(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
B62J 11/10 20200101AFI20240405BHJP
B62J 6/00 20200101ALI20240405BHJP
B62J 11/19 20200101ALI20240405BHJP
【FI】
B62J11/10
B62J6/00
B62J11/19
(21)【出願番号】P 2022571533
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2021047476
(87)【国際公開番号】W WO2022138691
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2020212434
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】井上 武宏
(72)【発明者】
【氏名】加茂 厚
(72)【発明者】
【氏名】栗田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】高木 洋子
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-144799(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0025962(US,A1)
【文献】特開2017-061198(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 11/10
B62J 6/00 - 6/26
B62J 11/19
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーン車両又は鞍乗型車両である車両であって、
前記車両は、
乗員が着座するためのシートと、側面視で視認可能な車両外観を構成するボディカバーとを備え、複数の車輪を支持する車体と、
照明用又は通信用のレーザ光を発する光源ユニットと、
前記光源ユニットから供給される前記レーザ光を利用する1つ又は複数の光利用装置と、
前記光源ユニットから前記1つ又は複数の光利用装置まで前記レーザ光を導くように構成される光ファイバケーブルと、
電源装置と、
複数の電気装置と、
前記電源装置と電気的に接続される幹部と、前記幹部から分岐して前記複数の電気装置の各々と電気的に接続される複数の枝部とを含む電気ケーブルと
を備え、
前記光ファイバケーブルは、
前記電気ケーブルの前記幹部に沿って前記幹部に支持される被支持部と、前記幹部に支持されずに前記光源ユニットから前記被支持部に至る上流部とを有し、
前記被支持部の少なくとも一部と前記上流部の少なくとも一部との両方が、ボディ内被覆領域に位置するように、設けられ、
前記ボディ内被覆領域は、
平面視において、車幅方向で前記ボディカバーの最外面よりも車両中心に近く、前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域、及び、
側面視において、前記シートの最上部よりも下に位置し、前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域
のうちの少なくとも一つである
ことを特徴とする車両。
【請求項2】
請求項1記載の車両であって、
前記ボディ内被覆領域は、
平面視において、車幅方向で前記ボディカバーの最外面よりも車両中心に近く、走行中に前記車両に乗車するライダと接触する部品によって前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域、及び、
側面視において、前記シートの最上部よりも下に位置し、走行中に前記車両に乗車するライダと接触する部品によって前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域
のうちの少なくとも一つである
ことを特徴とする車両。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両であって、
前記ボディ内被覆領域は、
平面視において、車幅方向で前記ボディカバーの最外面よりも車両中心に近く、走行中に前記車両に乗車するライダの脚から荷重を受ける脚荷重部品によって前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域、及び、
側面視において、前記シートの最上部よりも下に位置し、走行中に前記車両に乗車するライダの脚から荷重を受ける前記脚荷重部品によって前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域
のうちの少なくとも一つである
ことを特徴とする車両。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1に記載の車両であって、
前記ボディ内被覆領域は、
平面視において、車幅方向で前記ボディカバーの最外面よりも車両中心に近く、前記シート、燃料タンク又はダミータンクによって前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域、及び、
側面視において、前記シートの最上部よりも下に位置し、前記ボディカバーによって前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域
のうちの少なくとも一つである
ことを特徴とする車両。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1に記載の車両であって、
前記光ファイバケーブルの前記被支持部は、前記電気ケーブルの前記幹部に沿って前記幹部によって支持されるように、前記幹部と結束され、これにより、前記光-電気ケーブル束を構成する
ことを特徴とする車両。
【請求項6】
請求項5のいずれか1に記載の車両であって、
前記光-電気ケーブル束は、前記光ファイバケーブルの前記被支持部の剛性よりも高い剛性を有する
ことを特徴とする車両。
【請求項7】
請求項5又は6記載の車両であって、
前記光-電気ケーブル束は、
互いに隣り合う前記被支持部及び前記幹部のそれぞれの側面が、前記光-電気ケーブル束の長手方向の全域又は複数箇所において、互いに接触した状態が維持されるように構成される
ことを特徴とする車両。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか1項に記載の車両であって、
前記光-電気ケーブル束は、
前記光-電気ケーブル束内において互いに隣り合う前記被支持部及び前記幹部の相対的な自由変位が、前記光-電気ケーブル束の長手方向における全域又は複数箇所において規制されるように構成されている
ことを特徴とする車両。
【請求項9】
請求項5~8のいずれか1に記載の車両であって、
前記光-電気ケーブル束は、前記光-電気ケーブル束の長手方向における複数箇所での結束部材による環状の結束、又は、結束部材による螺旋状の結束により構成される
ことを特徴とする車両。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1に記載の車両であって、
