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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20240405BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20240405BHJP
   H03K 17/16 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
H02M3/155 E
H02M3/155 W
H02M1/08 A
H03K17/16 H
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022550411
(86)(22)【出願日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 JP2021029741
(87)【国際公開番号】W WO2022059393
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-01-17
(31)【優先権主張番号】P 2020154363
(32)【優先日】2020-09-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】野▲崎▼ 義明
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-79533(JP,A)
【文献】特開2011-166920(JP,A)
【文献】特開2015-95946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
H02M 1/08
H03K 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電位側に接続された第1スイッチング素子と、
第2電位側で前記第1スイッチング素子と直列に接続された第2スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子のゲートに接続された第1抵抗器と、
前記第2スイッチング素子のゲートに接続された第2抵抗器とを備え、
前記第1抵抗器の抵抗、前記第2抵抗器の抵抗、前記第1スイッチング素子のゲート抵抗および前記第2スイッチング素子のゲート抵抗がそれぞれ異なる、
電力変換装置。
【請求項2】
前記第1スイッチング素子の断面構造と前記第2スイッチング素子の断面構造が異なる、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1スイッチング素子のゲート抵抗と前記第2スイッチング素子のゲート抵抗との比が1/5以上で1未満、または1より大きく5以下である、
請求項1または2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1抵抗器の抵抗および前記第1スイッチング素子のゲート抵抗の和と、前記第2抵抗器の抵抗および前記第2スイッチング素子のゲート抵抗の和との比が1/3以上で1未満、または1より大きく3以下である、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1スイッチング素子または前記第2スイッチング素子の少なくともいずれかはSiCトランジスタである、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記第1スイッチング素子のゲートとソースとの間に接続された第1キャパシタと、
前記第2スイッチング素子のゲートとソースとの間に接続された第2キャパシタとをさらに備え、
前記第1キャパシタの静電容量、前記第2キャパシタの静電容量、前記第1スイッチング素子のゲート容量および前記第2スイッチング素子のゲート容量がそれぞれ異なる、
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記第1スイッチング素子のゲート容量と前記第2スイッチング素子のゲート容量との比が1/5以上で1未満、または1より大きく5以下である、
請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記第1電位側に接続された第3スイッチング素子と、
前記第2電位側で前記第3スイッチング素子と直列に接続された第4スイッチング素子と、
前記第3スイッチング素子のゲートに接続された第3抵抗器と、
前記第4スイッチング素子のゲートに接続された第4抵抗器とを備え、
前記第3抵抗器の抵抗、前記第4抵抗器の抵抗、前記第3スイッチング素子のゲート抵抗および前記第4スイッチング素子のゲート抵抗がそれぞれ異なる、
請求項1ないし7のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記第3スイッチング素子の断面構造と前記第4スイッチング素子の断面構造が異なる、
請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記第3スイッチング素子のゲート抵抗と前記第4スイッチング素子のゲート抵抗との比が5以下である、
請求項8または9に記載の電力変換装置。
【請求項11】
前記第3抵抗器の抵抗および前記第3スイッチング素子のゲート抵抗の和と、前記第4抵抗器の抵抗および前記第4スイッチング素子のゲート抵抗の和との比が1/3以上で1未満、または1より大きく3以下である、
