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特許7466729電子グレードガラス繊維組成物、そのガラス繊維及び電子グレードガラス繊維布
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】電子グレードガラス繊維組成物、そのガラス繊維及び電子グレードガラス繊維布
(51)【国際特許分類】
   C03C 13/02 20060101AFI20240405BHJP
   C03C 3/118 20060101ALI20240405BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
C03C13/02
C03C3/118
H05K1/03 610T
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2023039633
(22)【出願日】2023-03-14
(62)【分割の表示】P 2020544939の分割
【原出願日】2019-10-30
(65)【公開番号】P2023085316
(43)【公開日】2023-06-20
【審査請求日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】201910912666.7
(32)【優先日】2019-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517101366
【氏名又は名称】ジュシ グループ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲シン▼文忠
(72)【発明者】
【氏名】曹国▲栄▼
(72)【発明者】
【氏名】章林
(72)【発明者】
【氏名】洪秀成
(72)【発明者】
【氏名】左双宝
(72)【発明者】
【氏名】姚忠▲華▼
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-247683(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102849957(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101575172(CN,A)
【文献】特表2012-519144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子グレードガラス繊維組成物であって、成分として、
SiO 54.2~59.5重量%、
Al 11~17.5重量%、
0.7~4.5重量%、
CaO 18~23.8重量%、
MgO 1~5.5重量%、
RO=CaO+MgO≦24.4重量%、
O=NaO+KO+LiO<1重量%、
NaO+KO 0.1~0.65重量%、
TiO 0.05~0.8重量%、
Fe 0.05~0.7重量%、
0.01~1.2重量%を含み、
重量百分率比C1=SiO/(RO+RO)の範囲は2.20以上であり、且つ
上記成分の全含有量は99.5重量%以上であり、
ZnOを含まないことを特徴とする電子グレードガラス繊維組成物。
【請求項2】
重量百分率比C2=(SiO+Al-B)/(RO+RO)の範囲は2.73以上である、ことを特徴とする請求項1に記載の電子グレードガラス繊維組成物。
【請求項3】
重量百分率比C3=(SiO+Al)/(RO+RO+B)の範囲は、2.50以上である、ことを特徴とする請求項1に記載の電子グレードガラス繊維組成物。
【請求項4】
重量百分率比C4=B/ROの範囲は1以上である、ことを特徴とする請求項1に記載の電子グレードガラス繊維組成物。
【請求項5】
成分として、SiO 54.2~59.5重量%、
Al 11~17.5重量%、
0.7~4.5重量%、
CaO 18~23.8重量%、
MgO 1~5.5重量%、
RO=CaO+MgO ≦24.4重量%、
O=NaO+KO+LiO <1重量%、
NaO+KO 0.1~0.65重量%、
RO+RO ≦25.2重量%、
TiO0.05~0.8重量%、
Fe 0.05~0.7重量%、
0.01~1.2重量%を含み、
重量百分率比C1=SiO/(RO+RO)の範囲は2.20以上であり、且つ
上記成分の全含有量は99.5重量%以上である、ことを特徴とする請求項1に記載の電子グレードガラス繊維組成物。
【請求項6】
前記ROの含有量の範囲は20~24.4重量%である、ことを特徴とする請求項1に記載の電子グレードガラス繊維組成物。
【請求項7】
前記RO+ROの含有量の範囲は20.5~25重量%である、ことを特徴とする請求項1に記載の電子グレードガラス繊維組成物。
【請求項8】
前記ROの含有量の範囲は0.8重量%以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の電子グレードガラス繊維組成物。
【請求項9】
前記Fの含有量の範囲は0.05~1.2重量%である、ことを特徴とする請求項1に記載の電子グレードガラス繊維組成物。
【請求項10】
重量百分率比KO/NaOの範囲は0.5よりも大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の電子グレードガラス繊維組成物。
【請求項11】
前記Al+MgOの含有量の範囲は13~19.1重量%である、ことを特徴とする請求項1に記載の電子グレードガラス繊維組成物。
【請求項12】
成分として、SiO 54.2~59.5重量%、
Al 11~17.5重量%、
0.7~4.5重量%、
CaO 18~23.8重量%、
MgO 1~5.5重量%、
RO=CaO+MgO ≦24.4重量%、
O=NaO+KO+LiO <1重量%、
NaO+KO 0.1~0.65重量%、
TiO0.05~0.8重量%、
Fe 0.05~0.7重量%、
0.01~1.2重量%を含み、
重量百分率比C1=SiO/(RO+RO)の範囲は2.20以上であり、
重量百分率比C2=(SiO+Al-B)/(RO+RO)の範囲は2.73以上であり、
重量百分率比C3=(SiO+Al)/(RO+RO+B)の範囲は2.50以上であり、且つ
上記成分の全含有量は99.5重量%以上である、ことを特徴とする請求項1に記載の電子グレードガラス繊維組成物。
【請求項13】
成分として、SiO 55~59.5重量%、
Al 11.5~16.5重量%、
0.7~4.5重量%、
CaO 18~23.3重量%、
MgO 1~4.5重量%、
RO=CaO+MgO ≦24.4重量%、
O=NaO+KO+LiO <1重量%、
NaO+KO 0.1~0.65重量%、
RO+RO 20.5~25重量%、
TiO 0.05~0.8重量%、
Fe 0.05~0.7重量%、
0.05~1.2重量%を含み、
重量百分率比C1=SiO/(RO+RO)の範囲は2.20以上であり、
重量百分率比C2=(SiO+Al-B)/(RO+RO)の範囲は2.73以上であり、且つ
