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特許7466616二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法
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  • 特許-二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/12 20060101AFI20240405BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20240405BHJP
   B29C 48/25 20190101ALI20240405BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20240405BHJP
   B29C 48/88 20190101ALI20240405BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240405BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20240405BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20240405BHJP
【FI】
B29C55/12
B29C48/08
B29C48/25
B29C48/305
B29C48/88
C08J5/18
B29K67:00
B29L7:00
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022201972
(22)【出願日】2022-12-19
(62)【分割の表示】P 2021135788の分割
【原出願日】2021-08-23
(65)【公開番号】P2023021432
(43)【公開日】2023-02-10
【審査請求日】2022-12-19
(31)【優先権主張番号】63/129,522
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】110113065
(32)【優先日】2021-04-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】楊 文政
(72)【発明者】
【氏名】▲ウー▼ 陳安
(72)【発明者】
【氏名】楊 春成
(72)【発明者】
【氏名】蕭 嘉▲イェン▼
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-096791(JP,A)
【文献】特開平06-305016(JP,A)
【文献】特開平11-21338(JP,A)
【文献】特表平11-512143(JP,A)
【文献】特開2000-309052(JP,A)
【文献】特開2005-075905(JP,A)
【文献】特開2007-185898(JP,A)
【文献】特開2010-069830(JP,A)
【文献】特開2019-194339(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00606663(EP,A1)
【文献】韓国登録特許第10-0554045(KR,B1)
【文献】中国特許出願公開第111251621(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111690334(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 48/00 - 48/96
55/00 - 55/30
61/00 - 61/10
C08J 5/00 - 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャスティングロール上に溶解ポリエステル樹脂混合物を形成して、厚いシートを形成し、
前記溶解ポリエステル樹脂混合物は、リサイクルポリエステルおよび静電密着剤を含み、前記静電密着剤はエチレングリコールに溶解されて添加され、
引き延ばし前の前記厚いシートは、示差走査熱量測定(DSC)によって分析されると次の:結晶化割合が10%未満である、という物理的特性を有し、
前記厚いシートを双方向引き延ばして、二軸延伸ポリエステルフィルムを形成し、
前記二軸延伸ポリエステルフィルムは、次の:20℃/分の冷却速度で溶解状態において冷却された際、観察される再結晶温度(Tc(A))が175℃から200℃である、という物理的特性を有する、
