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  • 特許-蛍光体粉末、及び発光装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】蛍光体粉末、及び発光装置
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/59 20060101AFI20240405BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20240405BHJP
【FI】
C09K11/59
H01L33/50
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022545623
(86)(22)【出願日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 JP2021029502
(87)【国際公開番号】W WO2022044793
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2020141749
(32)【優先日】2020-08-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】坂野 広樹
(72)【発明者】
【氏名】豊島 広朗
【審査官】福山 駿
(56)【参考文献】
【文献】特許第6684412(JP,B1)
【文献】特開2020-083945(JP,A)
【文献】特表2018-512481(JP,A)
【文献】特開2008-230873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00-11/89
H01L 33/50
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ba26Si5184で示される結晶、又はBa26Si5184で示される結晶と同一の結晶構造を有する無機結晶にEuが賦活剤として固溶された無機化合物を含有する蛍光体粉末であって、
波長450nmの励起光を当該蛍光体粉末に照射して得られる発光スペクトルにおいて、750nm以上950nm以下の範囲にあるピーク波長における発光強度をP0とし、520nm以上600nm以下の範囲にあるピーク波長における発光強度をP1としたとき、P0、P1が、0.01≦P1/P0≦0.12を満たす、蛍光体粉末。
【請求項2】
請求項1に記載の蛍光体粉末であって、
前記発光スペクトルにおいて、750nm以上950nm以下の範囲にピーク波長を有する発光スペクトルの半値幅が100nm以上400nm以下である、蛍光体粉末。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の蛍光体粉末であって、
ICP発光分光分析により測定されるEu含有量が、5.0モル%以下である、蛍光体粉末。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の蛍光体粉末であって、
レーザー回折散乱法で測定される、当該蛍光体粉末の体積頻度粒度分布において、累積値が50%となる粒子径をD50としたとき、D50が、1μm以上50μm以下である、蛍光体粉末。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の蛍光体粉末であって、
レーザー回折散乱法で測定される当該蛍光体粉末の体積頻度粒度分布において、累積値が50%となる粒子径をD50、累積値が10%となる粒子径をD10、90%となる粒子径をD90としたとき、
((D90-D10)/D50)が、1.00以上3.00以下である、蛍光体粉末。
【請求項6】
一次光を発する発光素子と、前記一次光の一部を吸収して、一次光の波長よりも長い波長を有する二次光を発する波長変換体とを備える発光装置であって、
前記波長変換体は請求項1~5のいずれか一項に記載の蛍光体粉末を含む、発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体粉末、及び発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでBa26Si5184系蛍光体について様々な開発がなされてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、Ba26Si5184にEuが賦活されることにより、近赤外域に発光することが記載されている(特許文献1の段落0001、実施例1、段落0090~0092等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許6684412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献1に記載のBa26Si5184で示される結晶にEuが賦活した無機化合物を含む蛍光体粉末において、蛍光体粉末を実用上で使用するためには、発光特性の点で改善の余地があることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者によるさらなる検討により以下の知見が得られた。