上記成分の全含有量は99.5重量%以上である、ことを特徴とする請求項1に記載の電子グレードガラス繊維組成物。
【請求項14】
成分として、SiO 55~59.5重量%、
Al 12~15.9重量%、
1~3.5重量%、
CaO 18~23.3重量%、
MgO 1.1~4重量%、
RO=CaO+MgO≦24.4重量%、
O=NaO+KO+LiO≦0.8重量%、
NaO+KO 0.1~0.65重量%、
RO+RO 20.5~25重量%、
TiO 0.05~0.8重量%、
Fe 0.05~0.7重量%、
0.05~1.2重量%を含み、
重量百分率比C1=SiO/(RO+RO)の範囲は2.24~2.75であり、
重量百分率比C2=(SiO+Al-B)/(RO+RO)の範囲は2.75~3.35であり、
重量百分率比C3=(SiO+Al)/(RO+RO+B)の範囲は2.50以上である、且つ
上記成分の全含有量は99.5重量%以上である、ことを特徴とする請求項1に記載の電子グレードガラス繊維組成物。
【請求項15】
総含有量が0.5重量%未満のSO、SrO、CeO、La、Y、ZrOのうちの1種又は複数種をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の電子グレードガラス繊維組成物。
【請求項16】
電子グレードガラス繊維であって、
請求項1~15のいずれか1項に記載の電子グレードガラス繊維組成物で製造される、ことを特徴とする電子グレードガラス繊維。
【請求項17】
室温で周波数が1MHzであるときの誘電率の範囲は6.0~7.0である、ことを特徴とする請求項16に記載の電子グレードガラス繊維。
【請求項18】
電子グレードガラス繊維布であって、
請求項16に記載の電子グレードガラス繊維を含有する、ことを特徴とする電子グレードガラス繊維布。
【請求項19】
プリント回路基板の基材として用いられることを特徴とする請求項18に記載の電子グレードガラス繊維布。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年9月25日に中国特許庁に提出した、出願番号が201910912666.7、発明の名称が「電子グレードガラス繊維組成物、そのガラス繊維及び電子グレードガラス繊維布」である中国特許出願の優先権を主張し、その全内容を引用により本願に組み込んでいる。
【0002】
本発明は、ガラス繊維組成物、特にエレクトロニクス業界用の電子グレードガラス繊維組成物、そのガラス繊維及び電子グレードガラス繊維布に関する。
【背景技術】
【0003】
ガラス繊維は無機繊維材料であり、電子グレードガラス繊維は、エレクトロニクス業界用の機能基材として、主に、通信分野、コンピュータ、ICパッケージング、家電製品、自動車電子機器などの分野に使用されている。「電子グレードガラス繊維-電子グレードガラス繊維布-銅張積層板-プリント回路基板(PCB)」業界チェーンは、電子グレードガラス繊維のコア用途であり、プリント回路基板の誘電特性を満たすために、電子グレードガラス繊維にも、良好な誘電特性が求められる。
【0004】
現在、国内及び国外のプリント回路基板で一般的に使用されている電子グレードガラス繊維は、主に高ホウ素含有量のDガラス繊維と従来のEガラス繊維である。その中でも、Dガラス繊維は低誘電率ガラス繊維であり、その誘電特性が従来のEガラス繊維よりも優れており、高密度化及び情報処理高速化の要件を満たすことができ、その主な組成は、B20~25重量%、SiO 72~76重量%、Al 0~5重量%、NaO+KO 2~4重量%である。Dガラス繊維は、誘電率(室温で周波数1MHz)が4.5以下であるが、溶融及び線引きが非常に困難であり、たとえば、線引き温度が1400℃を超え、このため、大規模なタンクキルン化生産を実現しにくく、また、製品の穴あけ性や耐水性が悪く、後続の加工や使用に不利でありながら、原料のコストが高いという欠点もある。高ホウ素含有量の従来のEガラス繊維は、一般的な電子グレードガラス繊維として使用でき、現在、主要な商用電子グレードガラス繊維である。従来のEガラス繊維の誘電率は一般に6.7~7.1であり、一般的なプリント回路基板の要件を満たすことができ、優れた溶融性、加工性などの利点があるが、実際の応用では、主要企業製のもののB含有量は一般に7.2±0.4%程度であり、原料のコストが依然として高く、大量のホウ素含有原料が存在することにより、配合材料の揮発性が高くなり、キルン内の耐火材料の高温侵食が促進されやすく、また、これによりトップ燃焼技術により効率的に加熱する方式のE-繊維用キルンへの使用が制限される。また、従来のEガラス繊維には、耐酸性、機械的特性が悪く、耐水性が不十分であるなどの欠点もある。また、一般的な強化ガラス繊維に対しては、主に機械的特性及び耐食性が注目され、たとえば、代表的な無ホウ素Eガラス繊維では、ホウ素を使用しない、さらにホウ素とフッ素を同時に使用しない場合は、処方におけるアルカリ金属とアルカリ土類金属酸化物の総量を増加することで、ガラスの粘度及び溶解の難度を低下させ、製造の困難さを軽減させ、生産効率を向上させるが、これにより、無ホウ素Eガラス繊維の電気特性や板材の穴あけ性などが、プリント回路基板の要件を満たすことが難しくなり、したがって、電子グレードガラス繊維の生産には適していない。
【0005】
現在、多くのガラス繊維企業や科学研究機関が低誘電率ガラス繊維の研究開発に焦点を当てているが、電子グレードEガラス繊維に関する研究や革新はほとんどない。実際には、現在、従来の電子グレードEガラス繊維には多くの問題があり、ガラス特性の向上、コストの削減、揮発の低減、耐火材料に対する侵食の低減や先進的なキリン燃焼技術の利用には、まだ改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題を解決するために、本発明は、ガラスの誘電特性を改善し、ガラス繊維の機械的特性、耐水性及び耐酸性を向上させ、原料のコストを大幅に低下させて、原料の発揮を著しく減少させ、耐火材料に対する侵食を低減させ、且つ大規模なタンクキリン化生産に適している、低コスト・高耐食性の電子グレードガラス繊維組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、成分として、
SiO 54.2~60重量%、Al 11~17.5重量%、B 0.7~4.5重量%、CaO 18~23.8重量%、MgO 1~5.5重量%、RO=CaO+MgO ≦24.8重量%、RO=NaO+KO+LiO <1重量%、TiO0.05~0.8重量%、Fe 0.05~0.7重量%、F 0.01~1.2重量%を含み、
重量百分率比C1=SiO/(RO+RO)の範囲は2.20以上であり、且つ上記成分の全含有量は98.5重量%以上である電子グレードガラス繊維組成物を提供する。
【0008】
好ましくは、重量百分率比C2=(SiO+Al-B)/(RO+RO)の範囲は2.73以上である。
【0009】
好ましくは、重量百分率比C3=(SiO+Al)/(RO+RO+B)の範囲は2.50以上である。
