(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】電気化学素子用分離膜の製造方法、及びその製造方法によって製造された電気化学素子用分離膜
(51)【国際特許分類】
H01M 50/403 20210101AFI20240405BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20240405BHJP
H01M 50/426 20210101ALI20240405BHJP
H01M 50/46 20210101ALI20240405BHJP
H01G 9/02 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
H01M50/403 D
H01M50/449
H01M50/426
H01M50/46
H01G9/02
(21)【出願番号】P 2022564056
(86)(22)【出願日】2021-12-29
(86)【国際出願番号】 KR2021020226
(87)【国際公開番号】W WO2022146056
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】10-2020-0185814
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】スン-ヒュン・イ
(72)【発明者】
【氏名】キュン-リュン・カ
(72)【発明者】
【氏名】ヘ-ジン・クォン
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/178351(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/403
H01M 50/449
H01M 50/426
H01M 50/46
H01G 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極接着層が備えられた複合分離膜の製造方法であって、
前記方法は、接着層用高分子溶液を分離膜基材層の少なくとも一方側の表面に塗布し、乾燥させる段階を含み、
前記高分子溶液は、電極接着層用バインダー樹脂と混合溶媒とを含み、
前記電極接着層用バインダー樹脂は、フッ素系バインダー樹脂を含み、
前記混合溶媒は、第1及び第2溶媒を含み、前記第2溶媒の極性度に対する第1溶媒の極性度の比率(第1溶媒の極性度/第2溶媒の極性度)が0.360以上のものであり、 前記第1溶媒及び第2溶媒の極性度は、それぞれ独立してDimroth-Reichardt ET30 polarity scaleによるものであ
り、
前記第1及び第2溶媒の極性度は、それぞれ独立して、下記[式1]及び[式2]:
[式1]
E
T
(A)=28,592/λ
max
[式2]
E
T
N
=[E
T
(A)-E
T
(TMS)]/[E
T
(H
2
O)-E
T
(TMS)]
(前記[式1]及び[式2]中、E
T
(A)の単位はkcal/molであり、前記[式2]中、E
T
(H
2
O)は63.1kcal/molであり、E
T
(TMS)は30.7kcal/molである。)
によって計算されるE
T
N
数値であり、
前記第1溶媒は、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)及びn-メチルピロリドン(NMP)の中から選択された1種又は2種以上の混合物を含み、前記第2溶媒は、炭素数1~3の低級アルコール及びH
2
Oの中から選択された1種又は2種以上の混合物を含むものである、電気化学素子用分離膜の製造方法。
【請求項2】
前記極性度の比率が0.360~0.450である、請求項
1に記載の電気化学素子用分離膜の製造方法。
【請求項3】
前記フッ素系バインダー樹脂が、電極接着層用バインダー樹脂100wt%に対して90wt%以上含まれる、請求項
1または2に記載の電気化学素子用分離膜の製造方法。
【請求項4】
前記フッ素系バインダー樹脂が、フッ化ビニリデンの単独重合体(ポリフッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンと他の共重合可能なモノマーとの共重合体又はこれらの混合物を含む、請求項
1から3のいずれか一項に記載の電気化学素子用分離膜の製造方法。
【請求項5】
前記フッ化ビニリデンと他の共重合可能なモノマーとの共重合体が、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリビニリデンフルオリド-トリクロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン、及びポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレンの中から選択された1種以上である、請求項
4に記載の電気化学素子用分離膜の製造方法。
【請求項6】
前記フッ化ビニリデンと他の共重合可能なモノマーとの共重合体は、前記モノマーによる置換度が5wt%~20wt%である、請求項
4または5に記載の電気化学素子用分離膜の製造方法。
【請求項7】
請求項
1から6の何れか一項に記載の方法によって製造され、
電極接着層中のフッ素系バインダーの結晶化度が40%以上であり、この中のベータ結晶の含有量が80%以上である、電気化学素子用分離膜。
【請求項8】
負極、正極、及び前記負極と前記正極との間に介在する分離膜を含み、前記分離膜は請求項