波長450nmの励起光を照射したときの(Ba,Eu)26Si5184の蛍光体の発光スペクトルにおいて、750nm~950nmにメインピークが存在するとともに、520nm~600nm近傍に小さなサブピークが存在することがわかり、またサブピーク/メインピークという発光強度比を指標とすることによって、蛍光体粉末の発光特性を安定的に評価が可能であり、その比を特定の範囲内とすることで、発光特性に優れた蛍光体粉末を実現できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明によれば、
Ba26Si5184で示される結晶、又はBa26Si5184で示される結晶と同一の結晶構造を有する無機結晶にEuが賦活剤として固溶された無機化合物を含有する蛍光体粉末であって、
波長450nmの励起光を当該蛍光体粉末に照射して得られる発光スペクトルにおいて、750nm以上950nm以下の範囲にあるピーク波長における発光強度をP0とし、520nm以上600nm以下の範囲にあるピーク波長における発光強度をP1としたとき、P0、P1が、0.01≦P1/P0≦0.12を満たす、蛍光体粉末が提供される。
【0007】
また本発明によれば、
一次光を発する発光素子と、前記一次光の一部を吸収して、一次光の波長よりも長い波長を有する二次光を発する波長変換体とを備える発光装置であって、
前記波長変換体は上記蛍光体粉末を含む、発光装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発光特性に優れた蛍光体粉末、及び発光装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例1、2、5、比較例1の蛍光体粉末における発光スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態の蛍光体粉末について説明する。
【0011】
本実施形態の蛍光体粉末は、Ba26Si5184で示される結晶、又はBa26Si5184で示される結晶と同一の結晶構造を有する無機結晶にEuが賦活剤として固溶された無機化合物を含有する。
【0012】
波長450nmの励起光を当該蛍光体粉末に照射して得られる発光スペクトルにおいて、750nm以上950nm以下の範囲にある最大ピークの波長における発光強度をP0とし、520nm以上600nm以下の範囲にあるピーク波長における発光強度をP1とする。
【0013】
P0は、(Ba,Eu)26Si5184に帰属されるメインピークの発光強度に対応し、P1は、(Ba,Eu)26Si5184に帰属されるサブピークの発光強度に対応する。
【0014】
P0、P1から算出されるP1/P0の下限は、0.01以上、好ましくは0.02以上である。一方、上記P1/P0の上限は、例えば、0.12以下であり、好ましくは0.11以下である。P1/P0をこの範囲にすることにより、蛍光体粉末の発光強度を高めることができる。
【0015】
このように、波長450nmの励起光を当該蛍光体粉末に照射して得られる発光スペクトルにおいて、(Ba,Eu)26Si5184に帰属されるサブピーク/メインピークという発光強度比を指標とすることによって、蛍光体粉末中の発光特性を安定的に評価が可能であり、その比率を特定の範囲内とすることで、発光特性に優れた蛍光体粉末を実現できることが見出された。
【0016】
蛍光体粉末は、波長450nmの励起光を当該蛍光体粉末に照射して得られる発光スペクトルにおいて、750nm以上950nm以下の範囲にピーク波長を有する。
【0017】
750nm以上950nm以下の範囲にピーク波長を有する発光スペクトルの半値幅は、例えば、100nm以上400nm以下、好ましくは150nm以上350nm以下、より好ましくは200nm以上300nm以下である。これにより、発光強度を高めることが可能になる。
【0018】
ICP発光分光分析により測定される蛍光体粉末中のEu含有量は、例えば、5.0モル%以下、好ましくは3.0モル%以下、より好ましくは2.0モル%以下である。また、Eu含有量は、例えば、0.1モル%以上、好ましくは0.2モル%以上としてもよい。適切な範囲内とすることにより、サブピーク強度を低減させることが可能である。
【0019】
本実施形態では、たとえば蛍光体粉末の調製方法等を適切に選択することにより、上記P1/P0を制御することが可能である。これらの中でも、たとえば、Baが過剰に配合された原料混合粉末を焼成することや、焼成物を酸処理すること、Eu量の調整や粒度調整等が、上記P1/P0を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
【0020】
蛍光体粉末について、レーザー回折散乱法を用いて測定した体積頻度粒度分布において、累積値が50%となる粒子径をD50、累積値が10%となる粒子径をD10、累積値が90%となる粒子径をD90とする。