【0010】
好ましくは、重量百分率比C4=B/ROの範囲は1以上である。
【0011】
好ましくは、前記電子グレードガラス繊維組成物は、成分として、SiO 54.2~60重量%、Al 11~17.5重量%、B 0.7~4.5重量%、CaO 18~23.8重量%、MgO 1~5.5重量%、RO=CaO+MgO ≦24.8重量%、RO=NaO+KO+LiO <1重量%、RO+RO ≦25.2重量%、TiO0.05~0.8重量%、Fe 0.05~0.7重量%、F 0.01~1.2重量%を含み、
重量百分率比C1=SiO/(RO+RO)の範囲は2.20以上であり、且つ上記成分の全含有量は98.5重量%以上である。
【0012】
好ましくは、前記ROの含有量の範囲は20~24.4重量%である。
【0013】
好ましくは、前記RO+ROの含有量の範囲は20.5~25重量%である。
【0014】
好ましくは、前記ROの含有量の範囲は0.8重量%以下である。
【0015】
好ましくは、前記Fの含有量の範囲は0.05~1.2重量%である。
【0016】
好ましくは、重量百分率比KO/NaOの範囲は0.5よりも大きい。
【0017】
好ましくは、前記Al+MgOの含有量の範囲は13~19.1重量%である。
【0018】
好ましくは、前記電子グレードガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 54.2~60重量%、Al 11~17.5重量%、B 0.7~4.5重量%、CaO 18~23.8重量%、MgO 1~5.5重量%、RO=CaO+MgO ≦24.8重量%、RO=NaO+KO+LiO <1重量%、TiO0.05~0.8重量%、Fe 0.05~0.7重量%、F 0.01~1.2重量%を含み、
重量百分率比C1=SiO/(RO+RO)の範囲は2.20以上であり、重量百分率比C2=(SiO+Al-B)/(RO+RO)の範囲は2.73以上であり、重量百分率比C3=(SiO+Al)/(RO+RO+B)の範囲は2.50以上であり、且つ上記成分の全含有量は98.5重量%以上である。
【0019】
好ましくは、前記電子グレードガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 55~59.5重量%、Al 11.5~16.5重量%、B 0.7~4.5重量%、CaO 18~23.3重量%、MgO 1~4.5重量%、RO=CaO+MgO ≦24.4重量%、RO=NaO+KO+LiO <1重量%、RO+RO 20.5~25重量%、TiO0.05~0.8重量%、Fe 0.05~0.7重量%、F 0.05~1.2重量%を含み、
重量百分率比C1=SiO/(RO+RO)の範囲は2.20以上であり、重量百分率比C2=(SiO+Al-B)/(RO+RO)の範囲は2.73以上であり、且つ上記成分の全含有量は98.5重量%以上である。
【0020】
好ましくは、前記電子グレードガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 55~59.5重量%、Al 12~15.9重量%、B 1~3.5重量%、CaO 18~23.3重量%、MgO 1.1~4重量%、RO=CaO+MgO ≦24.4重量%、RO=NaO+KO+LiO ≦0.8重量%、RO+RO 20.5~25重量%、TiO0.05~0.8重量%、Fe 0.05~0.7重量%、F 0.05~1.2重量%を含み、
重量百分率比C1=SiO/(RO+RO)の範囲は2.24~2.75であり、重量百分率比C2=(SiO+Al-B)/(RO+RO)の範囲は2.75~3.35であり、重量百分率比C3=(SiO+Al)/(RO+RO+B)の範囲は2.50以上であり、且つ上記成分の全含有量は98.5重量%以上である。
【0021】
好ましくは、前記電子グレードガラス繊維組成物は、1.5重量%未満のSO、SrO、CeO、La、Y、ZrO、ZnOのうちの1種又は複数種をさらに含む。
【0022】
本発明の別の態様によれば、上記電子グレードガラス繊維組成物で製造される電子グレードガラス繊維を提供する。
【0023】
好ましくは、前記電子グレードガラス繊維は、室温で周波数が1MHzであるときの誘電率の範囲が6.0~7.0である。
【0024】
本発明の第3態様によれば、前記電子グレードガラス繊維を含有する電子グレードガラス繊維布を提供する。
【0025】
好ましくは、前記電子グレードガラス繊維布は、プリント回路基板の基材として用いられる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の電子グレードガラス繊維組成物は、具体的には、低コスト・高耐食性の電子グレードガラス繊維組成物に関し、低含有量Bを導入することで、重点としてアルカリ金属酸化物の含有量、アルカリ土類金属酸化物の含有量及びこれらの総含有量を調整し、またSiO、Al、B及びF含有量を調整することにより、SiO/(RO+RO)の割合を制御し、さらに、(SiO+Al-B)/(RO+RO)、(SiO+Al)/(RO+RO+B)、B/ROなどの割合を制御することにより、シリコンイオン、ホウ素イオン、アルミニウムイオンとアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオンとの相乗効果を向上させる。上記成分及びこれらの割合を制御することによって、ガラスの電気特性、特に誘電特性を向上させることができるだけでなく、ガラスの機械的特性、耐水性及び耐酸性を向上させ、また、原料のコストを大幅に低下させて、原料の発揮を著しく減少させ、耐火材料に対する侵食を低減させ、且つ大規模なタンクキルン化生産に適している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
具体的には、本発明の電子グレードガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 54.2~60重量%、Al 11~17.5重量%、B 0.7~4.5重量%、CaO 18~23.8重量%、MgO 1~5.5重量%、RO=CaO+MgO ≦24.8重量%、RO=NaO+KO+LiO <1重量%、TiO0.05~0.8重量%、Fe 0.05~0.7重量%、F 0.01~1.2重量%を含み、
重量百分率比C1=SiO/(RO+RO)の範囲は2.20以上であり、且つ上記成分の全含有量は98.5重量%以上である。
【0028】
以下、該電子グレードガラス繊維組成物中の各成分の作用及び含有量について説明する。
【0029】
SiOは、ガラスの網目形成酸化物であり、ガラスの骨格を形成する主な酸化物であり、シリコン-酸素の骨格は、電場の作用によって移動する能力がほとんどない。本発明の電子グレードガラス繊維組成物において、SiOの含有量の範囲は、54.2~60重量%に制限される。ガラスに十分な誘電特性と機械的特性を持たせるには、酸化ケイ素の含有量は54.2%以上であり、ガラスの粘度と液相線温度が高くなりすぎ、大規模生産を行うことが難しくなることを防止するために、酸化ケイ素の含有量は好ましくは60%を超えてはならない。好ましくは、SiOの含有量の範囲は、54.2~59.5重量%に制限され得る。好ましくは、SiOの含有量の範囲は、55~59.5重量%に制限され得る。より好ましくは、SiOの含有量の範囲は、55~59重量%に制限され得る。
