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特許7466635非同期加熱圧延装置、大幅の極薄金属リチウム箔、並びにその調製方法及び使用
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  • 特許-非同期加熱圧延装置、大幅の極薄金属リチウム箔、並びにその調製方法及び使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】非同期加熱圧延装置、大幅の極薄金属リチウム箔、並びにその調製方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/04 20060101AFI20240405BHJP
   B21B 1/40 20060101ALI20240405BHJP
   H01M 4/40 20060101ALN20240405BHJP
【FI】
B23K20/04 B
B21B1/40
H01M4/40
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022519376
(86)(22)【出願日】2020-09-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-05
(86)【国際出願番号】 CN2020116658
(87)【国際公開番号】W WO2021057688
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-03-25
(31)【優先権主張番号】201910911287.6
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521228710
【氏名又は名称】北京▲衛▼▲藍▼新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING WELION NEW ENERGY TECHNOLOGY CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】No.1,Qihang West Street,Doudian Town,Fangshan District,Beijing 102402 China
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】李文俊
(72)【発明者】
【氏名】李永▲偉▼
(72)【発明者】
【氏名】向晋
(72)【発明者】
【氏名】▲ユ▼会根
(72)【発明者】
【氏名】何▲亜▼菲
(72)【発明者】
【氏名】侯宝▲鵬▼
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第204558583(CN,U)
【文献】中国実用新案第207806174(CN,U)
【文献】特開2010-027673(JP,A)
【文献】特開2014-102992(JP,A)
【文献】特開平11-204144(JP,A)
【文献】特開2018-130759(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/04
B21B 1/40
B21B 1/26
H01M 4/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大幅の極薄金属リチウム箔を短いプロセスで調製するための非同期加熱圧延装置であって、
延伸基材を巻き戻すための延伸基材巻き戻しユニットと、
リチウムストリップを巻き戻すためのリチウムストリップ巻き戻しユニットと、
リチウムストリッププレシェーピングユニットと、
第1の圧延ロール、第2の圧延ロール、及び加熱ボックスを含む非同期加熱圧延ユニットと、
複合ストリップを巻き取るための巻取りユニットとを含み、
前記加熱ボックスは、前記第1の圧延ロールを加熱するために使用され、前記第1の圧延ロールは、前記延伸基材を加熱し、前記第1の圧延ロールと前記第2の圧延ロールは、前記延伸基材とリチウムストリップが複合して前記複合ストリップとなるように、軸平行に対向して配置されており、
前記リチウムストリップ巻き戻しユニットは、順次に配置されているリチウムストリップ巻き戻しロール、第1の補助ガイドロール、第1の張力検出ロール、及び速度測定ロールを含み、
