(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-04
(45)【発行日】2024-04-12
(54)【発明の名称】空気調和システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/79 20180101AFI20240405BHJP
F24F 11/61 20180101ALI20240405BHJP
【FI】
F24F11/79
F24F11/61
(21)【出願番号】P 2023510081
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2021014007
(87)【国際公開番号】W WO2022208802
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 正樹
【審査官】町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-329393(JP,A)
【文献】特開平05-180502(JP,A)
【文献】特開平03-007821(JP,A)
【文献】特開2008-002775(JP,A)
【文献】特開2018-080905(JP,A)
【文献】実開平06-059726(JP,U)
【文献】特開2006-064258(JP,A)
【文献】特開平08-061751(JP,A)
【文献】特開2013-195047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/79
F24F 11/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の室内のペリメータゾーンの空気を調和するための第1の空気調和機と、
前記室内のインテリアゾーンの空気を調和するための第2の空気調和機と、
前記ペリメータゾーンの床面に送られた空気を吸い込み、当該空気を前記インテリアゾーンに向けて吹き出すように構成された第1の送風部と、
前記インテリアゾーンの天井に送られた空気を吸い込み、当該空気を前記ペリメータゾーンに向けて吹き出すように構成された第2の送風部と、
コントローラとを備え、
前記コントローラは、前記第1の空気調和機が暖房運転時であり、かつ、前記第2の空気調和機が冷房運転時であるときに、前記第1の送風部および前記第2の送風部を駆動する
ように構成され、
前記建物の外壁に設置され、開状態において前記ペリメータゾーンに外気を導入するように構成された開閉部材をさらに備え、
前記コントローラは、前記第1の空気調和機および前記第2の空気調和機の運転停止中であって、前記開閉部材が開状態であるときに、前記第1の送風部および前記第2の送風部を駆動する、空気調和システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記第1の空気調和機および前記第2の空気調和機の運転停止中の所定の時間帯において、当該所定の時間帯の気象が予め定めた気象条件を満たしたときに、前記開閉部材を開放する、請求項
1に記載の空気調和システム。
【請求項3】
前記インテリアゾーンの前記床面には、床下の第1の空間に連通する第1の吹出口が形成され、
前記ペリメータゾーンの前記床面には、前記第1の空間に連通する第1の吸込口が形成され、
前記インテリアゾーンの前記天井には、天井裏の第2の空間に連通する第2の吸込口が形成され、
前記ペリメータゾーンの前記天井には、前記第2の空間に連通する第2の吹出口が形成され、
前記第1の送風部は、
前記第1の空間に設置され、前記床面に送られた空気を前記第1の吸込口から前記第1の空間に吸い込む第1のファンと、
前記第1の空間に設置され、前記第1の空間の空気を前記第1の吹出口から前記インテリアゾーンに向けて吹き出す第2のファンとを含み、
前記第2の送風部は、
前記第2の空間に設置され、前記天井に送られた空気を前記第2の吸込口から前記第2の空間に吸い込む第3のファンと、
前記第2の空間に設置され、前記第2の空間の空気を前記第2の吹出口から前記ペリメータゾーンに向けて吹き出す第4のファンとを含む、請求項1
または2に記載の空気調和システム。
【請求項4】
前記第1から第4のファンの少なくとも1つは、横断流送風機である、請求項
3に記載の空気調和システム。
【請求項5】
前記インテリアゾーンの前記床面には、床下の第1の空間に連通する第1の吹出口が形成され、
前記ペリメータゾーンの前記床面には、前記第1の空間に連通する第1の吸込口が形成され、
前記第1の送風部は、
前記第1の空間に設置され、前記床面に送られた空気を前記第1の吸込口から前記第1の空間に吸い込む第1のファンと、
前記第1の空間に設置され、前記第1の空間の空気を前記第1の吹出口から前記インテリアゾーンに向けて吹き出す第2のファンとを含み、
前記第2の送風部は、前記インテリアゾーンの前記天井に設置され、前記天井に送られた空気を吸い込み、当該空気を前記ペリメータゾーンに向けて吹き出す第3のファンを含む、請求項1
または2に記載の空気調和システム。
【請求項6】
前記インテリアゾーンの前記床面には、床下の第1の空間に連通する第1の吹出口が形成され、
前記ペリメータゾーンの前記床面には、前記第1の空間に連通する第1の吸込口が形成され、
前記インテリアゾーンの前記天井には、天井裏の第2の空間に連通する第2の吸込口が形成され、
前記ペリメータゾーンの前記天井には、前記第2の空間に連通する第2の吹出口が形成され、
前記第1の送風部は、前記第1の空間に設置され、前記床面に送られた空気を前記第1の吸込口から前記第1の空間に吸い込み、前記第1の空間の空気を前記第1の吹出口から前記インテリアゾーンに向けて吹き出す第1のファンを含み、
前記第2の送風部は、前記第2の空間に設置され、前記天井に送られた空気を前記第2の吸込口から前記第2の空間に吸い込み、前記第2の空間の空気を前記第2の吹出口から前記ペリメータゾーンに向けて吹き出す第2のファンを含む、請求項1
または2に記載の空気調和システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気調和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、特開2013-36719号公報(特許文献1)には、窓辺のペリメータゾーンにおいてコールドドラフト対策が施された空気調和システムが開示される。特許文献1に記載の空調システムは、ペリメータゾーンの床面に設けられたスリット吸い込み口と、床面下部の床下チャンバに吸い込み口を有する第1ダクトと、インテリアゾーンの天井上部の天井チャンバに設けられた空気調和機に対する吹き出し口を有する第2ダクトと、第1ダクトから第2ダクトに向けた送風を行うファンとを有している。