請求項8ないし10のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項12】
前記第3スイッチング素子または前記第4スイッチング素子の少なくともいずれかはSiCトランジスタである、
請求項8ないし11のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項13】
前記第3スイッチング素子のゲートとソースとの間に接続された第3キャパシタと、
前記第4スイッチング素子のゲートとソースとの間に接続された第4キャパシタとをさらに備え、
前記第3キャパシタの静電容量、前記第4キャパシタの静電容量、前記第3スイッチング素子のゲート容量および前記第4スイッチング素子のゲート容量がそれぞれ異なる、
請求項8ないし12のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項14】
前記第3スイッチング素子のゲート容量と前記第4スイッチング素子のゲート容量との比が1/5以上で1未満、または1より大きく5以下である、
請求項13に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置は、モータ駆動やパワーコンデショナなど多岐の用途で使われている。スイッチング性能向上に対する要求に応えるべく、電力変換装置に含まれるスイッチング素子の高速化が進んでいる。このため、電力変換装置を含むシステムで発生するEMI(electromagnetic interference)ノイズの周波数が高くなり、コモンモードノイズとして他の電子機器に干渉しうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-203584号公報
【文献】国際公開第2015/097836号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、スイッチングノイズを低減することが可能な電力変換装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示による一形態の電力変換装置は、第1電位側に接続された第1スイッチング素子と、第2電位側で前記第1スイッチング素子と直列に接続された第2スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子のゲートに接続された第1抵抗器と、前記第2スイッチング素子のゲートに接続された第2抵抗器とを備える。前記第1抵抗器の抵抗、前記第2抵抗器の抵抗、前記第1スイッチング素子のゲート抵抗および前記第2スイッチング素子のゲート抵抗がそれぞれ異なる。第1スイッチング素子で発生するノイズと第2スイッチング素子で発生するノイズのスペクトルが相違するため、電力変換装置全体で発生するノイズを抑制することができる。
【0006】
本開示による電力変換装置において、前記第1スイッチング素子の断面構造と前記第2スイッチング素子の断面構造が異なっていてもよい。
【0007】
本開示による電力変換装置において、前記第1スイッチング素子のゲート抵抗と前記第2スイッチング素子のゲート抵抗との比を1/5以上で1未満、または1より大きく5以下にしてもよい。
【0008】
本開示による電力変換装置において、前記第1抵抗器の抵抗および前記第1スイッチング素子のゲート抵抗の和と、前記第2抵抗器の抵抗および前記第2スイッチング素子のゲート抵抗の和との比が1/3以上で1未満、または1より大きく3以下にしてもよい。
【0009】
本開示による電力変換装置において、前記第1スイッチング素子または前記第2スイッチング素子の少なくともいずれかはSiCトランジスタであってもよい。
【0010】
本開示による電力変換装置は、前記第1スイッチング素子のゲートとソースとの間に接続された第1キャパシタと、前記第2スイッチング素子のゲートとソースとの間に接続された第2キャパシタとをさらに備えていてもよい。ここで、前記第1キャパシタの静電容量、前記第2キャパシタの静電容量、前記第1スイッチング素子のゲート容量および前記第2スイッチング素子のゲート容量がそれぞれ異なっていてもよい。
【0011】
本開示による電力変換装置において、前記第1スイッチング素子のゲート容量と前記第2スイッチング素子のゲート容量との比が1/5以上で1未満、または1より大きく5以下であってもよい。
【0012】
本開示による電力変換装置は、前記第1電位側に接続された第3スイッチング素子と、前記第2電位側で前記第3スイッチング素子と直列に接続された第4スイッチング素子と、前記第3スイッチング素子のゲートに接続された第3抵抗器と、前記第4スイッチング素子のゲートに接続された第4抵抗器とを備えていてもよい。ここで、前記第3抵抗器の抵抗、前記第4抵抗器の抵抗、前記第3スイッチング素子のゲート抵抗および前記第4スイッチング素子のゲート抵抗がそれぞれ異なっていてもよい。
【0013】
本開示による電力変換装置において、前記第3スイッチング素子の断面構造と前記第4スイッチング素子の断面構造が異なっていてもよい。
【0014】
本開示による電力変換装置において、前記第3スイッチング素子のゲート抵抗と前記第4スイッチング素子のゲート抵抗との比が5以下であってもよい。
【0015】
本開示による電力変換装置において、前記第3抵抗器の抵抗および前記第3スイッチング素子のゲート抵抗の和と、前記第4抵抗器の抵抗および前記第4スイッチング素子のゲート抵抗の和との比が1/3以上で1未満、または1より大きく3以下であってもよい。
【0016】