ことを特徴とする二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリエステルフィルム及びその製造方法に関し、特に、二軸延伸ポリエステルフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリエステルフィルムは、しばしば、磁気テープ、絶縁テープ、写真フィルム、トレーシングフィルム、包装フィルム、電気的絶縁フィルム、エンジニアリング紙等に用いられる。環境保護意識の高まりにより、廃棄ポリエステル材料は、しばしば、ポリエステルフィルムに再製造される。しかしながら、再製造ポリエステルフィルムにおいて良好な品質をどのように達成するか、といった技術的課題に対する解決手段を見いだすことについて緊急の必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明は、二軸延伸ポリエステルフィルム及びその製造方法を提供することを目的とし、当該二軸延伸ポリエステルフィルムは、リサイクルポリエステル材料から形成され、及び/又は、より良好な質を有し得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ある実施の形態において、本発明は、二軸延伸ポリエステルフィルムであって、二軸延伸ポリエステルフィルムは、次の:20℃/分の冷却速度で溶解状態において冷却された際、観察される再結晶温度(Tc(A))が175℃から200℃である、という物理的特性を有し、二軸延伸ポリエステルフィルムは、双方向延伸の前に、押出機によって溶解されて押出され、次に、キャスティングロール上で冷却されて形成された厚いシートから形成され、引き延ばしの前の厚いシートは、示差走査熱量測定によって分析されると次の:結晶化割合が10%未満である、という物理的特性を有する。
【0005】
本発明の一つの実施の形態によれば、二軸延伸ポリエステルフィルムは、少なくともポリエステル樹脂混合物から形成される。ポリエステル樹脂混合物は、金属イオンを有する静電密着剤と、ポリエステル材料と、を含む。ポリエステル樹脂混合物における前記金属イオンの重量濃度は、40ppmから50ppmである。
【0006】
本発明の一つの実施の形態によれば、二軸延伸ポリエステルフィルムは、少なくとも静電密着法によって製造される。静電密着法は、キャスティングロールと、キャスティングロールに対応するように構成された静電密着装置と、を用意するステップと、キャスティングロール上に溶解ポリエステル樹脂混合物を形成し、キャスティングロールと静電密着装置との間に静電電圧を供給するステップと、を含む。
【0007】
本発明の一つの実施の形態によれば、金属イオンは、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、又はこれらの組み合わせである。
【0008】
本発明の一つの実施の形態によれば、ポリエステル材料は、少なくともリサイクルポリエステル材料から構成される。
【0009】
本発明の一つの実施の形態によれば、リサイクルポリエステル材料の前記ポリエステル樹脂混合物に対する重量比は、80%よりも大きく、100%以下である。
【0010】
本発明の一つの実施の形態によれば、ポリエステル樹脂混合物は、さらに、滑剤を含む。ポリエステル樹脂混合物における滑剤の重量濃度は、500ppmから3000ppmである。
【0011】
ある実施の形態において、本発明は、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法を提供する。この方法は、キャスティングロールと、キャスティングロールに対応するように構成された静電密着装置と、を用意するステップと、溶解ポリエステル樹脂混合物をキャスティングロール上に押出し、厚いシートを形成するように、キャスティングロールと静電密着装置との間に静電電圧を供給するステップと、二軸延伸ポリエステルフィルムを形成するように、厚いフィルムを二軸延伸するステップと、を含む。
【0012】
ある実施の形態において、本発明は、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法を提供する。この方法は、厚いシートを形成するよう、キャスティングロール上に溶解ポリエステル樹脂混合物を形成するステップであって、延伸前の前記厚いシートは、示差走査熱量測定によって分析されると次の物理的特性を有する、つまり、結晶化割合が10%未満である、ステップと、前記二軸延伸ポリエステルフィルムを形成するよう、前記厚いフィルムを二軸延伸するステップであって、前記二軸延伸ポリエステルフィルムが、20℃/分の冷却速度で溶解状態において冷却された際、観察される再結晶温度が175℃から200℃であるステップと、を含む。
【0013】
本開示の二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法は、厚いシートを形成するよう、キャスティングロール上に溶解ポリエステル樹脂混合物を押出すステップと、前記二軸延伸ポリエステルフィルムを形成するよう、前記厚いフィルムを二軸延伸するステップと、を含む。前記ポリエステル樹脂混合物は、金属イオンを有する静電密着剤と、ポリエステル材料と、を含み、前記ポリエステル樹脂混合物における前記金属イオンの重量濃度は、40ppmから50ppmである。
【発明の効果】
【0014】
以上に鑑み、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、リサイクルポリエステル材料から作られ得る。また、本発明の二軸延伸ポリエステルフィルムは、より良好な品質を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
添付の図面は本開示についての更なる理解のために供され、本明細書に組み込まれ、本明細の一部を構成する。図面は、本開示の実施の形態を示し、詳細な説明とともに、本開示の原理を説明するものである。