【0003】
上記空調システムは、ファンを駆動することにより、第1ダクトの吸い込み口から吸い込まれたコールドラフトの気流を第2ダクトに送るとともに、第2ダクトの吹き出し口からインテリアゾーン相当位置に配置されている冷房運転中の空気調和機に対して吹き付けるように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した空気調和システムにおいては、ペリメータゾーンの空気と、インテリアゾーンの空気とを異なる空気調和機を用いて調和することが行われる場合がある。例えば、冬期においては、ペリメータゾーン用の空気調和機を暖房することによってペリメータゾーンを暖める一方で、インテリアゾーン用の空気調和機を冷房運転することによってインテリアゾーンを冷やすことが行われる。
【0006】
このように室内にて暖房運転と冷房運転とを同時に行うと、暖房負荷と冷房負荷とが共に増加する室内混合損失が発生する場合がある。室内混合損失はミキシングロスとも称される。したがって、ミキシングロスを低減するための対策が必要となる。
【0007】
しかしながら、特許文献1のように、コールドラフトの気流をダクトを経由して冷房運転中の空気調和機に吹き付ける構成を採用した場合には、専用のダクトの設置とともに、当該ダクト内に気流を生じさせるためのダクトファンの設置が必要となる。この場合、ダクトおよびダクトファンの設置に関する制約が生じることが懸念される。また、ダクトおよびダクトファンの設置コストの増大、および、ダクトファンの駆動に伴う空気調和システムの消費電力の増大が懸念される。そのため、ミキシングロスを低減するための対策において費用対効果を得ることが難しくなる虞がある。
【0008】
本開示は上記のような課題を解決するためになされたものであって、本開示の目的は、費用対効果の高い構成でミキシングロスを低減することができる空気調和システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様に係る空気調和システムは、建物の室内のペリメータゾーンの空気を調和するための第1の空気調和機と、室内のインテリアゾーンの空気を調和するための第2の空気調和機と、第1の送風部と、第2の送風部と、コントローラとを備える。第1の送風部は、ペリメータゾーンの床面に送られた空気を吸い込み、当該空気をインテリアゾーンに向けて吹き出すように構成される。第2の送風部は、インテリアゾーンの天井に送られた空気を吸い込み、当該空気をペリメータゾーンに向けて吹き出すように構成される。コントローラは、第1の空気調和機が暖房運転時であり、かつ、第2の空気調和機が冷房運転時であるときに、第1の送風部および第2の送風部を駆動する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、費用対効果の高い構成でミキシングロスを低減することができる空気調和システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1に示されるII-II線における断面図である。
【
図3】
図1に示されるIII-III線における断面図である。
【
図4】コントローラのハードウェア構成の一例を示す模式図である。
【
図5】コントローラの機能構成の一例を示す図である。
【
図6】コントローラにおけるファンの制御を説明するためのフローチャートである。
【
図7】実施の形態2に係る空気調和システムの概略構成を示す図である。
【
図8】コントローラの機能構成の一例を示す図である。
【
図9】コントローラにおける開閉窓およびファンの制御を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0013】
[実施の形態1]
<空気調和システムの構成>
最初に、
図1から
図3を参照して、実施の形態1に係る空気調和システムの概略構成について説明する。実施の形態1に係る空気調和システムは、建物900の室内940の空気を調和するための空気調和システムに適用される。
【0014】
図1は、建物900の室内940を天井から見た平面図である。
図2は、
図1に示されるII-II線における断面図である。
図3は、
図1に示されるIII-III線における断面図である。
【0015】
図1から
図3に示すように、建物900の室内940は、ペリメータゾーン941と、インテリアゾーン942とに概念上区分される。ペリメータゾーン941とインテリアゾーン942とは隣接している。本例では、仮想線Lよりも建物900の外壁901側(または窓902側)がペリメータゾーン941である。仮想線Lよりも建物900の中央側がインテリアゾーン942である。なお、「ペリメータゾーン」は、典型的には、窓902から5m付近までのエリアとされている。ただし、ペリメータゾーンは建物900の構造等によって決定されるため、窓902からの距離は5mに限定されるものではない。
【0016】
ペリメータゾーン941には、ペリメータゾーン941の空気を調和するための空気調和機501が設置されている。空気調和機501は「第1の空気調和機」の一実施例に対応する。
【0017】
図2に示すように、空気調和機501は、例えば、窓902側付近の床面970に設置されている。空気調和機501(本例では室内機)は、床面970付近の空気を吸込口510から吸い込み、吹出口530から空気調和機501の上方に空気を吹き出す。
【0018】
天井裏960には、インテリアゾーン942の空気を調和するための空気調和機601が設置されている。空気調和機601は「第2の空気調和機」の一実施例に対応する。なお、天井裏960とは、天井950を設けることによって形成された空間である。天井裏960は「第2の空間」に対応する。
【0019】
空気調和機601は、天井裏960のうちインテリアゾーン942の上方の空間に空気調和機601が設置されている。インテリアゾーン942における天井950には、吸込口610と、ダクト620と、吹出口630とが設けられている。吸込口610は、吹出口630よりも窓902側に設けられている。
【0020】
空気調和機601(本例では室内機)は、吸込口610から空気を吸い込み、かつ、吹出口630から空気を吹き出す。詳細には、吸込口610から吸い込まれた空気はダクト620を通り、空気調和機601に吸い込まれる。空気調和機601から吹き出された空気は、ダクト620を通り、吹出口630からインテリアゾーン942に吹き出される。
【0021】
