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特許7466715熱処理炉設備のための、プログラマブルロジックコントローラにて稼働するプログラムコントローラ
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  • 特許-熱処理炉設備のための、プログラマブルロジックコントローラにて稼働するプログラムコントローラ 図1A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】熱処理炉設備のための、プログラマブルロジックコントローラにて稼働するプログラムコントローラ
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/05 20060101AFI20240405BHJP
【FI】
G05B19/05 F
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023000245
(22)【出願日】2023-01-04
(65)【公開番号】P2023182512
(43)【公開日】2023-12-26
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【弁理士】
【氏名又は名称】奥西 祐之
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100189544
【弁理士】
【氏名又は名称】柏原 啓伸
(72)【発明者】
【氏名】小山 良介
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-149309(JP,A)
【文献】特開2020-009091(JP,A)
【文献】特開平10-11114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラマブルロジックコントローラにて稼働し、パターンプログラムを独立して動作させる、プログラムコントローラであって、
夫々が異なるパターンを備える、複数のパターンプログラムを保存する設定ファイル部と、
前記設定ファイル部から選択され実行中であるパターンプログラムが配置される領域である実行ファイル部と、
実行中のセグメントが配置される領域であり、且つ、実行されるセグメントは前記実行ファイル部にて配置されているパターンプログラムから、順次、呼び出されるものである、実行セグメント部と、
前記実行ファイル部における実行中のパターンプログラムをコピーして配置する領域であり、且つ、実行中のパターンプログラムが途中で変更される場合に、コピーされて配置されたパターンプログラムについて、各種パラメータの設定値が変更される、変更ファイル部と、
間データ管理エリアと
を含み、
前記プログラマブルロジックコントローラを構成するCPUユニットにより、前記変更ファイル部に配置されるパターンプログラムの変更を受け取り、更に、変更されたパターンプログラムの移動の指示入力を受け取るステップと、
前記CPUユニットにより、前記指示入力を受けて、変更されたパターンプログラムを前記実行ファイル部に移動して、実行中のパターンプログラム全体と入れ替えるステップと、
前記実行ファイル部へ移動されて入れ替えられたパターンプログラムを構成するセグメントのうち、現時点にて実行されているべきセグメントを、前記CPUユニットにより、前記実行セグメント部に移動し、現時点の前に配置されていたセグメントと入れ替えるステップであって、現時点にて実行されているべきセグメントは、前記時間データ管理エリアからの、実行中のパターンプログラムにおける経過時間である実行ポイントの情報に拠り、判定される、入れ替えるステップと、
前記CPUユニットにより、前記実行セグメント部にて入れ替わったセグメントに関して前記時間データ管理エリアからの実行ポイントの情報の引継ぎを行い、入れ替わった時点以降のセグメントの内容を実行するステップと、
入れ替えられたパターンプログラムを構成する後続のセグメントが有る場合、前記CPUユニットにより、それら後続のセグメントの内容を順次実行するステップと
を、少なくとも実行する、
プログラムコントローラ。
【請求項2】
