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特許7466732インプリント装置、インプリント方法および物品製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】インプリント装置、インプリント方法および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240405BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023050386
(22)【出願日】2023-03-27
(62)【分割の表示】P 2019091617の分割
【原出願日】2019-05-14
(65)【公開番号】P2023085393
(43)【公開日】2023-06-20
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 達也
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-102132(JP,A)
【文献】特開2016-103603(JP,A)
【文献】特開2016-143838(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0093113(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0223919(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のショット領域と型のパターン領域とをインプリント材を介して接触させ前記インプリント材を硬化させることによって前記インプリント材パターンを形成するインプリント装置であって、
前記型に力を加えることによって前記型のパターン領域を変形させる型変形機構と、
前記型変形機構を制御する制御部と、を備え、
前記型変形機構は、前記ショット領域と前記パターン領域との形状差の1次成分を補正するための第1指令値と、前記形状差の2次以上の成分を補正するための第2指令値との和で定まる、許容指令値範囲内の指令値を与えるように制御され、
前記制御部は、前記型変形機構に与える前記第1指令値に基づいて前記第2指令値の調整範囲を決定する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記基板の前記ショット領域の形状を変形させる基板変形機構を更に備え、
前記制御部は、前記基板変形機構に与える第3指令値を前記形状差が小さくなるように決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記基板変形機構は、前記基板を加熱することで前記ショット領域の形状を変形させることを特徴とする請求項2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1指令値に基づいて前記第2指令値の調整範囲を決定し、前記第2指令値の調整範囲を制約として、前記第2指令値および前記第3指令値を決定する、
ことを特徴とする請求項2または3に記載のインプリント装置。
【請求項5】
基板のショット領域と型のパターン領域とをインプリント材を介して接触させ前記インプリント材を硬化させることによって前記インプリント材パターンを形成するインプリント装置であって、
前記型に力を加えることによって前記型のパターン領域を変形させる型変形機構と、
前記基板の前記ショット領域の形状を変形させる基板変形機構と、
前記型変形機構と前記基板変形機構とを制御する制御部と、を備え、
前記型変形機構は、前記ショット領域と前記パターン領域との形状差の1次成分を補正するための第1指令値と、前記形状差の2次以上の成分を補正するための第2指令値との和で定まる、許容指令値範囲内の指令値が与えられるように制御され、
前記制御部は、前記型変形機構に与える前記第1指令値に基づいて前記第2指令値の調整範囲を決定し、決定された前記調整範囲に基づいて、前記第2指令値および前記基板変形機構に与える第3指令値を決定する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1指令値と前記型変形機構の前記許容指令値範囲とに基づいて、前記第2指令値の前記調整範囲を決定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項7】
前記第1指令値は、前記許容指令値範囲に属する任意の値をとりうる、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項8】
前記1次成分は、倍率成分、回転成分、および、ひし形成分の少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項9】
前記基板に設けられたマークと前記型に設けられたマークとの相対位置を計測するアライメント計測部を更に備え、
前記制御部は、前記アライメント計測部の出力に基づいて前記形状差を特定する、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項10】
基板のショット領域と型のパターン領域とをインプリント材を介して接触させ前記インプリント材を硬化させるインプリント処理によって前記インプリント材パターンを形成するインプリント方法であって、
前記型に力を加えることによって前記型のパターン領域を変形させる型変形機構に与える指令値を決定する決定工程を含み、
前記指令値は、前記ショット領域と前記パターン領域との形状差の1次成分を補正するための第1指令値と、前記形状差の2次以上の成分を補正するための第2指令値との和で定まり、かつ、許容指令値範囲内の指令値であり、