実施の形態1に係る空気調和システムは、上述した空気調和機501,601と、温度センサ120,130と、コントローラ110と、ファン210,220,230,240とを備える。
【0022】
温度センサ120は、ペリメータゾーン941の温度を検出し、その検出値を示す信号をコントローラ110に出力する。
図2の例では、温度センサ120は、ペリメータゾーン941のうち、空気調和機501の吹出口530付近の温度を検出する。温度センサ120を空気調和機501の吹出口530付近に設置することにより、コントローラ110は、空気調和機501が暖房運転しているか否かを精度良く判定することができる。ただし、温度センサ120の設置位置は、空気調和機501の吹出口530に限定されるものではない。
【0023】
温度センサ130は、インテリアゾーン942の温度を検出し、その検出値を示す信号をコントローラ110に出力する。
図2の例では、温度センサ130は、空気調和機601の吹出口630付近に設置得されている。温度センサ130は、インテリアゾーン942のうち、空気調和機601の吹出口630付近の温度を検出する。温度センサ130を空気調和機601の吹出口630付近に設置することにより、コントローラ110は、空気調和機601が冷房運転しているか否かを精度良く判定することができる。ただし、温度センサ130の設置位置は、吹出口630付近に限定されるものではない。
【0024】
図3に示すように、ペリメータゾーン941の床面970には、床下980に連通する吸込口270が設けられている。床下980とは、床面970を設けることによって形成された空間である。床下980は「第1の空間」に対応し、吸込口270は「第1の吸込口」に対応する。
【0025】
インテリアゾーン942の床面970には、床下980に連通する吹出口280が設けられている。吹出口280は「第1の吹出口」に対応する。
【0026】
インテリアゾーン942の天井950には、天井裏960に連通する吸込口260が設けられている。吸込口260は「第2の吸込口」に対応する。
【0027】
ペリメータゾーン941の天井950には、天井裏960に連通する吹出口250が設けられている。吹出口250は「第2の吹出口」に対応する。
【0028】
ファン230は、床下980に設置され、ペリメータゾーン941の床面970に送られた空気を吸込口270から吸い込み、床下980に吹き出すように構成される。ファン230は「第1のファン」の一実施例に対応する。ファン230には、例えば、横断流送風機を適用することができる。横断流送風機は、内蔵する羽根車の回転軸に垂直な方向に2次元の空気流を形成することができる。横断流送風機は、例えば、ラインフローファン(登録商標)、クロスフローファン、横流ファンまたは貫流ファンなどである。ファン230は、インテリアゾーン942側に向けて2次元の空気流を吹き出すように配置される。
【0029】
ファン240は、床下980に設置され、床下980の空気を吸い込み、吹出口280からインテリアゾーン942に吹き出すように構成される。ファン240は「第2のファン」の一実施例に対応する。ファン240には、例えば、横断流送風機を適用することができる。ファン240は、インテリアゾーン942に向けて2次元の空気流を吹き出すように配置される。
【0030】
ファン220は、天井裏960に設置され、インテリアゾーン942の天井950に送られた空気を吸込口260から吸い込み、天井裏960に吹き出すように構成される。ファン220は「第3のファン」の一実施例に対応する。ファン220には、例えば、横断流送風機を適用することができる。ファン220は、ペリメータゾーン941側に向けて2次元の空気流を吹き出すように配置される。
【0031】
ファン210は、天井裏960に設置され、天井裏960の空気を吸い込み、吹出口250からペリメータゾーン941に吹き出すように構成される。ファン210は「第4のファン」の一実施例に対応する。ファン210には、例えば、横断流送風機を適用することができる。ファン240は、ペリメータゾーン941に向けて2次元の空気流を吹き出すように配置される。
【0032】
なお、
図3の例では、ファン210~240の各々に横断流送風機(例えばラインフローファン)を適用する構成としたが、ファン210~240の少なくとも1つに横断流送風機を適用する構成としてもよい。ただし、ラインフローファンに代表される横断流送風機は、プロペラファン等の軸流送風機と比較して、風量が少ない反面、消費電力が小さいという特徴を有している。したがって、ファン210~240の各々に横断流送風機を適用することにより、省電力で、ペリメータゾーン941とインテリアゾーン942との間に空気流を形成することができる。
【0033】
コントローラ110は、温度センサ120,130およびファン210~240に通信接続されている。コントローラ110は、温度センサ120,130から入力される信号に基づいて、ファン210~240を制御する。コントローラ110によるファン210~240の制御については後述する。
【0034】
<コントローラのハードウェア構成>
図4を参照して、コントローラ110のハードウェア構成について説明する。
図4は、コントローラ110のハードウェア構成の一例を示す模式図である。
【0035】
図4に示すように、コントローラ110は、主たる構成要素として、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)などのプロセッサ11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、フラッシュメモリ14と、通信IF(Interface)15と、時計16とを有する。これらのコンポーネントは、内部バスを介して互いに通信可能に接続されている。
【0036】
プロセッサ11は、プログラムを実行する。ROM12は、データを不揮発的に格納する。RAM13は、プロセッサ11によるプログラムの実行により生成されたデータ、または入力装置(図示せず)を介して入力されたデータを揮発的に格納する。フラッシュメモリ14は、データを不揮発的に格納する。通信IF15は、他の各種機器との間で通信を行なうためのインターフェイスである。
【0037】
コントローラ110における処理は、各ハードウェアおよびプロセッサにより実行されるソフトウェアによって実現される。このようなソフトウェアは、フラッシュメモリ14に予め記憶されている場合がある。または、ソフトウェアは、その他の記憶媒体に格納されて、プログラムプロダクトとして流通している場合もある。あるいは、ソフトウェアは、いわゆるインターネットに接続されている情報提供事業者によってダウンロード可能なプログラムプロダクトとして提供される場合もある。このようなソフトウェアは、読取装置によってその記憶媒体から読み取られて、あるいは、通信IF15等を介してダウンロードされた後、フラッシュメモリ14に一旦格納される。そのソフトウェアは、プロセッサ11によってフラッシュメモリ14から読み出され、RAM13に実行可能な形式で格納される。プロセッサ11は、そのプログラムを実行する。
