(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】圧電デバイス、力センサー、及び生体情報取得デバイス
(51)【国際特許分類】
H10N 30/60 20230101AFI20240405BHJP
H10N 30/30 20230101ALI20240405BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20240405BHJP
H10N 30/853 20230101ALI20240405BHJP
H10N 30/06 20230101ALI20240405BHJP
H10N 30/857 20230101ALI20240405BHJP
H10N 30/85 20230101ALI20240405BHJP
【FI】
H10N30/60
H10N30/30
H10N30/20
H10N30/853
H10N30/06
H10N30/857
H10N30/85
(21)【出願番号】P 2022552083
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2021035189
(87)【国際公開番号】W WO2022065454
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2020161350
(32)【優先日】2020-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸子 展弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光伸
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 勝敏
【審査官】宮本 博司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/126477(WO,A2)
【文献】国際公開第2017/111108(WO,A1)
【文献】特開昭56-002800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 30/60
H10N 30/30
H10N 30/20
H10N 30/853
H10N 30/06
H10N 30/857
H10N 30/85
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に向けて
真っすぐに延在する第1内部導体と、前記第1内部導体の少なくとも一部を覆う第1圧電体と、前記第1圧電体の外周に配置された第1外部導体とを有し、外力が前記第1圧電体に作用すると、前記外力による前記第1圧電体の変位に応じて、前記第1外部導体に対して前記第1内部導体に第1電圧を発生させる第1圧電センサと、
第2方向に向けて
真っすぐに延在する第2内部導体と、前記第2内部導体の少なくとも一部を覆う第2圧電体と、前記第2圧電体の外周に配置された第2外部導体とを有し、前記外力が前記第2圧電体に作用すると、前記外力による前記第2圧電体の変位に応じて、前記第2外部導体に対して前記第2内部導体に前記第1電圧と電圧の正負が異なる第2電圧を発生させる第2圧電センサと、
前記第1内部導体が電気的に接続された一方の差動入力端子、及び前記第2内部導体が電気的に接続された他方の差動入力端子を有し、前記一方の差動入力端子に入力された第1信号及び前記他方の差動入力端子の入力された第2信号に基づいて、差動信号を形成する差動信号形成部とを備え
、
前記第1方向と前記第2方向とは、略平行であり、
前記第1外部導体と、前記第2外部導体とが物理的に接触しており、
前記第1圧電体は、圧電定数d
14
を有する有機圧電材料を含む長尺状有機圧電体が前記第1方向に向けて第1螺旋方向に螺旋状に巻回されてなり、
前記第2圧電体は、前記長尺状有機圧電体が前記第2方向に向けて前記第1螺旋方向とは異なる第2螺旋方向に螺旋状に巻回されてなる、圧電デバイス。
【請求項2】
前記有機圧電材料は、光学活性を有するヘリカルキラル高分子を含む、
請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記ヘリカルキラル高分子は、ポリ乳酸を含む、
請求項2に記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記有機圧電材料は、光学活性ポリペプチドからなる長繊維を含む、
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の圧電デバイス。
【請求項5】
第1方向に向けて延在する第1内部導体と、前記第1内部導体の少なくとも一部を覆う第1圧電体と、前記第1圧電体の外周に配置された第1外部導体とを有し、外力が前記第1圧電体に作用すると、前記外力による前記第1圧電体の変位に応じて、前記第1外部導体に対して前記第1内部導体に第1電圧を発生させる第1圧電センサと、
第2方向に向けて延在する第2内部導体と、前記第2内部導体の少なくとも一部を覆う第2圧電体と、前記第2圧電体の外周に配置された第2外部導体とを有し、前記外力が前記第2圧電体に作用すると、前記外力による前記第2圧電体の変位に応じて、前記第2外部導体に対して前記第2内部導体に前記第1電圧と電圧の正負が異なる第2電圧を発生させる第2圧電センサと、
前記第1内部導体が電気的に接続された一方の差動入力端子、及び前記第2内部導体が電気的に接続された他方の差動入力端子を有し、前記一方の差動入力端子に入力された第1信号及び前記他方の差動入力端子の入力された第2信号に基づいて、差動信号を形成する差動信号形成部とを備え、
前記第1圧電体は、圧電定数d
33及び圧電定数d
31を有し、圧電定数d
14を有しない圧電材料を含むシート状圧電体の一方の面が前記第1内部導体の側となるように、前記シート状圧電体が巻回されてなり、
前記第2圧電体は、前記シート状圧電体の他方の面が前記第2内部導体の側となるように、前記シート状圧電体が巻回されてなる
、圧電デバイス。
【請求項6】
前記シート状圧電体は、ポリフッ化ビニリデンを含む、
請求項5に記載の圧電デバイス。
【請求項7】
前記第1方向と前記第2方向とは、略平行である、請求項5又は請求項6に記載の圧電デバイス。
【請求項8】
前記第1外部導体と、前記第2外部導体とが物理的に接触している、請求項7に記載の圧電デバイス。
【請求項9】
前記差動信号形成部は、差動増幅回路を含む、請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の圧電デバイス。
【請求項10】
請求項1~
請求項9のいずれか1項に記載の圧電デバイスを備える、力センサー。
【請求項11】
請求項1~
請求項10のいずれか1項に記載の圧電デバイスを備える、生体情報取得デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧電デバイス、力センサー、及び生体情報取得デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、圧電性を有する材料は、導体に被覆して利用されている。
【0003】
特許文献1は、ワイヤーハーネスを開示している。特許文献1に開示のワイヤーハーネスは、ピエゾケーブルと、電気コネクタとからなる。ピエゾケーブルは、中心導体、圧電材料層、外側導体及び外被を有する。中心導体、圧電材料層、外側導体及び外被は、この順に中心から外側に向って同軸状に配置されている。圧電材料層は、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)の共重合体が用いられる。電気コネクタは、A/D変換回路を内蔵する。
【0004】
特許文献1:特開平10-132669号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示のピエゾケーブルでは、外来の電磁ノイズ等によって外側導体にノイズが重畳するおそれがあった。そのため、中心導体と外側導体との間に生じる電圧にもノイズが重畳するおそれがあった。その結果、特許文献1に開示のピエゾケーブルは、微細な振動等の外力を感度良く検出することができないおそれがあった。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑み、外力を感度良く検出することができる圧電デバイス、力センサー、及び生体情報取得デバイスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
【0008】
<1> 第1方向に向けて延在する第1内部導体と、前記第1内部導体の少なくとも一部を覆う第1圧電体と、前記第1圧電体の外周に配置された第1外部導体とを有し、外力が前記第1圧電体に作用すると、前記外力による前記第1圧電体の変位に応じて、前記第1外部導体に対して前記第1内部導体に第1電圧を発生させる第1圧電センサと、
第2方向に向けて延在する第2内部導体と、前記第2内部導体の少なくとも一部を覆う第2圧電体と、前記第2圧電体の外周に配置された第2外部導体とを有し、前記外力が前記第2圧電体に作用すると、前記外力による前記第2圧電体の変位に応じて、前記第2外部導体に対して前記第2内部導体に前記第1電圧と電圧の正負が異なる第2電圧を発生させる第2圧電センサと、
前記第1内部導体が電気的に接続された一方の差動入力端子、及び前記第2内部導体が電気的に接続された他方の差動入力端子を有し、前記一方の差動入力端子に入力された第1信号及び前記他方の差動入力端子の入力された第2信号に基づいて、差動信号を形成する差動信号形成部とを備える圧電デバイス。
<2> 前記差動信号形成部は、差動増幅回路を含む、前記<1>に記載の圧電デバイス。
<3> 前記第1方向と前記第2方向とは、略平行である、前記<1>又は<2>に記載の圧電デバイス。
<4> 前記第1外部導体と、前記第2外部導体とが物理的に接触している、前記<3>に記載の圧電デバイス。
<5> 前記第1圧電体は、圧電定数d14を有する有機圧電材料を含む長尺状有機圧電体が前記第1方向に向けて第1螺旋方向に螺旋状に巻回されてなり、
前記第2圧電体は、前記長尺状有機圧電体が前記第2方向に向けて前記第1螺旋方向とは異なる第2螺旋方向に螺旋状に巻回されてなる、前記<1>~<4>のいずれか1つに記載の圧電デバイス。
<6> 前記有機圧電材料は、光学活性を有するヘリカルキラル高分子を含む、前記<5>に記載の圧電デバイス。
<7> 前記ヘリカルキラル高分子は、ポリ乳酸を含む、前記<6>に記載の圧電デバイス。
<8> 前記有機圧電材料は、光学活性ポリペプチドからなる長繊維を含む、前記<5>に記載の圧電デバイス。
<9> 前記第1圧電体は、圧電定数d33及び圧電定数d31を有し、圧電定数d14を有しない圧電材料を含むシート状圧電体の一方の面が前記第1内部導体の側となるように、前記シート状圧電体が巻回されてなり、
前記第2圧電体は、前記シート状圧電体の他方の面が前記第2内部導体の側となるように、前記シート状圧電体が巻回されてなる、前記<1>~<4>のいずれか1つに記載の圧電デバイス。
<10> 前記シート状圧電体は、ポリフッ化ビニリデンを含む、前記<9>に記載の圧電デバイス。
<11> 第1方向に向けて延在する第1内部導体と、前記第1内部導体の少なくとも一部を覆う第1圧電体と、前記第1圧電体の外周に配置された第1外部導体とを有し、外力が前記第1圧電体に作用すると、前記外力による前記第1圧電体の変位に応じて、前記第1外部導体に対して前記第1内部導体に第1電圧を発生させる第1圧電センサと、
第2方向に向けて延在する第2内部導体と、前記第2内部導体の少なくとも一部を覆う第2圧電体と、前記第2圧電体の外周に配置された第2外部導体とを有し、前記外力が前記第2圧電体に作用すると、前記外力による前記第2圧電体の変位に応じて、前記第2外部導体に対して前記第2内部導体に前記第1電圧と電圧の正負が異なる第2電圧を発生させる第2圧電センサと、
前記第1内部導体が電気的に接続された一方の差動入力端子、前記第2内部導体が電気的に接続された他方の差動入力端子、並びに前記第1外部導体及び前記第2外部導体の各々と電気的に接続された基準端子を有する計装アンプと、を備える、圧電デバイス。
<12> 前記<1>~<11>のいずれか1つに記載の圧電デバイスを備える、力センサー。
<13> 前記<1>~<11>のいずれか1つに記載の圧電デバイスを備える、生体情報取得デバイス。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、外力を感度良く検出することができる圧電デバイス、力センサー、及び生体情報取得デバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る圧電デバイスの概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係る計装アンプのブロック回路図である。
【
図3】本実施形態に係る情報処理ユニットのハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態に係るCPUの機能構成の例を示すブロック図である。
【
図5】本実施形態に係る第1圧電センサの一態様を示す正面図である。
【
図7】本実施形態に係る第1圧電センサの他の態様を示す正面図である。
【
図8】本実施形態に係る第1圧電センサのさらの他の態様を示す正面図である。
【
図9】本実施形態に係る第1圧電センサ及び第2圧電センサの一態様の一部切欠き斜視図である。
【
図10】本実施形態に係る第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bの他の態様の一部切欠き斜視図である。
【
図11】本実施形態に係る力センサーの概念図である。
【
図12】実施例1の測定用装置及び振動発生装置の上面図である。
【
図15】
図12の方向D4から観た実施例1の測定用装置100及び振動発生装置200の側面図である。
【
図16】実施例1のFFT(Fast Fourier Transform)解析の測定結果である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示について、好ましい実施形態の一例について詳細に説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
本開示の第1態様に係る圧電デバイスは、第1圧電センサと、第2圧電センサと、差動信号形成部とを備える。
第1圧電センサは、第1方向に向けて延在する第1内部導体と、前記第1内部導体の少なくとも一部を覆う第1圧電体と、前記第1圧電体の外周に配置された第1外部導体とを有する。外力が前記第1圧電体に作用すると、前記外力による前記第1圧電体の変位に応じて、前記第1外部導体に対して前記第1内部導体に第1電圧を発生させる。
第2圧電センサは、第2方向に向けて延在する第2内部導体と、前記第2内部導体の少なくとも一部を覆う第2圧電体と、前記第2圧電体の外周に配置された第2外部導体とを有する。前記外力が前記第2圧電体に作用すると、前記外力による前記第2圧電体の変位に応じて、前記第2外部導体に対して前記第2内部導体に前記第1電圧と電圧の正負が異なる第2電圧を発生させる。
差動信号形成部は、前記第1内部導体が電気的に接続された一方の差動入力端子、及び前記第2内部導体が電気的に接続された他方の差動入力端子を有する。差動信号形成部は、前記一方の差動入力端子に入力された第1信号及び前記他方の差動入力端子の入力された第2信号に基づいて、差動信号を形成する。
【0013】
第1態様において、第1信号、第2信号及び差動信号の各々の種類は、同一であり、例えば、電圧、電流、又は電荷量であってもよい。
【0014】
第1電圧及び第2電圧の各々は、外来の電磁ノイズ等によって同相モードのノイズを含みやすい。同相モードのノイズは、第1態様に係る圧電デバイスが検出する外力の感度を低くする要因となり得る。
差動信号形成部は、第1信号と第2信号を差動して得られる差動信号を形成する。つまり、差動信号では、第1信号及び第2信号の同相モードのノイズが低減される。その結果、第1態様に係る圧電デバイスは、差動信号に基づいて外力を感度良く検出することができる。
【0015】
第1態様において、第1圧電センサとしては、後述する第1圧電センサ10Aとして例示されたものと同様のものが挙げられる。第2圧電センサとしては、後述する第2圧電センサ10Bとして例示されたものと同様のものが挙げられる。
以下、第1態様における第1圧電センサの構成部材、及び第2圧電センサの構成部材等の詳細な説明は省略する。
【0016】
差動信号形成部は、第1信号及び第2信号に基づいて差動信号を形成する。差動信号は、差動回路(ハードウェア)及びデジタル演算処理のソフトウェアの少なくとも1つによって形成されてもよい。差動信号形成部は、公知の構成である。
【0017】
差動信号が差動回路によって形成される場合、差動信号形成部としては、一対の差動入力端子に加えて、例えば、オペアンプを有してもよい。具体的に、差動信号形成部としては、オペアンプを用いた差動増幅回路、複数のオペアンプ及びバッファーアンプを用いた差動増幅回路、計装アンプ等が挙げられる。
【0018】
差動信号がデジタル演算処理のソフトウェアによって形成される場合、差動信号形成部は、一対の差動入力端子に加えて、例えば、デジタルアナログ(AD)変換器、及び情報処理装置を有する。情報処理装置は、AD変換器の後段に配置される。
AD変換器は、入力された第1信号及び第2信号の各々をデジタル信号に変換し、情報処理装置に出力する。情報処理装置は、入力された一対のデジタル信号にデジタル演算処理を施して、差動信号を形成する。
情報処理装置は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行する。情報処理装置は、記憶部と、制御部とを備える。
記憶部は、各種のデータを記憶する。記憶部は、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)のような主記憶部、及び補助記憶部を含む。主記憶部は、半導体メモリーを含む。補助記憶部は、SSD(Solid State Drive)を含む。記憶部は、制御部によって実行される種々のプログラムを記憶する。プログラムは、一対のデジタル信号にデジタル演算処理を施すためのプログラム、ファームウェア、及び制御プログラムを含む。
制御部は、CPU(Central Processing Unit)のようなプロセッサーを含むハードウェア回路である。制御部は、記憶部に格納されたプログラムを実行することにより、デジタル演算処理等を実行する。
【0019】
第1態様では、差動信号形成部は、差動増幅回路を含むことが好ましい。この場合、第1信号及び第2信号の各々は、アナログ信号である。これにより、差動増幅回路は、第1圧電センサ及び第2圧電センサの各々からの出力を、アナログ信号として、増幅し、かつ差動信号を形成することができる。そのため、外来ノイズは、回路ノイズ等の影響を受けにくい。その結果、差動増幅回路は、第1圧電センサ及び第2圧電センサの各々が検知した信号をより正確に信号処理することができる。
【0020】
第1態様では、前記第1方向と前記第2方向とは、略平行であることが好ましい。換言すると、第1圧電センサと第2圧電センサとは略平行に配置されることが好ましい。
本開示において、「略平行」とは、第1圧電センサと第2圧電センサとが一見して平行にみなせる関係である。具体的に、略平行とは、第1圧電センサと第2圧電センサとのなす角度が10度未満である。
これにより、圧電デバイスに外力が作用した際に、第1圧電体及び第2圧電体の各々に、略同一の外力が、第1圧電センサと第2圧電センサとが略平行に配置されていない場合よりも作用しやすくなる。その結果、第1態様に係る圧電デバイスは、より感度良く外力を検出することができる。
【0021】
第1態様では、前記第1外部導体と、前記第2外部導体とが物理的に接触していることが好ましい。
これにより、圧電デバイスに外力が作用した際に、第1圧電体及び第2圧電体の各々に、略同一の外力が、第1外部導体と、第2外部導体とが物理的に接触していない場合よりも作用しやすくなる。第1外部導体と、第2外部導体とは、短絡する。その結果、第1態様に係る圧電デバイスは、外力を更に感度良く検出することができる。
【0022】
第1態様では、前記第1圧電体は、圧電定数d14を有する有機圧電材料を含む長尺状有機圧電体が前記第1方向に向けて第1螺旋方向に螺旋状に巻回されてなり、前記第2圧電体は、前記長尺状有機圧電体が前記第2方向に向けて前記第1螺旋方向とは異なる第2螺旋方向に螺旋状に巻回されてなることが好ましい。
これにより、第1圧電センサの第1圧電体及び第2圧電センサの第2圧電体の各々の材料として、圧電性等に優れる光学活性高分子(A)を用いることができる。
圧電性(ピエゾ)とは、応力を加えると電荷を生じる性質を示す。
光学活性高分子(A)の詳細については、後述する。
【0023】