【0021】
D50は、例えば、1μm以上50μm以下、好ましくは5μm以上45μm以下、より好ましくは10μm以上40μm以下である。上記の範囲内とすることで、発光特性のバランスを図ることができる。
【0022】
((D90-D10)/D50)の下限は、例えば、1.00以上、好ましくは1.20以上、より好ましくは1.30以上である。一方、((D90-D10)/D50)の上限は、3.00以下、好ましくは2.50以下、より好ましくは2.00以下である。上記の範囲内とすることで、発光特性のバランスを図ることができる。
【0023】
蛍光体粉末は、上記無機化合物の主相として(Ba,Eu)26Si5184を含むものであるが、BaSiなどの異相を含まないように構成されることが好ましいが、発明の効果を損なわない範囲において、異相を含んでもよい。
【0024】
本実施形態によれば、約300nm~650nm紫外光から可視光で励起可能であり、750nm~950nmの近赤外領域の範囲にピークを有する光を発光できる蛍光体粉末を実現できる。
【0025】
本実施形態の蛍光体粉末を含む波長変換体としては、照射された光(励起光)を変換して、励起光とは異なる波長範囲に発光ピークを有する光を発光する部材で構成される。波長変換体は、下記の発光装置の少なくとも一部を構成してもよい。波長変換体は、本実施形態の蛍光体粉末以外の蛍光体を一または二以上含んでもよい。
【0026】
波長変換体は、蛍光体粉末からのみで構成されてもよく、蛍光体粉末が分散した母材を含んでもよい。母材としては、公知のものを使用できるが、例えば、ガラス、樹脂、無機材料などが挙げられる。また波長変換体は、その形状は特に限定されず、プレート状に構成されてもよく、例えば、発光素子の一部または発光面全体を封止するように構成されてもよい。
【0027】
本実施形態の蛍光体粉末を備える発光装置の一例は、一次光を発する発光素子と、一次光の一部を吸収して、一次光の波長よりも長い波長を有する二次光を発する上記波長変換体とを備える。
発光装置としては、センサー・検査・分析用、セキュリティ用、光通信用、医療用、食品などの各種の用途に用いることができるが、例えば、LEDパッケージ、光源、分光光度計、食品分析計、ウェアラブルデバイス、医療用・ヘルスケア用デバイス、赤外線カメラ、水分測定装置、ガス検出装置等が挙げられる。
【0028】
本実施形態の蛍光体粉末は、例えば、以下のような製造方法によって製造することができる。
【0029】
蛍光体の製造方法の一例は、Ba26Si5184で示される結晶、又はBa26Si5184で示される結晶と同一の結晶構造を有する無機結晶にEuが賦活剤として固溶された無機化合物の組成を構成する各元素を含む原料混合粉末を得る混合工程と、原料混合粉末を焼成して焼成物を得る焼成工程と、焼成物を酸や水にて洗浄処理する洗浄工程と、を含むことが好ましい。
【0030】
Ba元素を含む原料としては、Baを含む、金属、ケイ化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、塩化物、フッ化物、及び酸フッ化物から選ばれる単体または2種以上の混合物等が挙げられる。
Si元素を含む原料としては、Siを含む、金属、ケイ化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、塩化物、フッ化物、及び酸フッ化物から選ばれる単体または2種以上の混合物等が挙げられる。
Eu元素を含む原料としては、Euを含む、金属、ケイ化物、酸化物、炭酸塩、窒化物、酸窒化物、塩化物、フッ化物、及び酸フッ化物から選ばれる単体または2種以上の混合物等が用いられる。
【0031】
原料混合粉末は、例えば、Baの窒化物、Siの窒化物及び/又は酸化物、Euの窒化物及び/又は酸化物を含むものを用いてもよい。これにより、焼成時における反応促進させることができる。
【0032】
混合工程において、原料混合粉末中の仕込み組成において、Ba、Si、Euのモル比をそれぞれ、a、b、cとしたとき、b=51、a/b>(26-c)/51を満たすように、原料混合粉末中にBaを過剰に配合することが好ましい。具体的には、a/bの下限は、例えば、0.51超でもよく、0.55以上でもよく、0.60以上でもよい。一方、a/bの上限は、例えば、1未満でもよく、0.8以下でもよく、0.7以下でもよい。このような仕込み組成の原料混合粉末を焼成することにより、(Ba,Eu)Siなどの異相を低減することが可能である。
【0033】
また、仕込み組成中のBaのモル比は、一般式:(Ba1-x,Eu26Si5184で示される組成において、化学量論比の1.0倍超、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは1.8倍以上、さらに好ましくは2.0倍以上であることが好ましい。このような仕込み組成の原料混合粉末を焼成することにより、(Ba,Eu)Siなどの異相を低減することが可能である。
【0034】