【0038】
図4に示されるコントローラ110を構成する各構成要素は、一般的なものである。したがって、本開示の本質的な部分は、RAM13、フラッシュメモリ14、記憶媒体に格納されたソフトウェア、あるいはネットワークを介してダウンロード可能なソフトウェアであるともいえる。なお、コントローラ110の各ハードウェアの動作が周知であるため、詳細な説明は繰り返さない。
【0039】
<コントローラの機能構成>
図5を参照して、コントローラ110の機能構成について説明する。
図5は、コントローラ110の機能構成の一例を示す図である。
【0040】
図5に示すように、コントローラ110は、温度情報取得部111,112と、判定部113と、指令生成部114と、通信IF部115と、送信部116とを有する。
【0041】
温度情報取得部111は、温度センサ120から送信される電気信号に基づいて、温度センサ120近傍の温度(すなわち、ペリメータゾーン941の温度)を取得する。
【0042】
温度情報取得部112は、温度センサ130から送信される電気信号に基づいて、温度センサ130近傍の温度(すなわち、インテリアゾーン942の温度)を取得する。
【0043】
判定部113は、温度情報取得部111にて取得された温度情報に基づいて、ペリメータゾーン941の空気調和機501が暖房運転を実行しているか否かを判定する。さらに判定部113は、温度情報取得部112にて取得された温度情報に基づいて、インテリアゾーン942の空気調和機601が冷房運転を実行しているか否かを判定する。判定部113は、判定結果を指令生成部114に通知する。
【0044】
例えば、コントローラ110は、空気調和機501の吹出口530付近の温度が所定の第1の閾値以上であれば、空気調和機501が暖房運転していると判定する。コントローラ110は、空気調和機601の吹出口630付近の温度が所定の第2の閾値以下であれば、空気調和機601が冷房運転していると判定する。
【0045】
指令生成部114は、判定部113から通知される判定結果に応じて、ファン210~240を駆動する駆動指令と、駆動しているファン210~240を停止させる停止指令とを選択的に生成する。具体的には、指令生成部114は、空気調和機501が暖房運転を実行しており、かつ、空気調和機601が冷房運転を実行しているときに、駆動指令を生成し、生成した駆動指令を、送信部116を介してファン210~240に送信する。一方、指令生成部114は、空気調和機501が暖房運転を実行していないとき、および/または、空気調和機601が冷房運転を実行していないときに、停止指令を生成し、生成した停止指令を、送信部116を介してファン210~240に送信する。
【0046】
ファン210~240は、コントローラ110からの駆動指令に応答して、駆動する。駆動状態においてコントローラ110から停止指令を受信すると、ファン210~240は停止する。
【0047】
<空気調和システムの動作>
次に、
図2および
図3を参照して、実施の形態1に係る空気調和システムの動作について説明する。
【0048】
図2には、空気調和機501が冷房運転を実行し、かつ、空気調和機601が暖房運転を実行しているときの室内940の空気の流れが模式的に示されている。
【0049】
図2に示す動作は、室温が低下している冬期の午前中において実行される場合がある。窓902の放熱によってペリメータゾーン941の温度が下がり、暖房負荷が生じることによって、空気調和機501は暖房運転を実行する。一方、室内940の人、照明機器おおよび電子機器などの放熱によってインテリアゾーン942の温度が上がり、冷房負荷が生じることによって、空気調和機601は冷房運転を実行する。
【0050】
図2に示すように、暖房運転中の空気調和機501の吹出口530から吹き出した空気(すなわち、暖気)は、矢印51の方向に進む。暖気は拡散し、かつ全体として矢印52の方向に進む。天井950付近に滞留する暖気は、冷房運転中の空気調和機601の吸込口610から吸い込まれる(矢印63参照)。そのため、空気調和機601はさらに冷房運転を実行する。
【0051】
冷房運転中の空気調和機601の吹出口630から吹き出した空気(すなわち、冷気)は、矢印61の方向に進む。その後、冷気は拡散し、かつ、全体として矢印62の方向に進む。床面970付近に滞留する冷気は、暖房運転中の空気調和機501の吸込口510から吸い込まれる(矢印55参照)。そのため、空気調和機501はさらに暖房運転を実行する。
【0052】
このように空気調和機501が暖房運転を実行し、かつ、空気調和機601が冷房運転を実行しているときには、一方の空気調和機が吹き出す空気(暖気または冷気)が他方の空気調和機の負荷を増加させるために、暖房負荷および冷房負荷が共に増加するという室内混合損失が発生する場合がある。室内混合損失はミキシングロスとも称される。
【0053】
実施の形態1では、空気調和機501が暖房運転を実行し、空気調和機601が冷房運転を実行しているときには、
図3に示すようにファン210~240を駆動することにより、冷房負荷および暖房負荷の増加を抑制する。
【0054】
図3には、ファン210~240が駆動しているときの室内940の空気の流れが模式的に示されている。
図3に示すように、ペリメータゾーン941では、室内の空気が窓902に触れて冷やされて床面970に下降する現象(いわゆるコールドラフト現象)が発生している(矢印80参照)。このコールドラフト現象は暖房負荷を増加させる。ファン230が駆動しているため、床面970付近に滞留する冷気は、吸込口270から床下980に吸い込まれる(矢印71参照)。床下980に吸い込まれた冷気は、ファン230によってインテリアゾーン942側に向かって吹き出され、矢印72の方向に進む。その後、ファン240が駆動しているため、冷気はファン240に吸い込まれ(矢印73参照)、吹出口280からインテリアゾーン942に向かって吹き出される(矢印74参照)。インテリアゾーン942に吹き出された冷気は、拡散され、インテリアゾーン942の温度を低下させる。その結果、空気調和機601の冷房負荷が減少する。
【0055】
