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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/28 20060101AFI20240405BHJP
   C09J 123/04 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
B32B27/28 101
C09J123/04
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022536390
(86)(22)【出願日】2021-07-13
(86)【国際出願番号】 JP2021026282
(87)【国際公開番号】W WO2022014588
(87)【国際公開日】2022-01-20
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2020120500
(32)【優先日】2020-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】楠本 征也
(72)【発明者】
【氏名】中原 翔馬
(72)【発明者】
【氏名】田村 拓也
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/152324(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/145235(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00- 43/00
C08L1/00-101/14
C09J1/00- 5/10
9/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の少なくとも一方の表面に積層される接着剤層とを備え、
前記接着剤層が、樹脂(X)を含み、
前記樹脂(X)が、不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量がそれぞれ異なる2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)を含み、
前記不飽和カルボン酸がアクリル酸、メタクリル酸またはクロトン酸であり、
前記2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)は、
不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量が12質量%以上30質量%以下であるエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1)と、
不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量が0質量%を超えて12質量%未満であるエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a2)とを、それぞれ1種以上含み、
前記2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)が、下記条件(i)および(ii)のうち、少なくとも一方を満たす積層体。
(i)エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1)として不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量がそれぞれ異なる2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体を含む。
(ii)エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a2)として、不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量がそれぞれ異なる2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体を含む。
【請求項2】
前記2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)に含まれる不飽和カルボン酸に由来する構造単位の総含有量が、前記樹脂(X)中に含まれる重合体の単量体に由来する構造単位の総量に対して、5質量%以上18質量%未満である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1)として、
不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量が17質量%以上30質量%以下であるエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1-1)と、
不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量が12質量%以上17質量%未満であるエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1-2)とを含む、請求項1または2に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックフィルム、蒸着フィルム、金属箔、紙、不織布などの基材と他の被着体または基材同士、を熱および圧力により貼り合わせる(すなわちヒートシールを行う)手法は、各種産業分野で広く用いられてきている。このヒートシールの手法においては、通常、あらかじめ基材上に熱および圧力により貼り合わせ可能な接着剤層が設けられ、この接着剤層を介し、基材と他の被着体、または基材同士が貼り合わされる。
【0003】
例えば、特開昭57-137339号公報では、エチレン、α,β-不飽和カルボン酸及びα,β-不飽和カルボン酸金属塩共重合体の変性物の水性分散体組成物を塗工して形成させた接着剤層を介してヒートシールが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭57-137339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基材および被着体の種類や用途などによっては、低温接着性、耐水性および耐熱水性のさらなる向上が要求される場合がある。
本発明の目的は、低温接着性、耐水性および耐熱水性に優れる接着剤層を有する積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の[1]~[6]の発明を含む。
[1]基材と、前記基材の少なくとも一方の表面に積層される接着剤層とを備え、
前記接着剤層が、水と樹脂(X)を含む水分散体の塗布物を乾燥させることにより得られ、