前記光源ユニットの光出力点と光ケーブル合流点との直線距離は、前記電源装置の電気出力点と前記光ケーブル合流点との直線距離よりも短く、前記光ケーブル合流点は、前記被支持部と前記上流部との境界位置に対応している
ことを特徴とする車両。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1に記載の車両であって、
前記光ファイバケーブルにおける前記光源ユニットの光出力点から光ケーブル合流点までの長さは、前記電気ケーブルにおける前記電源装置の電気出力点から前記光ケーブル合流点までの長さよりも短く、前記光ケーブル合流点は、前記被支持部と前記上流部との境界位置に対応している
ことを特徴とする車両。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の車両であって、
前記車体は、
前記シートと前記ボディカバーとを備えたメインボディと、
操舵されることにより、一部の車輪と共に、前記メインボディに対して相対的に変位するように構成された可動部と
を備え、
前記幹部及び前記被支持部の両方、又は前記幹部のみは、前記メインボディと前記可動部とにわたって設けられている
ことを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リーン車両又は鞍乗型車両である車両に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、レーザ光を利用した灯火器装置を有する車両が示されている。特許文献1の車両は鞍乗型車両である。また、特許文献1の鞍乗型車両は、左右へリーンする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、リーン車両又は鞍乗型車両である車両の大型化の抑制と光ファイバケーブルの保護とを両立しつつ、レーザ光を用いた灯火又は通信を採用することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上述の目的を達成するために以下の検討を行った。
リーン車両は、旋回などの動作を行う際に、ライダの体重移動を必要とする。鞍乗型車両は、ライダがシートに跨った状態で走行する。そのため、リーン車両又は鞍乗型車両である車両は、キャビンを有する一般的な四輪車と比べて、車幅が小さいように構成されている。一般的に、リーン車両又は鞍乗型車両である車両には、機動性・軽快性・簡便性が要求される。従って、リーン車両又は鞍乗型車両である車両に対する小型化及び軽量化の要求は非常に高い。車体の部品は、密に配置されている。例えば、燃料タンク、燃料タンクを模した形状を有するダミータンク、フートボード、シート、又は、ボディカバーといった部品によって覆われる領域では、部品が密に配置されており、部品間の隙間が小さい。
また、リーン車両又は鞍乗型車両である車両は、小さい車幅を利用して、林道といった狭い通路を走行する場合がある。このような狭い通路では、木の枝といった障害物と車体が接触する場合がある。
また、リーン車両又は鞍乗型車両は、通常、走行していない場合には、自立機構やライダの支持なしには自立せず倒れる車両である。リーン車両又は鞍乗型車両が倒れた場合、車体は地面等と接触する。
【0006】
特許文献1は、光ファイバケーブルが、車体内の配策位置の形状に応じて自在に屈曲させることが可能である旨を開示している。一般的に、光ファイバケーブルは、電気ケーブルが有する金属心線よりも細く、光ファイバケーブルの曲げ剛性は、電気ケーブルの剛性よりも低い。このように、光ファイバケーブルは、比較的柔らかく容易に変形可能に構成されており、部品間の狭い隙間に配置することが可能である。
【0007】
リーン車両又は鞍乗型車両である車両が狭い通路を走行する場合における障害物との接触や、倒れた場合に地面等と接触することを避けるため、光ファイバケーブルを車体の内部に配置することが考えられる。
光ファイバケーブルは、例えば外力の付与によって湾曲しやすいが、外力の付与を止めた後、湾曲した形状を保持し難い。加えて、車両の車体は、走行時などに、振動を受ける。そのため、光ファイバケーブルが部品間の狭い隙間を通るように設けられた場合、光ファイバケーブルと各部品とが、車体の振動に伴い接触する可能性がある。車体内には、比較的温度の高い部品や可動部分も存在している。そのため、接触により、光ファイバケーブルが傷ついたり、伝送効率が低下し易くなったりする場合がある。よって、光ファイバケーブルと各部品との接触を如何に防止又は抑制するかは、重要である。例えば、部品間の隙間を広く保持したり、光ファイバケーブルを保護するための部材を別途設けたりすることにより、接触の防止又は抑制が可能になる。しかし、これは、大型化を招来するため、リーン車両又は鞍乗型車両である車両にとって好ましくない。リーン車両又は鞍乗型車両である車両の大型化の抑制と光ファイバケーブルの保護の両立は容易ではない。
【0008】
本発明者らは、上述の事項について検討を行った。その結果、本発明者らは、リーン車両又は鞍乗型車両である車両のボディ内被覆領域において、光ファイバケーブルが、電気ケーブル束の幹部に沿ってこの幹部によって支持されるように設けられ、また、光ファイバケーブルのうち幹部から分岐して光源ユニットまで延びる部分もボディ内被覆領域に設けられるように構成することにより、リーン車両又は鞍乗型車両である車両の大型化の抑制を抑制しつつ光ファイバケーブルを保護できることを見出した。
本発明は、上記の知見に基づいて成されたものである。
【0009】
本発明の一つの観点によれば、車両は、次の構成を備える。
(1) リーン車両又は鞍乗型車両である車両であって、
前記車両は、
乗員が着座するためのシートと、側面視で視認可能な車両外観を構成するボディカバーとを備え、複数の車輪を支持する車体と、
照明用又は通信用のレーザ光を発する光源ユニットと、
前記光源ユニットから供給される前記レーザ光を利用する1つ又は複数の光利用装置と、
前記光源ユニットから前記1つ又は複数の光利用装置まで前記レーザ光を導くように構成される光ファイバケーブルと、
電源装置と、
複数の電気装置と、
前記電源装置と電気的に接続される幹部(みきぶ)と、前記幹部から分岐して前記複数の電気装置の各々と電気的に接続される複数の枝部(えだぶ)とを含む電気ケーブルと
を備え、
前記光ファイバケーブルは、
前記電気ケーブルの前記幹部に沿って前記幹部に支持される被支持部と、前記幹部に支持されずに前記光源ユニットから前記被支持部に至る上流部とを有し、
前記被支持部の少なくとも一部と前記上流部の少なくとも一部との両方が、ボディ内被覆領域に位置するように、設けられ、
前記ボディ内被覆領域は、
平面視において、車幅方向で前記ボディカバーの最外面よりも車両中心に近く、前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域、及び、
側面視において、前記シートの最上部よりも下に位置し、前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域
のうちの少なくとも一つである
ことを特徴とする車両。
【0010】