前記決定工程では、
前記型変形機構に与える前記第1指令値に基づいて前記第2指令値の調整範囲を決定する、
ことを特徴とするインプリント方法。
【請求項11】
前記決定工程は、前記基板の前記ショット領域の形状を変形させる基板変形機構に与える第3指令値を決定する工程を含む、
ことを特徴とする請求項10に記載のインプリント方法。
【請求項12】
前記基板変形機構は、前記基板を加熱することで前記ショット領域の形状を変形させることを特徴とする請求項11に記載のインプリント方法。
【請求項13】
前記決定工程では、前記第1指令値に基づいて前記第2指令値の調整範囲を決定し、前記第2指令値の調整範囲を制約として、前記第2指令値および前記第3指令値を決定する、
ことを特徴とする請求項11または12に記載のインプリント方法。
【請求項14】
基板のショット領域と型のパターン領域とをインプリント材を介して接触させ前記インプリント材を硬化させるインプリント処理によって前記インプリント材パターンを形成するインプリント方法であって、
前記型に力を加えることによって前記型のパターン領域を変形させる型変形機構に与える指令値、および、前記基板の前記ショット領域を変形させる基板変形機構に与える第3指令値を決定する決定工程を含み、
前記指令値は、前記ショット領域と前記パターン領域との形状差の1次成分を補正するための第1指令値と、前記形状差の2次以上の成分を補正するための第2指令値との和で定まり、かつ、許容指令値範囲内の指令値であり、
前記決定工程では、前記型変形機構に与える前記第1指令値に基づいて前記第2指令値の調整範囲を決定し、決定された前記第2指令値の前記調整範囲に基づいて、前記第2指令値および前記第3指令値を決定する、
ことを特徴とするインプリント方法。
【請求項15】
前記決定工程では、前記型変形機構について、前記第1指令値と前記許容指令値範囲とに基づいて、前記第2指令値の前記調整範囲を決定することを特徴とする請求項10乃至14のいずれか1項に記載のインプリント方法。
【請求項16】
前記第1指令値は、前記許容指令値範囲に属する任意の値をとりうる、
ことを特徴とする請求項10乃至15のいずれか1項に記載のインプリント方法。
【請求項17】
前記1次成分は、倍率成分、回転成分、および、ひし形成分の少なくとも1つを含む、
ことを特徴とする請求項10乃至16のいずれか1項に記載のインプリント方法。
【請求項18】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のインプリント装置を用いて基板の上にパターンを形成する工程と、
前記工程において前記パターンが形成された基板の加工を行う工程と、
を含み、前記加工が行われた前記基板から物品を製造することを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、インプリント方法および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント装置では、基板のショット領域の上のインプリント材と型のパターン領域とを接触させ該インプリント材を硬化させることによって該インプリント材の硬化物からなるパターンが形成される。基板のショット領域と型のパターン領域との形状を一致させる技術として、型の側面に対して力を加えることによってパターン領域を変形させる技術がある(特許文献1)。パターン領域を変形させる変形機構は、型の側面に対して力を加える複数のアクチュエータを含みうる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2008-504141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板のショット領域と型のパターン領域との間の形状差は、倍率成分、回転成分、ひし形成分等の1次の成分と、2次以上の成分とを含みうる。変形機構の各アクチュエータに与える指令値は、1次の成分を補正するための第1指令値と、2次以上の成分を補正するための第2指令値との和で与えられうる。ここで、一例として、アクチュエータに与えることができる指令値の最大範囲の50%を第1指令値に割り当て、該最大範囲の残りの50%を第2指令値に割り当てることが考えられる。しかし、この場合、例えば、形状差から計算される第1指令値が最大範囲の70%となったような場合において、アクチュエータに与えることができる第1指令値が20%分不足するので、形状差を正しく補正することができない。つまり、形状差から計算される第1指令値が第1指令値に対して割り当てられた範囲を超える場合において、形状差を正しく補正することができない。
【0005】
本発明は、基板のショット領域と型のパターン領域との間の形状差の補正に有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの側面は、基板のショット領域と型のパターン領域とをインプリント材を介して接触させ前記インプリント材を硬化させることによって前記インプリント材パターンを形成するインプリント装置に係り、前記インプリント装置は、前記型に力を加えることによって前記型のパターン領域を変形させる型変形機構と、前記型変形機構を制御する制御部と、を備え、前記型変形機構は、前記ショット領域と前記パターン領域との形状差の1次成分を補正するための第1指令値と、前記形状差の2次以上の成分を補正するための第2指令値との和で定まる、許容指令値範囲内の指令値を与えるように制御され、前記制御部は、前記型変形機構に与える前記第1指令値に基づいて前記第2指令値の調整範囲を決定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、基板のショット領域と型のパターン領域との間の形状差の補正に有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態の実施形態のインプリント装置の構成を示す図。