前記樹脂(X)が、不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量がそれぞれ異なる2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)を含む、積層体。
【0007】
[2]前記2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)に含まれる不飽和カルボン酸に由来する構造単位の総含有量が、前記樹脂(X)中に含まれる重合体の単量体に由来する構造単位の総量に対して、5質量%以上18質量%未満である、[1]に記載の積層体。
【0008】
[3]前記2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)は、
不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量が12質量%以上30質量%以下であるエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1)と、
不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量が0質量%を超えて12質量%未満であるエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a2)とを、それぞれ1種以上含む、[1]または[2]に記載の積層体。
【0009】
[4]前記2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)が、下記条件(i)および(ii)のうち、少なくとも一方を満たす[3]に記載の積層体。
(i)エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1)として不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量がそれぞれ異なる2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体を含む。
(ii)エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a2)として、不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量がそれぞれ異なる2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体を含む。
【0010】
[5]前記エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1)として、
不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量が17質量%以上30質量%以下であるエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1-1)と、
不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量が12質量%以上17質量%未満であるエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1-2)とを含む、[4]に記載の積層体。
【0011】
[6]基材と、前記基材の少なくとも一方の表面に積層される接着剤層とを備え、
前記接着剤層が、不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量の異なる2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)を含む、積層体。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた低温接着性、耐水性および耐熱水性を有する積層体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
【0014】
本発明の積層体について、以下詳細に説明する。
本発明の積層体は、基材と、前記基材の少なくとも一方の表面に積層される接着剤層とを備え、
前記接着剤層が、不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量の異なる2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)を含むことに特徴がある。
【0015】
かかる本発明の積層体の一形態は、基材と、前記基材の少なくとも一方の表面に積層される接着剤層とを備え、前記接着剤層が、水と樹脂(X)を含む水分散体の塗布物を乾燥させることにより得られ、前記樹脂(X)が、不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量がそれぞれ異なる2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)を含む、積層体である。
【0016】
<水分散体>
本発明の積層体の製造に用いる水分散体は、樹脂(X)とその樹脂(X)を分散させる水とを含有している。
【0017】
[樹脂(X)]
樹脂(X)は、不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量の異なる2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)を含む。
【0018】
エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)に含まれる不飽和カルボン酸に由来する構造単位の総含有量(酸含有量)は、樹脂(X)中に含まれる重合体の単量体に由来する構造単位の総量に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上であり、18質量%未満が好ましく、16質量%未満がより好ましい。上記不飽和カルボン酸に由来する構造単位の総含有量(酸含有量)が上記範囲内であれば、得られる積層体が優れた低温接着性、耐水性および耐熱水性を有し得る。
【0019】
エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)に含まれるエチレンに由来する構造単位の総含有量は、樹脂(X)中に含まれる重合体の単量体に由来する構造単位の総量に対して、好ましくは82質量%以上、より好ましくは84質量%以上であり、95質量%未満が好ましく、92質量%以下がより好ましい。上記エチレンに由来する構造単位の総含有量が上記範囲内であれば、得られる積層体が優れた低温接着性、耐水性および耐熱水性を有し得る。
【0020】
樹脂(X)の重量平均分子量は、例えば8,000以上、好ましくは10,000以上、例えば150,000以下、好ましくは100,000以下である。なお本発明において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリスチレン換算で求めた値である。