第1態様では、前記有機圧電材料は、光学活性を有するヘリカルキラル高分子を含むことが好ましい。
これにより、有機圧電材料の加工性及び入手容易性等はより優れるとともに、第1圧電センサ及び第2圧電センサの各々の圧電性はより優れる。
【0024】
第1態様では、前記ヘリカルキラル高分子は、ポリ乳酸を含むことが好ましい。
これにより、有機圧電材料の加工性及び入手容易性等はさらに優れるとともに、第1圧電センサ及び第2圧電センサの各々の圧電性はさらに優れる。
【0025】
第1態様では、有機圧電材料は、光学活性ポリペプチドからなる長繊維を含むことが好ましい。
これにより、第1圧電センサ及び第2圧電センサの各々の圧電性は特に優れる。
【0026】
第1態様では、前記第1圧電体は、圧電定数d33及び圧電定数d31を有し、圧電定数d14を有しない圧電材料を含むシート状圧電体の一方の面が前記第1内部導体の側となるように、前記シート状圧電体が巻回されてなり、前記第2圧電体は、前記シート状圧電体の他方の面が前記第2内部導体の側となるように、前記シート状圧電体が巻回されてなることが好ましい。
これにより、第1圧電センサの第1圧電体及び第2圧電センサの第2圧電体の各々の材料として、圧電性等に優れる、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のような有機圧電材料及びチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のような無機圧電材料を用いることができる。
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)のような有機圧電材料及びチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のような無機圧電材料の詳細については、後述する。
【0027】
第1態様では、前記シート状圧電体は、ポリフッ化ビニリデンを含むことが好ましい。これにより、シート状圧電体は、軽量で柔軟性に富み、加工性等に優れる。
【0028】
本開示の第2態様に係る圧電デバイスは、第1圧電センサと、第2圧電センサと、計装アンプと、を備えてもよい。
第1圧電センサは、第1方向に向けて延在する第1内部導体と、前記第1内部導体の少なくとも一部を覆う第1圧電体と、前記第1圧電体の外周に配置された第1外部導体とを有する。外力が前記第1圧電体に作用すると、前記外力による前記第1圧電体の変位に応じて、前記第1外部導体に対して前記第1内部導体に第1電圧を発生させる。
第2圧電センサは、第2方向に向けて延在する第2内部導体と、前記第2内部導体の少なくとも一部を覆う第2圧電体と、前記第2圧電体の外周に配置された第2外部導体とを有する。前記外力が前記第2圧電体に作用すると、前記外力による前記第2圧電体の変位に応じて、前記第2外部導体に対して前記第2内部導体に前記第1電圧と電圧の正負が異なる第2電圧を発生させる。
計装アンプは、前記第1内部導体が電気的に接続された一方の差動入力端子、前記第2内部導体が電気的に接続された他方の差動入力端子、並びに前記第1外部導体及び前記第2外部導体の各々と電気的に接続された基準端子を有する。
【0029】
第1電圧及び第2電圧の各々は、外来の電磁ノイズ等によって同相モード電圧を含みやすい。同相モード電圧は、第2態様に係る圧電デバイスが検出する外力の感度を低くする要因となり得る。計装アンプは、基準端子の電圧を基準として、第1電圧と第2電圧を差動増幅して得られる差動電圧を出力する。つまり、計装アンプから出力される差動電圧は、第1電圧及び第2電圧の同相モード電圧が低減され、かつ増幅される。換言すると、差動電圧は、SN比に優れる。その結果、第2態様に係る圧電デバイスは、差動電圧に基づいて外力を感度良く検出することができる。
【0030】
第2態様に係る圧電デバイスの詳細については、
図1~
図10を参照して後述する。
【0031】
本開示の力センサーは、第1態様に係る圧電デバイス、又は第2態様に係る圧電デバイスを備える。
本開示の力センサーの一例について、
図1~
図11を参照して後述する。
【0032】
本開示の生体情報取得デバイスは、第1態様に係る圧電デバイス、又は第2態様に係る圧電デバイスを備える。
本開示の生体情報取得デバイスの一例について、
図1~
図10を参照して後述する。
【0033】
以下、図面を参照して、計装アンプを用いた本開示の実施形態に係る圧電デバイス、力センサー、及び生体情報取得デバイスの実施形態について説明する。また、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0034】
〔圧電デバイス〕
図1を参照して、本開示の実施形態に係る圧電デバイス1について説明する。
図1は、本開示の実施形態に係る圧電デバイス1の概略構成図である。
【0035】
圧電デバイス1は、
図1に示すように、第1圧電センサ10Aと、第2圧電センサ10Bと、第1同軸ケーブル20Aと、第2同軸ケーブル20Bと、計装アンプ30と、情報処理ユニット40とを備える。第1圧電センサ10Aは、第1同軸ケーブル20Aを介して、計装アンプ30と電気的に接続されている。第2圧電センサ10Bは、第2同軸ケーブル20Bを介して、計装アンプ30と電気的に接続されている。計装アンプ30は、情報処理ユニット40と電気的に接続されている。
【0036】
第1圧電センサ10Aは、第1内部導体11Aと、第1圧電体12Aと、第1外部導体13Aとを有する。第1圧電体12Aは、第1内部導体11Aと第1外部導体13Aとの間に位置する。第1内部導体11Aと第1外部導体13Aとは物理的に接触していない。第1圧電センサ10Aの構成の詳細については、
図5~
図8を参照して後述する。
【0037】
第1圧電センサ10Aは、外力が第1圧電体12Aに作用すると、外力による第1圧電体12Aの変位によって、第1内部導体11Aと第1外部導体13Aとの間に、第1電圧を発生させる。第1電圧は、第1外部導体13Aに対する第1内部導体11Aの電位差を示す。
【0038】
外力は、引張、加圧及び屈曲を含む。第1圧電体12Aの変位は、外力に応じた第1圧電体12Aの復帰可能な変形(以下、「非塑性変形」という。)を含む。第1圧電体12Aの非塑性変形は、第1圧電体12Aの部分的又は全体的な伸長、及び圧縮を含む。
【0039】
第2圧電センサ10Bは、第2内部導体11Bと、第2圧電体12Bと、第2外部導体13Bとを有する。第2圧電体12Bは、第2内部導体11Bと第2外部導体13Bとの間に位置する。第2内部導体11Bと第2外部導体13Bとは物理的に接触していない。第2圧電センサ10Bの構成の詳細については、後述する。
【0040】
第2圧電センサ10Bは、外力が第2圧電体12Bに作用すると、外力による第2圧電体12Bの変位によって、第2内部導体11Bと第2外部導体13Bとの間に、第2電圧を発生させる。第2電圧は、第2外部導体13Bに対する第2内部導体11Bの電位差を示す。第2電圧と、第1電圧とは電圧の正負が異なる。
【0041】
第2圧電体12Bの変位は、外力に応じた第2圧電体12Bの非塑性変形を含む。第2圧電体12Bの非塑性変形は、第2圧電体12Bの部分的又は全体的な伸長、及び圧縮を含む。
【0042】
本実施形態では、第1内部導体11A及び第2内部導体11Bの各々は、方向D1に向けて延在している。つまり、第1内部導体11Aと、第2内部導体11Bとは略平行である。換言すると、第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bは、略平行に配置されている。第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bは、物理的に接触していることが好ましい。方向D1は、第1方向及び第2方向の一例である。
【0043】
略平行とは、第1圧電センサ10Aと第2圧電センサ10Bとが一見して平行にみなせる関係である。具体的に、略平行とは、第1圧電センサ10Aと第2圧電センサ10Bとのなす角度が10度未満である。
【0044】
計装アンプ30は、入力される第1電圧及び第2電圧の電位差を増幅し、得られる差動電圧をシングル出力する。計装アンプ30は、第1差動入力端子V
IN
-と、第2差動入力端子V
IN
+と、基準端子V
refと、出力端子V
outとを有する。計装アンプ30の構成の詳細については、
図2を参照して後述する。第1差動入力端子V
IN
-は、一方の差動入力端子の一例である。第2差動入力端子V
IN
+は、他方の差動入力端子の一例である。
【0045】
第1同軸ケーブル20Aは、第1導線21Aと、第1絶縁層22Aと、第1導体層23Aとを有する。第1導線21Aは、第1圧電センサ10Aの第1内部導体11Aと計装アンプ30の第1差動入力端子VIN
-とを電気的に接続する。第1絶縁層22Aは、第1導線21Aを覆う。つまり、第1導線21Aと第1導体層23Aとは物理的に接触していない。第1導体層23Aは、第1圧電センサ10Aの第1外部導体13Aと、計装アンプ30の基準端子Vrefとを電気的に接続する。第1導体層23Aは、第1絶縁層22Aを覆う。
【0046】
第1導線21Aの材質としては、銅等が挙げられる。第1絶縁層22Aの材料は、電気的絶縁性を有する材料であればよく、例えば、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、アモルファスポリオレフィン樹脂、ポリエチレンナフタレート等が挙げられる。第1導体層23Aの材質は、例えば、銅、アルミニウム等が挙げられる。第1導体層23Aは、編組線であってもよい。第1導体層23Aは、保護被膜で覆われていてもよい。保護被膜の材質としては、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド等が挙げられる。
【0047】
第2同軸ケーブル20Bは、第2導線21Bと、第2絶縁層22Bと、第2導体層23Bとを有する。第2導線21Bは、第2圧電センサ10Bの第2内部導体11Bと計装アンプ30の第2差動入力端子VIN
+とを電気的に接続する。第2絶縁層22Bは、第2導線21Bを覆う。つまり、第2導線21Bと第2導体層23Bとは物理的に接続していない。第2導体層23Bは、第2圧電センサ10Bの第2外部導体13Bと、計装アンプ30の基準端子Vrefとを電気的に接続する。第2導体層23Bは、第2絶縁層22Bを覆う。
【0048】
第2導線21Bの材質としては、第1導線21Bの材質として例示した材質と同一の材質が挙げられる。第2絶縁層22Bの材料としては、第1絶縁層22Aの材質として例示した材質と同一の材質が挙げられる。第2導体層23Bの材質は、第1導体層23Aの材質として例示した材質と同一の材質が挙げられる。第2導体層23Bは、保護被膜で覆われていてもよい。第2同軸ケーブル20Bの構成は、第1同軸ケーブル20Aと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0049】
情報処理ユニット40は、計装アンプ30から出力された差動電圧をデジタル信号に変換し、データ処理を行う。データ処理は、差動電圧の表示、外力の検知、差動電圧の記録等を含む。情報処理ユニット40の詳細については、
図3及び
図4を参照して後述する。
【0050】
本実施形態では、第1内部導体11Aと、第2内部導体11Bとは略平行であるが、本開示はこれに限定されず、第1内部導体11Aと、第2内部導体11Bとは略平行でなくてもよい。本実施形態では、圧電デバイス1は、第1同軸ケーブル20A及び第2同軸ケーブル20Bを備えるが、本開示はこれに限定されず、圧電デバイス1は、第1同軸ケーブル20A及び第2同軸ケーブル20Bを備えていなくてもよい。本実施形態では、圧電デバイス1は、情報処理ユニット40を備えるが、本開示はこれに限定されず、圧電デバイス1は、情報処理ユニット40を備えていなくてもよい。
【0051】
(計装アンプ)
次に
図2を参照して、計装アンプ30について更に説明する。
図2は、本実施形態に係る計装アンプ30のブロック回路図である。
【0052】
計装アンプ30は、
図2に示すように、第1アンプ31、第2アンプ32、第3アンプ33、及び抵抗器R
1~R
7を有する。第1アンプ31及び第2アンプ32は、一対の入力段を構成する。第3アンプ33は、第1アンプ31及び第2アンプ32の各々から出力される電圧の差を増幅する。
【0053】
第1アンプ31は、第1非反転差動入力端子I1と、第1反転差動入力端子I2と、第1出力端子O1とを有する。第1非反転差動入力端子I1は、計装アンプ30の第1差動入力端子VIN
-に接続されている。そのため、第1非反転差動入力端子I1には、第1圧電センサ10Aの第1内部導体11Aが電気的に接続されている。そのため、第1非反転差動入力端子I1には、第1電圧が入力される。
【0054】
第2アンプ32は、第2非反転差動入力端子I3と、第2反転差動入力端子I4と、第2出力端子O2とを有する。第2非反転差動入力端子I3は、計装アンプ30の第2差動入力端子VIN
+に接続されている。そのため、第2非反転差動入力端子I3には、第2圧電センサ10Bの第2内部導体11Bが電気的に接続されている。そのため、第2非反転差動入力端子I3には、第2電圧が入力される。
【0055】
第1アンプ31の出力端子O1と、第2アンプ32の出力端子O2とは、抵抗器R2、R1、R3の各々を介して接続されている。第1アンプ31の反転差動入力端子I2は、抵抗器R2と抵抗器R1との間に接続されている。第2アンプ32の反転差動入力端子I4は、抵抗器R1と抵抗器R3との間に接続されている。
【0056】
第3アンプ33は、非反転差動入力端子I5と、反転差動入力端子I6と、出力端子O3とを有する。非反転差動入力端子I5は、抵抗器R4を介して第1アンプ31の出力端子O1に接続され、かつ、抵抗器R6を介して出力端子O3に接続されている。反転差動入力端子I6は、抵抗器R5を介して第2アンプ32の出力端子O2に接続され、かつ、抵抗器R7を介して計装アンプ30の基準端子Vrefに接続されている。つまり、基準端子Vrefは、第1圧電センサ10Aの第1外部導体13A及び第2圧電センサ10Bの第2外部導体13Bの各々と電気的に接続され、かつ接地されている。基準端子Vrefの電圧は、好ましくは0Vである。出力端子O3は、計装アンプ30の出力端子VOUTに接続されている。
【0057】
図2において、第1差動入力端子V
IN
-、第2差動入力端子V
IN
+、及び出力端子V
OUTの各々の電圧は、基準端子V
refの電圧を基準とする。
【0058】
このようにして、計装アンプ30では、第1アンプ31及び第2アンプ32は、第1電圧と第2電圧との電圧差をとる。次いで、第3アンプ33は、第1電圧と第2電圧との電圧差を増幅して、得られる差動電圧を出力する。
【0059】
(情報処理ユニット)
次に、
図3を参照して、情報処理ユニット40について説明する。
図3は、本実施形態に係る情報処理ユニット40のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4は、本実施形態に係るCPU421の機能構成の例を示すブロック図である。
【0060】
情報処理ユニット40は、
図3に示すように、AD変換器41と、PC42と、モニタ43と、スピーカー44とを有する。AD変換器41、モニタ43、及びスピーカー44の各々は、PC42と電気的に接続されている。AD変換器41は、アナログ信号である差動電圧をデジタル信号に変換する。PC42は、AD変換器41によって変換されたデジタル信号を検出する。
【0061】
PC42は、CPU(Central Processing Unit)421、ROM(Read Only Memory)422、RAM(Random Access Memory)423、ストレージ424、通信I/F(Inter Face)425、及び入出力I/F426を有する。CPU421、ROM422、RAM423、ストレージ424、通信I/F425、及び入出力I/F426の各々は、バス427を介して相互に通信可能に接続されている。
【0062】
CPU421は、中央演算処理ユニットである。CPU421は、各種プログラムを実行する。CPU421は、各部を制御する。すなわち、CPU421は、ROM422又はストレージ424からプログラムを読み出し、RAM423を作業領域としてプログラムを実行する。本実施形態では、ストレージ424に各種処理を実行するための実行プログラムが記憶されている。CPU421は、実行プログラムを実行することで、
図4に示す検出部4211、判定部4212、及び報知部4213として機能する。
【0063】
ROM422は、各種プログラム及び各種データを記憶している。RAM422は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。記憶部としてのストレージ424は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを記憶している。
【0064】
通信I/F425は、スマートフォン等の携帯端末と通信するためのインタフェースである。通信I/F425は、例えば、イーサネット(登録商標)、FDDI(Fiber-distributed data interface)、Wi-Fi(登録商標)等の規格が用いられる。
【0065】
入出力I/F426は、情報処理ユニット40を構成する各装置と通信するためのインタフェースである。本実施形態のPC42には、入出力I/F426を介してAD変換器41、モニタ43及びスピーカー44が接続されている。
【0066】
図4に示すように、CPU421は、検出部4211、判定部4212、及び報知部4213を有している。各機能構成は、CPU421がストレージ424に記憶された実行プログラムを読み出し、これを実行することによって実現される。
【0067】
検出部4211は、通信I/F425を介してAD変換器41から出力されたデジタル信号を検出する機能を有する。検出部4211は、検出されたデジタル信号を数値化する。これにより、ユーザーは、どの程度の外力が第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bに作用したかを知ることができる。
【0068】
判定部4212は、所定値と、数値化されたデジタル信号とを比較することで、第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bに所定の外力が作用したか否かを判定する機能を有する。所定値は、ROM422は記憶されている。例えば、判定部4212は、数値化されたデジタル信号が所定値以上であるか否かを判定する。判定部4212は、数値化されたデジタル信号が所定値以上であると判定した場合、第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bに所定の外力が作用したと判定する。判定部4212は、数値化されたデジタル信号が所定値以上ではないと判定した場合、第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bに所定の外力が作用していないと判定する。
【0069】
報知部4213は、検出されたデジタル信号を報知する機能を有する。例えば、報知部57は、通信I/F425を介してモニタ43に判定結果に係る文字情報を出力する。報知部4213は、スピーカー44に判定結果に係る音声情報を出力する。
【0070】
(圧電デバイスの作用)
図1~
図4を参照して説明したように、本実施形態に係る圧電デバイス1は、第1圧電センサ10Aと、第2圧電センサ10Bと、計装アンプ30とを備える。第1圧電センサ10Aは、第1内部導体11Aと、第1圧電体12Aと、第1外部導体13Aとを有する。第1圧電センサ10Aは、外力が第1圧電体12Aに作用すると、第1電圧を発生させる。第2圧電センサ10Bは、第2内部導体11Bと、第2圧電体12Bと、第2外部導体13Bとを有する。第2圧電センサ10Bは、外力が第2圧電体12Bに作用すると、第1電圧と電圧の正負が異なる第2電圧を発生させる。計装アンプ30は、一対の差動入力端子V
IN
-,V
IN
+と、基準端子V
REFとを有する。一方の差動入力端子V
IN
-には、第1内部導体11Aが電気的に接続されている。他方の差動入力端子V
IN
+には、第2内部導体11Bが電気的に接続されている。基準端子V
REFには、第1外部導体13A及び第2外部導体13Bの各々と電気的に接続されている。
第1電圧及び第2電圧の各々は、外来の電磁ノイズ等によって同相モード電圧を含みやすい。同相モード電圧は、圧電デバイス1が検出する外力の感度を低くする要因となり得る。計装アンプ30は、基準端子V
REFの電圧を基準として、第1電圧と第2電圧を差動増幅して得られる差動電圧を出力する。つまり、計装アンプ30から出力される差動電圧は、第1電圧及び第2電圧の同相モード電圧が低減され、かつ増幅される。換言すると、差動電圧は、SN比に優れる。その結果、圧電デバイス1は、差動電圧に基づいて外力を感度良く検出することができる。
