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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】半導体装置及びその調整方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 33/07 20060101AFI20240405BHJP
   H10N 52/00 20230101ALI20240405BHJP
【FI】
G01R33/07
H10N52/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022202919
(22)【出願日】2022-12-20
(62)【分割の表示】P 2018230554の分割
【原出願日】2018-12-10
(65)【公開番号】P2023029390
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2022-12-20
(31)【優先権主張番号】P 2018046888
(32)【優先日】2018-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】飛岡 孝明
(72)【発明者】
【氏名】挽地 友生
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-008883(JP,A)
【文献】特開2016-166862(JP,A)
【文献】特公平07-007047(JP,B2)
【文献】特開2013-200318(JP,A)
【文献】特開2016-138838(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0028286(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 33/07
H10N 52/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板の第1の領域に設けられ、第1の直線上に所定の間隔を置いて配置された第1の複数の電極を有する第1の縦型ホール素子と、
前記半導体基板の前記第1の領域とは異なる第2の領域に設けられ、前記第1の直線と平行な第2の直線上に前記所定の間隔を置いて配置された前記第1の複数の電極と同じ数の第2の複数の電極を有する第2の縦型ホール素子と、
前記第1の縦型ホール素子を駆動する第1の駆動電源と、
前記第1の駆動電源とは別に設けられ、前記第2の縦型ホール素子を駆動する第2の駆動電源とを備え、
前記第1の駆動電源及び前記第2の駆動電源は、独立して調整されるように構成され、
前記第1の駆動電源及び前記第2の駆動電源にそれぞれ交番して前記第1の複数の電極及び前記第2の複数の電極に接続する第1のスイッチと、
前記第1の複数の電極及び前記第2の複数の電極の出力をそれぞれ交番して接続する第2のスイッチを備え
前記第1の縦型ホール素子からの出力電圧を増幅する第1のアンプと、
前記第1のアンプとは別に設けられ、前記第2の縦型ホール素子からの出力電圧を増幅する第2のアンプと、
前記第1のアンプの出力信号と前記第2のアンプの出力信号とを加算する加算器と
前記第1及び第2の駆動電源により前記第1及び第2の縦型ホール素子それぞれに流す電流の方向を第1の状態としたときに前記加算器から出力される第1の出力電圧を保持し、前記第1及び第2の駆動電源により前記第1及び第2の縦型ホール素子それぞれに流す電流の方向を第2の状態としたときに前記加算器から出力される第2の出力電圧と前記第1の出力電圧とを加算または減算して、当該加算または減算結果を最終出力電圧として出力するサンプルホールド回路と
一方の入力端子に前記最終出力電圧が入力され、他方の入力端子に所定の基準電圧が入力され、前記最終出力電圧と前記基準電圧とを比較した結果を出力信号として出力する比較器を備え、
前記第1の駆動電源と前記第2の駆動電源のうち少なくとも一方は、前記比較器の出力信号に応じてその電流値または電圧値が切り替えられることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記駆動電源は、電流源であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記駆動電源は、電圧源であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
半導体基板の第1の領域に設けられ、第1の直線上に所定の間隔を置いて配置された第1の複数の電極を有する第1の縦型ホール素子と、
