(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-04-05
(45)【発行日】2024-04-15
(54)【発明の名称】亜鉛-γ-PGA組成物およびがんを処置するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 33/30 20060101AFI20240408BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240408BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240408BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240408BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240408BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20240408BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240408BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240408BHJP
A61K 9/28 20060101ALI20240408BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240408BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20240408BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240408BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20240408BHJP
A61K 47/59 20170101ALI20240408BHJP
【FI】
A61K33/30
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P43/00 105
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/20
A61K9/28
A61K9/48
A61K47/34
A61K47/42
A61K47/54
A61K47/59
(21)【出願番号】P 2022089345
(22)【出願日】2022-06-01
(62)【分割の表示】P 2019545869の分割
【原出願日】2017-10-31
【審査請求日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】10201609131Y
(32)【優先日】2016-11-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】523356134
【氏名又は名称】ジロニックス・ピーティーイー.リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100187540
【氏名又は名称】國枝 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】チュン,ジニョク・フレッド
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/043606(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/155142(WO,A1)
【文献】Eur. J. Biochem,1998年,Vol.253,p.766-770
【文献】Journal of Endocrinology,2001年,Vol.169,p.417-424
【文献】Urologic Oncology: Seminars and Original Investigations,2012年,Vol.30,p.562-568
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者中の腫瘍において腫瘍壊死を誘導するための医薬組成物であって、該医薬組成物が、特定の剤形中に療法上有効量のZn(II)およびγ-ポリグルタミン酸キャリヤーを含み;
前記のZn(II)
の実質的な部分が、
前記γ-ポリグルタミン酸キャリヤーにおけるγ-ポリグルタミン酸のカルボン酸部分と複合体化されている、
医薬組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の医薬組成物であって、前記の腫瘍が、薬物耐性表現型を有する、医薬組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の医薬組成物であって、前記の薬物耐性表現型が、機能不全のp53である、医薬組成物。
【請求項4】
請求項2に記載の医薬組成物であって、前記の薬物耐性表現型が、MDR1の過剰発現である、医薬組成物。
【請求項5】
請求項2に記載の医薬組成物であって、前記の薬物耐性表現型が、MRP1の過剰発現である、医薬組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の医薬組成物であって、前記の剤形中における前記のZn(II)
および前記のγ-ポリグルタミン酸キャリヤーが、療法量のNF-κB阻害剤との組み合わせで療法量で投与される、医薬組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の医薬組成物であって、前記の剤形が、固体剤形または液体剤形である、医薬組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の医薬組成物であって、前記の剤形が、固体剤形であり、錠剤、ミニ錠剤、硬カプセル、軟カプセル、カプレット、ゼラチンカプセル、経口崩壊性フィルム、顆粒、ペレット、ペーストおよび粉末小袋から選択される、医薬組成物。
【請求項9】
請求項7に記載の医薬組成物であって、前記の剤形が、液体剤形であり、液体溶液、液体懸濁液、シロップおよび経口スプレーから選択される、医薬組成物。
【請求項10】
請求項7に記載の医薬組成物であって、前記の剤形が液体剤形であり、注射投与に適したものである、医薬組成物。
【請求項11】
請求項7に記載の医薬組成物であって、経口投与に適した固体剤形または液体剤形として調製される、医薬組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の医薬組成物であって、さらに胃耐性材料を含む、医薬組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬組成物であって、前記のγ-ポリグルタミン酸キャリヤーが、γ-ポリグルタミン酸、腫瘍標的化γ-ポリグルタミン酸誘導体、電荷修飾γ-ポリグルタミン酸誘導体および腫瘍標的化電荷修飾γ-ポリグルタミン酸誘導体から選択される1以上のキャリヤーを含む、医薬組成物。
【請求項14】
請求項13に記載の医薬組成物であって、前記の腫瘍標的化部分が、葉酸、
5N,
10N-ジメチルテトラヒドロフォレートおよびRGDペプチドから選択され、前記の部分のいずれかの組み合わせが、γ-ポリグルタミン酸に共有結合的に連結されている、医薬組成物。
【請求項15】
請求項13または14に記載の医薬組成物であって、前記の電荷修飾部分が、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、1,4,7,10-テトラシクロドデカン-N,N’,N'',N'''-四酢酸およびジエチレントリアミン五酢酸から選択され、前記の部分のいずれかの組み合わせが、γ-ポリグルタミン酸に共有結合的に連結されている、医薬組成物。
【請求項16】
請求項13に記載の医薬組成物であって、前記のγ-ポリグルタミン酸キャリヤーがγ-ポリグルタミン酸を含む、医薬組成物。
【請求項17】
請求項13に記載の医薬組成物であって、前記のγ-ポリグルタミン酸キャリヤーが腫瘍標的化γ-ポリグルタミン酸誘導体を含む、医薬組成物。
【請求項18】
請求項13に記載の医薬組成物であって、前記のγ-ポリグルタミン酸キャリヤーが腫瘍標的化電荷修飾γ-ポリグルタミン酸誘導体を含む、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガンマ-ポリグルタミン酸(γ-PGA)キャリヤーおよび亜鉛塩ならびに場合によりNF-κB阻害剤を含む組成物、その医薬配合物、ならびにその組成物および配合物のいずれかを抗腫瘍剤として患者におけるがんを処置するために用いる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
がん薬物に対する先天性および後天性薬物耐性は、がん処置の失敗の主な原因である。耐性に関する一般的な機序は、p53アポトーシスタンパク質における機能不全および/またはMDR1もしくはMRP1遺伝子によりコードされるエネルギー依存性薬物排出ポンプの過剰発現を含む。薬物耐性問題を克服するための1つの殺腫瘍戦略は、機能不全のp53アポトーシス機能を個々に修正することまたは薬物排出ポンプを阻害することである。代わりのアプローチは、PARP1に媒介されるエネルギー枯渇に誘導される壊死性細胞死機序(“PARP1媒介性壊死”)を利用することであり、それは、p53に媒介されるアポトーシス機序を完全に迂回する。
【0003】
心臓または脳組織の虚血後壊死において最初に観察されるPARP1媒介性壊死は、PARP1酵素による過剰なDNA修復活性からの細胞エネルギー(NAD
+およびATP)の枯渇により引き起こされる。遺伝子損傷に反応したPARP1/PARGの超活性化は、NAD
+およびATP細胞エネルギー物資の枯渇を誘発し、それは、続いてMPTP活性化からのミトコンドリアに開始される壊死を誘発する。この事象のセットが、
図1において図説されている。その壊死機序はp53に媒介されるアポトーシスを迂回するため、この機序ががんを標的とするために用いられることできる可能性があることが提唱された(NPL3)。しかし、このアイデアを臨床的に有用な療法的処置に変換することは、試みられた方法が毒性すぎることが判明したため、誰も成功しなかった。PARP1媒介性壊死は、過剰な放射線曝露および/または高度に毒性の化学療法剤、例えばドキソルビシンの投与による実験的腫瘍においてのみ誘導されることができた。PARP1媒介性壊死を活性化するための毒性薬剤の使用による別の問題は、その薬剤がp53タンパク質も亜臨界(sub-critical)レベルで活性化し、p53に誘導されるPARP1酵素の断片化によりPARP1媒介性壊死を有効に無力化することであった。腫瘍内の薬物分布が物理的および構造的制約のために不均一であることを考慮すると、毒性薬剤が同時にがん腫瘍塊の大部分においてPARP1を欠損させ、従ってPARP1媒介性壊死に非感受性の状態にするであろうことが、推測された。