【0016】
図1】本開示の実施の形態に係る二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法の概略的な部分フローチャートである。
【0017】
図2】本開示の実施の形態に係る二軸延伸ポリエステルフィルムを製造するための装置の部分的な斜視図である。
【0018】
図3】本開示の実施の形態に係る二軸延伸ポリエステルフィルムを製造するための装置の部分的な概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本開示の例示的な実施の形態について詳細に説明し、それらの例を添付図面に示す。可能な場合には、同一又は同様の部分には図面及び詳細な説明において同一の参照番号を付す。
【0020】
以下の詳細な説明において、限定ではなく例示のため、具体的な詳細を明らかにする例示的な実施の形態は、本開示の様々な原理について完全な理解を得られるようにするために供されるものである。しかしながら、当業者にとって、本明細書で開示する具体的な詳細から外れた他の実施の形態においても実施され得る点、明らかである。また、公知の装置、方法及び材料についての詳細な説明は、本開示の様々な原理の説明を明瞭にする目的で、省略され得る。
【0021】
本明細書において、範囲は、「おおよその」具体的な値から「おおよその」別の具体的な値まで、として説明され得るが、具体的な値及び/又は別の具体的な値まで、として直接的に説明され得る。そのような範囲を説明する場合に、別の実施の形態は、一つの特定の値から、及び/又は、別の特定の値まで、を含む。同様に、先行語「おおよそ」を用いて値を近似値として説明する場合、具体的な値は別の実施の形態を形成する。さらに、各範囲の端点は、他の端点と明確に関連し、又は、他の端点から独立したものである。
【0022】
本明細書において、非限定的な用語(例えば、し得る、できる、一例として、又は、他の同様な用語)は、不必要又は選択的な実施態様、包含、追加、又は存在である。
【0023】
特に定義しない限り、本明細書において用いる全ての用語(専門用語及び科学用語を含む)は、当業者の知識によって共通に理解されることと同一の意味である。また、(例えば、一般的な辞書において定義される)用語は、関連する技術的な文脈における意味と一致する意味を持つと解釈され、特に明確に定義されない限り、理想的又は過度に正式なものであると解釈されるべきものではない。
【0024】
[リサイクルポリエステル材料]
【0025】
ポリエステル材料のリサイクル方法は、例えば、様々な種類の廃棄ポリエステル材料を集めることを含み、上記の廃棄ポリエステル材料の種類、色、及び/又は使用目的に応じて対応する分類が行われてよい。次に、分類された廃棄ポリエステル材料は、圧縮されてパッケージ化されてよい。その後、パッケージ化された廃棄ポリエステル材料は、廃棄物処理場へ搬送されてよい。上記の廃棄ポリエステル材料は、例えば、リサイクルポリエステルボトルを含んでよいが、本開示はこれに限定されない。
【0026】
ポリエステル材料のリサイクル方法は、さらに、廃棄ポリエステル材料上の物体(例えば、ボトルキャップ、ラベル、及び/又は接着剤等)を除去することを含んでよい。次に、物理的かつ機械的に上記の廃棄ポリエステル材料を砕く。その後、砕かれたポリエステル材料を分離するため、適切な方法(例えば、浮選)を用いる。そして、砕かれ分離された廃棄ポリエステル材料は、処理済みリサイクルポリエステル材料を得るために乾燥されてよい。
【0027】
ある実施の形態において、リサイクルポリエステル材料は、さらに、例えば、直接購入された処理済みリサイクルポリエステル材料を含んでよい。
【0028】
ある実施の形態において、リサイクルポリエステル材料は、また、二軸延伸ポリエステルフィルムを形成する後述の方法によってさらにリサイクルされてよい。
【0029】
上記の方法によって得られたリサイクルポリエステル材料は、続くフィルム製造処理を行うために以下の手法でリサイクルポリエステルチップへとさらに形成されてよい。
【0030】
本開示における用語「ポリエステル」、「ポリエステル材料」等は、任意の種類のポリエステル、特に、芳香族ポリエステルを指し、より具体的には、精製されたテレフタル酸(PTA)及びエチレングリコール(EG)(つまり、エチレンテレフタレート(PET))に由来するポリエステルを指す。
【0031】
また、本明細書におけるポリエステルは、さらに、例えば、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、又はこれらの組み合わせであり得る。本実施の形態において、ポリエステルは、好ましくはポリトリメチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、又はこれらの組み合わせである。更に、共重合体を用いても良く、当該共重合体は、特に、2つ以上のジカルボン酸及び/又は2つ以上のジオール成分を用いて得られる共重合体であってよい。
【0032】
[化学的リサイクルポリエステルチップの製造方法](静電密着剤及び又は滑剤を含み得る)
【0033】