前記半導体基板の前記第1の領域とは異なる第2の領域に設けられ、前記第1の直線と平行な第2の直線上に前記所定の間隔を置いて配置された前記第1の複数の電極と同じ数の第2の複数の電極を有する第2の縦型ホール素子と、
前記第1の縦型ホール素子を駆動する第1の駆動電源と、
前記第1の駆動電源とは別に設けられ、前記第2の縦型ホール素子を駆動する第2の駆動電源とを備え、
前記第1の駆動電源及び前記第2の駆動電源は、独立して調整されるように構成され、
前記第1の駆動電源及び前記第2の駆動電源にそれぞれ交番して前記第1の複数の電極及び前記第2の複数の電極に接続する第1のスイッチと、
前記第1の複数の電極及び前記第2の複数の電極の出力をそれぞれ交番して接続する第2のスイッチを備える半導体装置において、
前記第1の駆動電源の電流値または電圧値と前記第2の駆動電源の電流値または電圧値とを同じ初期値とし、第1の縦型ホール素子と第2の縦型ホール素子のそれぞれに同一方向、同一電流量の駆動電流を供給したときのそれぞれの出力電圧を測定する第1のステップと、
前記第1のステップで測定された二つの出力電圧の相違に基づき、前記相違を補正するように、前記第1の駆動電源の電流値または電圧値を前記初期値からα増やし、前記第2の駆動電源の電流値または電圧値を前記初期値からα減らすように調整する第2のステップとを備えることを特徴とする半導体装置の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその調整方法に関し、特に、水平方向の磁界を検知する縦型ホール素子を有する半導体装置及びその調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホール素子は、磁気センサとして非接触での位置検知や角度検知が可能であることから様々な用途に用いられている。中でも半導体基板表面に対して垂直な磁界成分(垂直磁場)を検知する横型ホール素子を用いた磁気センサが一般に良く知られているが、半導体基板の表面に対して平行な磁界成分(水平磁場)を検知する縦型ホール素子を用いた磁気センサも各種提案されている。
【0003】
縦型ホール素子では、幾何学的な対称性の高い構造をとることが難しいため、磁界が印加されていないときにおいても出力される、いわゆるオフセット電圧が横型ホール素子以上に発生しやすい。そのため、磁気センサとして用いる場合には、かかるオフセット電圧を除去する必要があり、その方法として、スピニングカレント法が知られている。
【0004】
スピニングカレント法を用いてオフセット電圧を除去する方法として、例えば、特許文献1には、図6に示すように、同様の構成の2つ(複数)の縦型ホール素子300と縦型ホール素子400とを並行に配置し、縦型ホール素子300の電極311~315及び縦型ホール素子400の電極411~415を配線W1~W6により図示のように接続し、スピニングカレント法を行うことが開示されている。これにより、スピニングカレント法の実行時に、電流の方向を切り替えた各フェーズのいずれにおいても電流経路の抵抗が等しくなり、オフセット電圧の除去精度を向上させることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】欧州特許第1438755号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の方法では、以下のような問題が生じる。
【0007】
複数の縦型ホール素子の特性が全く同じである場合には、上述のとおり、スピニングカレント法の実行時の各フェーズのいずれにおいても電流経路の抵抗が等しくなるため、オフセット電圧を精度よく除去することが可能である。
【0008】
しかし、複数の縦型ホール素子は、同一基板上に半導体製造プロセスによって同時に形成されるものの、不純物の濃度分布等を複数の縦型ホール素子間で完全に同一にすることは極めて難しい。このため、複数の縦型ホール素子間には特性ばらつきが生じることとなる。したがって、スピニングカレント法の実行時の各フェーズにおいて、電流経路の抵抗は完全には等しくならず、オフセットキャンセルの精度は、それほど向上しない。
【0009】