【0030】
アルカリ金属酸化物はガラスの修飾体酸化物であり、NaO、KO及びLiOはすべてガラスの粘度を下げ、ガラスの溶融性を改善し、また遊離酸素を効果的に提供して、ホウ素、アルミニウムイオンと良好な相乗効果を果たし、負に帯電した四面体を一定量で生成してNaイオンなどに対して限定作用を果たし、その移動度を制限し、より良い構造スタッキング効果を促進することができる。ただし、アルカリ金属酸化物はガラスの電気特性に大きな影響を与え、アルカリ金属酸化物の増加に伴い、ガラス中の一価のアルカリ金属イオンが増加し、分極しやすい非架橋酸素イオンも増加し、ガラスの導電率が向上し、誘電率が向上する。本発明の電子グレードガラス繊維組成物によれば、研究したところ、NaOはガラスの電気特性にKO及びLiOよりも大きな影響を与えることを発見し、これはNaOが高分極性の非架橋酸素イオンを提供しやすいことに関連し、また、混合アルカリ効果が顕著であり、KOとNaOを含むガラスの導電率は、NaOのみを含むガラスの導電率よりも低く、KO/NaOの割合を適切に制御すると、より優れた誘電特性を得ることができる。外部電場の作用下で、一価の金属イオンが移動するときに、Naイオンによって残された空孔はKイオンによって残された空孔よりも小さく、大きなイオンKは小さな空孔に入ることができないので、チャネルがブロックされ、小さなイオンの移動が妨げられ、イオン移動度が低下する。したがって、ガラスの優れた誘電特性を確保するために、アルカリ金属酸化物の総含有量を制限することに加えて、各アルカリ金属酸化物間の割合を合理的に制御することもできる。本発明の電子グレードガラス繊維組成物において、RO=NaO+KO+LiOの含有量の範囲は、1重量%未満に制限される。好ましくは、ROの含有量の範囲は0.8重量%以下である。より好ましくは、ROの含有量の範囲は0.1~0.8重量%である。さらに好ましくは、ROの含有量の範囲は0.1~0.65重量%である。最も好ましくは、ROの含有量の範囲は0.1~0.5重量%である。
【0031】
さらに、NaO+KOの含有量の範囲は0.8重量%以下に制限され得る。好ましくは、NaO+KOの含有量の範囲は0.1~0.65重量%である。さらに、NaOの含有量の範囲は0.5重量%以下に制限される。好ましくは、NaOの含有量の範囲は0.05~0.35重量%に制限される。より好ましくは、NaOの含有量の範囲は0.05~0.2重量%に制限される。さらに、KOの含有量の範囲は0.05~0.5重量%に制限される。好ましくは、KOの含有量の範囲は0.05~0.35重量%に制限される。さらに、LiOの含有量の範囲は0.2重量%以下に制限される。好ましくは、LiOの含有量の範囲は0.1重量%以下に制限される。
【0032】
さらに、ガラスの電気特性を改善するために、重量百分率比KO/NaOの範囲は0.5よりも大きく制限され得る。好ましくは、重量百分率比KO/NaOの範囲は0.75以上に制限される。より好ましくは、重量百分率比KO/NaOの範囲は1以上に制限される。また、別の実施形態では、前記組成物にはLiOが含まなくてもよい。別の実施形態では、NaOの含有量の範囲は0.05~0.35重量%であり、重量百分率比KO/NaOの範囲は1以上であるように制限される。
【0033】
CaOは、ガラスの網目修飾体酸化物であり、ガラスの粘度を調整するだけでなく、ガラスの化学的安定性、機械的強度を向上させ、また、ガラスの硬化時間を短くし、ガラス繊維の成形速度を上げることができる。また、Ca2+とNaは、イオン半径が類似しており、ガラス構造の隙間では、両方が交差して充填しやすく、且つCa2+イオン電界強度はNaよりも強いので、ガラス空孔を埋めるとイオン移動チャネルをブロックしやすくなるため、Ca2+はNaイオンの移動度を効果的に抑制でき、ガラスの導電率及び誘電率の低下に有利である。本発明の電子グレードガラス繊維組成物において、CaOの含有量の範囲は18~23.8重量%に制限され、その含有量が少なすぎる場合、上記の作用は不十分であり、その含有量が多すぎる場合、ガラス中の非架橋酸素イオンの数が多すぎ、その結果、誘電率、導電率が増加し、また、ガラスの結晶化のリスクが増加する。好ましくは、CaOの含有量の範囲は18~23.3重量%に制限される。より好ましくは、CaOの含有量の範囲は18~22.8重量%に制限される。さらに好ましくは、CaOの含有量の範囲は18~21.9重量%に制限される。
【0034】
MgOは、ガラスの中間体酸化物であり、主にガラスの粘度を調整し、ガラスの結晶化を制御する作用を果たす。Mg-O結合にはある程度の共有結合性があるが、イオン性が支配的であり、「遊離酸素」が不十分である網目環境では、「蓄積」の作用を果たし、ガラスの導電率及び誘電率の低下に有利である。また、Mg2+は、イオン半径がNa及びKよりも小さく、イオン電界強度がNa及びKよりも大幅に大きく、ガラス内の酸素イオンと強く結合し、アルカリ金属イオンNa及びKの移動度を効果的に抑制できる。ただし、MgOの含有量が多すぎると、ガラスの結晶化のリスクが大幅に増加する。本発明の電子グレードガラス繊維組成物において、MgOの含有量の範囲は1~5.5重量%に制限される。本発明では、適量のMgOはCaO及びAlと混合して使用され、カルシウムイオンは、網目の隙間を効果的に埋めながら、遊離酸素の一部を提供し、スタッキングに関してマグネシウムイオン及びアルミニウムイオンと相乗効果を形成し、より緻密な構造のスタッキング効果を得るのに有利であり、ガラスが結晶化するときに、ウォラストナイト(CaSiO)、透輝石(CaMgSi)、及びアノーサイト(CaAlSi)の混晶状態を効果的に形成することに有利であり、ガラスの結晶化のリスクを低減する目的を達成させ、またガラスの誘電特性の改善にも寄与する。好ましくは、MgOの含有量の範囲は1~4.5重量%に制限される。より好ましくは、MgOの含有量の範囲は、1重量%よりも大きく且つ4重量%以下に制限される。さらに好ましくは、MgOの含有量の範囲は1.1~4重量%に制限される。
【0035】
より低い誘電率、より優れた結晶化速度を得るために、本発明の電子グレードガラス繊維組成物において、RO=CaO+MgOの含有量の範囲は24.8重量%以下に制限される。好ましくは、CaO+MgOの含有量の範囲は24.4重量%以下である。好ましくは、CaO+MgOの含有量の範囲は20~24.4重量%である。好ましくは、CaO+MgOの含有量の範囲は20~23.9重量%である。好ましくは、CaO+MgOの含有量の範囲は20~23.5重量%である。さらに、RO+ROの含有量の範囲は25.5重量%未満に制限され得る。好ましくは、RO+ROの含有量の範囲は25.2重量%以下である。より好ましくは、RO+ROの含有量の範囲は20.5~25重量%である。さらに好ましくは、RO+ROの含有量の範囲は20.5~24.7重量%である。さらに好ましくは、RO+ROの含有量の範囲は21~24.3重量%である。