(1)の車両は、リーン車両又は鞍乗型車両である。車両は、車体と、光源ユニットと、光利用装置と、光ファイバケーブルと、電源装置と、複数の電気装置と、電気ケーブルと、を備える。車体は、シートと、ボディカバーとを備える。電源装置は、例えば、バッテリである。電源装置は、これに限られず、例えば、キャパシタでもよく、また、バッテリとキャパシタの組合せでもよい。電気装置は、基本的に、電源装置を除く電気部品である。電気ケーブルは、幹部(みきぶ)と、複数の枝部(えだぶ)とを含む。幹部は、電源装置と電気的に接続されている。複数の枝部は、幹部から分岐して複数の電気装置の各々と電気的に接続される。光ファイバケーブルは、光源ユニットから光利用装置までレーザ光を導くように構成される。光ファイバケーブルは、被支持部と、上流部とを有する。被支持部は、電気ケーブルの幹部に沿って幹部に支持される部分である。上流部は、幹部に支持されずに光源ユニットから被支持部に至る部分である。
電気ケーブルは、例えば、金属製の心線と、樹脂製のシース(外装被覆)とを有する。光ファイバケーブルは、例えば、樹脂製の光ファイバ心線と、樹脂製のシースとを有する。リーン車両又は鞍乗型車両である車両に設けられる電気ケーブルは、光ファイバケーブルと比べて、例えば車両の組立時に形成された形状を保持し易い。光ファイバケーブルは、電気ケーブルに沿って電気ケーブルの幹部で支持されるので、振動などに起因する自由な変形又は変位が抑制され易い。このため、(1)の車両は、光ファイバケーブルの変形及び/又は変位を、防止又は抑制できる。ボディ内被覆領域は、平面視において、車幅方向で前記ボディカバーの最外面よりも車両中心に近く、車体内において車両の外部から視認できない領域、及び、側面視において、シートの最上部よりも下に位置し、車体内において車両の外部から視認できない領域のうちの少なくとも一つである。リーン車両又は鞍乗型車両である車両のボディ内被覆領域は、部品が密に配置されている。(1)の車両によれば、例えば電気ケーブルよりも小さい剛性を有する光ファイバケーブルが、車両の外部の物と接触することを防止又は抑制することができ、更に、光ファイバケーブルがボディ内被覆領域である狭い隙間で延びる場合に、振動に起因して光ファイバケーブルが部品と接触することを防止又は抑制することができる。また、光ファイバケーブルに沿って電気ケーブルの幹部が延びるので、光ファイバケーブルは、電気ケーブルの幹部によって部品の接触から保護されやすい。(1)の車両では、光ファイバケーブルと各部品との接触を防止又は抑制することができる。また、光ファイバケーブルと部品とが直接的に接触しても、光ファイバケーブルが電気ケーブルによって支持されているので、光ファイバケーブルの変形若しくは変位、又は損傷を、防止又は抑制できる。そして、光ファイバケーブルのうち、光源ユニットから被支持部に至る上流部も、ボディ内被覆領域に配置されるので、幹部から分岐した光ファイバケーブルと各部品との接触も防止又は抑制することができる。従って、各部品間の隙間の大型化を防止又は抑制することができる。加えて、リーン車両又は鞍乗型車両である車両に設けられた電気ケーブルを、光ファイバケーブルを支持するために用いるので、設置スペースの大型化又は新設を抑制することができる。リーン車両又は鞍乗型車両である車両の大型化の抑制と光ファイバケーブルの保護とを両立することができる。また、(1)の車両における光ファイバケーブルは、電気ケーブルに沿っている。このため光ファイバケーブルは、例えば車体のフレームのみに沿って配置される場合と比べ、フレームが設けられていないようなより広範囲の場所へ、支持された状態で配策される。従って、大型化の抑制と光ファイバケーブルの保護とを両立しつつ、配策の自由度がより高い。
【0011】
本発明の他の観点によれば、車両は、以下の構成を採用できる。
(2) (1)の車両であって、
前記ボディ内被覆領域は、
平面視において、車幅方向で前記ボディカバーの最外面よりも車両中心に近く、走行中に前記車両に乗車するライダと接触する部品によって前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域、及び、
側面視において、前記シートの最上部よりも下に位置し、走行中に前記車両に乗車するライダと接触する部品によって前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域
のうちの少なくとも一つである
ことを特徴とする車両。
【0012】
(2)の車両によれば、光ファイバケーブルがライダと接触する事態を抑制するとともに、車両の外部からの接触を抑制することができる。従って、光ファイバケーブルがより保護される。
【0013】
本発明の他の観点によれば、車両は、以下の構成を採用できる。
(3) (1)又は(2)の車両であって、
前記ボディ内被覆領域は、
平面視において、車幅方向で前記ボディカバーの最外面よりも車両中心に近く、走行中に前記車両に乗車するライダの脚から荷重を受ける脚荷重部品によって前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域、及び、
側面視において、前記シートの最上部よりも下に位置し、走行中に前記車両に乗車するライダの脚から荷重を受ける前記脚荷重部品によって前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域
のうちの少なくとも一つである
ことを特徴とする車両。
【0014】
(3)の車両によれば、光ファイバケーブルが、走行中にライダから受ける荷重からの影響を抑制するとともに、車両の外部からの接触を抑制することができる。従って、光ファイバケーブルがより保護される。
【0015】
本発明の他の観点によれば、車両は、以下の構成を採用できる。
(4) (1)~(3)のいずれか1の車両であって、
前記ボディ内被覆領域は、
平面視において、車幅方向で前記ボディカバーの最外面よりも車両中心に近く、前記シート、燃料タンク又はダミータンクによって前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域、及び、
側面視において、前記シートの最上部よりも下に位置し、前記ボディカバーによって前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域
のうちの少なくとも一つである
ことを特徴とする車両。
【0016】
(4)の車両によれば、走行中にライダの身体に近いシート及びボディカバーにおいて、走行中にライダから受ける荷重からの影響を抑制するとともに、車両の外部からの接触を抑制することができる。従って、光ファイバケーブルがより保護される。
【0017】
本発明の他の観点によれば、車両は、以下の構成を採用できる。
(5) (1)~(4)のいずれか1の車両であって、
請求項1~4のいずれか1に記載の車両であって、
前記光ファイバケーブルの前記被支持部は、前記電気ケーブルの前記幹部に沿って前記幹部によって支持されるように、前記幹部と結束され、これにより、前記光-電気ケーブル束を構成する
ことを特徴とする車両。
【0018】