7によるものである、リチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年12月29日に出願された韓国特許出願第10-2020-018584号に基づく優先権を主張する。本発明は、電気化学素子用分離膜に関する。さらに詳細には、分離膜の最外層である一方側又は両方側の表面に電極接着層が配置されており、分離膜の安定性及び耐久性を向上させ、電極との結着力が向上した電気化学素子の分離膜に関する。また、本発明は、前記分離膜を含む電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、正極/負極/分離膜/電解液を基本として構成されて化学エネルギーと電気エネルギーが可逆的に変換されることで充放電が可能なエネルギー密度の高いエネルギー貯蔵体であって、携帯電話やノートパソコンなどの小型電子装備に幅広く使用される。最近では、環境問題、高油価、エネルギー効率及び貯蔵のための対応として、複合電気自動車(電気自動車(hybrid electric vehicles、HEV)、プラグ電気自動車(Plug-in EV)、電気自転車(e-bike)及びエネルギー貯蔵システム(Energy storage system、ESS)への応用が急速に拡大している。
【0003】
このような二次電池の製造及び使用におけるその安全性の確保は、重要な解決課題である。特に電気化学素子で通常用いられる分離膜(separator)は、その材料的特性及び製造工程上の特性により高温などの状況で極端な熱収縮挙動を示すことにより内部短絡などの安定性の問題を有する。このような二次電池の安全性を確保するために、無機物粒子とバインダー樹脂の混合物を二次電池分離膜用多孔性基材にコーティングして多孔性無機コーティング層を形成した有機-無機複合多孔性分離膜が提案された(韓国特許出願第10-2004-0070096号を参照)。しかし、電極と分離膜を積層して電極組立体を形成した場合、層間結着力が十分でないため、電極と分離膜が互いに分離されるリスクが大きく、この場合、分離過程で脱離する無機物粒子が素子内で局所的な欠陥として作用するおそれがあるという問題点がある。
【0004】
かかる問題点を解消するために、韓国公開特許第10-2006-0116043号公報は、PVDFをアセトンなどの良溶媒に溶解させた溶液にエタノールを添加し、分離膜上に塗布した後、乾燥させることにより、相分離効果により多孔性接着層が得られる方法を開示している。このような方法で得られた多孔性接着層は、浸潤性に優れるうえ、電池作動時の抵抗が低いという利点を有するものの、電池の製造過程において注液の後に膨潤(swelling)することにより分離膜との結合力、すなわち機械的強度が低下し、低いサイクル特性を示し、多孔性無機コーティング層との層間混合(interlayer mixing)が発生するため、多孔性無機コーティング層に形成された気孔を閉鎖して分離膜の通気度及び抵抗特性が低下するという問題点があった。
【0005】
そこで、電極接着層が配置されながらも抵抗特性の低下が防止された分離膜の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、表面に電極接着層が配置された電気化学素子用分離膜を提供することを目的とする。また、本発明は、電極接着層が配置されても分離膜の通気度、イオン伝導度が低下せず、特に電極と分離膜との界面抵抗が高い分離膜を製造する方法を提供することを目的とする。これ以外の本発明の別の目的及び利点が、特許請求の範囲に示された手段及びその組み合わせによって実現され得ることが容易に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面は、電極接着層が備えられた複合分離膜の製造方法であって、前記方法は、接着層用高分子溶液を分離膜基材層の少なくとも一方側の表面に塗布し、乾燥させる段階を含み、前記高分子溶液は、電極接着層用バインダー樹脂と混合溶媒とを含み、前記電極接着層用バインダー樹脂は、フッ素系バインダー樹脂を含み、前記混合溶媒は、第1及び第2溶媒を含み、前記第2溶媒の極性度に対する第1溶媒の極性度の比率(第1溶媒の極性度/第2溶媒の極性度)が0.360以上のものであり、前記第1溶媒及び第2溶媒の極性度は、それぞれ独立してDimroth-Reichardt ET30 polarity scaleによるものである。
【0008】
本発明の第2の側面は、前記第1の側面において、前記第1及び第2溶媒の極性度は、それぞれ独立して、下記[式1]及び[式2]によって計算されるET
N数値である。
[式1]
ET(A)=28,592/λmax
[式2]
ET
N=[ET(A)-ET(TMS)]/[ET(H2O)-ET(TMS)]
前記[式1]及び[式2]中、ET(A)の単位はkcal/molであり、前記[式2]中、ET(H2O)は63.1kcal/molであり、ET(TMS)は30.7kcal/molである。
【0009】
本発明の第3の側面は、前記第1~第2の側面のいずれかにおいて、前記第1溶媒は、アセトン、THF、DMF及びNMPの中から選択された1種又は2種以上の混合物を含み、前記第2溶媒は、炭素数1~3の低級アルコール及びH2Oの中から選択された1種又は2種以上の混合物を含む。
【0010】
本発明の第4の側面は、前記第1~第3の側面のいずれかにおいて、前記極性度の比率が0.360~0.450である。
【0011】
本発明の第5の側面は、前記第1~第4の側面のいずれかにおいて、前記フッ素系バインダー樹脂が、電極接着層用バインダー樹脂100wt%に対して90wt%以上含まれる。
【0012】
本発明の第6の側面は、前記第1~第5の側面のいずれかにおいて、前記フッ素系バインダー樹脂が、フッ化ビニリデンの単独重合体(ポリフッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンと他の共重合可能なモノマーとの共重合体又はこれらの混合物を含む。
【0013】
本発明の第7の側面は、前記第6の側面において、前記フッ化ビニリデンと他の共重合可能なモノマーとの共重合体が、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene)、ポリビニリデンフルオリド-トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride-co-trichloroethylene)、ポリフッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレンの中から選択された1種以上である。
【0014】