【0071】
図1~
図4を参照して説明したように、本実施形態では、第1内部導体11Aは方向D1に向けて延在し、第2内部導体11Bは方向D1に向けて延在している。そのため、第1内部導体11Aと、第2内部導体11Bとは略平行である。
換言すると、第1圧電センサ10Aと第2圧電センサ10Bとは略平行に配置される。これにより、圧電デバイス1に外力が作用した際に、第1圧電体12A及び第2圧電体12Bの各々に、略同一の外力が、第1圧電センサ10Aと第2圧電センサ10Bとが略平行に配置されていない場合よりも作用しやすくなる。その結果、圧電デバイス1は、感度良く外力を検出することができる。
【0072】
図1~
図4を参照して説明したように、本実施形態では、第1外部導体13Aと、第2外部導体13Bとは物理的に接触していることが好ましい。
これにより、圧電デバイス1に外力が作用した際に、第1圧電体12A及び第2圧電体12Bの各々に、略同一の外力が、第1外部導体13Aと、第2外部導体13Bとが物理的に接触していない場合よりも作用しやすくなる。第1外部導体13Aと、第2外部導体13Bとは、短絡する。その結果、圧電デバイス1は、外力に更に感度良く検出することができる。
【0073】
(第1圧電センサ)
次に、
図1、及び
図5~
図8を参照して、第1圧電センサ10Aの詳細について説明する。
図5は、本実施形態に係る第1圧電センサ10Aの一態様を示す正面図である。
図6は、
図5のVI-VI線断面図である。
図7は、本実施形態に係る第1圧電センサ10Aの他の態様を示す正面図である。
図8は、本実施形態に係る第1圧電センサ10Aのさらの他の態様を示す正面図である。
図5、
図7及び
図8中、第1外部導体13Aは省略されている。
【0074】
第1圧電センサ10Aは、
図1に示すように、第1内部導体11Aと、第1圧電体12Aと、第1外部導体13Aとを有する。第1内部導体11Aは、方向D1に向けて延在している。第1圧電体12Aは、第1内部導体11Aの少なくとも一部を覆う。第1外部導体13Aは、第1圧電体12Aの外周に配置されている。
【0075】
第1圧電センサ10Aは、線状物である。第1圧電センサ10Aの方向D1に直交する面における断面形状は、圧電デバイス1の用途等に応じて適宜調整され、例えば、円形状、楕円形状、矩形状、繭形状、4つ葉形状、星形状、異形状等が挙げられる。第1圧電センサ10Aの断面形状が円形状である場合、第1圧電センサ10Aの直径は、好ましくは0.1mm以上10mm以下である。第1圧電センサ10Aの方向D1における長さは、圧電デバイス1の用途等に応じて適宜調整され、例えば、1mm以上100mm以下である。
【0076】
<第1内部導体>
第1内部導体11Aは、第1圧電センサ10Aから効率的に電気的信号を検出するための導体である。
第1内部導体11Aとしては、電気的な良導体であることが好ましく、例えば、銅線、アルミ線、SUS(Steel Use Stainless)線、絶縁皮膜被覆された金属線、カーボンファイバー、カーボンファイバーと一体化した樹脂繊維、錦糸線、有機導電材料等が挙げられる。錦糸線は、繊維に銅箔がスパイラルに巻回されてなる。繊維の外径は、第1圧電センサ10Aの所望の特性に応じて適宜調整され、0.1mm以上10mm以下が好ましい。中でも、第1内部導体11Aは、圧電感度、及び圧電出力の安定性を向上し、高い屈曲性を付与する観点から、錦糸線、又はカーボンファイバーであることが好ましく、電気的抵抗が低い観点から、錦糸線であることがより好ましい。
【0077】
<第1外部導体>
第1外部導体13Aは、第1圧電センサ10Aから電気的信号を検出するために、第1内部導体11Aの対となる導体である。
第1外部導体13Aは、第1圧電体12Aの外周に配置されていればよく、第1圧電体12Aの少なくとも一部を覆っていてもよい。詳しくは、第1外部導体13Aは、第1圧電体12Aの外周面の一部を覆っていてもよいし、第1圧電体12Aの外周面の全面を覆っていてもよい。
第1外部導体13Aは、例えば、長尺状導体を巻回してなる。
長尺状導体の断面形状は、例えば、円形状、楕円形状、矩形状、異形状等が挙げられる。中でも、第1圧電体12Aに平面で密着し、第1電圧を効率的に発生させる観点から、長尺状導体の断面形状は、矩形状が好ましい。
長尺状導体の材料は特に限定されず、断面形状によって、主に以下のものが挙げられる。
矩形断面を有する長尺状導体としては、円形断面の銅線を圧延して平板状に加工した銅箔リボン、アルミニウム箔リボン等が挙げられる。
円形断面を有する長尺状導体としては、銅線、アルミニウム線、SUS線、絶縁皮膜被覆された金属線、カーボンファイバー、カーボンファイバーと一体化した樹脂繊維、繊維に銅箔がスパイラルに巻回された錦糸線等が挙げられる。
長尺状導体として、有機導電材料を絶縁材料でコーティングしたものを用いてもよい。
長尺状導体の巻回方法は、例えば、第1圧電体12Aに対して銅箔などを螺旋状に巻回する方法、銅線などを筒状の組紐にして、第1圧電体12Aを包みこむ方法、第1圧電体12Aを円筒状に包接する方法等が挙げられる。
【0078】
<第1圧電体>
第1圧電体12Aでは、外力が作用すると、第1内部導体11Aと第1外部導体13Aとの間に、第1電圧が発生する。
第1圧電体12Aは、第1内部導体11Aの少なくとも一部を覆っていればよく、第1内部導体11Aの外周面の一部を覆っていてもよいし、第1内部導体11Aの外周面の全面を覆っていてもよい。
【0079】
第1圧電体12Aの構成は、例えば、下記の第1構成A、第2構成A、第3構成A、又は第4構成Aであってもよい。
第1構成Aでは、第1圧電体12Aは、
図5に示すように、第1長尺状有機圧電体121を巻回してなる。第1長尺状有機圧電体121については、後述する。
第2構成Aでは、第1圧電体12Aは、
図7に示すように、第1長尺状有機圧電体121及び第2長尺状有機圧電体122を巻回してなる。第2長尺状有機圧電体122については、後述する。
第3構成Aでは、第1圧電体12Aは、
図8に示すように、組紐構造を巻回してなる。組紐構造は、第1長尺状有機圧電体121と第2長尺状有機圧電体122とを交互に交差させてなる。
第4構成Aでは、シート状圧電体を巻回してなる。シート状圧電体については、後述する。
【0080】
以下、第1長尺状有機圧電体121、第1構成A、第2長尺状有機圧電体122、第2構成A、第3構成A、シート状圧電体、及び第4構成Aについて、この順で説明する。
【0081】
(第1長尺状有機圧電体)
第1長尺状有機圧電体121は、有機圧電材料からなり、圧電定数d14を有する。
【0082】
「第1長尺状有機圧電体121が圧電定数d14を有する」に該当するか否かは、下記の第1判定方法によって判定する。
第1判定方法では、後述する実施例1に準拠して作製した第1圧電センサ10A及び第1圧電センサ10Bと、電圧計とを用いる。
【0083】
詳しくは、第1判定方法では、後述する実施例1に準拠して、第1圧電センサ10A及び第1圧電センサ10Bを作製する。
第1圧電センサ10Aの第1内部導体11Aの後側(
図12参照)の端部と、第1圧電センサ10Aの第1外部導体13Aの後側(
図12参照)の端部とを電圧計に電気的に接続する。次いで、第1圧電センサ10Aに所定の外力を加えて、判定用電圧を検出する。
同様に、第2圧電センサ10Bの第1内部導体11Aの後側(
図12参照)の端部と、第2圧電センサ10Bの第1外部導体13Aの後側(
図12参照)の端部とを電圧計に電気的に接続する。次いで、第1圧電センサ10Aに加えた外力と同じ外力を第2圧電センサ10Bに加えて、判定用電圧を検出する。
【0084】
第1判定方法では、下記の条件(Y1)を満たす場合、「第1長尺状有機圧電体121が圧電定数d14を有する」に該当すると判断する。一方、下記の条件(Y1)を満たさない場合、「第1長尺状有機圧電体121が圧電定数d14を有する」に該当しないと判断する。
(Y1)第1圧電センサ10Aの判定用電圧の極性と、第2圧電センサ10Bの判定用電圧の極性とが反対であること
【0085】
第1長尺状有機圧電体121は、長尺状物である。
第1長尺状有機圧電体121の形状としては、例えば、リボン形状、繊維形状等が挙げられる。リボン形状は、平たく細長い形状である。繊維の構造は、モノフィラメント又はマルチフィラメントであってもよい。
【0086】
第1長尺状有機圧電体121がリボン形状である場合、第1長尺状有機圧電体121の幅は、好ましくは0.1mm以上30mm以下である。幅が0.1mm以上であることにより、第1長尺状有機圧電体121の強度が確保される。更に、第1長尺状有機圧電体121の製造適性(例えば、後述するスリット工程における製造適性)にも優れる。幅が30mm以下であることにより、第1長尺状有機圧電体121の非塑性変形の自由度(柔軟性)が向上する。
第1長尺状有機圧電体121がリボン形状である場合、第1長尺状有機圧電体121の厚さは、好ましくは0.001mm以上0.2mm以下である。厚さが0.001mm以上であることにより、第1長尺状有機圧電体121の強度が確保される。更に、第1長尺状有機圧電体121の製造適性にも優れる。厚さが0.2mm以下であることにより、第1長尺状有機圧電体121の厚さ方向の非塑性変形の自由度(柔軟性)が向上する。
第1長尺状有機圧電体121がリボン形状である場合、第1長尺状有機圧電体121の厚さに対する第1長尺状有機圧電体121の幅の比(以下、「比〔幅/厚さ〕」という。)は2以上であることが好ましい。比〔幅/厚さ〕が2以上であることにより、第1長尺状有機圧電体121の主面が明確となる。そのため、第1長尺状有機圧電体121は、第1長尺状有機圧電体121の長さ方向に渡って向きを揃えて第1外部導体13Aに巻回され易い。このため、第1圧電センサ10Aは、圧電感度に優れ、圧電感度の安定性にも優れる。
【0087】
第1長尺状有機圧電体121が繊維形状である場合、第1長尺状有機圧電体121の断面形状としては、例えば、円形状、楕円形状、矩形状、繭形状、4つ葉形状、星形状、異形状等が挙げられる。第1長尺状有機圧電体121の断面の長軸径は、第1長尺状有機圧電体121の断面の長軸径は、好ましくは0.0001mm~10mm、より好ましくは0.001mm~5mm、更に好ましくは0.002mm~1mmである。
「断面の長軸径」は、第1長尺状有機圧電体121の断面形状が円形状である場合、「直径」に相当し、第1長尺状有機圧電体121の断面形状が円形状でない場合、断面の幅の中で、最も長い幅とする。
繊維形状がマルチフィラメントからなる場合、「断面の長軸径」とは、マルチフィラメントの断面の長軸径とする。
【0088】
有機圧電材料は、第1長尺状有機圧電体121が圧電定数d14を有するようにする材料であればよく、例えば、光学活性高分子(A)等が挙げられる。
光学活性高分子(A)としては、例えば、光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A1)(以下、「ヘリカルキラル高分子(A1)」という場合がある。)、光学活性を有するポリペプチド(A2)(以下、「光学活性ポリペプチド(A2)」という場合がある。)等が挙げられる。
【0089】
「光学活性を有するヘリカルキラル高分子(A1)」とは、分子構造が螺旋構造であり分子光学活性を有する高分子を指す。ヘリカルキラル高分子(A1)としては、例えば、ポリ乳酸系高分子、合成ポリペプチド、セルロース誘導体、ポリプロピレンオキシド、ポリ(β―ヒドロキシ酪酸)等が挙げられる。
ポリ乳酸系高分子は、L-乳酸のホモポリマー(以下、「PLLA」という。)、D-乳酸のホモポリマー(以下、「PDLA」という。)等が挙げられる。PLLAの分子構造は、左巻き螺旋構造からなる。PDLAの分子構造は、右巻き螺旋構造からなる。
合成ポリペプチドとしては、例えば、ポリ(グルタル酸γ-ベンジル)、ポリ(グルタル酸γ-メチル)等が挙げられる。
セルロース誘導体としては、例えば、酢酸セルロース、シアノエチルセルロース等が挙げられる。
ポリ乳酸系高分子、及びヘリカルキラル高分子(A1)の各々の詳細については、後述する。
【0090】
「光学活性ポリペプチド(A2)」とは、不斉炭素原子を有し、かつ、光学異性体の存在量に偏りがあるポリペプチドを指す。光学活性ポリペプチド(A2)は、圧電性及び強度の観点から、βシート構造を有することが好ましい。光学活性ポリペプチド(A2)としては、光学活性を有する動物性タンパク質等が挙げられる。動物性タンパク質としては、フィブロイン、クモ糸タンパク質等が挙げられる。動物性タンパク質からなる繊維は、シルク、クモ糸等が挙げられる。
動物性タンパク質の詳細については、後述する。
【0091】
なかでも、有機圧電材料は、良好な圧電性、加工性、入手容易性等の観点から、光学活性高分子(A)、特にヘリカルキラル高分子(A1)又は光学活性ポリペプチド(A2)を含むことが好ましい。ヘリカルキラル高分子(A1)は、ポリ乳酸系高分子を含むことが好ましい。光学活性ポリペプチド(A2)は、動物性タンパク質を含むことが好ましい。
ポリ乳酸系高分子及び光学活性ポリペプチド(A2)の各々は、非焦電性である。有機圧電材料がポリ乳酸系高分子又は光学活性ポリペプチド(A2)を含むことで、第1圧電センサ10Aは、焦電性のPVDFを用いた圧電センサに比べ、圧電感度の安定性、及び圧電出力の安定性(経時又は温度変化に対する安定性)がより向上する。
光学活性ポリペプチド(A2)は、高温高湿環境での耐加水分解性に優れる。光学活性ポリペプチド(A2)を含む第1圧電センサ10Aは、例えば、ポリ乳酸系高分子を含む第1圧電センサ10Aと比較して、特に高温高湿環境下において、第1電圧の低下が抑制される。
ヘリカルキラル高分子(A)の詳細については後述する。
【0092】
光学活性高分子(A)が繊維形状である場合、第1長尺状有機圧電体121の形状は、繊維形状であってもよいし、リボン形状であってもよい。
光学活性高分子(A)が繊維形状で、かつ第1長尺状有機圧電体121の形状が繊維形状である場合、有機圧電材料は、光学活性高分子(A)のみからなってもよい。
光学活性高分子(A)が繊維形状で、かつ第1長尺状有機圧電体121の形状がリボン形状である場合、有機圧電材料は、光学活性高分子(A)及び樹脂を含有してもよい。この場合、有機圧電材料は、樹脂によってリボン形状に成形され得る。有機圧電材料が複数の繊維形状の高分子材料(A)を含有する場合、複数の光学活性高分子(A)の各々は、樹脂によって接合されていてもよい。
樹脂としては、熱可塑性樹脂、及び熱硬化性樹脂の少なくとも一方を含む。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリメタクリル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、芳香族ポリエーテルケトン、ポリアリーレン系樹脂等が挙げられる。ポリメタクリル系樹脂としては、ポリメタクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂等が挙げられる。ポリアクリル系樹脂としては、ポリアクリル酸メチル樹脂等が挙げられる。芳香族ポリエーテルケトンとしては、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂等が挙げられる。ポリアリーレン系樹脂としては、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は一種単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は一種単独で使用してもよいし、二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0093】
第1長尺状有機圧電体121は、第1組成であることが好ましい。
第1組成では、
有機圧電材料は、光学活性高分子(A)を含み、
第1長尺状有機圧電体121の長さ方向と、第1長尺状有機圧電体121に含まれる光学活性高分子(A)の主配向方向と、が略平行(
図5の両矢印D2に平行な方向)であり、
X線回折測定から下記式(a)によって求められる第1長尺状有機圧電体121の配向度Fが0.5以上1.0未満である。
配向度F=(180°―α)/180°・・(a)
ただし、αは配向由来のピークの半値幅を表す。αの単位は、°である。
【0094】
第1長尺状有機圧電体121の配向度Fは、第1長尺状有機圧電体121に含まれる光学活性高分子(A)の配向の度合いを示す指標である。
第1長尺状有機圧電体121の配向度Fは、例えば、広角X線回折装置(リガク社製 RINT2550、付属装置:回転試料台、X線源:CuKα、出力:40kV 370mA、検出器:シンチレーションカウンター)により測定されるc軸配向度である。
第1長尺状有機圧電体121の配向度Fは、0.50以上0.99以下であることが好ましく、0.70以上0.98以下であることが更に好ましく、0.80以上0.97以下であることが特に好ましい。
第1長尺状有機圧電体121において、第1長尺状有機圧電体121の長さ方向と、第1長尺状有機圧電体121に含まれる光学活性高分子(A)の主配向方向とが略平行であることも、圧電性の発現に寄与する。
第1長尺状有機圧電体121の長さ方向と、第1長尺状有機圧電体121に含まれる光学活性高分子(A)の主配向方向とが略平行であることは、第1長尺状有機圧電体121がその長さ方向への引張強度に優れるという利点も有する。従って、第1長尺状有機圧電体121を第1内部導体11Aに螺旋状に巻回する際に、第1長尺状有機圧電体121が破断しにくい。
【0095】
「略平行」とは、2つの線分のなす角度が、0°以上30°未満であることを示す。2つの線分のなす角度は、好ましくは0°以上22.5°以下、より好ましくは0°以上10°以下、更に好ましくは0°以上5°以下、特に好ましくは0°以上3°以下である。
例えば、有機圧電材料が動物性タンパク質からなる繊維の一例であるシルク又はクモ糸を含む場合、シルク又はクモ糸の生成の過程で、シルク又はクモ糸の長さ方向と、光学活性ポリペプチド(A2)(例えば、動物性タンパク質の一例であるフィブロイン又はクモ糸タンパク質)の主配向方向と、が略平行となっている。
【0096】
光学活性高分子(A)の主配向方向とは、光学活性高分子(A)の主たる配向方向を意味する。光学活性高分子(A)の主配向方向は、例えば、第1長尺状有機圧電体121の配向度Fを測定することによって確認できる。
第1長尺状有機圧電体121がフィルムの延伸及び延伸されたフィルムのスリットを形成して製造される場合、第1長尺状有機圧電体121における光学活性高分子(A)の主配向方向は、主延伸方向を意味する。ここで、主延伸方向とは、一軸延伸の場合には延伸方向を指し、二軸延伸の場合には、延伸倍率が高い方の延伸方向を指す。
【0097】
以下、第1長尺状有機圧電体121が第1組成で、かつ光学活性高分子(A)がヘリカルキラル高分子(A1)である場合について説明する。
【0098】
第1長尺状有機圧電体121の製造方法は、例えば、原料(例えば、光学活性高分子(A))をフィルム状に成形して未延伸フィルムを得、得られた未延伸フィルムに対し、延伸及び結晶化を施し、得られた有機圧電フィルムをスリットする方法等が挙げられる。
ここで、「スリットする」とは、有機圧電フィルムを長尺状にカットすることを意味する。
なお、延伸及び結晶化は、いずれが先であってもよい。未延伸フィルムに対し、予備結晶化、延伸、及び結晶化(アニール)は、この順に施されてもよい。延伸は、一軸延伸であっても二軸延伸であってもよい。延伸が二軸延伸の場合には、好ましくは一方(主延伸方向)の延伸倍率を高くする。
有機圧電フィルムの製造方法については、特許第4934235号公報、国際公開第2010/104196号、国際公開第2013/054918号、国際公開第2013/089148号、等の公知文献を適宜参照できる。
第1長尺状有機圧電体121については、後述する。
【0099】
[第1圧電体の第1構成]
次に、
図5及び
図6を参照して、第1圧電体12Aの第1構成Aについて説明する。
【0100】
第1構成Aでは、
図5に示すように、第1長尺状有機圧電体121は、方向D1に向けて左方向(左巻き、即ち反時計周り)に巻回されている。詳しくは、第1内部導体11Aの外周面に沿って、第1螺旋角度β1で方向D1に向けて、隙間がないように第1螺旋方向D2に螺旋状に巻回されている。この巻回された第1長尺状有機圧電体121は、第1圧電体12Aを構成する。
「螺旋角度β1」とは、第1内部導体11Aの軸方向AXと、第1内部導体11Aの軸方向AXに対する第1長尺状有機圧電体121の配置方向とがなす角度を意味する。
螺旋角度β1は、好ましくは15°以上75°以下(45°±30°)、より好ましくは35°以上55°以下(45°±10°)である。
「第1螺旋方向D2」とは、第1長尺状有機圧電体121が方向D1に向かって巻回されている方向をいう。
【0101】
次に、第1構成Aの作用について説明する。