前記延伸基材巻き戻しユニットは、順次に配置されている基材巻き戻しロール、第2の補助ガイドロール、第1の自差修正センサー、第3の補助ガイドロール、及び第4の補助ガイドロールを含み、
前記リチウムストリッププレシェーピングユニットは、順次に配置されている、第2の自差修正センサー及び互いに対向して配置されたシェーピングロールを含み、
前記巻取りユニットは、順次に配置されている第2の張力検出ロール、第3の自差修正センサー、及び複合ストリップ巻取りロールを含む、非同期加熱圧延装置。
【請求項2】
前記第2の圧延ロールの表面は、セラミック層またはポリマー層で被覆され、前記セラミック層は、アルミナ、ジルコニア、酸化クロム、及び複合物セラミックコーティングのうちの1つまたは複数を含み、前記ポリマー層は、ポリシロキサン、長鎖アルカン、及びパラフィンのうちの1つまたは複数を含むことを特徴とする、請求項1に記載の非同期加熱圧延装置。
【請求項3】
前記延伸基材は、ステンレス鋼箔、銅箔、鋼箔または鉄箔から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の非同期加熱圧延装置。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の非同期加熱圧延装置を使用して大幅の極薄金属リチウム箔を調製する方法であって、次のステップ:
リチウムストリップを巻き戻し及びプレシェーピングした後、巻き戻した延伸基材と一緒に第1の圧延ロールと第2の圧延ロールとの間のロールギャップ内で非同期加熱圧延処理してから巻き取り、複合ストリップを得るステップを含み、
前記非同期加熱圧延処理の温度は50~250℃であり、前記第2の圧延ロールと前記第1の圧延ロールの回転速度比は1:1.1~8である、方法。
【請求項5】
リチウムストリップの巻き戻し速度は0.1~3m/分であり、延伸基材の巻き戻し速度は0.1~20m/分であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記リチウムストリップの巻き戻し時の張力は5~100Nであり、延伸基材及びリチウムストリップの巻き戻し時の自差修正精度はいずれも±0.2mmであることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年09月25日に中国専利局に提出した、出願番号が201910911287.6、発明名称が「非同期加熱圧延装置、大幅の極薄金属リチウム箔、並びにその調製方法及び使用」である中国特許出願の優先権を要求し、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、極薄リチウム箔の技術分野に属し、特に、非同期加熱圧延装置、大幅の極薄金属リチウム箔、並びにその調製方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く、使用寿命が長く、環境に優しく汚染のない利点があるため、家電製品や電気自動車の分野に広く使用されている。しかし、リチウム電池の初期の充放電の過程において、固体電解質界面膜(SEI膜)の形成によりリチウムの一部が消耗され、正極材料のリチウムが損失する。この不可逆的な初期の容量の損失は、電池容量の損失に直接つながる。現在、リチウムイオン電池極板のリチウム補充プロセスは、リチウムイオン電池の容量を向上させるための重要な技術であり、その核となるのは圧延と積層である。圧延とは、0.25mm~2mmのリチウムストリップをロールでプレスして0.002mm~0.006mmのリチウム膜を形成して延伸膜に付着させるプロセスである。
【0004】
従来のリチウム補充プロセスでは、リチウムストリップを圧延するプロセスにおいて、リチウムストリップ材料の厚さのばらつきが大きい場合(≧±10μm)、特にリチウムストリップの幅が大きい場合(150mm以上)、リチウムストリップは仕込みプロセスでは幅方向の張力が不均一であり、通常、両側が大きく、中央が小さいため、幅方向のリチウムストリップの変形量にはばらつきがある(厚さが不均一であり、中央が厚くて両側が薄い)。そのため、加圧ロールが高速で回転しているとき、リチウムストリップ材料の厚さのばらつき、リチウムストリップの幅方向の張力の不一致、及びリチウムストリップの幅方向の不均一な変形などの要因により、リチウムストリップの中央部が蓄積してロールの仕込み部でリチウム蓄積を形成しがちである。リチウム蓄積はますます多くなり、除去するのが困難であり、これはリチウムストリップの通常の仕込みに深刻な影響を及ぼし、リチウムストリップの圧延の厚さの一致性を低下させ、連続生産を不可能にし、材料の浪費及び生産能力の低下をもたらす。また、従来の圧延はロール圧延機への要求が高く、従来の単純なロール圧延ではリチウムストリップを2μm~6μmの厚さに圧延することはできない。実現できたとしても、他の補助材料が必要である。しかし、補助材料は高価であり、リチウムストリップのコストをさらに高め、単一成分の金属リチウムストリップを完全に得ることができず、その性能に深刻な影響を及ぼす。