図2】型変形機構の構成例を示す図。
図3】基板加熱部の構成例を示す図。
図4】型変形機構および基板加熱部に与える指令値を決定する処理の流れを示す図。
図5】2次以上の成分(k7以上の成分)を補正するために型変形機構に与えるべき第2指令値および基板加熱部に与えるべき第3指令値を決定する処理を例示的に説明するための図。
図6】基板の1つのショット領域を複数の要素領域に分割して該ショット領域の形状を制御する方法を例示的に説明するための図。
図7】インプリント装置の動作例を示す図。
図8】型変形機構のアクチュエータに与える指令値と型のある点の変位との関係におけるヒステリシスを説明するための図。
図9】代表的なアクチュエータの時系列における指令値の変化を例示する図。
図10】比較例における指令値の割り当て例を示す図。
図11】物品製造方法を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
図1には、一実施形態のインプリント装置1の構成が示されている。インプリント装置1は、基板10のショット領域の上のインプリント材14と型8のパターン領域8aとを接触させインプリント材14を硬化させることによってインプリント材14の硬化物からなるパターンを形成する。インプリント材としては、硬化用のエネルギーが与えられることにより硬化する硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。硬化用のエネルギーとしては、電磁波、熱等が用いられうる。電磁波は、例えば、その波長が10nm以上1mm以下の範囲から選択される光、例えば、赤外線、可視光線、紫外線などでありうる。硬化性組成物は、光の照射により、あるいは、加熱により硬化する組成物でありうる。これらのうち、光の照射により硬化する光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。インプリント材は、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板上に配置されうる。また、インプリント材は、スピンコーターやスリットコーターによって基板上に膜状に供給されてもよい。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下でありうる。基板の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられうる。必要に応じて、基板の表面に、基板とは別の材料からなる部材が設けられてもよい。基板は、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスである。
【0011】
本明細書および添付図面では、基板の表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系において方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転、Z軸周りの回転をそれぞれθX、θY、θZとする。X軸、Y軸、Z軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向に関する制御または駆動を意味する。また、θX軸、θY軸、θZ軸に関する制御または駆動は、それぞれX軸に平行な軸の周りの回転、Y軸に平行な軸の周りの回転、Z軸に平行な軸の周りの回転に関する制御または駆動を意味する。また、位置は、X軸、Y軸、Z軸の座標に基づいて特定されうる情報であり、姿勢は、θX軸、θY軸、θZ軸の値で特定されうる情報である。位置決めは、位置および/または姿勢を制御することを意味する。アライメント(位置合わせ)は、基板のショット領域と型のパターン領域とのアライメント誤差(重ね合わせ誤差)が低減されるように基板および型の少なくとも一方の位置および/または姿勢の制御を含みうる。また、アライメントは、基板のショット領域および型のパターン領域の少なくとも一方の形状を補正あるいは変更するための制御を含みうる。
【0012】
インプリント装置1は、半導体デバイス等の物品を製造するために使用されうる。ここでは、硬化エネルギーとして光を使用するように構成されたインプリント装置1について説明するが、前述のように、硬化エネルギーとして他のエネルギーを使用することもできる。インプリント装置1は、光照射部(硬化部)2と、型操作機構3と、基板操作機構4と、ディスペンサ(供給部)5と、型変形機構38と、基板加熱部43と、アライメント計測部6と、制御部7とを備えうる。光照射部2は、基板10のショット領域の上のインプリント材14と型8のパターン領域8aとが接触した状態で、インプリント材14を硬化させる硬化エネルギーとしての硬化光(例えば、紫外線)9をインプリント材14に照射する。これにより、インプリント材14が硬化され、インプリント材14の硬化物からなるパターンがショット領域の上に形成される。光照射部2は、例えば、光源と、該光源から放射された光を調整する光学素子とを含みうる。硬化光9は、例えば、ダイクロイックミラー37で反射され、型8を介して、基板10の上のインプリント材14に照射されうる。
【0013】
型8は、例えば、その外周形状が矩形であり、基板10に対向する面には、例えば回路パターンなどのパターンが形成されたパターン領域8aが設けられている。該パターンは、凹部で構成されうる。型8は、硬化光9を透過させることが可能な材質、例えば、石英で構成されうる。型8は、型変形機構38によるパターン領域8aの変形を容易とするために、パターン領域8aが設けられた面の反対側の面に、XY平面に平行な面における形状が円形で、かつ、Z軸方向にある程度の深さを有するキャビティを有しうる。