例えば、第1圧電センサ10Aは、軸方向AXと平行な方向に張力(応力)が作用されたときに、第1長尺状有機圧電体121に含まれるヘリカルキラル高分子(A1)にずり歪が加えられると、第1圧電センサ10Aの径方向にヘリカルキラル高分子(A1)の分極が生じる。この分極方向は、圧電定数d
14に起因して発生する電界の方向と略一致する。詳しくは、第1長尺状有機圧電体121が螺旋状に巻回された第1構成Aの第1圧電体12Aを、軸方向AXに対して平面と見做せる程度の微小領域の集合体とみなした場合、その構成する微小領域の平面に、張力(応力)に起因したずり力がヘリカルキラル高分子(A1)に作用された際、圧電定数d
14に起因して発生する電界の方向と、分極方向とは、略一致する。具体的に、ヘリカルキラル高分子(A1)の分極は、
図6中、矢印で示されるように、第1圧電センサ10Aの径方向に生じ、その分極方向は位相が揃えられて生じると考えられる。これにより、第1圧電センサ10Aは、外力に比例した第1電圧を効果的に発生しやすくなる。
以上のことから、第1圧電体12Aが第1構成Aである場合、第1圧電センサ10Aの圧電感度及び圧電出力の安定性は、優れる。
【0102】
第1構成Aにおいて、ヘリカルキラル高分子(A1)がPLLAの場合、軸方向AXと平行な方向において、第1圧電センサ10Aに張力が作用すると、径方向に平行に、張力と垂直な円状断面の円の中心から外側方向への電界(分極)が発生する。つまり、第1電圧の正負は、正になる。
第1構成Aにおいて、ヘリカルキラル高分子(A1)がPLLAの場合、軸方向AXと平行な方向において、第1圧電センサ10Aに加圧が作用すると、径方向に平行に、加圧と垂直な円状断面の円の外側から中心方向への電界(分極)が発生する。つまり、第1電圧の正負は、負になる。
【0103】
第1構成Aにおいて、ヘリカルキラル高分子(A1)がPDLAの場合、第1電圧の正負は、ヘリカルキラル高分子(A1)がPLLAの場合とは逆になる。
具体的に、第1構成Aにおいて、ヘリカルキラル高分子(A1)がPDLAの場合、軸方向AXと平行な方向に第1圧電センサ10Aに張力が作用すると、径方向に平行に、張力と垂直な円状断面の円の外側から中心方向への電界(分極)が発生する。つまり、第1電圧の正負は、負になる。
第1構成Aにおいて、ヘリカルキラル高分子(A1)がPDLAの場合、軸方向AXと平行な方向において、第1圧電センサ10Aに加圧が作用すると、径方向に平行に、加圧と垂直な円状断面の円の中心から外側方向への電界(分極)が発生する。つまり、第1電圧の正負は、正になる。
【0104】
第1構成Aでは、第1長尺状有機圧電体121が方向D1に向けて左巻きに巻回されているが、第1圧電体12Aの構成は、第1長尺状有機圧電体121が方向D1に向けて右巻きに巻回されている構成(以下、「第1構成A’」という)であってもよい。
【0105】
第1構成A’において、ヘリカルキラル高分子(A1)がPLLAの場合、第1電圧の正負は、第1構成Aのヘリカルキラル高分子(A1)がPLLAの場合とは逆になる。
具体的に、第1構成A’において、ヘリカルキラル高分子(A1)がPLLAの場合、軸方向AXと平行な方向において、第1圧電センサ10Aに張力が作用すると、径方向に平行に、張力と垂直な円状断面の円の外側から中心方向への電界(分極)が発生する。つまり、第1電圧の正負は、負になる。
第1構成A’において、ヘリカルキラル高分子(A1)がPLLAの場合、軸方向AXと平行な方向において、第1圧電センサ10Aに加圧が作用すると、径方向に平行に、加圧と垂直な円状断面の円の中心から外側方向への電界(分極)が発生する。つまり、第1電圧の正負は、正になる。
【0106】
第1構成A’において、ヘリカルキラル高分子(A1)がPDLAの場合、第1電圧の正負は、第1構成Aのヘリカルキラル高分子(A1)がPDLAの場合とは逆になる。
具体的に、第1構成A’において、ヘリカルキラル高分子(A1)がPDLAの場合、第1圧電センサ10Aに張力が作用すると、径方向に平行に、張力と垂直な円状断面の円の中心から外側方向への電界(分極)が発生する。つまり、第1電圧の正負は、正になる。
第1構成A’において、ヘリカルキラル高分子(A1)がPDLAの場合、第1圧電センサ10Aに加圧が作用すると、径方向に平行に、加圧と垂直な円状断面の円の外側から中心方向への電界(分極)が発生する。つまり、第1電圧の正負は、負になる。
【0107】
(第2長尺状有機圧電体)
第2長尺状有機圧電体122は、有機圧電材料からなり、圧電定数d14を有する。
【0108】
「第2長尺状有機圧電体122が圧電定数d14を有する」に該当するか否かは、例えば、上述した第1判定方法によって判定する。
【0109】
第2長尺状有機圧電体122は、長尺状物である。
第2長尺状有機圧電体122の形状、幅、厚さ、比〔幅/厚さ〕、断面形状、及び長軸径の各々は、第1長尺状有機圧電体121で例示したものと同様である。第2長尺状有機圧電体122の幅、厚さ、及び比〔幅/厚さ〕の各々は、第1長尺状有機圧電体121の幅、厚さ、及び比〔幅/厚さ〕と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0110】
第2長尺状有機圧電体122の有機圧電材料としては、第1長尺状有機圧電体121の有機圧電材料として例示した材料と同様の材料が挙げられる。第2長尺状有機圧電体122の有機圧電材料は、第1長尺状有機圧電体121の有機圧電材料と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0111】
第2長尺状有機圧電体122は、下記の第2組成であることが好ましい。
第2組成物では、
有機圧電材料は、光学活性高分子(A)を含み、
第2長尺状有機圧電体122の長さ方向と、第2長尺状有機圧電体122に含まれる光学活性高分子(A)の主配向方向と、が略平行であり、
X線回折測定から上記式(a)によって求められる第2長尺状有機圧電体122の配向度Fは0.5以上1.0未満である。
【0112】
第2長尺状有機圧電体122の配向度Fは、第2長尺状有機圧電体122に含まれる光学活性高分子(A)の配向の度合いを示す指標である。
「略平行」とは、2つの線分のなす角度が、0°以上30°未満であることを示す。2つの線分のなす角度は、好ましくは0°以上22.5°以下、より好ましくは0°以上10°以下、更に好ましくは0°以上5°以下、特に好ましくは0°以上3°以下である。
【0113】
以下、第2長尺状有機圧電体122の有機圧電材料が第2組成で、かつ光学活性高分子(A)がヘリカルキラル高分子(A1)である場合について説明する。
【0114】
第2長尺状有機圧電体122の製造方法は、第1長尺状有機圧電体121の製造方法として例示した製造方法と同様の製造方法が挙げられる。
第2長尺状有機圧電体122については、後述する。
【0115】
[第1圧電体の第2構成]
次に、
図7を参照して、第1圧電体12Aの第2構成Aについて説明する。
【0116】
第1圧電体12Aの第2構成Aは、第2長尺状有機圧電体122を備えている点で、第1圧電体12Aの第1構成Aと異なる。
詳しくは、第1圧電体12Aの第2構成Aは、
図7に示すように、第1長尺状有機圧電体121と、第2長尺状有機圧電体122とを備える。
第2構成Aでは、第1長尺状有機圧電体121は、第1構成Aと同様に、第1内部導体11Aの外周面に沿って、螺旋角度β1で方向D1に向けて、隙間がないように第1螺旋方向D2に螺旋状に巻回されている。つまり、第1長尺状有機圧電体121は、方向D1に向けて左方向(左巻き、即ち反時計周り)に巻回されている。
第2構成Aでは、第2長尺状有機圧電体122は、
図7に示すように、第1長尺状有機圧電体121の外周面に沿って、螺旋角度β2で第1長尺状有機圧電体121の巻回方向とは逆の方向で螺旋状に巻回されている。
「螺旋角度β2」とは、前述の螺旋角度β1と同義である。螺旋角度β2は、螺旋角度β1と略同一角度である。
ここで、第2構成Aにおける「第1長尺状有機圧電体121の巻回方向と逆の方向」とは、右巻きのことである。即ち、第2長尺状有機圧電体122は、方向D1に向かって右巻きで巻回している。
図7中、第2長尺状有機圧電体122に含まれるヘリカルキラル高分子(A1)の主配向方向は、両矢印D3で示されている。即ち、第2長尺状有機圧電体122に含まれるヘリカルキラル高分子(A1)の主配向方向と、第2長尺状有機圧電体122の配置方向(第2長尺状有機圧電体122の長さ方向)とは、略平行となっている。
第1長尺状有機圧電体121に含まれるヘリカルキラル高分子(A1)のキラリティと、第2長尺状有機圧電体122に含まれるヘリカルキラル高分子(A1)のキラリティとは、互いに異なっていることが好ましい。これにより、例えば、第1圧電センサ10Aに軸方向AXの張力が作用されたときに、第1長尺状有機圧電体121に含まれるヘリカルキラル高分子(A1)と、第2長尺状有機圧電体122に含まれるヘリカルキラル高分子(A1)との両方に分極が生じる。分極方向はいずれも第1圧電センサ10Aの径方向である。この結果、より効果的に張力に比例した電圧信号(電荷信号)が検出される。従って、圧電感度、及び圧電出力の安定性がより向上する。
【0117】
以下、第2構成Aの第1圧電センサ10Aの作用について説明する。
例えば、第1圧電センサ10Aの方向D1と平行な方向に張力が作用されると、第1長尺状有機圧電体121に含まれるヘリカルキラル高分子(A1)、及び第2長尺状有機圧電体122に含まれるヘリカルキラル高分子(A1)との両方にずり応力が作用され、分極が生じる。分極方向はいずれも第1圧電センサ10Aの径方向である。これにより、効果的に張力に比例した電圧信号が検出される。
以上のことから、第2構成Aの第1圧電センサ10Aによれば、圧電感度、及び圧電出力の安定性が第1構成Aの第1圧電センサ10Aよりも向上する。
特に、第1圧電体12Aは、第1長尺状有機圧電体121及び第2長尺状有機圧電体122を備え、かつ二層構造をなす。そのため、第1内部導体11Aや第1外部導体13Aに対して、第1長尺状有機圧電体121及び第2長尺状有機圧電体122の各々は、空隙が少なく密着し得る。これにより、張力によって発生した電界が効率良く第1内部導体11Aに伝達されやすい。
従って、第2構成Aの第1圧電センサ10Aは、外力をより感度良く検出することができる。
【0118】
[第1圧電体の第3構成]
次に、
図8を参照して、第1圧電体12Aの第3構成Aについて説明する。
【0119】
第1圧電体12Aの第3構成Aは、組紐構造をなしている点で、第1圧電体12Aの第2構成Aの第1圧電センサ10Aと異なる。
具体的に、第1圧電体12Aの第3構成Aは、
図8に示すように、第1長尺状有機圧電体121と、第2長尺状有機圧電体122とを備える。
第3構成Aでは、第1長尺状有機圧電体121が、第1内部導体11Aの軸方向AXに対し、螺旋角度β1で左巻きで螺旋状に巻回され、第2長尺状有機圧電体122が、螺旋角度β2で右巻きで螺旋状に巻回されると共に、第1長尺状有機圧電体121及び第2長尺状有機圧電体122が交互に交差されている。第1内部導体11Aの軸方向AXと、方向D1とは略平行な関係にある。
【0120】
「略平行」とは、2つの線分のなす角度が、0°以上30°未満であることを示す。2つの線分のなす角度は、好ましくは0°以上22.5°以下、より好ましくは0°以上10°以下、更に好ましくは0°以上5°以下、特に好ましくは0°以上3°以下である。
図8に示す組紐構造において、第1長尺状有機圧電体121に含まれるヘリカルキラル高分子(A1)の主配向方向(両矢印D2)と、第1長尺状有機圧電体121の配置方向とは、略平行となっている。同様に、第2長尺状有機圧電体122に含まれるヘリカルキラル高分子(A1)の主配向方向(両矢印D2)と、第2長尺状有機圧電体122の配置方向とは、略平行となっている。
第1長尺状有機圧電体121に含まれるヘリカルキラル高分子(A1)のキラリティと、第2長尺状有機圧電体122に含まれるヘリカルキラル高分子(A1)のキラリティとは、互いに異なっていることが好ましい。これにより、例えば、第1圧電センサ10Aに軸方向AXの張力が作用されたときに、第1長尺状有機圧電体121に含まれるヘリカルキラル高分子(A1)と、第2長尺状有機圧電体122に含まれるヘリカルキラル高分子(A1)との両方に分極が生じる。分極方向はいずれも第1圧電センサ10Aの径方向である。これにより、より効果的に張力に比例した電圧信号が検出される。この結果、圧電感度、及び圧電出力の安定性がより向上する。
【0121】
以下、第3構成Aの第1圧電センサ10Aの作用について説明する。
例えば、第1圧電センサ10Aに軸方向AXの張力が作用されると、第1長尺状有機圧電体121に含まれるヘリカルキラル高分子(A1)と、第2長尺状有機圧電体122に含まれるヘリカルキラル高分子(A1)との両方に分極が生じる。分極方向はいずれも第1圧電センサ10Aの径方向である。これにより、効果的に張力に比例した電圧信号が検出される
以上のことから、第3構成Aの第1圧電センサ10Aは、第1圧電体12Aにかかる外力をより感度良く検出することができる。
特に、第1圧電センサ10Aの長さ方向に張力が作用されたときに、組紐構造を形成する左巻きの第1長尺状有機圧電体121と右巻きの第2長尺状有機圧電体122とに、ずり応力が作用する。これら分極の方向は一致し、第1内部導体11Aと第1外部導体13Aの間の絶縁体(即ち、第1圧電体12A及び第2圧電体12B)における圧電性能に寄与する体積分率が増える。そのため、圧電性能がより向上する。
【0122】
(シート状圧電体)
シート状圧電体は、圧電材料からなり、圧電定数d33及び圧電定数d31を有し、圧電定数d14を有しない。
【0123】
「シート状圧電体が、圧電定数d33及び圧電定数d31を有し、圧電定数d14を有しない」か否かは、下記の第2判定方法によって判定する。
第2判定方法では、第1圧電体12Aが後述する第4構成Aである第1圧電センサ10A(以下、「第4構成Aの第1圧電センサ10A」という場合がある。)と、後述する第2圧電体12Bが後述する第4構成Bである第2圧電センサ10B(以下、「第4構成Bの第2圧電センサ10B」という場合がある。)と、電圧計とを用いる。
【0124】
詳しくは、第2判定方法では、第4構成Aの第1圧電センサ10A及び第4構成Bの第2圧電センサ10Bを作製する。
第4構成Aの第1圧電センサ10Aの第1内部導体11Aと、第4構成Aの第1圧電センサ10Aの第1外部導体13Aとを電圧計に電気的に接続する。次いで、第4構成Aの第1圧電センサ10Aに所定の外力を加えて、判定用電圧を検出する。
同様に、第4構成Bの第2圧電センサ10Bの第1内部導体11Aと、第4構成Bの第2圧電センサ10Bの第1外部導体13Aとを電圧計に電気的に接続する。次いで、第4構成Aの第1圧電センサ10Aに加えた外力と同じ外力を、第4構成Bの第2圧電センサ10Bに加えて、判定用電圧を検出する。
【0125】
第2判定方法では、下記の条件(Y2)を満たす場合、「シート状圧電体が、圧電定数d33及び圧電定数d31を有し、圧電定数d14を有しない」に該当すると判断する。一方、下記の条件(Y2)を満たさない場合、「シート状圧電体が、圧電定数d33及び圧電定数d31を有し、圧電定数d14を有しない」に該当しないと判断する。
(Y2)第4構成Aの第1圧電センサ10Aの判定用電圧の極性と、第4構成Bの第2圧電センサ10Bの判定用電圧の極性とが反対であること
【0126】
シート状圧電体は、シート状である。
シート状圧電体の厚さは、好ましくは0.001mm以上0.2mm以下である。厚さが0.001mm以上であることにより、シート状圧電体の強度が確保される。更に、厚さが0.2mm以下であることにより、シート状圧電体の厚さ方向の非塑性変形の自由度(柔軟性)が向上する。
【0127】
圧電材料は、シート状圧電体が圧電定数d33及び圧電定数d31を有し、圧電定数d14を有しないようにする材料であればよく、有機圧電材料、無機圧電材料等が挙げられる。有機圧電材料は、低分子材料であってもよいし、高分子材料であってもよい。
有機圧電材料は、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニルフルオライド(PVF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、トリフルオロ酢酸エチル(EFA)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、クロロトリフルオエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、ポリ(フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン)共重合体(PVDF-HFP)、及びポリ(フッ化ビニリデン/トリフルオロエチレン)からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
無機圧電材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系等の無機セラミックス圧電材料の粉末をシート状にポリマーを用いて成型した材料等が挙げられる。
なかでも、圧電材料は、軽量で柔軟性に富み、加工性等に優れる観点から、PVDFを含むことが好ましい。
【0128】
以下、圧電材料がPVDFからなる場合について説明する。
【0129】
シート状圧電体の製造方法は、原料(PVDF)をシート状に成形し、延伸処理して延伸シートを得、得られた延伸シートに対しポーリング処理を施す方法等が挙げられる。
ポーリング処理では、例えば、延伸シートを加熱しながら、延伸シートの一方の面にプラスの電圧を印加するとともに、延伸シートの他方の面にマイナスの電圧を印加する。これにより、延伸シートの膜厚方向において、延伸シートの一方の面から他方に面にむかって、フッ素原子と炭素原子の電気引性度の差に起因する双極子モーメントが形成される。つまり、シート状圧電体は、自発分極を有する。
【0130】
[第1圧電体の第4構成]
次に、第1圧電体12Aの第4構成Aについて説明する。
【0131】
第4構成Aでは、シート状圧電体は、第1内部導体11Aの外周面に沿って、PVDFの高分子鎖が軸方向AXに沿って配向されるように、円筒状に巻回されている。シート状圧電体の一方の面は、第1内部導体11A側である。この巻回されたシート状圧電体は、第1圧電体12Aを構成する。
「PVDFの高分子鎖が軸方向AXに沿って配向される」とは、シート状圧電体の製造工程の延伸処理における延伸方向と、軸方向AXとが平行な関係であることを意味する。
【0132】
次に、第4構成Aの作用について説明する。
例えば、第1圧電センサ10Aでは、外力が作用されたときに、第1圧電体12Aが縮むと、径方向に平行に、円状断面の円の中心から外側方向への電界(分極)が発生する。つまり、第1電圧の正負は、正になる。
例えば、第1圧電センサ10Aでは、外力が作用されたときに、第1圧電体12Aが伸びると、径方向に平行に、円状断面の円の外側から中心方向への電界(分極)が発生する。つまり、第1電圧の正負は、負になる。
【0133】
<接着剤層>
第1圧電センサ10Aは、接着層を有してもよい。接着層は、例えば、第1内部導体11Aと第1圧電体12Aとの間に配置される。これにより、内部導体11Aの軸方向AXにおいて、例えば、外力に起因する張力が第1圧電センサ10Aに作用しても、第1圧電体12Aと第1内部導体11Aとの相対位置のずれの発生は抑制され得る。軸方向AXと方向D1とは平行である。さらに、第1長尺状有機圧電体121は、外力に起因する張力がより作用されやすくなる。
接着層を形成する接着剤の材料としては、例えば、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、酢酸ビニル樹脂系エマルション形接着剤、エチレン酢酸ビニル(EVA)系エマルション形接着剤、アクリル樹脂系エマルション形接着剤、スチレン・ブタジエンゴム系ラテックス形接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、α-オレフィン(イソブテン-無水マレイン酸樹脂)系接着剤、塩化ビニル樹脂系溶剤形接着剤、ゴム系接着剤、弾性接着剤、クロロプレンゴム系溶剤形接着剤、ニトリルゴム系溶剤形接着剤等、シアノアクリレート系接着剤等が挙げられる。
【0134】
<第1絶縁体>
第1圧電センサ10Aは、第1絶縁体を有してもよい。第1絶縁体は、例えば、第1圧電体12Aと第1内部導体11Aとの間、及び第1圧電体12Aと第1外部導体13Aとの間の少なくとも一方に配置される。これにより、第1内部導体11Aと第1外部導体13Aとの短絡の発生をより抑制することができる。
第1絶縁体は、例えば、長尺状物が、第1内部導体11Aの外周面に沿って螺旋状に巻回されてなる。
第1絶縁体の材料としては、電気的絶縁性を有する材料であればよく、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・パーフロロプロピルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ素ゴム、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ゴム(エラストマーを含む)等が挙げられる。