【0004】
多数の臨床がん症例において解決されるべき問題は、一部のがんは従来の抗がん薬に生得的に耐性であり、他のがんは全身性処置の過程にわたって多剤耐性を発現し、結果として処置の失敗をもたらすことである。放射線および化学療法剤の過剰投与によるPARP1媒介性腫瘍壊死の利用を、がんを処置するために用いることができるという理論的示唆は存在したが、この可能性のある結果の実現は、処置において本来備わっている毒性および上記で言及された機序に本来備わっている自己矛盾的性質により困難であった。従って、PARP1媒介性腫瘍壊死の有効な誘導に基づく組成物および/または処置法を見付けるための未だ対処されていない必要性が、残っている。さらに、腫瘍壊死プロセスに干渉することも過度に毒性であることもなくそのような誘導剤を腫瘍組織に特異的に送達することができるキャリヤーおよび標的化システムを含む組成物および/または処置法が、非常に望まれている。多種多様ながんのタイプおよび/または薬物耐性特性に対して必要とされる殺腫瘍用量を低減する、ならびに健康な組織における望ましくない副作用を低減する継続した望みも、存在する。
【0005】
亜鉛塩類の神経毒性を評価する報告は、単純な亜鉛塩類からの亜鉛イオンの高い濃度(400μMまたは26μg/mL)は、培養された皮質細胞においてPARP/PARGに媒介されるNAD+およびATP枯渇ならびにそれに続く壊死を誘導することを記載している(NPL6)。しかし、その報告は、亜鉛塩類の殺腫瘍活性またはがんに対するそれらの療法的使用を研究しなかった。
【0006】
免疫細胞に対するピリチオン亜鉛の毒性を評価する報告は、ナノモル濃度のピリチオン亜鉛が、マウス胸腺細胞、マウス脾臓リンパ球、ヒトRamos BおよびヒトJurkat T細胞を含む様々な白血球由来細胞において亜鉛特異的アポトーシスを誘導することを示した(NPL7)。その報告は、壊死性細胞死を妨げる作用を有するカスパーゼ9の活性化により、ピリチオン亜鉛がアポトーシスを誘導することを開示した(NPL11)。まとめると、これらの報告は、研究された免疫細胞において、ナノモル用量のピリチオン亜鉛がアポトーシス性細胞死を誘導し、壊死性細胞死を誘導しないことを示している。
【0007】
後に、マイクロモル濃度のピリチオン亜鉛(1~10μM)はアンドロゲン依存性LNCaPおよびアンドロゲン非依存性PC3、DU145前立腺がん細胞株においてATP枯渇ならびに最終的にERKおよびPKC依存性壊死を誘発することが、実証された(NPL2)。しかし、壊死を誘発するためにNPL2において用いられたピリチオン亜鉛の用量は、ラットにおいて9~14日間の食餌性投与(240ppm)後に進行性後肢虚弱、協調運動障害、筋萎縮を伴う脊柱後弯および陰茎脱の臨床症状を伴う急性神経毒性を引き起こすことが、以前に示された(NPL10)。
【0008】
従って、ピリチオン亜鉛が前立腺がん細胞株に対して選択的壊死性細胞死を引き起こすことができるという報告は存在したが、それは高い(μM)濃度の薬剤を必要とし(NPL2)、しかしピリチオン亜鉛は、そのような濃度において重篤かつ永続的な神経毒性を引き起こすことが示されてきたものであり(NPL12)、このことは、ピリチオン亜鉛を抗腫瘍療法剤へと開発する試みを思いとどまらせてきたであろう。さらに、NPL2は、多数のがん細胞型に対して広いスペクトルの抗がん活性を実証したものではなく、MDR1またはMRP1多剤耐性遺伝子の過剰発現に由来する薬物耐性の逆転へ向けた有効性を示さず、また、いずれの動物がんモデルにおいても壊死性有効性を示さなかった。
【0009】
NPL5は、インスリン模倣亜鉛(2+)複合体を開発し、2型糖尿病KKAyマウスにおいて亜鉛(ガンマ-ポリグルタミン酸)複合体のインビトロインスリン模倣活性ならびにインビボ抗糖尿病作用を調べた。具体的には、その研究は、ガンマ-ポリグルタミン酸複合体化亜鉛を用いて、kg体重あたり10~20mgのZnを30日間経口投与することが、ZnSO4を用いた処置と比較してKKAyマウスにおいて高血糖症を正常化し、耐糖能障害、高められたHbA(1c)レベルおよびメタボリックシンドロームを改善することを示した(NPL5)。NPL5において、著者らは、亜鉛(ガンマ-ポリグルタミン酸)複合体は2型糖尿病性KKAyマウスにおいてそれらの高い血中グルコース低下作用ならびにインスリンのβ細胞分泌における撹乱およびインスリン抵抗性を減弱するそれらの能力により抗糖尿病効力を有すると結論付けたが、彼らは、その複合体のインスリン模倣活性の原因となる作用機序を理解しておらず、彼らは、亜鉛(ガンマ-ポリグルタミン酸)複合体による抗腫瘍活性も薬物不応性のがんのタイプの処置に関するその有効性も一切示唆しなかった。
【0010】
要約すると、当該技術は、インビボで重要な薬物耐性特性を有するがんを含む広いスペクトルのがんを有効に処置し、さらに重大な毒性の危険を冒さずにそうするという上記で言及された目的を達成するための亜鉛化合物の使用を示唆さえしておらず、当然成功もし
ていない。従って、毒性の問題を伴わずに多くのがんのタイプ、さらに薬物耐性表現型(例えば機能不全のp53、MDR1過剰発現、MRP1過剰発現)を有するがんのタイプにわたって作用するがんを処置するための、臨床的に有効かつ安全な亜鉛組成物に関する未解決の必要性が、存在する。その問題を解決するため、我々は、当該分野における体系的な研究を実施し、これらの必要性を満たす亜鉛複合体の配合物を開発し、従って本明細書で記載される我々の発明を完成させた。
【0011】
引用
【0012】
【0013】
【発明の概要】
【0014】
本明細書で開示される組成物、医薬配合物および方法は、亜鉛およびγ-ポリグルタミン酸(γ-PGA)の複合体が様々なヒトおよびマウスがん細胞株において壊死性細胞死を誘導することができるという驚くべき観察に基づいている。
【0015】
本発明は、PARP1媒介性壊死性細胞死機序を誘発する亜鉛含有γ-ポリグルタミン酸組成物に関する。理論により限定されることなく、亜鉛は、PARP1を過剰に活性化するようであり、それは今度は、細胞中のATPおよびNAD+の枯渇につながる。結果として、細胞は、エネルギー源を枯渇させられ、次いで壊死性細胞死経路に入る。
【0016】
壊死を誘導するこの機序は、ほとんどのがん細胞型に関して同様に利用可能であると予想され、従って亜鉛含有γ-ポリグルタミン酸組成物は、広いスペクトルの殺腫瘍活性を示す。さらに、この機序は、異なる殺腫瘍機序に関連する薬物耐性表現型を有する腫瘍もこのPARP1媒介性機序に反応し得ることを示唆している。
【0017】
本発明に従う組成物は、(i)有効成分としての亜鉛(II)種(同等に、Zn2+)ならびに(ii)未修飾形態および/または修飾形態(ここで、葉酸および/またはRGD腫瘍標的化ペプチドがγ-PGAに共有結合している)のキャリヤーとしてのγ-PGAを含む。組成物は、さらに腫瘍細胞をZn(II)およびγ-PGAの殺腫瘍作用に対して増感させる(それらをより感受性にする)ためのNF-κB阻害剤またはNF-κBシグナル伝達カスケード阻害剤を含むことができる。
【0018】
組成物は、経口投与のために配合されることができる。ある態様において、胃の強酸性環境中での複合体からの亜鉛イオンの解離を防ぐ、遅らせる、または減じるために胃耐性材料、例えば腸溶結合剤およびコーティングまたは蝋コーティングを含む経口配合物が、提供される。
【0019】
本発明は、上記で言及された組成物および医薬配合物を調製するための方法ならびにその療法的使用にも関する。
PARP-1媒介性腫瘍壊死を有効に誘導することができる組成物を提供することは、本発明の1つの目的であり、患者に毒性ではない組成物および配合物を用いてそうすることは、さらなる目的である。
【0020】
患者において薬物耐性表現型を有する多種多様な腫瘍およびがん細胞を処置することにおける使用のための医薬配合物を提供することは、本発明の別の目的である。
Zn(II)の腫瘍細胞への送達を標的化することができるγ-PGAキャリヤーを含む組成物を提供することは、本発明の別の目的である。また、低減した用量要求を有する、または健康な組織における望まれない副作用の低減したプロフィールを有する強い殺腫瘍剤を提供することは、本発明の目的である。
【0021】
患者中の腫瘍においてPARP1媒介性腫瘍壊死を誘導する方法の一態様は、療法上有効量のZn(II)塩およびγ-ポリグルタミン酸キャリヤーを、腫瘍を有する患者に投与することを含み、ここで前記のγ-ポリグルタミン酸キャリヤーは、γ-ポリグルタミン酸および/または腫瘍標的化γ-ポリグルタミン酸誘導体および/または電荷修飾γ-ポリグルタミン酸誘導体および/または腫瘍標的化電荷修飾γ-ポリグルタミン酸誘導体を含む。方法の別の態様において、療法上有効量のZn(II)塩およびγ-ポリグルタミン酸キャリヤー(別途示されない限り、γ-ポリグルタミン酸キャリヤーまたは組成物への言及は、上記で列挙されたような様々なタイプのγ-ポリグルタミン酸の誘導体を含む組成物を含む)が、薬物耐性表現型を有する腫瘍を有する患者に投与される。
【0022】
方法の別の態様において、療法上有効量のZn(II)塩およびγ-ポリグルタミン酸キャリヤーは、療法量のNF-κB阻害剤および/またはNF-κBシグナル伝達カスケード阻害剤との組み合わせで投与される。
【0023】
一態様において、療法量のZn(II)塩およびγ-ポリグルタミン酸キャリヤーは、固体剤形中で、または液体剤形中で一緒に投与される。いくつかの態様において、固体剤形は、錠剤、ミニ錠剤(minitab)、硬カプセル、軟カプセル、カプレット、ゼラチンカプセル(gelcaps)、経口崩壊性フィルム、顆粒、ペレット、ペーストおよび粉末小袋(sachet)から選択される。いくつかの態様において、液体剤形は、液体溶液、液体懸濁液、シロップおよび経口スプレーから選択される。
【0024】
いくつかの態様において、療法量のZn(II)塩およびγ-ポリグルタミン酸キャリヤーは、経口投与または注射投与により一緒に投与される。
本発明の一態様は、(i)薬学的に許容可能なZn(II)塩、(ii)腫瘍標的化部分および/または電荷修飾部分を含有するγ-ポリグルタミン酸を含み、かつ(iii)場合によりさらにγ-ポリグルタミン酸を含む医薬組成物である。
【0025】