【0014】
型操作機構3は、型8を保持する型保持部11と、型保持部11を保持し、型8をZ軸方向に駆動する型駆動機構12とを含みうる。型保持部11は、型8における硬化光9の照射領域の外側の領域を真空吸引力または静電力等のチャッキング力によって引き付けることによって型8を保持しうる。例えば、型保持部11が真空吸引力によって型8を保持する場合には、型保持部11は、不図示の真空ポンプに接続ラインを介して接続され、該真空ポンプのON/OFF、または該接続ラインに設けられたバルブによって型8の脱着が切り替えられうる。
【0015】
また、型保持部11および型駆動機構12は、光照射部2から照射された硬化光9が基板10に向かうように、中心部(内側)に開口領域13を有しうる。開口領域13には、開口領域13の一部と型8とで囲まれる圧力制御空間を密閉空間とする光透過部材41(例えば石英板)が配置され、加圧源などを含む不図示の圧力調整装置により圧力制御空間の圧力が調整されうる。該圧力調整装置は、例えば、型8と基板10上のインプリント材14との押し付けに際して、圧力制御空間の圧力を外部空間よりも高く設定することで、パターン領域8aを基板10に向かい凸形にたわませることができる。これにより、インプリント材14に対してパターン領域8aとの接触をパターン領域8aの中心部から開始させることができる。これは、パターン領域8aとインプリント材14との間に気体が残留することを抑え、パターン領域8aの凹部に対するインプリント材14の充填を促進するために有利である。
【0016】
型駆動機構12は、基板10の上のインプリント材14に対して型8のパターン領域8aを接触させる動作、および、インプリント材14の硬化物からの型8を分離する動作を行うように型8をZ軸方向に駆動しうる。型駆動機構12は、型8を駆動するためのアクチュエータとして、例えば、ボイスコイルモータおよび/またはエアシリンダを含みうる。型8の高精度な位置決めに対応するために、型駆動機構12は、粗動駆動系および微動駆動系等の複数の駆動系で構成されてもよい。更に、型駆動機構12は、Z軸方向だけでなく、X軸方向、Y軸方向、θZ軸、θX軸およびθY軸の少なくとも1つに関しても型8を駆動してもよい。
【0017】
基板10の上のインプリント材14に対して型8のパターン領域8aを接触させる動作、および、インプリント材14の硬化物からの型8を分離する動作は、基板操作機構4によって基板10をZ軸方向に駆動することによって行われてもよい。あるいは、これらの動作は、型駆動機構12および基板操作機構4の双方によって行われてもよい。
【0018】
アライメント計測部6は、型8に設けられたマークと基板10に設けられたマークとの相対位置を計測するための処理を実行しうる。制御部7は、アライメント計測部6の出力に基づいて、型8のショット領域と基板10のパターン領域8aとの相対位置を特定しうる。一例において、アライメント計測部6から射出されるアライメント光35は、ダイクロイックミラー36で反射され、型8に設けられたマークおよび基板10に設けられたマークを照明する。これらのマークで反射されたアライメント光35は、アライメント計測部6の撮像素子の撮像面に光学像を形成し、この光学像が該撮像素子によって撮像されうる。アライメント計測部6は、撮像によって得られた画像データを制御部7に出力しうる。あるいは、アライメント計測部6は、撮像によって得られた画像データを処理して、型8に設けられたマークと基板10に設けられたマークとの相対位置を検出し、その結果を制御部7に出力してもよい。
【0019】
基板10は、例えば、シリコン基板等の基板である。基板操作機構4は、基板10を保持する基板保持部16と、基板保持部16を駆動することによって基板10を駆動する基板駆動機構17とを含みうる。基板保持部16は、例えば、真空吸着力または静電力等のチャッキング力によって基板10を保持しうる。基板駆動機構17は、例えば、基板保持部16をX方向およびY方向に関して駆動しうる。基板駆動機構17は、基板保持部16を駆動するアクチュエータとして、リニアモータまたは平面パルスモータ等を含みうる。基板駆動機構17は、粗動駆動系および微動駆動系等の複数の駆動系で構成されてもよい。更に、基板駆動機構17は、Z軸方向、θZ軸、θX軸およびθY軸の少なくとも1つに関しても基板10を駆動してもよい。また、基板保持部16には、基板保持部16の位置および姿勢を計測するための参照ミラー18が設けられ、インプリント装置1には、参照ミラー18を利用して基板保持部16の位置および姿勢を計測するためのレーザー干渉計19が設けられうる。あるいは、インプリント装置1には、基板保持部16の位置および姿勢を計測するために、エンコーダスケールとそれを読み取る読取部とを有するエンコーダが備えられてもよい。制御部7は、計測された基板保持部16の位置および姿勢に基づいて基板駆動機構17を制御しうる。
【0020】
ディスペンサ5は、例えば、型操作機構3の周辺に配置されうる。ディスペンサ5は、基板10のショット領域の上にインプリント材14を供給あるいは配置しうる。ショット領域の上に供給されるインプリント材14の量は、例えば、基板10の上にインプリント材14で形成すべきパターンの厚さ、パターンの密度等に応じて決定されうる。
【0021】
制御部7は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Arrayの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)、又は、プログラムが組み込まれた汎用又は専用のコンピュータ、又は、これらの全部または一部の組み合わせによって構成されうる。制御部7は、インプリント装置1の構成要素、例えば、光照射部2、型操作機構3、基板操作機構4、ディスペンサ5、型変形機構38、基板加熱部43およびアライメント計測部6を制御しうる。