【0135】
<第2絶縁体>
第1圧電センサ10Aは、第2絶縁体を有してもよい。第2絶縁体は、第1外部導体13Aの外周に配置される。第2絶縁体は、第1外部導体13Aの外周の全面を覆っていてもよい。これにより、第1内部導体11Aを静電シールドすることが可能となり、外部の静電気の影響による、第1電圧の電圧変化を抑制することができる。
第2絶縁体の材質は、電気的絶縁性を有する材料であればよく、第1絶縁体の材料として例示した材料と同一の材料が挙げられる。
【0136】
<機能層>
第1圧電センサ10Aは、機能層を有してもよい。機能層は、例えば、第1圧電体12Aと第1内部導体11Aとの間、及び第1圧電体12Aと第1外部導体13Aとの間の少なくとも一方に配置される。
機能層を構成する層(以下、「構成層」という。)として、例えば、易接着層、ハードコート層、屈折率調整層、アンチリフレクション層、アンチグレア層、易滑層、アンチブロック層、保護層、接着層、帯電防止層、放熱層、紫外線吸収層、アンチニュートンリング層、光散乱層、偏光層、ガスバリア層、色相調整層、電極層などが挙げられる。
機能層は、構成層の単層からなる単層構造であってもよいし、2層以上の構成層からなる複数構造であってもよい。機能層が複数構造で場合、複数の構成層の各々は、同じ構成層であってもよいし、異なる構成層であってもよい。第1圧電センサ10Aが第1圧電体12Aと第1内部導体11Aとの間、及び第1圧電体12Aと第1外部導体13Aとの間に機能層を有する場合、第1圧電体12Aと第1内部導体11Aとの間の機能層と、第1圧電体12Aと第1外部導体13Aとの間に機能層とは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
機能層の膜厚は、特に限定されず、0.01μm以上10μm以下であることが好ましい。
機能層の材料は、機能層に要求される機能に応じて適宜選択され、例えば、金属、金属酸化物等の無機物;樹脂等の有機物;樹脂と微粒子とを含む複合組成物;などが挙げられる。樹脂としては、例えば、温度や活性エネルギー線で硬化させることで得られる硬化物が挙げられる。
【0137】
(第2圧電センサ)
次に、第2圧電センサ10Bの詳細について説明する。
【0138】
第2圧電センサ10Bは、
図1に示すように、第2内部導体11Bと、第2圧電体12Bと、第2外部導体13Bとを有する。第2内部導体11Bは、方向D1に向けて延在している。第2圧電体12Bは、第2内部導体11Bの少なくとも一部を覆う。第2外部導体13Bは、第2圧電体12Bの外周に配置されている。
【0139】
第2圧電センサ10Bの構成は、第2圧電体12Bと第1圧電体12Aとが異なる他は、第1圧電センサ10Aの構成と同一であってもよい。圧電デバイスが外力をより感度良く検出する観点から、第2圧電センサ10Bにおいて、第2圧電体12Bの他の構成は、第1圧電センサ10Aの構成と同一であることが好ましい。
【0140】
第2圧電センサ10Bは、線状物である。第2圧電センサ10Bの方向D1に直交する面における断面形状は、第1圧電センサ10Aの断面形状として例示したものと同様のものが挙げられる。第2圧電センサ10Bの断面形状等は、第1圧電センサ10Aの断面形状等と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0141】
<第2内部導体>
第2内部導体11Bは、第1圧電センサ10Aの第1内部導体11Aとして例示したものと同様のものが挙げられる。第2内部導体11Bは、第1内部導体11Aと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0142】
<第2外部導体>
第2外部導体13Bは、第1圧電センサ10Aの第2外部導体13Aとして例示したものと同様のものが挙げられる。第2外部導体13Bは、第2外部導体13Aと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0143】
(第2圧電体)
第2圧電体12Bは、外力が作用すると、第2内部導体11Bと第2外部導体13Bとの間に、第2電圧を発生させる。
【0144】
第2圧電体12Bは、第2内部導体11Bの少なくとも一部を覆っていればよく、第2内部導体11Bの外周面の一部を覆っていてもよいし、第2内部導体11Bの外周面の全面を覆っていてもよい。
【0145】
第2圧電体12Bの構成は、第1電圧とは電圧の正負が異なる第2電圧を発生させる構成であればよく、第1圧電体12Aの構成に応じて適宜調整される。
第1圧電体12Aの構成が第1構成Aである場合、第2圧電体12Bの構成は、第1構成Bであることが好ましい。第1構成Bでは、第1長尺状有機圧電体121を巻回してなる。第2圧電体12Bの第1構成Bの詳細については、後述する。
第1圧電体12Aの構成が第2構成Aである場合、第2圧電体12Bの構成は、第2構成Bであることが好ましい。第2構成Bでは、第1長尺状有機圧電体121及び第2長尺状有機圧電体122を巻回してなる。第2圧電体12Bの第2構成Bの詳細については、後述する。
第1圧電体12Aの構成が第3構成Aである場合、第2圧電体12Bの構成は、第3構成Bであることが好ましい。第3構成Bでは、組紐構造を巻回してなる。組紐構造は、第1長尺状有機圧電体121と第2長尺状有機圧電体122とを交互に交差させてなる。第2圧電体12Bの第3構成Bの詳細については、後述する。
第1圧電体12Aの構成が第4構成Aである場合、第2圧電体12Bの構成は、第4構成Bであることが好ましい。第4構成Bでは、シート状圧電体を巻回してなる。第2圧電体12Bの第4構成Bの詳細については、後述する。
【0146】
<第2圧電体の第1構成>
第2圧電体の第1構成Bは、第1構成Aと同様に、第1長尺状有機圧電体121を巻回してなる。この際、第1構成Bでは、第1長尺状有機圧電体121は、第1構成Aの巻回方向とは逆の方向で螺旋状に巻回される。具体的に、第2圧電体12Bでは、第1長尺状有機圧電体121は、第1内部導体11Aに対して方向D1に向けて第2螺旋方向D3に巻回されている。つまり、第1構成Bでは、第1長尺状有機圧電体121は、方向D1に向けて右巻きで巻回される。これにより、第2圧電体Bに第1圧電体12Aと同じ外力が作用した際、第2圧電体12Bに含まれるヘリカルキラル高分子(A1)の分極方向と、第1圧電体12Aに含まれるヘリカルキラル高分子(A1)の分極方向とは異なる。つまり、第2内部導体11Bと第2外部導体13Bとの間に、第1電圧とは電圧の正負が異なる第2電圧を発生する。
【0147】
図9及び
図10を参照して、第1構成A及び第1構成Bについて更に説明する。
図9は、本実施形態に係る第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bの一態様の一部切欠き斜視図である。
図10は、本実施形態に係る第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bの他の態様の一部切欠き斜視図である。
【0148】
図9に示す第1圧電センサ10Aの第1圧電体12Aは、第1構成Aである。
図9に示す第2圧電センサ10Bの第2圧電体12Bは、第1構成Bである。
図9に示す第1構成A及び第1構成Bの各々のヘリカルキラル高分子(A1)は、PLLAである。
【0149】
圧電デバイス1に外力が作用し、第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bに対し、第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bに軸方向AXに張力F1が作用した場合、又は螺旋軸を中心軸として時計周り方向F2のねじり力が作用した場合について説明する。
この場合、
図9に示すように、第1圧電センサ10Aの第1長尺状有機圧電体121にずり応力SFが作用され、円形断面の中心方向から外側方向にPLLAの分極が生じる。そのため、第1圧電センサ10Aには、第1電圧が発生する。
一方、第2圧電センサ10Bの第1長尺状有機圧電体122にずり応力SFが作用され、円形断面の外側方向から内側方向にPLLAの分極が生じる。そのため、第1圧電センサ10Aには、第1電圧が発生する。
したがって、第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bにおいて、張力F1及びねじり力に比例した電荷(電界)が発生し、発生した電荷は電圧信号(電荷信号)として検出される。
【0150】
圧電デバイス1に外力が作用し、第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bに対し、第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bに軸方向AXに加圧F3が作用した場合、又は螺旋軸を中心軸として反時計周り方向F4のねじり力が作用した場合について説明する。
この場合、
図10に示すように、第1圧電センサ10Aの第1長尺状有機圧電体121にずり応力SFが作用され、円形断面の外側方向から内側方向にPLLAの分極が生じる。そのため、第1圧電センサ10Aには、第1電圧が発生する。
一方、第2圧電センサ10Bの第1長尺状有機圧電体122にずり応力SFが作用され、円形断面の中心方向から外側方向にPLLAの分極が生じる。そのため、第1圧電センサ10Aには、第2電圧が発生する。
したがって、第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bにおいて、加圧F3及びねじり力に比例した電荷(電界)が発生し、発生した電荷は電圧信号(電荷信号)として検出される。
【0151】
第1圧電体12Aが第1構成Aであり、第2圧電体12Aが第1構成Bであり、第1構成A及び第1構成Bの各々のヘリカルキラル高分子(A1)がPDLAである場合、PDLAの分極方向は、PLLAの分極方向の逆になる。
【0152】
第1構成Bでは、第1長尺状有機圧電体121は、第1構成Aの巻回方向とは逆の方向で螺旋状に巻回されるが、本開示はこれに限定されない。例えば、第2圧電体12Bの構成は、第1構成B’であってもよい。
第1構成B’では、第1長尺状有機圧電体121は、第1構成Aの巻回方向と同じ方向で螺旋状に巻回される。ヘリカルキラル高分子(A1)について、第1構成AがPLLAである場合、第1構成B’はPDLAであり、第1構成AがPDLAである場合、第1構成B’はPLLAである。これにより、第2内部導体11Bと第2外部導体13Bとの間に、第1電圧とは電圧の正負が異なる第2電圧を発生する。
【0153】
<第2圧電体の第2構成>
第2圧電体12Bの第2構成Bは、第1圧電体12Aの第2構成Aと同様に、第1長尺状有機圧電体121及び第2長尺状有機圧電体122を巻回してなる。この際、第2構成Bでは、第1長尺状有機圧電体121及び第2長尺状有機圧電体122の各々は、第2構成Aの巻回方向とは逆の方向で螺旋状に巻回される。これにより、第2内部導体11Bと第2外部導体13Bとの間に、第1電圧とは電圧の正負が異なる第2電圧を発生する。
【0154】
第2構成Bでは、第1長尺状有機圧電体121及び第2長尺状有機圧電体122の各々は、第2構成Aの巻回方向とは逆の方向で螺旋状に巻回されるが、本開示はこれに限定されない。例えば、第2圧電体12Bの構成は、第2構成B’であってもよい。
第2構成B’では、第1長尺状有機圧電体121及び第2長尺状有機圧電体122の各々は、第2構成Aの巻回方向と同じ方向で螺旋状に巻回される。第1長尺状有機圧電体121のヘリカルキラル高分子(A1)について、第2構成AがPLLAである場合、第2構成B’はPDLAであり、第2構成AがPDLAである場合、第2構成B’はPLLAである。第2長尺状有機圧電体122のヘリカルキラル高分子(A1)について、第2構成AがPLLAである場合、第2構成B’はPDLAであり、第2構成AがPDLAである場合、第2構成B’はPLLAである。これにより、第2内部導体11Bと第2外部導体13Bとの間に、第1電圧とは電圧の正負が異なる第2電圧を発生する。
【0155】
<第2圧電体の第3構成>
第2圧電体12Bの第3構成Bは、第1圧電体12Aの第3構成Aと同様に、組紐構造を巻回してなることが好ましい。この際、第3構成Bでは、第1長尺状有機圧電体121及び第2長尺状有機圧電体122の各々は、第3構成Aの巻回方向とは逆の方向で螺旋状に巻回される。これにより、第2内部導体11Bと第2外部導体13Bとの間に、第1電圧とは電圧の正負が異なる第2電圧を発生する。
【0156】
第3構成Bでは、第1長尺状有機圧電体121及び第2長尺状有機圧電体122の各々は、第3構成Aの巻回方向とは逆の方向で螺旋状に巻回されるが、本開示はこれに限定されない。例えば、第3圧電体12Bの構成は、第3構成B’であってもよい。
第3構成B’では、第1長尺状有機圧電体121及び第2長尺状有機圧電体122の各々は、第3構成Aの巻回方向と同じ方向で螺旋状に巻回される。第1長尺状有機圧電体121のヘリカルキラル高分子(A1)について、第2構成AがPLLAである場合、第2構成B’はPDLAであり、第2構成AがPDLAである場合、第2構成B’はPLLAである。第2長尺状有機圧電体122のヘリカルキラル高分子(A1)について、第2構成AがPLLAである場合、第2構成B’はPDLAであり、第2構成AがPDLAである場合、第2構成B’はPLLAである。これにより、第2内部導体11Bと第2外部導体13Bとの間に、第1電圧とは電圧の正負が異なる第2電圧を発生する。
【0157】
<第2圧電体の第4構成>
第2圧電体12Bの第4構成Bは、第1圧電体12Aの第4構成Aと同様に、シート状圧電体を巻回してなることが好ましい。この際、第4構成Bでは、シート状圧電体の面の向きが第1圧電体12Aとは逆である。具体的に、第1圧電体12Aにおいてシート状圧電体の一方の面は第1内部導体11A側であるため、第2圧電体12Bでは、シート状の他方の面は第2内部導体11B側である。これにより、第2内部導体11Bと第2外部導体13Bとの間に、第1電圧とは電圧の正負が異なる第2電圧を発生する。
【0158】
<接着層>
第2圧電センサ10Bは、接着層を有してもよい。第2圧電センサ10Bの接着層は、第2内部導体11Bと第2圧電体12Bとの間に配置される。
第2圧電センサ10Bの接着層としては、第1圧電センサ10Aの接着層として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0159】
<第1絶縁体>
第2圧電センサ10Bは、第1絶縁体を有してもよい。第1絶縁体は、例えば、第2圧電体12Bと第2内部導体11Bとの間、及び第2圧電体12Bと第2外部導体13Bとの間の少なくとも一方に配置される。
第2圧電センサ10Bの第1絶縁体としては、第1圧電センサ10Aの第1絶縁体として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0160】
<第2絶縁体>
第2圧電センサ10Bは、第2絶縁体を有してもよい。第2絶縁体は、第2外部導体13Bの外周に配置される。第2絶縁体は、第2外部導体13Bの外周の全面を覆っていてもよい。
第2圧電センサ10Bの第2絶縁体としては、第1圧電センサ10Aの第2絶縁体として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0161】
<機能層>
第2圧電センサ10Bは、機能層を有してもよい。第2圧電センサ10Bは、例えば、第2圧電体12Bと第2内部導体11Bとの間、及び第2圧電体12Bと第2外部導体13Bとの間の少なくとも一方に配置される。
第2圧電センサ10Bの機能層としては、第1圧電センサ10Aの機能層として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0162】
(ヘリカルキラル高分子(A1))
次に、ヘリカルキラル高分子(A1)について説明する。
【0163】
ヘリカルキラル高分子(A1)は、圧電性をより向上させる観点から、光学純度が95.00%ee以上であることが好ましい。ヘリカルキラル高分子(A1)は、圧電性をより向上させる観点から、D体又はL体からなることが好ましい。ヘリカルキラル高分子(A1)の含有量は、圧電性をより向上させる観点から、第1長尺状有機圧電体121の全量に対し、80質量%以上であることが好ましい。
【0164】
ヘリカルキラル高分子(A1)の光学純度は、第1長尺状有機圧電体121の圧電性を向上する観点から、好ましくは95.00%ee以上、より好ましくは96.00%ee以上、さらに好ましくは99.00%ee以上、特に好ましくは99.99%ee以上、望ましくは100.00%eeである。ヘリカルキラル高分子(A1)の光学純度を上記範囲とすることで、圧電性を発現する高分子結晶のパッキング性が高くなり、その結果、圧電性が高くなるものと考えられる。
【0165】
ヘリカルキラル高分子(A1)の光学純度は、下記式にて算出した値である。
光学純度(%ee)=100×|L体量-D体量|/(L体量+D体量)
即ち、ヘリカルキラル高分子(A1)の光学純度は、
『「ヘリカルキラル高分子(A1)のL体の量〔質量%〕とヘリカルキラル高分子(A1)のD体の量〔質量%〕との量差(絶対値)」を「ヘリカルキラル高分子(A1)のL体の量〔質量%〕とヘリカルキラル高分子(A1)のD体の量〔質量%〕との合計量」で割った(除した)数値』に、『100』をかけた(乗じた)値である。
【0166】
なお、ヘリカルキラル高分子(A1)のL体の量〔質量%〕とヘリカルキラル高分子(A1)のD体の量〔質量%〕は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた方法により得られる値を用いる。具体的な測定の詳細については後述する。
【0167】
-重量平均分子量-
ヘリカルキラル高分子(A1)の重量平均分子量(Mw)は、5万以上100万以下であることが好ましい。
ヘリカルキラル高分子(A1)のMwが5万以上であることにより、第1長尺状有機圧電体121及び第2長尺状有機圧電体122(以下、まとめて「第1長尺状有機圧電体121等」という場合がある。)の機械的強度が向上する。上記Mwは、より好ましくは10万以上、さらに好ましくは20万以上である。
ヘリカルキラル高分子(A1)のMwが100万以下であることにより、成形(例えば押出成形、溶融紡糸)によって第1長尺状有機圧電体121等を得る際の成形性が向上する。ヘリカルキラル高分子(A1)のMwは、より好ましくは80万以下、さらに好ましくは30万以下である。
【0168】
ヘリカルキラル高分子(A1)の分子量分布(Mw/Mn)は、第1長尺状有機圧電体121等の強度の観点から、好ましくは1.1以上5以下、より好ましくは1.2以上4以下、さらに好ましくは1.4以上3以下である。
【0169】
ヘリカルキラル高分子(A1)の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用いて測定された値を指す。ここで、Mnは、ヘリカルキラル高分子(A1)の数平均分子量である。
以下、GPCによるヘリカルキラル高分子(A1)のMw及びMw/Mnの測定方法の一例を示す。
【0170】
-GPC測定装置-
Waters社製GPC-100
-カラム-
昭和電工社製、Shodex LF-804
-サンプルの調製-
第1長尺状有機圧電体121等を40℃で溶媒(例えば、クロロホルム)へ溶解させ、濃度1mg/mlのサンプル溶液を準備する。
-測定条件-
サンプル溶液0.1mlを溶媒〔クロロホルム〕、温度40℃、1ml/分の流速でカラムに導入する。
【0171】
カラムで分離されたサンプル溶液中のサンプル濃度を示差屈折計で測定する。
ポリスチレン標準試料にてユニバーサル検量線を作製し、ヘリカルキラル高分子(A1)の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を算出する。
【0172】
ヘリカルキラル高分子(A1)の例であるポリ乳酸系高分子としては、市販のポリ乳酸を用いることができる。
市販品としては、例えば、PURAC社製のPURASORB(PD、PL)、三井化学社製のLACEA(H-100、H-400)、NatureWorks LLC社製のIngeoTM biopolymer、等が挙げられる。
ヘリカルキラル高分子(A1)としてポリ乳酸系高分子を用いるときに、ポリ乳酸系高分子の重量平均分子量(Mw)を5万以上とするためには、ラクチド法、又は直接重合法によりポリ乳酸系高分子を製造することが好ましい。
【0173】
第1長尺状有機圧電体121等は、ヘリカルキラル高分子(A1)を、1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