したがって、本発明は、より高精度に、スピニングカレント法によるオフセットキャンセルを実現することが可能な縦型ホール素子を有する半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の半導体装置は、半導体基板の第1の領域に設けられ、第1の直線上に所定の間隔を置いて配置された第1の複数の電極を有する第1の縦型ホール素子と、前記半導体基板の前記第1の領域とは異なる第2の領域に設けられ、前記第1の直線と平行な第2の直線上に前記所定の間隔を置いて配置された前記第1の複数の電極と同じ数の第2の複数の電極を有する第2の縦型ホール素子と、前記第1の縦型ホール素子を駆動する第1の駆動電源と、 前記第1の駆動電源とは別に設けられ、前記第2の縦型ホール素子を駆動する第2の駆動電源とを備え、前記第1の駆動電源及び前記第2の駆動電源は、独立して調整されるように構成され、前記第1の駆動電源及び前記第2の駆動電源にそれぞれ交番して前記第1の複数の電極及び前記第2の複数の電極に接続する第1のスイッチと、前記第1の複数の電極及び前記第2の複数の電極の出力をそれぞれ交番して接続する第2のスイッチを備え、前記第1の縦型ホール素子からの出力電圧を増幅する第1のアンプと、前記第1のアンプとは別に設けられ、前記第2の縦型ホール素子からの出力電圧を増幅する第2のアンプと、前記第1のアンプの出力信号と前記第2のアンプの出力信号とを加算する加算器と、前記第1及び第2の駆動電源により前記第1及び第2の縦型ホール素子それぞれに流す電流の方向を第1の状態としたときに前記加算器から出力される第1の出力電圧を保持し、前記第1及び第2の駆動電源により前記第1及び第2の縦型ホール素子それぞれに流す電流の方向を第2の状態としたときに前記加算器から出力される第2の出力電圧と前記第1の出力電圧とを加算または減算して、当該加算または減算結果を最終出力電圧として出力するサンプルホールド回路と、一方の入力端子に前記最終出力電圧が入力され、他方の入力端子に所定の基準電圧が入力され、前記最終出力電圧と前記基準電圧とを比較した結果を出力信号として出力する比較器を備え、前記第1の駆動電源と前記第2の駆動電源のうち少なくとも一方は、前記比較器の出力信号に応じてその電流値または電圧値が切り替えられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1及び第2の縦型ホール素子がそれぞれ別々の駆動電源で独立に駆動されるため、第1及び第2の駆動電源を適宜調整することにより、半導体製造プロセス上で生じる第1及び第2の縦型ホール素子の特性誤差を補償することができる。したがって、第1及び第2の縦型ホール素子の特性を実質的に同一にした状態でスピニングカレント法を実行することができることから、高精度なオフセットキャンセルが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態の縦型ホール素子を有する半導体装置を説明するための概略図である。
図2】本発明の実施形態の縦型ホール素子を有する半導体装置を説明するための概略図である。
図3】本発明の実施形態の縦型ホール素子の構造の一例を示す断面図であり、図1に示す半導体装置のL-L線に沿った断面に対応する図である。
図4図1に示す半導体装置にヒステリシス特性を付加する場合の具体的な構成例を説明するための概略図である。
図5図4に示す半導体装置の磁電変換特性を説明するための図である。
図6】従来技術による縦型ホール素子を有する半導体装置を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
【0014】
図1及び図2は、本発明の実施形態の縦型ホール素子を有する半導体装置を説明するための概略図であり、図1は、スピニングカレント法の実行時において縦型ホール素子に流す電流の方向を第1の状態とした場合(フェーズ1)を示し、図2は、スピニングカレント法の実行時において縦型ホール素子に流す電流の方向を第2の状態とした場合(フェーズ2)を示している。
【0015】
図1及び図2に示すように、本実施形態の半導体装置は、縦型ホール素子100及び200と、縦型ホール素子100及び200それぞれに対して駆動電流を供給する駆動電源としての電流源120及び220と、縦型ホール素子100及び200から得られた信号を増幅するアンプ110及び210と、縦型ホール素子100及び200を駆動する電流の方向を切り替えるためのスイッチS10~S19及びS20~S29とを備えている。
【0016】
縦型ホール素子100及び200は、それぞれ図1に示す直線L1-L1上及び直線L2-L2上に所定の間隔を置いて配置された5つの電極111~115及び211~215を備え、互いに略同一構造を有している。また、縦型ホール素子100及び200は、直線L1-L1と直線L2-L2とが互いに平行となるように配置されている。
【0017】
電流源120は、スイッチS10~S14を介して縦型ホール素子100に接続されるように構成されている。すなわち、電流源120の入力端がスイッチS10を介して電極111に接続され、スイッチS11を介して電極112に接続され、スイッチS14を介して電極115に接続され、電流源120の出力端がスイッチS12を介して電極113に接続され、スイッチS13を介して電極114に接続されている。
