(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】負極活物質、その製造方法、及び該負極活物質を備えるリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/587 20100101AFI20240405BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240405BHJP
C01B 32/21 20170101ALI20240405BHJP
【FI】
H01M4/587
H01M4/36 C
C01B32/21
(21)【出願番号】P 2022552165
(86)(22)【出願日】2021-03-12
(86)【国際出願番号】 KR2021003126
(87)【国際公開番号】W WO2021182926
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-08-26
(31)【優先権主張番号】10-2020-0031553
(32)【優先日】2020-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】511010200
【氏名又は名称】ユニヴァーシティー-インダストリー・コーペレーション・グループ・オブ・キュン・ヒー・ユニヴァーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】サン-ウク・ウ
(72)【発明者】
【氏名】ジェ-ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン-ジュ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン-ヨン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミン-シク・パク
【審査官】梅野 太朗
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107887581(CN,A)
【文献】特表2013-530908(JP,A)
【文献】特開2016-042504(JP,A)
【文献】国際公開第2013/145925(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M4/00-4/62
C01B32/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素系材料と、
前記炭素系材料の表面に自己結着した多孔性炭素コーティング層とを含み、
前記多孔性炭素コーティング層が、金属元素を含み、
前記自己結着とは、前記炭素系材料の表面と炭素コーティング前駆体との間の化学的結合を誘導して成長した後、前駆体を炭化させることで炭素が結着することを意味し、
前記多孔性炭素コーティング層が、前記炭素系材料と物理的または化学的な結合を形成する、リチウム二次電池用負極活物質。
【請求項2】
前記多孔性炭素コーティング層が、Zn、Co、Cu、Ti、Hf、Zr、Ni、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Alまたはこれらのうち2以上の金属元素を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項3】
前記多孔性炭素コーティング層が、Zn、Coまたはこれらの組合せである金属元素を含む、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項4】
前記多孔性炭素コーティング層の含量が全体負極活物質重量対比50wt%以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項5】
前記炭素系材料が25μm以下の数平均粒径を有する、請求項1から4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項6】
請求項1から5のうちいずれか一項に記載のリチウム二次電池用負極活物質を含む負極を備える、リチウム二次電池。
【請求項7】
炭素系材料を用意する段階と、
前記炭素系材料の表面に金属有機構造体(MOF)を直接成長させる段階と、
前記金属有機構造体が成長した炭素系材料を乾燥する段階と、
前記乾燥した、金属有機構造体が成長した炭素系材料を熱処理し、前記炭素系材料の表面に金属元素を含む多孔性炭素コーティング層を形成する段階とを含む、リチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記炭素系材料の表面に金属有機構造体(MOF)を直接成長させる段階が、
金属化合物、有機化合物、及び過酸化水素を含む前駆体溶液を前記炭素系材料に混合して前記炭素系材料の表面に金属有機構造体を直接成長させる段階を含むか、または、
前記炭素系材料が過酸化水素に分散した炭素系材料組成物に、金属化合物溶液と有機化合物溶液とを混合して前記炭素系材料の表面に金属有機構造体を直接成長させる段階を含む、請求項7に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項9】