インテリアゾーン942ではさらに、ファン220が駆動しているため、天井950付近に滞留する暖気は、吸込口260から天井裏960に吸い込まれる(矢印75参照)。天井裏960に吸い込まれた暖気は、ファン220によってペリメータゾーン941側に向かって吹き出され、矢印76の方向に進む。その後、ファン210が駆動しているため、暖気はファン210に吸い込まれ(矢印77参照)、吹出口250からペリメータゾーン941に向かって吹き出される(矢印70参照)。ペリメータゾーン941に吹き出された暖気は、拡散され、ペリメータゾーン941の温度を上昇させる。その結果、空気調和機501の暖房負荷が減少する。
【0056】
このようにファン230,240を駆動することにより、暖房運転中のペリメータゾーン941における暖房負荷を増加させる冷気を、冷房運転中のインテリアゾーン942に送ることができる。これにより、空気調和機501の暖房負荷の増加を抑制させるとともに、空気調和機601の冷房負荷を減少させることができる。ファン230,240は、ペリメータゾーン941の床面970に送られた空気(冷気)を吸い込み、当該空気をインテリアゾーン942に向けて吹き出すように構成された「第1の送風部」の一実施例に対応する。
【0057】
さらにファン210,220を駆動することにより、冷房運転中のインテリアゾーン942における冷房負荷を増加させる暖気を、暖房運転中のペリメータゾーン941に送ることができる。これにより、空気調和機601の冷房負荷の増加を抑制させるとともに、空気調和機501の暖房負荷を減少させることができる。ファン210,220は、インテリアゾーン942の天井950に送られた空気(暖気)を吸い込み、当該空気をペリメータゾーン941に向けて吹き出すように構成された「第2の送風部」の一実施例に対応する。
【0058】
このように冷房運転および暖房運転が同時に実行されているときにファン210~240を駆動することにより、空気調和機501の暖房負荷および空気調和機601の冷房負荷が増加することを抑制することができる。その結果、冷房運転および暖房運転が同時に実行されているときに発生するミキシングロスを低減することができる。
【0059】
図6は、コントローラ110におけるファン210~240の制御を説明するためのフローチャートである。
図6のフローチャートは所定周期で繰り返し実行される。
【0060】
図6を参照して、ステップS01において、コントローラ110は、ペリメータゾーン941に設置された温度センサ120から温度情報を取得する。ステップS02において、コントローラ110は、インテリアゾーン942に設置された温度センサ130から温度情報を取得する。
【0061】
ステップS03において、コントローラ110は、温度センサ120,130から取得した温度情報に基づいて、ペリメータゾーン941の空気調和機501が暖房運転を実行しており、かつ、インテリアゾーン942の空気調和機601が冷房運転を実行しているかを判定する。
【0062】
ステップS03にて空気調和機501が暖房運転を実行しており、かつ、空気調和機601が冷房運転を実行していると判定された場合(S03のYES判定時)、コントローラ110は、ステップS04に進み、ファン210~240が駆動状態であるか否かを判定する。
【0063】
ファン210~240が駆動状態である場合(S04のYES判定時)、コントローラ110は、ステップS01に戻る。一方、ファン210~240が駆動状態でない、すなわち、ファン210~240が停止状態である場合(S04のNO判定時)には、コントローラ110は、ステップS05により、駆動指令をファン210~240に送信することにより、ファン210~240を駆動する。
【0064】
これに対して、空気調和機501が暖房運転を実行していない、および/または、空気調和機601が冷房運転を実行していない場合(S03のNO判定時)、コントローラ110は、ステップS06に進み、ファン210~240が駆動状態であるか否かを判定する。
【0065】
ファン210~240が駆動状態でない、すなわち、ファン210~240が停止状態である場合(S06のNO判定時)、コントローラ110は、ステップS01に戻る。一方、ファン210~240が駆動状態である場合(S06のYES判定時)には、コントローラ110は、ステップS07により、停止指令をファン210~240に送信することにより、ファン210~240を停止する。
【0066】
以上説明したように、実施の形態1に係る空気調和システムは、ペリメータゾーン941の床面970に送られた空気を吸い込み、当該空気をインテリアゾーン942に向けて吹き出すように構成された第1の送風部(ファン230,240)と、インテリアゾーン942の天井950に送られた空気を吸い込み、当該空気をペリメータゾーン941に向けて吹き出すように構成された第2の送風部(ファン210,220)とを備えている。上記構成において、ペリメータゾーン941の空気調和機501が暖房運転時であり、かつ、インテリアゾーン942の空気調和機601が冷房運転時であるときに、上記第1の送風部および第2の送風部を駆動することにより、空気調和機501の暖房負荷および空気調和機601の冷房負荷の増加を抑制することができる。その結果、冷房運転および暖房運転が同時に実行されているときに発生するミキシングロスを低減することができる。
【0067】
さらに、実施の形態1に係る空気調和システムにおいて、第1の送風部(ファン230,240)および第2の送風部(ファン210,220)に、ダクトファン等に比べて消費電力の小さいラインフローファン等の横断流送風機を適用することにより、費用対効果が高いシステム構成でミキシングロスを低減することが可能となる。
【0068】
[実施の形態2]
図7を参照して、実施の形態2に係る空気調和システムの概略構成について説明する。
【0069】
図7は、実施の形態2に係る空気調和システムが適用される建物900の室内940の、
図1に示されるIII-III線における断面図である。
【0070】
図7に示すように、実施の形態2に係る空気調和システムは、実施の形態1に係る空気調和システムと比較して、開閉窓904をさらに備える点が異なる。実施の形態1に係る空気調和システムと共通する部分についての説明を省略する。
【0071】
開閉窓904は、窓902の一部分に設けられている。開閉窓904は、図示しないヒンジなどにより開閉可能に形成される。開閉窓904を開放することによって、建物900の外部から室内940に空気(外気)を取り込むことが可能となる。開閉窓904はコントローラ110に接続されている。開閉窓904は「開閉部材」の一実施例に対応する。なお、開閉部材は、開閉窓904に限定されず、開閉自在に形成され、開状態において外気を室内940に取り込むことが可能に構成されていればよい。
【0072】