【0022】
インプリント装置1は、更に、基板操作機構4を支持するベース定盤27、型操作機構3を支持するブリッジ定盤28、ベース定盤27から延設され除振器29を介してブリッジ定盤28を支持する支柱30を備えうる。除振器29は、床面からブリッジ定盤28へ伝わる振動を除去する。更に、インプリント装置1は、型8を型保持部11へ搬送する型搬送機構、および、基板10を基板操作機構4へ搬送する基板搬送機構などを含みうる。
【0023】
図2には、型変形機構38の構成例が示されている。型変形機構38は、型8の側面に力を加え、型8のパターン領域8aの形状を制御する複数のアクチュエータ60を含みうる。型8は、マーク24を有し、マーク24は、典型的にはパターン領域8aに配置されうる。アクチュエータ60は、例えば、型8に対して、型8を押す方向に型8に対して力を加えることはできるが、型8を引っ張る方向に型8に対して力を加えることができない構成を有しうる。この場合、型8のパターン領域8aを理想寸法よりも数ppm程度大きい寸法で作成しておき、パターン領域8aを一定の比率で縮小させることによって理想寸法にすることができる。これにより、パターン領域8aを理想寸法に対して収縮させたり、膨張させたりすることができ、その結果、パターン領域8aの形状を任意の形状に補正することができる。
【0024】
図3には、基板加熱部43の構成例が示されている。基板加熱部43は、例えば、熱源として、レーザー光源32を有しうる。レーザー光源32から発せられるレーザー光64は、インプリント材14を硬化させず、型8および基板10を透過する波長域の光であり、例えば、可視光または赤外光でありうる。レーザー光源32から発せられたレーザー光64は、光学素子63aにより面内照度が均一化され、光変調素子62に照射されうる。光変調素子62は、例えば、デジタルマイクロミラーデバイスでありうる。光変調素子62に照射されたレーザー光64は、光変調素子62によって任意の照度分布が与えられる。光変調素子62で任意の照度分布を与えられたレーザー光64は、光学素子63bによってレーザー光64の照射面における倍率が調整され、ダイクロイックミラー37へ照射される。その後、レーザー光64は、型8および基板10を透過し、基板10に照射され基板10によって吸収される。レーザー光64が照射される基板10の面には、レーザー光64を吸収しやすい膜が設けられてもよい。
【0025】
続いて、型変形機構38および基板加熱部43を用いて型8のパターン領域8aと基板10のショット領域との間の形状差を低減し、重ね合わせ精度を高める方法に関して説明する。このような形状差は、倍率成分、ひし形成分などの1次関数で近似可能な1次の成分(線形成分)と、2次以上の関数で近似可能な2次以上の成分(高次成分)とを含む。
【0026】
例えば、X方向、Y方向における形状差T、Tを表す関数は、座標(x、y)の関数として、例えば、式(1)、式(2)で与えられうる。
【0027】
=k+kx-ky+k+kxy+k11 ・・・式(1)
=k+ky+kx+k+k10xy+k12 ・・・式(2)
ここで、k、kはシフト成分であり、基板操作機構4および/または型操作機構3によって基板10と型8とのアライメントを行うことによってシフト成分k、kを0にすることができる。k、k、k、kは1次の成分であり、k、kは倍率成分、k、kは回転成分、ひし形成分である。k以上は2次以上の成分(高次成分)である。基板10のショット領域と型8のパターン領域8aとの間の形状差は、ショット領域のパターンとパターン領域8aのパターンとの重ね合わせ誤差をもたらしうる。該形状差は、基板10に設けられたマークと型8に設けられたマークとの相対位置をアライメント計測部6を用いて計測することによって特定されうる。あるいは、該形状差は、インプリント装置1の外部装置を用いて計測されてもよい。
【0028】
制御部7は、該形状差を近似するように式(1)、式(2)の係数を決定する。1次の成分(k、k、k、k)の補正は、型変形機構38に第1指令値21を与えることで補正し、2次以上の成分(k、k、k、k10、k11、k12・・・)の補正は、型変形機構38に第2指令値22を与えることで補正することができる。2次以上の成分は、更に、基板加熱部43に第3指令値23を与えることによって補正されてもよい。型変形機構38には、第1指令値21と第2指令値22との和が指令値として与えられうる。
【0029】
以下、形状差T、Tに応じて型変形機構38に与える第1指令値21、第2指令値22および基板加熱部43に与える第3指令値23を決定する方法を例示的に説明する。式(3)、式(4)は、複数のアクチュエータ60に与えられる指令値c_Act~c_Actに従って型変形機構38によって変形された型8aの評価点mにおけるX方向変形量dx_M~dx_M、Y方向変形量dy_M~dy_Mを示す。行列aは、アクチュエータ60に与えられる指令値c_Act~c_Actから、型8のパターン8aの評価点mにおけるX軸方向の変形量dx_M~dx_M、Y軸方向の変形量dy_M~dy_Mを計算するための変換行列である。この例では、型8のターン領域8aの変形をm点の評価点で評価される。
【0030】
【数3】
・・・式(3)
【0031】
【数4】
・・・式(4)
【0032】
式(5)、式(6)は、基板加熱部43が基板10に与える熱量c_Heat~c_Heatによって変形した基板10のショット領域の評価点mにおけるX方向変形量dx_W~dx_W、Y方向変形量dy_W~dy_Wを示す。行列bは、熱量c_Heat~c_Heatによるショット領域の評価点mにおける変形量を計算するための変換行列である。
【0033】