前記金属化合物が、金属アセテート、金属ナイトレート、金属カーボネート、金属ヒドロキシドまたはこれらのうち2以上を含む、請求項8に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記金属化合物の金属が、Zn、Co、Cu、Ti、Hf、Zr、Ni、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Alまたはこれらのうち2以上を含む、請求項8または9に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記金属化合物の金属が、Zn、Coまたはこれらの組合せである、請求項8から10のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記有機化合物が、カルボン酸化合物、イミダゾール化合物またはこれらのうち2以上を含む、請求項8から11のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項13】
前記金属化合物が酢酸亜鉛、酢酸コバルトまたはこれらの混合物であり、前記有機化合物が2-メチルイミダゾールである、請求項8から12のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項14】
前記金属有機構造体を炭素系材料の表面に直接成長させるため、前記過酸化水素が前記前駆体溶液内に1~50wt%で含まれる、請求項8から13のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項15】
前記乾燥段階が25℃~120℃で行われる、請求項7から14のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項16】
前記熱処理段階が800℃~1,500℃の不活性ガス雰囲気で1~10時間行われる、請求項7から15のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項17】
前記多孔性炭素コーティング層を形成する段階の後に、前記金属元素を除去する化学的エッチング段階をさらに含む、請求項7から16のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項18】
前記化学的エッチング段階が、0.5~3Mの酸溶液で1~10時間撹拌した後25℃~120℃で乾燥することで行われる、請求項17に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウム二次電池用負極活物質、その製造方法、及び該負極活物質を備えるリチウム二次電池に関する。
【0002】
本出願は、2020年3月13日付け出願の韓国特許出願第10-2020-0031553号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書及び図面に開示された内容は、すべて本出願に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
携帯型の小型電気電子機器が広く普及されるにつれて、ニッケル水素電池、リチウム二次電池などのような新たな二次電池の開発が活発に行われている。
【0004】
中でもリチウム二次電池は、負極活物質としてリチウム金属を使用し、電解液として非水溶媒を使用する電池である。リチウムは非常にイオン化傾向の大きい金属であることから高電圧を発現できて、エネルギー密度の高い電池の開発に用いられている。負極活物質としてリチウム金属を使用するリチウム二次電池は、次世代電池として長期間にわたって用いられている。
【0005】
このようなリチウム二次電池に炭素系材料を負極活物質として適用する場合、リチウムの充放電電位が従来の非水系電解質の安定した範囲よりも低く、充放電時に電解質の分解反応が起きることになる。これによって、炭素系負極活物質の表面に被膜が形成される。すなわち、リチウムイオンが炭素系材料に挿入(intercalation)される前に電解質が分解されて電極の表面に被膜を形成するが、該被膜は、リチウムイオンは通過させるものの電子の移動は遮断する性質を有するため、一旦被膜が形成されれば、電極と電解質との間での電子移動による電解質分解は抑制され、選択的にリチウムイオンの挿入及び脱離(de-intercalation)のみが可能になる。このような被膜はSEI(固体電解質界面(Solid Electrolyte InterfaceまたはSolid Electrolyte Interphase))と称される。
【0006】
このような理由から、充電時にリチウムイオンが炭素系素材に挿入される過程で、炭素系材料の表面で発生する抵抗が非常に大きいため、高率充電時にリチウム金属の析出が発生する。これは、炭素系材料を負極活物質として適用した現在のリチウム二次電池を高率充電するときに生じる低い充放電効率と寿命特性の劣化の根本的な原因として指摘されている。
【0007】