【発明の概要】
【0005】
上記に鑑み、本発明の目的は、均一な厚さを有する大幅の極薄リチウムストリップを調製可能な非同期加熱圧延装置、大幅の極薄金属リチウム箔、並びにその調製方法及び使用を提供することである。
【0006】
本発明は、大幅の極薄金属リチウム箔を短いプロセスで調製するための非同期加熱圧延装置を提供し、該非同期加熱圧延装置は、
延伸基材を巻き戻すための延伸基材巻き戻しユニットと、
リチウムストリップを巻き戻すためのリチウムストリップ巻き戻しユニットと、
リチウムストリッププレシェーピングユニットと、
第1の圧延ロール、第2の圧延ロール、及び加熱ボックスを含む非同期加熱圧延ユニットと、
複合ストリップを巻き取るための巻取りユニットとを含み、
前記加熱ボックスは、前記第1の圧延ロールを加熱するために使用され、前記第1の圧延ロールは、前記延伸基材を加熱し、前記第1の圧延ロールと前記第2の圧延ロールは、前記延伸基材とリチウムストリップが複合して前記複合ストリップとなるように、軸平行に対向して配置されている。
【0007】
好ましくは、第2の圧延ロールの表面は、セラミック層またはポリマー層で被覆される。前記セラミック層は、アルミナ、ジルコニア、酸化クロム、及び複合物セラミックコーティングのうちの1つまたは複数を含み、前記ポリマー層は、ポリシロキサン、長鎖アルカン、及びパラフィンのうちの1つまたは複数を含む。
【0008】
好ましくは、前記リチウムストリップ巻き戻しユニットは、順次に配置されているリチウムストリップ巻き戻しロール、第1の補助ガイドロール、第1の張力検出ロール、及び速度測定ロールを含み、
前記延伸基材巻き戻しユニットは、順次に配置されている基材巻き戻しロール、第2の補助ガイドロール、第1の自差修正センサー、第3の補助ガイドロール、及び第4の補助ガイドロールを含み、
前記リチウムストリッププレシェーピングユニットは、順次に配置されている第2の自差修正センサー及び互いに対向して配置されたシェーピングロールを含み、
前記巻取りユニットは、順次に配置されている第2の張力検出ロール、第3の自差修正センサー、及び複合ストリップ巻取りロールを含む。
【0009】
好ましくは、前記延伸基材は、ステンレス鋼箔、銅箔、鋼箔または鉄箔から選択される。
【0010】
本発明は、上記の技術案に記載の非同期加熱圧延装置を使用して大幅の極薄金属リチウム箔を調製する方法を提供し、該方法は、次のステップ:
リチウムストリップを巻き戻し及びプレシェーピングした後、巻き戻した延伸基材と一緒に第1の圧延ロールと第2の圧延ロールとの間のロールギャップ内で非同期加熱圧延処理してから巻き取り、複合ストリップを得るステップを含み、
前記非同期加熱圧延処理の温度は50~250℃であり、前記第2の圧延ロールと前記第1の圧延ロールの回転速度比は1:1.1~8である。
【0011】
好ましくは、リチウムストリップの巻き戻し速度は0.1~3m/分であり、延伸基材の巻き戻し速度は0.1~20m/分である。
【0012】
好ましくは、前記リチウムストリップの巻き戻し時の張力は5~100Nであり、延伸基材及びリチウムストリップの巻き戻し時の自差修正精度はいずれも±0.2mmである。
【0013】
本発明は、上記の技術案に記載の方法によって調製された、大幅の極薄リチウム箔を提供し、
前記リチウム箔の幅は1~600mmであり、前記リチウム箔の厚みは1~20μmである。
【0014】
本発明は、上記の技術案に記載の大幅の極薄リチウム箔を含む電池を提供する。
【0015】