(5)の車両によれば、光ファイバケーブルを電気ケーブルで構成された幹部と結束することにより、光-電気ケーブル束が構成される。このため、光ファイバケーブルを含む光-電気ケーブル束の形状が保持され易くなると共に、振動などに起因する自由な変位又は変形が抑制され易くなる。これにより、(5)の車両は、リーン車両又は鞍乗型車両である車両の大型化の抑制と光ファイバケーブルの保護とをより高いレベルで両立できる。
【0019】
光-電気ケーブル束は、1本又は複数本の光ファイバケーブルの少なくとも一部と1本又は複数本の電気ケーブルとが結束されることにより構成される。チューブに収容された光ファイバケーブル及び電気ケーブル(例えば、光-電気複合ケーブル、光-金属複合ケーブル)は、光ファイバケーブルが電気ケーブルによって支持されていない場合、光-電気ケーブル束に該当しない。
光-電気ケーブル束は、1本又は複数本の光ファイバケーブル束と、1本又は複数本の電気ケーブル束とが結束されることにより構成されてもよい。光-電気ケーブル束は、1本又は複数本の光ファイバケーブル束と、1本又は複数本の電気ケーブルとが結束されることにより構成されてもよい。光-電気ケーブル束は、1本又は複数本の電気ケーブル束と、1本又は複数本の光ファイバケーブルとが結束されることにより構成されてもよい。
【0020】
本発明の他の観点によれば、車両は、以下の構成を採用できる。
(6) (5)の車両であって、
前記光-電気ケーブル束は、前記光ファイバケーブルの前記被支持部の剛性よりも高い剛性を有する
ことを特徴とする車両。
【0021】
(6)の車両によれば、形状が保持され易くなると共に、振動などに起因する自由な変位又は変形が抑制され易くなる。これにより、(6)の車両は、リーン車両又は鞍乗型車両である車両の大型化の抑制と光ファイバケーブルの保護とをより高いレベルで両立できる。
【0022】
本発明の他の観点によれば、車両は、以下の構成を採用できる。
(7) (5)又は(6)の車両であって、
前記光-電気ケーブル束は、
互いに隣り合う前記被支持部及び前記幹部のそれぞれの側面が、前記光-電気ケーブル束の長手方向の全域又は複数箇所において、互いに接触した状態が維持されるように構成される
ことを特徴とする車両。
【0023】
(7)の車両によれば、形状が更に保持され易くなると共に、振動などに起因する自由な変位又は変形が更に抑制され易くなる。これにより、(7)の車両は、リーン車両又は鞍乗型車両である車両の大型化の抑制と光ファイバケーブルの保護とを更に高いレベルで両立できる。
【0024】
本発明の他の観点によれば、車両は、以下の構成を採用できる。
(8) (5)~(7)のいずれか1の車両であって、
前記光-電気ケーブル束は、
前記光-電気ケーブル束内において互いに隣り合う前記被支持部及び前記幹部の相対的な自由変位が、前記光-電気ケーブル束の長手方向における全域又は複数箇所において規制されるように構成されている
ことを特徴とする車両。
【0025】
(8)の車両によれば、形状が保持され易くなると共に、振動などに起因する自由な変位又は変形が抑制され易くなる。これにより、(8)の車両は、リーン車両又は鞍乗型車両である車両の大型化の抑制と光ファイバケーブルの保護とをより高いレベルで両立できる。自由変位の規制は、例えば、少なくとも長手方向における自由変位の規制であってもよく、自由変位可能な距離の制限であってもよく、これらの組合せであってもよい。
【0026】
本発明の他の観点によれば、車両は、以下の構成を採用できる。
(9) (5)~(8)のいずれか1の車両であって、
前記光-電気ケーブル束は、前記光-電気ケーブル束の長手方向における複数箇所での結束部材による環状の結束、又は、結束部材による螺旋状の結束により構成される
ことを特徴とする車両。
【0027】
(9)の車両によれば、形状が保持され易くなると共に、振動などに起因する自由な変位又は変形が抑制され易くなる。これにより、(9)の車両は、リーン車両又は鞍乗型車両である車両の大型化の抑制と光ファイバケーブルの保護とをより高いレベルで両立できる。結束部材による結束は、例えば、結束部材が周方向に巻かれることにより行われる。例えば、複数の結束部材が、光-電気ケーブル束の長手方向における異なる複数の位置で、それぞれ環状を成すように巻かれる。あるいは、結束部材が、螺旋状を成すように巻かれる。
【0028】
本発明の他の観点によれば、車両は、以下の構成を採用できる。
(10) (1)~(9)のいずれか1の車両であって
前記光源ユニットの光出力点と光ケーブル合流点との直線距離は、前記電源装置の電気出力点と前記光ケーブル合流点との直線距離よりも短く、前記光ケーブル合流点は、前記被支持部と前記上流部との境界位置に対応している
ことを特徴とする車両。
【0029】
(10)の車両によれば、光出力点から光ケーブル合流点までにおける距離が短いため、ボディ内被覆領域で振動による車両の部品との接触がより抑制される。従って、光ファイバケーブルがより保護される。
【0030】
本発明の他の観点によれば、車両は、以下の構成を採用できる。
(11) (1)~(10)のいずれか1の車両であって、
前記光ファイバケーブルにおける前記光源ユニットの光出力点から光ケーブル合流点までの長さは、前記電気ケーブルにおける前記電源装置の電気出力点から前記光ケーブル合流点までの長さよりも短く、前記光ケーブル合流点は、前記被支持部と前記上流部との境界位置に対応している
ことを特徴とする車両。
【0031】
(11)の車両によれば、光出力点から光ケーブル合流点までにおける光ファイバケーブルが短いため、ボディ内被覆領域で振動による車両の部品との接触がより抑制される。従って、光ファイバケーブルがより保護される。
【0032】
本発明の他の観点によれば、車両は、以下の構成を採用できる。
(12) (1)~(11)のいずれか1の車両であって、
前記車体は、
前記シートと前記ボディカバーとを備えたメインボディと、
操舵されることにより、一部の車輪と共に、前記メインボディに対して相対的に変位するように構成された可動部と
を備え、
前記幹部及び前記被支持部の両方、又は前記幹部のみは、前記メインボディと前記可動部とにわたって設けられている
ことを特徴とする車両。
【0033】
リーン車両又は鞍乗型車両である車両では、上述のように、複数の部品の互いの間隔が比較的狭いため、ケーブルの設置スペースを設け難い。加えて、可動部は、操舵によって変位する。そのため、可動部の変位は、比較的高頻度で行われる。そのような状況下において、光-電気ケーブル束は、メインボディと可動部とにわたって設けられる。(12)の車両は、光ファイバケーブルと他の部品との接触を防止又は抑制できる。光ファイバケーブルと他の部品とが接触した場合における光ファイバケーブルの損傷を防止又は抑制できる。
【0034】