【0021】
樹脂(X)の融点は、例えば80℃以上、好ましくは85℃以上であり、例えば97℃以下、好ましくは92℃以下である。
樹脂(X)のメルトフローレート(MFR ASTM D1238、190℃、2.16kg荷重)は、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.5g/10分以上であり、好ましくは150g/10分以下、より好ましくは100g/10分以下である。
【0022】
不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量の異なる2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)を含む樹脂(X)を作製する方法は特に制限されない。例えば、2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)のうち、最も融点の高いエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)の融点以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上で、2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体を溶融混練することによって上記樹脂(X)は作製できる。
【0023】
2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)として、それら共重合体に含まれるカルボキシ基の一部または全部を中和した、2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体を用いる場合には、例えば、上述したように、2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体の無機塩基中和物を溶融混錬することによって作製できる。また別の方法として、2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体を溶融混練して溶融混練物を作製し、得られた溶融混練物を、2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体のうち、好ましくは最も融点の高いエチレン-不飽和カルボン酸共重合体の融点以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは110℃以上に保持した、中和剤および水を含む水溶液中に投入してこれらを混合することにより、カルボキシ基の一部または全部を中和した、2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体を作製できる。
【0024】
中和剤としては、例えば、塩基性化合物を使用することができる。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基性化合物;アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルエタノールアミンなどのアミン類に代表される有機塩基性化合物;などが挙げられる。
【0025】
これら塩基性化合物の中でも、無機塩基性化合物が好ましく、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムがより好ましい。これら塩基性化合物は、単独で使用してもよく、2種類以上併用してもよい。
【0026】
塩基性化合物の添加量は、2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸(a)に含まれるすべてのカルボキシ基100モルに対して、例えば5モル以上、好ましくは20モル以上、より好ましくは25モル以上であり、例えば70モル以下、好ましくは60モル以下である。
【0027】
また、中和のために中和剤を添加した後には、所定温度で所定時間保持することが好ましい。保持条件としては、保持温度が、例えば40℃以上、好ましくは50℃以上であり、例えば190℃以下、好ましくは180℃以下である。また、保持時間が、例えば30分以上、好ましくは1時間以上であり、例えば12時間以下、好ましくは10時間以下である。
【0028】
エチレン-不飽和カルボン酸共重合体が中和されて使用される場合、2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)全体として、その中和度は、例えば20%以上、好ましくは25%以上であり、例えば70%以下、好ましくは60%以下である。ここで中和度とは、樹脂(X)中のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)におけるカルボキシ基が、中和剤である塩基性化合物によって中和されているモル%を意味する。
【0029】
中和度が上記範囲であれば、水分散体から、ヒートシール強度に優れる接着剤層が得られる。なお、中和度は、後述する実施例に準拠して算出される。
【0030】
樹脂(X)は、水および2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)の他に、任意に低密度ポリエチレン、エチレン-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、及びエチレン-酢酸ビニル-一酸化炭素共重合体等を含んでもよい。
【0031】
[2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)]
2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)として含まれるそれぞれのエチレン-不飽和カルボン酸共重合体は、エチレンに由来する構造単位と不飽和カルボン酸に由来する構造単位とを含む共重合体である。
【0032】
2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)は、カルボキシ基含有量が多い共重合体である、不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量が12質量%以上30質量%以下であるエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1)、およびカルボキシ基含有量が少ない共重合体である、不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量が0質量%を超えて12質量%未満であるエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a2)を含むことが好ましい。
【0033】
エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1)における不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量は、乳化安定性の点からは、好ましくは15質量%以上であり、好ましくは25質量%以下である。