第1長尺状有機圧電体121等中におけるヘリカルキラル高分子(A1)の含有量(2種以上である場合には総含有量)は、第1長尺状有機圧電体121の全量に対し、80質量%以上が好ましい。
【0174】
(ポリ乳酸系高分子)
次に、ポリ乳酸系高分子について説明する。
【0175】
ポリ乳酸系高分子としては、光学純度を上げ、圧電性を向上させる観点から、下記式(1)で表される繰り返し単位を含む主鎖を有することが好ましい。
【0176】
【0177】
ポリ乳酸系高分子は、「ポリ乳酸(L-乳酸及びD-乳酸から選ばれるモノマー由来の繰り返し単位のみからなる高分子)」、「L-乳酸又はD-乳酸と、該L-乳酸又はD-乳酸と共重合可能な化合物とのコポリマー」、又は、両者の混合物をいう。
ポリ乳酸系高分子の中でも、ポリ乳酸が好ましく、PLLA又はPDLAが最も好ましい。
【0178】
ポリ乳酸は、乳酸がエステル結合によって重合し、長く繋がった高分子である。
ポリ乳酸の製造方法としては、ラクチドを経由するラクチド法;溶媒中で乳酸を減圧下加熱し、水を取り除きながら重合させる直接重合法等が挙げられる。
ポリ乳酸としては、ブロックコポリマー、グラフトコポリマーが挙げられる。ブロックコポリマーは、L-乳酸のホモポリマー、D-乳酸のホモポリマー、L-乳酸及びD-乳酸の少なくとも一方の重合体を含む。グラフトコポリマーは、L-乳酸及びD-乳酸の少なくとも一方の重合体を含む。
【0179】
「L-乳酸又はD-乳酸と共重合可能な化合物」としては、グリコール酸、ジメチルグリコール酸、3-ヒドロキシ酪酸、4-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシプロパン酸、3-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシ吉草酸、3-ヒドロキシ吉草酸、4-ヒドロキシ吉草酸、5-ヒドロキシ吉草酸、2-ヒドロキシカプロン酸、3-ヒドロキシカプロン酸、4-ヒドロキシカプロン酸、5-ヒドロキシカプロン酸、6-ヒドロキシカプロン酸、6-ヒドロキシメチルカプロン酸、マンデル酸等のヒドロキシカルボン酸;グリコリド、β-メチル-δ-バレロラクトン、γ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等の環状エステル;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テレフタル酸等の多価カルボン酸及びこれらの無水物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール、1,4-ヘキサンジメタノール等の多価アルコール;セルロース等の多糖類;α-アミノ酸等のアミノカルボン酸;等を挙げられる。
【0180】
「L-乳酸又はD-乳酸と、該L-乳酸又はD-乳酸と共重合可能な化合物とのコポリマー」としては、らせん結晶を生成可能なポリ乳酸シーケンスを有する、ブロックコポリマー又はグラフトコポリマーが挙げられる。
【0181】
ポリ乳酸系高分子中におけるコポリマー成分に由来する構造の濃度は20mol%以下であることが好ましい。
例えば、ポリ乳酸系高分子中における、乳酸に由来する構造と、乳酸と共重合可能な化合物(コポリマー成分)に由来する構造と、のモル数の合計に対して、コポリマー成分に由来する構造の濃度が20mol%以下であることが好ましい。
【0182】
ポリ乳酸系高分子の製造方法としては、例えば、特開昭59-096123号公報、及び特開平7-033861号公報に記載されている乳酸を直接脱水縮合して得る方法;米国特許2,668,182号等に記載されている乳酸の環状二量体であるラクチドを用いて開環重合させる方法;等が挙げられる。
【0183】
さらに、上記各製造方法により得られたポリ乳酸系高分子は、光学純度を95.00%ee以上とするために、例えば、ポリ乳酸をラクチド法で製造する場合、晶析操作により光学純度を95.00%ee以上の光学純度に向上させたラクチドを、重合することが好ましい。
【0184】
(動物性タンパク質)
以下、光学活性ポリペプチド(A2)の一例である動物性タンパク質について説明する。
【0185】
動物性タンパクとしては、上述したフィブロイン及びクモ糸タンパク質の他に、セリシン、コラーゲン、ケラチン、エラスチン等が挙げられる。
なかでも、光学活性ポリペプチド(A2)は、フィブロイン及びクモ糸タンパク質の少なくとも一方を含むことが好ましく、フィブロイン及びクモ糸タンパク質の少なくとも一方からなることがより特に好ましい。
【0186】
クモ糸タンパク質は、天然クモ糸タンパク質、又は、天然クモ糸タンパク質に由来又は類似(以下、これらをまとめて「由来」という。)するものであればよく、特に限定されない。
「天然クモ糸タンパク質に由来するもの」とは、天然クモ糸タンパク質が有するアミノ酸の反復配列と同様又は類似のアミノ酸配列を有するものである。「天然クモ糸タンパク質に由来するもの」として、例えば、組換えクモ糸タンパク質、天然クモ糸タンパク質の変異体、天然クモ糸タンパク質の類似体、天然クモ糸タンパク質の誘導体などが挙げられる。
【0187】
クモ糸タンパク質としては、強靭性に優れるという観点から、クモの大瓶状腺で産生される大吐糸管しおり糸タンパク質、又は、大吐糸管しおり糸タンパク質に由来するクモ糸タンパク質が好ましい。
大吐糸管しおり糸タンパク質としては、アメリカジョロウグモ(Nephila clavipes)に由来する大瓶状腺スピドロインである、MaSp1又はMaSp2、ニワオニグモ(Araneus diadematus)に由来する、ADF3又はADF4などが挙げられる。
【0188】
クモ糸タンパク質は、クモの小瓶状腺で産生される小吐糸管しおり糸タンパク、又は、小吐糸管しおり糸タンパクに由来するクモ糸タンパク質であってもよい。
小吐糸管しおり糸タンパク質としては、アメリカジョロウグモ(Nephila clavipes)に由来する小瓶状腺スピドロインである、MiSp1、MiSp2が挙げられる。
【0189】
その他にも、クモ糸タンパク質は、クモの鞭毛状腺(flagelliform gland)で産生される横糸タンパク質、又は、この横糸タンパク質に由来するクモ糸タンパク質であってもよい。
横糸タンパク質としては、例えば、アメリカジョロウグモ(Nephila clavipes)に由来する鞭毛状絹タンパク質(flagelliform silk protein)などが挙げられる。
【0190】
上述した大吐糸管しおり糸タンパク質に由来するクモ糸タンパク質としては、例えば、下記式(2)で示されるアミノ酸配列の単位を含む組換えクモ糸タンパク質が挙げられる。
組換えクモ糸タンパク質は、下記式(2)で示されるアミノ酸配列の単位を2以上含んでもよい。アミノ酸配列の単位数は、好ましくは4以上、より好ましくは6以上である。
組換えクモ糸タンパク質が下記式(2)で示されるアミノ酸配列の単位を2以上含む場合、2以上のアミノ酸配列の単位は、同一であっても異なっていてもよい。
【0191】
REP1-REP2 … 式(2)
〔式(2)中、REP1は、主としてアラニンにより構成され(X1)pで表されるポリアラニン領域であり、REP2は、10~200残基のアミノ酸からなるアミノ酸配列である。〕
【0192】
式(2)において、REP1は、主としてアラニンにより構成され(X1)pで表されるポリアラニン領域である。REP1として、好ましくはポリアラニンである。
(X1)pにおいて、pは、整数であり、特に限定されず、好ましくは2~20、より好ましくは4~12である。
(X1)pにおいて、X1は、アラニン(Ala)、セリン(Ser)、又はグリシン(Gly)を示す。
(X1)pで表されるポリアラニン領域において、アラニンの合計残基数が、上記ポリアラニン領域のアミノ酸の合計残基数の80%以上(より好ましくは85%以上)であることが好ましい。
式(2)中のREP1において、連続して並んでいるアラニンは、好ましくは2残基以上、より好ましくは3残基以上、さらに好ましくは4残基以上、特に好ましくは5残基以上である。
式(2)中のREP1において、連続して並んでいるアラニンは、好ましくは20残基以下、より好ましくは16残基以下、さらに好ましくは12残基以下、特に好ましくは10残基以下である。
【0193】
式(2)において、REP2は、10~200残基のアミノ酸からなるアミノ酸配列である。このアミノ酸配列中に含まれる、グリシン、セリン、グルタミン、プロリン及びアラニンの合計残基数は、上記アミノ酸残基数全体に対し、好ましくは40%以上、より好ましくは50%以上、特に好ましくは60%以上である。
【0194】
上記小吐糸管しおり糸タンパク質に由来するクモ糸タンパク質としては、例えば、下記式(3)で示されるアミノ酸配列を含む組換えクモ糸タンパク質が挙げられる。
【0195】
REP3-REP4-REP5 … 式(3)
〔式(3)中、REP3は、(Gly-Gly-Z)mで表されるアミノ酸配列であり、REP4は、(Gly-Ala)lで表されるアミノ酸配列であり、REP5は(Ala)rで表されるアミノ酸配列である。
REP3において、Zは任意の一つのアミノ酸を意味する。
REP3において、mは1~4であり、REP4において、lは、0~4であり、REP5において、rは、1~6である。〕
【0196】
REP3において、Zは任意の一つのアミノ酸を意味するが、特にAla、Tyr及びGlnからなる群から選ばれる一つのアミノ酸であることが好ましい。
【0197】
上述した組換えクモ糸タンパク質(例えば、式(2)で示されるアミノ酸配列の単位を含む組換えクモ糸タンパク質、式(3)で示されるアミノ酸配列を含む組換えクモ糸タンパク質、等)は、組換えの対象となる天然型クモ糸タンパク質をコードする遺伝子を含有する発現ベクターで形質転換した宿主を用いて製造することができる。
【0198】
第1長尺状有機圧電体121等は、圧電性の観点から、光学活性ポリペプチド(A2)からなる繊維を含むことが好ましい。
光学活性ポリペプチド(A2)からなる繊維としては、光学活性を有する動物性タンパク質からなる繊維が挙げられる。光学活性を有する動物性タンパク質からなる繊維としては、例えば、シルク、ウール、モヘヤ、カシミア、キャメル、ラマ、アルパカ、ビキューナ、アンゴラ、クモ糸、等が挙げられる。
光学活性ポリペプチド(A2)からなる繊維は、圧電性の観点から、シルク及びクモ糸の少なくとも一方を含むことが好ましく、シルク及びクモ糸の少なくとも一方からなることがより好ましい。
【0199】
シルクとしては、生糸(raw silk)、精錬シルク、再生シルク、蛍光シルク等が挙げられる。
シルクとしては、生糸又は精錬シルクが好ましく、精製シルクが特に好ましい。
精錬シルクとは、セリシンとフィブロインとの2重構造である生糸からセリシンを取り除いたシルクを意味し、精錬とは、生糸からセリシンを取り除く操作を意味する。生糸の色は艶の無い白色であるが、生糸からセリシンを取り除くこと(即ち、精錬)により、艶の無い白色から光沢がある白銀色へと変化する。精錬により、柔らかい風合いが増す。
【0200】
第1長尺状有機圧電体121等は、圧電性の観点から、光学活性ポリペプチド(A2)からなる長繊維(以下、「光学活性ポリペプチド繊維」という場合がある。)を含むことが好ましい。この理由は、短繊維に比べて長繊維の方が、第1圧電センサ10Aに印加された応力が第1圧電体12Aへ伝わり易いためと考えられる。
「長繊維」とは、第1圧電センサ10Aの長尺方向の一端から他端まで連続して巻回できる長さを有する繊維を意味する。
シルク、ウール、モヘヤ、カシミア、キャメル、ラマ、アルパカ、ビキューナ、アンゴラ、及びクモ糸は、いずれも長繊維に該当する。長繊維の中でも、シルク及びクモ糸が、圧電性の観点から、好ましい。
【0201】
第1長尺状有機圧電体121が上記繊維を含む場合、第1長尺状有機圧電体121は、少なくとも1本の上記繊維からなる糸を少なくとも1本含むことが好ましい。
第1長尺状有機圧電体121が上記糸を含む場合の態様としては、第1長尺状有機圧電体121が1本の上記糸からなる態様、第1長尺状有機圧電体121が複数の上記糸の集合体である態様、等が挙げられる。
上記糸は、撚糸であっても無撚糸であってもよいが、圧電性の観点から、撚数が500T/m以下である糸(即ち、撚数500T/m以下の撚糸又は無撚糸(撚数0T/m))であることが好ましい。
無撚糸としては、1本の原糸、複数本の原糸の集合体、等が挙げられる。
【0202】
(第1長尺状有機圧電体、及び第2長尺状有機圧電体)
次に、第1長尺状有機圧電体121等について、更に説明する。
【0203】
<安定化剤>
第1長尺状有機圧電体121等は、更に、一分子中に、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を有する重量平均分子量が200以上60000以下の安定化剤(B)を含有することが好ましい。これにより、耐湿熱性をより向上させることができる。
【0204】
安定化剤(B)としては、国際公開第2013/054918号の段落0039~0055に記載された「安定化剤(B)」を用いることができる。
【0205】
安定化剤(B)として用い得る、一分子中にカルボジイミド基を含む化合物(カルボジイミド化合物)としては、モノカルボジイミド化合物、ポリカルボジイミド化合物、環状カルボジイミド化合物が挙げられる。
モノカルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ビス-2,6-ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、等が好適である。
ポリカルボジイミド化合物としては、種々の方法で製造したものを使用することができる。従来のポリカルボジイミドの製造方法(例えば、米国特許第2941956号明細書、特公昭47-33279号公報、J.0rg.Chem.28,2069-2075(1963)、Chemical Review 1981,Vol.81 No.4、p619-621)により、製造されたものを用いることができる。具体的には特許4084953号公報に記載のカルボジイミド化合物を用いることもできる。
ポリカルボジイミド化合物としては、ポリ(4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(N,N’-ジ-2,6-ジイソプロピルフェニルカルボジイミド)、ポリ(1,3,5-トリイソプロピルフェニレン-2,4-カルボジイミド、等が挙げられる。
環状カルボジイミド化合物は、特開2011-256337号公報に記載の方法などに基づいて合成することができる。
カルボジイミド化合物としては、市販品を用いてもよく、例えば、東京化成社製、B2756(商品名)、日清紡ケミカル社製、カルボジライト(登録商標)LA-1(商品名)、ラインケミー社製、Stabaxol P、Stabaxol P400、Stabaxol I(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0206】
安定化剤(B)として用い得る、一分子中にイソシアネート基を含む化合物(イソシアネート化合物)としては、イソシアン酸3-(トリエトキシシリル)プロピル、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、等が挙げられる。
【0207】
安定化剤(B)として用い得る、一分子中にエポキシ基を含む化合物(エポキシ化合物)としては、フェニルグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールA-ジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA-ジグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。
【0208】
安定化剤(B)の重量平均分子量は、200以上60000以下であり、好ましくは200以上30000以下、より好ましくは300以上18000以下であり、特に好ましくは200以上900以下である。
る。
分子量が上記範囲内であれば、安定化剤(B)がより移動しやすくなり、耐湿熱性が向上する。
なお、重量平均分子量200以上900以下は、数平均分子量200以上900以下とほぼ一致する。重量平均分子量200以上900以下の場合、分子量分布が1.0である場合があり、この場合には、「重量平均分子量200以上900以下」を、単に「分子量200以上900以下」と言い換えることもできる。
【0209】
第1長尺状有機圧電体121等が安定化剤(B)を含有する場合、第1長尺状有機圧電体121等は、安定化剤を1種のみ含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
第1長尺状有機圧電体121等が安定化剤(B)を含む場合、安定化剤(B)の含有量は、ヘリカルキラル高分子(A1)100質量部に対し、好ましくは0.01質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.01質量部以上5質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以上3質量部以下、特に好ましくは0.5質量部以上2質量部以下である。
安定化剤(B)の含有量が0.01質量部以上であると、耐湿熱性がより向上する。
上記含有量が10質量部以下であると、透明性の低下がより抑制される。
【0210】
安定化剤(B)の好ましい態様としては、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を有し、且つ、数平均分子量が200以上900以下の安定化剤(B1)と、カルボジイミド基、エポキシ基、及びイソシアネート基からなる群より選ばれる1種類以上の官能基を1分子内に2以上有し、且つ、重量平均分子量が1000以上60000以下の安定化剤(B2)とを併用するという態様が挙げられる。なお、数平均分子量が200以上900以下の安定化剤(B1)の重量平均分子量は、大凡200以上900以下であり、安定化剤(B1)の数平均分子量と重量平均分子量とはほぼ同じ値となる。
安定化剤として安定化剤(B1)と安定化剤(B2)とを併用する場合、安定化剤(B1)を多く含むことが透明性向上の観点から好ましい。
具体的には、安定化剤(B1)100質量部に対して、安定化剤(B2)が10質量部以上150質量部以下の範囲であることが、透明性と耐湿熱性の両立という観点から好ましく、50質量部以上100質量部以下の範囲であることがより好ましい。
【0211】
以下、安定化剤(B)の具体例(安定化剤(B-1)~(B-3))を示す。
【0212】
【0213】
以下、安定化剤(B-1)~(B-3)について、化合物名、市販品等を示す。
・安定化剤(B-1)… 化合物名は、ビス-2,6-ジイソプロピルフェニルカルボジイミドである。重量平均分子量(この例では、単なる「分子量」に等しい)は、363である。市販品としては、ラインケミー社製「Stabaxol I」、東京化成社製「B2756」が挙げられる。
・安定化剤(B-2)… 化合物名は、ポリ(4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)である。市販品としては、重量平均分子量約2000のものとして、日清紡ケミカル社製「カルボジライト(登録商標)LA-1」が挙げられる。
・安定化剤(B-3)… 化合物名は、ポリ(1,3,5-トリイソプロピルフェニレン-2,4-カルボジイミド)である。市販品としては、重量平均分子量約3000のものとして、ラインケミー社製「Stabaxol P」が挙げられる。重量平均分子量20000のものとして、ラインケミー社製「Stabaxol P400」が挙げられる。
【0214】
<その他の成分>
第1長尺状有機圧電体121等は、必要に応じ、その他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂等の公知の樹脂;シリカ、ヒドロキシアパタイト、モンモリロナイト等の公知の無機フィラー;フタロシアニン等の公知の結晶核剤;安定化剤(B)以外の安定化剤;等が挙げられる。
無機フィラー及び結晶核剤としては、国際公開第2013/054918号の段落0057~0058に記載された成分を挙げることもできる。
【0215】
(配向度F)
第1長尺状有機圧電体121等の配向度Fは、好ましくは0.5以上1.0未満、より好ましくは0.7以上1.0未満、さらに好ましくは0.8以上1.0未満である。
第1長尺状有機圧電体121等の配向度Fが0.5以上であれば、延伸方向に配列するヘリカルキラル高分子(A1)の分子鎖(例えばポリ乳酸分子鎖)が多い。その結果、配向結晶の生成する率が高くなり、圧電性が向上する。
第1長尺状有機圧電体121等の配向度Fが1.0未満であれば、縦裂強度が更に向上する。
【0216】
(結晶化度)
第1長尺状有機圧電体121等の結晶化度は、上述のX線回折測定(広角X線回折測定)によって測定される値である。