本明細書にて使用される専門用語は特定の実施例のみを定義する目的であって発明を制限する意図を有しない。本明細書にて使用される用語「及び/又は」は一つの、又は複数の関連した列挙された構成物のあらゆる又は全ての組み合わせを含む。本明細書中で使用される場合、用語「含む、備える(including)」「含む、備える(comprising)」又は「有する(having)」及びその変形の使用は、記載された特徴、工程、操作、要素、成分及び/又はそれらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/又はそれらのグループのうちの1つ又は複数を含むことができる。本明細書中で使用される場合、用語「取り付けられた」、「接続された」、「結合された」及び/又はそれらの等価物は広く使用され、直接的及び間接的な取り付け、接続及び結合の両方を包含する。更に、「接続された」及び「結合された」は、物理的又は機械的な接続又は結合に限定されず、直接的又は間接的な電気的接続又は結合を含むことができる。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されることはない。本発明の説明においては、多数の技術及び工程が開示されていると理解される。これらの各々は個別の利益を有し、それぞれは、他の開示された技術の1つ以上、又は、場合によっては全てと共に使用することもできる。従って、明確にするために、この説明は、不要に個々のステップの可能な組み合わせを全て繰り返すことを控える。それにもかかわらず、明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせが全て本発明及び請求項の範囲内にあることを理解して読まれるべきである。
【0035】
本明細書では、新しい車両について説明する。以下の説明では、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細を述べる。しかしながら、当業者には、これらの特定の詳細無しに本発明を実施できることが明らかである。本開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0036】
上述した他の観点による構成を互いに組み合わせることは制限されない。実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、以下の説明に記載されたまたは図面に図示された要素の構成および配置の詳細に制限されないことが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態でも可能であり、様々な変更を加えた実施形態でも可能である。また、本発明は、後述する変形例を適宜組み合わせて実施することができる。
【0037】
鞍乗型車両は、ライダがサドルに跨って着座する形式の車両をいう。自動二輪車としては、特に限定されず、例えば、自動二輪車が挙げられる。また、鞍乗型車両は、自動二輪車に限定されず、例えば、3つの車輪を有する自動三輪車、4つの車輪を有するATV(All-Terrain Vehicle)、又は、ROV(Recreational Off-highway Vehicle)であってもよい。
【0038】
リーン車両は、リーン姿勢で旋回する車両である。リーン車両は、旋回時にカーブの内方向にリーンするように構成されている。リーン車両が、鞍乗型車両を兼ねていてもよい。リーン車両は、例えば、旋回時にカーブの内方向にリーンするように構成された鞍乗型車両が挙げられる。そのような車両としては、例えば、自動二輪車、自動三輪車等が挙げられる。自動三輪車は、前二輪型であってもよく、後二輪型であってもよい。リーン車両は、例えば、棒状のステアリングハンドル(バーハンドル)を有する。
【0039】
リーン車両又は鞍乗型車両である車両は、例えば、エンジンの動力で走行する車両である。ただし、車両は、特に限定されず、例えば、電気自動車、又は、ハイブリッド電気自動車でもよい。
【0040】
電源装置は、例えばバッテリである。ただし電源装置は、特に限定されず、例えばキャパシタ、又は、バッテリとキャパシタの組合せであってもよい。
電気装置は、例えば、電気的に動作する装置のうち、電源装置を除く装置である。電気装置は、例えば、ランプ、スイッチ、アクチュエータ、コンピュータ、リレー、若しくは、始動電動機、並びにこれらの組合せであってもよい。ただし、単に、車両の正常の状態において両端を電気的に接続する機能を有する電気ケーブル、及びヒューズは、電気装置に含まれない。
電気ケーブルの幹部は、電源装置と電気的に接続される部分である。電気ケーブルの枝部は、幹部から分岐して複数の電気装置の各々と電気的に接続される部分である。例えば、電源装置が、電気ケーブル-ヒューズ-電気ケーブル、を介して電気装置としてのスイッチの端子と電気的に接続される場合、上記の電気ケーブルは電源装置と電気的に接続されているので幹部である。なお、例えば、上記スイッチにおける更に異なる端子に接続される電気ケーブルは、上記幹部に合流する場合であっても、幹部に含まれない。
【0041】
光源ユニットは、例えば、照明用のレーザ光を発光する。光源ユニットは、例えば、データを表わす通信用のレーザ光を発光してもよい。
光利用装置は、レーザ光を用いて灯火又は通信を行なう装置である。光利用装置は、例えば、レーザ光を受け外部に光を発する発光部である。光利用装置は、特に限定されず、例えば、データを表わすレーザ光を受け、レーザ光からデータを取り出す光通信装置でもよい。
【0042】
光ファイバケーブルの被支持部は、例えば、ボディ内被覆領域、及びボディ内被覆領域の外において、幹部に沿って幹部によって支持されるように設けられる。ただし、光ファイバケーブルは特に限定されず、例えば光ファイバケーブルの被支持部は、例えば、ボディ内被覆領域のみにおいて、幹部に沿って幹部によって支持されるように設けられてもよい。ただし、電気ケーブルの枝部に支持される部分は、被支持部に該当しない。
光ファイバケーブルの少なくとも被支持部は、例えば、幹部と結束されることによって幹部に支持される。ただし、被支持部の支持方法は特に限定されず、光ファイバケーブルの被支持部は、幹部と共通のチューブに挿通されることによって幹部に支持されてもよい。
光ファイバケーブルの上流部は、光源ユニットから出力された光の進行方向の向きにおける上流の部分である。光ファイバケーブルの上流部は、光源ユニットから被支持部に至る部分である。
【0043】
ボディ内被覆領域は、例えば、平面視において、車幅方向で前記ボディカバーの最外面よりも車両中心に近く、前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域、又は、側面視において、前記シートの最上部よりも下に位置し、前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域、のいずれかである。ただし、ボディ内被覆領域は、特に限定されず、例えば、平面視において、車幅方向で前記ボディカバーの最外面よりも車両中心に近く、前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域、及び、側面視において、前記シートの最上部よりも下に位置し、前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域でもよい。
【0044】