いくつかの態様において、前記の腫瘍標的化部分は、葉酸、ジメチルテトラヒドロフォレート(DMTHF)およびRGDペプチドから選択され、前記の部分のいずれかの組み合わせが、γ-ポリグルタミン酸に共有結合的に連結されている。いくつかの態様において、前記の電荷修飾部分は、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、1,4,7,10-テトラシクロドデカン-N,N’,N'',N'''-四酢酸およびジエチレントリアミン五酢
酸から選択され、前記の部分のいずれかの組み合わせが、γ-ポリグルタミン酸に共有結合的に連結されている。
【0026】
別の態様において、医薬組成物は、さらにγ-ポリグルタミン酸を含む。別の態様において、医薬組成物において、前記のZn(II)塩の実質的な部分は、Zn(II)イオンのγ-ポリグルタミン酸および/または前記の腫瘍標的化部分および/または前記の電荷修飾部分との結合した複合体である。別の態様において、医薬組成物において、Zn(II)塩および(ii)前記のγ-ポリグルタミン酸ポリマーは、固体混合物中で一緒に混合される。
【0027】
別の態様において、医薬組成物は、さらにNF-κB阻害剤および/またはNF-κBシグナル伝達カスケード阻害剤を含む。
他の態様において、上記の医薬組成物のいずれかが、固体剤形として配合される。いくつかのさらなる態様において、固体剤形は、さらに胃耐性結合剤および/または胃耐性外部コーティングを含む。他の態様において、上記の医薬組成物のいずれかが、液体剤形として配合される。ある態様において、液体剤形は、注射のために配合される。さらなる態様において、液体剤形は、さらに胃耐性材料を含む医薬組成物の懸濁液である。さらなる態様において、液体剤形は、上記の医薬組成物のいずれかおよび場合により胃耐性材料を含む蝋でコートされた微粒子の懸濁液である。
【0028】
患者における腫瘍を処置するための方法の一態様は、前記の医薬組成物の態様のいずれか1つに従う療法上有効量の医薬組成物を、腫瘍を有する患者に投与することを含む。方法のさらなる態様において、療法上有効量の前記の医薬組成物は、薬物耐性表現型を有する腫瘍を有する患者に投与される。
【0029】
本発明のこれらのおよび他の目的および特徴は、以下の詳細な本発明および特許請求の範囲の記載から当業者に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】
図1は、PARP1媒介性壊死の模式的要約である。
【
図2】
図2は、ZnPGA組成物の一態様で処置されたヒトがん株のインビトロフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【
図3】
図3は、LL2マウス肺がん同種移植片をZnPGA組成物の態様で処置した結果を示す。
【
図4】
図4は、マウスにおけるH460ヒト肺がんの皮下異種移植片をZnPGA組成物の一態様で処置した結果を示す。
【
図5】
図5Aおよび5Bは、HeLa細胞およびMCF7細胞をそれぞれZn(II)/γ-PGA組成物で処置した結果を示す。
【
図6】
図6は、HEK-293細胞、HeLa細胞、MCF7細胞およびA549細胞をZn(II)/γ-PGA組成物で処置した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書で記載される組成物、配合物および方法において用いられる構成要素は、医薬的使用に関して、または食品における使用に関して、またはヒトの消費のための製品における使用に関して規制当局により認められているグレードのものである。ある場合において、構成要素は、医薬グレードまたは医学グレードの化合物または物質である。
【0032】
本明細書で用いられる略語の意味は、以下の通りである:“kDa”は、キロダルトンを意味し;“重量%”は、重量によるパーセントを意味する。
亜鉛は、亜鉛(II)塩(同等にZn2+塩)として提供され、ここで、対イオン(陰イオン)は、あらゆる適切な無機または有機陰イオンであることができる。適切な陰イオンは、毒性ではない陰イオンを含む人体に許容される陰イオンである。一般に、亜鉛塩は、式Zn2+X2-もしくはZn2+(X-)2またはさらにはZn2+(X-)(Y-)により表されることができ、式中、XおよびYは、適切な陰イオンである。陰イオンは、認可された医薬の構成要素である陰イオンの群から選択されることができる。ある態様において、亜鉛(II)塩は、薬学的に許容可能な亜鉛塩であり、前記の亜鉛(II)塩は、医薬組成物における使用に関して認可されている亜鉛(II)塩類の群から選択される。陰イオンは、FDAに認可された医薬製品の構成要素である陰イオンの群から選択されることができる。ある態様において、亜鉛(II)塩は、薬学的に許容可能な亜鉛塩である。他の態様において、陰イオンは、認可された食品添加剤または栄養補給剤の構成要素である陰イオンの群から選択されることができる。亜鉛塩類の例は、塩化亜鉛、硫酸亜鉛、クエン酸亜鉛、酢酸亜鉛、ピコリン酸亜鉛、グルコン酸亜鉛、アミノ酸-亜鉛キレート類、例えばグリシン亜鉛または当該技術で既知である、および使用されている他のアミノ酸を含む。2種類以上の異なる亜鉛塩類が、組成物または配合物のいずれかにおいてZn(II)を提供するためにあらゆる割合で一緒に用いられることができる。
【0033】
ある態様において、組成物または配合物においてγ-ポリグルタミン酸化合物に対して複合体化したZn(II)が、提供される。典型的には、Zn(II)およびγ-PGAの複合体化した形態(“ZnPGA”)が、提供され、ZnPGAは、精製され、遊離のZn(II)イオンならびにZn陽イオンに対する元の対イオンは、そのプロセスにおいて実質的に除去される。
【0034】
単一の固体剤形中に含まれる亜鉛の量は、一般に約1~約100mgの亜鉛(亜鉛(II)イオン)の範囲である。従って、配合された組成物中で用いられる亜鉛塩(類)の特定の量は、塩の量が対イオンの重量を説明しなければならないため、より高いであろう。亜鉛(II)のみを考慮すると、剤形中で提供される量は、約100mgまで、約75mgまで、約50mgまで、約25mgまで、約10mgまでの亜鉛、または約5mgまでであることができる。固体剤形中で提供される亜鉛(II)の量は、一般に少なくとも約1mgである。比較として、一般に入手可能な補給剤は、例えば20、25、30、50、75およびさらには100mgの亜鉛を提供する。この範囲における亜鉛のあらゆる量またはさらに高い量が、提供される量が生理的に過剰なレベルの亜鉛の吸収を引き起こさない限り、許容可能である。しかし、考慮され得ることは、過剰なレベルおよびそれ由来のリスクが、腫瘍を処置することにより得られる療法的利益に対して釣り合いが取られるべきであることである。ほとんどの成人における亜鉛の許容可能な上限摂取レベルは、約40mg/日である(子供に関してはそれはより低い)が、経口摂取される固体剤形中の亜鉛の全てが吸収されることはなさそうであり;その一部は吸収されずに体を通過するであろうことは、認識されるべきである。吸収される亜鉛の量は配合によっても異なると考えられるため、個々の配合物中の亜鉛含有量の上限は、配合物により提供される取り込み
のレベルを確かめるための当該技術で既知の方法により試験されることができ、次いで配合物を投与することにより得られる処置におけるあらゆる療法的利益を考慮して、所与の剤形または配合物に関して投与される量を適宜調節することができる。
【0035】
液体剤形中の組成物または配合物中で提供される亜鉛の濃度は、一般に約1mg/L~約100g/Lの亜鉛(亜鉛(II)イオン)の範囲である。これは、約0.0001重量%~約10重量%の亜鉛の範囲に相当する。Zn(II)の濃度は、少なくとも約10mg/L、もしくは少なくとも約100mg/L、もしくは少なくとも約1g/L、もしくは少なくとも約10g/Lであることができ、またはZn(II)の濃度に関する範囲は、これらの典型的な濃度のいずれか2つの範囲内に入ることができる。一態様において、濃度は、約100mg/L~約500mg/Lの範囲であることができる。剤形中で提供される液体の量は、総投与量を決定するであろう。例えば、100mLの量の液体は、典型的な範囲に関して約10mg~約50mgのZn(II)を提供するであろう。別の態様において、濃度は、約1000mg/L(1mg/mL)であることができ、従って1ミリリットルあたり約1mgを提供することができる。固体剤形中の亜鉛の投与量に関する開示は、液体投与量として提供するZn(II)溶液の量に関する手引きとして用いられることができる。実施例4において開示されるように、マウスが、Zn(II)の160μg/mL溶液(160mg/Lと等しい)で処置され、16mg/日/kg体重のZn(II)の生理学的に関連する用量を与えられた。
【0036】
亜鉛は、液体中で懸濁された固体の一部として提供されることもできる。提供される亜鉛(II)の量および懸濁液の体積は、上記で固体および液体剤形に関して述べられた手引きに従う。
【0037】
ガンマ-ポリグルタミン酸(あるいはγ-ポリグルタミン酸またはγ-PGA)は、グルタミン酸(アミノ酸)のポリマーであり、ここで、ポリマーの主鎖は、アミノ基およびアミノ酸側鎖中の(γ-炭素における)カルボキシル基を連結するペプチド結合により形成される。γ-PGAは、グルタミン酸のL異性体、D異性体またはDLラセミ体から形成されることができる。これらの形態のいずれも、用いられることができ、2種類以上の異なる形態が、あらゆる割合で一緒に用いられることができる。γ-PGAの様々な異性体形態は、合成によることができ、または天然源に由来することができる。γ-PGAは、例えば日本の納豆中および昆布中に存在する。生物は通常はL異性体からのみポリ(アミノ酸)を生成するが、γ-PGAを生成する特定の細菌性酵素は、どちらかの異性体または両方の異性体からポリマーを生成することができる。
【0038】
様々な大きさおよび様々なポリマー分散度のγ-PGAが、用いられることができる。γ-PGAのポリマー分子量は、一般に少なくとも約1kDaかつ最大で約1000kDaである。ある態様において、γ-PGAのポリマー分子量は、少なくとも約1kDa、または少なくとも約5kDa、または少なくとも約10kDa、または少なくとも約20kDa、または少なくとも約30kDa、または少なくとも約35kDa、または少なくとも約40kDa、または少なくとも約50kDaである。ある態様において、γ-PGAのポリマー分子量は、最大で約700kDa、または最大で約500kDa、または最大で約300kDa、または最大で約200kDa、または最大で約100kDaである。許容可能なポリマー分子量範囲は、上記で示されたポリマー分子量の値のいずれから選択されることもできる。一態様において、ポリマー分子量は、約5kDa~約500kDaの範囲である。別の態様において、ポリマー分子量は、約5kDa~約300kDaの範囲である。一態様において、ポリマー分子量は、約50kDa~約100kDaの範囲である。一態様において、ポリマー分子量は、約100kDaである。一態様において、ポリマー分子量は、約50kDa(kDA)である。組成物または配合物は、γ-PGAの1以上のポリマー分子量形態を含むことができる。