このような問題を解決しようとして、炭素系材料を適用したリチウム二次電池の高率充電特性を確保するため、炭素系負極活物質の物理的または化学的表面改質を通じたリチウムイオンの移動度を改善する方法が提案されている。しかし、このような表面改質は、寿命特性は向上できるものの、リチウム金属の析出と容量、高率特性及び充放電効率の低下の問題は解決することができない。
【0008】
したがって、高率充電時に発生する抵抗を減少させてリチウム金属の析出を抑制するため、炭素系素材の表面に多様な方法で機能性コーティング層を形成する研究が行われているが、未だに高率充電時のリチウム金属の析出を抑制する技術は開発されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は、リチウム二次電池の負極活物質として適用するとき、充放電効率及び寿命特性の劣化なく高率充電特性を確保でき、高率充電特性が向上したリチウム二次電池用負極活物質を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、上述したリチウム二次電池用負極活物質を備えるリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明は、上述したリチウム二次電池用負極活物質の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の技術的課題を達成するため、下記の具現例のリチウム二次電池用負極活物質を提供する。
【0013】
第1具現例によれば、
炭素系材料と、
前記炭素系材料の表面に自己結着した多孔性炭素コーティング層とを含むことを特徴とするリチウム二次電池用負極活物質が提供される。
【0014】
第2具現例によれば、第1具現例において、
前記多孔性炭素コーティング層がZn、Co、Cu、Ti、Hf、Zr、Ni、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Alまたはこれらのうち2以上の金属元素を含み得る。
【0015】
第3具現例によれば、第1具現例または第2具現例において、
前記多孔性炭素コーティング層がZn、Coまたはこれらの組合せである金属元素を含み得る。
【0016】
第4具現例によれば、第1具現例~第3具現例のうちいずれか一具現例において、
前記多孔性炭素コーティング層の含量が全体負極活物質重量対比50wt%以下であり得る。
【0017】
第5具現例によれば、第1具現例~第4具現例のうちいずれか一具現例において、
前記炭素系材料が25μm以下の平均粒径を有し得る。
【0018】
第6具現例によれば、第1具現例~第5具現例のうちいずれか一具現例によるリチウム二次電池用負極活物質を含む負極を備えることを特徴とするリチウム二次電池が提供される。
【0019】
第7具現例によれば、
炭素系材料を用意する段階と、
前記炭素系材料の表面に金属有機構造体(Metal-Organic Frameworks、MOFとも略称する)を直接成長させる段階と、
前記MOFが成長した炭素系材料を乾燥する段階と、
前記乾燥した、MOFが成長した炭素系材料を熱処理し、前記炭素系材料の表面に金属元素を含む多孔性炭素コーティング層を形成する段階とを含むことを特徴とするリチウム二次電池用負極活物質の製造方法が提供される。
【0020】
第8具現例によれば、第7具現例において、
前記炭素系材料の表面に金属有機構造体(MOF)を直接成長させる段階が、
金属化合物、有機化合物、及び過酸化水素を含む前駆体溶液を前記炭素系材料に混合して前記炭素系材料の表面に金属有機構造体を直接成長させる段階を含むか、または、
前記炭素系材料が過酸化水素に分散した炭素系材料組成物に、金属化合物溶液と有機化合物溶液とを混合して前記炭素系材料の表面に金属有機構造体を直接成長させる段階を含み得る。
【0021】
第9具現例によれば、第8具現例において、
前記金属化合物が金属アセテート(metal acetate)、金属ナイトレート(metal nitrate)、金属カーボネート(metal carbonate)、金属ヒドロキシド(metal hydroxide)またはこれらのうち2以上を含み得る。
【0022】
第10具現例によれば、第8具現例または第9具現例において、
前記金属化合物の金属がZn、Co、Cu、Ti、Hf、Zr、Ni、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Alまたはこれらのうち2以上を含み得る。
【0023】
第11具現例によれば、第8具現例~第10具現例のうちいずれか一具現例において、
前記金属化合物の金属がZn、Coまたはこれらの組合せであり得る。
【0024】
第12具現例によれば、第8具現例~第11具現例のうちいずれか一具現例において、
前記有機化合物がカルボン酸化合物、イミダゾール化合物またはこれらのうち2以上を含み得る。
【0025】
第13具現例によれば、第8具現例~第12具現例のうちいずれか一具現例において、
前記金属化合物が酢酸亜鉛(zinc acetate)、酢酸コバルト(cobalt acetate)またはこれらの混合物であり、前記有機化合物が2-メチルイミダゾールであり得る。
【0026】
第14具現例によれば、第8具現例~第13具現例のうちいずれか一具現例において、