コントローラ110は、ファン210~240の駆動を制御するとともに、開閉窓904の開閉動作を制御する。実施の形態2においても、実施の形態1と同様に、コントローラ110は、空気調和機501が暖房運転を実行し、かつ、空気調和機601が冷房運転を実行しているときに、ファン210~240を駆動するように構成される。したがって、実施の形態2に係る空気調和システムにおいても、実施の形態1に係る空気調和システムと同様の効果を得ることができる。
【0073】
実施の形態2に係る空気調和システムではさらに、コントローラ110は、空気調和機501および空気調和機601の運転停止中において、予め定められた条件が成立したときに、開閉窓904を開放する。そして、コントローラ110は、開閉窓904が開状態であるときに、ファン210~240を駆動する。
【0074】
後述するように、実施の形態2に係る空気調和システムは、開閉窓904を開放させてファン210~240を駆動することにより、ナイトパージを実現する。ナイトパージとは、夜間の温度の低い外気を建物900内に取り込んで循環させて、建物900そのものの温度を低下させる運転である。ナイトパージは、通常、夏期および、夏期と冬期との間の中間期において実施される。ナイトパージを実施することにより、翌日の冷房運転開始時の冷房負荷を低減することができる。
【0075】
<コントローラの機能構成>
図8を参照して、コントローラ110の機能構成について説明する。
図8は、コントローラ110の機能構成の一例を示す図である。
【0076】
図8に示すように、コントローラ110は、運転情報取得部111A,112Aと、判定部113と、指令生成部114と、通信IF部115と、送信部116と、時計部117とを有する。
【0077】
運転情報取得部111Aは、空気調和機501から送信される電気信号に基づいて、空気調和機501の運転モードを示す情報(運転情報)を取得する。空気調和機501の運転モードは、暖房運転モードと、冷房運転モードと、暖房運転および冷房運転のいずれも実行していない停止モードとを含む。
【0078】
運転情報取得部112Aは、空気調和機601から送信される電気信号に基づいて、空気調和機601の運転モードを示す情報(運転情報)を取得する。空気調和機601の運転モードは、暖房運転モードと、冷房運転モードと、暖房運転および冷房運転のいずれも実行していない停止モードとを含む。
【0079】
判定部113は、運転情報取得部111Aにて取得された運転情報に基づいて、空気調和機501が暖房運転を実行しているか、冷房運転を実行しているか、または運転を停止しているかを判定する。さらに判定部113は、運転情報取得部112Aにて取得された運転情報に基づいて、空気調和機601が暖房運転を実行しているか、冷房運転を実行しているか、または運転を停止しているかを判定する。判定部113は、判定結果を指令生成部114に通知する。
【0080】
指令生成部114は、判定部113から通知される判定結果に応じて、ファン210~240を駆動する駆動指令と、駆動しているファン210~240を停止させる停止指令とを選択的に生成する。
【0081】
具体的には、指令生成部114は、空気調和機501が暖房運転を実行しており、かつ、空気調和機601が冷房運転を実行しているときに、駆動指令を生成し、生成した駆動指令を、送信部116を介してファン210~240に送信する。ファン210~240は、コントローラ110からの駆動指令に応答して、駆動する。駆動状態においてコントローラ110から停止指令を受信すると、ファン210~240は停止する。
【0082】
通信IF部115は、外部システムからネットワークを経由して、建物900が存在する地域の気象情報を収集する。気象情報は、建物900が存在する地域の気温、湿度、風速および降水量(または降水確率)などの情報を含む。気象情報は、現在の時刻での気象情報と、現在の時刻から所定時間先までの気象予測情報を含む。気象情報は、気象庁または民間の気象情報サービス会社などから収集することができる。なお、現在の時刻の気象情報については、建物900の外部に設置された気象観測装置(図示せず)から通信IF部115を介して観測データを受信することによって収集する構成としてもよい。
【0083】
時計部117は、現在の日付および時刻を示す時刻情報を判定部113に通知する。
判定部113は、時計部117からの時刻情報および通信IF部115を介して収集した気象情報(気象予報情報を含む)に基づいて、予め定められた条件が成立しているか否かを判定する。当該条件は、ナイトパージの実施可否を判定するための条件であり、空気調和システムのユーザが図示しない入力装置を用いて設定することができる。ユーザ入力によって設定された条件は、フラッシュメモリ14に格納される。
【0084】
時刻に関する条件には、ナイトパージを実施する時間帯を指定する情報が含まれる。ナイトパージを実施する時間帯には、夏期および中間期における夜間の時間帯を指定することができる。
【0085】
気象に関する条件には、ナイトパージの実施に適した気象(外気温、湿度、風速および降水量など)を指定する情報が含まれる。この条件には、例えば、外気温が閾値温度以下であること、湿度が閾値湿度以下であること、風速が閾値風速以下であること、および降水量が閾値量以下であることなどを含めることができる。なお、外気温については、閾値温度に加えて、またはこれに代えて、外気温と、温度センサ130により検出されるインテリアゾーン942の温度との差が閾値以上であることを含めてもよい。
【0086】
判定部113は、時刻情報に基づいて、現在の日時および時刻が、ナイトパージを実施する時間帯に含まれるか否かを判定する。さらに、判定部113は、気象情報に基づいて、現在の時刻から所定時間先までの気象(外気温、湿度、風速および降水量など)が上述した気象条件を満たしているか否かを判定する。判定部113は、判定結果を指令生成部114に通知する。
【0087】
指令生成部114は、判定部113から通知される判定結果に応じて、ファン210~240を駆動する駆動指令と、駆動しているファン210~240を停止させる停止指令とを選択的に生成する。具体的には、(1)空気調和機501および空気調和機601が運転を停止していること、(2)現在の日時および時刻がナイトパージを実施する時間帯に含まれていること、(3)現在の時刻から所定時間先までの気象が所定の気象条件を満たしていること、をすべて満たしている場合に、指令生成部114は、開放指令を生成し、生成した開放指令を、送信部116を介して開閉窓904に送信する。指令生成部114は、さらに、駆動指令を生成し、生成した駆動指令を、送信部116を介してファン210~240に送信する。