【0036】
ガラス構造内の非架橋酸素及び移動しやすいイオンの数を制御し、網目外のイオンの濃度と移動度を下げて、ガラスの誘電率を下げるとともに、ガラスの溶融時の清澄化効果を確保するために、本発明の電子グレードガラス繊維組成物において、重量百分率比C1=SiO/(RO+RO)の範囲は2.20以上に制限される。好ましくは、重量百分率比C1の範囲は2.20~2.80以上である。より好ましくは、重量百分率比C1の範囲は2.24~2.75である。さらに好ましくは、重量百分率比C1の範囲は2.28~2.70である。
【0037】
は、ガラスの網目形成酸化物であり、ガラスの多くの特性を改善し、良好なフラックス作用を有し、また、さまざまな条件下でホウ素が[BO]三角形又は/及び[BO]四面体として存在し得、高温溶融条件下では、一般に[BO]四面体を形成しにくく、[BO]三角形として存在し、それは、Bが高温粘度を下げる主な理由であり、低温では、特定の条件下で、B3+は遊離酸素を奪ってホウ素酸素四面体を形成する傾向があり、それにより、網目を補充する作用を果たし、[BO]四面体の体積は[SiO]四面体よりも小さいので、ガラス構造がコンパクトになるようにするため、導電率及び誘電率の低下に有利である。しかし、ホウ素含有原料の価格は非常に高く、ホウ素は揮発性物質であるので、ホウ素含有原料が大量に存在すると、配合材料の揮発性が高くなり、キリン内の耐火材料に対する高温侵食が促進されやすく、これにより、トップ燃焼技術を利用して効率的に加熱する方式のE繊維用キリンへの応用が制限される。また、高ホウ素含有量の電子グレードガラス繊維は、耐酸性と機械的特性が低く、耐水性が不十分である。本発明の電子グレードガラス繊維組成物において、Bの含有量の範囲は、0.7~4.5重量%に制限される。好ましくは、Bの含有量の範囲は0.7~4重量%である。より好ましくは、Bの含有量の範囲は1~3.5重量%である。さらに好ましくは、Bの含有量の範囲は1.4~3重量%である。また、別の実施形態では、SiOの含有量の範囲は57重量%よりも大きく且つ60重量%以下であり、Bの含有量の範囲は0.7~2重量%であるように制限される。
【0038】
Alは、ガラスの中間体酸化物であり、ガラスの骨格を形成する重要な酸化物でもあり、SiOと結合すると、ガラスの機械的特性には実質的な作用を果たすことができ、そして、ガラスの結晶化や耐水性に対する影響にも重要な作用を果たす。高ホウ素含有量の電子グレードガラスでは、B3+は酸素イオンと結合する傾向がより強いため、大量の高電界強度B3+の影響下で、Al3+の四面体の配位を妨害し、Al3+が遊離酸素を奪って酸化アルミニウム四面体を形成する能力が弱まり、その結果、ガラス中のAl3+が八面体を維持する傾向がある。Bの含有量を低下させ、Alの含有量を適切に増やすと、Al3+が遊離酸素を奪って酸化アルミニウム四面体を形成する傾向が高まり、網目を補充する作用が高まり、ガラス中の分極しやすい非架橋酸素イオンの数が減少し、それによって、誘電率の低下に有利である。本発明の電子グレードガラス繊維組成物において、Alの含有量の範囲は、11~17.5重量%に制限される。ガラスに十分な耐水性、機械的特性、及び誘電特性を持たせるには、酸化アルミニウムの含有量は11%以上であり、一方、その含有量は高すぎてはならず、17.5%を超えると、ガラスの結晶化、相分離のリスクが大幅に増加し、その結果、液相線温度が高すぎ、結晶化速度が速すぎるため、大規模な生産には不利である。好ましくは、Alの含有量の範囲は11.5~16.5重量%に制限される。より好ましくは、Alの含有量の範囲は12~15.9重量%に制限される。
【0039】
電気特性を確保しながら、ガラスの力学的特性及び耐食性を向上させ、ガラスの溶融時の清澄化効果を確保するために、酸化ホウ素の含有量を適切に減らし、非架橋酸素に対するガラス構造内のホウ素とアルミニウムイオンの競合を制御することができる。さらに、本発明では、重量百分率比C2=(SiO+Al-B)/(RO+RO)の範囲は2.73以上に制限され得る。好ましくは、重量百分率比C2の範囲は2.73~3.35である。より好ましくは、重量百分率比C2の範囲は2.75~3.35である。さらに好ましくは、重量百分率比C2の範囲は2.79~3.25である。さらに好ましくは、重量百分率比C2の範囲は2.84~3.25である。
【0040】
力学的特性を確保しながら、原料のコストをさらに低下させ、また、ガラスの電気特性と溶融時の清澄化効果を両立させるために、さらに、本発明では、重量百分率比C3=(SiO+Al)/(RO+RO+B)の範囲は2.50以上に制限され得る。好ましくは、重量百分率比C3の範囲は2.55~3.25である。より好ましくは、重量百分率比C3の範囲は2.60~3.25である。さらに好ましくは、重量百分率比C3の範囲は2.65~3.20である。さらに好ましくは、重量百分率比C3の範囲は2.70~3.20である。
【0041】
ガラス構造内の非架橋酸素、アルカリ金属イオン及びホウ素イオンの量、及び競合を制御し、誘電率及び導電率を下げながら、ガラスの力学的特性と原料のコストを両立させるために、さらに、本発明では、重量百分率比C4=B/ROの範囲は1以上に制限され得る。好ましくは、重量百分率比C4の範囲は1.2~12である。より好ましくは、重量百分率比C4の範囲は1.5~10である。さらに好ましくは、重量百分率比C4の範囲は2~8である。
【0042】
ガラスの結晶化温度及び速度を制御しながら、ガラスの電気特性及び力学的特性を両立させるために、さらに、本発明では、重量百分率比(Al+MgO)/SiOの範囲は0.34以下に限定され得る。好ましくは、重量百分率比(Al+MgO)/SiOの範囲は0.23~0.33である。
【0043】
さらに、本発明では、Al+MgOの含有量の範囲は12.5~21重量%に限定され得る。好ましくは、Al+MgOの含有量の範囲は13~19.1重量%である。より好ましくは、Al+MgOの含有量の範囲は14.5~19.1重量%である。
【0044】
ガラスの電気的性能とコストパフォーマンスを向上させるために、さらに、本発明では、Al+MgO+Bの含有量の範囲は15~23重量%に制限され得る。好ましくは、Al+MgO+Bの含有量の範囲は16~21.9重量%である。
【0045】
TiOは、ガラスの高温粘度を下げるだけでなく、一定のフラックス作用がある。ただし、Ti4+が多すぎると、局所的な内部電界でイオン変位分極が発生しやすく、結果として、ガラスの誘電率が向上する。本発明の電子グレードガラス繊維組成物において、TiOの含有量の範囲は0.05~0.8重量%に制限される。好ましくは、TiOの含有量の範囲は0.05~0.6重量%に制限される。より好ましくは、TiOの含有量の範囲は0.05~0.45重量%に制限される。さらに、NaO+TiOの含有量の範囲は1.1重量%未満に制限される。好ましくは、NaO+TiOの含有量の範囲は0.8重量%未満に制限される。