本発明は、大幅の極薄金属リチウム箔を短いプロセスで調製するための非同期加熱圧延装置を提供し、該非同期加熱圧延装置は、延伸基材を巻き戻すための延伸基材巻き戻しユニット;リチウムストリップを巻き戻すためのリチウムストリップ巻き戻しユニット;第1の圧延ロール、第2の圧延ロール、及び加熱ボックスを含む非同期加熱圧延ユニット;及び複合ストリップを巻き取るための巻取りユニットを含み、前記加熱ボックスは、前記第1の圧延ロールを加熱するために使用され、前記第1の圧延ロールは、前記延伸基材を加熱し、前記第1の圧延ロールと前記第2の圧延ロールは、前記延伸基材とリチウムストリップが複合して前記複合ストリップとなるように、軸平行に対向して配置されている。この装置は、延伸基材巻き戻しユニットによって基材を巻き戻し、リチウムストリップ巻き戻しユニットによってリチウムストリップを巻き戻し、プレシェーピング後にそれらを同時に第1の圧延ロールと第2の圧延ロールとの間に輸送して複合し、複合ストリップを得てから、複合ストリップ巻き取りユニットによって複合ストリップを巻き取る。この装置は、加熱ボックス及び非同期の第1の圧延ロールと第2の圧延ロールを配置することにより、均一な厚さを有する大幅の極薄金属リチウム箔を製造することができる。該リチウム箔は、電池に適用する場合に高い初期クーロン効率を有する。実験の結果、リチウム箔の幅は1~600mmであり、前記リチウム箔の厚さは1~20μmであり、電池の初期クーロン効率は98%と高くなり、リチウムストリップの横方向の150ポイントをテストポイントとした有効厚さの相対誤差は0~3%であり、縦方向の30ポイントをテストポイントとした有効厚さの相対誤差は0~20%であることが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明によって提供される短いプロセスで大幅の極薄金属リチウム箔を調製するための非同期加熱圧延装置の構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、大幅の極薄金属リチウム箔を短いプロセスで調製するための非同期加熱圧延装置を提供し、該非同期加熱圧延装置は、
延伸基材を巻き戻すための延伸基材巻き戻しユニット;
リチウムストリップを巻き戻すためのリチウムストリップ巻き戻しユニット;
リチウムストリッププレシェーピングユニット;
第1の圧延ロール、第2の圧延ロール、及び加熱ボックスを含む非同期加熱圧延ユニット;及び
複合ストリップを巻き取るための巻取りユニットを含み、
前記加熱ボックスは、前記第1の圧延ロールを加熱するために使用され、前記第1の圧延ロールは、前記延伸基材を加熱し、前記第1の圧延ロールと前記第2の圧延ロールは、前記延伸基材とリチウムストリップが複合して前記複合ストリップとなるように、軸平行に対向して配置されている。
【0018】
図1を参照すると、図1は、本発明によって提供される短いプロセスで大幅の極薄金属リチウム箔を調製するための非同期加熱圧延装置の構造概略図であり、Dはリチウムストリップ巻き戻しユニット、Eは延伸基材巻き戻しユニット、Fはリチウムストリッププレシェーピングユニット、Hは非同期加熱圧延ユニット、Gは巻き取りユニットを表す。
リチウムストリップ巻き戻しユニット(D)において、1はリチウムストリップ巻き戻しロール、2は第1の補助ガイドロール、3は張力検出ロール1、4は速度測定ロールを表し、
延伸基材巻き戻しユニット(E)において、8は延伸基材巻き戻しロール、9は第2の補助ガイドロール、10は第1の自差修正センサー、11は第3の補助ガイドロール、12は第4の補助ガイドロールを表し、
リチウムストリッププレシェーピングユニット(F)において、5は第2の自差修正センサー、6はシェーピングロール1、7はシェーピングロール2を表し、
非同期加熱圧延ユニット(H)において、Aは第2の圧延ロール、Bは第1の圧延ロール、Cは加熱ボックスを表し、
巻き取りユニット(G)において、13は第2の張力検出ロール、14は第3の自差修正センサー、15は複合ストリップ巻き取りロールを表し、
Pは延伸基材、Sはリチウムストリップ、Zは複合ストリップ(すなわち、延伸基材とリチウムストリップが複合したもの)を表す。
【0019】
リチウムストリップが圧延ロールの表面に付着して圧延ロールの表面汚染やリチウムストリップ材料の浪費を引き起こし、さらにその後の複合ストリップの厚さの均一性へ影響を与えることを避けるために、本発明は、非同期加熱圧延ユニットの、リチウムストリップに近い側の圧延ロール、すなわち、第2の圧延ロールの表面に被覆処理を行う。好ましくは、セラミック層またはポリマー層で被覆する。前記セラミック層は、アルミナ、ジルコニア、酸化クロム、及び複合物セラミックコーティングのうちの1つまたは複数を含み、前記ポリマー層は、ポリシロキサン、長鎖アルカン、及びパラフィンのうちの1つまたは複数を含む。
【0020】