前記受け取るステップにおける、変更されたパターンプログラムの移動の指示入力は、プログラムコントローラへの指示端末における、実行中のパターンプログラムの入れ替えのための変更ボタンの押下もしくは当該変更ボタンをクリックすることにより、行われる、
請求項1に記載のプログラムコントローラ。
【請求項3】
プログラムコントローラは、更に、
前記時間データ管理エリアからの実行ポイントについて、プログラムコントローラへの指示端末における入力により、パターンプログラムの途中を跳ばして即時に進める、若しくは、パターンプログラムの途中を跳ばして即時に戻すように構成されており、
前記実行セグメント部には、実行ポイントの情報に拠り、配置されるべきセグメントが判定されて配置される、
請求項1に記載のプログラムコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱処理炉設備のための、プログラマブルロジックコントローラ(PLC:Programable Logic Controller)にて稼働するプログラムコントローラに関する。
【背景技術】
【0002】
プログラマブルロジックコントローラ(PLC)は、マイクロプロセッサを内蔵し、ユーザが変更可能なプログラム等によって機器や設備を制御する。特許文献1、2に示すような熱処理炉設備のための、PLCにて稼働するプログラムコントローラはパターンプログラムを動作させる。本開示における「パターンプログラム」とは、熱処理炉の制御に用いる設定値の集合である。つまり、本開示のパターンプログラムは、温度や圧力を含む、物理的パラメータの経時的パターンであり、その内容は熱処理炉設備での処理開始から終了までの一連の複数のセグメントにより構成される(例えば、図5図6参照。)。
【0003】
プログラムコントローラは、特許文献3、4に示すように、様々な種類のパターンプログラムを介して熱処理炉における様々な条件(即ち、物理的パラメータ)を制御し得る。ここでの、様々な条件とは、温度、圧力、雰囲気の成分、ギャランティーソークの有無、等である。様々な種類のパターンプログラムは、例えば、温度や圧力等のパターンプログラムである。長時間をかけた複雑なパターンが組まれているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭62-167089号公報
【文献】特開平6-57403号公報
【文献】特開平9-91032号公報
【文献】特開平9-160608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで実際には、その操業中や試験中に、熱処理炉設備のためのプログラマブルロジックコントローラの稼働に際して、実行中のパターンプログラムを変更することへの要請が少なからず存在する。
【0006】
条件及びパターンプログラムとして、温度を例に採ってみる。プログラムコントローラにより、パターンプログラムを実際に実行する最中、温度のパターンを変更する必要が生じた場合、その時点以降の設定値を全て手作業で入力し直さなければならない。その間にも時間は進行するため、特に複雑なパターンであるならば入力のための時間が間に合わなかったり誤入力したりしてしまう恐れがあり、よって、手作業での入力し直しは非常に難しい。
【0007】
本開示は、熱処理炉設備のための、プログラマブルロジックコントローラにて稼働するプログラムコントローラにおいて、実行中のパターンプログラムの一部の設定変更やパターンプログラムそのものの差し替えを、その実行中に実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のプログラムコントローラは、
プログラマブルロジックコントローラにて稼働し、パターンプログラムを独立して動作させる、プログラムコントローラである。当該プログラムコントローラは、
夫々が異なるパターンを備える、複数のパターンプログラムを保存する設定ファイル部と、
前記設定ファイル部から選択され実行中であるパターンプログラムが配置される領域である実行ファイル部と、
実行中のセグメントが配置される領域であり、且つ、実行されるセグメントは前記実行ファイル部にて配置されているパターンプログラムから、順次、呼び出されるものである、実行セグメント部と、
前記実行ファイル部における実行中のパターンプログラムをコピーして配置する領域であり、且つ、実行中のパターンプログラムが途中で変更される場合に、コピーされて配置されたパターンプログラムについて、各種パラメータの設定値が変更される、変更ファイル部と、