ステップ1-1:リサイクルポリエステル材料の化学的解重合について、図1を参照する。例えば、リサイクルポリエステル材料及び解重合溶液は、化学的解重合用の解重合化槽110に入れられてよい。
【0034】
一般に、化学的解重合溶液は、リサイクルポリエステル材料内のポリエステル分子を切断し、それによって解重合の効果を達成し得る。また、短い分子鎖のポリエステル組成物、及び/又は、1つの二塩基酸及び2つのジオール(例えば、ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート、BHET)からなるエステルモノマーが得られ得る。つまり、化学的解重合後の混合物の平均分子量は、一般に、リサイクルポリエステル材料の平均分子量より小さい。
【0035】
さらに、本開示は、解重合溶液の種類を限定しない。例えば、加水分解は、水によって行われてよい。別の例では、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、又はそれらの混合物)を、アルコール分解に用いてもよい。
【0036】
ある実施の形態において、解重合溶液は、好ましくは、アルコールである。より好適なアルコール分解溶液は、エチレングリコールであり得る。その理由の1つは、エチレングリコールが、バージンのポリエステルチップを生成するための反応性モノマーであり得るからである。
【0037】
化学的解重合反応が行われる際、加熱ステップが好適に行われてよい。概して、加熱は化学反応の進行を加速させ得る。例えば、リサイクルポリエステル材料及びエチレングリコールは、約3時間、200℃から230℃の温度でアルコール分解反応用の解重合化槽110に入れられてよい。
【0038】
ステップ1-2:エステル化反応の進行。
【0039】
上記の化学的解重合反応後の生成物には、エステル化反応が行われる。注目すべき点は、本開示において、全てのポリエステル材料を完全に解重合する必要がない点である。
【0040】
例えば、上記の化学的解重合反応後の生成物は、エステル化反応用のエステル化槽120に移送されてよい。エステル化反応は、一般に、可逆反応である。従って、エステル化反応において、解重合溶液及び/又は生成物の一部(例えば、アルコール及び/又は水)は、蒸留によって得られてよい。このように、他の生成物(例えば、ポリエステル生成物)の量又は濃度は、化学反応のバランスによって増加されてよい。
【0041】
ある実施の形態において、上記の化学的解重合反応後の生成物は、まず、エステル化槽120に移される前に、リサイクルポリエステル材料中の不純物の少なくとも一部を除去し、それによって非ポリエステル不純物の濃度を低下させるように、フィルターによってろ過されてよい。ある実施の形態において、フィルターの孔径は1μmから10μmの間であってよい。
【0042】
上記のエステル化反応を所定の時間進めた後、静電密着剤がエステル化槽120に加えられてよい。静電密着剤は、金属塩を含んでよい。
【0043】
ある実施の形態において、静電密着剤に用いられる金属塩は、非遷移金属塩であってよい。ある実施の形態において、静電密着剤に用いられる金属塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、又はこれらの組み合わせであってよい。
【0044】
ある実施の形態において、アルカリ金属塩は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、又はそれらの組み合わせを含んでよい。リチウム塩は、例えば、酢酸リチウム二水和物(CH3COOLi・2H2O)を含み、ナトリウム塩は、例えば、酢酸ナトリウム三水和物(CH3COONa・3H2O)を含み、及び/又はカリウム塩は、例えば、酢酸カリウム(CH3COOK)を含むが、本開示はこの場合に限定されない。
【0045】
ある実施の形態において、アルカリ土類金属塩は、マグネシウム塩を含んでよい。マグネシウム塩は、例えば、酢酸マグネシウム四水和物((CH3COO)2Mg・4H2O)を含むが、本開示はこの場合に限定されない。
【0046】
ある実施の形態において、静電密着剤は、まず、溶媒(エチレングリコール等)中に溶かされてよい。次に、上記の溶液(つまり、静電密着剤の少なくとも一部が溶けている溶媒)が、エステル化槽120に加えられる。この際、エステル化槽120内の材料は、より低い粘性(その後に形成されるポリエステル樹脂混合物、及び/又は初期リサイクルポリエステル材料と比較して「より低い粘性」)を有し、従って、容易に均等に混合され得る。更に、静電密着剤がイオンの形態(金属陽イオン及び対応する陰イオン)でエステル化槽120内に存在し得るので、分散性が良好であり、及び/又は対応して誘電特性が良好である。このように、加えられる静電密着剤の量が低減され得る。
【0047】
あり得る実施の形態において、静電密着剤は、エステル化槽120内の物質の総重量に基づいて、500ppmの酢酸マグネシウム四水和物と、100ppmの酢酸リチウム二水和物と、100ppmの酢酸ナトリウム三水和物と、100ppmの酢酸カリウムと、を含んでよい。
【0048】