本発明の第8の側面は、前記第6又は第7の側面において、前記フッ化ビニリデンと他の共重合可能なモノマーとの共重合体は、前記モノマーによる置換度が5wt%~20wt%である。
【0015】
本発明の第9の側面は、電気化学素子用分離膜に関するものであって、前記分離膜は、電極接着層を含み、前記電極接着層中のフッ素系バインダーの結晶化度が40%以上であり、この中のベータ(beta)結晶の含有量が80%以上であり、前記第1の側面から第8の側面のいずれか1つの方法によって製造されたものである。
【0016】
本発明の第10の側面は、電気化学素子用分離膜を含むリチウムイオン電池に関するものであって、前記電気化学素子は負極、正極、及び前記負極と前記正極との間に介在する分離膜を含み、前記分離膜は前記第9の側面によるものである。
【発明の効果】
【0017】
接着層のコーティング時に2種の溶媒を使用し、極性度の比を用いて第2バインダー樹脂のベータ結晶相が誘導され、これにより均一な多孔性構造が形成されてリチウムイオンの移動パスが改善されることにより、接着層が形成されても分離膜の抵抗が増加しない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本明細書に添付される以下の図面は、本発明の好適な実施形態を例示するものであり、前述した発明の内容と共に本発明の技術思想をさらに理解させる役割を果たすものであるので、本発明は、そのような図面に記載されている事項にのみ限定されて解釈されてはならない。
【0019】
【
図1】実施例1及び比較例1の分離膜の接着層に対してβ結晶相の分布を確認して示す図である。
【
図2a】実施例1で得られた分離膜の表面に対するSEM画像である。
【
図2b】実施例1で得られた分離膜の表面に対するSEM画像である。
【
図3】比較例1で得られた分離膜の表面に対するSEM画像である。
【
図4】比較例3で得られた分離膜の表面に対するSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一つの実施形態を挙げてさらに詳細に説明する。また、本明細書及び特許請求の範囲で使用された用語は、通常的かつ辞典的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義することができるという原則に即して、本発明の技術思想に合致する意味と概念で解釈されるべきである。したがって、本明細書に記載された実施形態に示されている構成は、本発明の最も好適な一つの実施形態に過ぎず、本発明の技術思想をすべて代弁するものではないので、本出願時点においてこれらを代替することができる様々な均等物及び変形例があり得ることを理解すべきである。
【0021】
本発明は、最外層に電極接着層が備えられた電気化学素子用複合分離膜を製造する方法に関する。また、本発明は、上記の製造方法によって製造された複合分離膜に関する。
【0022】
本発明の具体的な一実施形態によれば、前記複合分離膜は、分離膜基材層と、前記分離膜基材層の少なくとも一方側の表面に形成された電極接着層と、を含む。本発明において、分離膜基材層は、電気化学素子において負極と正極を分離するために用いられるイオン伝導性バリア(porous ion-conducting barrier)を指し示し、複合分離膜は、前記分離膜基材層の少なくとも一方側の面に電極接着層が形成された電気化学素子用分離膜を指し示すものとする。
【0023】
前記分離膜基材層は、複合分離膜のうち、電極接着層を除いた残りの部分を構成し、負極と正極との電気的接触を遮断しながらイオンを通過させる通常の分離膜の機能を行う。本発明の具体的な一実施形態によれば、前記分離膜基材層は、複数の微細孔を有する多孔性高分子基材(A)、及び/又は多数の無機物粒子を含む多孔性無機コーティング層(B)を含むことができる。本発明の一実施形態において、前記分離膜基材層は、前記多孔性高分子基材及び多孔性無機コーティング層の両方を含み、前記多孔性基材の少なくとも一方側の表面又は両方側の表面に前記多孔性無機コーティング層が被覆されている形態を持つことができる。
【0024】
本発明の具体的な一実施形態によれば、前記多孔性高分子基材は、負極と正極を電気的に絶縁させて短絡を防止しながらリチウムイオンの移動経路を提供することができるものであって、通常的に電気化学素子の分離膜素材として使用可能なものであれば特別な制限なく使用が可能である。このような多孔性基材としては、例えば、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポレフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレンナフタレンなどの高分子樹脂のうちの少なくとも一つで形成された多孔性基材などがあるが、特にこれに限定されるものではない。
【0025】
また、前記多孔性高分子基材としては、高分子樹脂を溶融して成膜したシート状のフィルム又は高分子樹脂を溶融紡糸して得られたフィラメントを集積させた不織布の形態を全て用いることができる。好ましくは、前記高分子樹脂を溶融/成形してシート状に製造された多孔性基材である。
【0026】
具体的には、前記多孔性高分子基材は、以下のa)~e)のいずれかを含むことができる。
【0027】
a)高分子樹脂を溶融/押出して成膜した多孔性フィルム、
b)前記a)の多孔性フィルムが2層以上積層された多層膜、
c)高分子樹脂を溶融/紡糸して得られたフィラメントを集積して製造された不織布ウェブ、
d)前記c)の不織布ウェブが2層以上積層された多層膜、
e)前記a)~d)のうちの2つ以上を含む多層構造の多孔性複合膜。
【0028】
本発明において、前記多孔性高分子基材の厚さは、5~50μmであり得る。多孔性基材の範囲が特に上述の範囲に限定されるものではないが、厚さが前述の下限よりも薄すぎる場合には、機械的物性が低下して電池使用中に分離膜が損傷しやすいおそれがある。一方、多孔性基材に存在する気孔サイズ及び気孔度も特に限定されないが、それぞれ0.01~50μm及び10~95%であり得る。
【0029】
前記多孔性無機コーティング層は、複数の無機物粒子とバインダー樹脂との混合物を含むものであって、多孔性基材の表面が無機物粒子で被覆されることにより、分離膜基材層の耐熱性及び機械的物性がさらに向上する。