タイマー機能を備え、これにより実行中の夫々のパターンプログラムにおける経過時間を管理する時間データ管理エリアと
を含む。前記プログラムコントローラは、
前記プログラマブルロジックコントローラを構成するCPUユニットにより、前記変更ファイル部に配置されるパターンプログラムの変更を受け取り、更に、変更されたパターンプログラムの移動の指示入力を受け取るステップと、
前記CPUユニットにより、前記指示入力を受けて、変更されたパターンプログラムを前記実行ファイル部に移動して、実行中のパターンプログラム全体と入れ替えるステップと、
前記実行ファイル部へ移動されて入れ替えられたパターンプログラムを構成するセグメントのうち、現時点にて実行されているべきセグメントを、前記CPUユニットにより、前記実行セグメント部に移動し、現時点の前に配置されていたセグメントと入れ替えるステップと、
前記CPUユニットにより、前記実行セグメント部にて入れ替わったセグメントに関して前記時間データ管理エリアからの実行ポイントの情報の引継ぎを行い、入れ替わった時点以降のセグメントの内容を実行するステップと、
入れ替えられたパターンプログラムを構成する後続のセグメントが有る場合、前記CPUユニットにより、それら後続のセグメントの内容を順次実行するステップと
を、少なくとも実行する。
【発明の効果】
【0009】
本開示のプログラムコントローラは、実行中のパターンプログラムの一部若しくは全部について、その実行中に設定変更することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1Aは、実施の形態に係るプログラムコントローラの構成及び動作を示す模式的なブロック図であり、パターンプログラムの変更前の状態を示すものである。
図1B図1Bは、実施の形態に係るプログラムコントローラの構成及び動作を示す模式的なブロック図であり、パターンプログラムの変更後の状態を示すものである。
図2図2は、実施の形態に係るプログラムコントローラにおける、変更ファイル部でのパターンプログラムの変更から、実行セグメント部での実行中のセグメントへの反映までを示すフローチャートである。
図3図3は、熱処理炉の模式的な縦断面図である。
図4図4は、実施の形態に係るプログラムコントローラを稼働させるPLCの、概略の構成例を示す斜視図である。
図5図5は、プログラムコントローラにより動作されるパターンプログラムの例であり、縦軸は温度を示し、横軸は時間を示すものである。
図6図6は、プログラムコントローラにより動作されるパターンプログラムの例であり、縦軸は温度を示し、横軸はセグメントの移行を示すものである。
図7A図7Aは、所望の時点以降のパターンプログラムを変更する動作に関する実施例1を説明するための図である。
図7B図7Bは、全体的にパターンプログラムを変更する動作に関する実施例2を説明するための図である。
図7C図7Cは、実行ポイントを即時に変更する動作に関する実施例3を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0012】
なお、発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0013】
1.[本開示に至る経緯]
熱処理炉設備のためのPLCにて稼働するプログラムコントローラは、様々な種類のパターンプログラムを介して、熱処理炉における様々な条件(即ち、物理的パラメータ)を制御することができる。前述のように、様々な条件とは、例えば、温度、圧力、雰囲気の成分、ギャランティーソークの有無である。また、様々な種類のパターンプログラムとは、例えば、温度や圧力のパターンプログラムである。
【0014】
条件及びパターンプログラムの種類として、以下では便宜上、温度を例に採る。温度のパターンプログラム、即ち、経過時間に対する温度のパターングラフの例を、図5及び図6に示す。図5は、実際のスケールに従って示される温度のパターンプログラムであり、縦軸は温度を横軸は経過時間を示す。図6は、プログラムコントローラのためのモニタ装置等の表示画面に示される、温度のパターンプログラムである。
【0015】
なお、図5図6におけるパターンプログラムは、夫々の図に示すように、(A)、(B)、(C)、(D)、及び(E)のセグメントにより構成されるパターンプログラムである。ここでセグメントは、パターンプログラムを構成する、パラメータ変遷の最小の単位である。