【0046】
Feは、ガラスの溶融に有利でありながら、ガラスの結晶化性能を改善できる。本発明の電子グレードガラス繊維組成物において、Feの含有量の範囲は、0.05~0.7重量%に制限される。好ましくは、Feの含有量の範囲は、0.05重量%~0.6重量%である。FeにはFe2+とFe3+の両方のイオンが含まれており、両方のイオンのいずれも一定の着色作用を有する。Fe3+は紫外領域で吸収し、Fe2+は赤外領域で吸収するため、ガラス中の第一鉄を適切な割合に制御すると、温度が上昇したときには、溶融ガラスの吸熱に有利であり、温度が降下したときには、溶融ガラスの放熱に有利であり、また、溶融ガラスの対流を強化して、線引き時のガラス繊維の冷却硬化速度を高め、これは、繊維切れ率を下げ、ガラス繊維の強度を向上させるのに役立つ。さらに、Fe2+イオンのイオン変位分極傾向は、Fe3+イオンよりも弱い。さらに、重量百分率の比FeO/Feの範囲は0.40以上に制限され得る。好ましくは、重量百分率比FeO/Feの範囲は0.50以上である。より好ましくは、重量百分率比FeO/Feの範囲は0.50~0.85である。さらに好ましくは、重量百分率比FeO/Feの範囲は0.55~0.80である。
【0047】
は、ガラスの溶融と清澄化に有利であり、また、鉄イオンと結合して揮発しやすいFeF又は無色のNaFeFを生成し、ガラスの着色性を低下させることもでき、適量で添加すると、ガラスの誘電率の改善に有利である。ただし、フッ素は揮発性物質であり、排ガスから除去する必要がある。本発明の電子グレードガラス繊維組成物において、Fの含有量の範囲は、0.01~1.2重量%に制限される。好ましくは、Fの含有量の範囲は0.05~1.2重量%である。より好ましくは、Fの含有量の範囲は0.1~1重量%である。さらに、別の実施形態では、Fの含有量の範囲は0.4~1重量%に制限され得る。
【0048】
また、本発明では、前記SiO、Al、B、CaO、MgO、NaO、KO、LiO、TiO、Fe及びFの全含有量は98.5重量%以上に制限される。好ましくは、前記SiO、Al、B、CaO、MgO、NaO、KO、LiO、TiO、Fe及びFの全含有量は99重量%以上である。より好ましくは、前記SiO、Al、B、CaO、MgO、NaO、KO、LiO、TiO、Fe及びFの全含有量は99.5重量%以上である。さらに好ましくは、前記SiO、Al、B、CaO、MgO、NaO、KO、LiO、TiO、Fe及びFの全含有量は99.8重量%よりも大きい。上記主成分に加えて、本発明の電子グレードガラス繊維組成物には、少量のほかの成分を含有してもよい。さらに、前記組成物中、総含有量が1.5重量%未満のSO、SrO、CeO、La、Y、ZrO、ZnOのうちの1種又は複数種がさらに含まれる。さらに、前記組成物中、総含有量が1重量%未満のSO、SrO、CeO、La、Y、ZrO、ZnOのうちの1種又は複数種がさらに含まれる。さらに、前記組成物中、総含有量が0.5重量%未満のSO、SrO、CeO、La、Y、ZrO、ZnOのうちの1種又は複数種がさらに含まれる。さらに、前記組成物中、総含有量が0.5重量%未満のSOがさらに含まれる。さらに、別の実施形態では、生産コストを抑えて、環境保護性を向上させるために、本発明の電子グレードガラス繊維組成物には、Pが本質的に含まなくてもよい。別の実施形態では、生産コスト及びガラスの密度を制御するためには、本発明の電子グレードガラス繊維組成物には、SrOが本質的に含まなくてもよい。
【0049】
ここで、特定の酸化物が「本質的に含まない」とは、該組成物中の該成分が痕跡量で存在することを意味し、例えば、原料中の不純物に同伴して混入するものであり、その含有量が、0~0.03重量%、ほとんどの場合、0~0.01重量%である。
【0050】
さらに、本発明では、前記電子グレードガラス繊維の、室温で周波数が1MHzであるときの誘電率の範囲は、6.0~7.0に制限される。好ましくは、前記電子グレードガラス繊維の、室温で周波数が1MHzであるときの誘電率の範囲は6.0~6.85である。より好ましくは、前記電子グレードガラス繊維の、室温で周波数が1MHzであるときの誘電率の範囲は6.35~6.80である。
【0051】
さらに、本発明の別の態様によれば、本発明は、少なくとも1つのトップバーナーを用いたタンクキリンにおいて生産する電子グレードガラス繊維組成物の使用を提供する。
【0052】
本発明の電子グレードガラス繊維組成物において、各成分の含有量を上記範囲とすることによる有益な効果は、実施例を通して具体的な実験データを提供することによって説明される。
【0053】
以下、本発明に係る電子グレードガラス繊維組成物に含まれる各成分の好ましい値の範囲が例示される。
【0054】
好適例1
本発明に係る電子グレードガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 54.2~60重量%、Al 11~17.5重量%、B 0.7~4.5重量%、CaO 18~23.8重量%、MgO 1~5.5重量%、RO=CaO+MgO ≦24.8重量%、RO=NaO+KO+LiO <1重量%、RO+RO ≦25.2重量%、TiO0.05~0.8重量%、Fe 0.05~0.7重量%、F 0.01~1.2重量%を含み、
重量百分率比C1=SiO/(RO+RO)の範囲は2.20以上であり、重量百分率比C2=(SiO+Al-B)/(RO+RO)の範囲は2.73以上であり、且つ上記成分の全含有量は98.5重量%以上である。
【0055】
好適例2
本発明に係る電子グレードガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 54.2~60重量%、Al 11~17.5重量%、B 0.7~4.5重量%、CaO 18~23.8重量%、MgO 1~5.5重量%、RO=CaO+MgO ≦24.8重量%、RO=NaO+KO+LiO ≦0.8重量%、TiO0.05~0.8重量%、Fe 0.05~0.7重量%、F 0.01~1.2重量%を含み、
重量百分率比C1=SiO/(RO+RO)の範囲は2.20以上であり、重量百分率比C2=(SiO+Al-B)/(RO+RO)の範囲は2.73以上であり、重量百分率比C3=(SiO+Al)/(RO+RO+B)の範囲は2.50以上であり、且つ上記成分の全含有量は98.5重量%以上である。
【0056】
好適例3
本発明に係る電子グレードガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 54.2~60重量%、Al 11~17.5重量%、B 0.7~4.5重量%、CaO 18~23.3重量%、MgO 1~5.5重量%、RO=CaO+MgO ≦24.4重量%、RO=NaO+KO+LiO <1重量%、RO+RO ≦25.2重量%、TiO0.05~0.8重量%、Fe 0.05~0.7重量%、F 0.01~1.2重量%を含み、