前記MOFの炭素系材料の表面への直接成長を誘導するため、前記過酸化水素が前記前駆体溶液内に1~50wt%で含まれ得る。
【0027】
第15具現例によれば、第7具現例~第14具現例のうちいずれか一具現例において、
前記乾燥段階が25℃~120℃で行われ得る。
【0028】
第16具現例によれば、第7具現例~第15具現例のうちいずれか一具現例において、
前記熱処理段階が800℃~1,500℃の不活性ガス雰囲気で1~10時間行われ得る。
【0029】
第17具現例によれば、第7具現例~第16具現例のうちいずれか一具現例において、
前記多孔性炭素コーティング層を形成する段階の後に、前記金属元素を除去する化学的エッチング段階をさらに含み得る。
【0030】
第18具現例によれば、第17具現例において、
前記化学的エッチング段階が、0.5~3Mの酸溶液で1~10時間撹拌した後25℃~120℃で乾燥することで行われ得る。
【発明の効果】
【0031】
本発明の一態様によれば、リチウム二次電池の負極活物質として使用される炭素系材料の表面に自己結着した多孔性炭素コーティング層を形成することで、炭素系材料の表面におけるリチウム金属析出の抑制を通じてより安定的な高率充電特性を誘導することができる。
【0032】
また、表面多孔性炭素コーティング層を通じて負極活物質の表面でリチウムが挿入されるときに発生する抵抗を減少させ、リチウム二次電池の負極活物質として適用するとき優れた寿命特性を発揮することができる。
【0033】
本明細書に添付される図面は、本発明の望ましい実施形態を例示するものであり、発明の内容とともに本発明の技術的な思想をさらに理解させる役割をするものであるため、本発明は図面に記載された事項だけに限定されて解釈されてはならない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本発明の一実施形態による、黒鉛表面に自己結着した多孔性炭素コーティング層が形成されたリチウム二次電池用負極活物質の製造過程を模式的に示したフロー図である。
【
図2】実施例1、2及び比較例1による負極活物質を撮影したSEM(走査型電子顕微鏡(scanning electron microscope))写真である。
【
図3】実施例1と実施例2による負極活物質のTEM(透過型電子顕微鏡(transmission electron microscope))及びEDS(エネルギー分散分光法(energy dispersive spectroscopy))分析結果を示す写真である。
【
図4a】実施例1、2及び比較例1による負極活物質に対するXRD(X線回折(X-ray diffraction))パターンである。
【
図4b】実施例1、2及び比較例1による負極活物質に対するXRDパターンである。
【
図5】実施例1、2及び比較例1による負極活物質のBET分析結果である。
【
図6】実施例1、2及び比較例1によるリチウム二次電池の充放電特性結果を示したグラフである。
【
図7a】実施例1、2及び比較例1によるリチウム二次電池のレート毎の充電特性結果を示したグラフである。
【
図7b】実施例1、2及び比較例1によるリチウム二次電池のレート毎の充電特性結果を示したグラフである。
【
図8】実施例1、2及び比較例1によるリチウム二次電池の寿命特性評価結果を示したグラフである。
【
図9】実施例1、2及び比較例1によるリチウム二次電池の寿命特性を評価した後、電極の表面及び断面を撮影したSEM分析写真である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明を図面を参照して詳しく説明する。本明細書及び特許請求の範囲に使われた用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者自らは発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的な思想に応ずる意味及び概念で解釈されねばならない。
【0036】
したがって、本明細書に記載された実施例と図面に示された構成は、本発明のもっとも望ましい一実施形態に過ぎず、本発明の技術的な思想のすべてを代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解せねばならない。
【0037】
本発明の一態様によるリチウム二次電池用負極活物質は、炭素系材料、及び前記炭素系材料の表面に自己結着した多孔性炭素コーティング層を含む。
【0038】
前記炭素系材料は、人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化炭素繊維、黒鉛化メソカーボンマイクロビーズ、石油コークス、樹脂焼成体、炭素繊維、熱分解炭素などの結晶質または非晶質炭素からなる物質のうち少なくとも一つを使用することができる。前記炭素系材料は、25μm以下、5~25μmまたは8~20μmの平均粒径を有し得る。前記炭素系材料の平均粒径が25μm以下である場合、常温及び低温における出力特性が改善され、急速充電の面で有利である。
【0039】
粒径Dnとは、粒径に応じた粒子個数累積分布のn%地点における粒径を意味する。すなわち、D50(平均粒径)は粒径に応じた粒子個数累積分布の50%地点における粒径であり、D90は粒径に応じた粒子個数累積分布の90%地点における粒径であり、D10は粒径に応じた粒子個数累積分布の10%地点における粒径である。