【0030】
前記多孔性無機コーティング層は、無機物粒子間の間隙容量(interstitial volume)による微細多孔性構造を持つだけでなく、コーティング層の物理的形態を維持することができる一種のスペーサ(spacer)としても機能する。前記間隙容量は、隣接した無機物粒子が実質的に面接触して限定される空間を意味する。また、前記無機物粒子は、一般に、200℃以上の高温になっても物理的特性が変わらない特性を持つため、形成された多孔性無機コーティング層によって、複合分離膜は優れた耐熱性を有する。本発明において、前記多孔性無機コーティング層は、厚さが1μm~50μm、又は2μm~30μm、又は2μm~20μmである。
【0031】
前記多孔性無機コーティング層は、バインダー樹脂を水などの適切な水系溶媒に分散させて準備された水分散物に無機物粒子を投入して均一なスラリーを製造した後、前記スラリーを前述の多孔性基材の少なくとも一方側の面にコーティングする方法によって製造されることができる。前記コーティング方法としては、ディップ(Dip)コーティング、ダイ(Die)コーティング、ロール(roll)コーティング、コンマ(comma)コーティング、又はこれらの混合方式などを採用することができる。
【0032】
前記多孔性無機コーティング層において、前記無機物粒子とバインダー樹脂の含有量比は、最終的に製造される本発明の多孔性無機コーティング層の厚さ、気孔サイズ及び気孔度を考慮して決定するが、重量比を基準として無機物粒子が50~99.9重量%又は70~99.5重量%であり、高分子樹脂が0.1~50重量%又は0.5~30重量%である。前記無機物粒子の含有量が50重量%未満である場合、高分子の含有量があまりにも多くなり、無機物粒子同士の間に形成される空き空間の減少により気孔サイズ及び気孔度が減少して最終電池性能の低下が引き起こされるおそれがある。一方、99.9重量%を超える場合、高分子含有量があまりにも少ないため、無機物間の接着力の弱化により最終多孔性無機コーティング層の機械的物性が低下する。
【0033】
本発明の具体的な一実施形態によれば、前記多孔性無機コーティング層の無機物粒子の粒径は、制限がないが、均一な厚さのコーティング層の形成及び適切な空隙率のために、できる限り0.001~10μmの範囲であり得る。前記無機物粒子の粒径がこのような範囲を満たす場合、分散性が維持されて複合分離膜の物性を調節しやすく、多孔性無機コーティング層の厚さが増加する現象を回避することができるため、機械的物性が改善される可能性があるうえ、あまりにも大きい気孔サイズにより電池の充放電時に内部短絡が起こる確率が少ない。
【0034】
前記無機物粒子は、電気化学的に安定であれば特に限定されない。すなわち、前記無機物粒子は、適用される電気化学素子の作動電圧範囲(例えば、Li/Li+を基準に0~5V)で酸化及び/又は還元反応が起こらないものであれば特に限定されない。特に、イオン伝達能力のある無機物粒子を用いる場合、電気化学素子内のイオン伝導度を高めて性能向上を図ることができる。また、無機物粒子として誘電率の高い無機物粒子を用いる場合、液体電解質内の電解質塩、例えばリチウム塩の解離度の増加に寄与して電解液のイオン伝導度を向上させることができる。
【0035】
前述した理由により、前記無機物粒子は、誘電率定数が5以上又は10以上である高誘電率無機物粒子、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子、又はこれらの混合体を含むことができる。誘電率定数5以上の無機物粒子の非制限的な例としては、BaTiO3、Pb(Zr、Ti)O3(PZT)、Pb1-xLaxZr1-yTiyO3(PLZT、ここで、0<x<1、0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O3-PbTiO3(PMN-PT)、ハフニア(HfO2)、SrTiO3、SnO2、CeO2、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO2、Y2O3、Al2O3、SiC、TiO2などをそれぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。また、前述した高誘電率無機物粒子と、リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子とを混用する場合、これらの相乗効果は倍増する可能性がある。
【0036】
前記リチウムイオン伝達能力を有する無機物粒子の非制限的な例としては、リチウムホスフェート(Li3PO4)、リチウムチタンホスフェート(LixTiy(PO4)3、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LixAlyTiz(PO4)3、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、14Li2O-9Al2O3-38TiO2-39P2O5などの(LiAlTiP)xOy系ガラス(0<x<4、0<y<13)、リチウムランタンチタネート(LixLayTiO3、0<x<2、0<y<3)、Li3.25Ge0.25P0.75S4などのリチウムゲルマニウムチオホスフェート(LixGeyPzSw、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、Li3Nなどのリチウムナイトライド(LixNy、0<x<4、0<y<2)、Li3PO4-Li2S-SiS2などのSiS2系ガラス(LixSiySz、0<x<3、0<y<2、0<z<4)、LiI-Li2S-P2S5などのP2S5系ガラス(LixPySz、0<x<3、0<y<3、0<z<7)又はこれらの混合物などがある。
【0037】