上記一般式中x、すなわち、Euのモル比は、例えば、0.0006以上でもよく、0.001以上でもよく、0.003以上でもよく、一方、0.5以下でもよく、0.3以下でもよく、0.1以下でもよい。適切な範囲内とすることにより、発光スペクトルにおける(Ba,Eu)26Si5184に帰属されるサブピーク強度を低減させることや、内部量子効率、外部量子効率を向上させることができる。
【0035】
原料を混合する方法は、特に限定されないが、たとえば、乳鉢、ボールミル、V型混合機、遊星ミルなどの混合装置を用いて十分に混合する方法がある。
【0036】
次に、得られた原料混合粉末を焼成する(焼成工程)。これにより、焼成工程後の反応生成物(焼成物)が得られる。
【0037】
焼成工程は、例えば、電気炉等の焼成炉を用いてもよい。一例として、焼成容器の内部に充填した原料混合粉末を焼成してもよい。
【0038】
焼成容器は、高温の雰囲気ガス下において安定で、原料の混合体及びその反応生成物と反応しにくい材質で構成されることが好ましく、たとえば、窒化ホウ素製、カーボン製の容器や、モリブデンやタンタルやタングステン等の高融点金属製の容器を使用することが好ましい。
【0039】
焼成工程における焼成雰囲気ガスの種類としては、例えば元素としての窒素を含むガスを好ましく用いることができる。具体的には、窒素および/またはアンモニアを挙げることができ、特に窒素が好ましい。また同様に、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスも好ましく用いることができる。この中でも、窒素ガスが好ましい。なお焼成雰囲気ガスは1種類のガスで構成されていても、複数の種類のガスの混合ガスであっても構わない。
焼成容器の内部は、上記の焼成雰囲気ガスで満たしてもよい。
【0040】
焼成工程における焼成温度は、焼成工程終了後の未反応原料の低減、主成分の分解抑制の観点から、適当な温度範囲が選択される。
焼成工程における焼成温度の下限は、1500℃以上が好ましく、1600℃以上がより好ましく、1700℃以上がさらに好ましい。一方、焼成温度の上限は、2200℃以下が好ましく、2000℃以下がより好ましく、1900℃以下がさらに好ましい。
【0041】
焼成雰囲気ガスの圧力は、焼成温度に応じて選択されるが、通常0.1MPa以上10MPa以下の範囲の加圧状態である。工業的生産性を考慮すると0.5MPa以上1MPa以下とすることが好ましい。
【0042】
焼成工程における焼成時間は、未反応物の低減、生産性の向上の観点から、適当な時間範囲が選択される。
焼成時間の下限は、0.5時間以上が好ましく、1時間以上がより好ましい。また、焼成時間の上限は、48時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましく、16時間以下がさらに好ましい。
【0043】
次に、焼成工程後の反応生成物(焼成物)について、粉砕、解砕、及び/又は篩分の少なくとも一以上を行う粉体処理を実施してもよい(粉体処理工程)。
【0044】
焼成工程により得られる焼成物の状態は、原料配合や焼成条件によって、粉体状、塊状と様々である。解砕・粉砕工程及び/又は分級操作工程によって、焼成物を、所定のサイズの粉体状にできる。
なお、上記の他に、蛍光体の分野で公知の工程を追加してもよい。
【0045】
次に、焼成物に酸や水による洗浄処理をしてもよい(洗浄工程)。
洗浄工程は、焼成物に対して、酸を含む酸性溶液や水に接触させる工程を含んでもよい。これにより、(Ba,Eu)26Si5184の主相を残存させつつも、(Ba,Eu)Siの異相を低減することが可能である。また、(Ba,Eu)SiNなどの異相も低減できる。
【0046】
洗浄処理は、焼成物を酸性溶液又は水中に加えてもよく、溶液中の焼成物に酸を加えてもよい。処理中、酸性溶液や水を静置してもよいが、適当な条件で攪拌してもよい。
また、酸処理後、必要に応じて、水やアルコールを用いてデカンテーション(固液分離処理)を施してもよい。デカンテーションは、1回又は2回以上行ってもよい。これにより、焼成物中から酸を洗浄除去できる。その後、焼成物に対して、ろ過、乾燥等を施してもよい。
【0047】
酸は、例えば、無機酸を使用してもよく、具体的には、HNO、HCl、HSO、及びHP0等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。無機酸の中でも、HNO、及びHClの少なくとも一方を含むことが好ましく、HNOを含むことが好ましい。
【0048】
酸性溶液は、溶媒として、水やアルコールを含んでもよい。
【0049】
酸性溶液中の酸の濃度は、例えば、0.1質量%~20質量%、好ましくは0.5質量%~10質量%でもよい。
【0050】
以上により、本実施形態の蛍光体粒子が得られる。
その後、必要において、例えば、破砕・分級処理、精製処理、乾燥処理などの後処理を行ってもよい。
【0051】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
【実施例