【0016】
図5及び図6では、ごく簡単に例示しているが、実際の熱処理炉設備の操業では、温度の他にも圧力や炉内雰囲気の成分など、様々な条件を変化させる複数項目のパターンプログラムが存在する。また、セグメントの数も多く、一般にパターンプログラムは非常に長くて複雑なものとなっている。
【0017】
これに対して、長時間に及ぶ実験やテスト作業においては、操作者は、パターンプログラムの進行中にてそのパターンプログラムの改善点や誤りに気付く場合がある。そのような場合、パターンプログラムの終了を待つことなく現時点以降のパターンプログラムを変更したい、という要請が生じ得る。しかしながら、その場合、セグメントを1~2箇所修正するだけであれば手作業で対応できるが、修正箇所が多いと修正が時間的に間に合わない恐れがあり、誤入力を引き起こす恐れもある。上述のように長くて複雑なパターンプログラム全体を、動作の途中から別の異なるパターンプログラムと入れ替えたいような場合には、到底、対応が難しい。
【0018】
以上のように、パターンプログラムの或るセグメントを実行中に、当該セグメント全体を変え得る、プログラムコントローラの開発が望まれている。
【0019】
2.[実施の形態]
本開示における実施の形態に係るプログラマブルロジックコントローラ(PLC)30は、例えば仕切扉24で仕切られる熱処理炉26(熱処理室25)の炉設備20全体を制御するものである。実施の形態に係るPLC30は、一つ又は複数のプログラムコントローラ2を稼働させる。
【0020】
本実施の形態に係るプログラマブルロジックコントローラ30は、パターンプログラムで定められた順序や条件などに従って設備や機械の動きを制御する装置であり、マイクロプロセッサを内蔵し、ユーザが変更可能なパターンプログラムによって機器や設備を制御する(図4参照)。
【0021】
更に、本開示のプログラムコントローラはソフトウエアにより実現されており、プログラムコントローラの各々は、熱処理炉26(熱処理室25)の各々に対応する。プログラムコントローラ2は、パターンプログラムを独立して動作させる。
【0022】
続いて、熱処理炉設備20及びPLC30の構成について、説明する。
【0023】
2.1.[熱処理炉設備及びPLCの構成]
図3は、実施の形態に係るPLC30の制御の対象である熱処理炉設備20の模式的な縦断面図である。図3に示す熱処理炉設備20は、複数の熱処理炉26により構成され、それら複数の熱処理炉26は複数の仕切扉24により仕切られている。各々の熱処理炉26は熱処理室25を備える。熱処理室25には、ワーク(処理品)23が熱処理のために搬送により設置される。なお、熱処理炉設備20を構成する熱処理炉26は、単数(一つ)であってもよい。
【0024】
図4は、熱処理炉設備20のための通常のPLC30の、概略の構成例を示す斜視図であり、実施の形態に係るPLC30も同様の構成を備える。図4に示すように、PLC30は、ベースユニット40に対して、例えば、電源ユニット32、CPUユニット34、入力ユニット36、及び出力ユニット38が設けられる。CPUユニット34は、マイクロプロセッサ、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備える。RAMにおいては、(後で説明する)プログラムメモリやファイルレジスタ等のメモリが構成されている。
【0025】
2.2.[プログラムコントローラの構成]
図1Aは、実施の形態に係る、パターンプログラムの実行、更には、設定変更を行うプログラムコントローラ2の構成及び動作を示す模式的なブロック図であり、パターンプログラムの変更前の状態を示すものである。
【0026】
プログラムコントローラ2は、設定ファイル部6、実行ファイル部4、実行セグメント部10、変更ファイル部8、及び、時間データ管理エリア12を含む。
【0027】
設定ファイル部6は、夫々が異なるパターンを備える、多数のパターンプログラムを保存している。熱処理炉設備20における操作上の要請に拠り、適宜のパターンプログラムが、設定ファイル部6から選択されて使用(即ち、実行)される。図1A及び図1Bでは、設定ファイル部6は、No.1~No.99のパターンプログラムを保存することが示されている。設定ファイル部6は、例えば、PLC30を構成するCPUユニット34におけるファイルレジスタに設定される。このファイルレジスタは、一般的に処理速度が比較的速く無いメモリ媒体で構成される。