前記多孔性無機コーティング層に含まれるバインダー樹脂は、好ましくは、ガラス転移温度(Glass transition temperature、Tg)ができる限り低い高分子樹脂を用いることができ、前記ガラス転移温度は、好ましくは-200℃~200℃の範囲である。これは、複合分離膜の柔軟性や弾性などの機械的物性を向上させることができるからである。前記バインダー樹脂は、無機物粒子間の粘着を安定的に固定することにより、最終的に製造される多孔性無機コーティング層の機械的物性低下防止に寄与する。本発明において、前記バインダー樹脂は、イオン伝導能力を必ずしも有する必要はないが、イオン伝導能力を有する高分子樹脂を用いる場合、電気化学素子の性能をさらに向上させることができる。したがって、バインダー樹脂は、できる限り誘電率定数が高いことが好ましい。これにより、溶解度指数15~45MPa1/2の高分子樹脂が好ましく、さらに好ましくは15~25MPa1/2及び30~45MPa1/2の範囲である。したがって、ポリオレフィン類のような疎水性高分子樹脂よりは極性基を多く有する親水性高分子樹脂が好ましい。溶解度指数が15MPa1/2未満及び45MPa1/2超過である場合、通常の電池用液体電解液によって含浸され難い。
【0038】
本願発明において使用可能なバインダー樹脂の非制限的な例としては、ポリビニリデンフルオリド-ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene)、ポリビニリデンフルオリド-トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride-co-trichloroethylene)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)、ポリブチルアクリレート(polybutylacrylate)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrrolidone)、ポリビニルアセテート(polyvinylacetate)、エチレンビニルアセテート共重合体(polyethylene-co-vinyl acetate)、ポリエチレンオキシド(polyethylene oxide)、ポリアリレート(polyarylate)、シアノエチルプルラン(cyanoethylpullulan)、シアノエチルポリビニルアルコール(cyanoethylpolyvinylalcohol)、シアノエチルセルロース(cyanoethylcellulose)、シアノエチルスクロース(cyanoethylsucrose)、プルラン(pullulan)及びカルボキシルメチルセルロース(carboxyl methyl cellulose)よりなる群から選択されたいずれか1種の高分子樹脂又はこれらの2種以上の混合物であり得る。しかし、特にこれに限定されるものではない。
【0039】
一方、多孔性無機コーティング層の気孔サイズ及び気孔度は、主に無機物粒子のサイズに依存するが、例えば、粒径1μm以下の無機物粒子を用いる場合、形成される気孔も1μm以下となる。このような気孔構造は、追って注液される電解液で満たされる。このように満たされた電解液は、イオン伝達の役目をする。従って、前記気孔サイズ及び気孔度は、多孔性無機コーティング層のイオン伝導度の調節に重要な影響因子である。本発明の多孔性無機コーティング層の気孔サイズ及び気孔度(porosity)は、それぞれ0.001~10μmであり、5~95%の範囲であることが好ましい。
【0040】
本発明による分離膜は、前述した分離膜基材層を準備し、その表面に電極接着層を配置する方法で得られる。以下、前記電極接着層の形成方法について説明する。
【0041】
まず、電極接着層用バインダー樹脂を混合溶媒に投入して高分子溶液を準備する(S1)。前記混合溶媒は、第1溶媒及び第2溶媒を含むものである。
【0042】
本発明において、前記電極接着層用バインダー樹脂は、フッ素系バインダー樹脂を含む。フッ素系バインダー樹脂は、電極接着層用バインダー樹脂100wt%に対して90wt%以上含まれることができる。前記フッ素系バインダー樹脂は、フッ化ビニリデンの単独重合体(すなわち、ポリフッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンと他の共重合可能なモノマーとの共重合体、又はこれらの混合物を用いることができる。
【0043】
本発明において、好ましくは、前記フッ素系バインダー樹脂は、フッ化ビニリデンと他の共重合可能なモノマーとの共重合体を含むものである。前記共重合体は、前記フッ素系バインダー樹脂100wt%に対して50wt%以上、70wt%以上、好ましくは90wt%以上含まれることができる。一方、本願発明の具体的な一実施形態において、前記共重合体は、上述した他の共重合可能なモノマーによる置換度が5wt%~20wt%であり得る。本発明の具体的な一実施形態において、前記置換度は、固体NMR(Solid NMR(Nuclear Magnetic Resonance))分析によって測定することができる。
【0044】
前記1H-NMRは、例えば、固体NMR分析法によって測定できる。その測定において、下記の条件が適用できる。
【0045】
-Agilent DD2 600MHz SSNMR/1.6mm T3 MAS HFXY Solid Probe
-19F NMR(one pulse、D1=30、ns=32、aq=0.4)
-Spinning rate=35kHz
【0046】
或いは、前記置換度は、1H-NMRスペクトルの相対的定量分析によって測定でき、例えば、Bruker AC400などの装置が前記1H-NMR分析に使用でき、溶媒としては、重水素化アセトン又は重水素化DMFが使用できる。結合定数(coupling constate)及び化学的シフト(chemical shift)は、それぞれヘルツ(Hz)及び百万分率(parts per million、ppm)単位で与えられる。1H-NMRに対する取得パラメータは、次の条件が適用できる:回転角90°、取得時間4.5s、パルスシーケンス2s、スキャン番号8。
【0047】