本開示による電力変換装置において、前記第3スイッチング素子または前記第4スイッチング素子の少なくともいずれかはSiCトランジスタであってもよい。
【0017】
本開示による電力変換装置は、前記第3スイッチング素子のゲートとソースとの間に接続された第3キャパシタと、前記第4スイッチング素子のゲートとソースとの間に接続された第4キャパシタとをさらに備えていてもよい。この場合において、前記第3キャパシタの静電容量、前記第4キャパシタの静電容量、前記第3スイッチング素子のゲート容量および前記第4スイッチング素子のゲート容量がそれぞれ異なってもよい。
【0018】
本開示による電力変換装置において、前記第3スイッチング素子のゲート容量と前記第4スイッチング素子のゲート容量との比が1/5以上で1未満、または1より大きく5以下であってもよい。
【0019】
本開示による電力変換装置において直列に接続される2つのスイッチング素子のノイズスペクトルは異なるものとなる。このため、電力変換装置を動作させたときに生じるノイズが全般的に抑制される。したがって、スイッチングノイズが低減された電力変換装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示による電力変換装置の例を示す図である。
図2】電力変換装置の例を示す回路図である。
図3A】第1の実施形態に係る電力変換装置の例を示す回路図である。
図3B図3Aの電力変換装置のシミュレーション条件の例を示す図である。
図4A】第2の実施形態に係る電力変換装置の例を示す回路図である。
図4B図4Aの電力変換装置のシミュレーション条件の例を示す図である。
図5A】第3の実施形態に係る電力変換装置の例を示す回路図である。
図5B図5Aの電力変換装置のシミュレーション条件の例を示す図である。
図6】第4の実施形態に係る電力変換装置の例を示す説明図である。
図7図6の電力変換装置のシミュレーション条件の例を示す図である。
図8】第1の実施形態のシミュレーション結果の例を示すグラフである。
図9】第2の実施形態のシミュレーション結果の例を示すグラフである。
図10】第3の実施形態のシミュレーション結果の例を示すグラフである。
図11】第4の実施形態のシミュレーション結果の例を示すグラフである。
図12】第5の実施形態に係る電力変換装置の例を示す回路図である。
図13】第6の実施形態に係る電力変換装置の例を示す回路図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ本開示について説明する。なお、以下の説明では、同一の構成要素には同一の符号を付し、一度説明した構成要素については適宜その説明を省略する。
【0022】
図1は、本開示による電力変換装置の例を示した図である。図1の電力変換システム200は、電力変換装置100と、直流電源210と、交流出力部220とを備える。電力変換装置100は、コンバータ部100Aと、インバータ部100Bとを備える。コンバータ部100Aは、直流電圧を変更する。インバータ部100Bは、直流信号から交流信号を生成する。
【0023】
直流電源210の例として、各種の移動体に搭載される二次電池、太陽光発電で発電した電力を蓄える二次電池が挙げられる。直流電源210が移動体に実装されている場合、交流出力部220に、例えば、モータが接続される。そして、インバータ部100Bにおいて交流出力部220の出力周波数を変更することによってモータの回転数を制御することが可能となる。こうして、モータの回転数に応じて移動体に所望の動きをさせることができる。ただし、交流出力部220に接続される機器の種類を限定するものではない。
【0024】
直流電源210が蓄電池設備である場合、所定の電圧(例えば、100V~240V)かつ所定の周波数(例えば、50Hzまたは60Hz)の電力信号が交流出力部220から出力されるよう、コンバータ部100Aおよびインバータ部100Bを制御することができる。
【0025】
図2は、図1の電力変換装置の例を示した回路図である。図2のコンバータ部100Aは昇圧コンバータであり、4つのスイッチング素子を有するフルブリッジ回路を含む。コンバータ部100Aでは、まず、直流電源210およびコイルを含む閉回路が形成されるようにスイッチング素子を制御し、コイルに電力を蓄積する。次に、直流電源210とコイルとが直列に接続されてインバータ部100Bへとつながる回路が形成されるようにスイッチング素子を制御し、直流電源210よりも高電圧の信号をインバータ部100Bへと出力する。スイッチング素子に対する上述の制御を繰り返すことにより、インバータ部100Bから出力される信号の電圧を直流電源から入力される信号の電圧よりも高くすることができる。
【0026】
コンバータ部100Aと同様、インバータ部100Bもフルブリッジ回路を含む。インバータ部100Bでは、2組のスイッチング素子を交互にオン動作させることによって、交流出力部220に供給される電流の向きを反転させる。さらに、制御処理では、スイッチング素子のオン/オフ間隔を調整して幅の異なるパルス波を作り、これらを合成して擬似的な正弦波を形成することが可能である。スイッチング素子と交流出力部220との間に位置するトランスおよび/またはコンデンサによって、この擬似的な正弦波を平滑化することができる。なお、リンギング抑制などを目的に、コンバータ部100Aとインバータ部100Bとの間にキャパシタを接続してもよい。
【0027】