【0034】
エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1)の重量平均分子量は、接着強度及び乳化安定性の点からは、例えば8,000以上、好ましくは10,000以上、例えば150,000以下、好ましくは10,0000以下である。
【0035】
エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1)の融点は、ヒートシール性の点からは、例えば70℃以上、好ましくは80℃以上であり、例えば100℃以下、好ましくは95℃以下である。
【0036】
エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1)のメルトフローレート(MFR ASTM D1238、190℃、2.16kg荷重)は、接着強度及び乳化安定性の点からは、例えば0.1g/10分以上、好ましくは0.5g/10分以上であり、例えば150g/10分以下、好ましくは100g/10分以下である。
【0037】
エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a2)における不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量は、乳化安定性の点からは、好ましくは2質量%以上であり、好ましくは10質量%以下である。
【0038】
エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a2)の重量平均分子量は、接着強度及び乳化安定性の点からは、例えば8,000以上、好ましくは10,000以上、例えば150,000以下、好ましくは100,000以下である。
【0039】
エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a2)の融点は、ヒートシール性の点からは、例えば70℃以上、好ましくは80℃以上であり、例えば100℃以下、好ましくは95℃以下である。
【0040】
エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a2)のメルトフローレート(MFR ASTM D1238、190℃、2.16kg荷重)は、接着強度及び乳化安定性の点からは、例えば0.1g/10分以上、好ましくは0.5g/10分以上であり、例えば150g/10分以下、好ましくは100g/10分以下である。
【0041】
2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)が、低温接着性、耐水性および耐熱水性の点から下記条件(i)および(ii)のうち、少なくとも一方を満たすことが好ましい。
(i)エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1)として不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量がそれぞれ異なる2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体を含む。
(ii)エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a2)として、不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量がそれぞれ異なる2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体を含む。
【0042】
前記条件(i)の中でも、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1)として、不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量が17質量%以上30質量%以下であるエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1-1)と、12質量%以上17質量%未満であるエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1-2)とを含むことが好ましい。
【0043】
エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1-1)における不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量は、乳化安定性の点からは、好ましくは18質量%以上であり、好ましくは25質量%以下である。
【0044】
エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1-1)の重量平均分子量は、接着強度及び乳化安定性の点からは、例えば8,000以上、好ましくは10,000、例えば150,000以下、好ましくは100,000以下である。
【0045】
エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1-1)の融点は、ヒートシール性の点からは、例えば70℃以上、好ましくは80℃以上であり、例えば100℃以下、好ましくは95℃以下である。
【0046】
エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1-1)のメルトフローレート(MFR ASTM D1238、190℃、2.16kg荷重)は、接着強度及び乳化安定性の点からは、例えば0.1g/10分以上、好ましくは0.5g/10分以上であり、例えば150g/10分以下、好ましくは100g/10分以下である。
【0047】
エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1-2)における不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量は、乳化安定性の点からは、好ましくは12質量%以上であり、好ましくは15質量%以下である。
【0048】
エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1-2)の重量平均分子量は、接着強度及び乳化安定性の点からは、例えば8,000以上、好ましくは10,000、例えば150,000以下、好ましくは100,000以下である。
【0049】
エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1-2)の融点は、ヒートシール性の点からは、例えば70℃以上、好ましくは80℃以上であり、例えば100℃以下、好ましくは95℃以下である。
【0050】
エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1-2)のメルトフローレート(MFR ASTM D1238、190℃、2.16kg荷重)は、接着強度及び乳化安定性の点からは、例えば0.1g/10分以上、好ましくは0.5g/10分以上であり、例えば150g/10分以下、好ましくは100g/10分以下である。
【0051】
また、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)として、上述したエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1-1)、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1-2)およびエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a2)を使用する場合には樹脂(X)中に含まれるエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)の総量に対して、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a2)の含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上であり、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。樹脂(X)中に含まれるエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)の総量に対して、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1-1)の含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。樹脂(X)中に含まれるエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)の総量に対して、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1-2)の含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは15質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。ただし、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1-1)、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a1-2)およびエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a2)の含有量の合計は100質量%である。
【0052】
2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)に含まれるそれぞれのエチレン-不飽和カルボン酸共重合体は、所望の不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量に応じて、エチレンおよび不飽和カルボン酸を含む単量体成分を重合することにより得られる。
【0053】
不飽和カルボン酸は、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合とカルボキシ基とを有する単量体である。不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのエチレン性不飽和結合を有する一塩基酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのエチレン性不飽和結合を有する二塩基酸;などが挙げられる。不飽和カルボン酸の中でも、耐水性の観点から、エチレン性不飽和結合を有する一塩基酸が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸がより好ましい。これら不飽和カルボン酸は、単独で使用してもよく、2種類以上併用してもよい。
【0054】
単量体成分中のエチレンの含有割合は、得られるエチレン-不飽和カルボン酸共重合体のエチレンに由来する構成単位の含有量に応じて適宜設定すればよい。同様に単量体成分中の不飽和カルボン酸の含有割合は、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体の不飽和カルボン酸に由来する構成単位の含有量に応じて適宜設定すればよい。
【0055】
単量体成分の重合方法は、所望のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体が得られる限り特に制限はなく、その重合方法としては、例えば公知の重合方法が挙げられる。エチレン-不飽和カルボン酸共重合体は、例えば、高温および高圧条件下で単量体成分を過酸化物などの重合開始剤と接触し重合させることにより得られる。
【0056】
また、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体は、その粒子が水に分散されてなるディスパージョン(水分散体)として得ることができる。このような場合、例えば、特公平7-008933号、特公平5-039975号、特公平4-030970、特公昭42-000275号、特公昭42-023085号、特公昭45-029909号、特開昭51-062890号、特許4746337号などに記載の方法によりディスパージョン(水分散体)として得ることができる。なお、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体は自己乳化性を有する。
【0057】
[水分散体の製造]
水分散体は、例えば、上述したように2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)を含む樹脂(X)の樹脂粒子が水に分散されてなるディスパージョン(水分散体)として得ることができる。具体的には、2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体を含む樹脂成分を、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上に保持された水中、またはアルカリ水溶液に分散させて撹拌することで製造することができる。
【0058】
上記のように得られる水分散体は、樹脂(X)以外に、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、上記した乳化剤、硬化剤、架橋剤、造膜助剤、消泡剤、ハジキ防止剤、レベリング剤、粘着付与剤、硬度付与剤、防腐剤、増粘剤、凍結防止剤、分散剤、無機顔料、有機顔料などが挙げられる。これら添加剤は、単独で使用してもよく、2種類以上併用してもよい。これら添加剤の添加量およびその添加の時期などは、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0059】