【0039】
ポリマー分子量は、典型的には例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による測定に基づく数平均分子量(Mn)として与えられる。上記のポリマー質量は、Mnとして言及され;他の測定技法が、例えば質量(重量)平均分子量(Mw)を決定するために用いられることができ、あらゆる所与のポリマーに関する明細は、様々なポリマー質量表現の間で変換されることができる。
【0040】
固体剤形中に含まれるγ-PGAの量は、一般に約10重量%~約40重量%の範囲である。ある態様において、量は、約20重量%または約30重量%である。用いられる量は、一般に亜鉛およびポリグルタミン酸単量体単位の間の所望のモル比、亜鉛塩の質量(対イオンの重量を説明する)ならびに許容可能な配合された剤形を提供するために必要とされる賦形剤の量に基づく。例えば、用いられるγ-PGAおよび亜鉛塩の量が大きいほど、所与の剤形全体の大きさに関して添加されることができる賦形剤の量は少ない。当業者は、有効成分の量対安定な剤形を得るために必要とされる賦形剤の量およびタイプの釣り合いを容易にとることができる。亜鉛およびγ-PGAの間の所望の比率は、剤形あたりの亜鉛のミリグラム対γ-PGAの重量%の比率として表されることもできる。典型的な比率は、5mg:10重量%;5mg:20重量%;5mg:40重量%;30mg:10重量%;30mg:20重量%;30mg:40重量%;もしくはさらには100mg:10重量%;100mg:20重量%;100mg:40重量%;またはこれらの典型的な比率により示される範囲内のあらゆる他の値のセットもしくは本明細書においてそれぞれの成分に関して引用される値から明らかである値のセットを含む。
【0041】
液体剤形中に含まれるγ-PGAの量は、一般に約0.01重量%~約10重量%の範囲である。ある態様において、量は、約0.1重量%~約1重量%である。
用いられる量は、一般に亜鉛およびポリグルタミン酸単量体単位の間の所望のモル比、γ-PGAキャリヤーの性質(すなわちそれが未修飾であるか、または腫瘍標的化部分および/もしくは電荷修飾部分で修飾されているか)、ならびにγ-PGAキャリヤーとのZn(II)複合体の形成の程度に基づく。例えば、実施例1および2において説明されるように、ZnPGA複合体は、おおよそ1重量%のγ-PGAをおおよそ400μg/mL(mg/L)の複合体化した亜鉛と共に含む溶液として得られた。理論により束縛されることなく、液体剤形を調製する際、溶液中での亜鉛塩のγ-PGAキャリヤーとの組み合わせは、一般に結果として亜鉛イオンおよびγ-PGAキャリヤーの複合体の形成をもたらすと考えられ、従って形成された複合体を単離または精製する別個の工程は必要ではない可能性があることは、理解されるべきである。他の典型的な比率は、液体剤形中に含まれるγ-PGAの量との組み合わせにおいて、液体剤形中の組成物または配合物として提供される亜鉛の濃度に関する上記の開示に基づく範囲を含む。
【0042】
有効量のZn(II)塩およびγ-ポリグルタミン酸キャリヤーを有する適切な固体または液体組成物および配合物に到達するため、γ-PGAキャリヤーおよび亜鉛の相対量およびそれぞれの濃度は、当業者により本開示に従って容易に調節されることができる。本明細書で開示される組成物において、γ-PGA構成要素は、γ-PGAとしてまたはγ-PGAキャリヤーとして言及されることができる。特筆されたように、γ-PGAの誘導体も、意図されており、修飾γ-PGAまたはγ-PGAコンジュゲート等として多様に言及されることができる。
【0043】
γ-PGAは、腫瘍標的化部分を含むことができる。そのような部分は、葉酸、N5,N10-ジメチルテトラヒドロフォレート(DMTHF)およびRGDペプチドから選択されることができる。前記の部分のいずれかまたは全部が、γ-ポリグルタミン酸に共有結合的に連結されてγ-PGAのフォレートコンジュゲートおよび/またはDMTHFコンジュゲートおよび/またはRGDペプチドコンジュゲートを形成していることができる
。葉酸受容体タンパク質は、多くのヒト腫瘍において頻繁に発現している。
【0044】
フォレート類は、天然に葉酸受容体に関する高い親和性を有し、さらに、結合すると、フォレートおよび取り付けられたコンジュゲートは、エンドサイトーシスにより細胞中に輸送されることができる。この方式で、葉酸で修飾されたZnPGAは、腫瘍細胞を標的としてそこで蓄積し、亜鉛(II)を腫瘍細胞の内部へと送達することができる。DMTHFも、葉酸受容体に関して高い親和性を有することが知られている。DMTHFの調製が、NPL13において記載されている。さらに、葉酸受容体(FR)の2つの主なイソ型であるFR-αおよびFR-βが存在し、DMTHFは、FR-βと比較してFR-αに関してより高い親和性を有することが、示されている(NPL12)。FR-αは多くの悪性細胞型において過剰発現されており、一方でFR-βは炎症性疾患と関係するマクロファージにおいて過剰発現されているため、これは、腫瘍細胞を標的化するために有益である。従って、DMTHFのγ-PGAへのコンジュゲーションは、腫瘍細胞により発現されている葉酸受容体に選択的に結合することができるコンジュゲートを提供する。同様に、RGDペプチドは、α(V)β(3)インテグリン類に強く結合することが知られており、それは、腫瘍性内皮細胞上ならびに一部の腫瘍細胞上で発現されている。従って、RGDコンジュゲートは、抗腫瘍剤をその部位に標的化および送達するための戦略である。本発明において意図されているように、γ-PGAは、これらの腫瘍標的化剤のいずれか1種類または2種類または全部でコンジュゲートされる(すなわち修飾される)ことができ、2種類以上が存在する場合、これらの薬剤の相対的な比率は、特に限定されない。例えば、γ-PGAキャリヤーは、γ-PGAの(a)葉酸、(b)DMTHF、(c)RGD、(d)葉酸およびDMTHF、(e)葉酸およびRGD、(f)DMTHFおよびRGD、または(g)葉酸、DMTHFおよびRGDとのコンジュゲートを含むことができる。他の類似の腫瘍標的化部分も、本発明の範囲内である。
【0045】
γ-PGAは、それぞれのグルタミン酸単位のα炭素において遊離のカルボン酸基を有し、それは、葉酸との、DMTHFとの、そしてRGDペプチドとのコンジュゲートを形成するために用いられることができる。葉酸は、環外アミン基を有し、それは、グルタミン酸のα炭素のカルボン酸基と結合して2つを連結させるアミド結合を形成することができる。葉酸中の環外アミン基と同じ環外アミン基が、DMTHFにおいてアミド結合形成のために利用可能である。RGDコンジュゲートも、当該技術で周知であり、やはり同様に例えばRGD中の遊離のαアミノ基を介してα炭素カルボン酸基に共有結合的に連結されることができる。あるいは、どの部分も、例えばポリエチレングリコールアミンのようなスペーサー基を介してγ-PGAにコンジュゲートされることができる。γ-PGAへのコンジュゲーション反応の例が、葉酸およびクエン酸のコンジュゲーションを含め、(2014年10月2日に公開された)国際公開第2014/155142号において見付けられることができる。
【0046】
γ-PGAは、電荷修飾部分を含むことができる。そのような部分は、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、1,4,7,10-テトラシクロドデカン-N,N’,N'',N'''-四酢酸(DOTA)およびジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)か
ら選択されることができる。前記の部分のいずれかの組み合わせが、γ-ポリグルタミン酸に、やはりα炭素のカルボン酸において共有結合的に連結されることができる。クエン酸は、γ-PGAのα炭素のカルボン酸基に、エステル結合を形成することによりコンジュゲートされることができる。(例えば、国際公開第2014/155142号を参照。)EDTA、DOTAおよびDTPAは、例えばこれらの部分のアミンをγ-PGAのα炭素のカルボン酸基に連結するためのスペーサー基を用いてγ-PGAに連結されることができる。数多くの選択肢が、当業者に利用可能である。電荷修飾部分は、Zn(II)イオンをキレートするための部位として用いられることができ、電荷修飾も、ZnPGA複合体の輸送および可溶性に影響を及ぼすと考えられ、従って、キャリヤーおよびZnP
GA複合体の医薬的作用を調整するために用いられることができる。
【0047】
γ-PGAは、両方のタイプの部分の利益および機能性がγ-PGAキャリヤーに付与されることができるように、腫瘍標的化および電荷修飾部分の両方を含むことができる。腫瘍標的化および電荷修飾部分のいずれかの組み合わせが、γ-PGAにコンジュゲートされることができ、部分の相対的比率は、特に制限されない。
【0048】
本発明に従う組成物および配合物は、NF-κB阻害剤を含むこともできる。本明細書で用いられる際、NF-κB阻害剤は、直接的な阻害剤ならびにシグナル伝達カスケードを阻害することができる化合物、またはNF-κBの作用を抑制してそれにより腫瘍細胞の増殖もしくは生存を制限するあらゆる化合物を含む。本明細書で定義されるようなNF-κB阻害剤として用いられることができる典型的な化合物は、ピロリジンジチオカルバメート(PDTC)(NPL4)、テルミサルタン(NPL9)、オルメサルタン(NPL1)、バルサルタン(NPL8)、ジスルフィラム(NPL4)またはそれらの薬学的に許容可能な塩類を含む。これらの阻害剤は、それらが腫瘍細胞の生存度を制限し、それによりそれらを他の殺腫瘍剤、例えば主題発明の組成物および配合物の作用に対して増感させるため、増感剤とも呼ばれ得る。実施例4は、PDTCおよび本発明の一態様に従う配合物の同時投与の殺腫瘍作用を示す。
【0049】
液体配合物
亜鉛(II)およびγ-PGAキャリヤー成分は、液体として配合されることができる。適切な液体配合物は、液体溶液、液体懸濁液、シロップおよび経口スプレーを含む。液体溶液は、経口摂取される、または注射により例えば静脈内、皮内、筋内、髄腔内もしくは皮下もしくは直接腫瘍中もしくは腫瘍付近に投与されることができ、一方で液体懸濁液、シロップおよびスプレーは、一般に経口投与に適している。
【0050】
液体剤形を調製する方法
液体剤形を調製するための方法は、所望の量の(i)亜鉛塩(類)およびγ-PGAキャリヤーならびに/または(ii)ZnPGA複合体を、適切な賦形剤と共に一緒に混合することを含む。一部の態様は、さらに配合物中に胃耐性結合剤および/またはコーティングを含む。