なお、本開示による電力変換装置は、直列に接続された2つのスイッチング素子を含むものであってもよい。本開示に係る電力変換装置は、上述のようにコンバータ部とインバータ部とを備えていてもよいが、これに限定されない。例えば、本開示に係る電力変換装置は、コンバータ部を備えるがインバータ部が省略されたものであってもよい。また、本開示に係る電力変換装置は、インバータ部を備えるがコンバータ部が省略されたものであってもよい。以下の各実施形態では、少なくとも2つのスイッチング素子を含むコンバータ部を備える昇圧コンバータを具体例とし、それぞれの電力変換装置の動作について説明する。
【0028】
(第1の実施形態)
図3Aは、第1の実施形態に係る電力変換装置の例を示す回路図である。図3Aの電力変換装置101は、例えば、昇圧コンバータである。入力信号線11および入力信号線21は、直流電源210に接続される。出力信号線71および出力信号線72は、出力負荷230に接続される。
【0029】
入力信号線11はコイル50の一端に接続される。コイル50の他端は、直列に接続される2つのスイッチング素子(スイッチング素子10およびスイッチング素子20)の間の点Pに接続されている。スイッチング素子10は、点Pに接続された側と反対側において出力信号線71に接続されている。スイッチング素子20は、点Pに接続された側と反対側で出力信号線72に接続されている。すなわち、スイッチング素子10は、第1電位側の出力信号線71に接続される。スイッチング素子10と直列に接続されたスイッチング素子20は、第2電位側の出力信号線72に接続されている。スイッチング素子10とスイッチング素子20とを含む直列回路に並列になるよう、コンデンサ60が出力信号線71および出力信号線72に接続されている。
【0030】
以下では、スイッチング素子(例えば、スイッチング素子10およびスイッチング素子20)が電界効果トランジスタ(FET)である場合を例に説明する。ただし、本開示による電力変換装置で使われるスイッチング素子の種類を限定するものではない。例えば、スイッチング素子は、その他の種類のトランジスタであってもよいし、サイリスタであってもよい。また、電界効果トランジスタの場合、スイッチング素子の制御電極はゲートとなる。なお、電界効果トランジスタ以外のスイッチング素子が使われる場合、ゲート以外の制御電極が使われてもよい。スイッチング素子の種類に応じてソースおよび/またはドレイン以外の電極が使われてもよい。
【0031】
スイッチング素子10は、例えば、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)または、SiC基板から製造されたSiCトランジスタ(SiC-MOSFET)である。スイッチング素子10は、駆動部12の出力信号を入力としてスイッチング動作を行う。電力変換装置101では、駆動部12とスイッチング素子10との間に、スイッチング素子10のゲートに接続された抵抗器13が接続されている。
【0032】
スイッチング素子20は、例えば、SiC-MOSFETである。電力変換装置101において、スイッチング素子10と同様の断面構造を有するスイッチング素子20を使ってもよい。スイッチング素子20は、駆動部22の出力信号を入力としてスイッチング動作を行う。電力変換装置101では、駆動部22とスイッチング素子20との間に、スイッチング素子20のゲートに接続された抵抗器23が接続されている。これらの抵抗器はスイッチング素子の抵抗器と組み合わされ、駆動部が駆動するスイッチング素子のゲート抵抗を増加させる。
【0033】
電力変換装置101では、抵抗器13の抵抗Rgin1、抵抗器23の抵抗Rgin2、スイッチング素子10のゲート抵抗Rg1およびスイッチング素子20のゲート抵抗Rg2がそれぞれ異なっていてもよい。この場合、スイッチング素子10を動作させたときに生じるノイズのスペクトルとスイッチング素子20を動作させたときに生じるノイズのスペクトルは相違する。このため、電力変換装置101全体で発生するノイズを抑制することができる。
【0034】
図3Bは、図3Aの電力変換装置のシミュレーション条件を示す図である。図3Bにおいて、「上アーム」は駆動部12からの信号によりスイッチング動作を行う回路の一部(スイッチング回路)に相当し、スイッチング素子10を含む。「下アーム」は駆動部22からの信号によりスイッチング動作を行う回路の一部に相当し、スイッチング素子20を含む。
【0035】
テーブル中の条件P31では、抵抗器13の抵抗Rgin1と抵抗器23の抵抗Rgin2とが等しく(10Ω)、スイッチング素子10のゲート抵抗Rg1とスイッチング素子20のゲート抵抗Rg2とが等しい(7Ω)。これに対し、テーブル中の条件P32では、抵抗器13の抵抗Rgin1が25Ωであるのに対し、抵抗器23の抵抗Rgin2は10Ωであって、前者と後者は異なる。また、スイッチング素子10のゲート抵抗Rg1が12Ωであるのに対し、スイッチング素子20のゲート抵抗Rg2は7Ωであって、前者と後者は異なっている。すなわち、テーブル中の条件P32では、抵抗器13の抵抗Rgin1、抵抗器23の抵抗Rgin2、スイッチング素子10のゲート抵抗Rg1およびスイッチング素子20のゲート抵抗Rg2がそれぞれ異なる。
【0036】
ここで、スイッチング素子10のゲート抵抗Rg1とスイッチング素子20のゲート抵抗Rg2との比(ゲート抵抗比)は、1/5以上で1未満、または1より大きく5以下であってもよい。ゲート抵抗比を上述の範囲に設定することにより、電力変換装置101を動作させたときに発生するノイズを抑制することができる。図3Bに示された、条件P32において、ゲート抵抗比は1.7(=12Ω/7Ω)となる。
【0037】