【0028】
実行ファイル部4は、設定ファイル部6から選択され、実行中であるパターンプログラムが配置される領域である。図1Aでは設定ファイル部6から「No.10」のパターンプログラムが実行ファイル部4に呼び出されている様子を示している。また、この「No.10」のパターンプログラムは、(A)、(B)、(C)、(D)、及び(E)のセグメントを備えることが示されている(図中では記号を丸で囲んで示す。)。実行ファイル部4は、例えば、PLC30を構成するCPUユニット34におけるプログラムメモリに設定される。このプログラムメモリは、一般的に処理速度が比較的速いメモリ媒体で構成される。
【0029】
実行セグメント部10は、実行中のセグメントが配置される領域である。実行セグメント部10にて実行されるセグメントは、実行ファイル部4にて配置されているパターンプログラムから、順次、呼び出されるものである。図1Aに示す例では、(A)~(E)のセグメントが順次呼び出される。図1Aでは、実行ファイル部4から(C)のセグメントが実行セグメント部10に呼び出されている最中であることが、示されている。実行セグメント部10に呼び出されているセグメントが、実際に実行されているセグメントそのものである。また、実行セグメント部10に配置されるセグメントの実行内容に従って、実行セグメント部10は、例えば、熱処理炉26におけるヒータ等の、外部の出力部14への制御信号を送信する。実行セグメント部10も、例えば、実行ファイル部4と同様に、プログラムメモリにて設定される。
【0030】
変更ファイル部8は、本実施の形態に特徴的な領域であり、まず実行ファイル部4における実行中のパターンプログラムをコピーして配置する領域である。更に、実行中のパターンプログラムが途中で、変更される(即ち、変更することを試みられる)場合に、変更ファイル部8にコピーされて配置されたパターンプログラムについて、各種パラメータの設定値が変更される。各種パラメータの設定値が変更されたパターンプログラムは、後で説明するように、実行ファイル部4及び実行セグメント部10に移動されて、実行ファイル部4及び実行セグメント部10に配置されている実行中のものと入れ替えられる。従って、操作者が、実行中のパターンプログラムを途中で変更する場合でも、直接の変更の対象は変更ファイル部8にコピーして配置されるプログラムであるから、実行ファイル部4及び実行セグメント部10における実行中のパターンプログラムには即時には影響しない。変更ファイル部8も、例えば、設定ファイル部6と同様に、ファイルレジスタにて設定される。
【0031】
時間データ管理エリア12は、タイマー機能を備えるエリアであり、実行中の夫々のパターンプログラムにおける経過時間を常時、管理し続ける。つまり、実行セグメント部10に配置されている実行中のセグメントの、実行ポイントを経過時間のかたちで管理している。後で説明するように、実行セグメント部10に配置されるセグメントが入れ替わったとしても、入れ替わった時点での実行ポイント(経過時間)以降の、入れ替わり後のセグメントが自動的に実行されることになる。
【0032】
更に、時間データ管理エリア12は、実行ポイント(経過時間)について、途中を跳ばして即時に進める、若しくは、途中を跳ばして即時に戻すことができるように構成されている。ここでの「途中を跳ばして即時に進める、若しくは、途中を跳ばして即時に戻すこと」は、例えば、プログラムコントローラ2への指示コンソール(即ち、指示端末)の操作画面において、操作者により、跳び先の実行ポイント(経過時間)(例えば、「32分後」等)を入力することで、実現される。このとき、実行中のセグメントにおける実行ポイントが、途中を跳ばして即時に進められる、若しくは、途中を跳ばして即時に戻されることになる。
【0033】
2.3.[プログラムコントローラの動作]
図1Bは、実施の形態に係る、パターンプログラムの実行、及び、設定変更を行うプログラムコントローラ2の構成及び動作を示す模式的なブロック図であり、パターンプログラムの変更後の状態を示すものである。
【0034】
前述のように、プログラムコントローラ2の操作者は、プログラムコントローラ2にて実行されている最中であるパターンプログラムを途中で変更する場合、変更ファイル部8にコピーされたパターンプログラムについて、各種パラメータの設定値を変更する。図1Bでは、変更ファイル部8において「No.10」のパターンプログラムが「No.10’」に変更されている。