【0018】
一方、電流源220は、スイッチS20~S24を介して縦型ホール素子200に接続されるように構成されている。すなわち、電流源220の入力端がスイッチS22を介して電極213に接続され、スイッチS23を介して電極214に接続され、電流源220の出力端がスイッチS20を介して電極211に接続され、スイッチS21を介して電極212に接続され、スイッチS24を介して電極215に接続されている。
【0019】
また、アンプ110は、スイッチS15~S19を介して縦型ホール素子100に接続されるように構成されている。すなわち、アンプ110の非反転入力端子がスイッチS16を介して電極112に接続され、スイッチS17を介して電極113に接続され、アンプ110の反転入力端子がスイッチS15を介して電極111に接続され、スイッチS18を介して電極114に接続され、スイッチS19を介して電極115に接続されている。
【0020】
一方、アンプ210は、スイッチS25~S29を介して縦型ホール素子200に接続されるように構成されている。すなわち、アンプ210の非反転入力端子がスイッチS25を介して電極211に接続され、スイッチS28を介して電極214に接続され、スイッチS29を介して電極215に接続され、アンプ210の反転入力端子がスイッチS26を介して電極212に接続され、スイッチS27を介して電極213に接続されている。
【0021】
縦型ホール素子100と縦型ホール素子200とは、半導体製造プロセスによって同一半導体基板上に同時に形成されるものである。ここで、縦型ホール素子100及び200の構造の一例ついて図3を用いて説明する。図3は、図1に示す半導体装置のL-L線に
沿った断面に対応する図である。
【0022】
図3に示すように、縦型ホール素子100及び200は、P型(第1導電型)の半導体基板101の領域RA及びRBにそれぞれ形成されている。領域RAと領域RBとは、半導体基板101上に設けられたN型(第2導電型)の半導体層102に形成されたP型の素子分離拡散層103によって互いに電気的に分離されている。縦型ホール素子100の電極111~115及び縦型ホール素子200の電極211~215は、領域RA及びRBそれぞれにおける半導体層102の表面に隣接して設けられた半導体層102よりも高濃度のN型の不純物領域により構成されている。
【0023】
図3には示していないが、図1及び図2に示す電流源120及び130、アンプ110及び210、並びにスイッチS10~S19及びS20~S29も、半導体基板101の領域RA及びRBとは別の領域に、素子分離拡散層103により縦型ホール素子100及び200と電気的に分離されて形成されている。
【0024】
なお、図3においては、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200とを横方向に並べて配置、すなわち、図1に示す直線L1-L1と直線L2-L2とが同一直線となるように配置した例を示しているが、これに限らず、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200とは、直線L1-L1と直線L2-L2とが平行になるように配置されればどのような配置であっても構わない。例えば、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200とを縦方向に並べて配置、すなわち、図1及び図2において、縦型ホール素子100を紙面上側に、縦型ホール素子200を紙面下側に配置しても構わない。さらに、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200とは、必ずしも隣接して配置される必要はなく、例えば、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200との間に、電流源120、220やアンプ110、210等を配置することも可能である。
【0025】
次に、本実施形態の半導体装置における縦型ホール素子100及び200を用いて、スピニングカレント法によりオフセットキャンセルを行う方法について説明する。磁場は、図1及び図2に示す矢印Bの方向に印加されている。
【0026】
まず、図1に示すように、フェーズ1として、縦型ホール素子100に接続されたスイッチS10、S12、S14、S16、S18、及び縦型ホール素子200に接続されたスイッチS20、S22、S24、S26、S28をオンにし、縦型ホール素子100に接続されたスイッチS11、S13、S15、S17、S19、及び縦型ホール素子200に接続されたスイッチS21、S23、S25、S27、S29をオフにする。