重量百分率比C1=SiO/(RO+RO)の範囲は2.20以上であり、重量百分率比C2=(SiO+Al-B)/(RO+RO)の範囲は2.73以上であり、且つ上記成分の全含有量は98.5重量%以上である。
【0057】
好適例4
本発明に係る電子グレードガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 54.2~60重量%、Al 11~17.5重量%、B 0.7~4.5重量%、CaO 18~23.3重量%、MgO 1~5.5重量%、RO=CaO+MgO ≦24.4重量%、RO=NaO+KO+LiO <1重量%、RO+RO 20.5~25重量%、TiO0.05~0.8重量%、Fe 0.05~0.7重量%、F 0.05~1.2重量%を含み、
重量百分率比C1=SiO/(RO+RO)の範囲は2.20以上であり、重量百分率比C2=(SiO+Al-B)/(RO+RO)の範囲は2.73以上であり、重量百分率比C3=(SiO+Al)/(RO+RO+B)の範囲は2.50以上であり、且つ上記成分の全含有量は98.5重量%以上である。
【0058】
好適例5
本発明に係る電子グレードガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 54.2~60重量%、Al 11~17.5重量%、B 0.7~4.5重量%、CaO 18~23.8重量%、MgO 1~5.5重量%、RO=CaO+MgO ≦24.8重量%、RO=NaO+KO+LiO <1重量%、TiO0.05~0.8重量%、Fe 0.05~0.7重量%、F 0.01~1.2重量%を含み、
重量百分率比C1=SiO/(RO+RO)の範囲は2.24~2.75であり、重量百分率比C2=(SiO+Al-B)/(RO+RO)の範囲は2.73以上であり、且つ上記成分の全含有量は98.5重量%以上である。
【0059】
好適例6
本発明に係る電子グレードガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 54.2~60重量%、Al 11~17.5重量%、B 0.7~4.5重量%、CaO 18~23.8重量%、MgO 1~5.5重量%、RO=CaO+MgO ≦24.8重量%、RO=NaO+KO+LiO <1重量%、TiO0.05~0.8重量%、Fe 0.05~0.7重量%、F 0.01~1.2重量%を含み、
重量百分率比C1=SiO/(RO+RO)の範囲は2.24~2.75であり、重量百分率比C2=(SiO+Al-B)/(RO+RO)の範囲は2.75~3.35以上であり、且つ上記成分の全含有量は98.5重量%以上である。
【0060】
好適例7
本発明に係る電子グレードガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 55~59.5重量%、Al 11.5~16.5重量%、B 0.7~4.5重量%、CaO 18~23.3重量%、MgO 1~4.5重量%、RO=CaO+MgO ≦24.4重量%、RO=NaO+KO+LiO <1重量%、RO+RO 20.5~25重量%、TiO0.05~0.8重量%、Fe 0.05~0.7重量%、F 0.01~1.2重量%を含み、
重量百分率比C1=SiO/(RO+RO)の範囲は2.20以上であり、重量百分率比C2=(SiO+Al-B)/(RO+RO)の範囲は2.75~3.35であり、且つ上記成分の全含有量は98.5重量%以上である。
【0061】
好適例8
本発明に係る電子グレードガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 55~59.5重量%、Al 11.5~16.5重量%、B 0.7~4重量%、CaO 18~23.3重量%、MgO 1~4.5重量%、RO=CaO+MgO ≦24.4重量%、RO=NaO+KO+LiO ≦0.8重量%、TiO0.05~0.8重量%、Fe 0.05~0.7重量%、F 0.05~1.2重量%を含み、
重量百分率比C1=SiO/(RO+RO)の範囲は2.24~2.75であり、重量百分率比C2=(SiO+Al-B)/(RO+RO)の範囲は2.73以上であり、且つ上記成分の全含有量は98.5重量%以上である。
【0062】
好適例9
本発明に係る電子グレードガラス繊維組成物は、成分として、
SiO 55~59.5重量%、Al 12~15.9重量%、B 1~3.5重量%、CaO 18~22.8重量%、MgO 1~4.5重量%、RO=CaO+MgO 20~24.4重量%、RO=NaO+KO+LiO ≦0.8重量%、RO+RO 20.5~25重量%、TiO0.05~0.8重量%、Fe 0.05~0.7重量%、F 0.05~1.2重量%を含み、
重量百分率比C1=SiO/(RO+RO)の範囲は2.24~2.75であり、重量百分率比C2=(SiO+Al-B)/(RO+RO)の範囲は2.75~3.35であり、重量百分率比C3=(SiO+Al)/(RO+RO+B)の範囲は2.50以上であり、且つ上記成分の全含有量は98.5重量%以上である。
【実施例
【0063】
以下、本発明の実施例の目的、技術案、及び利点をより明確にするために、本発明の実施例における技術案を明確かつ完全に説明するが、明らかなように、説明する実施例は、本発明の実施例の一部であり、すべての実施例ではない。本発明の実施例に基づいて、創造的な努力を必要とせずに当業者によって得られる他のすべての実施例は、本発明の特許範囲内に含まれるものとする。なお、本願に係る実施例及び各実施例の特徴は、矛盾しない限り、任意に組み合わせることができる。
【0064】
本発明では、電子グレードガラス繊維組成物の各成分の含有量は、SiO 54.2~60重量%、Al 11~17.5重量%、B 0.7~4.5重量%、CaO 18~23.8重量%、MgO 1~5.5重量%、RO=CaO+MgO 24.8重量%以下、RO=NaO+KO+LiO 1重量%未満、TiO 0.05~0.8重量%、Fe 0.05~0.7重量%、F 0.01~1.2重量%であり、且つ重量百分率比C1=SiO/(RO+RO)の範囲は2.20以上であり、上記成分の全含有量は98.5重量%以上である。該電子グレードガラス繊維組成物は、低コスト、高耐食性の特徴を有し、ガラスの電気特性、特に誘電特性を向上させることができるだけでなく、ガラス繊維の機械的特性、耐水性及び耐酸性を向上させることができ、また、原料のコストを大幅に低下させて、原料の発揮を著しく減少させ、耐火材料に対する侵食を低減させ、且つ大規模なタンクキルン化生産に適している。
【0065】
本発明の電子グレードガラス繊維組成物中のSiO、Al、B、CaO、MgO、NaO、KO、LiO、TiO、Fe及びFなどの的具体的な含有量の値を実施例とし、また、5つの比較実施例を設置して、B1~B5とし、B1は、E繊維を生産できる従来のEガラス繊維組成物であり、B2は従来のDガラス繊維組成物であり、B3~B5は一般的な強化Eガラス繊維組成物である。比較には、9つの特性のパラメータが使用される。