【0051】
液体溶液配合物は、適切なキャリヤー、希釈剤、緩衝剤、保存剤または投与の形態に関して適切に選択された他の賦形剤を用いて調製されることができる。例えば、静脈内配合物は、適切なpHにおいて緩衝され、等張剤を用いて調製されることができる。
【0052】
注射または経口送達に適した液体配合物の一態様は、亜鉛(II)塩、γ-PGAキャリヤー(上記のような未修飾のγ-PGAおよび/またはあらゆる形態の修飾されたγ-PGA)および水を含む。さらなる態様において、液体配合物は、さらに緩衝剤および/または塩、例えば塩化ナトリウムを含むことができる。緩衝剤が含まれる場合、好ましい緩衝pHは、約pH4~約pH9の範囲である。注射された際、好ましくは、溶液は、それがその中に注射されるべき溶液と等張であり、適切なpHを有する。一態様において、硫酸亜鉛七水和物、γ-PGAおよび塩化ナトリウムが、水中で組み合わせられ、ここで、亜鉛(II)の濃度は、1mg/mLであり、γ-PGAの濃度は、10mg/mLである。γ-PGAのポリマー分子量は、上記の範囲のいずれかから選択されることができる。一態様において、それは、約5kDa~約100kDaの範囲であり、他の態様において、それは、約1kDa~約100kDaの範囲である。あらゆる態様において、γ-PGAの1以上のポリマー分子量形態が、含まれることができる。
【0053】
ある態様において、亜鉛塩(類)およびγ-PGAキャリヤーは、ZnPGA複合体と
して調製されることができる。一般に、ZnPGA複合体を形成するため、亜鉛塩(類)およびγ-PGAキャリヤーは、例えば実施例1および2において記載されているように組み合わせられ、精製される。得られたZnPGA複合体の溶液は、希釈され、または実質的に乾燥させられ、液体剤形を調製するための手順における使用のためにより濃縮された形態で再構成されることができる。ZnPGA複合体は、注射用溶液として、または液体懸濁液、シロップもしくはスプレーとして配合されることができる。
【0054】
亜鉛塩類およびγ-PGA組成物は、本発明の方法における使用のための液体懸濁液として配合されることができる。例えば、まず、Zn(II)塩およびγ-PGAキャリヤー(γ-PGAの未修飾形態および/またはあらゆる修飾された形態を含む)の混合物を含む顆粒化された組成物が、顆粒化された固体中に含まれる胃耐性結合剤を用いて調製される。(固体配合物を調製する方法に関する下記の論考を参照。)γ-PGAキャリヤーは、約5kDa~約500kDa、または約1kDa~約500kDa、または約5kDa~約100kDa、または約1kDa~約100kDaの範囲の平均分子量を有するγ-PGAから調製されることができる。次いで、顆粒化された固体は、摂取に適した酸性液体中で懸濁される。溶液のpHは、顆粒化された固体が胃耐性結合剤の結果として安定なままであるように、約pH6未満であることができる。一態様において、液体懸濁液配合物は、顆粒化された固体が十分に懸濁されたままであり容器から効率的に摂取されることができるように、増粘剤または粘度増進剤も含有する。
【0055】
液体懸濁液の別の態様において、顆粒化された固体は、まずZnPGA複合体を調製することにより調製され、ここで、Zn(II)が、γ-PGAキャリヤーと複合体化される。そのような調製の例が、例えば実施例1および2において提供されている。その後、ZnPGAは、胃耐性結合剤および他の適切な賦形剤を用いて顆粒化されることができる。次いで、この顆粒化された混合物は、すぐ上で記載されたように液体懸濁液として調製されることができる。
【0056】
液体配合物の別の態様は、亜鉛塩およびγ-PGA複合体の粒子、例えばマイクロスフェア、微粒子、顆粒または他の適切な固体形態を形成し、その粒子を蝋の薄層でコートすることを含む。好ましい態様において、粒子は、さらに胃耐性結合剤を含む。コートされた粒子は、液体懸濁液配合物として配合される。粒子上の蝋コーティングは、粒子の物理的完全性を促進し、透過性を低減するが、コーティングは、それでもなお亜鉛およびγ-PGA複合体の腸への送達を可能にする。
【0057】
コーティングに適した顆粒は、前記の方法のいずれかに従って調製されることができる。亜鉛塩、γ-PGAおよび胃耐性結合剤のマイクロスフェアまたは微粒子は、数多くの当該技術で既知の方法のいずれかにより調製されることができ、それは、分散した相の単一エマルジョン(single emulsion)法、二重エマルジョン(double emulsion)法、重合、界面重合、相分離およびコアセルベーション、噴霧乾燥、噴霧凝結、溶媒抽出、凍結乾燥を含む。そのようなマイクロスフェアまたは微粒子の寸法は、数10ミクロン~数1000ミクロンの範囲であることができる。例として、マイクロスフェア粒子を調製するための1つの方法は、亜鉛塩およびγ-PGAを含む微細に分割された(例えば粉末化された)固体混合物を懸濁媒体、例えばパラフィン油中で撹拌し、ポリマー性胃耐性結合剤の溶液をその撹拌された懸濁液に添加することを含む。マイクロスフェアが形成されたら、非溶媒、例えばクロロホルムが、マイクロスフェアを沈殿させるために添加され、それが収集され、乾燥させられ、続いて蝋でコートされる。
【0058】
蝋コーティングは、生体適合性かつ非免疫原性であり、薬物の捕捉および腸管への送達に適していることが、認識されている。粒子(マイクロスフェア、微粒子、顆粒等)は、当該技術で既知の方法に従って蝋、例えばカルナウバ蝋、蜜蝋、セトステアリルアルコー
ル、鯨蝋および他の蝋でコートされることができる。例えば、粒子は、蝋を白色パラフィン油中で溶解させ、その溶液を45℃未満まで冷却し、次いで粒子を機械的に撹拌された蝋/パラフィン油溶液に、その粒子がコートされるまで添加することにより、カルナウバ蝋でコートされることができる。撹拌速度および時間ならびに蝋溶液の温度は、蝋コーティングの厚さを修正するために調節されることができる。
【0059】
蝋でコートされた亜鉛塩およびγ-PGA粒子は、投与のために液体懸濁液として配合される。コートされた亜鉛/γ-PGA粒子は、最終的な配合された懸濁液中に約5重量%~30重量%で存在する。典型的には、液体懸濁液配合物は、懸濁ポリマー、粘性剤および緩衝剤を含む。配合物は、さらに甘味料、香味料および/または保存剤の1以上も含んでよい。
【0060】
懸濁ポリマーは、キサンタンガム、カルボマー、微結晶性セルロース、カルボキシメチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムから選択されることができ、それは、単独でまたはあらゆる組み合わせで用いられることができる。当該技術で既知の他の類似の薬剤も、用いられることができる。合計で、懸濁ポリマー構成要素は、最終配合物中に約0.02重量%~約5重量%で存在する。
【0061】
粘性剤は、グリセリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポビドン、グアーガムおよびローカストビーンガムから選択されることができ、それは、単独で、またはあらゆる組み合わせで用いられることができる。当該技術で既知の他の類似の薬剤も、用いられることができる。合計で、粘性剤構成要素は、最終配合物中に約0.05重量%~約50重量%で存在する。
【0062】
緩衝剤は、リン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、乳酸緩衝剤およびクエン酸緩衝剤または所定の範囲の緩衝能力を有する他の薬学的に許容可能な緩衝剤から選択されることができる。緩衝剤は、約6以下のpHを有するように調節される。ある態様において、pHは、約3~約6である。ある態様において、pHは、4.5~5であり、他の態様において、pHは、4~5であり、さらに他の態様において、pHは、3~5である。
【0063】
甘味料は、スクロース、転化スクロース、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、アスパルテーム、サッカリンおよびスクラロースから選択されることができ、それは、単独で、またはあらゆる組み合わせで用いられることができる。当該技術で既知の他の類似の薬剤も、用いられることができる。合計で、甘味料構成要素は、最終配合物中に約5重量%~約40重量%で存在することができる。
【0064】
香味料は、あらゆる薬学的に許容可能な香味料または当該技術で既知の食品もしくは補給剤中で用いられているあらゆる薬剤から選択されることができ、業界の慣習と一致する量で最終配合物中に添加されることができる。
【0065】
保存剤は、安息香酸ナトリウム、メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール、ソルビン酸カリウムおよびクエン酸から選択されることができ、それは、単独で、またはあらゆる組み合わせで用いられることができ、業界の慣習と一致する量で最終配合物中に添加されることができる。当該技術で既知の他の類似の薬剤も、用いられることができる。
【0066】
一部の態様に従う液体剤形を調製するための配合物および方法が、下記で実施例10において提供されている。
液体懸濁液配合物に関するこれらの態様のいずれにおいても、γ-PGAキャリヤーは、一般に約0.01重量%~約10重量%の濃度で存在し、ある態様において、その量は
、約0.1重量%または約1重量%である。Zn(II)は、一般に約0.001重量%~約10重量%の濃度で存在する。
【0067】
液体投与配合物は、NF-κB阻害剤を含むように調製されることもできる。そのようなNF-κB阻害剤を配合物中に含まない態様において、NF-κB阻害剤は、あらゆる他の適切な配合物および投与の形態を用いて同時投与されることができる。
【0068】
固体配合物
亜鉛塩およびγ-PGAキャリヤーは、経口投与のための経口固体剤形、例えば錠剤、硬カプセル、軟カプセルまたは関連する形態、例えばミニ錠剤(minitablet)、カプレット、ゼラチンカプセル、経口崩壊性フィルム等の中に配合されることができる。剤形は、さらに胃耐性結合剤および/または胃耐性コーティングを含むように配合される。
【0069】
亜鉛塩およびγ-PGAキャリヤーは、医薬製品中での使用に適した、そして特定の剤形、例えば錠剤またはカプセル等を作製するのに適した賦形剤と組み合わせられる。典型的な賦形剤は、増量剤、結合剤、崩壊剤、滑剤、潤滑剤ならびに緩衝剤、保存剤、抗酸化剤、香味料、甘味料、着色剤等を含む。添加されるべき賦形剤の量およびタイプは、様々な目的、例えば剤形の向上した完全性、向上した生物学的利用能、安定性、製造、コーティング、外観および/またはコンプライアンスに関して選択されることができる。一部の賦形剤は、1より多くの目的に役立つ可能性があり、かつ/または1より多くの向上した特徴を提供することができる。