前記フッ化ビニリデンと共重合可能なモノマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、クロロフルオロエチレン、1,2-ジフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル、ペルフルオロ(エチルビニル)エーテル、ペルフルオロ(プロピルビニル)エーテル、ペルフルオロ(1,3-ジオキソール)、ペルフルオロ(2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)、トリクロロエチレン及びフッ化ビニルなどから選択された1種又は2種以上が含まれることができる。例えば、前記フッ素系バインダー樹脂は、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン(polyvinylidene fluoride-co-hexafluoropropylene)、ポリビニリデンフルオリド-トリクロロエチレン(polyvinylidene fluoride-co-trichloro)、フッ化ビニリデン-テトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレンなどを挙げることができ、これらの中から選択された1種又は2種以上の混合物を含むことができる。
【0048】
本発明の一実施形態において、前記混合溶媒は、第1及び第2溶媒の極性度の比率が0.360以上である。例えば、前記極性度の比率は0.360~0.450の間の値を有することができる。ここで、前記極性度の比率は、第2溶媒の極性度に対する第1溶媒の極性度(第1溶媒の極性度/第2溶媒の極性度)を意味する。
【0049】
一方、本発明において、極性度の比率の計算において、前記第2溶媒の極性度が前記第1溶媒の極性度に比べて相対的に大きいものである。すなわち、2種類の溶媒のうち、極性度が相対的に小さい溶媒を第1溶媒とし、残りの溶媒を第2溶媒とし、前記極性度の比率を計算する。
【0050】
前記用語「極性(Polarity)」は、一般に、2つ以上の原子からなる分子の構造的非対称性又は構成原子間の電気陰性度の差により電子雲が一方向に偏って生じる電気双極子モーメントを意味するものである。
【0051】
本発明において、前記各溶媒の極性度(ET
N)は、Dimroth-Reihardt ET 30 polarity scaleによるものである。これは、基準物質である2,6-ジフェニル-4-(2,4,6-トリフェニル-ピリジノ)フェノキシドを極性度測定対象溶媒(A)に添加して得られた溶液に対して吸光度数値(λmax)を測定した後、これを下記[式1]及び[式2]に代入して算出する方法で各溶媒の極性度を定量化するものである。前記吸光度値は、UV-vis測定装備を用いて測定できる。
【0052】
[式1]
ET(A)=28,592/λmax
[式2]
ET
N=[ET(A)-ET(TMS)]/[ET(H2O)-ET(TMS)]
【0053】
上記[式2]中、ET(H2O)は、水を基準物質の溶媒として[式1]によって算出された値であって63.1であり(λmaxが453nm)、ET(TMS)はTMS(テトラメチルシラン(Tetramethylsilane))を溶媒として[式1]によって算出されたものであって30.7である。すなわち、TMSが最も極性の低い非極性の化合物であり、相対的に水を最も極性の大きい化合物と設定し、TMSを0、水を1にそれぞれ規定した後、測定対象溶媒(A)の極性度(ET
N)を相対的に規定したものである。言い換えれば、前記各溶媒の極性度は、水を1に規定したときの相対極性度であり得る。前記ET(A)の単位はkcal/molである。
【0054】
前記第1及び第2溶媒は、それぞれ独立して、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、n-メチルピロリドン(NMP)、炭素数1~3の低級アルコール、H2Oの中から選択された1種又は2種以上の混合物であり得る。本発明の一実施形態において、前記第1溶媒は、アセトン、THF、DMF及びNMPの中から選択された1種又は2種以上の混合物であり、前記第2溶媒は、炭素数1~3の低級アルコール及びH2Oの中から選択された1種又は2種以上の混合物であり得る。
【0055】
本発明の具体的な一実施形態において、前記混合溶媒は、DMFとEtOHの混合物、DMFとH2Oの混合物、及びNMPとH2Oの混合物の中から選択された1種であり得る。
【0056】
本発明の具体的な一実施形態において、前記相対極性度については、「https://sites.google.com/site/miller00828/in/solvent-polarity-table」、「K.Guzow et al./Spectrochemica Acta Part A 61(2005) 1133-1140」及び「韓国軍事科学技術学会誌第11巻第3号(2008年6月)、溶媒極性度の理論的予測研究」などの内容を参照することができる。
【0057】
本発明において、前記極性度の比率が0.360~0.450の範囲に属する場合、得られた分離膜における電極接着層のフッ素系バインダーは、結晶化度が約40%以上又は50%以上であり、この中のベータ結晶の含有量が80%以上に誘導されることができる。
【0058】
本発明の一実施形態において、前記結晶化度は、DSC測定(示差走査熱量測定)を用いて測定できる。例えば、前記結晶化度は、5℃/min~15℃/minの速度で熱変化を与えて測定することができ、結晶化度(%)は、下記[式3]によって計算できる。
【0059】
[式3]
結晶化度(%)=(△Hm/△H°m)×100
【0060】
上記[式3]中、ΔH°mは、100%結晶化を有する高分子の融解熱を示し、ΔHmは、示差走査熱分析器で測定された高分子の融解熱を示す。
【0061】
また、前記ベータ結晶の含有量は、FT-IR(Infrared Spectroscopy)によって測定された吸収度数値及び下記[式4]によって計算できる。
【0062】
【0063】
-吸収係数(Absorption coefficient)
Kα=6.1×104cm2/mol
Kβ=7.7×104cm2/mol
【0064】