ある実施の形態において、アルカリ金属イオン及び/又はアルカリ土類金属イオンは、ポリエステルの熱分解に触媒作用を及ぼし得る。従って、より多くの量の添加剤がある場合、続いて形成されるフィルム(例えば、後述する二軸延伸ポリエステルフィルム等)の色は、対応して帯黄色(例えば、CIEラボ1976カラースペースによって表される高いb*値を有する)となる。概して、フィルムが高いb*値を有する場合、その生成物は低い値を有し得る。
【0049】
上記のエステル化反応を所定の時間進行させた後、他の添加物がエステル化槽120に加えられてよいが、本開示はこれに限定されない。他の添加物は、滑剤、安定剤、及び/又は重合触媒を含んでよい。
【0050】
滑剤は、粒状であってよい。例えば、滑剤は、シリカ粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、ポリスチレン粒子、シリコン粒子、アクリル粒子、又はそれらの組み合わせを含んでよい。あり得る実施の形態において、滑剤は、エステル化槽120内の物質の総重量に基づいて、おおよそ2.4μmの平均粒径を有する5000ppmのシリカ粒子を含んでよい。
【0051】
安定剤は、酸を含んでよい。あり得る実施の形態において、安定剤は、エステル化槽120内の物質の総重量に基づいて、150ppmのリン酸を含んでよい。
【0052】
重合触媒は、金属塩を含んでよい。あり得る実施の形態において、重合触媒は、エステル化槽120内の物質の総重量に基づいて、350ppmの酢酸アンチモンを含んでよい。
【0053】
ステップ1-3:重合反応の進行。
【0054】
上記のエステル化反応の後の生成物に、重合反応が行われる。
【0055】
例えば、上記のエステル化反応の後の生成物は、重合反応用の重合化槽130内に移されてよい。
【0056】
上記の重合反応は、事前重合反応及び/又は主重合反応を含んでよい。
【0057】
事前重合反応は、例えば、所定の時間、槽内のガス圧を下げることである。例えば、ガス(例えば、空気)をポンピングすることで、槽内のガス圧は、60分以内に常圧(おおよそ760torr等)から10torrに低下されてよい、又は、さらに10torr未満(例えば、1torr又は1torr近辺)に低下されてよい。
【0058】
主重合反応は、例えば、低圧(例えば、室内圧/常圧未満)下で槽内の材料を加熱することである。例えば、重合反応は、槽内のガス圧が1torr未満の条件で280℃の温度で行われてよい。
【0059】
ステップ1-4:ポリエステルチップの形成。
【0060】
上記の重合反応は、槽内の物質が対応する固有粘度(IV)を有するまで進められる。次に、槽内のガス圧は(例えば、窒素ガスを充填することで)増加されてよい。その後、槽内の材料は、ポリエステルチップを形成するため、一般的な重合体チップの通常の造粒法によって押出される及び/又は小球化される。
【0061】
本実施の形態において、上記の化学的再製造により形成されたポリエステルチップの固有粘度は、一般に、0.65dL/gを超えることはなく、好ましくは、0.40dL/gから0.65dL/gの間であり、より好ましくは、0.50dL/gから0.65dL/gの間であり、例えば、おおよそ0.600dL/gであってよい。
【0062】
ある実施の形態において、上記の化学的再製造により形成されたポリエステルチップは、化学的リサイクルポリエステルチップと称され得る。
【0063】
(バージンポリエステルチップの製造方法)(上記の静電密着剤及び/又は滑剤が含まれ得る)
【0064】
製造は、上記の「化学的リサイクルポリエステルチップの製造方法」と同一又は類似の方法によって行われてよいが、テレフタル酸とエチレングリコールがエステル化反応用のエステル化槽に直接加えられてよいという点が異なる。また、上記の方法(これに限定されない)によって形成されたポリエステルチップは、静電密着剤及び/又は滑剤を含むバージンポリエステルチップであってよい。
【0065】
本実施の形態において、上記の方法によって形成されたポリエステルチップの固有粘度は、通常、0.65dL/gを超えることがなく、例えば、0.40dL/gから0.65dL/gの間であり、さらに、例えば、0.50dL/gから0.65dL/gの間にあり、例えば、0.600dL/gに達し得る。
【0066】
ある実施の形態において、上記の手法で形成されたポリエステルチップは、バージンポリエステルチップと称されてよい。
【0067】
(物理的リサイクルポリエステルチップIの製造方法)(上記の静電密着剤及び/又は滑剤が含まれ得る)
【0068】
本実施の形態において、リサイクルポリエステル材料は、溶解状態となるように溶解されてよい。次に、溶解状態のリサイクルポリエステル材料は、リサイクルポリエステル材料内の固体不純物を除去するように、フィルターによってろ過されてよい。続いて、押出機(市販されている単軸押出機、SSE)、2軸押出機(TSE)又は他の同様なスクリュー押出機(しかしながら、それらに限定されない)を、物理的リサイクルポリエステルチップIを形成するために、ろ過されたリサイクルポリエステル材料を押出して粒状にするために用いてよい。
【0069】
ある実施の形態において、リサイクルポリエステル材料が溶解される前に、リサイクルポリエステル材料は、リサイクルポリエステル材料を溶かすことに要する時間及び/又はエネルギー消費を減らすために、物理的及び機械的に砕かれてよい。
【0070】