【0040】
平均粒径を含めてDnは、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。具体的には、測定対象粉末を分散媒に分散させた後、市販のレーザー回折粒度測定装置(例えば、Microtrac S3500)に導入し、粒子がレーザービームを通過するとき、粒子の大きさに応じた回折パターンの差を測定して粒度分布を算出する。その後、粒径に応じた粒子個数累積分布の10%、50%及び90%になる地点における粒子直径を算出することで、D10、D50及びD90を測定することができる。
【0041】
本発明の一具現例によれば、前記多孔性炭素コーティング層は、Zn、Co、Cu、Ti、Hf、Zr、Ni、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Alまたはこれらのうち2以上の金属元素を含むことができる。すなわち、前記多孔性炭素コーティング層は、Zn、Co、Cu、Ti、Hf、Zr、Ni、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Alのうち1種の金属元素を含むか、または、2種以上の異なる金属元素を一緒に含むことができる。
【0042】
本発明の一具現例による多孔性炭素コーティング層は、後述するように、多様な金属化合物と有機化合物とから構成された金属有機構造体(MOF)を熱処理することで形成することができる。したがって、前記多孔性炭素コーティング層内に含まれる金属元素の種類と個数は、金属有機構造体(MOF)の構造によって多様に選択できる。望ましくは、前記多孔性炭素コーティング層はZnまたはCoを含むことができる。
【0043】
前記多孔性炭素コーティング層は、前記炭素系材料の表面に自己結着している。このとき、前記自己結着とは、活性化した炭素系材料の表面と炭素コーティング前駆体との間の化学的結合を誘導して成長した後、前駆体を炭化させることで炭素が結着することを意味する。
【0044】
また、前記多孔性炭素コーティング層は、前記炭素系材料と物理的または化学的な結合を形成することができる。このとき、前記物理的または化学的な結合とは、炭素系材料の表面と炭素コーティング層とが互いに結着することを意味する。炭素系材料の表面に炭素コーティング層が形成された前後のSEM、TEM、Ramanなどの分析方法により、炭素系材料の表面に結着した炭素コーティング層の存在を確認可能である。
【0045】
本発明の一具現例によれば、前記多孔性炭素コーティング層は、炭素系材料の表面に均一に形成されてもよく、炭素系材料の一部の表面を局所的に被覆してもよい。
【0046】
前記多孔性炭素コーティング層の含量は、50wt%以下、1~50wt%、1~30wt%または1~10wt%であり得る。このとき、多孔性炭素コーティング層の含量は、最初投入された炭素系材料の重量(a)、最終負極活物質の重量(b)をそれぞれ測定し、下記の数式1で計算可能である。
【0047】
[数式1]
多孔性炭素コーティング層の含量(wt%)=[(b-a)/b]×100
【0048】
前記多孔性炭素コーティング層の含量がこのような範囲を満たすと、常温及び高温における出力特性と急速充電性能を著しく改善することができる。
【0049】
本発明の一態様によるリチウム二次電池用負極活物質の製造方法は、
炭素系材料を用意する段階と、
前記炭素系材料の表面に金属有機構造体(MOF)を直接成長させる段階と、
前記MOFが成長した炭素系材料を乾燥する段階と、
前記乾燥した、MOFが成長した炭素系材料を熱処理し、前記炭素系材料の表面に金属元素を含む多孔性炭素コーティング層を形成する段階と、を含む。
【0050】
本発明の一具現例によれば、前記炭素系材料の表面に金属有機構造体(MOF)を成長させる段階は、金属化合物、有機化合物、及び過酸化水素を含む前駆体溶液を前記炭素系材料に混合して前記炭素系材料の表面に金属有機構造体を直接成長させる段階を含み得る。この場合は、金属化合物、有機化合物、及び過酸化水素を含む前駆体溶液を用意し、前記前駆体溶液を炭素系材料に混合して前記炭素系材料の表面に金属有機構造体を直接成長させることができる。
【0051】
また、本発明の一具現例によれば、前記炭素系材料の表面に金属有機構造体(MOF)を直接成長させる段階は、前記炭素系材料が過酸化水素に分散した炭素系材料組成物に、金属化合物溶液と有機化合物溶液とを混合して前記炭素系材料の表面に金属有機構造体を直接成長させる段階を含み得る。この場合は、前記炭素系材料を過酸化水素に分散させて炭素系材料組成物を用意し、金属化合物と有機化合物をそれぞれ溶媒(例えば、水など)に溶解させて金属化合物溶液と有機化合物溶液をそれぞれ用意した後、前記炭素系材料組成物に金属化合物溶液と有機化合物溶液を混合して前記炭素系材料の表面に金属有機構造体を直接成長させることができる。
【0052】
このとき、前記炭素系材料組成物の全体含量に対して前記炭素系材料の含量は、0.1~15重量%または2~8重量%であり得る。炭素系材料の含量がこのような範囲を満たすと、リチウム二次電池の負極活物質として適用したとき、二次電池の初期効率と容量維持特性が改善され、出力特性が向上することができる。