【0070】
増量剤は、水溶性または水に不溶性であることができ、それぞれのタイプの1以上が、組み合わせられることができる。水溶性増量剤の例は、限定ではなく、当該技術で既知であるように、糖類、例えばグルコース、フルクトース、スクロース、マンノース、デキストロース、ガラクトース等、および糖アルコール類、例えばマンニトール、ソルビトール、キシリトール等を含む。水に不溶性の増量剤の例は、限定ではなく、当該技術で既知であるように、蝋、長鎖脂肪酸、タルク、カオリン、二酸化ケイ素、二酸化チタン、アルミナ、デンプン、粉末状セルロース、微結晶性セルロース等を含む。
【0071】
結合剤は、限定ではなく、当該技術で既知であるように、セルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドンならびにデンプン類、加工デンプン類、例えば部分的に加水分解されたデンプン、例えばマルトデキストリン、糖質、ゼラチン、天然または合成ガム等を含む。
【0072】
上記のように、ある態様において、胃耐性材料は、胃耐性結合剤として、および/または胃耐性外部コーティングとして含まれる。胃耐性結合剤または外部コーティングを構成する材料は、剤形からの亜鉛塩およびγ-PGAの放出を、それが胃を通過して腸に入るまで遅らせる機能を果たす。胃耐性結合剤またはコーティングが用いられる場合、それは、他の(非胃耐性)結合剤またはコーティングとの組み合わせで用いられることができる。
【0073】
一般に、胃耐性材料は、胃の酸性環境(pH約3)中では認識できるほどに溶解または膨潤しないが、腸の中性~わずかにアルカリ性の環境(pH7~9)中では内容物が放出されるように十分に溶解または膨潤するであろうマトリックスまたはポリマーまたは他の障壁である。腸溶コーティングおよび腸溶結合剤は、胃耐性材料の例である。
【0074】
胃耐性材料の例は、酢酸フタル酸セルロース、酢酸コハク酸セルロース、酢酸トリメリット酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース-フタレート、以下から選択される2以上の単量体のコポリマー:(i)アクリル酸エステル、(ii)アクリル酸メチルエステル、ならびに(iii)メタクリル酸、ポリビニルアセテートフタレート、酢酸コハク酸ヒプロメロース、フタル酸ヒプロメロース、アルギン酸ナトリウム、シェラックおよびゼインを含む。
【0075】
数多くのグレードおよび薬局方収載の標準が、胃耐性材料に関して存在し、それらは、亜鉛およびγ-PGAを腸に送達する機能を提供するための適切な材料を選択するための有用な手引きを提供する。外部コーティングにおけるコーティングの厚さおよびポリマー組成または結合剤およびポリマー組成物の量を制御することにより、放出点は、より早くもしくはより遅く、または腸の特定のおおよその領域内で起こるように調節されることができる。達成されることができる制御の程度の例は、様々な薬局方収載の標準を満たすCorel Pharma Chem(インド)から商品名Acrycoat(登録商標)の下で入手可能なメタクリル酸コポリマーの系列(line)、例えば:USP/NFメタクリル酸コポリマー、タイプA-NF(4~5%で用いられ、典型的には剤形の内容物を空腸に送達する);USP/NFメタクリル酸コポリマー、タイプC-NF(4~5%で用いられ、典型的には剤形の内容物を十二指腸に送達する);およびUSP/NFメタクリル酸コポリマー、タイプB-NF(10~20%で用いられ、典型的には剤形の内容物を結腸に送達する)において見付けられることができる。後者(タイプB-NF)は、送達をpH依存性ポリマーにより達成しているが、pH非依存性ポリマーも、結腸または腸への送達のために用いられることができる。
【0076】
崩壊剤は、限定ではなく、当該技術で既知であるように、カルメロース、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、アルギネート類、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプン、部分アルファ化デンプン等を含む。
【0077】
滑剤は、限定ではなく、当該技術で既知であるように、シリカ類、シリケート類、タルク、リン酸カルシウム等を含む。
潤滑剤は、限定ではなく、当該技術で既知であるように、アルカリ金属またはアルカリ土類金属ステアリン酸塩類、オレエート類、ベンゾエート類、アセテート類、塩化物等を含む。
【0078】
他のタイプの賦形剤、例えば緩衝剤、保存剤、抗酸化剤、香味料、甘味料、着色剤が、周知であり、当業者は、そのような構成要素を容易に選択して配合物に適用することができる。
【0079】
固体投与配合物は、NF-κB阻害剤を含むように調製されることもできる。固体配合物中にそのようなNF-κB阻害剤を含まない態様において、NF-κB阻害剤は、あらゆる他の適切な配合物および投与の形態を用いて同時投与されることができる。
【0080】
腸中での吸収を受け入れられる他のタイプの有効成分、例えばビタミン類、鉱質、栄養素および他の栄養または食事補給剤も、別途記載されない限り、本発明の範囲から逸脱することなく本明細書で記載される液体または固体組成物および配合物に添加されることができる。
【0081】
本明細書で記載される組成物および配合物は、あるいは、亜鉛塩(類)およびγ-PGAキャリヤーならびに胃耐性外部コーティングおよび/または胃耐性結合剤を、それが本
明細書と矛盾しない限り、含む、それで構成される、または本質的にそれで構成されることができる。組成物および配合物は、先行技術の組成物中に存在する、または他の点では(otherwise)開示される発明に必要ではないあらゆる構成要素(単数または複数)、例えば有効成分および/または賦形剤を欠いている、または実質的に含まないこともできる。
【0082】
固体剤形を調製する方法
亜鉛塩類およびγ-PGAならびに選択された賦形剤は、個々に、または組み合わせで大きさを決められる、塊を除去される(declumped)、または粉末化されることができる。様々な構成要素は、乾燥混合により組み合わせられる、または湿式もしくは乾式顆粒化、噴霧、押し出し、圧延もしくは流動床顆粒化もしくは当該技術で既知の他のそのような技法により顆粒化されることができ、その後、場合により製粉されることができる。
【0083】
ある態様において、亜鉛塩(類)およびγ-PGAキャリヤー(上記のような未修飾のγ-PGAおよび/または修飾されたγ-PGAのあらゆる形態)が、ZnPGA複合体として調製されることができる。一般に、亜鉛塩(類)およびγ-PGAキャリヤーは、例えば実施例1および2において記載されるように組み合わせられ、精製される。便宜上、得られたZnPGA複合体の溶液は、実質的に乾燥させられ、固体剤形を調製するための手順において乾燥した、または実質的に乾燥した粉末として用いられることができる。
【0084】
固体剤形を調製するための方法は、所望の量の(i)亜鉛塩(類)およびγ-PGAキャリヤーならびに/または(ii)ZnPGA複合体、ならびに賦形剤を一緒に混合することを含み、それは、1種類以上の増量剤および/または1種類以上の結合剤および/または1種類以上の崩壊剤および/または1種類以上の潤滑剤および/または1種類以上の滑剤を含む。上記のように、ある態様において、前記の1種類以上の結合剤は、胃耐性結合剤であることができ、それは、他の(非胃耐性)結合剤との組み合わせで用いられることができる。顆粒化工程が含まれる場合、賦形剤のいずれも、顆粒化工程の前、間または後に、全て、または部分的に添加されることができる。ある態様において、潤滑剤の一部または全部が、顆粒化工程の後に混合される。これらの態様の一部において、滑剤も、顆粒化工程の後に混合される。
【0085】
顆粒化工程が、構成要素のブレンドをそれらが顆粒化される際に湿らせるために溶媒、例えば水または有機溶媒または水性有機溶液の使用を含む場合、結果として得られる製品は、通常は残留する溶媒を除去するために乾燥させられる。有機溶媒の例は、当該技術で既知であるように、エタノールおよびイソプロパノール等を含む。好ましくは、有機溶媒の実質的に全部が、乾燥工程において除去される。水が顆粒化工程において用いられる溶媒の一部である場合、好ましくは、10重量%より多くない、または5重量%より多くない、または2重量%より多くない水が、乾燥後に残されて次の工程へと進む。
【0086】
混合または顆粒された固体は、固体を圧縮、締固めまたは成型を用いて錠剤化することにより錠剤へと形成されることができる。その後、ある態様において、錠剤は、上記のように胃耐性コーティングでコートされる。一般に、胃耐性物質および場合により他の賦形剤(例えば可塑剤、乳化剤)が、水性または有機溶媒中に溶解または分散させられ、次いで噴霧コーティング、流動床コーティング、パンコーティング等を含む当該技術で既知の数多くの方法のいずれかを用いて適用される。ある態様において、錠剤は、外観、機械的安定性、化学的安定性等の目的のためにコートされるが、そのコーティング中には胃耐性材料は含まれない。
【0087】
あるいは、混合または顆粒化された固体は、カプセルまたはカプレット中に充填されて
内部に封入されることができる。カプセルという用語は、軟カプセル、硬カプセル、ゼラチンカプセル(gelcaps)、植物性カプセルを含み、ワンピースまたはツーピースカプセルであることができる。腸溶コーティングカプセルが、利用可能であり(例えば腸溶カプセル薬物送達技術)、またはカプセルは、充填、封入され、次いで上記で言及された方法により物質の溶液もしくは分散物を場合により他の賦形剤と共に用いて胃耐性コーティングでコートされることができる。他の態様において、混合または顆粒化された固体は、胃耐性結合剤材料を含み、そのような固体は、腸溶コーティングを有するかまたは有しないカプセル中に装填されることができる。
【0088】
錠剤またはカプセル両方の大きさおよび形状は、特に制限されない。亜鉛塩類およびγ-PGAの所望の投与量は、過度に大きくない錠剤またはカプセル中に配合されることができることが、予想される。
【0089】
本発明の態様に従う錠剤剤形を調製するための典型的な方法が、下記で実施例11および12において提供される。
投薬および投与
本明細書で記載される剤形は、対象において所望の生物学的応答を達成するために療法上有効量の亜鉛を提供するために投与されることができる。療法上有効量は、Zn、γ-PGA、γ-PGAに対するあらゆる修飾、あらゆるZnPGA複合体の形態、NF-κB阻害剤の存在もしくは非存在、および/または剤形の送達効率等の組み合わせられた作用により処置を必要とする患者に送達される亜鉛の量が所望の生物学的応答を達成するであろうことを意味する。
【0090】