[物性]
樹脂(X)のメルトフローレート(MFR ASTM D1238、190℃、2.16kg荷重)は、好ましくは0.1g/10分以上、より好ましくは0.5g/10分以上であり、好ましくは150g/10分以下、より好ましくは100g/10分以下である。
【0060】
水分散体中に分散している樹脂(X)の樹脂粒子の重量平均粒径(測定方法:光散乱測定)は、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.02μm以上、好ましくは4.0μm以下、より好ましくは1.0μm以下であることが好ましい。
【0061】
水分散体の粘度(測定方法:B型粘度計)は、塗工適性の観点から25℃において、好ましくは10mPa・s以上、より好ましくは50mPa・s以上、好ましくは900mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下である。
【0062】
水分散体の不揮発分(固形分濃度)は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、好ましくは60質量%以下、より好ましくは55質量%以下である。水分散体の不揮発分とは、水分散体の水を加熱などにより除去した際に残存する樹脂成分を含む成分での水分散体に対する割合である。
【0063】
上記水分散体は、積層体の接着剤層(ヒートシール層)の形成に好適に用いることができる。かかる接着剤層を有する積層体は低温接着性、耐水性および耐熱水性に優れる。
【0064】
<積層体>
本発明の積層体は、基材と、前記基材の少なくとも一方の表面に上述した水分散体から作製できる接着剤層を有するものである。この接着剤層は、上述のとおり、不飽和カルボン酸に由来する構造単位の含有量の異なる2種以上のエチレン-不飽和カルボン酸共重合体(a)を含んでいる。前記接着剤層は、基材の片面に存在していてもよく、両面に存在していてもよい。また、前記接着剤層は、基材の全面に存在していてもよく、一部に存在していてもよい。
【0065】
[基材]
基材としては、例えば、セロハン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロン)、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル共重合体、およびこれらの混合物などのプラスチック材料からなるプラスチックフィルム;これらプラスチックフィルム上に、アルミ、金、銀、銅、ニッケル、亜鉛、チタン、コバルト、インジウム、クロムなどの金属、または酸化アルミニウム、酸化珪素の無機酸化物などの蒸着物をプラスチックフィルムに蒸着した蒸着フィルム;アルミニウム箔などの金属箔、紙、不織布などが挙げられる。
【0066】
上記積層体の基材となり得る紙については、特に制限はなく、パルプを主成分とする公知の紙を用いることができる。紙の主成分となるパルプとしては、例えば、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)、NBKP(針葉樹さらしクラフトパルプ)などの化学パルプ;GP(砕木パルプ)、PGW(加圧式砕木パルプ)、RMP(リファイナーメカニカルパルプ)、TMP(サーモメカニカルパルプ)、CTMP(ケミサーモメカニカルパルプ)、CMP(ケミメカニカルパルプ)、CGP(ケミグランドパルプ)などの機械パルプ;DIP(脱インキパルプ)などの木材パルプ;ケナフ、バガス、竹、コットンなどの非木材パルプ;などが挙げられる。これら、紙基材の密度は、好ましくは0.5g/m3以上であり、より好ましくは0.7g/m3以上である。
【0067】
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよい。例えば、パルプとして、LBKP(広葉樹さらしクラフトパルプ)を90~100質量%含むパルプが使用できる。
【0068】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、パルプには合成繊維が含まれていてもよい。
環境保全の観点から、パルプの中でも、ECF(Elemental Chlorine Free)パルプ、TCF(Total Chlorine Free)パルプ、古紙パルプ、植林木から得られるパルプが好ましい。
【0069】
上記パルプの叩解度は、カナダ標準ろ水度(フリーネス)(JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」)で、例えば、200~700mlCSF、好ましくは、450~620mlCSFである。
【0070】
基材となる紙として、填料を含有する紙も使用できる。填料としては、例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、焼成クレー、二酸化チタン、水酸化アルミニウムが挙げられる。紙中の填料含有量は、パルプの乾燥質量100質量部に対して、例えば、1~30質量部である。填料として軽質炭酸カルシウムを含む場合は、パルプの乾燥質量100質量部に対して、軽質炭酸カルシウムを、例えば1~10質量部含むとよい。
【0071】
また、前記紙には、パルプ以外に、各種公知の製紙用添加剤が含まれていてもよい。製紙用添加剤としては、例えば、サイズ剤、湿潤紙力増強剤などの内添紙力増強剤;嵩高剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、蛍光消色剤、ピッチコントロール剤が挙げられる。また、基材となる紙は、澱粉、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミドなどの水溶性高分子が塗布された紙であってもよい。
【0072】
基材となる紙の抄紙方法は特に制限はなく、例えば、長網抄紙機、長網多層抄紙機、円網抄紙機、円網多層抄紙機、長網円網コンビ多層抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種抄紙機により紙を製造できる。また、本発明の積層体で用いる紙は単層抄きでも多層抄きでもよく、あるいは複数層の貼合品であってもよい。
【0073】
積層体中に含まれる接着剤層のヒートシール性により優れるという観点から、これら基材の中でも、アルミニウム箔などの金属箔、紙、不織布、プラスチックフィルムおよび蒸着フィルムが好ましく、アルミニウム箔などの金属箔および紙がより好ましい。
【0074】
これら基材は、単独で使用してもよく、2種類以上併用してもよい。
基材には、接着剤層との密着性の向上などを目的とした、プライマー(チタネートやポリエチレンイミンなど)処理、コロナ放電処理、化成処理などの前処理が施されていてもよい。
【0075】
基材には、接着剤層とは異なる層が1層以上設けられていてもよい。例えば、基材として紙を用いる場合には、塗工層が1層以上設けられていてもよい。かかる塗工層としては、例えば、顔料と接着剤とを含有する塗工液から得られる顔料塗工層が挙げられる。