また、ボディ内被覆領域は、例えば、平面視において、車幅方向で前記ボディカバーの最外面よりも車両中心に近く、走行中に前記車両に乗車するライダと接触する部品によって前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域、又は、側面視において、前記シートの最上部よりも下に位置し、走行中に前記車両に乗車するライダと接触する部品によって前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域、のいずれかである。ただし、ボディ内被覆領域は、特に限定されず、例えば、平面視において、車幅方向で前記ボディカバーの最外面よりも車両中心に近く、走行中に前記車両に乗車するライダと接触する部品によって前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域、及び、側面視において、前記シートの最上部よりも下に位置し、走行中に前記車両に乗車するライダと接触する部品によって前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域でもよい。
【0045】
また、ボディ内被覆領域は、例えば、平面視において、車幅方向で前記ボディカバーの最外面よりも車両中心に近く、走行中に前記車両に乗車するライダの脚から荷重を受ける脚荷重部品によって前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域、又は、
側面視において、前記シートの最上部よりも下に位置し、走行中に前記車両に乗車するライダの脚から荷重を受ける前記脚荷重部品によって前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域、のいずれかである。ただし、ボディ内被覆領域は、特に限定されず、例えば、平面視において、車幅方向で前記ボディカバーの最外面よりも車両中心に近く、走行中に前記車両に乗車するライダの脚から荷重を受ける脚荷重部品によって前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域、及び、側面視において、前記シートの最上部よりも下に位置し、走行中に前記車両に乗車するライダの脚から荷重を受ける前記脚荷重部品によって前記車体内において前記車両の外部から視認できない領域でもよい。
【0046】
走行中に車両に乗車するライダと接触する部品は、例えば、車両の走行中に車両に乗車するライダの手、脚、及び導体が接触する部品である。
車両のライダの脚から荷重を受ける脚荷重部品は、走行中に車両に乗車するライダと接触する部品に含まれる。脚荷重部品は、例えば、燃料タンク、燃料タンクを模した形状を有するダミータンク、フートボード、若しくはシート、又はこれらの組合せである。ダミータンクは、例えば電気車両において、燃料タンクの代わりに配置される部品である。
自動車と異なり、リーン車両又は鞍乗型車両である車両のシート、及びタンクは、ライダに接触する部分である。
【0047】
操舵されることにより一部の車輪と共にメインボディに対して相対的に変位するように構成された可動部は、例えば、フロントサスペンション、ハンドル、及びこれらに取付けられた装置である。ただし可動部は、特に限定されず、例えば、メインボディに対して相対的に変位するように設けられたメータ、及びウィンドシールドを含んでもよい。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、リーン車両又は鞍乗型車両である車両の大型化の抑制と光ファイバケーブルの保護とを両立しつつ、レーザ光を用いた灯火又は通信を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】(a)は、本発明の第一実施形態である車両の概略平面図である。(b)は、車両の概略側面図である。(c)は、車両に備えられる光-電気ケーブル束を示した図である。
【
図2】本発明の第二実施形態における光-電気ケーブル束を説明するための概略図である。
【
図3】
図1及び
図2における接続の構成が適用され得る装置の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、本発明の第一実施形態を説明するための概略図である。
図1(a)は、車両の概略平面図である。
図1(b)は、車両の概略側面図である。
図1(c)は、車両に備えられる光-電気ケーブル束を示した図である。
【0051】
図1(a)及び(b)に示す車両1は、鞍乗型車両である。車両1は、リーン車両でもある。車両1は、旋回時にカーブ中心方向に傾斜する。
車両1は、車体10と、光源ユニット30と、複数の光利用装置40と、光ファイバケーブル32と、電源装置66と、電気ケーブル61,62を備える。
【0052】
車体10は、複数の車輪14,15を支持する。車体10は、シート17と、ボディカバー18とを有する。シート17には、乗員が着座する。ボディカバー18は、
図1(b)に示す側面視で視認可能な車両外観を構成する。車体10は、動力源20も有する。動力源20は、車輪15を駆動する。動力源20は、例えば内燃機関である。但し、動力源20として電動モータも採用可能である。内燃機関及び電動モータの両方が採用されてもよい。車両1は、燃料タンク16を備える。但し、動力源20は、特に限定されず、例えば、電動モータでもよい。この場合、燃料タンク16の代わりにダミータンクが備えられてもよい。
【0053】
光源ユニット30は、照明用のレーザ光を発生する。光源ユニット30は、レーザ光源ユニットである。光源ユニット30は、電力の供給を受けレーザ光を出力する。光源ユニット30は、レーザ光源素子31を有する。光源ユニット30は、レーザ光源素子31から出力されたレーザ光を外部に発する。
光利用装置40は、光源ユニット30から供給されるレーザ光を利用する。光利用装置40は、発光部である。光利用装置40は、光源ユニット30から供給されるレーザ光を車両1の外部に向かって照射する。光利用装置40は、例えば、光源ユニット30から供給されるレーザ光の色を変更して、外部に向かって照射する。光利用装置40は、例えばフラッシャランプである。車両1は、複数の光利用装置40を備え、光源ユニット30は、フラッシャランプ以外の光利用装置40に対してもレーザ光を出力する。ここでは構成の見やすさのため複数の光利用装置40のうちのフラッシャランプの例のみ示し、フラッシャランプ以外の光利用装置40については後述する。
光ファイバケーブル32は、光源ユニット30から光利用装置40まで、レーザ光を導く。
図1に示す例において、光ファイバケーブル32は、光源ユニット30から出力されるレーザ光を発光部としての光利用装置40に導く。光ファイバケーブル32は、図示しない樹脂製の光ファイバ心線と、樹脂製のシースとを有する。
より詳細には、光ファイバケーブル32は、光源ユニット30の光出力点31aから出力されるレーザ光を光利用装置40に導く。光ファイバケーブル32は、光源ユニット30の光出力点31aに接続される。光出力点31aは、例えば、光源ユニット30に設けられた光コネクタである。
【0054】
電源装置66は、車両1の各部に電力を供給する。電源装置66は、例えば、バッテリである。電気装置60,63,64は、電源装置66と異なる装置である。電気装置60,63,64は、電気的に動作する装置である。