(1)成形温度は、粘度が10ポイズであるときのガラス溶融物の温度に相当する。
(2)液相線温度は、ガラス溶融物を冷却したときに結晶核が形成され始める温度、すなわちガラスの結晶化の上限温度に相当する。
(3)△T値は、成形温度と液相線温度の差であり、線引き成形の温度範囲を示す。
(4)引張強度は、ガラス繊維が引張条件下で耐えられる最高力を特徴付け、ASTM D2343に準じて浸漬糸の引張強度をテストする。
(5)誘電率
誘電率の測定方法は以下のとおりである。原料を均一に混合し、白金るつぼに入れ、高温電気炉にて1550±30℃で6時間保温し、清澄でよく均質化された高温溶融ガラスを得て、溶融ガラスを予熱したステンレス鋼型に注いでガラスブロックを作り、ガラスブロックをマッフル炉に入れてアニーリングし、アニーリングしたガラスブロックを切断して研磨し、厚さ約1.5mm、長さ約30mmの長方形ガラス板を得て、前記ガラス板に銀電極をコーティングした後、誘電率を測定する。誘電率が小さいほど、ガラス媒体の分極能力が小さく、電気絶縁材料としての安定性が良好である。
(6)気泡数
気泡数の測定方法はほぼ以下のとおりである。専用型を使用して各実施例の配合材料を同じ形状のサンプルにプレスし、高温顕微鏡のサンプルプラットフォームに配置してから、設定された空間温度である1500℃までプログラム昇温し、保温せずにガラスサンプルを室温まで炉冷し、次に、光学顕微鏡で各ガラスサンプルの気泡数を微視的に観察する。ここで、気泡数は、顕微鏡のイメージング範囲を基準とする。
(7)耐水性
減量率で特徴付けられ、その測定方法としては、粒径40~80メッシュのガラス粉末を95℃の水に24時間放置し、定期的に撹拌し、ガラス粉末の減量率を測定する。減量率が小さいほど、ガラスの耐水性は良好である。
(8)耐酸性
減量率で特徴付けられ、その測定方法としては、粒径40~80メッシュのガラス粉末を23℃の10%HCL溶液にて48時間放置し定期的に撹拌し、ガラス粉末の減量率を測定する。減量率が小さいほど、ガラスの耐酸性は良好である。
(9)原料のコスト係数
従来のEガラス繊維組成物B1を基準として、原料のコスト係数を1.0に設定し、その他の組成部については、この基準で計算する。原料のコスト係数が小さいほど、組成物の原料のコスト係数は低い。
【0066】
上記の9つのパラメータ及びそれらの測定方法は当業者に公知のものであり、したがって、上記パラメータを使用することにより、本発明のガラス繊維組成物の技術的特徴及び利点を効果的に説明できる。
【0067】
実験の具体的なプロセスは次のとおりである。各成分を適切な原料から取得し、各成分が所望の最終重量百分率となるように、各原料を所定の割合で混合し、混合した配合材料を溶融して清澄化し、その後、溶融ガラスをブッシングのノズルから引き出してガラス繊維を形成し、ガラス繊維を線引き機の回転ヘッドに引き付けて、生糸ケーキ又は糸束ねを形成し、もちろん、これらのガラス繊維については、所望の要件を満たすために、従来の方法でさらに処理してもよい。
【0068】
以下は、本発明の電子グレードガラス繊維組成物の実施例と比較例の特性のパラメータの比較を表として提供する。ここで、各ガラス繊維組成物の含有量は、重量%で表される。なお、実施例の各成分の含有量は合計で100%よりも僅かに低く、残量は微量の不純物や分析できない微量成分であると理解できる。
【0069】
【表1A】
【0070】
【表1B】
【0071】
【表1C】
【0072】
【表1D】
【0073】
【表1E】
【0074】
【表1F】
【0075】
上記表の具体的な値から、一般的な強化Eガラス繊維組成物と比較して、本発明の電子グレードガラス繊維組成物には、次の利点があることがわかる。(1)より低い誘電率を有する。(2)より低い液相線温度を有する。(3)より広い成形範囲を有する。
【0076】
従来のEガラス繊維組成物と比較して、本発明の電子グレードガラス繊維組成物には、次の利点がある。(1)より低い原料コストを有する。(2)より高い引張強度を有する。(3)より優れた耐水性及び耐酸性を有する。(4)誘電率のレベルが改善している。
【0077】
従来のDガラス繊維組成物と比較して、本発明の電子グレードガラス繊維組成物には、次の利点がある。(1)はるかに低い原料コストを有する。(2)遥かに高い引張強度を有する。(3)はるかに高い耐水性及び耐酸性を有する。(4)気泡がより少ない。
【0078】
このことから分かるように、本発明の技術案は、一般的な強化Eガラス繊維組成物、従来のEガラス繊維組成物及び従来のDガラス繊維組成物とは大きく異なり、製品のコストパフォーマンス、原料コスト、誘電率、引張強度、液相線温度、成形範囲、耐水性や耐酸性などの点で飛躍的な進歩を遂げており、また、大規模なタンクキルン化生産も容易に実現でき、思いがけない技術的効果が得られた。
【0079】
本発明に係るガラス繊維組成物を用いて、上記の優れた特性を有する電子グレードガラス繊維を製造し、上記電子グレードガラス繊維を用いて電子グレードガラス繊維布を製造することができる。
【0080】
本発明に係る電子グレードガラス繊維組成物は、1つ以上の有機及び/又は無機材料と組み合わせると、優れた特性を有する複合材料、例えば、ガラス繊維強化基板を製造することができる。
【0081】
なお、本明細書では、用語「含む」、「含有する」又はこれらの任意の変形は、非排他的な包含を意味し、一連の要素を含むプロセス、方法、物品又は機器が、これらの要素だけでなく、明示的にリストされていない他の要素、又はこのようなプロセス、方法、物品、又は機器に固有の要素も含まれる。さらなる制限がない場合、「...を含む」という文で制限された要素は、前記プロセス、方法、物品又は機器には他の同じ要素がさらに存在する場合を除外しない。
【0082】
以上の実施例は、本発明の技術案を説明するために過ぎず、それらを限定するものではない。前述の実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者が理解できるように、前述の実施例に記載された技術案を修正したり、この技術的特徴の一部に対して均等な置換を行ったりすることができ、これら修正又は置換によって、対応する技術案の主旨が本発明の実施例の技術案の精神及び範囲から逸脱することはない。
【0083】
産業上の利用可能性
本発明による電子グレードガラス繊維組成物は、ガラスの誘電特性を改善し、ガラス繊維の機械的特性、耐水性及び耐酸性を向上させ、原料のコストを大幅に削減させ、原料の揮発を大幅に減少させ、耐火材料に対する侵食を低減させることができるだけでなく、大規模なタンクキルン化生産に適している。従来のガラス繊維組成物と比較して、本発明のガラス繊維組成物は、製品のコストパフォーマンス、原料コスト、誘電率、引張強度、液相線温度、成形範囲、耐水性及び耐酸性の点で実質的な進歩を遂げている。したがって、本発明は、産業上の利用可能性が良好である。