【0076】
顔料塗工層に含まれる顔料としては、一般の印刷用塗工紙の塗工層に使用される公知の顔料を用いることができ、例えば、炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムなど)、カオリン(クレーを含む)、焼成クレー、タルク、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪藻土、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの無機顔料;アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ナイロン、これら樹脂を構成する単量体を共重合して得られる樹脂などの有機顔料(いわゆるプラスチックピグメント);が挙げられる。
【0077】
顔料塗工層に用いる顔料としては、例えば、20~40質量部のカオリンと60~80質量部の重質炭酸カルシウムとの組み合わせが使用できる。
また、顔料塗工層に用いる接着剤としては、一般の印刷用塗工紙の塗工層に使用される公知の接着剤を用いることができ、例えば、ブタジエン系共重合ラテックス、架橋剤変性澱粉、酸化澱粉、酵素変性澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン性澱粉、両性澱粉などの澱粉類;ゼラチン、カゼイン、大豆タンパク、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子;酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、の合成樹脂類;が挙げられる。
【0078】
顔料塗工層中の顔料と接着剤との配合割合は特に限定されるものではないが、顔料100質量部に対し、好ましくは接着剤5~50質量部である。例えば、顔料100質量部に対して、1~5質量部のリン酸エステル化澱粉および5~15質量部のスチレンブタジエンラテックスの接着剤の組み合わせを使用できる。
【0079】
顔料塗工層には、本発明の効果を損なわない限り、各種助剤が含まれていてもよく、例えば、粘度調節剤、柔軟剤、光沢付与剤、耐水化剤、分散剤、流動変性剤、紫外線吸収剤、安定化剤、帯電防止剤、架橋剤、サイズ剤、蛍光増白剤、着色剤、pH調節剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤が含まれていてもよい。
【0080】
また、このような顔料塗工層を作製する塗工液の塗工量としては、例えば、基紙の片面あたり、不揮発分換算(固形分換算)で、2~40g/m2である。
【0081】
[接着剤層]
本発明の積層体に含まれる接着剤層は、例えば、前記基材の少なくとも一方の表面に、樹脂(X)を含む水分散体を塗布(塗工)し、この塗布物からなる層を乾燥して、少なくとも一部の前記水分散体に含まれる水などの揮発分を除去することにより得られる。
【0082】
本発明で得られる水分散体の塗布(塗工)方法としては、特に制限されず、例えば、ダイコート法、フローコート法、スプレーコート法、バーコート法、グラビアコート法、グラビアリバースコート法、キスリバースコート法、マイクログラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ロッドコート法、ロールドクターコート法、エアナイフコート法、コンマロールコート法、リバースロールコート法、トランスファーロールコート法、キスロールコート法、カーテンコート法、印刷法などが挙げられる。
【0083】
水分散体の塗布物からなる層の乾燥条件としては、水分散体に由来する水分などの揮発成分を除去できる条件であれば特に制限されず、乾燥温度が、例えば100~200℃であり、乾燥時間が、例えば10秒~30分である。
【0084】
接着剤層の塗工量は、所望の用途などに応じ適宜設定すればよいが、好ましくは1.5g/m2以上、より好ましくは2.0g/m2以上であり、好ましくは13g/m2以下、好ましくは10g/m2以下である。
【0085】
接着剤層における樹脂(X)の比率は、所望の用途などに応じて適宜設定すればよいが、好ましくは50質量%以上、より好ましくは80質量%以上である。
接着剤層の耐水性について、Cobb300(Cobb法:JIS P8140の接触時間300秒)が、好ましくは15g/m2以下、より好ましくは10g/m2以下である。
【0086】
接着剤層は、低温におけるヒートシール性に優れる。また、上記樹脂粒子を有する水分散体から作製される。かかる水分散体から接着剤層が作製される場合、接着剤層に残留する有機溶媒量は少なく、前記接着剤層中の残留有機溶剤量は好ましくは100ppm以下、より好ましくは10ppm以下とできる。
【0087】
[用途]
本発明で得られる積層体は、各種産業分野で、ヒートシール用材料として好適に用いられる。ヒートシールを行うことにより、本発明の積層体に含まれる基材と、被着体層とが、前記接着剤層を介して貼着される。前記被着体層は、本発明の積層体に含まれていてもよく、あるいは本発明の積層体とは別の物品に含まれる層であってもよい。
【0088】
前記被着体層は、積層体に含まれる基材と同様の物が挙げられる。被着体層としては、アルミニウム箔などの金属箔、紙、不織布、プラスチックフィルムおよび蒸着フィルムが好ましく、アルミニウム箔などの金属箔および紙がより好ましい。これら被着体層は、単独で使用してもよく、2種類以上併用してもよい。
【0089】
本発明の積層体は、基材および接着剤層に加えて、前記被着体層を含むものであってもよい。その場合、接着剤層を介して、基材と被着体層などが貼着され得る。貼着された場合、本発明の積層体では、前記接着剤層の基材と接する面とは反対の表面に、被着体層が積層されることになる。
【0090】
基材と被着体層とをヒートシールを行う方法としては、特に制限されない。例えば、積層体に含まれる基材と被着体層とを、接着剤層を介して重ね合わせ、その後、加熱および加圧することにより、ヒートシールを行うことができる。
【0091】
また、前記被着体層が、さらに接着剤層を有している場合には、本発明の積層体に含まれる接着剤層と、この被着体層の接着剤層とを重ね合わせ、その後、加熱および加圧することによりヒートシールを行ってもよい。
【0092】
ヒートシールを行う際の加熱温度は、例えば80℃以上、好ましくは100℃以上であり、例えば250℃以下、好ましくは200℃以下である。また、ヒートシールを行う際の圧力は、例えば50kPa以上、好ましくは100kPa以上であり、例えば500kPa以下、好ましくは300kPa以下である。
【0093】
本発明の積層体に含まれる基材と被着体層との接着強度は、前記基材と被着体層との剥離強度により評価できる。加熱温度110℃、圧力1kg/cm2の条件で、0.1秒間熱圧着した後の、引張速度50mm/分、180度剥離の基材と被着体層との剥離強度が好ましくは400g/15mm以上、より好ましくは500g/15mm以上である。