上記[式4]中、F(β)はβ結晶の含有量比、K(α)はα結晶の吸収係数、K(β)はβ結晶の吸収係数、Aαは結晶の吸収度、Aβはβ結晶の吸収度をそれぞれ示す。
【0065】
本発明の具体的な一実施形態において、前記FT-IR(Infrared Spectroscopy)を用いた吸収度数値は、ATRモジュールが備えられたPerkin-Elmerスペクトル1000分光計によって測定できる。このとき、精度は+/-2cm-1、25°の条件が適用できる。
【0066】
一方、周知の如く、フッ化ビニリデンを含むフッ素系重合体は、α、β及びγの結晶構造を持つことができる。このうち、α結晶は、分子鎖がトランス-ゴーシュ-トランス-ゴーシュ(trans-gauche-trans-gauche)の方式で連結されているものであり、β結晶は、分子鎖が全てトランス(all-trans)形態からなっており、分子鎖自体の分極度が最も大きいと同時に結晶格子内においても全ての分子鎖が同じ方向に配列されている。前記電極接着層におけるフッ素系バインダー中のβ結晶が上記の範囲を満たす場合、電気陰性度の高いフッ素原子の配列が一定になって気孔のサイズと分布が均一な接着層が形成され、その結果、リチウムイオンの移動性が改善されるという効果を示すことができる。
【0067】
次に、前記高分子溶液を準備された分離膜基材層の少なくとも一方側の表面又は両方側の表面に塗布する(S2)。前記塗布には、ディップ(Dip)コーティング、ダイ(Die)コーティング、ロール(roll)コーティング、コンマ(comma)コーティング、又はこれらの混合方式などを用いることができる。その後、前記コーティングされた高分子溶液を乾燥させる(S3)。前記乾燥は、前記混合溶媒を少なくとも一部又は全部除去することができる方法であれば、特別な方法に限定されるものではなく、公知の乾燥方法の中から適切な方法を選択して適用することができる。例えば、前記乾燥は、自然乾燥、送風乾燥、熱風乾燥、冷風乾燥、真空乾燥のうちの1つ以上が適用できる。本発明の一実施形態において、前記乾燥は、常温での自然乾燥又は送風乾燥によって行われることができる。又は、前記乾燥は、対流オーブンなどを用いて30℃超過の温度条件で熱風乾燥の方法によって行われることができる。本発明の一実施形態において、好ましくは、前記乾燥は、対流オーブン乾燥によって行われることができ、このとき、乾燥温度は、50℃~100℃の範囲に制御されるのである。前記乾燥時間は、温度又は送風の有無に応じて、溶媒を除去するのに適した範囲に制御できる。
【0068】
このように製造されたリチウム二次電池用分離膜は、電気化学素子用分離膜としても用いられることができる。前記電気化学素子は、電気化学反応を行う全ての素子を含み、具体的な例を挙げると、あらゆる種類の一次電池、二次電池、燃料電池、太陽電池又はキャパシタ(capacitor)などがある。特に、前記二次電池のうち、リチウム金属二次電池、リチウムイオン二次電池、リチウムポリマー二次電池、又はリチウムイオンポリマー二次電池などを含むリチウム二次電池が好ましい。
【0069】
本発明による具体的な一実施形態において、リチウム二次電池は、当技術分野における通常の方法によって製造されることができる。本願発明による一実施形態によれば、正極と負極との間に前述の分離膜を介在させて電極組立体を準備し、これを電池ケースに収納した後、電解液を注入することにより、二次電池を製造することができる。
【0070】
本発明の一実施形態において、前記二次電池の電極は、当技術分野における通常の方法に従って電極活物質を電極電流集電体に接着された形態で製造することができる。前記電極活物質のうち、正極活物質の非制限的な例としては、従来の電気化学素子の正極に使用できる通常の正極活物質が使用可能であり、特にリチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウム鉄酸化物又はこれらの組み合わせによって形成される複合酸化物などのリチウム吸着物質(lithium intercalation material)などが好ましい。負極活物質の非制限的な例としては、従来の電気化学素子の負極に使用できる通常の負極活物質が使用可能であり、特にリチウム金属又はリチウム合金、炭素、石油コーク(petroleum coke)、活性炭(activated carbon)、グラファイト(graphite)又はその他の炭素類などのリチウム吸着物質などが好ましい。正極電流集電体の非制限的な例としては、アルミニウム、ニッケル又はこれらの組み合わせによって製造される箔等があり、負極電流集電体の非制限的な例としては、銅、金、ニッケル又は銅合金、又はこれらの組み合わせによって製造される箔等がある。
【0071】
本発明で使用できる電解液は、A+B-のような構造の塩であって、A+は、Li+、Na+、K+などのアルカリ金属カチオン又はこれらの組み合わせからなるイオンを含み、B-は、PF6
-、BF4
-、Cl-、Br-、I-、ClO4
-、AsF6
-、CH3CO2
-、CF3SO3
-、N(CF3SO2)2
-、C(CF2SO2)3
-などのアニオン又はこれらの組み合わせからなるイオンを含む塩が、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、ジメチルスルホキシド、アセトニトリル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ガンマブチロラクトン(γ-ブチロラクトン)又はこれらの混合物よりなる有機溶媒に溶解又は解離したものがあるが、これに限定されない。
【0072】
前記電解液注入は、最終製品の製造工程及び要求物性に応じて、電池製造工程中の適切な段階で行われることができる。すなわち、電池組立前又は電池組立最終段階などで適用できる。本発明の電極組立体を電池に適用する工程としては、一般な工程である巻取り(winding)以外にも、分離膜と電極の積層(lamination、stack)及び折り畳み(folding)工程が可能である。
【0073】