図1には、電気装置60,63,64の一例が示されている。電気装置60は、電子コンピュータで構成された制御装置である。電気装置60としての制御装置は、例えば動力源20の動作を制御する。電気装置63は、始動スイッチである。電気装置63としての始動スイッチは、操作を受けて例えば動力源20としてのエンジンを始動するためのスイッチである。電気装置64は、メインスイッチである。電気装置64としてのメインスイッチは、操作を受けて電源装置66の電力を他の電気装置60,63に供給するためのスイッチである。図に示す電気装置60,63,64以外に、図示しないスイッチ、ランプ、アクチュエータ、コンピュータ、リレー、センサ、及び、始動電動機も、本開示の電気装置に含まれる。ただし、電気ケーブル又はヒューズは、電気装置に含まれない。
【0055】
電気ケーブル61,62は、電気を伝達するケーブルである。電気ケーブル61,62は、電源装置66又は電気装置60,63,64と接続される。電気ケーブル61,62は、図示しない金属製の心線と、樹脂製のシースとを有する。
図1に示す例において、電気ケーブル61は、電気装置60としての制御装置と、電気装置63としての始動スイッチとに電気的に接続されている。電気ケーブル61は、電気装置60と電気装置63との間で電気を伝達する。また、電気ケーブル62は、電源装置66と、電気装置64としてのメインスイッチとに電気的に接続されている。電気ケーブル62は、電源装置66と、電気装置64との間で電気を伝達する。電気ケーブル62は、電源装置66から出力される電力を伝達する。このため、電気ケーブル62は、他の電気ケーブル61よりも太い。また、電気装置60としての制御装置から、電気ケーブル61の以外の図示しない電気ケーブルも延出する。例えば、電気装置60としての制御装置から、動力源20を動作させるための信号又は電力を供給させるための電気ケーブルが延出する。また、電源装置66から、図示しないリレーといった他の電気装置へも、図示しない電気ケーブルが延出している。ここでは構成の見やすさのため、電気ケーブル61,62の例のみを示す。
【0056】
電気ケーブル61の一部は、電気ケーブル62の一部に沿っており、当該一部に支持されている。電気ケーブル61,62は、束を構成する。束を構成する電気ケーブル61,62は、幹部H1と複数の枝部H2とを含む。幹部H1は、電源装置66と電気的に接続される部分である。枝部H2は、幹部H1から分岐して複数の電気装置60,63の各々と電気的に接続される部分である。本明細書におけるケーブルの「合流」は、互いに離れた場所から延びてきた複数の電気ケーブル61,62が、互いに沿って延び互いに支持する領域に至る形状を含む。つまり、複数の電気ケーブル61,62が合流することは、互いに電気的に接続されることを意味しない。ただし、合流は、特に限定されず、例えば、複数の電気ケーブルが電気的に接続されたり、それぞれの導体が1つにまとめられたりすることによって電気的に接続されてもよい。本明細書におけるケーブルの「分岐」は、合流を逆の表現で示した形状である。複数の電気ケーブル61,62が、互いに沿って延び互いに支持されてきた領域から、互いに離れる形状である。
【0057】
光ファイバケーブル32は、被支持部F1と上流部F2とを有する。被支持部F1は、電気ケーブル61,62の幹部H1に沿って幹部H1に支持される部分である。上流部F2は、幹部H1に支持されずに光源ユニット30から被支持部F1に至る部分である。被支持部F1と上流部F2との境界位置に対応する点は、光ケーブル合流点Aである。
【0058】
より詳細には、
図1(c)に示すように、光ファイバケーブル32の一部は、電気ケーブル61,62の幹部H1に沿って幹部H1に支持されるように、電気ケーブル61,62と結束される。これにより、光ファイバケーブル32は、光-電気ケーブル束Hを構成する。
より詳細には、光-電気ケーブル束Hは、光ファイバケーブル32の被支持部F1の長手方向における複数箇所で結束部材65による結束により構成されている。結束部材65は、光-電気ケーブル束Hの被支持部F1の長手方向における互いに異なる箇所で、それぞれ環状を成すように光-電気ケーブル束Hを巻いている。
【0059】
被支持部F1の一部と上流部F2の一部との両方は、ボディ内被覆領域BRに位置するように、設けられている。
ボディ内被覆領域BRは、次の二つの領域の何れかである。また、ボディ内被覆領域BRは、次の二つの領域の重なりも含む。
(A)例えば
図1(a)に示す平面視において車幅方向Wでボディカバー18の最外面よりも車両中心Cに近く(
図1(a)におけるR1)、車体10内において車両1の外部から視認できない領域。
(B)例えば
図1(b)に示す側面視においてシート17の最上部よりも下に位置し(
図1(b)のR2)、車体10内において車両1の外部から視認できない領域。
【0060】
車体10内において車両1の外部から視認できない領域は、例えば、走行中に車両1に乗車するライダと接触する部品によって車両1の外部から視認できない領域である。
【0061】
更に、車体10内において車両1の外部から視認できない領域は、例えば、走行中に車両1に乗車するライダの脚から荷重を受ける脚荷重部品によって車両1の外部から視認できない領域である。脚荷重部品は、例えば、ボディカバー18、シート17、燃料タンク16、又は図示しないダミータンクである。
【0062】
光-電気ケーブル束Hは、この光-電気ケーブル束Hを構成する光ファイバケーブル32の被支持部F1の剛性より高い剛性を有する。より詳細には、光-電気ケーブル束Hの曲げ剛性は、光ファイバケーブル32の被支持部F1の曲げ剛性より高い。このため、光ファイバケーブル32の形状が保持され易くなると共に、振動などに起因する自由な変位又は変形が抑制され易くなる。
【0063】
光源ユニット30の光出力点31aと光ケーブル合流点Aとの直線距離は、電源装置66の電気出力点66aと光ケーブル合流点Aとの直線距離よりも短い。
【0064】
また、光ファイバケーブル32における光源ユニット30の光出力点31aから光ケーブル合流点Aまでの長さは、電気ケーブル62における電源装置66の電気出力点66aから光ケーブル合流点Aまでの長さよりも短い。
【0065】
電気ケーブル61,62は、金属製の心線を有するため、光ファイバケーブル32の曲げ剛性と比べて、高い曲げ剛性を有する。電気ケーブル61,62が、曲げの外力を受ける場合、弾性変形する範囲は、光ファイバケーブル32が弾性変形する範囲よりも小さい。つまり、電気ケーブル61,62は、曲げの外力を受けた場合に塑性変形しやすい。このため、例えば車両1の組立てにおいて、電気ケーブル61,62が曲げられた場合、曲がった形状が維持されやすい。即ち、電気ケーブル61,62は、光ファイバケーブル32と比べて、その形状を保持し易い。また、光ファイバケーブル32自体と比べて、電気ケーブル61,62の幹部H1に沿って幹部H1により支持された光ファイバケーブル32では、振動などに起因する自由な変形又は変位が抑制され易い。従って、光ファイバケーブル32の変形及び/又は変位を、防止又は抑制できる。よって、光ファイバケーブル32が、例えばフレーム11といった車体10の構成間の狭い隙間を通された場合に、車体10の各構成と光ファイバケーブル32との接触を防止又は抑制できる。
【0066】
また、光ファイバケーブル32の被支持部F1は、電気ケーブル61,62の幹部H1と結束され、これにより、光-電気ケーブル束Hを構成する。このため、光ファイバケーブル32の形状がさらに保持され易くなると共に、振動などに起因する自由な変位又は変形が抑制され易くなる。