【0088】
一方、上記(1)~(3)の項目の少なくとも1つを満たしていない場合には、指令生成部114は、閉止指令を生成し、生成した閉止指令を、送信部116を介して開閉窓904に送信する。指令生成部114は、さらに、停止指令を生成し、生成した停止指令を、送信部116を介してファン210~240に送信する。
【0089】
開閉窓904は、コントローラ110からの開放指令に応答して開放する。開状態においてコントローラ110から閉止指令を受信すると、開閉窓904は閉止する。
【0090】
ファン210~240は、コントローラ110からの駆動指令に応答して、駆動する。駆動状態においてコントローラ110から停止指令を受信すると、ファン210~240は停止する。
【0091】
<空気調和システムの動作>
次に、
図7を参照して、実施の形態2に係る空気調和システムの動作について説明する。なお、空気調和機501が暖房運転を実行し、かつ、空気調和機601が冷房運転を実行しているときの動作は、実施の形態1に係る空気調和システムの動作と基本的に同じであるため、説明は繰り返さない。なお、実施の形態2では、コントローラ110はさらに、開閉窓904を閉止する。
【0092】
図7には、空気調和機501および空気調和機601が運転停止中であり、開閉窓904が開放しているときの室内940の空気の流れが模式的に示されている。
【0093】
図7に示すように、ペリメータゾーン941では、開閉窓904が開放されることにより、温度の低い外気(冷気)が建物900の室内940に流れ込む。室内940に流れ込んだ冷気は、矢印82の方向に進み、床面970付近に滞留する。ファン230が駆動しているため、床面970付近に滞留する冷気は、吸込口270から床下980に吸い込まれる(矢印71参照)。床下980に吸い込まれた冷気は、ファン230によってインテリアゾーン942側に向かって吹き出され、矢印72の方向に進む。その後、ファン240が駆動しているため、冷気はファン240に吸い込まれ(矢印73参照)、吹出口280からインテリアゾーン942に向かって吹き出される(矢印74参照)。インテリアゾーン942に吹き出された冷気は、拡散され、インテリアゾーン942の温度を低下させる。
【0094】
インテリアゾーン942ではさらに、ファン220が駆動しているため、天井950付近に滞留する暖気は、吸込口260から天井裏960に吸い込まれる(矢印75参照)。天井裏960に吸い込まれた暖気は、ファン220によってペリメータゾーン941側に向かって吹き出され、矢印76の方向に進む。その後、ファン210が駆動しているため、暖気はファン210に吸い込まれ(矢印77参照)、吹出口250からペリメータゾーン941に向かって吹き出される(矢印70参照)。ペリメータゾーン941に吹き出された暖気は、開閉窓904を通過して建物900の外部に排出される。
【0095】
このように開閉窓904を開放させて、ファン230,240を駆動することにより、温度が低下した外気(冷気)をインテリアゾーン942に送ることができる。さらにファン210,220を駆動することにより、インテリアゾーン942に滞留する暖気を建物900の外部に排出することができる。すなわち、ファン210~240の駆動によってナイトパージが実現され、建物900そのものの温度を低下させることができる。その結果、翌日の空調運転開始時の冷房負荷を低下させることが可能となる。
【0096】
図9は、コントローラ110における開閉窓904およびファン210~240の制御を説明するためのフローチャートである。
図9のフローチャートは所定周期で繰り返し実行される。
【0097】
図9を参照して、ステップS11において、コントローラ110は、ペリメータゾーン941用の空気調和機501から運転情報を取得する。ステップS12において、コントローラ110は、インテリアゾーン942用の空気調和機601から運転情報を取得する。
【0098】
ステップS13において、コントローラ110は、現在の日付および時刻を示す時刻情報を取得する。ステップS14において、コントローラ110は、建物900が存在する地域の気象情報を取得する。気象情報は、現在の時刻での気象情報と、現在の時刻から所定時間先までの気象予測情報を含む。
【0099】
ステップS15において、コントローラ110は、空気調和機501,601から取得した運転情報に基づいて、空気調和機501および空気調和機601が運転を停止しているかを判定する。
【0100】
ステップS15にて空気調和機501および空気調和機601が共に運転を停止していると判定された場合(S15のYES判定時)、コントローラ110は、ステップS16に進み、現在の日付および時刻がナイトパージを実施するための所定の時間帯に含まれているか否かを判定する。
【0101】
現在の日付および時刻が所定の時間帯に含まれていないと判定された場合(S16のYES判定時)、コントローラ110は、ステップS17に進み、現在の時刻から所定時間先までの気象(外気温、湿度、風速および降水量など)がナイトパージの実施に適した所定の気象条件を満たしているか否かを判定する。
【0102】
ステップS17において現在の時刻から所定時間先までの気象が所定の気象条件を満たしている場合(S17のYES判定時)、コントローラ110は、ステップS18において、開閉窓904が開状態であるか否かを判定する。
【0103】
開閉窓904が開状態である場合(S18のYES判定時)、コントローラ110は、ステップS20に進む。一方、開閉窓904が開状態でない、すなわち、開閉窓904が閉状態である場合(S18のNO判定時)、コントローラ110は、ステップS19により、開放指令を開閉窓904に送信することにより、開閉窓904を開放する。
【0104】
ステップS20において、コントローラ110は、ファン210~240が駆動状態であるか否かを判定する。ファン210~240が駆動状態である場合(S20のYES判定時)、コントローラ110は、ステップS11に戻る。一方、ファン210~240が駆動状態でない、すなわち、ファン210~240が停止状態である場合(S20のNO判定時)には、コントローラ110は、ステップS21により、駆動指令をファン210~240に送信することにより、ファン210~240を駆動する。
【0105】
これに対して、空気調和機501および空気調和機601の少なくとも一方が運転中である場合(S15のNO判定時)、コントローラ110は、ステップS22に進み、ファン210~240が駆動状態であるか否かを判定する。
【0106】