【0035】
変更ファイル部8におけるパターンプログラムの変更後、操作者からプログラムコントローラ2への指示入力により、各種パラメータの設定値が変更されたパターンプログラムは、実行ファイル部4に移動される。移動により、実行ファイル部4における実行中のパターンプログラムは、全体として、変更されたパターンプログラムに入れ替えられる。ここでの「操作者からプログラムコントローラ2への指示入力」とは、例えば、プログラムコントローラ2への指示コンソール(即ち、指示端末)の操作画面において、操作者により、実行中のパターンプログラムの入れ替えのための「変更ボタン」が押下されること、もしくは、タッチパネル等ではクリックされること、である。
【0036】
図1Bでは、変更ファイル部8から実行ファイル部4へ、変更後の「No.10’」のパターンプログラムが移動され、それまで実行中であった、即ち、その時点の前に配置されていた「No.10」のパターンプログラムと入れ替えられたことを示している。この変更後の「No.10’」のパターンプログラムは、(A)’、(B)’、(C)’、(D)’、及び(E)’のセグメントを備えることが示されている。
【0037】
実行ファイル部4へ移動されたパターンプログラムを構成するセグメント(図1Bでは、(A)’、(B)’、(C)’、(D)’、(E)’のセグメント)のうち、現時点にて実行されているべきセグメント(図1Bでは、(C)’のセグメント)が、実行セグメント部10に移動して、その時点の前に配置されていたセグメント(例えば、図1Aでは、(C)のセグメント)と入れ替わる。ここでの「現時点にて実行されているべきセグメント」は、時間データ管理エリア12からの実行ポイント(経過時間)の情報に拠り、判定される。
【0038】
実行セグメント部10にて、入れ替わったセグメントにおいて、時間データ管理エリア12からの実行ポイント(経過時間)の情報の引継ぎが行われ、入れ替わったセグメントでは、入れ替わった時点である実行ポイント(経過時間)以降の内容が実行される。例えば、図1A及び図1Bに示す例にて、操作者の指示入力により、経過時間「56分」にて、変更されたパターンプログラムの実行ファイル部4への移動、及び、実行セグメント部10でのセグメントの入れ替えが行われたとすると、実行セグメント部10では(C)から(C)’にセグメントが入れ替わり、(C)’のセグメントにおける経過時間「56分」以降が、プログラムコントローラ2により実行されることになる。更に、それ以降、入れ替えられたセグメント(D)’、(E)’が順次、プログラムコントローラ2により実行される。これらのことにより、実験やテスト作業の際、パターンプログラムの進行中に改善点や誤りに気付いた場合でもパターンプログラムの終了を待つことなくセグメントやパターンプログラム全体の変更ができ、非常に便利になる。
【0039】
以上の、本実施の形態に係るプログラムコントローラ2における、変更ファイル部8でのパターンプログラムの変更から、実行セグメント部10での実行中のセグメントへの反映、及び以降の変更されたセグメントの順次の実行までの動作を、図2に示すフローチャートに示す。
【0040】
図2に示すフローチャートでは、先ず、変更ファイル部8のパターンプログラムの変更を受け取る(ステップS04)。
【0041】
変更されたパターンプログラムの反映(移動)の指示入力が受け取られる(ステップS06)。
【0042】
上記の指示入力を受けて、変更されたパターンプログラムが実行ファイル部4に移動され、それまで実行中であった、即ち、その時点の前に配置されていたパターンプログラム全体と入れ替えられる(ステップS08)。
【0043】
実行ファイル部4へ移動されて入れ替えられたパターンプログラムを構成するセグメントのうち、現時点にて実行されているべきセグメントが、実行セグメント部10に移動され、その時点の前に配置されていたセグメントと入れ替えられる(ステップS10)。
【0044】
実行セグメント部10にて、入れ替わったセグメントに関して、時間データ管理エリア12からの実行ポイントの情報の引継ぎが行われ、入れ替わった時点以降のセグメントの内容が実行される(ステップS12)。
【0045】