所望の生物学的応答は、対象、例えば哺乳類における、例えばヒト(患者とも呼ばれ得る)における腫瘍もしくはがんの発病もしくは発症の予防、腫瘍もしくはがんの進行の部分的もしくは完全な予防、遅延もしくは阻害、または腫瘍もしくはがんの再発の予防、遅延もしくは阻害を含む。
【0091】
PARP1媒介性壊死を受け入れられる全ての腫瘍型は、本明細書で開示される処置の方法に従って処置されることができる適応症であることが意図されている。実施例4、5および6は、開示された組成物および医薬配合物の態様を用いる開示された方法の態様に従う処置の有効性を実証する。結果は、インビボでのマウスがん細胞における、およびヒトがん細胞における、ならびにヒト対象における有効な処置を実証している。
【0092】
療法上有効量の達成は、配合物の特徴に依存すると考えられ、いずれもそれぞれの個体の性別、年齢、体調および遺伝子構成により異なるであろう。例えば遺伝的原因または吸収障害もしくは重度の食事制限の他の原因により不十分な亜鉛を有する個体は、一般的に十分なレベルの亜鉛を有する個体と比較して療法的作用に関して異なる量を必要とし得る。
【0093】
対象は、一般に1日あたり約1mg~約300mgの量の亜鉛を投与される。例えば、1日あたり約25mg、または50mg、または75mg、または100mg、または150mg、または200mgの亜鉛。複数の剤形が、その日に一緒に、または別々に摂取されることができる。経口剤形は、一般に食事時間にかかわらず投与されることができる。処置は、一般に所望の療法的作用が達成されるまで継続する。腫瘍が退縮する、または阻害されている場合、その再発を予防する、遅らせる、または阻害する目的で、本明細書で記載される組成物および配合物の低い投与量レベルが、本発明の一態様に従う処置として継続される、または予防的処置として用いられることもできる。
【実施例】
【0094】
実施例1:未結合の過剰な亜鉛を除去するためのリン酸沈殿法を用いたpH7.0におけるZnPGAの調製および特性付け。
ZnPGAを調製するため、55mgのγ-PGA(50,000Daの分子量)を、10mM ZnSO4を含有する5mLの10mM MES緩衝液、pH7.0中で室温で溶解させ、次いで氷上に置きながら10分間超音波処理した。次いで、0.5mLの200mMリン酸緩衝液、pH7.0を溶液に添加して遊離の亜鉛イオンを沈殿させ、混合物を0.2μmシリンジ滅菌フィルターを通して濾過した。亜鉛含有量を、ICP-MSを用いて、そして4-(2-ピリジルアゾ)-レゾルシノールアッセイにより測定した。最終的なストックZnPGAは、1%(重量/体積)PGAおよび400μg/mLの結合した亜鉛イオンを含有していた。ストックZnPGA溶液は、それぞれの投与の日に新しく調製された。
【0095】
実施例2:未結合の過剰な亜鉛を除去するために透析法を用いたpH7.0におけるZnPGAの調製および特性付け。
ZnPGAを調製するため、55mgのγ-PGA(50,000Daの分子量)を、10mM ZnSO4を含有する5mLの10mM MES緩衝液、pH7.0中で室温で溶解させ、次いで氷上に置きながら10分間超音波処理した。次いで、溶液を氷上で1Lの10mM MES、pH7.0に対して2時間、連続的に3回、6時間にわたって合計3体積に関して透析した。回収された溶液を、0.2μmシリンジ滅菌フィルターを通して濾過した。亜鉛含有量を、ICP-MSを用いて、そして4-(2-ピリジルアゾ)-レゾルシノールアッセイにより測定した。最終的なストックZnPGAは、0.9%(重量/体積)PGAおよび380μg/mLの結合した亜鉛イオンを含有していた。ストックZnPGA溶液は、それぞれの投与の日に新しく調製された。
【0096】
実施例3:異なる薬物耐性遺伝子型を有するヒトがん細胞におけるZnPGAに誘導される細胞死のインビトロフローサイトメトリー分析(FACS)。
ZnPGAにより誘導される細胞死の方式(アポトーシスまたは壊死のどちらであるか)が、異なる薬物耐性遺伝子型を有する3種類のヒトがん細胞株:H460肺がん(WT
p53アポトーシス遺伝子、報告された薬物耐性を有しない)、T98G神経芽細胞腫(変異したp53および多剤耐性タンパク質1“MRP1”発現)、およびMES-SA
Dx5肉腫(WT p53およびP糖タンパク質“PgP”、多剤耐性タンパク質発現)において試験された。簡潔には、それぞれの細胞株が、ATCCが提案する方法および培地(RPMI-1640、F-12K、マッコイ5A、EMEM、DMEM等)(10%ウシ胎児血清(FBS)および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補われた)に従って、CO2インキュベーター中で37℃および5%CO2において96ウェルプレートをウェルあたり200μLの培地体積で用いて対数増殖後期における10,000単層付着状態へと調製された。96ウェルプレート上の調製された細胞が、異なる濃度のZnPGAで24時間処理された後、細胞状態のFACS特性付けが行われた。
【0097】
簡潔には、96ウェルプレートのそれぞれのウェル中の細胞が、微量遠心チューブ中に回収され、100μLの冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、pH7.4中で洗浄された。次に、それぞれの試料が、遠心分離され、冷100μL結合緩衝液(10mM HEPES、140mM NaCl、2mM CaCl2、pH7.4)中で再懸濁された。染色のため、5μLのAlexaFlour 488(登録商標)アネキシンV(アネキシンV:カタログ番号#A13200、Invitrogen)および5μLの結合緩衝液中100μg/mLヨウ化プロピジウム(PI)が、それぞれに染色のために室温で15分間添加された。インキュベーションの終了時に、試料は、それぞれの試料に400μLの結合緩衝液を添加した後即時のFACSの読み取りまで氷上に置かれた。FACSは、100μL/分の流速において488nmの励起波長ならびに530nmおよび575nmにおける吸収シグナルの読みで実施された。
【0098】
結果が、
図2において示されており、それは、処理された細胞とのアネキシンVおよびPIの結合に関するインビトロ細胞状態象限(quadrant)分析を示している。データは、ZnPGAが3種類の異なる薬物耐性遺伝子型を有する3つの細胞株全てにおいて24時間の曝露後に用量依存的に、かつ一貫して壊死性細胞死を誘導することを実証した。
図2において、上のパネルは、非耐性H460ヒト肺がん細胞(WT p53を発現しており、薬物耐性タンパク質を発現していない)の処理からの結果を示しており、中央のパネルは、多剤耐性MES-SA Dx5ヒト肉腫(WT p53およびPgP多剤耐性タンパク質を発現している)の結果を示しており、下のパネルは、多剤耐性T98Gヒト神経芽細胞腫(変異したp53およびMRP1多剤耐性タンパク質を発現している)の結果を示している。ZnPGAの用量は、図中のそれぞれの横列にわたって増大している。
【0099】
実施例4:免疫応答性C57BL同種移植モデルの肺におけるLL2マウス肺がんに対する経口補給されたZnPGAのインビボ増殖阻害作用
マウスルイス肺がん(LL2)細胞の単分散懸濁液が、そのインビトロ培養物のトリプシン処理により得られ、冷PBS中で2×105細胞/mLで調製された。0.5mLのLL2細胞の懸濁液が、C57BL/6メスマウスの尾静脈を通して注射され、注射されたマウスは、肺腫瘍の増殖の観察のために16日後に屠殺された。経口薬物処置が、腫瘍注射の次の日に、示された用量での飲み水中への希釈により開始された。動物は、がん注射の16日後に屠殺され、それらの肺が、LL2腫瘍の増殖に関して観察された。
【0100】
図3は、15日間の処置にわたるZnPGAを介した飲み水中の160μg/mLの亜鉛の用量が目に見えて密で堅い(visibly solid)LL2腫瘍の増殖の顕著な低減をもたらしたことを示している。さらに、ZnPGA溶液へのNF-κB阻害剤PDTCの補給は、マウス肺がんの同所性同種移植モデルにおけるLL2腫瘍増殖を事実上排除し、これは、NF-κB阻害剤PDTCおよびZnPGAの間のそれらの抗腫瘍作用における特定の相乗作用を示唆している。
【0101】
実施例5:免疫不全性胸腺欠損Nu/Nuメスマウスの皮下異種移植モデルにおけるH460ヒト肺がんに対する経口補給されたZnPGAのインビボ増殖阻害作用。
H460の単個細胞懸濁液が、その対数増殖期におけるインビトロ培養物のトリプシン処理により調製され、無血清冷RPMI-16040培地中で107細胞/mLで調製された。ヒト腫瘍の免疫不全性胸腺欠損Nu/Nuメスマウスに対する皮下異種移植片が、マウスの右脇腹付近の皮膚中に0.1mLのH460細胞懸濁液を皮下注射することにより作り出された。経口薬物処置が、腫瘍注射の次の日に開始された。3つの対象の1つの群は、飲み水において生理食塩水を与えられ、3つの対象の第2の群は、シスプラチン(5mg/kg)を週1回腹腔内に与えられ、そして3つの対象の第3の群は、飲み水を介してZnPGA(160μg/mL亜鉛)を与えられた。注射の14日後に開始し、触知できる腫瘍塊の長い寸法および短い寸法(それぞれ長さおよび幅)が、デジタルノギスを用いて2日ごとに測定された。実験は、28日間継続した。腫瘍体積は、式:V=長さ×幅2×1/2により得られた。
【0102】
図4は、実験の結果を示す。それぞれ実施例3および4のインビトロおよびC57BLマウスにおける同種移植同所性LL2肺がんモデル試験の結果と一致して、ZnPGAを介した飲み水中の160μg/mL亜鉛の投与は、皮下異種移植されたH460ヒト肺がんの増殖に対して顕著な阻害作用をもたらした。重要なことだが、経口補給されたZnPGAの腫瘍抑制作用は、腹腔内注射されたシスプラチンの作用と類似しているかそれよりも良好であった。
【0103】
前記の発明は、詳細に、かつ例および説明として記載されてきたが、当業者は、本明細書に開示され、特許請求の範囲により包含される組成物および方法の範囲を理解するであろう。
【0104】
実施例6:顆粒化されたZn(II)塩およびγ-ポリグルタミン酸の混合物を与えられている患者の臨床観察。
顆粒化された硫酸亜鉛およびγ-ポリグルタミン酸混合物から作製された補給剤グレードの腸溶コート錠剤配合物の経口投与(oral administration)は、(1)以前に2回のがんの履歴を有する女性患者における第三薬物不応性早期胃がんの臨床的退縮、および(2)以前の処置または疾患の履歴を有しない男性患者における第一原発性早期胃がんの臨床的退縮をもたらした(lead)。
【0105】
実施例7:液体配合物。