他方、上記の方法は、切断、溶解、ろ過、及び押出ステップを介して、リサイクルポリエステル材料を再形成するものである。換言すると、一般に、物理的リサイクルポリエステルチップIは、リサイクルポリエステル材料内のポリエステル分子の再配置により製造される。
【0071】
本実施の形態において、上記の物理的再製造製造処理ではリサイクルポリエステル材料のポリエステル分子が一般に再配置されるのみ(つまり、基本的に再編されない)であるため、リサイクルポリエステル材料内に元々存在する組成物(例えば、静電密着剤、滑剤、安定剤、及び/又は重合触媒等)は、物理的リサイクルポリエステルチップI内に未だ存在し得る。換言すると、物理的リサイクルポリエステルチップIの特徴のうちのいくつかは、元々使用されたリサイクルポリエステル材料の特徴のうちのいくつかと同一であり得る又は類似し得る。
【0072】
ある実施の形態において、一般に、物理的再製造製造処理中におけるリサイクルポリエステル材料の平均分子量は、ほとんど変化し得ない。換言すると、溶解状態のリサイクルポリエステル材料の粘性は、より高い(つまり、より低い流動性を有する)。従って、非常に小さい孔径を有するフィルターを用いた場合、ろ過効率が低下し得る。ある実施の形態において、フィルターの孔径は、好ましくは、10μmから100μmの間にあるが、本開示はこの範囲に限定されない。
【0073】
上記の物理的再製造によって製造された物理的リサイクルポリエステルチップIは、通常、比較的高い固有粘度を有する。本実施の形態において、物理的リサイクルポリエステルチップの固有粘度は、通常、0.60dL/g未満ではなく、例えば、0.65dL/gから0.90dL/gの間であり得る。さらに、例えば、0.65dL/gから0.80dL/gの間であり得る。例えば、おおよそ0.68dL/gであり得る。
【0074】
ある実施の形態において、上記の物理的再製造によって形成されたポリエステルチップは、物理的リサイクルポリエステルチップと称されてよい。
【0075】
ある実施の形態において、物理的リサイクルポリエステルチップの固有粘度は、固相重合によって調整されてよい。しかしながら、固相重合により、物理的リサイクルポリエステルチップの固有粘度が容易に増加され得るが、低下することはない。更に、通常のフィルム形成処理は、通常、ポリエステルチップの固有粘度の範囲に対して所定の制限を有する。従って、物理的リサイクルポリエステルチップIのみを使用することは、発泡処理及び紡糸工程にはより適しているが、フィルム形成処理にはそれほど適していない場合がある。
【0076】
(物理的リサイクルポリエステルチップIIの製造方法)(上記静電密着剤及び/又は滑剤を含み得る)
【0077】
製造は、上記の「物理的リサイクルポリエステルチップIの製造方法」と同一又は類似の方法によって行われてよいが、添加剤(例えば、静電密着剤及び/又は滑剤)を混合するために対応するフィーダーが追加されるという点が異なる。
【0078】
例えば、添加剤(例えば、静電密着剤または滑剤等であるが、これらに限定されない)の種類及び/又は量によって、少なくとも1つのフィーダー(例えば、サイドフィーダ)が2軸押出機に加えられてよい。フィーダーは、ロスインウェイト計を備えるロスインウェイトフィーダーであってよい。上記フィーダーは、また、一般的な市販の装置及び/又はオプションの付属品であり得る。このように、リサイクルポリエステル材料を押し出す際、対応する添加剤が、設計された追加量及び/又は濃度比に応じて、フィーダーによって混合されてよい。
【0079】
ある実施の形態において、添加剤の種類及び/又は添加剤の量によって、リサイクルポリエステルチップのいくつかの特性(例えば、固有粘度、静電密着効果、滑り等であるが、これらに限定されない)が、それに応じて調整されてよい。
【0080】
ある実施の形態において、上記の物理的再製造によって形成されたポリエステルチップは、物理的リサイクルポリエステルチップと称されてよい。
【0081】
ある実施の形態において、リサイクルポリエステルチップの総重量に基づいて、1000ppmの酢酸マグネシウム四水和物、200ppmの酢酸リチウム二水和物、200ppmの酢酸ナトリウム三水和物、200ppmの酢酸カリウム、及びおおよそ2.4μmの平均チップサイズを有する5000ppmのシリカが含まれてよい。
【0082】
(二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法)
【0083】
本実施の形態において、上記のポリエステルチップ(例えば、上記の化学的リサイクルポリエステルチップ、上記のバージンポリエステルチップ、上記の物理的リサイクルポリエステルチップI、又は上記の物理的リサイクルポリエステルチップII等)の少なくとも1つは、直接使用されるか、又は設計要件に応じた好適な比で混合されてよい。
【0084】
ある実施の形態において、ポリエステルチップは、加熱及び/又は低圧により乾燥されてよい。例えば、ポリエステルチップは、4時間、おおよそ160℃で真空乾燥されてよい。
【0085】
続いて、ポリエステルチップ(乾燥ポリエステルチップであってよいが、これに限定されない)は、溶解及び押し出しのために加熱される。例えば、ポリエステルチップは、おおよそ280℃で、押出機(例えば、市販の単軸押出機等であるがこれに限定されない)によって溶解され、溶解ポリエステルが、型(例えばT型(Tダイヘッド)等)210から取り出され、絞り出され、又は押出される。