【0053】
また、前記金属化合物溶液及び有機化合物溶液の濃度は、それぞれ、1~25重量%または3~17重量%であり得、前記金属化合物溶液及び有機化合物溶液の濃度がそれぞれこのような範囲を満たすと、金属有機構造体の形成に有利である。
【0054】
前記金属化合物は、金属アセテート、金属ナイトレート、金属カーボネート、金属ヒドロキシド、またはこれらのうち2以上を含むことができる。
【0055】
前記金属化合物の金属は、Zn、Co、Cu、Ti、Hf、Zr、Ni、Mg、Ti、V、Cr、Fe、Alまたはこれらのうち2以上を含むことができる。本発明の一具現例によれば、前記多孔性炭素コーティング層に含有される金属元素は、Zn、Coまたはこれらの組合せであり得る。
【0056】
前記有機化合物は、カルボン酸化合物、イミダゾール化合物またはこれらのうち2以上を含むことができる。
【0057】
本発明の一具現例によれば、前記金属化合物は酢酸亜鉛、酢酸コバルトまたはこれらの混合物であり、前記有機化合物は2-メチルイミダゾールであり得る。
【0058】
前記MOFの炭素系材料の表面への直接成長を誘導するため、過酸化水素(H2O2)を前駆体溶液内に1~50wt%または1~10wt%でさらに含むことができる。このとき、炭素系材料の表面をH2O2で処理すれば、炭素系材料の表面が酸化し、前記表面に形成された酸素などのヘテロ原子に活性化して該当サイトが成長することができる。
【0059】
ここで、MOFが炭素系材料の表面に直接成長するということは、前駆体が炭素系材料の表面と化学的結合を形成しながら前駆体が成長することを意味する。
【0060】
前記乾燥段階は、25℃~120℃または100~120℃で行われ得る。
【0061】
前記熱処理段階は、800℃~1,500℃または900~1,300℃の不活性ガス雰囲気で1~10時間または3~8時間行われ得る。
【0062】
本発明の一具現例によれば、前記多孔性炭素コーティング層を形成する段階の後に、前記金属元素を除去する化学的エッチング段階をさらに含むことができる。
【0063】
このとき、前記化学的エッチング段階は、0.5~3M、0.7~2Mまたは1~1.5Mの酸溶液で1~10時間撹拌した後、25℃~120℃または30~100℃で乾燥することで行われ得る。前記酸溶液の一例としては、塩酸溶液、硫酸溶液、フッ酸溶液、王水(塩酸と硝酸との混合溶液)などが挙げられる。
【0064】
図1は、本発明の一具現例によるリチウム二次電池用負極活物質として、ZnまたはCoを含む多孔性炭素コーティング層が表面に自己結着した炭素系材料を製造する過程を模式的に示したフロー図である。
【0065】
図1を参照すると、炭素系材料、多孔性炭素前駆体である酢酸亜鉛と2-メチルイミダゾールのような物質が用意される。本発明の一具現例では、多孔性炭素コーティング層を形成するためのMOF化合物の前駆体として酢酸亜鉛と2-メチルイミダゾールが提供されることを例示しているが、本発明がこれに限定されることはない。例えば、多孔性炭素コーティング層を形成するためのMOFの種類に応じて多様な形態の前駆体が提供され得る。上述したように、本発明の一具現例によれば、前記炭素系材料としては平均粒径が25μm以下であるものを使用することが望ましい。炭素系材料としては多様な素材が可能であるが、ZnまたはCoを含む多孔性炭素コーティング層との組合せを考慮すると、黒鉛系素材を使用することが望ましい。
【0066】
まず、多孔性炭素コーティング層を形成するため、炭素系材料をH2O2溶媒に分散させた後、混合過程を経て炭素系材料組成物を用意する。
【0067】
次いで、酢酸亜鉛と2-メチルイミダゾール前駆体をそれぞれ水に溶解して多孔性炭素前駆体水溶液を製造する。このとき、多孔性炭素前駆体水溶液は、2-メチルイミダゾール水溶液(溶液1)と酢酸亜鉛水溶液(溶液2)とを1:1の体積比で製造し得る。
【0068】
本発明において、前記多孔性炭素前駆体としては、合成しようとするMOFの種類に応じて多様な物質が使用可能である。
【0069】
次いで、前記炭素系材料組成物に用意した2-メチルイミダゾール水溶液(溶液1)を混合することで、2-メチルイミダゾール有機化合物を炭素系材料にコーティングする。その後、酢酸亜鉛水溶液(溶液2)を混合し、炭素系材料の表面にコーティングされている2-メチルイミダゾールと酢酸亜鉛との反応を通じてMOFの成長を誘導する。このとき、前記酢酸亜鉛及び2-メチルイミダゾールは、酢酸亜鉛水溶液と2-メチルイミダゾール水溶液との全体溶液内にそれぞれ10~30wt%で含まれるように混合することが望ましい。
【0070】
次いで、沈澱反応を通じて炭素系材料の表面にMOF粒子が自己結着した炭素系材料を乾燥する。乾燥は25~100℃の温度で行われ得、例えば100℃で24時間行われ得る。
【0071】
その後、乾燥した炭素系材料を熱処理し、炭素系材料の表面に自己結着した金属元素(例えば、ZnまたはCoなど)を含む多孔性炭素コーティング層を形成することで、本発明の一具現例による負極活物質を収得することができる。このとき、熱処理は500~1000℃の不活性ガス雰囲気で1~10時間行われ、例えば900℃の不活性ガス雰囲気で6時間行われ得る。