【0027】
これにより、縦型ホール素子100には、電極113から両端の電極111及び115へ電流が流れるように電流源120から駆動電流が供給され(このときの電流の方向を「第1の電流方向」と呼ぶ)、電極112と電極114との間に電位差が生じる。スイッチS16及びS18がオンしており、アンプ110の非反転入力端子が電極112に接続され、反転入力端子が電極114に接続されていることから、アンプ110は、電極112と電極114との間の電位差を増幅して加算器130に出力する。
【0028】
縦型ホール素子200には、両端の電極211及び215から電極213へ電流が流れるように電流源220から駆動電流が供給され(このときの電流の方向を「第2の電流方向」と呼ぶ)、電極212と電極214との間に電位差が生じる。スイッチS26及びS28がオンしており、アンプ210の非反転入力端子が電極214に接続され、反転入力端子が電極212に接続されていることから、アンプ210は、電極214と電極212との間の電位差を増幅して加算器130に出力する。
【0029】
加算器130は、アンプ110の出力信号とアンプ210の出力信号とを加算して、フェーズ1の出力電圧として出力端子131に出力電圧VOUT1を出力する。出力電圧VOUT1は、サンプルホールド回路等(図示せず)により保持される。
【0030】
次に、図2に示すように、フェーズ2として、縦型ホール素子100に接続されたスイッチS11、S13、S15、S17、S19、及び縦型ホール素子200に接続されたスイッチS21、S23、S25、S27、S29をオンにし、縦型ホール素子100に接続されたスイッチS10、S12、S14、S16、S18、及び縦型ホール素子200に接続されたスイッチS20、S22、S24、S26、S28をオフにする。
【0031】
これにより、縦型ホール素子100には、電極114から電極112へ電流が流れるように電流源120から駆動電流が供給され(このときの電流の方向を「第3の電流方向」と呼ぶ)、電極113と電極111及び115との間に電位差が生じる。スイッチS15、S17、S19がオンしており、アンプ110の非反転入力端子が電極113に接続され、反転入力端子が電極111及び115に接続されていることから、アンプ110は、電極113と電極111及び115との間の電位差を増幅して加算器130に出力する。
【0032】
縦型ホール素子200には、電極212から電極214へ電流が流れるように電流源220から駆動電流が供給され(このときの電流の方向を「第4の電流方向」と呼ぶ)、電極211及び215と電極213との間に電位差が生じる。スイッチS25、S27、S29がオンしており、アンプ210の非反転入力端子が電極211及び215に接続され、反転入力端子が電極213に接続されていることから、アンプ210は、電極211及び215と電極213との間の電位差を増幅して加算器130に出力する。
【0033】
加算器130は、アンプ110の出力信号とアンプ210の出力信号とを加算して、フェーズ2の出力電圧として出力端子131に出力電圧VOUT2を出力する。
【0034】
そして、フェーズ2で得られた出力電圧VOUT2からフェーズ1で得られた出力電圧VOUT1を減算処理することによりオフセット電圧が除去された最終出力電圧を得ることができる。
【0035】
なお、上記説明においては、フェーズ1において、縦型ホール素子100に第1の電流方向の駆動電流を供給し、縦型ホール素子200に第2の電流方向の駆動電流を供給し、フェーズ2において、縦型ホール素子100に第3の電流方向の駆動電流を供給し、縦型ホール素子200に第4の電流方向の駆動電流を供給する例を示したが、駆動電流の供給方向はこれに限られない。スイッチの切り替え方を変更し、例えば、フェーズ1において、縦型ホール素子100に第1の電流方向の駆動電流を供給し、縦型ホール素子200に第4の電流方向の駆動電流を供給し、フェーズ2において、縦型ホール素子100に第3の電流方向の駆動電流を供給し、縦型ホール素子200に第2の電流方向の駆動電流を供給する等、駆動電流の供給方向は、適宜入れ替え可能であり、それに応じて得られた出力電圧を適宜加算または減算することによりオフセット電圧をキャンセルするようにしてもよい。
【0036】