ファン210~240が駆動状態でない、すなわち、ファン210~240が停止状態である場合(S22のNO判定時)、コントローラ110は、ステップS24に進む。一方、ファン210~240が駆動状態である場合(S22のYES判定時)には、コントローラ110は、ステップS23により、停止指令をファン210~240に送信することにより、ファン210~240を停止する。
【0107】
ステップS24において、コントローラ110は、開閉窓904が開状態であるか否かを判定する。開閉窓904が開状態である場合(S24のNO判定時)、コントローラ110は、ステップS25により、閉止指令を開閉窓904に送信することにより、開閉窓904を閉止する。一方、開閉窓904が開状態でない、すなわち、開閉窓904が閉状態である場合(S24のYES判定時)、コントローラ110は、ステップS11に戻る。
【0108】
以上説明したように、実施の形態2に係る空気調和システムにおいても、実施の形態1に係る空気調和システムと同様の効果を得ることができる。
【0109】
さらに、実施の形態2に係る空気調和システムによれば、ペリメータゾーン941の空気調和機501およびインテリアゾーン942の空気調和機601が運転停止中であるときに、開閉窓904を開放するとともに、第1の送風部(ファン230,240)および第2の送風部(ファン210,220)を駆動することにより、外気を建物900内に取り込んで循環させることができる。そのため、夜間の温度の低い外気を建物900内に取り込んで、建物900そのものの温度を低下させるナイトパージを実施することができる。
【0110】
[その他の構成例]
以下、本実施の形態に係る空気調和システムのその他の構成例について説明する。
【0111】
(1)第1送風部の構成例
上述した実施の形態では、第1送風部が床下に設置されたファン230,240を有する構成について例示したが、第1送風部は、ファン230,240のいずれか一方を有する構成としてもよい。この場合、1台のファンは、床面970に送られた空気を吸込口270から床下980に吸い込み、床下980の空気を吹出口280インテリアゾーン942に向けて吹き出すように構成される。
【0112】
なお、いずれの構成においても、床下980を通気路として利用することができるため、専用のダクトの設置が不要となる。また、ファン230,240の少なくとも一方に低消費電力の横断流送風機を適用することにより、ファン230,240の駆動による消費電力の増加を抑えることができる。
【0113】
なお、床面970に第1送風部により形成される空気の流れを妨げる機器などが設置されていない場合には、床下980に代えて、床面970に第1送風部を設置する構成とすることも可能である。
【0114】
(2)第2送風部の構成例
上述した実施の形態では、第2送風部が天井裏960に設置されたファン210,220を有する構成について例示したが、第2送風部は、ファン210,220のいずれか一方を有する構成としてもよい。この場合、1台のファンは、天井950に送られた空気を吸込口260から天井裏960に吸い込み、天井裏960の空気を吹出口250からペリメータゾーン941に向けて吹き出すように構成される。
【0115】
なお、いずれの構成においても、天井裏960を通気路として利用することができるため、専用のダクトの設置が不要となる。また、ファン210,220の少なくとも一方に低消費電力の横断流送風機を適用することにより、ファン210,220の駆動による消費電力の増加を抑えることができる。
【0116】
なお、天井950に第2送風部が形成する空気の流れを妨げる機器などが設置されていない場合には、天井裏960に代えて、天井950に第2送風部を設置する構成とすることも可能である。
【0117】
図10は、第2送風部の他の構成例を示す図である。
図10の例では、第2送風部は、ファン210,220に代えて、ファン300を有している。ファン300は、インテリアゾーン942の天井950に設置されている。ファン300は「第3のファン」の一実施例に対応する。
【0118】
図10には、ファン230,240,300が駆動しているときの室内940の空気の流れが模式的に示されている。なお、ペリメータゾーン941の空気調和機501は暖房運転を実行し、インテリアゾーン942の空気調和機601は冷房運転を実行しているものとする。
【0119】
ペリメータゾーン941では、ファン230が駆動しているため、床面970付近に滞留する冷気は、吸込口270から床下980に吸い込まれる(矢印71参照)。床下980に吸い込まれた冷気は、ファン230によってインテリアゾーン942側に向かって吹き出され、矢印72の方向に進む。その後、ファン240が駆動しているため、冷気はファン240に吸い込まれ(矢印73参照)、吹出口280からインテリアゾーン942に向かって吹き出される(矢印74参照)。インテリアゾーン942に吹き出された冷気は、拡散され、インテリアゾーン942の温度を低下させる。
【0120】
インテリアゾーン942ではさらに、ファン300が駆動しているため、天井950付近に滞留する暖気は、ファン300に吸い込まれる(矢印75参照)。吸い込まれた暖気は、ファン300によってペリメータゾーン941側に向かって吹き出され、矢印76の方向に進む。ペリメータゾーン941に吹き出された暖気は、拡散され、ペリメータゾーン941の温度を上昇させる。
【0121】
図10の例においても、ファン230,240を駆動することにより、暖房運転中のペリメータゾーン941における暖房負荷を増加させる冷気を、冷房運転中のインテリアゾーン942に送ることができる。さらにファン300を駆動することにより、冷房運転中のインテリアゾーン942における冷房負荷を増加させる暖気を、冷房運転中のペリメータゾーン941に送ることができる。これにより、実施の形態1に係る空気調和システムと同様の効果を得ることができる。
【0122】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0123】
11 プロセッサ、12 ROM、13 RAM、14 フラッシュメモリ、15 通信IF、16 時計、110 コントローラ、111,112 温度情報取得部、111A,112A 運転情報取得部、113 判定部、114 指令生成部、115 通信IF部、116 送信部、117 時計部、120,130 温度センサ、210~240,300 ファン、250,280,530,630 吹出口、260,270,510,610 吸込口、501,601 空気調和機、620 ダクト、900 建物、901 外壁、902 窓、904 開閉窓、940 室内、941 ペリメータゾーン、942 インテリアゾーン、950 天井、960 天井裏、970 床面、980 床下、L 仮想線。