【0067】
また、光ファイバケーブル32の被支持部F1の近傍又は隣接位置に電気ケーブル61,62が位置するので、光ファイバケーブル32は、実質的に、電気ケーブル61,62によって保護される。光ファイバケーブル32と車体10における各部品との直接的な接触が抑制されやすい。光ファイバケーブル32と構成とが直接的に接触しても、光ファイバケーブル32が電気ケーブル61,62によって支持されているので、光ファイバケーブル32の変形若しくは変位、又は、損傷を、防止又は抑制することができる。従って、車体10における各構成間の隙間の大型化を防止又は抑制することができる。加えて、車両1に本来的に設けられた電気ケーブル61,62を、光ファイバケーブル32を支持するためにも用いるので、設置スペースの大型化を抑制できる。このようにして、車両1の大型化の抑制と光ファイバケーブル32の保護とを両立することができる。
【0068】
また、光-電気ケーブル束Hは、光-電気ケーブル束Hの長手方向における複数箇所での結束部材65による結束により構成されている。このため、光ファイバケーブル32の形状がさらに保持され易くなると共に、振動などに起因する自由な変位又は変形がさらに抑制され易くなる。
図1(c)に示す結束部材65は、光-電気ケーブル束H内において互いに隣り合うケーブル(32,61,62)の相対的な自由変位を、光-電気ケーブル束Hの長手方向の複数箇所において規制するように拘束する。
【0069】
また、光-電気ケーブル束H内における隣り合うケーブル(32,61,62)の側面は、光-電気ケーブル束Hの長手方向の複数箇所において、互いに接触した状態が維持される。
隣り合うケーブル(32,61,62)の側面の接触摩擦を利用することによって、形状がさらに保持され易くなると共に、振動などに起因する自由な変位又は変形が抑制され易くなる。
【0070】
また、光出力点31aから光ケーブル合流点Aまでにおける距離が短いため、ボディ内被覆領域BRで振動による車両1の部品との接触がより抑制される。従って、光ファイバケーブル32がより保護される。
【0071】
また、光出力点31aから光ケーブル合流点Aまでにおける光ファイバケーブル32が短いため、ボディ内被覆領域BRで振動による車両1の部品との接触がより抑制される。従って、光ファイバケーブル32がより保護される。
【0072】
車体10と、光-電気ケーブル束Hについて、
図1(a)~(c)を参照して、更に説明する。
【0073】
車体10は、メインボディMと可動部Dとを備える。
メインボディMは、シート17とボディカバー18とを備える。メインボディMは、シート17とボディカバー18が取り付けられるフレーム11も含まれる。
可動部Dは、操舵されることにより、一部の車輪14と共に、メインボディMに対して相対的に変位する。可動部Dは、フロントフォーク12と、ステアリング部19である。可動部Dには、フロントフォーク12又はステアリング部19に固定された光利用装置40及び電気装置63としての始動スイッチも含まれる。
可動部Dは、操舵によって変位する。そのため、可動部Dの変位は、比較的高頻度で行われる。
光-電気ケーブル束Hは、メインボディMと可動部Dとにわたって設けられている。より詳細には、光-電気ケーブル束Hは、メインボディMのフレーム11と、可動部Dのフロントフォーク12に跨がっている。より詳細には、光-電気ケーブル束Hの一部として電気ケーブル61,62とともにフレーム11に沿って延びた光ファイバケーブル32は、フロントフォーク12に掛け渡されてから、電気ケーブル61,62から独立して更に延びる。
光ファイバケーブル32単体でなく、光-電気ケーブル束Hが、メインボディMと可動部Dとにわたって設けられている。このため、光ファイバケーブル32と他の構成との接触を防止又は抑制できる。
【0074】
[第二実施形態]
図2は、本発明の第二実施形態における光-電気ケーブル束を説明するための概略図である。
図2に示す光-電気ケーブル束H’は、結束部材57による螺旋状の結束により構成されている。光-電気ケーブル束H’は、光ファイバケーブル32と、電気ケーブル61,62とを長手方向に結束している。
より詳細には、結束部材57は、柔軟な帯状の部材である。結束部材57は、光ファイバケーブル32と、電気ケーブル61,62とに螺旋状に巻き付いている。
また、光-電気ケーブル束H’内における隣り合うケーブル(32,61,62)の側面は、光-電気ケーブル束H’の長手方向の全域において、互いに接触した状態が維持される。
【0075】
[接続構成の適用例]
図3は、
図1及び
図2における接続の構成が適用され得る装置の例を示す図である。
上記実施形態で説明した光ファイバケーブル32の構成は、例えば、
図3に示す、後ろの方向指示器51、ヘッドライト52、ブレーキランプ53、ライセンスプレートランプ54、及び、メータランプ55のそれぞれにレーザ光を導く光ファイバケーブル32に適用可能である。図には、光ファイバケーブル32(
図1又は
図2参照)で導かれる装置の例として、車両1の左の光利用装置40が示されているが、光ファイバケーブル32の構成は、図示しない右の方向指示器に対しても適用可能である。また、光ファイバケーブル32の構成は、ヘッドライト52が有するハイビームヘッドライト及びロービームヘッドライトにレーザ光を導く光ファイバケーブル32に適用可能である。また、車両1が、ヘッドライト52とは異なるポジションライト、デイタイムランニングライト、又は、補助ヘッドライトを有している場合には、ポジションライト又はデイタイムランニングライト、又は、補助ヘッドライトにレーザ光を導く光ファイバケーブル32にも適用可能である。なお、各装置の配置の見やすさのため、光ファイバケーブル32の図示は省略する。
【0076】
また、光ファイバケーブル32の構成は、照明装置に限られず、例えば、光通信のための光送信装置56に通信用のレーザ光を導く光ファイバケーブル32にも適用可能である。光送信装置56は、車両1の周囲の設備又は車両1の各部へ光を出力することによってデータを送信する。
【0077】
上記実施形態のレーザ光を導く光ファイバケーブル32の構成は、例えば上述した後ろの方向指示器51、ヘッドライト52、ブレーキランプ53、ライセンスプレートランプ54、メータランプ55、及び、光送信装置56の全部に適用されてもよい。また、レーザ光を導く光ファイバケーブル32の構成は、例えば上述した装置の一部に適用されてもよい。この場合、残りの装置は、異なる接続構成を有する。また、残りの装置はレーザ光を利用しなくともよい。
【符号の説明】
【0078】
1 車両
10 車体
14,15 車輪
16 燃料タンク
17 シート
18 ボディカバー
30 光源ユニット
31a 光出力点
32 光ファイバケーブル
40 光利用装置
60 電気装置
61,62 電気ケーブル
63,64 電気装置
57,65 結束部材
66 電源装置
66a 電気出力点
A 光ケーブル合流点
BR ボディ内被覆領域
C 車両中心
D 可動部
F1 被支持部
F2 上流部
H,H’ 電気ケーブル束
H1 幹部
H2 枝部
M メインボディ