【0086】
型210から絞り出されるか、押出された後、溶解ポリエステルは、キャスティングロール220上に落下させられてよい。また、キャスティングロール220に対応する静電密着装置230が、当該静電密着装置230が対応する高い電位を有し、キャスティングロール220が対応する低い電位(例えば、グラウンド電位)を有するように、電源投入される。従って、対応する静電圧が、静電密着装置230とキャスティングロール220との間で供給され得る。もちろん、キャスティングロール220及び静電密着装置230のそれぞれの電位は、設計要件(例えば、静電密着装置230が対応する低い電位を有し、キャスティングロール220が対応する高い電位を有する)に応じて調整されてよい。
【0087】
本実施の形態において、キャスティングロール220と静電密着装置230との間の電位差は、通常1キロボルト(kV)以上であり、例えば、2kV以上であり、例えば、3kV以上であり、5kV以上であってよい。キャスティングロール220は、ポリエステルを冷却するために用いられてよい。以下、冷却及び形成後のシートは、厚いシートと称されてよい。
【0088】
本実施の形態において、用いられる少なくとも1種のポリエステルチップは、通電している静電密着装置230とキャスティングロール220との間の静電電圧により、静電密着剤を含み得るので、ポリエステル(未だ溶解状態にある、または部分的に冷却されて粘着性を有する又は薄片化される)は、キャスティングロール220の表面の220aに、より密着し得る。換言すると、ポリエステルは、より速くより均一に冷却され得る。また、そのポリエステル分子は、より低い結晶度及びより均一な厚さを有し得る。このように、形成された厚いシート又は対応する二軸延伸ポリエステルフィルムは、より良好な特性(例えば、フィルム曇りはより低く、厚みの均一性はより高く及び/又は破損しにくい)を有し得る。
【0089】
その後、厚いシートには、一般的な二軸延伸ポリエステルフィルムの通常の方法により、対応する二軸延伸工程が行われてよい。
【0090】
例えば、引き延ばされていない厚いシートは、まず、縦方向引き延ばしのための縦方向引き延ばし機に案内されて対応するフィルム(つまり、縦方向に引き延ばされた厚いシート)が形成される。次に、フィルムは二軸延伸ポリエステルフィルム(つまり、横方向に引き延ばされたフィルム)を形成するために、横方向引き延ばし機に案内されて横方向に引き延ばされる。
【0091】
より詳細には、例えば、引き延ばされていない厚いシートは、縦方向引き延ばし機へ案内されてよい。縦方向引き延ばし機において、引き延ばされていない厚いシートは、加熱に用いられてよい複数のローラを介して80℃に予熱され、次に、縦方向引き延ばし点において赤外線で加熱されてよい。赤外線加熱中において、2つのローラ間の速度差により、厚いシートは、搬送方向(縦方向MDとも称されてよい)と平行な長さ方向におおよそ3.5倍にまで引き延ばされてよい。縦方向に引き延ばされた厚いシート(フィルムとも称されてよい)は、ローラ(数に制限なし)によって冷却されてよい(例えば、おおよそ30℃に冷却される)。次に、フィルムの幅方向(つまり、縦方向に直交する他の方向、横方向TDとも称され得る)において、フィルムの2つの端がクランプによって留められてよい。クランプに保持されたフィルムは、横方向引き延ばし機にさらに案内されてよい。横方向引き延ばし機において、クランプによって留められたフィルムは、まず、予熱ゾーンにおいておおよそ90℃に予熱されてよい。次に、フィルムは、おおよそ100℃にさらに加熱され、幅方向におおよそ4.0倍に引き延ばされる。その後、横方向に引き延ばされたフィルムは、ヒートセッティングのため、おおよそ230℃に加熱されてよい。
【0092】
上記のステップを介して、本実施の形態にかかる二軸延伸ポリエステルフィルムの製造が、実質的に完了する。
【0093】
ある実施の形態において、設計要件によっては、横方向引き延ばしの後に、フィルムの一部が除去されてよい(例えば、エッジトリムが除去されてよい)。
【0094】
二軸延伸ポリエステルフィルムは、巻回されて保管されてよく、さらに、販売及び/又は使用されてよい。
【0095】
(実施例及び比較例)
【0096】
実施例及び比較例を以下に示し、本開示について詳細に説明するが、本開示は以下の実施例に全く限定されない。
【0097】
各実施例及び各比較例は、用いたポリエステルチップの割合を形成された二軸延伸ポリエステルフィルムが対応する金属イオン濃度及び滑剤濃度(SiO2濃度として示される)を有するように調整した差異点ともに、上記の方法によって形成された対応する二軸延伸ポリエステルフィルムを示す。
【0098】
表1における実施例1から実施例4、及び比較例1から比較例4の二軸延伸ポリエステルフィルムを評価する。評価対象は、10の積層された二軸延伸ポリエステルフィルムの色(表1に「10のフィルムの色b*」として示す)、二軸延伸ポリエステルフィルムの曇り(表1に「フィルムの曇り(%)」として示す)、二軸延伸ポリエステルフィルムの再結晶温度(表1に「再結晶温度Tc(20)(℃)」として示す)、二軸延伸ポリエステルフィルムのフィルム破壊速度(表1に「フィルム破壊速度」(回数/24時間)として示す)、及び二軸延伸ポリエステルフィルムを形成するために用いた厚いシートの結晶化割合(表1に「冷却及び形成後の厚いシートの結晶化割合」として示す)を含む。