【0094】
このようにして積層体に含まれる接着剤層の少なくとも一方の表面に被着体層が積層された積層体(換言すれば、積層体に含まれる接着剤層の少なくとも一方の表面に被着体層が積層された積層体)は、そのヒートシール状態(つまり、ヒートシールの前後)に関わらず、本発明の積層体に含まれる。
【0095】
また、本発明で得られる積層体は、優れた低温接着性、耐水性および耐熱水性を有する。また、接着剤層形成に水分散体を使用しており、酢酸エチルおよびトルエンなどの有機溶剤中に樹脂粒子が分散している分散体を使用していないので、残留有機溶剤量を極微量に抑えることができる。そのため、積層体は、各種産業分野の包装材料として好適に使用することができる。例えば、菓子、茶葉、香辛料などの食品類;煙草、香木などの芳香物;医薬品、紙類などの種々の産業製品の包装材料として好適に使用することができる。
【実施例
【0096】
以下、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0097】
[製造例1]
メタクリル酸の含有量が15質量%のエチレン-メタクリル酸共重合体(樹脂B)50質量部、およびメタクリル酸の含有量が10質量%のエチレン-メタクリル酸共重合体(樹脂C)50質量部を溶融混錬した樹脂と、水酸化ナトリウム4.4質量部、並びに脱イオン水190質量部を反応容器に入れて撹拌し、150℃に昇温して4時間保持した後、室温まで冷却して樹脂1の樹脂粒子1の水分散体1を得た。樹脂1中のメタクリル酸に由来する構造単位の含有量の平均値(酸含有量平均値)は12.5質量%であり、樹脂粒子1の重量平均粒径は0.5μmであった。また、水分散体1の粘度は400mPa・sであり、不揮発分(Nv)は35%、メルトフローレート(MFR)は3.0g/10分であった。
【0098】
[製造例2および3]
製造例1の樹脂Bおよび樹脂Cを含む樹脂の代わりに、表1の組成の樹脂を用いて、表2の組成の樹脂を用いたこと以外、製造例1と同様にして水分散体2および3を得た。各物性値を表2に示す。
【0099】
[製造例4]
アクリル酸の含有量が20.5質量%のエチレン-アクリル酸共重合体(樹脂A)30質量部、およびメタクリル酸の含有量が4質量%のエチレン-メタクリル酸共重合体(樹脂E)70質量部を混合したものを、2軸スクリュー押出機(池貝鉄工株式会社製、PCM-30,L/D=40)のホッパーより50g/分の速度で供給し、同押出機のベント部に設けた供給口より水酸化カリウムの3.5%水溶液を28g/分の割合で連続的に供給し、加熱温度110℃で連続的に押出し、該押出された樹脂混合物を同押出機口に設置したジャケット付きスタティックミキサーで90℃まで冷却し、さらに80℃の温水中に投入することにより水分散体4を得た。樹脂粒子4の重量平均粒径は0.9μmであった。また、水分散体4の粘度は300mPa・sであり、不揮発分(Nv)は37%、メルトフローレート(MFR)は1.0g/10分であった。
【0100】
[製造例5~7]水分散体5~7の製造
製造例1の樹脂Bおよび樹脂Cを含む樹脂の代わりに、表1の組成の樹脂を用いて、表2の組成の樹脂を用いたこと以外、製造例1と同様にして水分散体5~7を得た。各物性値を表2に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
[実施例1]
Tami Nadu Newsprint and Papers社製カップ用原紙(坪量170g/m2)を基材として、上記水分散体1を樹脂塗工量が6g/m2となるようにエアーナイフコーターを用いて2回塗工し、130℃で20秒間乾燥させて、積層体である紙塗工品1を得た。
【0104】
軟質アルミニウム箔(50μm)を基材として、上記水分散体1を樹脂塗工量が3g/m2となるようにバーコーターを用いて1回塗工し、120℃で20秒間乾燥させて、積層体であるアルミ箔1を得た。
【0105】
(Cobb値)
紙塗工品1のCobb値をCobb法(JIS P8140)により300秒後の吸水量(Cobb300)を測定し、表3に記載の基準に従って評価した。結果を表4に示す。
【0106】
(カップ耐熱水性)
上記紙塗工品1を用いて成型した紙カップに、95℃以上の熱を注いで1時間放置し、シール接着部からの水漏れを観察し、表3に記載の基準に従って評価した。結果を表4に示す。
【0107】
(低温接着性)
上記アルミ箔1の樹脂塗工面同士を110℃、0.1秒、1kg/cm2の条件で貼り合わせ、引張速度50mm/分の条件で剥離強度を測定し、表3の基準に従って評価した。結果を表4に示す。
【0108】
(耐ブロッキング性)
上記アルミ箔1を縦横5cmの正方形に切り出し、塗工面同士を重ね合わせ、45℃、250g/cm2、24時間の条件下における耐ブロッキング性を、表3の基準に従って評価した。結果を表4に示す。
【0109】
[実施例2~4]
実施例1において水分散体1の代わりに、上記水分散体2~4をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にして、紙塗工品2~4およびアルミ箔2~4を得た。得られた紙塗工品およびアルミ箔を用いて、上記実施例1と同様にして、実施例2~4の各物性を評価した。結果を表4に示す。
【0110】
[比較例1~3]
実施例1において水分散体1の代わりに、上記水分散体5~7をそれぞれ用いた以外は実施例1と同様にして、紙塗工品5~7およびアルミ箔5~7を得た。得られた紙塗工品およびアルミ箔を用いて、上記実施例1と同様にして、比較例1~3の各物性を評価した。結果を表4に示す。
【0111】
【表3】
【0112】
【表4】
【0113】
[測定方法]
(酸含有平均値)
酸含有量を、樹脂に脱塩基処理を施した後にテトラヒドロフランに熱時融解し、加熱状態で規定濃度の水酸化カリウムで滴定することにより測定し、酸含有平均値を算出した。
【0114】
(中和率)
試料の赤外線吸収スペクトルを測定し、カルボキシ基に相当する1700cm-1の吸収のピーク高さaを求める。ピーク高さaは、樹脂中のイオン結合がされていないカルボキシ基の数に対応する。
【0115】
試料を塩酸と接触させて、樹脂中の金属イオンを除去し(脱メタル化)、イオン結合(分子内架橋)がされていない酸共重合体を得る。この酸共重合体の試料の赤外吸収スペクトルを測定し、1700cm-1の吸収のピーク高さbを求める。ピーク高さbは、樹脂中の全てのカルボキシ基の数に対応する。
【0116】
得られたピーク高さaおよびbから下記式より、中和率(%)を算出した。
中和率(%)=100(1-a/b)
【0117】
(粘度)
粘度は、B型粘度計(東機産業社製)を用いて、25℃で測定した。
【0118】
(粒子径)
樹脂粒子の平均粒径はナノトラックWaveII(マイクロトラック・ベル社)により測定した。
【0119】
(メルトフローレート)
メルトフローレート(MFR)はASTM D1238-65Tに従い、190℃、2.16kg荷重の条件で測定した。