第1長尺状有機圧電体121等の結晶化度は、好ましくは20%以上80%以下、より好ましくは25%以上70%以下、更に好ましくは30%以上60%以下である。
結晶化度が20%以上であることにより、圧電性が高く維持される。結晶化度が80%以下であることにより、第1長尺状有機圧電体121等の透明性が高く維持される。
結晶化度が80%以下であることにより、例えば、第1長尺状有機圧電体121等の原料となる有機圧電フィルムを延伸によって製造する際に白化や破断がおきにくい。そのため、第1長尺状有機圧電体121等を製造しやすい。結晶化度が80%以下であることにより、例えば、第1長尺状有機圧電体121等の原料(例えばポリ乳酸)を溶融紡糸後に延伸によって製造する際に屈曲性が高く、しなやかな性質を有する繊維となる。そのため第1長尺状有機圧電体121等を製造しやすい。
【0217】
<圧電デバイスの用途>
本実施形態の圧電デバイス1は、例えば、センサー用途(着座センサー等の力センサー、圧力センサー、変位センサー、変形センサー、振動センサー、超音波センサー、生体センサー、ラケット、ゴルフクラブ、バット等の各種球技用スポーツ用具の打撃時の加速度センサーやインパクトセンサー等、ぬいぐるみのタッチ・衝撃センサー、ベッドの見守りセンサー、ガラスや窓枠等のセキュリティセンサー等)、アクチュエータ用途(シート搬送用デバイス等)、エネルギーハーベスティング用途(発電ウェア、発電靴等)、ヘルスケア関連用途(Tシャツ、スポーツウェア、スパッツ、靴下等の各種衣類、サポーター、ギプス、おむつ、乳幼児用手押し車のシート、車いす用シート、医療用保育器のマット、靴、靴の中敷、時計等に本センサーを設けた、ウェアラブルセンサー等)などとして利用することができる。
配設方法としては、例えば、第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bを対象物で挟み込む、対象物に粘接着剤で固定する等の各種方法が挙げられる。
上記用途の中でも、本実施形態の圧電デバイス1は、センサー用途として利用することが好ましい。
具体的に、本実施形態の圧電デバイス1は、力センサーに搭載して利用されることが好ましい。
圧電デバイス1は、応力によって発生する電圧を電界効果トランジスタ(FET)のゲート・ソース間に加えることでFETのスイッチングが可能であり、応力によってON-OFFが可能なスイッチとして利用することもできる。
本実施形態の第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bは、例えば、車載用途;振動・音響センシングを利用した自動車ハンドル把持検出用途、振動・音響センシングを利用した共振スペクトラムによる車載機器操作システム用途、車載ディスプレイのタッチセンサー用途、振動体用途、自動車ドア及び自動車ウィンドウの挟まれ検知センサー用途、車体振動センサー用途等に特に適している。
【0218】
以下、本実施形態に係る圧電デバイス1を備えた力センサーの構成について、図面を参照しながら説明する。
図11は、本実施形態に係る力センサーの概念図である。なお、
図11中、後述する第2ユニットは、省略されている。
本実施形態に係る力センサー50は、第1ユニットと、第2ユニットとを有する。第1ユニットと第2ユニットとは並列に配置される。第1ユニットは、第1圧電センサ10Aを有する。第2ユニットは、第2圧電センサ10Bを有する。
第1ユニットは、第2の絶縁体としての円筒形状のゴム系熱収縮チューブ(以下、単に「収縮チューブ」とも称する)51と、収縮チューブ51の内部に配置された第1圧電センサ10Aと、収縮チューブ51の両端部に配置された一対の圧着端子(取出し電極)52と、を備える。一対の圧着端子52は、本体部521と、圧着部522とからなり、中央部に貫通孔523を有する。第1圧電センサ10Aは、第1内部導体11Aと、第1内部導体11Aの周りに一方向に螺旋状に巻回された第2圧電体12Aと、第1圧電体12Aの外周面に一方向に螺旋状に巻回された第1外部導体13Aと、を備える。
第1圧電センサ10Aにおいては、第1内部導体11Aの一端(
図11の右端)が、収縮チューブ51の外側に延在して、圧着部522で圧着されて圧着端子52に電気的に接続されている。一方、第1外部導体13Aは、第1内部導体11Aの一端側から他端側に向かって巻回された後、第1内部導体11Aの他端(
図11の左端)を越えて延在し、その延在部分が収縮チューブ51内で応力緩和部53を形成している。
第1外部導体13Aは、この応力緩和部53を経た後、収縮チューブ51のさらに外側(
図11の左端)に延在して、圧着部522で圧着されて圧着端子52に電気的に接続されている。
応力緩和部53は、
図7に示すように、たるんだ第1外部導体13Aからなる。応力緩和部53においては、力センサー50に張力(応力)が作用されたときに、たるんだ部分が延びることで第1圧電体12Aに過度な力が負荷されるのを抑制する。
第1圧電体12Aは、長尺状有機圧電体121からなり、両面には機能層としてアルミ蒸着膜(不図示)が蒸着されている。なお、一対の圧着端子52は、力センサー50の出力信号を処理する外部回路等(不図示)に接続されている。
なお、
図11で示した実施形態では、応力緩和部53として、たるんだ第1外部導体13Aが配置されているが、本開示の実施形態はこれに限定されず、第1圧電センサ10Aの少なくともいずれか一方の端部、或いは両端部に、線状の応力緩和部を接着、糸結び目等の方法等により張力が伝達するように配置することにより応力を緩和する機能を力センサー50に付与してもよい。
このとき線状の応力緩和部には電気的な接続の機能は存在しないが、電気的接続機能は、応力緩和部とは独立に、第1圧電センサ10Aの端部から第1内部導体11A及び第1外部導体13Bを同軸ケーブル等に接続することにより、応力や歪の電圧信号を検出することが可能となる。
このとき応力緩和部の材料及び形態は特に限定されず、例えば、天然ゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム等の伸縮性のある弾性材料からなる糸、紐、チューブ等;リン青銅等の金属材料、線状のポリマー等からなるスプリング;等が挙げられる。応力緩和部と電気的接続部とをそれぞれ独立に別の部位に配置することにより、電気的接続部の最大伸長量に起因する応力緩和部の歪量の制限が無くなり、張力センサーとしての最大歪量を増大させることが可能となる。
【0219】
以下、本実施形態の力センサー50の作用について説明する。
力センサー50に張力(応力)が作用されると、第1圧電センサ10Aに張力が作用され、第1圧電センサ10Aの第1圧電体12Aに含まれるヘリカルキラル高分子(A1)にずり力が加わり、このずり力により第1圧電センサ10Aの径方向にヘリカルキラル高分子(A1)の分極が生じる。分極方向は第1圧電センサ10Aの径方向である。これにより、張力に比例した電荷(電界)が発生し、発生した電荷は電圧信号(電荷信号)として検出される。なお、電圧信号は、圧着端子52に接続される外部回路等(不図示)で検出される。
本実施形態の力センサー50は、同軸ケーブルに備えられる内部構造と同一構造をなす第1圧電センサ10Aを備えるため、電磁シールド性が高く、ノイズに強い構造となり得る。加えて、構造が簡易であるため、例えばウェアラブルセンサーとして、身体の一部に装着して用いることができる。
第2ユニットは、第1圧電体12Aの代わりに、第2圧電体12Aを用いた他は、第1ユニットと同様の構成である。
【0220】
本実施形態の力センサーとしては、第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bに張力が作用されたときに生じる電荷(電界)を電圧信号として取り出す構成に限定されず、例えば、第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bにねじり力が作用されたときに生じる電荷(電界)を電圧信号として取り出す構成であってもよい。
【0221】
本実施形態の圧電デバイス1の用途としては、生体情報取得デバイスも好ましい。
即ち、本実施形態の生体情報取得デバイスは、本実施形態の圧電デバイス1を含む。
本実施形態の生体情報取得デバイスは、圧電デバイス1によって、被験者又は被験動物(以下、これらをまとめて「被験体」ともいう)の生体信号を検出することにより、被験体の生体情報を取得するためのデバイスである。
ここでいう生体信号としては、脈波信号(心拍信号)、呼吸信号、体動信号、心弾動、生体振戦、等が挙げられる。
生体振戦とは、身体部位(手指、手、前腕、上肢など)の律動的な不随意運動のことである。
【0222】
上記心弾動の検出には、身体の心機能による力の効果の検出も含まれる。
即ち、心臓が大動脈及び肺動脈に血液をポンピングする場合、体は、血流と反対の方向に反動力を受ける。この反動力の大きさ及び方向は、心臓の機能的な段階とともに変化する。この反動力は、身体の外側の心弾動をセンシングすることによって検出される。
【0223】
生体情報取得デバイスは、各種衣料(シャツ、スーツ、ブレザー、ブラウス、コート、ジャケット、ブルゾン、ジャンパー、ベスト、ワンピース、ズボン、パンツ、下着(スリップ、ペチコート、キャミソール、ブラジャー)、靴下、手袋、和服、帯地、金襴、冷感衣料、ネクタイ、ハンカチーフ、マフラー、スカーフ、ストール、アイマスク)、サポーター(首用サポーター、肩用サポーター、胸用サポーター、腹用サポーター、腰用サポーター、腕用サポーター、足用サポーター、肘用サポーター、膝用サポーター、手首用サポーター、足首用サポーター)、履物(スニーカー、ブーツ、サンダル、パンプス、ミュール、スリッパ、バレエシューズ、カンフーシューズ)、インソール、タオル、リュックサック、帽子(ハット、キャップ、キャスケット、ハンチング帽、テンガロンハット、チューリップハット、サンバイザー、ベレー帽)、ヘルメット、ヘルメット顎紐、頭巾、ベルト、シートカバー、シーツ、座布団、クッション、布団、布団カバー、毛布、枕、枕カバー、ソファー、イス、デスク、テーブル、シート、座席、便座、マッサージチェア、ベッド、ベッドパット、カーペット、かご、マスク、包帯、ロープ、各種ネット、バスタブ、床材、壁材、パソコン、マウス等の各種物品に配設されて使用される。
生体情報取得デバイスが配設される物品としては、履物、インソール、シーツ、座布団、クッション、布団、布団カバー、枕、枕カバー、ソファー、イス、シート、座席、便座、ベッド、カーペット、バスタブ、床材等、被験体の体重がかかる物品が好ましい。より具体的には、乳幼児用手押し車のシート、座席部、車輪、乳幼児の転落を防止するためのストッパー等;車いす用のシート、座席部等;医療用保育器のマット;等が好ましい。
【0224】
以下、生体情報取得デバイスの動作の一例を説明する。
生体情報取得デバイスは、例えばベッド上又はイスの座面上などに配設される。この生体情報取得デバイス上に被験体が、横臥、着座、又は起立する。この状態で、被験体から発せられる生体信号(体動、周期的な振動(脈、呼吸など)、人間の「かわいい」、「怖い」などの感性が原因で変化した心拍数等)によって、生体情報取得デバイスの圧電デバイス1に張力が付与されると、圧電デバイス1に含まれるヘリカルキラル高分子(A1)に分極が生じ、張力に比例した電位が発生する。この電位は被験体から発せられる生体信号に伴って経時的に変化する。例えば、被験体から発せられる生体信号が、脈、呼吸などの周期的な振動である場合には、圧電デバイス1にて発生する電位も、周期的に変化する。
圧電デバイス1への張力の付与に伴って発生した電位の経時的な変化を、電圧信号として測定モジュールにより取得する。取得される電位の経時的な変化(圧電信号)は、複数の生体信号(脈波信号(心拍信号)、呼吸信号、体動信号)の合成波である。この合成波をフーリエ変換によって周波数ごとに分離し、分離信号を生成する。生成した分離信号の各々を逆フーリエ変換することにより、分離信号の各々に対応する生体信号をそれぞれ得る。
【0225】
例えば、被験体から発せられる生体信号が心拍信号と呼吸信号との合成波である場合、生体情報取得デバイスの圧電デバイス1への張力の付与に伴って発生する電位は、経時的に周期的に変化する。
一般に、人の脈は一分間当たり50回以上90回以下であって周期としては0.6Hz以上3Hz以下である。一般に、人の呼吸は一分間当たり16回以上18回以下であって周期としては0.1Hz以上1Hz以下である。一般に、人の体動は10Hz以上である。
これらの目安に基づき、複数の生体信号の合成波を、それぞれの生体信号に分離することができる。さらに心拍信号から速度脈波の信号を得ることもできる。
複数の生体信号の合成波のそれぞれの生体信号への分離は、例えば生体信号報知プログラムを用い、上記フーリエ変換及び上記逆フーリエ変換によって行う。
【0226】
以上のようにして、複数の生体信号の合成波を、複数の生体信号の各々に分離することができる。
【0227】
更に、上記のようにして分離された生体信号の少なくとも1つに基づき、生体信号データを生成してもよい。
生体信号データは、生体信号に基づいて算出されたものであれば、特に限定されない。 生体信号データとしては、例えば、単位時間当たりの生体信号数、過去の生体信号数の平均値などが挙げられる。
【実施例】
【0228】
以下、本開示に係る実施形態を、実施例を参照して詳細に説明する。なお、本開示は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0229】
[実施例1]
(第1圧電センサの作製)
10質量部の下記の安定化剤Aと、70質量部の下記の安定化剤Bと、20質量部の下記の安定化剤Cとを混合して、安定化剤Dを得た。次いで、100質量部の下記のポリ乳酸に、1.0質量部の安定化剤Dを添加し、ドライブレンドして原料を作製した。
【0230】
ポリ乳酸、安定化剤A、安定化剤B、及び安定化剤Cは、下記の製品を用いた。
ポリ乳酸:「IngeoTM biopolymer 4032D」(NatureWorks LLC社製、ヘリカルキラル高分子(A1))
安定化剤A:「Stabaxol P400」(ラインケミー社製、重量平均分子量:20000)
安定化剤B:「Stabaxol I」(ラインケミー社製、重量平均分子量:363)
安定化剤C:「カルボジライト(登録商標)LA-1」(日清紡ケミカル社製、重量平均分子量:2000)
【0231】
作製した原料を押出成形機ホッパーに入れて、210℃に加熱しながらTダイから押し出し、50℃のキャストロールに0.3分間接触させて、厚さ150μmの予備結晶化シートを製膜した(予備結晶化工程)。得られた予備結晶化シートを70℃に加熱しながらロールツーロールで、延伸速度10m/分で延伸を開始し、3.5倍までシートの流れ方向(MD:Machine Direction)に一軸延伸した(延伸工程)。
【0232】
その後、一軸延伸フィルムを、ロールツーロールで、145℃に加熱したロール上に15秒間接触させアニール処理し、急冷を行って、有機圧電フィルムを作製した(アニール処理工程)。
【0233】
次いで、スリット加工機を用いて、有機圧電フィルムをスリットする方向と有機圧電フィルムの延伸方向とが略平行となるようにスリットして、幅0.6mm、平均厚さ50μmの有機圧電フィルムのスリットリボン(第1長尺状有機圧電体121)を得た。
【0234】
得られたスリットリボンが「圧電定数d14を有する」ものであるか否かを、上述した第1判定方法により判定したところ、スリットリボンは圧電定数d14を有することがわかった。
【0235】
(第1長尺状有機圧電体121の配向度Fの測定)
広角X線回折装置(リガク社製RINT2550、付属装置:回転試料台、X線源:CuKα、出力:40kV 370mA、検出器:シンチレーションカウンター)を用いて、第1長尺状有機圧電体121をホルダーに固定し、結晶面ピーク[(110)面/(200)面]の方位角分布強度を測定した。
得られた方位角分布曲線(X線干渉図)において、結晶化度、及びピークの半値幅(α)から下記の式より第1長尺状有機圧電体121の配向度F(C軸配向度)を算出して評価した。第1長尺状有機圧電体121の配向度Fは、0.97であった。
配向度(F)=(180°-α)/180°
(αは配向由来のピークの半値幅)
【0236】
有機圧電フィルムのスリットリボンの巻き方向が左巻きの第1圧電センサ10Aと、有機圧電フィルムのスリットリボンの巻き方向が右巻きの第2圧電センサ10Bとを、以下のようにして準備した。
【0237】
第1内部導体11Aとして、半径が0.135mm、長さ850mmの錦糸線を準備した。錦糸線は、ポリエステルの糸に銅箔が右巻きに巻かれたものを用いた。得られた有機圧電フィルムのスリットリボンを、錦糸線の外周面上に、左巻きに、錦糸線の長軸方向に対して45°の角度(螺旋角度)で、錦糸線が露出しないように隙間なく、螺旋状に巻回した。これにより、錦糸線及びスリットリボン(第1圧電体12A)からなる同軸線構造体を得た。このときの錦糸線へのスリットリボンの巻回数は17回/cmであった。
【0238】
次に、第1外部導体13Aとして、幅0.6mmにスリットカットされた銅箔リボンを準備した。この銅箔リボンを、上述した有機圧電フィルムのスリットリボンと同様の方法により、同軸線構造体の外周面上に、有機圧電フィルムのスリットリボン(第1圧電体12A)が露出しないよう隙間なく巻回した。このようにして、長さ800mmの第1圧電センサ10Aを得た。
【0239】
(第2圧電センサの作製)
錦糸線の銅箔の巻方向、有機圧電フィルムのスリットリボンの巻方向、及び銅箔リボンの巻方向を、第1圧電センサ10Aとは逆にした他は、第1圧電センサ10Aと同様にして、長さ800mmの第2圧電センサ10Bを得た。詳しくは、第2圧電センサ10Bにおいて、錦糸線の銅箔の巻方向は左巻き、有機圧電フィルムのスリットリボンの巻方向は右巻き、銅箔リボンの巻方向は左巻きである。
【0240】
以上のようにして、第1圧電センサ10A、及び第2圧電センサ10Bを得た。
【0241】
第1圧電センサ10Aでは、有機圧電フィルムのスリットリボンは、第1方向D1に向けて左巻きに巻回されていた。第2圧電センサ10Bでは、有機圧電フィルムのスリットリボンは、第1方向D1に向けて右巻きに巻回されていた。
【0242】
第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bの各々の錦糸線の平均半径及びスリットリボンの平均厚さを既述の方法で測定した。第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bのどちらも、錦糸線の平均半径は0.135mmであり、スリットリボンの平均厚さは0.05mmであった。
【0243】
<測定用装置の作製>
第1圧電センサ10A及び第1圧電センサ10Bを用いて測定用装置100を作製した。
図12は、実施例1の測定用装置100及び振動発生装置200の上面図である。
図13は、
図12の切断線XIIIの断面図である。
図14は、
図12の切断線XIVの断面図である。
図15は、
図12の方向D4から観た実施例1の測定用装置100及び振動発生装置200の側面図である。
【0244】
【0245】
図13に示すように、まず、長さ850mm、幅30mm、厚さ5mmのアルミニウム製の支持板110の上面に、両面テープ101が貼り付けられた長さ800mm、幅20mm、厚さ5mmの発泡樹脂製の下部緩衝層120を貼り付けた。次いで、上面及び下面の両面に両面テープ101が貼り付けられた長さ800mm、幅5mm、厚さ5mmの発泡樹脂製の上部緩衝層130を下部緩衝層120の上面に貼り付けた。次いで、上部緩衝層130の上面に、両面テープ101を介して、厚さ25μmのポリイミドテープからなる下部絶縁層140を貼り付けた。下部絶縁層140の上面の幅方向(
図13の左右方向)の中央部に、第1圧電センサ10Aの第1外部導体13Aと第2圧電センサ10Bの第2外部導体13Bとを接触させた状態で、横に添わせた。次いで、第1圧電センサ10A、第2圧電センサ10B、及び下部絶縁層140の上部に厚さ25μmのポリイミドテープからなる上部絶縁層150を貼り付けた。これにより、測定用装置100が得られた。
【0246】
第1圧電センサ10Aをジャックコネクタ付きの2mの第1同軸ケーブル20Aに電気的に接続した。第2圧電センサ10Bをジャックコネクタ付きの2mの第2同軸ケーブル20Bに電気的に接続した。
【0247】
詳しくは、第1同軸ケーブル20Aのメス型コネクタの中心軸側と、第1圧電センサ10Aの第1内部導体11Aの後側(
図12参照)の端部とを半田付けし、第1同軸ケーブル20Aのメス型コネクタの外側のラインと、第1圧電センサ10Aの第1外部導体13Aの後側(
図12参照)の端部とを半田付けした。同様に、第2同軸ケーブルのメス型コネクタの中心軸側と、第2圧電センサ10Bの第1内部導体11Aの後側(
図12参照)の端部とを半田付けし、第2同軸ケーブルのメス型コネクタの外側のラインと、第2圧電センサ10Bの第2外部導体13Bの後側(
図12参照)の端部とを半田付けした。
【0248】