【0099】
色試験について、CIE1976カラースペースb*値は、東京電色社の色差計ND300A(ハンター法)によって分析されてよい。
【0100】
曇り試験について、以下の実施の形態におけるポリエステルフィルムの曇りは、東京電色社のヘーズメーター(モデルTC-HHIII)によって試験されてよい。方法は、JISK770仕様に従う。
【0101】
再結晶温度又は結晶化割合は、ISO11358-3:2013(温度の判別及び融解と結晶化のエンタルピー)基準に応じて示差走査熱量測定(DSC)によって分析されてよい。
【0102】
フィルム破壊速度は、同一の延伸条件(上記の縦方向引き延ばし又は横方向引き延ばしを含む)の下での単位時間当たりのフィルム破壊の回数であってよい。
【0103】
【表1】
【0104】
上記の実施例又は比較例において、静電密着効果の評価方法は、10ミリグラム(mg)の厚いシートを、20℃/分の加熱速度で、冷却されて形成された後、溶解するまで示差走査熱量測定法(DSC)によって加熱し、次に、次式C=(A1-A2)/Bによって結晶化割合を算出すること、を含んでよい。Cは、冷却及び形成後の厚いシートサンプルの結晶度である。A1は、融点(Tm)吸熱ピーク領域である。A2は、結晶化温度(Tch)の発熱ピーク領域である。Bは、完全な結晶化(つまり、100%の結晶化)の理論値である(おおよそ140J/g)。
【0105】
一般に、結晶化割合が低いほど、静電密着効果が良好になる。
【0106】
あるあり得る実施例において、加えられたリサイクル材料の高い割合のために除去できない多くの不純物がある場合がしばしばある。従って、形成されたフィルム(例えば、厚いシート)は、より多くの結晶(例えば、より高い結晶化割合)及び/又はより高い再結晶温度(Tc)を有し、これは、処理条件の範囲を狭め、冷却及び形成後のより高い結晶度、より遅い生産速度、より低い延伸性(例えば、良好な縦方向引き延ばし又は横方向引き延ばしがより困難となる)、及び/又はより高いフィルム破壊をしばしばもたらす。
【0107】
上記の実施の形態(例えば、第1の実施の形態から第4の実施の形態等だが、これらに限定されない)において、製造は、「化学的リサイクルポリエステルチップの製造方法」と同一又は類似の上記方法によって行われてよい。更に、適量の静電密着剤が、化学的リサイクルポリエステルチップの製造工程中において添加される。また、静電密着剤が溶液内で溶解され、反応槽(例えば、エステル化槽)内にイオンの形態(金属陽イオン及び対応する陰イオン)で添加/存在するので、方法は、均質混合に類似し、混合が容易である及び/又は均一な混合が容易であり、その分散性が良好である及び/又は対応する誘電性が良好である。従って、静電密着剤の添加量が低減される及び/又は続く製造工程において良好な静電密着効果が発揮され得る。このように、化学的リサイクルポリエステルチップを含むポリエステル樹脂混合物が冷却成形ロールで成形される際、溶解ポリエステルポリマーは、より良好な冷却効果を有し、結晶化の発生が低減され得る(例えば、結晶化割合が減少する)。
【0108】
同様に、静電密着剤が押出混合経由で添加される場合、異種混合経由での添加と類似する。従って、均質混合と比較して、静電密着剤は、より低い分散性を有する、及び/又は、イオン状態を形成するのがより困難である。従って、期待される静電密着効果を達成するために、添加される静電密着剤の量をしばしば増加させることが必要である。
【0109】
また、アルカリ金属塩類又はアルカリ土類金属塩は、良好な静電密着剤であり得る。しかしながら、アルカリ金属イオン及び/又はアルカリ土類金属イオンは、ポリエステルの熱分解について触媒作用を及ぼし得る。従って、より多くの量のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の量が添加されると、続いて形成されるフィルムは対応して帯黄色になり、その製造物の価値が低下し得る。
【0110】
要約すると、本開示の二軸延伸ポリエステルフィルムは、リサイクルポリエステル材料から作られてよい。また、本開示の二軸延伸ポリエステルフィルムは、より良好な質を有する。
【0111】
本開示の技術的範囲から逸脱しない限り、様々な応用及び変更が本開示の構成に対して行うことが可能な点、当業者にとって明らかである。以上を鑑み、本開示は、特許請求の範囲及びその均等に含まれる、本開示の応用及び変更をも包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の二軸延伸ポリエステルフィルム及びその製造方法は、任意の商業上普及している物(例えば、磁気テープ、絶縁テープ、写真フィルム、トレーシングフィルム、包装フィルム、電気絶縁フィルム、エンジニアリング紙等)に適用されてよい。
【符号の説明】
【0113】
110 解重合化槽
120 エステル化槽
130 重合化槽
210 型(ダイヘッド)
220 キャスティングロール
230 静電密着装置
220a 表面
図1
図2
図3