例えば注射に適した液体配合物の典型的な態様の組成物は、亜鉛(II)塩、γ-PGA、塩化ナトリウムおよび水を含む。組成物は、硫酸亜鉛七水和物、γ-PGA(カリウム塩、≦100kDa)、塩化ナトリウムを組み合わせて水を所定の体積まで追加することにより調製され、ここで、それぞれの構成要素の濃度は、1mg/mL亜鉛(II)、10mg/mL γ-PGAおよび6.5mg/mL塩化ナトリウムである。結果として得られるおおよそ276mOsm/kgの重量オスモル濃度およびpH5.68の組成物は、ヒト患者における注射に適している。
【0106】
実施例8:Zn(II)濃度およびγ-PGAポリマーの大きさが異なるZn(II)/γ-PGA溶液を用いた処置におけるインビトロ細胞生存アッセイ。
A.Zn/γ-PGA溶液の調製。γ-PGA、カリウム塩(Xi’an Lyphar Biotech Co.,Ltd.、西安、中国)、分子量≦100kDaが、調達され、試料が、pH3緩衝水溶液中で353Kで1、2、6、12および96時間加熱することにより様々な大きさに断片化されて、γ-PGAのますます小さい断片を生成した。断片化されたポリマーに関する平均分子量(molecular)は、それぞれ50.1kDa、28.2kDa、15.9kDa、7.9kDaおよび2.5kDaであることが報告された。Peng, M., Liu, W., Chen, Q., and Hansen. E.W. (2010). Degradation rate of γ-polyglutamic acid probed by 1H-NMR spectral analysis and by PFGSTE NMR - internal consistency. Int’l J. Research and Reviews in Applied Sciences 3, 233-241。Zn/γ-PGA溶液は、3通りのZn(II)の濃度において、断片化さ
れていないポリマーおよび以下のような5種類の断片的されたポリマーのそれぞれを用いて調製された。γ-PGAは、水中で溶解され、トリス・HClが、添加され、溶液が、pH7.0において緩衝され、次いでZnSO4・7H2Oが、添加されて、1μg/mL、10μg/mLおよび100μg/mLの亜鉛(ii)濃度を有する溶液を生成し、ここで、亜鉛:グルタミン酸単量体の比率は、1:8であった。これらの溶液が、次に記載されるMMT細胞生存アッセイにおいて用いられた。
【0107】
B.MTTアッセイ。HeLaおよびMCF7細胞に関するZn/γ-PGAの細胞生存度への作用が、MTT[3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド]アッセイを用いて決定された。簡潔には、4×104細胞/ウェルの密度の培養された細胞(下記参照)が、96ウェルプレート中に分配された。様々な濃度のZn/γ-PGA(それぞれが3通りのZn(II)の濃度での6通りのγ-PGAポリマーの大きさ)が、添加され(それぞれの条件は、4通り(N=4)で行われた)、24時間のインキュベーション後、ウェルの内容物は、細胞を収集するために遠心分離され、培地が除去された。MTT溶液(150μLの1mg/mL使用液)が、それぞれのウェルに添加され、結晶ホルマザン顕色を可能にするために3時間インキュベートされ、細胞および結晶ホルマザンを収集するために遠心分離された。形成された結
晶ホルマザンを200μL DMSO中で溶解させ、540nmにおける光学吸光度を測定することにより、細胞生存度が決定された。
【0108】
C.細胞培養。HeLaおよびMCF7細胞は、96ウェル細胞培養プレート中で、10%ウシ胎児血清(FBS)および1%抗生物質を含有する200μLのダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)および(RPMI)中で、37℃において95%空気および5.0%CO2の加湿された雰囲気下で24時間培養された。
【0109】
D.アッセイの結果。アッセイの結果が、HeLa細胞およびMCF7細胞に関してそれぞれ
図5Aおよび5Bにおいて示されている。その結果から、Zn/γ-PGAが細胞毒性であり、増大するZn(II)濃度および低下するγ-PGAポリマーの大きさに伴って作用が増大することは、明らかである。
【0110】
実施例9:4種類の細胞型に関するZn(II)/γ-PGA溶液、変動するZn(II)濃度、100kDa γ-PGAポリマーを用いた処置におけるインビトロ細胞生存アッセイ。
【0111】
A.Zn/γ-PGA溶液の調製。Zn/γ-PGA溶液が、実施例8において記載されたように、γ-PGA、カリウム塩(Xi’an Lyphar Biotech Co.,Ltd.、西安、中国)、多分散性、分子量45kDaを用いて調製され、1.5625、3.125、6.25、12.5、25、50および100μg/mLの亜鉛(ii)濃度を有する溶液が、調製され、ここで、亜鉛:グルタミン酸単量体の比率は、1:8であった。
【0112】
B.MTTアッセイ。HEK-293、HeLa、MCF7およびA549細胞の細胞生存度に対するZn/γ-PGAの作用が、実施例8において記載されたようにMTTアッセイを用いて決定された。
【0113】
C.細胞培養。細胞培養条件は、実施例8において記載された条件と同じであった。
D.アッセイの結果。アッセイの結果が、
図6において示されている。その結果から、Zn/γ-PGAが細胞毒性であり、45kDa γ-PGAポリマーに関する増大するZn(II)濃度に伴って作用が増大することは、明らかである。
【0114】
実施例10:γ-ポリグルタミン酸-亜鉛液体組成物。
一態様に従って本発明を実施するために有用な組成物が、表1において示されている。組成物は、100gあたり0.68mgのZn(Zn2+イオン)を蝋でコートされた粒子を含む液体懸濁液配合物として提供する。配合物を調製するための方法は、表に従う。この組成物は、単に主題発明に有用な多くの組成物の1つを説明するだけのものである。
【0115】
【0116】
A.コートされたZnPGAマイクロスフェア(cZPM)の調製。10gのスクロース(5%w/v)、45mgのγ-PGAおよび19.79mgの硫酸亜鉛七水和物(元素のZnとして4.5mg)を含有する200mLの水が、調製され、凍結乾燥された。次いで、結果として得られた粉末が、5%までのコーンスターチを含有する微細に分割されたスクロースと1:4の比率で摩砕処理され、No.50米国標準ステンレス鋼篩(48メッシュ)を押し通された。次いで、この粉末が、400mLビーカー中で200mLの白色パラフィン油中で懸濁された。その混合物が、高トルク撹拌機(Type RXR1,Caframo,オンタリオ州ワイアトン)に取り付けられた44mmポリエチレン三枚刃パドルによる260rpmでの撹拌により分散させられた。その懸濁液に、20mLのアセトン-95%エタノール(9:1)中10%(w/v)ヒドロキシプロピルメチルセルロース-フタレート(HPMC-P)が、添加された。撹拌が、5分間継続され、それによりマイクロスフェアが形成され、次いで75mLのクロロホルムが、添加された。懸濁媒体が、デカントされ、マイクロスフェアが、75mLのクロロホルム中で短時間再懸濁され、周囲温度で風乾された。乾燥したら、マイクロスフェアは、カルナウバ蝋でコートされた。具体的には、1gのカルナウバ蝋が、200mLの白色パラフィン油中で70℃において溶解され、45℃未満まで冷却された。この冷却された蝋-パラフィン溶液に、調製されたマイクロスフェアが、添加され、一定の撹拌により15分間懸濁された。次いで、蝋溶液がデカントされ、マイクロスフェアが、過剰な蝋溶液を吸収するために濾紙上で収集され、コートされたZnPGAマイクロスフェア(cZPM)が得られた。
【0117】
B.コートされたZnPGAマイクロスフェア(cZPM)の液体懸濁液溶液の調製。以下の構成要素:0.3gのキサンタンガム(例えば懸濁ポリマーとして);0.3gのグアーガム(例えば粘性剤として);10gのキシリトール(例えば甘味料として);0.5gのクエン酸緩衝剤(例えば緩衝剤として);0.1gのリモネン(例えば香味料として);0.025gのソルビン酸カリウム(例えば保存剤として)が、78.7mLの水中で溶解された。水溶液のpHが、pH4.5に調節され、次いで10gのcZPMが、水溶液中で懸濁され、cZPMの液体懸濁液が得られた。
【0118】
実施例11:γ-ポリグルタミン酸-亜鉛組成物。
一態様に従って本発明を実施するために有用な組成物が、表2において示されている。組成物は、錠剤あたり25mgのZn(Zn2+イオン)を提供する。錠剤を調製するための方法は、表に従う。この組成物は、単に主題発明に有用な多くの組成物の1つを説明するだけのものである。
【0119】
【0120】
表2において示されている組成物を用いるコートされた錠剤は、湿式顆粒化技法を用いて調製されることができる。まず、硫酸亜鉛およびγ-ポリグルタミン酸が、乾燥状態で一緒に混合される。微結晶性セルロース、デンプンおよび二酸化ケイ素が、さらに添加され、乾燥構成要素が、全てさらに一緒に混合される。混合された構成要素は、造粒機に移され、適切な量の水性エタノールが、添加され、顆粒化が、実施される。得られた顆粒化された混合物が、50~70℃で乾燥させられ、約5%未満の含水率を有する顆粒化された組成物が、生成される。ステアリン酸マグネシウムが、顆粒化された組成物に添加され、それと共に混合される。得られた混合物が、圧縮されて錠剤になる。最後に、錠剤は、当業者に既知であるような標準的な技法を用いて酢酸フタル酸セルロースでコートされる。
【0121】
実施例12:γ-ポリグルタミン酸-亜鉛組成物。
一態様に従って本発明を実施するために有用な組成物が、表3において示されている。組成物は、錠剤あたり30mgのZn(Zn2+イオン)を提供する。錠剤を調製するための方法は、表に従う。この組成物は、単に主題発明に有用な多くの組成物の1つを説明するだけのものである。
【0122】
【0123】
表3において示されている組成物を有するコートされた錠剤は、以下のように調製されることができる。まず、硫酸亜鉛、γ-ポリグルタミン酸、微結晶性セルロース、HPMC-P(ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート)、マルトデキストリンおよびカルボキシメチルセルロース-カルシウムが、乾燥状態で一緒に混合された。混合された構成要素は、造粒機に移され、適切な量の70%水性エタノールが、添加され、湿式造粒が、実施された。得られた顆粒化された混合物は、約60℃までにおいて乾燥させられ、約3%未満のLOD(乾燥減量)を有する顆粒化された組成物が、得られた。シリカ(例えばアエロジル(登録商標))およびステアリン酸マグネシウムが、顆粒化された組成物に添加され、それと共に混合された。得られた混合物が、圧縮されて錠剤になった。その錠剤は、当業者に既知であるような標準的な技法を用いて、まずHPMC-Pのイソプロピルアルコール溶液を用いてコートされ、次いで第2工程においてHPMCの水溶液を用
いてコートされた。