抵抗器13の抵抗Rgin1およびスイッチング素子10のゲート抵抗Rg1の和と、抵抗器23の抵抗Rgin2およびスイッチング素子20のゲート抵抗Rg2の和との比(総ゲート抵抗比)が1/3以上で1未満、または1より大きく3以下であってもよい。総ゲート抵抗比を上述の範囲に設定することにより、電力変換装置101を動作させたときに発生するノイズを抑制することができる。図3Bに示された、条件P32では、総ゲート抵抗比は2.2(=37Ω/17Ω)となる。
【0038】
図3Bの「オン抵抗/(総ゲート抵抗*総ゲート容量)」の列に示された数値は、スイッチング素子のMOSFETオン抵抗の、ゲート抵抗の総和(=ゲート抵抗+抵抗器の抵抗)とゲート容量の総和(=ゲート容量+キャパシタの静電容量)との積に対する比であり、単位はμFである。以下では、この値をスイッチングパラメータとよぶ。
【0039】
スイッチングパラメータは、駆動部が駆動するスイッチング素子のゲート抵抗の総和と、ゲート容量の総和と、スイッチング素子を構成するMOSFETのオン抵抗との関係を示す。スイッチングパラメータに基づき、駆動部からみたスイッチング動作を行うアームの特性を評価することができる。具体的には、上アームと下アームとでスイッチングパラメータが異なる場合には、駆動部から出力された駆動信号に対する応答特性の違いにより、ノイズスペクトルも異なったものとなる。
【0040】
上アームのスイッチングパラメータと下アームのスイッチングパラメータを異なったものに設定し、電力変換装置101全体のノイズを抑制することができる。図3Bのテーブルの条件P31では、上アームのスイッチングパラメータは、下アームのスイッチングパラメータと同じく1.2μFである。これに対し、テーブルの条件P32では、上アームおよび下アームのスイッチングパラメータは、それぞれ1.9μF、1.2μFとなっている。
【0041】
図8は、第1の実施形態におけるシミュレーション結果の例を示したグラフである。グラフにおいて、横軸はノイズ周波数(単位:Hz)、縦軸はノイズ信号強度(単位:dBμV)である。抵抗器13の抵抗Rgin1と抵抗器23の抵抗Rgin2とが等しい条件P31のノイズスペクトルは実線で示されている。一方、抵抗器13の抵抗Rgin1と抵抗器23の抵抗Rgin2とが異なっている条件P32のノイズスペクトルは破線で示されている。
【0042】
図8を参照すると、周波数が4MHzを超えると、条件P32の方が条件P31と比べてノイズ信号強度が低下している。条件P32では上アームのスイッチングパラメータと下アームのスイッチングパラメータとが異なるからである。
【0043】
なお、第1の実施形態に係る電力変換装置101は、以下のような構成をとってもよい。例えば、電力変換装置101は、直列に接続され、トランジスタ構造を有し相補的に動作する2つのスイッチング素子であるスイッチング素子10およびスイッチング素子20と、スイッチング素子10のゲートに接続された抵抗器13と、スイッチング素子20のゲートに接続された抵抗器23とを備え、下記の関係(1)を満たす。
|(Rgin1+Rg1)-(Rgin2+Rg2)|>0Ω (1)
【0044】
スイッチング素子10の総ゲート抵抗(抵抗器13の抵抗Rgin1とスイッチング素子10のゲート抵抗Rg1との和)とスイッチング素子20の総ゲート抵抗(抵抗器23の抵抗Rgin2とスイッチング素子20のゲート抵抗Rg2との和)とが異なるため、スイッチング素子10のノイズスペクトルと、スイッチング素子20のノイズスペクトルとが相違する。これにより、電力変換装置101で発生するスイッチングノイズを低減させることができる。
【0045】
電力変換装置101において、下記の式(2)で示される指数Pr1が0.05以上0.5以下であってもよい。
Pr1=|(Rgin1+Rg1)-(Rgin2+Rg2)|/[(Rgin1+Rg1)+(Rgin2+Rg2)] (2)
【0046】
指数Pr1が0.05以上に設定することにより、2つのスイッチング素子のノイズスペクトルの帯域をずらしやすくなり、スイッチングノイズを抑えることができる。指数Pr1を0.5以下に設定することにより、2つのスイッチング素子の相補的動作が容易となる。
【0047】
電力変換装置101は、上記の式(1)に加えて、下記の式(3)を満たしてもよい。また、電力変換装置101は、上記の式(1)および上記の式(2)に係る条件(0.05≦Pr1≦0.5)の両方に加え、下記の(3)の関係を満たしてもよい。
0.8≦[Ron1×(Rgin2+Rg2)]/[Ron2×(Rgin1+Rg1)]≦1.2 (3)
ここで、Ron1はスイッチング素子10のオン抵抗であり、Ron2はスイッチング素子20のオン抵抗である。
【0048】
スイッチング素子10におけるオン抵抗/総ゲート抵抗(=Ron1/(Rgin1+Rg1))と、スイッチング素子20におけるオン抵抗/総ゲート抵抗(=Ron2/(Rgin2+Rg2))を近い値に設定すると、回路の動作が安定化する場合がある。なお、各実施形態で説明される関係式および条件は、例にしかすぎない。したがって、本開示に係る電力変換装置は、必ず説明されるすべての関係式および条件を満たさなくてもよい。例えば、性能要件または使用条件に応じて一部の関係式および/または条件を満たす電力変換装置を使ってもよい。
【0049】
(第2の実施形態)
図4Aは、第2の実施形態に係る電力変換装置の例を示す回路図である。図4Bは、図4Aの電力変換装置のシミュレーション条件の例を示す図である。図4Aの電力変換装置102の構成は、スイッチング素子10のゲートとソースとの間に接続されたキャパシタ14およびスイッチング素子20のゲートとソースとの間に接続されたキャパシタ24が追加されている点を除けば、電力変換装置101と同様である。電力変換装置102は、例えば、昇圧コンバータである。