本発明において、前記延伸基材は好ましくは、ステンレス鋼箔、銅箔、鋼箔または鉄箔から選択される。
【0021】
本発明において、前記リチウムストリップ巻き戻しユニットは、順次に配置されているリチウムストリップ巻き戻しロール、第1の補助ガイドロール、第1の張力検出ロール、及び速度測定ロールを含み、
前記延伸基材巻き戻しユニットは、順次に配置されている基材巻き戻しロール、第2の補助ガイドロール、第1の自差修正センサー、第3の補助ガイドロール、及び第4の補助ガイドロールを含み、
前記リチウムストリッププレシェーピングユニットは、順次に配置されている、第2の自差修正センサー及び互いに対向して配置されたシェーピングロールを含み、
前記巻取りユニットは、順次に配置されている第2の張力検出ロール、第3の自差修正センサー、及び複合ストリップ巻取りロールを含む。
【0022】
本発明において、圧延時にリチウムストリップが第1の圧延ロール及び第2の圧延ロールの半径方向の力を受けるだけではなく、第1の圧延ロール及び第2の圧延ロールの接線力をも受けるように、前記第1の圧延ロールと前記第2の圧延ロールの速度差について非同期加熱圧延ユニットではそれぞれの速度を設定して両者を非同期にする。これによって、極薄のリチウムストリップをより容易に実現できる。
【0023】
前記加熱ボックスは、第1の圧延ロールを加熱して、延伸基材とリチウムストリップとの圧延複合時に熱を提供し、これによって、固体金属リチウムストリップは、圧延中に半固体状態に保たれ、超薄のリチウムストリップをより容易に実現できる。
【0024】
前記基材巻き戻しユニットは、圧延後の極薄リチウムストリップの付着及び搬送される基材を提供する。リチウムストリップ巻き戻し機構は、圧延されるリチウムストリップを提供及び輸送する。
前記プレシェーピングユニットは、リチウムストリップが非同期加熱圧延ユニットに入る前に両側からリチウムストリップを平らにプレスし、それによってリチウムストリップの厚さの一致性を改善し、圧延効果に対するリチウムストリップの厚さのばらつきの悪影響を低減する。
前記リチウムストリッププレシェーピング機構は、非同期加熱圧延ユニットの上流に配置され、両側からリチウムストリップを平らにプレスし、リチウムストリップはプレシェーピングユニットを通過した後、非同期加熱圧延ユニットの第1の圧延ロールと第2の圧延ロールとの間のロールギャップを通過する。
【0025】
具体的には、上記の非同期加熱圧延装置を使用する具体的なプロセスは、以下を含む。
予めストリップ通しを行うために、延伸基材(P)を基材巻き戻しロール(8)、第2の補助ガイドロール(9)、第1の自差修正センサー(10)、第3の補助ガイドロール(11)、補助ガイドロール4(12)、及び第2の圧延ロール(A)と第1の圧延ロール(B)との間のロールギャップに通し、最後に、延伸基材(P)のヘッドエンドを巻き取りロール(15)に固定し、延伸基材(P)を緊張(引っ張った)状態にする。次に、リチウムストリップ(S)をリチウムストリップ巻き戻しロール(1)、補助ガイドロール1(2)、張力検出ロール(3)、速度測定ロール(4)、及びリチウムストリッププレシェーピング機構(E)中の自差修正センサー2(5)、シェーピングロール1(6)とシェーピングロール2(7)との間のロールギャップに通し、最後に圧延ロール(A)と加熱圧延ロール(B)との間のロールギャップを通過し、次に、リチウムストリップ(S)を延伸基材(P)に貼り付け、リチウムストリップを緊張状態にする。
ステップ2:ロールギャップの調整
第2の圧延ロール(A)と第1の圧延ロール(B)との間の相対距離、すなわち、予想される極薄リチウムストリップの厚さを調整する。
ステップ3:加熱
加熱ボックスの温度を調整することで第2の圧延ロール(A)及び延伸基材(P)を加熱する。
ステップ4:速度調整
第2の圧延ロール(A)と第1の圧延ロール(B)の相対速度を調整することにより、圧延されたリチウムストリップに接線力及び熱を加えて、極薄の金属リチウムを得る。
【0026】
本発明は、上記の技術案に記載の非同期加熱圧延装置を使用して大幅の極薄金属リチウム箔を調製する方法を提供し、該方法は、次のステップ:
リチウムストリップを巻き戻し及びプレシェーピングした後、巻き戻した延伸基材と一緒に第1の圧延ロールと第2の圧延ロールとの間のロールギャップ内で非同期加熱圧延処理してから巻き取り、複合ストリップを得るステップを含み、