【数5】
・・・式(5)
【数6】
・・・式(6)
【0034】
型変形機構38および基板加熱部43による補正量は、式(7)、式(8)で与えられるdX、dYである。
【0035】
【数7】
・・・式(7)
【数8】
・・・式(8)
【0036】
式(9)における補正したい形状差T、Tと補正量dX、dYとの差分ε、εが最小となる補正量dX、dYを求めることで、型変形機構38に与える第1指令値21、第2指令値22と基板加熱部43に与える第3指令値23を決定することができる。具体的には、最小自乗法などを使用することで、第1指令値21、第2指令値22および第3指令値23を決定することができる。
【0037】
【数9】
・・・式(9)
【0038】
以下、第1指令値21、第2指令値22および第3指令値23の決定に関する比較例を説明する。比較例では、2次以上の成分を補正するために最初に第2指令値22と第3指令値23が決められる。比較例では、その後、インプリント処理中にアライメント計測部6を使って計測される結果からショット領域とパターン領域との形状差に含まれる倍率、平行四辺形などの1次の成分が決定され、インプリント処理の度に補正量が決定され、補正が行われる。従って、比較例では、2次以上の成分を補正するための第2指令値22を維持した状態で、第1指令値21をインプリント処理ごとに変化させる必要がある。また、比較例では、第1指令値21と第2指令値22との和がアクチュエータ60に対する指令値の限界値を超えないように制約が加えられる。
【0039】
アクチュエータ60に与えられる指令値が限界値に達すると、型8を四方から押圧する力のバランスが崩れ、型保持部11によって保持されている型8が位置ずれを起こしうる。アクチュエータ60に与えられる指令値が限界値を超えないように、第1指令値21および第2指令値22には、制約として、アクチュエータ60に与えることができる指令値の範囲(以下、許容指令値範囲)の例えば半分ずつが割り当てられうる。図10に例を示す。図10の例では、アクチュエータ60の許容指令値範囲の最小値(0%)~最大値(100%)の25~75%が、2次以上の成分の補正のために、第2指令値22に割り当てられる。また、アクチュエータ60の許容指令値範囲最小値~最大値の0~25%、75~100%が、1次の成分の補正のために第1指令値21に割り当てられる。これは、アクチュエータ60の許容指令値範囲の50%を中心に考えると、第2指令値22のレンジは-25%~+25%であり、第1指令値21のレンジも同様に-25%~+25%であることを意味する。こうすることで、アクチュエータ60に与えられる指令値が許容指令値範囲の限界値を超えることなく、運用することができる。しかしながら、第1指令値21および第2指令値22の使用範囲を明確に分けてしまうと、例えば、第1指令値21に余裕があっても、第2指令値22に分け与えることができない。
【0040】
以下で説明される本実施形態は、比較例における上記の課題を解決するために、アクチュエータ60が発生可能な力を有効に第1指令値21および第2指令値22に分配し、重ね合わせ精度を向上させる。
【0041】
図4には、型変形機構38および基板加熱部43に与える指令値を決定する処理の流れが示されている。この処理は、制御部7によって実行される。まず、ステップS201では、制御部7は、アライメント計測部6を用いて基板10のショット領域と型8のパターン領域8aとの形状差を計測し、この形状差における、倍率成分、ひし形成分等の1次の成分を決定する。そして、制御部7は、該1次の成分を補正するために型変形機構38のアクチュエータ60に与えるべき第1指令値21を複数のアクチュエータ60の各々について決定する。ここで、アライメント計測部6を用いてなされる基板10のショット領域と型8のパターン領域8aとの形状差の計測は、ショット領域の上のインプリント材14と型8のパターン領域8aとが接触した状態においてなされうる。型変形機構38にあたえるべき第1指令値21は、式(7)、式(8)から式(5)、式(6)を除いたものに対して、式(9)の差分ε、εが最小となる補正量dX、dYを決定することによって決定されうる。
【0042】
ステップS201において、制御部7は、型変形機構38の複数のアクチュエータ60の各々許容指令値範囲に収まるように各アクチュエータ60に与える第1指令値21を決定する。制御部7によって決定される第1指令値21は、許容指令値範囲に属する任意の値(許容指令値範囲に属するあらゆる値)をとりうる。
【0043】
次に、図5(a)~(d)を参照しながら、2次以上の成分(k7以上の成分)を補正するために型変形機構38に与えるべき第2指令値および基板加熱部43に与えるべき第3指令値を決定する処理(ステップS202、S203)を例示的に説明する。例えば、図5(a)中に示す縦軸の指令値100%が各アクチュエータ60の許容指令値範囲の限界値(上限値)である。この限界値を超える指令値をアクチュエータ60に与えることができないので(あるいは、与えても意味がないので)、限界値以下で第2指令値22を決定する必要がある。
【0044】
ここで、実際のデバイス製造においては、基板10の複数のショット領域の形状(あるいは、複数のショット領域の形状とパターン領域8aとの形状差)の1次の成分に、ばらつきが存在しうる。よって、第1指令値と第2指令値との合計が許容指令値範囲に収まる任意の指令値になるようにプロセスを調整したとすると、1次の成分にばらつきが生じた場合に、第1指令値および第2指令値との合計値を許容指令値範囲に収めることができない可能性がある。
【0045】
そこで、1次の成分のばらつきに対応にするために、図5(b)に示される第1指令値21を小さい方向に調整するための第1マージン(指令値=0~5%)と第1指令値21を大きい方向に調整するための第2マージン(指令値=95~100%)が設けられうる。もちろん、プロセスが安定している場合には、マージンを小さくすることができ、究極的には0にすることができる。