【0050】
電力変換装置102では、キャパシタ14の静電容量Cigin1、キャパシタ24の静電容量Cigin2、スイッチング素子10のゲート容量Ciss1およびスイッチング素子20のゲート容量Ciss2がそれぞれ異なる。したがって、スイッチング素子10を動作させたときに生じるノイズスペクトルとスイッチング素子20を動作させたときに生じるノイズスペクトルが異なったものになる。すなわち、電力変換装置102全体で発生するノイズを抑制することができる。
【0051】
スイッチング素子に接続されたキャパシタ(キャパシタ14、キャパシタ24)はスイッチング素子のゲート容量と組み合わされ、駆動部(駆動部12、駆動部22)により駆動されるスイッチング素子(スイッチング素子10、スイッチング素子20)のゲート容量の総和を大きくする。図4Bのテーブルの条件P41では、上アームのスイッチングパラメータは、下アームのスイッチングパラメータと同じく0.8μFである。一方、テーブルの条件P42では、上アームおよび下アームのスイッチングパラメータは、それぞれ1.5μF、0.8μFである。
【0052】
図9は、第2の実施形態のシミュレーション結果の例を示すグラフである。図9のグラフにおいて、横軸はノイズ周波数(単位:Hz)、縦軸はノイズ信号強度(単位:dBμV)である。上アームのスイッチングパラメータと下アームのスイッチングパラメータとが等しい場合(例えば、条件P41)におけるノイズスペクトルは実線で示されている。一方、上アームと下アームでスイッチングパラメータが異なる場合(例えば、条件P42)におけるノイズスペクトルは破線で示されている。
【0053】
図9を参照すると、4MHz程度以上の周波数(より顕著には、10MHz以上の周波数)において、条件P41と比べ条件P42ではノイズ信号強度が低下している。条件P42では、上アームと下アームでスイッチングパラメータが異なるからである。
【0054】
(第3の実施形態)
図5Aは、第3の実施形態に係る電力変換装置の例を示す回路図である。図5Bは、図5Aの電力変換装置のシミュレーション条件の例を示す図である。図5Aの電力変換装置103は、第2の実施形態に係る電力変換装置102と同様、昇圧コンバータであってもよい。電力変換装置103では、入力信号線11および入力信号線21が直流電源210に接続されている。また、出力信号線71および出力信号線72が出力負荷230に接続されている。電力変換装置102ではハーフブリッジ回路が使われていたのに対し、電力変換装置103ではフルブリッジ回路が使われている。
【0055】
入力信号線11は、コイル51の一端に接続される。一方、コイル51の他端は、直列に接続される2つのスイッチング素子(スイッチング素子10およびスイッチング素子20)の間の点P1に接続されている。スイッチング素子10は、点P1に接続された側と反対側で出力信号線71に接続されている。一方、スイッチング素子20は、点P1に接続された側と反対側で出力信号線72に接続されている。
【0056】
入力信号線11は、コイル51と並列に接続されたコイル52の一端に接続される。一方、コイル52の他端は、直列に接続される2つのスイッチング素子(スイッチング素子30およびスイッチング素子40)の間の点P2に接続されている。スイッチング素子30は、点P2に接続された側と反対側で出力信号線71に接続されている。スイッチング素子40は、点P2に接続された側と反対側で出力信号線72に接続されている。
【0057】
すなわち、スイッチング素子30は、第1電位側の出力信号線71に接続され、スイッチング素子30と直列に接続されたスイッチング素子40は、第2電位側の出力信号線72に接続されている。スイッチング素子30とスイッチング素子40とを含む直列回路は、スイッチング素子10とスイッチング素子20とを含む直列回路およびコンデンサ60に対して並列に接続される。
【0058】
スイッチング素子30のゲートには抵抗器33が接続される。一方、スイッチング素子40のゲートには抵抗器43が接続される。抵抗器33の抵抗Rgin3、抵抗器43の抵抗Rgin4、スイッチング素子30のゲート抵抗Rg3およびスイッチング素子40のゲート抵抗Rg4は、それぞれ異なっていてもよい。
【0059】
スイッチング素子30のゲートとソースとの間にはキャパシタ34が接続されている。一方、スイッチング素子40のゲートとソースとの間にはキャパシタ44が接続されている。キャパシタ34の静電容量Cigin3、キャパシタ44の静電容量Cigin4、スイッチング素子30のゲート容量Ciss3およびスイッチング素子40のゲート容量Ciss4は、それぞれ異なっていてもよい。
【0060】
電力変換装置103では、スイッチング素子10とスイッチング素子30は、位相が半周期ずれて制御される。一方、スイッチング素子20とスイッチング素子40は、位相が半周期ずれて制御される。ここで、スイッチング素子10およびスイッチング素子40として同様の断面構造を有するスイッチング素子を使ってもよい。また、スイッチング素子20およびスイッチング素子30として同様の断面構造を有するスイッチング素子を使ってもよい。また、抵抗器13の抵抗と抵抗器43の抵抗は等しくてもよい。抵抗器23の抵抗と抵抗器33の抵抗は等しくてもよい。さらに、キャパシタ14とキャパシタ44とは抵抗が等しく、キャパシタ24とキャパシタ34とは静電容量が等しくてもよい。
【0061】