前記非同期加熱圧延処理の温度は50~250℃であり、前記第1の圧延ロールと前記第2の圧延ロールの回転速度比は1:1.1~8である。
【0027】
本発明は、第1の圧延ロールを加熱ボックスにより加熱し、第1の圧延ロールと第2の圧延ロールとの間の非同期性、すなわち異なる速度により、リチウムストリップは極薄になり、優れた性能を有するようになる。例えば、調製された電池は高い初期クーロン効率を有する。
【0028】
本発明において、前記非同期加熱圧延処理の温度は50~250℃であり、特定の実施形態では、前記非同期加熱圧延処理の温度は80℃または120℃である。
【0029】
前記非同期加熱圧延処理の圧力は、好ましくは3~6Tであり、特定の実施形態では、前記非同期加熱圧延処理の圧力は、4Tまたは5Tである。
【0030】
前記第1の圧延ロールと第2の圧延ロールの回転速度比は1:1.1~8である。前記第1の圧延ロールの速度は好ましくは1~5m/分であり、第2の圧延ロールの速度は好ましくは1~10m/分である。特定の実施形態では、前記第1の圧延ロールの速度は3m/分であり、前記第2の圧延ロールの速度は1.5m/分または2m/分である。
【0031】
本発明において、リチウムストリップの巻き戻し速度は0.1~3m/分であり、延伸基材の巻き戻し速度は0.1~20m/分である。前記リチウムストリップの巻き戻し時の張力は5~100Nであり、延伸基材及びリチウムストリップの巻き戻し時の自差修正精度は好ましくはいずれも±0.2mmである。
【0032】
本発明は、上記の技術案に記載の方法によって調製された、大幅の極薄リチウム箔を提供し、
前記リチウム箔の幅は1~600mmであり、前記リチウム箔の厚みは1~20μmである。
【0033】
前記リチウム箔の幅は好ましくは80~100mmである。
【0034】
本発明は、上記の技術案に記載の大幅の極薄リチウム箔を含む電池を提供する。
【0035】
本発明において、上記の極薄リチウム箔でSiOC極板を予めリチウム化し、NCAと一緒に電池に組み立てられる。
【0036】
上記の技術案に記載の大幅の極薄リチウム箔を使用して製造した電池は、高い初期クーロン効率を有する。
【0037】
本発明をさらに説明するために、本発明によって提供される非同期加熱圧延装置、大幅の極薄金属リチウム箔、並びにその調製方法及び使用を、以下の実施例を参照して詳細に説明する。しかし、それらは本発明の保護範囲を限定するものとして解釈すべきではない。
【0038】
実施例1
予めストリップ通しを行うために、延伸基材(P)を基材巻き戻しロール(8)、第2の補助ガイドロール(9)、第1の自差修正センサー(10)、第3の補助ガイドロール(11)、補助ガイドロール4(12)、及び第2の圧延ロール(A)と第1の圧延ロール(B)との間のロールギャップに通し、最後に、延伸基材(P)のヘッドエンドを巻き取りロール(15)に固定し、延伸基材(P)を緊張状態にした。次に、リチウムストリップ(S)をリチウムストリップ巻き戻しロール(1)、補助ガイドロール1(2)、張力検出ロール1(3)、速度測定ロール(4)、及びリチウムストリッププレシェーピング機構(F)中の自差修正センサー2(5)、シェーピングロール1(6)とシェーピングロール2(7)との間のロールギャップに通し、最後に圧延ロール(A)と加熱圧延ロール(B)との間のロールギャップを通過し、次にリチウムストリップ(S)を延伸基材(P)に貼り付け、リチウムストリップを緊張状態にした。
ここで、延伸基材(P)は10μmの銅箔であり、ストリップ通しが完成した後、圧延ロール(A)と圧延ロール(B)との間の相対距離を11μmに調整し、加熱ボックスの温度を120℃に調整し、圧延ロールBを加熱した。圧延ロール(A)の速度を1.5m/分に調整し、圧延ロール(B)の速度を3m/分に調整し、圧延ロール間の圧力を5Tに調整した。巻き取りユニット(G)を連続的に巻き取ることにより、厚さ20μm、幅80mmの複合ストリップ(Z)を得た。リチウムストリップの有効厚さは10μmであった。
【0039】
本発明において、実施例1で調製された極薄リチウムストリップでSiOC極板を予めリチウム化し、NCAと一緒に電池に組み立てられた。テストした結果、初期クーロン効率は98%であり、予めリチウム化しなかったSiOC-NCA電池の初期クーロン効率は76%しかなかった。
【0040】
中央の50cmのリチウムストリップをランダムに選択し、横方向に約1cmごとに1つのポイントを取り、厚さを測定し、リチウムストリップの両側と中部の厚さを合計150ポイント測定した。縦方向に両側と中部の厚さを測定し、1cmごとに1つのポイントと取り、合計で24ポイントを測定した。