【0046】
ステップS202では、制御部7は、許容指令値範囲から第1マージンおよび第2マージンを除いた残存調整範囲と、第1指令値21とに基づいて、第2指令値22の調整範囲を決定する。ここで、第1マージンおよび第2マージンが0である場合は、残存調整範囲は許容調整範囲と一致し、第1マージンおよび第2マージンが0でない場合は、残存調整範囲は許容調整範囲より狭い範囲となる。例えば、図5(b)の例では、No.1のアクチュエータ60については、第1指令値21は55%であるので、制御部7は、第2指令値22の調整範囲を+40%~-50%の範囲に決定する。換言すると、制御部7は、第1指令値21と第2指令値22との合計が残存調整範囲(5~95%の範囲)に収まるように、第2指令値22の調整範囲を決定する。同様に、No.2のアクチュエータ60については、第1指令値21が50%であるので、制御部7は、第2指令値22の調整範囲を+45%~-45%の範囲に決定する。換言すると、制御部7は、第1指令値21と第2指令値22との合計が残存調整範囲(5~95%の範囲)に収まるように、第2指令値22の調整範囲を決定する。
【0047】
図5(d)には、理解を深めるための極端な例が示されている。図5(d)の例では、全てのアクチュエータ60について、第1指令値21として95%が決定されている。この場合、第2指令値22は、全てのアクチュエータ60について、+0%から-90%の調整範囲で決定することができる。比較例では、第1指令値21および第2指令値23の使用範囲が予め決められているが、本実施形態では、第1指令値21に応じて第2指令値23の使用範囲が決定されるので、アクチュエータ60を効率良く使用することができる。
【0048】
ステップS203では、制御部7は、複数のアクチュエータ60について、第2指令値22の調整範囲を式(3)、式(4)のc_Act~c_Actの制約事項とし、式(9)の補正量dX、dYを計算することで第2指令値22と第3指令値23を決定する。図5(c)には、このようにして各アクチュエータ60について決定される第1指令値21および第2指令値22が例示されている。前述のように、第1マージンおよび第2マージンが0である場合は、残存調整範囲は許容調整範囲と一致し、第1マージンおよび第2マージンが0でない場合は、残存調整範囲は許容調整範囲より狭い範囲となる。したがって、制御部7は、第1指令値21と第2指令値22との合計が許容指令値範囲または該許容指令値範囲より狭い範囲に収まるように第2指令値22を決定すると言える。
【0049】
ステップS201、S202、S203は、インプリント装置1において基板10の各ショット領域SRに対するインプリント処理を実行する際にアライメント計測部6を使用して得られるショット領域SRとパターン領域8aとの形状差に基づいて実行されうる。あるいは、ステップS201で決定された第1指令値に従って型変形機構38を制御しながらインプリント処理を実行して得られた結果物を評価し、その結果に基づいてステップS202、S203を実行し、第2指令値および第3指令値を決定してもよい。
【0050】
図6を参照しながら第3指令値23について説明する。図6に例示されるように、基板10のショット領域SRは、複数の要素領域に分割され、要素領域ごとに、加熱量を指令する指令値として、第3指令値23が決定される。図6では説明を簡略化するために、ショット領域SRは、X方向に5分割、Y方向に6分割されている。分割領域は、必要とされる重ね合わせ精度などに応じて決定されうる。
【0051】
図7には、インプリント装置1の動作が例示されている。この動作は、制御部7によって制御される。以下では、図7を参照しながら2つの動作例を説明する。
【0052】
まず、第1動作例を説明する。第1動作例では、アライメント工程において制御部7によって第1指令値、第2指令値および第3指令値が決定される。まず、工程S101において、基板10が基板保持部16にロードされる。次いで、工程S102において、基板10のショット領域にディスペンサ5によってインプリント材14が供給される。次いで、工程S103では、ショット領域の上のインプリント材14と型8のパターン領域8aとが接触するように、型駆動機構12によって型8が下方に駆動される。次いで、工程S104では、アライメント計測部6を使って基板10のマークと型8のマークとの相対位置を計測し、この計測の結果に基づいてショット領域とパターン領域8aとがアライメントされる。このアライメントにおいては、ショット領域とパターン領域8aとの形状差が低減するための第1指令値、第2指令値および第3指令値が決定され、これに従って型変形機構38および基板加熱部43が制御され、該形状差が低減される。
【0053】
次いで、工程S105では、光照射部2によってショット領域と型8のパターン領域8aとの間のインプリント材14に硬化光が照射され、インプリント材14が硬化される。これにより、インプリント材14の硬化物からなるパターンがショット領域に形成される。次いで、工程S106では、ショット領域の上のインプリント材14の硬化物と型8のパターン領域8aとが分離されるように、型駆動機構12によって型8が上方に駆動される。工程S107では、次のショット領域(処理すべき他のショット領域)があるかどうかが判断され、次のショット領域がある場合には、工程S102に戻り、次のショット領域に対して上記と同様の処理がなされる。一方、次のショット領域がない場合には、工程S108に進み、基板10が基板保持部16からアンロードされる。
【0054】
