態に係る柱脚金物15では、柱33の下端面34に固定される上部筒体21と、設置面39のアンカーボルト51に固定される下部筒体25とが、双方に形成された雌ねじ27と雄ねじ47とを螺合することで高さの調整が可能となる。設置面39から柱33の下端面34までの距離が異なる場合であっても、上部筒体21と下部筒体25とを相対回転させることにより、天板29と底板49との離間距離を増減調整して、柱33の下端面34を設置面39に支持し、設置面39に柱33を接続することができる。
【0034】
柱脚金物15は、柱33の太さとほぼ等しい直径で天板29と底板49とが形成され、これら天板29と底板49が固定されている上部筒体21と下部筒体25とが、天板29と底板49よりも若干小径で形成される。そしてこれら上部筒体21と下部筒体25とは、螺合されることによりコラム状となる。このため、柱脚金物15を介在させて柱33を設置面39に支持する場合、柱33と設置面39の間に介在する柱脚金物15が極端に細くならず、しっかり支えるように配置される。
【0035】
また、柱脚金物15は、柱33よりも若干細い程度の外径でコラム状となるため、圧縮(座屈)、引っ張りに加え、曲げ方向の強度も大きく確保することができ、設置面39に対する柱33、及び柱33の上端側の軒13などを支える構造体として剛性を備えるものとなる。
【0036】
そして、この柱脚金物15では、下部筒体25の底板49に形成される貫通穴が、長穴57で形成される。長穴57は、短径がアンカーボルト51の外径よりも若干大きく、長径がアンカーボルト外径よりも大きく、例えばほぼ三倍程度となる。したがって、下部筒体25は、移動方向に長穴57の長径を沿わす向きとすることにより、アンカーボルト51に対して360°の方向に、アンカーボルト直径の約三倍分の調整移動が可能となる。その結果、アンカーボルト51の位置に対して下部筒体25の位置を微調整して固定できるので、アンカーボルト51と柱33の位置ずれを長穴57の範囲で吸収することができる。
【0037】
また、この柱脚金物15では、上部筒体21が、円筒形状となる。上部筒体21は、下部筒体25に対して回転することで、1回転ごとにねじ山の1ピッチ分で高さ調整が可能となる。この際、上部筒体21は、円筒形状で形成されているので、角筒形状の場合と異なり、方向に制約が生じない。これにより、任意の向きで回転調整を終了させることができ、無段階で高さを調整可能となる。
【0038】
また、柱脚金物15は、柱33の太さとほぼ等しい直径で下部筒体25とが螺合されてコラム状となるため、柱33と設置面39の間に介在する柱脚金物15が極端に細くならない。その結果、上部筒体21が比較的大径の円筒形状となり、柱33の太さから極端に細くならないため、華奢に見えず、見た目の良いコラム状となり、剛性も確保できる。
【0039】
なお、柱脚金物15は、外表面に塗装を施して仕上げてもよく、また、下部筒体25の雄ねじ47を覆ってもよく、柱33や設置面39側との意匠性、色彩バランス等を付加したり、或いは防錆性や耐候性を向上させることとしてもよい。
【0040】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態を説明する。
【0041】
図7は、第2実施形態に係る柱脚金物59の斜視図である。なお、第2実施形態においては
図1~
図6に示した部材と同等の部材には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
第2実施形態に係る柱脚金物59は、上部筒体61の本体が、多角形の角筒形状で形成される。多角形は、例えば六角形や八角形、十二角形等とすることができる。
この第2実施形態に係る柱脚金物59は、上部筒体61の本体として六角筒形状であり、六角筒63で形成される。六角筒63は、一般的なナット55と同様に、軸線直交方向の断面が六角形で形成され、内穴には雌ねじ27が形成される。この六角筒63には、市販品の六角ナットを流用することができる。
【0042】
図8(a)は上部筒体61の側面図、(b)は上部筒体61の底面図である。
上部筒体61は、本体の上端面に、円形の天板29が溶接等により固定される。天板29は、六角筒63の外接円よりも若干大きな外径で形成される。つまり、天板29は、外周縁31が六角筒63の半径方向外側へ若干張り出している。第2実施形態において、天板29は、断面正方形の柱33における正方形の外接円よりも小さく正方形の内接円よりも大きい。天板29の中心には、固定穴35が穿設される。上部筒体61は、固定穴35、六角筒63、天板29が同軸で形成される。固定穴35には、本体側から挿通された締結具であるほぞ固定ボルト37が天板29より上方へ突出する。