ここで、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200とは、同一半導体基板上に半導体製造プロセスによって同時に形成されるものの、不純物の濃度分布等を両者の間で完全に同一にすることは非常に困難である。このため、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200との間には特性ばらつきが生じている。
【0037】
そこで、本実施形態では、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200とをそれぞれ別々の電流源120と電流源220とを用いて駆動する構成としている。かかる構成により、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200の駆動電流を別々に調整することができる。
【0038】
すなわち、予め電流源120の電流値と電流源220の電流値とを同一の電流値(初期電流値と呼ぶ)とし、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200のそれぞれに同一方向、同一電流量の駆動電流を供給したときのそれぞれの出力電圧を測定する。そして、測定された両出力電圧の相違に基づき、これを補正するように、電流源120の電流値と電流源220の電流値を調整する。これにより、実質的に縦型ホール素子100と縦型ホール素子200との間の特性ばらつきを補償することができる。したがって、スピニングカレント法によるオフセットキャンセルを高精度に行うことが可能となる。なお、電流源120と電流源220の各電流値の調整は、例えば、電流源120の電流値を初期電流値からα増やし、電流源220の電流値を初期電流値からα減らして、トータルの電流値(駆動電流)が一定となるように調整することが好ましい。これにより、縦型ホール素子100及び200の出力側のアンプ110、210等の回路を調整する必要をなくすことができる。
【0039】
また、本実施形態では、縦型ホール素子100及び200の出力をそれぞれ別々のアンプ110及び210によって増幅する構成としていることにより、アンプ110及び210それぞれのゲインを調整することによって、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200との間の特性ばらつきを補償することも可能である。
【0040】
一方、図示は省略するが、縦型ホール素子100及び200の出力側を適宜結線し、出力電圧を1つアンプで増幅するように構成してもよい。この場合、上述のように2つのアンプ110及び210のゲインを調整することによる縦型ホール素子100と縦型ホール素子200との間の特性ばらつきの補償はできなくなるが、アンプを1つにできるため、回路規模を縮小することができる。
【0041】
さらに、本実施形態によれば、磁場の検出状態に応じて、縦型ホール素子100及び200それぞれに供給する駆動電流、すなわち電流源120及び220の電流値を適宜調整することにより、最終出力電圧にヒステリシス特性を付加することも可能となる。そこで、以下に、電流源120及び220の電流値を調整して最終出力電圧にヒステリシス特性を付加する具体的な構成例を図4を用いて説明する。
【0042】
図4は、図1及び図2に示す半導体装置の最終出力電圧にヒステリシス特性を付加する場合の具体的な構成例を示す図である。なお、図4は、図1と同じフェーズ1の状態を示しているが、フェーズ2の状態は図2と同様であるため、図示は省略する。また、図5は、図4に示す半導体装置の磁電変換特性を説明するための図である。
【0043】
図4に示す半導体装置は、図1に示す半導体装置の構成に加え、サンプルホールド回路140と比較器150とをさらに有している。
【0044】
サンプルホールド回路140は、上述のフェーズ1における出力電圧VOUT1を保持し、さらにフェーズ2における出力電圧VOUT2から保持しておいた出力電圧VOUT1を減算して、減算結果を最終出力電圧VOUTとして出力する。
【0045】
比較器150の非反転入力端子には、サンプルホールド回路140の出力電圧VOUTが入力され、比較器150の反転入力端子には、基準電圧として接地端子151の接地電圧が入力され、電圧VOUTと接地電圧とを比較した結果を出力信号CMPOUTとして出力する。比較器150の出力信号CMPOUTは、電流源120及び220に入力される。
【0046】
電流源120及び220は、上述のように、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200との間の特性ばらつきを補償するために予め電流値が調整されており、比較器150の出力信号CMPOUTに応じて、調整された状態の電流値を基準として、それぞれその電流値を2値の間で切り替えられるように構成されている。