【0041】
表1:本発明の実施例1に提供されたリチウムストリップの横方向の異なるポイントの有効厚さのテスト結果
【表1】
【0042】
表2:本発明の実施例1に提供されたリチウムストリップの縦方向の異なるポイントの有効厚さのテスト結果
【表2】
【0043】
実施例2
予めストリップ通しを行うために、延伸基材(E)を基材巻き戻しロール(8)、第2の補助ガイドロール(9)、第1の自差修正センサー(10)、第3の補助ガイドロール(11)、補助ガイドロール4(12)、及び第2の圧延ロール(A)と第1の圧延ロール(B)との間のロールギャップに通し、最後に、延伸基材(P)のヘッドエンドを巻き取りロール(15)に固定し、延伸基材(P)を緊張状態にした。次に、リチウムストリップ(S)をリチウムストリップ巻き戻しロール(1)、補助ガイドロール1(2)、張力検出ロール1(3)、速度測定ロール(4)、及びリチウムストリッププレシェーピング機構(F)中の自差修正センサー2(5)、シェーピングロール1(6)とシェーピングロール2(7)との間のロールギャップに通し、最後に圧延ロール(A)と加熱圧延ロール(B)との間のロールギャップを通過し、次にリチウムストリップ(S)を延伸基材(P)に貼り付け、リチウムストリップを緊張状態にした。
ここで、延伸基材(P)は10μmのステンレス鋼箔であり、ストリップ通しが完成した後、圧延ロール(A)と圧延ロール(B)との間の相対距離を22μmに調整し、加熱ボックスの温度を80℃に調整し、圧延ロールBを加熱した。圧延ロール(A)の速度を2m/分に調整し、圧延ロール(B)の速度を3m/分に調整し、圧延ロール間の圧力を4Tに調整した。巻き取りユニット(G)を連続的に巻き取ることにより、厚さ30μm、幅100cmの複合ストリップ(Z)を得た。リチウムストリップの有効厚さは20μmであった。
【0044】
本発明において、実施例2で調製された極薄リチウムストリップでSiOC極板を予めリチウム化し、NCAと一緒に電池に組み立てられた。テストした結果、初期クーロン効率は98%であった。
【0045】
中央の50cmのリチウムストリップをランダムに選択し、横方向に約1cmごとに1つのポイントを取り、厚さを測定し、リチウムストリップの両側と中部の厚さを合計150ポイント測定した。縦方向に両側と中部の厚さを測定し、1cmごとに1つのポイントと取り、合計で30ポイントを測定した。
【0046】
表3:本発明の実施例2に提供されたリチウムストリップの横方向の異なるポイントの有効厚さのテスト結果
【表3】
【0047】
表4:本発明の実施例2に提供されたリチウムストリップの縦方向の異なるポイントの有効厚さのテスト結果
【表4】
【0048】
上記の実施例から分かるように、本発明は、大幅の極薄金属リチウム箔を短いプロセスで調製するための非同期加熱圧延装置を提供し、該非同期加熱圧延装置は、延伸基材を巻き戻すための延伸基材巻き戻しユニット;リチウムストリップを巻き戻すためのリチウムストリップ巻き戻しユニット;第1の圧延ロール、第2の圧延ロール、及び加熱ボックスを含む非同期加熱圧延ユニット;及び複合ストリップを巻き取るための巻取りユニットを含み、前記加熱ボックスは、前記第1の圧延ロールを加熱するために使用され、前記第1の圧延ロールは、前記延伸基材を加熱し、前記第1の圧延ロールと前記第2の圧延ロールは、前記延伸基材とリチウムストリップが複合して前記複合ストリップとなるように、軸平行に対向して配置されている。この装置は、加熱ボックス及び非同期の第1の圧延ロールと第2の圧延ロールを提供することにより、均一な厚さを有する大幅の極薄金属リチウム箔を製造することができる。該リチウム箔は、電池に適用する場合に高い初期クーロン効率を有する。実験の結果、リチウム箔の幅は1~600mmであり、前記リチウム箔の厚さは1~20μmであり、電池の初期クーロン効率は98%と高くなり、リチウムストリップの横方向の150ポイントをテストポイントとした有効厚さの相対誤差は0~3%であり、縦方向の30ポイントをテストポイントとした有効厚さの相対誤差は0~2%であることが明らかになった。
【0049】
上記の実施形態は、本発明の好ましい実施形態にすぎない。当業者は、本発明の原理から逸脱することなく、いくつかの改善及び修正を行うこともでき、これらの改善及び修正もまた、本発明の保護範囲内と見なされるべきである。
図1