【0072】
このように本発明による負極活物質は、炭素系材料の表面に金属元素を含む多孔性炭素コーティング層を形成することで、高率充電時に炭素系材料の表面でリチウム金属が析出することなく、より安定的なリチウムイオンの移動を誘導することができる。
【0073】
また、このような機能性コーティング層を導入することで負極活物質表面の反応性及び構造的安定性を向上させ、リチウム二次電池の負極活物質として適用するとき、高率充電時のリチウム金属の析出を抑制し、寿命特性の劣化なく高率充電特性を確保することができる。
【0074】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。しかし、下記の実施例は多くの他の形態に変形でき、本発明の範囲が下記の実施例に限定されると解釈されてはならない。本発明の実施例は、当業者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0075】
実施例1、2及び比較例において、炭素系材料の数平均粒径(D50)はレーザー回折法を用いて測定した。具体的には、測定対象粉末を分散媒である水に分散させた後、市販のレーザー回折粒度測定装置(Microtrac S3500)に導入し、粒子がレーザービームを通過するとき、粒子の大きさに応じた回折パターンの差を測定して粒度分布を算出した。その後、粒径に応じた粒子個数累積分布の10%、50%及び90%になる地点における粒子直径を算出することで、D10、D50及びD90を測定した。
【0076】
実施例1
<負極活物質の製造>
炭素系材料として、数平均粒径(D50)が17μmであってコーティング層が形成されていない人造黒鉛を使用した。
【0077】
人造黒鉛を過酸化水素(H2O2)に分散させて撹拌して人造黒鉛組成物を用意した。このとき、人造黒鉛組成物中の人造黒鉛の含量は8.6重量%であった。また、2-メチルイミダゾールと酢酸亜鉛をそれぞれ水に溶かして2-メチルイミダゾール水溶液と酢酸亜鉛水溶液をそれぞれ用意した。このとき、2-メチルイミダゾール水溶液の濃度は16.3重量%であり、酢酸亜鉛水溶液の濃度は4.5重量%であった。
【0078】
その後、人造黒鉛組成物を2-メチルイミダゾール水溶液と混合して撹拌し、そこに酢酸亜鉛水溶液を混合し撹拌して黒鉛表面に均一にコーティングした後、100℃で乾燥し、最終的に900℃で熱処理することで、炭素系材料である人造黒鉛の表面にZnが含有された多孔性炭素コーティング層を含むリチウム二次電池用負極活物質を製造した。
【0079】
<二次電池の製造>
実施例1で製造された負極活物質を使用してリチウム二次電池を製造した。
【0080】
まず、実施例1で製造された負極活物質を95.6wt%、導電材としてSuper-Pを1.0wt%、バインダーとしてPVDF(ポリフッ化ビニリデン)を3.4wt%にし、溶媒としてNMP(N-メチル-2-ピロリドン)を用いてスラリーを製造した。このスラリーを銅ホイル上にコーティングした後、乾燥して電極を製作した。このとき、電極のローディングレベルは5mg/cm2、合剤密度は1.5g/ccであった。リチウム金属対極を用いてハーフセルを製作した後、電気化学特性を評価した。このとき、電解質としては、エチレンカーボネート(EC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを3:7の体積比で混合した溶媒に1M LiPF6が溶解された電解液を使用した。
【0081】
実施例2
実施例1で得られた負極活物質を1Mの塩酸溶液で化学的エッチング処理した後、100℃で乾燥して最終的に負極活物質を製造した。
【0082】
このようにして得た負極活物質を使用した点を除き、実施例1と同じ方法でリチウム二次電池を製造した。
【0083】
比較例1
負極活物質として、数平均粒径(D50)が17μmであってコーティング層が形成されていない人造黒鉛を使用した。
【0084】
このようなコーティング層を形成していない人造黒鉛を負極活物質として使用した点を除き、実施例1と同じ方法でリチウム二次電池を製造した。
【0085】
下記の表1に実施例1、実施例2及び比較例1の負極活物質の含量比率及び製造条件をまとめて示した。
【0086】
【0087】
図2は、実施例1、実施例2及び比較例1によって製造された負極活物質のSEM分析結果である。
図2を参照すると、実施例1と実施例2の負極活物質は黒鉛表面に自己結着した多孔性炭素コーティング層を備えており、前記多孔性炭素コーティング層は無定形の粒子形状を有し、数十~数百nmの大きさを有する一次粒子から構成されていることが分かる。
【0088】
図3は、実施例1及び2による負極活物質のTEM及びEDS分析結果である。
【0089】
図3を参照すると、実施例1及び2の場合、比較例1と異なって、黒鉛の表面に数十~数百nmの大きさを有するZnが含まれた多孔性炭素コーティング層が形成されたことが分かる。
【0090】
EDS分析の結果、多孔性炭素粒子にはZnとNが含まれており、Nは前駆体である2-メチルイミダゾールの分解反応によって自発的に炭素構造内にドープされたものであることを確認できる。