【0047】
ここで、比較器150は、反転入力端子に接地電圧(0V)が入力されているため、以下のように非反転入力端子の電圧VOUTの電圧値に応じた出力信号CMPOUTを出力する。
VOUT>0のとき、CMPOUT=“H”
VOUT<0のとき、CMPOUT=“L”
【0048】
次に、図5を用いて本実施形態の動作を説明する。X軸が印加磁束密度B、Y軸がサンプルホールド回路140の出力電圧(比較器150の非反転入力端子の入力電圧)VOUTを表している。
【0049】
電流源120及び220の電流値をそれぞれI1、I2とし、α及びβを定数とすると、
CMPOUT=“H”のとき、I1=I(1+α+β)、I2=I(1-α-β)
CMPOUT=“L”のとき、I1=I(1+α-β)、I2=I(1-α+β)
のように、比較器150の出力信号CMPOUTに応じて、電流源120及び220の電流値を2値の間で切り替えることによって、サンプルホールド回路140の出力電圧VOUTに、傾きが等しく、Y軸切片がそれぞれ±VOSだけオフセットした磁電変換特性を持たせることができる。
【0050】
ここで、αは、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200との間の特性ばらつきを補償するように予め調整された値である。β=0に対応する直線は、電流源120の電流値I1及び電流源220の電流値I2それぞれに上記αを加減算することにより特性ばらつきが補償された磁電変換特性を表す。βは、所望のヒステリスシス幅BHYSに応じて任意に設定される。
【0051】
印加磁束密度Bが零から正(S極)の方向に増加するとき、CMPOUT=“L”に対応する直線に沿ってサンプルホールド回路140の出力電圧VOUTが増加する(図中矢印1)に対応)。VOUT>0になると、比較器150の出力信号CMPOUTは“L”から“H”へと遷移し、印加磁束密度Bに対する磁電変換特性は、CMPOUT=“H”に対応する直線へと切り替えられる(図中矢印2)に対応)。このときの印加磁束密度Bが動作点BOPである。
【0052】
次に、印加磁束密度Bが負(N極)の方向に増加するとき、CMPOUT=“H”に対応する直線に沿ってサンプルホールド回路140の出力電圧VOUTが減少する(図中矢印3)に対応)。VOUT<0になると、比較器150の出力信号CMPOUTは“H”から“L”へと遷移し、印加磁束密度Bに対する磁電変換特性はCMPOUT=“L”に対応する直線へと再び切り替えられる(図中矢印4)に対応)。このときの印加磁束密度Bが復帰点BRPである。
【0053】
このように、磁電変換特性にヒステリシス性を持たせることによって、ヒステリシス幅BHYSを備えた交番検知特性を実現することが可能となる。したがって、通常、サンプルホールド回路140の出力の後段にヒステリシス特性を付加するために設ける信号経路の信号伝達極性を切り替えるための回路等が不要となり、単純な構成の比較器を追加するだけでよいため、占有面積を削減することができる。
【0054】
なお、比較器150の反転入力端子に、接地電圧に替えて所定の基準電圧VREFが入力されるようにしてもよい。その場合には、図5のサンプルホールド回路140の出力電圧VOUTの磁電変換特性の反転レベルは、0ではなくVREFになるため、
VOUT>VREFのとき、CMPOUT=“H”
VOUT<VREFのとき、CMPOUT=“L”
となり、動作点BOP及び復帰点BRPは、所定の基準電圧VREFの絶対値と極性に応じてオフセットすることとなる。すなわち、動作点BOP及び復帰点BRPが共に正になるようにVREF(>0)を入力すれば、S極側に動作点BOP及び復帰点BRPを有するS極検知特性を実現できる。また、動作点BOP及び復帰点BRPが共に負になるようにVREF(<0)を入力すれば、N極側に動作点BOP及び復帰点BRPを有するN極検知特性も実現できる。
【0055】
図4には、電流源120及び220の両方の電流値が比較器150の出力信号CMPOUTによって切り替えられる例を示したが、電流源120及び220のうちいずれかの電流値のみが切り替えられる構成としてもよい。
【0056】