【0052】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0053】
(蛍光体粉末の製造)
[実施例1~5、比較例1]
表1の仕込み組成に示すように、一般式:(Ba1-x,Eu26Si5184において、xを実施例1~5の順で0.002,0.005,0.008,0.01,0.02とし、窒化バリウム(BaN、太平洋セメント社製)、酸化ユーロピウム(Eu、信越化学工業社製)、(Si、宇部興産社製)、及び酸化ケイ素(SiO、高純度化学社製)を秤量し、窒素雰囲気のグローブボックス中で窒化ケイ素焼結体製乳棒と乳鉢とを用いて10分間混合を行い、粉末状の原料混合物を得た(混合工程)。
表1中、原料混合物中のBa、Si、Euのモル比をそれぞれ、a、b、cで表す。
【0054】
次いで、原料混合物を、窒化ホウ素焼結体製るつぼに投入した。原料混合物が入ったるつぼを、黒鉛抵抗加熱方式の電気炉に入れ、油回転ポンプ及び油拡散ポンプにより焼成雰囲気を圧力として1×10-1Pa以下の真空とし、室温から600℃まで毎時500℃の速度で加熱し、600℃で純度が99.999体積%の窒素を導入して炉内の圧力を0.8MPaとし、毎時600℃で1800℃まで昇温し、8時間焼成を行った(焼成工程)。
【0055】
得られた焼成物を、アルミナ製乳鉢で粉砕後、目開き150μm(#100メッシュ)の篩で篩分けを行い、篩通過分を回収した(粉体処理工程)。
【0056】
篩通過分の焼成物を、300mlの硝酸(HNO濃度7.5%)に浸漬させ、室温下、攪拌速度350rpmで30分間攪拌させた(酸処理工程)。
その後、上澄みを低減し、蒸留水で洗浄し、吸引ろ過、乾燥し、蛍光体粉末を得た。
【0057】
【表1】
【0058】
得られた焼成物、蛍光体粉末について、以下の項目について評価を行った。
【0059】
[XRD測定]
実施例1~5、比較例1にて得られた蛍光体粉末について、粉末X線回折装置(製品名:UltimaIV、リガク社製)を用いて、下記の測定条件で回折パターンを測定した。
(測定条件)
X線源:Cu-Kα線(λ=1.54184Å)、
出力設定:40kV・40mA
測定時光学条件:発散スリット=2/3°
散乱スリット=8mm
受光スリット=開放
回折ピークの位置=2θ(回折角)
測定範囲:2θ=10°~90°
スキャン速度:2度(2θ)/sec,連続スキャン
走査軸:2θ/θ
試料調製:蛍光体粉末をサンプルホルダーに載せた。
ピーク強度はバックグラウンド補正を行って得た値とした。
【0060】
X線回折パターンの結果から、実施例1~5、比較例1の蛍光体粉末は、主相がBa26Si5184であることが分かった。
【0061】
[蛍光測定]
(蛍光ピーク強度、積分強度、ピーク波長、半値幅)
実施例1~5、比較例1の蛍光体粉末について、副標準光源により補正を行った分光蛍光光度計(株式会社堀場製作所製、Fluorolog-3)を用いて、蛍光ピーク強度測定を行った。測定には、光度計に付属の角セルホルダーを使用し、波長450nmの励起光を照射し、発光スペクトルを得た。図1に750nm~950nmの範囲におけるピークの発光強度で規格した蛍光体粉末の発光スペクトルを示す。積分強度は、500nm~1400nmにおける発光強度を合計することで算出し、比較例1における積分強度を100としたときの強度比を表1に示した。
【0062】
蛍光体粉末における発光スペクトルにおいて、750nm~950nm近傍に主相(Ba,Eu)26Si5184に帰属されるメインピーク(P0)が存在するとともに、520nm~600nmの範囲に(Ba,Eu)26Si5184に帰属されるサブピーク(P1)が存在することが確認された。
【0063】
得られた発光スペクトルより、実施例3のメインピーク強度を1.00としたときの各蛍光体粉末のメインピーク強度(P0)、及びその半値幅、サブピーク強度(P1)、P1/P0を表2に示す。
【0064】
【表2】
【0065】
[粒度分布測定]
実施例1~5の蛍光体粉末の粒子径分布を、レーザー回折・散乱法の粒子径分布測定装置(ベックマン・コールター社製、LC13 320)で測定した。測定溶媒には水を使用した。分散剤としてヘキサメタりん酸ナトリウムを0.05重量%加えた水溶液に少量の蛍光体粉末を投入し、ホーン式の超音波ホモジナイザー(出力300W、ホーン径26mm)で分散処理を行い、粒子径分布を測定した。得られた体積頻度粒度分布曲線から、10体積%径(D10)、50体積%径(D50)、90体積%径(D90)を求め、得られた値から粒子径分布のスパン値((D90-D10)/D50)を求めた。粒子径分布の結果を表3に示す。
【0066】
【表3】
【0067】
実施例1~5及び比較例1の結果より、(Ba,Eu)26Si5184に帰属されるサブピークとメインピークとのピーク強度比を適切な範囲内にすることにより、発光特性が優れる蛍光体粉末が得られることが分かった。
【0068】
この出願は、2020年8月25日に出願された日本出願特願2020-141749号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
図1