次に、第2動作例を説明する。第2動作例では、アライメント工程S104において第1指令値が決定され、第2指令値および第3指令値を0としてアライメントがなされ、その後、硬化工程S105および分離工程S106が行われる。そして、このようにしてショット領域に形成されたパターンがアライメント計測部6又は外部装置によって計測された結果に基づいて第2指令値および第3指令値が決定される。これにより、第1指令値、第2指令値および第3指令値が決定され、その後、他の基板について、図7に示された動作が実行されうる。この際、アライメント工程S104では、1次の成分のばらつきの影響を受けうる第1指令値のみが決定され、第2指令値および第3指令値については、既に決定された第2指令値および第3指令値が使用されうる。あるいは、1次の成分のばらつきが小さい場合には、アライメント工程S104では、第1指令値、第2指令値および第3指令値として、既に決定された第1指令値、第2指令値および第3指令値が使用されうる。
【0055】
以下、上記の実施形態の変形例を説明する。変形例として言及しない事項は、徐行きの実施形態に従いうる。変形例では、型保持部11は、型8を真空吸引によって保持する。そのため、型変形機構38のアクチュエータ60によって型8を変形させる際には、型8と型保持部11との接触面で摩擦が生じる。図8には、型8のある点の変位(変形量)が例示されている。図8において、横軸は、アクチュエータ60に対する指令値であり、縦軸は、型8のある点の変位を示している。摩擦がない場合、指令値と変位の関係は比例し、指令値を増減させると変位は直線的に変化する(図8中の点線)。しかしながら、摩擦がある場合、指令値と変位との関係にヒステリシスが発生し、指令値を増加させた場合と減少させた場合で、変位の軌跡が異なる。
【0056】
この変形例は、型8と型保持部11の接触面との間で生じる摩擦によって生じうる重ね合わせ誤差を低減させる技術を提供する。アクチュエータ60に対する指令値と型8のパターン領域8aとの変形量との関係にヒステリシスが生じると、型変形機構38による形状補正が正しく行われず、パターン8aと基板10のショット領域SRとの重ね合わせ誤差が大きくなりうる。そこで、型変形機構38によって型8のパターン8aの形状を基板10のショット領域SRの形状にならわせる際には、アクチュエータ60に対する指令値を増加させる方向、もしくは減少させる方向のどちらかに統一する。これにより、上記のヒステリシスによる誤差を防ぐことができる。
【0057】
図9には、代表的なアクチュエータ60の時系列における指令値の変化が例示されている。横軸は時間、縦軸はアクチュエータ60に対する指令値を示す。図7のアライメント工程に先立って、例えば、工程S102と並行して、型変形機構38の全てのアクチュエータ60に対して最大指令値を与えて、型8の側面を最大の力で押圧する。図9の第1区間161が、これに相当する。第2区間162において、制御部7から型変形機構38に対して第1指令値21と第2指令値22との合計値が指令値として送られ、アクチュエータ60が駆動される。第3区間163では、アライメント計測部6によってショット領域SRとパターン8aとの形状差の1次の成分が計測される。この結果に基づいて制御部7が第1指令値21を更新し、第1指令値21と第2指令値22との合計値としての指令値も更新し、アクチュエータ60に送る。第2区間162および第3区間163は、アライメント工程S104に相当する。第4区間164では、基板10のショット領域SRと型8のパターン領域8aとのアライメントが終了し、インプリント材14が硬化される。第5区間165では、硬化したインプリント材14から型8が分離される。第4区間164、第5区間165は、硬化工程S105、分離工程S106に相当する。
【0058】
上記の例では、第2区間162および第3区間163においてアクチュエータ60に対する指令値を減少させる方向で、パターン領域8aの形状を基板10のショット領域SRに応じて補正した。その逆に、第2区間162および第3区間163においてアクチュエータ60の指令値を増加させる方向で、パターン領域8aの形状を基板10のショット領域SRに応じて補正してもよい。
【0059】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【0060】
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0061】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0062】
次に、インプリント装置によって基板にパターンを形成し、該パターンが形成された基板を処理し、該処理が行われた基板から物品を製造する物品製造方法について説明する。図11(a)に示すように、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコンウエハ等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0063】
図11(b)に示すように、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。図11(c)に示すように、インプリント材3zが付与された基板1と型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0064】
図11(d)に示すように、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0065】
図11(e)に示すように、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図11(f)に示すように、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11