【0091】
実施例2による化学的エッチングの後も、黒鉛の表面に自己結着した多孔性炭素コーティング層の構造変化は僅かであり、これは黒鉛の表面にZnを含む多孔性炭素コーティング層が物理的または化学的な結合を形成していることを示唆する。
【0092】
図4a及び
図4bは、実施例1、2及び比較例1による負極活物質に対するXRD分析結果を示したグラフである。
【0093】
図4a及び
図4bに示されたように、XRD分析の結果、比較例1と実施例1及び2とが実質的に異なるピークパターンを現していることが確認できる。すなわち、本発明の実施例によって製造された実施例1及び2の負極活物質の場合、比較例1による負極活物質と比べるとき、2θ=20°以下で典型的な非晶質炭素構造によるピークが検出された。
【0094】
黒鉛とZnに該当するパターンが観察されたが、実施例1と2の場合、下記の表2に示されたように、黒鉛の特徴ピークである2θ=26°、42°、44°、54°及び77°付近での対応ピークが観察でき、Znの特徴ピークである2θ=36°、39°、43°及び70°付近での対応ピークが観察できた。
【0095】
【0096】
図5は、本発明の実施例1、2及び比較例1による負極活物質の比表面積(BET surface area)分析結果を示したグラフである。
【0097】
このとき、負極活物質の比表面積は、BET(Brunauer-Emmett-Teller)法によって測定したものであり、具体的には、BELジャパン社製のBELSORP-minoIIを用いて液体窒素温度下(77K)での窒素ガス吸着量から算出した。
【0098】
図5に示されたように、実施例1の負極活物質では、自己結着した多孔性炭素コーティング層の導入によって比表面積の増加(15.0m
2/g)が確認され、追加的な化学的エッチングが導入された実施例2の場合、Znの脱離による追加的な比表面積の増加(19.6m
2/g)を見せた。
【0099】
図6は、実施例1、2及び比較例1によるリチウム二次電池の初期充放電特性を評価した結果を示したグラフである。このとき、リチウム二次電池の初期充放電特性の評価は、実施例1、2及び比較例1によるリチウム二次電池を0.005~1.5V vs. Li/Li
+の電位領域で0.1C(35mA/g)の定電流で3回充放電して行った。
【0100】
図6を参照すると、人造黒鉛の表面に多孔性炭素コーティング層が形成された実施例1及び2の場合、比較例1に比べて可逆容量が増加したことが確認できる。
【0101】
図7a及び
図7bは、本発明の実施例1、2及び比較例1によるリチウム二次電池のレート毎の充電特性を示したグラフである。
【0102】
このとき、リチウム二次電池のレート毎の充電特性の評価は、実施例1、2及び比較例1によるリチウム二次電池を0.005~1.5V vs. Li/Li+の電位領域で0.1C(35mA/g)の定電流で3回充放電した後、1C(350mA/g)、3C(1050mA/g)、5C(1750mA/g)の定電流で充電し、0.5C(350mA/g)の定電流で放電して行った。
【0103】
図7a及び
図7bを参照すると、比較例1と比べて、多孔性炭素コーティング層が自己結着した実施例1及び2のリチウム二次電池は、初期充放電特性(充電容量)及び高率充電特性が改善されたことを確認できる。黒鉛の表面にZnを含む多孔性炭素コーティング層を導入することにより、黒鉛表面におけるリチウムイオン挿入時の抵抗を効果的に減少させ、高率充電時により安定的なリチウムイオンの移動を誘導することで、初期充放電特性及び高率充電特性が改善されたと考えられる。
【0104】
実施例1、2及び比較例1によるリチウム二次電池の寿命特性を評価した結果を
図8に示した。このとき、寿命特性の評価は、実施例1、2及び比較例1によるリチウム二次電池を0.005~1.5V vs. Li/Li
+の電位領域で0.1C(35mA/g)の定電流で3回充放電した後、3C(1050mA/g)の定電流で充電してから1C(350mA/g)の定電流で放電する過程を100回繰り返す方式で行った。
【0105】
図8を参照すると、実施例1と実施例2が100回充放電時に優れた寿命特性を見せることが分かる。これは、実施例1と実施例2のリチウム二次電池がZnを含む多孔性炭素コーティング層が導入された負極活物質を採用したことにより、黒鉛表面におけるリチウムイオン挿入時の抵抗を効果的に減少させて充電特性が改善された結果であると考えられる。
【0106】
図9は、実施例1、2及び比較例1によるリチウム二次電池の寿命特性を評価した後、電極の表面と断面に対するSEM分析結果である。
【0107】
図9を参照すると、寿命特性を評価した後、比較例1の場合、電極の表面に厚い被膜が形成されたことが確認できたが、実施例1及び実施例2の場合は、被膜が相対的に薄くてリチウム金属の析出が僅かであると考えられる。これは、上述した高率充電特性が改善されたことを示唆する。
【0108】
一方、本明細書と図面に示された実施例は、理解を助けるために提示された特定の例に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。他にも本発明の技術的思想に基づいた変形例が実施可能であるということは当業者に自明である。