図5Bでは、「上アーム」は、スイッチング素子10を含むスイッチング回路およびスイッチング素子10と位相が半周期ずれて制御されるスイッチング素子30を含むスイッチング回路に相当する。「下アーム」は、スイッチング素子20を含むスイッチング回路およびスイッチング素子20と位相が半周期ずれて制御されるスイッチング素子40を含むスイッチング回路に相当する。
【0062】
図5Bに示されるように、条件P51では、上アームのスイッチングパラメータは、下アームのスイッチングパラメータと同じく0.8μFである。一方、条件P52では、上アームおよび下アームのスイッチングパラメータは、それぞれ1.5μF、0.8μFである。
【0063】
図10は、第3の実施形態のシミュレーション結果の例を示すグラフである。グラフにおいて、横軸はノイズ周波数(単位:Hz)、縦軸はノイズ信号強度(単位:dBμV)である。上アームのスイッチングパラメータと下アームのスイッチングパラメータとが等しい条件P51のノイズスペクトルは実線で示されている。一方、上アームと下アームでスイッチングパラメータが異なる、条件P52のノイズスペクトルは破線で示されている。
【0064】
図10を参照すると、約2MHz以下の周波数、および約10MHz以上の周波数において、条件P52の方が条件P51と比べてノイズ信号強度が低下している。条件P52では、上アームと下アームでスイッチングパラメータが異なっているからである。
【0065】
(第4の実施形態)
図6は、第4の実施形態に係る電力変換装置の例を示す回路図である。図7は、図6の電力変換装置のシミュレーション条件の例を示す図である。図6の電力変換装置104の回路構成は、上述の電力変換装置102の回路構成と同様となっている。ただし、電力変換装置104では、スイッチング素子10の断面構造がスイッチング素子20の断面構造と異なっている。例えば、スイッチング素子10としてプレナーゲート型の断面構造を有する電界効果トランジスタを使い、スイッチング素子20としてトレンチゲート型の断面構造を有する電界効果トランジスタを使うことができる。ただし、本開示に係る電力変換装置で使われるスイッチング素子の断面構造および動作原理を限定するものではない。
【0066】
スイッチング素子10およびスイッチング素子20のいずれも、ソースSに接続される電極ESとドレインDに接続される電極EDとの間に、p型半導体SPおよびn型半導体SNを含む積層構造体が形成されている。プレナーゲート型の断面構造を有するスイッチング素子10では、積層構造体におけるソースSに接続される電極ESが位置する側の面に、ドレインGに接続される電極EGが設けられている。トレンチゲート型の断面構造を有するスイッチング素子20では、積層構造体におけるソースSに接続される電極ESが位置する側の面より積層構造体の内側に、ドレインGに接続される電極EGが設けられている。
【0067】
断面構造の異なるスイッチング素子が用いられているため、図7Bの条件P72のように、上アームと下アームでスイッチングパラメータが異なっている。このため、それぞれのスイッチング素子の駆動信号に対する応答特性は異なったものとなる。このため、スイッチング素子10のノイズスペクトルとスイッチング素子20のノイズスペクトルは相違する。なお、表7Bの条件P71は、スイッチング素子10とスイッチング素子20で断面構造が同様(トレンチゲート型)である場合(比較例とよぶ)におけるシミュレーション条件を示している。
【0068】
図11は、第4の実施形態のシミュレーション結果の例を示すグラフである。グラフにおいて、横軸はノイズ周波数(単位:Hz)、縦軸はノイズ信号強度(単位:dBμV)である。上アームのスイッチングパラメータと下アームのスイッチングパラメータとが等しい比較例(条件P71)のノイズスペクトルは実線で示されている。一方、上アームのスイッチングパラメータと下アームのスイッチングパラメータとが異なる条件P72の電力変換装置104のノイズスペクトルは破線で示されている。
【0069】
図11を参照すると、約4MHz以上の周波数(より顕著には10MHz以上の周波数)において、電力変換装置104の方が比較例と比べてノイズ信号強度が低下している。電力変換装置104において、上アームを構成するスイッチング素子の断面構造と下アームを構成するスイッチング素子の断面構造とが異なるからである。
【0070】
(第5の実施形態)
図12は、第5の実施形態に係る電力変換装置の例を示す回路図である。図12の電力変換装置105の構成は、抵抗器13および抵抗器23が省略されている点を除けば、上述の電力変換装置102と同様である。電力変換装置105は、例えば、昇圧コンバータである。電力変換装置105の構成においても、上アームのゲート容量の総和と下アームのゲート容量の総和とを異なる値にし、電力変換装置105のスイッチングノイズを低減させることが可能である。
【0071】
ここで、キャパシタ14の静電容量Cigin1、キャパシタ24の静電容量Cigin2、スイッチング素子10のゲート容量Ciss1およびスイッチング素子20のゲート容量Ciss2は、下記の(4)の関係を満たしていてもよい。
|(Cigin1+Ciss1)-(Cigin2+Ciss2)|>0F (4)
【0072】
下記の式(5)は、指数Pc1の例を示している。指数Pc1の値が0.01以上0.5以下となるように、キャパシタ14の静電容量Cigin1、キャパシタ24の静電容量Cigin2、スイッチング素子10のゲート容量Ciss1およびスイッチング素子20のゲート容量Ciss2を決めてもよい。