【0043】
図9は、第2実施形態に係る柱脚金物59により設置面39に支持された柱33の側断面図である。
ほぞ部材23は、ほぞ下端面にほぞ雌ねじ41が形成される。ほぞ部材23は、上部筒体61の天板29に、本体側より貫通したほぞ固定ボルト37がほぞ雌ねじ41に螺合することにより、上部筒体61に同軸で固定されて起立する。ほぞ部材23は、起立先端に、軸線直交方向で貫通するピン貫通穴43が穿設される。ピン貫通穴43には、柱33を横断する方向(軸線直交方向)で打ち込まれるピン45が挿入される。ほぞ部材23は、このピン45が貫通することで柱脚下端面34から抜け止めされる。
【0044】
図10(a)は下部筒体25の平面図、(b)は下部筒体25の側面図である。
下部筒体25は、第1実施形態と同様のものが使用される。すなわち、下部筒体25は、本体の外周面に、六角筒63の雌ねじ27と螺合する雄ねじ47が形成される。下部筒体25は、本体の下端面に、円形の底板49が溶接等により固定される。底板49は、本体の外径よりも若干大きな外径で形成される。下部筒体25は、設置面39に固定されるアンカーボルト51が貫通する貫通穴を底板49に有して設置面39に固定される(
図9も参照)。
【0045】
柱脚金物59は、底板49に設けられる貫通穴が、底板49の直径方向に長い長穴57で形成される。長穴57は、短径がアンカーボルト51の外径よりも若干大きく、長径がアンカーボルト外径よりも大きく、例えばほぼ三倍程度となる。これにより、下部筒体25は、長穴57の長手方向一端側から長手方向他端側までの間が、アンカーボルト51に対しての取付位置調整範囲Ajとなる(
図6参照)。
【0046】
この柱脚金物59では、天板29の外周縁31に固定される被覆体(図示略)を備えてもよい。被覆体は、上部筒体21における全体の外周面を覆う円筒体で形成することができる。すなわち、被覆体は、薄鉄板などを筒状に加工し、化粧として六角筒63を隠して円柱状にみせる。円筒体は、内径が天板29の外径とほぼ同一で、天板29の外周に内周が嵌められて溶接固定されてもよく、外径が天板29の外径とほぼ同一で、天板29の下面に上端面が同軸で溶接固定されてもよい。六角筒63では、構成する6つの垂直面が、柱33の4つの側面と必ずしも同方向になるとは限らず、柱33と柱脚金物59とのデザインの統一性を図れない場合がある。被覆体は、円筒状の外観とすることができ、つまり、六角筒63の6面を連続した円周面に置き換えることが可能となる。
【0047】
次に、上記した第2実施形態に係る柱脚金物59の作用を説明する。
【0048】
第2実施形態に係る柱脚金物59では、上部筒体61の筒部分が、角筒形状となる。角筒形状としては、例えば六角形状が好適であり、つまり六角筒63となる。角筒形状を六角形状とすることにより、市販される六角ナットの流用が可能となる。これにより、柱脚金物59の部材費を安価にすることができる。
【0049】
この柱脚金物59では、上部筒体61の外周が六角形状となるので、回転調整時に、スパナーやレンチ等の工具を用いて、回転調整に対して上部筒体61を小さい力で容易に回転させることができるようになる。その結果、市販品を流用して上部筒体61を安価に製造できるとともに、高さ調整時における上部筒体61の回転作業を、容易に行うことができる。
【0050】
また、この柱脚金物59では、天板29の外周縁31に、被覆体が固定されてもよい。被覆体は、上部筒体61における全体の外周面を覆うことができる。天板29は、例えば円板で形成される。この円板の下面には、溶接等により六角筒63が同軸で固定されている。六角筒63は、天板29の外周円における内側に六角筒63の外接円が収まるサイズとなる。
【0051】
天板29に固定された被覆体は、内径部に、六角筒63を収容して、覆うことができる。その結果、天板29の外周縁31に固定された被覆体によって、上部筒体61における全体の外周面を覆うことができるので、六角筒63を円柱状に見せて、安価な市販品を流用しながら、見た目の良いコラム状にできる。
【0052】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態を説明する。
【0053】
図11は、第3実施形態に係る柱脚金物65の要部斜視図である。なお、第3実施形態においては