更に、入れ替えられたパターンプログラムを構成する後続のセグメントが有れば、実行セグメント部10にて、それら後続のセグメントが順次、実行される(ステップS14)。
【0046】
要するに、実行中のセグメントをパターンプログラムから分離して実行させることにより、その隙にパターンプログラム全体を入れ替えることができ、パターンプログラムの開始から(入れ替えまでの)同時間経過後以降の続きを入れ替えられたパターンプログラムについて行うことができる。更に、入れ替えられたパターンプログラムについて任意の時点から続きを行うこともできる。このように、長く複雑なパターンプログラム全体の変更を、瞬時に且つ即時に、行うことができる。
【0047】
また、前述のように、プログラムコントローラ2における時間データ管理エリア12は、パターンプログラムにおける実行ポイント(経過時間)について、途中を跳ばして即時に進める、若しくは、途中を跳ばして即時に戻すことができるように構成されているので、操作者による指示端末の操作画面への跳び先の入力により、実行中のパターンプログラムにおける実行ポイントが、途中を跳ばして即時に進められる、若しくは、途中を跳ばして即時に戻されることになる。このとき、実行セグメント部10には、実行ポイントの情報に拠り、配置されるべきセグメントが判定されて、実際に配置される。
【0048】
2.4.[実施の形態のまとめ]
本実施の形態に係るプログラムコントローラ2は、プログラマブルロジックコントローラ30にて稼働し、パターンプログラムを独立して動作させるものである。プログラムコントローラ2は、夫々が異なるパターンを備える、複数のパターンプログラムを保存する設定ファイル部6と、設定ファイル部6から選択され実行中であるパターンプログラムが配置される領域である実行ファイル部4と、実行中のセグメントが配置される領域であり、且つ、実行されるセグメントは実行ファイル部4にて配置されているパターンプログラムから、順次、呼び出されるものである、実行セグメント部10と、実行ファイル部4における実行中のパターンプログラムをコピーして配置する領域であり、且つ、実行中のパターンプログラムが途中で変更される場合に、コピーされて配置されたパターンプログラムについて、各種パラメータの設定値が変更される、変更ファイル部8と、タイマー機能を備え、これにより実行中の夫々のパターンプログラムにおける経過時間を管理する時間データ管理エリア12とを含む。プログラムコントローラ2は、プログラマブルロジックコントローラ30を構成するCPUユニット34により、変更ファイル部8に配置されるパターンプログラムの変更を受け取り、更に、変更されたパターンプログラムの移動の指示入力を受け取るステップと、CPUユニット34により、前述の指示入力を受けて、変更されたパターンプログラムを実行ファイル部4に移動して、実行中のパターンプログラム全体と入れ替えるステップと、実行ファイル部4へ移動されて入れ替えられたパターンプログラムを構成するセグメントのうち、現時点にて実行されているべきセグメントを、CPUユニット34により、実行セグメント部10に移動し、現時点の前に配置されていたセグメントと入れ替えるステップと、CPUユニット34により、実行セグメント部10にて入れ替わったセグメントに関して時間データ管理エリア12からの実行ポイントの情報の引継ぎを行い、入れ替わった時点以降のセグメントの内容を実行するステップと、入れ替えられたパターンプログラムを構成する後続のセグメントが有る場合、CPUユニット34により、それら後続のセグメントの内容を順次実行するステップとを、少なくとも実行する。
【0049】
以上のような本実施の形態に係るプログラムコントローラ2を用いることにより、実行中のパターンプログラムの一部若しくは全部について、設定変更することが可能になる。
【0050】
3.[実施例]
以下において、実施の形態に係るプログラムコントローラ2の動作の例を、図7A図7Cを用いて、実施例1~3として示す。
【0051】
3.1.[実施例1]
実施例1は、所望の時点以降のパターンプログラムを変更する動作に関するものである。まず、図7A(a)に示す、温度に関するパターンプログラムが動作しているとする。所望の時点である現在時刻は「25分(後)」である。ここで、2つ目のセグメントの時間長を「10分」から「15分」に変更し、3つ目のセグメントの到達温度及び4つ目のセグメントの維持温度を「1000℃」から「1200℃」に変更するものとする。図7A(b)の実線は、変更されたパターンプログラムである。