以下、本発明を具体的に説明するために実施例を挙げて詳細に説明する。しかしながら、本発明による実施例は、様々な形態に変形することができ、本発明の範囲は、以下に説明する実施例に限定されるものと解釈されてはならない。本発明の実施例は、当技術分野における通常の知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0074】
実施例
実施例1及び実施例2
A.分離膜基材層の準備
Al2O3粉末(粒径500nm)とPVdF-HFPバインダーポリマー(Solvay社製、Solef 21510、HFP15wt%)をバインダー高分子:無機物粒子=20:80の重量比でNMPに投入し、50℃で合計1時間ボールミル法を用いて無機物粒子を破砕及び分散して多孔性コーティング層形成用スラリーを準備した。このとき、固形分の比率は20wt%となるように調節した。次に、多孔性高分子基材としてサイズ6cm×15cmのポリエチレン多孔性高分子基材(厚さ9μm、通気度70sec/100ml、抵抗0.39Ω)を準備した。前記スラリーを前記多孔性高分子基材の両面に塗布し、70℃の条件で送風乾燥させて分離膜基材層を準備した。
【0075】
B.電極接着層の形成
第1及び第2溶媒を準備し、これを混合して混合溶媒を準備した。前記混合溶媒の組成は、下記[表1]の通りである。PVDF-HFP(Solvay社製、Solef 21510)を準備し、これを前記混合溶媒に投入して電極接着層形成用高分子溶液を準備した。前記高分子溶液をドクターブレードの方法で前記分離膜基材層の両面に塗布し、70℃で対流オーブンによって対流乾燥させて複合分離膜を得た。
【0076】
比較例1及び比較例2
実施例と同様の方法で分離膜基材層を得た。第1及び第2溶媒を準備し、これらを混合して混合溶媒を準備した。前記混合溶媒の組成は、下記[表1]の通りである。PVDF-HFP(Solvay社製、Solef 21510)を準備し、これを前記混合溶媒に投入して電極接着層形成用高分子溶液を準備した。前記高分子溶液をドクターブレードの方法で前記分離膜基材層の両面に塗布し、70℃で送風乾燥させて複合分離膜を得た。
【0077】
比較例3
実施例と同様の方法で分離膜基材層を得た。DMFにPVDF-HFP(Solvay社製、Solef 21510)を投入して電極接着層形成用高分子溶液を準備した。前記高分子溶液をドクターブレード法によって前記分離膜基材層の両面に塗布した。その後、100℃、相対湿度30%で加湿相分離を行い、前記高分子溶液を固化させて分離膜を得た。
【0078】
分離膜のβ結晶相比率の確認
実施例1及び比較例1の分離膜に対してFT-IRを介して吸収度を測定し、これを前記[式4]に適用してβ結晶相比率を計算し、その結果を
図1にグラフで示した。
図1によれば、(1溶媒)/(2溶媒)の極性比が0.360以上である実施例1が比較例1に比べて高いβ結晶相を示すことが確認された。
【0079】
このとき、β結晶相比率は、FT-IR spectroscopy(Perkin-Elmer)を用いてATRモード(diamond crystal)で測定した後、β-phase結晶相比率を計算した。
【0080】
分離膜表面の観察
図2a及び
図2bは、実施例1で得られた分離膜の表面に対するSEM画像であり、
図3は、比較例1で得られた分離膜の表面に対するSEM画像である。また、
図4は、比較例3で得られた分離膜の表面に対するSEM画像である。これらを参照すると、実施例1による分離膜は小さな微細気孔が多く生成され、抵抗に有利に作用することが分かる。これに対し、比較例1及び比較例3の分離膜は、比較的大きいサイズの気孔が不規則に分布していた。また、下記の実験から確認したように、これらの大きい気孔が不規則に分布している場合、抵抗に不利に作用することが確認された。
【0081】
モノセルの製造及び抵抗の測定
負極活物質として人造黒鉛、導電材としてデンカブラック(carbon black)、バインダーとしてポリビニリデンフルオリド(PVdF)をそれぞれ75:5:25の重量比で混合し、溶媒であるN-メチルピロリドン(NMP)を添加して負極スラリーを製造した。前記負極スラリーを銅集電体にコーティング及び乾燥させることにより、負極活物質層の形成された負極を準備した。
【0082】
正極活物質としてLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2、導電材としてデンカブラック、バインダーとしてポリビニリデンフルオリド(PVdF)を85:5:15の重量比で溶媒としてのN-メチルピロリドン(NMP)に添加して、正極活物質スラリーを準備した。前記正極活物質スラリーをシート状のアルミニウム集電体上にコーティングし、乾燥させて正極活物質層の形成された負極を準備した。
【0083】
上述のように製造された正極と負極との間に、各実施例及び比較例で得られた分離膜を介在させて電極組立体を製造し、電解液を注液して50mAhのモノセルを製造した。前記電解液は、エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートが7:3の比率(体積比)で混合され、LiPF6が0.7Mの濃度で含まれるように準備された。前記モノセルに対してMarco充放電器を用いて抵抗を測定した。測定条件は、SOC50%で2.5c-レート パルス(2.5c-rate pulse)であった。
【0084】
【0085】
抵抗測定方法
各実施例及び比較例で得られた分離膜をSUSの間に介在し、コインセルを製造した。前記コインセルの電解液としては、エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネートを1:2(体積比)で混合し、LiPF6を1M濃度で添加した。各コインセルに対して分析装置(VMP3、Bio logic cence instrument)を用いて、25℃で振幅10mV及びスキャン範囲0.1hz~1Mhzの条件で電気化学インピーダンス分光分析結果から抵抗を測定した。
【0086】
通気度測定方法
前記通気度は、各実施例及び比較例の分離膜に対して100mlの空気が透過する時間を測定したものである。前記通気度は、JIS P8117の方法で測定した。多孔性基材の通気度も、これに準じて測定した。