図1~
図6に示した部材と同等の部材には同一の符号を付し重複する説明は省略する。
第3実施形態に係る柱脚金物65は、主要部が、上部筒体67と、下部筒体25と、連結筒体69と、で構成される。
【0054】
図12は、第3実施形態に係る柱脚金物65により設置面39に支持された柱33の側断面図である。
柱脚金物65は、上部筒体67と、ほぞ部材23と、下部筒体25と、連結筒体69と、を有する。
【0055】
上部筒体67は、外周面に雄ねじ47が形成され、上端面に天板29を有する。ほぞ部材23は、天板29を貫通する固定ボルト37で上部筒体67に同軸で固定されて起立し、柱脚下端面34に開口するほぞ穴24に挿入されて柱33を横断するピン45が貫通して抜け止めされる。下部筒体25は、外周面に雄ねじ47が形成され、下端面に底板49を有し、設置面39に固定されるアンカーボルト51が貫通する貫通穴を底板49の中心に有して設置面39に固定される。連結筒体69は、内周面に、雄ねじ47と螺合する雌ねじ27が形成され、上端が上部筒体67に螺合するとともに、下端が下部筒体25に螺合する。
【0056】
柱脚金物65においても、貫通穴は、底板49の直径方向に長い長穴57で形成することができる。
【0057】
次に、上記した第3実施形態に係る柱脚金物65の作用を説明する。
【0058】
第3実施形態に係る柱脚金物65では、上部筒体67と下部筒体25とが、連結筒体69を介して連結される。連結筒体69は、内径部に雌ねじ27を有する筒体で、その上端には上部筒体67の雄ねじ47が螺合され、下端には下部筒体25の雄ねじ47が螺合される。したがって、連結筒体69は、上端側で上部筒体67が内径部から進退自在となり、下端側で下部筒体25が内径部から進退自在となる。
【0059】
連結筒体69は、雄ねじ47の螺合範囲のみに雌ねじ27が形成されてもよく、上端から下端に亘って雌ねじ27が形成されていてもよい。この場合、連結筒体69は、上端と下端との間のねじ非形成部の長さを変えて、複数の全長の異なるものを用意してもよい。その結果、柱脚金物65は、異なる長さの連結筒体69を用意しておくことで、設置面39から柱33の下端面34までの距離が調整範囲を超えて大きく異なる独立柱に対しても対応できるようになる。
【0060】
なお、連結筒体69は、上部筒体67が螺合する上端の雌ねじ27と、下部筒体25が螺合する下端の雌ねじ27とが、逆ねじで形成されてもよい。上下が逆ねじで形成された連結筒体69では、連結筒体69を回転することにより、上部筒体67と下部筒体25とを同時に内径部から進退させることができるようになる。これにより、柱脚金物65は、高さ調整作業を迅速に行うことができる。
【0061】
また、このに第3実施形態に係る柱脚金物65は、第1実施形態と組み合わせることが可能である。つまり、第3実施形態の上部筒体67と連結筒体69と、前述の第1実施形態の上部筒体21とは、共通の下部筒体25とすることができ、設置面39から柱33の下端面34までの距離が短ければ第1実施形態の上部筒体21を、距離が長ければ第3実施形態の上部筒体67と連結筒体69を、と組み替えることでそれぞれに対応させることが可能となる。
【0062】
したがって、上述した各実施形態に係る柱脚金物15、柱脚金物59および柱脚金物65によれば、容易な高さ調整が可能となり、意匠性と剛性も兼ね備えることができる。
【0063】
本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態の各構成を相互に組み合わせることや、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。
【0064】
例えば上記の構成例において、柱脚金物15(59、65)は、玄関ポーチの屋根(軒13)を支える独立柱に使われたが、建物本体で、通常土台の上に建てる柱を、土台を省略して基礎の上に直接柱を立てる際に用いられてもよい。
また、上部筒体と下部筒体とは、上下反転して使用することもできる。
【符号の説明】
【0065】
15…柱脚金物
21…上部筒体
23…ほぞ部材
24…ほぞ穴
25…下部筒体
27…雌ねじ
29…天板
31…外周縁
33…柱
34…柱脚下端面(柱の下端面)
37…締結具(固定ボルト)
39…設置面
45…ピン
47…雄ねじ
49…底板
51…アンカーボルト
57…貫通穴(長穴)
59…柱脚金物
61…上部筒体
65…柱脚金物
67…上部筒体
69…連結筒体