【0052】
このとき、操作者からプログラムコントローラ2への指示入力により、図7A(b)に示す変更されたパターンプログラムが、変更ファイル部8から実行ファイル部4に移動され、現在時刻より前に配置されていた(図7A(a)に示す)パターンプログラム全体と入れ替えられる。これにより、所望の時点(即ち、現在時刻)以降には、プログラムコントローラ2が設定する温度の設定値は、図7A(b)の実線により示されるパターンプログラムにおける、現在時刻以後の2つ目のセグメント、3つ目のセグメント、及び、4つ目のセグメントを辿ることになる。
【0053】
3.2.[実施例2]
実施例2は、実施例1と略同様の例であり、全体的にパターンプログラムを変更する動作に関するものである。まず、図7B(a)に示す、温度に関するパターンプログラムが動作しているとする。現在時刻は「28分(後)」である。ここで、パターンプログラム全体を、図7B(a)に示すものに一気に変更するものとする。
【0054】
このときも、操作者からプログラムコントローラ2への指示入力により、図7B(b)に示す変更されたパターンプログラムが、変更ファイル部8から実行ファイル部4に移動され、現在時刻より前に配置されていた(図7B(a)に示す)パターンプログラム全体と入れ替えられる。これにより、現在時刻以降には、プログラムコントローラ2が設定する温度の設定値は、図7B(b)に示されるパターンプログラムにおける、現在時刻以後の2つ目のセグメント(Seg.2)、3つ目のセグメント(Seg.3)、4つ目のセグメント(Seg.4)、及び5つ目のセグメント(Seg.5)を辿ることになる。
【0055】
結果として、0分から55分までの間において、プログラムコントローラ2が設定する温度の設定値は、図7B(c)に示されるパターンプログラムを辿るものとなる。
【0056】
3.3.[実施例3]
実施例3は、実行ポイントを即時に変更する動作に関するものである。まず、図7C(a)に示す、温度に関するパターンプログラムが動作しているとする。現在時刻は「24分(後)」であるとする。ここで、プログラムコントローラ2への指示端末の操作画面への入力により、実行ポイントを「32分(後)」まで跳ばすものとする(図7C(b)参照)。図7C(b)に示すように、「24分(後)」は2つ目のセグメント内に在り、「32分(後)」は3つ目のセグメント内にある。
【0057】
実行ポイントを跳ばすという、指示端末の操作画面への入力により、現在時刻「28分(後)」以降には、プログラムコントローラ2が設定する温度の設定値は、図7C(b)に示されるパターンプログラムにおける、「32分(後)」以後の3つ目のセグメント(Seg.3)、及び4つ目のセグメント(Seg.4)を辿ることになる。
【0058】
結果として、0分から47分までの間において、プログラムコントローラ2が設定する温度の設定値は、図7C(c)に示されるパターンプログラムを辿るものとなる。
【0059】
4.[他の実施の形態]
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【0060】
既に述べたように、プログラムコントローラにより動作されるパターンプログラムは、圧力を含む物理的パラメータの経時的パターンであってもよい。
【0061】
また、実施の形態を説明するために、添付図面および詳細な説明を提供した。したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0062】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【符号の説明】
【0063】
2・・・プログラムコントローラ、
4・・・実行ファイル部、
6・・・設定ファイル部、
8・・・変更ファイル部、
10・・・実行セグメント部、
12・・・時間データ管理エリア、
14・・・出力部、
20・・・熱処理炉設備、
23・・・ワーク(処理品)、
24・・・仕切扉、
25・・・熱処理室、
26・・・熱処理炉、
30・・・プログラマブルロジックコントローラ(PLC)、
32・・・電源ユニット、
34・・・CPUユニット、
36・・・入力ユニット、
38・・・出力ユニット、
40・・・ベースユニット。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C