以上説明したとおり、本実施形態によれば、縦型ホール素子100を駆動する電流源120とは別に縦型ホール素子200を駆動する電流源220が設けられていることから、電流源120と電流源220の電流値を適宜調整することにより、半導体製造プロセス上で生じる縦型ホール素子100と縦型ホール素子200との特性誤差を補償し、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200との特性を実質的に同一にした状態でスピニングカレント法を実行することができる。したがって、高精度なオフセットキャンセルが可能となる。また、比較器150の出力信号CMPOUTに基づき電流源120と電流源220の電流値を切り替え制御することによって、最終出力電圧VOUTにヒステリシス特性を付加することも可能となる。したがって、通常、最終出力電圧VOUTの後段に設けるヒステリシス特性を付加するための特別な回路の追加が不要となることから、半導体装置全体の面積を縮小することができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【0058】
例えば、上記実施形態においては、駆動電源として電流源を用いた例を示したが、電流源に替えて電圧源を用いることも可能である。この場合、電圧源の電圧値を調整することによって、縦型ホール素子の駆動電流を調整する。
【0059】
上記実施形態においては、2つの縦型ホール素子を有する半導体装置を例として説明したが、本発明は、3つ以上の縦型ホール素子を有する半導体装置にも適用可能である。その場合も、上記実施形態と同様、複数の縦型ホール素子の数と同数の駆動電源を設け、各縦型ホール素子をそれぞれ独立した駆動電源で駆動させることにより、複数の縦型ホール素子の半導体製造プロセス上で生じる特性誤差を補正することができる。特に、縦型ホール素子を4つ設ける構成とすれば、一度に第1~第4の電流方向の駆動電流を各縦型ホール素子に供給できることから、オフセットキャンセルに必要な時間を短縮することができる。また、縦型ホール素子を8つ設ける構成とすれば、4方向の駆動電流をそれぞれ2つの縦型ホール素子に供給できるため、さらに高精度なオフセットキャンセルが可能となる。
【0060】
上記実施形態においては、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200にそれぞれアンプ110とアンプ210とを接続し、アンプ110の出力信号とアンプ210の出力信号とを加算器130により加算する例を示したが、次のようにすることも可能である。すなわち、アンプを1つとし、まず、図1に示す状態で縦型ホール素子100を駆動して得られた出力電圧の差を当該1つのアンプにより増幅して第1の出力信号とし、次に、図1に示す状態で縦型ホール素子200を駆動して得られた出力電圧の差を同アンプにより増幅して第2の出力信号とし、続いて、図2に示す状態で縦型ホール素子100を駆動して得られた出力電圧の差を同アンプにより増幅して第3の出力信号とし、最後に図2に示す状態で縦型ホール素子200を駆動して得られた出力電圧の差を同アンプにより増幅して第4の出力信号とし、これら第1~第4の出力信号を加減算するようにしてもよい。これによりアンプが1つとなるため、回路規模を縮小することが可能となる。ただし、時分割処理となることから、オフセットキャンセルに必要な時間が長くなるため、高速性が求められる場合は、上記実施形態にように、縦型ホール素子それぞれに対応してアンプを設けるのが好ましい。
【0061】
上記実施形態においては、縦型ホール素子100及び200に供給する電流方向をそれぞれ2方向としている、すなわち縦型ホール素子100には第1及び第3の電流方向、縦型ホール素子200には第2及び第4の電流方向の駆動電流を供給しているが、縦型ホール素子100及び200それぞれに第1~第4の電流方向を印加してオフセットキャンセルを行ってもよい。この場合、4つのフェーズが必要となるため、オフセットキャンセルに必要な時間は増加するが、オフセットキャンセルの精度を向上させることができる。
【0062】
上記実施形態においては、縦型ホール素子100及び200が電極をそれぞれ5つ有している例を示しているが、これに限らず、縦型ホール素子100と縦型ホール素子200の電極数が同数であれば、それぞれ3つ以上の電極を有していればよい。これは、半導体装置が3つ以上の縦型ホール素子を有する場合も同様である。
【0063】
上記実施形態においては、第1導電型をP型、第2導電型をN型として説明したが、導電型を入れ替えて、第1導電型をN型、第2導電型をP型としても構わない。
【符号の説明】
【0064】
100、200、300、400 縦型ホール素子
101 半導体基板
102 半導体層
103 素子分離拡散層
110、210 アンプ
111~115、211~215、311~315、411~415 電極
120、220 電流源
130 加算器
131 出力端子
150 比較器
VOUT1、VOUT2 出力電圧
S10~S29 スイッチ
VOUT 最終出力電圧
CMPOUT 比較器の出力信号
W1~W6 配線



図1
図2
図3
図4
図5
図6