Pc1=|(Cigin1+Ciss1)-(Cigin2+Ciss2)|/[(Cigin1+Ciss1)+(Cigin2+Ciss2)] (5)
【0073】
なお、電力変換装置102、103および104においても、上述の関係(4)が満たされていてもよい。また、電力変換装置102、103および104では、関係(4)と式(5)の両方が満たされていてもよい。
【0074】
電力変換装置102、103、104および105では、上アームのスイッチングパラメータが0.5μF以上2μF以下であってもよい。また、電力変換装置102、103、104および105では、下アームのスイッチングパラメータが0.5μF以上2μF以下であってもよい。ただし、上述のように、上アームのスイッチングパラメータと下アームのスイッチングパラメータは異なっていてもよい。
【0075】
電力変換装置103において、下記の(6)の関係を満たすよう、抵抗器33の抵抗Rgin3、抵抗器43の抵抗Rgin4、スイッチング素子30のゲート抵抗Rg3およびスイッチング素子40のゲート抵抗Rg4を決めてもよい。
|(Rgin3+Rg3)-(Rgin4+Rg4)|>0Ω (6)
【0076】
さらに、電力変換装置103において、下記式(7)で示される指数Pr2が0.05以上0.5以下となるよう、抵抗器33の抵抗Rgin3、抵抗器43の抵抗Rgin4、スイッチング素子30のゲート抵抗Rg3およびスイッチング素子40のゲート抵抗Rg4を決めてもよい。
Pr2=|(Rgin3+Rg3)-(Rgin4+Rg4)|/[(Rgin3+Rg3)+(Rgin4+Rg4)] (7)
【0077】
電力変換装置103は、(6)の関係を満たし、なおかつ式(7)の指数Pr2が0.05以上0.5以下である場合、さらに下記の(8)の関係を満たしていてもよい。これにより、電力変換装置103の安定的な動作を確保することができる。
0.8≦[Ron3×(Rgin4+Rg4)]/[Ron4×(Rgin3+Rg3)]≦1.2 (8)
【0078】
なお、電力変換装置103において、下記の式(9)が満たされるよう、キャパシタ34の静電容量Cigin3、キャパシタ44の静電容量Cigin4、スイッチング素子30のゲート容量Ciss3およびスイッチング素子40のゲート容量Ciss4を決めてもよい。
|(Cigin3+Ciss3)-(Cigin4+Ciss4)|>0F (9)
【0079】
また、電力変換装置103において、下記の式(10)の指数Pc2が0.01以上0.5以下となるよう、キャパシタ34の静電容量Cigin3、キャパシタ44の静電容量Cigin4、スイッチング素子30のゲート容量Ciss3およびスイッチング素子40のゲート容量Ciss4を決めてもよい。
Pc2=|(Cigin3+Ciss3)-(Cigin4+Ciss4)|/[(Cigin3+Ciss3)+(Cigin4+Ciss4)] (10)
【0080】
(第6の実施形態)
図13は、第6の実施形態に係る電力変換装置の例を示す回路図である。図13の電力変換装置106の構成は、抵抗器33および抵抗器43が省略されている点を除けば、上述の電力変換装置103と同様である。電力変換装置106は、上述の式(9)の関係を満たし、上述の式(10)の指数Pc2が0.01以上0.5以下であってもよい。
【0081】
電力変換装置106は、スイッチング素子30を含む上アームのスイッチングパラメータが0.5μF以上2μF以下であってもよい。また、電力変換装置106では、スイッチング素子40を含む下アームのスイッチングパラメータが0.5μF以上2μF以下であってもよい。電力変換装置106において、上アームと下アームでスイッチングパラメータが異なっていてもよい。
【0082】
なお、電力変換装置101~106において、上アームのスイッチングパラメータをP1、下アームのスイッチングパラメータをP2としたとき、下記の関係(11)が満たされていてもよい。
1.1≦MAX(P1,P2)/MIN(P1,P2)≦2.5 (11)
ここで、MAX(P1,P2)は、引数であるP1およびP2のうち最大値を返す関数である。一方、MIN(P1,P2)は、引数であるP1およびP2のうち最小値を返す関数である。
【0083】
関係(11)を満たすことにより、動作への影響を抑えつつ、直列に接続される2つのスイッチング素子のノイズスペクトルの重なりを減らすことができる。このため、動作性能を維持しつつスイッチングノイズを低減させることができる。
【0084】
ここで説明した実施形態は、本開示の理解を容易にするために記載されたものであって、本開示を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本開示の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含むものとする。
【符号の説明】
【0085】
10、20、30、40 スイッチング素子
11、21 入力信号線
12、22、32、42 駆動部
13、23、33、43 抵抗器
14、24、34、44 キャパシタ
50、51、52 コイル
60 コンデンサ
71、72 出力信号線
100、101、102、103、104、105、106 電力変換装置
100A コンバータ部
100B インバータ部
200 電力変換システム
210 直流電源
220 交流出力部
230 出力負荷
D ドレイン
ES、ED、EG 電極
G ゲート
P、P1、P2 点
S ソース
SN n型半導体
SP p型半導体
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13