次に、第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bの各々を、金属筐体(GND)に収容された計装アンプ30に電気的に接続した。計装アンプ30には、「INA128」(TI社製)を用いた。「INA128」は、
図4において、抵抗器R
2及び抵抗器R
3は25kΩ、抵抗器R
4~R
8は40kΩである。抵抗器R
1に50kΩを接続して、増幅率2倍の回路とした。
【0249】
計装アンプ30の第1差動入力端子VIN
-に第1同軸ケーブル20Aの第1導線21Aを接続した。計装アンプ30の第2差動入力端子VIN
+に第2同軸ケーブル20Bの第2導線21Bを接続した。計装アンプ30の基準端子Vrefに、第1同軸ケーブル20Aの第1導体層23A、及び第2同軸ケーブル20Bの第2導体層23Bを、計装アンプ30を収容する金属筐体(GND)に接続した。
【0250】
つまり、第1圧電センサ10Aの第1内部導体11Aを、計装アンプ30の第1差動入力端子VIN
-に電気的に接続した。第2圧電センサ10Bの第2内部導体11Bを、計装アンプ30の第2差動入力端子VIN
+に電気的に接続した。第1圧電センサ10Aの第1外部導体13A、及び第2圧電センサ10Bの第2外部導体13Bを、計装アンプ30の基準端子Vrefに電気的に接続した。
【0251】
次に、計装アンプ30の出力端子VOUTを電圧計に接続し、振動発生装置200を用いて、測定用装置100からの差動電圧を検知した。
【0252】
センサ感度及びノイズ測定は、回転モータ210の回転軸211を、真鍮製の円柱状回転子220の中心軸BXからずらした位置に固定して、円柱状回転子220の偏心回転に起因する振動を測定用装置100に与えることで測定を行った。
【0253】
具体的には、外径15mm、長さ31.2mmの円柱状回転子220の中心軸BXから4.5mmずらした位置に穴あけ加工をし、この穴に回転モータ210(日本電産(株)製、「SYNCHRONOUS MOTER TYPE-D-5」)の回転軸211を差し込んで固定した。回転モータ210を固定用治具230にねじ止め固定した。
【0254】
固定用治具230は、コの字型で、厚さ10mのアクリル製のアクリル板3枚で構成されている。75mm×75mmのアクリル板231は固定用治具230の上下に配置し、縦に用いる75mm×55mmのアクリル板232の中央部分をくり抜いて、回転モータ210を固定し、上下の2枚のアクリル板231の端とアクリル板232の端とを合わせてコの字型にねじ止め固定した。測定用装置100の左右方向(
図12参照)のほぼ中央部付近の上部に円柱状回転子220の長手方向が第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bの各々と垂直になるように置き、固定用治具230の回転モータ210を固定した側のアクリル板231の下に測定用装置100の第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bに沿うように載せ、下部のアクリル板232の回転モータ210を固定していない側の下側に足233をつけて、アクリル板231が下面と平行になるように高さ調節して固定した。さらに、固定用治具230の上側に金属重り240を載せて荷重を掛けて測定した。金属重り240は、外径100mm、内径40mm、厚さ17mmのドーナツ状で、重量は865gであった。
【0255】
セッティング終了後、商用電源が60Hzの地域のため、回転モータ210を回転させることで生じる1.2Hzのブレ振動を測定用装置100に伝えて、第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bの各々から得られる信号を計装アンプ30に入力し、計装アンプ30の出力をNathional Instrument社製の「USB-6001」を用いて電圧計測を行い、PC(Personal Computer)にデータを取り込み、電圧信号をFFT(Fast Fourier Transform)解析し、周波数特性を評価した。
【0256】
FFT解析は、LabViewのスペクトル計測構成ExpressVIを用い、振幅計測、ハニング窓、サンプル数:32768、レート:1kHzの条件で行った。実施例1のFFT解析した測定結果を
図16に示す。
【0257】
ノイズレベルの評価対象は、商用電源周波数(60Hz)のハムノイズとした。60Hzの信号電圧レベルは、
図16に示すように、0.027Vであった。
【0258】
センサ感度の評価対象は、振動を加えた1.2Hz近傍のピークの電圧信号レベルとした。1.2Hz近傍のピークの電圧信号レベルは、
図16に示すように、0.021Vであった。
【0259】
[実施例2]
下部絶縁層140の上面の幅方向(
図13の左右方向)の中央部において、第1圧電センサ10Aの第1外部導体13Aと第2圧電センサ10Bの第2外部導体13Bとの間隔を2mm程度離して横に添わせた他は、実施例1と同様に測定用装置100を作製した。
実施例1と同様にして、60Hzのハムノイズ及びセンサ感度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0260】
[比較例1]
第1圧電センサ10Aの替りに実施例1の第2圧電センサ10Bを用いた他は、実施例1と同様にして測定用装置100を作製した。つまり、比較例1の測定用装置100には、2本の第2圧電センサ10Bが配置されている。
比較例1において、実施例1と同様にしてFFT解析した測定結果を
図17に示す。60Hzのハムノイズ及びセンサ感度の比較例1の測定結果を表1に示す。
【0261】
[比較例2]
第2圧電センサ10Bの第2内部導体11Bを計装アンプ30の第2差動入力端子V
IN
+に電気的に接続しなかったことの他は、実施例1と同様に測定用装置100を作製した。詳しくは、計装アンプ30の第1差動入力端子V
IN
-に第1圧電センサ10Aの第1内部導体11Aを電気的に接続し、計装アンプ30の第2差動入力端子V
IN
+に、計装アンプ30を収容する金属筐体(GND)を接続した。
比較例2において、実施例1と同様にしてFFT解析した測定結果を
図18に示す。60Hzのハムノイズ及びセンサ感度の比較例2の測定結果を表1に示す。
【0262】
[比較例3]
第2圧電センサ10Bの構成を実施例1の第1圧電センサ10Aの構成に変更したこと、第1同軸ケーブル20Aの第1導線21Aを金属筐体(GND)に接続し、かつ第1同軸ケーブル20Aの第1導体層23Aを計装アンプ30の第1差動入力端子VIN
-に接続したことの他は、実施例1と同様にして、60Hzのハムノイズ及びセンサ感度を測定した。測定結果を表1に示す。
比較例3では、第1圧電センサ10Aの第1内部導体11Aは金属筐体(GND)に電気的に接続され、第1圧電センサ10Aの第1外部導体13Aは計装アンプ30の第1差動入力端子VIN
-に電気的に接続されている。
【0263】
[実施例3]
<第1長尺状有機圧電体121の準備>
第1長尺状有機圧電体121の有機圧電材料として、生糸シルクを準備した。生糸シルクは、光学活性ポリペプチドからなる長繊維である。生糸シルクは、21デニールであった。生糸シルクの太さは0.06mm~0.04mmであった。
【0264】
生糸シルクが「圧電定数d14を有する」ものであるか否かを、リボン状の生糸シルク硬化物を用いて、上述した第1判定方法により判定したところ、生糸シルクは圧電定数d14を有することがわかった。
生糸シルク硬化物は、リボン状物であり、4本の生糸シルクにシアノアクリレート系接着剤(東亞合成株式会社製の「201」)を含侵させて、シアノアクリレート系接着剤を硬化して得られた。4本の生糸シルクは、生糸シルクの長さ方向に直交する方向において並列され、かつ隣接する生糸シルク同士が接触するように配置されている。
【0265】
(光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fの測定)
広角X線回折装置(リガク社製の「RINT2550」、付属装置:回転試料台、X線源:CuKα、出力:40kV 370mA、検出器:シンチレーションカウンター)を用い、生糸シルク(光学活性ポリペプチド繊維)をホルダーに固定し、結晶面ピーク[2θ=20°]の方位角分布強度を測定した。
得られた方位角分布曲線(X線干渉図)において、ピークの半値幅(α)から、下記式(a)により、生糸シルク(光学活性ポリペプチド繊維)の配向度F(c軸配向度)を算出した。
光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fは、0.91であった。
配向度(F)=(180°-α)/180° … (a)
(αは配向由来のピークの半値幅)
【0266】
<圧電基材の作製>
第1内部導体11Aとして、株式会社明清産業製の錦糸線「U24-01-00」(線径0.26mm、長さ200mm)を準備した。
生糸シルク(第1長尺状有機圧電体121)を第1内部導体11Aの外周面上に、螺旋角度が約45°となるように、左巻きで極力隙間なく、巻きつけた。これにより、第1内部導体11Aの外周面上に層(以下、「生糸シルク層」という。)を形成し、第1圧電体前駆体を得た。生糸シルク層は、第1内部導体11Aの外周面の全面を覆っていた。つまり、第1内部導体11Aの外周面は露出していなかった。
なお、「左巻き」とは、第1内部導体11A(錦糸線)の軸方向の一端から見たときに、内部導体の手前側から奥側に向かって生糸シルクが左巻きで巻回していることを示す。「螺旋角度」とは、第1内部導体11Aの軸方向に対する、生糸シルクの長さ方向とがなす角度を示す。
【0267】
収束剤として、東亞合成株式会社製の「201」(シアノアクリレート系接着剤)を準備した。
第1圧電体前駆体の生糸シルク層の外周面上に収束剤(シアノアクリレート系接着剤)を滴下し、生糸シルクの内部に染み込ませた。その後、すぐにキムワイプで余剰分の収束剤を生糸シルクの外周面からふき取り、室温で放置し、収束剤を硬化させた。これにより、圧電糸層から第1圧電体12Aを形成した。
【0268】
ジャックコネクタ付きの2mの第1同軸ケーブル20Aを準備した。この第1圧電体12Aの両端部の圧電層の一部を取り除いて第1内部導体11Aを露出させた。第1内部導体11Aが露出した状態にて、第1同軸ケーブル20Aのメス型コネクタの中心軸側と、2層圧電基材の第1内部導体11Aの後側(
図12参照)の端部とを半田付けして、2層圧電基材を得た。
第1外部導体13Aの長尺状導体として、平角断面の圧延銅箔リボンを準備した。圧延銅箔リボンの幅は、0.3mmであった。圧延銅箔リボンの厚さは30μmであった。
この圧延銅箔リボンを、第1圧電体12Aの外周面上に、第1圧電体12Aが露出しないように隙間なく右巻きに巻回した。これにより、第1圧電体12Aの外周に配置された第1外部導体13Aを形成した。
第1同軸ケーブル20Aのメス型コネクタの外側のラインと、第1圧電センサ10Aの第1外部導体13Aの後側(
図12参照)の端部とを半田付けした。
以上のようにして、第1同軸ケーブル20Aと電気的に接続された、長さ150mmの第1圧電センサ10Aを作製した。
【0269】
第1圧電センサ10Aと同様にして、第2同軸ケーブル20Bと電気的に接続された、長さ150mmの第2圧電センサ10Bを作製した。第2圧電センサ10Bでは、生糸シルクの巻方向は右巻き、圧延銅箔リボンの巻方向は左巻きである。
【0270】
長さ150mmの第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bの各々を下部絶縁層140(
図13)の上面に載せて貼り付けたこと、下部絶縁層140の上面の幅方向(
図13の左右方向)の中央部において、第1圧電センサ10Aの第1外部導体13Aと第2圧電センサ10Bの第2外部導体13Bとの間隔を1mm程度離して横に添わせたことの他は、実施例1と同様に測定用装置100を作製した。
第1同軸ケーブル20Aの第1導線21Aを、オペアンプを用いたバッファ回路、及び10倍増幅回路をこの順で経由して、計装アンプ30の第1差動入力端子V
IN
-に接続したこと、第2同軸ケーブル20Bの第2導線21Bを、オペアンプを用いたバッファ回路、及び10倍増幅回路をこの順で経由して、計装アンプ30の第2差動入力端子V
IN
+に接続したことの他は、実施例1と同様にして、60Hzのハムノイズ及びセンサ感度を測定した。測定結果を表2に示す。
【0271】
[比較例4]
実施例3の第1圧電センサ10Aを用いなかったこと(すなわち、第2圧電センサ10Bを一本のみ用いたこと)、支持板110(
図13参照)と第1両面テープ101(
図13参照)との間に、固定のためにカプトンテープを貼り付けたことの他は、実施例3と同様にして測定用装置100を作製した。
計装アンプ30の第1差動入力端子V
IN
-と、計装アンプ30を収容する金属筐体(GND)とを電気的に接続した。
実施例3と同様にして、60Hzのハムノイズ及びセンサ感度を測定した。測定結果を表1に示す。
【0272】
(実施例4)
シート状圧電体として、PVDFの分極済みシートを約0.6mm幅にスリットしてテープ状に加工された、PVDFテープを準備した。
PVDFの分極済みシートは、株式会社和貴研究所製の「ピエゾフィルムシート」(厚み:50μm)である。
【0273】
PVDFテープが圧電定数d33及び圧電定数d31を有するものであるか否かを、上述した第2判定方法により判定したところ、PVDFテープは圧電定数d33及び圧電定数d31を有することがわかった。
【0274】
第1内部導体11A、第1外部導体13A、第2内部導体11B、及び第2外部導体13Bとして、第1内部導体11A及び第2外部導体13Bの長さを150mmとしたことの他は、実施例1と同様の材料を準備した。
スリットリボンの替りにPVDFテープを用いたこと、及びPVDFテープの巻回方法が異なることの他は、実施例1と同様にして、長さ150mmの第1圧電センサ10Aを作製した。第1圧電センサ10Aの作製方法と同様にして、長さ150mmの第2圧電センサ10Bを作製した。
ここで、第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bの各々に加圧した際に逆特性の電圧を発生させるように(すなわち、PVDFテープを巻く際に、PVDFテープの分極方向が逆面になるように)、圧電体P+(第1圧電体12A)と圧電体P-(第1圧電体12B)とを作製した。
具体的には、第1圧電センサ10Aに加圧した際にプラス電圧が発生する側が内側(第1内部導体11A側)となるように、PVDFテープを第1内部導体11Aの外周面上に右巻き(S巻)して、圧電体P+(第1圧電体12A)を形成した。第2圧電センサ10Bに上記の加圧と同様の加圧した際にプラス電圧が発生する側が外側(第2内部導体11B側とは反対側)となるように、右巻き(S巻)し、圧電体P-(第2圧電体12B)を形成した。
実施例3と同様にして、60Hzのハムノイズ及びセンサ感度を測定した。測定結果を表2に示す。
【0275】
[比較例5]
実施例4の第1圧電センサ10Aを用いなかったこと(すなわち、実施例4の第2圧電センサ10Bのみを一本用いたこと)、支持板110(
図13参照)と第1両面テープ101(
図13参照)との間にカプトンテープで貼り付けたことの他は、実施例4と同様にして測定用装置100を作製した。
計装アンプ30の第1差動入力端子VIN-と、計装アンプ30を収容する金属筐体(GND)とを電気的に接続した。
実施例3と同様にして、60Hzのハムノイズ及びセンサ感度を測定した。測定結果を表2に示す
【0276】
【0277】
【0278】
実施例1、実施例2、比較例1~比較例3のセンサの長さは、表1に示すように800mmであった。実施例3、実施例4、比較例4及び比較例5のセンサの長さは、表2に示すように200mmであった。
【0279】
比較例1の圧電デバイスは、第1圧電センサ10Aと、第2圧電センサ10Bと、計装アンプ30とを備える。第1内部導体11Aは、計装アンプ30の第1差動入力端子VIN
-に電気的に接続されていた。第2内部導体11Bは、計装アンプ30の第2差動入力端子VIN
+に電気的に接続されていた。
しかしながら、第2電圧の正負は、第1電圧と同一である。そのため、表1に示すように、センサ感度が低かった。
以上から、比較例1の圧電デバイスは、外力を感度良く検出することができないことがわかった。
【0280】
比較例2の圧電デバイスは、第1圧電センサ10Aと、第2圧電センサ10Bと、計装アンプ30とを備える。第2電圧の正負は、第1電圧と異なる。第1内部導体11Aは、計装アンプ30の第1差動入力端子VIN
-に電気的に接続されていた。
しかしながら、比較例2では、第2内部導体11Bは、金属筐体(GND)に電気的に接続されていた。そのため、表1に示すように、センサ感度は低く、60Hzのハムノイズが非常に高かった。
以上から、比較例2の圧電デバイスは、外力を感度良く検出することができないことがわかった。
【0281】
比較例3の圧電デバイスは、第1圧電センサ10Aと、第2圧電センサ10Bと、計装アンプ30とを備える。第2電圧の正負は、第1電圧と異なる。第2内部導体11Bは、計装アンプ30の第2差動入力端子VIN
+に電気的に接続されていた。
しかしながら、比較例3では、第1内部導体11Aは、金属筐体(GND)に電気的に接続されていた。そのため、表1に示すように、60Hzのハムノイズが非常に高かった。
以上から、比較例3の圧電デバイスは、外力を感度良く検出することができないことがわかった。
【0282】
これに対し、実施例1及び実施例2の圧電デバイスは、第1圧電センサ10Aと、第2圧電センサ10Bと、計装アンプ30とを備える。第2電圧の正負は、第1電圧と異なる。第1内部導体11Aは、計装アンプ30の第1差動入力端子VIN
-に電気的に接続されていた。第2内部導体11Bは、計装アンプ30の第2差動入力端子VIN
+に電気的に接続されていた。
そのため、表1に示すように、60Hzのハムノイズのレベルは比較例2及び比較例3より低かった。つまり、実施例1及び実施例2の圧電デバイスが外来の電磁ノイズを低減できる効果を確認できた。
さらに、第1圧電センサ10A及び第2圧電センサ10Bの各々の出力電圧を差動増幅することで、外来の電磁ノイズは低減され、センサ感度は比較例1及び比較例2より高かった。つまり、実施例1及び実施例2の圧電デバイスは、高感度かつ低ノイズでの高SN比のセンシングが可能であることがわかった。
以上より、実施例1及び実施例2の圧電デバイスは、外力を感度良く検出することができることがわかった。
【0283】
比較例4の圧電デバイスは、第2圧電センサ10Bと、計装アンプ30とを備える。第2内部導体11Bは、計装アンプ30の第2差動入力端子VIN
+に電気的に接続されていた。
しかしながら、比較例4では、圧電デバイスは、第1圧電センサ10Aを備えなかった。そのため、表2に示すように、センサ感度は低く、60Hzのハムノイズは高かった。
以上から、比較例4の圧電デバイスは、外力を感度良く検出することができないことがわかった。
【0284】
これに対し、実施例3の圧電デバイスは、第1圧電センサ10Aと、第2圧電センサ10Bと、計装アンプ30とを備える。第2電圧の正負は、第1電圧と異なる。第1内部導体11Aは、計装アンプ30の第1差動入力端子VIN
-に電気的に接続されていた。第2内部導体11Bは、計装アンプ30の第2差動入力端子VIN
+に電気的に接続されていた。
そのため、表2に示すように、60Hzのハムノイズのレベルは比較例4より低く、センサ感度は比較例4より高かった。
以上より、実施例3の圧電デバイスは、外力を感度良く検出することができることがわかった。
【0285】
比較例5の圧電デバイスは、第2圧電センサ10Bと、計装アンプ30とを備える。第2内部導体11Bは、計装アンプ30の第2差動入力端子VIN
+に電気的に接続されていた。
しかしながら、比較例5では、圧電デバイスは、第1圧電センサ10Aを備えなかった。そのため、表2に示すように、センサ感度は低く、60Hzのハムノイズは高かった。
以上から、比較例5の圧電デバイスは、外力を感度良く検出することができないことがわかった。
【0286】
これに対し実施例4の圧電デバイスは、第1圧電センサ10Aと、第2圧電センサ10Bと、計装アンプ30とを備える。第2電圧の正負は、第1電圧と異なる。第1内部導体11Aは、計装アンプ30の第1差動入力端子VIN
-に電気的に接続されていた。第2内部導体11Bは、計装アンプ30の第2差動入力端子VIN
+に電気的に接続されていた。
そのため、表2に示すように、60Hzのハムノイズのレベルは比較例5より低く、センサ感度は比較例5より高かった。
以上より、実施例4の圧電デバイスは、外力を感度良く検出することができることがわかった。
【0287】
2020年9月25日に出願された日本国特許出願2020-161350の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。